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【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6― - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/19(月) 23:23:20.33 ID:ElIf3Cc30
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・東部『王都へと続く街道』―

 ザッザッザッザッ

マークス「よもや、ここまで何の襲撃もないとは……」

レオン「小さな襲撃くらいあるものだと思っていたんだけど、思った以上に白夜軍の戦線は下がり始めているのかもしれないね」

マークス「やはり、王都の守備を万全に喫するつもりなのかもしれん。いずれにしても、行軍は先遣隊の索敵が済んでいるここまでだな」

レオン「そうだね。もう直に日も沈むし、行軍はここまでにして野営の準備に取り掛かろう」

マークス「うむ、カムイ、アクア。全軍に野営の準備に取り掛かるよう指示を出してほしい」

アクア「分かったわ。カムイ、行きましょう」

カムイ「はい、アクアさん。それじゃ行ってきますね、マークス兄さん、レオンさん」

マークス「ああ、よろしく頼む」

 タタタタタタッ

アクア「この調子でいけば、もうすぐ白夜王都の姿を見ることが出来るはずよ」

カムイ「はい、行軍も思ったよりスムーズに進んでいるみたいですから、予定よりは早く到着できそうですね」

アクア「ええ、ここまで白夜軍を見たという報告が無いのは引っかかるところだけど、今はそのおかげで進めているのだから」

カムイ「……やはり王都で私たちを待ち構えるつもりなんでしょうか」

アクア「状況を見る限りそうでしょうね。どちらにしても、王都での戦闘は避けられないとなると、望まない戦いも覚悟しておかないといけないわ」

カムイ「望まない戦いですか……」

アクア「……大丈夫、あなたならそんなものに負けたりしないわ。ここまでずっと戦ってきたことが、何よりの証拠よ。私が保証するわ」

カムイ「はい、ありがとうございます。アクアさん」

カムイ(望まない戦い……。私はそれが起きないことを心から願っています。もう、願うことしかできないとわかっているから……。でも、そうして願っているのは心のどこかで――)

(もう避けられないものなのだと知っているからなのかもしれません……)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521469400
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

2 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/19(月) 23:25:39.08 ID:ElIf3Cc30
 このスレは、『カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?』の続きとなっています。

 最初の1スレ:カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438528779/

 所々にエロ番外のある2スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443780147/

 アクアが暗夜兄妹と和解した3スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3―
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456839703/

 タクミとの戦いが終わりを迎えた4スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4―
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466084140/

 スサノオ長城攻略戦が終わりを迎えた5スレ目:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―5―
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483807375/

 個人妄想全開の暗夜ルートになっています。
 オリジナルで生きていたキャラクターが死んでしまったり、死んでしまったキャラクターが生き残ったりという状況が起きます。
 ご了承のほどお願いします。

 主人公のタイプは
 体   【02】大きい
 髪型  【05】ロング・セクシーの中間
 髪飾り 【04】ブラックリボン
 髪色  【21】黒
 顔   【04】優しい
 顔の特徴【04】横キズ
 口調  【私〜です】

 長所短所には個人的趣味を入れ込んでいます。 

 長所  心想い【心を好きになる(誰とでも結婚できる)】
 短所  盲目 【目が見えない(ただそれだけ)】

 ※時々、番外編を挟むことがあります。
 番外の場合は『◇◆◇◆◇』を付けています。
3 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/19(月) 23:26:32.65 ID:ElIf3Cc30
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
4 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/19(月) 23:27:47.07 ID:ElIf3Cc30
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822]

【消滅した組み合わせ】
・ラズワルド×リリス
 C[1スレ目・490〜491] B[1スレ目・892〜893]
・ゼロ×リリス
 C[1スレ目・835〜837]
5 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/19(月) 23:28:24.77 ID:ElIf3Cc30
仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]

【消滅した組み合わせ】
・ピエリ×リリス
 C[1スレ目・609〜614] B[1スレ目・894〜897] A[2スレ目・97〜99]
6 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/19(月) 23:35:39.48 ID:ElIf3Cc30
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『訓練場』―

マークス「リンカ」

リンカ「なんだ、マークス。また手合わせしたいのか?」

マークス「ああ、お前との剣戟は力強くてとても面白い。今まで相手にしたことのないタイプの戦士と言える」

リンカ「そうか。ふん、暗夜の王子が白夜の辺境部族の人間にそこまで言うなんてな」

マークス「戦場では身分など関係は無い。どんな名将であろうとも優れた力や技の前に倒れ伏すのは自然なことだ」

リンカ「そういうものか?」

マークス「そういうものだ。だからこそ、私はリンカの戦い方に興味を持った。あんなに敵陣へと突出しているというのに、戦い生還している様は驚嘆に値するものであったからな」

リンカ「そうか。で、そんなあたしと打ち合いをして何かわかったか?」

マークス「ああ、まだ確実とは言えるものではないがな。リンカ、お前はとても勇猛だ。それでいて攻撃の一撃一撃がとても重い」

リンカ「ふん、相手を一撃でのすのは戦闘の基本だからな。どんな相手でも最初の一撃さえ決められれば、どうということは無い」

マークス「ああ、そこがお前の強さの秘訣だと私は思っている。どんな敵だろうとお前は果敢に立ち向かう、その一撃で敵を倒してやるという気迫がお前の持つ刃からは感じられた。同時に、戦いでお前は生き残ろうともしている。私との剣の打ち合い、お前は最初の一撃以降は距離を取るために受けに回るだろう」

リンカ「相手の剣戟次第だ。マークスの剣戟の合間にあたしの攻撃は入らない。なら、仕切り直してもう一撃繰り出すのが一番いいからな」

マークス「そう言った状況判断をできることもお前の強さの一つだ。思った以上にお前の戦い方は豪快でありながら理に適っているのだと私は思った」

リンカ「……」

マークス「それが私の思い至ったお前の強さだ。どうだろうか、私なりにお前を観察して考えた答えなのだが……」

リンカ「さあ、どうだろね。それが答えかどうかに関しては何も言わないことにするよ」

マークス「むぅ、まだリンカの持つ強さの秘訣には届かないという事か」

リンカ「いや、届くとか届かないとかじゃないさ。あたしの強さはあたしの物で、マークスの強さはマークスの物さ。あたしの戦法を知ったところで、王子であるマークスがそれを行うわけにはいかないだろ?」

マークス「……それもそうだな。私が突然最前線に飛び出してしまえば、隊列が大いに乱れることだろう」

リンカ「だからあたしの戦い方をマークスが知る必要はないんだ。だけど、その分あたしはあたしの戦い方で役に立つつもりだよ」

マークス「なるほどな。しかし、結局教えてくれるわけではないという事か」

リンカ「勝手にそう思っててくれ。前から言ってるが、あたしが教える事なんて何もないんだからさ」

マークス「ふっ」

リンカ「ふふっ」

マークス「ではいくぞ、リンカ!」ダッ

リンカ「来い、マークス!」ダッ

【マークス×リンカの支援がAになりました】
7 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/19(月) 23:56:08.15 ID:ElIf3Cc30
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・エリーゼの屋敷『エリーゼの部屋』―

カザハナ「エリーゼ王女」

エリーゼ「あ、カザハナだ! どうしたの、あたしのところに来るなんて」

カザハナ「えへへ、今日はエリーゼにいいもの持ってきたんだよ」

エリーゼ「いいもの?」

カザハナ「じゃじゃーん!」

エリーゼ「わー、すごい! これって花で作ったティアラだよね! あれ、でもこの花って……」

カザハナ「うん、エリーゼっていうんだよね。サクラ様の名前を聞いて花のことを言ってたから、エリーゼ王女と同じ名前の花があるんじゃないかなって思って調べて作ったんだ」

エリーゼ「そうなんだ……。だけど、桜と比べてちっちゃかったでしょ?」

カザハナ「うん。だけどとっても可憐でエリーゼ王女にぴったりな花だって思ったよ」

エリーゼ「え……」

カザハナ「エリーゼ王女は名前と同じこの花の事が嫌いなのかもしれないけど、その勿体ないって思うんだ。こんなに可憐で白くて綺麗なのに勿体ないよ。どうして、エリーゼ王女がこの花を嫌ってるのか、あたしわからないもん」

エリーゼ「えっと、別に嫌いってわけじゃないよ」

カザハナ「え?」

エリーゼ「その……、エリーゼって小さい花だから幼いイメージが強くて……。あたし本当はカミラおねえちゃんとかカムイおねえちゃんみたいな大人の女の人になりたいって思ってるの。だから、大きくて綺麗な名前の花に憧れみたいなのを持ってるんだ」

カザハナ「エリーゼ王女……」

エリーゼ「だから、別にそのお花の事が嫌いなわけじゃないの。ごめんね、変な勘違いさせちゃったみたいで……」

カザハナ「そっか、ならよかった。えへへ、あたしって結構早とちりしちゃうから。でも、だったらこのティアラを付けて少し大人の女になっちゃおう! あたしが作ったんだから、これを付けるだけでぐーんと大人っぽく見えるはずだよ」

エリーゼ「それじゃ、カザハナ。そのティアラあたしにつけてほしい」

カザハナ「いいわよ。それじゃ、失礼するわね」」

エリーゼ「よ、よろしくお願いします」

カザハナ「よし、これでいいかな?」

エリーゼ「え、えっと、どうかな?」

カザハナ「うん、とっても可愛いよ、エリーゼ王女」

エリーゼ「もう……、そこは大人っぽいっていってほしかったよー」

カザハナ「あ、ごめん……。つい、思ったことが口から出ちゃって……。えっと、とってもきれいだよ」

エリーゼ「ふふっ、ありがとうカザハナ」

カザハナ「どういたしまして、エリーゼ王女」

【カザハナとエリーゼの支援がAになりました】
8 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/19(月) 23:58:24.39 ID:ElIf3Cc30
今日はスレ立てと支援だけで

 リンカとマークスは斬り合いをしているうちに絆が生まれる気がする。
 
 カザハナとエリーゼは、花を通じての絆があるかなって思った。それとエリーゼ誕生日おめでとう。プレゼントは素朴なカチーフやで
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 12:49:12.20 ID:ntBvORADO
リンカがマークスに重い一撃を与えるには、どれだけ神成長ひけばいいのだ…
10 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 20:57:22.59 ID:zc9sdbSh0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都へと続く街道『野営地・カムイの天幕』―

カムイ「今は何処くらいなんでしょうか?」

アクア「白夜王都まであと二日ほどというところね。こう大人数でなければ、一日もあればたどり着けるとは思うけど……」

カムイ「そうなんですね。でも、このような形で白夜王都に戻ることになるとは思ってもいませんでした」

アクア「そうね。あの日、強行派の人々に囚われて暗夜に送られた時、もう戻れないと覚悟していたのに、それが覆るなんて思ってもいなかったから」

カムイ「すみません、アクアさん。本当なら戦争が終わった白夜にもどってこられるはずだったのに、こんな形で白夜に戻ることになってしまって」

アクア「カムイが謝る事じゃないわ。それにそうやって弱気な考えをする癖は直しなさい。始まる前から気持ちで負けているなんて、話にもならないでしょう?」

カムイ「アクアさんには何でも御見通しなんですね」

アクア「何でもじゃないわ。感じたことをただ口にしているだけだもの、だけどそれをカムイがそうだと感じたなら、少しは見通せているということかもしれないわね」

カムイ「運命共同体だからですか?」

アクア「一蓮托生だからかもしれないわ」

カムイ「……」

アクア「……」

カムイ&アクア『ふふっ』
11 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 21:11:54.97 ID:zc9sdbSh0
アクア「私は自分の天幕に戻ることにするわ、風邪を引かないようにね」

カムイ「はい、アクアさんも。白夜も今は寒い時期のようですから、十分に暖かくしてください」

アクア「ええ、それじゃね」バサッ

カムイ「……アクアさんには御見通しでしたか」

カムイ(気負けをしているのはわかっています。それがとてもよくないことだということも、少しでも前向きになろうとしてはいるのですが……)

???『お前の希望が絶望に変わって、王都で待っていることだろう』

カムイ(奴の言葉が頭から離れない。ヒノカさんを助けるためにしたことも、奴は簡単に絡め取っていった。私の願いを踏みにじるように……)

カムイ「……だめです。こんな風に考えたら奴の言いなりになっているようなものじゃないですか。あんなものを信じる必要なんてどこにもありません」

カムイ(少しだけ、体を動かせば、こんな気持ちも晴れるかもしれませんね)

カムイ「……きっと晴れますよね」チャキッ
 
 バサッ

 タタタタタッ

???「あれ……カムイ様?」
12 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 21:21:56.62 ID:zc9sdbSh0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―暗夜軍野営地『離れの草原』―

カムイ「はぁ! せやっ! たああっ!」ブンッ チャキッ バシュン

カムイ「はぁはぁ……。はぁはぁ……」

カムイ(何なんでしょうか、このモヤモヤした思考は……それを考えないようにしているのに。どうして、こんなにも奴の言葉が頭を巡るんですか……)

カムイ「もうすこし、続ければ――」

???「そんなんじゃ、いくらやってもやっても意味ないわ」

カムイ「え……?」クルッ

 ザッザッ

ルーナ「力みすぎてて、しかも我武者羅に振り回してるだけ。そんなの稽古にだってならないわよ」

カムイ「え、ルーナさん、どうしたんですか?」

ルーナ「どうしたんですか、じゃないわ。ちょっとあんたに用事があって天幕に向かったら、どこかに行っちゃうし。誰も護衛付けてなかったから、少し心配になって後を追ってきたってわけ」

カムイ「そうだったんですか。でも大丈夫ですよ、ここ周辺に敵はいませんから」

ルーナ「大丈夫になんて見えないって言ってるの! 気づいてないかもしれないけど、あんたかなりひどい顔になってるんだから」

カムイ「……そんな顔をしていますか?」

ルーナ「してる、見てて心配になるくらいにはね……」
13 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 21:31:56.66 ID:zc9sdbSh0
カムイ「……そうですか」チャキンッ

カムイ「心配をかけてしまったみたいですね。すみません、ルーナさん」

ルーナ「まったく、あたしだけじゃなくてカミラ様だって見たら放っておかなかったわよ。あんな亡霊みたいな顔で剣なんて振るってたらさ」

カムイ「……亡霊みたい、でしたか?」

ルーナ「まぁね。っというわけでまずはその生気の抜けた顔を叩き直してあげるわ」

カムイ「叩き直す、ですか?」

ルーナ「ふふ、どうやって直すか知りたい? 知りたいでしょ?」

カムイ「いえ、別にルーナさんの手を煩わせるわけにはいきませんから」

ルーナ「そこは食いつきなさいよ。言い出したあたしが空しくなるじゃないの」

カムイ「ごめんなさい。えっと、何をしてくれるんですか?」

ルーナ「はぁ、最初からそう言ってくれたらよかったのに。まぁいいわ、ちょっとあたしの天幕まで来なさい」

カムイ「えっと、天幕でないといけないんですか?」

ルーナ「当たり前でしょ。だってこれから温まりに行くんだから」

カムイ「え?」
14 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 21:45:27.55 ID:zc9sdbSh0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 コポコポコポ……

ルーナ「はい、カムイ様」

カムイ「なるほど、紅茶ですか。これは確かに体が温まりますね」

ルーナ「思ったより白夜王都の周辺が寒かったから」

カムイ「そうなんですね。はぁ、カップがとても暖かいですね。それじゃ、いただきますね」ズズッ

ルーナ「え、っと、どう?」

カムイ「んっ、おいしいです。ふふ、体の芯から温まるっていうのはこういう事をいうんですね」

ルーナ「ふふん、あたしが勝った茶葉だから効き目がいいのは当然ね」

カムイ「ありがとうございます、ルーナさん。そう言えば、私に用事があるという話でしたけど……」

ルーナ「あ、そ、それね。えっと、わ、忘れたわ」

カムイ「え、忘れたって……」

ルーナ「い、いいでしょ。本当に忘れちゃったんだから! ほら、一人で長椅子占拠してないで、ちょっと詰めなさいよ」

カムイ「急かさないでください、今開けますから……。これでいいですか」

ルーナ「う、うん。それじゃ……」ギシッ

 ピトッ

カムイ「? ルーナさん」

ルーナ「か、勘違いしないでよ。天幕の中で紅茶も飲んでるけど、まだカムイ様が寒そうにしてるって思ったから、身を寄せてるだけなんだから。へ、へんなこと考えるんじゃないわよ」

カムイ「は、はい」
15 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 21:53:29.89 ID:zc9sdbSh0
カムイ「……ルーナさん」

ルーナ「な、なによ」

カムイ「ありがとうございます」

ルーナ「べ、別にお礼を言われるようなことじゃないし、それに紅茶はあたしが準備してただけだし…」

カムイ「そうだったんですか、すみません。ルーナさんが楽しむ分を一杯分頂いてしまって」

ルーナ「いや、元々カムイ様を誘って飲む予定だったから、結果的には……あ」

カムイ「もしかして、先の予定というのは?」

ルーナ「……そうよ、そういうことよ! な、何か文句ある!?」

カムイ「いきなり怒らないでください。文句なんてあるわけないじゃないですか」

ルーナ「そ、そう……。なら、何も言わずに飲んで温まればいいのよ」ズズッ

カムイ「……はい」ズズッ

 カチャンッ

ルーナ「で、何を考えてたわけ?」

カムイ「何をというのは?」

ルーナ「ここは誤魔化すところじゃないと思うんだけど」

カムイ「すみません……」

ルーナ「まったく、それで、何があったの?」

カムイ「……奴の言葉が頭から離れないんです。そうなるかはわかるわけもないのに、それを心のどこかで恐れつつも、避けられないものだと思っている自分がいて……。白夜王都に近づいているからかもしれませんね。どんどん、色濃く私の中に刻まれていくかのように……」

ルーナ「……」
16 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:01:45.32 ID:zc9sdbSh0
カムイ「アクアさんに言われました。戦いが始まる前から気負けしていては話にもならないって。その通りなのはわかっているんです。でも、漠然とした不安が心にはあって、それを拭えたらと思って剣を振っていたんです」

ルーナ「……そんな漠然とした不安なんて誰でも持ってるものよ。カムイ様だけが悩んでる事じゃないわ」

カムイ「でも、私がそれでは皆さんに迷惑が――」

ルーナ「はぁ、馬鹿ね。そういう風に悩んでるカムイ様だから、あたしたちは付いて行ってるの」

カムイ「え?」

ルーナ「どんなにすごい奴がいてもそこに人間味が無かったら、本当の意味で信頼されたりしない。あんたには純粋な強さもあるけど、それ以上に人間味があるるのよ。そういう、不安に思ったり悩んだりっていう人間らしさがね」

カムイ「……ルーナさんにもそういった不安や悩みはあるんですか?」

ルーナ「一番のあたしにそんなもの……あるに決まってるでしょ。これでも母さんとのことで色々悩んだりもしてきたし、今だって……」スッ

 ギュッ

ルーナ「悩んでるカムイ様にどんな言葉を掛けるべきなのかとか、これを言ったら嫌われるかもしれないとか。そういう不安で今にも押し潰されそうなんだから……」

カムイ「ルーナさん」

ルーナ「あたしもアクア様みたいに、カムイ様が考えてることを少しでもわかるようになれば……、こんな不安を抱えなくても良くなるのかな……」

カムイ「………」

ルーナ「……カムイ様?」

カムイ「……ふふっ」

ルーナ「?」
17 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:03:53.19 ID:zc9sdbSh0
カムイ「ふふっ、うふふっ」

ルーナ「ちょ、何!? なんで笑うわけ? ここ笑うところじゃないんだけど!?」

カムイ「いいえ、ごめんなさい。もしかして、アクアさんに対してルーナさんがヤキモチを妬いているのかもしれないって思ってしまったら、なんだかおかしくなってしまって」

ルーナ「べ、別に妬いてないし! ああもう、なんで最後の最後でこうなっちゃうわけ!? 信じられないんだけど!」

カムイ「え、えっと、ルーナさん?」

ルーナ「はぁ、まぁいいわ。……それよりもさ」

カムイ「?」

ルーナ「その、どう、落ち着いた?」

カムイ「……はい。ルーナさんのおかげで、今は大丈夫になりました」

ルーナ「そっか、よかった。これで何も変わってないって言われたら、さすがにへこむわよ」

カムイ「思ったよりも効果はありましたよ、ルーナさん」

ルーナ「なによその言い方。まさか、あたしのサービスがこれだけだと思ってるんじゃないでしょうね?」

カムイ「え、まだあるんですか?」

ルーナ「ふ、ふん、見てなさいよ。今とっておきのサービスをしてあげるんだから!」パッ パッ

カムイ(なにやら膝上を手で払っているようですが。いったい何をするつもりなんでしょうか……)
18 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:05:06.91 ID:zc9sdbSh0
ルーナ「よ、よし。か、カムイ様」

カムイ「はい、何でしょう?」

ルーナ「ここ、ここに頭を乗せなさい」

カムイ「……?」

ルーナ「……」

カムイ「えっと、ルーナさん?」

ルーナ「……は、早く乗せなさいよ。あ、あたしが膝枕をしてあげるって言ってるんだから」

カムイ「え、ええ……。それじゃ失礼して……」ポフッ

ルーナ「なんで頭を内側にしてんのよ!? 普通逆でしょ逆!」

カムイ「私はこれでも構いません。ルーナさんをとても強く感じられますから、むしろこの方が――」

ルーナ「感じないでよ! あああもう、それは禁止、さっさと反転しなさい!///////」

カムイ「サービスはどうしたんですか? って、痛い、叩かないでください」

ルーナ「うるさいうるさーい///////」ポカポカッ
19 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:10:44.04 ID:zc9sdbSh0
カムイ「これでいいですか?」

ルーナ「そう、これでいいの。次に同じことしたらただじゃ済まさないから//////」

カムイ「はい、肝に銘じておきます。はぁ、このサービスすごくいいです。それにルーナさんの膝上、とっても暖かくて柔らかいです」サワサワッ

ルーナ「ちょ、手で膝を触らないでよ。くすぐったいでしょ//////」

カムイ「枕の感触って確かめたくなるものじゃないですか。それが膝枕だったらなおさらのことです」

ルーナ「そうやって開き直るのはどうかと思うけど。まぁいいわ。とりあえず、このままでいなさいよ」スッ

 ナデナデ

カムイ「んっ……はぁ……」

ルーナ「……えっと、気持ちいい?」

カムイ「はい……。ん、ふああああっ。ごめんなさい、はしたなかったですね」

ルーナ「大きな欠伸ね、もしかしたら素振りの疲れが出てきたのかも。疲れてるなら、このまま少し休んでもいいけど?」

カムイ「でも、今寝たら朝になってしまうかもしれませんよ? そうなったらルーナさんが寝られないかもしれません」

ルーナ「大丈夫、あたしの心配なんていいから。今はカムイ様のことが最優先よ。それに、今のあたしに出来ることはこれくらいなんだから」

カムイ「……なら、お言葉に甘えてもいいですか?」

ルーナ「さっきからそう言ってるでしょ。つべこべ言わずに、ゆっくり眠りなさい」

カムイ「はい、ルーナさん。少し休ませてもらいますね……」

カムイ「………」

カムイ「……すぅ……すぅ……」

ルーナ「すぐ寝ちゃった。まったく、悩みなんて抱えてないみたいに眠っちゃってさ……」

 ギュウッ

ルーナ「カムイ様。あたしのこともいっぱい頼っていいんだからね。アクア様みたいに的確ってわけじゃないけど、少しくらいなら力にだってなれるし」

「こうやって、一緒にいることだってできるんだから……」
20 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:14:05.15 ID:zc9sdbSh0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
21 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:14:39.01 ID:zc9sdbSh0
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822]
22 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:15:25.01 ID:zc9sdbSh0
仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
23 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:23:43.94 ID:zc9sdbSh0
今日はここまで

 ルーナが思ったより乙女チックになっている気がした……

 前スレの最後にあったレオン抜けの指摘、確認して頭を抱えました。今度は気を付けていこうと思います。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外)

 ジョーカー
 フェリシア
 マークス
 ピエリ
 ゼロ
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 モズメ
 リンカ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>25

◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>26>>27

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)

 次に続きます。
24 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/25(日) 22:25:04.19 ID:zc9sdbSh0
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ

 この中から一つ>>28

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド
・ルーナ×カザハナ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ

 この中から一つ>>29

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 22:36:13.90 ID:NtNLKqBPo
フェリシア
はわはわしてもいいのか!?
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 22:54:17.53 ID:2nIUIbXko
シャーロッテ
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 23:37:11.47 ID:md5nxVEU0
サクラ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 00:06:11.26 ID:wrdy7ybY0
・ブノワ×フローラ
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 06:07:38.44 ID:Pzt684zWo
ルーナ×カザハナ
30 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/29(木) 20:45:10.86 ID:ngJ3nq3R0
◆◇◆◇◆◇
―星界・食堂―

サクラ「あれ、こんな時間に食堂の明かりがついています。誰かが消し忘れたんでしょうか?」

シャーロッテ「あれぇ、サクラ様じゃないですか。こんな時間にどうしたんですか?」

サクラ「あ、シャーロッテさん。いえ、明かりがついていてもうこんな時間なので誰かが火を消し忘れてしまったのかと思ってしまって、すみません作業の邪魔をしてしまって」

シャーロッテ「別に気にしてなんてないから。あー、でも来てくれて丁度よかったかもしれない」

サクラ「?」

シャーロッテ「実は今新しいメニューに取り掛かっててね」

サクラ「そうなんですか。シャーロッテさんの作るお弁当って見た目もいいですし、なによりおいしいって皆さん言ってます」

シャーロッテ「当たり前よ。愛敬と胃袋のダブルコンボで好印象を与えないといけないんだから」

サクラ「シャーロッテさんは本当にすごいです。私と話している時とまるで別人に思えますから」

シャーロッテ「うーん、褒められてるのかわからないけど、ありがと」

サクラ「それで、丁度よかったっていうのはどういう事でしょうか?」

シャーロッテ「ああ、それはこれの事なんだけど」

サクラ「わー、おいしそうなケーキですね。シャーロッテさんが作ったんですか?」

シャーロッテ「ええ、私に掛かればこんなの朝飯前だけど、まだ何かが足りない気がしてね」

サクラ「そうでしょうか? きちんとクリームも濡れていますし、果物の飾りつけも綺麗ですけど、味は……」

シャーロッテ「流石に見て分からないから食べてみて」

サクラ「え、いいんですか?」

シャーロッテ「もちろん、丁度よかったっていうのはそう言う意味、ねぇサクラ様、この新しいデザートなんだけど手伝ってくれない?」

サクラ「て、手伝いですか?」

シャーロッテ「そう、サクラ様には試作品を食べてもらって評価を出してほしいの。何が足りないのか、ちょっとわからなくて手詰まりになっててさ」

サクラ「私なんかで大丈夫でしょうか。その甘いものは好きですけど……」

シャーロッテ「好きなら問題ないって。で、受けてくれる?」

サクラ「わ、わかりました。その、出来る限り頑張ってみます!」

シャーロッテ「それじゃ、早速これをお願いね」

サクラ「は、はい。あむっ、ん〜♪」

【シャーロッテとサクラの支援がCになりました】
31 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/29(木) 20:49:40.30 ID:ngJ3nq3R0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞―

ブノワ「フローラ、少しいいか…?」

フローラ「あれ、ブノワさん。もしかして遊びにいらしたんですか?」

ブノワ「いや、遊びに来たわけじゃない…。少し渡したいものがあった…」

フローラ「カムイ様にでしょうか?」

ブノワ「いや、フローラにだ…。これを…」

フローラ「……これはお守り? 見た所、手製のようですが。もしかしてブノワさんが作られたんですか?」

ブノワ「ああ……」

フローラ「ふふ、見た目に似合わず器用なことをされるんですね。とても効果がありそうです。ありがとうございます、ブノワさん」

ブノワ「フローラは……」

フローラ「?」

ブノワ「それほど薄情な人間じゃないと思う…。こうやって、俺が持ってきたお守りをちゃんと受け取ってくれる…。なによりも、こうやってお礼も言ってくれた…」

フローラ「……ふふっ、ブノワさんは単純な方なんですね」

ブノワ「そうかもしれない…。でも、俺がフローラを優しい人と思っていることは間違いないことだと思っている…」

フローラ「……こんなに面と向かって言われたのは初めてのことかもしれませんね。ふふっ、優しいという意味ではブノワさんの方がお優しいでしょう。私の言葉に目くじらを立てることもありませんでしたし」

ブノワ「馴れているからな…」

フローラ「熊を脅すことがですか?」

ブノワ「それは誤解だ…」

フローラ「冗談です。でも、こうしてお礼を言われて贈り物を頂けるのは、素直にうれしいことですね」

ブノワ「お前が喜んでくれるなら、俺は嬉しい…///」

フローラ「ふふ、少し赤くなって可愛らしい方ですね、ブノワさんは」

ブノワ「う……。それじゃ、渡すものは渡した…もう戻ることにする…」

フローラ「いいえ、そうはいきません。贈り物だけを受け取るだけでは、私が納得しません。まぁ、ブノワさんが本当に帰りたいのでしたら止めはしませんけど。もしかして、これから他に予定があるのですか?」

ブノワ「特に用事は無い…」

フローラ「でしたら、この前の約束通りおいしい紅茶を振舞わせてください。お守りを頂いた私からのお礼です」

ブノワ「ああ…。ふっ、互いに礼に礼をしてばかりだな…」

フローラ「そうですね。でも、こういった交流も悪くないと思いますよ」

ブノワ「そうだな…」

フローラ「ふふっ」

ブノワ「ふっ」

【ブノワとフローラの支援がAになりました】
32 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/29(木) 20:53:42.31 ID:ngJ3nq3R0
◆◇◆◇◆◇
―白夜・イズモ公国『宿場』―

カザハナ「はぁ、結局、ルーナ浴衣着てくれなかった」

ルーナ「言ったでしょ、あたしの浴衣姿は安くないって。それに、なにか催し物考えて来なさいって言ったでしょ。何もないのに着る気はないわよ」

カザハナ「それはそうだけどさ。ほら、今そういう事行うのって、ちょっと違う気がして」

ルーナ「まぁ、それもそうよね。なんだかんだ戦争中なわけだし……。気が抜けてるって皆から怒られそう」

カザハナ「うん、だからさ。この戦争が終わって色々と落ち着いたら、一緒にお祭りに行かない?」

ルーナ「お祭り?」

カザハナ「うん、やっぱり浴衣って言ったらお祭りだもん。白夜でもね、季節によって行われてたからさ。きっと、落ち着いたら再開するはずだし…」

ルーナ「そう……。いつ再開するかはわからないのよね」

カザハナ「まぁね。でも、いつかはきっと再開するから、その時になったら一緒にお祭りに行こうよ。お祭りなら浴衣、浴衣と言えばお祭りなんだからね」

ルーナ「……そうね。楽しみにしてるわ。だけど、あたしの横を一緒に歩くんなら、そこら辺に叩き売りされてるような浴衣じゃ許さないから。カザハナにとっての一番の奴着てきなさいよ。それが最終条件なんだから」

カザハナ「うっ、そう来たか…。あたし、あんまり浴衣とか持ってないんだけど」

ルーナ「はぁ、なにそれ。あたしの拝んでおきながら、その返答は許されないわよ」

カザハナ「わ、わかったよ。その約束の日までにルーナが驚いちゃうような、すっごい浴衣を準備してみせる」

ルーナ「ふん、言ったわね。まぁ、驚かないで終わっちゃう気もするけど。あんまり期待しないで待っててあげるわ」

カザハナ「そこは期待して待っててよ」

ルーナ「分かったわよ。期待しておいてあげる。もっとも、あたしが一番なのは変わらないけどね」

カザハナ「ふーんだ。それが勘違いだってこと、思い知らせてあげるからね」

ルーナ「ふふっ」

カザハナ「えへへ」

【ルーナとカザハナの支援がAになりました】
33 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/29(木) 20:56:21.26 ID:ngJ3nq3R0
今日は支援だけで

 サクラの夜食タイムが捗っていく。
34 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 20:28:39.69 ID:EV0ughmG0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国東部・王都へと続く街道『野営地・カムイの天幕』―

カムイ「ん……。ううっ……」ガサゴソッ

カムイ「もう朝のようですね。昨日、ルーナさんの天幕で少し眠ってしまったというのに、存外眠りに着くのは早かった気がしますね」

カムイ(……ルーナさんに慰めてもらったおかげかもしれません。迷うことは人として何の間違いもないですか……)

カムイ「はぁ、参りましたね。こんなに皆さんにおんぶにだっこされているだけでは、示しがつきませんよね」ガタッ

カムイ(とりあえず、状況を確認しましょうか。まだ外が騒がしくないところを見ると、まだ時間はあるみたいですし……)

 タッタッタッ
 バサッ

フェリシア「カムイ様―、お目覚めですかー?」

カムイ「わっ!?」

フェリシア「はわわわ! あ、きゃー」ドタンッ
 
 バサァッ

カムイ「ご、ごめんなさいフェリシアさん。入ってくるのに気づかなくて」

フェリシア「い、いいえ。私の方こそ、カムイ様が外に出られるのに気づけませんでした。ごめんなさい」

カムイ「怪我などはしていませんか?」

フェリシア「はい、大丈夫です……、あ、ああー!!!」

カムイ「え、どうしたんですか?」

フェリシア「うう、カムイ様の着替えが地面に落ちてしまいました……」
35 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 20:43:34.46 ID:EV0ughmG0
フェリシア「うう、せっかく準備したのに……、ごめんなさいカムイ様」

カムイ「いいんですよ。ふふっ、なんだかフェリシアさんがこうして何か失敗しているところを見るのは、何だか久しぶりな気がします。なんだか城塞に戻ったような気持になります」

フェリシア「カムイ様、その言い方は酷いですよぉ。事実かもしれませんけど……」

カムイ「ふふっ、冗談ですよ。その服を改めて洗う必要はありません。このまま袖は通せますから」

フェリシア「え、でも……」

カムイ「フェリシアさんが私に準備してくれただけでもうれしいですし、今回の件は私にも落ち度がありましたから、フェリシアさんだけの責任ということはありませんよ。ですから、フェリシアさんに問題はありません」

フェリシア「わかりました。はぁ、カムイ様に気を使ってもらって、私はやっぱり駄目メイドです」

カムイ「そんなことありませんよ。フェリシアさんはちゃんとメイドとして、仕事をこなせていますよ」

フェリシア「ほ、本当ですか?」

カムイ「ええ。こうやって私に服を届けに朝早く来てくれていますし、それだけでも十分、私の役に立てています」

フェリシア「えへへ。そう言ってもらえると、とっても嬉しいです」

カムイ「ふふっ。フェリシアさんが城塞に来た当初に比べれば主らしくなったと思いますけど、まだまだ十分とは言えない状態ですから」

フェリシア「そんなことありませんよぉ。カムイ様は、もう立派な私のご主人様ですよぉ」

カムイ「だといいんですが……」
36 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 21:14:04.78 ID:EV0ughmG0
フェリシア「カムイ様?」

カムイ「私はここに来てようやく動き始めたばかりの人間です。今までは無関心にただ生きてきただけで、自分にも無関心で命のやり取りをする意味も、日々を過ごす意味も理解していなかった。何にも意味を見出すつもりなんてなかったんだと思います」

フェリシア「でもでも、カムイ様は皆さんのために一生懸命頑張ってます。私、ちゃんと見てるんですから!」

カムイ「フェリシアさん?」

フェリシア「ここに来てようやくなんてうのは嘘です。だって、最初に私が触れたカムイ様は私よりも小さくて、私よりも怯えてて震えていたんですから」

カムイ「あの頃は自分がなにをすればいいのか、どうすればいいのかわからなかったからで……」

フェリシア「でも、段々と私とお話しできるようになって、姉さんとも話ができるようになっていきました。それって成長してるって思うんです。どんなに些細な事でも、それがカムイ様の力になっているなら、それは成長しているんだって私は思います」

カムイ「成長ですか……」

フェリシア「はい、その成長に私も少しだけ力添えできたらなって、いつも思っているんです。あの日、カムイ様の手を握ってあげた時みたいに、カムイ様を支える力になれたらって……」

カムイ「フェリシアさん……」

37 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 21:27:53.01 ID:EV0ughmG0
フェリシア「でも、今日はカムイ様の気配に気づけませんでしたし、服は落としてしまいましたから、全然役に立ててませんよね……。全然支えられてないですよね……」

カムイ「うーん、それだけじゃありませんよ」

フェリシア「えええーーー!? まだ何かありましたか?」

カムイ「はい、こうやって私の話を聞いてくれたこと。そして、私を元気付けてくれたことを忘れていますよ」

フェリシア「……え?」

カムイ「ふふっ。フェリシアさんは私のことを一生懸命支えてくれています。だから、そんなに自分の事を卑下に扱わないでください。私は、いつも元気でこうやって支えてくれるあなたの事を頼りにしているんですから」

フェリシア「カムイ様……ありがとうございます」

カムイ「お礼を言うのはこちらの方ですよ。朝からこんな話に付き合わせてしまったんですから」

フェリシア「いいえ、カムイ様のお役に立ててうれしかったです。また、何かお話しがあったら私にしてくださいね。いっぱい力になりますから!」

カムイ「ふふっ」

フェリエシア「えへへ」
38 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 21:41:48.91 ID:EV0ughmG0
カムイ「そう言えば、他の皆さんは?」

フェリシア「まだ、多くの方は休まれてます。マークス様とレオン様は偵察から戻って来たゼロさんの報告を受けてます。もう、終わった頃だと思います」

カムイ「そうですか。私はそちらに向かいますので」

フェリシア「はい、わかりました。寝具は私が片づけますから、気にしないでいってらっしゃいませ、カムイ様」

カムイ「ありがとうございます、フェリシアさん」タタタタッ

 バサッ バサッ

フェリシア「……私の事を頼りにしてるって、カムイ様に言われてしまいました……」

 ソワソワ

フェリシア「はわわっ。とっても嬉しくて、なんだかとってもいっぱい動ける気がしてきました!」

 フンスッ

フェリシア「今日の私は一味違いますよ〜。まずはカムイ様がお休みになられてたこの寝具を片付けちゃいますよ〜」

 ガサゴソ ガサゴソッ

フェリシア「……んー」ギューーーッ

フェリシア(えへへ、カムイ様。まだまだ、私頑張りますからね)

フェリシア「よーし、これをもって……」

 ツルッ

フェリシア「あ、きゃああああああー!」ドンガラガッシャンッ!
39 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 21:54:52.54 ID:EV0ughmG0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―『野営地・作戦会議天幕』―

ゼロ「以上です」

レオン「それは本当なのかい、ゼロ?」

ゼロ「はい、先に王都周辺までたどり着いた部隊の情報ではありますが。このような話を聞き間違えるわけはないかと」

レオン「奴ら正気なのか。連中はそれがどういう意味かも分かっていないっていうのか?」

マークス「レオン、落ち着け。それで王都周辺の様子はどうなのだ?」

ゼロ「はい、特にこれといった戦線が作り上げられる様子は無いようで。おそらく、王都内部での決戦を目論んでいるのかと……。多くの民が王都に向かっていることから、何かしらの策を講じているのは間違いないと思われます」

マークス「そうか、わかった。幾ばくか休息を取れ、この先も長い行軍が続くだろう。それに、お前たちには動いてもらう必要があるからな」

ゼロ「分かりました。失礼します」シュッ

マークス「しかし、厄介なことになった。よもや、敵が本当にこのような決断をするとは……」

レオン「そうだね。正直、僕もこれは予想してなかったよ。だって、こんなの内部分裂の要因にしかならないじゃないか」

マークス「ともかくだ、この件を早くカムイに伝えなければ……」

 タタタタタッ

 バサッ バサンッ

カムイ「あ、マークス兄さん。レオンさんおはようございます。ゼロさんから報告を受けているという話でしたが、もう終わってしまったんでしょうか?」

レオン「カムイ姉さん……」

マークス「カムイ……」
40 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 22:09:39.09 ID:EV0ughmG0
カムイ「……あまりいい話では無かったようですね」

マークス「ああ、想定していた中でも最悪の部類に入るかもしれない」

カムイ「最悪ですか?」

レオン「うん、少しだけだけど、いい事もある。だけど……」

カムイ「……覚悟はできています。話してもらえますか?」

マークス「そうだな。お前にはすぐに伝えなくてはいけないと思っていたことだ」

レオン「そうだね。カムイ姉さんには伝えなくちゃいけないことだろうからさ」

カムイ「はい、それで何が分かったんですか?」

マークス「それは……」

カムイ「マークス兄さん?」

マークス「……ヒノカ王女は生きていると思われる」

カムイ「本当ですか!?」

レオン「どうにかしてスサノオ長城から王都まで逃げ延びたみたいだ。ゼロが持ち帰った報告を聞く限り、その可能性が高い」

カムイ「よかった、ヒノカさんは生きているんですね……。ちゃんと、生きて王都にたどり着けたんですね……」

カムイ(ヒノカさんは生きている可能性が高い、そうゼロさんの報告から……)

カムイ「……」

カムイ(……報告から?)

カムイ「レオンさん……今、ゼロさんからの報告を聞く限りといっていましたけど、それは一体どういう意味なんですか?」
41 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 22:28:16.14 ID:EV0ughmG0
レオン「……そのままの意味だよ。王都に到達した偵察隊はヒノカ王女の姿は見ていない」

マークス「さすがに内部に入り込むことはできない。ただ、ヒノカ王女が生きていること推測できる情報を手に入れた。それがゼロの報告した内容になる」

カムイ(どういうことですか。姿が見えないのに生きている可能性が分かる情報、確実性がある情報、そんなものは……)

カムイ「……まさか」

マークス「そういうことだ、カムイ」

レオン「正直、何かの間違いだと思いたいけど。この内容を聞き間違えるなんて正直思えない。おそらくだけど……」

カムイ「……ゼロさんからの報告された内容は、一体何だったんですか?」

マークス「……ゼロから報告があったのは、白夜周辺の敵陣地に関する情報、そして移動する民の情報、そして……数日以内に行われる予定のある人物の処刑に関する情報だ……。」

カムイ(……こんなに言われても、どこかで否定したい私がいる。でも、それを否定したところで今から聞かされる話が変わることは無いと、どこかで理解している私もいた)

レオン「カムイ姉さん……」

カムイ(わかっています。レオンさんだって信じたくないでしょう、マークス兄さんだって同じはずです。だから、私がその現実から目を逸らすわけにはいきません。だって、それが私の戦う現実なんですから)

カムイ「マークス兄さん、レオンさん。ヒノカさんなんですよね……」

「その……処刑される事になっている人が……」
42 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 22:29:39.74 ID:EV0ughmG0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+→B++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
43 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 22:32:21.27 ID:EV0ughmG0
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822]
44 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 22:33:05.93 ID:EV0ughmG0
仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]←NEW
45 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/03/30(金) 22:39:50.02 ID:EV0ughmG0
今日はここまで

 絶望がカムイの願いを崩していく……

 エコーズの資料集発売されたけど、ifの資料集はいつ出るのか……
 
 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ

 この中から一つ>>46

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ

 この中から一つ>>47

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 22:47:55.47 ID:uV0qIlgUo
レオンエルフィ
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 22:49:20.81 ID:VSUVzbAzo
おつ
ルーナ×フローラ
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 11:19:27.98 ID:OiR32OSDO
おつ
ifの資料集まだでてなかったのかよ!
49 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 20:07:22.73 ID:c1Iz3f1x0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・食堂―

エルフィ「もきゅもきゅ……」

レオン「相変わらずすごい量を食べるんだね」

エルフィ「ん、レオン様。はい、訓練の後はお腹がペコペコなので。やっぱり訓練の後に食べるご飯はとっても美味しいです」

レオン「ははっ、料理番もエルフィの豪快な食べっぷりはすごいって言っていたからね」

エルフィ「だって、すごくおいしいから……////」

レオン「? 珍しいね、エルフィがワインを飲むなんてさ」

エルフィ「ワイン?」

レオン「それのこと……。ん、よく見るとワインじゃないのか。ごめん、赤いからワインだと思った。それはなんだい?」

エルフィ「ああ、これはトマトです」

レオン「と、トマト? 作ったスープを冷やしたのかい?」

エルフィ「いいえ、ただトマトを引き絞って果汁を出しただけの物です」

レオン「豪快な使い方をするね……」

エルフィ「はい、暖かいスープもいいのですが、今日みたいにハフハフしている料理にはこの方がいいと思って」

レオン「なるほどね。ところでそれって美味しいのかい? 正直果肉もないからおいしいのかどうかわからないんだけど……」

エルフィ「はい、おいしいですよ。よかったら少し飲んでみますか?」

レオン「いいのかい?」

エルフィ「はい、まだこのポットに入ってますので」

レオン「それじゃ、いっぱいだけ……ごくごく。驚くくらいすっきりしてるね」

エルフィ「わたしが力いっぱい搾りあげました。汁の一滴も出ないくらいに」

レオン「元のトマトは干からびてそうだね」

エルフィ「残ったものには塩を振って、少し焼いて食べました。そっちもおいしかったです」

レオン「そうなのか。それにしても思った以上においしいくて驚いたよ……。最初教えたのは僕だったけど、この発想は無かった。エルフィはすごいな」

エルフィ「いいえ、レオン様にトマトを紹介されたから出来たものですから。こんなにおいしいものと巡り合わせてくれてありがとうございます、レオン様」

レオン「そう言ってもらえてうれしいよ。ありがとうエルフィ、その……僕にもこれを作ってくれるかな?」

エルフィ「はい、任せてください、レオン様」

レオン「ありがとう、よろしく頼むよ、エルフィ」

【レオンとエルフィの支援がAになりました】
50 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 20:22:46.11 ID:c1Iz3f1x0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『地下市場』―

ルーナ「なによ、フローラの奴。たしかに、あたしが我武者羅に物を買ったせいかもしれないけど……」

フローラ「ルーナさん、自覚があるのでしたら直したほうがいいと思いますよ。無駄なものを買うことはあまりいい趣向とは思えませんので」

ルーナ「って、フローラ!?」

フローラ「ごきげんよう、ルーナさん。先日の買い物の品々は食卓に並んでいるんでしょうか?」

ルーナ「うっ、開口一番に言ってくれるじゃないの」

フローラ「ふふっ、あれほどの量ですから、本当に使用しているのか気になってしまいます。職業病みたいなものですよ」

ルーナ「なによなによ。あたしが買ったものなんだから、どう扱おうが勝手でしょ」

フローラ「そうですね」

ルーナ「なら気にしないでよ」

フローラ「ですが、先日私がいなければご自宅へ物を持って帰れなかったのも事実でしょう? すこしお手を貸しただけではありますが、そうして送り届けたものがどう扱われているのか、気になるのも仕方ないことです。ルーナさんも手伝った結果がどういうものになったのか、気になる事は気になるでしょう?」

ルーナ「そ、それはそうかもしれないけど……」

フローラ「まぁ、大方浪費癖で買っているようですし、部屋の隅に置かれているのかもしれませんけど」

ルーナ「う、うるさいわね!」

フローラ「むしろ、部屋に置き場があるのかも怪しいところですね。ちゃんと整理整頓はしていますか?」

ルーナ「し、してるわよ」

フローラ「本当ですか?」

ルーナ「……うっ、もういっぱいいっぱいです」

フローラ「思った通りです。まったく、要らないものは捨てるか売るかした方がいいと思いますよ」

ルーナ「い、いつか使う日が来るかもしれないし。お皿だって、いきなり数百枚が一斉に割れることがあるかもしれないし、あたしはそれを予感してるの」

フローラ「はぁ、浪費癖に収集癖。困難な癖を二つお持ちなんですね」

ルーナ「ふんだ、フローラだっていつかお皿をいっぱい買っておけばよかった……、みたいに思う日が来るんだから」

フローラ「多分ありませんよ。それに必要最低限のスペアは確保してますのでご安心ください。あ、ここ特売みたいですね」

ルーナ「え、本当。これってすごくお得ね! おじさん、これちょうだい!」

フローラ「ルーナさん、今は置き場が無いんですよね?」

ルーナ「作ればいいだけでしょ。この特売は今しかやってないんだから、この機を逃すわけにはいかないでしょ!? あ、それもちょうだい!」

フローラ「買ってから考えるを地で行く人なんですね。ふふ、困った人です」

ルーナ「わ、笑わないでよ、もうっ……」

フローラ「ふふふっ」

『ルーナとフローラの支援がBになりました』
51 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 20:38:52.13 ID:c1Iz3f1x0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都へと続く街道『野営地・作戦天幕』―

サクラ「それは……本当なんですか、レオンさん」

レオン「ゼロからの情報だからね。どうしてこんなことを選択したのか、理解できないけど、現状ヒノカ王女は生きていて、先に起きたスサノオ長城での敗戦を理由に処刑されることになっているらしい」

マークス「恐らくは敗戦以外の理由もついて回るだろう。ヒノカ王女にここまで起きたすべての責任を押し付ける算段かもしれん。テンジン砦でリョウマ王子が提案していた和解の会合も、ヒノカ王女の指示であった言い出しかねない、そしてそれを煽って罠に嵌めたのが我々だという話になれば……」

カミラ「多くの人々がその発言に扇動されてしまえば、私たち暗夜に対しての全面的な戦闘は避けられないわ。言葉巧みに周辺の集落の人間を王都に集めているみたい」

エリーゼ「戦えない人たちに戦わせるってことだよね……。あの、マカラスの時みたいに」

アクア「ええ、私たち暗夜が白夜の人間すべてを虐殺しているという嘘で人々が狂気に駆られてしまえば、そうなってしまうわ」

カムイ「出来る事ならそれが浸透するよりも先に、王都にたどり着くことが出来ればいいのですが」

マークス「少数先鋭で向かえば可能だろう。しかし、わずかな数で挑むことは難しい。向こうはこちらの挑発に乗ることなく、王都での籠城戦に備えるはずだ。少数先鋭で忍び込むにしても、囮となる正面戦闘無しに攻略は不可能だろう」

レオン「もう少し行軍の速度を上げてみるけど、早くなっても半日程度だね。その間にヒノカ王女の処刑が始まってしまう可能性もある。こればっかりは向こうの動きが無いことを祈るしかない」
52 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 20:50:46.47 ID:c1Iz3f1x0
カムイ「歯痒いですね、ヒノカさんの処刑が行われないことを祈るしかないなんて……」

サクラ「王都に集まった民の方々も戦うつもりでいるんですよね……。出来れば戦いたくないとこちらが思っていたとしても……」

レオン「おそらくはね。僕たちに殺されるくらいなら……戦って死ぬことを選ぶ可能性は十分にある。もっとも、少なくない人々は戦いたくないと思ってくれているのかもしれないけど、おそらくは少数だから抑え込まれる。おそらく、もう白夜王都の準備は着々と進んでいるはずだ」

カミラ「現状では戦うしかないと、覚悟を決めるしかないわ」

カムイ「認めたくありませんが、それを前提に戦いに向かうしかないでしょう」

アクア「厳しい戦いになるわね。誰にとっても……」

マークス「ああ……」

カムイ「……ここで待っていても仕方ありません。王都へと急ぎましょう、可能性がわずかにでもあるなら急ぐ価値はあります」

マークス「ああ、よし、これより行軍を再開する!」

カムイ(……ですが、王都へはまだ最低でも一日は掛かる。正直、間に合うとは思えません。多くの方々が、自身を守るために戦うことを選んでしまうはず。それを批判する権利は私にあるわけもありませんから……)タタタタタッ
53 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:01:53.77 ID:c1Iz3f1x0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・王都『中央広場』―

白夜の民「それに応じるつもりはない」

白夜兵「貴様ら、今何と言った!?」

白夜の民「言っただろう。わしらは応じるつもりはない、戦争するならあんたたちだけでやってくれと言っているんだ」

白夜兵「貴様らはスサノオ長城での一件を耳にしていないのか!? 多くの同胞が戦ったが、暗夜軍によって虐殺されたんだぞ?」

白夜兵「そうだ、やつらは無抵抗な兵も手に掛けた獣、いや化物だ。そんな者たちを相手に対抗しないで貴様らは死を待つというのか!?」

白夜兵「すでに兵を向かわせて戦線を作り上げている。お前たちが加われば――」

白夜の民「ここまでの道中で、お前さんのような兵士とすれ違ってなどおらん。唯一わしらの村の前に来たのは『暗夜の悪魔が迫っている、王都へ避難せよ』と伝えに来た使いだけだ。お前さんの言う、その兵というのはその使いの事か?」

白夜兵「っ!」

白夜兵「貴様、我々を愚弄する気か!? お前たちも国賊であるヒノカ王女と同じように処刑されたいのか!?」

白夜の民「ならば処刑するか?」

白夜兵「なっ!?」
54 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:13:00.04 ID:c1Iz3f1x0
白夜の民「いいとも、処刑するがいい。安心せい、ここにおるのは各村の代表ばかり、ここでわしらを殺したら待っている者たちには城の中に招いているとでも伝えておけ。どうせ、この戦いに身を投じるように話されることくらいわかっていた。まぁ、わしらも命惜しさに王都まで来たのは事実だ。暗夜に蹂躙されるかもしれない可能性を考えれば、こうして逃げてくることしかできなかった」

白夜兵「では、なおさら戦わなければ生き残れは――」

白夜の民「だがな、もうわしらは疲れた。戦う事にも、それに怯える事にも。あの日、言われるがまま暗夜に手を貸した裏切り者として多くの者を死地に追いやった。そんなわしらに生きる資格があるのか、あんたらは胸を張って堂々と資格があると言えるのかね?」

白夜兵「だ、黙れ! いいか、暗夜軍はいずれここにやってくる。それまでに各々の民に武器を持たせ、心構えを付けさせよ。我々が負けるわけにはいかないことを忘れるな!」タッタッタッ

白夜の民「……我々か、白夜とは口にせんのだな……」

白夜の民「おい、これからどうすればいいんだ?」

白夜の民「なに、もうなるようにしかならんさ。暗夜からやって来た連中が化物なのかどうかはさておき、今のわしらにはあまり意味のない事だよ。もう、王都正面の門は閉ざされておる。よもや出ていくにも出ていけん」

白夜の民「くっ、ここで死んでいくしかないっていうのか? 王都の備蓄だって、やって来た俺たちを養うにはとてもじゃないが足りないだろう。このままじゃ……」

白夜の民「……悲観しても仕方あるまい。今はそれぞれの場所に戻って、今の話を掻い摘んで話しておくとしよう。戦う意思がある者にはそれを尊重させる以外に手は無い。白夜はこれで終わりだろう……」
55 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:18:57.76 ID:c1Iz3f1x0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―シラサギ城『廊下』―

白夜兵「以上が報告になります」

上級武将B「わかりました。ユキムラ様には私たちから報告しておきますので、下がってください」

白夜兵「はっ!」

 タタタタタッ

上級武将B「ふむ、あまり感触は良くないということですか」

上級武将A「ど、どうなっているんだ? 多くの民は暗夜を恐れてここに集まったというのに、なぜ命を賭して戦うと決断せん!? このような数が戦力にならないのなら、ただただ物資を減らすだけではないか!?」

上級武将B「安心しなさい、どうせ戦う時が来れば死にたくないと武器を取りますよ。それにヒノカ王女の処刑の件、おそらく向こうの敵にも知れ渡っている事でしょうから、血相を変えてやってくることです。その姿を見れば生き残る事など不可能だと知り、武器を手に取ってくれる。それにあのカムイ王女と共にいる暗夜軍も、彼らとの戦闘は覚悟しているでしょうからね。彼らは乾燥した枯れ葉のような物、小さな火の粉であっという間に燃え広がることでしょう」

上級武将A「誰かが一人殺されれば、蜂の巣をつついたように皆攻撃に転じると?」

上級武将B「まぁそれが理想的です。もっとも、攻撃を避けるための盾くらいにはなってくれるはずですから、それで手打ちとしましょう」
56 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:24:45.28 ID:c1Iz3f1x0
上級武将A「それくらいの役に立ってもらわなくては困る。しかし、ヒノカ王女処刑の件がこれほど急速に広まるとはな」

上級武将B「ええ、思ったよりも鬱憤の溜まっている方々が多いようで。王族に仕える方々も減ってきている以上、不安に押しつぶされそうになればこうなります。おそらく、ユキムラ様も分かっていたことでしょうが」

上級武将A「ああ、しかし王族に仕えていた者たちに何かしら動きがあると思ったが、素直で落ち着いてやがる。思ったより忠儀などなかったのかもしれねえ」

上級武将B「まぁ、そんなものだということです。状況を見て旗色を変えるのは恥ずべき行為じゃありませんから」

上級武将A「しかし、あれをあのまま殺してしまうのはもったいないとは思わないか?」

上級武将B「おやおや、資源の有効活用をしたいと?」

上級武将A「どうせ殺すなら手の届かなかったものに手を触れたって罰は当たらないだろ? あれでも王女なんだ、それなりに愉しませてくれるはずだ。最後まで戦う俺たちに細やかな褒美があってもいいだろ?」

上級武将B「まったく、あなたは。まぁ、許されるなら触れておくのも悪くないでしょうねぇ。さぁ、ユキムラ様に報告に行きましょうか。残っている集落の人間は王都に到達したこと諸々を」タッタッタッ

 ………

 シュタッ

サイゾウ「……っ」ギリッ
57 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:29:45.24 ID:c1Iz3f1x0
サイゾウ「……ゲス共め、このような所でもお構いなしにそのような話をできるとはな」

サイゾウ(ここ数日の間に、多くの民がやってきたのはそう言う事だったか。しかし、思ったより戦意が上がっているわけではないようだ。いや、むしろ人数が増えるにつれてそれは明らかに下がっている。それもそうか、もうここにいる兵の数などたかが知れている。たとえ都が守られているとしても、テンジン砦にスサノオ長城を続いて落として来た敵が相手となれば、安心も何もあったものではないか……)

サイゾウ「……皮肉なものだ。多くの人々を死地に追いやり生き残った者たちが、今一番の地獄を見ているというのはな」

 カタンッ カタンッ

サイゾウ「む?」

カゲロウ「サイゾウ、ここにいたか」

サイゾウ「カゲロウか。無理して出てくることは無い、部屋で休んでいろ」

カゲロウ「部屋にいても息が詰まるばかりだ。それに今は何をしていても、心が安らぐこともない。すまないな、こういったことは私も手伝うべきことだというのに、もう走ることも叶わない。リョウマ様の臣下だというのに面目も何もあったものではない」

サイゾウ「いいや、リョウマ様はお前が生きて戻っただけでも十分に満足していた。俺たちは報われている、主からこんなにも身を案じてもらえているのだからな」

カゲロウ「そうだな。リョウマ様にはあのような窮屈な場所にいてもらいたくはないが、下手に事を動かすことはもうできなくなった。ヒノカ王女の暗殺の件は、思いのほか多くの者を慎重にさせてしまった……」
58 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:35:35.07 ID:c1Iz3f1x0
サイゾウ「カゲロウ、お前は今の状況をどう思う?」

カゲロウ「都全体に広がっている不安は収まる気配が無い。それに、あと数日もすれば王都での生活は立ち行かなくなるだろう。食料などの物資を考えると、王都へと逃げてきた民すべてを繋げるものではない、かといって食料の配給を制限し続ければいずれ反乱がおきる。……いや、暴動といったほうがいいかもしれないな」

サイゾウ「奴らもそれを気にしていた、ユキムラはこのことを理解していると思うか?」

カゲロウ「理解しているからこそ、リョウマ様の返答を待っていたんだろう。今回の一件はユキムラが始めたことではない様だ」

サイゾウ「やはりそうか……。ユキムラはヒノカ様を処刑するつもりはなかった。おそらく、リョウマ様がカムイ様を討つと言われるまで待つつもりだった。ここでヒノカ様の処刑を宣言したところで、士気が上がるわけもないからな」

カゲロウ「一部の者たちは違うようだ。それも恥知らずな魂胆を胸に秘めている。ヒノカ様の周囲に多くの者を当たらせた、正直ミタマだけでは心細い」

サイゾウ「ミタマか……。結局、ヒノカ様の臣下は戻ってこなかった。セツナとアサマはおそらくもう死んでいるだろう」

カゲロウ「どうにか王都にたどり着いた兵は見えない敵に襲われたと、そして死体を攫って行くとも言っていたらしい」

サイゾウ「死体を攫って何をする気なのかはわからないが、おそらく多くの骸が見つからないのはそれが原因だろう。アサマとセツナの仏が見つかっていないからと生きていると考えることはできない」

カゲロウ「その不気味な話を聞いて、兵はこの王都に閉じこもっている。もう籠城以外の戦いを彼らは望まないだろう。もう敵の侵攻を止めることは出来なくなった……」
59 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:40:14.52 ID:c1Iz3f1x0
サイゾウ「恐らく、多くの民がこの戦いに駆り出されるだろう。多くが意味もなく死ぬことになる、そんな戦いにな」

カゲロウ「カムイ様はそんな戦いを望まれていると思うか?」

サイゾウ「……本来なら敵の事など気にはしない。それが非戦闘員であるかは二の次だ、敵がこちらを殺すつもりなら、手を抜くことなどありはしないだろう」

カゲロウ「……」

サイゾウ「だが、あの王女は少し変わっている。それはカゲロウも分かっていることだろう? 俺は復讐を優先したのに対して、あいつはお前を助け出すことを優先した。そして、あの王女と共に戦う者たちはその願いに報いるために協力する。あの王女はその最悪を覚悟しつつも、多くを助けようとするのかもしれん」

カゲロウ「カムイ様はそういうお方だからな。しかし、今リョウマ様の次に最も信用できるのが、多くが裏切り者とするカムイ様というのは不甲斐ないな」

サイゾウ「裏切り者に変わりはない。あいつは白夜を裏切り暗夜に属したことは、変わらない事実だ。だが、その通りかもしれん。ここは、誰かを信頼するには狭すぎる」

カゲロウ「……ああ」

サイゾウ「……ところで、リョウマ様は」

カゲロウ「ヒノカ様の処刑の報より、しばらく一人にしてくれと……」

サイゾウ「そうか……。俺はミタマとヒノカ様の様子を見てくる。カゲロウはどうする?」

カゲロウ「私も一緒に行こう、今は少しでも信頼できる者たちの傍にいたい」

サイゾウ「そうか……。肩をかそう、掴まれ」

カゲロウ「すまない…」

サイゾウ「気にするな」テトテトッ
60 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:47:12.39 ID:c1Iz3f1x0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―シラサギ城『ヒノカの寝室』―

ヒノカ「……すぅ……すぅ」

ミタマ「もう、夕方……毎日毎日鬱屈になりそうな話ばかりで気が滅入ってしまいますわ」

ミタマ(ヒノカ様が処刑されるという話。まだ本人の耳には入っていないと思いますが、それも時間の問題でしょう。いずれは、何処からかその話が……)

 コンコンッ

ミタマ「誰ですか?」

サイゾウ『サイゾウだ、カゲロウと共に部屋の前にいる。ミタマ、今は大丈夫か?』

ミタマ「サイゾウ様にカゲロウ様? 少々お待ちください」テトテトッ

 スーッ

ミタマ「どうかなさいましたか? まさか――」

サイゾウ「いいや、悪い知らせは特にない。安心しておけ」

ミタマ「はぁ、そうでしたか。安心いたしましたわ。では、どういった要件で?」

カゲロウ「ああ、少しだけヒノカ様のお顔を拝見しに来た、リョウマ様にも報告しなくてはいけないからな」

ミタマ「そういうことでしたか。どうぞ、特に用意できるものもありませんが」

サイゾウ「特に問題は無い、失礼するぞ」テトテトッ
61 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:49:46.50 ID:c1Iz3f1x0
ヒノカ「……すぅ……すぅ」

カゲロウ「思いのほか、安定しているのだな」

ミタマ「はい、先ほど薬を与えました。こうして薬が効いている間はいいのですが、薬が切れると悪夢に苛まれてとても辛そうにされます」

サイゾウ「体の傷は癒えても、心の傷まではどうにもならないか……」

ミタマ「残念ですけど、その通りですわ。それに薬の処方にも限界があります、過剰な投与による副作用もありますから、ずっと安心させ続けることはできませんわ」

カゲロウ「そこはヒノカ様の精神力を信じるしかない。私たちにはそれを見守り支える以外に手は無いからな」

ミタマ「はい……」

サイゾウ「出来るなら、穏便にことが終わることを望みたいが、楽観的に考えることもできないだろう。周囲の警備に力は注いでいるが、ミタマも気を抜かぬよう事に当たれ」

ミタマ「もちろんそのつもりです。でないと、夢の中でアサマさんにいつもの顔でチクチクと責め立てられてしまいますし、なによりカムイ様が報われませんわ」
62 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:53:27.32 ID:c1Iz3f1x0
ミタマ「あの方は自軍を犠牲にしてまでヒノカ様を助け出そうとしてくれた。敵同士なのですからそんな考えは捨ててしまえばいいのに、多くの人々を助けるために剣を振るっていましたわ。それが実を結んだのでしょう、一度は壊れてしまったはずのアサマ様にセツナ様、そしてヒノカ様を崩壊の淵で止めてくださいました」

サイゾウ「……そうか」

ミタマ「本当なら、ヒノカ様はまだアサマ様やセツナ様と共にここにいたはずなのに。わたくしが不甲斐ないばかりに」

カゲロウ「ミタマ……」

ミタマ「……すみません、湿っぽい話をしてしまいましたわ。ともかく、カムイ様が再びヒノカ様にお会いするまで、命を賭けてお守りするつもりです。この命は少なくとも、そのためにあるべきだと今は思いますから」

サイゾウ「ふっ、リョウマ様にヒノカ様を任されただけはあるようだな。あの不真面目な僧と同じ場所の出だと聞いてはいたが……」

ミタマ「おほめに預かり光栄です。でも、わたくしもそれほどまじめではありませんわ。安眠が ほしいだけなの 本当は」

サイゾウ「なるほど、思ったよりアサマの周辺にいる僧は一癖二癖ある者ばかりだったようだな。人は見かけによらんといういい例だ」
63 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 21:59:51.96 ID:c1Iz3f1x0
ミタマ「理解してもらえて嬉しいですわ。でも、今はヒノカ様がゆっくり眠れるよう見守ることが使命……。いいえ、わたくしがそうしたいと純粋に思ったことだからかもしれません」

サイゾウ「そうしたいと思った……か。俺たちのように任務に従事するものにはあまり縁のない結論かもしれんな」

カゲロウ「縁はあるだろう。とくにサイゾウ、お前は熱くなると自身のするべきことを優先する性質だったはずだ」

サイゾウ「むぅ……」

カゲロウ「ふふっ、ミタマよ、引き続きヒノカ様の傍にいてやってくれ。こちらも時間があるときは顔を出すつもりだ」

ミタマ「お気になさらず、その時が来るまではヒノカ様の傍を離れるつもりはありませんので、ご安心くださいな」

サイゾウ「よろしく頼む。カゲロウ、行こう」

カゲロウ「ああ……」

 スーッ スーッ パタンッ

ミタマ「……都には多くの民が溢れていて、物資の底が見えてきてる。このまま、カムイ様たちが現れなければ、もっと凄惨なことが起きてしまうのかもしれませんわ」

ミタマ(それに、ずっとヒノカ様は待っているんですから)

ミタマ「……ヒノカ様、カムイ様が来るまでゆっくりお休みください。必ず、あの方は来てくれます。きっと、来てくれますわ」ナデナデ

ヒノカ「ん、……すぅ……すぅ……」
64 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 22:02:30.94 ID:c1Iz3f1x0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―シラサギ城『地下牢』―

リョウマ「……もう、出来ることはないのかもしれない……」

リョウマ(処刑か、これはユキムラの考えではないだろう。あいつはここでヒノカを処刑したところで意味がないことをわかっている。スサノオ長城での戦いで、ヒノカが戦死したのならその死には意味が生まれたはずだ。だが、今になって敗戦の責任で言い争う必要などどこにもない。敵は向かってきている、それを考えればこうして内輪で言い争っている暇などありはしない)

リョウマ(……どこで歯車が狂ったのか。いや、そんな過ぎたことを考えても仕方ない。もう、起きてしまった出来事の原因はすべてが終わってからでないと、教訓にすることさえできないのだから)

リョウマ「ふっ、教訓か。俺は何一つとして、成し得ることがなかったというのに、教訓も何もあったものではないな」

リョウマ(……もう、この戦いの終わりは見えている。もうすべての民を生かしつづけられるほどの物資は王都にはない。ただ、数を増やすためだけに送られてきた彼らに、戦闘を強いたところで意味などありはしない。ユキムラはそれをわかっている)

リョウマ「……」

リョウマ(だからこそ、俺にカムイを討つという選択をさせたかったはずだ)

リョウマ(カムイを討つ。それがヒノカを救える唯一の方法で、ユキムラが望む答えだろう。結局、この選択で流れる妹の血はカムイの血でしかない……。ヒノカが死んだところで意味などないし、逆に生きている事にこそ今は意味がある。それを理解しているからこそ、ユキムラは俺の答えを待ち続けたのかもしれない……)

リョウマ(だが、それを待つことはなくなった……。すべての選択は否定され、終わりまで狂い続けて落ちていく以外の道は消え去った…)

リョウマ「……俺はどうすることが最善だったんだろうか」

リョウマ(もう、その問い掛けに答えてくれる者はいない。そして――)

(もう、先を示してくれるものも見えなくなってしまった……)
65 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 22:05:43.73 ID:c1Iz3f1x0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
66 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 22:08:39.26 ID:c1Iz3f1x0
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822]
67 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 22:09:27.01 ID:c1Iz3f1x0
仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
68 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 22:16:37.07 ID:c1Iz3f1x0
今日はここまで

 暗夜編のリョウマは、多分ずっとカムイが離反したときから止まってしまっているんだと思う。

 エコーズの資料集買った、イラストがふんだんに散りばめられた買いの逸品。後半ページには支援会話も載ってるとかいう、資料集として優秀過ぎた。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外)

 ジョーカー
 フェリシア
 マークス
 ピエリ
 ゼロ
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 モズメ
 リンカ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>70

◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>71>>72

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)

 次に続きます。
69 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/06(金) 22:19:26.17 ID:c1Iz3f1x0
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ

 この中から一つ>>73

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド
・ルーナ×フローラ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ

 この中から一つ>>74

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 22:42:56.88 ID:kohg7WdDO
モズメさんで
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 09:30:30.36 ID:aI0/IJQho
ピエリ
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 10:19:15.54 ID:uXDjQsNBO
レオン
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 10:57:44.51 ID:ZjmBPz/fO
ブノワ×エルフィ
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 13:38:44.93 ID:0oqq0Jx5o
ルーナフローラ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/13(金) 14:49:19.74 ID:xLX/nReDO

な、なんて格好悪い海老なのだ…
76 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 22:28:24.98 ID:AfVATGhH0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『レオンの執務室』―

ピエリ「ぶーっ、なんでピエリだけお呼び出しなの? 納得いかないのよ」

レオン「今日の戦闘で君は命令を無視して敵陣に突撃したからだよ。ピエリ、軍隊は規律で動くものだ。そういう個人的な行動が、多くの兵を危険にするかもしれないことくらい、わかっていると思うけど……」

ピエリ「ピエリよくわからないの。でも、敵がいたら、えいってやって殺せばいいってことだけはわかるのよ。それに、レオン様はピエリのご主人様じゃないの、ピエリのご主人様はマークス様なのよ」

レオン「はぁ、ああ言えばこう言う、子供そのものだね、君は……」

ピエリ「むー、ピエリ子供じゃないの。軍のみんな、ピエリを見てすごく大人って言ってくれるの」

レオン「ピエリ、君の戦いはどこか危うい。その危うさは君だけの危うさじゃないんだ」

ピエリ「うー、マークス様、敵をいっぱい殺したらいっぱい頭をナデナデしてくれるの。今日もいっぱい敵を殺したのに、なんでレオン様は褒めてくれないの?」

レオン「戦果は戦果、行動は行動。それぞれを総合的に見て僕は評価するつもりだよ。甘やかされて育ってきた君には認められないような方法かもしれないけどさ?」

ピエリ「むー、ピエリ、レオン様嫌いなの! 見てると、えいってしたくなるの……」

レオン「……無駄に度胸だけはあるね。いや、大きくなっただけの子供なんだから、分別が付いてないだけかもしれないけど。それは守れないと違う意味で命を落としかねないよ?」

ピエリ「ピエリ、レオン様の事なんて知らないの! べーっなの! うえぇぇぇぇん!」タタタタッ

 ガチャ バタンッ

レオン「……はぁ」

【レオンとピエリの支援がCになりました】
77 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 22:30:20.67 ID:AfVATGhH0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『郊外の森』―

エルフィ「ここにはいないみたいね…」

ブノワ「ああ、思った以上に怯えてしまっていたようだ。この近くには村がある、そこに迷い込んでしまっては、勘違いした者たちに殺されてしまうかもしれない…」

エルフィ「そうね…。もう少しくまなく探して……」

村人「うわーーー、熊だ。熊が出たぞ!」

エルフィ「今のは!」

ブノワ「まずい、あの熊かもしれん…」

エルフィ「ええ、行きましょう」

村人たち「弓だ弓を準備しろ、こっちにはまだ気づいていないみたいだ! 今のうちに仕留めよう」

ブノワ「まずい、もう弓を準備している…。やめろ、やめてくれ! その熊はただ迷い込んで来ただけなんだ!」

エルフィ「ここからじゃ聞こえない…、なら」ダッダッダッ!

ブノワ「エルフィ、一体何を――」

エルフィ「はあああああっ」ダッダッダッ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

村人「そ、そうでしたか。あの熊は迷い込んで来ただけだったのですね……」

ブノワ「すまん、俺が責任を取って元の山へと帰すから、狩らないでくれるか…」

村人「は、はい。それにしても、あちらの方は大丈夫ですか。その、私たちの矢を……」

エルフィ「大丈夫、それに私が飛び出して身代わりになっただけだもの。村人にも熊にも被害が無くて良かったわ」

ブノワ「エルフィ……」

エルフィ「さぁ、熊がまたどこかに行ってしまう前に行ってあげて。さすがに矢の雨からあの子を守れても、話をすることは出来ないもの」

ブノワ「ああ、わかった。エルフィ、ありがとう…」

エルフィ「ふふっ…」

【ブノワとエルフィの支援がBになりました】
78 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 22:35:27.33 ID:AfVATGhH0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『地下市場』―

ルーナ「……」

フローラ「ルーナさん、こんにちは」

ルーナ「納得いかないわ。なんであたしが買い物に出かける日に限って、あんたと会うことになるわけ? これじゃ、楽しくお買い物ができないじゃない!」

フローラ「神様が、あなたに正しい買い物を教えようとしているのかもしれませんね」

ルーナ「納得いかないわ。あたしのライフスタイルにどんな形であってもケチ付けるなんて」

フローラ「ケチなんて付けませんよ。少しばかり、私はあなたの事を羨ましく思います。こうやって自由に買い物をして帰ってきていいというのは、とても素晴らしいことだと思いますから」

ルーナ「なら、あたしの買い物に口出さないでほしいんだけど。友人なら、そう言うところに快く同意しなさいよね」

フローラ「え、友人?」

ルーナ「何不思議な顔してんの。こんなに顔合わせて話もしてて、一緒にショッピングを楽しんでるんだから友人で間違いないでしょ?」

フローラ「……」

ルーナ「な、なによ。もしかしてそう思ってたのあたしだけ?」

フローラ「いえ、その全くそんなことを思ったことが無かったので……」

ルーナ「ちょっと薄情過ぎない!? こんなに会って話もしてるのにさ!」

フローラ「ふふ、でもそうですね。たしかにそうかもしれません。なにせ、今日城塞を出る際にルーナさんがまた変な買い物をしようとしていたら止めてあげないといけない、そんなことを考えていましたから」

ルーナ「ふ、ふん。そんなこと言われてもうれしくないんだからね!」

フローラ「いえいえ、その大荷物を手伝わされる可能性を考えたら、事前に処置を取るべきだという話ですよ」

ルーナ「そこは、心配だからとか言ってくれてもいいでしょ!? 本当に融通の利かない奴よね、あんたって」

フローラ「そういうあなたは頑固な人ですよね?」

ルーナ「むー」

フローラ「……ふふっ」

ルーナ「……まあいいわ。それで今日は何を買いに来たわけ?」

フローラ「そうですね。豆などの穀物類を少々……。備蓄が少なくなってきましたので」

ルーナ「穀物類ね、ならあっちのお店が今日セールで安売りしてるらしいから行きましょう」

フローラ「そうなんですか、それは助かります。そう言えばこの前歩いていたら今週化粧水の割引を行うと予告していたお店がありました」

ルーナ「ナイスな情報よ。今日もいっぱい買い物して帰ることになりそうね!」

フローラ「お持ち帰りは手伝いませんよ?」

ルーナ「そこは少しくらい、手伝ってあげるっていうポーズ位取ってくれたっていいと思うんだけど?」

フローラ「お断りです。でも、気が向いたらしてあげますね?」

ルーナ「そ、気が向いたら頼むわ。って、もう人だかりができてる!? フローラ、急がないと!」タタタタッ

ルーナ「あ、ちょっと、それはあたしのよ! 笑ってないで、少しは手伝いなさいよ!」

フローラ「ふふふっ、わかりました。まったく、本当に困った人ですね、ルーナさんは」タタタタッ

【ルーナとフローラの支援がAになりました】
79 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 22:41:46.62 ID:AfVATGhH0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜王都が見える丘―

ゼロ「……あれが白夜の王都の外周か……」

暗夜偵察兵「やはり王都周囲だけあって警備は厳重です。内側へはそう簡単に入り込めないでしょう」

ゼロ「当たり前だな。もう少し詳しく探りを入れたいが、ヒノカ王女の一件もある。下手に動いてあちらを刺激しない方がいいだろう」

暗夜偵察兵「当面は様子見ということですね。ゼロ様はいかがしますか?」

ゼロ「俺は一度戻ってレオン様に報告する。お前たちは王都の様子を観察しろ、なに予想通りなら敵が大規模な行動に出ることは無いだろうからな」

暗夜偵察兵「はい、わかりました。このまま監視を続けます」ザッ

ゼロ(……おそらく、こちらの動きには気づいているはず。それにしては全く動きもないとはね)

ゼロ(よほどの自信があるのか、それとも縮こまっているだけなのか……。それとも王族の処刑の件が、思いのほか有利に働いているとでもいうのかねぇ……)

ゼロ「……考えても埒が明かないな。さっさとレオン様に報告に戻るとするか……」タタタタタ
80 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 22:49:54.42 ID:AfVATGhH0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・カムイ軍野営地『カムイの天幕』―

カムイ「どうにか行軍速度を上げて、早ければ明日の夕方ほどで白夜王都に到達ですか……」

カムイ(夜刀神……。あなたが私の元に現れたあの場所。そしてお母様が私をかばって死んでしまった場所に、今から戦いに向かうことになるんですね……)

カムイ「もしかしたら、あそこが出発点になる選択もあったのかもしれません。白夜と共に歩む道を決めていたのなら……、白夜の方々と手を組んで戦っていたのかもしれません……」

カムイ(ですが、今さらそれを思ったところで意味などありません。ヒノカさんが処刑される可能性がある今、そんな考えに逃げることは許されませんから)

カムイ「リョウマさん、ヒノカさん……。きっとお二人を――」

 クゥ〜

カムイ「……どんな時でもお腹は鳴るものですか。はぁ、これでは格好がつきませんね」

カムイ(時間はそれなりですし、そろそろ食事が出来上がっている暗いでしょうか…)

カムイ「ちょっと、様子を見に行きますか……」ガサッ

 タタタタッ
81 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 22:53:57.03 ID:AfVATGhH0
暗夜兵「おーし、順番に並べ、おそらくこうして落ち着いて飯が食えるのは今だけだ。各自、ちゃんと味わって食えよ。それと、明日の分の携帯食の配布も行うから、各自自分の分をちゃんと受け取るように」

暗夜兵「落ち着いてか…。結局行軍も早まってあまり落ち着いていたとは思えないんだが……」

暗夜兵「細かいことは気にするな。次の戦い、あまりいい物にはなりそうにないからな。今のうちに心の余裕と準備だけはしておけってことだよ」

暗夜兵「はいはい……。ずずずっ…はぁ、なんだろう、どこか懐かしい感じのするスープだな……。こう、ホッとするっていうか、家が恋しくなるっていうか……」

暗夜兵「わかる。なんていうか、暗夜の料理じゃないんだけどよ。こう田舎の友人を思い出すっていうか……ぐすっ」

暗夜兵「おいおい、泣くなよ。ホームシックか?」

暗夜兵「飯がうまいから泣いてるだけだ!」

カムイ(家が恋しくなるようなものが今日の夕食なんですね。いったい、誰が今日の食事の指示をしたんでしょうか……)

モズメ「あ、カムイ様、どないしたん?」

カムイ「あ、モズメさん。皆さんがおいしそうに食事されているので、今日の料理長は誰なのか少し気になったんです。みなさん、口々になんだか懐かしい味だっと言っていますから」

モズメ「え、そうなん? 暗夜でもこんな料理が振舞われるもんなんか?」

カムイ「どうしてモズメさんが驚いているんです?」

モズメ「だって、今日の夕食、あたいが作ったものやから……。正直、田舎臭いーとか、雑な味とか言われると思ってたんよ」
82 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 23:00:33.34 ID:AfVATGhH0
カムイ「前にモズメさんの料理を食べましたけど、とてもおいしかったですよ」

モズメ「そ、そうなん?」

カムイ「はい、毎日食べたいくらいでした。モズメさんの愛情がいっぱい入っていたんだと思います」

モズメ「カムイ様、恥ずかしくなること言わんといて……顔が熱くなってまうよ////」

カムイ「ふふっ、手で触れただけでもわかるくらい赤くなっているんですね」ピトッ

モズメ「ひゃっ、おさわりはあかんで!」

カムイ「ふふ、ごめんなさい」

モズメ「それより、カムイ様はもう食べたん? 容器とか持ってるように見えへんけど」

カムイ「えっと……」

 クゥ〜

カムイ「あ……」

モズメ「そのお腹の返事、まだ食べてないんやね」

カムイ「はい……。その恥ずかしいところを見られてしまいました」

モズメ「えへへ、お腹が空いてるのは元気な証拠や。ちょっと待っててや、カムイ様の準備してくるから」

カムイ「ありがとうございます、モズメさん」
83 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 23:05:16.75 ID:AfVATGhH0
暗夜兵配給係「はい、こちらがカムイ様の分です。モズメ様の分もどうぞ」

モズメ「ありがとな。少しだけ任せてもええ?」

暗夜兵配給係「はい、モズメ様。食事の追加などはほぼ完了していますし、明日の携帯食の準備も整っていますから、あとは私たちにお任せください」

モズメ「おおきに助かるわ。それじゃ、少しだけ頼むで」

暗夜兵配給係「いえいえ、カムイ様とゆっくりしていてください、到着してから仕込みと調理でゆっくり休めていないと思いますから」

モズメ「え、ええの?」

暗夜兵配給係「はい」

モズメ「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわ」ダッ

 テトテトテトッ

モズメ「カムイ様、お待たせ。これ、カムイ様の分や」

カムイ「ありがとうございます、いい香りですね。モズメさんの愛情が感じられます」

モズメ「二度目は通用せんよ」

カムイ「そうですか、残念です。もっと可愛く慌てるモズメさんを見たかったんですけど」

モズメ「カムイ様は意地悪な人や。それじゃ、いただきます」

カムイ「はい、いただきます」
84 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 23:07:35.55 ID:AfVATGhH0
カムイ「ん、これはクマの肉ですね」

モズメ「うん、良さそうなのが結構おったから、それに明日の事も考えたら力付けとかんと、途中で倒れてまう。元気の源ってやっぱりおいしい食事やって思うんよ」

カムイ「モズメさんらしい考え方ですね。ふふ、でも残念です。モズメさんの特別な手料理を振舞ってもらえるのは私だけだと思っていたので」

モズメ「あたしの料理は何も特別じゃあらへん。作り方も村で教わっただけのものやもん」

カムイ「私には特別美味しく感じられますよ」

モズメ「えへへ、ありがとーな。カムイ様にもみんなにもおいしいって言ってもらえてあたいとっても嬉しいんよ」

カムイ「実際とてもおいしいですから、当然の評価ですよ。なんていうか、食べていると力が湧いて来るって言いますか、そんな感じがするんです」

モズメ「そう思って作ってるんよ。料理は愛情って昔教わってから、作ってるときはこんな料理になったらええなって思うようにしてるんよ」

カムイ「思いながら作る、ですか……」
85 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 23:10:56.86 ID:AfVATGhH0
モズメ「うん、料理は食べてもらう相手の事を考えて作るのが一番なんよ。どんなに簡単でもどんなに難しくても、食べてくれる人が喜んでくれることが一番大事なことやから」

カムイ「……一番大事なことですか。なるほど、モズメさんの料理の美味しさの秘密というわけですね」

モズメ「えへへ、でもあたいはカムイ様においしいって言ってもらえるのが一番うれしいんよ」

カムイ「え?」

モズメ「だって、カムイ様は色々と考えないといけない立場やから、さっきまで何かで悩んでたかもしれへん。あたいにはそれを聞いて助言が出来るわけないのはわかってる。だから、こうやって何かを食べてるときくらい、笑顔でいてほしいって思ってるんよ」

カムイ「……ふふっ、そんなことを言われて笑顔にならない人はいませんよ。ありがとうございます、モズメさん」ナデナデ

モズメ「んっ、もう、おさわりは駄目やって言っとるのに……はふぅ」

カムイ「ふふっ。ごちそうさまでした」

モズメ「もう食べ終わってしまったん?」

カムイ「はい、とってもおいしかったので、どんどん箸が進んでしまいました。やっぱり、モズメさんの料理は愛情たっぷりですね」

モズメ「おおきに、今度はカムイ様だけに料理を作ってあげるから、楽しみにしててほしいんよ」

カムイ「はい、楽しみにしています」

モズメ「よーし、明日の準備がんばらへんと!」

カムイ「はい、よろしくお願いします」
86 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/14(土) 23:12:26.07 ID:AfVATGhH0
今日はここまで

 ルーナとフローラってこんな感じの交友関係を築きそうな気がするのよね……
87 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 20:52:54.47 ID:OgKMmq0w0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カムイ「……ふぅ、モズメさんの料理、とてもおいしかったです。明日の携帯食も頂きましたから、これで明日の準備も済みました」

カムイ(しかし、やはりと言いますから食料の量はそれほどありません。持久戦でこちらに勝ち目はないのは明白、相手の籠城を崩せなければ私たちは撤退を余儀なくされます)

カムイ(撤退してもテンジン砦からの増援を待ってから再度攻撃を仕掛ければ、私たちが負ける事はありません。ですが、その頃には白夜がどうなっているのかわからない、あの姿の見えない敵たちが何かを起こすかもしれない……。そうなってしまったら……)

 コンコンッ

カムイ「ん? だれですか?」

アクア「カムイ、私よ。少しいいかしら?」

カムイ「アクアさん、どうかしましたか?」

アクア「少し話したいことがあっ……、今は平気?」

カムイ「はい、大丈夫です。どうぞ、入ってください」

アクア「ええ、おじゃまするわ。もう、携帯食は受け取ったのね」

カムイ「はい、丁度さっき夕食を頂いたので、その帰りに。モズメさんや多くの方々が作ってくれたみたいです」

アクア「ええ。明日の戦いの途中で退くことは許されないから、できる限り準備してくれたみたい。多くの兵の戦う一押しになってくれるといいのだけど」

カムイ「はい……負けられません。ここで退いてしまったら、白夜王国がどうなってしまうのかわかりませんから」

アクア「……おそらくだけど、ここで撤退することになってしまったら、おそらくだけど白夜は崩壊してしまうわ」

カムイ「崩壊ですか」

アクア「多くの人は今の白夜の状況を見て、すでに崩壊していると思うかもしれない。でも、まだ秩序のすべてが崩壊しているわけじゃないわ。今はギリギリのところでそれを免れてる。だけど、それさえも壊れて国の面影が無くなってしまったら手遅れになる」
88 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 21:04:34.64 ID:OgKMmq0w0
カムイ「……崩壊こそが国の消滅とアクアさんは考えているんですね」

アクア「ええ、少なくとも私はそう思っているの。そう理解するに足るものを、私は見てきたから……」

カムイ「アクアさん?」

アクア「ごめんなさい、今話すことじゃなかったわ」

カムイ「いいえ、私からこの話を振ったんですから、アクアさんが謝らないでください」

アクア「そう、わかったわ。だけど、カムイがそう言ったことを考えるのを私はおかしいとは思わない。あなたは、そういう人だから」

カムイ「アクアさん……。ははっ、なんだか不思議です。そういうことを自分で考えるとモヤモヤするのに、アクアさんにそう言ってもらえたら、なんだかポカポカしているといいますか……。すみません、なんだか恥ずかしいことを……ん?」

アクア「……」

カムイ「あの、アクアさん?」

アクア「あ、えっと、そう、そんな不思議なことがあるのね/////」

カムイ「? アクアさんどうしたんですか。なんだか言葉がぎこちないですよ?」

アクア「な、何でもないわ」

カムイ「?」
89 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 21:18:00.81 ID:OgKMmq0w0
アクア「それよりもカムイ、あなたは今回のヒノカの処刑の話をどう考えているの?」

カムイ「……改めて考えると、少しだけ不思議に思っているところです。私がもしもユキムラさんの立場だとしたら、こうして敗戦が続き、王都まで押し込まれている状況でそんなことをしている場合ではないと思います」

アクア「色々と考えて落とし込めば、この処刑が意味を持ってくるかもしれない。けれど、敗戦の理由として王族を処刑しても敵の進軍は止まらないと多くの人々は思うでしょうし、するべきことを行わないことで民衆の不満が爆発すれば防戦どころではなくなる可能性もある。そこまでしてヒノカの処刑を公に公表する理由、それがわからないのよ」

カムイ「そうですね、ユキムラさんに今ヒノカさんを処刑する理由があるようには思えないんです。王都での混乱を終息させる狙いがあるのかもしれないとは思ったのですが、ならもっと違う事を行うべきでしょう」

アクア「それにヒノカを今処刑したところで、民衆の不満が全て私たちに向くとは思えない。最悪の場合、自国に対しても何も思うこともないかもしれない。だからヒノカが処刑されるっていうことは、相対的に見ても何の意味を持たない行為になっているの。唯一、意味があるとするなら……」

カムイ「私たちに対して……、ということですね」
90 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 21:30:56.47 ID:OgKMmq0w0
アクア「ええ。ヒノカの存在が私たちにとって意味があるとユキムラは理解している。単純にこれもあなたを苦しませるという目的の延長だと考えれば……」

カムイ「少なからず納得がいくということですか」

アクア「無理矢理ではあるけど、という話よ。むしろ、この報そのものが罠である可能性もあるわ」

カムイ「……この報は罠かもしれないということですか?」

アクア「ユキムラはあなたの命を奪うことに執着しているようだから、あなたがヒノカの危機を聞いてやってこないわけがないと考えれば……」

カムイ「見事にその策に嵌っているということですね」

アクア「もしくは、本当に白夜で何かが起きているのかも知れない」

カムイ「?」

アクア「ユキムラが率いている強行派にも何かしらの歪が生じている、そう考えることもできるという事よ」

カムイ「歪ですか……」

アクア「飽くまでも推測よ。ユキムラの統率力がどれだけの物かはわからないけど、実際ここまでの連戦はすべて白夜の敗退で終わっている。そんな今の状況に不満を持つ者が現れて、この騒動を起こしているのかもしれない」
91 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 21:50:36.78 ID:OgKMmq0w0
カムイ「内部で分裂が起きている可能性があるということですね」

アクア「実際は今も内部分裂しているようなもの、王族派と強行派という二つの勢力が存在しているのだから…。今は強行派がほぼ主権を握っているのでしょうけど、その強行派も一枚岩でないのなら、この処刑の話の浮き上がりに納得が出来る」

カムイ「なるほど……。ですが、ヒノカさんの処刑の話を上げているのです。その方々と手を取り合えるとは思えません」

アクア「でしょうね。唯一手を取り合えるかもしれない王族を支持する人々は、処刑の件で下手に動けない状況に追い込まれているのかもしれない」

カムイ「彼らと私たちにとって、ヒノカさんは人質として成立するということですね」

アクア「ええ、私たちの進軍が始まって、王都の外周に回されるのはおそらく無理矢理武装させられた民と王族を支持する者たちが大部分を占めるはず」

カムイ「出来れば戦いたくはありません。あのスサノオ長城から王都まで逃げ延びた方々もいるはずですから」

アクア「その中にも私たちと剣を交えたくない人はいるかもしれない。でも、状況が状況なら彼らを恨むことは出来ないわ。私たちが敵であることに変わりはないもの」

カムイ「……そうですね。結局、私たちが侵略者であることに変わりはありません。どんな理由があったにせよ、私は白夜を攻撃したことを忘れずに生きていくつもりですから」
92 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:07:39.71 ID:OgKMmq0w0
アクア「あなたは強いのね……」

カムイ「いいえ、皆さんに支えられているからですよ。それがどんなに非情で受け入れたくないことだとしても、私の背を支えてくれる皆さんがいるから、私はまだ戦うことができる。皆さんのおかげなんですよ」

アクア「だとしても、あなたが強いことに変わりはないわ。あなたが示してくれたことが私たちをここまで導いてきた。あなたの事をみんなが支えたいと思ったのは、そういうあなたを見てきたからよ。あなたが紡ぐ道を一緒に歩むことを誇りに思っているはず」

カムイ「誇りですか。そんな風に思ったことはありませんでした。私の戦いにそんな言葉は似合いませんし、誇れるようなものではありません」

アクア「いいえ、私は誇りに思うわ。あなたの戦いは、自分のためよりも誰かのためだもの……。私にはあなたの戦いが理想を追いかけているように見えているわ。報われることじゃない、ただ理想のためにあなたは戦っている、そんな気がするの」

カムイ(理想……。それは私が最初に描いたことだったかもしれない。自分というものを自覚して、でも確かにそれはあった。私は今、唯一の理想に手を伸ばそうとしているのかもしれません。この戦いの中で、唯一手が届きそうなその理想に……)

カムイ「……私の手は、それに届くのでしょうか……」

アクア「カムイ?」

カムイ「……なんでもありません。それよりも、そろそろ偵察が戻る時刻かもしれませんから、様子を見に行きましょう」

アクア「ええ、そこまでは私がエスコートしてあげるわ」

カムイ「大丈夫ですよ、ちゃんとわかりますから」

アクア「いいから、ここは私に任せておいて。それじゃ、行きましょう」ギュッ

カムイ「はい、わかりました。よろしくお願いしますね、アクアさん」

アクア「ええ」
93 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:25:36.60 ID:OgKMmq0w0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・カムイ軍野営地『作戦会議天幕』―

ゼロ「以上が現在の状況です」

レオン「わかった。ゼロは少しだけ休んでいてくれ、追って指示を出す」

ゼロ「わかりました、レオン様。それでは、失礼いたします」タタタタッ

レオン「ようやくっていうところだね」

マークス「ああ、偵察隊の話を聞く限り、やはり帝都内部へ入り込むのは至難の業だろう。流石に暗夜王都で使用したカタパルトもココには存在しない」

レオン「うん、スサノオ長城の戦いでドラゴンの数も減っているから、囲いの一つを越えたところで、どうにかなるとは思えない」

マークス「うーむ」

 タタタタタッ

レオン「?」

カムイ「失礼します、レオンさん、マークス兄さん、今よろしいですか?」

マークス「カムイか。丁度いいところに来た、入れ」

カムイ「はい、失礼しますね」

アクア「失礼するわ。さっきゼロとすれ違ったのだけど、もしかして報告が入ったの?」

レオン「ああ、偵察から戻って来たところでね。今の白夜王都の状況を教えてもらったところなんだ」

カムイ「それで丁度いいところにということだったんですね」

マークス「しかし、やはり王都だ。暗夜の王都襲撃戦とは違い、敵もこちらの動きには気づいているだろう。正直、難しいところだ」

カムイ「それほどですか……」
94 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:32:40.08 ID:OgKMmq0w0
レオン「王都全体の城壁の一箇所を崩そうにも、こちらの兵力を一箇所に集中して崩せるのはほんの一瞬だけ、すぐに建て直される可能性が高い。色々と方法は考えているけど、強行突破してのリョウマ王子とヒノカ王女救出はかなり厳しい。強行突破が成功したとしても、シラサギ城に辿り着いた時には僕たちはボロボロで、すぐ包囲されておしまいだね」

カムイ「かなり厳しい戦いということですね。敵も防戦の準備を整えているのですから、城壁を抜けたところでシラサギ城に行くまでも幾度となく邪魔をされるでしょうし……」

マークス「うむ、この城壁を楽に超えることが出来ればいいのだが。さすがにそのような方法、ありはしないか」

カミラ「さすがに上を飛んでいくのもあまり現実的じゃないみたいだし、中々に悩み所ね」

レオン「あ、カミラ姉さん。ドラゴンの世話はもう終わったの?」

カミラ「ええ、みんな今はぐっすり眠ってる。だけど、スサノオ長城の時みたいな無理はさせられないのが現状ね。ここまで物資を運ぶの使ってきたから、長く戦い続けるのは難しいわ」

カムイ「八方塞がりとまではいきませんが、こちらの不利は覆すことが出来そうにないということですね……」

マークス「ああ、いくつかの作戦計画をレオンに練ってもらったが、現状の戦力でここを抜けるとなるとほぼ余剰戦力のすべてを使いかねん」

カミラ「なにか隠し通路の一つでもある気はするけど……」

カムイ「もしかして、暗夜の国境砦付近からシュヴァリエ公国内にまで伸びていたあの地下道のようなものですか?」

カミラ「ええ、私はあると思うのだけど。マークスお兄様はどう?」

マークス「そうだな、恐らく城からの要人を脱出させるためにある可能性高い。しかし、どこにあるのかわからなくては使う事も出来ない。もう時間が無いから、丹念に探すこともできないだろう」

カムイ「ですよね……。流石にうまくはいきませんか……」

アクア「隠し通路……」

アクア「……」

アクア「あ…」
95 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:34:36.04 ID:OgKMmq0w0
カムイ「アクアさん、どうかしましたか?」

アクア「ねぇレオン。白夜王都周辺の地図を見せてもらえる? 出来れば王都周辺を写したものを」

レオン「ああ、いいよ。縮小したものだけどいいかな?」

アクア「ありがとう……」ジーッ

マークス「アクア、何を探しているのだ?」

カムイ「アクアさん?」

 スッ

アクア「……ここね」

カミラ「……森の中みたいだけど」

マークス「ああ、城壁から少し離れた場所のようだが、ここがどうかしたのか?」

アクア「確かここだったはずよ」

レオン「何がだい?」

アクア「私が白夜に連れてこられた時、私は王都正門を通ってシラサギ城に入っていないの。ぽっかりと空いた黒い洞窟のような場所に入って、気づいたら城内にいた」

レオン「まさか、それって……」

カムイ「アクアさん、もしかしてここに?」

アクア「ええ、私の記憶が確かなら、ここにあったはず――」

「シラサギ城に通じている……、隠された道が……」
96 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:38:59.83 ID:OgKMmq0w0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+→B++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
97 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:39:49.62 ID:OgKMmq0w0
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[5スレ目・77]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・レオン×ピエリ
 C[5スレ目・76]←NEW
98 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:40:48.21 ID:OgKMmq0w0
仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[5スレ目・78]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
99 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:45:30.12 ID:OgKMmq0w0
○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)
100 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:51:02.01 ID:OgKMmq0w0
今日はここまで

 こういう場面で有益なことを思い出すのはヒロインの特権。
 FEHようやくピエリがLv40になりました。あとはずっしりとリリスの実装を待つばかり……

 次回かその次ほどで、カムイと共に戦いに出る仲間を決めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>102>>103

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)

 次に進みます。
101 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/17(火) 22:52:04.32 ID:OgKMmq0w0
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス
・ブノワ×エルフィ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・レオン×ピエリ

 この中から一つ>>104

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ

 この中から一つ>>105

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 23:20:05.06 ID:BapOnl/R0
乙です
カミラ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 23:30:37.58 ID:JSMO8F0mO
アクア
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 08:43:44.32 ID:F3Nq6nKaO
・レオン×ピエリ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 11:21:26.68 ID:3BYN1CSlo
サクラエルフィ
106 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/22(日) 19:37:24.85 ID:7lEKRnvb0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞―

アクア「♪〜♪〜」

カミラ「相変わらずいい歌声ね」

アクア「カミラ、盗み聞きなんて感心しないわ」

カミラ「ごめんなさい、声を掛けるのも悪いと思ったから、最後まで黙っていたの。ふふっ、本当にアクアは歌うのが大好きなのね」

アクア「そうね……。物心ついた頃にお母様がよく歌ってくれたの。色々な歌を教えてもらったわ。悲しい時に元気になれる歌、落ち着ける歌……他にも色々とね」

カミラ「歌はアクアにとって、お母様との思い出そのものなのね。とっても素敵だわ」

アクア「ありがとう、そう言ってもらえてとてもうれしいわ。だけど一つだけ、お母様に教えてって頼んだ歌があるの」

カミラ「そうなの?」

アクア「ええ、だけどどうして教えてもらおうって思ったのかは思い出せないのよね。何か、きっかけがあったとは思うのだけど」

カミラ「ふふっ、小さかったアクアを動かした理由、少し気になるわ」

アクア「あまり面白いことではないと思うわ。その、悲しい気分を和らげるそんな歌を教えてって、お母様にねだっていたから……。暗夜にいた頃はあまりいい事もなかったもの……」

カミラ「大丈夫、それ以上は言わなくてもいいわ。嫌な昔のことを無理に思い出すことは無いもの」

アクア「ありがとう、カミラ」

カミラ「ふふっ」

【アクアとカミラの支援がCになりました】
107 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/22(日) 19:54:22.38 ID:7lEKRnvb0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『レオンの執務室』―

ピエリ「……むーっ」

レオン「目に見えて不満な顔をしてるね」

ピエリ「当たり前なの。またピエリだけ呼び出しなの、おかしいのよ!」

レオン「おかしくないよ。君はまた命令違反をしたからね。この前の反省を全く生かせてなかったのだから、呼び出されるのも分かると思うけど?」

ピエリ「むー、ピエリちゃんと結果を出してるの」

レオン「はぁ、結果と仮定は別物だってこの前言ったよ。まったく、学習能力もないんじゃ何を叱ればいいのかわからなくなるよ」

ピエリ「別に叱らなければいいの。ピエリはピエリで戦って結果を出すの。ピエリ強いから負けたりしないのよ」

レオン「強いから負けないっていうのは大きな誤解だよ。どんなに強いものでも状況によっては負けるのが戦いだ。それに、今回の戦いピエリの突撃に感化された兵が数名命を落としてる。次は君がそうなるかもしれない」

ピエリ「死んじゃったのは弱かったからいけないの。ピエリはそんな事になったりしないのよ」

レオン「はぁ、本当にああ言えばこう言うね……。まったく、君は本当に困った兵士だよ。扱いも一筋縄じゃ行かない。こうなったら実力行使しかないかな」

ピエリ「実力行使?」

レオン「ピエリ、次の出撃は僕の部隊と一緒に動いてもらうよ」

ピエリ「嫌なの!」

レオン「これは決定だから、そういうわがままを受け付ける気はないよ」

ピエリ「むー! レオン様は本当に意地悪なの! ピエリ命令になんて従わないの! べーっなの!」

レオン「なら、君の出撃をしばらく見送ることにするよ。流石に命令違反を繰り返す兵を戦場に出すわけにはいかないからね」

ピエリ「……うっ、うー、嫌だけど我慢してあげるの」

レオン「協力的で助かるよ。それと僕の部隊にいる間は命令を守るように。はい、返事は?」

ピエリ「むーっ、わかったの……」

【レオンとピエリの支援がBになりました】
108 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/22(日) 20:09:39.71 ID:7lEKRnvb0
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・イズモ公国『茶菓子屋』―

エルフィ「これがお饅頭……」

サクラ「はい。わぁ、久しぶりです。このモチモチとした触感……」

エルフィ「見た目からはわからなかったけど、この甘い匂いがアンコというの?」

サクラ「そうですよ。エルフィさんはあんこは初めてですよね?」

エルフィ「ええ、白夜のデザートは今まで食べたこともなかったから」

サクラ「ならまずはこしあんがいいかもしれません。初めての方でも抵抗なく食べられると思います。はい、どうぞ」

エルフィ「中身は真っ黒ね…。だけど、とても甘い香りがするわ」

サクラ「それじゃ、いただきましょう。いただきます!」

エルフィ「いただきます」

サクラ「あむ、んーっ////」パクッ

エルフィ「ん、これは……」パクッ

サクラ「ど、どうですか?」

エルフィ「とってもおいしい。口の中に広がるアンコの甘味をお饅頭の生地が解してくれるから、しつこくなくなって食べやすいわ」

サクラ「ふふっ、気に入ってもらえて何よりです」

エルフィ「これならいくらでも食べられそうね。ありがとう、サクラ様」

サクラ「はい、私もエルフィさんに喜んでもらえてとっても嬉しいです。んー、もう一つだけ……」

エルフィ「サクラ様、ほっぺにアンコが付いてます」

サクラ「え、ほ、ほんとうですか////」

エルフィ「動かないでください、今取ります…。はい、取れました」スッ フキフキ

サクラ「あ、ありがとうございます。あ、エルフィさん」

エルフィ「なに?」

 スッ フキフキ

サクラ「えへへ、エルフィさんのほっぺにも付いてました。これでお相子ですね」

エルフィ「みたいね」

サクラ「はい、ふふっ」

エルフィ「うふふっ」

【サクラとエルフィの支援がBになりました】
109 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/22(日) 20:41:24.94 ID:7lEKRnvb0
今日は支援だけで
110 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 19:17:26.06 ID:u6a1AzZJ0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城・地下『牢獄』―

 ピチャン ピチャン
  ピチャンッ ピチャン

 ポタタッ
  ポタタッ

 ピチャン……

 ズズッ
  ズズズッ

 ピチャンッ

   ドサリッ

 ポタタッ……
 
 ………
111 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 19:34:12.71 ID:u6a1AzZJ0
 ピチャン……
  ピチャン……

 ピチャン……

リョウマ「……ん」ガバッ

リョウマ「ん……俺はなにを」

 キョロキョロ

リョウマ(頭がくらくらする、それになんだか体も重い。意識に靄が掛かっている、ひどく眠った後のような感覚だ)

リョウマ「……眠ってしまっていたのか。こんなにも切羽詰まっているというのに、暢気なものだな」

リョウマ(俺自身が嫌になるほどに、俺は何も出来はしなかった……。今、こうして牢獄でのたうち回る事しかできない、役に立たない男だ…)

リョウマ「……誰かいるか?」ガシャンッ

 ――――

リョウマ「見張る価値もないという事か。ふっ、それもそうか、俺がどんな決定を下そうとも、もう意味などなくなってしまったのだからな」

 ドスンッ

 ビチャッ

リョウマ(水か? 眠っている間に桶を転ばせてしまったか? いや、どうでもいい事か。どうせこのまま、無様に待ち続けることになるだけだ。処刑されることもなく、そして戦いに参加することもなく、いずれやってくるだろう終わりの時までここにいるしかない……)

リョウマ「……このまま無様に――」

『それを貴様は望んでいないだろう?』

リョウマ「!?」
112 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 19:57:07.85 ID:u6a1AzZJ0
リョウマ「誰だ! 隠れていないで、姿を見せろ!」

 ………

リョウマ「……疲れているのか。こんな蚊帳の外にいるだけだというのに……」

リョウマ(しかし、今の声は何だ。頭の中に直接入り込んでくるような、ううっ、一体何が起きている)

リョウマ「くっ、頭が揺れる。くそっ、一体なんなんだ。……む?」

 カッカッカッ……

リョウマ「誰だ?」

サイゾウ「リョウマ様、私です」

リョウマ「サイゾウか、一体どうした?」

サイゾウ「? いえ、リョウマ様が時間になったらここへ来るようにと」

リョウマ「俺が?」

サイゾウ「はい」

リョウマ「……そうか、すまなかった。たしか、そうだったな」

サイゾウ「もしお疲れならば、お休みください」

リョウマ「いや、そうは言っていられない状況になっているんだろう。サイゾウ、ヒノカの処刑の件はどうなっている?」

サイゾウ「え、リョウマ様?」

リョウマ「どうした、サイゾウ? 何かおかしなことを聞いたか?」

サイゾウ「………いえ、何でもありません。私の勘違いのはず……」

リョウマ「?」
113 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 20:28:39.77 ID:u6a1AzZJ0
サイゾウ「現在の状況を見る限り、ヒノカ様の処刑は先送りになるでしょう。偵察部隊が暗夜の軍勢を確認したのが数時間前、それに伴って王都全体が戦闘の準備に取り掛かっているので、今は処刑を行っている暇はないかと」

リョウマ「……そうか、その暗夜の軍勢。カムイたちの物だと思うか?

サイゾウ「スサノオ長城から帰還した者たちの話を聞いた強襲してきたもう一軍の可能性もあります。ですが、私はカムイ様の率いる軍勢だと考えています」

リョウマ「……そうか。次にサイゾウ、お前はこのまま白夜が持つと思うか?」

サイゾウ「……リョウマ様」

リョウマ「頼む、お前の率直な意見を俺に伝えてほしい」

サイゾウ「……おそらくですが、向こうにこれと言った手立てが無く、真正面からぶつかるのであればこちらがここを凌ぐことは出来るでしょう。ただ、以後王都を維持することは不可能だと私は考えます。そうなれば、もう一度敵が攻勢に出る前に終わりが来る、そう考えています」

リョウマ「……わかった。すまなかったな、サイゾウ。あまりは話したくないことだったはずなのに話してくれて、ありがとう」

サイゾウ「いいえ、それがリョウマ様の望み。それに応えるだけです」

リョウマ「ああ……」
114 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 20:37:34.38 ID:u6a1AzZJ0
リョウマ「……それで王都防衛の部隊構成はどうなっている?」

サイゾウ「ユキムラ様の指示の元、正門と城下町近辺に近衛を中心とした部隊を展開し、武装市民もそこに加わって敵の攻撃を防ぎきると。ですが、ユキムラを支持する者たちはこの城の守りを固めているため、正門周辺に展開するのは私たちの部隊となるでしょう」

リョウマ「……サイゾウは市民を守りながら戦闘を行えると思うか?」

サイゾウ「戦闘が始まれば向こうも容赦は出来ないはず。武装市民がどういった動きを取るのかわからない以上、それを守りながら戦えば防御戦線の維持は極めて難しいかと。ただシラサギ城の陥落にまで敵が至れるとは思えません。ですが、その先があるようには……」

リョウマ「……そうか」

サイゾウ「リョウマ様……」

リョウマ「これが、俺の辿ることになる道だという事か。俺のような人間に守れるものは……自分くらいなのかもしれん」

サイゾウ「そんなことは……」

リョウマ「……」
115 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 20:49:36.16 ID:u6a1AzZJ0
リョウマ「……民も守れず、そして采配を取ることも叶わない。俺にはどうすることもできないということを見せつけられる。あれだけの時間があったというのに、俺がしたことはこの結果を白夜にもたらすことだけだった。途中で、それを変えることが出来た可能性もあっただろう。それを俺は選ぶことが出来なかった……」

サイゾウ「リョウマ様……」

リョウマ「……」

サイゾウ「……」

リョウマ(……結局、俺に出来ることなど何もない。俺には何も助けられはしなかった、あいつならどうしただろうか。あいつならこのような立場であっても、己を信じて動くことが出来なのだろうか。俺のように選ぶことのできない、こんな人間とは違って……)

『自分を無力にさせる存在が憎いだろう?』

リョウマ「!」

サイゾウ「リョウマ様?」

リョウマ「……」
116 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 21:10:31.46 ID:u6a1AzZJ0
『自分では到底実現出来ない、そんなことを行うあの小娘が憎いのだろう?』

リョウマ(……黙れ)

『あの小娘に負けるような軟な力ではないはずだ、そう思っているだろう。白夜の王子……』

リョウマ(貴様は誰だ……。なぜ、俺にそんなことを語り掛ける!)

『なに隠さなくてもいい。お前のその心の底にあるもの、我には御見通しだ。成し遂げたかっただろう、そして振舞いたかっただろう。お前が求めてやまない、大きな背の者のように、この白夜を導いて行けるとその身で証明したかっただろう?』

リョウマ(俺は何も隠していない……)

『隠していないか、なら証明すればよかったのにそれが出来なかった。望めばよかったことを行えず、お前はそれが美徳であるかのように振舞った。なんとも哀れなものだ。欲していればこんなことにならなかったかもしれないというのにな?』

リョウマ(何が言いたい……)

『何が言いたい? 我が語るつもりはない、お前はそれを欲していた。そうだろう、お前が零した最後の願いはとても力強いものだ。だから手を貸してやった』

リョウマ(手を貸しただと……)

『お前ならこの国を救えるだけの力がある。どんな形を取ろうとも、お前にとって唯一、唯一の障害は一つしかありえないのだからな』

リョウマ(……俺は)

『このまま、何もせずに死んでいくのならそれでいい、だが今一度でも――』

『その手にそれを欲するのであれば、動かないわけにはいかないだろう?』

リョウマ(……)

『さぁ……白夜の王子よ。その身でもう一度すべきことがあるのなら、答えは一つだけだ……』

リョウマ「……」

リョウマ「……ああ、確かにその通りだ」
117 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 21:20:36.14 ID:u6a1AzZJ0
サイゾウ「リョウマ様?」

リョウマ「……サイゾウ、頼みがある」

サイゾウ「はい、何でしょうか」

リョウマ「至急、ユキムラに話があると伝えてほしい。話があると」

サイゾウ「わかりました、リョウマ様。伝えてまいります」サッ

リョウマ「……」

リョウマ「カムイ、お前は俺の取った選択をどう思うだろうか。いや、わかり切っている事だな、考えるまでもない…」

リョウマ(だが、俺にはもうそれしかないのなら、それを信じて進むしかないということだ。それが誰にも理解されない独りよがりの戦いだとしても……)

リョウマ「一度逃げ出して、どういうわけかここにいるのは、事を成す為ではないのだろうな……」

リョウマ(俺にまだ地獄で苦しみ続けろ。そう言いたいんだろう……それが俺だけの地獄ではないことをわかっているというのにな)

リョウマ「……カムイ」

 ポタタッ

リョウマ「俺にはもう、この道以外になにもかも無くなってしまった…」
118 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 21:29:26.99 ID:u6a1AzZJ0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都へと至る街道―

マークス「……そろそろ夕刻になるが、どうにか間に合ったようだな」

レオン「うん、残念だけど向こうの準備は整っているみたいだね」

サクラ「……リョウマ兄様、ヒノカ姉様……」

エリーゼ「サクラ、大丈夫だよ。きっと二人とも助け出せるはずだから!」

サクラ「エリーゼさん、はい!」

カミラ「ええ、きっと助け出しましょう? ね、カムイ」

カムイ「もちろんです、そのためにここに来たのですから」

カムイ(ここまでようやくたどり着いたんです。リョウマさんとヒノカさん、二人を助け出してみせます。たとえ、それがとても難しいことだとしても、諦めるわけにはいきません)

アクア「カムイ」

カムイ「アクアさん?」

アクア「大丈夫、きっと大丈夫よ……」

カムイ「はい、ありがとうございます。」

マークス「よし、大部分はこのまま正門へとゆっくりと迫れ、敵陣へ攻撃を行い引き付け状況を維持せよ。その間にわれわれで隠し通路を通り、白夜王都への侵入を試みる。侵入の確保が済み次第、後続部隊も移動を開始せよ」

レオン「ここが正念場になる。みんな、気を引き締めていくんだ!」

カムイ軍兵士『おおおーーーーっ!!!!』

マークス「行くぞ、長きに渡る白夜と暗夜の戦いに今日で終止符を打つのだ!!!」

カムイ軍兵士『うおおおおおーーーーっ!!!!』

マークス「前進せよ!」チャキンッ 
 ヒヒーンッ パカラパカラツ

 ドドドドドドドッ

カムイ(……私も行きましょう。奴が、絶望が待っていると言い切ったあの場所へ――)

 チャキッ

(その絶望を否定するために……)
119 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 21:30:28.56 ID:u6a1AzZJ0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
120 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 21:31:40.06 ID:u6a1AzZJ0
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
121 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 21:32:57.91 ID:u6a1AzZJ0
 仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]←NEW
122 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/04/23(月) 21:48:17.82 ID:u6a1AzZJ0
今日はここまで

 次回から戦闘に入ります。
 リョウマステージ、初週時、襖越しにモズメ先生に倒してもらったのはいい思い出。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
 カムイと共に戦うメンバー
―出撃確定メンバー―
 ・スズカゼ
 ・サクラ
 ・カミラ
 ・アクア
 ・レオン
◆◇◆◇◆◇

―選択可能メンバー―
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 ゼロ
 オーディン
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 カザハナ
 ツバキ
 アシュラ
 フランネル

(それぞれのクラスは>>99を参照)

◆◇◆◇◆◇
・レオン、サクラと共に行動するメンバー

>>123 >>124

◆◇◆◇◆◇
・カミラと共に行動するメンバー

>>125 >>126 >>127

◆◇◆◇◆◇
・スズカゼと共に行動するメンバー

>>128 >129 >>130

 キャラクターが重なった場合は、安価が一つ下にずれる感じです。
 このような形で済みませんが、よろしくお願いいたします。
 
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 22:14:39.42 ID:/otmPn2Uo
カザハナ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 02:33:59.85 ID:tK2/zWzDO
シャーロッテ
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 08:49:10.14 ID:k2IThkfio
ルーナちゃん!
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 08:55:09.80 ID:kv/Xdmm7o
エリーゼで
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 20:37:27.28 ID:tK2/zWzDO
マークス
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 21:01:03.07 ID:GTsFRGLZo
ツバキ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 21:30:54.75 ID:9nM2SmIW0
アシュラ
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 23:24:26.33 ID:YxlRw62gO
モズメ
131 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 11:27:31.58 ID:e4dmhequ0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都正門―

カムイ軍兵士「マークス様、王族の方々を引き連れた突入隊は予定地点に到着したそうです」

カムイ軍正門攻撃部隊長「よし、ジェネラル隊前へ。前列敵の呪術部隊の動きに注意しつつ、このまま敵の攻撃を受け止めることに徹しつつ、間合いを徐々に詰めてほしい」

カムイ軍ジェネラル「了解した。これより横列陣を組み前進! ここが正念場、敵の注意をこちらに向けさせろ!」

カムイ軍兵士たち『はい!』

 ザッ ザッ ザッ

白夜兵「敵、前進を開始しました」

白夜兵「よし、全員弓を引け!!!」

 チャキキキッ‼‼

白夜兵「放て!!!」

 パシュシュシュッ!!

カムイ軍ジェネラル「攻撃か来るぞ!! 最前列は盾を正面に構え、後列は掲げよ!」

  ヒュンヒュンッ
 カンッ キィン!
  ピキンッ! コンッ!

カムイ軍ジェネラル「ぐっ、さすがに生易しい攻撃ではないか。後続は少なからずの隙間を作り、消耗した兵と入れ替わり休息を取るように努めよ!」

 ヒュンッ ヒュンッ

カムイ軍正門攻撃部隊長「……敵がこちらに向かってくる気配は無し、当然と言えば当然か。よし、後続の飛竜部隊にはいつでも飛び立てるように準備をするように伝えよ」

カムイ軍兵士「はい!」

カムイ軍正門(やはり正門の防御は厚いか。ココを抜けるのは至難の業となれば、例の隠し通路の存在に賭けるしかない。頼みますよ、マークス様)
132 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 11:34:06.14 ID:e4dmhequ0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都郊外の森『アクアが地図で示した場所周辺』―

 パカラパカラッ
  ヒヒーンッ

マークス「どうやら、この辺りのようだな」

レオン「みたいだね……」

シャーロッテ「えぇ、何かありますかぁ? 私には何も見えませんけど」

カザハナ「あたしも。何か目印があるように見えないし、どうしてそう思うわけ?」

レオン「竜脈の気配がするんだ。これは僕たちみたいな竜の血を継ぐ人間にしかわからないことだから、カザハナ達にはわからないのは仕方のないことだよ」

カザハナ「そ、そう」

スズカゼ「なるほど、王族の皆さんは竜脈の気配を察知しているということですね」

アシュラ「へぇ、そんなものがあるなんてな。ってことは目星は付いたってことでいいのか?」

マークス「ああ、こっちのようだ。エリーゼは私の後ろに、ルーナはカミラの護衛を頼む」

ルーナ「わかったわ。カミラ様、あたしの後ろにいてよね。何が来ても必ず守ってあげるから」

カミラ「ええ、頼りにしているわ。それにしても、こんなに竜脈の気配がしてるなんて……。かなり強いもののようだけど」

エリーゼ「もしかして、これが秘密の道の仕掛けなのかな?」

カミラ「そうかもしれないわ。それにしても特に隠すつもりもないみたいね」

ルーナ「なら、見つけ出してカミラ様が発動させればそれで終わりってことでしょ。白夜の連中、そんなことも分かってないの?」

カミラ「もしくは、見張る必要性が無い仕掛けが施されてるか…ね」

ルーナ「見張る必要性のない仕掛けって言われても、いまいちピンと来ないわ」
133 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 11:42:22.14 ID:e4dmhequ0
 ザッザッザッ

カムイ「……ここが中心のようですね。ここがその竜脈でしょうか?」

マークス「うむ、その様だ。しかし……」スッ

 ………

マークス「ふむ……」

レオン「マークス兄さん、どうだい?」

マークス「やはりか、私の呼びかけに応じる気配はない。おそらく、この竜脈を動かせる者は決まっているのだろう」

カムイ「決まっている?」

マークス「ああ。おそらく白夜に紫のある者、ここにいる中でそれに当てはまるのは二人だけだろう」

レオン「サクラ王女とカムイ姉さんってことだね」

カムイ「え、私とサクラさんですか?」

サクラ「私もですか?」

レオン「ああ、物は試しだ。サクラ王女、ここにある竜脈に触れてみてくれないかな?」

サクラ「は、はい、わかりました。えっと、し、しつれいします」スッ

 ……シュオンッ

サクラ「あ……」

マークス「どうやら正解のようだ。まぁ当然の事か、われわれ暗夜の王族に動かせてしまっては意味もない、これは王族が生きていて初めて役に立つものだという事だろう」

レオン「守るべき主がいなければ、これを使う意味もないからね。多分、最悪の場合を考えて作られていたものだろうけど、それが僕たちにとっての助けになるなんてね」

 シュオオオン……シュオオン……
134 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 11:45:10.21 ID:e4dmhequ0
サクラ「……ふぅ」

カムイ「サクラさん、大丈夫ですか?」

サクラ「は、はい。大丈夫です。でも、この竜脈にはとても大きな力が蓄えられているみたいです」

カムイ「え? あ、確かにすごい力です……。とても隠し通路を作り出すようなものとは思えません」

サクラ「……おそらく地形そのものに何かしらの変化が起きるかもしれません。その、ひっそりと入り込むというわけにはいかないと思います」

レオン「なるほどね……」

カムイ「だとしても、この機を逃すわけにはいきません。これは私たちにとって最後のチャンスなんですから」

カムイ(こうして道は確かにあった。それだけでも私たちには十分な結果です。これ以上を望む時間はもうありません)

カムイ「……」スッ

アクア「カムイ」

カムイ「アクアさん?」

アクア「ここでその竜脈を起動すれば、きっと敵に感づかれる。それは、リョウマとヒノカを危険に晒すことになるわ。それでも……」

カムイ「恐らくは気づかれると思います。でも、こうして私たちが攻めている時点でそれは変わりません。なら、今できる最善手を打つ以外の道はありませんよ」

アクア「……」
135 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 11:49:07.71 ID:e4dmhequ0
カムイ「それに戦う事よりも重要なのは、リョウマさんとヒノカさんを見つけて保護することです。それで王族を慕ってくれている方々が武器を下ろしてくれれば、それだけでも私たちの勝ちです。それに、私たちが王都内部に突入すれば一時的ではありますが敵は混乱するはず、その隙を突いて王城の中に入り込めれば勝機はあります。だから、これ以外の道は無いと私は考えています」

アクア「そう、ごめんなさい、今さらなことを聞いて。行きましょう、時間はもう限られているから」

カムイ「はい。……サクラさんもいいですか?」

サクラ「はい。リョウマ兄様とヒノカ姉様を助け出しましょう、カムイ姉様!」スッ

カムイ「もちろん、そのつもりです」スッ

 シュオンッ

カムイ「サクラさん、行きますよ!」

サクラ「は、はい!」ギュウッ

 シュインッ シュオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
 
 バキンッ ドゴンッ 
  ドドドドドドドドッ!‼‼‼

レオン「地形が盛り上がっていく!?」

カミラ「こんなの初めて見るわ。だけど内側から逃げ出すにしても、こ大きく変化が起きてるから感づかれる以前の問題ね。何かしてますって手を振ってるようなものよ」

マークス「ああ、それにこの音、とても誤魔化せるものではないな。カムイ、道が開けたと同時にわれわれは先行する。向うの出口を制圧し、お前を待っているぞ!」

カムイ「はい、よろしくお願いします」

 ドゴンッ!!!!

マークス「いくぞ、私に続け!!!」

 ヒヒーンッ
  パカラパカラッ!
136 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 11:52:47.34 ID:e4dmhequ0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・奥の広間』―

 ゴゴゴゴゴゴゴッ

上級武将A「な、なんだ!? いったい何が起きている!」

上級武将B「こんな時に、地震?」

ユキムラ「地震ではありませんね。おそらく、城から外へと出るための道を誰かが動かしたのでしょう」

上級武将A「外へと出るための道? なんだそれは!」

上級武将B「そんなものをどうして隠していたのですか?」

ユキムラ「その理由は簡単に考えられるはずですよ。どこに暗夜の裏切り者がいるかもわからない中で、多くの者がこれを知ることの危険性はわかっていると思いますが?」

上級武将A「なら、誰がその道を動かしている! ユキムラ様、まさかこの期に及んで白夜を裏――」

ユキムラ「……」スッ

 ガチャンッ
  カタカタッ チャキッ
 ガコンッ チャキッ 

からくり人形「」キュインッ キュイイインッ

からくり人形「」カチャッ ギギギッ

上級武将A「!」

上級武将B「!」
137 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 11:56:38.95 ID:e4dmhequ0
ユキムラ「それから先を言っても構いませんよ。とても痛いことになってしまうかもしれませんが?」

上級武将A「なっ、何の真似だ」

上級武将B「ユキムラ様、こんな時に仲間同士で争う意味などありませんよ」

ユキムラ「ええ、そのあなた方が先の件と同じように変な事を言わなければ、こんなことをするつもりはありません。このようなことで戦力を失うわけにはいきませんので」スゥ

 ガコンッ 
  カタカタカタッ

ユキムラ「これで満足ですか?」

上級武将A「っ、一度武器を向けておいて何が満足だ! ちっ、俺は奥に下がらせてもらう。こんなところにいて、背中から撃たれては堪ったものではない!」タッタッタッ

上級武将B「……私も失礼させていただきます。あなたでしたら、ここを死守するのもたやすいことでしょうし、戦力は温存しなくてはいけませんからね」

ユキムラ「おやおや、色を変える準備ですか?」

上級武将B「ふん…」タッタッタッ

ユキムラ「……」

 スッ
  タッタッタッ……

 スーッ

ユキムラ「それでどうしますか? このまま何もせずに待つというわけではないでしょう?」

???「……いずれここに来るはずだ。それをお前も分かっているだろう?」

ユキムラ「ええ、だから私はあなたの要求を受け入れたのですから……。あなたの言う通りに事は進めますよ」

???「……ああ」チャキッ
138 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:05:53.26 ID:e4dmhequ0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『出現した通路内部』―

 タタタタタッ

アクア「かなり長い道ね。いったいどこまで伸びているのかしら」

カミラ「それに竜がこうして進めるくらい大きいから、本当に大勢での脱出も考えて作られているみたい。これほどの人数を移動させるとなると、かなり広い場所に出ると思うわ。ルーナ後続は大丈夫?」

ルーナ「今のところは何も起きてないみたい。正門の陽動部隊に使いを出したから、最小限の部隊だけを残して本隊は合流する手はずになってるし、出る所によっては内側から敵の戦線を崩せそうね」

カムイ「はい。わっと……」

アクア「カムイ、大丈夫?」

カムイ「はい、なんとか。皆さんの気配だけを頼りに進んでいますが、少し足元がおぼつかない感じです」

 パシッ

カムイ「?」

アクア「こ、これなら大丈夫でしょう」ギュウッ

カムイ「はい、ありがとうございます。アクアさん」

アクア「気にしないで……」

カミラ「どうやら出口みたいね。ルーナ先行して頂戴」

ルーナ「分かったわ! へへん、あたしが一番乗りよ!」タタタタタッ

カムイ「すでにマークス兄さんたちが先行しているので一番ではないと思うんですけど」

アクア「いいじゃない。次の突入組の中では一番ではあるし、ルーナの調子が上がるように何も言わないのがベストよ」

ルーナ「聞こえてるわよ、アクア様」
139 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:09:59.73 ID:e4dmhequ0
 タタタタタッ ザッ

ルーナ「……敵はいないみたい、大丈夫よ!」

カミラ「それじゃ、行きましょう」

 タタタタタタッ

アクア「これは桜?」

レオン「……結構大きな場所みたいだ。カザハナ、ここがどこかわかるかい?」

カザハナ「う、うんわかるけど、、まさかこんな場所に外に出るための道が隠されてたわけ? 全然気づかなかったんだけど」

サクラ「はい、ここはシラサギ城の西庭ですね…」

スズカゼ「ここからの脱出となると、早期に要人を脱出させる手筈を整えていたということでしょう。もっとも、今の白夜の内政を思うにこれを使うには至らないのでしょうが」

カムイ「それで、マークス兄さんは……」

マークス「カムイ、こっちだ!」

カムイ「あ、はい。それで状況はどうなっているんですか?」

マークス「うむ、先行した騎兵隊が城の正門を抑えに向かっている。王都へと入るための橋は上がっている以上、正門を抑えてしまえば、王都から白夜兵が来るのを幾分か抑えることは出来るはずだ」

レオン「敵は僕たちが正門を落としにくると考えていたわけだから、当然と言えば当然ってところかな」
140 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:12:26.24 ID:e4dmhequ0
カザハナ「でも、王都で戦ってる兵が撤退してきた場合はどうするつもりだったのかな。あの跳ね橋、下ろすのに結構時間掛かったと思うんだけど」

レオン「敗走した兵を城内に受け入れるつもりはなかったのかもしれない。王都全体の人口が現在どれだけいるかはわからないけど、それらを城内にいれることは出来ないし、あのユキムラがそれを選ぶとは思えない。奴の目的は間接的に白夜の勝利であって、本質は個人的なことになるだろうから、無駄な戦力を救うという考えはしないはずだ」

カザハナ「そんな……」

マークス「だかこれはわれわれにとって有利に働く、王都で戦っている者たちが王族派だとするならば、城の中にいるヒノカ王女、リョウマ王子を助け出すことで一気に形勢を変えられるかもしれん。当初の予定通り部隊を分割し、さらにそれを細分化し事に当たろう。敵の態勢が整っていない今、一気に攻勢に出る!」

カムイ「はい。私たちは王の間へと向かいます。ここで決着を付けましょう」

マークス「よし、後続部隊の護衛を少数残し、これよりシラサギ城内部へに向かう!」

カムイ軍兵士たち『おおーっ!』
141 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:16:11.21 ID:e4dmhequ0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王国・シラサギ城『内部、剣の間に至る回廊』―

カムイ「……静かですね」

アクア「ええ、シラサギ城に入ってから少し経つけど、散発的に戦闘があるだけで大攻勢を仕掛けてくる気配はないわ」

カムイ「どういうことでしょうか……」

マークス「わからない。だが、これも何かの策かもしれん、気を抜くな」

カムイ「はい、サクラさん剣の間にはあとどれくらいで?」

サクラ「えっと、ここの渡り廊下の先です」

カムイ「わかりました。敵の奇襲があるかもしれません、皆さん気を付けてください」

 カタンッ カタンッ カタンッ

  タタッ タタッ タタッ

カザハナ「ここを歩くのは久しぶりだけど、まさかこんな形で通ることになるなんて思ってもなかったなぁ」

レオン「そうだね。僕もカザハナやツバキ、それにサクラ王女と一緒に歩くことになるとは思ってなかったよ」

ツバキ「たしかにねー。最初の頃じゃ考えられなかったかな」

サクラ「はい……。だけど、すごく静かですね……」

レオン「不気味なくらいに静かだ、注意しておいた方がいい。シャーロッテはサクラ王女の護衛を頼む」

シャーロッテ「はーい、まかせてくださぁい。そういうわけだからサクラ王女、私の陰に隠れてなさいよ」

サクラ「は、はい、よろしくお願いします」

シャーロッテ(それにしても、本当に何も仕掛けてくる気配が無いわね……)
142 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:19:13.99 ID:e4dmhequ0
カミラ「……妙ね」

マークス「カミラ、どうかしたか?」

カミラ「いえ、この渡り廊下の構造なら、外から金鵄武者が攻撃して来てもおかしくない構造なのに……」

エリーゼ「この前の戦いでいっぱい死んじゃったってことなのかな……」

マークス「かもしれんが、あれですべてが失われたわけではないだろう。しかし、カミラの言う通り妙だな。前方に何かしらの陣が敷かれている形跡もない……」

アクア「何かあるとは思うけど、何をしようとしているのかはわからないわね」

カムイ「……スズカゼさん、アシュラさん少しいいでしょうか?」

スズカゼ「はっ、何でしょうかカムイ様」

アシュラ「なんだ、カムイ様?」

カムイ「あの窓があるようでしたら外の様子を確認してもらえますか。敵の強襲があるかもしれませんので」

スズカゼ「わかりました」サッ

アシュラ「わかったぜ」サッ

カムイ(ここを渡り切れば剣の間、そして王の間に至れる。ここは守らなくてはいけない場所なのに、あまりにも手薄になっている。あと少しで渡り切るところまで来ているというのに敵に動きが無い、どういうことですか?)
143 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:22:32.99 ID:e4dmhequ0
スズカゼ「……」

アシュラ「……」

モズメ「アシュラさん、なに見てるん?」

アシュラ「ん、敵の強襲があったら大変だから、今確認してるところだ」

モズメ「そうなんか。でもここに来るのって少し不便や思う。渡り廊下がなかったら、下から登らないといけない構造になってるから、この廊下が無くなったら、下から回り込まないといけない形やもん。正直不便やって思うんよ」

スズカゼ「そうですね。ですが、敵の進撃が二つの方角からだけならば対処はしやすいものです。攻める側からしても、このような屋内での戦闘では数を活かすことも出来ませんから、少ない人数で対等に渡り合うこともできるでしょう」

アシュラ「そうだな、どんなに敵の数が多くても、100人相手にするのと10人ずつ相手にするのじゃ話が違ってくるし、敵の分断だってその気になれば……。ん!?」

カムイ「アシュラさん、何か見えましたか?」

アシュラ「いま、金鵄が一羽視界を通った。いや、四羽だな。しかし、妙だな」

カムイ「妙とは?」

アシュラ「あいつら武器は持ってなかった。代わりに一人、あれは陰陽師か? ともかく呪術に通じてそうな奴を乗せてるだけだったが……」

マークス「どちらにせよ敵には感づかれているようだ。全員、中央に寄れ。敵が挟撃に移るかもしれん」

カムイ「……」

カムイ(このタイミングで挟撃を仕掛けてくるということは、正面からも敵がやって来るということですか。なら、この廊下の中央に陣を組んで待つのが得策……。いえ、待ってください、さきほどモズメさんは何と言っていましたか?)

モズメ『この廊下が無くなったら、下から回り込まないといけない形やもん』

カムイ(………まさか!)
144 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:25:00.31 ID:e4dmhequ0
カムイ「マークス兄さん!今すぐこの渡り廊下を抜けましょう!」

マークス「カムイ?」

カムイ「これは敵の罠です。後続の方は後退、渡り廊下から離れてください! 早く!!!」

カムイ軍兵士「わ、わかりました。全員、退くんだ!」

 ダダダダッ
  タタタタタッ!

カムイ(先ほど金鵄武者が見えてから少しだけ時間が経っています。すでにそれが仕掛けられているとしたら、あとは――)

スズカゼ「敵、金鵄武者、離れていきます」

カムイ「くっ、はやくこの廊下を抜けて奥へ! おそらく、もう準備を整えているはずです!」

 シュオオンッ

レオン「これは、呪術の紋様!?」

 バシュウウッ!
 ボッボッ ボボボボボボッ!

サクラ「廊下全体に火が!?」

カムイ「くっ、早く、先へ!」

 タタタタッ

 シュオンッ キュイインッ

カムイ(間に合ってください!)

アクア「カムイ!」

カムイ「はあああっ」ダッ

 ヒュオンッ

  ドゴンッ バキィンッ
   ドガーンッ ボゴンッ!

 グググググッ グラッ

  ガラガラガラガラッ
    ドスンッ ズシンッ!

  ドゴォォンッ‼‼
145 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:30:10.20 ID:e4dmhequ0
カムイ「………くっ……」

 パラパラッ カタンッ コロンッ

カムイ「はぁ…はぁ…。み、皆さん無事ですか!」

マークス「なんとかな。状況を報告しろ、後続の被害はどうなっている!」

カムイ軍兵士『こちらは無事です。カムイ様の号令が無ければどうなっていたことか。感謝いたします!』

カムイ「よかった。そちらの被害がなくて何よりです」

カムイ軍兵士『はい。今、飛竜部隊を……! 地上より、敵金鵄部隊接近!』

 バサバサッ

 チャキッ パシュンッ
  パシュンッ!

  ヒュンヒュンッ!

マークス「くっ、このままここにいるのはまずい。お前たちは別のルートを探しだし合流せよ!」

カムイ軍兵士『わ、わかりました!』タタタタッ

カムイ「私たちも早く金鵄武者の攻撃が届かない場所まで――」

 タタタタッ

カムイ(この気配、敵!? しまった、この騒ぎに紛れて接近を許していたというのですか!)チャキッ

???「」サッ

カムイ「くっ」

アクア「カムイ!」

???「すまないが、ついてきてもらうぞ」ガシッ

カムイ「しまっ――」

???「今だ、やれ」

???「ああ……」

 カランコロンッ
  バシュッ

カムイ「うっ……」クタッ

???「いくぞ」サッ

???「ああ」サッ
 カランコロンッ

アクア「カムイ、待ちなさい!」ダッ

カミラ「アクア! ルーナ、アクアを追って、一人にしてはいけないわ」

ルーナ「わかったわ、アクア様!」タタタタッ

マークス「われわれも追うぞ!」
146 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:32:25.37 ID:e4dmhequ0
 タタタタッ

???「……」

 ピシャッ!

アクア「くっ! 開かない。なら、はああっ!」

 ブンブンッ
  キィンカキィン

ルーナ「アクア様、一人で行ったら危ないでしょ!? で、カムイ様は?」

アクア「この奥に連れていかれて……。壊そうとしているんだけど、びくともしないわ」

ルーナ「そんなわけないでしょ、あたしがやるわ! てやああっ!!!」ブンッ

 ガキィン

ルーナ「……な、なによこれ、すっごい手が痺れるんだけど」ヒリヒリ

マークス「二人とも大丈夫か?」

アクア「マークス、カムイがこの奥に……マークス向こう!!」

マークス「むっ?」

 ザザッ

白夜弓聖「……」

白夜剣聖「……」

白夜上忍「……」

白夜兵法者「……」

マークス「くっ、囲まれたか」

レオン「敵の手にまんまと乗せられた。くそっ……」

サクラ「…そんな」

カミラ「……」

アクア「……カムイ」
147 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:33:22.47 ID:e4dmhequ0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―シラサギ城『剣の間・中央』―

 ピチャンッ

カムイ「うっ、ううっ……ここは、私は一体……」

???「目覚めたか。まぁ、一瞬だけ眩暈を起こすくらいのものだから心配はしていなかったがな」

カムイ「その声、サイゾウさん?」

サイゾウ「よく覚えているとはな。もう、長い時間顔を合わせてすらいなかったはずだというのに」

???「カムイ様にとって音は生命線ということだろう。光を失っているのならば、この音に対する記憶力が良いことは不思議な事ではないさ」

カムイ「カゲロウさん?」

カゲロウ「ああ、こうして声を掛けるのは久しぶりの事になる、カムイ様。手荒な真似をしてすまなかった」

カムイ「……なぜ私を殺さなかったんですか? あの状態なら、私を殺すことはたやすかったはずです」

サイゾウ「たしかにあの瞬間、お前の首を掻っ切る事も出来た。だが、主はそれを望んでいない。だからこうしてここに連れてきたということだ」

カムイ「主?」

???「連れてきてくれたようだな。サイゾウ、カゲロウ」

カムイ「……あ、あなたは」

サイゾウ「……はっ」

カゲロウ「ご命令の通りに、リョウマ様」

リョウマ「ああ、ご苦労だった……」

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「あの国境での戦い以来だな、カムイ。いや――」

「暗夜王国のカムイ王女、そういうべきだったな……」
148 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/01(火) 12:34:22.08 ID:e4dmhequ0
今日はここまで

 今日はリョウマ兄貴の誕生日、みんなでエビフライを食べよう。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/02(水) 00:03:38.13 ID:TQRkiyG7o
乙乙
兄との一騎討ち… 自軍に同行する妹…
150 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 21:45:11.95 ID:mhX1oVpl0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・入り口周辺』―

白夜兵たち「……」

マークス「……」チャキッ

レオン「……」シュオンッ

カミラ「さぁて、どちらから飛びかかってくるのかしらね?」

ルーナ「カミラ様はちょっと下がってて。さぁ誰から来るの、勿体ぶってないでさっさと来なさい!」チャキッ

白夜兵「……」スッ

 タタタタッ

ルーナ「え? ちょ、何処に行くつもりよ! ここまで来て逃げ出すなんてどういうつもりなわけ!?」

カミラ「ルーナ、待ちなさい。相手の動き、逃げたというわけじゃないわ。この先で私たちを待ち構えているはず」

マークス「ここから先に進むつもりが無ければ、攻撃をしないということか……。囲まれた以上、すぐに攻勢をかけてくると思ったが……」

レオン「カムイ姉さんを確保する事だけが目的だったっていうことかもしれない。くそっ、敵の攻撃に気取られなければ、守れたはずなのに」

カミラ「今さらそれを言っても仕方ないわ。だけどカムイを攫われたのに、黙っていられる私たちだと思っているのかしらね?」

レオン「このまま黙ってみてるつもりはないよ。カムイ姉さんを助け出すんだ」

サクラ「はい。だけど、どうしてカムイ姉様を攫う必要があったんでしょうか……。あの瞬間に私たちを一網打尽にすることは出来たはずなのに……」
151 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 21:54:59.42 ID:mhX1oVpl0
レオン「ユキムラがそうさせたに決まっているよ。僕たちをこうして足止めするのも狙いの一つだろうね」

カザハナ「っていうことは、ゆっくり進軍ってわけにもいかないよね……」

シャーロッテ「一気に畳み込まないといけないってわけか。しかしあいつら。陰に隠れてから姿を見せないし、まったく男らしく出てきなさいっての」

レオン「地の利は敵にある以上、こちらが不利なのはわかっているけど、いくしかないね」

スズカゼ「レオン様、ここは私が先行いたしましょう。ここの構造には覚えがありますので」

レオン「わかった。おそらくだけど、奴らが侵入を許すのはこの先の角までだ、そこを越えたら攻撃に打って出てくるはずだ……。出来れば同時に攻めるべきだとは思うけど……」

マークス「ならば、左への進軍は私たちの役目ということだな」

レオン「え、マークス兄さん?」

マークス「なに、片方に戦力を集中したところで挟み撃ちにされてしまっては、こちらから打つ手は無くなってしまう。ならば、こちらをわれわれが抑えに回るのは必然だ」

レオン「だけど、敵は大勢いるはずだ」

マークス「ふっ、私の剣の腕を甘く見てもらっては困る。それにカミラとエリーゼも一緒だ。それだけでも十分な戦力だろう?」

ルーナ「ちょっと、マークス様。あたしも入れてよ!」

マークス「そういうわけだ。だから心配することは無い」

レオン「……わかった、そっちは任せるよ。マークス兄さん」
152 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:06:20.34 ID:mhX1oVpl0
マークス「ああ。よし、カミラ、エリーゼも準備はいいか?」

エリーゼ「うん、怪我をしたら言ってね。すぐに治しちゃうから!」

カミラ「ええ、お願い。ルーナ、私と一緒に先頭に立ってくれる?」

ルーナ「問題ないわ、カミラ様。早く敵の仕掛けを解いて、カムイ様と合流しないとね」

マークス「よし、こちらの準備は整っている。準備が整ったのならば合図を頼む」

レオン「分かった。スズカゼ、準備はいいかい?」

スズカゼ「私は出来ていますよ。アシュラさん、右から援護をお願いできますか?」

アシュラ「ああ、任せてくれ。といっても相手の庭だ、うまくいかねえかもしれねえ」

ツバキ「最初から弱気なのは感心しないよ?」

アシュラ「ふん、悪かったな」

モズメ「大丈夫、そこはあたいが何とかするで。それより早く、カムイ様を助け出さんと……」

スズカゼ「はい、モズメさんの言う通りです。事は一刻を争う事態ですから、慎重に大胆に進行していきましょう。お待たせしましたレオンさん、いつでも行けますよ」

レオン「うん……。アクアはどうする?」

アクア「私は……ここで様子を伺う。渡り廊下は完全に崩落して、敵も入って来ることはできないみたいだから……。それに、この扉の仕掛けが止まった時に、すぐに駆け込めるもの」

カミラ「わかったわ、カムイの事をよろしくおねがいね?」

アクア「……ええ、任せて。みんな気を付けて」

レオン「ああ。それじゃ、行くよ!」ダッ
153 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:11:36.31 ID:mhX1oVpl0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―『剣の間・中央』―

 タタタタタタッ
  キィン ガキィン!

カムイ「この音は……」

リョウマ「お前の仲間たちが進軍を開始したということだろう。まぁ、こうしてお前を捕まえここに捕らえているのだから当然と言えば当然か」

カムイ「リョウマさん、私たちはあなたと戦うために来たわけじゃないんです。私は、あなたを助けに――」タッ

リョウマ「……」チャキッ ヒュンッ

カムイ「!」

リョウマ「それ以上近づくのであれば、すぐにでもお前を切り伏せに掛かるぞ」

カムイ「リョウマさん、何のつもりですか……」

リョウマ「敵が近づいてきているのであれば、剣を取るのは当然だろう。それとも、お前は敵である相手に無防備であり続けるのか?」

カムイ「何を言っているんですか、私たちはリョウマさん、そしてヒノカさんを助けにここまで来たんです! きっと、ヒノカさんも他の皆さんが見つけ出しているはずです」

カムイ(そうです、きっと城に入り込んだ方々がヒノカさんを見つけ出しているはず)

カムイ「ユキムラさんにヒノカさんを人質に取られているんですよね。なら、それに屈しては――」

リョウマ「ヒノカか、ヒノカなら王の間でミタマが守っている。お前の仲間が助け出しているということはないだろう。ここに至る道はすべて潰させてもらった、到着するのに時間は多くかかるだろう」

カムイ「止めてください。私たちと戦うためにこの場を用意したようなことを言わないでください。嘘だと言ってください、おねがいですから……」

リョウマ「……」

カムイ「リョウマさん……」
154 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:14:50.20 ID:mhX1oVpl0
リョウマ「サイゾウ、カゲロウ。命令を与える」

サイゾウ「はい、リョウマ様」

カゲロウ「ご命令を」

リョウマ「それぞれの持ち場に赴き、任を果たせ。これが、最後の命令だ」

カムイ「カゲロウさん、サイゾウさん。私たちが戦う必要はもうないんです。私はあなたたちと手を取り合いたくて、ここまで来たんです。だから、だから――」

サイゾウ「……」

カゲロウ「……」

カムイ(だから、そんな命令に従わないで――)

サイゾウ「……わかりました、リョウマ様」

カゲロウ「……全力で任務を全うさせていただきます、リョウマ様」

リョウマ「……よし、行け」

サイゾウ&カゲロウ『御意』シュタッ!

リョウマ「……」

カムイ「なんで……、なんでですか……」

リョウマ「……」
155 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:25:57.98 ID:mhX1oVpl0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・右の部屋』―

サイゾウ「状況はどうなっている」シュタッ

上忍「お、サイゾウ様。少し前に敵の進軍が始まりましたよ」

サイゾウ「わかっている。だからこそ、戻って来た。相手は我慢できない性質のようだな?」

上忍「ええ、こっちが退いてすぐに仕掛けてきました。まぁ、前衛はユキムラ様を慕っている者たちに任せていますが……。やはり、力量の差は隠せませんね。雑草みたいに狩られてますよ」

サイゾウ「ふっ、ここにいれば安全だと高を括っていた者たちだ。早々に敵の餌食になってもらった方がいい、強固な陣にあいつらは必要ない。もっとも、ここまで奴らが上がってくるのも速かったことを見るに、王都の城壁防衛に加えなかったのは良い方角に働いたか……」

上忍「ええ、しかしあれですね。忠儀も何もないものが一番の鉄火場に送り込まれることになるとはねぇ?」

サイゾウ「ここにいる者のは全員が忠儀を尽くせない馬鹿ものばかり、そうだろう?」

上忍「ははっ、そうでした。しかし、サイゾウ様ともあろうお方が馬鹿者というのは聊か不思議な気持ちでございます」

サイゾウ「……俺は馬鹿者だ。どこまでもその通りに動き、そして最後には最も望まれていなかったことを行った。忠儀も何もあったものではない」

上忍「そんなことはありません。それにサイゾウ様が馬鹿者でしたら、我々は馬鹿にもなれない屑者になってしまいます故、少しばかり私たちにも馬鹿者をおすそ分けいただきたい」

サイゾウ「そんなものを御裾分けされてうれしがるな」
156 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:30:19.05 ID:mhX1oVpl0
上忍「いやいや、うれしいものですよ。この行為に意味があるのかないのかという無粋な問いかけが来れば、最高の意味があると私は答えましょう」

サイゾウ「……そうか」

 ドゴォンッ!

上忍「いやはや、やはり城でのさばっているだけの者たちでは、彼らが来るのも時間の問題ですね」

サイゾウ「そのようだ。すまないが、ここは俺に任された最後の陣だ。小さな場所ではあるが、ここには俺が託された最後の使命がある」

上忍「ええ、わかっていますよ。ではサイゾウ様、これにて失礼します。二人はちゃんとサイゾウ様に恥じないように努めるんだぞ」

婆娑羅「任せろ。どんな敵が来ても怯むことなく戦って見せるさ。あの怯え腰の上級武将のような恥ずかしい戦いはしないさ」

陰陽師「少し黙っていてくださいまし、今最後の式神を折り終える所ですから。よし、これで完成です。ささっ、サイゾウ様の事は私たちに任せて、あなたはあなたの任に向かいなさい」

上忍「ああ、そうさせてもらうよ。サイゾウ様」

サイゾウ「なんだ?」

上忍「出来る限り時間をおつくりします。もしも、その時が先に来ましたら――」

サイゾウ「わかっている、その時は覚悟を決めよう……」

上忍「はい、それでは」シュタッ

サイゾウ「……」

サイゾウ(……すまない)
157 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:31:51.04 ID:mhX1oVpl0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・右の通路』―

 キィン キィン!

スズカゼ「そこです!」カランコロンッ バシュシュ

 ズシャッ ビシャアアッ

白夜兵「ぐあああっ……」ドサッ

白夜兵「ひ、怯むな! 敵の数はわずか、押し切ってしまえばこちらのも――」

モズメ「悪いけど、討たせてもらうで!」チャキッ キリリッ パシュンッ!

 ヒューーッ ドスッ

白夜兵「――のぉ……」ドタンッ

白夜兵「くそ、何だよこれ。ここまで敵は来ないって話だったじゃないか! なんでこんなことになってんだよ!」

白夜兵「我らの長は何をやっているんだ! このままでは!!!」

アシュラ「なんなんだこれは? 相手するだけ無駄ってくらいに混乱してるじゃねえか」

ツバキ「おそらくだけど、僕たちがここに来るのを見越してたのは、最初に包囲してきた奴らだけみたいで、今相手してるのはそれも考えてなかった腑抜けみたいだねー。でも、そろそろ通路の中ほどまで来たから変わる気がするよ」チャキッ

レオン「……みたいだね」

カザハナ「……うん、空気が変わった。ここからが本番ってことね」
158 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:36:09.65 ID:mhX1oVpl0
シャーロッテ「どこから来るかわからないわね……」

 ……ギシッ

上忍「そこだ!」チャキッ

サクラ「シャーロッテさん!」

シャーロッテ「!!!」チャキッ

 ヒュンヒュン
  キィンキィン!

シャーロッテ「ふーっ、ありがとう、サクラ様。それにしても中々の挨拶じゃねえの……。こんなにか弱い女に向かって攻撃するなんて」

上忍「ふむ、か弱いと呼ぶには少々重たい獲物を持っているみたいだが」

シャーロッテ「これでもか弱いんだよ!」

上忍「まぁ、か弱くてもか弱くなくてもいい、ここから先に行かせるつもりはないからな!」スタッ

 バタンッ!

兵法者「せやあああっ!」ダッ チャキッ

レオン「隠し扉から出てくるのはいいけど、もう少し距離を狭めないと!」スッ 

レオン(この距離、ボクの攻撃の方が――)

 ギィ 

レオン「!」サッ

弓聖「……くらえっ!」チャキッ ギリリッ パシュッ

 タンッ

レオン「くっ、中々やる……」

兵法者「へっ、その背中、もらった!」ダッ

レオン「!」
159 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:39:41.92 ID:mhX1oVpl0
カザハナ「そうはさせないよ! せいの、それ!」シュッシュッ!

 ザクザクッ

兵法者「ぐっ……。このぉ!!!」ジャキッ

サクラ「ごめんなさい!」パシュッ 

 ドスッ!

兵法者「うっ、は、はぁ、もう少し戦っていられるかと思ったが。すまない、俺はここま……」ドサッ

上忍「ちっ、まだまだ退くわけにはいかん!敵を抑え込むぞ!」タッ

弓聖「援護する! 次の者も進め!」パシュッ

剣聖「はあああっ!」タタタッ

 チャキッ ブンッ

モズメ「っ、あと一歩遅かったら危なかったわ。少し下がるで!」タッ

アシュラ「ちっ、中々の手練れだな。どうする?」

スズカゼ「思った以上にあの弓がこちらの動きを妨害して来ますね」

ツバキ「なら、ここは俺が囮になるから、その間に弓を無力化してくれるかなー? あと、できればあの忍は誰かに頼みたいんだけど……」

アシュラ「へっ、それは俺がやるさ。レオン様、こちらから仕掛ける、援護を頼むぜ」

レオン「わかった。ブリュンヒルデ!」シュオンッ!

上忍「はっ、そんな攻撃が当るか!っと」チャキッ

 キィン!

アシュラ「やるねぇ。フウマの奴らに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ」

上忍「それは褒め言葉として受け取っておこう!」ダッ ゲシッ
160 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:40:57.75 ID:mhX1oVpl0
アシュラ「うおっと、そっちには行かせねえぜ」チャキッ シュシュシュッ!

上忍「はああっ」チャキ シュシュシュッ

 キキキィンッ! ゴトゴトゴトンッ

剣聖「その背中、貰った!」

ツバキ「そうはいかないよー。そこだね!」チャキッ バシュッ

 ビチャアッ

剣聖「ふん、そんな傷で倒れると思ったか!?」ブ゙ンッ

 サッ スタタッ チャキッ シュッ!

ツバキ「すごい剣さばきだけど、俺だけが相手じゃないってこと忘れてるよー?」

剣聖「くっ!」キィンッ

レオン「もらった! ブリュンヒルデ!」シュオオオオッ

上忍「そうはいかんぞ」サッ

 キキキィン!

剣聖「くっ、すまん、助かった」

上忍「気にするな。まだまだ時間は稼がないといけないからな」チャキッ

レオン「……悪いけど、そんな時間稼ぎはさせるつもりはないよ」

上忍「へっ、上等!」ダッ!
161 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:44:23.26 ID:mhX1oVpl0
 キィン カキィン!

上忍(……ああ、やっぱり勝てねえな。わかってはいたが……。時間稼ぎくらい出来ればと思っていたが、こんなの稼ぎにもならねえか……)

 キィン ブシャッ!

剣聖「がっ、うううっ、……」ガクッ ドサリッ……

弓聖「くっ、早く援護を――」

モズメ「そこや!」パシュッ

 ドスッ! ポタタッ

弓聖「ぐっ、まだ――!!!」

スズカゼ「すみませんが、討たせていただきます」

弓聖「しまっ――」

 カラコロンッ バシュッ!!!

 ドスリッ

弓聖「――!!!!!」 ゴトンッ ドサリッ

アシュラ「最後だ! 畳みかけるぞ」

レオン「ああ」

上忍「……」

上忍(……勝てないとはわかっていた。sかし、わかっていても、ここは踏ん張らないといけないってのによ……)

 キィン ガシッ ドゴンッ

上忍「がっ――」ポタタッ

レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ

 グラッ シュオオオオオンッ!

上忍「……ははっ、情けない」

上忍(サイゾウ様……。申し訳ありません)
162 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:46:37.09 ID:mhX1oVpl0
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・中央』―

カムイ「リョウマさん、サイゾウさんとカゲロウさんたちに戦いを止めるように言ってください! 私たちは――」

リョウマ「……いつまでそうやっているつもりだ、暗夜の王女よ。どんなに叫んだところで、指揮官である俺が倒れなければ戦いは終わらない」

カムイ「なにを言っているんですか……」

リョウマ「もしも、お前が戦いの早期決着を望むなら、するべきことは簡単だ。俺は今この白夜の全権を託されている。俺がお前たちを討つのは当然のことだ。ユキムラの望みと俺の行動に関係は無い」チャキンッ

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「……剣を抜け、暗夜の王女よ。それがおまえの望む、多くの者の手を取る最善の方法だと、わかっているだろう?」

カムイ「ま、待ってください。なんで剣を取らなくてはいけないんですか。私はリョウマさんと戦うために、ここに来たわけでは――」

リョウマ「……その道にどんな意味があるか、俺はそれを知るつもりはない。それがどれほど理想に溢れていたとしても、俺はその旗を靡かせる一陣の風になる事はない。俺には俺の旗がある以上、俺は俺の旗に身を委ねるまでだ」

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「さぁ、決着を付けよう。この長きに渡る長い戦いに、終わりを迎えるために……」チャキッ

 バチンッ シュオンッ

「白夜王国第一王子、リョウマ。いざ、参る!」ダッ
163 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/08(火) 22:47:43.60 ID:mhX1oVpl0
今日はここまで
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 10:44:03.31 ID:MmX93efDO

リョウマ「参る!」(25ターンくらいは待ってやるか…)
165 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 20:14:27.51 ID:+QOLhYag0
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・左区画』―

 キィンキィン

白夜兵「せやああっ!」ダッ

マークス「甘い!」チャキッ

 カキィン キンッ!

白夜兵「ぐっ!」

マークス「カミラ!」

カミラ「ええ、任せて。はあっ!」シュオオンッ

 ドゴンッ

白夜兵「っ!!!」

ルーナ「悪いけど、押し通らせてもらうわよ。はあああっ!」ダッ
 
 ドゴンッ

白夜兵「ぐあああっ」ドササッ

ルーナ「へへん、ざっとこんなもの――」

 カタカタッ チャキッ

カラクリ人形「……」

ルーナ「!」

 パシュッ
  ザシュンッ

ルーナ「っ! やってくれるじゃないの!」

マークス「ルーナ、相手の挑発に乗るな! エリーゼ、ルーナの手当てを頼む。右のは私が処理する、カミラ左を頼めるか」

カミラ「わかったわ」バサッ
166 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 20:26:43.76 ID:+QOLhYag0
カミラ「私の可愛いルーナに傷をつけてくれたこと公開させてあげるわ」ドゴンッ ガシイッ

カラクリ人形「ギギギッ」チャキッ

カミラ「そのまま捻り潰しなさい!」

 グオオオオオンッ バギンッ!!!
  ゴトンゴトンッ

カラクリ人形「……」カタカタカタッ
  チャキンッ ジャキンッ

カミラ「あらあら、ここから先はカラクリ屋敷みたいね」

マークス「他にも何かしらの仕掛けを隠しているかもしれん。警戒を怠るな」

ルーナ「っ……」

エリーゼ「ルーナさん、動かないでね、えーい!」シャランッ

 ホワンッ

エリーゼ「はい、これでもう大丈夫だよ」

ルーナ「ふー、エリーゼ様、恩に着るわ。それにしても最初にいた敵は思ったよりも歯応え無かったけど、どうして?」

マークス「ああ、手練れというわけではなかった。しかし、ここからの空気、間違いなく腕に自信のある者がいる」

カミラ「ええ、それにこのガラクタの動きも良くなってる。甘く見ていると、痛い目を見ることになるわ……」

からくり人形「……」

 カタカタッ
  チャキッ ギュイインッ
167 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 20:34:14.08 ID:+QOLhYag0
ルーナ「うえぇ……。ただでさえ不気味なのに、頭の中からあんなの出すとかセンスないわ」

エリーゼ「いっぱい集まって来てる。お兄ちゃん、これからどうするの?」

マークス「決まっている、向かってくるものはすべて薙ぎ払い、カムイを助け出すだけのことだ。おそらく、このカラクリを操っている者がいる。それを倒すことが出来れば……」

カミラ「……そうね。だけど……」

 カタカタッ
  チャキッ チャキッ

カミラ「……」

カミラ(向こうから仕掛けてくる気配が無いわね。あんなに数を出しているなら、畳みかけてきてもいいのに。どういうつもりかしら?)

マークス「カミラ? どうかしたか?」

カミラ「……なんでもないわ。」

カミラ(威嚇のつもりかもしれないけど、それに乗っていられるほど私たちに余裕はないのよ)
168 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 20:42:45.82 ID:+QOLhYag0
カミラ「行きましょう、マークスお兄様。カムイが待っているわ」

マークス「ああ、奴らの戦列を崩す。ルーナ、同時に仕掛けられるか?」
 
ルーナ「あたしを誰だと思ってるわけ。そんな簡単なこと出来ないわけないでしょ?」

マークス「ふっ、ではその腕、確かめさせてもらうとしよう……。行くぞ!」ダッ

ルーナ「そう来なくっちゃ! 右は任せて!」ダッ

マークス「うむ! せやああああっ」ダッ

 キュイインッ カタカタッ
  カチャッ キリリッ 

カミラ「エリーゼ、弓の人形を狙いに行きましょう。二人がいっぱい動けるように」

エリーゼ「うん、わかったよ。お姉ちゃんに合わせるね! よーし!」シュオンッ

カミラ「それじゃ、お仕置きの時間よ」

エリーゼ「おしおきしちゃうよー!」

 シュオオオオッ
  ドゴン ドゴゴンッ!!
169 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 20:50:40.88 ID:+QOLhYag0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―剣の間・左区画『奥の座敷』―

 プツンッ 
  プツツンッ

白夜絡繰師「あちゃ〜、一気に数を減らされちゃいましたね。あとどれくらい残ってるかな?」

白夜槍聖「今さら数えでも意味などない、それ次の人形を動かし始めることに専念しろ。敵の進軍、やはり思った以上と見える」

白夜絡繰師「はいはい、わかってますよ。まったく、これでも真面目にやってるつもりなんですけどね……。流石に数を見せつけて動きを止める相手じゃなかったか」

???「そうだろうな、カムイ様が私たちの手中にある以上、止まることなどありはしないさ」

白夜絡繰師「はぁ、時間稼ぎの効果は無し……。うまく動かせてたと思うんだけどな。そういえばカゲロウ様、絡繰獅子の調子はどうですか?」

カゲロウ「ああ、良好だ。すまない、私のためにここまでのことをさせてしまった」

白夜絡繰師「何言ってるんですか。あんな大怪我で帰ってきたのに、すぐに任務に戻るなんて言って、あんなこと聞かされたら手を貸さずにいられませんよ!」

白夜槍聖「私もです。それにわれわれのような一介の兵が、リョウマ様の枕下を守っておられるあなたと共に戦える、これほど光栄なことはありません」

カゲロウ「……私はそんな立派な人間ではない。もうこれを駆使しなければ自由に動くこともままならん。そして、その調整すらまともにできない。私の我侭にお前たちを付き合わせているだけだ」
170 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 20:55:22.34 ID:+QOLhYag0
白夜絡繰師「いいえ、私たちが好きで選んだことですし、サイゾウ様と共に戦ってる連中も命のことなんて考えてないはず」

白夜槍聖「その意見には私も賛成だ。この身はいついかなる時も、リョウマ様のためにと決めていたものですので」

カゲロウ「……いや、今からでも遅くはない。私だけを置いてお前たちは身を隠すといい。攻撃する意思が無ければ、あの者たちは命を奪ったりはしない。お前たちだって、リョウマ様から命令を受けていたはずだ……」

白夜絡繰師「いや、忘れてしまいましたね。カゲロウ様の足の調整ばかりしていましたので」

白夜槍聖「それに、我らが主はまだ倒れてはいない。倒れていないというのに武器を収めるなど、侍の名折れというものです」

白夜絡繰師「あんた、槍術師だから侍じゃないんじゃない?」

白夜槍聖「心の持ち方に獲物の形など関係ないということだ」

白夜絡繰師「はいはい、心の中に太刀を持ってるってことね。まぁいいや、そういうわけだからカゲロウ様、どこかに隠れて待ってるなんて、私たちにはできません」

カゲロウ「これは私とサイゾウが選んだこと、お前たちが共に歩む必要は……」

白夜絡繰師「はいはい、もうここまで来てそういうこと言わないでください。結局、ここにいるのはリョウマ様の考えに異議を申し立てたくて仕方なかった人だけなんですから。私もそいつも、そしてカゲロウ様も同じ穴の貉ということです」

白夜槍聖「お前、カゲロウ様になんてことを……。まぁ、確かにそうかもしれないな。あんなことを言っていたが私はすでにリョウマ様からの任を放棄してここにいるのです。まさか、カゲロウ様もその一員とは思ってもいませんでしたが」

カゲロウ「お前たち……」

白夜絡繰師「そういうわけですから、ここからは言いっこなしです。カゲロウ様の足は最高の状態に仕立て上げますので、期待しててくださいよ。主のために死力を持って事に当たる、それが私たちの任なんですから」カチャカチャ

カゲロウ「……」
171 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 20:59:09.88 ID:+QOLhYag0
 ドゴンッ‼‼‼‼

白夜槍聖「……もう近くまで来ているな。おい、準備は出来ているのか?」

白夜絡繰師「バッチリね。はい、カゲロウ様、こちらの絡繰獅子にお乗りください」

カゲロウ「ああ……。ふっ、良い動きをするな。きちんと私の指先通りに動いてくれる。しかし、揺れがすごいな」カランコロンッ

白夜絡繰師「いい仕事するでしょ。あ、それと胸はちゃんときつく縛っておいた方がいいですよ、カゲロウ様のそれじゃ、もう揺れてゆれて大変なことに……」

白夜槍聖「馬鹿なことを言っている暇はない。お前の準備を済ませろ」

白夜絡繰師「はいはい。やれやれ、真面目な男は駄目だね本当に、よっこしょっと……」

 カランコロン ピンッ
  ガシャンッ カタカタカタッ

白夜絡繰師「カゲロウ様、残ってる絡繰人形は私の任せてください。敵に多くの隙を与えてみせます。それでその隙を突いて攻撃をお願いいたします」

白夜槍聖「私が先陣を、そう簡単にやられるつもりは在りませんので、ご安心ください」

白夜絡繰師「頼むよー。一気に切り込んでポックリ逝ったりしたら承知しないからね」

白夜槍聖「任せておけ。カゲロウ様は、よろしいですか?」

カゲロウ「ああ、先陣を任せよう……」

 ガシャンッ
  ゴトンッ
   カランカランッ

カゲロウ「……」

白夜槍聖「……」チャキッ

白夜絡繰師「……」カランコロンッ

 タタタタタッ!

カゲロウ「カゲロウ、参る」ダッ
172 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 21:04:12.81 ID:+QOLhYag0
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◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・剣の間『右区画・奥の廊下』―

スズカゼ「はあっ!」カランコロンッ バシュシュ

白夜兵「ぐっ……、くそっ、まだまだ!!!!」ジャキッ

 ヒュンッ ドスリッ

白夜兵「がっ――……ううっ」ドサリッ

モズメ「許してな……。倒さへんと、あたいらがやられてまうから……」

アシュラ「ん……攻撃が止んだみたいだぞ?」

モズメ「そうみたいや、敵がこっちに来る気配が無くなったみたいやけど……」

ツバキ「だけど、まだ全員倒したってわけじゃ無さそうだね。レオン様はサクラ様の援護をお願い」

レオン「ああ、シャーロッテとカザハナは後方に注意して、まだ残っている敵が来るかもしれないから」

シャーロッテ「わかりましたー」

カザハナ「うん、わかったよ」
173 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 21:08:44.48 ID:+QOLhYag0
ツバキ「……あの部屋の先にも通路があるけど、ここに入るのは初めてだから何がどうなってるのかわからないなー」

サクラ「はい、いつも移動には中央の道を使っているので、こちらの構造がどうなっているのかわかりません」

スズカゼ「ご安心ください、私は覚えがありますので。この先には一つ部屋があって、そこに中央の間に続く場所を閉じる仕掛けが一つ設置されていると聞いたことがあります」

レオン「……つまり、姉さんが連れ去られた先に行くためには、あの部屋にあるそれをどうにかしないといけないってことだね?」

スズカゼ「はい……」

アシュラ「ならさっさと部屋を制圧するぜ。この細い廊下がどうにもきな臭いけどよ……」

スズカゼ「私たちが先行します。レオン様たちは後に続いてください」

レオン「わかった。こっちも警戒しつつ進むことにする。サクラ王女を中心にして敵の攻撃に注意して」

スズカゼ「……」

スズカゼ(おそらくあの部屋で待ち構えているのは……)

 タタタタッ
174 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 21:13:23.42 ID:+QOLhYag0
スズカゼ「……」カランコロンッ

ツバキ「……気配はないね」

アシュラ「いや、これは気配を殺してるんだよ。こんなに露骨に気配を消してたら、ここにいるって思わせてるようなもんさ」

モズメ「んー、よーわからへん」

スズカゼ「いいえ、わかるものですよ。特に感じ慣れている気配というのは、手に取るようにわかるものです」

ツバキ「どういう――」

 シュパッ
  キィン!

モズメ「えっ、何処から飛んできたん!?」チャキッ

スズカゼ「こちらから入り込んでいるんですから、見える位置に隠れてはいないでしょう。もっとも、この距離なら隠れる必要もないという事でしょう。そうですね、兄さん」

???「……」

 シュタッ

サイゾウ「気づかれていたか。一撃で楽にしてやろうと思っていたが……」

スズカゼ「……兄さんがここにいるということは、カムイ様を捕らえる様に指示を出した方というのは……」

サイゾウ「答えるつもりはない。そして、後続と合流させるつもりもな」チャキッ

  パシュシュッ

175 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 21:17:44.42 ID:+QOLhYag0
 ガンッ!
コンッ!
 グググッ

モズメ「な、なんなん!? なんか天井から変な落としとる!」

アシュラ「なんだ、白夜の王城ってはこんなにもろいものなのか?」

スズカゼ「仕込みを済ませていたんでしょうね。このままでは下敷きにされます、この通路を抜けます」

サイゾウ「させるか!」チャキッ シュパパッ

ツバキ「それはこっちの台詞だよ!」ザンッ
 
 キィン!

サイゾウ「ちっ!」チャキッ

スズカゼ「そうはいきません、はあっ」カランコロンッ! バシュシュ!

 ズビシャ

サイゾウ「ぐっ!」ダッ

モズメ「敵が、下がるで!」

スズカゼ「追撃よりも先にここを抜けるんです。下敷きになってしまったらそれまでですから」

ツバキ「なら、さっさといかせてもらうよー」

アシュラ「先に行くぜ」

モズメ「スズカゼさんも早く!」

スズカゼ「はい」

 タタタタッ

 ドゴンッ グシャアアッ!
176 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 21:21:22.52 ID:+QOLhYag0
 パラッ カタンッ ゴトンッ……

スズカゼ「っ、皆さん怪我は?」

モズメ「何ともないで……」

アシュラ「こっちも問題なしだ。危うくひき肉になるところだったな」

ツバキ「縁起の悪いことは言わないでほしいんだけどなー。あ、俺も問題ないよー」

スズカゼ「はい、皆さん無事で何よりです。しかし、ここまでしてくるとは思いませんでしたね。まだまだ、考えが甘かったと言わざるを得ません。ん?」

レオン『スズカゼ、無事か!? 無事なら返事をしてくれ!』

スズカゼ「レオン様。はい、こちらは全員無事です。心配をかけてしまったようで申し訳ありません。どうやら、敵の罠にまんまと掛かってしまったようです」

レオン『いや、無事なだけでも十分だよ。僕たちは迂回路を探してみる。こちらが行くまで待てってくれ』

スズカゼ「レオン様、ありがとうございます。ですが、敵の方は待つつもりは内容ですので、このまま戦闘に移ります」チャキッ
177 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 21:28:14.10 ID:+QOLhYag0
白夜陰陽師「……敵の分断に成功したみたいですね、サイゾウ様」シュオンッ

白夜婆娑羅「……相手は四人、こちらの数では不利か」チャキッ

サイゾウ「いや、そういうわけではない」シュオンッ

 シュタッ

サイゾウ『……』

白夜婆娑羅「なるほど、その手がありましたか。これで数は補えそうです」

白夜陰陽師「ええ、出口は在りませんし、あの絡繰獅子を動かすにはここは少々狭いはず、こちらに幾分か有利に働くはずです」

サイゾウ「ああ。それ以外になにかあるか?」

白夜婆娑羅「……その一つだけご報告が」

サイゾウ「なんだ?」

白夜婆娑羅「実は――」

サイゾウ「……!」

白夜婆娑羅「……」

サイゾウ「……そうか、わかった」

サイゾウ「……」

白夜陰陽師「サイゾウ様……」

サイゾウ「全員、武器を構えろ。これが俺たちの最後の戦いとなる。死力を尽くし、任を果たす時が来た」

白夜陰陽師&婆娑羅『はっ!』チャキンッ シュオンッ

サイゾウ「来い、ススカゼ。白夜を裏切ったお前の命を奪い、そしてこのサイゾウの名を終わりにさせてもらう」

スズカゼ「兄さん、私はサイゾウを継ぐつもりは在りません。そして、ここで倒れるつもりもありません。まだ、カムイ様の戦いを支えなくてはなりませんので。ですから――」

「あなたをここで討たせてもらいます」
178 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/17(木) 21:31:27.18 ID:+QOLhYag0
今日はここまで

 スズカゼとサイゾウにこういったやり取りがあってもよかったなぁって
179 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 16:47:47.29 ID:XKGLc6180
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・剣の間『中央広間』―

リョウマ「はぁ、ふんっ!!!」チャキ ブンブン

カムイ「くっ……。リョウマさんどうして!?」キィン

リョウマ「何度も同じ問いかけをするのだな。これ以上待とうとも、俺の答えは変わらん。手を抜いている暇はないぞ、カムイ!」ダッ

カムイ(くっ、動きがはやい。この剣戟、まともに受ければ押し負ける。なら――!)

カムイ「はああっ!」ダッ

 ガキィン!!!!

リョウマ「踏み込んで来たか、良い判断だ」

カムイ「……あなたは本当にリョウマさんなんですか」

リョウマ「なに?」

カムイ「どうして、このような真似をするんです。ユキムラさんがしようとしている事、その意味を解っているはずなのに。なんでそれに従うような道を選んでしまうんですか!」

リョウマ「……選べる道が無かっただけの事だ。俺はお前と違って、どこまでも往生際の悪い人間だっただけのこと……」

カムイ「そんなことはありません! だって、あなたはあの国境で戦いで私を連れて行かなかったじゃないですか」

リョウマ「あれはお前に力が無いと捨てただけのことだ。あの時のお前を白夜に連れ戻したところで意味がない、そう判断した故の事だ。迷いを多く持つ守られる剣を持ち帰ったところで、枷が増えるだけのこと。それがあの時、下した判断だ」

カムイ「……」

リョウマ「そして、お前は白夜にやって来た。一回りも二回りも強くなって戻って来た。その身に叶えるべき願い、いや理想を持って……。だが、その理想は俺の持つ旗ではない」ダッ

カムイ「っ」チャキッ

180 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 16:58:39.64 ID:XKGLc6180
 キィンッ キィンッ
  ガキィン! ギギギッ

カムイ「なら、あなたの持つ旗は一体何なんですか! こうして、戦うことでしか得ることのできないものだなんて、私は思いたくありません!」

リョウマ「ああ、そうだな。そうであればどれほどよかったことか、もうこの戦争に意味が無くなっていることは知っている。争うよりも重要なことがあることも分かっているつもりだ。だが、こうして出来上がってしまった汚泥は、戦い以外で解消することは出来ん。そのために俺は、まだ戦わなくてはいけない!」ドゴンッ

カムイ「がっ!!!」ズササーッ

カムイ(どうして、どうして戦う以外の道がないのですか。もう、私たちが戦うべき相手は奴だけであるべきなのに!!!)

カムイ「っ!」シュタッ

カムイ「はぁ……はぁ……」チャキッ

リョウマ「……」

カムイ「わかりました。リョウマさんがその気なら、私は全力でその目を覚ませるだけです。こんな戦いに意味がないと、あなたが気づくまで全力でお相手します」

リョウマ「……ようやく、向き合ってくれたようだな。それでいい、お前はお前の理想のためにすべきことを行えばいい。俺のように……遅くなってから繕う必要などない」

カムイ「え?」

リョウマ「はあああっ!!!」ダッ

カムイ「っ!」キィン

カムイ(今の言葉、どういう意味ですか。くっ、だめだ集中しないと。私がここでリョウマさんを止めないと、戦いが――)
181 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:01:57.23 ID:XKGLc6180
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・剣の間『左区画・最奥』―

カラクリ人形『ギギッ』

エリーゼ「マークスおにいちゃん、敵が右、ううん、左からも来る!」

マークス「ああ、それと正面からもだ!」

 タタタタッ

白夜槍聖「はあああああっ」クルクルクル チャキッ

マークス「正面から向かってくるとはな。こちらから仕掛けさせてもらう、ジークフリード!」チャキッ シュオンッ

白夜槍聖「!」ダッ

 バシュンッ

白夜槍聖「っ、はっ!」タッタッ トンッ

マークス(壁を蹴って一気に接近するだと!?)

マークス「くっ」チャキッ

白夜槍聖「はああああああっ」グググッ ブンッ!!!!

 ガキィン!

マークス「っ、中々にやる!」

白夜槍聖「このまま押し切らせてもらうぞ!」ダッ

カミラ「残念だけど、あなたを行かせるつもりは――!?」バササッ

からくり人形『ギギッ ガリッ』
 パシュンッ
  パシュンッ!

カミラ「はああっ!」キィン カキィン
182 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:07:45.34 ID:XKGLc6180
カミラ「危なかったわ。それにしても、この人形たちは邪魔ね」

ルーナ「たしかに、この人形どうにかしないと…」

マークス「カミラ、ルーナはこの人形を操っている者を頼めるか。私はこの者を相手する、先ほどまでの者たちとは腕が違う」

白夜槍聖「……はああっ!」ダッ

マークス「はあああっ!」チャキッ

 キィンキィンッ!

エリーゼ「マークスおにいちゃん! あっ」

からくり人形『カタカタカタッ カチャッ ギュイイインッ!!!』ダッ

エリーゼ「させないよ、ギンヌンガガプ!!」シュオンッ
 
 シュオンッ ドゴオオオンッ!!!
  ガシャンッ バラバラッ……

マークス「エリーゼ、助かった」

エリーゼ「サポートは任せて! カミラおねえちゃん、おにいちゃんのことはあたしが守るから」

カミラ「それじゃ、マークスお兄様のことお願いね、エリーゼ。行くわよ、ルーナ!」

ルーナ「ええ!」タッ
183 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:08:58.92 ID:XKGLc6180
ルーナ「さてと、早速出てきた」

 カタカタッ

からくり人形『カチャッ』

カミラ「ルーナ、先頭の人形を私が蹴散らすから、同時に間合いを詰めて、もう一体をお願い」

ルーナ「任せて、カミラ様!」

カミラ「それじゃ行くわよ!」バササッ

からくり人形『ギギッ チャキ――』

カミラ「遅いわよ。はあああっ」チャキッ グググッ

 ドゴンッ!!! 
  バキィッ!

ルーナ「これで終わりだと思わないでよね!」タッ

からくり人形『ギギッ カパッ ギュイイイイインッ!!!』

ルーナ「へへん、もうどんな仕掛けかわかってるから。そんなの怖くもなんともないんだから、それにね――」チャキッ

ルーナ「あんまり可愛くないから、目障りなのよ!」

 ザシュッ バギンッ!

ルーナ「よし、おしま――」

白夜絡繰師「それっ!」パシュッ

カミラ「ルーナ!」バッ 

 キィン!

184 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:11:18.38 ID:XKGLc6180
ルーナ「か、カミラ様」

カミラ「気を抜いては駄目よ。ここからが本番なんだから」

ルーナ「ご、ごめんなさい。それで、今狙ってきたのは――」

白夜絡繰師「ちっ」カランコロン カランコロンッ

ルーナ「あ、逃げる。カミラ様、早く後を追わないと……。カミラ様?」ダッ

カミラ「…ルーナ、今逃げていったのを任せられるかしら? どうやら、私が相手をしないといけない人がいるみたい」

ルーナ「……わかったわ。すぐに倒して戻って来ちゃうと思うけど」

カミラ「ふふっ、そうね。期待してるわ」

ルーナ「その、負けるなんて思ってないけど。その…」

カミラ「大丈夫、私は負けたりしないわ。絶対にね」チャキッ

ルーナ「カミラ様……」

カミラ「早くいきなさい、向こうが痺れを切らしてしまう前に」

ルーナ「ええ」タタタタッ

カミラ「……ふふっ。ごめんなさい、待たせちゃったかしら?」

カゲロウ「いや、そういうわけでもない。むしろ、気づいていたのなら、今の者と一緒に攻めてきても問題はなかったはずだ」

カミラ「生憎だけど、すぐに戦える相手じゃないわ。あなたはカムイの恩人だもの、こうやって臨戦態勢で向かい合っていなかったら、とても良かったのだけど」

カゲロウ「そうだな。カミラ様にはイズモ公国で色々と世話になった……」

カミラ「 いいのよ。前は前、今は今でしかないわ」

カゲロウ「そうか、恩に着る」

185 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:14:27.91 ID:XKGLc6180
 カランコロンッ

カミラ「それが、今の貴方の足かしら?」

カゲロウ「ああ、これが無ければ満足に戦うことが出来ない。もう、私の足は走ることは出来ない。あの、フウマでの拷問の後遺症だ。もう、忍として主君に仕えることは叶わないが、戦う事ならばこれがあれば事足りる」

カミラ「……そう、少しだけ嫌な予感はしていたつもりよ。狙ったように行われた分断、そしてカムイだけが攫われた現状……。タイミング次第では私たちを殺せたのにそうしなかったのは、これがユキムラの仕業ではないからね?」

カゲロウ「そこまで答える義理は無い。すまない、カミラ様がカムイ様にとって大切な家族であろうとも、手加減をすることは無い。ここで殺し合うことは、あの日助けられた日から決まっていた事だとすれば……私は助けられるべきではなかったのかもしれない」

カミラ「カムイを苦しめるつもり?」

カゲロウ「ああ、そのつもりだ。残念だが、私はカムイ様の臣下ではない。命を救われたとしても私が仕え、そして命を賭すお方はこの世に一人だけだ」

カミラ「熱いわね、あなた……。もしも一緒に戦う道があったのなら、もっとあなたを知ることが出来たのかもしれないわね」チャキッ

カゲロウ「……」スッ

 チャキンッ

カミラ「……行きなさい!」バサバサッ

カゲロウ「……はあああっ!」チャキンッ

カミラ「!!!!」バササッ!

 ガキィン キィン!
186 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:16:09.88 ID:XKGLc6180
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルーナ「よっ、はっ!」

 パシュンッ
  カキィン キィンッ

白夜絡繰師「中々やるね。まさか、一人で追ってくるなんてさ。いや、敵ながらあっぱれだね」

ルーナ「その減らず口、すぐに聞けなくしてあげるわ!」ダッ

白夜絡繰師「それはどうかなっと!」スッ

 ガシャコンッ

カラクリ人形『ガガッ パカッ ギュイイインッ!』

ルーナ「次から次へと!」チャキッ ブンッ

 ガシュッ
  バキンッ

絡繰師「すごいね。だけど、そう簡単にやられるわけにはいかないんだよ」スッ カチャッ

 パシュッ

 ギュイイインッ

ルーナ「ちっ!」キィン サッ

ルーナ(どうやら、人形はこいつが動かしてるみたいね。こいつを倒せれば人形の動きが止まるかも……)

ルーナ「でも……」チラッ
 
 カタタタッ 
  カタタタタッ

ルーナ「はぁ、この量を相手するわけ? 勘弁してほしいわ……」
187 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:17:49.34 ID:XKGLc6180
白夜絡繰師「相手にしたくないなら諦めていいよ。一撃で仕留めてあげるからさ」

ルーナ「ふん、生憎だけど簡単に諦めるような人生送ってないのよ!」ダッ

白夜絡繰師「そう、ならさっさと倒れちゃって」シュシュッ
 
 パシュシュッ!
  ドススッ

ルーナ(あの変な絡繰の乗り物、再攻撃に時間が掛かる。なら、その隙に!)

からくり人形『ギギッ カチャッ』

ルーナ「遅い!」ドゴンッ

 ガシャンッ

ルーナ「はあああっ!」チャキ ブシャアッ

 ガギンッ
  カランカランッ……

白夜絡繰師「ちっ、中々やるよね。本当にさ!」カシャコンッ

 パシュッ!
  ズシャッ

ルーナ「っ!」ポタタッ

白夜絡繰師「くそっ、浅い!」

ルーナ(喰らったけど、まだいける!)タタタッ

ルーナ「一気に終わらせてあげる!」ダッ
188 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:22:08.03 ID:XKGLc6180
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

マークス「はあっ!」チャキッ ブンブンッ!

キィンッ サッ

白夜槍聖「うおおおおっ!」グルッ ブンッ

 ガキィンッ!

マークス「くっ!」

白夜槍聖「そこだ、もらった!」

マークス「そうはさせん!」ドゴンッ

白夜槍聖「ぐおっ!」ズササーッ

マークス「そこだ――!!!」サッ

カラクリ人形『チャキッ キリリッ』

 カコンッ

マークス「はっ」サッ ズザザーッ

マークス「くっ、中々に厄介だ。あの人形たち、まだまだ出てくるというのか……」

エリーゼ「はぁはぁ……。これじゃキリが無いよ! えーいっ」シュオンッ

 ドゴンッ!
  ガシャンッ!‼‼

マークス(まずい、エリーゼの体力は限界が近い。幾度となくチャンスはものにしているというのに、こちらの決定打を悉く人形に邪魔されてしまう。このまま人形の動きが止まるのを待つのは難しい。ならば――)チャキッ

マークス「エリーゼ、私の後ろへ」

エリーゼ「え、マークスおにいちゃん? あたし、まだ戦えるよ!」

マークス「わかっている。だからこそ、下がれと言ったのだ」

エリーゼ「え?」

マークス「こちらから仕掛ける。エリーゼ、私の言う通りに動けるか?」

エリーゼ「う、うん。やってみるよ」

マークス「よし」チャキッ

白夜槍聖「……」

マークス(……相手はこちらに攻勢を仕掛ける戦術、ならばその一点にこちらも応えよう)

「次の一撃で決めさせてもらうぞ、白夜の兵士よ」チャキッ
189 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/24(木) 17:23:03.34 ID:XKGLc6180
今日はここまで

 
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 09:41:01.02 ID:KA6Kn9bDO
乙 さりげなくエリーゼの武器レベルが超高い
ゲームでギンヌンガガプとか使ったことないよ
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/28(月) 00:30:49.58 ID:WH16g1z40
普通のストラテジストは魔法Bだからな、無双から逆輸入だとは思うが、違和感あるね。
192 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:35:06.79 ID:EPkWpSeP0
やっぱりギンヌンガブブは違和感あったようで、申し訳ないです。
193 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:36:28.16 ID:EPkWpSeP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・左区画最奥』―

 パシュシュッ
  カシュンッ!

ルーナ「はああっ」キィンキィン!

白夜絡繰師「へぇ、さすがに一人で乗り込んでくることはあるよ、こんなに撃ってるのに当たってないとかさ!」

ルーナ「はっ、そんな攻撃にあたしが当たると思ってるわけ!? もっとちゃんと狙わないと当らないわよ!」

白夜絡繰師「これでも元々は忍の出だからね。それなりに自信はあるつもりだよ!」パシュッ

 ザシュッ!

ルーナ「っ! まだまだぁ!!」ダッ

白夜絡繰師(ちっ、思ったよりやる。この短時間で人形を全部壊されるなんて思ってもいなかった)

白夜絡繰師「やってらんないね。多体一に持ち込んだと思ったのに、この様だよ」

ルーナ「あたしが相手なのに、あんなへなちょこ出して勝てると思ったのが運の尽き、ご愁傷さまね」

白夜絡繰師「言ってくれる!」パシュシュッ!
194 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:39:20.49 ID:EPkWpSeP0
白夜絡繰師(……くそっ、思ったより追い詰められてるよ、これ。満足に絡繰を動かす空間もなくなって来た)

白夜絡繰師「っ!」パシュッ

ルーナ「……」タタタッ ズザザッ

 カランッ……

白夜絡繰師(ダメだ、弓じゃもう対処できない。ここは暗器であいつの動きを牽制、動きを鈍らせたところを突くしかない)カチャコンッ

ルーナ「……」ダッ

白夜絡繰師(武装の変更に気づかれたけど、関係ない。流石にこれは外さないよ!)カランコロンッ

 バシュシュッ! 
  ザシュシュッ

ルーナ「あぐっ!」ヨロッ

白夜絡繰師(よし、今のは深く刺さった! これですぐには動けないはず、すぐに追撃を――)

 ポタタッ

ルーナ「うううう、この程度の傷で立ち止まれないのよ!」

 ダンッ

ルーナ「あたしは、あたしはまだ、ここで負けるわけにはいかないんだから!!!!」ググッ
 
 チャキンッ

ルーナ「はあああああああぁぁぁ!!!!」ダッ
195 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:40:51.11 ID:EPkWpSeP0
白夜絡繰師(なっ、踏ん張りやがった!? 間に合え!!!!)カランコ……

ルーナ「はあああああっ‼‼‼‼‼」ダッ ググッ

 ドスンッ!‼‼

ルーナ「……」

白夜絡繰師「……」

 カランコロンッ カララッ
  ガゴンッ カタンカタタンッ……

白夜絡繰師「……ははっ、再装填の鍛錬……、ちゃんとしておくんだった……」ポタタタッ

 チャキンッ コトンッ

ルーナ「はぁ……はぁ……。即座にもう一発当てておいて何言ってるわけ……。まぁ、運よく、急所は逸れたけど」ピチャンッ

白夜絡繰師「ちぇ……もう一手で、こっちの勝ちだったのに……ごふっ、うまくいかないねぇ」ビチャッ

白夜絡繰師(これで終わりか……。もう、体中が寒くてたまらない、やっぱり剣って刺さるとすごい痛い。もう楽になってもいっか――ん?)
196 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:43:46.89 ID:EPkWpSeP0
 クン……
  クンッ……

白夜絡繰師(仕掛け糸が揺れてる。え、人形の仕掛け設定を変えろってこと? あの槍男、ここでそれを言うのかよ)

白夜絡繰師「……へへ」

白夜絡繰師(……そうか、そっちも最後に仕掛ける気なのか。もうこっちは死に体だってのに、まあいいよ。最後くらい、手添えしてやる……)スッ

 ピンッ……

白夜絡繰師「……はぁー、ふぅー」

 ピチャンッ……ピチャンッ……

白夜絡繰師(……リョウマ様。先に休みます……ね)

 ピチャンッ……
  ドサリッ

白夜絡繰師「」
197 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:45:22.69 ID:EPkWpSeP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

マークス「……」チャキッ

エリーゼ「……」ギュッ

白夜槍聖「この一撃で決めるつもりか……」

白夜槍聖(あの魔法を使う娘を下げたとなると、こちらの攻撃に合わせて何かを仕掛けてくるつもりか。数ではさすがにこちらが優位であるが、この人形ではあの魔法を耐え切れん)

白夜槍聖(しかし、この一手に限って言えば、奴の懐に入り込むことは難しくない。全身全霊の一撃に賭けるとしよう……)

 ダンッ ガシッ

白夜槍聖「いいだろう。この一撃を持って、勝負とさせてもらう」チャキッ

白夜槍聖(人形を一気に嗾け、一撃で終わらせてくれる。幾らあの娘の魔法が強力であろうとも、この数を一気に片づけることは出来ないはず。たとえ、双方の犠牲に意味がなくともだ……)

白夜槍聖(そうだ、我らはそれだけを求めてここに集ったに過ぎない。たとえ、それが主の願いから背くことであろうとも。ここで戦う事こそが、我らの悲願!)
198 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:46:53.33 ID:EPkWpSeP0
白夜槍聖「……行けぇぇぇ!!!!」ダッ

 ドドドドッ

白夜槍聖(敵が狙いは、恐らくこちらの攻撃を受け切ってからの再攻撃、ならばそれをさせずに押し潰してくれる!)

マークス「エリーゼ、準備は出来ているか?」

エリーゼ「うん、マークスおにいちゃん。いつでも行けるよ!」

マークス「よし……合図とともに仕掛ける」

白夜槍聖(仕掛けることが出来ると思っているとはな、このまま包囲して終わりにしてくれる! 奴に最後の合図を送ろう)

 パチンッ
  ……
 クン……

白夜槍聖(合図が帰って来た。仕掛けるぞ!)

白夜槍聖「敵を囲め!」

絡繰人形「カタタタタッ!」

白夜槍聖(一点集中ならばともかく、この広がりではすべてを受け切ることは出来まい! いくら、剣の腕に自信があろうとも、この数の包囲に迫られれば。それで終わりだ。その隙を突かせてもらう!)

白夜槍聖「これで終わりだ、暗夜の王子!」チャキッ

マークス「……」

白夜槍聖(この勝負、もらった!!!)






マークス「……ふむ、上出来だ」チャキンッ
199 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:48:11.55 ID:EPkWpSeP0
マークス「ここで包囲されればこちらは完封される。もっとも、私が待ちに徹しているならばの話だ」ダッ

白夜槍聖「!?」

マークス「エリーゼ、行くぞ!」

エリーゼ「わかったよ!」

 ダダダダッ

白夜槍聖「前進だと!?」

マークス「エリーゼ、奴への進路を塞いでいる人形をやれ!」

エリーゼ「うん! 行くよ、ライナロック!」シュオンッ

 ドゴンッ‼‼‼
  ガシャンッ
   ガラガララッ……

白夜槍聖「包囲に穴が、くっ」チャキッ

白夜槍聖(こちらが人形を包囲に使うと予想していたという事か!?)

マークス「はあああっ!」ダッ

白夜槍聖(いや、元々多体一と勘違いしていたこちらに問題があるだけの事、それがただ一対一になっただけではないか!)

白夜槍聖「来い!」ダッ

 ガキィン キィン
200 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:48:43.98 ID:EPkWpSeP0
マークス「はあっ、せいっ!」

白夜槍聖「っ、そこだ!」バシュッ

白夜槍聖(……何たる様だ。こちらは奴よりも有利なもので挑んでいるというのに、致命傷を与えるにも至らない。……まったく、ユキムラの下にいた奴らがもう少しだけでも腕のある物であればよかったと思う日が来るとは)

白夜槍聖「はああっ」ダッ

マークス「……」チャキッ

白夜槍聖(……この一撃は届かない。わかっているというのに、挑んでしまうな。いや、それは当たり前か、こんなにも主君のために戦うことが心地よくては――)

白夜槍聖「くらええええ!!!!」ダッ

白夜槍聖(止まれるものでない……)

マークス「はああっ!」ブンッ

 ザシュリッ……

 ポタタタッ ポタタタッ

白夜槍聖「がっ! ううっ……」ドサッ
201 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:50:04.72 ID:EPkWpSeP0
白夜槍聖(ああ、視界が霞む。あまりにも静かだが……人形たちは……)

絡繰人形「――」

白夜槍聖(……そうか。あいつもやられたのか。まったく、揃いも揃って成すことは叶わなかったとはな……。だが、それでもいいか、ここはとても心地がいい、ずっとずっと戦う理由に苦悩しでいたのが嘘のように…)

白夜槍聖「……はは、最高の夢見心地だ……。最後の相手が貴殿であったことに感謝する……」ポタタタッ

マークス「……見事であった、白夜の兵士よ」

白夜槍聖「……あぁ……」

白夜槍聖(そうだな、休もう。もう武器を持つには体が重い、ゆっくり休んだとしても、罰は当たらないだろう……)

 ドサリッ……

白夜槍聖「」

マークス「……」カチャンッ
202 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:53:53.97 ID:EPkWpSeP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  カランコロンッ バシュシュッ!

カミラ「はあああっ!」キィンキィン

カゲロウ「……」カラコロンッ

カゲロウ(……二人の気配が途絶えたか…)

 ダッ バシュシュッ

カミラ「っ! そこ!」シュオンッ
 
 ドゴンッ!

カゲロウ(たとえあの二人がここで生きていようとも、白夜に勝機は無い。それをリョウマ様は承知していた。一丸とまではいかないまでも、民が共に白夜のために尽くそうとしていた日々は戻ってこないことを認める様に……)

 キィンッ ガキィン!

カゲロウ(だとしても、何度でも夢に見る。帰らなかった友のいる時間、暖かい明かりが花のように並ぶ王都の光景。それがリョウマ様の求めているものかはわからぬが、少なくともそれに近いものであればいいと、切に願う)

 ダダッ ドゴンッ
  バキィンッ!

カゲロウ(カムイ様と初めて出会った時、共に歩める道があるかもしれないと思った。カムイ様が元は白夜の王族だからというわけではない。あの方には人を導く力がある、そう思った。しかし、結果はこれだ。命を救われても尚、私は私の主の命に従うことしかできない。たとえ、今の状況が一度受けた任を放棄して、新たに得た任だとしても……)

 バサバサッ
  ブンッ
   ズビシャッ!

カゲロウ(リョウマ様がどうしてカムイ様と戦う道を選んだのか、それは私にはわからない。だが、それでもリョウマ様は戦うことを選んだ……。なら私も共に戦いたいと思うのは……間違っているのか?)
203 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:55:16.18 ID:EPkWpSeP0
 ポタタッ 
  ポタタタタッ

カゲロウ「はぁ……はぁ……ぐっ……」

カミラ「……降伏しなさい。あなたを殺したくはないの。リョウマ王子もどうにかして助け出してみせるから……」

カゲロウ「……優しいのだな」

カミラ「あなたを敵にしたくないのよ。カムイだってあなたが生きることを望むはず…、まだリョウマ王子が生き残れる可能性が少しでもあるなら、それに賭けてみない?」

カゲロウ「……どんな状況であろうとも任務を遂行する時も、わずかな希望に賭ける場面は幾度となくある。敵に捕らえられ、地獄のような責め苦に苛まれても、生きている限りは可能性がある…そう考えてあの日、お前たちに助けられるまでの日々を耐えてきた」

カミラ「ええ、あなたが生きていたことをカムイは喜んでいたわ。あなたを助けられたって」

カゲロウ「……生きることが次に繋がるのなら、私は命の灯を絶やさぬよう薪を足し続けよう。わずかな細木でも火が続くのなら、それに越したことは無い。だが……」

 チャキンッ

カゲロウ「今ここにいたればそれは違う。私の最後の命令はここを死守すること。命を長らえ耐える事ではない。ここを守る事だけが、最後に与えられた私の責務だ」

カミラ「……そう、あなたは兵士なのね。とても立派な」チャキッ

カゲロウ「……ああ、そうあるべきだと尽力してきた。カミラ王女のような方に認めてもらえるのなら、この人生の歩みは間違っていなかった」

カゲロウ(……ああ、間違っていなかった。ただ、歩む道が少しばかり整っていなかっただけだ。リョウマ様が示された道は、もっと整っていたというのにな)

カゲロウ(だが、あの命令を私は受け入れられなかった……)
204 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 18:58:44.56 ID:EPkWpSeP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『王の間』―
〜暗夜軍・侵攻前日夜〜

カゲロウ「……リョウマ様、そのご命令は一体?」

サイゾウ「……」

リョウマ「これはお前たちにしか任せられないことだ」

カゲロウ「……」

リョウマ「この戦いで長きに渡った白夜と暗夜の戦いは終わる。どんな結果になろうとも、これで戦いは終わると俺は信じている。だからこそ、今俺が全権を握っているのだからな」

サイゾウ「……」

リョウマ「サイゾウ、カゲロウ、お前たちには王都正門の守備に回ってもらう。そこに集うのは周囲の村から王都に退避してきた者たちばかりだ。ユキムラは盾に使うつもりでいる以上、暗夜軍に正門を突破されればどれほどの被害が出るかわからない。わかるだろう、この戦いが終わった後、必要となるのは民だ。俺たちのような者たちではない」

カゲロウ「……リョウマ様は、リョウマ様は白夜に必要なお方です」

リョウマ「……買い被りすぎだ、カゲロウ。俺はそんな立派な人間ではない……。最後の最後、燃えて残った塵のような姿で戦いっているだけに過ぎない。俺には、何かを成す機会は失われているのだからな……」

カゲロウ「……そんなことはありません!」

リョウマ「カゲロウ……」
205 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 19:02:08.25 ID:EPkWpSeP0
カゲロウ「リョウマ様、私にはこの任に意味を見出すことが出来ない。私には民の命より、あなたを守る任を全うしたい、そう考えている」

リョウマ「……それは俺の任を受け入れるつもりはないという事か?」

カゲロウ「……はい」

リョウマ「……」

サイゾウ「リョウマ様。私も此度の任に従うつもりはありません」

リョウマ「サイゾウ?」

カゲロウ「サイゾウ……」

サイゾウ「……ご不満なら、私を臣下から外してもらっても構いません。その時は勝手に戦わせてもらうだけです。そうだろ、カゲロウ?」

カゲロウ「サイゾウ……。サイゾウと同じく私もそのつもりです、リョウマ様」

リョウマ「……もう少しお前たちは賢いものだとばかり思っていた。ここに来てそのようなことを口にするとはな……」

カゲロウ「それこそリョウマ様の過大評価。私にとってあなたと共に戦えることこそが――」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 キィン! カキィン!

カゲロウ(そう、それが命令を拒んで私が選んだ荒れた道。だけど、後悔はない)

カゲロウ(ああ、そうだ――。これが私の望んだ終わりだ――)

カゲロウ(だから、ここで死ぬことこそが……)

 ズビシャ……

カゲロウ(本望なのだろう……)
206 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 19:03:24.19 ID:EPkWpSeP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・剣の間『右区画・最奥』―

カミラ「………」

カゲロウ「……っ……」スルッ
  
 ドサリッ

カミラ「……カゲロウ」

カゲロウ「はは……、もう立てぬか……。まさか、この部屋が最後の地になるとは思ってもいなかった……。ごふっ」ビチャッ

カミラ「すぐに治療をするわ」

カゲロウ「心遣いはうれしいが、もう間に合わない。それくらいのことわかっているつもりだ……」

カミラ「大丈夫、すぐに止血をすれば――」

カゲロウ「……すまぬ、このような言い方で伝わるわけもなかったな。……もう何もしないでくれ」

カミラ「え?」

カゲロウ「……私にも最後に守りたい誇りがある……。だから、何もしないでくれ……。このまま終わらせてほしい……」

カミラ「……」

カミラ「……」

カミラ「…」スッ
207 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 19:05:13.79 ID:EPkWpSeP0
カゲロウ「ありがとう。どんなに独りよがりな誇りだとしても、私はこれ以上の事を望んで生きていたくはない。そもそも、生きるつもりだったのなら私はここにいない……。私は死ぬために……ここで戦うことを選んだだけのことだ…」

カミラ「……不器用なのね、あなた。もっと違う道もあるとは思わないの?」

カゲロウ「生憎、それほど器用に立ち回れる自信はなかった……。この一瞬だけでも、私はリョウマ様のために戦う自分でありたかった……ごほっ、ゴホゴホッ……」

カゲロウ(ああ、視界が霞む。見慣れた天井がぼやけていく……)

 ポタタタタッ
  
カゲロウ「……」

カミラ「……カゲロウ」

カゲロウ「……」

カゲロウ(リョウマ様、サイゾウ……。ここまで共に闘えて幸せだった……)

カゲロウ(叶うならば、もう一度……二人と共に……あの、美しく暖かい白夜の姿を……)

カゲロウ「こふっ……」

カゲロウ(この目で……)

カゲロウ「」トスッ

カミラ「……」
208 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 19:07:51.52 ID:EPkWpSeP0
 タタタタタッ

カミラ「?」

エリーゼ「カミラおねえちゃん! 大丈夫!?」

カミラ「エリーゼ……。っ、気づいていなかったけど思ったより攻撃を貰っていたみたいね……」フラッ

エリーゼ「今手当をするね、そっちの人は……」

カミラ「……」

エリーゼ「……この人、フウマ公国で助けた人だよね。どうして、戦わなくちゃいけなかったの…」

カミラ「わからないわ。いいえ、わかっていいものじゃないの。それがどんなに認められないものだとしても、私たちにそれを止める権限は無いわ。鋼よりも強い意思は、そう簡単に砕くことが出来ないようにね」

エリーゼ「そんなのわからないよ……」

カミラ「……そうね。だけど……結果は同じだったのかもしれないわ」

カミラ(カゲロウを助けたところで、きっと自害していた。どんなにこちらが望んでもカゲロウは、こちらの旗を仰ぐつもりはなかった。選んだのは主のために戦ったという誇り……。それがカゲロウにとっての生きる意味……)

カミラ「……悔しいけどそれが現実なのね」

エリーゼ「カミラおねえちゃん……」

カミラ「エリーゼはルーナを見つけてちょうだい。多分負傷していると思うから、治療が終わり次第ここに連れてきてちょうだい」

エリーゼ「う、うん! わかったよ」タタタタッ

カミラ「……」

カミラ(カゲロウたちは生還を考えていなかった以上、右の区画でレオン達を待ち受けている敵もまた同じように、命のある限り戦うつもりでしょうね……。それをこちらがどんなに望んでいなくても……)

カミラ「カムイ……。ここはあなたの望みに一番近くて――」

「一番遠い場所なのかもしれない……」
209 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/05/31(木) 19:10:58.20 ID:EPkWpSeP0
今日はここまでで

 望むものが近くにある時、それはもっとも遠い場所に存在している。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 16:16:30.12 ID:6zGOWNI8O
カゲロウ…
211 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 19:29:41.81 ID:dg+6wiat0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・剣の間『右区画・最奥』―

タタタッ

白夜陰陽師「牛神、行きなさい!」シュオンッ カララララッ

モズメ「っ! させへんよ!」パシュッ

 キィン!

白夜陰陽師「生憎ですが、その様な攻撃で止められるほど、弱い式神ではありませんよ。さぁ、さぁ、そのまま押し潰されてしまいなさい!」カラランッ カララランッ
 
 ズオオオッ

モズメ「んっ、はっ、よっと!」サッサッ

白夜陰陽師(やる、あの閉所でそんな動きをする。だけど、なら動きの速いコイツなら!)

白夜陰陽師「鳥神!」カララランッ
 
 シュオンッ シュオオンッ
  バサバササッ 

白夜陰陽師「いけっ!!!」バッ

 ヒュオンッ ヒュオンッ

モズメ「!」パシュシュッ!
212 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 19:38:19.25 ID:dg+6wiat0
 ザシュンザシュンッ
  ヒュオンッ
   バチィンッ!

モズメ「っ!!!!」ポタタタッ グラッ

白夜陰陽師「これで――!」

 タタタタッ

ツバキ「そうはいかないよー。それっ!!!」スパッ!

白夜陰陽師「くっ――!!!」

白夜婆娑羅「間に合え!」ダッ

 ズビシャ……

白夜婆娑羅「ぐっ! うおおおおおっ。虎神!!!!」カラランッ

 シュオンッ
  グオオオオオオンッ ダッダッ バシュシュッ

白夜陰陽師「……助けに来なくてもよかったのですが」

白夜婆娑羅「くっ、助けられておいてそれか。お前が動かなくなると、少々辛いからしたことだ」

白夜陰陽師「そう、でも次からは大丈夫ですよ。しかし、式神の使い方がなっていませんね。彼ら、いとも簡単に避けていきましたよ」

白夜婆娑羅「辛辣だな……」
213 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 19:50:54.65 ID:dg+6wiat0
ツバキ「ふぅ、何とかなったね。モズメのほうは大丈夫?」

モズメ「おかげさまでなんとか、ありがとうツバキさん」

ツバキ「気にしないでいいよー。で、この二人は僕たちでどうにかしないといけないわけだけど……」

モズメ「わかってる。でも、攻撃の頻度が多いんよ、ただでさえ変なのぎょうさん出しおるし」

白夜陰陽師「ふふん、これで陰陽道を進んでおりますからね……。それであなた、怪我は?」

白夜婆娑羅「なに、たいしたことは無い。それよりも、このまま睨み合っていても埒が明かん。あの軽い奴を引き付ける、その隙にあの弓兵をやれ」

白夜陰陽師「ええ、一気に決めさせてもらうとしましょう」カランカランッ

白夜陰陽師(機会は一度だけ、この攻撃を通せればこちらの勝ちですよ。暗夜の方々?)

ツバキ「どうやら攻めてくるみたいだね。どう動いて来るのかはわからないけど、ここを受け切らないと結構きついって思うよ」

モズメ「でもやるしかないんやろ。なら、そうするだけや」チャキッ キリリッ

白夜婆娑羅(……敵に時間を与える必要もない、今すぐ仕掛けるぞ!)ダッ

白夜陰陽師(どうぞ、こっちも準備は出来ているわ)カラランッ

 シュルシュルッ
214 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 20:06:34.25 ID:dg+6wiat0
白夜婆娑羅「……!」チャキッ

 ダッ!!!

モズメ「これでっ!」パシュッ

 キィン‼‼‼

白夜婆娑羅「うおおおおっ!!!!」ググッ
 
ツバキ「そうはさせないよ!」チャキッ クルクルクルッ ザンッ

 ズビシャ!

白夜婆娑羅「ぐぬっ、うらああっ!」ブンッ ブンッ

ツバキ「っ、くっ」サッサッ

白夜陰陽師「射線が通りましたね。それでは弓兵さん、ごきげんよう」カラララランッ

 シュルルルルッ
  シャアアアアアッ!

モズメ「へ、蛇!?」チャキッ

 シャアアアッ
  バチュンッ!!!

モズメ「きゃあああっ!!!」

白夜陰陽師「それで終わりではありませんよ!」スッ

 シュルルルルッ
  バチュンッ!!!

モズメ「――」フラッ
215 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 20:17:01.86 ID:dg+6wiat0
白夜陰陽師(これであの弓兵はおしまいね。あとはもう一人を始末すれば――)クルッ

 ダンッ バシュッ
 ズビシャッ!!!!

白夜陰陽師「え……」ポタタッ ポタタタッ

白夜陰陽師(え、なぜ、私の腹から矢が生えて……)

白夜陰陽師「ごふっ……な、なにが起きて……」

モズメ「はぁ……はぁ……」チャキッ

白夜陰陽師「ふふっ、しぶとい方ですこと…」

モズメ「カムイ様のために、死ぬわけにはいかないんや!」チャキッ

パシュンッ!!!!

 ズビシャッ!!!

白夜陰陽師「がふっ……」ポタタッ

白夜婆娑羅「!!! 今、援護に――」

白夜陰陽師「そっちはそっちの相手をしていなさい! ううっ」ポタタタッ

白夜陰陽師(ぐっ、蛇神の呪いが……。今ので仕留められなかったのがこれほど効いて来るなんて……。今の間までは力の半分も出ない……くっ、痛みで意識が……)

白夜陰陽師「はああっ……ああっ、ううっ……」

白夜陰陽師(あと、あと一撃加えることが出来れば!!!!)

モズメ「……捉えたで」
216 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 20:25:58.61 ID:dg+6wiat0
モズメ「……」チャキッ

白夜陰陽師「っ、兎神!」カララランッ 

 タタッ タタッ
 
白夜陰陽師(くうっ、優位を築いたというのに、一気にここまで追いつめられることになるとは……。申し分ない戦いが出来たと思っていたが、準備に掛けた時間にしてはこうもあっさりと。終わってしまうとは……)

モズメ「――」パシュッ

白夜陰陽師「………」

 トスンッ……

白夜陰陽師「……」ポタタタッ

白夜陰陽師(ああ、体が重い。呪いの所為か……いえ、こんなにもろに攻撃を受けておきながら呪術の所為などと言えるわけがないというのに、まったく私もつくづく愚か者だこと……)

白夜陰陽師「……やはり、痛いものは痛いものですね……。っ――」

白夜陰陽師(すみません、リョウマ様――)

白夜陰陽師「」

モズメ「……」
217 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 20:45:31.53 ID:dg+6wiat0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

白夜婆娑羅「はああっ!」ブンッブンッ

ツバキ「……残念だけど、後方は潰させてもらったよ」

白夜婆娑羅「そうか、それならば尚更止まるわけにはいかん! 奴の犠牲を無駄には出来んからな」ダッ

ツバキ「……もう勝負は付いていると思うけどね」

白夜婆娑羅「……だとしても貴様も未だ主を持つ臣下、ならばここで剣を収めて敵に下る道を選ぶと思っているのか?」

ツバキ「……そうだね。だけど、サクラ様を利用しようとしていたユキムラみたいなのが、君の主とは思えないけど?」

白夜婆娑羅「……ふっ、ユキムラの信念などどうでもいい事だ。なにせ、奴の持つ刃は錆びて使い物になりはしない。我々の信念こそが、白夜がもつ唯一の武器だ」

ツバキ「……だったらその武器を置いてくれないかな? 俺たちは戦うべきじゃない、俺たちが戦うべき相手はユキムラ達のはずだ」

白夜婆娑羅「……」
218 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 20:54:41.46 ID:dg+6wiat0
白夜婆娑羅(戦うべきではないか。ああ、そうだろう。ここはユキムラとその腰巾着ばかりが最後まで籠城を決め込むことになっていた場所。それに本来ならばリョウマ様から与えられた任があった、それを我々は蹴ってここにある。リョウマ様の御心を蔑ろにしてここにいるのだ。そう、最後だけでもいい、動けずに過ごした日々の中、もう一度リョウマ様のために戦いたいと願うことを誰が止められる?)

白夜婆娑羅「変わらん。我らの敵は主の認めた敵のみ……。それは今、お前たち裏切り者であるカムイ王女の軍勢だけだ」チャキッ

ツバキ「……わかった。なら、こっちも容赦はしないよ」チャキッ

白夜婆娑羅「……」

白夜婆娑羅(……この戦いに意味があるのか。その問い掛けを多くの兵が口にしていた。だが、この戦いに意味を見出すのは我々の役目ではない……。リョウマ様がこの選択をなさったのなら、それにはちゃんとした意味がある。だからこそ、我々は共にありたいと願ったのだ。たとえそれが、こちらが思うだけの幻想だったとしても、そこに誇りと忠誠を感じられるのであれば……)

白夜婆娑羅「……」チャキッ

白夜婆娑羅(この戦いに意味はあったのだと胸を張れる。それだけでよい……)

白夜婆娑羅「……それだけでよいのだ」

ツバキ「……」
219 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 20:56:53.20 ID:dg+6wiat0
白夜婆娑羅(サイゾウ様に付いてきたわけではない、やってきたカムイ王女の軍勢に復讐するためでもない。私はただ、リョウマ様と共に闘う。敵は誰でも良かったのだろう)

白夜婆娑羅「はあああああっ」

ツバキ「……」チャキンッ

 タッ
  シュパッ

白夜婆娑羅「……っ。ぐっ! はああっ!」ブンッ

 サッ シュパッッ
  ズビシャッ!

白夜婆娑羅「っあ……。まだ、まだ、まだ戦える!」ダッ

ツバキ「……それが君の戦う意味っていうことだね。俺はあんまり好きじゃないかな」

白夜婆娑羅「貴様の好みなど知ったことか!」

ツバキ「そうだね。うん、俺の事は気にしなくてもいいよ。昔の俺みたいに、そうやって主君を苦しめる道を選ぶことは悪い事じゃないと思うからさ」

白夜婆娑羅「くっ!」ブンッ

 カキィンッ

ツバキ「!」ダッ
220 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:02:27.49 ID:dg+6wiat0
 ザシュリッ

白夜婆娑羅「がっ……」

ツバキ「そう、命を賭けることはそれだけでも、価値があるように思えるからね……。それが自分の望みのための行為だったら尚更ね?」ブシャッ

白夜婆娑羅「……はは、はははっ……。御見通しだということか……」

ツバキ「御見通しじゃないよ。だって俺には君が望む理由のすべてが分かるわけじゃないからねー」

白夜婆娑羅「ふっ、白夜一の天才と言われたお前でも……わからぬということがあるとはな……」

ツバキ「白夜にいたままなら、わかったつもりになれたかもしれないけどねー。暗夜で過ごして色々な方角に考えた方がいい、そう思えるようになれたってことかなー」

白夜婆娑羅「ふっ、この裏切り者が……」ドサリッ

白夜婆娑羅(贅沢な奴だ。しかし、そうかもしれん。なにせ――)

白夜婆娑羅(もう白夜で成長できるものなど、恨みくらいしかなかったからな……)

白夜婆娑羅「」

ツバキ「裏切り者ね……。だとしても、俺は白夜を救いたいって思ってるよ。サクラ様がもう一度、ここを故郷だって言ってくれる日が来ることを信じているんだからさ」
221 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:05:29.74 ID:dg+6wiat0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

キィン カキィン!

スズカゼ「はっ!」カラコロッ パシュシュッ!

 キキキンッ
  カランカランッ……

サイゾウ「その程度の腕で俺を討つとは、思い上がるなよ、スズカゼ」

スズカゼ「思い上がっているのは百も承知しています。ですが、それを承知で私は兄さんに挑ませていただきます」

サイゾウ「……ならば、その気概が張りぼてではないことを俺に見せてみろ!」ダッ

 キィン

スズカゼ「っ!」

サイゾウ(思い上がるな、か。それは俺が向けられるべき言葉だろう。多くの人間が俺とカゲロウの案に賛同し、ここに至った。リョウマ様から与えられた任を捨てでも、ここで戦うことを選んだ。だが、結局それを選ばせたのは俺自身だ。カゲロウが進言した時、俺はそれに乗り、そして多くの者たちを扇動する結果になったのだからな……)

サイゾウ「……」

サイゾウ(だから、カゲロウが死んだと知った時、驚きながらも、すでにその予感はしていた。今ここで耳にするのはそういった絶望的な事なのだと。そうだ、どこにも希望などありはしないとわかっていたはずだ……)

サイゾウ「はあああっ!!!」
222 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:10:10.62 ID:dg+6wiat0
スズカゼ「くっ……」サッ

サイゾウ『……』シュタッ タタタッ チャキンッ

スズカゼ「分身が、このままでは――」

サイゾウ『……』チャキッ

サイゾウ(終わりだ、スズカゼ!)

 ブンッ
  ガキィンッ!‼‼‼

サイゾウ「むっ!」

アシュラ「生憎だが、そう簡単に仲間をやらせるわけにはいかないんでね。おらああっ!」ドンッ

サイゾウ『……』シュタッ シュタタッ

スズカゼ「アシュラさん、ありがとうございます」

アシュラ「なに、気にするなよ。それで、ここからどうするんだ?」

スズカゼ「分身体の方をお願いできますか、私は本体に攻撃を仕掛けていくので」

アシュラ「ああ、わかった。そういうわけだ、俺が相手してやるよ」チャキッ

アシュラ「本当なら、白夜の王族を守る臣下を切りたくはねえんだがな……」

サイゾウ「そう思っているのならば、俺の剣の錆びとなれ」ダッ

アシュラ「そうはいかねえよ。まだまだ、守らないといけない奴がいるからな」チャキッ

 ガキィン! キィン カキィン!
223 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:34:24.16 ID:dg+6wiat0
サイゾウ「……それはあの裏切り者のことか?」

アシュラ「ああ。あれは強そうに見えるが、そう強くねえ奴だ。でもよ、何かを信じることに関しては鋼みたいに固い。少なくとも、俺たちは白夜を滅ぼすためにここに来たわけじゃねえ、カムイ様が信じる道を支えるためだ。お前たちと戦うことになるなんて思ってもいなかったくらいだ」

サイゾウ(……そうか、それは――)

サイゾウ「つくづく、噛みあわない理想にしがみ付いていると見える」

スズカゼ「兄さん、今からでも遅くはありません。武器をお納めください、そして――」

サイゾウ「ユキムラを始末するまで何もせずに待てと言いたいのだろう」

スズカゼ「はい。もう、今、ここには兄さん以外に残っている方はいません……。もう、勝負はついています」

サイゾウ「……」

サイゾウ(勝負はついている? 何を今更、そんなものリョウマ様が幽閉されてしまった時についていた。白夜の誇りは汚泥にも等しい概念へとなり下がり、あるのは私怨と恐れ、憎悪と欲望だけ、悪行に手を染めた者共が落ちる地獄の方がまだマシだろう)

サイゾウ「……」ギリッ
224 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:37:26.77 ID:dg+6wiat0
サイゾウ(正しくあろうとすればあろうとするほどに、その心を奪っていく。白夜、読んで字の如く清らかであったことの方が幻だと思えてくる。そんな場所でありながらも、あの方は、正しくあろうとした。それが、たとえ臆病と罵られるようなことであったとしても――)

サイゾウ「勝負はまだついてなどいない。ここで俺がお前たちを倒せばことは変わる。あの裏切り者がリョウマ様に敵うわけがない……。そうに決まっている」

スズカゼ「兄さん……」

サイゾウ「俺は主君を信じ、そして任務を全うするだけ……」

サイゾウ(そう、たとえそれが、リョウマ様が望まぬ形で下したものだとしても……。俺はその任にすべてを賭ける以外に道は無い!!!!)

サイゾウ「はああ!!!」チャキッ シュパッ

 キィン!

アシュラ「っ、中々激しい攻撃だ。だが、いつまでも同じ手が続かねえよ!」ダッ

サイゾウ(距離を取ってこちらに攻撃をするつもりか、なら分身を――)

サイゾウ『……』シュタッ タタタタッ チャキッ

スズカゼ「……」

サイゾウ「もらったぞ、スズカゼ!」

スズカゼ「それはこちらの台詞ですよ。兄さん!」ダッ

サイゾウ「!!!」
225 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:39:13.10 ID:dg+6wiat0
スズカゼ「アシュラさん!」

アシュラ「そう来ると思ってたぜ。本命はそっちだ!」チャキッ シュパパッ

 ザシュシュッ!

サイゾウ『……』ザザッ

サイゾウ「ぐおおっ……」ポタタタッ

サイゾウ(ぐっ、くそ……。まだだ、まだ倒れるわけには――)チャキッ

スズカゼ「兄さん、これで決めさせてもらいます」チャキッ

サイゾウ「ちっ、ここでやられると思うな!!!!」チャキッ ダッ

サイゾウ『……』チャキッ

アシュラ「……よそ見は良くないぜ、白夜の忍びさんよ」チャキッ

サイゾウ「!!!!」

アシュラ「これで終わりだ……」シュパッ

 ザシュリッ

サイゾウ『……』ブシャアアアッ
226 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:42:33.44 ID:dg+6wiat0
サイゾウ「がっ……」ブシャアアッ!!!!

サイゾウ(ぐっ、分身がモロに攻撃を受けた! くそっ、体が……)

スズカゼ「はああっ!」パシュッ!

サイゾウ「……」

サイゾウ(……頭に血が上りやすいとよく言われてはいたが、まさかこのような大事な局面でそうなってしまうとはな……)

サイゾウ「……ふっ」ポタタタッ

サイゾウ(立て直すべき場面だった。片割れがすでにあのコウガの忍びに捉えられていたというのに、向かってきたスズカゼを……。実の弟を殺しに向かってしまうとはな……)

サイゾウ(本当に……私もあなたのように――)

サイゾウ「最後の最後まで、変われないということか……」

 ズビシャアアアッ!!!!
227 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:45:16.85 ID:dg+6wiat0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―シラサギ城『剣の間』―
 〜カムイ軍侵攻の前日〜

サイゾウ「……」

リョウマ「……いいだろう。お前たちへの任は他のものへと託すこととする」

サイゾウ「はい……」

リョウマ「……ふっ、その様な顔をするな。あれだけの大見得を切っておきながら、浮かぬ顔をされては先ほどの話をぶり返すことになるぞ?」

サイゾウ「そんな顔をしているつもりはありません。ですが、リョウマ様が我々の考えを受け入れてくれたことに驚いているだけで……」

リョウマ「なに、お前たちに勝手に動かれては困るだけのことだ。俺たちにとっての敵は、いつも一つだ。俺は、その敵を多く地獄に落とすことになるだろう。俺はその多くに手を掛けることは無いが、その多くの命が失われる原因はすべて俺にある。そして、それが俺のするべき最後の政になる」

サイゾウ「……政はこの後に行えばいい事です。リョウマ様、あなたは――」

リョウマ「……サイゾウ、俺は失われた機会を与えられたにすぎない。そして、その機会を手にしてようやく動いただけだ。俺にはもう、人々を導く資格や権利などありはしないのだからな」

サイゾウ「では、なぜ今になって動くことを決めたのですか……」
228 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:49:56.04 ID:dg+6wiat0
リョウマ「……」

サイゾウ「リョウマ様、あなたは幾度も我々の進言を袖にしてきました。白夜を腐らせているあのユキムラ達を討つ機会を与えることは無く、あのカムイ王女と戦う事も選ばれなかった。なのに、なぜ今になってことを起こされたのですか」

リョウマ「……サイゾウ、それをお前に教えることは無い。この先、何があろうともお前にそれを伝えることは無いだろう」

サイゾウ「……」

リョウマ「それが、俺の答えだ」

サイゾウ「……それがリョウマ様の答えなのでしたら、もう何も言うことはありません。あとはリョウマ様の望むままに……」

リョウマ「ああ。サイゾウよ、俺が死ぬ最後の一時まで、俺のために戦ってくれるか?」

サイゾウ「御意……」

サイゾウ(結局、俺は最後の最後でリョウマ様の中へ入り込むことが出来なかった。それを知ったところで何になるかわからない。だが、リョウマ様がそれを伝えなかったということは……)

サイゾウ(その理由が、俺にとって猛毒だと判断されたからなのだろう……)

サイゾウ(だからこそ、俺は……。最後にあの信頼する瞳に誓って……最後の一時、それが訪れるまで……戦うことを……)

 ドサリッ……
  カランカランッ……
229 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:53:29.38 ID:dg+6wiat0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・右区画最奥』―

スズカゼ「……」

アシュラ「……」

サイゾウ「……ごふっ……」ポタタ ポタタタッ

スズカゼ「終わりです、兄さん」

サイゾウ「ぐっ……」ポタタタタタッ

 ピチャンッ ピチャンッ……

サイゾウ「はぁ……はぁ……はぁ……。ふっ、ああ、そうか。俺は負けたのだな」

スズカゼ「ええ、私一人ではあなたに勝つことは出来なかったでしょう。動かないでください、今手当を――」

サイゾウ「……今近づけば俺は、お前らもろとも自爆してやる。施しを加えるつもりなら、容赦はしないぞ……」

スズカゼ「……兄さんもカムイ様を苦しめるつもりですか」

サイゾウ「ああ、そうだ。あの娘はすべての元凶だ……。白夜が崩れ、今のようになったその元凶だろう?」
230 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 21:57:23.86 ID:dg+6wiat0
アシュラ「だが、あんたの復讐が成就したのはお嬢ちゃんが加勢したおかげだ。それにあんたの相棒も……」

サイゾウ「ふっ……。そうだな。フウマでカゲロウを助けてくれたのもあいつだったな。それがこのような終わりを迎えるとも知らずに……ふっ、ままならないものだ」

スズカゼ「……まさか、向こうの区画で待っている人というのは!!!」

サイゾウ「ごふっ……あいつも任を果たした。いや、ここを死に場所と決め、集まった者たちはもう俺以外に残っていない。ここは夢を見るにはちょうどいい死地だったな」ポタタタッ

スズカゼ「……なぜですか、カムイ様は兄さんたちと戦うためにここに来たわけではないというのに。どうして、その様な選択を――」

サイゾウ「そうだな、確かに遅すぎたのだろう。俺でさえ、その疑問を口にしたほどに、この戦いは起きるには遅すぎた……」

スズカゼ「え……」

サイゾウ「だが、それでも……。リョウマ様が道を示されたのなら、それを支えたいと願うことに間違いはないだろう。リョウマ様と共に命を賭けて戦う事こそが、俺にとっての幸せだった……」

スズカゼ「兄さん……」

サイゾウ「ふっ、サイゾウも僅か五代目で歴史に幕を下ろすことになるか。いや、代など飾りに過ぎん、俺は最後のサイゾウとして王族に仕えることが出来た。あのように素晴らしい方のために……命を尽くすことで来たことを誇りに思う……」

スズカゼ「兄さん、私はサイゾウの名を――」

サイゾウ「わかっている」

スズカゼ「え?」
231 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 22:00:16.56 ID:dg+6wiat0
サイゾウ「わかっている。お前がサイゾウの名を継ぐとは思っていない、むしろそれでいい。もう、この名は残すべきではない。多くの兵をこの死地に迎えることとなったこの名前に、この先の歴史を歩む権利はないだろう……。一人の忍びの名として、風化していくのが相応だ」

スズカゼ「……そんな終わり方を兄さんは望んでいるというのですか!?」

サイゾウ「ああ……」

スズカゼ「……」

サイゾウ「俺はもう、十分に満たされたからな。復讐を終え、そして主に仕えた。最後には己の欲を優先し、それを堪能した。忍びの身には余りあるほどの幸福を俺は得た。その反動が、お前たちにとって耐えがたい苦痛だとしても、俺はこの生を誇りに思う……」

スズカゼ「……兄さん」

サイゾウ「すぅ――、はぁ―――」

サイゾウ(リョウマ様……。俺はずっとあなたに仕えることが出来たことを誇りに思っております。たとえ、それが誰もが笑う夢物語だとしても……)

サイゾウ「あなたが築く白夜を……」

サイゾウ(信じております……)

サイゾウ「」
232 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 22:02:47.52 ID:dg+6wiat0
アシュラ「……逝っちまったみたいだな。どうした、スズカゼ?」

スズカゼ「……やはりですか」ガサゴソ

アシュラ「ん?」

スズカゼ「……兄さん、あなたは何処までも私の思うようにはさせてくれないのですね……」

アシュラ「……そうか。まんまと脅しを信じた俺たちの負けってことかよ」

スズカゼ「ええ、本当に……。兄さんには敵いませんね」

アシュラ「それでどうする?」

スズカゼ「……モズメさんとツバキさんと合流して、どうにかここを出ましょう。おそらく、奥への道はもう開かれているはずです」

アシュラ「ああ、わかったぜ」タタタッ

スズカゼ「……」

サイゾウ「」

スズカゼ「お別れです、兄さん。私もあなたと同じように主に尽くす道を選ばせていただきます……」タタタッ
233 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 22:08:17.01 ID:dg+6wiat0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・剣の間『右区画・中央』―

レオン「どうだい、どこかに迂回路はあった?」

カザハナ「だめ、そんなの見当たらない」

サクラ「はい、あまり通路が作れるような構造には思えません、ここが唯一奥に続いていた道なのかもしれません。でも、この有様じゃ……ん?」

シャーロッテ「……んー?」

サクラ「シャーロッテさん?」

シャーロッテ「サクラ様、ちょっと下がってて」

サクラ「は、はい」

シャーロッテ「……」スッ

 ゴンゴン
  ゴンゴンッ

  コンコンッ

シャーロッテ「ここね。おらよっ!」ブンッ

 ドゴンッ!!!
  ガタンボロンッ!

シャーロッテ「よっし!」

サクラ「ええっ!?」
234 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 22:09:31.81 ID:dg+6wiat0
レオン「シャーロッテ、一体何をしたんだ?」

シャーロッテ「なんだかここだけ壁の感じが違う気がして、もしかしたらって思ったんです。隠し通路ですね」

レオン「なるほどね、ありがとう、シャーロッテ」

シャーロッテ「とんでもないですぅ。それじゃ先行しますね」

レオン「まって、カザハナも一緒に行ってくれるかい?」

カザハナ「まかせてよ。あたしが先に行くから、シャーロッテは一歩下がった距離を保って」タタタタッ

シャーロッテ「ふふん、もしかしてレオン様にいいところ見せたいってこと?」

カザハナ「そういうんじゃないから!」タタタタッ

シャーロッテ「はいはい……で、どう、回り込めそう?」タタタッ

カザハナ「……だめ、こっちからは回り込める場所が見当たらない。奥に行けば違う通路があるのかもしれないけど……」

シャーロッテ「むかつく構造ね。まぁ、相手も私たち全員の相手をしたくないからこうしたんだとは思うけど……」

シャーロッテ(それにしても静かね。もう敵はいないってこと?)
235 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 22:12:46.90 ID:dg+6wiat0
レオン「その様子だと、スズカゼ達と合流は出来ないみたいだね」

カザハナ「あ、レオン王子。うん、こっちからは回り込めないみたい、廊下は奥に続いてるから、もしかしたらそっちに道が……。ん?」

レオン「どうしたんだい?」

カザハナ「……奥の壁、今ゆっくりと開いたように見えて……。気の所為かな?」

レオン「……いや、気の所為じゃないよ。あの壁、精巧に作られてはいるけどさっきと同じ隠し扉みたいだ。だけど、意図的に開いたようにも見えたね……」

サクラ「罠でしょうか」

レオン「そうかもしれない。だけど、ここの構造からみて、あそこはこの剣の間の一番奥に当るはず。もしかしたら、あそこにカムイ姉さんが!」タタタタッ

サクラ「あ、レオンさん!」

カザハナ「ちょっと、一人で行かないでよ! シャーロッテ追うわよ!」

シャーロッテ「はいはい。サクラ様は私とカザハナの陰に隠れるように付いて来なさいよ」

サクラ「は、はい!」
236 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 22:17:29.83 ID:dg+6wiat0
 ドゴンッ 
  バタンタタ

レオン「姉さん!」

 …………

レオン「誰もいないのか?」ギシッ

???「誰もいないですか、それほどまでに私の姿は見えにくいですか? 暗夜の第二王子」スッ

レオン「!」

絡繰人形『……』ガチャコンッ キリリッ

レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ

 パシュッ!
  ズオオオッ
   カンッ!

レオン「……手洗い歓迎だね」

???「お気に召しませんでしたか? しかし、こうも短時間にここに辿り着かれる方がいるとは思ってもいませんでしたよ」ニコッ

レオン「……そうかい」

 タタタタッ

シャーロッテ「ちょっと、いくらカムイ様が心配だからって、一人で行くなっての!」

カザハナ「レオン王子、大丈夫。――あ、あんた……」チャキッ

???「おやおや、こんなに揃っているとは思いませんでしたよ。サクラ様、あなたまでご一緒とは……」

サクラ「……ユキムラさん」

ユキムラ「お待ちしていましたよ。あなた方もいるとは思いませんでしたがね」
237 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 22:19:36.18 ID:dg+6wiat0
レオン「……ユキムラ、もう逃げられないよ」

ユキムラ「まぁ、いずれこうなることはわかっていました。出来れば、もう少し時間をいただけるかと思っていましたが。この様子では双方、討ち死にしたという事でしょうね……」

サクラ「ユキムラさん、今すぐ武器を捨ててください。もう終わりにしましょう。これ以上、暗夜と白夜、双方が犠牲を出す必要はないんです」チャキッ

ユキムラ「ははっ、あなたならそういうと思っていました。その在り方、出来ればミコト様の守るこの白夜で輝いてほしいものでした。ですが、あの裏切り者と培ってきたその輝きは不必要なもの、ここでその灯には消えていただかなくてはなりません」

レオン「どんなことがあろうとも、降伏はしないということだね。もう、お前たちの敗北は目に見えているのに、まだ犠牲を増やすつもりなのか!?」

ユキムラ「わかっています。もうここまで来て私たちの敗北は確定していることも……。ですが、もう私にとって勝つか負けるかは関係ありません。あの裏切り者にはこの先、終わりの無い苦しみだけが待っていますから」

レオン「……カムイ姉さんに何をするつもりだ!」

ユキムラ「答える義理は在りません。もちろん知る必要もありません、ですが――」カランコロンッ

ユキムラ「私はどちらに転んだとしても、その結末を見たいと考えています。出来れば、あの王女が苦しむ姿を見てから死にたいものですので……」

サクラ「ユキムラさん……。そんなあなたの願いを叶えさせるわけにはいきません」

ユキムラ「では、簡単な事、あなた方をここで殺させていただきます。大丈夫、安心してください、ことが終われば私も――」スッ

「あなた方の待つ彼岸に向かわせていただきますので……」スッ
238 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/10(日) 22:22:33.30 ID:dg+6wiat0
今日はここまで

 サクラとレオン、二人にとって倒すべき相手との戦いが始まる。


 今日はアンナの誕生日、誕生日おめでとう!
 
 そして、今週のニンダイで新作の情報がくることを祈ろう。
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/11(月) 20:25:15.57 ID:8wUf0C0d0
暗夜?白夜?
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/13(水) 09:48:55.77 ID:N1Ub3I4DO

ロレンス将軍もサイゾウも謎技術で自爆する

新作情報おめでとう
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/17(日) 18:43:33.50 ID:g6P1UrqV0
スマブラに参戦か
242 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 21:52:57.54 ID:k4no6u6e0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・最奥』―

ユキムラ「………」カランコロンッ

絡繰人形『………』チャキンッ

絡繰人形『……』カチャッ

レオン「……そうかい、ここまでした事の責任を取ることもなく、お前はここから去るつもりなのか」

ユキムラ「ええ、すべての事が済みしだい、私もあなた方の待つ地獄へと行くつもりです。ああ、ご心配なく、少なくとも数日の内にはお会いすることになるでしょうから。裏切り者がどのような末路を迎えたのか、きちんと伝えさせていただきます」

レオン「……あんたが白夜のために戦っているわけじゃないってことが、ようやくわかったよ。少しでも白夜のためにことを成しているのかもしれない、そう考えた僕が愚かだった」

ユキムラ「おやおや、まさか暗夜の王子からそのように思われていたとは、この身に余るほどの光栄ですね。もっとも、あなたのように奪われたことのない人間に思われたくはありませんよ」

レオン「お前の動機を信念と呼びたくもないし、その考えを僕は理解するつもりもない。お前のような奴に姉さんの道のりを否定させはしないよ」

ユキムラ「なるほど、奪い続ける側らしい意見です。ミコト様の命を奪い、国土を蹂躙しておきながら、立場に立てなければわからないと宣うその傲慢さ。ミコト様も無念でならなかったでしょう」

サクラ「いいえ、お母様がこんなことを選ばれるはずありません。お母様は、誰よりも平和を願っていたはずです!」

ユキムラ「ははっ、これは痛いところを突かれましたね。しかし、その点はサクラ様の言う通りでしょう」
243 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 21:54:04.51 ID:k4no6u6e0
シャーロッテ「てめぇ、やけに素直だな……」

ユキムラ「わかっているつもりですよ。ミコト様がこのような殺戮を望まれるのか……。いいえ、望まれないでしょう。なにせ、ミコト様は裏切り者が帰って来た事を暗夜と白夜が繋がるための一歩と考えられていましたので」

レオン「暗夜と白夜が繋がるため?」

ユキムラ「ええ、ミコト様は両国の平和を望まれていました。戦いではなく、互いに歩み寄るきっかけを重ねていくことで、いつか共に手を取り合える日が来る、その言葉を思い出す度に、私の行いはさながら水に浮いた油膜ほどに醜いものだと思えてきます」

カザハナ「ミコト様がそう思っていたのをわかってて、なんでこんなことをするの? あんたが、あんたが何もしなければ、スズメたちだって、白夜に戻ってたはずなのに。もう、戦争も終わってたはずなのに!」

ユキムラ「スズメ? ああ、テンジン砦で犬死した者たちでしたか。まったく、一度ならず二度までも暗夜に手を貸すとは、己の立場が分かっていない方々でした。白夜ではないどこかで、勝手に死んでもらえればよかったのですが……」

サクラ「スズメさんたちは、ユキムラさんの事を信じていました。なのに――

ユキムラ「ふっ、ふははははははっ」

サクラ「!」

レオン「……何がおかしい?」

ユキムラ「いやいや、サクラ様があまりにも愚かなことをおっしゃられるので、堪えられませんでした。信じていたと言われましてこっちは気にしたことさえないというのに、まったく一方的な信頼程滑稽なものはありませんね?」

レオン「ユキムラ、お前は――」

カザハナ「――さない」
244 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 21:56:05.38 ID:k4no6u6e0
レオン「え?」

カザハナ「絶対に許さない、あんただけは!!! 今すぐ殺してやる!」ダッ

サクラ「カザハナさん!!!」

ユキムラ「あなたは堪え性の無いお転婆娘のままですね。もう少し空気を読んでくださらないと……」ピンッ

絡繰人形『……』ガシャコンッ! バシュッ!

カザハナ「っ!」キィン ダッ

ユキムラ「ほう……中々」

カザハナ(その首、吹っ飛ばしてやる!)

カザハナ「はあああああっ!」チャキッ

ユキムラ「……ふっ」ニヤッ

 ドゴンッ!

カザハナ(え、奥の扉が開いて――)

 パシュッンッ!

カザハナ(矢!?)

カザハナ「っ!」キィン

 ズザザザーッ

レオン「シャーロッテ!」

シャーロッテ「ちっ!」ダッ
245 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 21:57:29.46 ID:k4no6u6e0
 ダダダダダダッ

カザハナ「な、なにが起きて……!」タッ

白夜兵「しねえええええ!!!」ダッ ブンッ

 ガキィン!

カザハナ「あうっ」ドサッ

白夜兵「へへっ、その命貰った!!!!」チャキッ グッ!

カザハナ「しまっ――」

 ブンッ
  キィン!!!!

白夜兵「なぬっ!?」

カザハナ「え……?」

シャーロッテ「そんな不細工な面で、女の子に手出して調子に乗りやがって。舐めてんじゃねえぞ!」ドゴン!

白夜兵「ぐぎゃっ!!!」

 ズザザザーッ  ビチャアッ

カザハナ「シャーロッテ……」

シャーロッテ「まったく、相手の安い挑発に乗ってんじゃねえよ。ここで落ち着かないでどうすんの?」
246 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 21:58:36.08 ID:k4no6u6e0
カザハナ「……で、でも、あいつは――」

シャーロッテ「感情的になって勝てるんだったら、あのユキムラっていう屑がとっくにこの戦争の勝者よ。でも、現実を見てみな。そういうわけでもない、でしょ?」

カザハナ「……ごめん。シャーロッテ」

シャーロッテ「よしよし。で、どうしますレオン様?」

レオン「そうだね、思ったより敵は多いみたいだ……」

 ゾロゾロゾロ
  シャキンッ
   チャキッ

白夜兵「……へへっ。さすがはユキムラ様です。ここで敵を待ち構えていれば、確かにどうにかできそうです」

ユキムラ「ええ、今ここにいるのが敵のほぼ中枢、彼らを亡き者にすれば、それでこの戦争は終わりとなるでしょう……」

レオン「そうだね、確かにここでこの戦争を終わるだろうね。もっとも――」

 ショオンッ

レオン「お前たちが踏むのは勝利の大地じゃなくて、敗北の大地に他ならない。残念だけど、ここまでのことを許せるほど、僕は――」

 ゴオオオオオオッ……

レオン「甘くないからね」
247 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:01:51.79 ID:k4no6u6e0
白夜兵「へっ、デカい口叩けるのも今の内だ。わずか四人で何ができるってんだよ?」

レオン「そうかい? まさかだと思うけど僕たちにも援軍がいること、忘れているわけじゃないよね?」

白夜兵「へっ、その援軍がここまで来れるって思ってるのか? もういい、さっさとこのいけすかねえ王子を殺して、あとはそこの女たちで適当に楽しもうじゃねえか!」

レオン「品性も何もあったもんじゃないね。だから、こういう事にも気づけないんだろうけどさ?」

白夜兵「てめえ、何をごちゃごちゃ言って――」

 タタタタッ

白夜兵「!?」

???「今だ! エリーゼ、やれ!」

???「うん、いっくよー! それ、ラグナロック!!!!」シュオンッ

 ドゴンッ‼‼‼‼

白夜兵「ひゃぐっ!!!!」ブチャアッ! ドサリッ

白夜兵「な、なんだ。いったい何が起き――」

???「まさか、これほどまでに腑抜けた者たちが敵とは。さきほど戦った者たちとは比べる価値もない雑兵揃いという事か」

ユキムラ「おやおや、少しばかり遅れてくれてもいいとは思いすが。せっかちなのですね、暗夜の蛮族というのは……」

???「生憎だが、そう時間にルーズではいられない性分だ。特に――」

 タッタッタッ

マークス「未だ、無駄な流血を望むような者たちにはな」チャキッ
248 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:04:31.26 ID:k4no6u6e0
白夜兵「あ、暗夜の第一王子!?」

マークス「どうした、その手に持った刃は飾りではあるまい。もっとも、お前らのような志もない者に持たれたところで、正当な真価など発揮できようもないだろうがな」

白夜兵「て、てめえええ!!!」ダッ

マークス「はあっ!!!」チャキッ ズシャアアアッ

白夜兵「がふっ……あがっ、ううぎええ」ジタバタ ドサリッ

白夜兵「」

白夜兵「ちっ、なら同時に襲い掛かれば!!!」ダダッ

マークス「ふん、エリーゼ、カミラ。任せたぞ」

エリーゼ「うん、わかったよ、マークスおにいちゃん!」

カミラ「ええ、悪い子たちにはキツイお仕置きをしてあげないとね?」

白夜兵「なに!?」

白夜兵「怯むな! このまま、奴らの懐に入ってしまえば――」

エリーゼ「そんなことさせないよ!!! いっけー!!!」シュオンッ ドゴオオオンッ

白夜兵「ぎゃひっ……」ドサッ

白夜兵「ぐっ、だが、この距離なら避けられまい、もらったぞ!」タタタタッ スッ

 ザシュリッ

白夜兵「……へ? なんで、倒れ、あし、が切れ――」ゴポッ ドサリッ

カミラ「マークスお兄様はあなたが触れていい人じゃないのよ? わかったかしら」ニコッ

白夜兵「ひ、怯むな! 敵とて人間、この数ならいけるはずだ! かかれ!!!」

 ドドドドッ

マークス「哀れな者たちだ。いいだろう、その命、われわれが直々に刈り取ってくれよう……」チャキッ

 シュオンッ

マークス「ジークフリード!」シュオオンッ

 バシュンッ!!!
249 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:07:30.29 ID:k4no6u6e0
 ワーッ ウアアアアッ

カザハナ「す、すごい……」

サクラ「カミラさんもエリーゼさんも凄いです……」

シャーロッテ「やーん、マークス様とってもカッコイイですよぉ。さてと、形勢逆転とまではいかないけど、今がチャンスよ、レオン様」

レオン「ああ、マークス兄さんたちがあいつらを挑発してくれたおかげで、僕たちは戦うべき相手と戦える。ユキムラ、お前の野望に僕たちが止めを刺してやる」

ユキムラ「……ええ、いいでしょう。無論、そう簡単に止めを刺せると思ってはいませんよね?」

サクラ「……関係ありません。ここで、あなたが生む悪意の連鎖、それを終わらせていただきます」チャキッ

カザハナ「……」シュタッ チャキンッ

シャーロッテ「……」カチャッ

レオン「……」パラパラパラッ……シュオンッ

ユキムラ「………ふっ」

 カランコロンッ……カチャコン……

  チャキンッ……

ユキムラ「殺してしまいなさい」

白夜兵たち『おらあああっ!!!!』ダッ
250 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:08:53.91 ID:k4no6u6e0
レオン「ブリュンヒルデ!」シュオオオオンッ

 ドンッ バシュシュッ!!!

白夜兵「ぎゃっ」ビチャアアッ

白夜兵「ちっ、何だよ! この木は――」

 シュオンッ

白夜兵「き、消え――」

  ダッ

カザハナ「一応、もともと同胞の好だからね。一撃であの世に送ってあげるわ」ザシュッ

 ブシャアアアッ

白夜兵「かっ、あぐっ、はっ――ッ」ドサッ

白夜兵「怯むな!いけっ、いけえええ!」ダダッ

サクラ「あなた達だけは、許すわけにはいきません!」

白夜兵「おやおや、サクラ王女様ともあろう片が我々を、同胞を打てるなどと――」

サクラ「いいえ、打たせていただきます」タンッ!

 ドスリッ

白夜兵「がっ――この、小娘がぁぁぁぁ!!!」ダッ

サクラ「!」

白夜兵「うおらああああっ!」チャキッ ブンッ

 ガシッ

白夜兵「!?」

シャーロッテ「私が相手をしてやるよ、おらっ!」グルンッ ドスンッ!

白夜兵「がっ、てめえ、なにしや――」

シャーロッテ「黙りな」ドゴンッ

 ボギッ!

白夜兵「」

サクラ「ありがとうございます、シャーロッテさん。レオンさん、行きましょう」

レオン「ああ、このまま一気にユキムラを倒す。一気に行くぞ!」タタタタッ

ユキムラ「………」

レオン(こいつを倒せば、恐らくこの戦いは終わる。ユキムラが全ての実権を握っているのなら、カムイ姉さんにとっての悪夢はここで終わる)

レオン(きっと、これで―――)
251 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:10:06.25 ID:k4no6u6e0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城『剣の間・中央区画』―

 キィン!
  カキィン!
 
リョウマ「ふんっ!」ブンッ

カムイ「くっ、はあああっ」ブンッ

 キィン 
ジジジジッ
 ジジジジッジッ

カムイ(きっと、そうです。なにか、何か事情があるはず……。その事情さえ、どうにかすることが出来れば、こうして戦う必要も――)

リョウマ「真剣勝負の最中に考え事とは、舐められたものだ!」ドンッ

カムイ「っ!」

リョウマ「はああっ!!!」ドゴンッ

カムイ「うあああっ」ドササッ

カムイ「ううっ……っ!」サッ

リョウマ「!」ブンッ

 ガキィンッ!

リョウマ「……」チャキッ

カムイ「はぁ……はぁ……」チャキッ
252 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:18:17.92 ID:k4no6u6e0
リョウマ「もう、息が上がっている。そろそろ覚悟を決めた方がいい。俺を救おうなどと思い上がりを捨て、命を取りに来い」

カムイ「……っ。私は、リョウマさんに正気に戻ってもらいたいだけです。私は、あなたを……あなたたちを救うため、ここまで来たんです。諦めるわけにはいきません……」

リョウマ「……俺たちを救うか。どこまでもお前の理想は気高いのだな。このように白夜を荒廃させた俺とは比べ物にならないほどに」

カムイ「……清らかなわけありません。私は、多くの人々を手に掛けてきました。多くの願いも踏みにじってきたつもりです。そこに善悪があろうとなかろうとも。私は、私はその理想だけを追い求めてきた。だからこそ、諦められるわけがないじゃないですか……」

リョウマ「……諦められるわけがない、か。それがどんなに難しく、どんなに過酷な道であろうともか?」

カムイ「何度も崩れ落ちそうになりました。だけど、その度に支えてくれた方々がいます。共に歩んでくれた方々がいます。その人たちと一緒だったからこそ、私はようやくあなたに辿り着けたんです。あなた達に手が届くこの場所まで……」

カムイ(だから、私はその理想を手放すわけにはいかないんです。たとえ、リョウマさん。あなたがそれを拒んでも――)

カムイ「あなたを大切に思っている人の元へ連れて帰るまでは、絶対に諦めません」

リョウマ「……カムイ。そうか、そうだろう。だからこそ、俺は、俺が選んだことに意味がなかったと、思い知らされるのだろうな……」

カムイ「リョウマさん?」

リョウマ「……」
253 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:21:05.75 ID:k4no6u6e0
 バタンッ!

リョウマ「む?」

アクア「カムイ!」

カムイ「アクアさん!? どうしてここに……」

アクア「ええ、突然扉が開く様になったの。ようやく合流できたわね……」

カムイ「扉が開くようになった、ですか?」

アクア「ええ、恐らくだけど奥に向かったみんなが仕掛けを解除したんだと思う。おそらく最奥まで侵攻したはずだから、きっともう少しで合流できるはずよ」

カムイ「そうですか…」

カムイ(ここにアクアさんが入って来れたということは……。おそらくカゲロウさん、サイゾウさんのお二人は……)

リョウマ「……」

アクア「リョウマ、もう終わりにしましょう。あなたが何のために戦っているのかはわからない。でも、もうこれ以上白夜と暗夜で争う必要はないのよ」

リョウマ「……いいや、まだ戦う必要がある。俺は、まだ剣を取り続けなくてはならない」

アクア「どうして、一体何を貴方は求めているの? こんなことをしても、もう何の意味も――」

リョウマ「アクア、忠告だ。手を出さなければ、こちらからお前に手を出すつもりはない。しかし、何かおかしな真似をしてみろ。俺は容赦なくお前を切り伏せる」

アクア「リョウマ!」

カムイ「アクアさん、ここは私に任せてください。大丈夫です、リョウマさんは必ず……」

アクア「……え?」

カムイ「アクアさん?」

アクア「……リョウマ?」

リョウマ「……」
254 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:23:12.29 ID:k4no6u6e0
アクア「……」タッ タッ

カムイ「アクアさん、ダメです! こちらに来ては――」

アクア「……て?」

カムイ「え?」

アクア「どうして……。どうしてなの、リョウマ?」

リョウマ「……そうか」チャキンッ

アクア「……どうして、こんなことになっているの?」

リョウマ「その動揺を見る限り、お前にはすべてが筒抜けになっているらしい…」チャキンッ

アクア「質問に答えて、リョウマ! どうして、どうしてなの?」

リョウマ「……」

アクア「どうして、カムイを苦しめるようなことを選んでしまったの?」

リョウマ「……」

アクア「あなたは……あなたはカムイにとって数少ない希望だったというのに!!」

リョウマ「……」

カムイ「アクアさん、一体何を言って――」

リョウマ「ふっ、俺が希望か……」

 ポタタッ

リョウマ「そんなわけはないだろう。ただの燃えカスのような男に煌めくような光が灯るはずもない……。俺は炎の熱気に振り回されるだけの存在だ。意味などありはしない」

カムイ「リョウマさん?」

リョウマ「……なにも意味などなかった。だからこそ、俺には――」

「もう、それ以外の道が残っていなかった。それだけの事だ……」

 ポタッ ポタタタタタッ
255 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/19(火) 22:25:41.47 ID:k4no6u6e0
今日はここまで

 あと二回で、白夜と暗夜の戦争は終わります。
  
 新作FEのPVに出てた偶像崇拝の化身みたいなの、プレイヤー側でも使えたらうれしいな。主にマスコットとして軍の主力に加えたい。
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 02:11:11.37 ID:GZOXBM1lO
どっちも不穏だあ
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/27(水) 10:02:09.52 ID:LutPwogDO

持ちネタのウツシミはサイゾウにとられ、ハイドラ憑依はリョウマにとられ、病んだ精神はヒノカにとられ…
完全に蚊帳の外のタクミに吹く
258 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 21:32:01.51 ID:b6+FZV+F0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国王都・シラサギ城『剣の間・最奥』―

レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ

ユキムラ「させません!」ピンッ

絡繰人形『……』カシャコンッ ダッ!

 キュイインッ!

レオン「くっ……」サッ

サクラ「レオンさん、これでどうですか!」チャキッ パシュンッ!

 ズビシャッ!
  カランカランッ……

白夜兵「今だ、一気に距離を詰めろ! 構うことは無い、全員殺してしまえ!」

レオン「それは僕たちの台詞だよ。はああっ」シュオンッ

 ゴゴゴゴッ

白夜兵「っ! 全員、止まれ!」

レオン「ブリュンヒルデ!」ゴゴゴッ

 バシュンッ 
  グチャッ 

白夜兵「がはっ……」ドサッ

 シュオンッ……

白夜兵「よし、次が来る前に距離を――」

サクラ「そうはさせません!」パシュシュッ

 ズビシャ!

白夜兵「ぐああっ」ドサリッ
259 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 21:40:30.04 ID:b6+FZV+F0
ユキムラ「ふむ、……中々思うようにはさせていただけませんね……。では、これでどうですか?」スチャッ

絡繰人形『……』チャキッ カタタタッ クイッ

サクラ「カザハナさん、右をお願いします!」

カザハナ「任せてサクラ! それっ!」シュパッ

サクラ「えいっ!」タンッ!

 ガシャンッ
  ガタタンッ!

絡繰人形『』バギンッ! ガタンガタンッ!

絡繰人形『ギギッ……ギギギッ』チャキッ

カザハナ(やばっ、浅かった!?)

 ヒュンッ

カザハナ「!」グッ

レオン「そうはさせないよ。いけっ!」シュオンッ

 ゴオオッ キィン!

レオン「今だ、シャーロッテ!」

シャーロッテ「あいよ! おらああっ」ダッ ブンッ

 ドガシャンッ!!!!
  カタンカタンッ……

カザハナ「あ、ありがとう」

レオン「お礼は後でいい、それよりも次を迎え撃つ! カザハナ、サポートしてくれ

カザハナ「うん。任せて、レオン王子!」
260 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 21:49:17.06 ID:b6+FZV+F0
白夜兵「うおらああっ!」タタタッ

カザハナ「せいっ」チャキッ シュパッ

レオン「はああっ」シュオンッ

 ドゴンッ!

白夜兵「ぐぎゃっ」ドサリッ

サクラ「シャーロッテさん、左から来ます!」

シャーロッテ「わかったよ、それじゃ牽制お願いね」

サクラ「はい、そこ!」パシュッ

 ヒュンッ!

白夜兵「なっ、攻撃!?」ズザザーッ

シャーロッテ「止まってくれてありがとうございますぅ。おらよっ!」ブンッ

 ドゴンッ
 ドサッ ドササッ

シャーロッテ「よし、道が出来たぜ」

レオン「ああ、行かせてもらうよ。行こう、サクラ王女」タタタッ

サクラ「はい、レオンさん!」タタタタッ
261 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 22:02:08.08 ID:b6+FZV+F0
白夜兵「この、この裏切り者どもが!!!」ダッ

カザハナ「行かせないよ」タタタッ シュタッ

 チャキッ ザンッ
 ブシャアアアッ

白夜兵「かっ、はっ……うごっ」フラッ ドサリッ

カザハナ「はぁ、はぁ……」

シャーロッテ「カザハナちょっと頑張りすぎ、少し息を整えてなさい」

カザハナ「で、でも、まだ敵はいるんでしょ。レオン王子とサクラの下に行かせるわけには――」

シャーロッテ「たしかにそれなりにいるけど、小心者の集まりみたいだからね?」

カザハナ「え?」

シャーロッテ「敵の増援、ピタリと止んだみたい。まぁ、こんな風に大量に倒されてたら躊躇したくなる気持ちもわからないでもないけど?」

カザハナ「……なら、今は――」

シャーロッテ「いろいろと引っ掻きまわしてくれたユキムラっていう奴に護衛はいないなら、ここで決めてもらわないと」

シャーロッテ(だけど、なんでこのタイミングで攻めてこないわけ? マークス様とかの方に戦力が集中してるって言っても、こっちはユキムラを捉えてるってのによぉ)

シャーロッテ「なんか気に入らねえな」
262 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 22:11:38.35 ID:b6+FZV+F0
 タタタタッ

レオン(敵の増援が止まった? いや、体勢を立て直しているだけかもしれない。だけどそれはこっちにとって好都合だ。なにせ、もうチャックメイトの段取りは出来上がっているからね)

 カタタタタッ

絡繰人形『……』ガチャコンッ ギュイイィィンッ!

 パシュッ ガシャコンッ!

サクラ「レオンさんには近づけさせません!」

レオン「サクラ王女、ありがとう。……そして、ようやくだね。ユキムラ」シュオンッ

ユキムラ「……おやおや、もうこちらは兵力不足ですか。もう少し、奥に兵はいたと思いますが。まぁいい、横槍が入らなければ私があなたを殺すために迫っていたのでしょうが、逆の立場になってしまいましたね」

レオン「これも予想していたことだろう?」

ユキムラ「そうですね。ええ、この短時間でこれほどの数の犠牲を出すことになるとは、兵法の教科書を逆さに読んで来たと思われても仕方がありません」

レオン「ああ、お前の望んできた結果が今ここにあるすべてだよ。スズメたちを裏切り、そして何より姉さんの希望を折ろうしてきたお前には当然の評価だ」

ユキムラ「ははっ、そうですね。この結果を甘んじて受けなければいけませんか。ですが、まだその清算を受け入れるわけにはいきません。私は、死に絶えるまで――」カチャコンッ

レオン「!」サッ

バシュンッ!!!
   ドゴンッ!!!!

ユキムラ「あの裏切り者が苦しむことに助力を惜しまないつもりですから」

サクラ「ユキムラさん、あなたはどこまで心を無くされてしまったのですか」

263 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 22:20:06.39 ID:b6+FZV+F0
ユキムラ「心を無くされた? 違いますよ、これは私が望んだことでしかありません。この心はですねサクラ様、私がそうしたいと願ったことによって生まれたことに他ならない。あなたのように強い人間ではない、私にそれを求めるのは酷というものです」

サクラ「私は強くなんて――」

ユキムラ「いいえ、あなたは強い。とても強いお方だ、弱い者はここに来れるはずもないのです。私はあなた方を駒として扱った、王族でも何でもありません。ただ、あの裏切り者にとって苦渋となりえる決断と終わりが訪れる様に動いてくれる良質な駒として、私はあなた達の命を顧みる事無くことに当りました。それが、結果的に奴を苦しめることになるなら何でもよかったのですからね?」

レオン「サクラ王女たちを人質に取っていることは公表していたのに、それを無視して侵攻作戦を行ったのも画策の一つだったということだね……。」

ユキムラ「ええ。ですが、サクラ王女が生きているという保証自体は在りませんでしたからね。あの頃に決起した方々には、暗夜への報復心が強かった。そういうものは、抑え付ければ抑え付ける程に膨れ上がるというものです。私自身、憎しみというのは人を変えることができるもののだと実感していましたから」

レオン「……」

サクラ「ヒノカ姉様にタクミ兄様も、その中に巻き込んだというんですか……」

ユキムラ「あのお二人が動いたのは、あなたの無謀な行動故ですよ。ですが、お二人の協力であの出兵が行われたのは事実です。そして、私たちリョウマ様の側近と呼ばれる者たちが幽閉されたことで、事は簡単に進んだ。ただ、それだけの事なんですよ。誠に簡単なことでした」

レオン「……わかったよ。もう、お前に聞くべきことは何もない。お前の口から発せられる言葉を姉さんに聞かせるわけにはいかないからね」シュオンッ

サクラ「……ユキムラさん」チャキッ

レオン「この先にお前が望んでいる終わりはない。それを否定してあげるよ!」

ユキムラ「……そうですか、では否定してみせてください。できるものならですが!」 パシュンッ
264 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 22:32:17.57 ID:b6+FZV+F0
 キキンッ

ユキムラ「!」カランンコロンッ

 ダッ タッ

サクラ「当って!」パシュッ

ユキムラ「甘いですよ、サクラ様」クイッ カチャコン

 パシュッ!
  ガキィン!

サクラ(撃ち落とすなんて……でも!)チャキッ パシュッ!

ユキムラ「っ! はああっ」カランコロンッ 
 
 パシュシュッ!

レオン「サクラ王女、僕の影に隠れて、はああっ!」シュオオンッ

 シュオオオッ! 
  キィンキィン!

ユキムラ「ははっ、まるでサクラ様を守る護衛のようですね」

レオン「そのつもりだよ」

ユキムラ「?」

レオン「サクラ王女達を白夜まで送り届けるのが僕の使命の一つだからね……。それまでは、命を賭けて守り抜く、あんたに希望を奪わせはしない」

ユキムラ「なら、あなたを殺してその希望を抱けない様にして差しあげますよ!」ダッ

 カランコロンッ!

レオン(ちっ、再詠唱、間に合うか!?)シュオンッ

ユキムラ(こちらの方が早い、ならばここで!!!!)

 カタンッ

ユキムラ「もらいましたよ!」カチャコンッ

レオン「っ!」グッ

ユキムラ(とった!)グッ

 ズビシャ!

ユキムラ「ぐっ……。くそっ」ポタタッ

サクラ「させません、絶対に!」カチャッ パシュンッ

ユキムラ「ちっ」サッ
265 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 22:44:59.20 ID:b6+FZV+F0
レオン「すまない、サクラ王女。助かったよ」

サクラ「間に合って良かったです、お怪我はありませんか?」

レオン「ああ、このまま一気に押し切る!」

サクラ「はい!」ダッ

ユキムラ「くっ、ううっ、ああっ……。ははっ、まさかサクラ様に致命傷を与えられることになるとは……」

レオン「……」シュオンッ

ユキムラ「ですが、まだ、まだです。まだ、勝負は終わってなど――」グッ

サクラ「ユキムラさん!」チャキッ

 ググッ

ユキムラ「っ!」クイッ ガチャコンッ

 パシュッ!

サクラ「当てます!」パシュッ

 キィンッ!!!!
  コトンッ

ユキムラ「しま――」

レオン「これで終わりだ、ブリュンヒルデ!」シュオオオオオンッ!!!!

ユキムラ「!!!!!」

 ドゴンッ ガギィンッ!!!!
  ガシャンッ! ゴロンゴロンゴンッ………

ユキムラ「がっ、ぐああああっ……」ドサッ ドササッ……

ユキムラ(うう、ミコト……様……)
266 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 22:46:38.31 ID:b6+FZV+F0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『王の間』―

〜ユキムラの記憶・戦争開始前〜

ミコト「……これで、ようやく動き出せるかもしれません」

ユキムラ「はい、カムイ様もこうして戻られました。まだ少なからず疑念を抱いている者もおりますが、何れそれも終息していくことでしょう。まずは、カムイ様が戻られたことを、多くの民に知ってもらうのがいいでしょう。長きに渡り、カムイ様を奪還されることがミコト様の悲願であったのですから」

オロチ「そうじゃな。うぷぷ、ミコト様がこのように楽しそうにしておるのを見るのは久しぶりの事じゃからな。しかし、よもや記憶を失っておるとはのう。無理に記憶を呼び戻すこともできるんじゃが……」

ミコト「いいのですよ、オロチ。ゆっくりとカムイが思い出すのを待ちましょう。私はあの子がここに戻ってきてくれただけでもうれしいのです。もう、叶わないかもしれない夢と諦めていましたから」

―そう、それがミコト様の夢。カムイ様がこの白夜で自分の傍にいるということがミコト様の夢だった。スメラギ様が暗殺され、共にいたカムイ様が囚われたという知らせを受けた時、ミコト様がどれほど悲しんでいたのかを考えれば、この結果は満点と言わなくとも妥協点には達していたものでした―
267 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 22:51:26.17 ID:b6+FZV+F0
ユキムラ「これで暗夜に対しての恐れはなくなったと言ってもいいでしょう。カムイ様の存在を公にすることで、人々の士気はきっと高まります」

オロチ「そうじゃな。盛大とは言わないまでも、小さな催しは行うのがいい。祝いの場所には良い知らせが来ると皆思う物じゃからな。今まで暗夜に好き勝手されておったが、ここからはそうはいかないということを見せつけてやりたいのう」

ミコト「……私は暗夜と戦争をしたいわけではありません。それに、カムイがこうして戻ってきてくれたことは、戦う以外の希望を見出すため。暗夜に住む人々と交渉することが、何よりも大事になってくるはずです」

ユキムラ「ミコト様……。これまで暗夜がしてきたことに目を瞑れとおっしゃるのですか? 結界によって大規模な派兵を暗夜は行えていませんが、ノスフェラトゥによる被害は日に日に大きくなるばかりでしょう」

ミコト「ええ。でも、今現れているノスフェラトゥは暗夜の方角から来ているに過ぎないものです。すべてを暗夜の策謀と考えるわけにはいきません」

オロチ「しかし、民はそれを理解してくれはせんぞ?」

ミコト「ええ、わかっています。それにカムイがいなくなったことで、暗夜の王国で共に過ごして来た方々に動きがあるのは間違いありません」

ユキムラ「ですが、あの瞳の傷を見る限り大切にされていたとは……」

ミコト「あの傷はとても古い傷でした。この頃のものではありません。それに、もしも暗夜がカムイに不当な扱いを強いていたのなら、あんなに元気な姿ではいられなかったはず。私は、暗夜にもカムイの事を大切に思ってくれる方々がいるのだと信じています」

ユキムラ「……ミコト様はとてもお優しい方です。それに、とてもお強い人だと私は思っていますよ」

―実際、ミコト様はとてもお強い人だ。スメラギ様が亡くなり、カムイ様を奪われても投げ出されることは無く。こうしてずっと耐えてこられたのですから。それが実を結んだことに、私は内心とてもうれしく思っていました―
268 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 22:56:33.16 ID:b6+FZV+F0
ミコト「いいえ、強くはありません。ユキムラにオロチ、そしてユウギリ。いいえこの白夜に住むすべての人に支えられているからこそ、私はこうして待つことが出来たのです。この長い間を生きてこれたのだと……」

ユキムラ「ミコト様……」

ミコト「私はカムイを愛しく思っている暗夜の方々がやって来るのだと考えています。純粋にあの子を助け出したい、そう願う人々がやって来ると」

ユキムラ「暗夜の者たちがカムイ様をどう思われていようとも、暗夜へカムイ様を手渡すわけには参りません。彼らがしたことを、忘れることなど出来るわけもありません」

ミコト「それでいいのです。私も忘れるつもりは在りません。暗夜がしたことは、白夜に大きな悲しみをもたらしました。ですが、人はその悲しみや憎しみに折り合いを付け、新たに歩むことができるはずです。許さなくてはいけないわけではありません、すべての出来事を知っても尚、歩み寄れる余地があるのであれば、私たちはその義務を背負わなくてはいけない、それが知恵を持つことなのですよ」

オロチ「ふむ、ミコト様は時々おかしな話をされるからのう。うぷぷ、じゃが、そういうところはわらわがミコト様を好む理由じゃがな?」

ユキムラ「まったく、オロチはミコト様の話を理解されていない様に思えますね」

オロチ「ふむ、これでもそれなりに理解しているつもりじゃ。それがとても難しいことだということもじゃ。憎しみはとても強い呪いじゃ。だというのに作り出すのはとても簡単なまじないじゃ。誰かの幸せを願う祈祷など、その何十倍にも難しいというのにのう」

―今思えば、オロチの言っている事は何も間違いではありませんでしたね。私はミコト様の言葉を理解していなかった。そして、憎しみを生み出し続けることはとても簡単なのだということも知らなかったのだから―


269 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 23:06:41.84 ID:b6+FZV+F0
ミコト「だからこそ、私たちは憎しみではない道を目指さなくてはいけません。そして、それを紡ぐためにカムイは今帰ってきてくれたのかもしれません」

ユキムラ「カムイ様が、ですか?」

ミコト「ええ、もしもその時が来たのなら、白夜の伝承の通りにあの子の下に夜刀神が現れることでしょう。それをあの子が望まなくとも……」

ユキムラ「ミコト様?」

ミコト「オロチ、ユキムラ。一つだけ話さなければならないことがあります」

オロチ「む、なんじゃ?」

ユキムラ「何でしょうか、ミコト様?」

ミコト「……おそらくですが、私は近いうちにこの世を去らなければならないかもしれません」

ユキムラ「!?」

オロチ「ミコト様、すこし笑えない冗談じゃぞ」

ミコト「いいえ。予感がするのです…。私は近いうちに命を落とすことになります、今まで静観していた者の手によるものか、それとも私が示すべき理のためか。どちらにしても、もう、時間はそう長くないでしょう」

ユキムラ「静観していた者? やはり暗夜王ガロンのことですか?」

ミコト「暗夜王ガロン……いえ、もっと恐ろしい悪魔のなせる業です。おそらく、私はそれに……」

オロチ「ふん、この白夜の地でそのようなことが出来るとは思えんのう。じゃが、そんな話を聞かされて黙っているほど、わらわは落ちぶれてはおらんぞ?」

ミコト「ありがとう、オロチ。でも、それを避けたとしても私は私の理のために命を賭けるつもりです。それがどんな形であったとしても変わりません。そして、その結果として私が死んでしまったとしても、憎しみに心を蝕まれないでいてほしいの」
270 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 23:07:52.10 ID:b6+FZV+F0
――その話を聞いた私とオロチは憤慨していたかもしれません。暗夜王ガロンではない何者か、いや、だとしても敵は暗夜以外にありえない以上、憎しみは増えていくに決まっているでしょう。だから、私は弱者だった。そんな私にミコト様はおまじないをしてくれた。ただ手を添えて円を描くだけのものだった――

ミコト「オロチ、ユキムラ。私が命を落としたことであなたたちが憎しみに駆られることが無いようにおまじないを掛けました。出来ればユウギリにも施してあげたいのだけど……」

オロチ「ふむ、ユウギリは今遠征に出ておるからのう。うぷぷ、ユウギリには後でこういうことがあったと伝えておかねば」

ユキムラ「ミコト様……」

ミコト「ユキムラ。カムイの事をお願いね。あの子はきっと夜刀神に選ばれる、それがどんなに辛い運命を背負うことになるとしても、その結果としてあの子がどんな道を選ぶことになったとしても……。ユキムラ、あなたは」

ミコト「カムイを信じて支えてあげて。それが、私があなたに託したい約束です」

――そして、あなたは……予言の通りに命を落し、私は………。その約束を果たすことは無かった――
271 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 23:08:55.36 ID:b6+FZV+F0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・最奥』―

ユキムラ「……がっ、ううっ」フラフラッ

ユキムラ(絡繰は……。もうダメですね、ここまでバラバラになっては、もう戦闘も何もあったものではありませんか。それに……)

レオン「これで終わりだよ、ユキムラ」

サクラ「ユキムラさん」

ユキムラ「……そのよう……ですね。ごふっ」ビチャアアッ

サクラ「ユキムラさん、もう降伏してください」

ユキムラ「ははっ、本当にサクラ様……。あなたはミコト様と同じように強い方なのですね……。まだ、私を救おうなどと考えていらっしゃるとは……ううっ」

レオン「ユキムラ。今すぐ全兵士に戦闘を停止するように伝えろ。もう、戦いは終わりだ」

ユキムラ「それは無理ですよ」

レオン「この期に及んでまだ、戦いを続けるつもりだっていうのか?」

ユキムラ「いいえ、そうではありませんよ……。どうやら……、私にふさわしい報いが訪れるようですからね……」

レオン「え?」

サクラ「……?」

サクラ(奥の扉、さっきまで閉まっていたピッチリしまってたはずなのに、隙間が――)

 ギギギッ

サクラ「レオンさん、奥から狙われています!」

レオン「ちっ!」サッ

ユキムラ「……」

 ダンッ!!! ズビシャアアアアッ!!!!!
272 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 23:11:17.13 ID:b6+FZV+F0
 ポタッ ポタタタタッ
  
  ギイイイイッ バタンッ!

レオン「……」

サクラ「レオンさん、お怪我は!?」

レオン「いや、大丈夫だ。でも確かに矢が放たれて……」

ユキムラ「……これがこの状況を作り上げた、あなた方の答えということですか……」ドサッ

レオン「ユキムラ!?」

サクラ「! ユキムラさんの背中に矢が!? 今すぐに止血を!」

ユキムラ「無駄です……。毒が塗られているようですから……。おそらく、延命処置の意味は無いでしょう……。ははっ、最後に裏切られるとは、これもミコト様との約束を反故にした報いという事でしょうか」

レオン「……ミコト女王との約束?」

ユキムラ「私は信じることができなかったのですよ。ぐっ、ミコト様、いいえ実の母を殺されたというのに、暗夜の側に着くという選択をしたカムイ様を守る、信じることなどできるわけもありませんでした。私は弱い人間だ、あの日、カムイ様が暗夜を選ばれた時……。湧水のように心の底から憎しみが溢れた……」

ユキムラ「許せなかった。あれほどにカムイ様を思っていたミコト様の命、それを軽視するような選択。それに意味がある可能性など私の中には芽生えることはありません。私の心という台地は憎しみという水で満ち、他の考えが育つことを許しはしませんでした。そして、私は……カムイ様の希望の敵になる事を望んだのです。守るのではなく破壊することが、私が狂わずにいられる唯一の方法でした……。その結果がこれなのですから、なにも得られなかったも同然ですね……」
273 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 23:13:24.27 ID:b6+FZV+F0
レオン「……一つだけ聞いて良いかな? 今回のヒノカ王女の処刑の件……。あんたが流したわけじゃないだろう?」

ユキムラ「……なぜそう思うのですか?」

レオン「あんたは姉さんを恨んでいる。だけど、今この状況でヒノカ王女の処刑を選ぶメリットは何処にもない。国そのものが戦いに辟易している中でそれを選ぶとは思えなかった。今、あんたを裏切った奴らがヒノカ王女処刑の噂を流した首謀者なんだろ?」

ユキムラ「……ははっ、そうでしょうね。彼らにも思い至ったことがあるのでしょう、もっとも、どちらに転んでもおいしいことではないと、彼らは気づいていないようですが……ごほごほっ」

レオン「そうかい。だけど、姉さんを苦しませるつもりなら処刑の件をお前が流したとも思える。それについては?」

ユキムラ「そうですね、たしかにヒノカ様を殺せば確かにカムイ様は苦しまれるでしょう。ですが、それはしなくてもいいことでした。もう、ヒノカ様が死ぬことで白夜の士気は高まることもありませんし、何よりもヒノカ様はすでに壊れてしまわれているのですから……」
274 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 23:16:32.13 ID:b6+FZV+F0
サクラ「ヒノカ姉様が、壊れてしまったってどういうことですか……」

ユキムラ「そのままの通りですよ、もうヒノカ様にするべきことなど何もないのです。言ったでしょう、もうカムイ様にとっての苦しみだけがここにあると。そして、今戦っているお方の存在も、カムイ様にとっては……拷問に等しいものですからね」

レオン「そうかい、もうはなすことはない。ユキムラ、お前の復讐はもう終わった、止めを刺すつもりはない。そのまま、静かに息絶えるといい」

ユキムラ「ええ、ははっ、ごふっ……。そうさせていただきます……」

ユキムラ(ああ、視界が霞む。だというのに体中の痛みが引かない……。ミコト様と顔を合わせることは無いでしょう、私が落ちるのは地獄の更に底でしょうからね)

ユキムラ(ミコト様、あなたがあの日に死ななかったら、そう時々思う時がありました。もしも、あなたが理によって命を絶っていたのなら、私は……)

ユキムラ(私はカムイ様を信じ、守るために戦うことが出来たのでしょうか? あなたの娘と共に、暗夜と手を取り合うために……。歩むことが…)

ユキムラ「ごふっ……」ビチャ……

ユキムラ「ミコト……様……」

ユキムラ「」
275 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 23:23:06.15 ID:b6+FZV+F0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・最奥』―

レオン「……これで、もう白夜と暗夜が争う必要は無くなった。ユキムラの願いもこれでおわった」

サクラ「はい。でも、ユキムラさんを射った人たちは……」

レオン「おそらく、首謀者であるユキムラを討ち取ったという形で、僕たちにすり寄ってくるつもりなんだろうけどね……」

サクラ「ユキムラさんも利用されてしまったということですか……」

レオン「ユキムラはそうなる事も考えていただろうからね。とりあえず、このことは後にしよう。まずは戦闘の終結を告げるのが先だよ」

サクラ「はい」

 タタタタタッ

カザハナ「レオン王子、サクラ!」

レオン「カザハナ」

カザハナ「……遂にやったんだね」

レオン「ああ。でも、まだ戦いは終わってない。早く姉さんに戦いが終わったことを伝えないと」

 タタタタッ

マークス「レオン。うまく事を運んだようだな」

レオン「マークス兄さん……。ユキムラは倒れて奥にくすぶってる連中は攻撃に来る様子もない。おそらくだけど、もうこの争いは終わった」

マークス「わかった。カムイはこの中か?」

レオン「多分ね。早く開いて戦いを終わらせよう、多分だけど今カムイ姉さんと戦っているのは……」

マークス「恐らくリョウマ王子だ。大方ヒノカ王女を人質にとられ、止むを得ずカムイと交戦しているのだろう。われわれがユキムラを倒した以上、それに従う必要はないと理解してくれるはずだ」

サクラ「はい!」

レオン「よし、開けるよ」

レオン(姉さん、もう大丈夫だ……。ユキムラは倒れた、敵の戦意が崩壊した今、もう戦う必要は無くなったんだ!)

 バンッ

レオン「姉さん! もう戦いは――え?」

 ビチャッ ビチャッ
  ポタタ ポタタタッ

サクラ「レオンさん、カムイ姉様とリョウマ兄様……は……。え……」

 ポタタタッ
  ポタタタタタタッ

「リ、リョウマ……兄様?」
276 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/06/27(水) 23:29:45.71 ID:b6+FZV+F0
今日はここまで

 あの白夜の襲撃でミコトが生き残っても、何れ暗夜と白夜が集った平原で、双方の協力を促すためにハイドラの正体を告げて泡になって消えるというのもあるのかなって思った。

 6月25日でFEif3周年になりましたが、リリスの誕生日は未だにわかっていません。なぜや。

 次回で暗夜と白夜の戦争、それが終わりとなります。

277 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 20:24:54.30 ID:dVjTJZm+0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・中央』―

カムイ「この道しかなかったとはどういう意味なのですか、リョウマさん」

リョウマ「そのままの意味だ。こうしてお前たちに牙を剝き剣を交えることが、唯一俺に選ぶことのできた道だ」

カムイ「まだ選べる道はあります。今、ここで戦いを終わらせることだってできるはずです」

リョウマ「……それこそがもう過ぎ去った道だ。今回の戦いは俺が仕掛けたこと、もうやり直すことはない」

カムイ「そんなことは――」

リョウマ「お前には見えていないからそう言えるだけだ。俺の言葉に異を唱えたいのなら、まずアクアに聞くといい。お前に見えなくとも、アクアには見えているはずだ。やり直す機会など無いということがな」

アクア「……」

カムイ「……アクアさん、教えてください。あなたにリョウマさんはどう映っているのですか? 私にそれが見えないという意味、それは一体何なのですか?」

アクア「……」

カムイ「アクアさん…」

アクア「私は、カムイの希望がここにある……そう思っていた。この戦いから多くの人を助け出したいというあなたの希望。そして、その中にリョウマやヒノカが含まれるという願いも……」

カムイ「……」

アクア「だけど、その願いは叶わない。少なくともリョウマを助けるというあなたの願いは……」

カムイ「ど、どういう意味ですか」

アクア「……リョウマから、奴の気配が色濃くにじみ出ている。タクミの時とは比べ物にならないほどのとても強いものが……」

カムイ「え……」

リュウマ「……」
278 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 20:36:19.83 ID:dVjTJZm+0
カムイ「で、ですが操られているのなら、それを解くことが出来れば、リョウマさんを助け出せるはずです」

アクア「そうね、確かにリョウマの意思は残っている。完全に支配されているわけではないと思う」

カムイ「でしたら――」

アクア「だとしても、リョウマを助けることにならないのよ」

カムイ「なぜです!? タクミさんの時のように助け――」

アクア「それはタクミが生きていたからできたこと。体の自由を奪われるのと、奴の力を借りて体を動かしているのでは話が違う」

カムイ「え?」

アクア「リョウマは自由を奪われているわけじゃない、奴の力を借りて体を動かしている。それが今目の前にいるリョウマの状態よ……」

カムイ「……」

 ドクンッ

カムイ(その言葉はなんですか)

 ドクンッ ドクンッ

カムイ(まるで……リョウマさんが生きていないような、その言い方は――)

 ドクンッ ドクンッ

カムイ(嘘ですよね? そんな、そんなことがあって――)

リョウマ「……信じられないと言った顔をしているな、カムイ」

カムイ「あ、当たり前です。そんなことを突然言われて、信じられるわけがないじゃないですか」

リョウマ「そうだな。なにせ、俺でさえここに立っていることを信じられないほどだ。だが、俺はもう死人同然の存在として、今ここにいるに過ぎない。そんな者にやり直す機会があるわけないだろう?」

カムイ「嘘です! そんな冗談を――」

リョウマ「俺はこのような場面で冗談を言うつもりはない。だから言わせてもらおう」

リョウマ「お前に俺の命を救うことは出来ない、それをお前が認めたくなくともな……」

カムイ「……」
279 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 20:45:30.25 ID:dVjTJZm+0
カムイ「どうして……」

リョウマ「……」

カムイ「どうしてこんなことになっているのですか。私は、あなたを助けたかったのに……」

リョウマ「……」

カムイ「どうしてなのですか、リョウマさん……」

リョウマ「……お前の願いを待てるほど、俺は強い人間ではなかった。それだけの事だ……」

カムイ「え……」

リョウマ「この戦争がはじまり、お前が暗夜へと消え、サクラと臣下の行方も分からなくなった時、俺にはすべきことが溢れていた。白夜を思い、家族を思い、そして民を思い、それらに対してすべきことを選ぶのが俺の使命だった。だが俺は、選ぶべき多くの物を捨て去ってしまった」

カムイ「どうして、そんなことを言うのですか。リョウマさんは白夜を守るために尽力して暗夜の革命が成った時、私たちとの和平交渉のために頑張ってくれていたじゃないですか!」

リョウマ「だが、それも失敗に終わった。なぜだかわかるか?」

カムイ「それは、ユキムラさん達がそれを察知していたからで……」

リョウマ「……俺にはそうは思えない。ユキムラ達に区切りを付けさせていることが出来れば、この争いは回避されたはずだ。だというのに俺は、俺だけの力でことを成そうと試みてしまった。そこを強行派に付け込まれた、これは俺のしでかした失態でしかない」

カムイ「だとしても、――」

リョウマ「……俺はな、カムイ。白夜の皆が自然と元の優しき人々に戻っていくことを信じていた。それが俺の中にある唯一の正義だった……」

アクア「リョウマ……」
280 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 20:57:41.34 ID:dVjTJZm+0
リョウマ「愚かな話だろう。俺は最後には必ず白夜の民が目を覚ますことを信じていた。そして、俺は民が望んだことを形にしていった。最初の暗夜侵攻も、それが元の白夜に戻る指針になるならと行っただけに過ぎない。そして、俺は守るべき民をその時切り捨てた。それがそもそもの間違いだった」

リョウマ「状況はどんどん悪くなっていく。人々は委縮した、戦況の悪化を多くの民は薄々感じていた。しかし、それを口にすることを恐れた……。もしかしたら次は自分が先に送られた人々と同じように死地に送られるかもしれない。そう多くの民が思ってしまった時、無数の道筋は束ねられ、一つここに至る道だけが残る。俺は民衆の心に不安だけを植え付ける選択をした無能に過ぎなかった」

カムイ「ですが、それはその時の白夜を思って仕方なくしたことだったはずです……」

リョウマ「仕方のないことではなかった。そもそも、同胞に敵を作り出す行為に意味などない。俺は白夜を守るべき責務を怠った。怠り、そして恐怖だけを植え付けてしまった。送られた者たちの多くは暗夜と軽い繋がりがあったに過ぎない、そして当時の戦場で暗夜兵の手当てをした者たちもいた。それは俺が信じた正義、優しき人々そのものだった。それを俺は守ることが出来なかった」

カムイ「……だとしても、まだ選ぶことは出来たはずです」

リョウマ「言っただろう、俺は人々が戻っていくこと、かつての優しき心の人々に戻っていくことを己の正義としたと……。一度、その人々を切り捨てたこと、その一件でユキムラ達の目が覚めることを願った。いつか夢は覚める、この悪夢も終わりを迎えるとそう、信じていた。だが、俺は夢を見ていたわけじゃない。これが現実だというのにそれから目を逸らしていた。そして、シュヴァリエ公国の反乱の頃、ようやく目が覚めた。そして、俺の信じる正義は俺のための正義になり果てた……。誰にも理解されない、俺だけの正義になった」
281 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 21:05:46.67 ID:dVjTJZm+0
アクア「なら、どうして一度カムイを白夜に連れ帰ろうとしていたの? あなたの正義とカムイの正義は違う物よ。あなたは、どうしてカムイを……」

リョウマ「……それが俺の中にある正義を、もしかしたら形に出来る可能性を秘めたものだったからだ」

カムイ「え?」

リョウマ「俺はお前に力を貸してほしかった。この暗雲の漂う白夜の中であっても、お前なら乗り越えられるはずだと、そんなことを考えてしまった。もう、俺には白夜を動かせるほどの力は無くなっていた。どんなに新しい道を模索しようとも、俺の中の正義がそれを拒む。だから、俺の中の正義を踏まえつつも、白夜を守っていける方法を考えた。俺はな、お前に白夜で共に戦ってもらいたかった。この白夜をもう一度優しい国にするために……」

カムイ「リョウマさん」

リョウマ「だが、あの時のお前は揺れていた。それが酷く頼りないものに見えて、俺はお前と共に白夜に戻ることを止めた。俺は守るためにお前を白夜に戻したかったわけではない、白夜のために共に戦うことを望んでいたからこそ、揺れない心を持つお前を欲した。それが俺の中にある最後の分かれ道だったのかもしれない。その後はもう語る必要もない、俺は形だけの王族となり果てて、多くの将兵を動かす為の駒として扱われた。そして、その中でも俺は正義に固執し続けた。この覚めることのない現実が夢であるように願いながらな……、だが、最後の最後で俺の夢は突然覚めることになった」

アクア「……ヒノカをユキムラが暗殺しようとしていたことを、あなたは知ったのね」

リョウマ「ああ……」
282 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 21:23:40.56 ID:dVjTJZm+0
リョウマ「ユキムラの憎悪はカムイだけに向けられていた。暗夜ではなく、カムイを苦しめるための行為だった。だからこそ、ヒノカを守るようにミタマたちを差し向けた。ただ、ヒノカを守るために俺は多くの兵を犠牲にする選択をした。それが俺の中の正義をことごとく崩した、そして残ったのはこの抜け殻だ……」

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「俺は、すべてがどうでも良くなってしまった。俺が守れるものなど何もない、いや今さら何を守る。ここまでの惨状を醸し出しておきながら……。だが、一つだけ守れるかもしれないものがあった。スサノオ長城での敗退の責任をユキムラ達が要求していたこと、さらにヒノカの処刑の話があがった時、俺はそれを最後の仕事とし――」

 ビチャッ……ポタタタッ

リョウマ「牢で命を絶った。その感覚は今でも覚えている。思ったよりも痛かったな……」

 ジワッ……ポタタタッ

カムイ(リョウマさんの腹部が裂けて!? それになんですかこの気配は? ドロドロとした気配が部屋に染み込んでいくみたいに広がって……)

アクア「リョウマ……」ズササッ

リョウマ「ううっ……」グチャンッ ビチャンッ……

カムイ(これが、これがリョウマさんだというんですか……。この、気配を形作れないような存在が――)

カムイ「!」チャキッ

リョウマ「これが逃げ出そうとした男の末路だ、カムイ。自分の不甲斐なさ、自分の弱さに押しつぶされ、そして自分の正義の正しさを生きたまま証明することをあきらめた男のな」
283 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 21:26:34.95 ID:dVjTJZm+0
 ビイチャッ……

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「カムイ。こんな姿になった俺だとしても、お前は救おうと思うか? このような怪物を、死に損ないを、そしてすべてから逃げ出した男を……。お前は救おうというのか?」

カムイ「……」

リョウマ「……」

アクア「……カムイ」

カムイ「……」

カムイ「……リョウマさん、あなたの言っている事、そしてその見た目を思えば言っている事は間違いないでしょう……」

リョウマ「……ようやくわかったか。なら――」

カムイ「ですが、あなたを助けることを諦めるつもりはありません」

リョウマ「なに?」

カムイ「……」

リョウマ「お前はまだ、俺を救おうと考えているのか?」

カムイ「はい、もちろん、そのつもりです」

リョウマ「……なぜだ

カムイ「私はそのために、ここまで戦ってきたんですから……。私はあなたを助けるために剣を振るいます」

カムイ(それがもう叶わない願いだとしても……。私には――)

カムイ「それ以外の選択肢はありません! 私はあなたを救ってみせます!」ダッ

リョウマ「カムイ!!!」ビチャアッ チャキッ

カムイ「はあああっ!!!」ブンッ

リョウマ「やああっ!」ブンッ

 ガキィンッ
   キィンッ!
284 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 21:30:06.06 ID:dVjTJZm+0
アクア「……」ギュッ

アクア(今、歌の力を使えば……リョウマに送られている奴の力を抑え込むことが出来る。私に体を蝕む呪いが来ることになるけど、それだけでこの戦いは終わらせることが出来る。もう、リョウマは救われない……、それはもうわかり切っている事……)

アクア(だけど――)

カムイ「はああっ」タタタッ

 カキィンッ キィンッ!

アクア(私はあなたのその希望を支える。たとえ、それが叶わないことだとしても、私はあなたの希望を支えていく。だって私の歌はあなたの希望を砕くための物じゃないから!)

リョウマ「うおおおっ!!!」ブンッ

カムイ「くっ!」ドンッ ドササーッ

リョウマ「終わりだ!」ベチャンッ ググッ ブンッ

カムイ「!」

アクア「はあああっ!!!」チャキッ ダッ

 キィンッ!!!

リョウマ「アクア……」

アクア「私もカムイと同じよ。あなたを救ってみせる」

リョウマ「わかっているはずだ。俺は――」

アクア「ええ、だとしても救えるものはあるはずよ」キィン!

リョウマ「っ!」 ブンッ

アクア「!」サッ

カムイ「アクアさん」

アクア「カムイ、行きましょう。リョウマを……助けるんでしょう?」

カムイ「はい!」ダッ

カムイ(そう、それが私の戦ってきた道です。今まで幾度となく、選んできたことは私にとって誰かを救う事だった。だから――)

「もう迷ったりしません!」ダッ
285 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/08(日) 21:48:21.90 ID:dVjTJZm+0
今日はここまでで

 すみません、纏まり切らなかったです。
 あともう一回でこの章が終わります。アクアの歌はカムイの希望を支える歌であってほしい

 本当ならここで指針選択肢だったのですが、選択肢の内3つが理想を目指すものになり全5回の過半数を越えたので、このお話は理想を信じるルートとして終わりまで向かうことになりました。よろしくお願いいたします。

 ちなみにここでの指針選択は、リョウマを倒すために剣を取る or リョウマを救うために剣を取るという感じでした。

◆◇◆◇◆◇

 以下、行われた指針選択の問いと選ばれたもの

〇3スレ目【675】
 十七章 フウマ公国戦
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 1.サイゾウと共にコタロウの撃破を優先する (現実)

 2.生きていると思われるカゲロウの救出を優先する(理想)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  選択結果-2-

〇4スレ目【219】
 第十九章 暗夜王国王城クラーケンシュタイン ガンズ戦
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 1.偽りであろうとも理想を掲げる (理想)

 2.偽りであろうとも目的を掲げる (現実)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 選択結果-1-

〇4スレ目【667】
 第二十一章 イズモ公国での決断
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 1.妖狐の山を通り、制圧された風の村へと向かう(理想)

 2.増援が到着するまでの間、イズモの防衛に努める (現実)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 選択結果-1-

 理想3 現実0

 このような形になりましたので、よろしくお願いいたします。
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 22:54:26.57 ID:kiJ1WKoWO
なるほど 現実ルートだとどうなるのかも気になるな
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/10(火) 09:41:19.49 ID:A6NjRFQCO
まさにifだなー
実際に各ルートでこれくらいパターンがあっても良かったと思う
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/10(火) 15:52:30.74 ID:AwHvKyLDO
乙 このリョウマがやたら正義にこだわったのは、ゲームで正義などないと割り切ったマークスとの対比なのかな?
289 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 22:49:28.97 ID:94BEzAZE0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・中央』―

 キィン!
  カキィン!

リョウマ「うおおおっ!」チャキッ ブンブンッ

 ガキィン ギギギギッ

カムイ「っ、はあああっ!!!」ドンッ ブンッ

 ガキィン!

カムイ「リョウマさん、もう終わりにしてください。もう、戦うことは――」

リョウマ「黙れ!」ドゴンッ!

カムイ「!」サッ

アクア「カムイ!」タタタタッ ガシッ

カムイ「アクアさん、ありがとうございます」

アクア「気にしないで、あなたの戦いを支えるのが私の役目だもの」

カムイ「はい!」

リョウマ「いつまでその思い上がりを続けるつもりだ……。俺を救うなどという、その思い上がりを……」

カムイ「思い上がりだとしても、一歩たりとも退くつもりはありません。あなたがそれを否定しても私は歩みを止めません」

 ザッ チャキンッ

カムイ「あなたを救うために剣を取ると、そう決めたのですから!」ダッ

 キィンッ!
290 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 22:52:59.60 ID:94BEzAZE0
リョウマ(そうか、お前はどんな状況であろうとも、決して諦めることは無いのか……。それが夢物語、いやそれ以下の戯言にもならないと理解してなお、お前はそのために戦い続ける……)

リョウマ(それが俺とお前の中にある圧倒的な違い、強さの差なのかもしれん……)

リョウマ(カムイはとても強い人間なのだろう。こうしてここまでくる間、お前は多くの選択を前に、逃げる事無くやって来た。それがどれほどの苦悩なのか、想像することは難しくない……。カムイは選ぶという地獄と向き合ってここまで来た……)

リョウマ(それに比べて俺はどうだ?)

 カキィン!

リョウマ(俺はその地獄を前にして何が出来た? 何を選べた?)

 キィン!

リョウマ(俺は選べたのか? カムイのように壁を前にしてするべきことを選べたのか?)

リョウマ(選べたと、俺は言えないからこそ……。俺の正義は俺にとっての拠所になったのかもしれない。何でもいい、それが終わらない夢だと信じてきただけだ。そして、覚めた夢から逃げるように命を絶っただけに過ぎない……)

リョウマ(そんな俺が救われる? そんなことがあっていいわけがない!)

リョウマ(そうだ、俺に……)

リョウマ(救われる価値などありはしない!)
291 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 22:57:48.56 ID:94BEzAZE0
リョウマ「はあああっ!!!!」ダッ

カムイ「!」サッ

 ドゴンッ!
  ドゴゴンッ!

リョウマ「カムイ!!!」

カムイ「っ!チャキッ

 キィン!キキィンッ!
  ジャキンッ!

リョウマ「はあああっ!」

カムイ「っ!」

リョウマ「俺は救われるべきではないと、どうしてわからない!?」

 ブンッ ガキィンッ!

カムイ「……」

リョウマ「この現実から目を逸らしているのか? わかるだろう、俺がどのような選択をしてお前を苦しめたのか、分からないわけではあるまい。俺はお前の理想を、そして希望を潰した。そんな相手を救うなどと……」

カムイ「……関係ありません。私の希望や理想が潰えてしまったとしても、それがリョウマさんを救いたいという私の願い砕くものになるわけではないんです」

リョウマ「カムイ……」

カムイ「……」
292 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 22:58:17.83 ID:94BEzAZE0
リョウマ(……お前はこれほどに成長していたのか。あの、シュヴァリエでの戦いで何も持っていなかったお前が、こうして姿を見るだけでも分かるほどに……感嘆な意思を持つようになったのか……)

リョウマ「……本当に、お前は強くなったのだな」

カムイ「はい。少なくとも、あの頃よりはマシになったというだけです」

リョウマ「大きくは出ないのか。いや、それもお前らしさということか……」

リョウマ(お前は……その点だけは変わらずにいる。それがお前の強さなのかもしれない。その熱い心があったからこそ俺は、お前を求めたのかもしれない……。その強さを……)

リョウマ「ならば見せて見るがいい。俺を救うというその剣で、お前は何を見出すのか、今ここで俺に!」チャキッ ジリッ

リョウマ(よもや、幾度も連撃を仕掛けられる状況ではない。この一撃で決着をつける……)

カムイ「……ええ、望むところです」チャキッ

リョウマ「……」

カムイ「……」
293 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:00:48.60 ID:94BEzAZE0
 ダッ!

リョウマ「……」

カムイ「……」

 タタタタタッ
  タタタタタッ

リョウマ「……」

カムイ「……」

 チャキン
  シュキンッ!

リョウマ「はああああああっ!!!!」ググッ

カムイ「やああああああっ!!!!」ジャキッ

 ザシュシュッ!!!!
294 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:05:51.37 ID:94BEzAZE0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆

 ポタッ ポタタタタッ

リョウマ「……」

カムイ「……っ」ガクッ

アクア「カムイ!」タタタタッ

カムイ「アクアさん……」

アクア「大丈夫、傷はそれほど深くないみたいね」

カムイ「はい……。それよりも、リョウマさんは……」

アクア「……ええ、あなたの狙い通りに決まったわ。もう、リョウマは戦うことが出来ないはずよ」

カムイ「そうですか……」

リョウマ「……っ」ボトリッ カランカランッ……

カムイ「腕を一つ落とさせていただきました。もう、戦える状態ではないでしょう」

リョウマ「……」

カムイ「……私の勝ちですね。リョウマさん」

リョウマ「……」
295 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:10:01.23 ID:94BEzAZE0
リョウマ「……ふっ」

カムイ「?」

リョウマ「……ふははっ……」

カムイ「え?」

リョウマ「ふふっ、ふはっ、ふはははははっ! これで勝ったか……。なんとも浅はかな考えだ、カムイ!」ビチャッ チャキンッ

 ガシッ

カムイ(落とした腕が生えた!? いや、これは――)

リョウマ「はあああっ!」チャキッ ブンッ

カムイ「!」ダッ

 ガキィンッ ドゴンッ!

カムイ「がっ!!!」ドサッ ズサササーーー

アクア「カムイ!」

???「何が信じる、だ。結果的にお前の理想を狂わされたことから逃げるための口実を並べているだけだというのにな。正直に言ってしまえばいい、この男に裏切られたのだと……」

アクア「あなた、リョウマじゃない。まさか――」

カムイ「異形神……」チャキッ

???「そういうことになる。死にかけた操り人形など、もうこの世にはいはしない。残念だがお前はこの男を救えなかったということだ……。結局、人間のあたたかな感情などほとんど仮初の物。人を恨み憎み、そして嫉妬する。黒き感情こそが本流というだけの事だ」

カムイ「黙ってください。そしてリョウマさんの体から出て行ってください。その体は、あなたのような方が居座っていいものではありません!」
296 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:12:05.02 ID:94BEzAZE0
???「ははっ、何を言うかと思えば……。最後まで愚かな正義に固執した男に価値などないだろうに。この男も救われる必要はないと思っていた。そう、お前はこいつをさっさと殺しておくべきだった。そうすれば、こうして我に殺されることもなかったのだからな」

カムイ「はああああっ!」チャキッ

???「ふんっ!」ブンッ

ガキィン!

カムイ「うああっ!」ドサッ ドササッ!

アクア「カムイ! もう、リョウマではないというのなら――」シュオンッ

???「小娘、そう易々と力を使わせると思ったか!」チャキッ ダッ

アクア「!」

カムイ「っ! はあああっ!」ダッ

 ガキィン!

アクア「カムイ!」

カムイ「アクアさん、早く下がってください……」

???「往生際が悪いことだ。お前の理想はもう崩れ去ったというのに、未だにその剣を助けるために使うか?」

カムイ「黙れ!」

???「ふん、結局お前はこの男を救うことなどできはしなかった。それもそうだ、命が無いものに救いなどありはしない。それを認められないからこそお前は、助かりもしない命を救おうと必死になっていただけだろう? この男は最後まで信じ、そして裏切られた。だからこそ、その復讐を願って命を繋いだ。お前の考えるような、誠実な理由などではない。この男はな、多くの人間を道連れにして死ぬことを選んだだけだ……」

カムイ「信じません、あなたの言葉など」

???「信じなくてもいい。今から死にゆくお前には関係のないことだ!」ブンッ

カムイ「っ!!!」キィンッ

 ガキィンッ!
297 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:14:55.19 ID:94BEzAZE0
???「さぁ、恨むがいい、そして絶望しろ。お前の希望も理想も砕け、何も救えない己の弱さを恨みながら、ここでその役目を終えるがいい!!!」ダッ

 キィンキィンッ!

???「うおらあああっ!」ドゴンッ

カムイ「きゃああっ!」ドサッ ドサササーッ

アクア「カムイ!」

カムイ「っ……はぁ、はぁ。っ……」ポタタタッ

???「さぁ、どうだ? 己の無力さ、そして信じることの無意味さを知った気分は……」

カムイ「ええ、そうですね……。私はとんでもないほどに無力です。こうやって、あなたにすべてを奪われてしまっているのですから」

 チャキッ

カムイ「ですが、私は信じることを無意味だと思うつもりはありません。それを認めることは、絶対にありえません。私はリョウマさんを、そして私の道を信じます。だからこそ、私は――」

カムイ「折れるわけにはいかないんです!」グッ

???「そうか、何処までも愚かな娘よ。信じる事がどれほど無意味な事なのかを認められぬとは……。それを今思い知らせてやろう」グオンッ

 ブンッ

カムイ「!」チャキッ

 ドゴンッ

カムイ「っ!」

???「これで終わりとしよう……」チャキッ

アクア「カムイ!!!!」

カムイ(間に合わない――)

???「死ねぇ!」グッ

 ズビシャアアアッ!!!!
298 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:18:21.40 ID:94BEzAZE0
  ポタタ ポタタタッ

カムイ「……」

???「あぁ?」ポタタタッ

アクア「え……」

???「ぐっ、な、なんだ。なぜ、剣がこの体に刺さっている。……一体、何がどうなっているのだ……」グッ

カムイ「一体何が……」

「カムイ」

カムイ「え?」

「カムイ、後は俺に任せろ」

カムイ「その声は……リョウマさん!?」

???「なっ、貴様……。馬鹿な、なぜに意識を――」

 チャキッ
 ズシャッ!!! ブシャッ!!!

???「ぐっ、ぐあああっ。死に損ないが、機会を与えた我に……。我に歯向かうつもりか!?」

「お前に魂まで売ったつもりはない。俺は、俺の正義のためにお前を利用した、それだけの事だ!」

 ビチャッ ビチャッ
  ポタタ ポタタタッ

???「ぎゃっ、ぐっ、貴様、貴様!!!! なぜだ、なぜ恨まぬ。お前にとってあの娘は……目障りな存在でしかないはずだ。お前に苦悩を植え付けただけの存在のはずだ!」

「苦悩は俺が生み出したもの、俺の弱さが生み出したに過ぎない……。この弱さは俺にとっての正義だ……。そしてそれを手放すつもりはない」

???「この、死に損ないがあああああっ」ブンッ

「カムイ!」

カムイ「!」チャキッ

アクア「あぶない!」ダッ チャキッ

 キィン
  カキィンッ

カムイ「アクアさん」

アクア「早く、離れるのよ!」

 タタタタッ

???「逃がすかっ!!!!」ダッ

 チャキッ

???「!」

「これで終わりだ……」

 ザシュッ ググッ ズシャアアアッ

???「がああああああっ!!!!!!」ビュオオオッ!

 ビチャアアアッ!

「……はぁ、はぁ……ううっ」グラッ

 ドサリッ
299 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:20:05.07 ID:94BEzAZE0
カムイ「リョウマさん!」タタタタッ

 グッ ビチャッ……

リョウマ「……はぁはぁ、ああ、カムイか?」

カムイ「はい。リョウマさん……、すみません、あなたを救うと言ったのに、私は――」

リョウマ「いいんだ。これが俺の正義の……求めた形だっただけのことだ……。ごふっ」ビチャアアッ

カムイ「リョウマさん……」ポタタッ

リョウマ「ふっ、こんな身でありながらも、まだ人間のようにいられるか……。む?」

 テト、テト……

サクラ「リョウマ……兄様?」

リョウマ「その声……サクラなのか?」

サクラ「はい、リョウマ兄様。ようやく、戻って来れました……」

リョウマ「そうか。戻ってきてくれたんだな……。すまない、出来ればお前の姿を見たかったが、このありさまで――」

サクラ「リョウマ兄様!」ギュウッ

リョウマ「サクラ……」

サクラ「ううっ、どうしてですか……。どうして……」

リョウマ「……すまない、サクラ」

サクラ「いや、言わないでください。そんな……もうお別れになってしまうようなこと、言わないでください。リョウマ兄様……」

リョウマ「……ふっ、お前はまだ泣き虫なままなのか」ナデナデ

サクラ「ううっ、だって、だってもう一度、家族で一緒にいられるって、それを私は信じて……、信じて……きたんです。それなのに、こんなのって……」

リョウマ「……サクラ」
300 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:32:42.81 ID:94BEzAZE0
 タッ…タッ

レオン「リョウマ王子……。ようやく、あなたに会うことが出来ました」

リョウマ「……お前は?」

レオン「僕はレオン。暗夜王国第二王子だよ」

リョウマ「……そうか、お前がサクラを支えてくれた王子だったのか。テンジン砦でのこと、許してくれとは言わない。俺に覚悟と割り切る力があれば、起きることのなかったことだった…」

レオン「……もういいさ。起きたことの謝罪を貰っても、この状況が覆るわけでもないからね」

リョウマ「そうか……。サクラを支えてくれてありがとう。お前の支えが無ければ、サクラは戻って来れはしなかっただろう……」

レオン「いや、サクラ王女がいなかったら僕もここにはいなかったかもしれない。それくらい、サクラ王女は僕たちに協力してくれた。だから、僕は彼女たちを白夜に連れていくことを決めたんだ。そして、それもようやく終わったみたいだね」

リョウマ「そうだな。そちらから来たということはユキムラも倒れたという事だろう?」

レオン「ああ、あいつは――」

リョウマ「わかっている…。ユキムラもそうなることを考えていた。あいつは、そうなることをずっと予想していた。あいつは覚悟していた……。俺とは違う、非道を行う覚悟を持っていた……」

レオン「……だとしても、あいつのしたことを許すつもりはない。絶対にね……」

リョウマ「ああ。この先、どんな未来があろうとも、俺たちは戦争を泥沼化させた悪として残り続ける……。いや、そうでなくてはいけない……。それが俺にとっての最後の希望、正義を実現できるかもしれない可能性だった……」

サクラ「そんな……」

リョウマ「……この作戦もすべて俺が立案した。外壁防御に民間人を混ぜたのは、そのまま兵に守らせるためだ。そして強行的な者たちを城に配置する。俺は今ここにある、狂ってしまった白夜を捨て去るためにそう配置した……。俺もその中の一人であるとするために、ここにいることを選んだんだ」

カムイ「リョウマさん……」

301 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:37:07.10 ID:94BEzAZE0
リョウマ「だが、サイゾウやカゲロウには見抜かれていたのだろうな。こぞって俺の最初の命令には従えない、そして俺と共に闘う道をあいつらは望んだ。民の護衛ではなく、俺と戦う道をな。最後の最後で、俺は幾人かを地獄に連れて行ってしまったんだ……」

カムイ「……サイゾウさん、カゲロウさん」

リョウマ「本当は、彼らにこの先の未来を見てもらいたかった。再興していく白夜の姿、俺の正義が意味を持っていたのかどうかを見てほしかった……。でも、それは果たされなかった。それもそうだろう、俺の最初に出した命令には生きた意思が無かったのだから……」

サクラ「生きた意思……」

リョウマ「そう、生きた意思のある選択にこそ意味があるのだと……。カムイを見てようやく思い知らされた……」

リョウマ「思想や理想は生きているからこそ通じるものだ。俺は生きながらに死んでいた、俺の正義は俺だけのものになった、息吹を持ちながら俺は死に体のまま、ゆっくりと正義が崩れるのを待ち、そして崩れた途端に死へと逃げ。そして最後の最後で、俺はようやく正義を体現することを選べた……。あいつを追い出すことで、俺はようやく生きた正義を手にしたのかもしれない……」

カムイ「……いいえ、リョウマさんは最初からずっと、あなたの正義を信じていたはずです。だからこそ、私はあなたを救いたかった。なのに、私は……」

リョウマ「いいや、お前は俺を救った。アクアの言っていた言葉の通りにな」

アクア「え?」

リョウマ「アクア、お前は言った何か救えるものがあると……。そんなものあるわけがないと思っていた。命が尽きればすべてが無くなる。死者である俺が救われるわけがない、なにせ救えるものなどありはしないのだから……。だが、俺は確かに救われた……。カムイ、お前が俺を信じてくれた。どんな姿になっても、お前は俺を……」

カムイ「リョウマさん……。私だけじゃありません、あなたと一緒に戦うことを望んだ人々は、きっと……あなたの事を信じていました。あなたの正義は、きっとあなただけのものではなかったはずです……」

リョウマ「……そうか、そうだったのなら、俺は幸せ者だ。感謝してもしきれないほどにな……」
302 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:39:39.24 ID:94BEzAZE0
リョウマ「はああああっ」ググッ ビチャアアッ

カムイ「リョウマさん、一体何を!?」

サクラ「リョウマ兄様! 駄目です、今、剣を抜いたりしては!」

リョウマ「ふっ、もうこの体に生きるも死ぬもない。もう、俺のすべきことは終わりを迎えた。もう、この体もやがて朽ちていくだろう。その前にサクラ、これを……」スッ

 チャキンッ

サクラ「これは雷神刀!? 私が受け取るわけにはいきません、これは代々白夜の王が継ぐものです――」

リョウマ「サクラ、これはもう王としての証にはならない。これをお前に託すのは一つ頼みたいことがあるからだ……」

サクラ「頼みですか……」

リョウマ「ああ。……サクラ、この白夜の未来を、世界の生末を見届けてほしい」

サクラ「!!!!!」

リョウマ「この白夜の道、そして暗夜と共に歩んでいく平和な世の生末を、俺の相棒と共に見届けてほしい」

サクラ「リョウマ……兄様……」

リョウマ「……」

サクラ「……」

 カチャッ

リョウマ「ありがとう、サクラ」

サクラ「……私にそれが務まるかはわかりません。未来がどうなるのかはわからないものだから……」

リョウマ「……」

サクラ「だけど、ちゃんと見つめ続けます。リョウマ兄様の分も、スズメさん達の分も、この先の白夜を、ちゃんと……ちゃんと……見届けてみせます」ポタタタッ

リョウマ「ありがとう……。最後にお前と話が出来て良かった……」ナデナデ

サクラ「はい、リョウマ兄様……」
303 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:43:58.12 ID:94BEzAZE0
リョウマ「カムイ……」

カムイ「なんですか、リョウマさん」

リョウマ「ヒノカを頼む……。奴が俺を見限った以上、次に向かうとすれば恐らくヒノカだろう」

カムイ「まさか、ヒノカさんはすでに……」

リョウマ「大丈夫だ、ヒノカは死んでいない。ただ、スサノオ長城から戻って以後、何かに憑りつかれているかのように魘されている。おそらく、奴の手は回っていたのだろう。俺の体に供給されていた奴の力の流れ、それがどんどん奥へと向かっている……。もう、俺には止めることもできない」

カムイ「……」

リョウマ「カムイ、俺は何もできなかった男だ。そんな男がこんな時になって、何を言うかと思うかもしれない。だが、俺はお前に託したい。こんな俺でも、信じてくれたお前に……」

カムイ「……」

リョウマ「ヒノカを救ってくれ……。こんな思いをするのは俺だけでいい。だから頼む……ヒノカを救い出してほしい……」

カムイ「……」

リョウマ「……カムイ」

カムイ「そんな心配そうな顔をしないでください。必ず、救って見せます。だから、安心してください」

リョウマ「……そうか」

リョウマ「ありがとう……カムイ……」ゴポポッ

カムイ「リョウマさん!」

リョウマ「後は……頼む……」

 グチャッァ……
  ドロドロッ……
   ビチャアアアッ……

カムイ「……リョウマ……さん」

サクラ「リョウマ、兄様……。ううっ、どうして、どうして……」

レオン「サクラ王女……」
304 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:46:14.88 ID:94BEzAZE0
カムイ「……」

アクア「カムイ……」

カムイ「……大丈夫です」

カムイ(ここで涙を流すわけにはいきません。だってリョウマさんは私を信じてくれたんです、だからここで立ち止まるわけにはいきません)

アクア「……気を付けて、奴の気配が奥へと集中している。おそらくだけど……」

カムイ「奴はまだあきらめていないようですね……。皆さん、警戒を怠らない様にして――」

 ガタンガタンッ!

サクラ「! 奥の扉が……」

レオン「サクラ王女、僕の後ろに!」

ガタンガタンッ!
 ビチャアッ
  ポタタタタッ

アクア「あれは、水?」

 メキキッ メキキキッ

レオン「扉が崩壊しそうになってる!」

カムイ「全員、物影に隠れてください!」

 メキキッ
  ガギンッ
   ゴドンッ!!!!

  ザアアアアアッ!

サクラ「す、すごい水の量です…。いったい何が……」

レオン「わからない。だけど、何かがあったのは間違いない」

カムイ「行きましょう皆さん、私に続いてください!」ダッ

カムイ(待っていてください、ヒノカさん! 必ず助け出しますから!)

 タタタタッ
305 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:47:26.01 ID:94BEzAZE0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『謁見の間』―

 ズズッ ズズズッ

 グシャッ ブチンッ ボタタタタッ

 ゴトンゴトンッ……

白夜兵「ひっ、ち、近寄るな!近寄るなぁ!」

???「……」ガシッ

白夜兵「がっ、はひっ、や、やめ――」

 グシュリッ
  ゴリゴリッ

白夜兵「がっ、ひっ、ぐへぇう」プシュッ プツツッ……

 ブンッ
  バサンッ
   ググッ ズモモッ

???「これで、いいんだ」バサバサッ

 ピチャンッ

???「……」チャキッ ググッ

???「……」シャランッ

???「……」カラランッ

???「……」チャキッ

 ピチャンッ……

???「これでみんな戻ってくる」シュオンッ

 ピチャンッ

???「そう、これで」「これで……全部、元通り。そうだよね――」

『みんな?』

二十四章 終わり
306 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/19(木) 23:50:08.11 ID:94BEzAZE0
 今日はここまで

 次回より、二十五章に入る予定です。
307 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/23(月) 22:00:16.88 ID:H22Ws57Z0
 すみません、二十五章に入る前に前回の戦闘に参加したキャラクター同士の支援安価を行いたいと思います。
 参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
 一組目
・レオン
・サクラ
・カザハナ
・シャーロッテ

 >>308>>309
(サクラ×レオン、レオン×カザハナは支援Aのため、対象外になります)

◆◇◆◇◆◇
 二組目
・カミラ
・エリーゼ
・マークス
・ルーナ

 >>310>>311

◆◇◆◇◆◇
 三組目
・スズカゼ
・ツバキ
・モズメ
・アシュラ

 >>312>>313

 このような形ですが、よろしくお願いいたします。

308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/24(火) 01:27:45.87 ID:cd3e1/VDO
カザハナ
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/24(火) 07:16:28.78 ID:/qaPQOfbO
シャーロッテ
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/24(火) 07:24:51.57 ID:NZyJ+PxDO
カミラ
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/24(火) 08:40:32.20 ID:W7FoCL88O
エリーゼ
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/25(水) 17:33:58.39 ID:WBYLbNPsO
ツバキ
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/25(水) 18:27:50.14 ID:2gE7wPWbo
モズメ
314 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/26(木) 22:56:12.88 ID:g+Lawe/G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・星界『広場』―

カザハナ「ああ、お腹空いた。ちょっと調子に乗って訓練しすぎたかも……」ヨタヨタ

シャーロッテ「ん、カザハナ? なにフラフラしてるわけ?」

カザハナ「あ、シャーロッテ。何でもいいからご飯になるものちょうだい……。もう、お腹ペコペコで」

シャーロッテ「はぁ? なに調子のいいこと言ってるわけ? あんたにやる弁当なんて一斤もないわよ」

カザハナ「でも、そんなにいっぱいお弁当持ってるじゃん。一つくらいくれても……」

シャーロッテ「これは全部、目星をつけた男に配る予定の奴なんだよ。あんたにあげる弁当は無いってこと、わかったらさっさと退きなさい」

カザハナ「むー」

シャーロッテ「……」

カザハナ「うー」

シャーロッテ「……はぁ、わかったわよ。小さいのでいい?」

カザハナ「え、くれるの!?」

シャーロッテ「仕方なくよ。ここであんたに渡さないで変な噂が流れたら、またその埋め合わせをしなくちゃいけなくなるし、その労力に比べたらここで弁当一つ渡したほうがマシよ」

カザハナ「そ、そんな言い方しなくてもいいじゃん。でもありがとう、えへへ、本当にお腹ペコペコだったから助かったよ」

シャーロッテ「丁寧に味わって食べなさいよね」

カザハナ「うん、ありがとう、シャーロッテ。また――」

シャーロッテ「今度は絶対にあげないわよ」

カザハナ「えー」

『シャーロッテとカザハナの支援がCになりました』
315 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/26(木) 22:58:28.28 ID:g+Lawe/G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『庭園』―

エリーゼ「ふんふーん♪ ふーん♪」

エリーゼ「……うーん、なんか違う。えっと、ふふふーん♪ ふふーん♪」

エリーゼ「やっぱり違う……」

カミラ「あら、どうしたのエリーゼ」

エリーゼ「あ、カミラおねえちゃん。ううん、何でもないよ!」

カミラ「そう? さっきまで鼻歌を歌いながら、これでもない、あれでもないって悩んでいたみたいだけど?」

エリーゼ「え、あ、ううん、あたし鼻歌なんて歌ってないよ?」

カミラ「あらそう?」

エリーゼ「う、うん、そうだよ。えっとね、さっきまでお城はやっぱり大きいなって思ってただけで、なんか違うとか思ってないよ!」

カミラ「ふふっ、それじゃおねえちゃんの勘違いだったみたいね。でも、何か困ったことがあったら話してちょうだい。力になってあげたいわ」

エリーゼ「う、うん。あ、あたし、ちょっとお部屋に忘れ物しちゃった、それじゃねカミラおねえちゃん!」タタタタタッ

カミラ「あ、エリーゼ。いったいどうしたのかしら?」

カミラ(あのエリーゼが隠し事なんて気になるわ……。少し探ってみましょう……)

『カミラとエリーゼの支援がCになりました』
316 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/26(木) 22:59:49.39 ID:g+Lawe/G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・カムイ軍の野営地―

モズメ「……はぁ」

ツバキ「この頃は溜息ばかりついてるみたいだねー」

モズメ「あ、ツバキさん。あはは、そうなんよ」

ツバキ「この前から時々そうなってるみたいだけど、もしかして故郷の事?」

モズメ「うーん、そうやね。思ったよりも引き摺っとるみたいで、ようやく落ち着けたんかなって思ってたけど、結局思ってただけやったんやな」

ツバキ「そっか。俺にはそう言う感覚はわからないけど、落ち着くまでは思い返してた方がいいのかもしれないよ」

モズメ「……ツバキさん、あんまり実家の事を思い出したししないって言ってたけど、寂しくなったりしないん?」

ツバキ「それはないかなー。なんたって俺は完璧だからねー」

モズメ「そうなんか?」

ツバキ「そうそう。それに何か思い出せって言われても稽古とかそう言う事ばっかりだからさ。モズメみたいに何か風景とかを思い出したりできないんだよね。なんていうか、俺は確かにそこで育ってきたはずなんだけど、思い出は全部知識として持っているみたいな感じかな?」

モズメ「ツバキさんの言う事、難しすぎてわからへんよ」

ツバキ「あはは、ごめんごめん」

モズメ「でも……。なんだか少し寂しいって思うわ」

ツバキ「寂しい?」

モズメ「うん、この前話した時、少しだけツバキさん暗い顔してたんよ」

ツバキ「え、そんな顔してたかな?」

モズメ「……なぁ、ツバキさん。今度、よかったらご馳走させてくれへんかな?」

ツバキ「え、別にかまわないけど、唐突にどうしたの?」

モズメ「気にしないでええよ。うん、そうと決まれば献立考えへんと!」

ツバキ「?」

『ツバキとモズメの支援がBになりました』
317 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/26(木) 23:01:18.12 ID:g+Lawe/G0
今日は支援だけ

 シャーロッテって、理由と色々を付けるけど根は度が付くほどに優しいよね……
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/28(土) 10:07:47.20 ID:qlkBNmZoO
いいツンデレ
319 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:20:07.68 ID:ZBZ/Vn6j0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・謁見の間へと続く道』―

マークス「先ほどの濁流といい、一体何が起きているのだ。それにこの広場の惨状……」

カミラ「ええ、明らかに戦闘の痕跡があるわね。音は何も聞こえなかったけど、かなり激しい戦闘だったみたい」

マークス「ああ。しかし、敵の姿や遺体が無いところを見る限り、これは……」

 タタタタタッ

カムイ「カミラ姉さん、マークス兄さん!」

アクア「二人とも無事みたいね」

カミラ「カムイ、それにアクア」

マークス「そちらも無事だったようだな」

カムイ「はい。奥から水が溢れてきたと聞いて……。お二人は先行していたんですね」

マークス「ああ。今のところ敵の姿は無いから大丈夫だ。それで、リョウマ王子は?」

カムイ「リョウマさんは……戦死されました」

マークス「……そうか。話すべきことはあるが、まずはこの状況をどうにかしよう。この奥に何が待っているのか予想が出来ん。かなり大規模な戦闘が行われた痕跡があるが、遺体も敵の姿も見えない。おそらく奴らの手によるものだろう」

カムイ「……この先にはヒノカさんがいるとリョウマさんは言っていました。そして、奴がヒノカさんの下へと向かったとも……」

カミラ「となると、ほぼ決まりということになるわね……」

アクア「ええ、このまま奴をのさばらせておくわけにはいかないわ。リョウマのおかげで、奴の力は薄まっている。今なら何とかなるかもしれない」

マークス「ならば、ここで立ち止まっている時間は無い。そうだろう、カムイ」

カムイ「はい、まずは私たちだけでも先に向いましょう。後続が崩落した渡り廊下に即席の架橋を設置しているそうなので、他の皆さんも直に追いつくと思います」

マークス「わかった。周囲に警戒しつつ前進しよう」
320 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:25:24.56 ID:ZBZ/Vn6j0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ピチャンッ ピチャンッ

カミラ「ここら一帯も水浸しみたいね……」

カムイ「ここ周辺も水に浸かっていたという事でしょうか?」

マークス「いや、この水自体は床を流れてきただけのようだ。床以外にここ周辺で濡れている個所は少ない。恐らく邪魔が入らぬように、あの扉の周辺だけを封じ込めたのだろう。奴は水を操る力にも長けているという事か……」

カムイ「どういった物かはわかりませんが、その可能性も考慮したほうが良さそうですね。ですが、それなら私たちがここに入ってきた時点で一網打尽に出来るはずですけど……」

アクア「リョウマの件もあったからかもしれないけど、奴の反応はそれほど強くないわ」

カムイ「そうなのですか?」

アクア「ええ、この先から少しだけ感じるわ。けど、さっきのような強大なものじゃないの」

カミラ「そう、それでこの先には何があるの?」

アクア「白夜の玉座のある謁見の間があるわ」

マークス「謁見の間か、このような形で白夜の玉座へと向かうことになるとは思ってもいなかった……」

カミラ「でも歩み方が違っていたのなら、私たちは白夜を本当の意味で侵略してここに来ていたのかもしれないわ」

マークス「ああ、父上が奴に操られていることを知らなければ、われわれは白夜と戦いここを目指すことになったのかもしれん」

カムイ「……」

カムイ(もしもあの日、私が玉座に座っていれば、ここまでの事は起きなかったのでしょうか? お母様は玉座には座った者の真の姿を見せる力があると言っていました。それが本当だとするなら――)

カム(皆と手を取り合うという道も会ったのかもしれない……)

カムイ「……いいえ、それは私が願っていい物ではありません……」

カムイ(私はリョウマさんの命を救うことができなかったのですから……)
321 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:27:14.09 ID:ZBZ/Vn6j0
アクア「カムイ、大丈夫?」

カムイ「あ、はい。すみません、少しだけ気が散っていたようです……」

アクア「……カムイ、あなたはあなたのすべきことをした。それだけなのよ」

カムイ「アクアさん?」

アクア「あなたはあなたに出来ることをした。だから、リョウマはあなたが進む道を推してくれたの。だから、それで気を病まないで」

カムイ「……ありがとうございます。アクアさんにそう言ったことを何度も言わせてしまうのは、私の悪い癖ですね」

アクア「……そうね、あなたの悪い癖だから、こうやって指摘してあげたくなるの。まだ、私が支えてあげないといけないって気持ちになるから」

カムイ「……そうですね。まだ、一人で歩んでいけるわけではありませんから。まだまだ肩を貸してほしいです」

アクア「ええ、言ってくれればいつでも貸してあげるわ」

マークス「ふっ」

カムイ「? なんですか、マークス兄さん」

マークス「いや、お前たちがそうして互いを支え合っているのを見ているとな」

カミラ「そうね、おねえちゃんちょっと妬けちゃうわ」

アクア「?」

カムイ「?」

マークス「気にすることは無いこちらの話だ……。しかし、ここまで生存者も死体も見当たらないとは……」

カミラ「ここにさっきまで誰かがいた痕跡はあるのに、姿も形もないっていうのはとても不気味ね。早いところ生存者を見つけることが出来れば、何が起きたのかを聞きだせるのだけど……」

 ピチャンッ

カムイ「! 待ってください、この先の角に何かがいます」

マークス「!」チャキッ

カミラ「敵かしら?」

 ――ううっ……

アクア「これはうめき声みたい」

カムイ「もしかしたら生存者かもしれません。行ってみましょう」タタタタタッ
322 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:30:17.90 ID:ZBZ/Vn6j0
???「はぁ……、はぁ……ぐっ!」ズキッ

 タタタタタッ

カムイ「大丈夫ですか!? しっかりしてください」グッ

???「……はぁ、……はぁ……」

カムイ「よかった、まだ辛うじて意識はあるみたいですね。すぐに手当てをしますから、もう少しの間、待っていてください」

???「カ、カ……ムイ、様?」

カムイ「その声、まさか、ミタマさんですか!?」

ミタマ「は、い……。おひさしぶりですわ、カムイ様……。こんな姿で申し訳ありません……」

カムイ「動いてはいけません。こんなに怪我をされているのに……」

ミタマ「こんな怪我では、まだ死ねません。ううっ、わたくしには、ヒノカ様を守る…義務が……ありますの……ううっ」

カムイ「ミタマさん……」

 タタタタタッ

アクア「カムイ、生存者みたいね」

カムイ「はい、すぐに誰か治療のできる方を連れてきてください。このままでは……」

カミラ「それじゃ、私が呼んでくるわ。マークスお兄様はカムイ達と一緒にいてあげて」

マークス「ああ、任せておけ」

 タタタタタッ
323 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:31:40.97 ID:ZBZ/Vn6j0
ミタマ「ふふっ、地獄に仏とはこのことですわね……。まさか、カムイ様が現れるとは思ってもいませんでしたわ」

カムイ「一体何があったのですか? 他の方々は?」

ミタマ「わたくしと一緒にヒノカ様をお守りしていた人々は皆やられてしまいましたの。まったく、こうして生きているのが不思議ですわ」

カムイ「そんな……奴らはもうここにまで来ていたというのですか?」

ミタマ「やつ…ら?」

カムイ「はい。あのスサノオ長城で攻撃を仕掛けてきた見えない者たちのことです。これは彼らの仕業ですよね?」

ミタマ「ああ、あの者たちですか。そうだったら、どれだけよかったのでしょう…」

カムイ「え?」

ミタマ「わたくしたちが戦った相手は、彼らではありませんわ」

カムイ「ですが、敵はどこにもいなかったはずです。だってここには――」

ミタマ「ええ、白夜の者以外いませんでした……。となると、答えは簡単に導き出せるものですわ」

マークス「まさか、味方同士で争ったというのか?」

ミタマ「そういうことですわね。それに味方同士で争うことは別に不思議な事ではありませんわ。暗夜で旧体制と新体制が争ったように、ここでも同じようなことが最後の最後で起きただけの事です」

カムイ「そんな……どうしてこんなことに?」

ミタマ「……わたくしたちが思っているよりも彼らは腐っていて、それを許せなかっただけの事です。わたくしたちの最後の使命がそのようなことに利用されることが我慢ならなかったのですわ。でも、許せなかったと言っておきながら、負けてしまっては元も子もありませんわね」

カムイ「……それはヒノカさんの事、ですよね?」

ミタマ「どうしてそれを?」

324 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:32:39.64 ID:ZBZ/Vn6j0
カムイ「リョウマさんから聞きました。ミタマさんがヒノカさんを守ってくれていると……」

ミタマ「リョウマ様……。ごめんなさい、わたくしはその使命を守れませんでした。結局、彼らにわたくしたちは――」

カムイ「ミタマさんたちがヒノカさんを守るために戦ったことは変わらない事実です。そして、それを穢すことは絶対に出来ません」

ミタマ「だけど、結果は……」

カムイ「大丈夫、私がきっとヒノカさんを助け出します。ミタマさんたちの使命を、こんな形で終わらせたりはしません。リョウマさんのためにも……、あなた達の意思を奪わせることはありませんよ」

ミタマ「……ありがとうございます、カムイ様。わたくしたちの尻拭いをお願いできますか」

カムイ「いいえ、これは尻拭いじゃないですよ」

ミタマ「え?」

カムイ「私のすべきことを私が進んで行う、ただそれだけの事です。そして、ミタマさんにそれを信じてほしいと頼んでいるだけなのですから」

ミタマ「……面白いことを言いますわね。なら、わたくしはそれを信じる以外になにもありませんわ、カムイ様」ギュッ

カムイ「……ミタマさん」

ミタマ「ヒノカ様をお願いしますわ」

カムイ「はい」
325 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:37:41.83 ID:ZBZ/Vn6j0
 タタタタッ

エリーゼ「カムイおねえちゃんごめんね、遅くなっちゃって」

カムイ「いいえ、こちらの方です、おねがいします」

エリーゼ「分かったよ! サクラも手伝って。それっ!」シャラランッ

サクラ「はい、エリーゼさん! えいっ!」カラランッ

 シュオンッ

ミタマ「……ありがとうございます。その、少しだけ眠らせていただいてもいいですか?」

カムイ「はい、後は任せてください」

ミタマ「ありがとうございますわ………。すぅ……すぅ……」

エリーゼ「うん、これで大丈夫だと思うよ。どうにか頑張って起きてたんだね、すぐに眠っちゃった」

サクラ「体の傷はどうにかできました、あとは安静にしていれば大丈夫だと思います」

カムイ「ありがとうございます、エリーゼさん、サクラさん」

サクラ「いいえ、当然のことをしただけです。それにしても、ここで一体何があったのでしょうか……」

カムイ「ミタマさんの話では、どうやらここで白夜同士での争いがあったそうです」

サクラ「そうなると、ユキムラさんの命を奪った一矢を放った方々と、ミタマさん達との間で何かあったということですよね。それじゃ、やっぱり彼らの狙いは……」

レオン「恐らくだけど、こちらに取り入るための準備っていう事だろうね。そしてユキムラを倒してヒノカ王女を救出したっていう形で、僕たちの前に現れるのが奴らの狙い。そう考えるのが妥当かな……」

サクラ「レオンさん……。それじゃこの惨状は……」

カムイ「ミタマさんは言っていました、彼らを許せなかったと。おそらく、いきなり戦闘が始まったわけではないとは思います。多分、何かしら話はあったのだと思います」

レオン「何かしらの交渉があったのかもね。もっとも、それが交渉と言えるものかも分からないけど。ともかく、この先にその強行派の生き残りがいるのは間違いない、それと逃げ出したあいつも待っているはずだ」

カムイ「ええ。この奥にいるんですね」
326 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:39:56.42 ID:ZBZ/Vn6j0
カムイ「……」

カムイ(ミタマさんには信じてといいましたが、もしもこの先にリョウマさんと同じような結末が待っていたらと思うと、体が動かなくなりそうです)

カムイ(もしも、そんな最悪の事態が広がっていたら……私は――)

 ギュッ

カムイ「?」

アクア「大丈夫、きっとヒノカは無事よ。だから行きましょう、あなたの信じる道に」

カムイ「……はい」

 グッ

カムイ(……ここが白夜との戦いの最終地点、そこに何が待っていたとしても私は――)

カムイ「逃げたりしません……」

 ググッ
  ゴゴゴゴゴッ
 ガコンッ!

カミラ「開いたわね、それじゃ中に――」

『ぎゃああああああああっ!!!!!!!!!』

エリーゼ「!?」

レオン「!」

マークス「この悲鳴、只事ではないぞ!」

アクア「奥から聞こえているわ!」

カムイ「行きましょう!」タタタタタッ
327 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:42:17.21 ID:ZBZ/Vn6j0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『謁見の間・玉座へと続く階段』―

 ピチャンピチャンッ

???「……」カララランッ シュオンッ

 ガシガシッ! グググッ

白夜兵「がっ、あぎっ、ぐげええっ、がらだ、が、ちぎれ――」

 ブチンッ! ビチャアアッ!

白夜上級武将A「な、何なんだ!何なんだよお前らは!!!」

 タタタッ

???「……」チャキッ

白夜上級武将A「ちか、近づくんじゃねえ! おらっ、おらああっ!」ブンブンッ

 ササッ

???「……」チャキッ ブンッ

 ブシャアアッ

白夜上級武将A「が、俺の、俺の腕があああ! ぐっ、いでええええ!」ドサッ

???「……」カッ カッ 

ガシッ ググッ

白夜上級武将A「がっ、うげえええっ。で、でめえ、やめろ、やべどおおお」ブンブンッ

 ザシュザシュッ

白夜上級武将A「あぐ、なんで、しなな――」

???「……」ドスッ

白夜上級武将A「――っ!!!」ゴフッ

ブチャアアッ!!!!!

白夜上級武将A「―――」ドサッ ドササッ

???「……」クスクス

???「……」チャキッ
328 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:43:15.73 ID:ZBZ/Vn6j0
白夜上級武将B「なんですか、一体何なんですか、あなたたちは!」チャキッ パシュシュッ

???「……」サッ ササッ

 チャキッ パシュシュッ

 ドススッ

白夜兵「ぎゃああああっ!!!!」ドサッ

???「……」タッタッ チャキッ

白夜兵「ひいいっ! ゆ、許してくれ。おれ、俺たちはただ、ただこいつらに!」

???「……」

白夜兵「そ、そうだ俺は悪くない。俺は俺は――」

 ブンッ

白夜兵「はひっ、な、おれ、おれ―ゴポゴポッ」プツツ

???「……」ガッ ザシュンッ

ブシャアアアアッ ドサリッ

白夜上級武将B「一体何が気に入らないというのですか。我々はユキムラに使われた被害者だっただけだというのに。なぜ、こんな――」

???「……」パシュ

 ドスリッ

白夜上級武将B「がっ、あああっ、目が、めがあああっ!熱い、ううあっ、あついいいい!!!」ドサッ バシャンバシャンッ

???「……」スッ

 ドスリッ

白夜上級武将B「ぐっ、あああ、うで、腕が、うでがあああ!」

???「……」ザシュザシュッ

白夜上級武将B「ひぎいいいいっ、やめ、やめで、やめてぐれ、わたしが、悪かった、だから、だから、殺さないで――」

 ピチャンッ

???「……」

白夜上級武将B「!」

 バサバサッ
  ドスンッ
329 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:47:01.55 ID:ZBZ/Vn6j0
ヒノカ「……」

白夜上級武将B「あ、あああ、ヒ、ヒノカ様」

ヒノカ「……」

白夜上級武将B「す、すべて、すべて、すべて私が悪かった。もう二度と、こんな真似はしません。だから、だから、いのち、命だけは助け――」

 ザシュッ

白夜上級武将B「て……」

???「……」ザシュシュッ ビチャッ

白夜上級武将B「」

ヒノカ「……」

???「……」スタッ

???「……」スタッ

 ズルズルッ ポチャンッ

 ドプンッ……
  ドプンドプンッ……

ヒノカ「……ははっ、ははははっ」

 タタタタタッ

カムイ「ヒノカさん!」

ヒノカ「ん、カムイ。ああ、ようやく来てくれたんだな。待っていたよ」

カムイ「ヒノカさん、この惨状は一体なんなんですか?」

カムイ(気配だけでもわかります。ここで、先ほどまで多くの人々が殺されていたということが)

ヒノカ「ああ、これは私がやったことだ。彼らが私の大切な人たちを奪おうとしたから、それをただ守っただけのことだよ」
330 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:50:19.43 ID:ZBZ/Vn6j0
カムイ「大切な人たち?」

カムイ(ヒノカさんの他に誰かがいるということですか? でも、ミタマさんの話ではすでに他の方々は死んでしまったと。では、一体誰が……)

 ピチャン
  ピチャン

カムイ(この気配は!)

 シュオンッ
  シュオンッ

???「……」チャキッ

???「……」スタッ

カムイ「ヒノカさん、背後に敵が!」

ヒノカ「敵? 何を言っているんだ、カムイ。ここにはもう敵なんていないぞ?」

カムイ「何を言っているのですか、あなたの後ろに!」

ヒノカ「ああ、オロチとユウギリの事か?」

カムイ「え……」

ヒノカ「大丈夫だ、オロチもユウギリも私の事を守ろうとしているだけのことだ」

アクア「……ヒノカ、あなた何を言って」

カムイ「ヒノカさん、オロチさんとユウギリさんはすでに亡くなっているはずです。死体が見つかっていなからと言っても、あのシュヴァリエ公国での戦いから月日が経っているんですよ!?」

ヒノカ「なにを慌てているんだ? オロチもユウギリもここにいるならそれでいいじゃないか」

カムイ「ヒノカさん……それでいいっていったい何を――」

ヒノカ「カムイ、ここはようやく元に戻りつつあるんだ……。だから、何も慌てることは無いんだ」

「私が奪われたものが、今ここにあるんだから……」フフッ
331 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/28(土) 18:56:20.09 ID:ZBZ/Vn6j0
今日はここまで

 こういう倒したり、死亡した敵側武将が眷属として現れるみたいなの。透魔編以外でも欲しかったな
332 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 17:24:00.00 ID:cnL7R2QH0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『謁見の間』―

カムイ「奪われたものが元に戻るとは、どういう意味ですかヒノカさん」

ヒノカ「そのままの意味だよ、カムイ。ほら、ユウギリとオロチがこうして戻ってきているじゃないか?」

カムイ「意味が分かりません。それに、あなたが言っているオロチさんにユウギリさんというのは……」

ヒノカ「そうか、お前は目が見えないのだから確認のしようもないことだったな。だが、アクアにはちゃんと見えているだろう?」

アクア「……ヒノカ」

カムイ「アクアさん、本当にあれはユウギリさんとオロチさんですか?」

アクア「……ええ。確かにあれはユウギリとオロチよ。確かにそこに存在しているわ。でも――」

オロチ「」

ユウギリ「」

アクア「あれは、オロチとユウギリの形をしているだけ、本当の二人じゃないわ」

ヒノカ「アクア、何を言っているんだ? オロチもユウギリもここにいるじゃないか。こうして戻ってきてくれたんだ……。ちゃんと、生きてここにいる……。もう、どこにも行ったりしない……」

カムイ「……ヒノカさん」

 タタタタタッ

サクラ「カムイ姉様!」

レオン「カムイ姉さん!」

カムイ「レオンさん、サクラさん……」

ヒノカ「……」
333 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 17:27:15.80 ID:cnL7R2QH0
サクラ「ミタマさんを安全な場所へお連れしました、もう大丈夫なはずです。ここに手当てが必要な方は……」

ヒノカ「……」

サクラ「ヒノカ姉様!?」

ヒノカ「サクラか、久しぶりだな」

サクラ「ヒノカ姉様……無事だったんですね」タッ

カミラ「サクラ王女、それ以上近づいては駄目よ」

サクラ「カミラさん? え……」

オロチ「」ヒタヒタ

サクラ「ヒノカ姉様、そ、そこにいるのは誰なんですか……」

ヒノカ「ああ、オロチだよ。お前も会ったことはあると思うが?」

サクラ「オロチ……さん?」

オロチ「」

サクラ「ひっ!」

カミラ「サクラ王女、見てはいけないわ」

サクラ「な、何が起きているんですか。あ、あの姿、まるで死んでいるみたいじゃないですか……」

カミラ「……」
334 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 17:42:05.39 ID:cnL7R2QH0
レオン「カムイ姉さん、ヒノカ王女はミタマ達を破った強行派に囚われているんじゃ……」

カムイ「私もそう思っていました。ですが、ここにいたのはヒノカさんと奴らだけです」

レオン「ということは、強行派はもうすでに始末された後ってわけだね」

マークス「しかし、このような事態をどうして受け入れていられる? まさか、ヒノカ王女も奴に操られているのか?」

アクア「確かに奴の力は感じる。けど、これは操られているのと少し違うみたい……」

カムイ「どういうことですか、アクアさん」

アクア「……ヒノカは自分の意思で奴の力を利用しているわ。リョウマやタクミの時とはまるで違うのよ」

カムイ「ヒノカさんが自分の意思で、このようなことをしているというんですか!?」

アクア「ええ、そしてヒノカがそうしている以上、奴がここにいる意味もなくなったということよ」

カムイ「それじゃ、奴は……」

アクア「もうここにはいないわ。私たちとヒノカを鉢合わせるのが狙いだったみたいね」

カムイ「……ヒノカさん。私たちは――」

ヒノカ「ああ、わかってる。戦うつもりはないのだろう。私もお前たちやカムイと戦うつもりは毛頭ないさ」

カミラ「……敵対の意思はないということ?」

ヒノカ「ああ。だから安心してほしい、お前たちは私の敵ではないからな」

レオン「敵じゃない?」

ヒノカ「そうだ。カムイ、お前は私の敵ではないんだろう?」

カムイ「……そのつもりです。私はあなたを助けに来たのですから」

ヒノカ「ふふっ、そうか。でも、もうその必要はない。ここまで色々と苦労を掛けてしまったようだ……」

カムイ「ヒノカさん……」
335 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 17:58:43.25 ID:cnL7R2QH0
ヒノカ「カムイ、お前も戦いに疲れただろう? ずっと、戦ってきたお前の苦労はわかっているつもりだ。私の事もそうだが、様々なことにお前は手を伸ばして来た。それもここまでにしないか?」タッ タッ

カムイ「え?」

ヒノカ「私が代わりにお前のすべきことをしてやる。お前を救いたいんだ、カムイ」

カムイ「私を救う?」

ヒノカ「ふふっ、こうしてすべてが元に戻った。失ったと思ったものが全て戻ってきたんだ。だが、私の戦いはお前を助けることから始まっていた。そして、お前は白夜にやってきてくれたが、戦いに縛られている。その戦いからお前を助け出さないことには、私の使命は終わらないと思ったというわけだ」

カムイ「戦いから助け出すって……」

ヒノカ「ふふっ。カムイ、後は私に任せてくれればいい。残った敵はすべて殺してしまえばいいのだろう?」

カムイ「!」

ヒノカ「敵がいるのなら、それを排除するのは当然のことだ。戻ってきたみんなもきっと賛成してくれるさ」

カムイ「みんな?」

ヒノカ「ああ」

 ピチャンッ シュオンッ
  ピチャンッ シュオンッ

アサマ「」

セツナ「」

サクラ「アサマさんにセツナさん……。そんな、王都まで逃げ切れたと思っていたのに……」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「ふふっ」

336 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 18:06:43.70 ID:cnL7R2QH0
カムイ(ヒノカさんはすべてを殺すと言った。確かに外敵を全て倒せば安全は確保されるでしょう。でも、それは――)

カムイ「そんなのは間違っています……。それでは奴と何も変わりません!」

ヒノカ「どうしてだ? 守るためにはそれくらいしないといけない。私はもう二度と失いたくはないし、みんなにあのような思いをしてもらいたくはない。そして、カムイお前にも同じ苦悩を背負わせたくはないんだ」

アクア「それが、ここにいた強行派の人々を殺した理由なのね」

ヒノカ「ああ、私の臣下を見ていきなり攻撃してきた、まだ生き残りがいたのか!とな。愚かな奴らだ、命乞いまでして自分が仕組んだことだと言っていた者もいたか。ははっ、何の事かはわからなかった。だが、私の仲間を殺そうとした以上、死んで当然の連中だったよ」

サクラ「ヒノカ姉様、止めてください。そんな、そんな笑顔止めてください……。こんなの、こんなことって……」

ヒノカ「ふふっ、あのような者たちに対しても優しくいられるのはサクラだけだ。私にはそんな感傷も何もありはしなかったからな」

サクラ「違います。私は、私は……」

カムイ「ヒノカさん、あなたは……」

ヒノカ「ここにしかみんなは戻って来れない。私はみんなと一緒にずっといたいだけだよ。そして、カムイ。お前の夢を私が叶えてやるんだ。それで、もうすべて終わりにしよう。もう、この戦争は終わりを迎えるんだ」

アクア「ヒノカ!」

ヒノカ「動かないでくれ、アクア」チャキッ

アクア「!」

ヒノカ「話ならすべてが終わってから聞くよ。アクアもここまでの戦いで疲れただろう? ゆっくりと休んでくれればそれでいい。幾日か眠っていれば、もう戦争は終わっている。私たちの勝利で終わりだ。もう白夜も暗夜も関係ない、私たちだけが残ればそれでいいんだ」

アクア「ヒノカ……」

337 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 18:14:23.42 ID:cnL7R2QH0
アクア「……」

アクア(私の歌でヒノカの力を抑え込めれば、どうにかこの状況を止められるかもしれない。ヒノカは抵抗してくるだろうけど、これしか今は……)

アクア「……」

アクア(だけど、今のヒノカの精神は力を失った現実に耐えられるの? だって、今のこの状況は、ヒノカが作り上げた最後の、最後の希望と言っていい)

アクア(失ってしまった人たちが目の前にいるという、その希望……。たとえ偽りであっても、ヒノカはそれを求めた。ヒノカはカムイに助けられてしまったから……)

アクア(ヒノカは自分だけが助かってしまったことを悔やんでいる。報われてしまったことを悔やんでいる。本当に助けたかった人たちや、自分よりも報われるべき人たちを失ってしまったことを……)

アクア(それを奴は利用した。夢だと諦めていたことだったはずの失ってしまった者が戻るという非現実な力で、ヒノカは希望を作り上げてしまった。ヒノカの守りたかったみんなが報われる……いいえ、助かる世界を今ここに作ってしまった……)

アクア(そんな世界を、ヒノカの夢を、私は壊すことが出来るの?)

アクア「……」

アクア(私は……)

アクア「……っ」

ヒノカ「……ありがとう、アクア」

 タッタッタッ

カムイ「ヒノカさん」

ヒノカ「カムイ、お前もここで待っていてくれ。私はきっと、お前のするべきことを終えてここに戻って来る。その時は、みんなと一緒の時を過ごそう」

カムイ「……」

アクア「カムイ……」
338 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 18:25:05.86 ID:cnL7R2QH0
ヒノカ「それでは行くとしようか……。みんな、もう一度一緒に戦ってくれるか?」

 ピチャン シュオンッ
  ピチャンッ シュオオンッ

ヒノカ「ふふっ、行こう」

 ダッダッダッダッ

ヒノカ「……?」

タッ

カムイ「……ヒノカさん」

ヒノカ「何だ、カムイ?」

カムイ「ヒノカさん、私も多くの人を失いました。ミコトさんにリリスさん、クリムゾンさんにスズメさん、そして先ほどリョウマさんを……。他にも多くの人たちが私の行いによって死んでいったんです」

ヒノカ「……」

カムイ「本当はみんなに生きていてほしかった。私が暗夜に付いたことで今の状況があるのなら、オロチさんやユウギリさん、そしてアサマさんもセツナさんも私が殺してしまった人たちなのだと思います。これは私の罪でしょう」

ヒノカ「大丈夫さ、お前が気負うことは無い。今すぐにでも私が連れ戻してきてやる。そうすればお前がその罪に悩まされ、苦しめられることもなくなるだろう? さぁ、カムイが望むのは誰なんだ? リリスか、スズメか? それともリョウマ兄様か?」

カムイ「……ヒノカさん」

ヒノカ「さぁ言ってくれ、お前の望む、戻ってきてもらいたい人の名を……」

カムイ「……」

ヒノカ「カム――」

カムイ「残念ですが、私はその願いを叶えてもらおうとは思っていませんよ、ヒノカさん」
339 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 18:37:46.39 ID:cnL7R2QH0
ヒノカ「カムイ?」

カムイ「……」

ヒノカ「カムイ、わかるだろう? 戻ってきてくれることが、どれほどうれしいことなのか。失ってしまったと苦しまなくて済む、失った悲しみを忘れることが出来るのに……」

カムイ「私は誰の回帰も望みません。ここまでに失ってしまった人、そして命を奪ってしまった人のこと、そのすべてを忘れるような選択をするつもりはありません。私はそれを覚えて生きていくつもりです」

ヒノカ「なぜだ、私はお前の悲しみを無くしてやろうと言っているのに……どうして、それを……」

カムイ「……その悲しみが無くなる事は、その人の事を忘れてしまうことだと私は思っています。どんなことがあっても、私はその悲しみを忘れるわけにはいかないんです」

ヒノカ「そ、そんなものに何の意味がある!!! ずっと、思い出して苦しみ続けるだけの、そんな記憶に!!!!」

カムイ「ヒノカさん、あなたにもあったはずなんです。だから、あなたはみんなが戻ってくることを望んだ。でも、それは叶っていいことではないんです!」

ヒノカ「……」

カムイ「どんなに悲しい出来事だとしても、それを忘れ去ってしまったらすべてが無くなってしまう。その人の事を愛しく思ったヒノカさんの心も、そしてあなたを守るために戦った人たちの信念も……」

ヒノカ「……ちがう、無くなったりなんてしない。ここに、ちゃんといるんだ。みんな、ここに……」

カムイ「ヒノカさん、人は死んでしまったら戻ってきたりしない。その周りにいる方々が、かつてあなたを支えてくれた臣下や友人であっていいはずないんです!」

ヒノカ「やめろ!!!! やめろおおおお!!!!」チャキッ

カムイ「……」

ヒノカ「私から……また奪おうというのなら……。カムイ――」

「たとえお前が相手であろうとも、容赦はしない……」
340 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/07(火) 18:40:03.27 ID:cnL7R2QH0
今日はここまで

 更新遅めですみません。
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/10(金) 15:37:00.11 ID:M1YbUouDO
乙です
さらっと娘たちの大切な人リストから外されたスメラギの悲しみ
342 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 22:40:45.90 ID:BG0vw1k40
ヒノカ「……」チャキッ

カムイ「……」

サクラ「やめてください、ヒノカ姉様!」ダッ

オロチ「」スッ

ユウギリ「」チャキッ

レオン「サクラ王女、動いちゃだめだ!」

サクラ「ですが、このままじゃ、カムイ姉様が!」

レオン「……今は待つしかない。ここで僕たちが動けば、もう戦いが始まってしまう。だから、今は見守るしかない」

サクラ「う、ううっ……」

カムイ「……ヒノカさん」

ヒノカ「どうしてだ、なぜ奪おうとする。ここにいるのは私が戻したものだ、私が守るべきものなんだ。それを否定する者を許すつもりはない。たとえカムイ、お前であったとしても……。この者たちに危害を加えることを許しはしない」チャキッ

カムイ「目を覚ましてくださいヒノカさん。あなただって本当はわかっているはずです!」

ヒノカ「黙れ!!! 黙れ黙れ!!! カムイ、お前に何が分かる。多くの者を守ることのできたお前に!」

カムイ「……」

ヒノカ「お前は守った、そして支えられてここにいる! 誰かが倒れても、お前を支えてくれる仲間は他にもいるだろう。そんなお前に私の苦しみが分かるわけがない!」
343 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 22:48:00.42 ID:BG0vw1k40
カムイ「……そうですね。私にはこんなにも支えてくれる方々がいます。ヒノカさんの言っている事は多分間違っていないでしょう」

ヒノカ「なら、わかったようなことを――」

カムイ「ですが、失った人の代わりなど誰もいません。ここにはリリスさんもリョウマさんもクリムゾンさんもいない。そして、その人の代わりになる人など居はしないんです、ヒノカさん」

ヒノカ「!」

カムイ「ヒノカさんの大切にしたかった人たちに代わりなんているわけがありません。だからこそ、あなたは戻ってくることを願っていたはずです。あなたは知っているんです。死んでしまったら戻ってこないことを……」

ヒノカ「……」

カムイ「今の光景は、その人たちの思いに蓋をしてまで受け入れるべきものではないはずです…。ヒノカさん」

ヒノカ「カムイ……」

 ドクンッ

ヒノカ「……」

カムイ「ヒノカさん!?」ダッ

アサマ「」チャキッ

セツナ「」……シュタッ

カムイ「!」

ヒノカ「アサマ……セツナ……」

アサマ「」

セツナ「」

ヒノカ「私は……お前たちを……」
344 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 22:54:25.68 ID:BG0vw1k40
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城北部『森林地帯』―
〜スサノオ長城攻略戦後〜

 ヒュオオオオオオオオンッ!

ミタマ「この合図、最後尾が戦闘に入ったということですか」

ミタマ隊天馬武者「どうやら敵の狙いはこちらのようですね。もしや、これが暗夜の狙いだったのでは?」

ミタマ「難しいことを考えている時間はありません。今はヒノカ様をゆっくり休ませることのできる場所へお連れすることを考えないといけませんわ」

アサマ「ええ、その通りです。まったく、あのまま停戦となれば屋根のある場所でゆっくりと出来たというのに。まったく、無粋な方々ばかりで困ったものです」

ミタマ「アサマ様も相当無粋な方だと思います。私たちは最前列、負傷者もヒノカ様とセツナ様だけ。この森林地帯を抜けられれば、何とかなるかもしれません」

セツナ「ん……。ごめんなさい…。あたし、今足手まといみたいだから…」

アサマ「そうですね。今の貴方では、正直役に立つとは思えませんので」

セツナ「ん、でも大丈夫。安心できる場所になったら、ヒノカ様の面倒は見るから…」

アサマ「まったく、ヒノカ様もそうですがあなたもあなたですよセツナさん。そのような傷で看病が出来る程、医療の世界は甘くありませんから、戻っても大人しく眠っているようにしてください。面倒が増えるのは勘弁していただきたいので」

セツナ「ケチ……」

アサマ「はっはっは。それより、ヒノカ様の容態はどうですか?」

ミタマ「今は落ち着いています。憑き物が落ちたように穏やかで、本当はこのように眠られる方なのですね」

アサマ「できれば、どうにかしてその眠りを妨げないようにしたいところですが……」

ミタマ「ええ、仕方ありませんわ。大部分の兵力を削ぐことになりますけど、今はこれしかありません。わたくしたちの兵力、その大部分を陽動と迎撃に向かわせます。この大所帯ではいずれ追いつかれますわ」

アサマ「囮になるつもりですか?」
345 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 22:57:12.91 ID:BG0vw1k40
ミタマ「はい、わたくしたちの任務はヒノカ様を王都に送り届けること。犠牲は覚悟の上です。大平原には少なくとも駐留部隊がいますから、そこまで辿り着ければ大丈夫なはず……」

アサマ「そうですか。では、そのお言葉に甘えさせていただきましょう。私もヒノカ様には生きて王都へ戻っていただきたいので」

セツナ「うん……」

ミタマ「呆れましたわ。少しはわたくしたちを心配してくれてもいいと思いましたのに」

アサマ「はっはっは。心配はしていますよ。ですが、私たちにとって大切なのはヒノカ様に生きていてもらうことです。ようやく厄払いも済んだ、あとはゆっくりと取り戻していただきたいのですよ」

ミタマ「……アサマ様にそのような言葉を口にさせるとは、ヒノカ様はと手も凄いお方だと改めて思います。あの万年何もしていない、何かのために動くなんて面倒だ、人は死ぬときは死にますと、そんな血も涙もないアサマ様と同じ人だとは思えませんわ」

アサマ「ほうほう、あなたが私の事をどう見ていたのかよくわかってきましたよ。しかし、そうですね。血も涙もないと思って生きてきましたが、私にも人並みには思うべき部分があったという事なのかもしれません。これも、ヒノカ様と出会った賜物でしょう」

ミタマ「まったく、アサマ様はもう少し素直になってもいいと思います。ひねくれた 恩師見つめて 溜息よ。中々に味わい深い詩が出来てしまいました」

アサマ「おやおや、私を恩師と思っているという意味にも聞こえますね」

ミタマ「はぁ、不覚ですわね」
346 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 23:03:48.52 ID:BG0vw1k40
ミタマ「ではアサマ様、わたくしたちは別行動をさせていただきます。少ない護衛にはなってしまいますが……」

アサマ「覚悟はしていますよ。まぁ、先ほどのような大所帯で動き回るよりは、見つかる可能性も少ないでしょうから、どっちもどっちと言ったところです。ミタマ達も気を付ける様に、王都に戻ればこの戦争は終わったも同然ですからね」

ミタマ「はい。みなさん、ご武運。行きましょう」

ミタマ隊聖天馬武者「はっ!」

 バサバサバサッ
  タタタタタッ

アサマ「……それでは私たちも動くとしましょう。このまままっすぐ進めば、早くとも明日には森林地帯を抜けることが出来るはずです」

白夜兵「はい、前方の道の確保を最優先にして、一気に森林地帯を抜ける。アサマ様、この先の湿地帯を迂回するべきでしょうか?」

アサマ「湿地帯ですか……」

白夜兵「はい、かなりの広範囲にわたってでしょう。大雨の影響もあって動き辛くなる可能性もありますので、回り道をするというのもあります。ですが、かなりの遠回りをすることになるでしょう」

アサマ「湿地帯を抜けるのなら、まず先行隊が抜け、安全を確保してからヒノカ様を天馬隊の誰かに背負ってもらい、後方隊が最後に後を追うという形で抜けていくと言ったところですかね。とりあえず、湿地帯まで辿り着いてから考えましょう。ミタマたちが敵の迎撃と分散を行ってくれているのであれば、猶予はそれなりにあるはずです」

白夜兵「わかりました。まずは湿地帯を目指します」

アサマ「ええ、よろしくお願いしますね。セツナさん、寒くはないですか」

セツナ「平気…。アサマがいっぱい治療してくれたから、問題ないわ…」

アサマ「当たり前です。流石にあなたが死んでしまったら、ヒノカ様がとても悲しまれますからね」

セツナ「それはアサマもだよ」

アサマ「はっはっは。だとすれば臣下冥利に尽きますね」

セツナ「ふふっ…」
347 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 23:05:06.52 ID:BG0vw1k40
ヒノカ「……んんっ」

アサマ「おやおや、ようやくお目覚めですかヒノカ様。ああ無理に動かない様にしてください、あなたはまだ本調子というわけではないのですから」

ヒノカ「アサマ……。私は一体……」

セツナ「ふふっ、ヒノカ様。寝ぼけてるみたい…」

ヒノカ「セツナ……。その傷は……」

セツナ「ん、さっきやられちゃった。でも、大丈夫、結構動ける……。いつっ」

アサマ「ヒノカ様が目覚めたのを喜ぶのはいいですが。そうやっていらぬことをしないでください。治療の手間が増えるのはいただけませんからね」

セツナ「はーい」

ヒノカ「……」

アサマ「どうしました、ヒノカ様?」

ヒノカ「そうか、私は……カムイに負けたのだったな」

セツナ「ヒノカ様……」

ヒノカ「わかっている。ここでこうして、立つことも出来ずに運ばれているのは負けたという証明だ。……私は、多くの兵に死ねと命令していたんだろう。ここまでの戦いで、私は……」

アサマ「それを自覚できたのであれば、もう一度やり直せるでしょう。また、不器用で危なっかしいあなたを見ることになりそうで、苦労も増えそうですが」

ヒノカ「……その必要はない、私は不器用で危ない存在だ。もう、失いたくないと思っていたのに、多くの兵を失ったことにようやく気が付いた。私の願いはカムイを取り戻すこと、それ以外に目もくれなかった結果が、これでは……やり直すことも許されはしないだろう。王都に戻り次第、私はこの敗戦の責任を……」

アサマ「取る必要はありませんよ。あなたが死んでしまっては私たちのここまでの戦いの意味が分からなくなりますからね」

ヒノカ「え?」

348 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 23:07:47.33 ID:BG0vw1k40
アサマ「はぁ、面と向かって言うのは聊か恥ずかしいものですが、私は白夜と暗夜の戦いに興味などありません。ただ、ヒノカ様が戦っているからご一緒しているに過ぎないのですよ」

ヒノカ「そう……なのか?」

アサマ「ええ、そもそも暗夜に国をなどという物で動くほど、私は愛国者ではありませんし、今の白夜で国のために戦おうなどという御仁はそうそういません。すでに旧暗夜と新生暗夜などという分裂が向こうで起こり、よもや両国の戦争という形を成してはいないでしょう。つまり私は、あなたをお守りするためだけに戦場に立っているということです」

ヒノカ「……アサマが?」

アサマ「はっはっは。驚かれているようですね」

セツナ「びっくりした…」

アサマ「セツナさん、あなたまで言いますか」

セツナ「えへへ、それじゃアサマも私と同じで、ヒノカ様が大好きなんだね…」

アサマ「大好きかはさておいて、嫌いな相手のために戦えるほど私は出来た僧ではありませんよ。もっとも、私の力ではヒノカ様の目を覚ますには至りませんでしたが。まったく、カムイ様というのはがむしゃらにしているようで、よくここまでの事を成せるものです」

セツナ「そうだね…。でも、私たちはヒノカ様のために戦うだけだからそれ以外の事なんてできない…」

ヒノカ「そんなことは無い!」

アサマ「ヒノカ様?」

ヒノカ「お前たちがいてくれたから、私はまだ生きていられたんだ。お前たちが支えてくれたから、私はまだ……。お前たちもいなくなっていたら、私はとっくに……」

アサマ「それは買い被りという物です。ヒノカ様にはヒノカ様の戦う理由がありました、それがどれほど重要なのかは私にはわかりませんが、少なくともそれが泣ければあなたは命を落していたでしょう」

ヒノカ「……だが私の願いは。結局私だけの願いだった」

アサマ「はっはっは。当たり前です、願いは誰かを思いながらも結局は自分の満足のためにある物…。私がヒノカ様を支えたいという願いは、転じて私の満足のための行動ですから」

ヒノカ「アサマ……」
349 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 23:08:59.72 ID:BG0vw1k40
セツナ「私も同じ…。ヒノカ様、何時も辛そうだったから。ヒノカ様の敵を倒すって決めたのは、それがヒノカ様のためになるって思ったからだけど、実際私がヒノカ様に褒めてもらいたかったからだから…」

ヒノカ「セツナ…」

アサマ「そういうことです。ですからヒノカ様が気にされることは何もありません。いいえ、そうですね。行ったことに関してはあなたの中で決着をつけるしかありませんが、私たちの事に関してはあなたが気に病むようなことではないのですよ」

ヒノカ「……すまない、アサマ。私はまだ……」

アサマ「迷いがあるのでしたら、しばらくはそのままでもいいのです。修行と同じ、迷いが生じている間こそが修行というもの。ヒノカ様には時間が必要というだけの事です」

セツナ「そうそう、王都に戻ったらまた一緒に眠りましょう、ヒノカ様。私、いっぱい抱きしめてあげるから…」

アサマ「おやおや、夜の予定をここで作るとは、セツナさんは思ったよりも元気なのですね」

セツナ「怪我とそれは別だから…。アサマも交じる?」

アサマ「はっはっは、遠慮しておきます」

 ガヤガヤ

ヒノカ「……セツナ、アサマ」

セツナ「なに、ヒノカ様?」

アサマ「何でしょうか、ヒノカ様」

ヒノカ「お前たちは……これからも私と……」

ヒノカ「……」

ヒノカ(……違う、それは私が願うべきことじゃない。私が叶えるべきことだ。私にはお前たちが必要だ。だけど、それをお前たちに任せ続けることは出来ないし、そんな虫のいい話は無い)

ヒノカ「これからは私がお前たちを守る。お前たちが私を支えてくれた以上に、お前たちの事を守らせてほしい。それが私の、今ある唯一の願いなんだ」

ヒノカ(そうだ、私は守る。守るしかない。そう、ここにいる者たちを守る事こそが……。今の私の使命だ)
350 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 23:09:47.40 ID:BG0vw1k40
セツナ「えへへ、ヒノカ様にまた守ってもらえるんだね…」

アサマ「まぁ、病み上がりの方に守ると言われましても、聊か説得力はありませんね」

ヒノカ「ぐっ、それは確かにそうかもしれないが……」

アサマ「はっはっは」

セツナ「ふふっ…」

ヒノカ「……はは」

ヒノカ(私はもう一度、やり直せるのかもしれない。もう一度、お前たちを守るために剣を振るうことが出来るのかもしれない。また、お前たちと一緒に……)

白夜兵「アサマ様、湿地帯に差し掛かりました。いかがします?」

アサマ「そうですね。未だに敵はこちらを見つけられていないようですから、ここは一気に横断して敵との距離を稼ぐとしましょうか」

白夜兵「はっ、先行が向い側へ付く頃合いを見て、ヒノカ様とセツナ様を天馬で向いの森林地帯へ向かわせます」

アサマ「はい。ヒノカ様、それでよろしいですね」

ヒノカ「アサマは一緒に来てくれないのか……」

アサマ「後で合流いたしますよ。なに、少しばかりの時間、傍にいないだけの事です。セツナさん、ヒノカ様をよろしく頼みますよ」

セツナ「うん、わかった…」

ヒノカ「……アサマ、私は――」

白夜兵「先行隊が湿地帯の中腹に差し掛かかりました。敵の姿は無しとの報告です」

アサマ「おやおや、これは案外すんなりと行けるかもしれませんね、ヒノカ様」

ヒノカ「そうかもしれないな。お前の軽口を聞いていると、今だけはなんだか安心できる」

アサマ「はっはっは」
351 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 23:11:37.60 ID:BG0vw1k40
白夜兵「アサマ様、セツナ様の輸送準備整いました。あとはヒノカ様だけです」

アサマ「わかりました。ヒノカ様と先行の方々が到達しましたら、こちらも湿地帯を渡り始めます。それと――」

白夜兵「しかしそれは……」

アサマ「無いとは言い切れないことです。その時はくれぐれもよろしくお願いいたしますよ」

白夜兵「……わかりました」

ヒノカ「アサマ、何の話をしているんだ?」

アサマ「帰路の途中で天馬が疲れ果ててしまった時の話です。その際には、背負っていかなくてはいけません。その打ち合わせみたいなものですよ。それよりも、ヒノカ様の準備を済ませましょう。まずはお二人を送らないことには次に行動が移せませんので」

ヒノカ「そうだな。すまない、すぐに取り掛かってくれるか」

白夜兵「はっ。では失礼いたします。よし、固定は完了した。いつでも行けるぞ!」

ヒノカ「アサマ……向こうで待っているぞ」

アサマ「ええ、わかっていますよ。では先に行って下さい」

白夜兵「はっ、よしいくぞ!」

 バサバサッ

352 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 23:15:36.55 ID:BG0vw1k40
ヒノカ「……」

ヒノカ(湿地帯、あの日、オロチとユウギリを失った時もこのような場所だった。私には二人を助ける力は無く、そして二人は私のために命を賭けてくれた……そんなことはもうたくさんだし、アサマとセツナにそのようなことをしてもらいたくはない)

ヒノカ(もう、戦いは終わったんだ。だから、後は何も心配することなんてない。アサマと合流して……。そのまま王都に向かえばいいだけだ)

 ドクンッ
  ドクンッ……

ヒノカ(なのに、どうして私の不安は消えない。私は、私は……)

 ピチャン……

ヒノカ「!」

白夜兵「ヒノカ様、どうかしましたか?」

ヒノカ「い、今の音は……」

白夜兵「音……ですか?」

 ピチャン
  ピチャン……

ヒノカ(ただ水が落ちただけの音なのに、なぜこんなにも心を掻き乱す。この音は何だ、この音は……)

ピチャン
 ピチャンッ……

ヒノカ(この音は――)

 ヒュオオオオオオオンッ‼‼‼‼

ヒノカ「い、今の音はなんだ?」

白夜兵「こ、後方からです!」

ヒノカ「後方……から?」

 ドクンドクンッ

ヒノカ(なんで、後方から聞こえたんだ? それに今の鏑矢の音、あの音の合図は……)

 ドクンドクンッ

白夜兵「……ヒノカ様」

ヒノカ(やめろ、それ以上は言わないでくれ。それは、それは私の、私の願いを砕いてしまうものだ。だから言わないでくれ……)

白夜兵「後方の部隊が戦闘状態に……」

ヒノカ「……そんな、嘘だろう。こんなこと、こんなことが起きていいわけがない……」

ヒノカ(だって、さっき約束をしたばかりじゃないか。それなのにどうして、こんなことが起きるんだ)

ヒノカ「そうだ、間違えて合図を上げてしまっただけなんだろう? お願いだ、間違いだったと、もう一度矢を上げてくれ……」

白夜兵「……」

ヒノカ「お願いだ。間違えだったと、間違えだったと合図してくれ……」

「ううっ、頼む合図をあげてくれ、アサマ……」
353 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/18(土) 23:16:14.02 ID:BG0vw1k40
今日はここまで

 
354 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 21:48:29.33 ID:UO69apk40
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

白夜天馬武者「くっ、一気に湿地帯を越えます。しっかり掴まっていてください!」

 バサバサッ

ヒノカ「まて、待ってくれ。あそこにはアサマが、アサマがまだいるんだ!」

白夜天馬武者「わかっています。分かっていますが、戻ることは出来ません」

ヒノカ「何を言っているんだ。今すぐに引き返せ、アサマは――」

白夜天馬兵「もしも敵が現れた場合、私たちを置いて先を急ぐ様にと、アサマ様から命令を受けています」

ヒノカ「え……」

白夜天馬武者「ですから戻ることは出来ません。私たちの使命はあなたを無事に王都へ送り届ける事、それはアサマ様も同じはずです」

ヒノカ「…アサマも?」

白夜天馬武者「……申し訳ありません、ヒノカ様!」

 バサバサッ

ヒノカ「駄目だ! 待て、待ってくれ!」

 キィン カキィンッ!

ヒノカ(遠ざかっていく、アサマ達がまだ戦っている音が、まだ生きているという希望が……。どんどん、遠ざかってしまう……)

ヒノカ「行くな……、私から、私から離れていかないでくれ……。おねがいだ……」

 ………

ヒノカ「アサマ、うううっ、うああああ!!!!」
355 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 21:51:23.17 ID:UO69apk40
 バサバサッ

白夜兵「む、来たか! ヒノカ様とセツナ様は?」

白夜天馬武者「二人とも無事です」

白夜兵「そうか、それは何よりだ。くっ、敵の足がこれほど速いとは思っていなかった。アサマ様と後続が侵攻を抑えている間に、ヒノカ様とセツナ様は先をお急ぎください」

セツナ「あなた達はどうするの…?」

白夜兵「セツナ様。残念ですが、敵の移動速度は我々の想像をはるかに越える物です。このまま、足止めも無しに進軍してはいずれ奴らに背中を掴まれます。すでに十数名を先行させておりますので、道に迷うことはないでしょう。我々はここで殿を務めさせていただきます」

ヒノカ「な、なにをいっているんだ……?」

白夜兵「ヒノカ様、アサマ様と同じく我々の使命もまた、あなた様の王都への帰還であります。そして、それはただ使命なのではなく、我々の願いでもあるのです」

ヒノカ「……なぜだ、なぜなんだ……。私にはお前たちの命ほどの価値は――」

白夜兵「あります。少なくとも、ここにいる将兵はあなたの命にその価値があると信じているのです。時間はもうありません。運が良ければ、またお会いしましょう。よし、行くんだ!」

白夜天馬武者「はっ。セツナ様、万が一の時がございます。こちらをお持ちください」

セツナ「ん、弓一式……ありがとう…。行こう…ここにいても何もできないから…」

白夜天馬武者「……はい。ご武運を!」バサバサッ

白夜兵「……よし、準備しろ! 敵を誰一人通すな!」

白夜兵たち『はっ!』チャキンッ!
356 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 21:59:57.73 ID:UO69apk40
白夜天馬武者「危険ですが、一気に上空を抜けます。敵との距離を一気に放して、先行している者たちと合流しましょう」

セツナ「ん。周囲は私が見る…」

白夜天馬武者「はい、お願いしたします。はあっ!」

 バサバサッ
  ザーーーッ

白夜天馬武者「くっ、こんな雷雨の中を飛ぶことになるとは。もう少し頑張ってくれよ」ナデナデ

 ヒヒーンッ
 バサバサッ

セツナ「……」

ヒノカ「なんで、なんでだ。私は、私は――」

セツナ「ヒノカ様…。ヒノカ様が悪いことなんて何もない…」

ヒノカ「何が悪くない? 私がすべての原因だ、カムイを取り戻すためにしてきたことで、ユウギリやオロチを失い。その上で、この事態を引き寄せた。私が、私が死んでいればよかったんだ。そうだったのなら、アサマや他の者たちが……」

セツナ「ヒノカ様が死んでたら、私もアサマもカムイ様を殺すために戦ってたと思う…」

ヒノカ「え?」

セツナ「ヒノカ様は私にも優しくしてくれた。いっぱい心配してくれるし、罠にかかった私を探しに来てくれたりする…。私、そんなヒノカ様が大好き…」

ヒノカ「セツナ、でも今の私はお前の思う私ではない……」

セツナ「そうだね…。ヒノカ様、とっても辛そうだったから。私、いっぱい心配した…」

ヒノカ「……」
357 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 22:06:03.10 ID:UO69apk40
セツナ「でも、中身は変わってないって私は思う…。だから言い直させて…」

ヒノカ「言い直す?」

セツナ「うん、私ヒノカ様が大好き…」

ヒノカ「セツナ……」

セツナ「えへへ…//// あ、先遣隊の人たちがいたよ…」

白夜天馬武者「本当ですか、セツナ様!」

セツナ「うん、あの大きな木の幹にいる。なんだか、変な並び方してるけど…」

ヒノカ「え?」

ヒノカ(変な並び方って、あれか? 木の幹にあれは体を預けているのか? それにあの派手な戦闘服は、なんだ? あの、上が黒く染まっているのは一体なんでなんだ……)

白夜天馬武者「くっ、雨で良く見えない。少しだけ高度を下げれば何とか確認できそうだ」

 ガサッ

セツナ「あぶない!」

白夜天馬武者「ん?」

 ヒュンッ! ズシャッ

白夜天馬武者「へっ。あえ、なんで、右目が見え――」フラッ ドサッ
 ビチャアアアッ ポタタタッ

ヒノカ(いったい何が起きて――)

 ヒュンッ バシュッ!
  ヒヒーーーンッ!

ヒノカ「あ――」フワッ

セツナ「ヒノカ様…!」ダッ
358 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 22:07:52.14 ID:UO69apk40
 ガシッ
  ザザッ ザザザザッ ボギャッ……

セツナ「っ!!!!!」

ヒノカ「セ、セツナ。どうして……」

セツナ「ヒノカ様、大丈夫ですか…」ポタタッ ポタタタッ

ヒノカ「私は大丈夫だ、セツナお前は……!!!!!」

ヒノカ(足があらぬ方角に曲がって、あんなに血が……)

セツナ「だ、大丈夫です…」

ヒノカ「だ、大丈夫なものか。い、今すぐ処置を行う。待っててくれ!」ビリリリッ

ヒノカ(だめだ、こんな服の一切れや二切れでは、セツナに応急処置をすることもままならない。くそっ、くそっ!!!!)

セツナ「ヒノカ様、早く逃げてください…。天馬が落ちた場所と、私たちが落ちた場所は少し離れてるみたいだから…。しばらく隠れて、敵をやり過ごしてからなら、逃げ切れるかも…」

ヒノカ「……何を言っているんだ。お前も一緒じゃなければ意味なんてない、私は……お前たちを守りたいのに…」

セツナ「ヒノカ様…」

ヒノカ「どうしてだ……。どうして……」

ヒノカ(どうして、私が守りたいものは離れて行ってしまうんだ)
359 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 22:09:24.04 ID:UO69apk40
 ガササッ
  ガササッ

ヒノカ「!」

ヒノカ(見えないのに、そこにいるのが分かる……。何なんだこいつらは…)

???「……」ヒタッ ヒタッ

 パシュッ
 ズシャッ!
  ドサリッ

ヒノカ「!?」

セツナ「ヒノカ様に近づかないで…。動いた奴は容赦しない…」グッ ギリリリッ

???「……」スタッ

 パシュッ ズビシャッ ドサリッ

セツナ「……っ」ポタタタッ

ヒノカ「セツナ。もういい! 私はもう……」

セツナ「やだ…」パシュッ パシュッ!

 ズビシャ ズビシャ……

セツナ「ヒノカ様、早く逃げて…。お願いだから…」

ヒノカ「……セツナ」

ヒノカ(……すまない、セツナ)

 ギュウッ

ヒノカ「私は何も護れないみたいだ……。お前の思いも、アサマや他の者たちが願ったことも……。何もかも守れるわけがなかったんだ……」
360 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 22:11:37.21 ID:UO69apk40
セツナ「ヒノカ様…」カランカランッ……

ヒノカ「すまない、セツナ。私はもう失って生きることが出来ない。お前たちを守れないのなら、私が生きている意味などあるわけがないんだ」

セツナ「そんなことない…。ヒノカ様にはカムイ様がいます…。カムイ様はヒノカ様に生きていてほしいと思ってますよ…」

ヒノカ「そうか、そうだといい。でも、わかっていたんだ、私にとって本当に大切なのは、お前たちだった…。ずっと一緒にいてくれるお前たちだったんだ」

セツナ「その、真剣に言われると恥ずかしいです…。ヒノカ様…」

ヒノカ「ふふっ」

 ザッ ザッ ザッ

ヒノカ(ああ、近づいて来る。セツナ、私ではお前を守ることは出来ないけど、お前を一人にさせたりしない。アサマも、ユウギリ、オロチ……。今からお前たちの下に……行くからな)

セツナ「ヒノカ様、ギュッてしてほしいです…」ギュッ

ヒノカ「ああ」ギュッ

セツナ「ヒノカ様…」

 ザッ チャキッ

ヒノカ「何だ、セツナ?」

セツナ「ヒノカ様、私たち、ヒノカ様に仕えることが出来て、とっても――」

 ズビシャッ
  ザシュッ ザシュッ ズシャッ!
 ビシャアアッ!
361 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 22:16:31.48 ID:UO69apk40
セツナ「」ポタッ……ポタッ

ヒノカ「……」

セツナ「」ドサリッ ビチャンッ……

ヒノカ「……」

ヒノカ「……え?」

???「……」チャキッ ガシャンッ

ヒノカ「なんで……」

???「……」

ヒノカ「なんで、私は……生きているんだ?」

ヒノカ(どうして、こいつらは……。私じゃなくてセツナだけを殺したんだ?)

ヒノカ「セツナ……。セツナ?」スッ

  ビチャッ グチュリッ……

ヒノカ「ああ、あああああああ!!!!!!!!!!!」

 シュオンッ シュオンッ……
  ドプンッ ドプンッ

ヒノカ「ま、待ってくれ。もっていかないでくれ! セツナ、セツナ!!!」ガシッ

ヒノカ(いやだ、なんで。なんで殺してくれないんだ。私ではなくて、どうして私の守りたいものだけを奪って――)

『それが、お前の絶望だからだ。白夜の王女よ』

ヒノカ「!」

 ガシッ ググッ

ヒノカ「ぐっ……」

???『……くくくっ』
362 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 22:25:55.06 ID:UO69apk40
ヒノカ「お、おまえは何者だ……」

???『ああ、お前の仲間を殺したものだ』

ヒノカ「っ、ぎざまああああ!!!! あああっ!」

???『ははっ、いい顔をする。まさに人間というにふさわしい。先ほどまでの達観もただの飾りであったな。あのまま死ねたのなら、どれほどお前は救われたのだろうな?』

ヒノカ「ぐっ、ううっ、うあああああっ!」

ヒノカ(くそっ、くそっ。私に力があれば皆を守れたかもしれない。セツナもアサマも……他の者たちも失わずに……)ポタタッ

???『そうだ、お前に力があったのならば、守ることが出来ただろう。だがお前は弱い、弱く惨めなお前の思いなどに誰も答えはしない。それが、人間なのだからな』

ヒノカ「黙れ、黙れ黙れ!!!!! 殺してやる、お前を必ず殺す、殺してやる!!!!」

???『くはははっ、残念だがお前にそれは出来ない。もう、お前の心は染まり切った…』

ヒノカ「染まり……切った?」

???『ああ、そうだ。正直、ここまで育ってくれるとは思っていなかった。その純真無垢な殺意に悪意こそ、奴に差し向けるいい存在となるだろう……。お前のその願いは奴にとって苦しいものとなるのだろうからな……』

 ピチャンッ
  ピチャンッ

ヒノカ「や、止めろ、やめろ!!!!」

 ピチャンッ

???『さぁ、白夜王国第一王女ヒノカよ――』

 ピチャンッ……

『汝の願い、それに足る力を与えよう……』
363 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/24(金) 22:31:44.59 ID:UO69apk40
今日はここまで。

 ヒノカの願いは、カムイにとって大きな苦しみになる。


 次回、戦闘参加キャラクターの安価を取る予定なので、仲間のジョブ一覧を置いておきます。

◆◇◆◇◆◇
○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)

 このような形でよろしくお願いいたします。
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/29(水) 09:58:44.37 ID:qMyKdUCDO


ハイドラ過労死不可避
365 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:08:08.27 ID:INCSAB5L0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間』―

ヒノカ「……せない」

カムイ「え?」

ヒノカ「奪わせない……」

 フラッ チャキ……

ヒノカ「もう、誰にも奪わせたりしない。そう決めたんだ……。私のためにすべてを賭けてくれた者たちを、私は守っていくと…。私はもうそれ以外を望むつもりはない」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「そこをどけ、カムイ。私は敵を殺さないといけないんだ。私から奪おうとする者たちをすべて、そうすればもう心配することなく過ごすことが出来る。それが私の望む唯一の……」

カムイ「それが、本当にあなたの望みなのですか……。ヒノカさん。そんなことが、あなたの大切にするべき人たちの思いを守ることに繋がると、本当に思っているのですか……」

ヒノカ「何を……」

カムイ「私は力だけで守ることが出来るとは思えません。ヒノカさん、あなたの行為は最後まであなたのために戦った人たちが望んだことなのですか?」

ヒノカ「セツナ……アサマ……。ぐっ、ああっ。くっ、うああああっ!」

アクア「ヒノカ!」

サクラ「ヒノカ姉様!!!」

ヒノカ「……違う、これは私の望みだ。これが私の望みなんだ! 私にはこれしかない、他に何も残っていないんだ!」

カムイ「ヒノカさん!」ダッ
366 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:09:54.19 ID:INCSAB5L0
カムイ(まだ、ヒノカさんは迷っている。なら、どうにかして思い留めることが出来るはずです!)

アサマ「」チャキッ ブンッ

セツナ「」ギリリッ パシュッ

カムイ「やあっ! せいっ!!!!」キィン! ブンッ

 ガキィン!

カムイ「ヒノカさん、奴はあなたを陥れようとしているだけです。そして、その力はあなたの望みを叶えるための物ではありません! その力は――」

オロチ「」カラカラカラッ シュオンッ!

アクア「カムイ、あぶない!」

カムイ「っ!」キィンッ サッ

 ドゴン!

アクア「カムイ、大丈夫!?」

カムイ「はい、アクアさんのおかげで何とか……」

アクア「……ヒノカ」

ヒノカ「ああ、ううっ、黙れ。私は、私は皆を守るだけでいいんだ。消えろ、そんな願いなんていらない。もう、いらない、カムイが戻ってくることも戦争の終結も、何もかもいらない。私は私の守りたかった者たちを守れればいい……」

カムイ「ヒノカさん……」

カムイ(どんなに呼びかけても、ヒノカさんには聞こえているように思えない。もう、ヒノカさんに私の声は届かないというんですか?)

ヒノカ「はぁ……はぁ……ううっ、なのになぜだ……。なぜなんだ?」

ヒノカ「なんでお前を見ると心が揺らいでしまうんだ」

カムイ「……え?」
367 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:12:12.50 ID:INCSAB5L0
ヒノカ「ううっ、どうしてだ。お前はなんで私を掻き乱す。私の願いも、私の戦う意思も、なぜこんなにうやむやになる。どうして、入り込んでくる? 私の守りたいものは、お前たちしかいないはずなのに。なんで、なんでなんだ……」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「なんで、こんなに苦しくなる。私は私の守りたいもののために、戦おうとしているだけなのに、なぜだ。なぜ、こんなにも……苦しいんだ。苦しい、苦しい……」

ヒノカ「……ううっ、うううっ」

 ピチャンッ
  ピチャンッ

 シュオオオオオンッ

カムイ「な、なんですか!?」

カムイ(水溜りから何かが現れたようですが。この気配と大きさ……どうやら武器のようですが?)

 ポタタッ
  ポタタタタッ

レオン「あれは弓?」

サクラ「あの弓は一体なんなんですか?」

アクア「あれは、この世界の物じゃない。おそらく奴が、ヒノカに与えようとしているのよ」

カムイ「奴が? 一体何のためにそれをヒノカさんに……」
368 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:13:35.55 ID:INCSAB5L0
ヒノカ「あ、ああ……」フラッ タッ タッ

アクア「わからないわ。でも、あれをヒノカに触れさせては駄目! 取り返しのつかないことになる前に止めないと!」

カムイ「はい! マークス兄さん、レオンさん、援護をお願いします!」

マークス「任せろ、カムイ! レオン、弓兵の足を止めるのだ!」

レオン「わかった! 悪いけど、少しだけ動かないでもらうよ!」シュオンッ ドゴンッ

セツナ「」サッ

マークス「道を開けよ!はあっ!」チャキッ シュオンッ ジャキンッ

アサマ「」キィンッ! サッ!

アクア「カムイ、今よ!」

カムイ「はい! ヒノカさん!!!」ダッ

ヒノカ「あ、ああ……」フラ……フラ……

カムイ(ヒノカさんの気配が弓に近づいている。ですが、この距離なら私の方が先に手が届きます。あの弓から感じる悍ましい気配、それをヒノカさんに触れさせるわけにはいきません!)

 ダッ

カムイ「間に合っ――」

 シュオンッ!

カムイ「え!?」

 バチンッ!!!!

カムイ「くっ!!!」

 スタッ チャキッ!

カムイ(誰かが弓を……。おかしい、ヒノカさんの気配はまだ弓に達していない、それでは一体誰が……)

???『……これは私の物だ、お前の物じゃない……』

カムイ「え?」
369 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:15:34.21 ID:INCSAB5L0
カムイ(何ですか、今の声は……。ヒノカさんの気配は、まだ弓に手を触れていないはずなのに。どうして、こんな目の前からヒノカさんの声が聞こえるのですか?)

 シュオンッ……
  シュオオオオッ……

ヒノカ『……』

カムイ「ヒノカさん?」

カムイ(目の前にもヒノカさんの気配に似たものがある。ですが、先ほどまでの気配は弓に達していない。一体どうなって……)

ヒノカ『もう、奪わせない。そう決めたんだ。どんな力を得ても、この気持ちが無くならない様に、だからカムイ……』

 ヒタヒタッ

ヒノカ「それを奪おうとするお前は、私の敵だ……」

カムイ(ヒノカさんの気配が二つ!?)

カミラ「ヒノカ王女が二人?」

エリーゼ「ど、どうなってるの!? 今さっきまで一人しかいなかったはずだよ!?」

マークス「どういうことだ。これもなにかの絡繰りなのか?」

レオン「わからない。だけど、ヒノカ王女が何かを仕掛けたような気配はなかったし。僕にはあの弓から現れた様にしか見えなかった……」

アクア「……ヒノカ」
370 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:17:17.24 ID:INCSAB5L0
カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「……!」 ガシッ

カムイ「ぐっ!!!!」

ヒノカ「カムイ、奪われた苦しみは何時まで経っても消えはしないんだ。そして、悲しみを覚えていたところで未熟で弱い自分は変われない」

ヒノカ『奪われないためにも私はこの恨みを忘れない、奪われないためにも私には力が必要だ。それがこの力だ、お前のように私から奪いに来る物を殺す力だ……』

カムイ「ヒノカ……さん」

ヒノカ「カムイ、お前も私の守りたい一人だったらよかった。白夜にいることを選び、私の妹として共にいてくれたのなら、お前も私が守ってやれた……」

ヒノカ『こんな終わりにはならなかったはずだ。共に笑って行けたはずだった。残念だよ、暗夜の王女カムイ……』

カムイ「それが、本当にあなたの望みなのですか。ヒノカさん……」

ヒノカ『ああ、そうだ。もう奪われたりしないために、私はその恨みを忘れない。私から奪おうとするものを殺す為ならどんな力でも使う。それが、私の――』

カムイ「私はそうは思いません。そんな黒い思いより、もっと大切なものがあなたにはあるはずです」

ヒノカ「なぜそんなことが分かる? お前に私の何が――」

カムイ「だって、あなたは暗夜に付いた私を……、助け出そうとしてくれました」

ヒノカ「……」
371 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:19:32.23 ID:INCSAB5L0
カムイ「それが結果的に刃を交える結果であったとしても、あなたは私のために戦ってくれた……。それはあなたの中にある誰かを思いやる気持ちのはずです。それが……、ヒノカさんのとても大切な思いが黒い感情に塗りつぶされたとは思えません」

ヒノカ「……」

カムイ「私は、まだあなたの中にその思いが残っていると信じています。アサマさんやセツナさん、そしてユウギリさんにオロチさん、多くの方が命を賭けて守ろうとした、あなたの思いが……」

ヒノカ「……そうか。ならそれを信じていればいい。その判断を信じて、ここで逝けばいい……」チャキッ

アクア「ヒノカ、やめて!」

サクラ「このままじゃ、カムイ姉様が……。ダメです、こんなこといけません!」

マークス「カムイ! 待っていろ、今すぐそちらに――くっ!」

アサマ「」チャキッ

マークス「くそっ……」

レオン「くそっ、どうすれば……」

カミラ「上から接近してみるわ。レオン、弓兵を抑えてちょうだい!」バサバサッ

レオン「わかった。!」

セツナ「」チャキッ

レオン「させないよ!」シュオンッ ドゴンッ!

セツナ「」サッ!

カミラ「っ、間に合って!」ビュオンッ

カムイ「ぐっ、うううっ……」

ヒノカ「さよならだ、カムイ。私の苦しみが痛みで知りながら死んでいけ……」

 チャキッ

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「はあああっ!!!!」グッ

アクア「カムイ!!!!!」
372 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:22:19.93 ID:INCSAB5L0
カムイ「……」

ヒノカ「……」

 ポタッ ポタタッ

カムイ「……?」

ヒノカ「……カ……ムイ」ポタッ ポタタタッ

カムイ「え?」

ヒノカ「……」ググッ

カムイ「ヒノカさん?」

カミラ「ヒノカ王女の動きが止まった? 今なら!」バッ

カムイ「ヒノカさん、あなたは……」

ヒノカ「カムイ、頼みがある。もう、私にはこの願いは止められない。私の心は染まり切ってしまった。私は私を止められない。だから、私を――」




ヒノカ「私を止めてくれ……」
373 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:28:56.67 ID:INCSAB5L0
カムイ「え……」

ヒノカ「……カムイ、お願いだ……。私は、私は……」ポタタッ

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「……うぐっ、うああああああっ!!!」バッ

カムイ「!」

カミラ「カムイ! こっちよ!」スッ

カムイ「カミラ姉さん!」ダッ 

 パシッ
  バサバサッ

カミラ「カムイ、大丈夫?」

カムイ「はい、それよりもヒノカさんは……」


ヒノカ「……」

 シュオオオオッ

ヒノカ『……殺す。お前たちも私から奪うだけの存在だ、そんな存在と共になど居られない。私が奪われた分だけ、お前たちから奪ってやる……』

 チャキッ
  バサバサッ クルルーッ

ヒノカ「お前の信じたものを全て、ここで私が砕いてやる……」

 チャキッ
  バサバサッ ヒヒーンッ

 シュオン
  シュオオンッ

アサマ「」

セツナ「」

ユウギリ「」

オロチ「」

白夜兵と思われる者たち『』

ヒノカ「ははっ、あははははっ、あはははははははっ!」ケタケタッ
374 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:30:09.58 ID:INCSAB5L0
マークス「もはや、戦いは避けられそうにないぞ。カムイ」

レオン「残念だけど、そうみたいだ。敵の数がどんどん増えてる。逃げ切れるような量じゃないし、逃げたら逃げたで、外で待機している兵士や白夜の民に被害が出かねない」

カミラ「もう、戦うしかないのね。こんなことになるなんて思ってもいなかったのに……」

サクラ「ヒノカ姉様……」

カムイ「……」

カムイ(ヒノカさんはもう帰って来られないのかもしれない。今、最後に私を助けてくれたヒノカさんは止めてくれと言っていました。私に、暴走する自分を止めてほしいと……。それはこの剣でヒノカさんの命を奪う事なのでしょうか? それともそれ以外の方法があるというんですか?)

 チャキッ

カムイ(そんな方法思いつきません。ヒノカさんを助ける方法を私は知らない。だとしても、私は……)






カムイ(私は――)
375 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:32:17.03 ID:INCSAB5L0
ヒノカ(私を止めてくれ……)

 ドックン……

カムイ「……もう、決まっているのに何を悩んでいるのでしょうね」

 ドックン……

カムイ(私はあなたを止めます。でも、それはあなたの命を奪うことではありません。あなたの心は今もまだ、そこに生きているはずだから。私は、その黒い思いだけを止めてみせます。私の戦いは戦争を終わらせるためのもの。そして何より、この剣は……)

 チャキ
  シュオオオオッ

カムイ(誰かを守るための剣なのですから)

アクア「カムイ……」

カムイ「ヒノカさんを助け出します。それがここに来た私の戦いですから」

アクア「ええ、ヒノカを助けましょう」

マークス「しかし、具体的にどうやってヒノカ王女を救う? 奴の力が作用しているというのなら、奴を倒す以外に方法は――」

アクア「……一つ、方法が無いわけじゃないわ」

サクラ「ほ、本当ですか?」

カムイ「本当ですか、アクアさん?」

カミラ「まさかだとは思うけど、あなたの不思議な力を使うつもり?」

アクア「いいえ、私が力を使っても、ヒノカの心の闇は晴れないわ。奴は力を与えただけ、それを消し去ったところで、ヒノカの今の思いが変わるわけじゃない。それに、今の心のままに仲間を失ってしまったら、ヒノカは本当に絶望してしまうかもしれない。ヒノカを助けるためには、その思いを打ち消すほどの希望が必要よ」

カミラ「なら、その一つの方法に縋るしかないという事ね」

アクア「だけど、この方法も確実というわけじゃないわ」

カムイ「だとしてもいいです、その唯一の方法を教えてください。少なくとも今のヒノカさんにとってすべてになってしまった闇、それを払える可能性があるのなら……、私はそれに全力で向かっていくだけです」

アクア「そうね、あなたならそういうと思っていたわ」

カムイ「もう迷うわけにはいきませんので。それで、その方法というのは?」

アクア「……白夜の玉座よ」
376 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:34:14.93 ID:INCSAB5L0
カムイ「白夜の玉座、ですか?」

マークス「白夜の玉座を何に使うというのだ?」

アクア「あの玉座には座った物を真の姿、そして真の心を取り戻すという言い伝えがある。そして、それは言い伝えでもなく本当のことなのよ」

カムイ「そうだったんですか……」

アクア「ええ、だけど本物のヒノカを玉座に座らせないといけない。あの玉座の力が本物だとしても、チャンスは一度きりしかないはず……」

マークス「しかし、どちらが本当のヒノカ王女なんだ?」

レオン「天馬と金鵄、どちらに乗っているのが本物なのかなんてわかるわけがない。見た目もすべて同じなんだから」

サクラ「は、はい。私にもどちらが本物のヒノカ姉様なのか……」

カムイ「天馬に乗っているヒノカさんが本物のヒノカさんです」

レオン「え?」

サクラ「そうなんですか。カムイ姉様……」

カムイ「はい……」

カムイ(だって、最初からずっと私たちの前にいたあの人の気配だけは、ずっと私が知っている気配だったから。私はあなたをまだ覚えているんです、間違ったりしません。だってあなたは、私の助けたい人だから!)

マークス「ならば、もはややるべきことは決まったということだ。後続も合流する頃だろう」

カムイ「はい、ヒノカさん。あなたの最後の頼み、私が叶えてみせます……」

ヒノカ「カムイ……」チャキッ

ヒノカ『殺してやろう……。ここで、終わりにしようじゃないか……」チャキッ

カムイ「ええ、終わりにしましょう。あなたのその苦しみを……」

 シュキンッ チャキッ!

カムイ「さぁ皆さん、行きましょう。暗夜と白夜の長い戦いに終止符を打ち、そして――」

 チャキッ

「ヒノカさんを助け出すために……」

第二十五章 前半終わり
377 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/31(金) 10:50:27.34 ID:INCSAB5L0
今日はここまで

 スカディは人の心の闇、誰かの死などを願う心が強いものに力を与える武器なのだと思う。
 分身は、その殺意が具現化したもので、本人に比べて暴力的であり殺戮的でもあるっていう感じで、本編最後のタクミの感謝の言葉はスカディの分身ではなく、生身のタクミの物なのかなっておもった。

 次から戦闘が始まるので、戦闘メンバーを決めたいと思います。
 参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
 
 仲間のジョブなどは>>363参照でお願いします

・カムイと共に闘うメンバー
>>378
>>379
>>380

・遊撃隊メンバー
>>381
>>382
>>383

・前衛戦闘メンバー
>>384
>>385
>>386

 安価のメンバーが重なった場合は次の方の安価が優先されます。
  このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。



 
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 11:17:19.37 ID:7hqxt/WzO
レオン
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 13:02:50.71 ID:QQLhhbfDO
ハロルド
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 14:33:55.28 ID:rNF+JwHDO
サクラ
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 15:39:52.53 ID:JAaZOwgw0
風花「副作用には気をつけて下さいね!…シモッチって何かしら?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1530920009/
茜「不屈の魂、夢ではありません!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531525117/
摩美々「まみみのホーム・アローン、始まるよー」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1533339190/
のり子「青コーナー、キィィングティィレッスルゥゥゥ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1533946743/
里美「お、お兄様…?里美はここにいますよ〜?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1535154609/
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/01(土) 08:46:48.36 ID:we2C4M+lo
カミラ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/01(土) 18:52:59.67 ID:sxPcVk4lO
スズカゼ
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 13:00:11.78 ID:fjBTlW9DO
ブノワ
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 16:51:51.69 ID:eYZCr+ZVO
カザハナ
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 23:46:00.95 ID:uh3SXPo30
ギュンター
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/20(土) 07:02:24.18 ID:ouFywD43O
ニュクス
388 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 11:22:21.74 ID:Y+z+B0dN0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『周辺』―

カムイ軍兵士A「よし、これで大部分は片付いたようだな」

カムイ軍兵士B「はい、敵の多くも降伏しつつあります。ですが、城下町の方はどうなっているのかわからない状態ですので……」

カムイ軍兵士A「ああ、敵捕虜の監視だけを残して、我々は城下町へと向かう。多くの者たちに降伏を促し、戦闘を終わらせなければ」

カムイ軍兵士B「はい……。ですが、降伏にしたがってくれるでしょうか。知らせでは白夜の王子は……」

カムイ軍兵士A「……いや、どんな形であろうとも歓迎されることはない。だとしても、無駄な血が流れるようなことはあってはならない。そのために、我々はここまで戦ってきたのだからな」

カムイ軍兵士B「そうでしたね。これより、部隊の再編成を行います」

カムイ軍兵士A「ああ、よろしく頼む。捕虜とした白夜兵たちは出来る限り一箇所に纏めるよう監視する者に指示を――」

 ピチャンッ

カムイ軍兵士A「む?」

カムイ軍兵士B「雨の音ですか?」

カムイ軍兵士A「……いや、雨など降ってはいない……」

カムイ軍兵士A(なら、この耳に響く水音は――)

 ピチャン……

カムイ軍兵士A「この音……まさか!」チャキッ

 ピチャン……
  ピチャンッ……

カムイ軍兵士B「こ、この音って、スサノオ長城の時に聞いた……」

カムイ軍兵士A「全員武器を取れ! 敵が来るぞ!」

カムイ軍兵士B「は、はい! っ!!!」

 シュオン!
  シュオンッ

謎の兵士「……」チャキッ

カムイ軍兵士A「くっ……、仕方ない応戦せよ。こいつらの好きにはさせるな!」

カムイ軍兵士たち『おーーーっ!!!』ダダダダッ

謎の兵士たち「……」ダダダダッ

 キイン カキィッ
  ズビャッ ドサッ
389 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 11:34:32.69 ID:Y+z+B0dN0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王国・シラサギ城『王の間・中央通路』―

アクア「まずいことになったわ。奴の力が大きく広がっている」

カムイ「まさか、白夜王都全体に!?」

アクア「今はシラサギ城の周辺だけみたい。だけど、いずれ城下町に奴らが入り込むわ」

レオン「奴らが敵や味方、非戦闘民の区別をするとは思えない」

アクア「おそらく誰彼構わず襲い掛かるでしょうね。彼らはヒノカに従っているように見えているだけで、結局は奴の操り人形、殺す相手を選んだりしない……」

カムイ「そんなことを許すわけにはいきません。一刻も早く、ヒノカさんを助け出さないと」

サクラ「はい、カムイ姉様」

マークス「しかし、どうする。そう易々とヒノカ王女の下に行かせてくれるわけではなさそうだ」

カムイ「ええ、そのようです」

謎の兵士たち「……」チャキッ

カミラ「敵は隠れるつもりはないのね。その方が手っ取り早くて助かるけど」

マークス「だが、敵の規模は膨大、持久戦で勝ち目はないだろう。何かしらの突破口が無くてはな……」

ハロルド「……突破口が無いとなると、やはり真正面から戦うしかありません。だとしても、この戦いに負けるわけにはいきません!」

エリーゼ「うん、絶対に負けられないよ」

サクラ「はい。白夜、そして暗夜のためにも……絶対に負けるわけにはいきません」
390 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 11:47:43.14 ID:Y+z+B0dN0
レオン「負けられないのはそうだけど、何も手立てがないのは厳しいところだね。カムイ姉さん、何か良いプランはあるのかな?」

カムイ「残念ですが、今は総当たりしてこの戦況を抜ける以外に手が浮かびません。ヒノカさんは奥の玉座付近にいるとするのなら、それはこちらにとって有利に働くはずです」

カザハナ「だけど、やっぱり難しそうだよ。こんな数を相手に真正面からぶつかっても、ヒノカ様までたどり着けるかどうか……」

レオン「だとしても、今できることをやるしかない。これ以上、白夜の被害を大きくするわけにはいかない、ここは君たちが帰るべき場所なんだからさ」

カザハナ「レオン王子……。うん、そうだよね。ここで諦めたら、もう白夜を守れなくなっちゃうもん。あたし、諦めないよ!」

カムイ(みんなの士気はもんだいありません、ですが、この敵の壁を越えるのは至難の業です。各個撃破に専念して前進しようにも……)

 ピチャン……シュオンッ

カムイ(おそらく、延々と敵は増え続ける。そうなってしまったら、いずれ私たちは………)

カムイ「……他に手が無いとはいえ。これ以外に方法が無いというのは悩ましいものですね」

スズカゼ「そうですか、例の通路を使うことも難しいということですね」

カムイ「その声はスズカゼさん?」

スズカゼ「はい、少しばかり遅れてしまい申し訳ありませんでした」

カムイ「いいえ、構いません。それよりも例の通路というのは?」

スズカゼ「ええ、この白夜王都に入るために使った道と同じように、ここにも隠し通路があります。ですが、そのご様子ですとそれも使えないという事態なのですね」

カムイ「いえ、その隠し通路の話は初耳なのですが」

スズカゼ「そうでしたか。てっきり、サクラ様やカザハナさんより、話があったのかと思っていましたが……」

サクラ&カザハナ『あ……』
391 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 11:55:17.41 ID:Y+z+B0dN0
サクラ「ごめんなさい、私。すっかり忘れてて……」

カザハナ「あたしも……ごめん」

レオン「……ま、まぁ状況が状況だし、仕方ないよ」

カムイ「ええ、レオンさんの言う通り仕方のないことです。でも、これで希望が持てます。スズカゼさん、その通路はどちらに?」

スズカゼ「この廊下の左右それぞれに延びた複数の通路、その奥広場に一つずつ設けてあります」

カムイ「そんなにあるのですか?」

スズカゼ「はい。経路も難しいものではありません、あくまでも王の間から退去するための物ですので……。それでどうしますか?」

カムイ「ここから正面突破を図るよりは可能性があります。その道に賭けてみましょう」

マークス「よし、ならばこちらから仕掛け道を作り上げよう。ピエリとエリーゼは私と共に来い」

ピエリ「わかったの!」

エリーゼ「うん!」

レオン「カザハナはマークス兄さんの指示下に入ってくれるかい? 多分、マークス兄さんたちの負担が一番大きいだろうから、回復のできる補助職が必要になる」

マークス「む、いいのかレオン?」

レオン「ああ、カザハナにならこういったことも任せられるからね」

カザハナ「レオン王子……」

レオン「どうかな?」

カザハナ「ふふっ、いいよ。そっちこそ、サクラのことちゃんと守ってあげてよね。あたしが近くにいないんだから」

レオン「もちろんだ。この戦いが終わって二人がちゃんと白夜に戻れる日まで、僕は命を賭けて守ると決めた。だからカザハナ、君がいない分も僕がサクラ王女を守るよ」

サクラ「レオンさん……」
392 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 11:58:13.61 ID:Y+z+B0dN0
カザハナ「そう言ってくれるなら安心だね! それじゃ、あたしはマークス王子の指示に従うよ。それでどうすればいいのかな?」

マークス「そうだな。ギュンター」

ギュンター「はい、こちらに」

マークス「お前に右翼を任せる。カザハナはギュンターに同行し、できうる限りサポートせよ」

カザハナ「うん、わかった。よろしくね、ギュンター」

ギュンター「うむ。あとは、マージがいればよいか。ニュクス、同行しろ」

ニュクス「わかったわ。後方から援護に徹するから、安心してちょうだい」

マークス「準備は整ったか。ギュンター先行し、敵の右翼を脅かせ、一息置いてこちらは左翼、通路への侵入経路を確保する」

ギュンター「わかりました。では、行くぞ!」ヒヒーンッ!

カザハナ「よし、一気に行くよ!」ダッ

ニュクス「一気に力を使い切ってどうするのよ。余力は残しなさい」タタタッ

カザハナ「わ、わかってるよ。勢いで言ってみただけで――」

ギュンター「無駄話はそこまでにしておけ!」

カザハナ「ご、ごめんなさい」タタタタッ
393 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:00:44.90 ID:Y+z+B0dN0
マークス「よし、ピエリ準備はいいか?」

ピエリ「準備できてるから、いつでも行けるのよ、マークス様」

マークス「うむ、エリーゼ、並走し先行で攻撃を放ち、同時に私とピエリの後方へ」

エリーゼ「わかったよ、マークスおにいちゃん!」ペラッ シュオンシュオンッ

マークス「よし、行くぞ!」スーッ チャキンッ

 タタタタッ

エリーゼ「よぉし、ライナロック。いっけー!」ヒュオンッ 

ザシュンッ!‼‼‼

マークス「エリーゼ、上出来だ」

エリーゼ「えへへ、あたしはここから援護に回るよ」シュオンッ シュオンッ!

ピエリ「わかったの。えへへ、ピエリが一番乗りなのよ!」ヒヒーンッ パカラパカラッ

マークス「ピエリ、左の敵は任せる、私は右を討つ!」

ピエリ「了解、それじゃ行くの!!!」

マークス「はああああっ!」チャキッ

 キィンカキィンッ

カムイ「始まりましたね、私たちも後を追いましょう!」

アクア「ええ」

 タタタタタタッ
394 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:02:13.10 ID:Y+z+B0dN0
謎の剣聖A「……」ブンッ ブンッ

 キィンカキィンッ

ピエリ「ざんねんでーした。そんな攻撃じゃ、ピエリを殺すことなんてできないの!」

 パカラパカラッ

ピエリ「今度はこっちの番なの!えーいなの!!!」チャキッ ズシャシャシャッ!

謎の剣聖A「……!」バシュッ! ドササッ

謎の剣聖B「……」チャキッ ダッ ザンッ

 キィン!

ピエリ「ダメダメなの! お手本にピエリがあなたをえいって、してあげるの!」チャキッ ザシュシュッ!

謎の剣聖B「……!」ビチャアアッ ドサリッ

ピエリ「えへへ、ピエリの勝ちなの!」

マークス「ピエリ、連携して敵を叩く。付いてこい!」

ピエリ「マークス様、わかったの!」チャキッ

 ズシャシャシャッ!

エリーゼ「マークスおにいちゃんもピエリもすごーい、あたしも頑張らないと! えいっ、それっ!」シュオンッ ドゴゴンッ
395 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:05:07.09 ID:Y+z+B0dN0
カザハナ「はっ、せいっ!」チャキッ シュパッ シュパッ

謎の陰陽師A「……」ズビシャッ スタッ

カザハナ「あんまり効いてないわね。っと!」ササッ

ギュンター「カザハナ、そこを退け」

カザハナ「!」サッ

ギュンター「ぬんっ! はあああっ」シュッ ズドドドッ

謎の陰陽師A「……」ズビシャアアッ!

 ドサリッ

カザハナ「ありがとう、ギュンター」

ギュンター「礼は後にしろ。新手が来るぞ」

謎の兵士たち「……」ダダダダッ

カザハナ「また!? ああもう、これじゃキリが無いよ」

ニュクス「なら……」シュオンッ

カザハナ「ニュクス?」

ニュクス「少しだけ時間をちょうだい、安心して損はさせないわ」

ギュンター「よかろう。準備が出来たのなら合図をしろ。はああっ!」ダッ

カザハナ「なんだかよくわかんないけど、任せたからね!」ダッ

 キィンカキィンッ
396 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:08:55.56 ID:Y+z+B0dN0
カザハナ「ちょっと、ニュクス。まだなの?」

ニュクス「もう少しよ」

ギュンター「カザハナ、目の前の敵に集中しろ!」

カザハナ「わかってるよ! このままじゃ押し込まれちゃう……」

ニュクス(……よし、準備は出来た)

ニュクス「二人とも下がって……」シュオンッ

 グオオオンッ

カザハナ「え、これって魔法陣? こんな数初めて見たんだけど」

ニュクス「つべこべ言ってないで、巻き込まれたくなかったらさっさと魔方陣の外に出なさい!」

カザハナ「わ、ご、ごめん!」サッ

ギュンター「はあっ! よし、ニュクスやれ」タタタッ

ニュクス「ええ、それじゃさようなら」シュオオオッ

 ガッ ガガガッ 

謎の兵士たち「」プスプスッ…… ドサリッ

ギュンター「ふむ、ミョルニルの一斉展開か。中々の無茶をするものだ」

カザハナ「す、すっごい……」

ニュクス「はぁ……はぁ……次が来るみたいだけど、ちょっとだけ休ませてちょうだい」

カザハナ「ニュクス、すっごいよ! こんなに小さいのにすっごい!」

ニュクス「褒めているのか馬鹿にしているのかどちらかにしてちょうだい。でも、これでようやく、道が出来上がりそうね」

ギュンター「うむ、今の攻撃で敵全体の動きに乱れが生じている、ここを逃す手は無い。カザハナ、敵を再度押し込むぞ」

カザハナ「うん!」タタタタタッ
397 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:12:13.54 ID:Y+z+B0dN0
エリーゼ「ギュンター達の方から、すっごい音がしたけどなんだったのかな?」

マークス「大きな攻撃が行われたようだ、敵の動きにも乱れが見える。ここで一気に攻める、この機を逃すな!」

エリーゼ「うん! いっけー、ライトニング!」シュオンッ

 バシュンッ ビシュンッ!

謎の弓使いA「!!!」ドササッ

エリーゼ「正面の弓兵を倒したよ。マークスおにちゃん!」

マークス「よくやった、このまま切り込ませてもらう!はああっ!」シュオンッ ブンッブブンッ!

ピエリ「ピエリも加勢するの! えいっ!やっ!」ズシャシャッ

 ドササッ

謎の兵士「……」タタタッ チャキッ

エリーゼ「マークスおにいちゃんには近づかせないんだから! いっけー!」シュオンッ ドドドッ!

マークス「はあああああっ!」ザシュッ ドスンッ!

 ドサッ ドササッ

謎の兵士たち「……」ジリジリッ

ピエリ「敵が下がり始めてきたの」

マークス「よし、あともう一押しだ」
398 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:15:59.25 ID:Y+z+B0dN0
レオン「すごい、敵が押され始めたみたいだ」

カミラ「ええ、ギュンター達もうまくやってくれているみたいだから、ここがチャンスね。レオン、仕掛けちゃいましょう」

レオン「ああ、一気にあの通路までの道を作り上げる。サクラ王女、僕の傍を離れないように」

サクラ「はい、レオンさん。それでどうするんですか?」

レオン「こちらから仕掛ける。ハロルドは投擲攻撃の準備、攻撃を合わせられるようにしてほしい。サクラ王女も攻撃の準備を」

ハロルド「わかりました、レオン様!」

サクラ「私も準備できました。いつでも大丈夫です」

レオン「よし。兄さん、こちらから攻撃を仕掛けようと思う。合わせられる?」

マークス「よかろう。レオンの合図で攻勢をかける。ピエリ、エリーゼ、準備はいいか?」

ピエリ「いつでも大丈夫なの!」

エリーゼ「こっちも大丈夫だよ!」

マークス「こちらはいつでもいいぞ、レオン!」

レオン「……よし、今だ!いけぇ!!!」シュオンッ シュオオオオンッ ザシュシュシュッ!

ハロルド「いくぞっ!正義アタッーク!」ブンッ ヒュンヒュンッ ザシュシュッ

サクラ「当ってください!」パシュッ ズシャッ!

謎の兵士たち「……」ドサササッ!
399 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:21:17.81 ID:Y+z+B0dN0
エリーゼ「よぉし、この数ならサンダーでいけそう。えいえいっ、えーいっ!」シュオオオオッ

ピエリ「レオン様達の攻撃すごかったの。残っているのはわずかだから各個撃破しちゃうのよ!」チャキッ バシュシュッ

マークス「貴様で最後だ。われわれの前にひれ伏すがいい!」ブンッ ザシュンッ

 ドサッ

レオン「……よし、道が出来た!」

マークス「カムイ、今のうちに進め!」

カムイ「はい!」

カミラ「待ちなさい、私たちが先行するわ。ブノワ、私の竜に乗ってちょうだい」

ブノワ「わかった…。よし、これでいいか…?」

カミラ「ふふっ、上出来よ。それじゃ行ってくるわね、カムイ」ナデナデ

カムイ「気を付けてくださいね。おそらく敵はいるはずです」

カミラ「ええ、注意するわ」

 グオオオッ バサバサッ

スズカゼ「カムイ様は私の後についてきてください」カランコロンッ

カムイ「はい、行きましょう!」タタタタタッ
400 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:24:11.47 ID:Y+z+B0dN0
◇◇◇◇◇◇
―王の間・玉座前―

金鵄ヒノカ『奴らが動き始めたようだ。何をするつもりかは知らないが、誰一人として逃がすつもりはない……。ここで一人残らず始末してやる。カムイをこの世から消し去った暗夜も、カムイの皮を被ったあいつもだ……。大丈夫、殺したら戻ってきてくれる。きっと……私の知るカムイが……』

ユウギリ「……」シュオンッ

オロチ「……」シュオンッ

金鵄ヒノカ『行け、誰一人として生かす必要はない……すべて殺してしまうんだ』

 タタタタタタッ

天馬ヒノカ「……カ…ムイ」

金鵄ヒノカ『大丈夫だ、これで悩まなくて済むようになる。すべて壊し、砕いてしまおう。そうすれば、もうなにも気にすることはなくなる。さぁ、私の願いを叶えよう。みんなといるために……』

天馬ヒノカ「………」

アサマ「……」

セツナ「……」

天馬ヒノカ(私は……)

(……………みんなと……)
401 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/20(土) 12:29:42.68 ID:Y+z+B0dN0
今日はここまで

 SS速報が落ちていた間、安価の確認が出来なかったため前衛戦闘チームをマークス、ピエリ、エリーゼの組み合わせで書いていました。
 アクアは話の流れ的に必要だと思い、カムイに同行する形になっています。
 前衛戦闘チーム安価を頂きましたカザハナ、ギュンター、ニュクスも追加した形で書いていきます。
 更新速度は前回と変わらないくらいだと思いますが、よろしくお願いいたします。
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 10:02:07.83 ID:zNg+bKJB0
乙でした、そしておかえりなさい。
403 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/27(土) 18:08:14.68 ID:J7l7fkLj0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―王の間・中央通路『左第一通路』―

 バサバサッ

ブノワ「ぐっ、思ったよりも揺れる……」

カミラ「次の角を曲がるから、しっかり掴まっておきなさい。それっ!」

ブノワ「うおおおっ!!!」ガシッ

 バササッ

カミラ「ふふっ、どうにかうまく入り込めたみたいね。もう力まなくても大丈夫よ」

ブノワ「そうか、これ以上負担を掛けたくはなかったからよかった…」

カミラ「負担?」

ブノワ「ああ、飛竜への事だ…。かなり力んで掴まってしまった…」

カミラ「そう。安心して、これまでずっと一緒に戦ってきた子だもの、そんなに軟じゃないわ」

ブノワ「すまない…」

カミラ「あやまらなくていいわ。そろそろ行き止まりみたいね…」

ブノワ「先に俺が出よう…」

カミラ「ええ、おねがいね」

ブノワ「ああ……」スタッ

 ドスンッ
  ガシャンガシャンッ
404 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/27(土) 18:09:53.46 ID:J7l7fkLj0
ブノワ「……!」

ブノワ(この殺気…、気を緩めれば足が止まりそうだ……。奴らは確実に俺たちを殺すつもりだろう…)

ブノワ「……」ジリジリッ

ブノワ(正直、怖い。怖いが……ここで立ち止まるわけにはいかない…)

ブノワ「よし、いくぞ!」チャキッ

 ダッ

謎の弓聖A「……」パシュッ!

ブノワ「!」ガキィン!

謎の上忍A「……」 タタタタタッ ササッ

 ブンッ ブンッ
  キキィン!

ブノワ「敵は二人か、ならば…これでっ!」グッ バシンッ

謎の上忍A「……」グラッ

ブノワ「くらえっ!」ジャキッ シュッ ザシュンッ

 ビチャアアッ! ドササッ

ブノワ(一人倒した…。あともう一人――)

謎の弓聖A「……」チャキッ

ブノワ(くっ、間に合わない…)チャキッ ググッ

 パシュッ バシュンッ!

ブノワ「ぐっ!」グラッ……
405 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/27(土) 18:20:06.19 ID:J7l7fkLj0
ブノワ(この攻撃、魔法の力を帯びているのか!? ぐっ、この重装甲装備でもこのままでは……)

謎の弓聖A「……」チャキッ ググッ

ブノワ「くっ……」

スズカゼ「そうはさせません!」ダッ

謎の弓聖A「……」グッ パシュッ

スズカゼ「はぁっ!」ダッ ブンッ

 ガキィンッ!

ブノワ「スズカゼ!?」

スズカゼ「どうやら間に合ったようですね。弓兵ではカミラ王女にお任せするわけにはいきませんので、はっ!」カランコロンッ!

謎の弓聖A「……」チャキッ パシュッ!

 キィンッ カタンッ

スズカゼ「ふっ、その程度の攻撃では私の相手は務まりませんよ。さぁ、今度はこちらの番です。はあっ!」バシュシュッ!

 ザシュシュッ!

謎の弓聖A「……」グラッ

ブノワ「やったか……?」

スズカゼ「いいえ、少しばかり浅いようです」

カミラ「なら、これでおしまいよ」バサバサッ

謎の弓聖A「……」チャキッ

カミラ「あと少し早ければあなたの勝ちだったけど、残念ね。それじゃ、さようなら」チャキッ

 バサバサッ スッ ザンッ!

謎の弓聖A「……」ドササッ シュオンッ……
406 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/27(土) 18:30:40.18 ID:J7l7fkLj0
ブノワ「……どうにかなったのか?」

スズカゼ「はい。他に何かが潜んでいる気配はないようです。ひとまず安全と言ったところでしょう」

カミラ「ええ、一安心ね」

タタタタタッ

カムイ「カミラ姉さん、大丈夫ですか?」

カミラ「ええ、大丈夫よ。スズカゼとブノワのおかげでね。それよりも、マークスお兄様たちが敵を支えるのにも限度があるわ。早いところ隠し通路を使いましょう。それで、その隠し通路は何処にあるのかしら」

スズカゼ「こちらです、カミラ王女」

カミラ「ここ? 何の変哲もない戸のようだけど?」

レオン(おそらくだけど、ここも一筋縄じゃ行かないとは思う。あの竜脈で開く地下通路とかと同じように、大掛かりな仕掛けが施されているはずだ……。一体、どんな仕掛けで開――)

 スーッ

スズカゼ「よかった。特に問題なく使えるようです」

カミラ「あら、扉を開くだけでいいの?」

ハロルド「む、引き戸の奥なのか。思ったよりもシンプルなのだね」

スズカゼ「はい、もう少し厳重にしたほうがいいという意見もありましたが、何分使用の際は緊急を要しますのですぐに利用できるようにと……」

サクラ「できれば使われない方がいいところですからね……。あれ、レオンさん、どうしたんですか。なにか腑に落ちないって顔をされてますけど……」

レオン「いいんだ、サクラ王女。これは僕だけの問題だ。だから気にしないでくれ……」

サクラ「?」
407 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/27(土) 18:34:55.41 ID:J7l7fkLj0
スズカゼ「それでどうしますか、カムイ様」

カムイ「何事もなく使えるのなら好都合です。このまま先手を打ちましょう」

ブノワ「よし、俺が先に進む…。カミラ様とスズカゼは後に続いてくれ…」

スズカゼ「カミラ王女は私の後に続いてください。ブノワさん、そのまま真っ直ぐに進むだけで大丈夫ですので、よろしくお願いします」

ブノワ「ああ、わかった…。敵の気配は感じない、一気に出口まで向かうとしよう…」ガシャンガシャン

カムイ「なんとかうまくいきそうですね」

カミラ「そうね。それでカムイ、首尾よく相手の裏を描けたあとはどうするのかしら? このまま、ヒノカ王女に戦いを挑むの?」

カムイ「はい。ですが先に行くのは私たちだけで、カミラ姉さんはマークス兄さんたちの援護に向かってください。今、敵のほぼすべてを受け止めてくれているのはマークス兄さんたちで、援護を一番必要としているはずです。マークス兄さんたちを援護しつつ、私たちとの合流を目指してもらえますか?」

カミラ「……なるほどね、わかったわ。ブノワとスズカゼへの指示は任せておいて。だけど、そっちは大丈夫なの?」

カムイ「戦力が心もとないのはわかっています。ですが、奴の力に対抗するためには戦場の中心点を作る以外に手はありません。その中心を作り上げるためにも、マークス兄さんたちとの合流は必要不可欠な事ですから」

カミラ「カムイ……わかった。こっちのことはおねえちゃんに任せて、ちゃんとマークス兄さんたちを連れてきてあげるから」

カムイ「はい、よろしくお願いします」

カムイ(どうにかして戦場の主導権を握らなければなりません。このまま分断された状態で戦いを続けても、勝てる見込みがない以上、私たちの戦いやすい状態を作り上げなくては。それがどれだけ難しいことだとしても――

(活路はそれしかないのですから……)
408 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/10/27(土) 18:35:42.38 ID:J7l7fkLj0
今日はここまで
409 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:09:21.19 ID:9zswuUwg0
◆◆◆◆◆◆
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―シラサギ城『王の間・入り口付近』―

マークス「エリーゼ援護を頼む!」

エリーゼ「わ、わかったよ! えーい!」シュオンッ ドゴオオンッ

 ドササッ

マークス「よし、もう一度敵を押し上げる。ピエリ、行けるか?」

ピエリ「任せてなの。敵をいっぱい八つ裂きにしてやるのよ」

マークス「エリーゼ、次は敵先頭集団に攻撃を頼む。その隙をもう一度突く」

エリーゼ「うん、わかったよ、マークスおにいちゃん。いっけー、フィンブル!」

 シュオンッ バチィンッ!!!!

謎の兵士たち「……」サッ

マークス「よし、今だ! ピエリ、私に続け!」

ピエリ「わかったの。みんなズタズタにしてやるの!!!」チャキッ

 ダダダダダダッ ザシュ ドゴンッ!

マークス(よし、どうにか持ち直した。ギュンターたちもうまくやってくれているといいが……)
410 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:10:35.14 ID:9zswuUwg0
謎の兵士「……」タタタタッ チャキッ ブンッ

ギュンター「ふっ、見くびられては困る。はあああっ、でやあああっ!」キィンッ ドゴンッ!

カザハナ「そこね。さっさと倒れなさいよ!」スチャッ シュパパッ
 
 ズシャシャ! ドサッ……

カザハナ「はぁ、はぁ、……もう、いつになったら終わるのよ、これ」

ギュンター「文句はすべてが終わってからだ。カザハナ、左翼を抑えに回る。ニュクスは右翼の足止めを頼む」

ニュクス「わかったわ。右は私に任せておいて」

カザハナ「うん、それじゃ行くよ!」ダッ

ギュンター「ぬんっ、はあああああっ」パカラパカラッ ドゴゴゴッ

謎の兵士たち「……」ササッ

ギュンター「敵が下がった。今だ、カザハナ!」

カザハナ「よっし、それっ、せやっ!!!」シュパッ シュパンッ

 ザシュッ ズシャッ ドサササッ

カザハナ「よし!」

ギュンター「このまま、さらに押し上げる。ニュクス、火力を集中しろ」

ニュクス「ええ、言われなくても分かっているわ。はあああっ」シュオンッ ドゴゴゴゴンッ!

カザハナ「すごっ、一気に吹き飛んじゃった」

ギュンター「一気に攻め上げる、行くぞっ!」ダダダダッ

カザハナ「う、うん!」タタタタッ
411 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:12:51.50 ID:9zswuUwg0
マークス「ギュンターもうまくやっているようだ。よし、ピエリ、お前には左翼を任せる! 深追いはせず、各個撃破に努めよ」

ピエリ「はーい、ピエリ行くの!」チャキッ ザシュシュシュッ

謎の兵士「……」ドササッ

謎の兵士「……」タタタッ

ピエリ「えへへ、近づかれる前に攻撃しちゃうの!それっ!」チャキッ ブンッ

 ヒューンッ ザシュッ! ドサッ

ピエリ「大当たりなの!」

謎の兵士「……」タタタッ

エリーゼ「逃がさないんだから、それっ!」シュオンッ…… ドゴンッ!

 ドササッ

エリーゼ「えへへ、あたしの勝ちだね」

マークス「はああっ! ふん、この程度か」ブンッ ズシャリッ!

ピエリ「マークス様もエリーゼ様もかっこいいの! ピエリももっと敵をえいってしてやるの!」チャキッ

 タタタタタッ

ピエリ「そこなの!」チャキッ ブンッ!

???「……」 ガキィン! ダッ

ピエリ「弾かれたの!? なら、こうしてやるの! えいっ!」カランッ チャキッ ブンブンッ

???「……」キィンキィン タッ チャキッ

ピエリ(この敵、他となんか違う……。何なの?)

???「……」スッ

ピエリ「え……」

ユウギリ「……」
412 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:21:39.00 ID:9zswuUwg0
ピエリ「あなたの顔、見たことある。シュヴァリエ公国で、ピエリが戦った人なの……」

ピエリ(ピエリのこと足止めして、リリスを助けに行かせなかった奴なの)

 ギュウッ

ピエリ(この人が邪魔しなかったら、リリスを助けに行けたの……。この人の所為で、助けに行けなかったの……。あの時は殺せなかったの、だから――)

ピエリ「……ここで殺してやるの」チャキッ

ユウギリ「……」タタタッ

ピエリ「逃がさないの!」ダッ

エリーゼ「マークスおにいちゃん! ピエリが一人だけ前に出ちゃってる!」

マークス「なに!? ピエリ、戻れ!!!」

ピエリ「……」

マークス(くっ、敵に誘い込まれている。何があったピエリ!?)

マークス「このままでは分断される。エリーゼ、援護を!」

エリーゼ「わ、わかったよ。マークスおにいちゃん! えいっ!」シュオンッ

 ドゴゴンッ!

マークス「よし!」パカラパカラッ

謎の兵士「……」タタタタッ チャキッ!

マークス「くっ! そこを退けぇ!」チャキッ ザシュッ バシュンッ

謎の兵士「……」ドササッ

マークス(このまま敵陣を突破し、ピエリを連れ戻せれば――)

マークス「!!」サッ

???「……」 カラカラカランッ シュオンッ

マークス「新手か!?」チャキンッ

オロチ「……」クスクスッ

マークス「どうあっても行かせぬつもりか……」

エリーゼ「ど、どうしよう。マークスおにいちゃん、足止めされちゃってる」

エリーゼ(ピエリ、マークスおにいちゃんの声が聞こえてなかったみたいだし、すごく怖い顔してた……)

エリーゼ(あの顔、なにかを恨んでるみたいだった。駄目だよそんなの、だってあたしたちが戦ってるのは――)

エリーゼ「……ピエリを助けないと。行くよ!」パカラパカラッ!
413 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:23:15.89 ID:9zswuUwg0
ピエリ「やあっ! えぇいっ!!!」ブンッ ブンッ 

ユウギリ「……」サッ ザシュッ

ピエリ「逃がさないの。絶対に殺してやるのよ」ブンッ ズドドドッ

ユウギリ「……」ザシュッ ビシャッ

ピエリ「えへへ、いいの。もっと、もっと傷つけばいいの」ダッ キィンキィン

ユウギリ「……」スッ ブンッ!

 ザシュッ

ピエリ「あうっ、そんな攻撃どうでもいいの。もっともっと血を流すの! 流して死んじゃえばいいのよ!」ザシュシュッ

ピエリ(死んじゃえ、死んじゃえなの。あなたを殺せば、きっとリリスも喜んでくれるの!)

???「ピエリ! 下がるんだ!!!! ピエリ!!!」

ピエリ(誰かの声が聞こえるの。でも関係ないの。今は、この人を殺すから邪魔しないでほしいの。あと少しで、殺せるはずなの)

ユウギリ「……」スタッ

ピエリ「そこなの!えぇぇいっ!」ガシッ ブンッ

 ザシュリッ!!!!

ユウギリ「……」ビチャリッ……

ピエリ「はぁ……はぁ……。えへへ、あなたのお腹、槍で貫いてあげたの。これからもっと、八つ裂きにしてやるの!」グッ

ピエリ(槍を引き抜いたら、もっと串刺しにしてやるの。あなたがいなければピエリはリリスと一緒にカムイ様を探しに行けて、ここにリリスはまだいてくれたはずなの。そうならなかったのは、あの日あなたがいた所為なの。だから――)

ピエリ「もっと、バラバラにしてあげるの」ニタァ
414 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:24:51.90 ID:9zswuUwg0
ユウギリ「……」ガシッ

ピエリ「えへへ、槍を抜こうとしても無駄なの。こんなに深く刺さったら、簡単に抜けたりしな――」

ユウギリ「……」ダッ ズビシャアアアッ

ピエリ「!?」

ピエリ(ピエリに向かってきた? 一体何のつもりなの?)

 ザッ

ピエリ「え?」

謎の兵士たち『……』

ピエリ「!?」

謎の兵士たち『……』

ピエリ「え、嘘……」

ピエリ(敵、いっぱいいる。か、囲まれちゃってるの。に、逃げ場がないの)

ピエリ「う、ううっ……。どうなってるの。ピエリ、なんで追い詰められてるの!?」

ピエリ(は、早く逃げるの。このままじゃ――)

 ガシッ

ピエリ「!」

ユウギリ「……」フフッ

ピエリ「は、離すの! 離してなの!」

ピエリ(このままじゃ、ピエリ殺されちゃう。だめ、こんなところで死ねないの。ピエリ、まだリリスの分までカムイ様をお守りしてないの!)
415 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:26:40.47 ID:9zswuUwg0
謎の兵士たち『……』チャキッ

ピエリ(あいつら武器を構えてる。もう攻撃まで時間がないの!)

ピエリ「離れて、すぐに離れるの!」ガシッ ドスッ ドスッ

ピエリ(どうして、どうしてなの? ピエリ、リリスの仇を取りたかっただけなのに。それが間違いだったの? ピエリ、間違えちゃったの?)

ピエリ「いやなの! 離れてなの!!!!」グッ ドゴンッ!!!

 ズビシャアアッ

ユウギリ「……」ドサッ クラッ サッ

 カランカランッ……

ピエリ「あ、ピエリの槍!」パシッ

謎の兵士たち『……』ダッ

ピエリ「あ……」

ピエリ(だめ、これ避けられないの。ピエリ、ズタズタに引き裂かれちゃうの……)

謎の兵士たち『……』ダダダダッ

ピエリ「……ごめんなの」

謎の兵士たち『……』グッ

ピエリ「!!!」

 パカラパカラッ

???「ピエリ、伏せて!!!!」シュオンッ

ピエリ「え?」

ピエリ(エリーゼ様?)
416 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:32:00.23 ID:9zswuUwg0
エリーゼ「早く!!!」

ピエリ「!」サッ

エリーゼ「よーし、みんな吹き飛んじゃえ! フィンブル!!!!」シュオオオオンッ

 シュオオオオオッ ドゴォンッ!

謎の兵士たち『……』ドササッ 

ササッ

ユウギリ「……」チャキッ ダッ

ピエリ「あ……」

エリーゼ「ピエリに手は出させないよ! えいっ!」シュオオオンッ バチイィンッ

ユウギリ「……」グラッ ササッ

ピエリ「エリーゼ様……」

エリーゼ「ピエリ、早くこっちに来て!」

ピエリ「う、うん!」パカラパカラッ

謎の兵士「……」チャキッ

エリーゼ「しつこいよ!」シュオンッ バシュンッ

謎の兵士「……」ドゴンッ ドササッ

エリーゼ「マークスおにいちゃん、ピエリを助け出したよ!」

マークス「エリーゼよくやった! ならば、心置きなく行かせてもらうぞ!」シュオンッ バシュッ

???「……」サッ! タタッ タタッ

 カラララ――

ガキィンッ!

???「!」

ギュンター「敵に攻撃を許すな。ニュクス!」

ニュクス「ええ、任せて。カザハナ、周囲から寄って来る悪い虫を抑えなさい」シュオンッ

カザハナ「わかったよ、それっ!」チャキッ シュパパッ

謎の兵士たち「……」サッ

ニュクス「よし、これでもくらいなさい!」ボワアアッ!

???「……」ザシュシュッ! ダッ タタッ

ニュクス「さすがに呪いに長けているだけはあるわね。普通の相手なら、もう死んでいるくらいなのに……」

ニュクス(それにしてもこんな形であなたの顔をもう一度見るとは思っていなかったわ。どういう道を辿ったのかは知らないけれど、もう見ることもない、そう思っていたのにね)

ニュクス「シュヴァリエ公国以来ね、白夜の呪い師」

オロチ「……」
417 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:39:20.66 ID:9zswuUwg0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―シラサギ城・王の間『玉座の間へ至る階段』―

 ガコンッ!

 ズズズッ ズズズズズッ

ブノワ「……よし、敵の姿は無いようだ…」

スズカゼ「はい、今のうちに出るとしましょう」

カミラ「何とかなったわね。カムイ、手筈通りマークスお兄様たちを援護に向かうわ。その間、どうにか持ち堪えてちょうだい」

カムイ「はい、こちらも出来る限りの手は打つつもりです。そちらも気を付けてください」

カミラ「ええ、それじゃ行きましょう?」

ブノワ「敵の多くが入り口に密集しているが、強襲される可能性もありえる。ここは俺が先行しよう…」

スズカゼ「わかりました、支援は私にお任せください」

ブノワ「ああ、頼む……」

 タタタタタッ

レオン「よし、どうにかここまでは順調みたいだね」

サクラ「はい。この先にヒノカ姉様が……」

アクア「奴の力も強くなっているから、おそらくいるはずよ」

カムイ「行きましょう、一気に奇襲を掛けます」

 タタタタタッ

ハロルド「うむ、サクラ王女様、それにレオン様も私の後に続いてください、行くぞ!」

レオン「ああ、行くよサクラ王女」

サクラ「は、はい。レオンさん!」

タタタタタッ

カムイ(……一歩進む度に空気が重たくなっていくのがわかる。これがあのヒノカさんが発しているものだとは思いたくありません。スサノオ長城の時感じたあの穏やかな気配とは比べ物にならないこれが、ヒノカさんの物だなんて……)

 バサバサッ

カムイ「!」

 バサバサッ ドスンッ

金鵄ヒノカ「……」

カムイ「……ヒノカさん」
418 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/02(金) 10:40:01.85 ID:9zswuUwg0
今日はここまで
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 07:59:59.53 ID:JXcA+AGIO
復活してるの今知ったわ
420 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/11(日) 22:59:58.55 ID:23iEiPZj0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・入り口付近』―

 キィン!
  カキィンッ

マークス「はあああっ!!!!」チャキッ ザシュシュッ

 ドサッ

謎の槍聖A「……」タタタタタッ

マークス「っ、後ろか!」クルッ

謎の槍聖A「……」ダッ ブンッ

マークス「ぐっ。この程度で私に勝てると思うな!」キィンッ  ドゴンッ

謎の槍聖A「……」サッ チャキッ

ギュンター「その隙、取らせてもらうぞ。やああっ!!!」チャキッ ブンッ

 バャシュッ!!!ゴトンゴトンッ ドサリッ

マークス「ギュンター、助かった」

ギュンター「お気になさらず。しばらくはマークス様の援護に回らせていただきます。カザハナとニュクスはまだ持ち堪えられそうなので、心配はいりません」

マークス「すまない、ギュンター。エリーゼ、そっちは大丈夫か!?」

エリーゼ「うん、大丈夫だよ。だけど、ピエリの傷が思ったよりも深くて、簡単な治癒魔法じゃ傷を塞ぎきれないよ……」

ピエリ「ううっ……」ポタタッ

マークス「仕方ない、安全な場所に移動してピエリに治療を頼む。ここは私とギュンターに任せろ」

エリーゼ「わ、わかったよ。ピエリ、もう少しだけ下がるよ。付いてきて!」

ピエリ「う、うん……」
421 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/11(日) 23:16:42.43 ID:23iEiPZj0
エリーゼ「よし、ここなら大丈夫そう。ピエリ、馬から降りて、すぐに治療してあげるから」スタッ

ピエリ「……っ」スタッ ポタタッ

エリーゼ「大丈夫、痛みなんてすぐなくなっちゃうからね。それっ!」シャランッ

 シュオンッ

エリーゼ(ど、どうかな?)

 ポタタッ

エリーゼ(だめ、完全に傷が塞がってない。あともう一回か二回は必要かな?)

ピエリ「……エリーゼ様」

エリーゼ「ご、ごめんね。ちょっとだけ待ってて、もう一回やれば残ってる傷もちゃんと――」

ピエリ「ううん、これだけで十分なの。ピエリ、すぐに戦わないといけないの。だからもういいのよ」

エリーゼ「え、ピエリ?」

ピエリ「……」フラフラッ テトテトッ

ピエリ(そうなの、こんなところで足を止めてなんていられないの。あいつを、シュヴァリエでピエリの邪魔をしたあいつを、ここで絶対に殺してやるの……。だから、もう動けるならそれだけで……)

ピエリ「……っ」ズキッ ポタタタタッ

エリーゼ「ピエリ!?」

ピエリ「いいの、ピエリは、っ、大丈夫なの。っ!!!」ポタタッ

ピエリ(痛くない、痛くないの。こんな傷、全然痛くないの。死んじゃう痛さじゃないの、だからちゃんと動いてなの。そうじゃないと……。あいつを殺しにいけないの……」テトッ テトッ
422 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/11(日) 23:25:46.38 ID:23iEiPZj0
ピエリ「こんなの痛くないの。ピエリは……ピエリは……」

ピエリ(あいつを殺さないといけないの。あいつを殺して、リリスの仇を取るの。今度は失敗しないの。失敗しないから、ピエリがあいつを……)

エリーゼ「だ、駄目だよ!」ダッ バッ

ピエリ「エリーゼ様、そこを退くの。もうピエリ、ちゃんと動けるの」

エリーゼ「何言ってるの? ピエリの傷口、まだ全然塞がってないんだよ。こんなのじゃ戦えないよ」

ピエリ「エリーゼ様。ピエリは戦わないといけないの……」

エリーゼ「だめ、今行ったらピエリが死んじゃうよ!」

ピエリ「そんなことないの。ピエリは……あいつを殺して……リリスとの約束を守るの……。だから邪魔しないでなの!」チャキッ

エリーゼ「!!!」

ピエリ「もう大丈夫って、ピエリが言ってるの。だからもう止めないでほしいのよ」

エリーゼ「ピエリ……」

ピエリ「……」
423 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/11(日) 23:31:07.93 ID:23iEiPZj0
エリーゼ「おかしいよ……」

ピエリ「?」

エリーゼ「……ピエリとリリスがどんな仲だったのかは知らない。でも、こんなのおかしいよ。こんな風に誰かを傷つけるために戦うって……」

ピエリ「何がおかしいの? ピエリ、何もおかしいことなんてしてないの!」

エリーゼ「だって、カムイおねえちゃんは誰かを傷つけるために戦ってるんじゃない。誰かを守るためなのに、ピエリは相手を殺すために戦ってる」

ピエリ「……」

エリーゼ「そんなの駄目だよ。それじゃ、おとうさまのフリをしてるあいつと何も変わらない。何も守れない気がするの……。だから、あたしはピエリのしてることは間違いだって思う」

ピエリ「エリーゼ様に何が分かるの。ピエリは、ピエリは……」

ピエリ(ピエリは……リリスの仇を取って、それで……それで……)

ピエリ「………どうなるの?」

ピエリ(あいつを殺せるの……だけど――)

ピエリ「……それで、なんなの?」

ピエリ(ピエリは、それで何を満足するの? あいつを殺して、ピエリは……何を得るの?)

ピエリ「……」

エリーゼ「ピエリがリリスとした約束は、あの敵を倒すことだったの?」

ピエリ「え?」
424 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/11(日) 23:37:24.57 ID:23iEiPZj0
エリーゼ「あたしだってリリスの事知ってるよ。ピエリみたいに仲良しだったっていうわけじゃないけど、でもあのリリスがそんなことを言うなんて思えない」

ピエリ「エリーゼ様」

エリーゼ「だって、リリスはカムイおねえちゃんの臣下さんなんだよ。そんなリリスが、ピエリにそんな約束をするなんて思えないよ……。リリスなら、もっと違う事を言うと思うから……」

ピエリ「リリスがとの約束……」

ピエリ(リリスはあの時……。ピエリに……なんて言ってくれたの。あの日、死にそうなリリスはピエリに……)

リリス『ピエリさ……ん。恨まないで』

ピエリ「あ……」

リリス『ピエ……リさんには。そんな理由で……戦ってほしく……ないから。ピエリさんには……恨みで戦ってほしくないんです。私のことで……ピエリさんがピエリさんで無くなってほしくないんです……』

ピエリ「あ、うっ……うううっ……」

エリーゼ「ピエリ……」

ピエリ「ピエリ、また約束……破っちゃったの……。リリスと約束したのに、ピエリ……ピエリ……」ポタタッ

エリーゼ「大丈夫だよ。まだ、こうしてここにいるんだもん。もしもピエリが死んじゃったらリリスは怒ったと思うんだ。でも、ちゃんと生きてるから、きっと許してくれるはずだよ」

ピエリ「エリーゼ様……」
425 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/11(日) 23:50:09.13 ID:23iEiPZj0
ピエリ「でも、ピエリはリリスのために何もできなかったの」

ピエリ(ピエリは、リリスに何かできたわけじゃなかったの。仇を討てたわけでも、守れたわけでもないの。リリスが死んじゃってから、カムイ様を守るって言っただけで、ピエリはリリスに何も……)

エリーゼ「そんなことないよ、ピエリはリリスとの約束をちゃんと思い出したんでしょ?」

ピエリ「うん……」

エリーゼ「それだけでもいいと思う。あたしたちが死んじゃった人のために出来る事って、そのことを忘れないことだって思うから。ピエリはちゃんとリリスのことを覚えてた。それって、きっとリリスのためになってるはずだもん」

ピエリ「……そうなの? ピエリが覚えてるだけでリリスのためになってるの?」

エリーゼ「うん、だから忘れないためにあたしたちは死んじゃ駄目なの。あたしの知ってるリリスとピエリの知ってるリリスは違う。ピエリの知ってるリリスが、恨みとか憎しみでいなくなっちゃうなんて、そんなの嫌だよ」

ピエリ「……」

エリーゼ「だから、いっしょに戦おう? 憎しみとか恨みとかじゃなくて、もっと大切な思いを守るために戦おう? 死んじゃった人は帰って来ないけど、一緒にいた時間の思い出は生きていればずっと消えないはずだから」

ピエリ「……」

エリーゼ「えっと、それじゃ駄目かな?」

ピエリ「ううん、駄目じゃないの……」ダキッ

エリーゼ「わっ、ちょっとピエリ!?」

ピエリ「エリーゼ様、ごめんなさいなの。ピエリ……、ピエリ……、ううっ」ポタッポタッ

エリーゼ「ピエリ……」
426 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/11(日) 23:53:43.61 ID:23iEiPZj0
 ギューッ

ピエリ「エリーゼ様?」

エリーゼ「気にしてないよ……。あたしだって友達が死んじゃったら、どうなるかわからないもん。だから、こうやって立ち止まれるピエリはすごく強いって思えるから……」

ピエリ(エリーゼ様、あったかいの……。これならピエリ、頑張れる気がするの。みんなを守るために、いっぱい戦える気がするのよ)

 シュオンッ

エリーゼ「あ、治療の準備が出来たみたい。すぐに治療するね」

ピエリ「うん、お願いするの!」

エリーゼ「えへへ、えーいっ!」シャランッ!

 シュオンッ

エリーゼ「ど、どうかな?」

ピエリ「うん、これでもう大丈夫なの。エリーゼ様、ありがとうなのよ」

エリーゼ「よーし、それじゃマークスおにいちゃんたちの援護に戻ろう。この戦い、絶対に負けられないんだから!」

ピエリ「うん、早くいくの!」タタタッ ダッ ヒヒーンッ パカラパカラッ

エリーゼ「あ、ちょっと、ピエリ、待ってよー」パカラパカラッ
427 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/11(日) 23:56:29.87 ID:23iEiPZj0
マークス「……む?」

ピエリ「マークス様、お待たせなの!」

マークス「ピエリか。もう傷はいいのか?」

ピエリ「うん、エリーゼ様にいっぱい治してもらっちゃったの。だからもう大丈夫なの!」

マークス「……」

ピエリ「ん、マークス様?」

マークス「その様子ではもう大丈夫のようだな」

ピエリ「……うん、心配掛けてごめんなさいなの、マークス様」

マークス「いい。だが、先ほどの独断専行について、色々と言いたいことがあるから覚悟はしておけ」

ピエリ「ふええっ。わかったの……」

エリーゼ「あはは、ピエリ、マークスおにいちゃんに怒られてる」

マークス「おしゃべりはここまでだ。ピエリ、先ほどまで休んでいた分、動いてもらうぞ。いいな?」

ピエリ「はーい。ピエリの準備はオッケーなのよ」

エリーゼ「後方はあたしに任せて。攻撃も補助もこなしてみせるから」

マークス「よし。ギュンター、カザハナとニュクスに合流するように指示を出してくれ」

ギュンター「わかりました」パカラパカラッ

マークス「ピエリ、ギュンター達と合流後、敵陣の一点に集中攻撃を掛け、これを突破する」

ピエリ「突破するの?」

マークス「ああ。敵の垣根の先を見てみるといい、その答えが見えるはずだ」

ピエリ「垣根の先? ………あっ!」
428 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/12(月) 00:00:14.57 ID:oVDYdVH80
 ドゴンッ ドゴゴンッ!

カミラ「ようやく敵の尻尾まで来たみたいね。ブノワ、先行して」

ブノワ「あ、ああ。いくぞ、うおおおおおっ!!!!」ドゴンッ

謎の兵士「……」サッ チャキンッ

スズカゼ「そうはいきません、はっ!!!」パシュシュッ

 ズシャシャッ

謎の兵士「……」クラッ

カミラ「そこね、ライナロック!!!」シュオンッ ドゴオンッ!!

スズカゼ「どうやら、マークス王子や他の皆さんも無事なようです。少しばかり押されていると思いましたが、杞憂のようでしたね」

カミラ「ええ、一気に畳みかけてマークスお兄様たちを突破させましょう」



ピエリ「あれ、カミラ様たちなの!」

マークス「ああ、例の隠し通路で裏をとったようだ。となれば、ここで戦闘を維持する必要もない、ここを抜け一気に玉座の前に陣を敷く、それが今すべきことだろう」

ピエリ「わかったの、ここが頑張りどころなの! あ……」

ユウギリ「……」タタタタッ チャキッ

ピエリ「えへへ、もうあなたの挑発には乗らないの。確かにあなたを倒すけど、それはあなたが憎いからじゃないの」チャキッ

「ピエリ、また守りたいものが出来ちゃったの。それを守るために、あなたを倒させてもらうの!」
429 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/12(月) 00:02:32.42 ID:oVDYdVH80
今日はここまで

 FEHに幼アクアが来るみたいですね。
 
 ところでリリスの実装は何時ですか?
430 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 10:59:53.29 ID:gy5e0L7O0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・入り口付近』―

オロチ「……」 カラララッ シュオンッ

  バサバサッ ザッ!

ニュクス「っ、はあああっ」シュオオンッ 

 バチィンッ!

謎の鍛冶A「……」ダッ

カザハナ「させないよ。それ、それっ!!!」チャキッ シュパパッ

謎の鍛冶A「……」ドサッ

ニュクス「カザハナ、ありがとう」

カザハナ「気にしないで、それよりも顔見知りとこんな形で戦うなんてね……。正直、ニュクスがオロチの事、知ってるなんて思ってなかった」

ニュクス「色々とあるのよ。だけど、ここでもう一度見ることになるなんて思っていなかったわ」

カザハナ「そうだね。あたしもこんな姿で再会なんてしたくなかったよ……」

オロチ「……」

ニュクス(死んでも主に尽くす、そういう意味に捉えた方が幸せなんでしょうけど……)

ニュクス「そんな素敵なものじゃなさそうね。少なくとも今のあなたを見ている限りでは」

オロチ「……」チャキッ
431 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 11:11:13.57 ID:gy5e0L7O0
カザハナ「来るよ!?」

ニュクス「オロチだけに気を取られないで、他にも近づいてくるのがいるわ」シュオンッ

カザハナ「え?」キョロキョロ

謎の鍛冶B「……」タタタタッ

謎の槍聖A「……」チャキッ

カザハナ「うわっ、ほんとだ」

ニュクス「オロチは任せなさい、カザハナは左の奴らんお相手をして」

カザハナ「わかったよ。もう、ギュンター早く戻ってこないかな、そろそろ限界近いのに」

ニュクス「そうね、城塞の時みたいにさっさと来てくれれば助かるのだけど……」

カザハナ「城塞の時? どういうこと?」

ニュクス「……なんでもないわ」ダッ

カザハナ「? まぁいっか、それより今は目の前の敵を倒さないとね。さぁ、あんたたちの相手はあたしだよ!!」シュタッ

謎の鍛冶B「……」グッ タッ

カザハナ(一気に距離を詰めてきたね。なら、こっちも懐に入って!)タッ

謎の鍛冶B「……」ブンッ!

カザハナ(よし、今!)グッ ズサササッ

 スカッ

カザハナ「へへん、滑り込み成功。背中ががら空きだよ!」チャキッ グッ 

 ザシュンッ!!!!

謎の鍛冶B「……」ガタンッ ドサッ
432 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 11:25:58.11 ID:gy5e0L7O0
カザハナ「よし、一人倒した。もう一人は――」キョロキョロ

謎の槍聖A「……」ダッ ズドドドッ

カザハナ「っと! あぶなかった」サッ

謎の槍聖A「……」タッ

カザハナ「へへん、同じ手で来るつもりだろうけど、二度目は無いよ。それっ!」パシュッ

 ズシャッ

謎の槍聖A「……」グラッ カランカランッ……

カザハナ「武器が無かったら何もできないでしょ。それじゃ、倒させてもらうよ!」タタタッ

 ザシュ ザシュシュッ!

 ドサリッ

カザハナ「ふぅ……、あたしの勝ちね!」

カザハナ(それにしても、なんだか敵の流れが向こう側に集中してる。これもギュンターが援護に向かった影響なのかな?)

カザハナ「どっちにしても、こっちは片付いたからニュクスと合流して――」

 ドゴンッ!!!

カザハナ「え、ちょ、なに!?」

カザハナ(このすごい音、もしかしてニュクスの方から!?)

カザハナ「ニュクス!!」タタタタッ
433 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 11:36:37.96 ID:gy5e0L7O0
 ゴオォォォッ

ニュクス「……」タタタッ

オロチ「……」パシッ カラララッ!

ニュクス「ライナロック!!!」シュオンッ ドゴンッ‼‼‼

オロチ「……」サッ シュオンッ バサバサバサッ

 ヒュンッ!

ニュクス「!」サッ サッ

  ザシュッ!

ニュクス「っ」

ニュクス(大丈夫、ただ掠っただけ。詠唱を終えた直後の隙は突く、ここがチャンスよ!)

ニュクス「吹き飛びなさい、ギンヌンガガプ!!!」

ニュクス(これで終わりよ!)

オロチ「……」サッ

謎の兵士「……」ダッ

 ドゴンッ!!! ドサリッ

ニュクス(他の奴を盾にした!?)

オロチ「……」カララッ シュオンッ

 グオンッ ブルルルッ

ニュクス(呪いの牛はまだ出てきてない。今のうちに妨害すれば、止められるはず!)シュオンッ
434 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 11:41:48.23 ID:gy5e0L7O0
謎の鍛冶C「……」タタタタッ ダッ!

ニュクス(敵!?)

ニュクス「っ、ミョルニル!」

謎の鍛冶C「……」ドゴンッ!!!! ドサッ

ニュクス(しまった、すぐに次の詠唱を――)サッ

 ドドドドッ

ニュクス「!!!!!」

ニュクス(だめ、この距離じゃ間に合わない……)

ニュクス「くっ」グッ

 ドゴンッ‼‼‼‼

ニュクス「あああっ!!!」

 ドンッ ドササーーッ

ニュクス「くっ、ううっ……」

ニュクス(大丈夫、まだ動ける……。早くしないと……)

ニュクス「っ……はぁ……はぁ……」ポタタタッ グッ タッ

オロチ「……」チャキッ

謎の兵士「……」チャキッ

ニュクス「また二人。いいわ、纏めて相手をしてあげる、掛かって来なさい……」シュオンッ

オロチ「……」カララッ! シュオン バサバサッ!

謎の兵士「……」ダッ
435 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 11:49:09.04 ID:gy5e0L7O0
 パカラパカラッ……

???「やあっ!!!」ブンッ!

 ヒューンッ ガコンッ!

謎の兵士「……」サッ

オロチ「!!」グッ

ニュクス(え、後方から槍? それにこの蹄の音は……)

???「ニュクス、左の兵は私が相手をする。お前は呪い師の相手をしろ」

ニュクス「……言われなくてもそうさせてもらうわ」

ギュンター「任せておけ。いくぞっ、はああっ!」パカラパカラッ

謎の兵士「……」 ダッ ブンッ

 キィンッ!

ギュンター「ふん、その程度でどうにかなると思われているとは、舐められたものだ! はああああっ‼‼‼‼‼」グオンッ!!!! ザシュッ

 ズビシャッ!!!! ドササッ

オロチ「……」スッ バサバサッ

ニュクス「そうはいかないわ」シュオンッ ボワワワワッ!

オロチ「!」サッ

ニュクス「逃がすつもりはないわ。これはさっきのお返しよ、喰らいなさい!」シュオンッ 
436 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 11:57:31.23 ID:gy5e0L7O0
 バシュンッ‼‼‼

オロチ「……」ググッ ササッ

ニュクス「……っ、あと少しなのに逃がしたわね」

ギュンター「なに、次に仕留めればよい、それよりも傷は大丈夫か?」

ニュクス「これくらいなんとも……っ!」ポタタッ

ギュンター「大丈夫というわけではなさそうだな……」

ニュクス「そうね。まともに攻撃を受けてしまったから、正直生きているのが不思議なくらいよ」

ギュンター「……そうか、すまなかった。戻って来るのが遅れてしまったようだ」

ニュクス「謝らないでいいわ。それにあなたが戻って来たということは。向こうの戦況も立ち直ったという事でしょう?」

ギュンター「カミラ様が敵を背後から強襲してくれたおかげでな」

ニュクス「そう、カミラ様たちにはもう少し早く来てほしかったわね。それで、これからどうするの?」

ギュンター「まずはカザハナと合流する。それでカザハナは……」

 タタタタッ

ニュクス「噂をすればというやつね」

ギュンター「む、そのようだ」
437 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 12:06:40.96 ID:gy5e0L7O0
カザハナ「ニュクス! 大丈夫……って、ギュンター戻ってきてたの?」

ギュンター「丁度いいところに来た、ニュクスの治療を頼む」

カザハナ「治療って……。っ、ニュクス、大丈夫!?」

ニュクス「見ての通りだから、早く治療して頂戴。っ、大丈夫、治れば戦えるくらいの傷よ」

カザハナ「わ、わかった。それっ!」シャランッ!

ニュクス「んっ……。はぁ、少しはマシになったかしら?」

カザハナ「あと何回かやれば大丈夫なはずだから……」

ギュンター「残念だが、今その時間は無い。まずはマークス様と合流する」

カザハナ「え、なんで。まだ完全に治療出来てないんだよ?」

ギュンター「あの敵を前にして悠長に治療していられると思うか?」

カザハナ「え?」チラッ

謎の兵士群「……」ザッザッザッ

オロチ「……」

カザハナ「あー、無理だね。うん、早く移動しよ」

ギュンター「ああ。こちらを潰しに今更動いたようだ。さぁ、ニュクス」スッ

ニュクス「これは何かしら?」

ギュンター「乗れ、お前は私が運ぶ、さっさとしないか」

ニュクス「……もう少し優しい言い方をした方がいいと思うけど?」

ギュンター「お前の好きな小説のような物を出来る程、私は甘くは無いのでな」

ニュクス「そう、まぁいいわ、おねがいするわね」スタッ

カザハナ「え、あたしは徒歩なわけ!?」

ニュクス「ええ、悪いけどそうなるわ」

ギュンター「大丈夫だ、速度は出来る限り抑える。お前は私の後を追ってくれればそれでいい」

カザハナ「はぁ、わかったよ、頑張って走ればいいんでしょ!」

ギュンター「ああ。よし、いくぞ!」ヒヒーンッ

 パカラパカラッ
  タタタタタタッ
438 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 12:10:50.01 ID:gy5e0L7O0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

マークス「む、ギュンター!」

ギュンター「ただいま戻りました、マークス様。こちらは全員無事です」

マークス「そうか、それはよかった。負傷している者は今すぐに治療を済ませよ、敵の陣は側面から迫りつつあるが、それによって正面の厚みは薄まっている今がチャンスだろう。ここで一気に仕掛ける」

ギュンター「わかりました。ニュクス、ここでちゃんと治療をしてもらえ」

ニュクス「ええ、そうさせてもらうわ。っ、まだ痛むわね……」

エリーゼ「わ、ニュクス大丈夫!? すぐに治療してあげるからね、えーいっ!」

ニュクス「ありがとう、エリーゼ王女。ん?」

カザハナ「はぁはぁ、ニュクス……、あたしも……治療、すぐに、するから……」

ニュクス「ありがとう、でももうエリーゼ王女がしてくれたわ。それより、息を整えなさい」

カザハナ「だって、ギュンター、全然速度抑えてくれないんだもん。あたし、こんな全力疾走して……、もう、倒れそうなんだけど……」

ギュンター「倒れている暇はない。もう次が待っているのでな」

カザハナ「次って……何するわけ?」

マークス「よし、全員聞いてくれ。これよりここを突破し、玉座の前までわれわれは移動する。先頭は私とピエリ、中央をエリーゼ、カザハナ、そしてニュクス。ギュンターは最後尾を任せたい。行けるか?」

ギュンター「承知しました、マークス様」

ニュクス「大丈夫なの? 後方をギュンター一人に任せるなんて」

マークス「ああ、カミラたちがすでに動いてくれている。われわれは敵陣を突破し、そのまま正面に陣を築く、カミラ達にはギュンターの援護を頼んでいる。だが、敵陣の中枢での援護は見込めない、そこが正念場だろう」

ギュンター「わかっております。そこは私の腕次第という事でしょう」

マークス「よし。ピエリ、準備は出来ているか?」

ピエリ「うん、ピエリの準備は出来てるの!」

マークス「うむ、各員準備せよ!」シャキンッ!

ピエリ「なの!」シャキンッ!

マークス(ここを突破すれば、カムイの援護にカミラ達を向かわせることができるはずだ。そのためになんとしてでも、この壁越えてみせる!!!)

マークス「よし、進め!!!!」
 
 ドドドドドドドッ!
439 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/17(土) 12:11:15.33 ID:gy5e0L7O0
今日はここまで
440 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 22:30:06.53 ID:rZy6uWXC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座へと至る道』―

 パカラパカラッ

ピエリ「マークス様、ピエリが仕掛けるの!」

マークス「ああ。道を拓け!」

ピエリ「任せてなの! はっ! それっ!」ブンッ!

 ザシュシュッ

謎の兵士「……」ドササッ

カミラ「うふふっ、どうやら動き出したみたいね。ブノワ、スズカゼ準備はいいかしら?」

スズカゼ「はい。参りましょう」

ブノワ「後続の通過後の敵は俺が引き受ける……」

カミラ「ええ、お願いね。いくわよ、ライナロック!」シュオンッ!

 ズオオッ ドゴォォンッ!‼‼

マークス「よし、カミラ達も動き始めたようだ」

ピエリ「敵さん混乱してるの。どんどん進むチャンスなのよ」

マークス「よし、カザハナとエリーゼも攻撃を開始せよ、この機を逃すな!」

カザハナ「わかったよ。エリーゼ様、準備はいい?」チャキッ

エリーゼ「うん、大丈夫! 敵をギタギタにしてやるんだから! えいっ!」シュオオンッ バチィンッ!

 ドササッ

エリーゼ「先頭が崩れたよ!」

マークス「よし、これより敵陣を突破する。分断されぬよう細心の注意を払え!」

一同『はい!』

マークス「いくぞ!」
441 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 22:34:57.44 ID:rZy6uWXC0
カミラ「先頭が見えたわ、ピエリとマークスお兄様みたい」

スズカゼ「どうやらこちらを目指してくれているようです。このまま行けば、もう少しで合流できるでしょう」

カミラ「ええ、でも、合流できるまで手を抜かないようにね」

スズカゼ「わかりました。そこです!」カランコロン バシュシュ!

謎の兵士「……」ドササッ

カミラ「こっちよ、マークスお兄様!」

マークス「カミラか! ピエリ、このまま突っ切る!」

ピエリ「わかったの! みんな邪魔しないでなの!」チャキッ ズドドドドッ

 ザシュ ドサッ

 パカラパカラッ

マークス(よし!!!)

ピエリ「えへへ、ピエリ頑張ったの!」

マークス「よくやったぞ、ピエリ。後方、足を止めずに続け!」

カザハナ「やった、出口だ!」

エリーゼ「どうにか抜けられてよかったよ」

マークス「よし、われわれはこのまま玉座入り口に陣を張る。カミラ、後続のギュンター達の援護を頼む」

カミラ「任せて、お兄様」バサバサッ
442 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 22:41:05.62 ID:rZy6uWXC0
スズカゼ「カミラ様、お二人が敵の陣を突破されます。ですが、敵の動きが思いの他、早いようです」

カミラ「そう、それじゃスズカゼは私と一緒にギュンターとニュクスを援護してちょうだい。ブノワは敵の注意を引いてくれると助かるのだけど……」

ブノワ「わかった…。なんとかしよう…」ガシャンガシャンッ

 タタタタタタッ
  パカラパカラッ

ニュクス「やっと、抜けられた……」

ギュンター「だが、まだ終わりではないぞ。マークス様と合流しなくてはならん」

ニュクス「まだ走らせるつもりなのね……。はぁ……はぁ……」

ギュンター「ふっ、鍛錬が足りない証拠だな」

ニュクス「うるさいわね……」

ギュンター「しかし、これでは敵に尾を掴まれるな……。しかたない、ニュクス」

ニュクス「なによ、頑張って走って――」

 ガシッ

ニュクス「へ?」チョコンッ

ギュンター「振り落とされぬようにな。行くぞ!」パカラパカラッ

ニュクス「ギュ、ギュンター? 一人で走れるから、その……下ろしてくれる?」

ギュンター「駄目だ、お前の足では敵に追いつかれるのが目に見えている」

ニュクス「……」
443 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 22:45:30.04 ID:rZy6uWXC0
ニュクス「た、確かにそうかもしれない。でも、試してみないことには――」

 タタタタタッ チャキンッ

ギュンター「試す暇などはなかったようだな」

ニュクス「……」

 チャキッ キリリリッ!
  パシュッ パシュンッ!

ギュンター「む、こちらを狙ってきたようだ。しっかりと捉っておけ」

ニュクス「だから……。もういいわ、勝手にしなさい」ガシッ

ギュンター「ああ、そうさせてもらう。はああっ!」ガシッ

 ヒヒーンッ
  パカラパカラッ

ブノワ「す、すごい…」

スズカゼ「荒々しい動きです。私でもあれを正確に捉えることはできません」

カミラ「ふふっ、ギュンターの馬術の腕は中々のものなの。かつてお父様から厚く信頼されていたほどなのよ?」

スズカゼ「なるほど、納得です。では、私たちも援護にむかいましょう」カランコロンッ

カミラ「そうね」チャキッ

ブノワ「……! 敵が数人、俺に気づいたみたいだ……」

カミラ「わかったわ。少しの間、耐えておいて、すぐに戻るわ」バサバサッ

ブノワ「ああ……」

ブノワ(できれば、早めに頼む…)

 ヒュンッ キィンッ
  ゴンッ カキィンッ

ブノワ「こ、怖い……」
444 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 22:54:16.16 ID:rZy6uWXC0
ニュクス「思ったよりもしつこい奴らね……」

ギュンター「そうだな……む?」

 バサバサッ

カミラ「ギュンター、待たせてごめんなさい、今から援護するわ」

ギュンター「カミラ様、よろしく頼みますぞ」

カミラ「ええ、それっ!」シュオンッ ドゴンドゴンッ!

謎の兵士「……」サッ! チャキッ ダッ!

スズカゼ「おっと、カミラ王女ばかりに気を配っていては駄目ですよ。はっ!」バシュシュッ!

 ザシュシュッ
  ドササッ

ギュンター「ふぅ、ありがとうございますカミラ様」

カミラ「いいの。ふふっ、ニュクスも大丈夫そうで何よりね。」

ニュクス「ええ、色々とあって正直疲れているけれど、何とか平気よ」

ギュンター「ふっ、疲れたか。まだ終わったわけではないぞ」

ニュクス「わかっているわ、さっさとマークス王子たちと合流しましょう」

ギュンター「うむ、カミラ様」

カミラ「ええ、マークスお兄様の下に向かってちょうだい、私もすぐに向かうわ」

ギュンター「わかりました」

ニュクス「それじゃ、私も降りて――」

ギュンター「降りるのは合流してからだ」

ニュクス「……わかったわよ、それでいいから早く合流しに向かって、ここから私を開放して」

ギュンター「そうするとしよう。はっ!」ヒヒーンッ

 パカラパカラッ
445 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 22:58:39.54 ID:rZy6uWXC0
スズカゼ「どうにか全員、無事に突破できたようですね」

カミラ「あとはブノワを連れて戻るだけね」バサバサッ ダッ

スズカゼ「はい、すぐに戻りましょう」

カミラ「ええ」バサバサッ



ブノワ「はあっ! でいいいっ!」チャキッ ブンブンッ!

謎の兵士「……」サッ ササッ チャキッ ブンッ

ブノワ「っ!!!」グッ

 ガキィンッ!

ブノワ「ぐっ、武器は抑えた、これでどうだ…!」

 ガシャンッ ドゴンッ‼‼‼‼
 ドサッ ドササーッ

ブノワ「はぁ……はぁ……ぐっ……」ガシャンガシャンッ チャキッ

謎の兵士たち「……」 ザザッ

ブノワ「こ、この数は難しいか……ん?」

 バサバサッ

カミラ「見つけた。ブノワ、思いっきり掴まりなさい!」

ブノワ「カミラ様、掴まるって、一体何に……?」

カミラ「降りてあなたを乗せている暇はないわ。このまま下降するから、この子の足に掴まりなさい」

ブノワ「だ、大丈夫なのか。俺が捕まった衝撃で落ちたりしないか?」

カミラ「大丈夫よ。言ったはずよ、そんな軟な子たちじゃないって、それを信じて掴まりなさい、ブノワ」

ブノワ「わ、わかった……」
446 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 23:00:30.02 ID:rZy6uWXC0
 バサバサッ バササッ

カミラ「いい子ね。チャンスは一度きりよ」

ブノワ「ああ……」

カミラ「……行くわよ」 バサバサッ

 バサバサッ

ブノワ「……」

カミラ「……今よ!」

ブノワ「!!!」ガシャンガシャンッ ダッ!

 ガシッ!

 ギャウウウッ!‼‼
  バサバサバサッ

カミラ「落ち着いて、大丈夫よ。だってあなたは出来る子なんだから」ナデナデ

謎の兵士「……」ダッ

スズカゼ「そうはさせません。はっ!」カランコロンッ バシュシュッ!‼‼

 ザシュンッ ドササッ

カミラ「よし、このまま反転してお兄様たちと合流するわ。背に乗ってるときより動きが激しくなるけど、ちゃんとしがみ付いていなさい」バサササッ

ブノワ「ぐっ、ぬおおおっ!」

スズカゼ「どうやら無事にブノワさんを連れてこられているようですね。私も下がるとしましょう」カランコロンッ

 ギャウウウッ ギャウウウッ!

ブノワ「……俺が重いばかりに、すまない……」

 ギャウウウッ! ギャウウウウッ!

ブノワ「ううっ、本当にすまない……」
447 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 23:03:09.99 ID:rZy6uWXC0
エリーゼ「あ、カミラおねえちゃんたちが来るよ!」

マークス「よし、カミラ達が通過したら攻撃を開始しろ。ここが最後の布陣だ、敵を一人たりとも向かわせるな!」

ピエリ「わかったの! ここは絶対死守するのよ」

 バサバサッ

ギュンター「あと少しだ。ニュクス、準備は出来ているのだろうな?」

ニュクス「ええ」

カザハナ「だけど、さっきまであんなに怪我してたじゃん、本当に大丈夫なの?」

ニュクス「私を甘く見ないでちょうだい。もう傷は塞がっているわ」

カザハナ「だって、ギュンターの馬に乗せられてきたし」

ニュクス「あれはギュンターが勝手にやっただけの事、私が頼んじゃわけじゃない。そこを勘違いしないでもらいたいわね」

カザハナ「そっか、まぁいいけど。じゃあ、何とかしてあの敵全員止めなくちゃね。この先にはサクラもレオン王子もいるんだから」チャキッ

ギュンター「カムイ様の下に行かせはせん」

ニュクス「……」シュオンッ

  ドドドドドドドドッ

 バサバサバサッ!‼‼

マークス「今だ!」

エリーゼ「ライナロック!!!!」シュオンッ

ニュクス「ミョルニル!!!」シュオンッ!

 ドゴゴンッ!

マークス「よし、敵の足が止まった。一気に掛かれ!」

ピエリ「わかったの!」

カミラ「マークスお兄様」

マークス「カミラ、このままカムイの援護に向かってくれ、われわれは奴らの相手をする。大丈夫だ、すぐに片づけて合流する。その間、カムイ達を頼んだぞ」チャキッ

カミラ「ええ、任せてちょうだい」バサバサッ

マークス「……さぁ、もはや退路は無い。われわれ暗夜の力、とくと味わえ!」チャキッ

 シュオンッ

マークス「いくぞ!」ダッ

 キィン!
  カキィンッ!
448 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 23:05:23.62 ID:rZy6uWXC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城『王の間・玉座前』―

 ザシュッ

カムイ「……あ」

 ポタッ ポタタタッ……

カムイ「……ヒノカさん……」

ヒノカ「……ふふ」

 ザシュンッ

 ポタタッ ポタタタッ……

ヒノカ「馬鹿な奴だ、お前は」ググッ

 ビチャッ

カムイ「あぐっ……」

ヒノカ「言っただろう、私はお前を殺すと、それなのにお前は本当に愚かな者だ……」

ヒノカ「……望んでもいないのに私を助けようとする。その結果が、こうなのだから……」

 ポタタタッ
  ポタタタタッ

「お前は本当に愚か者だ、カムイ……」
449 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/11/24(土) 23:06:00.41 ID:rZy6uWXC0
今日はここまで
450 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 20:20:35.96 ID:1N62poXM0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―
〜カミラ達と別れた直後〜

カムイ「甘く見ているつもりはありませんよ、ヒノカさん」

金鵄ヒノカ「そうか、甘く見ていないか。スサノオ長城の時のように、私に狙いを絞って攻勢に出たというところだろうが。この状況で意味があるとは思えないな」

カムイ「いいえ、意味はあります。こうして、あなたに手が届く場所にいることだけで十分なのですから」

金鵄ヒノカ「手が届く? 届いたところで何ができる? お前に私の苦しみが理解できるわけがない。私はお前の言葉に従いなどしない。言っただろう、お前は私の敵だと」

カムイ「……敵だとしても、私はあなたを助け出します。そのために、こうしてここにいるんです。だって、あなたの思いはまだ死んでいないから」

金鵄ヒノカ「ああ、死んでなどいないし、死ぬものでもない。奪われ続けてきたこの恨みがそう簡単に晴れるとでも? 目の前で多くを奪われ、見捨てなければならなかった。その苦悩がお前にわかるわけがない。白夜の人間でもないお前に……理解できるはずがない。私のカムイは、待っていても帰っては来ないからな」

カムイ「……そうでしょうね。私はあなたが望む者ではないのですから」

アクア「カムイ……」

金鵄ヒノカ「ははっ、あははははっ。そうだろう、そうだろうさ。そう言ってくれるならそれでいい。開き直ってくれる方がこちらの気兼ねなく相手をできるからな」

 ピチャン ピチャンッ……

 シュオオオンッ

謎の兵士たち『……』チャキッ

金鵄ヒノカ「お前を殺して、私のカムイに戻ってきてもらう。偽物のお前に居場所など与える物か……」チャキッ
451 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 20:26:57.53 ID:1N62poXM0
カムイ「……ヒノカさん」

金鵄ヒノカ「アサマ、セツナ。そっちの腑抜けの傍にいろ」

アサマ「……」サッ

セツナ「……」サッ

天馬ヒノカ「………」

サクラ「カムイ姉様、奥にもう一人のヒノカ姉様がいます」

レオン「恐らくあれが本当のヒノカ王女だろうね。これだけ分かりやすく守ってくれるなら見分ける必要が無くて助かるよ。もっとも――」

ハロルド「その分、防御の壁は厚いようですな。これは、ふむ、どうしたものか……」

 ザザザザッ

謎の兵士たち『……』チャキッ!

アクア「かなりの大所帯と言ったところね」

カムイ「はい。それでも何とかしなくてはいけません。ヒノカさんのためにも……」

アクア「ええ」

金鵄ヒノカ「一人も生かさなくていい、いけ」

謎の兵士たち『……』ダダダダダッ

452 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 20:34:34.29 ID:1N62poXM0
カムイ「陣形を組みます、分断されない様に細心の注意を払ってください」

アクア「わかったわ」

ハロルド「お任せくださいカムイ様。レオン様、サクラ様は私より後ろへ、大丈夫です、このハロルドにお任せを」

サクラ「はい、でも傷を負ったらすぐに治療しますから、遠慮しないで言ってくださいね」

レオン「向かってくる敵は出来る限り僕らで何とかする、それを抜けてきた奴らの処理は任せたよ」

アクア「ええ、任せておいて。一撃で倒せば何の問題もないでしょう?」チャキッ

サクラ「え、えっと、アクア姉様も下がられた方が……」

アクア「心配いらないわ。それにここまで来たら下がるわけにもいかないでしょう?」

サクラ「で、でも……」

アクア「大丈夫よ、サクラ。相手より先に仕掛けて倒せばいいだけ。心配しないでいいわ」

ハロルド「さすがはアクア様です。しかし、男手としては何とも複雑な心境になってしまうといいますか……」

レオン「そうだね、これが一番いい陣形だとはわかっているんだけどさ……」

アクア「ありがとう、でも今はそんなことを言っている場合じゃないわ。何としても……」

カムイ「はい、ヒノカさんを助け出さなくてはいけませんから……」

カムイ(カミラ姉さんが戻ってくるまで何とか持たせないといけません。でも、もしもチャンスがあるのなら…)チラッ

天馬ヒノカ「……」

カムイ(一気に敵陣を突破して、ヒノカさんを白夜の玉座に座らせることができるかもしれない。その隙がもし生まれたのなら、その時は……)チャキッ
453 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 20:43:16.78 ID:1N62poXM0
謎の剣聖A「……」タタタタタッ

アクア「あなたの相手は私よ。はっ、せいっ!」ザンザンッ

 ザシュシュッ ドササッ

謎の鍛冶A「……」タタタタッ ダッ

カムイ「そうはいきません。はっ!」ダッ チャキッ ガキィンッ!

 ジジジッ ドゴンッ

謎の鍛冶A「……」ズザザーッ チャキッ

カムイ(武器を投げるつもりですか、なら――)チャキッ

レオン「姉さん、そいつは僕に任せて。ブリュンヒルデ!」シュオオンッ

 ゴオオッ ザシュシュッ! ドサリッ

カムイ「ありがとうございます、レオンさん」

レオン「お礼は後にして、サクラ王女。敵の様子は?」

サクラ「レオンさん、左翼から敵が来ます」

レオン「わかった。サクラ王女、一緒に援護してほしい。僕らが撃ち損ねた奴らは姉さんたちに任せるからね」

カムイ「ええ、わかっています。ハロルドさん、敵が来ますよ」

ハロルド「お任せくださいカムイ様。さぁ、私が相手だ!」ダッ

 タタタタタッ

サクラ「敵来ました!」

レオン「よし、攻撃開始!」シュオンッ 

サクラ「当ってください!」キリリリッ パシュンッ!
454 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 20:49:05.30 ID:1N62poXM0
 ザシュシュッ ドゴンッ!
 タタタタッ タタタタッ

レオン「ちっ、三人仕留めそこなったか」

カムイ「それだけでも十分です。迎え撃ちますよ、ハロルドさん」

ハロルド「うむ、行くぞ悪党ども!」ダッ

謎の槍聖B「……」チャキッ シュパパッ

ハロルド「ぬおっ!」チャキッ
 
 ガキキィンッ!

ハロルド「ふぅ、どうにかなったか。ではこちらの番だ。喰らえ、正義アタッーク!」ブンッ!

 ドゴンッ! ドササー!

カムイ「こちらも行きますよ。やっ、それっ!」チャキッ ブンブンッ

 キィンキィン!

謎の剣聖C「……」チャキッ シュキンッ

カムイ「おっと、そこです!!!」グッ ダッ

 ザシュシュッ ドサッ

カムイ「あと一人!」

 キィンキィンッ

謎の槍聖A「……」シュッ シュシュッ

 ササッ サササッ

アクア「そこね。さぁ、あなたの声を聞かせてちょうだい」タタタタッ ダッ

アクア「はああああっ!」グルンッ ブンッ

 バシュッ ドササッ!

アクア「ふぅ、こっちも片づけたわ」

カムイ「わかりました。徐々に距離を詰めていきましょう。カミラ姉さんたちが戻って来るまでに、出来る限り前進します」

一同『はい!』

455 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 20:53:01.44 ID:1N62poXM0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇

金鵄ヒノカ「……さすがにそう簡単に死ぬわけもないか……。まぁ、当然と言えば当然か。そうでないと殺し甲斐が無い」

金鵄ヒノカ(そうだ、カムイの代わりに生きてきたお前が、そんな簡単に死んでいいわけがない……。もっと苦しんで苦しみ抜いてから死んでもらわないと割に合わない。未だに私から奪い続けようとするお前が、奪われることなくて死んでいくなど……)

金鵄ヒノカ「許されるわけがないだろう……」チラッ

天馬ヒノカ「……イ」

金鵄ヒノカ「ああ、そうだ……。その手があったな、あいつはまだそれを信じているのなら……」

金鵄ヒノカ(信じさせてやればいい、私にはもうわかっていることを、あいつは何もわかっていないのだから、それを今ここで分からせてやるのが一番だ……)

天馬カムイ「……」

金鵄ヒノカ「アサマ、セツナ。予定を変更する、私と共に来い。ここで待っていても、もう意味は無いからな……」

アサマ「……」タッ

セツナ「……」タタッ

金鵄ヒノカ「……」

天馬カムイ「……」

金鵄ヒノカ「ふふっ、行くぞ」バサバサッ

金鵄ヒノカ「……」
456 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:09:11.41 ID:1N62poXM0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆

レオン「カムイ姉さん、奥にいたヒノカ王女の護衛がいなくなっているみたいだ」

カムイ「え?」

アクア「どうやら、こちらに向かっているみたい。こちらをこのまま押し潰すつもりかもしれないわね」

レオン「この戦力差ならそれもありかもしれない。だけど、その分後方はがら空きになるだろうから、そこが弱点にもなりえるよ」

ハロルド「なるほど一気に突破し、ヒノカ王女を確保できれば良いということだね」

サクラ「ですが、敵陣を抜けてしまった人を援護することはできません。もしも、敵に包囲されてしまったら」

カムイ「だとしても、私はわずかな可能性に賭けたいんです。ヒノカさんはまだ、完全に飲み込まれていないはずだと……」

カムイ(だから、ヒノカさんは私に止めてくれと言ったのかもしれない……。動かないそのうちに止めを刺してほしいと……)

カムイ(でも、それを私は認めません。あなたの命を奪ってこの戦いを終わらせるなんて答えを、私は認めません……)

カムイ「……」

アクア「カムイ、大丈夫?」

カムイ「大丈夫です、アクアさん」

レオン「それで、どうするんだい、姉さん。この攻勢なら耐えられないわけじゃないから、カミラ姉さんが戻ってくるまで持たせることはできると思うけど」

カムイ「……おそらくそうするのが一番だとは思います。でも、僅かでもチャンスがあるのなら、私はそれに賭けたいとも考えているんです」

アクア「カムイ……」
457 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:14:45.43 ID:1N62poXM0
レオン「まったく、姉さんは本当に無茶ばっかり言うよ」

カムイ「すみません」

レオン「まぁ、カムイ姉さんが無茶をするのは今に始まったことじゃないけどさ。となると、一気に畳みかけて突破するしかないかな。次の敵陣は迎撃するとして、次は敵の動きを待たずこちらから仕掛けるっていう形にもっていくしかないかな。さすがに護衛も無しに一人だけで敵陣最奥に踏み込むのは自殺行為だから、誰か護衛を付けてくれればそれでいいよ」

カムイ「レオンさん、いいんですか?」

レオン「ああ。僕はカムイ姉さんを支えるって決めたんだ、だから気にしないで。それに出来るなら僕だってヒノカ王女を救いたい。長く続いてきた国同士の戦争は終わっている。これ以上の血が流れる必要なんてない」

カムイ「ありがとうございます」

レオン「よし、サクラ王女」

サクラ「はい、レオンさん」チャキッ

レオン「まずはやってくる敵を迎撃する。もう、敵はそこまで来てるみたいだからね」

サクラ「わかりました。左の敵は任せてください」

レオン「わかった、それじゃ僕は右をやる。いくよ!」シュオンッ!

サクラ「はい!」チャキッ パシュシュッ!

 ドススッ
  ドゴンッ ドゴゴンッ!

謎の兵士たち「……」ピタッ
458 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:19:54.47 ID:1N62poXM0
サクラ(敵の動きが止まりました!)

レオン(よし! 敵後続も硬直してるし、側面が丸出しの隊列もある。狙うならあそこだ!)

レオン「姉さん、あそこの敵陣を攻撃する。崩れた隙を突いて一気に抜けるんだ」

カムイ「わかりました。アクアさん、一緒に来てくれますか?」

アクア「ええ、ちゃんとサポートするわ」ダッ

謎の兵士たち「……」ダッダッ

ハロルド「む、動きを止めた奴らが動こうとしているぞ」

レオン「ハロルド、敵の先頭が動き回らない様に邪魔をしてくれ。その間に、僕とサクラ王女で姉さんたちを援護する

ハロルド「ああ、任せたまえ! ほら、この私が相手だ!」ダダッ!

謎の兵士たち「……」チャキッ

ハロルド「はっ、せいやああっ!」ブンブンッ

レオン(よし、ハロルドに敵の興味が集中している。これなら!)

レオン「サクラ王女、準備を!」

サクラ「いつでもだいじょうぶです!」

レオン「よし、敵の戦列に穴をあけるよ。喰らえ、ライナロック!」シュオンッ

サクラ「行きます!!!」チャキッ キリリリリッ バシュンッ!

 ヒュオオオッ ドゴンッ ザシュシュッ!
  ドサササッ

レオン(敵の戦列が抜けた! これなら――)
459 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:27:22.11 ID:1N62poXM0
カムイ「そこ、抜けさせていただきます!」タタタタタッ

アクア「カムイ、左から敵よ!」

カムイ「!」

謎の鍛冶B「……」ブンッ

カムイ「悪いですが、あなたたちに構っている時間はありません。アクアさん、一気に駆け抜けましょう」キィンッ ドゴンッ

アクア「ええ、はあっ!」タッ ブンッ

 ザシュッ ドサリッ

カムイ(このまま――!!)

 パシュシュッ!
  トススッ……

金鵄ヒノカ『カムイ……』チャキッ パシュンッ!

カムイ「あなたに用はありません、こちらの動きにもう少し早く気づけばよかったですね。ここは抜けさせてもらいます!」キィン!

アクア「カムイ、早く!」

金鵄ヒノカ『……』チャキッ キリリリッ

レオン「それはさせない!」シュオンッ バシュン

レオン(当たらなくてもいい、威嚇さえできればそれで十分だ。攻撃意識を逸らせればそれで十分だ)

金鵄ヒノカ「!」バサバサッ サッ

レオン「そう何度もやらせるつもりはないからね。サクラ、姉さんたちは?」

サクラ「はい、姉様たちは敵陣を突破出来たみたいです!」

レオン「よし、このまま継続して攻撃する。敵陣の再構築を妨害するんだ」

サクラ「は、はい! ……あ、あれ?」

レオン「どうしたんだいサクラ王女?」

サクラ「さっきまで崩壊していた敵陣の隙間が……。見当たらないんです」

レオン「え!?」
460 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:31:55.34 ID:1N62poXM0
レオン(そんな馬鹿な。あれほど執拗に魔法で攻撃を続けたんだ。それに先ほどの場所に敵は多くいなかったはず、すぐに構築できるはずが――)

 タッ
  タタッ

謎の兵士たち「……」チャキッ!

ハロルド「む!? これは一体何が起きている!?」

サクラ「敵の戦列が、道を完全に塞いでます。さっきとは比べ物にならないくらいの厚さです……。こんなの崩せません……」

レオン「まさか、嵌められたのか僕たちは……」

金鵄ヒノカ『そういうことだ』バサバサッ ドスンッ

 ザッ ザザッ

アサマ「……」

セツナ「……」

サクラ「アサマさんにセツナさん……それに」

レオン「ヒノカ王女……」

金鵄ヒノカ『ふふっ、まんまと引っかかったのか。あんなにも分かりやすくしていたのだから、少しは警戒すると思っていたのにな。結局、あいつはわずかな希望しか目に無かったという事だろう』バサバサッ ドスンッ

サクラ「ヒノカ姉様……」
461 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:34:00.84 ID:1N62poXM0
金鵄ヒノカ『ふふっ、お前たちの信じるカムイはどうしてこんなにも愚かなことを続けられるのだろうな?』

サクラ「ヒノカ姉様、カムイ姉様はあなたを助けるためにここまで来たんです。それをどうして……」

金鵄ヒノカ『助ける。助けるだと? ならなぜ、あの場所で私たちの手を取ってくれなかった? どうして私を置いて行った? あそこで、カムイが選んでくれたのなら、それだけで十分だったというのにな……』

サクラ「それは……」

金鵄ヒノカ『ふふっ、サクラ、私はお前が羨ましかった。何も考えず、ただ信じるカムイの下に向かったお前がとても羨ましかったよ。私もそうできたら良かったのかとも思った。でも、そんなものは所詮ごまかしだ。もう、知っていたんだ私たちにとっての家族だったカムイはもういない。いるのはただカムイの皮を被っただけの他人で、もう守る価値もないものだということを』

サクラ「そんなことありません。カムイ姉様は私たちの家族じゃないですか。ヒノカ姉様だって、カムイ姉様が帰ってきてくれた時、とてもうれしそうにしていたじゃないですか……」

金鵄ヒノカ『ああ、うれしかったよ。あの日、カムイが戻ってきてくれた日はとてもうれしかった、これですべて元通りになると思った。だけど、それは間違いだった。あいつは私の手を払い続けた。その先もずっと払い続け、今になって手を伸ばして来た。今さら手を取るなら、どうしてもっと早く取ってくれなかった?』

サクラ「ヒノカ姉様……」

金鵄ヒノカ『そして、あいつは私の守るものを否定した。そんな手をどうして取ることができる? 私の守るべきものを奪う相手など、殺す以外にほかないだろう?』

レオン「なら、こんな風に話をしている暇はないと思うけどね。この状況はお前の方が不利だ。なにせ――」

金鵄ヒノカ『もう一人の私のことだろう? 安心していい、お前の懸念に意味などない。むしろそれに気づいた時、お前たちがどれだけ慌てるのか。それが楽しみでしょうが無いよ』

レオン「え?」

金鵄ヒノカ『あいつも理解するさ。私の守るべきものを否定してまで信じた希望は、結局あいつだけの淀んだ幻に過ぎないということを……』
462 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:35:40.47 ID:1N62poXM0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カムイ「はぁはぁ……アクアさん、敵の追手は!?」

 タタタタタッ

アクア「大丈夫、いないみたい。レオン達がうまく引きつけてくれているのかもしれない」

カムイ「なら、この機を逃すわけにはいきません」

カムイ(カミラ姉さんたちがもう少しで到着してくれるなら、レオンさん達も大丈夫なはず。後続がこちらに追いつく前に、私はヒノカさんを!)

アクア「……! カムイ、あそこよ!」

カムイ「!」

天馬ヒノカ「………」

カムイ(他の気配は何処にもありません。レオンさん達が耐えきれなくなる前に、ヒノカさんを玉座に座らせることが出来るかもしれない……)

アクア「カムイ、わかっているかもしれないけれど。もしも……」

カムイ「アクアさん、今は悪い方に考えるのをやめましょう。ここまで来たんです、もう、するべきことは一つしかありませんから」

アクア「……そうね、ごめんなさい」

カムイ「いいえ。本当はそういったことを考えた方がいいとは思います。でも……」

カムイ(それを思ってしまったら、私の目指している場所が見えなくなってしまいそうで……)

カムイ「……」

アクア「カムイ……」
463 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:37:55.11 ID:1N62poXM0
天馬ヒノカ「…カ…ムイ、なのか?」

カムイ「ヒノカさん!」

天馬ヒノカ「……ああ、カムイ……」

カムイ「大丈夫です、今行きますからね」

アクア「どうやら意識はあるみたいだから、このまま玉座まで――」

 ピチャンッ ズオオッ!

謎の兵士「……」ダッ!

アクア「カムイ!」ダッ チャキッ

 カキィンッ!

カムイ「アクアさん! っ!」チャキッ

アクア「私の事は気にしないで、早くヒノカを!」

カムイ「ですが……」

アクア「早くして、手遅れになる前に行って!」

カムイ「アクアさん……。わかりました、ここはお願いします」タタタッ

アクア「ええ、任せてちょうだい。はああっ」グッ ドゴンッ

謎の兵士「……」ザザッ ザザザッ

アクア「さぁ、何処からでも来るといいわ」

謎の兵士「……」

アクア「ならこちらから――」

謎の兵士「……」シュオンッ ビチャアアアァ……

アクア「き、消えた?」

アクア(どういうこと? これじゃ私を足止めするのが狙いだったとしか思えない……)

アクア「まさか!!!!」ダッ
464 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:40:40.49 ID:1N62poXM0
カムイ「はぁ……はぁ……」タタタタタッ

 タッ

カムイ「はぁ……はぁ……はぁ……。ヒノカさん……」

天馬ヒノカ「……」

カムイ「あなたを助けに来ました。もう、大丈夫ですよ」スッ

天馬ヒノカ「……カムイ」

カムイ「はい、ここにいます、だから安心してください」

天馬ヒノカ「……カムイ」

カムイ「なんですか、ヒノカさん?」

天馬ヒノカ「ふふっ……」チャキッ

 ザシュンッ
  ポタッ ポタタタタタッ

カムイ「……あ」

 ポタタタタッ

カムイ「……ヒノカさん……」

ヒノカ「……ふふ」

 ザシュンッ

 ポタタッ ポタタタッ……

ヒノカ「馬鹿な奴だ、お前は」ググッ

 ビチャッ

カムイ「あぐっ……」

ヒノカ「言っただろう、私はお前を殺すと、それなのにお前は本当に愚かな者だ……」

ヒノカ「……望んでもいないのに私を助けようとする。その結果が、こうなのだから……」

 ポタタタッ
  ポタタタタッ

ヒノカ「お前は本当に愚か者だ、カムイ……」

カムイ「ヒノカさん、あなたは……ううっ……」

ヒノカ「ふふっ、その顔だ。その顔が見たかったんだ――」

「その希望が潰えていく、惨めで悲惨な顔が…な」
465 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/02(日) 21:42:22.76 ID:1N62poXM0
今日はここまで
466 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/06(木) 21:59:00.35 ID:CHGiRCD40
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―

 ポタッ ポタタタッ

カムイ「……う、ううっ。ヒノカさん……」

ヒノカ(そうだ、私はお前のそういう姿が見たかったんだ。その、信じたくないという顔、認めたくないという顔、すべてが砕けてしまいそうなのにそれを押し潰して耐えようとしているその姿、滑稽だ……)

 タッ タッ

ヒノカ(幾度となく終わりの見えてこない地獄の中で耐え続けて、結局私はすべてを失ったというのに。お前は、まだそれをあきらめないでいる。私にはそれが分かる、なぜなら私はお前の姿の意味を知っているからだ。奪われることがどれだけの苦痛なのかを知っている、奪われない様に願う愚かさも知っている。そして、奪われた後に残るものも知っている)

ヒノカ(怒りと憎しみだけだ。結局、悲しみや嘆きはこの鞘に収まる。どんなに綺麗な理由であろうとも、結局それをぶつける相手は何処にでもいるのだ)

ヒノカ(例えば、目の前にいる。奪われた妹の皮を被った偽りの人間であったり、その仲間であったり、そして私の守るべきものを穢す愚か者であったり……)

ヒノカ(結局はそうだ。もう、カムイは帰って来ない。だというのにカムイに固執したのは、私自身の過去への清算。今までの積み重ねに意味が無かったことを認めたくなかったからに過ぎない。私は……あの日……。もう理解していた)

ヒノカ(このカムイが、私の妹だった者ではないということを……)

ヒノカ(今思えばそうだろう。記憶を失い、光さえ失っていた。それの原因が暗夜であることは明らかだったのに、お前はそれを何でもないことのように感じていた。私たちの事を忘れていたこともそうだ。その時点で私の中にいる助けるべきカムイの姿は消え去っていたというのに……私は、時間の清算を優先してしまった)

ヒノカ「無意味な時間だった……」
467 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/06(木) 22:11:12.12 ID:CHGiRCD40
ヒノカ(そう、私は今を守ればよかったのだ。本当に私が守りたかったものを私は知らなかった。それの正体に気づいた時には、もうすべてが手遅れだった)

ヒノカ(あの日、シュヴァリエ公国からの撤退の折に、オロチとユウギリを失っておきながら、私はまだその正体を掴めていなかった。ようやく気づいたのは、お前に敗れた時だった)

ヒノカ(すべてが遅すぎた。すべては取り返しのつかない場所まで転げ落ちていたにも関わらず、私は今さらになって知った守るべきものを前に安心してしまった。もっと前に気づいておけばよかったのだと顧みるのはすべてが終わった後だ。私は……一人……残されてしまった)

ヒノカ(守るべきものが無くなってしまったこの世界に一人……。ただ、こうして生きていくことが我慢できなかった)

ヒノカ(アサマもセツナも死んだ。オロチもユウギリも死んだ。他にも大勢の兵が……私のために命を落した。これが私の行ってきたこと、行ってきたすべてだ)

ヒノカ(だからこそ、私は彼らを手放したくない。もう、彼らを守るためだけに私は存在しているんだ。私が見ていなくてはいけない。皆……本当は……生きていたかったはずだ)

ヒノカ(すべてが偽りだったとしても、私は皆を手放したくない。皆と共に過ごしていきたい。皆、同じになればそれだけで戦いは終わる。私から奪う者はいなくなる。そして、みんな同じように絶望と失意の先に落ちる)

ヒノカ(私がみんなを一つにしてやればいい。だから、お前も同じにしてやる)

ヒノカ(お前のその希望を砕けば、それだけで十分だ。お前の希望は私だろう? なら、私はお前の希望を縫い潰してやるだけだ)

ヒノカ(私はお前を拒絶する。お前の希望通りになんて動くものか……。お前が見ることになるのは希望の光ではない、終わりの見えない汚泥そのものだ)

ヒノカ(多くの希望が没し、二度と拾い上げられることもない、底なしの汚泥。お前の希望はその中に沈む。私の希望と同じように報われない汚泥に引き摺りこんでやろう。私の最後の願いを拒むお前の希望は、今砕けたのだからな……)

ヒノカ「ははっ、あはははははっ」

カムイ「……」
468 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/06(木) 22:22:07.05 ID:CHGiRCD40
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座へと続く道』―

レオン「それはどういう意味だ!」

ヒノカ『わからないか? 貴様になら理解できると思ったのだが、な。私はあいつに助けられたくないといっただけだ。そして、それは私が思う唯一の真実だ。今さら助けられて何になる? なにも戻ってくるわけもない、失ったらそれまでなのは、貴様も分かっている事だろう?』

レオン「……」

ヒノカ『それが分かっているなら答えも自ずとわかってくるはずだ。失わないため、奪われないために出来ることは一つ。敵を殺すことだけだ。いずれ奪われるかもしれないのなら、すべてを殺してしまえばいい。そうすれば、もう奪われる心配などない』

レオン「それは詭弁だよ。どんな状況であろうとも、その不安が拭われることはない!」

ヒノカ『ああ、そうだろう。だから私はその度に殺すだけだ。そして今がその時というだけの事、守るべきものを奪おうという存在がいるのなら、そうする以外に他無いだけのことだ』

サクラ「奪われないために誰かにとって大切な物を奪っていいというのですか、ヒノカ姉様」

ヒノカ『ははっ、サクラは優しいままだな。その優しさがとても癇に障る。奪われる度にそれを耐え忍び続けるのがどれほどのことなのか』

サクラ「それは……」

ヒノカ「まさか、私の気持ちが理解できる……なんて言うつもりではないだろう? お前にはまだそれがある。失ってもいない、奪われてもいないのに、わかるなどと言うわけではないだろう?』

サクラ「……」

ヒノカ『そうだ、わかるわけがない。私の気持ちを理解できるなどと口にするなら、今すぐにでもサクラ、お前を殺していたよ』

サクラ「ヒノカ姉様……」
469 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/06(木) 22:27:42.39 ID:CHGiRCD40
レオン(取りつく島もない。そして、この攻撃もしてこない余裕の態度、それはおそらくこの先にいるヒノカ王女が自分の思った通りになっているという自信の表れだ。つまりそれは……)

ヒノカ『ふふっ、今気づいたところでもう遅い。私が今一番欲することを、私が一番理解している。カムイを同じ目に会せてやりたいと願ってやまないからこそ、私はここでお前たちを殺す』

レオン「僕たちを殺すのはいい。だが、姉さんを同じ目に会せるって一体……」

ヒノカ『そのままの意味だ。あいつは未だに信じて戦っている。私を助け出すという希望が奴にとっての光なら、その光を奪ってやりたくなる。私があいつの信じる私ではないことを知らしめてやればいい』

レオン「まさか……」

ヒノカ『ああ、そうだとも。私の事は私が一番分かっている。今、あいつはもっとも認めたくない事実を前にしているだろう。ふふっ、それを知った今、あいつはどんな顔をしているのか……』

ヒノカ『苦悶? 驚愕? それとも絶望か? 信じてきた分、そのために歩んできた分、すべてが重たく圧し掛かるだろう。結局、こうなるのならば、と思い返すかもしれないな。そう、あのスサノオ長城で命を奪っておくべきだったと。そうすれば、ちっぽけな希望など抱かずに済んだのにと……』

サクラ「そんなことありません!」

ヒノカ『?』

サクラ「ヒノカ姉様を助け出すことが、ちっぽけな希望なわけがありません」

ヒノカ『それはあいつにとってだろう?』

サクラ「いいえ。私にとってヒノカ姉様を救うことは、とても大きな希望です。カムイ姉様に同調しているわけじゃありません。私は、ヒノカ姉様を助けたいんです」

レオン「サクラ王女……」
470 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/06(木) 22:33:40.95 ID:CHGiRCD40
ヒノカ『助け出したいだと? どうしてそう思う必要がある。こうして敵対している私をどうして助けようなどと思うのだ?』

サクラ「人を助けるのに理由がいるのかなんて私にはわかりません。困っている人がいるなら手を差し伸べることに疑問を持つ必要はありません。それでもあなたが答えを望むなら、私は家族だからと答えます」

ヒノカ『家族だと?』

サクラ「はい、それ以上の理由なんてありません。難しい理由なんてなくてもいいんです。私はヒノカ姉様を救いたい、まだこれから先も一緒にいたい、ただそれだけが私がヒノカ姉様を助けたいと思う理由です。今のヒノカ姉様に私の答えがどう聞こえるかはわかりません。でも、大切な人と一緒にいたいと願うことの意味を、姉様は一番知っているはずです。今も、みんなと一緒にいたいと願う姉様ならわかるはずです。あなたは私にも大切な人なんです。だから……もうこんなこと止めてください」

レオン「サクラ王女……」

ヒノカ「……黙れ」

ヒノカ『黙れ、黙れ黙れ黙れ!!! サクラ、お前はいつも守られてきた。守られ続けてきたお前に私の気持ちが……、私の願いが分かってたまるものか!』チャキッ キリリリッ

レオン「サクラ王女!」ダッ

サクラ「レオンさん、だめ!」

ヒノカ『庇うというのなら、お前から殺してやろう。死ねぇ!!!』バシュンッ!

レオン「!!!」




 カキィンッ!

 カタンッ……



471 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/06(木) 22:40:03.98 ID:CHGiRCD40
ヒノカ『なに!?』

レオン「た、助かったのか?」

サクラ「そ、そうみたいですね。でも、なんで……」

???「本当よ。大人しく待っていてくれると思ったのに、こんなに暴れているなんて。少しカムイにもお仕置きしてあげないと」バサバサ

ヒノカ『貴様、暗夜の女狐!』

カミラ「ふふっ、言われたくないことをズバズバと言われて、その果ての行為も潰されて、立つ瀬がないわね、ヒノカ王女」

ヒノカ『ちっ……』チャキッ

スズカゼ「そうはさせません、ヒノカ様。はっ」カランコロンッ バシュシュッ!

 シュンッ! ヒュンッ

ヒノカ『!』ササッ

カミラ「上出来よ、流石はスズカゼね。レオンもサクラ王女のこと身を挺して守るなんて、ふふっ、いい男になったわね。サクラ王女も、まんざらでもないといったところかしら?」

サクラ「え、えっと、これは////」

レオン「当たり前のことをしただけだから。それより、今の状況だけど――」

カミラ「大丈夫、大方予想は付いているから安心しなさい。カムイは最奥にいるのね? わずかなチャンスを見逃さなかったという事でしょう?」

ヒノカ『ああ、それでこの様だ。お前が来たところで、もうあいつはどうにもならないだろうな。なにせ――』

カミラ「もう一人のあなたがカムイを攻撃したか、もしくは思いつく最悪の状態だからと言いたいのでしょう?」

ヒノカ『そうだ、きっとあいつはもう――』

カミラ「そう、それがあなたの思うカムイなのね。それじゃ、あなたはあの子のことを何も知らないと言ってもいいみたい」

ヒノカ『何が言いたい……』

カミラ「カムイはね、あなたが思っているほど弱くは無いわ。そして思ったよりも諦めが悪いの。わずかな可能性がそこにあるなら、あの子はどんなところにでも走って向かうわ。目が見えないからとかじゃない。あの子にはその危険を理解してでも、そこに希望があるなら向かい続ける力があるの」

ヒノカ『ふっ、その希望はもう砕けた。もう、あいつは――』

カミラ「それがあの子の事を何も知らないと言った理由よ。そこにあるのが絶望か希望かを決めるのはあなたでもないし私でもない、あの子自身が決める事よ。だけど、これはあの子をそれなりに知っているなら、簡単に答えを出せると思うわ」

ヒノカ『なに?』

カミラ「ふふっ……」
472 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/06(木) 22:48:00.34 ID:CHGiRCD40
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―王の間・玉座前―

カムイ「………」

ヒノカ「ははっ、あはははっ」

カムイ「……っ」ポタタタッ

 タタタタタタッ

アクア「カムイ! しっかりして、カムイ!」

カムイ「アクアさん……」

アクア「よかった。うん、傷はそれほど深くないみたいね」

カムイ「はい……。すみません、ちょっと立ち上がりたいので肩を貸していただけますか?」

アクア「ええ。だけど、ヒノカは……」

カムイ「……」

ヒノカ「ははっ、もうわかっただろう? 私はお前に何か救われたくない、そもそも救えるわけがない。私はお前のその顔が砕けていくのが見たいんだ。もう、手が届かないことがわかっただろう? その希望に意味など何もなかった。ただ、絶望するためにつなげてきたに過ぎないのさ」チャキッ

カムイ「……そうかもしれませんね。あなたに刺された時、頭の中が白くなりました。信じられないし、信じたくはありません……。でも、あなたはこうして私の敵として、もうそこにいるのは間違いないことなんですね……」

アクア「カムイ……」

ヒノカ「ああ、そうだ。それがわかっているのなら――」

カムイ「ですが、それで諦めるつもりはありませんよ」

ヒノカ「え?」

 チャキンッ 

カムイ「私はあなたの命を奪うためにここに来たわけではありません。あなたの中にあるその闇を、私は払うために来たんです。まだ、その中に残っているかもしれない。わずかな光を助け出すために……」チャキッ

ヒノカ「……なんでだ、なんでそんな、どうして……信じられる、そんなちっぽけな希望を……」

カムイ「ヒノカさん……。あなたにとって私の希望は、ちっぽけで簡単に砕ける物のように見えるかもしれません。でも、この希望は私に残された大切なものです。だから私はこの希望を捨てません」

「あなたを暗闇の中から助けすという、この希望を!」チャキンッ!
473 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/06(木) 22:48:47.40 ID:CHGiRCD40
今日はここまで

 あしたはスマブラの発売日ですね
474 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:08:51.37 ID:CKFWGx/G0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座に至る道』―

ヒノカ『!!!!』

ヒノカ(馬鹿な、どうして、どうしてお前は……)

カミラ「ふふっ、その様子だと、思ったようにはいかなかったみたいね? ヒノカ王女」

ヒノカ『っ!』チャキッ

レオン「カミラ姉さん、カムイ姉さんは……」

カミラ「レオン、そんな心配しちゃだめよ。あの子は強いの、そしてあの子の希望はまだ生きている。私たちがするべきことは、物理的にあの子を支えることよ」チャキッ

サクラ「カミラさん……」

カミラ「スズカゼ、ブノワ。この邪魔な壁を薙ぎ払うから力を貸してちょうだい」

ブノワ「ああ……」

スズカゼ「わかりました、カミラ王女」

カミラ「レオンたちも協力して頂戴」

レオン「わかったよ。姉さん、ハロルド。ブノワと一緒に攻撃を頼めるかい? 僕も前に出る」

ハロルド「任せてください。それで、この壁を払った後はどうします?」

カミラ「いいえ、すべて払うわけじゃないわ。あなた達にはこの壁を突破してもらってカムイの援護に回ってもらう。それまでは一緒に戦ってちょうだい」

サクラ「だったら敵を全て倒してからの方が……」

カミラ「いいえ、それは難しいわ。奴の思惑が崩れた以上、何もせずに待つなんてありえない。すぐにでもカムイとアクアに敵を差し向けるでしょうね」
475 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:12:30.81 ID:CKFWGx/G0
サクラ「そんな……」

カミラ「だからあなたたちに行ってもらうの。ここを通した後は任せなさい。大丈夫、背中は私たちが守ってあげるわ」

レオン「背中を守るって……」

カミラ「ふふ、いいから私たちに任せなさい。今はカムイの下に向かうのが先決よ」チャキッ

レオン「……よし、サクラ王女。サポートを頼む」

サクラ「は、はい!」チャキッ

ヒノカ『奴らを一人たりとも通すな!!!』

謎の兵士たち『……』ザッ

アサマ「……」チャキッ

セツナ「……」チャッ キリリリッ

ヒノカ『貴様らは下がって、奴を殺してこい』

謎の兵士たち「……」タタタタタッ

スズカゼ「む、敵が数名奥に向かったようです」

カミラ「相手も必死みたいね、こっちも仕掛けましょう? ブノワ、おねがい」

ブノワ「ああ、仕掛ける……。うおおおおっ!!!!」ガシャンガシャンッ

レオン「ハロルド、ブノワと一緒に敵に攻撃を仕掛けてくれるかい?」

ハロルド「分かりましたレオン様。ブノワくん共に行こう!」

ブノワ「ああ、きちんと陰に隠れていてくれ…」ガシャンガシャンッ

レオン「サクラ王女は敵の中に紛れている呪術師に対して攻撃を集中してくれ。僕は弓兵を叩く!」

サクラ「はい、レオンさん!」
476 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:16:40.19 ID:CKFWGx/G0
ブノワ「ハロルド、敵は向かってくるつもりはないようだ……。こちらから攻め入るしかない…」

ハロルド「ふむ、ならばこちらから接近戦に持ち込むとしよう」

ブノワ「わかった……。間接攻撃の対処は、レオン様達に任せるしかない……」

ハロルド「大丈夫だ。レオン様やサクラ様を信じて、私たちは敵に近づくことに専念しようではないか!」

ブノワ「そうだな…。よし、行くぞ……」ガシャンガシャンッ

セツナ「……」スッ

謎の弓聖たち「……」チャキキッ キリリッ

レオン「させないよ、ブリュンヒルデ!」シュオンッ

 シュオン ズシャシャシャッ!‼‼ グサリッ

セツナ「!」サッ チャキッ パシュッ!

レオン「っと、さぁこっちだ」パカラパカラッ

セツナ「……」チャキッ パシュッ! パシュッ

 ヒュンッ トススッ

レオン(よし、弓兵は僕に注目している。あとは呪いを使う奴らをどうにかできれば……)

謎の陰陽師たち「……」サッ シュパッ

ブノワ「ぐっ、来たか……」

サクラ「ブノワさん、援護します! そのまま前進してください!」チャキッ

ブノワ「ありがとう、サクラ様……。このまま、しばらく頼む……」ガシャンガシャンッ

サクラ「はい! ……っ」キリリリッ

サクラ(ヒノカ姉様の下に行かせないというのでしたら、あなた達を倒して突き進むだけです)

サクラ「やっ!」パシュッ!
477 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:22:35.30 ID:CKFWGx/G0
 シュンッ ドスリッ 

謎の陰陽師「……」ググッ カラカラカランッ

サクラ「!」

ハロルド「おっと、サクラ様への攻撃は阻止させてもらうよ! それっ!」ブンッ

 ヒュンヒュンヒュンッ ザシュンッ! ドサリッ

ハロルド「よし! 大丈夫ですか、サクラ様―!」

サクラ「は、はい! た、助かりました」

ハロルド「私もこれほどうまくいくとは思いませんでした。敵の攻撃も弱い今がチャンスだ。ブノワくん、このまま一気に距離を詰めてしまおう!」

ブノワ「ああ、一気に行くぞ……!」ガシャンガシャンッ

ハロルド「よーし!」タタタタタッ

スズカゼ「カミラ王女、私も援護に向かいます。カミラ王女は……」

カミラ「ええ、大丈夫。その瞬間を見逃すつもりはないわ。だから少しの間、サクラ王女達のことお願い」

スズカゼ「はい、心得ました。では」ダッ

 カランコロンッ カランコロンッ

スズカゼ「ブノワさん、ハロルドさん。援護に入ります」

ハロルド「スズカゼくん、よろしく頼む!」

スズカゼ「お任せください。はっ!」チャキッ バシュシュッ!
478 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:25:21.72 ID:CKFWGx/G0
 ヒュンッ! ドスリッ!

謎の陰陽師「……」グラッ……

ブノワ「その隙、貰った! うおおおおおっ!!!!」ガシャンガシャンッ!

 ドゴンッ!!!

謎の陰陽師「……」シュパッ チャキッ

ハロルド「君の相手は私だ。行くぞ!」ブンブンッ

謎の陰陽師「……」キィンキィンッ ガキィンッ

ハロルド「もらった! はああっ」ドゴンッ!

 ドサッ

ハロルド「よし! 次の相手は誰かな、どこからでもかかって来なさい!」

ブノワ「敵陣に切りこめたはいいが、ここからどうする?」

ハロルド「た、たしかにここからどうするのだ? この先の分厚い敵の壁を抜けるのはとてもではないが――」

カミラ「そこで、こうするのよ」バサバサッ

ハロルド「な、カミラ様!?」

カミラ「二人とも、少しだけ避けてちょうだい」

ブノワ「!」サッ

カミラ「さぁ、可愛がってあげる。それっ!」

 グオオオオッ! ズザザザザーーーッ
  ドササッ!
479 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:29:50.30 ID:CKFWGx/G0
ハロルド「まさか、飛竜で突撃を敢行するとは。何て大胆な戦法だ……」

ブノワ「ああ……」

カミラ「ほら二人ともぼーっとしてないで、あと一息よ」

ブノワ「わかった…。すごいことをするんだな、カミラ様は……」

カミラ「出来ることを最大限やっているだけよ」

ブノワ「そうか、なら俺も今できる最大限を行うだけだ……。ふんっ!」チャキッ ブンッ

 ザシュンッ ドササッ

ハロルド「よし、追撃は私に任せたまえ、いくぞ、正義アターック!!!!」グッ ドゴンッ

スズカゼ「おまけに私からもお受け取り下さい、はっ!」バシュンッ ズシャシャシャッ!

 ドササッ

カミラ「これで行けるわ。レオン、サクラ王女を拾って、こっちに来なさい!」

レオン「わかった。はっ!」シュオンッ ドゴゴゴゴンッ

セツナ「!」ササッ 

レオン「悪いけど、君らの相手をしている暇はないんだよ」パカラパカラッ

セツナ「……」チャキッ

 ヒュンッ!

セツナ「!」サッ

サクラ「レオンさんに攻撃なんてさせません!」パシュシュッッ

セツナ「……」ササッ サッ
480 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:31:18.83 ID:CKFWGx/G0
レオン「サクラ王女!」スッ

サクラ「はい、レオンさん」パシッ

レオン「ありがとう、助かった。このまま敵陣を抜ける。しっかり掴まってて」

サクラ「は、はい、わかりました」ギュッ

レオン「よし、このまま一気に突破する!」ヒヒーンッ パカラパカラッ

ヒノカ『何をやっている。あいつらを、あいつらを行かせるわけにはいかないというのに!』

ヒノカ(だめだ、あいつらを行かせてはいけない。奴らがあの偽物に辿り着いたら、また、私は――)

ヒノカ『奪われてなるものか! アサマ、やれ!!!!』

アサマ「……」チャキッ シャン! 

謎の山伏「……」シャンッ シャンッ……

カミラ「レオン! サクラ王女!」ダッ

 シュオオオンッ ドクンッ!

カミラ「ぐっ……」グラッ

レオン「カミラ姉さん!」

サクラ「カミラさん!」

カミラ「私は大丈夫。それよりもさっさと抜けるわよ」バサバサッ

 パカラパカラッ

ヒノカ『ちっ、抜けられたか。だが、あの女狐はただでは済まないだろう』

カミラ「っ……」ドクンドクンッ
481 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:38:07.98 ID:CKFWGx/G0
カミラ(体が重い……。これは呪いの一種みたいね……。傷ならすぐに治療が出来るけど、これは……)

レオン「姉さん、ごめん。僕がもっと注意していれば」

カミラ「いいのよ。あなたたちが無事ならそれで構わないわ。さぁ、ハロルドを連れて行ってちょうだい。カムイとアクアが待っているんでしょう?」

サクラ「でも、カミラさんが掛けられてしまった呪いは――」

カミラ「いいのよ。腰を据えて解呪なんてしている暇はないわ。あなた達にだけ出来ることを今はしなさい」

サクラ「でも……」

カミラ「ふふっ、泣きそうな顔をしては駄目よ。大人の女性は、こういう時は凛々しくしてないとね?」

サクラ「カミラさん……」

カミラ「カムイの事、よろしくお願いね」

サクラ「わかりました、力になって見せます」

レオン「姉さん、気を付けて……」

カミラ「ええ、早くいきなさい」

レオン「うん。ハロルド、先に進むぞ!」パカラパカラッ

ハロルド「わかりました。ブノワくん、背中は任せたよ!」

ブノワ「ああ、敵を向かわせはしない。だから、安心してくれ……」ガシャンガシャンッ

カミラ「ふふっ、どうにかなるものね」

スズカゼ「ええ、どうにか玉座への道を塞ぐ形で敵と対面する事は出来ました。これで予定通りの形と言ったところでしょう。お見事です」

カミラ「ふふっ、ありがとう」
482 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:47:54.93 ID:CKFWGx/G0
ヒノカ『女狐、最初からこのつもりだったか。その在り方は褒めてやってもいいが、その心身でどう私たちの相手をするつもりだ? 強がろうとも、お前が苦しんでいるのは手に取るようにわかる』

カミラ「あらあら、そんなことを言って戦う前から怖いのかしら?」

ヒノカ『ははははっ。そうした軽口を叩けるのも今の内だ。満足に戦えないお前に勝ち目などない、すぐに殺してお前の死骸をあいつらの前に晒してやる』

カミラ「そうね、私たちだけじゃ勝ち目は無さそうね」

ヒノカ『そうだ、だから大人しくしていればあまり苦しまずに殺して――』

カミラ「ふふっ、早とちりは良くないわ。言っているでしょう、私たちだけじゃ勝ち目は無い……ってね?」

ヒノカ『?』

カミラ「わざわざこんな形にしたのは、カムイの下に行かせないためだけじゃないわ。あなたを袋にするためでもあるのよ?」

ヒノカ『なに?』

 ドドドドドドドッ!

ヒノカ『!』クルッ

マークス「……追いついたようだな」

ヒノカ『なっ……』

カミラ「先遣隊が撃破されてたとすれば、こうなることも予想できたと思うけど?」

ヒノカ『馬鹿な、ユウギリやオロチはどうした? あの二人は――』

マークス「おまえの臣下であるオロチもユウギリもここには現れない」

ヒノカ『おまえは暗夜の王子……』

マークス「二人はここに現れない、そしておまえの言葉に従うこともない」

ヒノカ『出鱈目を言うな。二人は死なない、私が望めばちゃんと戻って来る。それが私の――』

マークス「それがヒノカ王女の願いであったとしても。それが過ちであると考えたならば、臣下はその意に背くこともある。そして、二人はそれを示した」

ヒノカ『なにを言って……いる』

マークス「そのままの意味だ。あの二人は示した。ヒノカ王女が今思う願いは間違いであるという事、そして――」

「ヒノカ王女を救ってほしいとな」
483 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/13(木) 10:48:37.02 ID:CKFWGx/G0
今日はここまで
484 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 17:07:55.49 ID:iJUBunfW0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間』―

〜カミラ達を玉座前へ送った直後〜

 ドドドドドドドッ

マークス「ピエリとエリーゼは私と共に、ギュンターは他の者たちと共に敵の迎撃に掛かれ。手早く片付け、敵本陣へ、カムイ達の援護に向かうぞ」

ピエリ「わかったの。ここで決着をつけるのよ」

エリーゼ「ピエリ、ちゃんとフォローするからね」

ピエリ「うん、ピエリはもう守るために戦うって決めたから、もう心配ないの。だからあいつの相手はピエリに任せてほしいの」

マークス「いいだろう。ピエリ、お前の覚悟見させてもらう」

ピエリ「マークス様、ありがとうなの!」

マークス「ふっ、期待しているぞ」

ピエリ「はーい!」

エリーゼ「本当に一人で大丈夫? あたしも……」

ピエリ「いいの。これはピエリの中の問題なの。これはピエリがどうにかしなくちゃいけないことなの、だからピエリを信じてほしいのよ」

エリーゼ「ピエリ……。わかったよ、あたしピエリを信じるからね!」

ピエリ「えへへ。エリーゼ様、ありがとうなの!」
485 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 17:21:23.53 ID:iJUBunfW0
ギュンター「聞いての通りだ、カザハナ、ニュクス」

カザハナ「うん、さっさと片付けてサクラ様を助けに行かないと」

ニュクス「それにあれは倒さないといけないものよ。どこまでも私たちを追ってくるでしょうから……」

カザハナ「……もしかしてオロチの事?」

ニュクス「ええ、呪術に精通しているからそれなりにわかるのよ。敵の多くはただ力任せに動いているだけで、意思を持って動いているわけじゃないっていうのはね……」

カザハナ「それじゃ、やっぱり……」

ニュクス「結局、多くはただ呪いで動いているだけに過ぎないのよ。それがヒノカ王女の願いなのかどうかを確認する術は無いわ」

カザハナ「ただの人形ってことだよね……」

ニュクス「そういうこと。でも、すべてがそうとは言えないかもしれないわ……」

カザハナ「?」

ニュクス「とにかく、今は彼女を倒して止める。それが、あの時……止めを刺さずに見送った私の役目だと思うのよ」

カザハナ「ニュクス……」

ギュンター「では、奴をお前に任せる。隙を突いて、あの呪い師を討つがいい」

ニュクス「……ええ、任せて」

カザハナ「それじゃ、行こっか!」

ギュンター「うむ、行くぞ!」パシンッ ヒヒーンッ

486 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 17:24:59.06 ID:iJUBunfW0
 ドドドドドッ

オロチ「……」スッ

ユウギリ「……」コクリッ タタタタッ

謎の兵士たち『………』タタタタタッ

マークス「ピエリ、私に続け!」

ピエリ「はーい! エリーゼ様、サポートお願いなの」

エリーゼ「うん! よーし、いくよ! ライナロック!」シュオンッ

 ドゴンッ!

謎の鍛冶A「……」ダダダッ

謎の剣聖A「……」ダダダッ

マークス「ピエリ!」

ピエリ「わかったの。侍さんはピエリに任せてなの! 軽く捻って八つ裂きにしてやるのよ」チャキッ

謎の剣聖A「……」ダッ ブンッ

ピエリ「甘いの! はっ、やっ!」ザシュッ ザシュッ

謎の剣聖A「……」サッ サッ チャキッ

 グッ

ピエリ「そこなの!」グッ ドスンッ!

 ブシャリッ!‼‼

謎の剣聖A「……」フラッ ドサッ……
487 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 17:35:02.33 ID:iJUBunfW0
ピエリ「ピエリの勝ちなの。次の敵は――」

エリーゼ「ピエリ! 後ろ!」

ピエリ「!」サッ

 ガキィンッ!
  ギギギッ カァンッ

 ズササーーッ

ユウギリ「………」スタッ

ピエリ「そっちから来てくれたのね。いいの、もう追いかけっこはおしまいなの」

ユウギリ「……」

ピエリ「ここで、決着を付けてあげるの!」チャキッ

ユウギリ「……」チャキッ ダッ!

謎の鍛冶B「……」ダッ

エリーゼ「抜けられると思わないでよね! えーい、サンダー!」シュオオンッ バチチィンッ

謎の鍛冶B「……」ズササーッ 

謎の敵兵たち『……』ザッ

エリーゼ「ピエリの下には行かせないよ。あなたたちの相手はあたしがしてあげるんだから!」シュオンッ

エリーゼ(ピエリの邪魔は誰にもさせないよ!)ペラペラペラッ

エリーゼ「全力でギタギタにしてあげるから、覚悟して!」シュオンッ!

謎の敵兵たち『……』ダッ

エリーゼ「いっけー、ライトニング!!!」バシュン! バシュンッ!
488 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 17:55:24.74 ID:iJUBunfW0
謎の鍛冶A「……」ブンッブンッ

 キンッ キィンッ

マークス(一撃は重いが、この程度の攻撃。受け流すのも造作もない。やはり、心の無いただの剣だ……。この者たちは戦いを欲してなどいないのかもしれん……)

マークス「ならば……」キッ ブオンッ!

 ドゴンッ!

 ドサササッ

マークス「私がお前たちを送るいがいにないということだな」

謎の敵兵たち『……』チャキッ

マークス「ジークフリート!」シュオンッ バシュンッ!

 ザシュリッ
  タタタタタッ

マークス「ふんっ、はっ!」ブンッ

マークス(この戦いに意味などはもう無い、だがこの戦いに何か意味があるのだとすれば……。それはただ一つだけだ)

マークス「その剣を私が下ろさせてやろう。仕えるべき主の仇に操られて振るう剣を、私が打ち砕く。だから安心して掛かって来るがいい!」シュオンッ

謎の敵兵たち『……』ダッ!

マークス「はああああっ!!!!」ドゴンッ!‼‼
489 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:10:22.81 ID:iJUBunfW0
ピエリ「はっ! それっ!」

ユウギリ「……」キィン! バッ ブンッ

ピエリ「!」キィンッ 

ピエリ(すごい動きなの。でも、さっきと違って逃げたりする素振りが無いの。あいつの仲間が近くにいないからなの?)

ユウギリ「……」ダッ

 カキィンッ キィンッ!

ピエリ「そこ! 逃がさないの!」チャキッ ダッ

 キィンキィンッ

ユウギリ「……」フフッ

ピエリ(笑ってる? ピエリが弱いからなの?)

ユウギリ「……」ポタタッ ポタタタッ

ピエリ(でも、今はピエリが勝ってるの。もう、相手の傷はすごいことになってるの。ああいうふうになったら普通の人は戦えなくなっちゃうの。そんな状態なのに、どうして笑っていられるの?)

ユウギリ「……」ブンッ ザシュシュッ

ピエリ「よっ、それっ!」サッ ブンッ

 キィンキィンッ!

ピエリ(わからない、わからないの。でも……)

ユウギリ「……」ダッ ブンッ ブブンッ!

ピエリ(この人、なんだかとっても楽しそうに戦ってるの……)
490 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:17:24.28 ID:iJUBunfW0
ピエリ「もしかしてあなた、戦いが好きなの?」

ユウギリ「……」

ピエリ「えへへ、見てるとわかるの。あなた、ピエリを殺すためにもう動いてないの。ただ戦いたくて戦ってるの。ピエリの目は誤魔化せないのよ」

ユウギリ「……」フッ

ピエリ「ふふっ、図星なのね。ピエリ、前まで人を殺すのが大好きだったの。だけど、ピエリはいっぱい守りたいものが出来ちゃったから、こうやって守るために戦うことを覚えたのよ。でも、安心してほしいの」

ユウギリ「……」

ピエリ「ピエリは全力であなたと戦うの。絶対、あなたを失望させたりしないのよ。容赦なく、あなたを八つ裂きにしてあげるの!」

ユウギリ「……」ニヤッ

ピエリ「……さぁ、決着をつけてあげるの!」ダッ

ユウギリ「……」ダッ!

 タタタタタタッ

ピエリ「ふふっ」

ピエリ(失敗できないのに、なんだかとっても落ち着いてるの。うん、もう大丈夫なの、ピエリもう歩いて行けるの。守るために戦う道を歩いて行けるから、ここで、昔の憎しみにも悲しみにもさよならするの! それがピエリが今いる場所なのよ!)

ユウギリ「!!!!!」ザッ ググッ

ピエリ「やあああああああっ!!!!!」グッ

 ザンッ!‼‼‼‼

ユウギリ「……」

ピエリ「……」

 ポタッ ポタタタッ ビシャアアッ

ユウギリ「……」ドサリッ

ピエリ「ピエリの勝ちなの!」
491 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:22:47.47 ID:iJUBunfW0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 パカラッパカラッ
 タタタタタッ
  タタタタタッ

ギュンター「正面、くるぞ!」

カザハナ「ニュクス、周囲の雑魚はあたしとギュンターに任せて、オロチをお願いね」

ニュクス「頼んだわよ」

ギュンター「前方から十人ほどか」

カザハナ「十なら余裕ね。もう、退く必要なんてないんだから、倒し続けるだけだよ!」チャキッ

ギュンター「ふっ、その通りだ。はっ!」バシンッ ヒヒーンッ

 パカラパカラッ

謎の陰陽師A「……」チャキッ カラカラ――

カザハナ「それっ!」チャッ シュパッ!

 ザシュンッ カランッ……

謎の陰陽師A「……」スッ

ギュンター「拾っている暇などないぞ。はあああっ!!!」ガッ ギギギギギギッ ドゴンッ

 バシュンッ ドササーーーッ

謎の弓聖A「……」タタタッ チャキッ

カザハナ「甘いっ! そんなの構えてくるのが定石。来てから構えて勝てると思わないでよね!」タタタタッ スチャッ
492 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:27:03.37 ID:iJUBunfW0
謎の弓聖A「……」タンッ!

 ヒュンッ

カザハナ「はっ!」シュッ カキンッ!

謎の弓聖A「……」スッ

カザハナ「あたしの勝ちよ!」ズシャンッ

 ブシャアアアッ ドサッ バタリッ

カザハナ「よーし、さっさとの奴を相手しないと!」

オロチ「……」チャキッ

 カラカラカラ―― シュオンッ

鳥神『キィィ!』 ヒュンヒュンッ バッ

ニュクス「そこね。ファイア!」シュオンッ ボオオッ!

鳥神『キィィ』バシュンッ……

カザハナ「わっ!? え、何? 頭上で何か起きたみたいなんだけど?」

ニュクス「あなた、狙われていたのよ。もしかして気づいていなかったの?」

カザハナ「え!? どこから狙われてたの!? もしかして、また攻撃が来るとか?」

ニュクス「大丈夫、もうそれは阻止したわ。ばれてる状態で攻撃を仕掛けてくる素振りもないようだから」スッ

オロチ「……」

カザハナ「オロチ……」

オロチ「……」ダッ
493 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:32:30.30 ID:iJUBunfW0
ニュクス「奴を追うわ。その間、雑魚を引き付けてちょうだい」タタタタッ

カザハナ「わかったよ。ギュンター、残りの奴らはあたしたちでどうにかしちゃおう」

ギュンター「うむ。さぁ、来るがいい!」チャキッ

謎の槍聖C「……」タタタタッ ブンッ

 ガキィン!

ギュンター「ふっ、力の差を見せてやろう」グッ ドゴンッ

 バキィンッ!‼‼カランカラン……

謎の槍聖C「……」

ギュンター「はああああっ」ブンッ 

 バシュッ ドサササッ!

ギュンター「ふん、こんなものか。カザハナ、次が来るぞ」

カザハナ「わかってる! よぉし、ならあたしだって!」ダッ

 ザシュンザシュンッ ドササッ

カザハナ「それっ、それっ!」シュパッ シュパンッ

 ドスリッ ズシャリッ……

カザハナ「あれ? おかしいな……」

ギュンター「どうした?」

カザハナ「ううん、何でもない。多分勘違いだと思うから」

ギュンター「そうか。次が来る、今度は私が先行する、後れを取るなよ」

カザハナ「う、うん!」

カザハナ(気の所為かな。敵の数が減ってる気がするんだけど……)
494 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:34:23.77 ID:iJUBunfW0
ニュクス「……」タタタッ

ニュクス(間違いない、敵が減っている。場所が変わって敵を引き離せたからかと思ったけど、それだけが原因というわけでは無さそうね、敵の作戦かもしれない。だけど、今が討つ最高のチャンスであることに変わりはないなら、こっちは仕掛けるだけよ)

ニュクス「……見つけた。はあっ!」シュオンッ

オロチ「……」サッ

 ドゴンッ

オロチ「……」カラカラカラ…… シュオンッ!

牛神『ウモオオオオッ!!!』ドドドドドッ

ニュクス「! ライナロック!」シュオンッ ドゴンッ!

牛神『ウモオオオオッ!‼‼‼』シュオンッ……

ニュクス(相殺は出来た。だけど、次のタイミングはそうはいかないわね。敵が疎らとは言っても、私に気づいて集まり始めている……。無視をしてオロチを攻撃したいところだけど……)

オロチ「……」チャッ チャッ

ニュクス(こっちのタイミングを見計らってる。となると、ここはあえて隙を作るのが得策ね。それに乗って来なかったら、私はかなり不利になるけれど、つべこべ言ってはいられないわ。今回は私一人しかいないけどね……)シュオンッ

ニュクス「……賭けてあげる。あなたがそう動く方に!」ズザザーーッ

謎の敵兵「……」チャキッ! ダッ

ニュクス「ライトニング!」シュオオンッ

 バチィンッ バチィンッ!

謎の敵兵「……」ドサッ

495 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:39:20.87 ID:iJUBunfW0
ニュクス(さぁ、出て来なさい。もっとも、さっきまでの行動を見る限り、我慢していられるような性質でもないと思うけど……)

オロチ「……」ニヤッ

ニュクス「はっ! それっ!!!」シュオンッ ドドンッ

謎の兵士たち『……』タタタタッ

ニュクス「っ! はあああっ」シュオンッ バシュンッ!

ニュクス(こいつらが真正面からぶつかって来るだけの存在で助かったわ。まぁ、中身のない木偶の坊如きじゃ、考えて行動なんてできないでしょうれど……)

オロチ「……」シュパッ!

 カラカラカラッ……
  カラカラカラッ……

ニュクス(ただ、そんな戦術的に攻撃を配置できる以上、少なくともあなたには……)

ニュクス「心に似た何かがあるという事でしょう?」

オロチ「!!!!」シュオンッ

 シュオオオオンッ!

牛神『グオオオッ』ドドドドドッ

謎の兵士「……」ドガンッ ドゴンッ! バタッ ドサリッ

ニュクス(味方もお構いなし、どんな攻撃を撃っても四方から迫っている以上、こちらの攻撃は届かない。そう踏んでいるみたいね。ええ、そう来ると思っていたわ)

ニュクス「なら、こっちもいかせてもらうわね」タッ! ピョンッ!

オロチ「?」

ニュクス「ライナロック!」シュオンッ

 ドゴォォォンッ‼‼
496 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:42:41.38 ID:iJUBunfW0
ヒュオオオッ!

ニュクス「!!」フワッ

オロチ「!?」

ニュクス(地面に撃ったライナロックの爆風になんとか乗れたわね。軽く火傷したけどこれくらいなら大丈夫、後は――)キョロキョロ

オロチ「!?」ピタッ

ニュクス「見つけた!」サッ パラパラパラッ

オロチ「……」カラカラカラッ!

鳥神『キィィィ!』ションッ

ニュクス「これで終わりよ! ギンヌンガガプ!」シュオンッ

鳥神『キィィィ!』バシュンッ

オロチ「!!!!!」グッ

 ドゴオオオオオンッ!‼‼‼‼

オロチ「……」ドサッ

 ドサササーーッ

オロチ「……」

ニュクス「よっと……」シュタッ

 タッ タッ タッ……

オロチ「……」

ニュクス「……私の勝ちね、オロチ」
497 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:47:49.30 ID:iJUBunfW0
 タタタタタタッ

ニュクス「?」

カザハナ「ニュクス! 大丈夫!?」タタタタッ

ニュクス「カザハナ、ええ、どうにかね。それより他の敵は?」

カザハナ「それなんだけど……。それが居なくなっちゃって」

ギュンター「敵が現れなくなったと言えばいいかもしれん。倒す度に増えていたが、今は後続が来る気配もない」

ニュクス「そう、何があったのかはわからないけれど……。おかげでどうにかなったのは確かね」

カザハナ「うん、よし、さっさとサクラ様の援護に……ちょ、ニュクス!」

ニュクス「?」チラッ

オロチ「……」グッ ググッ

ギュンター「ふむ、まだ立ち上がるつもりか。止めを刺したほうがいいかもしれん」

ニュクス「……いいえ、その必要は無いわ」タッタッタッ

カザハナ「ニュクス、近づくと危ないよ!」

オロチ「……」

ニュクス「久しぶりと言っていいのかしら? 白夜の呪い師さん」

オロチ「……ああ、おぬしは……あの時の……」

ニュクス「ええ、あなたを逃がした一人ね。こうやって、また話をすることになるとは思ってもいなかったけど……」
498 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/20(木) 18:50:35.58 ID:iJUBunfW0
今日はここまで

 12/24日はピエリの誕生日なので、次回はピエリリスの小話になります。
 よろしくお願いいたします。
499 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 21:53:23.69 ID:xPG/Hcy10
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―番外―
 ピエリリス誕生日SS

 -1-

 誕生日というのはいくつになってもソワソワするものだとある本に書かれていた。自分が生まれた日、それはある意味特別な日、それが何時なのかわかっている人は何かを期待するのかもしれません。
 誰かから祝ってもらえるだろうか?
 誰かから贈り物を貰えるだろうか?
 もしかしたら、歳を取ったことを嘆くような人もいるかもしれませんが。その日が特別な日であることは間違いありません。
 うれしいことがあれば何十倍にもうれしく思え、逆に悪いことがあれば何十倍にも悪く思える。今日は誕生日だから、今日は誕生日だったのに。そんな自分が生まれたという日だけに言える言葉を私は知らない。
 私は自分の生まれた時を知らない。気づいたらそこにいたというのが私の覚醒の記憶であり、透魔の血族であった私は誕生日などというものを確認したりすることもなかった。
 世界や時間の流れが異なっているからではなく。ただ単純に日々に彩がなかったからで、私にとって日々に違いなどなかったのだ。
 お父様の良心に命を救われた時、ようやく私の世界にも彩が付いたけれど、私の生まれが何時であったのかを知る産みの父とは関係を絶ち、そして今はもうこの世にはいない。私にはリリスという名前がある。あるけど、それに私の誕生日を示す証拠は何処にもなかった。
 だから私はその言葉を言えないまま、一生を終えていくという確信を抱きつつ、穏やかに過ごしていくしかない。
 私は誕生日が理解できない、そしてこの先それを考えることもないだろうから……。
500 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 21:59:07.14 ID:xPG/Hcy10
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

-2-

 私の朝は静かな思考から始まる。星界を司る星竜になってからあまり夢を見なくなった。
 眠るときはまるでロウソクの火が消える様に意識が消え、起きるときは火を灯した時のようにパッと覚める。
 星界と外の世界の時間の流れは乖離している。それほど大きなものでないにしても、それは世界で生きようとすることの否定だと私は思う。私の体は星竜の物であるけれど、外の世界を混乱に陥れた影の首謀者であるお父様の子供であるという事実は拭われない。それは私がこの先朽ちていくまで背負い続ける罪であり、忘れてはいけないことでもある。
 だからこそ、私は外部との接触を極力避けて多くの時間をここで過ごしている。星界は戦争の終わりと共にその役割を終えつつあった。多くあった建造物はその姿を無くして、今は私の神殿と食堂、そしてカムイ様のお部屋があるだけになった。
 だとしても、星界の流れはおかしなもので何時何が起きるかわからない。その不測の事態を考えなくてよくなるのは、単純に星界が無くなった時だけだろう。それが何時になるのはわからないけど……
 起きてすぐに神殿の内部を見回して、出口の先が暗いことに気づく。どうやら星界は夜のようで、静けさに交じった虫の鳴き声が聞こえた。こんな星界に居つくなんて物好きな虫もいるものです、と私はふわふわと神殿の外へと出る。
 外に出ると少しだけひんやりとした空気が私の体を撫でた。背鰭が温度差にふるるっと震えて、大事に抱えた星界の玉に瞳を瞬かせる私の顔が映る。
 とても醜い、竜と呼ぶには威厳が無くて、トカゲと呼ぶには大きすぎる私の姿。それが今の私の本当の姿なのだとわかりながらも、それを否定するように力を籠める。
 体中を巡る暖かい光、背鰭が瞬く間に内へと入り込んでくる感触に合わせて、体全体が引き伸ばされるような感覚に囚われる。
 そして、数回の瞬きを終えた時、私は地を足で踏んでいた。視界に入り込んでくる手、そして厩舎係として作業服が目に入った。

「……人間じゃないのに、人間の姿をするのはなんでなんでしょうね」

 世迷い事を口にする。答えなんて出ないその問い掛けに答えてくれる人はいない。誰も答えてくれないから、私の世迷い事は風に乗って消えてしまった。
 私はポケットから一つの便箋を取り出す。とても高価な印のされたそれは、数日前にある人から戴いたパーティーの招待状だった。
 リリスへ、と私の名前が書かれていて、これを持ってきてくれたその子の顔を私はよく覚えている。

「それにしても、本当に物好きですね。私に誕生日パーティーの招待状を出すなんて」

 招待状をひっくり返して、私はその差出人の名前を見る。
 そこには暗夜でも指折りの名門貴族であるピエリさんの名前が記されていた。
501 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:02:46.79 ID:xPG/Hcy10
 そもそも、私とピエリさんが出会う接点などなかった、いえピエリさんだけではなくその他大勢との接点もないに等しかった。
 常に星界で過ごしてはいましたが、星界の中をうろつくこともないし、神殿に立ち寄る人もあまりいなかったからだ。それに私のしている事はカムイ様からお食事を頂いて星界の維持をすることだけで、誰かが来ても基本的な応答以外何もせずじまい、だから興味を持つ人はそれほどいなかったと思う。
 そんな中でピエリさんはちがう方面で私に興味を持ってきた、それが――

『なんでリリスはちゃんとしたお料理を食べないの?』

 このピエリさんの発言がある問題の始まりになった。何が問題になったのかというと、それは私が原因な部分もある。
 その日、カムイ様はお肉を提供してくれました。当時はお魚ばかりでお肉がもらえるのはとても珍しかった。手に入れるのが大変なのに準備してくれたカムイ様になにか暖かい気持ちになりながら、感謝の気持ちで胸をいっぱいにしつつ至福の昼食に入った。
 ……ピエリさんはそれを見ていたんです。
 二口目と頬張ろうとした矢先、ひょいと顔を出したピエリさんが先ほどの言葉を口にしてしまった。カムイ様は私に困惑の視線を向けてきました。素材のまま渡すのは駄目でしたか? そんな視線を向けてくるカムイ様に、私は二口目を躊躇してしまう。このままでは駄目だと思ってピエリさんに私の意見を説明することにしました。

『このままでも十分おいしいので問題はありません』
『そうなの? でもそれじゃ勿体ないの、ちょっとそのお肉を貸すのよ』

 返事を聞かないとはこのことで、ピエリさんは齧りかけの私の肉を持ってそそくさと神殿を後にしてしまう。残されたカムイ様はどことなく気まずそうに私を見てくる。確かにカムイ様が料理と呼べる形で持ってきてくれるのはパンかごはんだけで、それ以外は素材そのままで出すのが通例だった。だけど、私の生い立ちを考えればご飯を貰えるだけでも幸せと考えるのが筋なので、文句などあるわけがなかった。
 そんな私の心境を無視するように、少ししてピエリさんが戻って来た。神殿の中に久しぶりに感じる刺激を感じた。鼻をくすぐる香ばしくも食欲をそそる香り、ジュージューと耳に訴えてくる肉の甘美な歌声、そして食べ頃に焼かれた肉の姿に、私は忘れていた料理という娯楽を思い出した。

『えへへ、素材のままでもおいしいのなら、これでもっとおいしいはずなの!』

 ピエリさんの言葉通り、とてもおいしそうだった。
 不覚にも喉が鳴った。今までカムイ様が置いてくれたごはんで鳴らしたことのなかった喉が、その時、確かに鳴った。
 カムイ様はすごく泣きそうな顔をしていた。
 ここまでしてもらって食べないわけにはいかず、私はピエリさんが作ってくれた肉料理に齧り付いた。
 熱かった。とても熱かったけれど、とてもおいしかった。食べ終わった直後にお代わりが欲しいと純粋に思って口にしてしまった。そしたらピエリさんが、言ってくれれば作ってあげるのよ。ピエリ、今みんなのコックさんしてるの。だから、リリスの分を作るのも朝飯前なのよ。と言い、私はそれに本当ですか!と言ってしまい、それを聞いたカムイ様は泣いた。
 これが後の問題、食堂を一度撤去しなくてはならい程の生ごみを発生させることになった原因でもありますが、その話は本筋とは関係ないので割愛させていただきます。
502 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:05:20.38 ID:xPG/Hcy10
 それが私とピエリさんの邂逅でした。私はピエリさんの持ってきてくれるご飯が楽しみになっていて、ピエリさんは私にご飯を上げるのを楽しんでいたのかもしれません。
 そうした互いの利害の一致が今の関係を築いてきたと言ってもいいでしょう。もっとも、私はただ作ってくれた料理を食べていただけで、それほどピエリさんの何かに貢献できていたとは思えません。
 だから今日の誕生日パーティーの招待状を渡しに来た時は驚いた。

「あまり、私が行っていいと思えませんけど。とりあえず招待されたのですから、向かわないのは失礼ですよね」

 そう言いながらもちゃんとプレゼントを用意している私も私ですが、しかしピエリさんが喜ぶ品というのは余り思い浮かばず、カムイ様伝手に白夜で作られている最高級の調理包丁を二、三本準備してもらった。ピエリさんは料理好きだし、あっても困るものではないだろうというのが私の考え付いた結論であったのだ。
 万が一誰かのプレゼントと被る可能性も考えたけれど、そうなってしまったら仕方ないと開き直りつつ、私は包みを持って星界を出る。
 星界の出入りをする起点はカムイ様からお返し頂いたので、今は城塞の空き部屋ともいえる私の部屋に置かれている。久しぶりに帰った自室は思ったよりも綺麗だった。私がいることは少ないというのにきちんと整理整頓されていて、この感じだとフローラさんが担当しているのかもしれない。
 今日のことは事前に知らせてあったからか、クローゼットの取手にメモ括りつけてあって、新しい服が入っていると記されていた。
 律儀ですねとクローゼットを開いて綺麗な服に袖を通すと、机に向かってメッセージカードの記入とプレゼントの包装を行う。
 包装には白夜から取り寄せた質の良い紙を使い、綺麗に折っていく。包む大きさを調整して、閉じ口を下、左、上、右の順に止めて、最後に暗夜の王室印を使って止める。
 何度か練習したこともあって、結構らしい格好になったと思う。最後にピエリさんお気に入りのリボンと同じ色の装飾用リボンを付ける。プレゼントの準備を済ませた私は、城塞を後にした。
 外に出た瞬間に吹いた木枯らしに、私は今生えていない背鰭を揺らした。
503 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:08:44.48 ID:xPG/Hcy10
-3-

 ピエリさんの屋敷に着いた頃には夜になっていた。名門貴族というのは伊達ではないようで、私が到着した頃には屋敷の前を馬車が行ったり来たりを繰り返している。
 そんな人でごった返している中でも入り口に立つ門兵は律儀に招待状を確認しており、パスした人だけが平等に中へと入ることを許されるという形のようだった。
 私も招待状を見せて中に入るとすでにパーティーは始まっているようで、多くの来賓がそれぞれで小さな輪を作って話に花を咲かせている。そして、その話題の中に少なからずピエリさんの名前が出ていた。
 多くはこの頃一つの騎士団を任される様になったという話で、ピエリさんの功績といえばまずそれだろう。それ以外ではピエリさんの料理がおいしいという話も聞こえて、私は心の中でその話に相槌を打つ。当たり前の事なのかもしれないけれど、今日の誕生日の主がここに集まった人たちの興味であり、こんなに多くの人から関心を向けられるというのは、中々にすごいことなんじゃないかと私は思う。
 でも、これは誕生日の共通する点なのかもしれないと思い始める。
 一般的な誕生日はこれほど華やかではないけれど、誰かに思われることはある。それが良いにしろ悪いにしろ、少なくとも関心があるのは悪いことじゃないと私は思うからだ。
 そんなことを思い乍らパーティー会場を散策していると、目の前に大きな人だかりができているのに気が付く。その隙間からちらちらと毛先が桃色の青い髪が見えた。

「えへへ、みんなが来てくれてピエリ、とっても嬉しいの!」

 人混みの中から聞こえる声、どうやらパーティーの主役は会場入りしていたみたいである。隙間から見える姿からいつもの二つにした髪を下ろしていることはわかったけれど、それ以上の事はわからなかった。
 ピエリさんの周りにいるのは多くが貴公子と言ってもいい男性の方々で、中には父親と思われる方から紹介されて紳士的に礼をしている人もいる。どうにかしてピエリさんに覚えてもらうか、もしくはそのもう一歩先か。ともかく、甘いマスクの下にそんな焦燥感を抱えているのかもしれないとか、そんなことを思っていると……

「あ、リリスなの!」

 私に向けて発せられたであろう声が聞こえて、軽快な足音が向かってきた。
 ピエリさんの声に合わせる様に、男性たちはさっと道を作ったようで、あまり見えなかったピエリさんの全容が分かる。
白い綺麗なドレスは足首を隠すくらいまでのもので、いつも付けているお気に入りのリボンは腰当たりに装飾として飾り付けられている。
 化粧もいつもに比べてナチュラルに仕上げていて大人っぽい印象なのに、時折見える犬歯が見た目の中に幼さを醸し出していて、純粋に可愛くて美しいというなんだか矛盾しているような感想が浮かんだ。

(ああ、こうしてみると、ピエリさんって確かに貴族のお嬢様なんですね)

 私は今さらになってそんなことを思った。
504 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:13:10.58 ID:xPG/Hcy10
 いつも私にご飯を持ってきてくれたピエリさんは子供のように笑っていたし、天真爛漫だった。でも、今見えているのはそう言った天真爛漫な女性ではなく、なんだか気品を感じさせるお嬢様なのだった。

「えへへ、リリスも来てくれてうれしいの! 今日はモチモチ姿じゃないの?」
「私の竜の時の姿をモチモチで表現しないでください。さすがにこのような場所であんなはしたない格好は出来ません」

 あのような醜悪でトカゲとも竜ともいえない格好を多くの人々に見せることもない。正直、気持ち悪いと思う人だっている筈だろうし、そんなことを思って顔を上げるとピエリさんは首を傾げながら……

「はしたないってことは、リリス、やっぱりあれって裸だったのね。ダメなのよ、いくら屋根があっても服は着ないと風邪引いちゃうの」
「ちょ、ちょちょ、ピエリさんんんっ!?」

 公衆の面前でこんなことを言い始めた!

「ピエリさん、あれはですね。全裸に見えるかもしれませんけど、ちゃんとですね――」
「あの玉で隠してるの? でも、あの玉だけで隠すのは難しいと思うの。幾ら人があまり来ないからって、やっぱりあの格好はどうかと思うの」

 なぜかピエリさんにお説教を受けている私。そして、この話が耳に入ったのか甘いマスクの貴公子ご一行がすりすりと迫っている。聞き耳を立てている姿をピエリさんに見られたらどうするんでしょうか?と思いつつも、私は全裸疑惑を払拭するために奮闘を決意した。

「ちゃ、ちゃんと着ているんですよ。その、ピエリさんには裸に見えていたとしてもですね……」
「着てるようには見えなかったの。それに触ったお腹、とっても柔らかかったのよ。モチモチでポンポンって感じだったの。出来れば頬をスリスリして楽しみたいの」
「頬をスリスリって……」

 私の奮闘は意味を成さなかったようで、ピエリさんの背後で数名が何やらニヤニヤしているのが見て取れる。そういうことをされる私の身になってほしいと思いながら、視線をピエリさんに戻す。
 目の前にいるピエリさんは、なんだかお気に入りのおもちゃを見る子供みたいにニコニコしてる。このままここにいると、多くの人に私が全裸で過ごしている痴女だと思われかねない。

「ピエリさん、ちょっと来てください」
「え、あ……」

 ピエリさんの手を取ってパーティー会場を走る。ピエリさんを囲っていた男性陣は私の行動を咎めることはなかったし、なんだかピエリさんは楽しそうにニコニコしていて、私はどこか人目に付かないところを探して歩くのだった。
505 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:16:08.34 ID:xPG/Hcy10
-4-

 気付けばバルコニーにピエリさんと共にいた。今日の夜風は凍える程ではないけれどドレス姿のピエリさんには寒いと思って、私のコートを手渡すと嬉しそうにお礼を言ってくれた。
 私が無理やり連れてきたのに、そんなことを思いながら空を見上げる。多くの光を発しているピエリさんのお屋敷から見る空は、その明るさの所為もあっていつもより星は見えない気がした。それに比べて星界で見上げる星の海は何処までも広大で、今見る物よりも綺麗なものだ。絶景という言葉で選ぶなら、おそらく星界がその絶景なのだと思う。
 だけど……なぜだか……

「綺麗ですね」

 私は今見えている光景にそう言葉を漏らした。
 見えている星はわずかで、多くの人々の声が聞こえるというのに、私は今この瞬間に見えている星々の光を綺麗だと思った。

「うん、ピエリもそう思うの」
「どうしてそう思うんですか?」
「星竜のリリスが綺麗って言ってるの。だから綺麗に決まってるのよ」

 そうピエリさんは笑いながら言って、すぐにあとと言葉を繋げた。

「こうやってリリスと一緒に眺めてるから綺麗に見えるのかもしれないの」
「私と一緒、だからですか?」
「うん、そうなの!」

 そう言ってピエリさんは笑顔の花を咲かせる。私はそれを直視するのがなんだか恥ずかしくなって、また夜空に目を向けた。

「どうして私と一緒だと……夜空が綺麗に見えるんですか?」
「楽しいからなのよ。ピエリ、リリスとこうやってお話しするのが楽しいの。あの男の人達、お家の事とかばっかり放して自分の事あんまり話してくれなかったの」

 まだパーティーは終わっていないというのに、ピエリさんは少しだけ疲れたというようにそう溜息を洩らす。まぁ、こういう催しで自分の家柄を話のネタに出すのは普通だと思う。まぁ、正直面白そうな話とは思えないけれど。

「そうなんですね」
「そうなの。だから、リリスを見つけてうれしかったのよ。きっと、家柄の話の百倍は面白いはずなの!」
「ちょっとそれは過大評価しすぎだと思いますけど」
「そんなことないの。ピエリ、リリスが裸で――」
「だから私が全裸だという嘘をまき散らすのをやめてください」
「全裸じゃないの?」
「違います」

 といいながら、竜の時は全裸であることに間違いない。しかし、これは私を守るうえで必要な措置なので押し通すことにした。
506 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:21:19.95 ID:xPG/Hcy10
「そういえば、今日のパーティーの料理、ピエリさんは手伝ったりしたんですか?」

 話を逸らすように私は今日の料理の事を聞く。すると少しピエリさんは剥れた。この様子だと、手伝いをしたかったけどさせてもらえなかったという感じなのだろう。ピエリさんは不満気に口を開いた。

「ピエリもいっぱいお料理作りたかったの。でも、今日は誕生日だからーって言われてキッチンに入れてもらえなかったの」
「まぁ、そうなりますよね。誕生日の主役に準備を手伝ってもらうわけにはいきませんからね。こればっかりは使用人の方たちの意見を汲んであげるべきですよ」
「そうなの?」
「はい、誰かを思って準備をすることはとてもいい事なんですよ」

 私は本でちらっと見たことをさも自分の感想のように告げる。その言葉の後に、それが悪いことであろうとなかろうと、とに書かれていた部分は省いてだ。

「んー、ピエリがリリスにお料理を作ってあげるのと同じ感じなの?」
「そうピエリさんが感じるのでしたら、そうなのではないですか?」
「だったら、ピエリその気持ちわかるの。ピエリ、誰かにお料理作ってるときおいしくなーれ、かっこよくなーれって思ってるのよ」

 ウキウキと話をするピエリさんを見ながら、私はまだ渡していない今日のプレゼントに視線を落した。これを準備している時、何を思っていたかを考えてみる。
 考えてみると、それは先ほど言った言葉の通りのものだと思った。ピエリさんが気に入ってくれるかどうか、それだけを考えていたのだから……、私は知らないうちにその感じというものを理解していたのかもしれない。

「ええ、多分そういうものですよ、ピエリさん」

 そうして、私は何食わぬ顔で包装したプレゼントをピエリさんに差し出す。最初、ピエリさんはこれが何かを理解していなかったようで、私からそれをとりあえず受け取ったが何も言わずに視線を向けるばかりだった。その反応は何というかちょっと寂しかった。

「えっと、誕生日プレゼントですよ。ピエリさん、誕生日おめでとうございます」
「そうなの! リリス、ありがとうなの! とっても嬉しいの!」
「はい、あ、それで開けるのは――」

 部屋に戻ってからと言い終える前に、ピエリさんはえいえいえいっと包みを破いて中身を取り出していた。
 ピエリさんの手に月の光に照らされた白夜の光、名工が編み出した一振りの出刃包丁が握られていた。

「……これ、ピエリの新しい武器なの!」
「いえ、調理用の包丁です。ピエリさんはお料理を良くされますし、もしかしたらこの頃白夜の料理にも興味を持ったのではないかと思いまして」

 ピエリさんの料理のレパートリーはこの先どんどん広がっていくと思ってのプレゼントである。

「白夜の刃物は持ってないからとっても嬉しいの。白夜のお料理は興味があったから、とっても助かっちゃうの」
「そうですか、それは良かったです」

 喜んでもらえて何よりとはこのこと、私の中に安心と充足感がゆっくりと広がっていくのがわかる。私も案外単純ですね、なんて思いながらピエリさんを眺める。その手には煌びやかに光る出刃包丁が未だに握られていた。
 ピエリさんは嬉しそうにそれをえいえいと振り回している。

「えへへー」
「ピエリさん、とりあえず得物はしまってください。ここに捌く食材はありませんから」

 背筋に迫る寒気を感じて、私はそう告げた。
507 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:24:06.78 ID:xPG/Hcy10
 プレゼントを渡したことと挨拶をしたことで、私の今日の予定は終わったと言って良かった。こうしてパーティー会場の外で話をし続けるわけにもいきません。今日はピエリさんの誕生日で、主役がいなくてはパーティーの進行にも色々と問題が発生してしまう。
 ピエリさんは私のプレゼントを小脇に抱えたまま、何か物思いに耽っているみたいだった。外の寒さは段々と増していて、頬が赤らんでいる。

「ピエリね、お料理道具の贈り物、久しぶりに貰ったの」
「そうなんですか。ピエリさん、お料理が好きですから、そういった物を送られたりするんじゃないんですか?」
「ううん、ピエリの誕生日に来てくれる人、何時もはこんなに多くないの。プレゼントはうれしいの、でも宝石とかドレスとか、そういうのばっかりだったの。ピエリ、ドレスはわかるの。でも、宝石とかはよくわからないの。赤い宝石は好きなの、でもそれは色が好きなだけなの。宝石の価値なんてわからないから、お料理道具の方がとっても嬉しいの」

 そう彼女は楽しそうに告げる。宝石は高価なものだ。持っていることに意味があるという人もいるくらいで私の準備したプレゼントより、はるかに価値があるとは思う。でも、ピエリさんからすると価値を感じられないものということだ。

「他には誰に貰ったことがあるんですか?」
「ん、お母さんに貰ったの。ピエリが一緒にお料理したいって言ったら、小さいけど立派なお料理道具のセットをくれたの。もう、今は小さくて使えないけど、ピエリの宝物の一つなの」

 そうピエリさんは言う。
 ピエリさんのお母さんに起きた悲劇については私も聞き知ってはいる。元から母を知らない私にはその辛さはわからないけれど、大切な人を失う苦しみや悲しみは少なからずわかるつもりだ。でも、それすら理解できなかった彼女には、痛みの逃げ道が分からなかったから、あのような凶行を繰り返したのかもしれないし、もしかしたらピエリさんにはそう言った加虐性が根付いていたのかもしれない。
 実際はどうなのかわからないけれど、それはもう終わってしまった話だから変えることのできないものだ。私の過去が変えられない様に、それを認めて生きていくしかないのだから。

「ピエリさんのお母様に感謝しないといけませんね。ピエリさんが料理好きじゃなかったら、私はおいしい料理をいっぱい食べられなかったんですから」
「うん、リリスはピエリのお料理とってもおいしそうに食べてくれるから大好きなの! この頃はあんまり作りに行けなくてごめんなの」
「いいんですよ。わざわざ星界に来るためには、城塞の私の部屋を通らないといけないんですから」
「うー、だったらリリスも王都に住むの。そうすれば、毎日……は難しいけど週に二回くらいはお料理作って持って行ってあげられるの」

 王都に住むですか。確かに魅力的ですけど、移住先を決めるのが難航しそうですね。なにせ、そこに住む人は実際誰もいないわけですし。でも、そんな生活も悪くは無いかもしれないと思った。
508 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:26:18.94 ID:xPG/Hcy10
「そうなの! ピエリ、お母さんの誕生日にお料理作ってあげたの。だから、リリスの誕生日に、この包丁を使ってとびっきりの美味しい料理を作ってあげるのよ。リリスの誕生日っていつなの?」
「……私の誕生日ですか」

 ピエリさんの提案に私は声のトーンが下がった。私はそれに応えることが出来ず、ただただ言葉を探しまわったが、結局何を言っていいのかわからず。

「わからないんです。誕生日……」

 そう告げた。
 冷たい風が頬を撫でて夜空に吸い込まれていく。ピエリさんは訝しげに私を見ていたけれど、私が誤魔化しているわけでもないと察して不思議な顔をする。

「リリスは生まれた日がわからないの?」
「はい、親も教えてはくれませんでしたし、私には関係の無い行事だと思っていましたから、誰かに聞かれたこともありませんし、何より――」

―私にそんな幸せは許されません―

 そう言おうとして止めた。それを口にすればピエリさんは追及してくるはずだから、誕生日なのにそんな話を聞かされても困るでしょうし、本人も分からないものの話をされたところで意味は無いからだ。
 私は空をもう一度見上げた。月は綺麗に形を変えずにそこにある。

「そうなの……」

 ピエリさんもそれだけ言って空を見上げている。
 少しだけ肌寒さが増してきたけれど、この話を切り上げて会場に戻りたいという私の心がそう感じさせているだけなのかもしれなかった。

「ごめんなさい、ピエリさん。お誕生日なのに、その……」
「いいの。ピエリが聞いたことなの。だからリリスが謝る事じゃないのよ」

 段々と寒さが増していく、早く暖かい室内に戻ろう。心についた霜もあの中ではすぐに氷解して、すぐに忘れてしまえるはずだから。私は静かに室内に戻るように足を動かした。

「リリス」

 それを呼び止められて立ち止まる。
 なぜか、少しだけ霜が溶けた気がした。
509 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:29:53.47 ID:xPG/Hcy10
「なら、ピエリがリリスの誕生日をお祝いしてあげるの!」
「?」

 それはどういう意味ですかと顔を向けると、ピエリさんは私をなんだか優しく見守ってくれていた。

「わからないなら作っちゃえばいいのよ。ピエリが一年に一回、リリスのお誕生日をお祝いするの!」
「作っちゃえって、そんなこと……」
「わからないなら仕方ないの。ピエリ、こうやってプレゼントをもらったのに、お祝いできないのは嫌なの。リリスにお返しがちゃんとしたいの! それに今日はピエリの誕生日なの! 誕生日だから、ピエリは何を言っても許されちゃうのよ」

 そう胸を張るピエリさんに、私はなんだかおかしくなって笑みをこぼしていた。ああ、子供っぽい理屈だけど、確かにそれくらいは許されるのかもしれない。

「それじゃ、ピエリさんに私の誕生日を決めた貰うことにしますね」
「任せてなの! えっと――」

 そうしてピエリさんは私の誕生日を何時にするのか考え始めて、私はそれを見ながら幾分か寒くなくなったことを感じとる。
 私には誕生日というのはわからないけれど、誰かの誕生日をお祝いする気持ちはちょっとだけわかった気がする。といっても、これは入り口で、誰かに笑顔でいてもらいたいと思うことくらいで、まだまだ大きな広がりがあるのだと思う。

「誕生日が分からない……か」

 自分で自分の事を分析していながら、それはすぐに崩れ去っていった。なにせ、私はもう口にしないと思っていた言葉を口にしてしまっていた。そして、言わなかった言葉の方もその意味に少しだけ気づけた気もする。
 そして、その日をピエリさんに教えられたら日が近づく度にソワソワしてしまうのでしょうか?
 そんな、最初考えることもないだろうと思っていたことを考えて、私は世界に新しい彩が増えたのを感じた。

「ううー、リリス。寒くて考えられないの、早く中に戻るの!」
「はい、戻りましょうか」

 ゆっくりと私たちは中へと戻っていく。
 私の誕生日が何時になるかはわからないけれど、今日中にピエリさんは決めてくれると思う。二人一緒に暖かい場所へと戻っていく、私の誕生日、それが何時になるのかを期待しながら……
 

 -おわり-
510 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/12/24(月) 22:31:59.12 ID:xPG/Hcy10
 今日はこれだけ。
 ピエリ、誕生日おめでとう!
  
 次から本編に戻ります。
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/25(火) 20:20:23.18 ID:3amYD9l3O
おめでとう!
やはり生の食材を渡すカムイは避けられない…
512 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/05(土) 18:30:23.28 ID:S2GRSQ1T0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『玉座へと至る道』―

オロチ「……」

カザハナ「オロチ、もしかして生きてるの?」

ニュクス「いいえ、生きてないわ。そもそも、こんな姿形で生きていられるように人間は出来ていない。だから、これはただの死人よ」

オロチ「……うぷ…ぷぷ……。確かにそうじゃ。しかし、死人と話をすることなどそうありえんこと。少しは珍しそうにしてもよいではないか?」

ニュクス「珍しいことじゃなくて、あってはならないことよ。死んでしまった命は戻ってこない、死んだ人間と話が出来ていいわけがないのよ」

オロチ「うぷぷ、おぬしは思ったより、堅物じゃな……。だが、こうして呼ばれたというのに、わらわは主君のために出来ることが何もなかった……」

ニュクス「……何もないというの?」

オロチ「そうじゃ。ヒノカ様の声が聞こえた。とても悲痛な声じゃ、わらわの耳に今でもそれはずっと残っておる。わらわが生きている間にしてきたことは、何の意味もないことばかりであったと思わされるくらいの悲鳴じゃった」

ニュクス「そんなことは……」

オロチ「うぷぷ、同情せんでもよい。わらわの苦悩はわらわだけにしかわからんこと。そなたの事情もわらわにはわからないものじゃ。ただ、だからこそ、こうして偽りの生であろうとも臣下としてもう一度戦えるのなら、これは至上の喜びとは思わぬか?」

カザハナ「それは……そうかもしれないけどさ」

オロチ「そうじゃ、わらわもそう思った……。じゃが、それは思えただけで、実際は全く異なっておった」

カザハナ「え?」
513 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/05(土) 18:34:07.30 ID:S2GRSQ1T0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ピエリ「違ったの?」

ユウギリ「ええ。私たちに出来ることは、あのヒノカ様が敵とみなした方々の排除だけで私たちは見えていない……いいえ、もうヒノカ様には守るものは何もないのです。私たちの意識や、そうあってほしかった思いも失われていくしかないのでしょう」

エリーゼ「失われていくって……」

ユウギリ「私たちはあなた方をただ殺すように指示を受けました。ヒノカ様を守るためではありませんわ。ただ殺すことだけ、その先にあるものがなんなのか、そちらの方ならたやすく想像できることだと思います」

マークス「……」

ユウギリ「呼ばれた時、確かに私たちはヒノカ様の助けを求める声を聞きました。死んでいたはずなのに、意識ははっきりとしていました。そして、ヒノカ様に手を上げる者たちを一人残らず殺したのでございます。その時は高揚いたしました。もう一度、この手でヒノカ様を守っていけると、そしてヒノカ様も私たちともう一度邂逅できたことを、とても喜んでくれました」

ピエリ「ピエリだってそうなの、リリスともう一度会えたらとっても嬉しいはずなの」

ユウギリ「……ですが、それが最後でした。ヒノカ様の中にあったその喜びは、すぐに消え去っておりました」

エリーゼ「どうして? あなたたちともう一度会えたんだからヒノカ王女はうれしかったはずでしょ? それがなんで消えちゃうの?」

マークス「おそらく、戻ってきてくれたからこそ、その喜びが消え去ってしまったのだろう」

エリーゼ「戻って来たから……」

ピエリ「消え去っちゃったの?」

ユウギリ「………」

514 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/05(土) 18:43:50.46 ID:S2GRSQ1T0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ギュンター「戻ってきたからこそ、それが失われたと考えているのだな……」

オロチ「失われるものだからこそ、人は守りたいと願うものなのじゃよ。特に生前した約束に意味が生まれるのはそこに確かな命が存在していたからじゃ。それをいともたやすく、この術は砕いてしまいおった。もう、わらわたちの願いや思いは何の意味も持たぬのじゃ」

カザハナ「それじゃ、今のヒノカ様は何で戦っているわけ!?」

オロチ「それはわらわにもわからぬこと。いや、誰にもわかるわけのないことじゃ。むしろわかりたくないと言えばいいかもしれんのう」

ニュクス「そう……。それがあなたの言う『異なっていた』ことなのね……」

カザハナ「え?」

オロチ「……わらわが言う前に答えを当てるのは関心せぬが、まぁその通りじゃ。ああ、自分でもわかっておったが、こう言われてしまうと、あれじゃな……」

 ポタポタッ

オロチ「もう、ヒノカ様の目には何も見えていないのだと、嫌でも認めなくてはならないではないか……」

ニュクス「……認めていたことでしょう、ただ言葉にしていなかっただけで、あなたはもうそれに気づいていたはずよ」

オロチ「その通りじゃ。カムイ様を取り戻すと渦巻いていた執念も、わらわ達を見捨てない、見捨ててなるものかという熱意も消え、今はただ敵となる何かを求めてさまよっているにすぎぬ…。ただ、そこを歩いていただけで斬りかかる通り魔と変わらない、そんなヒノカ様の姿など……見たくはなかったのじゃ……」

ニュクス「……」

オロチ「だから思うのじゃ。わらわが命を賭けたりしなければ、ヒノカ様は……今でもあのままでいられたかもしれない、そう思うと――」

カザハナ「それは違うよ!」
515 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/05(土) 18:53:41.17 ID:S2GRSQ1T0
オロチ「カザハナ?」

カザハナ「おかしいよ、そんなの! オロチは命を賭けてヒノカ様を守ったんでしょ。それなのに、なんでそんなこと考えちゃうわけ!?」

オロチ「……だってそうじゃろう? わらわがうまく動けていたのなら、ユウギリも死ぬことは無かったのじゃ。わらわの死が、今のヒノカ様とユウギリを殺したも同然じゃ」

カザハナ「……なら、オロチはヒノカ様を助けたくなかったの? 命を賭けたのは違う理由だったっていうの?」

オロチ「……」

カザハナ「違うでしょ、オロチはヒノカ様を助けようとした。だからこそ、ヒノカ様の声に応えてここに来たんでしょ? だったら、自分のしたことが間違いだったなんて言わないでよ!」

オロチ「……どうして、そんなにそなたが怒っておるのじゃ?」

カザハナ「オロチと同じで、命を賭けてあたしたちを助け出してくれた人たちがいるからだよ。あたしは、その気持ちを受け止めてここにいるんだから」

オロチ「……」

カザハナ「あたしだけじゃない。サクラ様、ツバキにレオン王子、みんなその気持ちを胸に秘めてる。ここまでの道を繋いでくれたスズメたちの思いと命は嘘じゃないし、それをあたしたちは忘れたりしない。たしかに今の状況は正直に言えば最悪かもしれないよ。白夜はもうこんな状況になってる」

オロチ「……」

カザハナ「でも、あたしたちにはこの先を見続ける義務があるの。それがどんなに辛かったとしても、あたしたちにはそれを越えて本当に見るべきものがあるんだから。あたしたちは、この戦いの先にある平和な世界を見なくちゃいけない。スズメたちが見られなかったその光景を見るために、あたしは戦う。それがあたしたちの絆だから……」

オロチ「絆……」

カザハナ「そして、オロチも持ってるはずだよ。ヒノカ様との絆を、それはヒノカ様も同じはず。だから、それをオロチが否定しちゃ駄目だよ!」

ニュクス「カザハナ……」

オロチ「……そうか、そなたの信じる絆はそれほどに強い物なのじゃな……」
516 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/05(土) 19:17:37.14 ID:S2GRSQ1T0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ユウギリ「あなたとあの子にそんなに強い絆があるのね?」

ピエリ「うん、でもピエリ、さっきまでちゃんとわかってなかったのよ。でも、今はもう大丈夫なの」

ユウギリ「そう……。ふふっ、色々と教えると言っておきながら、すぐに散ってしまった私との絆がヒノカ様にとって一体どういうものだったのかは、わかりませんけれど……」

ピエリ「何で落ち込んでるの?」

ユウギリ「私にはその絆が思い浮かばないのです。あなたとそのご友人の間柄と違って、私はヒノカ様と交流した時間が多いわけではありませんわ」

ピエリ「ピエリがヒノカ様なら、思い浮かばない人なんて呼ばないのよ。覚えててもう一度会いたい人だから、ヒノカ様はあなたを呼んだと思うの。そんなに難しい事じゃないと思うのよ」

ユウギリ「え……」

マークス「ピエリの言う通りだ。お前はちゃんとヒノカ王女と絆を結んでいた。もう一度会いたかったからこそ、お前はここにいる。それ以外の理由を考える必要などありはしないだろう」

ユウギリ「……そう、そんな簡単な事でしたの……。ヒノカ様は、私を本当に呼んでくれたのですね……」

ピエリ「……それで、あなたはこのままでいいの?」

ユウギリ「?」

ピエリ「ピエリ、よくわからないの。でも、あなたの話を聞いてると、ヒノカ様が全部忘れちゃうってことだけはわかるの」

ユウギリ「……」

ピエリ「それでいいの?」

ユウギリ「……」
517 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/05(土) 19:25:18.88 ID:S2GRSQ1T0
ユウギリ(……ふふっ、本当にあなたは面白いことを言いますわね)

ユウギリ「まったく、面白くありませんわ。敵であるあなたに、そのようなことを言われるのは……」タッ

マークス「!」チャキッ

ユウギリ「勘違いしないでください……。あなた方と争うつもりはもうありませんわ。私は、私の信じるヒノカ様に尽くすだけ、私が支えたかったヒノカ様をお守りすることが戦う理由なのですから。そして、これが私の答えですわ」

 パッ カランカラカランッ……

マークス「そうか……」

ピエリ「うん、とっても素敵だと思うの!」

ユウギリ「武器を捨てて素敵だといわれるのは複雑ですね。そうでした、あなたとの手合わせはとても胸が躍りました。あなたが地獄に来たらもう一度手合わせ願いたいものですわ」

ピエリ「別にかまわないの! ピエリもあなたともう一度手合わせしたいのよ」

ユウギリ「うふふっ、そういうわけです。もう行ってください、私の気が変わらないうちに……」

マークス「ああ、そうさせてもらうおう。だがいいのか、この行為は――」

ユウギリ「いいのです。私が守りたいものは、弱弱しくてもまだ小さく残っているようですから。だから、私たちはまだこうして自由を得ていられるのです。だから約束してください」

マークス「なんだ?」

ユウギリ「ヒノカ様を……止めると」

マークス「ああ、約束しよう。お前の主君を必ず止めてみせよう……。その行為が無駄でないと示してみせよう」

ユウギリ「ええ……」
518 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/05(土) 19:30:26.76 ID:S2GRSQ1T0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―シラサギ城・玉座へと続く道―

オロチ「……はぁ、最後の最後で押し切られるような形になってしまったのう……」

オロチ(わらわの自責の念など知らんと言わんばかりに押し負けてしまった。カザハナは、真っ直ぐすぎてこういうことでは懐柔出来るように思えんのう)

オロチ「……絆か」

オロチ(ヒノカ様に呼ばれ、敵を倒してからすぐにヒノカ様の中から消えていったのはそれだったのかもしれん。まだかすかにつながりは感じられるが、それももう弱々しくなっておる)

オロチ「消え去ってほしくないのう……」

 ヒタッ ヒタッ

オロチ「む?」

ユウギリ「ここにいましたか」

オロチ「うぷぷ、誰かと思えば、ユウギリか。どうやら派手に負けたようじゃのう」

ユウギリ「ええ、あなたも見事な負けっぷりですね」

オロチ「そなたこそ、そんなに大きな穴をこさえておるではないか」

ユウギリ「そうですね、私も完敗でしたもので。隣、失礼いたしますわ」

オロチ「うむ、もうここからは動けぬし、動くつもりもない、ゆったりするといい」

ユウギリ「ふふっ、奇遇ですね。私もそのつもりでした」

オロチ「……うぷぷ」

ユウギリ「……ふふ」

オロチ「しかし、ヒノカ様の力になりたかったのに、これがその終わりとはのう」

ユウギリ「ええ、でも後悔はしていません。私たちが守るべきものを守るには、これしかありませんので、これ以降は従う事も出来ませんから」

オロチ「まぁ、従ったとしても、この体ではそう役には立たんからのう……。這いずり回りながら後を追いかけても格好がつかぬ」

ユウギリ「それに、この状況がヒノカ様にとって一番役に立っている事かもしれません。どうやら、ヒノカ様の心は一度、救われていたようですから」

オロチ「そうじゃな……。ヒノカ様がカムイ様の手を取った時、確かに見えたからのう」

オロチ(あれはたしかに、わらわが守りたかったヒノカ様の顔じゃ。わらわたちが命を賭けて守りたかったものは、確かに、ここにあったのじゃ……)

オロチ「今ならいい夢が見られる気がするのう、どうじゃユウギリ?」

ユウギリ「ええ、私もそう思ったところです」

オロチ「うぷぷ、戦場にいながら眠りこけるなど、前代未聞の珍事じゃのう」

オロチ(もう、わらわは戦うことはできない。それは体が動かないからでもなく、敵が強いからでもない。ただ、ただ守るべき主君との絆が確かにあるからじゃ。それがたとえ、もう小さくなっていたとしても……)

「わらわは絆を結んだヒノカ様を守りたいのじゃ……」


519 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/05(土) 19:32:41.25 ID:S2GRSQ1T0
今日はここまで

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/11(金) 07:04:34.64 ID:g2JgcPbzO

今年中に完結しそうで寂しいな
521 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:12:16.78 ID:sBrnyF2e0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『玉座へと至る道』―

カミラ「……そう、そんなことがあったのね」

マークス「ああ、彼女らは武器を置いた。もう従うことは出来ないとな……」

ヒノカ『嘘だ……。そんなことがあるものか、オロチもユウギリも私とまた共にいることを望んでくれた……。さぁ、私の下に戻って来てくれ。私の声に応えてくれ。お前たちは倒れてもまた戻ってこれるはずだろう? なのになぜ、応えてくれないんだ……」

マークス「すでに理解しているはずだ」

ヒノカ『え?』

マークス「もう、お前の願いは失われつつある。この先、何千何万という敵を倒しても、その心が満ちることが無いとわかっているのだろう? そして、守るべき物さえ失いつつあるということもな……」

ヒノカ『っ、そんなことはない! 私はすべての敵を倒して、皆と共にいられることこそが――』

マークス「その皆とはなんだ?」

ヒノカ『?』

マークス「お前が命を賭け、守ろうとしたものは何処にある? そこにいる者たちは守りたい者のようには思えん。お前はわかっているのだ、もう、それらはただの駒であり、守りたかった者たちではなくなってしまったということを」

ヒノカ『何を根拠にそんな出まかせを口にする! 私は――』

マークス「……ならば、なぜその兵士たちは私の眼前にあるお前を守ろうとしない? なぜ、お前はその者たちを守るために陣を敷かない?」

ヒノカ『そ、それは……』

マークス「単純な答えだ。もう、それらに気を配る理由が無いとわかっているからだろう、ヒノカ王女……」
522 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:18:56.10 ID:sBrnyF2e0
ヒノカ『そ、そんなことはない。私は……私は……』

マークス「失われることが無いのならば、それを守る必要などない。だが、同時にそこに尊さなどありはしない。ヒノカ王女が最も失うことを恐れた人との絆など、存在するわけがないのだ!」

ヒノカ『!!!!』

マークス「ヒノカ王女、今すぐ武器を置け。このままでは、すべてを失う事になるぞ!」

ヒノカ『うるさい、私は失った。もう失ってしまったんだ! だからこそ、私は望んだ。そして目の前にあるこれらは私が守るべきものだ! 守りたかったものだ! それは変わらない、ここにいるのは皆、私の手からこぼれ落ちてしまった者たちだ。それと共にあろうとする私の意思を、貴様に否定される筋合いはない!』

マークス「そうだな。たが未だ紡がれた絆を信じ、主君に背いて剣を置いた者たちの思いを私は見捨てるわけにはいかない。そして何よりも、ヒノカ王女を救うと決めたカムイの力になる以上、お前のその意思を砕く以外に道は無い!」

 タタタタタタッ

ヒノカ「!!!!」

エリーゼ「マークスおにいちゃん!」

マークス「うむ、全員準備はいいか?」

ピエリ「任せてなの!」

ギュンター「準備は整っております、マークス様」

カザハナ「うん! ここが正念場だから、気合入れていくよ!」

ニュクス「ええ、手早く済ませちゃいましょう。敵の事情は分からないけど、今なら一気に押し切れるはず」

マークス「よし、これより攻撃を開始する。進め!」

 ダダダダダダッ!
523 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:26:23.15 ID:sBrnyF2e0
ヒノカ『っ! アサマとセツナは私と共に来い! 残りは奴らを止めろ!』バサバサッ

カミラ「ライナロック!」シュオンッ

 ドゴンッ!

ヒノカ『っ!』

セツナ「……」チャキッ

アサマ「……」シャンッ

カミラ「残念だけど、ここは通さないわ」

ヒノカ『貴様は何処まで私の邪魔をすれば気が済む』

カミラ「それは愚問ね。私はカムイのお姉さんなの、なら邪魔する理由も簡単に理解できるでしょう? カムイの本当のお姉さんならね?」

ヒノカ『貴様ぁ!』

セツナ「……」チャキッ パシュッ!

ブノワ「カミラ様!」ダッ

 キキィンッ

カミラ「ありがとう、ブノワ」

ブノワ「大丈夫だ。それよりも、カミラ様は呪いを受けているのだろう……。先頭に出るべきではないと思う……」

スズカゼ「はい、ブノワさんの言う通りです。ここは後方で援護に徹してください。あなたの身に万が一のことがあっては、カムイ様が悲しまれます」

カミラ「ありがとう。でも、こればっかりはきっちりと決着を付けないといけないの。カムイのお姉さんとして、そしてあの子の場所を結果的に奪ったのは私だから。あの子の底にある物の相手は、私がしないといけないのよ」

ヒノカ『……』
524 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:36:59.22 ID:sBrnyF2e0
スズカゼ「……わかりました。では、ヒノカ様のお相手はカミラ王女にお任せいたします。セツナさんとアサマさんは私とブノワさんで何とかしましょう」

カミラ「ええ、お願い。あの二人、他のとは格が違うから、気を抜かないようにしなさい」

スズカゼ「もちろんです。状況は少なくとも私たちに味方をしてくれているようですから」

ブノワ「ああ、なぜかわからないがピタリと敵の増援が止んだ…。今しかないだろう…」

カミラ「そうね、これなら邪魔は入らないもの。そうでしょう、ヒノカ王女」

ヒノカ『ああ、いいだろう。お前だけは今すぐ殺してやる。殺すだけじゃ済まさない、バラバラにしてあの裏切り者の前に無残な姿をばら撒いてやる!』

カミラ「威勢がいいわね。戦う前から勝ったつもりかしら?」

ヒノカ『ああ、今の貴様が満足に戦えるとは思えない。そんな状態で私を倒そうなどと言ってくれるのだからな……』

カミラ「ええ、そうね。でも、大切な妹のために強くいられるなら、お姉さん冥利に尽きるという物でしょうし、少なくともその点であなたに負けるつもりはないわ」チャキンッ

カミラ(そう、だからあなたに負けるわけにはいかないの。あなたが望んでいた本当の居場所が、そんな無様な場所であっていいはずがないのだから)

カミラ「さぁ、来なさい。相手をしてあげるわ」

ヒノカ『その余裕が何時まで続くか見せてみろ! お前たちもいけっ!』

アサマ「……」ダッ!

セツナ「……」ダッ!

ブノワ「いくぞ!」

スズカゼ「はい!」
525 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:38:54.67 ID:sBrnyF2e0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城『玉座・前』―

カムイ「はっ、せやっ!!!」ブンッ ザシュウウッ

謎の兵士「……」ドサリッ

アクア「やっ、はああっ!」ドスッ ズシャンッ!

謎の兵士「……」ドサリッ

 タッ
  タタッ

カムイ「はぁはぁ……。アクアさん、大丈夫ですか?」

アクア「ええ、大丈夫よ。それより、ヒノカを守る兵が多くなっているわ。それに、あなたの傷も……」

カムイ「これくらい、なんてことはありません。しかし、このままではどうにもならないのも確かですね」

カムイ(私たちでは向かってくる敵を倒すので手一杯です。悪いことが起きないことを祈りたいですが、それは無理な話でしょうね……)

アクア「! カムイ、悪い知らせよ」

カムイ「もしかして、敵の援軍ですか?」

アクア「ええ、後方から新手が来ているわ」チャキッ

 タタタタタタッ

謎の兵士たち『……』

カムイ「ヒノカさんを目の前にして、手をこまねいているわけにはいかないというのに」

カムイ(なにか手を考えないと……)
526 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:44:23.06 ID:sBrnyF2e0
アクア「……」

アクア(カムイはもう大丈夫、だけどヒノカはわからない……)

ヒノカ「ぐうっ、ううっ……」

アクア(奴の力が高まっている。カムイの言葉がまだ理解できているということは、少なくともまだヒノカの意思はあるはずだけど、このままじゃそれは擦り消えてしまう。そうなってしまったら、もう……)

アクア「まずいわね……」

カムイ「ええ、防戦一方ではどうにもなりません。こちらからも打って出ましょう」

アクア「そうしたいところだけれど、四方を敵に囲まれているのよ。飛び出しても、すぐに包囲されかねないわ」

カムイ(それにもし突撃がうまくいって、この敵を掻い潜ってヒノカさんの下に辿り着いたとしても、激しく抵抗してくるでしょう。そこを敵に追いつかれたらそれまで、八方塞がりですか……)

アクア「……カムイ、敵の増援が更に来るわ!」

カムイ「仕方ありません。癪ですが、まずは後方から現れた敵増援を何とかしましょう」

カムイ(後方の増援を手早く片づけて、再度攻撃を仕掛けるしかありませんか……)

アクア「先の増援よりも動きが早いようね、まっすぐこっちに向かって来て……え?」

カムイ「どうしたんですか?」

アクア「こっちに向かってる。さっきの敵増援を吹き飛ばしながらだけどね」

カムイ「敵増援を吹き飛ばしながらって……! まさか、その増援というのは――」

アクア「ええ、私たちにとっての増援よ」
527 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:45:38.92 ID:sBrnyF2e0
レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ ドガンッ

サクラ「ごめんなさい、通してください!」チャキッ パシュッ!

ハロルド「さぁ道を開けたまえ! 正義の使者のお通りだ!」タタタッ

ドササッ!

サクラ「レオンさん、あそこに姉様たちが!」

レオン「わかった。敵の数はそれほど多くない。一気に蹴散らして合流するよ」

サクラ「はい、少しだけ距離を取りつつ援護します!」タッ チャキッ

 パシュンッ!

ハロルド「了解した! ふっ、後ろから敵が来ないと思ったのが君たちの運の尽きだ! これでも喰らいたまえ!」ブンッ ドゴンッ!

 ドササッ

謎の兵士「……」ダッ 

レオン「おっと、近接に持ち込むつもりはないからね。ファイア!」シュオンッ ボオオオッ!

 ドサリッ

レオン「よし、片付いた。姉さん、大丈夫かい!?」パカラパカラッ

ハロルド「後方は片付きましたのでご安心ください、カムイ様」タタタッ

サクラ「カムイ姉様、やっと追いつけました」タタタッ

カムイ「レオンさん、サクラさんにハロルドさんまで」

サクラ「あ、カムイ姉様怪我をして、すぐに治療しますね。それっ!」カラランッ

カムイ「サクラさん、ありがとうございます。そして来てくれてありがとうございました。正直、私とアクアさんだけではどうにもできないところでしたので……」

レオン「そう言ってもらえると、飛んできた甲斐があったよ。だけど、こっちにいる敵の数もそれほど多いっていうわけじゃないみたいだね」
528 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:48:03.14 ID:sBrnyF2e0
カムイ「向こうには、それほど敵がいないのですか?」

レオン「ああ、敵の増援がピタリと止んでね」

レオン(てっきり、自身を守るために兵力を集中しているのかと思ったけど、違うのか?)

アクア「それの影響かもしれないけれど、奴の力はヒノカの中で高まりつつある。何かの前触れかもしれないわ」

カムイ「どちらにしても、その隙が今しかないのなら、それを突き崩すしかありません。ヒノカさんを助け出すために……」

ヒノカ「ううっ、なぜだ。なぜ、お前たちは、そんなに、私を……。うううっ……」

サクラ「ヒノカ姉様!」

ヒノカ「ぐっ、うああっ。ううっ……」

カムイ「もう時間はあまり残されていません。レオンさん、サクラさん、ハロルドさんは周囲の敵の相手をお願いします。その隙を突いて、私とアクアさんはヒノカさんに接近します」

レオン「わかった。敵を絶対に姉さんに近づけさせたりしないから、二人はヒノカ王女にだけ専念して。僕たちは先に仕掛けさせてもうよ!」パカラパカラッ!

カムイ「ええ、お願いします」

ハロルド「うむ、ここが最後の踏ん張りどころ。力の出し惜しみをするつもりはない!いくぞっ!」

サクラ「カムイ姉様、ヒノカ姉様をお願いします」タタタタタッ

カムイ「任せてください」

カムイ(ヒノカさん、きっと助け出してみせます! だから、もう少しだけ待っていてください)
529 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 21:57:41.60 ID:sBrnyF2e0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―シラサギ城・王の間『玉座前』―

ヒノカ「ううっ、ぐっ、うううっ……」

 ピチャン……
  ピチャンッ……

ヒノカ(どうして、お前はそんなにも私を救おうと必死になれる? 私の中にある留まることを知らないこの憎しみや恨みは、お前が向けてくれる思いとは釣り合わないほどに醜悪だというのに……)

ヒノカ(もう、この憎しみが何なのかさえ分からない。私の意思と関係ないものだとわかってしまうほどの邪悪、それが私の中から溢れ続けている)

 ピチャンッ……

ヒノカ(………もう、私にはこれが抑えられないんだろう。あの時、奴に言われるがままに望んでしまった時のように…、もう私には抑えることが出来ない。私の中は、この憎しみだけになりつつあるのか……)

ヒノカ(ここにあった心の底で望んでいた抑えられない大切だったものは何処に行ってしまったんだろう……)

ヒノカ(セツナもアサマもユウギリもオロチも……もうどこにもいないのに、私は何のためにこの奇跡を願ったんだろう……)

ヒノカ(………)

ヒノカ(……)

 ピチャンッ……

ヒノカ(もう、わからない……)

ヒノカ(大切だったものへの渇望が消えて、今あるのは沸々と湧き上がり続ける憎しみだけ……。個人的な誰かに向けたいわけでもない、ただひたすらに憎いと心が叫んでいる。思考は墨を掛けられたみたいに……黒くて、何もわからない……)

ヒノカ(もう理由なんていらない……。探す必要もない……)

ヒノカ(ただ、すべてが憎い……)

 ピチャン……
  ピチャンッ……

ヒノカ(すべてを壊してしまいたいほどに……憎い……)

ヒノカ(……生きているということが…こんなにも憎いと思ってしまう……)

 ピチャンッ……

ヒノカ(あれほど、生きていてほしかったと願った生が……)

(どうして、こんなにも憎くてたまらなくなってしまうんだ……)
530 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/14(月) 22:02:51.19 ID:sBrnyF2e0
今日はここまで
531 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 16:15:13.62 ID:s6JCfj7M0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城・王の間『玉座へと至る道』―

ヒノカ『当たれえ!』チャキッ パシュッ

 サッ

カミラ「どうしたのかしら? そんな攻撃じゃ私は倒せないわよ?」

ヒノカ『この、舐めるな!』

カミラ「そこよ、ムーンライト!」ヒュオオンッ!

 ザンッ!

ヒノカ『ぐっ……!!!』

カミラ「はああああっ!!!」バサバサッ ブンッ

ヒノカ『上がれ!!!』バサバサッ!

カミラ「上に逃げることは織り込み済みよ。先手を取らせてもらうわ」ペラッ

 シュオンッ

カミラ「ムーンライト!」ヒュオンッ ヒュオオンッ!

ヒノカ『そう来るだろうと思っていた、暗夜の女狐!』チャキッ ググッ

 シュパッ!
 ザシュンッ!

カミラ「くっ……」ポタタッ

 ザシュシュンッ!

ヒノカ『ぐ、攻撃は貰ったがこの程度の攻撃、どうということはない。それより貴様の傷は思いのほか深いようだな、女狐……』
532 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 16:20:06.98 ID:s6JCfj7M0
カミラ「……っ」ポタタタッ

カミラ(こっちの攻撃を受け止めるとは思っていなかったわ。だけど攻撃を避けなかった分、向こうにもそんなに余裕はないはず……。私にとっては悪くない状況よ)

ヒノカ『ふふっ。動かなければ眉間を狙って楽に死なせてやろう。生きたままバラバラにされるよりはマシだろう?』

カミラ「面白い冗談ね。今からひれ伏すことになるのはあなただっていうのに」

ヒノカ『そうか……。これでも寛大な提案だと思ったのだが、受け入れられなくて残念だ。それじゃ、望み通りに生きたままバラバラにしてやる!』チャキッ パシュンッ!

カミラ「!」サッ

 バサバサッ

ヒノカ『はっ、いつまで逃げていられるか見物だな!』チャキッ パシュッ!

 ヒュンッ! カキィンッ キィンッ!

カミラ(中央に陣取って狙撃を続けるつもりみたいね。追いかけてこない以上、こちらから勝負に出ないといけないなんて…)

カミラ「まぁ、元々危ない橋だもの覚悟はできているわ」

カミラ(橋の板が折れるよりも先に、渡り切ってみせればいいだけの事よ!)バササッ
533 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 16:24:09.04 ID:s6JCfj7M0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

セツナ「……」チャキッ グググッ

 ヒュンッ! ガッ!

セツナ「!」

スズカゼ「主君をお守りしたいというその意思はわかりますが、そうさせるわけには参りません」

セツナ「……」サッ

アサマ「……」チャキッ ダッ!

ブノワ「はああああっ!!!」ダッ 

 ガキィンッ

ブノワ「こいつは俺に任せろ…。スズカゼは弓兵の方を頼む…」

スズカゼ「はい、アサマさんをお願いします」タッ

アサマ「……」チャキッ

ブノワ「うおおおっ!」チャキッ ブンッ!

 ガキィンッ カランカランッ……

アサマ「!」タッ

ブノワ「その変な呪術を使わせたりはしない…。戦うことは怖いが仲間が死ぬのはもっと怖いことだ…。そうならないためにも、俺はお前を倒す…」

アサマ「……」チャキッ ダッ!
534 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 16:27:47.07 ID:s6JCfj7M0
セツナ「……」サッ ササッ

スズカゼ「はっ、せやっ!」バシュンッ!

 ザシュシュッ

セツナ「……」チャキッ パシュンッ!

 ガキィンッ

スズカゼ「っ、こちらの絡繰を狙っているようですね。いやはや、その腕の良さには本当に感服いたします。出来ることなら、それを生きているあなたに見せていただきたかったものです」

セツナ「……」チャッ スッ

スズカゼ(セツナさんの腕は確かなものです、このまま距離を置いて闘い続けるのは難しいでしょう。ならば、一気に畳みかけて勝負を決する以外に道はありません)

 シュオンッ

スズカゼ『……』カランコロンッ

スズカゼ「一気に行かせていただきますよ、セツナさん」

セツナ「……」

 パシュッ!

スズカゼ『……』チャキッ バシュンッ

 カキィンッ!

スズカゼ「はああっ!!!」ダッ

セツナ「……」パシュンッ!

 ザシュンッ!

スズカゼ「ぐっ……」
535 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 16:31:40.07 ID:s6JCfj7M0
 ポタタッ
  ポタタタタタッ

スズカゼ「ぐっ、はぁはぁ……」

スズカゼ(なんとか急所は外せましたが、思った以上に深く刺さってしまいましたか。ですが、これで私の写し身を送り込むのには成功です。これで準備は整いました)

 ガタンッ

スズカゼ『……』チャキッ

セツナ「……」サッ

スズカゼ「捉えましたよ、セツナさん」チャキッ

セツナ「!」チャキッ キリリッ

スズカゼ「ここまでです!」グッ

セツナ「……」パシュンッ

スズカゼ「はあっ!」バシュンッ

 ドスリッ!

スズカゼ「……」ポタタッ……

セツナ「……」

 カランカランッ……

 ブシャアアッ……
   ドサリッ……

セツナ「」

スズカゼ「はぁ……はぁ……。私の勝ちですね、セツナさん」
536 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 16:37:28.13 ID:s6JCfj7M0
アサマ「……」チャッ ブンッ ブブンッ!

 キィン ガキィンッ!

アサマ「……」タッ チャキッ

ブノワ「そこだ! うおおっ!」グッ ダッ!

 ドゴンッ!

アサマ「!!!」タタッ ポタタッ

ブノワ「はぁはぁ、ぐっ……」

 グラグラ……

ブノワ(強力な攻撃ばかりで、盾の持ち手が壊れかけている…。次が最後のチャンスになりそうだ…)

ブノワ「……」ガサゴソガサゴソ

 ギュッ

ブノワ(……よし、これで大丈夫だ。こんな時にお守りを握りしめてしまうのはどうかと思うが……)

 ザンッ

ブノワ「これで覚悟は決まった……」ガシャンッ!

537 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 16:39:39.39 ID:s6JCfj7M0
アサマ「……」ジリッ チャキンッ

ブノワ「……」

アサマ「……」タタタタタッ

ブノワ「……」ググッ

アサマ「……!」ダッ チャキッ ググッ

 ブンッ!

ブノワ「……そこだ!」グッ ブンッ

 ガキィンッ シュパンッ!

アサマ「!!!」

 ヒュンヒュンヒュンッ ガキィンッ!
 バキッ ドスンッ

ブノワ(盾の持ち手が壊れたか…。だが、この距離でなら!)

 ガシャンッ!ガシャンッ ズザザーッ

アサマ「!」グッ

ブノワ「でりゃあああああああっ」ブンッ

 ザシュンッ!‼‼‼ 
  ドゴンッ ズササーーッ

アサマ「」

ブノワ「……勝てたか…。ふぅ……」
538 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 16:42:52.42 ID:s6JCfj7M0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カミラ「さぁ、そろそろいくわよ。準備はいい?」

 グオオオンッ

カミラ「いい返事ね。スサノオ長城の時より、激しい動きになるから覚悟しておきなさい!」バササッ!

ヒノカ『は、観念して真っ向からくるか。望み通り叩き落としてやる』チャキッ

カミラ「それっ!」パシンッ

 グオオォォンッ
  バサササッ

ヒノカ『急上昇? ふん、そんな動きで逃げ切れると思っているのなら大間違いだ。喰らえ!』パシュンッ

カミラ「そこよ!」

 グオンッ バサバサッ

ヒノカ『な、その状況から方角を変えるだと!?』

カミラ「残念だけど、この子はそこら辺にいる子たちとはわけが違うのよ、っ……」

カミラ(はぁ、思った通り無理な方向転換で傷口が悪化してる。でも、あとちょっとで手が届く距離。そこが最後の勝負よ!)バサバサッ

ヒノカ『くっ、ちょこまかと! 目障りなんだ、貴様は!』パシュンッ

 ヒュン ヒュンッ!

ヒノカ『なぜだ、なぜだ! なんでお前に私は勝てない!? お前は得てばかりで何も辛い思いなどしていない、私の苦しみや恨みはどうして、お前に届かない!!!!』パシュッ!

 ヒュンッ……

ヒノカ『どうしてなんだ!!!』
539 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 17:00:39.13 ID:s6JCfj7M0
カミラ(それはね、ヒノカ王女。どんなにその苦しみが辛かったとしても、それを受け入れて染まってしまったら、それがすべてになってしまうからよ)

カミラ(お父様がカムイから光を奪った本人であったことも、そしてそのお父様がすでにこの世にいないことも、私にとってそれらはとても辛いことだった。だけど、それをカムイは受け入れて前に進むことを決めたわ。その姿が私をここまで歩ませてくれたと言ってもいいでしょうね)

カミラ「あなたの言う通り、私は恵まれているわ。だから今のあなたに負けるわけにはいかないのよ」

カミラ(あとわずかでヒノカ王女の頭上を通過する、それであなたの戦いは終わりよ、ヒノカ王女)

ヒノカ『頭上をちょこまかと、だがもう動きは捉えたぞ、女狐!!!!』チャキッ

カミラ「……」

ヒノカ『これで終わりだ!!!』パシュンッ!

 ヒュンッ!

カミラ「……はっ!」バッ

ヒノカ『え!?』

カミラ(矢は的確ね、だけど――)ブンッ

カキィンッ!

ヒノカ『なに!?』

カミラ「さぁ、痛いから覚悟しておきなさい」
540 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 17:03:35.03 ID:s6JCfj7M0
ヒノカ『っ! と、飛べ! 早――』

 グオオオオッ!!!

ヒノカ『頭上に奴の竜が――』

カミラ「ただ飛び降りただけじゃないわ。あなたを逃がさないためにはこれくらいのことはしないとね?」チャキンッ

ヒノカ『!』

カミラ「さぁ、終わりにしてあげるわ」ググッ

ヒノカ『くそっ、女狐があああ!!!!』チャッ

カミラ「ひれ伏しなさい! はあああっ!」ブンッ

 ドゴンッ!

ヒノカ『がっ……』ドスンッ

カミラ「はぁ……はぁ……」

ヒノカ『ぐっ、うそだ……。こんな、こんなこと、私は……私は……』ググッ

カミラ「……その武器を取らせるわけにはいかないわ」ガシッ

ヒノカ『あ……ああ……』

カミラ「ヒノカ王女、あなたの負けよ」
541 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 17:06:22.10 ID:s6JCfj7M0
ヒノカ『嫌だ……、嫌だ……。こんなこと、私は認めないぞ。アサマ、セツナ、早くこの女狐を殺せ、早くしろ。今なら――』

スズカゼ「アサマさんもセツナさんも、もうあなたの元には戻りませんよ」

ヒノカ『え?』

ブノワ「ああ、スズカゼの言う通りだ。あの二人は、俺たちが倒した…」

スズカゼ「そして、マークス王子の部隊がここ周辺の敵の掃討を終えつつあります、もうあなたに戦力は残っていないということです、ヒノカ様」

ヒノカ『な、んだと……』

カミラ「二人とも無事だったのね」

スズカゼ「はい、どうにか。敵の掃討は済みつつあります、あとはヒノカ様の本体だけでしょう」

ヒノカ『馬鹿な、彼らは戻ってきてくれるはずだ。戻ってきてくれるはずなんだ……。私が呼べば、ちゃんと戻ってきて……。早く、私の下に、お願いだ……私を、私を一人にしないでくれ……』

カミラ「ヒノカ王女……」

ヒノカ『誰か、誰か……』

ヒノカ『なんで、なんでなんだ……』

カミラ「もう、居ないのよ、あなたの臣下は――」

ヒノカ『なんで……なんでわからないんだ……。私と一緒に戦ってくれたのは一体誰だったんだ?』

カミラ「え?」
542 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 17:07:28.00 ID:s6JCfj7M0
ヒノカ『誰を呼べばいいんだ。私は、私はなにを望んだんだ。何もわからない……、私は、私は何を望んだんだ?』

ヒノカ『わからない、わからない……。なんで何も思い浮かばないんだ、私は守ろうとしていたはずなのに、なんでそれが分からなくなっているんだ』

 ガクガクッ

ヒノカ『いやだ、いやだ!!!!』

カミラ「ヒノカ王女!?」ダッ

ヒノカ『私は、私は望んだんだ。望んだから私は存在しているんだ! なのに、なぜ思い出せないんだ。私が守りたかったものがどうして、どうして……』

ヒノカ『やめろ、やめてくれ! 私は、私はそんなことそんなこと望んでいない。私は守りたかったものと一緒にいられるだけでよかった。邪魔する敵を殺せるだけで良かった。なのに、なんで、なんでこんなに……』

ヒノカ『殺したいという思いだけが渦巻いてしまうんだ……』


543 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 17:11:44.81 ID:s6JCfj7M0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・王都『中央広場』―

 キィン! カキィンッ!

謎の白夜兵「……」チャキッ

白夜兵A「くっ、これもユキムラの差し金だというのか!?」

白夜兵B「そんなことを今は考えなくてもいい! 今は彼らを守ることだけを考えるんだ!」

白夜兵A「!」

市民「大丈夫、お侍さんたちがきっと、きっと守ってくれるわ、だから安心して。きっと、大丈夫だから」

子供たち「う、うん……」

白夜兵B「彼らを守れるのは今いる我々だけだ。それにこの殺気、とてもではないが話が通じる相手ではない」

白夜兵A「は、はい!」

白夜兵D「くそっ、なぜ同胞相手にこうも簡単に剣を向けられる!? 貴様らには白夜の侍としての誇りはないというのか!」

 ダッ ダッ

謎の白夜兵たち「……」チャキッ

白夜兵A「何も答えないか……」

白夜兵B「ああ、だがそれほど強い連中ではないようだからな。ユキムラの恩恵にあずかり悠々と過ごして来た身で、我々をどうにかできるとは思わないことだ」

白夜兵C「ああ、それじゃ行かせてもらうぜ! うおおおおっ!!!!」ダッ

 ブンッ ザシュンッ

謎の白夜兵「……」ドサッ

白夜兵C「へっ、こんな相手いくら来ようが何の問題もねえ。このまま一人残らず、倒して――」

 ピチャン……
544 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 17:15:20.70 ID:s6JCfj7M0
白夜兵A「な、なんだ、この音? 水面に何かが落ちたような……」

白夜兵C「さぁな、わからねえけど。特に気にする必要は――」

 ピチャンッ
  シュオオンッ

 ドスリッ

白夜兵C「……あ?」

 ポタタッ ポタタタッ

謎の白夜兵「……」

白夜兵C「……てめえ、いつからそこに――」

 ズシャンッ ブシャアアアッ!‼‼
  ドサリッ

白夜兵B「!!!!」

白夜兵A「貴様!!! っ!」ダッ シュキンッ

 ザシュンッ ドササッ

白夜兵A「ど、どうなってるんだ。真横に敵なんていなかったはずなのに!」

白夜兵B「わからん、わからないが、この術、白夜が使える術ではないのは確かだ。いったい何が起こって……」

 ドドドドドッ

白夜兵D「しょ、正面から軍勢が来ます!」

白夜兵B「くそっ、規模はどれほどのものだ?」

白夜兵D「はい、ざっと見ても二十以上……え?」

 ザッ

謎の白夜兵たち『……』チャキッ

謎の暗夜兵たち『……』チャキンッ

白夜兵B「な、何が起こっている!? 暗夜と白夜の兵がなぜ、徒党を組んでいる……」

白夜兵A「何だよ、これ……。なんで暗夜の連中はユキムラ達を倒しに向かったんじゃないのか? まさかこいつらとユキムラは裏で繋がっていたっていうのか!?」

謎の暗夜兵たち『……』ダッ

白夜兵D「て、敵が来ます!」

白夜兵B「民を中心に囲むように陣を取れ! 手を出させるな!」

白夜兵一同『はい!!!!』タタタタッ

白夜兵B(くっ、リョウマ様に民を託されたというのに――)

(何一つ、守り切ることはできないというのか……)

545 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/23(水) 17:19:08.09 ID:s6JCfj7M0
今日はここまで

 ハイドラの悪意の象徴は、死体を操って作り上げた白夜と暗夜の混成部隊だと思っている。
546 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 22:24:35.30 ID:F32KPjsE0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城・王の間『玉座前』―

謎の兵士「……」タタタタッ

レオン「行くよ、サクラ王女!」

サクラ「はい! ハロルドさん、すみませんが先頭をお願いできますか?」

ハロルド「ああ、任せてくれたまえ! さぁ、悪党ども私が相手だ!」

 ドゴンッ!

レオン「よし、道が開けた。姉さんたちはこの隙に進むんだ!」

カムイ「ありがとうございます! アクアさん、私の後に付いて――」

アクア「いいえ、あなたが私の後に続きなさい」チャキッ

謎の兵士「……」タタタッ

アクア「悪いけど、今は手加減をしている暇はないの。さっさと退きなさい!」ダッ

 ググッ

アクア「はああああっ!」ブンッ

 ドゴンッ ドササッ!

カムイ「凄いですね、アクアさん」

アクア「こんなの何でもないわ。ヒノカはすぐそこよ、急ぎましょう」

カムイ「はい!」

 タタタタッ 
547 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 22:31:27.05 ID:F32KPjsE0
ヒノカ「……」

 タタタタタッ

カムイ「……ヒノカさん」

ヒノカ「……カムイか……」

カムイ「もう終わりにしましょう、これはあなたが守りたかったものではないのですから」

ヒノカ「ああ、そうだな。こんなものを守る必要もないとようやく気づいたよ……」

カムイ「そうです、あなたが守るべきものは――」

ヒノカ「そうだな、もうそんなものは無いのだから、守る必要もなかったんだ」

カムイ「……え?」

ヒノカ「そうだろう、だって今の私は守りたいのではなく、ただ純粋に生きている者を殺したいと願っているのだから」スチャッ

カムイ「な、何を言っているんですかヒノカさん。あなたには守りたかったものが――」

ヒノカ「あったのだろう。でも、もう何も思い浮かばないんだ。今は人を殺すこと以外に、思い浮かぶことなど何もない。生への妬みや恨みしかない私に、一体どんな守りたい物があったというんだ?」

アクア「ヒノカ、目を覚まして。それはあなたの感情じゃない。その願い、感情はあいつがあなたの心に入り込ませた偽りの感情に過ぎないわ。あなたの本当の願いを忘れては駄目よ!」

ヒノカ「……私の本当の願い、それを思い出して何か意味があるのか? 思い出せたのなら、この湧き上がり続けるこの欲望が収まるのか? そんなことあるわけない、収まる答えは一つだけ、この世に存在する人間を一人残らず殺すこと、それが一番簡単で分かりやすい答えだ……」
548 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 22:42:59.48 ID:F32KPjsE0
カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「お前たちを殺し、その後に白夜の民も暗夜の民も同じように殺していけばいい。赤子だろうが老人だろうが関係ない。一人残らず殺してしまえば、私のこの湧き上がり続ける思いも消えるはずだ。人間など死んでしまえばいい、そうすれば自ずと平穏な世界になるそう思った」

アクア「!!!!」

ヒノカ「そうと決まれば括る必要もない。人を殺めだけなら武器を選ぶ必要が無いように、従ってくれるのなら駒を選ぶ必要もなかったのだからな……」

 ドクンッ!
  ドクンッ!

アクア「っ!!!」

カムイ「アクアさん!? 大丈夫ですか」

アクア「っ、ヒノカに集中していた力が広がっている。前とは比べ物にならないほどの力よ」

 ピチャン……
  ピチャンッ…… シュオンッ

カムイ「くっ、また現れたみたいですね。アクアさん気を付けてください」

アクア「ええ、わかってる。だけど、この人たちは……」

カムイ「どうしたんですか?」

アクア「彼らは白夜兵じゃないわ。おそらく戦死した暗夜の兵士たちよ」

カムイ「え?」

謎の暗夜兵「……」チャキッ

ヒノカ「白夜も暗夜も関係ない。生きているものを殺せればそれでいいのだからな……」
549 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 22:46:44.46 ID:F32KPjsE0
カムイ「白夜の方たちだけではなく、暗夜の方たちまで……」

ヒノカ「ふふ、先ほど命を奪っておけばこうならなかったというのに、な。本当にお前は甘い存在だ」

カムイ「……」

ヒノカ「お前の甘さで私はこうして願いを叶えられる。お前の戦ってきた意味もすべて水泡に帰した」

カムイ「それはまだわかりませんよ」

アクア「カムイ」

カムイ「まだ、私は諦めていません。あなたがどのような御託を並べたとしても、最後の希望が残されている以上、折れるわけにはいかないんです」

ヒノカ「ははっ、あははははははっ。その最後の希望に手が届くと思っているのか?」

カムイ「ええ、届くと思っています。だからこそ、私はここにいるのですから!」ダッ

ヒノカ「……そうか、ならここがその終わりだ。死ね、カムイ」スッ

謎の暗夜兵「……」ダッ

カムイ「アクアさん、援護をお願いします!」

カムイ(諦めるなんて言葉はもういりません。元から悪い賭けをしているのです。そんな中で事態が好転する事なんてそう簡単にあり得ません。だからこそ、その希望がある限り、私は戦い続ける!)

カムイ「はああああああっ!」
550 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 22:48:29.33 ID:F32KPjsE0
謎の暗夜兵「……」チャキッ ブンッ
 
 カキィンッ!

カムイ「邪魔をしないでください! せやあああっ!」ブンッ

 ザシュンッ!
ドサリッ

カムイ(ヒノカさんの前方に気配はない。今なら!!!)

ヒノカ「!」

カムイ「捉えましたよ、ヒノカさん!」チャキッ

 ブンッ
  ドゴンッ!

ヒノカ「がっ……ぐっ」ズザザーッ

カムイ「っ、浅かったみたいですね。ならもう一度――!」

謎の暗夜兵「……」ブンッ

 サッ

カムイ「っ、そうはいきませんか……」

ヒノカ「ふふっ、懐に入ってきておきながら刃は使わないか。どこまでも甘いな……。今の攻撃で殺せていればと、いずれ後悔することになるというのに」

カムイ「後悔などしません。私の目的はあなたを救う事であって、命を奪う事ではありません。何度も言ったはずです」

ヒノカ「そうか、なら白夜の民の命は救わないということか。私をお前が捉えるまでに、何十人何百人が殺されるのだろうな?」

アクア「やっぱり、この力の広がりは……」

ヒノカ「そうだ、すでに王都に手は回っている。もう被害は広がっているだろう。次々に人が死んでいくのを知りながらも、その願いに固執するお前の姿はとても滑稽だぞ、カムイ」

カムイ「……」
551 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 22:52:59.54 ID:F32KPjsE0
アクア(そんなことさせないわ。私の力を使って少しでも、力の広がりを――)

 スッ

アクア「……カムイ?」

カムイ「大丈夫ですアクアさん。それにあなたに力を使わせるわけにはいきません」

アクア「カムイ……。だけど今の状況で白夜の人々を救うためには……」

カムイ「いいえ、まだ私たちには信じられるものがあります」

アクア「え?」

ヒノカ「ふふっ、何もしないのか? なら白夜の人間を殺しつくした後に、お前と共に歩んで来た者たちもすべて皆殺しにしてやろう。この状況では誰が敵なのかもわからなくなっているだろう」

カムイ「いいえ、そんなことはありません。私たちにとっての敵、それはその偽りの心を作り上げた存在に他なりません。そして、私たちはその闇を払うために私たちはここに来ました」

ヒノカ「そうか。だが、結局お前は私を救うという選択をして、残りを闇に沈めているだろう?」

カムイ「そうですね。私はあなたを救うという選択を選びました。だからこうして、あなたの前に立ち続けている。ですが、残った白夜の人々も同じように救いたいのも確かです」

ヒノカ「そうか、ならわかるだろう。さっき止めを刺せたときに止めを刺さなかったことがどれほどの痛手か……。私の駒はどんどん人を殺していく、ここにいるお前が止めるまでどれだけの数が死ぬのだろうな? お前が守ると決めたのなら、救われた者たちもいたはずなのに……。お前の手は、結局何も救えないままに終わる」

カムイ「……私の手で救えるものがあるとするなら、今はあなただけです。それは間違いありません。私は多くの白夜の民を直接救うことを放棄した。でも、ヒノカさんは知らないだけです」

ヒノカ「なに?」

カムイ「この戦争を終わらせるために戦うことを選び、白夜を救うために戦うことを選んでくれた人は私の他にもいるということをです」
552 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 22:54:25.51 ID:F32KPjsE0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・王都『中央広場』―

 ザシュンッ キィンカキィンッ!

白夜兵A「くそ、倒しても倒してもキリがない!」

白夜兵B「諦めるな! ここで我々が折れたら、ここにいる者たちを誰が守れる!?」

白夜兵D「敵、西から接近、弓兵隊は側面から迫る奴らの相手をしろ!」

白夜弓兵隊『はい!』タタタタッ

白夜兵B(このままではじり貧だ。幾ら相手の腕が劣るとしても、この物量の前では後どれほど耐えきれるか……)

謎の暗夜兵「……」タタタタッ

白夜兵D「このぉ。でりゃああああ!」チャキッ ブンッ

 ザシュリッ! ドササッ

白夜兵D「はぁはぁ……。どうすればいい、こんな無秩序にやって来る者たち、どう相手にすればいいんだ!」

白夜市民「このまま嬲り殺されるくらいなら、いっそのこと自決したほうがマシだ!」チャキンッ

白夜兵B「お前何をする気だ。止めろ、その男を止めるんだ! 早くしろ!」

白夜兵E「は、はい! 落ち着いてください!」

白夜市民「放せ、放せ。もう、こんなの抑えられるわけがない! あんたたちが頑張ってるのはわかるけどよ、こんなの無理に決まってる! こんな奴らに捕まって酷い目に合うくらいなら、今死んだほうがましだ!」

白夜兵B(くっ、敵の猛攻でもう民も限界だ。このままでは……)
553 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 22:57:18.25 ID:F32KPjsE0
白夜兵A「隊長、み、南の方角、空に影在り! あ、暗夜の竜騎兵部隊です!」

白夜兵B「なに!?」

白夜兵A「真っ直ぐこちらに向かって来ます!」

白夜兵B「くそ、弓兵隊で対処を――」

白夜兵D「だ、駄目だ。こっちの手を割いてしまったら、すぐに押し込まれかねない!」

白夜兵B「くそっ」タタタタタッ

 バサバサバサッ!

白夜兵B(な、何て数だ。こんなもの、今襲い掛かってきている者たちの比ではない。我々を嘲笑っているかのようではないか……)

白夜市民「く、来る。もう、もうおしまいだ……」ヘタリッ

白夜市民「ううっ、ごめんね。ごめんね」

子供たち「うええんっ」

白夜兵B(……なんと情けないことだ。このような時に私は、何一つ守れる術を持てないというのか)

白夜兵B「……来るなら来い! 私が相手をしてやる!」

白夜兵A「隊長、何をして――」

白夜兵B「お前は持ち場を維持しろ。弓兵が来るまで私が維持してみせる」

白夜の子供「お、お侍さん……」

白夜兵B「大丈夫だ、何も恐れることは無い。守り切ってみせるからな」

白夜の子供「う、うん……がんばって」

白夜兵B「……ああ」

白夜兵B(何体だろうとさっさとかかってくるといい。この命が尽きるまで、多くを倒してみせる)

白夜兵B「さぁ、来い!」

謎の竜騎兵「……」スッ

 バサバサッ!

白夜兵B「うおおおおおおっ!」チャキッ ブンッ!

 スカッ

白夜兵B(く、最後に空振りか。くそっ、こんな形で終わることになるとは……)

白夜兵「申し訳ありません、リョウマ様……」
554 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 23:01:40.53 ID:F32KPjsE0
謎の竜騎兵「奴らが敵だ。仕掛けろ!」

  ビュン!
   ビュンッ!

白夜兵B「え?」

カムイ軍竜騎兵「それぞれの方面から迫る奴らを抑える。全員、死力を尽くせ!」

カムイ軍兵士たち『おーーーーっ!』

 バサバサバサッ
  スタッ スタタッ
   タタタタッ!

カムイ軍兵士「侍さん、ちょっと横失礼するぞ!」ダッ

白夜兵A「は?」

謎の暗夜兵「……」ザッ

カムイ軍兵士「おそい! てりゃあああっ!」ザシュンッ

 ドゴンッ!

カムイ軍兵士「よし、一気に陣を敷け!」

カムイ軍ジェネラル部隊長「任せろ! 敵の攻撃が白夜の民に届かぬように細心の注意を払うこと、よいな!」

ジェネラル部隊『はっ!』ザッ!

白夜兵E「え、て、敵じゃないの?」

カムイ軍ジェネラル部隊長「ここは我々が抑える。市民の中に居る怪我人の治療はそちらにお願いしたいのだが、いいだろうか?」

白夜兵E「は、はい。すみませんがお願いいたします!」タタタタッ

カムイ軍ジェネラル部隊長「うむ、こちらは陣を作り上げた。向かってくる敵を掃討しつつ、現状の維持に努めるとする」

カムイ軍竜騎兵「よし、残りの者たちは他の生存者たちを探しに迎え!」

カムイ軍兵士たち『はっ!』タタタタッ

白夜兵B「い、一体何が起きて……」

カムイ軍竜騎兵「危ないところだったが、どうにか間に合ったようだな。そこの白夜兵、立てるか?」

白夜兵B「あ、ああ。……なぜ我々を助けた?」

カムイ軍竜騎兵「?」

白夜兵B「暗夜はユキムラと協力して我々を排除しようとしているのではなかったのか?」

カムイ軍竜騎兵「ユキムラと協力? 一体何の話か知らないが。我々の主はマークス王子以外に存在しないし、その様な命令に覚えはない。……だが、そう勘ぐっても仕方のない状況ではあるようだな……」

謎の暗夜兵「……」チャキッ

謎の白夜兵「……」チャキッ

カムイ軍竜騎兵「貴様らが何者かは知らないが、これ以上の戦火の拡大をマークス王子は望んでいない。だが、それを妨害し、刃を向けるのならば――」

「こちらも白夜の民を守るという義務を果たさせてもらう」

555 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/01/31(木) 23:02:30.98 ID:F32KPjsE0
今日はここまで

 長々になってしまって申し訳ない。あともう少しでこの章は終わります
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/08(金) 09:32:26.17 ID:J4nFf91DO
乙 ヒノカ、よく頑張ったがとうとう終わりの時が来たようだな
557 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 22:23:17.05 ID:K2+bzrpg0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―

ヒノカ「……なるほど、これがお前と同じように戦う者たちだという事か。白夜を助けることなど無視していれば、もう少し長く生きられたかもしれないというのに、自分たちから飛び込んでくるとは、な……」

カムイ「それが皆さんの選んだ道です。白夜の人々を一人でも多く救い、そして戦いを終結させること。あの日、旧暗夜を討ち倒すために立ち上がった人たちが望んだのは二国間の戦争を終わらせることなのですから」

ヒノカ「ふん、小賢しいことだ。そんな上辺だけの理想など、現実の前に崩れるしかないことを教えてやればいいだけのこと、私がいる限りお前たちの理想に手が届くわけがない。なぜなら、お前は私を殺そうとしていないのだからな。止められるわけもないだろう?」

カムイ「ええ、命は奪いません。ですが、その偽りの悪意を払う事が出来れば止められると信じています」ダッ

ヒノカ「そうか、なら私は容赦なくお前の命を奪わせてもらうだけの事だ。その願いが叶わないことを刻みながら死ね、カムイ!」バサバサッ

カムイ「はあああっ!」ブンッ

ヒノカ「はっ!」キィンッ

アクア「カムイ、援護を――!」サッ

 ブンッ!

謎の兵士「……」チャキッ

アクア「邪魔をしないでちょうだい、あなた達に構っている時間は無いのよ!」チャキッ ダッ

謎の兵士「……」ダッ!
558 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 22:26:45.67 ID:K2+bzrpg0
 キィン! 
  カキィンッ!

カムイ「はっ、やああっ!」ブンッ ブンッ

ヒノカ「ふっ、どうした、その程度か?」

カムイ「くっ……」

カムイ(どうにかして天馬から引きずり降ろさないと、勝機がありません。ですが、こんな上を取られて戦い続けるのにも限界があります。どうにかして、天馬をどうにかできる距離まで近づければ………)

ヒノカ「私とだけ戦うのでは退屈だろう? さぁ、相手をしてやれ」

 シュオンッ

謎の兵士「……」チャキンッ ダッ

カムイ「っ! 退いてください!」ダッ ブンッ

 ザシュリッ

ヒノカ「はああっ!」バサバサッ! ググッ

カムイ「!」チャキッ

ヒノカ「てやあああああっ!」ブンッ

 ドゴンッ!

カムイ「ぐっ!!!!」ズザザーーッ

カムイ(っ、上空からの振り下ろしですか。どうにか受け切れましたが、こんなものが連続で来てしまったら……)

ヒノカ「休む暇はないぞ、いけっ」シュオンッ

謎の兵士「……」チャキッ
559 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 22:30:45.60 ID:K2+bzrpg0
カムイ「っ!」タッ チャキッ

謎の兵士「……」ブンッ

 ガキィンッ

カムイ(くっ、どうすれば……)

ヒノカ「ふっ、受け止めるか。さっきと同じように切り倒して来ると思ったが、そうするのであればこちらもこう動くだけだ」バサバサッ

カムイ(ヒノカさんの気配が背後に!?)

ヒノカ「……ふふ」ググッ バササッ

カムイ「!」サッ 

ヒノカ「死ね!」ブンッ!

 ザシュンッ! ビチャアアアアッ
  ドサリッ

謎の兵士「」

ヒノカ「ちっ、抑えられないとは使えないな。お前だけ真っ二つになってどうするというのだ?」

カムイ「はぁ……はぁ……」チャキッ

ヒノカ「なんだ、もう疲れているのか? 大口を叩いておいても、結局お前に私は止められない。救う事なんて出来はしない。だからさっさと殺してしまえばよかったんだ。そうすれば、お前が死ぬこともなかったというのに」

カムイ「私は死にません。いえ、まだ死ぬわけにはいかないんです」

ヒノカ「ふふっ、そうか。なら尚更、お前のことを殺したくなる。死を覚悟して諦めたような者より、そういう希望を抱いている者を殺すことの方がいい。そのほうが、とても気持ちがいい。ああ、殺したくてたまらない、堪らないんだ、カムイ!」

カムイ「……」
ヒノカ「安心しろ。殺すのは一瞬だけだ、嬲り殺したりなんてしない、まだまだ殺さないといけない者たちが溢れている。そして、お前もその中の一つに過ぎない。ただ、殺した時の喜びは大きいだけのことだ」

カムイ「いいえ、その喜びを貴女が感じることはありません」

ヒノカ「……?」

カムイ「今のあなたに……いいえ。その偽りの心に負けることなどありません。あなたの思いがどんな形であろうとも、それはただの偽りなのですから。そんな衝動に負けるわけにはいかないんです!」チャキッ

560 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 22:37:48.05 ID:K2+bzrpg0
ヒノカ「そうか。なら試してみればいい」シュオンッ

謎の兵士たち『……』ダッ

ヒノカ「望み通り、打ち勝って私を倒せばいい。もっとも、死に様を晒して倒れるのはお前の方になるだろうが……」

カムイ「ええ、出来るものならやってみてください……」

ヒノカ「……」チャキッ

カムイ「……」チャッ

ヒノカ「……やれ!」バサバサッ

謎の兵士たち『……』ダッ!

カムイ「!」ダッ

 キィンッ ザシュッ!ドサッ

 ガキィンッ ギチギチッ キンッ ドスリッ!

カムイ(これで二人、残りは一人!)

謎の兵士「……」ダッ

カムイ「はあああっ!」チャキッ

 バサバサッ!

ヒノカ「もらったぞ、カムイ……」
561 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 22:56:43.10 ID:K2+bzrpg0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―

ヒノカ(あれほどの大口を叩くのだから、何か手があるのかと思ったが。順当に相手をするばかりか。まあ、そうだろう。この状態で私にだけ気を配るなんてことは出来るわけもないのだから)

ヒノカ(死の間際にお前は何を思うんだろうな? 成し得なかったことを悔やむのか、それとも無様に生きようともがくのか。いや、もがく暇など与えるつもりはない、胴体を切り離してしまえば、痛みはあろうとも動けなくなるのは間違いないのだからな)

ヒノカ(この距離、もう避けられる距離ではない。目の前の敵に対処しているお前に、私に手を回す余裕はない、これがお前の最後だ)

ヒノカ「ふふっ……」

ヒノカ(心の中に渦巻いていた殺意が喜んでいる。目の前の命を奪う事もそうだが、ずっと心の中にあった蟠りをここで消し去ることができる。私の今渦巻く感情を刺激する、不愉快な棘はカムイが齎しているものに違いない。なら、カムイを殺せばこの棘も無くなるはずだ)

 ズキン……

ヒノカ(そうだ、この痛みだ。不純物が混じっている気がしてならないこの痛み。不愉快だ、不愉快にも私の思考の邪魔をしてくる。まるで、殺したくないと願っているかのように)

ヒノカ「……」

ヒノカ(何を馬鹿なことを、もう私には何も残っていないというのに、何をここにきてこんなわずかな不愉快さに揺らいでいる? こんなよくわからない心の動きに、気にしなければいい事だ、そうだ、もう気にしないでよくなる。さっさとこの棘は抜いてしまおう)

ヒノカ「……」チャキッ

バサバサッ!

ヒノカ(最後まで私を救う、そんなことを考えていた愚か者とも、これでさよならだ)

 バサバサッ


ヒノカ(背中を完全に取った。もう外さない……。誰のものかわからないこの武器も、誰の者だったかもわからないこの天馬も、誰のために願ったのかも私にはもう無い。今あるこの感情だけが全ての私には、この棘は必要ない……)

 ズキン……

ヒノカ「ぐっ……。鬱陶しい……」

ヒノカ(なぜだ。なぜ、こんなにもこれだけは居残り続ける? カムイ、お前だけはどうして、私の中であり続ける? こんなにも黒い感情の渦の中で、どうしてお前は道標のように……)

ヒノカ(光を持っているんだ……)
562 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 23:02:54.65 ID:K2+bzrpg0
アクア「はああっ!」ドゴンッ!

謎の兵士「」ドサッ!

アクア「はぁはぁ、これで――!」

ヒノカ「……」チャキッ

アクア「カムイ、後ろよ!」

カムイ「!」

ヒノカ(もう光は要らない。私の中にあるのは、この暗闇だけになってしまった。誰の者かなんてどうでもいい、でないと私は何のためにここまで戦ってきたのかさえ、わからなくなってしまう!)

ヒノカ「これで終わりだ!」

アクア「ヒノカ、やめて!!!!」

ヒノカ「死ね……」ググッ

アクア「カムイ!!!」

ヒノカ「はあああああっ!!!!!」

カムイ「!!!!!」チャッ!

 ブンッ
  ズシャリッ……

 ポタタッ ポタタタッ

ヒノカ「……!?」

 キンッ ギギギッ

カムイ「っ……。どうにかなったみたいですね、ヒノカさん」

ヒノカ「な、なにをした……」

カムイ「理解する必要はありませんよ、さぁ覚悟してください、かなり手痛いお返しをしますからね」チャキッ
563 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 23:12:18.24 ID:K2+bzrpg0
ヒノカ「は、離れ――」

 ザンッ! ビシャアアッ! ゴトリッ!

ヒノカ(天馬が――くっ、離脱して態勢を――)ダッ

カムイ「逃がしません、はああああっ!!!!」ダッ ブンッ!

 ドゴンッ!

ヒノカ「がっ……ぐっ、ううっ……」ズササーッ

ヒノカ(な、何が起きた……。私の攻撃は確かに入ったはずなのに……。どうして、奴は……)

カムイ「っ、うううっ……」ポタタッ ポタタタッ カランカランッ……

ヒノカ(私の得物の攻撃は入っていた。だが、これが意図的に入るようにされたとするなら……)

ヒノカ「あえて避けなかったというのか……」

カムイ「ええ、このままでは、ずっと仕切り直しになってしまいますからね……。一か八かでしたが何とかうまくいって良かったです……。ううっ……」ポタタッ

ヒノカ「っ、だが私の勝ちのようだ。こうして倒したとしても……命までは奪っていないのだからな」

 ピチャン……
  シュオォォンッ

謎の兵士たち『……』

カムイ「っ……」

ヒノカ「逃げ場などない。最後に目に物を見せてくれたが、その馬鹿げた願いがお前の命を奪うことになったな、カムイ?」

カムイ「……」
564 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 23:20:05.55 ID:K2+bzrpg0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―

カムイ「……」

カムイ(もう、ヒノカさんは力を使う事しか出来ることは無いはず、どうにかしてあの玉座に連れて行くことが出来れば……)

カムイ「っ……」

カムイ(さすがに先ほどの攻撃は応えましたか。どうにか剣で受けて勢いを殺せましたが、かなり深く受けてしまいました。剣がこれほど重く感じるなんて……)

 ガシャンッ……

カムイ「ぐっ、ううううっ……」ガクッ

ヒノカ「ふふっ、もう、何もできないだろう? さぁ、後悔するといい。私を殺しておけばよかったと……」

カムイ「いいえ、そんなものはごめんですよ。私は……あなたを救うために戦うことを選んだのです。だから……後悔なんてしません。そして、まだ死ぬわけにもいきません……」ググッ チャキンッ

 ポタタタッ

ヒノカ「なら、その愚かな夢を抱いて死んでいけばいい……」

謎の兵士たち『……』チャキンッ

カムイ(くっ、痛みばかりで感覚が鈍くなっています。今、私の周囲にどれだけの敵がいるのかも、わからない……)

 タタタタタッ

カムイ「足音?」

アクア「カムイ! 待っていて、今助けに向かうわ!」

カムイ(アクアさんの声……。やっぱり頼もしく聞こえます。でも、多分間に合わないでしょうね……)

ヒノカ「ふふっ、さぁ、やってしまえ」

謎の兵士たち『……』ダッ

アクア「待ちなさい、絶対にカムイの下へは行かせないわ!」ダッ ブンッ

 ドゴンッ

カムイ(アクアさんが一人倒してくれたみたいですね。あとはわたしがどうにかできれば……。ですが、何人いるのでしょうか。気配がようやく感じられる。四方八方から迫ってきているみたいです。どこかを一点だけ倒したいところですが、この痛みでは動けません。でも、ここで折れるわけにはいきません)

カムイ「私はあなたを救うと決めて、ここまで来たんです。だから、負けられません!」

 グッ ポタタタッ

カムイ「はあああっ!」ザンッ

 ブシャリッ! ドサッ

ヒノカ「一人倒したか、だがそこまでさ」

謎の兵士たち『……』チャキッ ググッ

ヒノカ「死ね!」

謎の兵士『……』ブンッ!

カムイ「!!!!!」

 シュオンッ
  ガキィンッ!

カムイ「……え?」

カムイ(敵の攻撃を誰かが受け止めてくれている? だけど、アクアさんはまだ私に辿り着いていません、それでは一体誰が?)
565 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 23:24:48.29 ID:K2+bzrpg0
謎の兵士「……」ダッ 

 パシュンッ!
  ドスリッ! ドササ……


ヒノカ「な……」

???「……」スタッ

ヒノカ「お前たち、一体何をしているんだ。私の駒ならば、カムイを殺せ。なぜ殺さないで、守ろうとしている?」

???「それが…ヒノカ様の命令だから…」

ヒノカ「そんな命令、私は出していない」

???「ええ、そうですね。あなたからそんな命令は受けておりませんし、お受けするつもりもありませんよ。なにせ、私たちが従っている人は私たちの知るヒノカ様だけですからねぇ」

ヒノカ「なんだと……?」

カムイ「あ、あなたたちは一体……」

???「えっと、ヒノカ様の臣下…」

???「そうですね、ただそれだけの存在です。こうして、もう一度主に仕えること許されたのであれば、その命令に従うことは道理でしょう」

カムイ「まさか……あなた達は……」

ヒノカ「何故だ、なぜ私の命令を聞けない。私が呼び出した者たちのはずなのに、なぜだ」

セツナ「違うよ、私たちを呼んでくれたのはヒノカ様…」

アサマ「そういうことです。ですから、あなたのご命令を聞くことはできません」

ヒノカ「では、お前たちは誰の命令で動いているというんだ……」

セツナ「アサマ…、私の説明、駄目だったかな?」

アサマ「いいえ、本当に分かっていないだけですよ。ですから、わかるまで言ってやればいいだけのことです」

「私たちの主はヒノカ様しかいません、と」
566 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/08(金) 23:26:40.21 ID:K2+bzrpg0
今日はここまで
 
 次回かその次でこの章は終わりになります。
567 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:09:11.81 ID:wGAjbhBY0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―

アサマ「……」

セツナ「……」

ヒノカ「何を言い出すかと思えば。主は私だ、お前たちを呼び、駒として扱うことにしたのは私だろう。主の命に従うというのなら、今の言葉は――」

アサマ「物分かりが悪いようですね。確かにヒノカ様は物分かりの悪い部分もありましたが、これほどではありませんでしたよ」

セツナ「うん…。私もそう思う…」

ヒノカ「貴様ら……、そうか、ならこのまま共に死ね!」スッ

謎の兵士たち『……』ダッ

アサマ「セツナさん、援護をお願いしますね」ダッ

セツナ「うん、任せて……」チャキッ パシュンッ!

 キィン! カキィンッ!

カムイ(一体何が起きたというのですか? それにヒノカさんの命令というのは一体……)

 タタタタタッ

カムイ「ん?」

 タタタタタッ

アクア「カムイ!」

カムイ「アクアさん!。っ……」

アクア「大丈夫? 今すぐ手当てをしないと……」

カムイ「いいえ、今はヒノカさんを玉座に……連れていくことが先です……ぐっ!」フラッ ググッ ポタタタッ

アクア「そんな傷で何を言っているの? サクラがもう少しで駆けつけてくれるわ。それまで待って――」

アサマ「いいえ、そう悠長に構えられては困ります」スッ

アクア「!」チャキッ
568 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:20:41.14 ID:wGAjbhBY0
アサマ「おやおや、武器を向けないでくれませんか? 今の私は敵ではありませんので」

アクア「いいえ、奴の力が生み出した存在である以上、あなた達は敵よ。どんなに意思を持っていたとしても警戒するに越したことはないわ」

アサマ「ふむ、あなたも思ったよりも頑固な方のようですね」

アクア「放っておいてちょうだい」

アサマ「そうですか。しかし残念ですが、そういうわけにいきません」シュオンッ

アクア「! 何を――」

アサマ「それっ」ブンッ

 ホワンッ

カムイ「っ……え?」

カムイ(体の痛みが和らいで……傷も塞がっている?)

アクア「カムイ、大丈夫なの?」

カムイ「はい」

アサマ「はぁ、貴重な杖を使ってしまいましたね。こんなことに使うとは思ってもいませんでしたよ」ポイッ カランカランッ

カムイ「どうして私の治療を?」

アサマ「私たちの役目はあなたを守ることです」

アクア「カムイを守る事……」

セツナ「うん…。私とアサマでカムイ様をお守りすることが、ヒノカ様からの最後の命令…」

カムイ「でも、ヒノカさんはここにいます。その命令を出したヒノカさんというのは……」

アクア「……まさか、あの武器の力で現れたヒノカが……」

アクア(カムイを助けることを選んだというの?)
569 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:23:45.31 ID:wGAjbhBY0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座へと至る道』―

 〜少し前〜

ヒノカ『……ううっ、……ううううっ』.

ヒノカ『やめてくれ。これ以上、何を奪うというんだ……。私は、私が守りたかったものを守るために戦うと決めただけなのに、なんで……』

ヒノカ(私は、私の心の中にあった恨みや憎しみそのものだ。希望を求めればその希望を上塗りするほどの絶望に苛まれた。奪われる度に募った怨恨がこの私の姿のはずなのに、もう怨恨の理由が分からなくなってしまっている。あれほど敵となるものを殺して守ろうとした者や何を恨んでいたのかさえも、霧が掛かったように忽然と姿を消していく。私が私でなくなってしまうかのようだ……)

ヒノカ『返して……返してくれ。それが無くなってしまったら、私は……私は……』

ヒノカ(この心に渦巻く私の物じゃない何かに飲み込まれてしまう……)

ヒノカ『うっ、ううっ……誰か……。誰か……』

ヒノカ(手を伸ばしても誰も戻ってこない、誰も私の傍にいてくれない。だって、私はもう何も思い出せないんだ。私が私たる由縁は深い闇に噛み砕かれてしまって、もうこれに飲み込まれる。これが、私の……思いの終わりだというのか……)

ヒノカ『っ……。すまない、みんな……』

ヒノカ(もう何も見ることなんてない。私のものかもわからない意識が……入り込んでくる。私が溶ける……意識が混ざって……も…う…なにも……)

 パシッ

ヒノカ『……誰だ?』
570 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:28:51.81 ID:wGAjbhBY0
ヒノカ(誰かが、私の手を取ってくれている? でも誰だ、こんな私の手を取ってくれるのは――)

カミラ「……」

ヒノカ『……お前は……女狐……』

カミラ「ずいぶんな挨拶ね。私にはちゃんとカミラって名前があるのだから、そう呼んでちょうだい」

ヒノカ『カミラ……』

カミラ「はい、よく言えました。ようやくちゃんとお話が出来そうね、ヒノカ王女?」

ヒノカ『……話すことなど何もない。私にはもうなにもない。私はこのまま消えてなくなるだけだ……』

カミラ「そう? 何もないなら私を女狐なんて呼ばないし、すでに私は死んでいると思うわ。だけどそうしなかったのは、少なくともまだあなたがあなたである証明だと思うけど?」

ヒノカ『なら、私はすぐにでもお前を殺さないといけないはずだ……。私はお前を……恨んでいたんだろう?』

カミラ「ふふっ……それもそうね」

ヒノカ『……助けに向かわないのか? この先にはお前が信じる者がいる、そうだろう? 私に時間を割いている暇などないはずだ』

カミラ「あの子は大丈夫。どんなことがあっても負けたりなんてしない、そう信じているのよ」

ヒノカ『……どうしてそう易々と信じられる? 信じた先が絶望的な結末だったなら、それは徒労に終わり、大きな恨みにしかならないだろう?』

カミラ「たとえ徒労だとしても、誰かを信じることに意味はあるわ。それがどう芽吹くのかはさておいて、あの子が戦い続ける限り、私はあの子を信じ続ける」

ヒノカ『そうか……。もう何も無い私には信じるものもなくなってしまったがな……』

カミラ「ヒノカ王女……」
571 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:40:34.47 ID:wGAjbhBY0
ヒノカ『もうわからないんだ。私がどうしてこれほどの事を望んだのかも、共に闘ってきた者たちの事も……。様々な思いがあったはずなのに、私には何一つ……残っていない』

ヒノカ『私の正体が本心からあふれ出た憎悪の塊だったとしても……。その憎悪は私のすべてだったはず……。なのに、それすらも思い出すことができないというのか……』

ヒノカ(恨んだ理由も憎悪の理由も、黒い墨で塗りつぶされてしまったように何一つ思い出せない。殺意という墨で上塗りされて、もう何が何なのかもわからない。こうして、今私を見ているこの女狐のことさえも、もうすぐ忘れていくのだろうか?)

ヒノカ『……っ』

ヒノカ(私は……いったい何のために……)

 スッ ピトッ

ヒノカ『なにを……する?』

カミラ「怯えているのね」

ヒノカ『そ、そんなこと……』

カミラ「今にも泣き出しそうな顔をして何を言っているの?」

ヒノカ『……』

カミラ「思ったことを話していいのよ。心に閉じ込めていても、解消できないのならそれは毒にしかならないわ」

ヒノカ『……』

ヒノカ(確かにそうなのかもしれない。私の中に広がる歪な闇はどんどん私の思考を食い殺していく。考えれば考える程、闇が広がっていく気がする。この女狐にそれを話すのは癪だ、癪だけども、今は……少しでも私であり続けたい……)

ヒノカ『…………、私は何のために戦ってきたのだろうって……』

カミラ「それを私に聞いても答えは出ないわ。私はあなたじゃないもの」
572 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:44:40.16 ID:wGAjbhBY0
ヒノカ『……そうか』

カミラ「ふふっ、そんな拗ねた顔をしないでちょうだい、例え話くらいはしてあげるわ。そうね、もしもあなたと私が逆の立場だったとするなら、私の戦う理由は一つしかなかったかもしれないわね」

ヒノカ『それは……なんだ?』

カミラ「愛しい妹を取り返して、唯一のおねえちゃんになる事よ」

ヒノカ『……』

カミラ「あの日、あの平原でカムイが白夜に付く選択をしてしまう、そんな可能性を私は考えていなかった。帰ってきてくれたのをどこか当然のように思っていた。だけど、そうならなかった可能性がないわけじゃないわ。そして、そうなってしまったら、私はあなたを殺すことを第一の目標としたでしょうね」

ヒノカ『……私を殺す? どうしてだ?』

カミラ「だって、あなたはカムイのおねえちゃんだもの。この世に二人もおねえちゃんは要らない、私だけがおねえちゃんであればいいって、そんな考えを持つようになったかもしれない。でも、そうならなかったのは私が恵まれていただけのこと。奪われたあなたがカムイの事をどれほど大切に思っているのかなんて考えようと思わなかった。カムイの戦いを支えると言いながら、結局カムイを取られない様にしていたというのが本当の事なのかもしれないわね」

ヒノカ『……私は、執拗にカムイを取り戻そうとしていたのか?』

カミラ「ええ、すごい執念だったわ。だけど、それはもう折り合いが付いたことのはずよ。だって、あなたがこうして戦う理由にカムイは含まれていなかった。あなたは守りたかったものを守るために私たちと戦う道を選んだ、そうでしょう?」

ヒノカ『守りたかったもの……。だが、それはもう忘れてしまったことだ。そして、私だったことさえ忘れていくんだろう……』

カミラ「それは違うわ、ヒノカ王女」
573 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:49:22.42 ID:wGAjbhBY0
ヒノカ『なに?』

カミラ「あなたが忘れつつあると思えるのは、その守りたかった何かがまだちゃんと残っているからだと私は思う。私があなたにとって特別な存在だった出来事は、もう終わってしまったこと……。だけど覚えているっていうことは、あなたはまだ思い出せる場所にいるのよ」

ヒノカ『私は思い出せる……のか?』

ヒノカ(こんな闇の中で一体何を思い出せというのだろう。私の中にあるこの闇は、どんどん広がっていて、もう何が何だか分からなくなってきているというのに、この中でまだ私の思考が残っていることが不思議なくらいなのに、もう感じるのはこの広がり膨らみ続ける闇ばかりだ。だけど……)

ヒノカ(なんでそれが広がっているなんて思えるのだろう)

ヒノカ『……』

ヒノカ(とうに混ざり合ってしまってわからなくなってしまっているはずの私という意識なら、それはわからなくなっているはずなのに、どうして広がりの中心を感じられる?)

カミラ「ヒノカ王女、あなたは奪われないために戦っていると言っていたわ。それほど強い思いを忘れるなんてことはないわ。それはあなたの心にちゃんと今もあるはずよ」

ヒノカ『……忘れることはない……か』

ヒノカ(この渦巻く憎悪の中心は、まだ揺らぐことが無いものだ。それを忘れ無いように抗っているのだとしたら……)

ヒノカ(そこに私が共にありたかった思いが、まだあるのだとするなら……)

ヒノカ『……』

ヒノカ(奪われて、唆されて、そして塗りつぶされるばかりの私の憎悪、だけどそれの元はとても暖かいもの…)

ヒノカ『……ああ、そうか……』

ヒノカ(この暗闇の中でも、まばゆい光を放ってちゃんとここにあったんだ……)
574 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:50:46.10 ID:wGAjbhBY0
ヒノカ『……女狐』

カミラ「……なにかしら、ヒノカ王女」

ヒノカ『……ありがとう』

カミラ「……ええ、どういたしまして。それで何をするつもりかしら?」チャキッ

ヒノカ『大丈夫だ。もう、お前達を殺す通りは無い。私の敵は、私のこの思いを奪おうとする者だけになった』

カミラ「……信じていいのかしら?」

ヒノカ『信じられないなら、ここで首を跳ねればいい。そうすれば私は溶け落ち、ただの憎悪になり果てるだろう』

カミラ「……」

ヒノカ『……』

カミラ「……ふふっ」

 カチャンッ

カミラ「信じてあげる。きっと、あの子もそうするはずだから」

ヒノカ『ふっ、カムイは本当に甘いな。あの時、私の本体を殺してしまえばこんなことになる事もなかったというのに。それを救うためにもがき苦しむことを選ぶなんて……』

ヒノカ(だが、それが私をこの行動に駆り立てるのかもしれない。きっと、本体の私にも、まだ……それがあるはずだと信じることができるから……)

ヒノカ『……アサマ、セツナ』

 シュオンッ……

アサマ「はい、ここにいますよ」

セツナ「なに? ヒノカ様…」

ヒノカ『ふふっ、さっきまでは来てくれなかったのに、今になってきてくれるのだな』

アサマ「ええ、ヒノカ様の命令ですから」

セツナ「うん、ヒノカ様の命令だから…。私に出来る事、何でもするよ…」

ヒノカ『二人とも……。これが最後の命令になる、聞いてくれるか?』

アサマ&セツナ『………』コクリッ

ヒノカ『……アサマ、セツナ……』

『ありがとう……』
575 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/14(木) 21:51:37.00 ID:wGAjbhBY0
今日はここまで

 次で終わる予定です。
 
 新作、楽しみですねぇ
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 11:47:08.36 ID:bVk5kYA7o
そっちが味方してくれるとは
>>574の通りは道理?
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 19:03:55.00 ID:zF07isGDO
新作は顔を触れるパルレはないのかな?
578 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 19:26:32.20 ID:zXuUfhy20
>>576さん

 道理ですね。誤字とか脱字が多くて申し訳ない。
579 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 19:34:13.31 ID:zXuUfhy20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―

アクア「……」

アサマ「信用できないという顔ですね」

アクア「いきなり信用しろというのは無理というものでしょう? さっきまであなたたちに命を狙われていた側なんだから…」

アサマ「まぁ、普通そうでしょう。私たちはヒノカ様の命令でここにいる、それだけの説明しかしていませんので」

アクア「なら、どうしてそんなに自信を持っていられるの?」

アサマ「それは、ここにとびっきりのお人好しがいるからです。その方には今の説明だけでも十分だと思いますから」

アクア「お人好し……」チラッ

アサマ「はい、お人好しです」チラッ

セツナ「私もそう思う…」チラッ

カムイ「?」

アクア「……はぁ。確かにあなた達の言う通りよ、すごいお人好しがいるのは間違いないわ」

アサマ「そうでしょう。まぁ、おふざけはここまでにして、ヒノカ様をお願いしますね、カムイ様」

カムイ「はい、もちろんです。アクアさん、ヒノカさんを玉座まで連れていきます、手伝ってください」タタタッ

アクア「……あなたたちに背中は預けるわ。ヒノカの事はこっちに任せて」タタタタッ

アサマ「ええ、よろしくお願いしますよ。さぁ、セツナさん、ここからは全力で行くとしましょうか」チャキッ

セツナ「ん、まかせて…」チャキッ
580 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 19:40:28.23 ID:zXuUfhy20
ヒノカ「……なぜだ。なぜ私の命令を聞かない者が存在している? これは私の力のはずだ、なのになぜ……」

カムイ「それはあなたがヒノカさんであって、ヒノカさんではないという証明です」

ヒノカ「私がなんであろうと関係ないはずだ。私はこの力で……」

カムイ「少なくともあなたの成したかったことはこんなことではなかったはずです。それを思い出させてみせます」ドゴンッ

ヒノカ「ぐっ……」

カムイ「少しだけ、眠っていてください」

ヒノカ「ふふっ……玉座に連れて行ったところで、どうにかなると思っているのか?」

カムイ「やってみなければわかりません。私は、あなたを救うことをあきらめないと決めた。ただ、それだけです」

ヒノカ「そうか、ふふっ、無駄足になった時にお前がどれほど絶望するのか、とても楽しみだ……ううっ……」ガクッ

カムイ「あとはヒノカさんを玉座に座らせることが出来れば……ぐっ」

ポタタッ

カムイ(さすがに治療でどうにかなるわけではないようですね……。傷口がまた開きましたか……)

アクア「カムイ!」タタタタッ

カムイ「ア、アクアさん……」

アクア「一人で運ぼうなんてしないで、私も手伝うわ」

カムイ「はい、おねがいします」

カムイ「はぁ……、はぁ……」ポタタッ

カムイ(傷など気にしていられません。あと少しなんですから……)

カムイ「……あと少しですからね、ヒノカさん」

 タッ タッ
581 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 19:51:33.35 ID:zXuUfhy20
アクア「カムイ、玉座よ!」

カムイ「ようやくですね。アクアさん、ヒノカさんを」

アクア「わかってる、手をこっちに貸してちょうだい」

カムイ「はい。ヒノカさん、待たせてしまってごめんなさい。きっとこれで……」

スッ ポスンッ……

ヒノカ「………」

カムイ(ヒノカさん……)

 シュオオンッ

カムイ「!」

アクア「玉座が輝いてる……」

カムイ(それにとても暖かいものを感じます。これが、玉座が持つ真実を見せる力だというのでしょうか)

カムイ「?」

謎の兵士たち「……ぐぉぉぉっ……」ボチャリッ……ドサッ

アクア「力が分離し始めた影響で、奴らが倒れ始めてる」

カムイ「じゃあ、ヒノカさんの心は……」

ヒノカ「………うっ……ううっ」

カムイ「ヒノカさん!」

ヒノカ「カ……ムイ?」

カムイ「ヒノカさん、よかった。今すぐ手当を――」

ヒノカ「………な」

カムイ「え、なんですか? ヒノカさん」

ヒノカ「来るな……カムイ。私に近づいては駄目だ……」
582 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 20:01:33.73 ID:zXuUfhy20
カムイ「何を言っているんですか? ヒノカさ――」

アクア「カムイ、ヒノカに近づいては駄目!」

カムイ「どうしてですか!? ヒノカさんの心は生きているのに、なぜ?」

アクア「奴の力が更に強くなっているの」

カムイ「強くなっているって、さっき分離し始めているって――」

アクア「おそらく、もう根付いているわ。ヒノカの中で際限なく膨れ上がり続けるほどに……、もうヒノカの心の一部になってしまっているのよ」

カムイ「そんな……、そんなことって……」

ヒノカ「ぐっ、はぁ……はぁ……。カムイ……うううっ、早く私に止めを……」

カムイ「何を言って……」

ヒノカ「今なら抑えられる。だから――。ううっ、頼む、私を殺してくれ……。お前たちを、これ以上……傷つけたくないんだ……」ポタタッ

アクア「ヒノカ……」

ヒノカ「カムイ、もう私は自分が何だったのかもわからなくなっている。いったい何を呪ったのかもわからない。ただの殺意だけが蠢いていて、頭が壊れてしまいそうになる。だから、まだ私が私でいられる内に、私を……」

カムイ「……」

アクア「カムイ……もう……」

カムイ「アクアさん、すみませんがこれを持っていてください」チャッ

アクア「え、夜刀神? いったい何をするつもりなの?」

カムイ「……私はヒノカさんを救うと決めたんです。だから、それは必要ないんです」

 タッ タッ タッ
583 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 20:11:53.23 ID:zXuUfhy20
ヒノカ「はぁ……はぁ……。ううっ……」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「カ……ムイ? 何をしているんだ、早く私に止めを……。そうしないと、私はお前たちを……」

カムイ「……」ギュウッ

ヒノカ「な、何をする……離れるんだ……」

カムイ「いいえ、離れません」

ヒノカ「どうしてだ……」

カムイ「私はあなたを救うためにここに来たと言ったじゃないですか。あなたが何と言おうとも、私はあなたを殺したりしません。あなたを救う事、それが私の一つの希望だから……」

ヒノカ「カムイ……。ぐっ、うううっ!!!! 止めろ、ううっ、うあああああっ!!!」

カムイ「ヒノカさ――!」

 グッ! ガシッ ギュウウッ

カムイ「がっ――ぐっ、ううううっ」

ヒノカ「ふーっ! うううっ!!!!」ググググググッ

カムイ「ごほっ……ヒ……ノカさ…ん……ううっ……」

ヒノカ「ぐっ、ううっ、カ……ムイ……。……私を……捨ててくれ……。私は何も救えない……殺し壊すだけの存在に……なってしまう」

カムイ「そんなことは……ありません……。あなたが生きていることが……私にとっての希望だから……」

ヒノカ「カムイ……私は……」
584 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 20:21:31.70 ID:zXuUfhy20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇

ヒノカ(玉座に私がいるのを感じられる。どうやら、座らせることには成功したようだな。もっとも、そのためにアサマとセツナに命令を出したんだ。そうなってくれないと困る)

ヒノカ(しかし、そううまくはいかなかったか。まぁ当然だろう。あの大きな殺意と憎悪に一度飲まれてしまったんだ。私は戻らないといけないんだろう……)スッ

カミラ「……?」

ヒノカ『……カミラ。ひとつ頼みたいことがある』

カミラ「なにかしら?」

ヒノカ『その武器を……』

カミラ「武器?」チラッ

ヒノカ(そう、その武器だ。私を生み出し、そして思考を飲み込もうとしていた憎悪の元……。私が与えられた力の一つ……)

カミラ「……これをどうするつもり?」スッ

ヒノカ『触れないほうがいい、私のようになりたくないだろう?』

カミラ「……そうね。それで、そんな危ないものをどうしようっていうの?」

ヒノカ『……私が何かするわけじゃない。言っただろうお前に頼みたいことがあると』

カミラ「そうだったわね。それで一体何を――」

ヒノカ『それを壊してほしい』

カミラ「え?」
585 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 20:27:57.01 ID:zXuUfhy20
カミラ「これを壊す?」

ヒノカ『ああ。所詮それも道具だ、人間の手でも壊せる。それが壊れてしまえば、この混乱も収まるだろう』

カミラ「これを壊した後、あなたはどうなるのかしら?」

ヒノカ『私はその武器によってこうして形を得ているに過ぎない……。それが壊されるのだから答えはわかるだろう?』

カミラ「……消え去る、とか?」

ヒノカ『そういうことだ』

カミラ「……」

ヒノカ『失った物はもう戻らないこと、だからこそ大切だったことを思い出した。もはや、力を振るってまで叶えたい願いなどありはしない。もう、私の存在する意味はなくなったんだ……』

カミラ「だけど、消え去ったあなたは何処に行くの?」

ヒノカ『そんなことを知ってどうする?』

カミラ「教えなさい、教えないなら協力は出来ないわ」

ヒノカ『……』

カミラ「考えてみなさい、今あなたの願いを聞いてあげられるのは私だけだし、それに手を貸すのかどうかを決めるのも私だけ。わかるかしら?」

ヒノカ『……ふん、やはりお前は女狐だな。こちらの要求に黙って従うわけもないか』

カミラ「……それで?」

ヒノカ『……おそらく、私は私の元に戻る。今こうしてお前と話をしている意識も溶けて無くなるだろう。私はヒノカが心に貯めていた憎悪そのものとして、元の場所に収まるだけだ』

カミラ「戻った瞬間に希望を叶えるために力を使うなんてことにならないのかしら?」
586 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 21:28:14.75 ID:zXuUfhy20
ヒノカ『それはわからない。私は結局、黒い感情でしかない。その元がどのようなものであったとしても、見た目は黒く禍々しいものだ。その内部に手を伸ばせるかどうかは、本当の私次第だ。だが……』

カミラ「?」

ヒノカ『きっと手を伸ばしてくれる気がする。私自身だからかもしれないが、きっとこの思いを私は見つけてくれる。偽りに溺れているのなら、きっと……』

カミラ「……」

ヒノカ『まぁ、お前が協力しないというのならそれまでの事だ。私はここで終わりが来るのを――』

 チャキンッ

ヒノカ『?』

カミラ「本当に壊していいのね?」

ヒノカ『ああ、思いっきり振り下ろしてくれればいい。だが、合図をしてからだぞ?』

カミラ「タイミングが大事なのね?」

ヒノカ『いや、心の準備が出来ていないだけだ……』

カミラ「……」
587 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 21:32:07.75 ID:zXuUfhy20
ヒノカ『なんだ、その顔は?』

カミラ「ふふっ、思ったより可愛らしいって思っただけよ。そうね、この戦いが終わったらゆっくりお茶会でもしましょう? あなたに一番おいしい紅茶をご馳走してあげるわ」

ヒノカ『……そうか、覚えていたら参加しよう。覚えていたら、な……』

カミラ「覚えていなくても参加させるから安心しなさい」

ヒノカ『ふっ……』

ヒノカ(……。大丈夫だ、もう私の心にあの憎悪が入り込んでくることは無い。私は私の中にある憎悪と一番の願いに戻る。ただ、あるべき姿に……)

ヒノカ『……』

ヒノカ(さぁ、私があるべき元の場所へ向かおう)

ヒノカ『……やれ』

カミラ「!」グッ
 
 ブンッ!
  ガシャンッ! バキンッ

 シュオオオオンッ

ヒノカ『……っ』

ヒノカ(ああ……薄まる、薄まっていく。思考の渦、その中心が閉じる。ここが閉じてしまえば、もう黒い暗闇だけになる。これが私という闇、私にとっての憎悪という希望に変わっていく……)

 ピキンッ……

ヒノ?(ああ、痛みも何も無くなっていく。私の意識も消え去っていく、だけど行くべき場所がどこなのかはわかる。そこに私は勝手に戻っていけるだろう)

 ピキキンッ……

ヒ??(ああ、今戻ろう。お前が忘れかけた思いと希望があれば大丈夫だろう?)

???『だって、私はカムイの姉なんだから……)

 パキンッ
588 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 21:36:26.46 ID:zXuUfhy20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇
―王の間『玉座前』―

 ググググッ……

カムイ「ううっ、くっ、ぐうううっ、ヒノカ……さん……」

ヒノカ「……」

ヒノカ(心が大きな悲鳴を上げているのが聴こえる。体の動きを止める様に意識を集中しているのに、体はちっとも言う事を聞いてくれない。見ること、そして意識を喰い散らかされることだけが今の私に許された自由なのだろう)

カムイ「っ、ああ……」

ヒノカ(目の前で苦痛に歪む妹、あと少しで事切れてしまう。私が最初に求め、そして今も残る私の希望……、それが目の前で私の手で壊されようとしている。やめろと叫んでも、私の手は意識に反してさらに力を強めていく。私は何も守れないのだと、見せつけるように手の力はどんどん強くなる。その度に心の奥に傷が付き、それはどんどん深さを増して、そこに憎悪が入り込んでくる……)

ヒノカ(おそらくカムイが死んだとき、私の心は本当の意味で死んでしまうのだろう。こうして、私を助けるためにカムイが奮闘した姿は覚えている。偽りの悪意に苛まれても、私の心は確かにそれを覚えていた。正直に言えばうれしかった、私を助けるためにあえて危険を冒してくれたことも、そして今も最後まで私を救うことを諦めないでいてくれること……。だからこそ、それが目の前で潰えた時、私はきっとそれに耐えることが出来ない、そういった希望を砕かれる現実に耐えられないからこそ、私はこうなってしまったのだから……)

ヒノカ(元々私にあった憎悪はどこにもない、今あるのはその跡地に住みついてきた誰かの憎悪だ。それは私の心の傷を埋める様にどんどん大きくなっていく。空っぽの私はこれに抗うことなどできはしない。私は憎悪の鬼になり果てる。だからこそ、命を奪ってほしかった)
589 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 21:38:32.40 ID:zXuUfhy20
ヒノカ(私は私のまま終われるだけでよかった。失った物は多くあったのかもしれない、だけどこれ以上失う必要はない。特に私を救うためにここまで戦ってくれたお前が死ぬ必要なんてどこにもないんだ)

ヒノカ(だけど、お前は私が生きているという希望がある限り、私を救うことを諦めない。それが希望ではなく絶望であることを私は知っている。私の中に入り込んだ憎悪はその到来を、指を咥えて待っている。私が砕け、そしてすべてが憎悪に染まる瞬間を待っている。私はそのために踊らされてきただけに過ぎない)

ヒノカ「……」ポタッ ポタタッ

ヒノカ(踊らされ続けたこと、それが私の生きた意味だというのか?)

ヒノカ「……っ」ポタタタタッ

ヒノカ(誰かに救われ続け、そして奪われていくだけの日々)

ヒノカ「……ううっ……」

ヒノカ(何一つ救うことのできない無力感に打ちのめされるだけの日々が……)

ヒノカ(私の生きてきた意味だと受け入れるしかないというのか?) 
590 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 21:45:43.94 ID:zXuUfhy20
ヒノカ「あああっ!」グウウウッ!

カムイ「がっ!……っ、ヒノカさん……」

アクア「カムイ、今助けに――」

カムイ「アクアさん、だめ……です。ヒノカさんは…まだ…」

アクア「でも、もう、ヒノカは……」

ヒノカ(アクアの声が聞こえる。アクアはわかっているんだろう……。私が戻れないことを…)

ヒノカ(満たされていく。音もなく私の心に憎悪が入り込んでくる……。まるで浸透する雨水のようだ。そして、雨漏りするように零れ落ちていくのは私の心で、残った偽りの憎悪が私のすべてになる)

ヒノカ「ううううっ!」ガシッ ググググッ

ヒノカ(カムイは助からない。私はもう止められない。希望を目の前で奪われて私は消え去る。私のために命を賭してくれた妹を殺して、私は死んでいく。それが私の終わり……)

ヒノカ「カム……イ……」

ヒノカ(すまない……)




 シュオンッ……
591 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 21:47:31.73 ID:zXuUfhy20
ヒノカ(何か音が聞こえた……)

 ポチャンッ……

ヒノカ(心の底、動かなくなった水面に何かが落ちたような音、さっきまで静かだった精神が揺れるほどの大きなものが入り込んで来た気がする……)

ヒノカ(これはなんだろう? この闇の中で同じ色であるはずなのに……仄かに暖かさを持ったこの黒い淀みは……)スッ

 ピチャンッ……

ヒノカ(暖かい……。それに偽りの闇と違って、私にとって本当の闇のように感じられる。この中心の温かさ、今もあるカムイへの思いと同じくらいに愛おしい。私はこの闇と暖かさを知っている気がする。これは……)スッ

ヒノカ「……ああ」

ヒノカ(そうだ、これは私が手放してしまったものだ。アサマやセツナ、そしてユウギリにオロチ、そして多くの兵たちと共に過ごし戦ってきた記憶。カムイに救われた私が、本当に守りたかった者たちとの絆……。そして奪われたことで変質した私自身の闇)

ヒノカ(奪わせない、奪われたくない、奪う者は誰であろうと殺す。そして、戻ってきてくれたみんなとずっと一緒に……。そんな幻想に浸って手放した私の思いだ。さっきまでそれは失われていたはずの思い、それがどうして今ここにあるのかはわからない。分からないが、それを考えている時間は無い)

ヒノカ(……もう一度私の中に、戻ってきてくれるか?)スッ

 シュオンッ…… ゴオオオッ

ヒノカ(さっきまで穏やかだった水面が、新しい水面に包まれ始める。黒く暖かいこの闇が私を包んでくれる。隙間に入り込んだ泥を掻き出して、失ったはずの絆が傷口を埋めてくれる。溢れるのは悲しみと憎悪、だけどそれはこの絆があってこそ生まれた物、私が一度失ったもの……)

ヒノカの臣下たち『……』

ヒノカ(みんな、すまなかった……)

ヒノカ(……私が守るべきものはこれだったんだ……。こんな回り道と時間を掛けて、ようやく気づくなんて馬鹿じゃないか……。私にはこれだけあればよかった。たとえそれがどれほどの憎悪であったとしても、私はお前たちを覚えていることが何よりも尊い願いだった……。だからこそ、私は今この中に渦巻く、この憎悪を許すわけにはいかない。私の願いだけじゃない、ここまで命を賭して私を救おうと戦い続ける妹のためにも……)

ヒノカ(そもそも、私がここまで戦ってきた理由、それはカムイ、お前のためだった。お前を救い出すことが私の原動力、そして今がその時なんだろう)

ヒノカ(……待っていてくれ)

ヒノカ(もう心は侵されることはない、偽りの誘惑に負けることもない。今はただ、私の望む最初の願いのために立ち向かおう。そう――)

ヒノカ「カムイ、お前のために……」
592 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 21:50:48.53 ID:zXuUfhy20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―

カムイ「っ……が……」ギリッ ギリギリッ

アクア「カムイ!」ダッ

ヒノカ「……」

カムイ「ヒノカ……さん、ぐっ、うあああっ……」

カムイ(もう、これ以上耐え切れない……。意識が……もう……)

カムイ「ヒノカさん、ごめんなさい……。私はあなたを……」

ヒノカ「……大丈夫だ、カムイ」

カムイ「え?」

ヒノカ「……はああっ」ブンッ

カムイ「あ……」フワッ

アクア「カムイ!? っ!」ダッ

ダキッ ズササーッ

アクア「っ、ううっ! カムイ、大丈夫!?」

カムイ「……ううっ、アクアさん? ごほっ、ごほごほっ……」

アクア「動かないで。とても動ける状況じゃないのよ」

カムイ「はい、ごほごほっ。それより、一体何が起きて……」

アクア「それが、ヒノカがあなたを放り投げて……え!?」

カムイ「アクアさん?」

アクア「広がっていた奴の力が段々弱くなって……。いえ、これは――」

ヒノカ「……」
593 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 21:52:20.04 ID:zXuUfhy20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・王都『中央広場』―

謎の兵士たち『……』ドドドドドドドドッ

暗夜兵「次の連中が来るぞ。戦いが終わるまで我らのするべきことは決まっている。剣を抜け!」

暗夜兵たち『おおおーーっ!』シャキンッ

白夜兵「はぁ……はぁ……」

暗夜兵「白夜兵よ、もう戦えないのならば下がれ。お前たちが抜けたくらいで我々の隊列が崩れることはない」

白夜兵「……ふん、ここには我々が守るべき民がいる。尻尾を巻いて逃げることなどできるはずがないだろう」

暗夜兵「ならば、準備をしろ。次の戦列は一筋縄ではいかないぞ」

白夜兵「心配は無用だ。民を守る準備は元から出来ている」

暗夜兵「そうか。では何も言うまい、このまま共に敵を討ち倒すまでだ」

謎の兵士たち『……』ドドドドドドドッ

暗夜兵「全員、構え!」

暗夜兵たち『!!!』チャキンッ!

白夜兵「各自、抜刀せよ!」

白夜兵たち『!!!!』シュキンッ!

謎の兵士たち『……』ドドドドドドドドッ

 チャキッ カチャンッ!

謎の兵士たち『……』ドドドドドドドドドッ!




 ピチャン……




謎の兵士たち『……』タタタッ タッ タッ……

暗夜兵「む?」

白夜兵「な、なんだ?」

謎の兵士たち『……』

暗夜兵(敵が動きを止めた?)

 ボタッ……ボチャンッ

暗夜兵「!?」

謎の兵士「……」ググッ ビチャンッ 

 ドサリッ ドプンッ……

白夜兵「き、消えていく?」

暗夜兵「これは一体……」
594 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 22:02:16.19 ID:zXuUfhy20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◇◇◇◇◇

 シュオオオンッ ポタッ ポタタタッ

オロチ「……ふむ、わらわ達の意識が消えるよりも先に決着が付いたようじゃのう」

ユウギリ「そのようですわ。ふふっ、約束通り、ヒノカ様を止めて下さったと考えていいのでしょうね」

オロチ「うぷぷぷっ、そうじゃのう……。まったく本当におかしな話じゃ。こうして敵国だった者を信じ、そしてそれがわらわ達との約束を確かに守っておるとはのう……。退屈を潰す暇もなかったではないか」

ユウギリ「ええ、、オロチにとってこの方がよろしかったでしょう?」

オロチ「あはははは、その通りじゃ。本当に最後の最後にやってくれるとは、これで思い残すことは何もなくなったからのう」

ユウギリ「ええ、それに体がもう持ちませんわね」

 ドロリッ……

ユウギリ「これで終わりですね……」

オロチ「うむ……そうじゃな……」

 ボタリッ……

ユウギリ(先に待っていますね……)

オロチ(ヒノカ様……)

 ドプンッ……
595 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 22:08:36.91 ID:zXuUfhy20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ポタリッ……

セツナ「あ……」

アサマ「おやおや、もう時間のようですね」

セツナ「ん……あっという間だった……」

アサマ「ええ、楽しい時間というのは早く過ぎ去ってしまうものなのでしょう。しかし、まさかヒノカ様のために動けたことに感動を覚える日が来るとは思ってもいませんでしたが」

セツナ「ふふ…、アサマ嬉しそう…」

アサマ「……ええ、うれしいですとも」

セツナ「アサマ…、とっても素直…」

アサマ「そういうあなたはどうなのですか?」

セツナ「うん、うれしいよ。ヒノカ様、最後にちゃんと戻ってきてくれたから…。私、前に進むヒノカ様が好き…」

アサマ「そうですね。結局、私もあの人の真っ直ぐであり、悪く言えば愚直で他人のために苦悩する姿に惹かれたのかもしれません」

セツナ「うん、私もそう思う……あれ?」ポタリッ

 ドサッ

アサマ「おや、セツナさん?」

セツナ「……足、取れちゃった……」

 ドサッ!

セツナ「アサマ?」

アサマ「ふむ、私も同じようです。足が取れてしまいました」

セツナ「ふふ、同じだね…」

アサマ「ええ、同じですねぇ」

セツナ「私、疲れちゃった…」

アサマ「そうですね、確かにとても疲れました。あとは口うるさい主が起こしに来るまでサボってしまいましょう」

セツナ「うん、今ならヒノカ様が起こしに来てくれる気がする……。どんなに時間が経っても、私とアサマの事ちゃんと起こしに来てくれる気がする……」

アサマ「それでは、それを信じて眠るとしましょう……。最後の最後、私たちはヒノカ様に尽くせたはずです」

セツナ「えへへ…そうならとっても嬉しい…。それじゃ、おやすみなさい……」

アサマ「ええ、おやすみなさい」

アサマ(ヒノカ様、私もお先に失礼させていただきますね……)

アサマ「」

セツナ「」

 ドプンッ……
596 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 22:19:50.88 ID:zXuUfhy20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―王の間・玉座前―

アクア「これは……」

カムイ「アクアさん、一体何が起きて――」

アクア「広がったはずの力がヒノカに集まってる。でも、集まっているだけで広がる気配が無いの。まるで、ヒノカがそれを貯め込んでいるみたいに……」

カムイ「貯め込んでいるって……」

カムイ(これは一体……)

ヒノカ「カムイ……」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「本当にお前は大した奴だよ。こんな状況にあっても諦めず、私を救うために苦しむ道を選べるのだから………」

カムイ「そんなことありません、私は……」

ヒノカ「謙遜しないでくれ、お前は私にとって自慢の妹だ。お前が私のことを姉と呼んでくれなくても、私はお前の姉であることを誇りに思うよ」

カムイ「ヒノカ……さん」

ヒノカ「だから、そんなお前の灯をここで終わらせたりはしない」

 シュオオオンッ

ヒノカ「私が戦うことを決めたこと、ここまで思いや日々に意味があったとするなら、それはお前を守ることのはずだからな」
597 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 22:24:43.23 ID:zXuUfhy20
 シュオオオオオオンッ!

カムイ「ヒノカさん! 待ってください、私はあなたを――」

ヒノカ「大丈夫だ。私の思いはもうこんな偽りの闇に負けたりはしない。大切な物は取り戻した。お前が救ってくれたんだ」

カムイ「え……」

ヒノカ「……お前がもしもここにいなかったら、そして私を助けるために戦ってくれなかったら、私は大切な物を思い出せなかった。何もわからないままに消え去ることを、お前は止めてくれた。そして、お前のために戦う機会をくれた。それだけで、私は救われている。もう、これ以上ないほどにな……」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「……うれしいよ。お前が私にそんな顔をしてくれることが、心配してくれることが、悲しんでくれることが、とてもうれしいんだ」

カムイ「当たり前です、だってあなたは……私の……」

ヒノカ「ふふっ、それ以上は言わなくていい。もう、それ以上の言葉は持って行けそうにないからな」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「カムイ……、私を救ってくれてありがとう……」

シュオオオオオオオンッ

カムイ「!!」ダッ

カムイ(やめてください、そんなさよならみたいな言葉。私は、あなたを……)

カムイ「ヒノカさん!!!!」

ヒノカ「……」ニコツ

カムイ(……見えない瞼に感じた光の波動はとても暖かくて、とても優しくて、そしてどこまで強く気高いものに感じた)

カムイ(だけど、その優しさの中で大きな音がした……)

(それは耳に残り、重く体に響き渡った……)

―第二十五章 終わり―
598 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/02/28(木) 22:28:30.34 ID:zXuUfhy20
今日はここまで

 二十五章はこれにて終わりです。
 
 キャラ同士の支援に関する安価を後日上げようと思うので、よろしければご参加いただけると幸いです。
599 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/01(金) 22:05:48.28 ID:45G67xdf0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
600 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/01(金) 22:08:13.12 ID:45G67xdf0
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
601 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/01(金) 22:09:06.38 ID:45G67xdf0
仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
602 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/01(金) 22:21:14.99 ID:45G67xdf0
 今日は現状支援の確認だけです。
 少し間に話を入れてから、二十六章に入ろうと思います。

 この先の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 前回の戦闘に参加したキャラクター同士の支援の安価をしたいと思います。
 まずは二組で、次の時にもう二組の安価を取る形でお願いいたします。

◆◇◆◇◆◇
 一組目
―ハロルドと支援を組む相手―
・レオン
・サクラ
(サクラとレオンの組み合わせは支援Aのため選択できません)

 >>603

◆◇◆◇◆◇
二組目
・カミラ
・スズカゼ
・ブノワ

 >>604>>605

 このような形ですが、よろしくお願いいたします。
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 01:15:27.78 ID:DkK5NwjIO
レオン
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 23:11:19.15 ID:uovsNDumO
スズカゼ
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 09:41:46.92 ID:bcBPngue0
ブノワでお願いします
606 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/04(月) 22:26:43.58 ID:c2GxProO0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都『王城クラーケンシュタイン・書物庫』―

レオン「ん、ハロルド?」

ハロルド「レオン様、こんにちは」

レオン「ああ、こんにちは。こんなところで何をしているんだ? 正直、君が来るような場所だには思えないんだけど」

ハロルド「はい、先ほど廊下で溜息を吐いている人がいまして、近くには大量の書物が積み上げられていたのです。話を聞くと、すべてここに運ぶようにと頼まれてしまったということでした。居ても立ってもいられず、そのお手伝いをしていた次第です」

レオン「エリーゼや他のみんなから聞いてた通り、君はお人好しなんだね。そんなことに手を貸す必要なんてないと思うけど」

ハロルド「ははっ、困っている人を助けるのは私の生き甲斐ですから」

レオン「そうかい。それじゃ用事が済んだのなら持ち場に戻ってくれ」

ハロルド「はい、わかりました。それではレオン様、失礼いたします」

レオン「さてと、次の軍議に使う資料は……これと、あれと……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

レオン「ふぅ、ざっとこんなものかな」

レオン「……はぁ、思ったより多いけど仕方ないか。大切な資料だし、一気に持っていって落とすのもまずいからここは往復して――」

ハロルド「何かお困りですか?」

レオン「うわっ、ハロルド!? 持ち場に戻ったんじゃ」

ハロルド「いえ、困った溜息が聞こえたので。レオン様、何かお困りですか?」

レオン「いや、それほど困ってはいないよ」

ハロルド「そうですか。む、そこに置いてある書物の山、運ぶのでしたら私がお手伝いいたしましょう」

レオン「いや、これは僕が運ぶよ。それなりに貴重な資料だからね」

ハロルド「そうですか、わかりました。ですが、何かお困りのことがありましたらお声がけください、いつでもお手をお貸しいたしますので」

レオン「ああ、機会があったらお願いするよ」

『レオンとハロルドの支援がCになりました』
607 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/04(月) 22:43:03.73 ID:c2GxProO0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都『近隣の森』―

ブノワ「もうないか…。ここ一帯もノスフェラトゥが増えて荒らされてしまったから仕方ないか…」

スズカゼ「おや、ブノワさん。どうしたのですか、こんなところに」

ブノワ「スズカゼか…。少し探しものをしていた…」

スズカゼ「ふむ、ここは先日ノスフェラトゥが現れた場所ですね。もしや、何か落としてしまったのですか?」

ブノワ「いや、何も落としてはいない…。ここに元からあったものを探していた…」

スズカゼ「元からあった物ですか? そういえば、ここは木々が多かった場所ですね」

ブノワ「ああ…。ある樹木を探している…。どうやら前の戦闘で破壊されてしまったようでな…。新しいのを見つけなくてはいけない様だ…」

スズカゼ「ブノワさん、よろしければその樹木探し、私も手伝いましょう」

ブノワ「い、いいのか…?」

スズカゼ「はい、こうしてブノワさんとお会いしたのも何かの縁でしょう。それにその様子では中々珍しい樹木であると推察できます」

ブノワ「ああ、だから手伝ってもらうのは悪い気がする…」

スズカゼ「いいえ、見つかり辛いのなら尚更です。ブノワさん一人で探すより、私もご一緒したほうが早く見つかるかもしれませんので」

ブノワ「そうか、それじゃお願いできるか…」

スズカゼ「はい、お任せください」

『ブノワとスズカゼの支援がCになりました』
608 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/04(月) 23:07:41.76 ID:c2GxProO0
今日は支援だけで。

 スズカゼの支援を改めてみると、ほとんど女子との支援しかないなって思った
609 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/07(木) 22:13:46.49 ID:I1LaIrqq0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『対談室』―
〜白夜王都決戦から五日後〜

レオン「――以上が今の状況だよ、マークス兄さん」

マークス「ありがとう、レオン。白夜の兵力は七割壊滅していたとは……。あの白夜平原での開戦からとはいえ、兵力がそこまで壊滅的な被害を受けていたのか」

レオン「一番の犠牲者が出たのはスサノオ長城での戦いみたいだ。ミタマから話を聞いたけど、スサノオ長城から脱出して王都に辿り着けたのは、全体の二割以下だったらしい」

マークス「その結果、王都防衛に民が駆り出される形になったというのか……。今回の戦闘で民間人の犠牲は多かったようだ……」

レオン「僕たちとの戦闘での民間人の犠牲者はほぼいなかったみたいだ。マークス兄さんの指示通り、王都正門の部隊は攻撃を抑えてくれたみたいだね」

マークス「ああ、目的はユキムラが率いていた強行派を抑え込むことだったからな……。できれば、リョウマ王子も救い出せればよかったのだが……。それは叶わなかったな」

レオン「うん……」

マークス「どうした、レオン?」

レオン「……ねぇ、兄さん一つだけ聞いてもいいかな?」

マークス「なんだ?」

レオン「リョウマ王子にとっての正義は報われると思うかい?」

マークス「リョウマ王子の正義?」

レオン「うん、リョウマ王子は信じた正義を清算することを選んで、それと共に消えることを選んだ。それが本当に望んでいた白夜の再建、かつての優しい白夜へ繋がると信じてね」

マークス「それがリョウマ王子の正義……ということか」

レオン「それで、兄さんから見てその思いは報われると思うかい?」
610 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/07(木) 22:32:10.51 ID:I1LaIrqq0
マークス「お前が求めている答えが、報われるであることは察している。だが、今の状況で答えは出ないだろう。正義のすべてが報われるのであれば、どこにも争いは生まれず、そもそも正義と呼ばれるものも存在しないだろう。そして、絶対的な正義などありはしないことを、われわれはもう知っているはずだ」

レオン「……」

マークス「だが、その貫いた正義が間違えであったと決めつけるのは早い。私が新生暗夜を率いて革命を起こしたことも、それが最善の選択であったのかを決めるのは当事者であるわれわれではない。この先、それを客観的に見ることができるようになった者たちだけだろう。ただ……」

レオン「?」

マークス「リョウマ王子が民を思い、闘ったことを多くの者が理解している。それはこの先どんなことがあっても変わらない。そして、われわれも知っている。そんな人々がこの先も生きていくと考えれば、希望が持てるだろう?」

レオン「そうだね……。ありがとう兄さん、少しだけ心の整理が付いたよ」

マークス「そうか、それはよかった」

レオン「さてと、これで報告は終わりだね……ん?」

サクラ「し、失礼します。マークスさん、少しお話が……」

レオン「サクラ王女?」
611 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/07(木) 22:35:25.53 ID:I1LaIrqq0
サクラ「あ、す、すみません。お話し中でしたか?」

レオン「いや、大丈夫だよ。丁度終わったところだからね」

マークス「ああ、レオンからの報告はもう終わっている。それで何かあったか?」

サクラ「はい、その、怪我をした人たちの中でも特に重症の方々をお城の方に移動させられないかと思って、部屋の方はすでに目星を付けてみたんですけど、どうでしょうか?」

マークス「重症患者の移送の件か。わかった、本日中に後続の部隊が到着する予定だ。明日にでも患者の移送は行えるように手筈を整えて置こう」

サクラ「ありがとうございます、マークスさん」

マークス「いや、礼を言うのはわれわれの方だ。負傷者などへの医療支援についてはサクラ王女に任せてしまっている部分がある。本来ならば、こちらが何とかしなくてはならないことなのだが……」

サクラ「い、いえ。私がやりたいからやっているんです。それにマークスさんもレオンさんも他にやらなくてはいけないことがあるはずだから……」

マークス「いや、自分で選択しそれを成すことはなかなかできる事ではない。サクラ王女は見た目と違って強い女性なのだな」

レオン「たしかにね。華奢な見た目だけど、実際カザハナと同じくらい体力あるからさ」

サクラ「そ、そうでしょうか……」
612 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/07(木) 22:39:09.64 ID:I1LaIrqq0
レオン「あんまり自覚は無いんだね。まぁ、カザハナはそれに我侭が入るから手に負えない部分もあるんだけど――」

カザハナ『誰が我侭ですって!?』

ツバキ『カザハナ、大声出さないでくれるかなー』

サクラ「わっ! カザハナさん!?」

レオン「カザハナとツバキが廊下にいたのか……」

サクラ「は、はい。その、これから城下町の広場に向かうつもりだったので」

レオン「広場に?」

サクラ「はい、ようやく火災も収まったので、倒壊した建物の片づけのお手伝いに行こうと思ってたんです」

マークス「なるほど、それで重症患者の移動も考えていたと言う事か。明日から本格的な撤去も始まる以上、重傷者には出来る限り配慮したいところだからな」

カザハナ「そういうわけだから、レオン王子も手伝ってよ」

レオン「そういうわけってなに?」
613 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/07(木) 22:43:37.54 ID:I1LaIrqq0
カザハナ「どうせこの後の予定はないんでしょ? だったら手伝ってもいいじゃん」

レオン「はぁ、本当に我侭だね、カザハナは……。兄さん、資料はここに置いておくよ。ちょっと、城下町の様子を見てくるよ」

マークス「ああ、資料には目を通して置こう。それと、戦闘が終わって間もないから、サクラ王女の護衛を頼む。ユキムラの率いた強行派は抑えているが、何が起きるかはまだ分からない。用心に越したことはないだろう」

カザハナ「うん、そうだよ。レオン王子はあたしたちのこと、まだ白夜に返したって言ってないんだから」
レオン「……そうだね。まだ、君たちをちゃんと白夜に返してあげたって状況とは言い辛いし、こっちも出来る限りの事を白夜の人たちにしてあげたいからね」

サクラ「レオンさん……。ありがとうございます」

カザハナ「そうと決まればさっさといこ!」タタタタタッ

レオン「わかったから、そう急かさないで。それじゃ、兄さん。ちょっと行ってくるよ」

マークス「ああ、気を付けてな」

 タッ タッ タッ 

マークス「しかし、多くの民間人が、先の戦闘で犠牲になってしまったか……」

マークス(少しでも早く、戦闘の終結を城下町の白夜兵や民間人に伝えることが出来たのならば、これほどの犠牲を出さずに済んだかもしれない……)

『民間人の死者は全体の三割に達する可能性あり。城下町の至る所に戦闘の形跡が見つかったが、死体は一人たりとも見つかっていない。おそらく奴らが回収していったと思われる』

マークス「まだ戦いは終わらない。そういうことだろう……

「異形神……」
614 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/07(木) 22:47:55.57 ID:I1LaIrqq0
今日はここまでで

 ついにFEifのビジュアル資料集が発売されますね。
 幻のペガサスナイトリリスとか、ニンジャマスタースズカゼのラフ絵とかあったらいいな。

 次の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
 
 前回の戦闘でチームを組んだキャラ同士の支援を決めたいと思います。

◆◇◆◇◆◇
 三組目
・カザハナ
・ギュンター
・ニュクス

>>615>>616

◆◇◆◇◆◇
 四組目
・マークス
・ピエリ
・エリーゼ

>>617>>618

すみませんがこのような形でよろしくお願いいたします。

615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/08(金) 05:59:02.05 ID:VGyIwVOdO
ニュクス
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 21:05:18.80 ID:A3yAI1mW0
ギュンター
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 22:16:51.36 ID:CIuLuRv8o
エリーゼ
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/10(日) 15:59:09.69 ID:GzdRClCx0
マークス
619 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 22:23:04.40 ID:VwYZi0ET0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞『書物庫』―

ニュクス「ギュンター、ちょっといいかしら?」

ギュンター「どうかしましたか、ニュクス様?」

ニュクス「あなたに声を掛ける事情なんてあまりないのに、改めて聞くこともないでしょう? これよ、丁度読み終わったの」

ギュンター「そうでしたか。中々に読み応えのある量だとは思いましたが、これほど早く読了するとは……」

ニュクス「そ、そんなことはどうでもいいでしょう?」

ギュンター「ふっ、そうですな。では、次巻の方を……」

ニュクス「その前に、こういった本があまり手が届きにくい場所にある理由を教えてほしいのだけれど」

ギュンター「ほう。ニュクス様も不思議なことを気にされますな」

ニュクス「はぐらかさないでちょうだい。それとその様付けはいいわ。私は御客じゃないの呼び捨てで構わないわ。さすがにあなたの方が私よりも歳が上でしょうし」

ギュンター「そうか、ではニュクスと。うむ、それで本が上段にある事情について聞きたかったのだな?」

ニュクス「ええ、わざわざ恋愛小説ばかりを高い所に保管している理由、気になるには気になるのよ」

ギュンター「このようにしているの理由は、カムイ様に関係があります」

ニュクス「カムイ……。そういえば、昔はよく話を読み聞かせていたとか言っていたわね」

ギュンター「はい。基本的にカムイ様は無差別に本を選ばれます、その本を私が読み聞かせていたのです。そんなある日、カムイ様は恋愛小説『恋するリザイア』をお持ちになられました」

ニュクス「………なるほどね。理解したわ」

ギュンター「はっはっは、あれは中々に厳しい戦いでしたな。幾ら歳を重ねようと……いえ、ちがいますな。正確には重ねたからこそ、文書を口に出して読む行為が辛かった」

ニュクス「……冒頭のリザイアの独白、あれも読んだのよね?」

ギュンター「私はもう二度とそんなことが無いようにと、恋愛小説に連なる類の書物は出来る限り高い段にあげたというわけです」

ニュクス「そう、ギュンターも苦労しているのね。さすがに私もこの歳になってあんな本を声に出して読めと言われたら、死を覚悟するもの……」

ギュンター「だが、ニュクスはその本が気に入っているのだろう? 次で最終巻だが、どうする?」

ニュクス「ええ、貸してちょうだい。まさか二巻のラストで想い人まで本になるとは思ってなかったから、正直続きが気になっているの」

ギュンター「そうか、わかった」

ニュクス「あと、それを読み終わった後も、時々本を取ってもらってもいいかしら? その私じゃ……わかるでしょう?」

ギュンター「わかっている。その時は声を掛けるといい」

ニュクス「ええ、そうさせてもらうわね、ギュンター」

『ギュンターとニュクスの支援がAになりました』
620 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 22:31:14.99 ID:VwYZi0ET0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都『王城クラーケンシュタイン・談話室』―

エリーゼ「……んー、これって……そういうことなのかな?」

マークス「む、エリーゼ、何を読んでいるんだ?」

エリーゼ「わっ、マークスおにいちゃん!? いつからそこにいたの!?」

マークス「今来たところだ。なにやら難しい顔をしているから何を読んでいるのか気になってな」

エリーゼ「あ、うん……。これなんだけど」

マークス「む、政治学の本か。あまりエリーゼが読む本とは思えないが、一体どうしたんだ?」

エリーゼ「えっとね、そろそろあたしもそういうのに触れた方がいいって言われて……」

マークス「そうか。エリーゼは、その本の内容をどう思う?」

エリーゼ「うーん、よくわからない……かな?」

マークス「ふっ、エリーゼらしい答えだな。正直、まだまだエリーゼには難しい本ではあるはずだ。ゆっくり理解していけばいい」

エリーゼ「うん……だけどこの本に書いてあること……」

マークス「?」

エリーゼ「う、ううん、何でもない。ねぇねぇ、マークスおにいちゃん、こういうのが分かるようになれたら、あたしも立派なレディになれるかな?」

マークス「ふむ。これが全てではないが、何かを得ることは成長の役に立つはずだ」

エリーゼ「そうなんだ。うん、あたし頑張るね、マークスおにいちゃん」

マークス「ああ」

『マークスとエリーゼの支援がCになりました』
621 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 22:46:38.58 ID:VwYZi0ET0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『廊下』―

 タッ タッ タッ

アクア「ここをこうして歩くのも久しぶりね。だけど、少し前まではここに住んでいたというのに、今は全く別の場所のように感じてしまうなんてね……」

アクア(多分、思い出せる雰囲気と全く違う場所になってしまっているからかもしれない。幾月も戦いに身を置いていた空間は、異質に変わってしまう物なのかもしれないわね……」

アクア「……ん?」

サクラ「あ、アクア姉様」

アクア「サクラ、それにレオン?」

レオン「アクア、何をしているんだい?」

アクア「ちょっと気晴らしに城内を歩いているだけよ。あなた達は今から外に?」

サクラ「はい、城下町に。中央広場で瓦礫の片付けが行われるので、そのお手伝いに行こうと思っているんです」

アクア「中央広場に?」

サクラ「はい。少しでも何かお手伝いがしたいんです。私が白夜を離れている間、大変だった人たちのためにも何か出来ることがあるならって……」

アクア「ふふっ、サクラは強いのね」

サクラ「そんなことありません。私は……ただ何もしていないのが不安なだけで……。それに私は皆さんに助けられたからこそ、ここに戻って来れたわけですから……」

アクア「いいえ、そんなことないわ。あなたがちゃんと生きて白夜へ戻って来れたのは、あなた自身が強かったから。私たちはその手助けをしたに過ぎないわ。本当に白夜を思っているからこそ、テンジン砦での出来事であなたは立ち止まらずにここまで来れた。自信を持ちなさい、サクラ」

サクラ「アクア姉様……。ありがとうございます」
622 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 22:53:34.74 ID:VwYZi0ET0
レオン「そういえば、カムイ姉さんは一緒じゃないのかい?」

アクア「カムイはヒノカの部屋にいるわ。たしかカミラも一緒のはずよ」

レオン「そうか……。カミラ姉さんもやっぱり気にしているんだね。サクラ王女は顔を出さなくていいのかい?」

サクラ「はい、朝に様子を見に行きましたから。カムイ姉様とカミラさん、それにミタマさんが傍にいてくれるので大丈夫だと思います」

アクア「ええ、大きな問題は無いわ。だけど……」

レオン「その様子だと、やっぱり芳しくないのかい?」

アクア「……ええ、目を覚ます気配が無いの。静かに眠っているけれど、それがいい事なのかどうかもわからないわ」

レオン「そうか、もう戦いが終わって五日が経つのか……」

アクア「あの戦闘で体を酷使していたのは間違いないわ。治療はほぼ済んだけれど、体全体の負担が抜けきっていないのかもしれない、どちらにしても後は待つしかない状態ね」

サクラ「目を覚ましてくれますよね……」

アクア「大丈夫。きっとヒノカは目を覚ましてくれるわ」
623 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 23:04:15.95 ID:VwYZi0ET0
レオン「アクア、奴の力が残っている影響とかはありえないのかい? 玉座の力で奴の力が解き放たれたとはいうけれど、奴の力が少なからず残っていて、それがヒノカ王女を昏睡状態にしているとか……」

アクア「最初は私も考えたわ。だけど、奴の力はこの白夜王都から無くなっていた。あの時、この王都に広がっていた悪しき力のすべてをヒノカが集めて、玉座の力で浄化したんだと思う。そのおかげね、王都全域に奴の力は感じられないわ」

レオン「それじゃ、奴がこちらの隙を縫って攻撃を加えている可能性は?」

アクア「可能性が無いわけじゃない。だけど、そんな力の動きは感じられないの。仮に奴の眷属や力の流れがあったのなら、さすがに気づいているわ」

レオン「そうか。アクアがそういうなら間違いないんだろうね。そうなると、もう自然に目覚めるのを待つしかないって言う事か……」

サクラ「レオンさん、きっと大丈夫です。だって、ヒノカ姉様を助けられたんですから、私たちが落ち込むわけにはいきません」

アクア「サクラ……。ふふっ、そうね」

レオン「たしかにサクラ王女の言う通りだね。アクア、僕も後で顔を出すよ。これからの事をカムイ姉さんと話さないといけないだろうから」

アクア「ええ、今は混乱も収まっているけれど、誰かが白夜を引っ張っていく必要がある。マークスは白夜に支援はするけれど、属国にするつもりはないのでしょう?」

レオン「ああ、僕たちは支配するために戦ってきたわけじゃない。白夜と暗夜が手を取り合っていける、そんな未来を目指しているんだから」

サクラ「はい。きっと、そんな世の中になってくれるはずです」
624 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 23:15:50.75 ID:VwYZi0ET0
アクア「それじゃ、私はヒノカの下に戻るわ。あなた達は待ってくれてる人がいるんだから、早く行ってあげなさい」

レオン&サクラ『……あ』チラッ

ツバキ&カザハナ『……』

レオン「立ち話ですっかり忘れてた。二人とも、今行くよ」

サクラ「ご、ごめんなさい。今行きます、それじゃアクア姉様、また」

アクア「ええ、がんばってきてね」

 タタタタタタタッ

アクア「……」

アクア(そう、五日間も過ぎてしまった。若干だけど、みんなの中に焦りが生まれてる。白夜の支援もそうだけど、何よりヒノカが生きていたことが大きかった分、目を覚まさないこの状況に不安が大きくなってる。先行きが分からない不安はどんどん膨らみつづけている。少しでも明るい話題があったらと、マークスが救援物資を持った後続の到着を急がせたりと色々してくれているわ)

アクア「だけど、白夜の人々は疲れ果てているみたい……」

アクア(多くの人が犠牲になった。そこにはリョウマが守ろうとした人たちもいる、そしてリョウマの最後の命令を全うしようとした人もいた。だけど、それに応えられたのかどうかわからずに苦悩している人もいる。だからヒノカには目を覚ましてほしい、それだけでも白夜の人々にとっては救いになりえるはずだから。それに……)

アクア「カムイにとっても……きっと……」

 タッタッタッ
625 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 23:22:42.95 ID:VwYZi0ET0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・城内『ヒノカの部屋』―

ヒノカ「スー スー」

 ポワンッ

ミタマ「はい、これで今日一日は大丈夫です。ふぅ、疲れましたわ」

カムイ「ありがとうございます、ミタマさん」

ミタマ「お礼など よしてください カムイ様 。主に尽くすのは臣下の務めですし、こうしてヒノカ様が存命されているという事実だけでもうれしいです、本当に感謝しきれませんわ」

カムイ「それは私も同じです、ヒノカさんが生きていてくれて本当にうれしかった。あの時、救う事が出来なかったんじゃないかと思って……。本当によかった……」

カミラ「ふふっ、それにしても穏やかな寝顔ね。ツンツンしたくなっちゃうわ」

ミタマ「気持ちはわかりますけど、今はおやめください。そういったことは、目覚めた後にしてくださいまし」

カミラ「わかっているわ。ふふっ、起きたらすぐにお茶会を開かないといけないわね」

カムイ「お茶会ですか?」

カミラ「ええ、ヒノカ王女と約束したのよ。無理にでもお茶会へ招待してあげるって」

カムイ「え、そんな約束をしていたんですか?」

カミラ「ええ、あの戦いの最中にね。それにカムイのことをもっと教えてもらえそうな気がするの。あなたが白夜で暮らしていた時の事とか、そういった話が聞きたいわね」

カムイ「白夜で暮らしていた頃ですか……。あまり思い出せそうにありません、私が思い出せた記憶と言えば、光を失った時の記憶くらいです」

ミタマ「光、その目のことですか?」

カムイ「ええ……」

カミラ「その話はやめましょう? あまりしていい話でもないもの。それより、少しだけ外を歩いてきたらどう? 朝からヒノカ王女の傍にいたんだから、少しは気分転換しないとだめよ」

カムイ「ですが、私は……」

カミラ「ヒノカ王女が心配なのはわかるけど、根を詰めすぎているわ。少しは息抜きもしないとだめよ」

ミタマ「カムイ様が倒れてしまわれては、手間が増えてしまいますもの。ここは少し休んでください」

カムイ「……わかりました。少しだけ席を外します。その……」

ヒノカ「……スースー」

カムイ「ヒノカさんのこと、お願いします」

ミタマ「はい、お任せをカムイ様」

カミラ「カムイ、いってらっしゃい」

 タッ タッ タッ

カムイ「……」

カムイ(あの戦いで響いたあの音は何だったんでしょうか? あのとても大きな音、今でも心の中に焼き付いているあの音は……)

カムイ「……いいんです。こうして、ヒノカさんはちゃんと生きていてくれたんですから」

カムイ(いつ目覚めるのかはまったくわかりません。でも、ヒノカさんがこうして生きていたんですから……。ならどうして、未だにあの音が焼き付いて離れないのですか、これでは――)

カムイ「……いいえ。考えなくていいんです。少し根を詰めていたのは間違いないみたいですね。悪いことばかり考えてしまいます……」

カムイ(少しだけ気分を変えた方がいいでしょう。そうでないと――)

(悪いことばかりが頭を過ってしかたありませんから……)

626 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 23:24:22.50 ID:VwYZi0ET0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
627 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 23:26:48.04 ID:VwYZi0ET0
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]←NEW
628 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 23:28:19.40 ID:VwYZi0ET0
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]←NEW
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]←NEW
629 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/12(火) 23:36:01.66 ID:VwYZi0ET0
今日はここまで

 ニュクスとギュンターはこんな感じの生活を送っていたらなって思う。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
 カムイと話をする人物(支援Bまで)

 ジョーカー
 フェリシア
 マークス
 ピエリ
 ゼロ
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 モズメ
 リンカ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 この中から1人
 
 >>630

◆◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>631>>632

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は[631]で選ばれたキャラクターと次レスのキャラクターとの支援になります)

 このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/12(火) 23:53:43.94 ID:rfNMnmDR0
おつですー
ニュクスとギュンターは爺孫っぽい見た目だけど
会話内容が落ち着いた感じギャップがあって好きだわ

安価ならブノワで
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/13(水) 13:04:29.64 ID:2vTvlMsDO

エルフィ
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/14(木) 14:30:47.48 ID:mPGbTeLFO
サクラ
633 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/16(土) 22:04:33.63 ID:itRx4aNn0
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・イズモ公国『あてがわれた部屋』―

エルフィ「サクラ様、今日はありがとうございます」

サクラ「いいえ、そんなお礼なんていいですよ。それで白夜のお菓子はどうでしたか?」

エルフィ「ええ、とってもおいしかった。暗夜のお菓子とは違ってて、新鮮でとてもよかったわ…」

サクラ「ふふっ、そう言ってもらえるととっても嬉しいです。でも、ちょっと食べ過ぎちゃいましたね……」

エルフィ「そうですか?」

サクラ「はい。甘い物ってついつい食べちゃうんですけど、やっぱり体重とかを考えるとしばらくお預けかなって……。エルフィさんはすごい量食べてましたけど、平気なんですか?」

エルフィ「わたし、そんなに食べてた?」

サクラ「え、大皿一杯にお饅頭を食べてたじゃないですか。もしかして、まだ食べられるんですか?」

エルフィ「ええ……。お饅頭、予想以上においしかったから…。もう一皿は行けそうね…」

サクラ「す、すごい……」

エルフィ「それに栄養価の高い物だから、食べて訓練すればもっともっと強くなれるはず…。もっと強くなれればエリーゼ様をもっと守ってあげられる……」

サクラ「ふふっ、エルフィさんに守ってもらえて、エリーゼさんも感謝していると思いますよ」

エルフィ「あと、サクラ様もです…」

サクラ「え、私ですか?」

エルフィ「はい、サクラ様はエリーゼ様のご友人で、仲間ですから…」

サクラ「エルフィさん……ありがとうございます」

エルフィ「また機会があったらおいしい和菓子を教えてほしいわ。サクラ様と一緒なら色々と知ることが出来そうだもの」

サクラ「はい、わかりました。今度は季節の和菓子などはどうでしょうか? 美味しいのは当たり前ですけど、見た目がとってもきれいなんですよ」

エルフィ「そう、楽しみにしてるわ」

サクラ「はい、私もです!」

【サクラとエルフィの支援がAになりました】
634 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/16(土) 22:50:11.62 ID:itRx4aNn0
今日は支援だけ、本編は明日です
635 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 20:29:37.03 ID:+l5xgYbw0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都『シラサギ城』―

カムイ「……ふむ」

カムイ(しかし、何処に行きましょうか。さすがに私が城下町に行くのは色々と問題がありますし……)

 ガシャンガシャンッ

カムイ「?」

ブノワ「む、カムイ様」

カムイ「ブノワさん?」

ブノワ「そうだ……。どうしたんだ、こんなところで?」

カムイ「少し気分転換をするように言われたのですが、城下町に行くわけにもいかなかったので、こうして城内を歩いていたんです。ブノワさんは?」

ブノワ「庭園に用があった。丁度休憩の時間で……」

カムイ「そうですか……」タッ

ブノワ「――!」グッ

カムイ「えっ、どうしましたか? そのなんだか身構えているようですけど」

ブノワ「いや、また触られるのかと思ってしまった……」

カムイ「触られる…。ああ、ブノワさんのヒヨコの事ですね」

ブノワ「そ、それを言うのはやめてくれないか…。恥ずかしいんだ…///」

カムイ「ふふっ、大丈夫ですよ。今はそういう気分ではありませんから……」

ブノワ「そ、そうか…。安心した」

カムイ「そういえば庭園に用事があると言っていましたけど、何かあったんですか?」

ブノワ「大丈夫だ、事件や事故があったわけじゃない…。個人的に用があるだけだ…」

カムイ「個人的な用事ですか……」

ブノワ「?」

カムイ「あの、迷惑でなければ一緒に行ってもいいですか?」

ブノワ「別にかまわない…」

カムイ「ありがとうございます。それじゃ行きましょう」

ブノワ「ああ」
636 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 20:49:52.30 ID:+l5xgYbw0
ブノワ「カムイ様はこの白夜の城に住んでいたのか?」

カムイ「ええ、と言ってもその頃の記憶に覚えはほとんどありません。実際、白夜の方々に助けていただいて訪れたのが最初と言った方がいいと思います」

ブノワ「そうか、白夜の城は緑が多い。暗夜の王城より暖かい感じがする…」

カムイ「ブノワさんは緑が好きなんですか?」

ブノワ「昔、よく森で遊んでいたからかもしれない…。人が多い場所よりも、人気のない森の方が好きではあるな…

カムイ「ふふっ、ブノワさんほどの体格だと森のくまさんと間違えられてしまってそうですね」

ブノワ「……よく間違えられる」

カムイ「え?」

ブノワ「皆、人間だと気付くと謝って来る…。俺としては気にしていないんだが、少しすると食べないで殺さないで、そんなことを言って逃げられる…」

カムイ「どうしてでしょうか? ブノワさんはとても優しい人だと思いますけど」

ブノワ「カムイ様は目が見えない。だから、俺を見ても怯えないんだと思う。大抵の人間は俺の顔を見ると怯えることが多い…」

カムイ「ふふっ、そんなことありませんよ。私は一度あなたの顔を触っているんですから、ちゃんとどんな顔なのかわかっているつもりです。ブノワさんはとても優しい人ですよ。私なんかと違って、とても優しい人だと思いますよ」

ブノワ「そ、そうだろうか?」

カムイ「ふふっ、照れてるんですね」

ブノワ「うう…/////」
637 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 20:59:49.06 ID:+l5xgYbw0
ブノワ「む、着いたようだ」

カムイ「そうみたいですね。でも、誰か他に人がいるような気配はありませんけど」

ブノワ「人に用があったわけじゃない…。来たか…」

カムイ「?」

 ガサガサッ

カムイ「この気配、動物みたいですね。えーっと、一匹ではないようですが――」タッ

 ガサンッ!

カムイ「あ……」

ブノワ「俺以外の人間がいることで警戒しているみたいだ。すまないがカムイ様は、ここで待っていてくれ…」

カムイ「は、はい」

 ガシャン ガシャンッ

ブノワ「……どうだ、うまいか? そうか、それはよかった……」

カムイ(ブノワさん、動物と話をしているみたいですね)

ブノワ「ああ、気を付けて帰るんだぞ…」

 ガササッ

カムイ「終わりましたか?」

ブノワ「ああ、戦争の影響で山に被害が出てるらしい。出来れば安全な山に避難したいが、それぞれの縄張りもあって困っているそうだ…」

カムイ「ふふっ、ブノワさん、詳しいんですね」

ブノワ「ああ、教えてもらったからな…」

カムイ「ほ、本当に話していたんですか、すごいですね」
638 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:06:53.95 ID:+l5xgYbw0
カムイ「それにしても、ブノワさんにこういった趣味があるなんて思いませんでした」

ブノワ「おかしいだろう。俺みたいなのが、動物を好きなこと……」

カムイ「いいえ、そんなことありませんよ。むしろ、しっくりきます。ブノワさんらしいって思いますから」

ブノワ「そうか……」

カムイ「出来ればブノワさんのお手伝いが出来たらと思いましたが、私では怯えさせてしまうだけのようですし」

ブノワ「最初はどんな動物も警戒する…。だが、時間を掛ければ近づいて逃げるようなことは無くなるはずだ」

カムイ「本当ですか?」

ブノワ「ああ」

カムイ「それじゃ、時々でいいのでブノワさんの餌上げにご一緒してもいいですか? その、私では動物がすぐに逃げてしまう気がするので…」

ブノワ「別にかまわない…。興味があったら声を掛けてくれ…。ちゃんとカムイ様の分の餌も準備しておく」

カムイ「はい、ありがとうございます、ブノワさん」

ブノワ「それじゃ、俺は作業に戻る…。カムイ様、色々大変だとは思うがそちらも頑張ってくれ…」

カムイ「はい、ブノワさんも頑張ってきてくださいね」

ブノワ「ああ……」
639 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:13:06.51 ID:+l5xgYbw0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋』―

カムイ「すみません、戻りました。カミラ姉さん、ミタマさん、ヒノカさんの様子は……」

アクア「あ、カムイ。戻ったのね」

カムイ「あれ、アクアさん? カミラ姉さんとミタマさんは?」

アクア「二人ともずっと様子を見ていてくれたから、入れ違いで休んでもらっているの。ヒノカの容体は安定しているから心配はいらないわ」

カムイ「そうですか」

ヒノカ「すぅ……すぅ……」

カムイ「……」

アクア「とりあえず座ったらどう? どこを歩いていたかは知らないけれど、ここで立ち尽くしていても意味は無いわ」

カムイ「そうですね。隣、いいですか?」

アクア「ええ」

カムイ「それじゃ……失礼しますね。ふふっ、アクアさんの隣はやっぱり落ち着きます」

アクア「そ、そう?」

カムイ「はい、私のことを支えてくれる人がちゃんといるってわかりますから」

アクア「私以外にもあなたを支えている人はいるでしょう?」

カムイ「そうですね。だけど、今はアクアさんしかここにはいません。だから間違ってはいないと思います」

アクア「ふふっ、それじゃそういう事にしてあげるわ」
640 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:16:17.48 ID:+l5xgYbw0
カムイ「やっぱり、ヒノカさんが目を覚まさないことに、奴の力は関係がないんですね」

アクア「ええ。もう自然に目覚めるのを待つしかないわ」

カムイ「そうですか……」

アクア「ごめんなさい、力になれなくて……」

カムイ「アクアさんが謝ることはありませんよ。それにある意味いい事だと思えますから」

アクア「どうして?」

カムイ「だって、奴の力が未だにヒノカさんを苦しめているのなら、アクアさんは力を使ってしまうような気がしますから」

アクア「……そうね、恐らく使っていたわ。だってヒノカを助けることは、あなたが望んだことだもの……。出来るなら、それを実現させたいから」

カムイ「でも、それであなたが苦しむことになってほしくはありません。あなたは私の守りたい大切な人なんですから」

アクア「カムイ……」

カムイ「だけど、このところは支えられてばかりで格好がつきませんね。リョウマさんの時もヒノカさんの時も、そしてテンジン砦の時だってそうです。あなたに助けてもらえなければ、私はここにいなかったはずです」

アクア「いいえ、支えられていたのは、私の方よ。あなたがいなかったら、私はこの世から消え去ってしまっているはずだもの……」
641 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:28:22.52 ID:+l5xgYbw0
カムイ「縁起の悪いことを言わないでください」

アクア「いいえ、事実よ。おそらくあなたがいなかったら、あなたに力の事を知られていなかったら、この歌の力を最大限に利用していた。そして、私はヒノカとの戦いで命を落していた。この世から消えてなくなっていたはずよ」

カムイ「どうして、そう言い切れるんですか?」

アクア「奴の野望を挫くこと、それが私にとって一番重要な事だったからよ。そのためには犠牲も厭わないつもりだった。あなたが私の力の秘密を知らなかったのなら、ヒノカは恐らく生きていなかった……」

カムイ「アクアさん……」

アクア「あなたは私が選べなかったことを選んだの。それが結果的に私の命を支えてくれた、こうしてまだ生きていられる理由なのよ」

カムイ「それは私も同じですよ。だって、私とアクアさんは運命共同体ですからね」

アクア「運命共同体ね……。もう少し、その、違う言い方があってもいいと思うのだけど?」

カムイ「違う言い方ですか?」

アクア「ええ、ほら、あるでしょう? こういう私とあなたの間柄に似合っている言い方が」

カムイ「そうですね。私とアクアさんの間柄で似合っている言い方ですか……」

アクア「……」

カムイ「……相棒ですかね?」

アクア「相棒……」

カムイ「はい、アクアさんといるととてもホッとできますし、なによりとても頼りになりますから」

アクア「そう……。相棒ね……。ふふっ、相棒ねぇ……」ニコニコ

カムイ「えっと、なんか怒ってませんか、アクアさん?」
642 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:31:48.47 ID:+l5xgYbw0
 コンコンッ

カムイ「?」

レオン「カムイ姉さん、居るかい?」

カムイ「レオンさん、どうしたんですか?」

レオン「よかった、違う場所にいたらまた探しに回らないといけなかったからね。ちょっと話があるんだけど……そのいいかな?」

カムイ「ええ、いいですけど。どうしたんですか、何か遠慮しているみたいですけど」

レオン「う、うん」チラッ

アクア「………」

レオン(どうしよう、何かよくわからないけど、アクアの機嫌がものすごく悪い。僕か、それとも姉さんか? どちらにしても手早く済ませた方が良さそうだ)

レオン「アクア、え、えっとカムイ姉さんを借りて行ってもいいかな?」

アクア「ええ、構わないわ」

レオン(そんな刃物みたいな視線で構わないと言われても……)

レオン「えっと、ここで話すのもあれだから、廊下でもいいかな?」

カムイ「は、はい。アクアさん、私はちょっと出てきますので、ヒノカさんのことよろしくお願いします」

アクア「ええ、相棒に任せておいて、相棒にね?」

カムイ「は、はい、お願いします」

アクア「……ふん」
643 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:35:08.18 ID:+l5xgYbw0
レオン「姉さん、アクアと何かあったのかい?」

カムイ「いえ、その、確かに怒らせてしまったのかもしれませんが……」

レオン「何を言ったんだい? あんなアクアを見るのは初めてなんだけど……」

カムイ「えっと、私とアクアさんの間柄で運命共同体以外の言い方は無いかと聞かれまして……。アクアさんはとても頼りになって信頼できる人で、アクアさんも私の事を信頼してくれている気がしたので、相棒と……」

レオン「……あー。うん、その、なんだろう。これは姉さんが悪いのかなぁ……」

カムイ「何が悪かったのでしょうか……。レオンさん、何か違う言い方はありますか?」

レオン「思い当たらないわけじゃないけど、それは教えられそうにない」

カムイ「どうしてですか?」

レオン「そういうのは、自分で考えることに意味があるからだよ。僕の意見は僕の意見だってことくらい姉さんはわかると思うけど、影響はあるだろうからね」

カムイ「なるほど……」

レオン(実際は何かしら口にして、それを姉さんがアクアに僕から聞いたなんて零した結果、こっちに火の粉が掛かるかもしれないからだよ……)

カムイ「はぁ……そういうものですか。わかりました、色々と考えてみます」

レオン「うん、頑張ってね……」
644 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:40:21.38 ID:+l5xgYbw0
カムイ「それで話というのは何でしょうか?」

レオン「ああ、今日の夕方に後続部隊も到着することになっているけど、それは知っているよね?」

カムイ「はい、マークス兄さんが到着を繰り上げる様に指示を出してくれたと。これで白夜の人たちも安心できると思います」

レオン「うん、だけど終わったのは白夜との戦いだけだ。まだ戦いが終わったわけじゃない」

カムイ「ええ、奴の本体が未だにガロン王を根城にしているのなら、こちらから仕掛けないといけません。直接戦いを挑んでくるとは思えませんから」

レオン「だろうね、ゼロが指揮する視察部隊の報告ではテンジン砦の一件以後、旧暗夜軍は姿を見せてないらしいからね。テンジン砦の爆発で向こうの兵力もかなり消耗しているだろうから、迂闊に行動できないのか。それとも、旧暗夜軍の兵たちの動きを見て楽しんでいるのか……。どっちにしても、奴が直接来ることはもう無いとは思う。だけど、向こうから仕掛けてくる可能性もある以上、悠長にことを構えているのは難しいだろうね」

カムイ「……すぐにでもここを立つべき、という事ですね?」

レオン「……ああ。ヒノカ王女の事が心配なのはわかる。僕も出来るならヒノカ王女の無事を確認してから行動するべきだとは思う。だけど……、このまま奴を野放しにしておくことは出来ない、絶対にね……」

カムイ「レオンさん。わかりました、今日の夜、後続部隊を指揮する方たちと話の場を設けて今後のことを話し合いましょう。レオンさんも参加していただけますか?」

レオン「もちろんだよ。後続部隊の指揮官にはこちらから話をしておくし、マークス兄さんやサクラ王女にも話はつけておくよ」

カムイ「はい、すみませんがお願いいたしますね、レオンさん」

レオン「うん、それじゃ」

タッタッタッ

カムイ「……そうでしたね。まだ戦いは終わっていないんですよね」

カムイ(でも、出来るなら。ヒノカさんが目覚めるまで、ここを離れたくはありません。ヒノカさんが無事だったということを見届けてからでないと……)

(この音は収まってくれそうにありません……)
645 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:41:20.11 ID:+l5xgYbw0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+→B ←NEW
(動物の餌やりを一緒にやることになっています)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
646 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:47:08.05 ID:+l5xgYbw0
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
647 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:47:55.42 ID:+l5xgYbw0
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
648 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:52:15.56 ID:+l5xgYbw0
今日はここまで
  
 エルフィとサクラは一緒においしいものを食べる友達的な感じになる気がする。
 アクアは拗ねたりするとこんな感じになる気がする。

 この先の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援Aとブノワ以外)

 ジョーカー
 フェリシア
 マークス
 ピエリ
 ゼロ
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 モズメ
 リンカ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>650

 次に続きます。
649 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/17(日) 21:53:30.67 ID:+l5xgYbw0
 安価続き
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
・アシュラ×サクラ
・ブノワ×エルフィ
・レオン×ピエリ
・ツバキ×モズメ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ラズワルド×シャーロッテ
・マークス×エリーゼ

 この中から一つ>>651
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ
・カミラ×アクア
・シャーロッテ×カザハナ
・エリーゼ×カミラ
・レオン×ハロルド
・スズカゼ×ブノワ

 この中から一つ>>652

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/03/17(日) 22:30:30.27 ID:nJbn3XLb0
ハロルド
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/19(火) 08:59:55.92 ID:N2hZUupEO
ラズワルド×シャーロッテ
652 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 19:12:51.83 ID:u/EuGT6v0
 >>652が埋まりそうにないので、『ギュンター×マークス』の支援を書くことにします。すみませんが、よろしくお願いいたします。

 >>650>>651の安価に参加してくれた方、ありがとうございました。
653 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 19:19:48.52 ID:u/EuGT6v0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『城下町・町外れの路地』―

ラズワルド「はぁ、今日も駄目だったか……。こんな時間だかし、もう兵舎に戻らないと……ん?」

男「てめえ、女だからって調子に乗ってんじゃねえぞ!?」

???「女だからって舐めてるのてめーのほうだっつーの!」

男「へっ、そのデカい態度後悔させてや――イテテテテ!!!」

ラズワルド「はいそこ、女の子に手を上げるなんて捨て置けないね」

男「な、なにしやが――いでぇ!」

ラズワルド「ここは見なかったことにしてあげるからさっさと消えた方がいい、じゃないと君を婦女暴行の容疑で処罰しないといけなくなっちゃうからさ」

男「ちっ……お、覚えてやがれ!」タタタタッ

ラズワルド「はぁ、やっぱりこの時間になるとああいうのが歩いてるのか。駄目だよ、こんな時間に女の子が一人で出歩くなんてさ」

???「別に助けなんて頼んでないんだけど……」

ラズワルド「いやいや、困ってる女の子がいたら助けるのが当たり前だから……あれ? もしかして君、シャーロッテ?」

シャーロッテ「なんで私の名前を知――、げっ、ラズワルド……さん」

ラズワルド「ちょっとまって、げっ、て何!? それよりも、さっきまでのしゃべり方って……」

シャーロッテ「……そうよ、これが私の素よ。文句ある?」

ラズワルド「いや、文句も何もないけど……。それより今のは?」

シャーロッテ「ああ、あいつね。ちょっと優しくしたら勘違いして、私の体を触ってきたからビンタしたのよ。そしたら因縁つけられたの」

ラズワルド「ビンタって豪快だね……。それより大丈夫だった? 怪我とかしてない?」

シャーロッテ「どこか怪我してるように見える? 見えないでしょ? つまり大丈夫ってことよ。だけど、あんたには私の素がバレちゃったみたいね……」

ラズワルド「あはは、そうだね。素のシャーロッテはこんな感じなんだ」

シャーロッテ「言っとくけど、もしもこの事をばらしたらただじゃ置かないからね」

ラズワルド「言いふらしたりするつもりはないよ。それより、まだ時間あるかな? これからお茶でも飲みに行かない?」

シャーロッテ「なに、脅してるわけ?」

ラズワルド「いやいや、そんなつもり全然ないから……。ただ、リフレッシュにどうかなって思ってさ、素の君のままでかまわないしね」

シャーロッテ「え、なにそれ、今の私を見ても平気なの? 幻滅したんじゃないの?」

ラズワルド「確かに驚いたけど、シャーロッテが可愛いことに変わりはないからさ。僕は可愛いシャーロッテとお茶がしたいだけだしね」

シャーロッテ「そう……。ふふっ、変な奴ね。だけど今日は無しよ、あんなあとに気乗りなんてしないっつーの」

ラズワルド「そっか、それじゃ兵舎まで送るよ。僕の用事も無いからさ」

シャーロッテ「はいはい、勝手にしてよ。言っとくけど、もうあんたの前で猫被ったりしないから」

ラズワルド「別にかまわないよ、そのままのシャーロッテも可愛いからね」

シャーロッテ「……はいはい、ありがとね」

『ラズワルドとシャーロッテの支援がBになりました』
654 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 19:22:29.17 ID:u/EuGT6v0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『訓練場』―

ギュンター「マークス様、演習の準備が整いました」

マークス「ああ、わかった。今回、ギュンターには防衛部隊の指揮を務めてもらう」

ギュンター「わかりました。今回の演習、どうやら今後を担う若手の育成が目的と見えます」

マークス「その通りだ。成績と実力に自信のある者たちばかりを集めている。経験者を相手に演習をすることで、更に各個人の能力を高められるはずだ」

ギュンター「なるほど。して、どういった戦況を想定して行うのですかな?」

マークス「うむ、敵が前面から攻めてきている状況を想定している。騎馬隊などは存在しない突発的な防衛戦だが、若手に与える兵力はわれわれよりも多い形になっている」

ギュンター「数では敵が上というわけですな。分かりました、それを時間まで守り切ればよい、そういう事でよろしいですかな?」

マークス「ああ、そういう事になる。地理的には防衛側が有利だが、兵力では攻める方に分があるという形を取った。一応、敵指揮官を倒せばその時点で勝利という特殊なルールも設けているが、中々そううまくはいかないだろう」

ギュンター「ふっ、わかりました」

マークス「ギュンター、お前が指揮を執るところをこの目で見たことは無いから楽しみにしているぞ」

ギュンター「このおいぼれに出来る事がそれほど目新しいとは思えませんが、ご期待に添えられるよう頑張りましょう」

マークス「ああ、よろしく頼む」

ギュンター「御意」

『マークスとギュンターの支援がBになりました』
655 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 19:52:03.30 ID:u/EuGT6v0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『廊下』―

カムイ「夜から話し合いですか……」

カムイ(おそらく、早くて明後日にはテンジン砦まで戻ることになるでしょう。白夜での支援活動は後続の方々にお任せしたほうがいいでしょうし、奴を止めることが重要なことですから……)

カムイ「でも、出来ればヒノカさんが目覚めるまで、ここにいたい」

カムイ(一度でいいから無事な姿を見せてほしい。あの玉座で感じた、あなたの気配、感覚が分かればそれでいいんです……)

カムイ「ヒノカさん、目を覚ましてくれますよね……」

カムイ(もしも目を覚まさなかったら、このまま眠り続けるだけになってしまったら……。私は……)

 ……リィン……

カムイ「駄目ですね、すぐにこんなことばかり考えてしまう。ここでそんな弱気になってしまっては駄目じゃないですか……」

カムイ(ここは絶望の場所なんかじゃありません。奴の力はこの王都から消え去って、白夜と暗夜の争いは終わりを迎えたのですから)

カムイ「リョウマさん……、私はヒノカさんを、救えたんですよね……」

カムイ(私は、その場所に辿り着けたはずですよね?)
656 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 20:11:37.86 ID:u/EuGT6v0
カムイ「……」

???「おや、カムイ様? どうかしましたか?」

カムイ「その声はハロルドさん?」

ハロルド「はい、なにやら落ち込まれているようですが……。体調を崩されているのですか?」

カムイ「いいえ、大丈夫です。このところはずっと城内にいますし、そんな体調を崩すような作業もしていませんから」

ハロルド「そうですか。あなたがそういうのでしたら大丈夫なのでしょう」

カムイ「はい。ハロルドさんは何を?」

ハロルド「さっきまで城下町で瓦礫の撤去などを手伝いに。瓦礫を一つ抜くたびに私の方いる場所が崩れるので少々作業に手こずりましたが、何とか一段落しましたよ」

カムイ「ふふっ、ハロルドさんは相変わらずですね。城下町の方は大丈夫なんですか?」

ハロルド「まだまだ被害状況の全容はわかりません。いったいどれほどの罪の無い人々が犠牲になったのか……」

カムイ「そうですか…」

ハロルド「ですが、今生きている人々はその分も生きて行かなくてはいけません。私はその人々が前を向いて歩めるようにと手助けして回っています」

カムイ「手助けですか?」

ハロルド「はい、東に泣いている子がいれば一緒に泣いてあげ、西にお腹を空かせた人がいれば食料を手渡しにいく。些細な事でも手助けすることが、この場所に必要な事だと私は思うのです」
657 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 20:24:14.90 ID:u/EuGT6v0
カムイ「ハロルドさんはすごいですね」

ハロルド「いいえ、私はしたいことをしているだけです。子供の頃からずっとそうありたかったように、誰かが助けを求めているのならそれに応えたい。私は私にとっての正義を行っているだけですから」

カムイ「だとしても、誰かのためにそうできることは素晴らしいことだと思います」

ハロルド「ありがとう、カムイ様。そう言ってもらえることは私にとってとても励みになります」

カムイ「ふふっ。でも、私の言葉では少々力不足な気もします」

ハロルド「……どうしてそう思われるのですか?」

カムイ「私は戦いが終わってから、何もしていません。ずっとヒノカさんの回復を待つばかりで、城下町の様子を見に行くこともしていない。私は、ただ戦うことだけしかしていなかった」

ハロルド「……」

カムイ「出来る事なら私も城下町に赴いて、何かを手伝いたいとは思います。けれど、私は白夜にとって裏切り者です。そんな人間を白夜の人々は見たくないでしょう。いきなり手伝いを申し出ても不安を煽るだけです……」

ハロルド「いいえ、そんなことはありません。手伝いを申し出たところで、大きな問題は起きないでしょう」

カムイ「どうしてそう思えるんですか?」

ハロルド「それは、カムイ様に正義があるからです」

カムイ「正義……ですか?」
658 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 20:47:58.23 ID:u/EuGT6v0
ハロルド「はい。カムイ様は生き残った白夜の人々に危害を加えるわけではないのですから。誰かを助けたいという気持ち、私はそれを正義だと思います。それに、最初私たちが行ったとき、多くの白夜の人々は怯えていました」

カムイ「……そうだったんですか」

ハロルド「ええ、あの戦いで共闘したとしても、私たちが白夜を侵略したのは間違いありません。私たちは白夜の人々にとって敵であるのは変わらない事実です。ですが、その事実を前に助けることを放棄するのは正義とは言えない。私は一歩を踏み出して何か困っている事は無いか聞きました」

カムイ「……」

ハロルド「その方は足に怪我をされていた。そのことを私に言っていいか迷っていました。そこで私はもう一歩踏み出して、力になりたいと告げました。そうしなければここで、つながりが絶たれてしまうと思ってしまったからです」

カムイ「つながりが絶たれてしまう……ですか」

ハロルド「はい。私たちの助けたいという思い、その正義は間違いではありません。そして、それを繋げられるのも私たちだけなのです。この正義は恩を売るための物ではなく、この先を生きていけるようにという願いを込めたものであり、この戦いを生き抜いた人々が絶望しないように支える力だと私は思っています」

カムイ「……支える力ですか」

ハロルド「はい。まぁ、支えると言いながら人々の前で壮大に転んでしまったり、崩れた瓦礫に埋もれてしまったりとあまり格好がつかないことが多かったのですが……」

カムイ「え、瓦礫に埋もれるって大丈夫だったんですか?」

ハロルド「ええ、大丈夫でしたよ。それに白夜の人々も最後には笑っていました。少なくともその笑みは心の底からの笑顔だと思えました」

カムイ「ふふっ、ハロルドさんは人を笑顔にする天才なのかもしれませんね」
659 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 21:03:32.76 ID:u/EuGT6v0
ハロルド「カムイ様、よろしければ一度城下町の手伝いに来てください。大丈夫、きっと多くの人々はあなたのその正義を受け入れてくれるはずです」

カムイ「……受け入れてくれるでしょうか?」

ハロルド「受け入れてくれますよ。誰かを助けたいという気持ちに嘘はありません。ですから、怖がることはありません」

カムイ「ハロルドさん……、ありがとうございます。すごく励みになりました」

ハロルド「いえいえ、どういたしまして。ではカムイ様、私は城下町に戻ります。まだまだ、助けを求めている人々は大勢いますので」

カムイ「はい、頑張ってきてください」

ハロルド「それでは!」タタタタタッ

カムイ「…誰かを助けたいという気持ちに嘘はない……ですか」

カムイ(私はヒノカさんを助けたかった。そしてリョウマさんも助けたかった。その気持ちに嘘はありません。それは今でも、ちゃんと心にあります。そして、白夜を助けたいという思いもこうしてあるのですから……)

カムイ「待っているだけではいけませんよね……」
660 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 21:21:12.57 ID:u/EuGT6v0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
〜白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋の前』―

カムイ(そうですよね、こうして待っている間でも出来ることはあるのですから。ヒノカさんはいつか目覚めてくれるはずですし、私も出来る限りの事をやるべきですよね)

カムイ「まずは今日の夜の会合で、色々と今後の事を決めないといけませんね」

 コンコンッ

カムイ「すみませんアクアさん、今戻りました」

アクア「……」

カムイ「あれ、アクアさん?」

アクア「すぅ……すぅ……」

カムイ「眠られているんですね。えっと、どうしましょうか。流石にここを空けるわけにはいきませんし……ん?」

カミラ「失礼するわね。あら、カムイ。気分転換は出来たのかしら?」

カムイ「カミラ姉さん、ええ、それなりにですけど」

カミラ「ふふ、そうみたいね。朝より顔色が良くなっているわ。そういえば、アクアはどうしたの?」

カムイ「それが……」

カミラ「あらあら、眠っちゃったのね。本当はアクアの方が休むべきなのに、無理をさせちゃったみたいね」

カムイ「はい」
661 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 21:24:27.78 ID:u/EuGT6v0
カミラ「このままでいいのかもしれないけれど、日が落ちてもこのままじゃ寝冷えしちゃうわ。どこかに運んであげないと」

カムイ「そうですね。何処かいい場所があればいいんですけど、そんな場所は……」

ミタマ「それなら、カムイ様のお部屋がいいと思います」

カミラ「あら、ミタマ。ゆっくり眠れたのかしら?」

ミタマ「ええ。ぽかぽかに つつまれながら ゆめごこち。アクア様の計らいでたっぷり惰眠を貪れましたわ」

カミラ「そう、それでカムイの部屋っていうのは?」

ミタマ「そのままの通りですわ」

カムイ「私の部屋、まだ残っているのですか?」

ミタマ「はい、リョウマ様とヒノカ様の計らいで残っています。もしかして、確認されていなかったのですか?」

カムイ「え、ええ。流石にもう無くなっていると思っていたので……」

ミタマ「そうですか。色々と使える様に準備をしたのですが、使われていませんでしたか。では、この機会にお使いください。部屋までの道案内は必要ですか?」

カムイ「いいえ、城の構造は覚えていますから大丈夫です。それじゃ、よっと」

アクア「ん、んん……」

カムイ「少し揺れますが、我慢してくださいね。アクアさん」

カミラ「ヒノカ王女のことは私とミタマに任せて、あなたはアクアの事をお願いね?」

カムイ「わかっています。それじゃ、すみませんがちょっと行ってきますね」タッタッ
662 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 21:33:01.08 ID:u/EuGT6v0
アクア「すぅ……すぅ……」

カムイ「えっと、確かここでしたね……よっと」

 スーッ……

カムイ「……そうでしたね。ここが……私の部屋なんですね」

カムイ(ここだけ、何も変わっていないように感じる。多分、リョウマさんやヒノカさんが誰も近づけなかったのかもしれません。いつか私がここに戻ってくると信じてくれていた……)

カムイ「……」

カムイ(でも、私はここに戻ってきたわけじゃない。だから、その言葉を言う資格はありません……)

カムイ「えっと、布団はこれですね。アクアさん、ちょっと待っててくださいね」

アクア「……」

 バサッ……

カムイ「よし、これで大丈夫でしょう」

アクア「すぅ……すぅ……」

カムイ「私がしっかりしないといけないのに、色々と右往左往してごめんなさい。アクアさんは色々と私を気に掛けてくれているのに、すぐにそれに応えられなくて。あなたに色々と負担を掛けてばかりですね」

 ナデナデ

アクア「ん……」

カムイ「今はゆっくり休んでくださいね」

 スーッ ピシャンッ

カムイ(まだ希望は続いているんです。その希望は向かってきてはくれません、私から向かっていかないといけないものですから)

カムイ「……負けません。絶対に――」

「負けたりしませんから……」
663 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 21:34:27.85 ID:u/EuGT6v0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+→B+ ←NEW
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワB
(動物の餌やりを一緒にやることになっています)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
664 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 21:36:36.09 ID:u/EuGT6v0
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
665 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 21:38:26.81 ID:u/EuGT6v0
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
666 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/22(金) 21:44:11.56 ID:u/EuGT6v0
今日はここまで
 
 暗夜編のカムイは、戦争終結後も白夜でその言葉を言う事は決してなかったと思う。

 更新が不定期で申し訳ないです。安価はまだ続けていきますので、参加していただけると幸いです。
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
〇カムイを呼びに行くキャラクター(カムイとの支援がAでアクア以外)

 ギュンター
 フローラ
 ラズワルド
 オーディン
 レオン
 ルーナ
 カミラ
 エリーゼ
 サクラ
 カザハナ
 シャーロッテ

 この中から一人
 >>667

◆◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>668>>669

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)

 このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/22(金) 22:06:02.56 ID:YoamoxXJO
サクラ
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/23(土) 08:02:19.98 ID:l9pWsTcTO
ジョーカー
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/24(日) 01:08:40.56 ID:EX5JY7Qb0
カミラ
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/28(木) 17:25:37.88 ID:MrerFhuDO

戻る部屋はメイド×2がいるお城の中
同様に白夜編も、暗夜の城には戻りづらそう、メイド一人焼死したし
671 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 09:29:50.48 ID:UUdKgmS+0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞『廊下』―

カミラ「ジョーカー、ちょっといいかしら?」

ジョーカー「はい、何でしょうカミラ様」

カミラ「今度、の方々を招いての会合があるの。そこであなたに場の給仕をお願いしたいのだけれど?」

ジョーカー「私にですか?」

カミラ「ええ、あなたの腕を見込んでいるのよ。それに場が場だもの、生半可な能力の人間に任せられないわ」

ジョーカー「そうだですか」

カミラ「それで、引き受けてくれるかしら?」

ジョーカー「問題ありません。それにカミラ様から御指名ですので、その役目引き受けましょう」

カミラ「ありがとう、快諾してくれてうれしいわ。日時は追って連絡するわね」

ジョーカー「わかりました。連絡をお待ちしております、カミラ様。お話は以上でしょうか?」

カミラ「ええ、時間を取らせちゃったわね」

ジョーカー「いいえ。そういえば、そろそろ午後の休憩の時間です。カムイ様も戻られますが、如何されますか?」

カミラ「そうね……。いいえ、今回はやめておくわ」

ジョーカー「珍しいですね」

カミラ「そういうこともあるの。ふふっ、気まぐれな所も女性の魅力だと思っておいてちょうだい」

ジョーカー「そうですか。それでは失礼いたします、カミラ様」

カミラ「ええ、それじゃね」

ジョーカー「……カムイ様とのお茶を断るのはカミラ様らしくないな」

ジョーカー「……」

ジョーカー「今回の件、少し探ってみるか……」

『カミラとジョーカーの支援がCになりました』
672 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 09:41:49.92 ID:UUdKgmS+0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『城内・廊下』―

カムイ(ヒノカさんはきっと目を覚ましてくれます、ならその間に私にも出来ることをしないと……)

カムイ「しかし、今から何が出来るのでしょうか?」

カムイ(目が見えない分、何かを撤去するといった作業には向いていませんし、それに今ここに至って色々と人に聞いて迷惑を掛けるわけにも……)

カムイ「うーん……」

 タタタタタッ

カムイ「?」

サクラ「あ、カムイ姉様」

カムイ「サクラさん、どうしたんですか?」

サクラ「はい、レオンさんから夜の会合に関して伝えて来てほしいと頼まれたので、探していたんです」

カムイ「もしかしてもう到着したんですか?」

サクラ「いいえ、その伝令を出したって聞いてます。それで答えが来たから伝えてほしいと」

カムイ「そうですか。わざわざありがとうございます、サクラさん」

サクラ「いいえ、いいんです。私もお城に用事がありましたから。色々と足りないものが多くて……」

カムイ「足りないもの、今その手に持っている袋の事ですか?」

サクラ「あ、はい、お水と包帯、それとお薬とかですね。中央広場の撤去作業も落ち着いたので、今から仮設の医療天幕へ行くところです。出来ればもう少し持っていきたいんですけど……」

カムイ「なら、私もご一緒します」
673 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 09:46:41.98 ID:UUdKgmS+0
サクラ「そ、そんな大丈夫です。私が往復すればいいだけですから」

カムイ「いいえ、私が手伝えば一回で済みますし、何より物資を待っている方たちを待たせるわけにはいきませんから」

サクラ「でも、カムイ姉様は大丈夫なんですか。白夜の方たちはカムイ姉様のこと……」

カムイ「そうですね、私が白夜の方たちから敵意を向けられるのは間違いないでしょう」

サクラ「でしたら……」

カムイ「でも、それから逃げていても何も変わりません。私はただ誰かを救いたいと願って、この道を歩んできました。それから逃げるわけにはいかないんです」

サクラ「カムイ姉様……」

カムイ「サクラさんが私の事を心配してくれるのはうれしいです。でも、これは私が望んでやりたいこと。これが誰かの助けになるなら、私はその役に立ちたいんです」

サクラ「ふふっ」

カムイ「え、サクラさん? どうして笑うんですか?」

サクラ「いいえ、さっきカミラさんが言っていたんです。今の姉様なら大丈夫って、私も今そう思ってしまって」

カムイ「たしかに心配ばかりかけてしまいましたからね。そう思われても仕方ありませんか」

サクラ「ふふっ、それじゃ一度物資を取りに行きましょう。付いてきてください」

カムイ「はい」
674 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 09:53:02.03 ID:UUdKgmS+0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王都・城下町『臨時医療区域・中央天幕付近』―

カムイ「大きく迂回するんですね」

サクラ「はい、本当はまっすぐに伸びた道があるんですけど、倒れた建物があって使えないんです」

カムイ「そうなんですね」

サクラ「レオンさん、応援が来たらすぐにでもここの道を使えるようにしないといけないって張り切っていました」

カムイ「ふふっ、レオンさんも色々と白夜の人々のために考えてくれているんですね」

サクラ「はい! いつか、私たちが知っている白夜の光景を見てみたいって言ってくれたんです」

カムイ「きっと叶いますよ。……ん?」

カムイ軍救護兵「よし、こっちは大丈夫だ。そっちから包帯の代えを出してくれるか」

カムイ軍救護兵「わかりました。それと薬品の残りが少なくなっています。使い過ぎに気を付けてください」

カムイ「ここですか?」

サクラ「はい、ここです。お疲れ様です、お薬とかを持ってきました」

カムイ軍救護兵「おお、とても助かります。備蓄がそこを尽きかけていましたが、これで夕刻までは耐えられそうです」

サクラ「本当ですか、よかった……」

カムイ「よかったですね、サクラさん」
675 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:04:14.20 ID:UUdKgmS+0
カムイ軍救護兵「すみません、サクラ様やカムイ様に運んでいただいてしまって」

カムイ「いいえ、私に出来ることはこれくらいですから。ここにいる方々は大丈夫なのですか?」

カムイ軍救護兵「白夜の人々と共に最善を尽くしてはいます。ようやく多くの方は落ち着き始めていますが、すべての人の容態が落ち着いたとは言えない状態ですね」

カムイ「そうですか……」

カムイ軍救護兵「応援が到着次第、重傷者の移送を順次行う事にはなっていますから、それまでは耐えてもらうしかないでしょう」

サクラ「すみません、環境の改善について早く気づけたらよかったんですけど……」

カムイ軍救護兵「いいえ、サクラ様の所為ではありません。皆、目の前で苦しんでいる人を助けることを優先していたのですから。それに次にするべきことが環境の改善であることを私たちは気づけませんでした。ありがとうございます、サクラ様」

サクラ「そんな、お礼なんていいですよ。皆さんが早く回復されることが第一ですから。移送が開始できるまで時間が掛かります、私もお手伝いできることはお手伝いしますので」

カムイ軍救護兵「わかりました。頼りにしていますよ」

サクラ「はい。あ、包帯やお薬とかはこちらでいいですか?」

カムイ軍救護兵「ええ、そこに置いてください。後は私たちにまかせて……ん?」

白夜の民「ううっ……誰か……み、水を……くれないか……」

カムイ軍救護兵「あ、ああ、待っていてくれ、すぐに向かおう。物資の仕分けはそれからでも……」

カムイ「あの、よろしければ私があの方にお水を持っていきましょう」

カムイ軍救護兵「え?」

カムイ「物資の仕分けは私には難しいですが、お水を持って行って飲ませてあげることは出来ますから」

カムイ軍救護兵「ですが……」

カムイ「いいんです。今の私に出来ることはこれくらいですし、物資の仕分けが終わることで医療活動が早く再開されるならそれが一番の事ですから」

カムイ軍救護兵「わかりました。すみませんがよろしくお願いいたします」

カムイ「はい。サクラさんも物資の仕分けの手伝いをお願いできますか? すぐに戻りますので」

サクラ「わかりました。患者さんのことお願いしますね」

カムイ「はい」

676 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:09:18.61 ID:UUdKgmS+0
白夜の民「う……ううっ……あ……」

カムイ「大丈夫ですか? お水を持ってきましたので、ゆっくり飲んでください」 

白夜の民「あ、ああ、んっ、んっ……。はぁ……、はぁ……」

カムイ「まだ飲みますか?」

白夜の民「あ、ああ……んっ、んっ……。ありがとう…、助かったよ……」

カムイ「ふふっ、ゆっくり休んでいてください。今日の夕刻までの辛抱ですから」

白夜の民「……すぅ……すぅ……」

カムイ「このような人が、まだ大勢いるんですよね……」

カムイ(これが私の選んだ一つの結果、私がヒノカさんを助けるために戦った結果なんですね……)

 タッ タッ

???「おい」

カムイ「ん?」

負傷した白夜兵「あんた……カムイ王女か? カムイ王女だろう?」

カムイ「……はい、そうです。あなたは?」

負傷した白夜兵「俺の事なんてどうでもいいだろう。それより、裏切り者が今さらなんのようだ。ここはお前が来ていいような場所じゃないってわからないのか?」

カムイ「……」
677 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:20:38.24 ID:UUdKgmS+0
負傷した白夜兵「あんたがしたことは誰もが覚えている。ミコト様が亡くなった直後に暗夜へ寝返ったあんたがこの地に足を踏み入れ、民に触れていいとでも思っているのか?」

カムイ「私は……」

負傷した白夜兵「弁解など要らない。今さら罪滅ぼしのつもりか知らないが、そんな優しくしたところであんたの立場は変わらない。この機に乗じてすり寄ってくるなど、人間としての底が知れるというものだ、そうだろう?」

カムイ「……」

負傷した白夜兵「それともなんだ? 光を失って周りが見えないから、こうやってのこのことやって来れるということか? あの後の白夜がどんなものだったのかもしらないでよくもそんなことができる。あんたに介抱されて喜ぶものなどいない、余計なことはしないで、俺たちの前から姿を――」

サクラ「やめてください!」

カムイ「サクラさん……」

負傷した白夜兵「サ、サクラ様……」

サクラ「カムイ姉様は、ただ水を求めている人に水を上げただけです。ただ困っている人がいたから手を差し伸べただけなのに、どうしてそのような事が言えるんですか!」

負傷した白夜兵「で、ですが、カムイ王女は白夜を裏切り、混乱に陥れた元凶で――」

サクラ「それなら私も同じです。あの日、多くの人々が暗夜に送られた原因に、私が勝手な真似をして捕まったことも関係しているはずです!」

負傷した白夜兵「それは違います。あなたは暗夜に捕らわれていた身ではありませんか。カムイ王女とは違う、こんな裏切り者とサクラ王女が一緒なわけがありません。こいつが我々を裏切らなければ、このようなことには――」

???「そこまでにしておけ」

678 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:25:58.47 ID:UUdKgmS+0
 ドゴッ

負傷した白夜兵「がっ、ううっ、何をするんですか、隊長……」

白夜兵「馬鹿者、このようなところで騒ぎを起こすな。ここは傷を癒す場所だ。大きな声を上げ、他者を罵倒する場所ではないのだぞ」

負傷した白夜兵「ぐっ、しかし、こいつが、こいつが――」

カムイ「……」

白夜兵「その思考はいずれリョウマ様を奪ったユキムラと同じ道に堕ちることになる。これ以上、リョウマ様の意思を穢すのであれば、リョウマ様の敵としてお前を斬るしかなくなる」チャキッ

負傷した白夜兵「!」

カムイ「待ってください、その人が言っている事は――」

白夜兵「ああ、そうだな。でもそれは別の問題だ。発言の真意はどうでもいい、だがその言葉はここで休む者たちには聊か耳に残りすぎる言葉だ。見ろ、多くの者が目を覚ましてしまった」

負傷した人々『……カムイ王女?』

 ザワザワ……

サクラ「あ……」

カムイ「……」

負傷した白夜兵「……み、みんな――」

白夜兵「その先を口にしたらもう容赦はしない。その覚悟があるのなら続けるといい」

負傷した白夜兵「!」
679 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:33:08.72 ID:UUdKgmS+0
白夜兵「なぁ、こんな公衆の面前で部下であるお前を斬りたくなどない。せっかく生き残ったというのに、そんなことを私にさせないでくれないか?」

負傷した白夜兵「……っ、なんでだよ……。なんで……なんで俺たちがこんな目にあってるのに、こいつは生きて戻ってくるんだよ……」ポタタッ

カムイ「……」

負傷した白夜兵「くそ、くそおおおおっ!!!」タタタタタッ

カムイ「……」

サクラ「カムイ姉様……」

カムイ「……」

白夜兵「……」スッ

サクラ「……あ」

白夜兵「サクラ様、カムイ王女、部下が失礼した。此度の戦いで多くの戦友とリョウマ様を失ったばかりで、まだ気持ちの整理が付いていなかったのだ。すまないが、許してやってくれないか」

カムイ「いいえ、あの人の言っている事は間違っていません。私が裏切り者であることは事実なのですから……」

白夜兵「そうか……」

カムイ「私の方こそ、邪魔をしてすみません。サクラさん、行きましょう」

サクラ「は、はい……」

白夜兵「カムイ王女」

カムイ「はい?」

白夜兵「そなたに聞きたいことがあるのだが、少し付き合ってくれるか?」

カムイ「構いませんよ。サクラさんは先に戻られますか?」

サクラ「いいえ、カムイ姉様と一緒にいます、その私もご一緒してよろしいでしょうか?」

白夜兵「ふっ、思ったよりも強気な申し出だな。別にかまわない。構わないが、ここで話すのは負傷者の迷惑になる。外で話そう」

カムイ「はい……」
680 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:38:43.99 ID:UUdKgmS+0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

白夜兵「すまないな、結構歩かせてしまった。だがここなら、誰も寄りはしないだろう」

カムイ「私に聞きたいのは、そういう話と言う事ですよね?」

白夜兵「……ああ、サクラ様がいる前で聞くべきかどうかはわからないが、今はどんなことがあってもカムイ王女から離れてくれそうにない。ならば単刀直入に聞く以外に術はない。大丈夫だ、罵倒しようってわけではない」

サクラ「……ほ、本当ですか?」ギュッ

白夜兵「ああ、罵倒するのなら奴と一緒に私も罵倒を始めていたさ」

カムイ「そうですか、それで私に聞きたいことというのは……」

白夜兵「ああ……。そなたがリョウマ様を討ったのか?」

カムイ「!」

サクラ「!」

白夜兵「……どうなのだ? そなたが我々の主であるリョウマ様を討ったのか?」

カムイ「……」

白夜兵「……」

カムイ「……」

カムイ「はい、私が討ちました」

サクラ「カムイ姉様……」
681 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:44:49.84 ID:UUdKgmS+0
白夜兵「誤魔化さないのだな?」

カムイ「はい、私がリョウマさんを殺してしまったんです」

白夜兵「そうか、亡骸が出ないことに関しては城下町の犠牲者と同じで攫われてしまったからなのだろう。一部の者はその事実に希望を抱いているようだが、それはあるまい。そうか、やはりそなたが殺したのか……」

サクラ「カムイ姉様はリョウマ兄様を助けようとしたんです。でも、でも……」

カムイ「サクラさん……」

サクラ「だから、だから……」

白夜兵「ふむ、サクラ様が何を弁解しているのかはわからないが、リョウマ様はカムイ王女と決着をつけることを望まれていた。万が一、ユキムラに命を奪われていたとなれば、正直どうしたものかと思っていたところで、ある意味安心したのだよ」

サクラ「え、安心したって……」

カムイ「あなたは私が憎くないのですか?」

白夜兵「おかしなことを聞く、憎いに決まっているだろう? そなたが暗夜へと寝返ったことは周知の事実、それは今後覆ることはない。しかし、この一件についてそなたを憎く思う理由は無い」

カムイ「なぜですか、私はリョウマさんの命を奪ったのですよ……。本当なら生きているかもしれなかったのですよ?」

白夜兵「カムイ王女、それはリョウマ様が生きているならば、そなたは死んでいたという意味であることも分かって言っているのか?」

カムイ「それは……」
682 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:48:52.68 ID:UUdKgmS+0
白夜兵「カムイ王女、これは戦いだ。命を奪い合うという単純な殺し合いに過ぎない。政治的要因は先や後に付くものだが、戦いはその場にいる者たちにとって命を賭した場であるに過ぎない。そして、そこで命を落す可能性は誰もが持っている。武器を持たない民、暗夜兵、我々白夜兵、そなたもそうであり、そしてリョウマ様とて例外ではない。そなたにリョウマ様が敗れたことは、そのうちの一つに過ぎない」

カムイ「ですが……」

白夜兵「ふむ、どうやらそなたは誰かに恨まれたいという気質があるようだ。いや、違うか恨まれることで安心したいのかもしれないな」

カムイ「!」

サクラ「恨まれることで安心する人なんて……」

白夜兵「これでもそれなりに長く生きている。そして、そういう者たちを見たことがある。規模は違え、カムイ王女も同じように恨まれることで安心する性質なのだろう。先ほど、部下がそなたに向けて罵声を浴びせた時に比べ、今の方がよほどうろたえているように見える」

カムイ「わ、私は……」

白夜兵「カムイ王女、先に断っておくが、今後どのようなことがあろうともそなたを同胞として見ることは私もないだろう。このすべての原因がそなたの離反によるものとまとめ上げることは可能だ。しかし、そなたにすべての責任を押し付けることに意味などありはしない」

カムイ「どうしてですか?」
683 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:50:25.46 ID:UUdKgmS+0
白夜兵「ユキムラのような強硬派の台頭を許したのも、そしてリョウマ様が幽閉されてしまったことも、これらは白夜を離れたそなたに止められることではなかったからだ。我々は強硬派に圧され、多くの罪なき民を死地へと追いやった。そして侵攻作戦が悉く失敗し続ける中で民の混乱や不安は増えているの手を差し伸べることは無かった。その結果、強硬派が牛耳る事態に至った。だが、暗夜に属するそなたがそれを防げるわけはないだろう?」

カムイ「それは……そうかもしれませんが」

白夜兵「しれないではない、そなたに出来るわけはないのだ。そなたの離反によって秩序が崩れたとしても、それを修復するのはその場にいる者たち、我々が成すべきことであった。確かにこれも暗夜にいたそなたの計略故に起きた事態ならば驚きに値するが、そなたがそのような悪逆に走れるとは思えない」

カムイ「どうして、そう言えるのですか? 私は裏切り者です、そんな人間を評価する理由なんて……」

白夜兵「あるさ、そなたはヒノカ様を助け出してくれただろう」
684 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:56:38.91 ID:UUdKgmS+0
白夜兵「もしも、そなたに助けるという気持ちが無ければ、ヒノカ様は助かっていなかったと思っている。あの戦場の中で助ける事は殺すよりも難しいことだ。それをそなたはやってのけた。その場にいなかった我々では救えなかったものを、そなたは救ってくれたのだ」

カムイ「でも、まだヒノカさんは目覚めていないんです……。ずっと眠り続けたままで……」

白夜兵「だとしても、目覚める可能性は十分にあると聞いている。それにミタマ様からそなたがヒノカ様にここ数日は付きりであったことも聞いた」

サクラ「はい、カムイ姉様はずっとヒノカ姉様のそばにいてくれたんです。私もその姿を見ていましたから」

白夜兵「そなたの行いすべてが正しいとは言わない。だが、ヒノカ様への献身に嘘偽りはないはずだ。先に重傷者へ水を与えてくれたのも打算あっての事ではあるまい。ただ、そこで苦しんでいる者がいるからそなたは水を与えに行った、ただそれだけの事であろう? だからこそだ、そなたに聞いたのだ、リョウマ様を討ったのかどうか……。そなたならば嘘偽りなく答えてくれるだろうと思って聞いたのだ」

白夜兵「ありがとう、答えてくれて」

カムイ「……」
685 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 10:59:09.67 ID:UUdKgmS+0
白夜兵「さて、長い話に付き合わせてしまってすまなかった」

カムイ「そんなことはありません。何か手伝えることがあったら言ってください。私もできうる限り協力していきますから」

白夜兵「ああ、何かあったら手伝いを頼むことにするさ。今は猫の手も借りたいくらいではあるからな」

カムイ「はい」

白夜兵「それではな」

 タッタッタッ

カムイ「……恨まれることで安心している、ですか」

カムイ(私はそうあることで安心しているのかもしれません。誰かに恨まれることで、私は心の中にある何かを和らげているのかもしれない。もし、こうであったならと望む本当の理由に、何か違う物があるのだとすれば…)

カムイ「……」

686 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 11:04:07.59 ID:UUdKgmS+0
サクラ「行ってしまいましたね」

カムイ「ええ……」

サクラ「でも、よかったです。カムイ様の事をわかってくれる人がいるって、もしかしたら、また何かを言われてしまうんじゃないかって思っていたから……」

カムイ「ですが、そんなことになってたとしても大丈夫だったと思います」

サクラ「どうしてですか?」

カムイ「それは、サクラさんが一緒にいてくれたからですよ。話している間、ずっと私の手を握ってくれましたからね。いえ、今も握ってくれてます」

サクラ「あ、……そ、そうですね」

カムイ「サクラさん?」

サクラ「あ、あの嫌でなければ、お城まで手を握っていてもらってもいいでしょうか」

カムイ「別にかまいませんよ。離れない様にギュッと握ってあげますね」

サクラ「ありがとうございます」

カムイ「ん、サクラさんの手はとても暖かいですね」

サクラ「カムイ姉様の手も暖かいです」

カムイ「ふふっ」

サクラ「えへへ」
687 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 11:14:29.83 ID:UUdKgmS+0
サクラ「日が暮れそうです。そろそろ応援が到着する頃でしょうか?」

カムイ「予定ではそうでしたね、到着すれば色々と忙しくなるのは間違いありません。皆さんの作業がスムーズに行えるように、今日の夜のうちに色々と決めないといけませんね」

サクラ「はい。……えいっ」ギュウッ

カムイ「わっ、どうしたんですかサクラさん、いきなり抱き着いたりして」

サクラ「……なんだか夢を見ているような気持ちになるんです。こんなに大変な事ばっかり起きたけど、今だけはずっと夢見た日がここにあるから……」

カムイ「……それはどんな夢なんですか、サクラさん」

サクラ「こうやってカムイ姉様とシラサギ城に戻る、ただそれだけの事です。ずっと、ずっと会ったことのない姉様と一緒にお家に帰れる日が来たらいいなって、そう思っていたんです」

カムイ「サクラさん……」

サクラ「わかってます、カムイ姉様は、ここに帰って来たって思う事が出来ないって。だけど、今だけは一緒にお家に帰ってくれませんか?」

カムイ「……ええ、いいですよ、サクラさん」

サクラ「ありがとうございます、カムイ姉様。それと今だけは甘えさせてください」

カムイ「はい。シラサギ城に着くまでいっぱい甘えてくださいね。サクラさん」
688 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 11:21:32.12 ID:UUdKgmS+0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜王都『正面正門』―

 ザッザッザッザッ

カムイ軍兵士「すまないが道を開けてくれ、物資を乗せた荷車が通る。ああ、そこの車輪に巻き込まれると危険だ、あまり近寄らないでくれ」

 ゴトンゴトンッ ゴトンゴトンッ

レオン「出来る限りの支援物資とは伝えていたけど、これほどの量が来るなんて思ってもいなかったよ」

カムイ軍兵士「はい、これだけあれば色々なことに着手できるでしょう」

レオン「ああ、明日から忙しくなりそうだ。中央広場を基軸として物資の保管用の天幕を作り上げてほしい。今日は物資の仕分けを終えて、明日からの作業を手早く始められるようにしておくんだ」

カムイ軍兵士「はい、わかりました。よし、お前たちさっさと仕分けに向かうぞ」

カムイ軍兵士たち『おーーっ!』タタタタタタッ

レオン「……ふふっ」

???「何やらうれしそうな顔をされていますね、レオン殿」

レオン「いや、白夜の支援活動をすることに消極的な者たちも少なからずいた。でも、今はこの活動を真摯に行ってくれている。それに安心しただけだよ。それより、到着を早めてくれて助かったよ、クーリア」

クーリア「いいえ、出来ることに全力で取り組んだだけの事です。思ったよりも、白夜での戦いは熾烈を極めたようですね」

レオン「ああ、だからこそこんなに早く駆けつけてくれて助かった。それにしてもこれだけの物資、本国からの輸送だけで良く集められたね」

クーリア「いいえ、この中で本国から手に入れられたものは三割ほどです。流石に行路を持ってしても、これほどの量は準備できませんでした」

レオン「じゃあ、これは一体?」

クーリア「そのお話は後で、まずは会合の場に向かうとしましょう」

レオン「ああ、わかったよ……。で、そっちの姿を隠している布の塊は何だい?」

布の塊「……」
689 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 11:26:19.69 ID:UUdKgmS+0
クーリア「その……今日の会合に参加する者の一人です」

レオン「そう……。出来れば素性を明かしてもらいたいんだけど」

布の塊「……」

レオン「クーリア……」

クーリア「すみません、何度も言っているのですが、素性を明かすのは会合の場だけにしたいと聞かないもので、それにその約束あってのこの状況でもありますので……」

レオン「この状況……ね」

レオン(多分、この大量の物資と関係があることだろう。これほどの物資を提供できるということは、それなりの見返りを求めていると考えて間違いない。新生暗夜と白夜の復興に関して、有利な立場を築こうとしているのか? だとしたら牽制したいところだけど、癇癪を起して物資を引き上げられたりすれば混乱は避けられない。一応、クーリアが大丈夫だと踏んだ人間だから、そこを信頼するしかないか……)

レオン「わかった、君を信じるよ。君が大丈夫と思った相手なんだからね」

クーリア「ありがとうございます、レオン殿」

布の塊「……」ペコリッ

レオン「素直に礼をしてくれるなら、その格好を改めてもらいたいんだけどさ。それじゃ、シラサギ城に向かう、付いてきて」

 タッタッタッ

クーリア「……レオン殿、さすがに警戒していましたよ」

布の塊「逆に警戒されなかったらどうしようかと思ったよ〜。うん、これはこれで安心できる対応だね〜」

クーリア「はぁ」

布の塊「それじゃ、レオン王子の後を追うよ〜」

「カムイ王女も待ってるみたいだからね〜」

休息時間1 終わり
690 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 11:28:29.97 ID:UUdKgmS+0
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
・カミラ×ジョーカー
 C[6スレ目・671]←NEW
691 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 11:29:16.74 ID:UUdKgmS+0
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
692 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 11:33:12.50 ID:UUdKgmS+0
今日はここまで

 どんなことがあっても、サクラはカムイの事を姉様と慕ってくれる気がするのです。

 今後の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>694>>695

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
693 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/03/30(土) 11:34:15.58 ID:UUdKgmS+0
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
・アシュラ×サクラ
・ブノワ×エルフィ
・レオン×ピエリ
・ツバキ×モズメ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ラズワルド×シャーロッテ
・マークス×エリーゼ
・ジョーカー×カミラ

 この中から一つ>>696

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その次の安価になります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ
・カミラ×アクア
・シャーロッテ×カザハナ
・エリーゼ×カミラ
・レオン×ハロルド
・スズカゼ×ブノワ

 この中から一つ>>697

 このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/30(土) 17:29:06.73 ID:TcUDtVvDO
エルフィ
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/30(土) 18:17:04.15 ID:nbLBNhOkO
スズカゼ
696 :sage :2019/03/31(日) 22:48:54.99 ID:N+vwl+EJ0
エリーゼ×ハロルドでお願いします

ところで同性支援のマークスとギュンターは支援CじゃなくてBでは?
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/02(火) 13:32:55.24 ID:vOEEkhE+O
ピエリ×フェリシア
698 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/06(土) 10:50:50.69 ID:dP9L4SA70
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『兵舎』―

エルフィ「スズカゼ、少しいいかしら?」

スズカゼ「エルフィさん、どうかされましたか?」

エルフィ「この後の訓練の相手をお願いしたいのだけど」

スズカゼ「この後ですか? 確か実戦を想定した模擬戦闘ですね」

エルフィ「ええ、どうかしら?」

スズカゼ「構いませんよ。しかし、どうして私を指名されたのですか?」

エルフィ「あなた、この前の模擬訓練でわたしの攻撃を全部避けたでしょう」

スズカゼ「前の訓練ですか……。たしかに私はエルフィさんの攻撃を全て避けました。正直、真っ向から当たれるほど私は力強いというわけではありませんので」

エルフィ「そう、それが今わたしに足りないことだと思うの」

スズカゼ「足りないこと、ですか?」

エルフィ「ええ、あなたのように素早く動く相手にも対処できるようになれればもっと強くなれる。だからあなたに相手をお願いしているの」

スズカゼ「なるほど、自身のさらなる成長のためということですね。わかりました、このスズカゼ微力ながらエルフィさんの力になりましょう」

エルフィ「ありがとう、それじゃよろしくおねがいね」

スズカゼ「はい」

【スズカゼとエルフィの支援がCになりました】
699 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/06(土) 10:53:08.84 ID:dP9L4SA70
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『エリーゼ邸』―

エリーゼ「えっと、こ、これでいいよね。額が曲がってるとか、そんなことになってないよね……」

 コンコンコン

ハロルド「エリーゼ様、ハロルドです」

エリーゼ「ハロルド? もう来ちゃったの!?」

ハロルド「はい、エリーゼ様がお呼びになられたのです。すぐに駆けつけるのが臣下である私の務めですから。エルフィくんももうじき来るはずですよ」

エリーゼ「そ、そうなんだ……。えっとね、その今はまだ扉を開けちゃだめだからね。絶対だめだからね!」

ハロルド「ご安心ください、そんなずるい真似はいたしません。正義の味方である前に、私はエリーゼ様の臣下なのですから」

エリーゼ「ハロルド……。ごめんね、ほんとはここまで何も知らないままでいてほしかったのに、その色々と手伝わせちゃって……」

ハロルド「いいえ、そんなことはありません。むしろ、知らなかった以上に今私はドキドキしています」

エリーゼ「え、どうして? だって、あたしが買ったのが絵画だってわかっちゃったんだよ?」

ハロルド「確かにエリーゼ様が絵画を購入されたことはわかりましたが、それ何の絵であるのかはまだわかりません。そして今、私はその絵が一体なんの絵なのかを考えてワクワクとドキドキに包まれているのです」

エリーゼ「ワクワクもドキドキもしてくれるの?」

ハロルド「ええ、もちろんです。なにより、エリーゼ様が私とエルフィくんのために準備してくれたもの、期待しないというのは無理な話というものです」

エリーゼ「ハロルド……」

ハロルド「それに、こうして私が探し出したこの場所に絵画を飾っていただけたのはとてもうれしいことです。私の不運をあなたは幸運に変えてくれたのですから」

エリーゼ「……そうかな?」

ハロルド「そうですよ、自身を持ってください、エリーゼ様」

エリーゼ「うん、ありがと。よーし、それじゃエルフィが来たら、扉を開けるからね! 絶対に二人が気に入ってくれるとびっきりの絵を準備したんだから、もしかしたら心臓が止まっちゃうかもしれないよ」

ハロルド「むむ、それは覚悟しないといけません」

エリーゼ「えへへ」

ハロルド「はっはっは」

【エリーゼとハロルドの支援がAになりました】
700 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/06(土) 10:57:17.28 ID:dP9L4SA70
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞『食堂・キッチン』―

フェリシア「……おかしいです。どうしてこうなっちゃうんでしょうか?」

ピエリ「なんだか焦げ臭いの。あれ、フェリシアなの。もしかして火事なの?」

フェリシア「あ、ピエリさん……」

ピエリ「ん、このフライパン真っ黒になってるの。ここが火元なの?」

フェリシア「ち、ちがいます。これは目玉焼きとベーコンの炒め物をですね……」

ピエリ「どこに目玉焼きとベーコンがあるの? 真っ黒になったフライパンしか見えないの」

フェリシア「はうう……」

ピエリ「もしかしてフェリシア、お料理も苦手なの?」

フェリシア「は、はい……。その何度もやってるんですけどうまくいかなくて……何がいけないんでしょうか?」

ピエリ「ならピエリがお手本見せてあげるの。よく見てるのよ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ピエリ「完成なの!」

フェリシア「わ、とってもおいしそうです」

ピエリ「ピエリ、お料理は得意なの」

フェリシア「そうなんですね。はぁ、私もこんな料理が作れたらいいんですけど」

ピエリ「お掃除も駄目でお料理も駄目……。フェリシア、使用人に向いてない気がするの」

フェリシア「そんなこと言わないでくださいよ」

ピエリ「ピエリにはそうとしか思えないの。フェリシアがピエリの家でお仕事してたら、何回えいってするのかわからないの」

フェリシア「うう……」

ピエリ「うーん、こんなにおっちょこちょいだと戦いでも心配なの。そうなの、今度の出撃はピエリが一緒にいてあげるの!」

フェリシア「そ、それは悪いですよ」

ピエリ「大丈夫なの。ピエリ、戦うの上手なの。もしも断ったらえいってするのよ?」

フェリシア「わ、わかりました、今度の出撃はご一緒しますね」

ピエリ「わーい。ピエリのお手本、ちゃんと見てるのよ」

フェリシア「は、はい……」

【ピエリとフェリシアの支援がBになりました】
701 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/06(土) 10:58:10.16 ID:dP9L4SA70
今日は支援だけで

 マークス×ギュンターはCではなくBでした。表記ミスもうしわけありませんでした。
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/09(火) 18:55:34.76 ID:GvEuqgpDO

スズカゼの守備ではエルフィの攻撃を受け止めきれなーい!
703 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 21:43:47.08 ID:Q8iwt46F0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『大広間に至る廊下』―

マークス「到着早々にすまないな、クーリア」

クーリア「いいえ、構いませんよマークス殿。事前に都の状況は聞かされていましたので、到着後にするべきことはわかっています。今重要なのは、今後どう動くべきかでしょう」

マークス「そう言ってもらえると助かる。……しかし、後ろにいる……それは何だ?」

布の塊「……」

レオン「今回の物資の量に関係のある客人らしい」

マークス「顔を出せない理由があると言う事か……」

クーリア「ええ、説得はしたのですが。あまり聞かない方でしたので」

マークス「まあ、いいだろう。レオンがここまで連れてきたと言う事は、少なくとも信用するに値する根拠があっての事だ。会合の席に入ることを許可しよう」

布の塊「……」ペコリッ

マークス「礼義はいいのだな。行こう、すでにこちらの出席者は待っている」タッタッタッ
704 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 21:52:12.39 ID:Q8iwt46F0
カムイ「到着した応援部隊、クーリアさん達が指揮をされているんですか」

カミラ「ええ。それにしても最初は反乱の鎮圧なんていう形での出会いだったのに、こうなるなんて予想できないものね。これもカムイが結んだ絆なのかもしれないわ」

カムイ「いいえ、私だけの力ではこうはなりませんでした。きっと、みんなのおかげでもあるはずです」

カミラ「ふふっ、謙遜しちゃって可愛いわね。これで白夜の事はどうにかなるかもしれないわ」

カムイ「はい、クーリアさん達になら白夜の王都への支援を任せても大丈夫でしょう」

アクア「ええ。それに予想以上に物資が多く到着したらしいから、都の人たちも安心できるはずよ」

サクラ「はい、これで多くの方々が辛い思いをしないで済みます」

カムイ「ええ、お会いしたら、まずお礼を言わないといけませんね」

 コンコンッ

マークス「よし、みんな揃っているな」

カミラ「マークスお兄様、ええもう準備は整っているわよ。そっちはどうかしら?」

レオン「ああ、クーリア達を連れてきたよ」

クーリア「お久しぶりです、カムイ殿。それに皆さん」

カムイ「クーリアさん、お久しぶりです。大量の物資、ありがとうございます、何とお礼を言えばいいのか、ありがとうございます」ペコリッ

サクラ「はい、本当にありがとうございます」ペコリッ
705 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:03:46.14 ID:Q8iwt46F0
クーリア「ああ、物資の件ですか。それは私ではなくこちらの方に礼をお願いいたします」

サクラ「こちらの方?」チラッ

布の塊「……」

サクラ「え?」

エリーゼ「えっと、どちら様?」

カミラ「真面目な話をする場でするにしては、中々斬新な格好ね」

アクア「怪しいというのを目に見える形にしたらこうなるのかしら? こんなのを参加させて大丈夫なの?」

マークス「……うむ、私も考えたが物資を援助してくれた人物でもある」

レオン「そういうことだから……」

アクア(無償で物資を援助するとは思えない。暗夜と白夜の間に入り込んで何かをしようと企んでいるのかもしれないわ)

アクア「カムイ、あいつの言動には気を配った方がいいかもしれない。マークスもレオンも注意はするだろうけど……」

カムイ「……いえ、その必要は無いと思いますよ」

アクア「カムイ?」
706 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:10:11.79 ID:Q8iwt46F0
カムイ「大丈夫です、クーリアさんがその人を信頼したのかわかりました。その場に私がいても同じように信頼したと思います。だって信頼できる人であるのは間違いありませんから」

エリーゼ「え、カムイおねえちゃん、この人が誰だかわかるの?」

カムイ「ええ、気配を読むのはそれなりに心得ていますからね。私たちは一度お会いしたことのある方ですよ」

アクア「私たちが会ったことのある人?」

布の塊「……」

カムイ「ずっと被っていてもいいですが、いつまでもその格好では熱くてたまらないと思いますよ?」

布の塊「そうだね……。白夜王都に入る前からこれだったから、正直熱くてたまらなかったんだよ。よっと!」

 バサッ!

マークス「なっ!?」

レオン「君は……」

カムイ「やっぱり、あなただったんですね。イザナさん」

イザナ「うん! 久しぶりだね、カムイ王女!」
707 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:14:45.64 ID:Q8iwt46F0
クーリア「テンジン砦で暗夜本国からの補給物資を待っていたところ、イザナ殿が大量の物資を持って現れまして、それで白夜王都にこれと自分自身を連れて行ってほしいと」

イザナ「さすがに手ぶらで行ける場所じゃないからね。冷やかしはお断りっていうのはどこでも変わらないことだよ〜」

レオン「だったらさっきまでの布を体に巻き付けた格好もやめてほしかったんだけど。少しましな格好をしてくれないかな?」

イザナ「みんなを驚かしてあげたかったんだよ〜。でも、カムイ王女にはすぐ見破られちゃったからちょっと残念だったかな」

カムイ「ふふっ、イザナさんらしいですね」

レオン「それで僕たちに何か願いがあって物資を持ってきたんだよね?」

イザナ「そうだね。ボクからのお願いはこの持ってきた物資を使ってもらう事だけかな?」

レオン「本当にそれだけかい? なにか他に交渉することがあったりはしないのかい?」

イザナ「うん、ないよ。いずれイズモ公国は元の中立国家としての立ち振る舞いに戻るだけだからね。暗夜と白夜、どちらかに強い繋がりを求めているわけじゃない。イズモは戦争が終わったら元に戻ることを望んでいる、だからボクらイズモが準備をした物資については君たちが準備したものとして処理をしてもらいたいんだ」

レオン「……それでいいのかい?」

イザナ「ああ、人を助けることに損得はいらない、そう信じて戦っている人をボクは信じているからね〜。だから、この物資を受け取ってほしいんだ、戦争が終わろうとしている今、必要なのは今を生きる人たちを助けることだけだからね」

レオン「マークス兄さん……」

マークス「わかった、イザナ公王。そちらの物資、ありがたく使わせてもらうとする」

イザナ「ありがとうマークス王子、断られたらどうしようかと思ってたから、これで安心だよ」
708 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:20:21.89 ID:Q8iwt46F0
イザナ「それじゃ、ボクの話はこれで終わりだから、早く次に行こっか。時間は有効に使っていかないとね〜。そうでしょ、レオン王子?」

レオン「はぁ、癪だけどその通りだよ。まだ父上が率いる旧暗夜の軍勢は残っている以上、気は抜けないからね」

マークス「うむ、報告では大きな動きは見られないとある。実際のところはどうだ、クーリア」

クーリア「はい、時々偵察だと思われる少人数の部隊を見ることはあります。ですが、こちらに攻撃を仕掛けてくる気配はありません。それに旧暗夜の物資は底を尽きかけているでしょうから、こちらの準備が整えば一網打尽にすることも可能と思っています」

カミラ「普通ならそうね。でも、今は普通じゃないことも起きているわ」

クーリア「ああ、例の見えない兵のことですね」

レオン「ああ、すでに警戒するように指示は出していると思うけど」

クーリア「はい、報告は受けています、ですが実際は半信半疑です。なにせ、私たちはその集団と接触したことがありません。ただ白夜とカムイ殿の軍勢に攻撃を仕掛けてきた以上、おそらくガロン王が使役する何かなのだとは予想できます。今回の白夜王都の惨状の殆どもそれらの襲撃があったからだと聞いていましたので」

レオン「ああ、奴らの襲撃があった。今回は状況が違ってはいたけど……」

クーリア「白夜兵、暗夜兵の姿で現れた。これでは誰が敵で味方なのか区別もつきません。その使役している謎の兵が何であるのかはわかりませんが、各所に警戒するように通達は出してあります」

マークス「ああ、最悪の可能性を考えるならば暗夜王都でも同様の出来事が起きる可能性もある。早くにも動かなくてはいけないだろう」

レオン「そうだ、暗夜王国の現状はどうなっているんだい?」
709 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:24:49.02 ID:Q8iwt46F0
クーリア「はい。国民の総意は旧暗夜、ガロン王の軍勢を倒すことに向けられています。それもあってか現状は落ち着いていると言ったところでしょう。ウィンダムの復興も着々と進んでいます。ノートルディア公国を補給の中継地点として運用出来ているおかげで、物資と兵員は充実しています。現在、テンジン砦、風の部族村、イズモ公国を中心に離散している白夜の民の捜索と保護を行っています」

マークス「白夜の民は保護できているのか?」

クーリア「それなりにはというところです。村の焼き討ちなどの影響で白夜に恨みを持ってしまった者たちや、山賊などの共同体を組んでどうにか暮らしていた者たちも多いようです。衝突し、鎮圧せざるを得ない事態も度々起きています」

エリーゼ「そんな……。やっと白夜と暗夜の戦いは終わったのに」

クーリア「そう簡単に納得できない方々も多いと言う事でしょう。私も、未だにスズメたちを奪った強硬派に対してすべてに整理が付けられているわけではありません」

サクラ「クーリアさん……」

クーリア「スズメたちがそのようなことを望んでいるとは思ってはいません。ですが、これはずっと胸の中に残り続けるものです。テンジン砦で彼女らが命を奪われたという事実は消えないものなのですから」

レオン「……」

クーリア「話を戻しましょう。次に無限渓谷の事です」

マークス「む、何かあったのか?」

クーリア「はい、無限渓谷に架かっている全ての橋が落とされていたという報告が上がっています」
710 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:28:00.09 ID:Q8iwt46F0
レオン「橋が全て落とされていたのかい?」

クーリア「はい。おそらく旧暗夜の仕業でしょう。物資の補給も出来ず、退路としても使えないのであれば必要ないということなのかもしれません。ですが、一番の理由は離反者への措置とみるべきでしょう」

マークス「やはり、旧暗夜からの離反者がいるのか?」

クーリア「ええ、もっとも戦いが終わるまで離反者を受け入れることはありません。それが本当に離反者なのかを見極める術はありませんので。旧暗夜としてもそうした動きをされるのは溜まった物では無いでしょう、ですから先手を打って離反者が暗夜王国に逃れないように橋を落としたのではないかと」

レオン「無限渓谷を通らずに迂回していくこともできるけど、かなり過酷な道のりだ。離反の意思を削ぐには有効かもしれない」

カミラ「あとは暗夜王国側から白夜平原へ攻勢を掛けることが出来なくなったのも大きいわね」

マークス「ああ、それも橋を落とした理由の一つだろう。おそらく、最後の攻勢に向けての準備をしているのかもしれん」

カムイ「相手が例の見えない兵という武器を持っている以上、まだ勝負は決したというわけにはいかないようですね」

アクア「ええ……。まだ、戦いが終わったと思う事は出来ないみたい……」

カムイ「はい」
711 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:29:56.16 ID:Q8iwt46F0
クーリア「以上が私からの報告になります」

マークス「ありがとう、クーリア。それで今後についての話なのだが――」

イザナ「あー、その前にちょっとだけいいかな?」

マークス「イザナ公王、まだ何かあるのか?」

イザナ「うんうん、もう一つだけ話があってね」

レオン「なんだい? まだ何か要望があるってことかな?」

イザナ「うん、そうなるね。だけど、その要望に応えるかどうかはキミたちに任せるよ」

マークス「確約してほしい約束事ではないと言う事か?」

イザナ「それが先方のお願いだからね」

サクラ「先方ということは、イザナさん自身のお願いではないと言う事ですか?」

イザナ「そうそう、実は風の部族村で一日滞在した時にお願いされてね〜」

レオン「風の部族村で?」

カムイ「もしかして、フウガさんからですか?」

イザナ「いいや、違うよ〜」

アクア「フウガじゃないとなると一体誰?」

イザナ「こればっかりは隠していても仕方ないから言うけど、タクミ王子からのお願いだ」

一同『!!!』

イナザ「タクミ王子からの伝言を伝えるよ。『まだ時間があるのなら、白夜王都に行くまで留まっていてほしい。時間が無いのなら出発してもらって構わない』……以上だね」
712 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:33:40.73 ID:Q8iwt46F0
サクラ「……あの、タクミ兄様は白夜の現状を知っているんですよね?」

イザナ「ああ、知っているよ。白夜王都の陥落にリョウマ王子の死、ヒノカ王女が眠ったままのこと、そして多大な犠牲が出たこともね。だけど、そう言った白夜の現状についてじゃなくて、実際はカムイ王女と話がしたいというのが本当のところだろうね」

カムイ「……」

カムイ(私はタクミさんとの約束を果たすことが出来ませんでした。リョウマさんを助けることは叶わず、今もヒノカさんは眠ったままなのですから)

マークス「カムイ、私はお前の判断に委ねることにする」

カムイ「マークス兄さん……。ですが、旧暗夜のことは……」

マークス「旧暗夜の動向は気になるところではある。だが、今はお前にとって成したいことを選んでもらいたい。こうして白夜との戦いを終えることが出来たのはお前のおかげだ」

カムイ「そんな……、この戦いは私が始めたものです。最初から私が成したかったことを皆さんに手伝ってもらっただけです」

マークス「ああ、そうだ。だからこそ、今おまえが望むことに従うと言っているのだ」

レオン「僕も兄さんの意見に賛成だよ。姉さんがいなかったらもっと悪い形で戦争が続いていたかもしれない。そうならなかったのは、姉さんが僕たちを導いてくれたからだ。だから、僕は姉さんの意見に従うよ」

カムイ「……」

カムイ(私が成したいこと……。その終わりは戦いを終わらせることです。白夜王都はクーリアさん達に任せて、奴を倒すために白夜平原へと進むことがその終わりに近づける手だとは思います。奴がいなくなれば、この戦いに終止符を打つことができるはずですから……)

カムイ(そう、戦いの終わりを求めるのなら白夜平原へと急いだ方がいい。それが多分、正しい道だとは思います)
713 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:39:08.04 ID:Q8iwt46F0
カムイ(だけど、それが出来ないから、私はヒノカさんを助けることが出来たんです。戦いを終わらせるためだけに駆け抜けたくなかった、大切な人を救うために私は戦いたかった。そして、そんな私を信じてくれた人がいる。なら私が成したいことは、一つしかありません)

カムイ「タクミさんの到着は何時頃になりますか?」

イザナ「ボクが村を出る辺りでその話が上がったからね。少なくとももう出発はしているはずだから、明後日くらいには到着するかもしれない。大雑把な予想だけどね?」

カムイ「そうですか。ありがとうございます」

カムイ(私は信じてくれた人にきちんと向かい合わなければいけません。それが、どんなに辛いことであったとしても……)

カムイ「マークス兄さん、タクミさんの到着まで出発を待つことはできますか?」

マークス「ああ、問題は無い。レオン、対応できるか?」

レオン「元々それも想定して予定を二つ組みあげておいたから問題は無いよ」

カムイ「レオンさん、ありがとうございます」

レオン「別に気にしないでいいよ。だけど、あくまでも待てるのはタクミ王子がここに来るまでだ。さすがにヒノカ王女が目覚めるまで待つことはできないよ」

カムイ「はい、大丈夫です」

イザナ「いいのかい? タクミ王子が何を話しに来るのかはわかっていないよ?」

カムイ「どんなことであっても、私は逃げるわけにはいきません。それが約束を引き受けた私のけじめなんです」

イザナ「そうか……。やっぱりキミは強くて優しいね」

カムイ「いいえ、強くも優しくもありませんよ。ただ、それ以外に出来ることが無いだけです」

イザナ「そんなことないさ。それが出来ずに逃げ出す人もいる。それを選ばないからこそ、ボクはキミを強い人だって思うんだ。だから謙遜しないでいいんだよ」

カムイ「イザナさん……。ありがとうございます」
714 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:43:33.14 ID:Q8iwt46F0
イザナ「それじゃ、ボクからの要望はこれで本当に終わりだよ。さぁ、今後について話し合わないとね!」

マークス「そうだな。明日から行われる救援活動の項目は概ね決まっている。本来ならば明日から出立の下準備を始める予定ではあったが、それはタクミ王子が到着してからになるだろう。それまでは各員白夜のために出来ることをしてほしい」

クーリア「わかりました。明日から本格的に復興のために活動させていただきます」

カミラ「クーリア、何か大きなものを運ぶ必要があるなら私に言って、飛竜部隊で運んであげるわ」

クーリア「ありがとうございます、カミラ殿」

エリーゼ「それじゃ、あたしとサクラは怪我をした人たちの看病とかを頑張るよ」

サクラ「は、はい、頑張ります!」

アクア「サクラ、エリーゼ、やる気があるのはいいけれど、まずは今何が必要とされているのかを理解してからにしたほうがいいわ」

レオン「それじゃ具体的な復興支援の案だけど、初めに手を付けないといけないのは――」

 ガヤガヤ
  ガヤガヤ

カムイ「ふふっ……」

アクア「カムイ?」

カムイ「すみません、こうやってみんなと誰かのために協力し合えることが嬉しくて……。もしも間違ってしまったらと考えてしまいますが、今この瞬間だけは、うれしく思えてしまうんです」

アクア「カムイ」

 スッ ギュッ

カムイ「アクアさん?」

アクア「大丈夫、あなたの選択は間違ってなんていないわ。だって、あなたがそうやって笑顔を見せているんだもの。それがあるから、みんな迷うことなくあなたを信じていられるのよ」

カムイ「私の笑顔ですか。うーん、それを基準で物事を考えるのはどうなのでしょうか?」

アクア「そうね、少し不安な部分もあるのは確かね?」

カムイ「むっ、アクアさん」

アクア「ふふっ、冗談よ。タクミが到着するまでの間、一緒に頑張りましょう、カムイ」

カムイ「はい、アクアさん」

カムイ(ヒノカさんの回復を待つだけで、何もせずに待っているわけにはいきません。誰かに罵声や敵意の目を向けられても、それは受け入れるしかありません。だって――)

(そうであったとしても、私は誰かを助けたい、そう思い続けているのですから……)

 休息時間2 終わり
715 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:45:12.17 ID:Q8iwt46F0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB++
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワB
(動物の餌やりを一緒にやることになっています)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
716 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:45:57.45 ID:Q8iwt46F0
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540] A[6スレ目・699]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
・カミラ×ジョーカー
 C[6スレ目・671]
・エルフィ×スズカゼ
 C[6スレ目・698]←NEW
717 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:46:30.48 ID:Q8iwt46F0
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250] B[6スレ目・700]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
718 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/11(木) 22:53:46.70 ID:Q8iwt46F0
今日はここまで

 イズモ公国は戦争後にまた中立国家に戻っていくのではないかと思う。
 
 >>711でイザナをイナザと書いてしまっている部分がありました。申し訳ありませんでした。
719 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:06:37.74 ID:B6cmo4/U0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋』―

ミタマ「何と言いますか、自分から面倒に足を踏み入れるその性分に言葉がでませんわ」

カムイ「ミタマさんが思っている事はもっともだと思います。でも、何もせずにここで待っているわけにもいきません。少しでも生き残った人たちの助けになる事を私はしていきたいんです」

ミタマ「はぁ、何を言ってもお手伝いに行くのは止められそうにもありませんね。わかりましたわ、ヒノカ様の事はわたくしにお任せください」

カムイ「ミタマさん、ありがとうございます。時間が空いたら様子を見に来ますね」

 コンコン スーッ

アクア「カムイ、そろそろ行きましょう?」

カムイ「はい。ミタマさん、ヒノカさんの事をよろしくお願いします」

ミタマ「ええ、お気を付けて」

 タッタッタッ

カムイ「それじゃ、行きましょうか、アクアさん」

アクア「ええ、タクミが訪れるまでにヒノカが目覚めるといいわね」

カムイ「はい、出来ればタクミさんにもヒノカさんの元気な姿を見せてあげたいです。それに、ヒノカさんが目覚めることは白夜の人たちにもいい知らせになるはずですから」

アクア「そうね。物資の配給で白夜の人々に余裕が生まれてくるはずよ。それと合わされば白夜の人々にも希望が芽生えていくと思うわ」

カムイ「ええ、そのために私たちも色々と頑張らないといけません。といっても、私に出来るのは簡単な事しかありませんけど」

アクア「だとしても、あなたに出来ることを精いっぱいやればいいだけの事よ。そこに物事の大きさは関係ないはずよ」

カムイ「ありがとうございます、アクアさん」

アクア「それじゃ、まずは城下町の中央広場に行きましょう」

カムイ「はい」タタタタッ
720 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:10:36.09 ID:B6cmo4/U0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王国・王都『城下町・中央広場』―

カムイ軍兵士「大丈夫だ、そんなに押さないでも配給物資はある。慌てないで、受取口は多くあるから」

カムイ軍兵士「医療品はここで渡すことは出来ない。怪我人や病人がいるのであれば声を掛けてほしい。こちらから医師を派遣し、必要なら医療天幕に案内しよう」

カムイ軍兵士「よし、ここにもう一つの受付天幕を建てるぞ。そっちを手伝ってくれ!」

 ガヤガヤ ワーワー

カムイ「すごいですね。昨日到着したばかりだというのに、これほど準備が整っているなんて」

アクア「夜の内に物資の仕分けと区分移送を終えていたみたいだから、朝からスムーズに準備が出来たみたいね」

カムイ「そうなんですね。クーリアさんと一緒に来た方々に感謝しないといけません」

アクア「ええ」

カムイ「確か中央広場でレオンさんが支援活動の指揮を取っているという話でしたが……」

アクア「一体どこに……ん?」 

 ドスンドスンッ

カムイ「何か重い物を運んでいる音のようですが……。ん、あちらからですね」

アクア「……あれはエルフィとレオン?」
721 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:17:05.35 ID:B6cmo4/U0
エルフィ「レオン様、これはどこに置けばいい?」

レオン「ああ、それは向こうの天幕にお願いするよ。重そうだけど何人か回そうか?」

エルフィ「いいえ、これくらいなら一人でも運べる。それにいい訓練になります」

レオン「そうかい、助かるよ。こういった力仕事だと僕の出番はないからね」

エルフィ「そんなことありません。こうしてわたしの質問にレオン様は答えてくれますから。これをどこに置けばいいのかまではわかりませんし、レオン様が指揮をしてくれるおかげで天幕の設置はスムーズに進んでいると思います」

レオン「ありがとう。そうだ、支援物資の中にトマトがあるらしいけど、いるかい?」

エルフィ「はい、頂けるのでしたら」

レオン「わかった、ちょっと掛け合ってみるよ」

エルフィ「ありがとうございます、レオン様」

アクア「レオン」

レオン「ん、アクアと姉さん?」

カムイ「レオンさん、こんにちは、朝からお疲れ様です」

レオン「ああ、滞在期間が伸びた以上、出来る限りの支援は行っておきたいからね。クーリアたちも準備が可能ならすぐに物資の配給を行いたいって言っていたこともあったし、なにより白夜の人々も物資の配給を待っていたみたいだからさ」
722 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:20:14.63 ID:B6cmo4/U0
カムイ「そうだったんですね。エルフィさんも朝から手伝いをされていたんですか?」

エルフィ「はい、わたしは日課の朝練をしていたところで、大きな天幕の設置を手伝ってほしいと言われて、重い物を持って設置するのはいい訓練になるからこうして手伝いをしているんです…」

レオン「ああ、エルフィがいてくれたおかげで天幕の設置はそれほど時間が掛からなくて助かったよ」

アクア「そう、トマトのことを話していたから、一体なんの事かと思ったけど」

レオン「うっ、聞こえていたのかい?」

エルフィ「そうですね、アクア様はレオン様のすぐそばに立っていたみたいですから」

アクア「あれ、食べられるものなの?」

レオン「そう聞いて来るってことは食べたことが無いってことだね。それは損しているから食べることをお勧めするよ。あれはとっても食べやすいものだからね、瑞々しさと程よい酸味が――」

 クゥウ

エルフィ「レオン様、トマトの話をされるとお腹が空いてしまいます」

レオン「あ、ごめん」

カムイ「ふふっ、エルフィさんがお腹を鳴らすと言う事は、きっとおいしい物なんでしょう」

アクア「そうね、いずれ食べてみるのも悪くなさそうね」
723 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:23:47.94 ID:B6cmo4/U0
レオン「僕の味覚はあんまり信用してないんだね。まぁいい、それで二人はどうしてここに?」

カムイ「そうでした。何か手伝えることは無いかと思いまして……」

レオン「手伝いか、今の中央広場は人数に問題は無いからね。ここの手伝いは大丈夫かな」

カムイ「そうですか……」

レオン「そうだね、医療天幕のある場所にサクラ王女がいるから、そこを訪ねてみるのがいいかもしれないよ」

カムイ「わかりました、サクラさんを訪ねてみますね。それと何か持っていったほうがいい物はありますか?」

レオン「持って行ってもらいたい物か……。ああ、わずかだけどあまりの医療物資がある。これを持って行ってくれないかな?」

アクア「わかったわ。そういえば、ここで医療品の配給はしていないとさっき兵士が言っていたわね」

レオン「ああ、適正適量での運用をしないといけないし、食料品と違って扱いが難しいものだからね。ある程度はルールを設けていないといくらあっても足りなくなる」

アクア「そういうことだったのね」

カムイ「色々と考えているんですね。それじゃ、その物資を持って医療天幕へ向かいます。ここで話し続けているわけにはいきませんから」

アクア「そうね」

レオン「うん、よろしくたのむよ、姉さん、アクア」

カムイ「はい」タッタッタッ

エルフィ「レオン様、この物資は何処に置けばいいでしょうか?」

レオン「ああ、それは向こうの天幕だね」

エルフィ「はい、ありがとうございます。それでは行ってきますね」

レオン「あ、エルフィ、一ついいかな?」

エルフィ「何でしょうか?」

レオン「そのトマトが手に入ったらなんだけど、あのトマトジュースを作ってもらえるかい? その、久しぶりに飲みたいんだ」

エルフィ「はい、任せてください」

レオン「ありがとう、それじゃ仕事を続けようか」

エルフィ「はい。ふふっ、トマトが楽しみです」
724 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:29:09.80 ID:B6cmo4/U0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王国・王都『城下町西区域・医療天幕周辺』―

カムイ軍兵士「すみません、カムイ様。先日だけではなく今日もこうして物資を持ってきていただいてしまって」

カムイ「いいえ、お役に立てて何よりです。状況はどうですか?」

カムイ軍兵士「物資の量が多かったおかげで患者の皆さんへの支援は滞りなく行えています。クーリア様たちには感謝の言葉しかありません」

カムイ「そうですか。それは良かったです」

アクア「ここはサクラが担当していると聞いたのだけど……」

カムイ軍兵士「ああ、サクラ王女様でしたらあちらの天幕で薬の準備をされております」

アクア「わかったわ。カムイ、行きましょう?」

カムイ「はい。では物資をよろしくお願いしますね」

カムイ軍兵士「はい!」

カムイ「サクラさん、皆さんに信頼されているみたいですね」

アクア「そうね。私もそうだけれど、白夜の人間がこれだけ信頼されるなんて思ってもいなかったから」

カムイ「白夜や暗夜を気にすることなく、サクラさんとしてみんなが信頼してくれていると言う事なんでしょう。アクアさんも多くの人から信頼されているみたいですから」

アクア「そうかしらね……ん?」

カムイ「どうしたんですか、アクアさん」

アクア「カムイ、ちょっと先に行っててちょうだい。すぐに合流するわ」

カムイ「わかりました、先にサクラさんのいる天幕に向かっていますね」タッタッタッ

アクア「ええ」
725 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:33:50.56 ID:B6cmo4/U0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

サクラ「これくらいで大丈夫でしょうか?」

ニュクス「ちょっと待って……、ええ、これくらいで問題ないわ。中々うまく出来ているわよ」

サクラ「ありがとうございます、ニュクスさんがいてくれるおかげで薬の調合がとってもうまくいきます」

ニュクス「そう、それはよかったわ。でも私が手伝わなくても、サクラ王女にならどんどんこういったことをこなせるようになっていったと思うのだけれど?」

サクラ「そんなことありません。私が知っている知識とニュクスさんの知っている知識では量も経験も違います。それにこの物資のほとんどは暗夜王国の物で、白夜の薬師としての知識で調合しても失敗してしまうかもしれませんし、なにより患者さんたちやこの物資を準備してくれた人たちに悪いって思ってしまって……」

ニュクス「サクラ王女は慎重なのね。でも、その心掛けは持っていて正解よ」

サクラ「正解でしょうか……」

ニュクス「ええ、あなた位の時、私にもそんな心掛けがあったらこんな姿にはなっていなかったかもしれないから。自分勝手で残虐な過ちを犯したというこの姿には、ね?」

サクラ「でも、私の知っているニュクスさんは、今のニュクスさんだけです」

ニュクス「わかっているわ。だけど、少し思うこともあるのよ。もしも、今ここにいる私が順調に成長していたらどんな姿だったのかって」

サクラ「うーん、そうですね。すらっとしてカッコいい女性な気がしますよ」

ニュクス「ふふっ、お世辞がうまいのね」

サクラ「お世辞じゃありません。ニュクスさんは大人の女性ですから、きっと大人の女性になっているはずです」
726 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:35:43.51 ID:B6cmo4/U0
ニュクス「まったく、お世辞だけは達者になって、いつになったら成長した大人の姿を見せてくれるのかしら?」

サクラ「そ、それは。その、もっと長い目線で待っていてほしいです……」

ニュクス「ふふっ、冗談よ。ゆっくり待つっていう約束だったじゃない。だから急がなくても大丈夫よ。それに今もこうしてあなたは大人の女性として成長しているじゃない」

サクラ「そうでしょうか?」

ニュクス「ええ、わからないことや不安なことをちゃんと聞いて、聞いた通りにそれを実践できる。分からないことをわからないままにして、不安と向き合わないで先延ばしにする人もいる中で、あなたは立ち向かう意思を見せているもの。それは大人として成長している一部だと私は思うわ。だから、その調子で色々と成長するあなたを私に見せてちょうだい」

サクラ「はい、ニュクスさん。それじゃ、この薬はこの配分で作り続けますね」

ニュクス「ええ、私も手伝うわ……ん?」

 バサッ

カムイ「失礼します、サクラさんはいますか?」

サクラ「あ、カムイ姉様」

カムイ「こんにちは、サクラさん。それにニュクスさんもいらっしゃったんですね」

ニュクス「ええ、サクラ王女に薬の調合を教えているところ、あなたはどうしたの?」

カムイ「中央広場で物資を頂いて届けに来たところです。ついでに何か手伝えることがあるならと思っているのですが」
727 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:39:42.62 ID:B6cmo4/U0
サクラ「そうだったんですね。えっと今手伝えることですか……」

カムイ「なさそうですか?」

サクラ「ごめんなさい、カムイ姉様。今はそれほど人手に困っていなくて、患者さんたちへの看護も問題なく行えているから今は大丈夫です」

カムイ「そうですか……」

ニュクス「他にあるとすれば子供たちの面倒を見る事だけど……」

カムイ「子供、ですか?」

サクラ「はい。この戦いで親を失ってしまった子が殆どです。今まで物資などもあまり受け取りに来ることが出来なかったみたいで、医療処理は済んでいるんですけど、その……」

ニュクス「みんな、あまり元気が無いの。塞ぎこんでしまっているというわけじゃないけれど、色々と辛い思いをしてきたのかもしれないわ」

カムイ「そうだったんですね……」

ニュクス「で、それを元気にして見せるって数人飛び出して行っちゃってね。まぁ、特に問題は無いと思うけれど……」

カムイ「元気にして見せるですか。ちなみにその飛び出していった数人っていうのは……」

ニュクス「えっと覚えている限りだと兵士が数人と――」

「オーディンにラズワルド、それとエリーゼ王女だったわね」
728 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/18(木) 22:40:47.37 ID:B6cmo4/U0
今日はここまで

 少しの間は仲間同士支援でAになった方々の話が大半になると思います。
729 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:05:45.63 ID:AOVZyjQR0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都『城下町西側』―

 ガヤガヤ

白夜の子供「……お腹空いた」

白夜の子供(ここに来れば、食べ物がもらえるって聞いたけど、こんなにいっぱい人がいる……)

 ガヤガヤ ワーワー
  ガヤガヤ ワーワー

白夜の子供「……」

 クゥゥゥ

白夜の子供「うう、あたしの前で無くなったらどうしよう……」

エリーゼ「無くなったりしないから、大丈夫だよ!」

白夜の子供「!?」

エリーゼ「あ、ごめんね。驚かせちゃったかな?」

白夜の子供「う、ううん。えっと、あの……本当になくなったりしない? あたしもちゃんともらえる?」

エリーゼ「大丈夫! 今ね、いっぱいいーっぱい作ってるんだ。もうね、一人じゃ食べきれないくらい!」

白夜の子供「そんなに作ってるの?」

エリーゼ「うん! だから、そんなに心配しないで大丈夫だよ。ちゃんとあなたの分も残ってるから、もう少しだけ待ってて」
730 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:09:14.11 ID:AOVZyjQR0
白夜の子供「うん、ちゃんと待ってる……」

エリーゼ「ありがとう。ん?」

カザハナ「あ、エリーゼ王女。どう、みんなきちんと並んでる?」

エリーゼ「うん、みんなちゃんと並んでくれてるよ」

カザハナ「うんうん、エリーゼ王女が先頭に立って子供たちに声を掛けてくれたおかげだよ、ありがとね」

エリーゼ「そ、そうかな?」

カザハナ「そうだよ。それに最初の配給食をただ配って終わり、そんな流れだったのを変えてくれたのはエリーゼ王女だもん。エリーゼ王女が提案してくれなかったら、こんなに賑やかにはならなかったと思うわ」

エリーゼ「食事って暖かい方がいいと思うんだ。暖かい食事って、それだけでもうれしくなれる気がするの」

カザハナ「ふふっ、その通りみたい。ほら見て、あそこでもらった子たち食べながら笑顔になってる。エリーゼ王女の笑顔大作戦は大成功ね」

エリーゼ「えへへ。でも、まだまだ頑張らないとだめだよね。あたし、向こうのお手伝いしてくるよ!」

カザハナ「わかったわ。ここはあたしに任せて!」

エリーゼ「ありがとう、カザハナ」タタタタッ

カザハナ「さてと、ほら、ちゃんと並ぶ! あ、そこ割り込まない! ちゃんと後ろに回る!ちょっと、列抜けて割りこまない、そういう子は一番後ろに送っちゃうからね!」

 ガヤガヤ
  ガヤガヤ

カザハナ「それにしても、こんなにいっぱいかぁ。厨房の方もこれは戦争だよね、きっと……」
731 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:12:54.92 ID:AOVZyjQR0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ラズワルド「よし、ジャガイモの皮むきは終わったよ、オーディン、細かく切ってくれるかな? 子供たちが食べるから大きさも調整してね」

オーディン「ふん、任せろ。この俺の妙技の前には、何者であろうと別たれる運命から逃れることなど――」

白夜兵士「そこ、早く切ってください。まだまだお腹空かせた子供たちがいるんだから!」

オーディン「あ、はい……。くそぉ、少しくらい格好つけさせてくれてもいいじゃんかよぉ」トントントンッ

ラズワルド「はははっ、怒られちゃったね」

白夜兵士「そっちも、さっさと皮むきを続けてください」

ラズワルド「あ、はい」シャッ シャッ

オーディン「それにしても、エリーゼ様には驚かされるぜ。ただ、配給するだけじゃ駄目だって言い出してさ」

ラズワルド「そうだね。でも、それがエリーゼ様の良い所だと思う。それにこれは間違ったことじゃないはずだよ。ほら、そこから見えるでしょ?」

オーディン「ん?」

ラズワルド「スープを受け取った子供たち、みんな嬉しそうにしてる。一工夫するだけでも、結果は違ってくるはずだからね」
732 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:15:07.89 ID:AOVZyjQR0
オーディン「そうだな。誰かに作ってもらったご飯はおいしいからな。笑顔になるのもわかるぜ」

ラズワルド「それほど大きなことじゃないけど、この思いやりが少しでも明日の笑顔に繋がっていくんだと思う。今こうしてやっていることに意味はあるはずだからね」

オーディン「俺も賛成だ。それに一緒に戦ってきた親友の手助けが出来るっていうのも、悪くない」

ラズワルド「オーディン、ありがとう」

オーディン「ふっ。よし、全部切り終えたぞ。さぁ受け取れ、この俺が切り揃えた幼き命に見合うこの――」

白夜兵士「何言ってるのかわからないけど、切れたならさっさと寄越して。で、次はこれ!」ドスンッ

オーディン「え、まだ切るの!?」

白夜兵士「まだまだ、お腹空かした子がいるんだから当たり前でしょ。で、新しいスープが出来たから、表にもっていってほしいんだけど」

ラズワルド「はい、わかりました。オーディン、ここは少し任せるよ」

オーディン「え、ちょっと待て、この量を俺一人でやれっていうのか!? それはいくら何でも――」

ラズワルド「それじゃ、僕はスープを届けてくるから!」タタタタッ

オーディン「ちょ、待てラズワ――」

白夜兵士「そこ、口じゃなくて手を動かす!」

オーディン「……は、はい」
733 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:18:03.38 ID:AOVZyjQR0
ラズワルド「よいしょっと……。出来上がったスープを持ってきたよ」

カムイ軍兵士「おお、ありがとう。これで、まだまだ腹いっぱい食べさせてやれそうだ。ああ、すまないが、器を出す手伝いをお願いできるか? このままじゃ数が足りなくなる」

ラズワルド「わかったよ、奥の箱だよね?」

カムイ軍兵士「ああ、よろしく頼む! おお、また来たのか。いいぞ、腹いっぱい食べて元気になってくれよな」

白夜の子供「うん、ありがと!」

ラズワルド「うん、元気なのはいい事だね。よし、僕も頑張らないと。えっと、確かこの箱だったはずだけど……」

エリーゼ「えーっと、確かここの箱に食器が入ってたはずだよね、あれラズワルド?」

ラズワルド「あ、エリーゼ様」

エリーゼ「ラズワルドも食器を探しに来たの?」

ラズワルド「も、っていうことはエリーゼ様も?」

エリーゼ「うん、そうだよ。いっぱい子供たちが並んでるから食器の補充まで手が回らないみたいだったから」

ラズワルド「そうみたいですね。ははっ、ここまで賑やかになるなんて思ってもいませんでしたよ」

エリーゼ「えへへ、なんだかすごく忙しくなっちゃったね」

ラズワルド「はい。でも、なんだかやる気が出てきますよ。あんなふうに笑ってる子供たちを見ていると、もっと笑顔にしてあげたいって思いますから」

エリーゼ「あたしも、あたしも!」

ラズワルド「よし、それじゃ食器を持って戻りましょう。まだまだいっぱい必要なはずですから」

エリーゼ「うん! そういえば、オーディンって今一人なんだよね? 大丈夫かな?」

ラズワルド「大丈夫だと思いますよ……多分」
734 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:20:58.65 ID:AOVZyjQR0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

オーディン「はぁはぁ……お、終わりました」

白夜兵士「ありがと、それじゃ次もお願い」ドスンッ

オーディン「ちょ……」

オーディン(さ、さすがにこんな量を切り続けるのは想定外だ。手がプルプル震えて動かなくなってきたぞ……)

オーディン「っていうか、ラズワルドはいつ戻って来るんだよ。早く戻ってきてくれよぉ」トントントンッ

アクア「……オーディンの後姿が見えたから何をしているのか気になって追いかけてきたけれど、思ったより真面目な事をしているわね」

アクア(あれだけの量を一人でこなすのは骨が折れそうだから、手伝ってあげないと……。でも、カムイにはすぐに合流すると言ってしまったから、手伝って遅れるのも悪い気がするし……)

アクア「……やっぱり、ここは――」

カムイ「お手伝いしましょう。アクアさん」

アクア「え、カムイ? どうしてここに……」

カムイ「先ほどサクラさんとニュクスさんから子供たちの話を聞いて、もしかしたらと思って来てみたんです。大勢並んでいるみたいです」

アクア「え、ええ……。なんだか忙しくしていたから何かと思って」

カムイ「さすがはアクアさんです。私は何か出来ることがあるか聞いて来ますね」

アクア「わかったわ。……今出来る事、ね」チラッ
735 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:23:37.37 ID:AOVZyjQR0
オーディン「ううっ、手が攣りそうだ……」プルプル

アクア「そんな持ち方だと怪我をするわ」

オーディン「え? アクア様、どうしてここに?」

アクア「ここに私がいることはどうでもいいことよ。それより疲れているのも分かるけど、スピードを無理に維持しても怪我をするだけよ。少し休みなさい」

オーディン「でも、これを切らないことにはスープの具材が出来上がりませんよ。それに、今切ってるのは俺一人だけですし」

アクア「何を言っているのかしら。今ここに私がいるでしょう? ただ煽って帰る程、暇じゃないの、わかるかしら?」

オーディン「へ?」

アクア「前にあなたが言っていたでしょう? 一人で遊んでいる気にならないでと、状況は違うけどこれもそれと同じよ。私にも何か手伝いをさせてちょうだい、それが一緒に何かをするって言う事なんだから」

オーディン「アクア様……」

アクア「それで、どれくらいの大きさに切ればいいの? 大きすぎると子供たちが食べ辛いだろうし、小さすぎてもあれでしょう?」

オーディン「……」

アクア「オーディン?」

オーディン「ふっ、師にこうして何かを教えるというのは、何とも言えない高揚感があるな。スプラッシュプリンセス・アクアよ、その腹を満たす食物の切り方、今ここに――」

アクア「御託はいいから早く教えなさい」

オーディン「あ、はい」
736 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:30:30.28 ID:AOVZyjQR0
 コレデイイワネ
  エ、モウオワリデスカ!?

カムイ「ふふっ、もう手伝う事の目星は付けていたんですね」

カムイ(私も頑張らないとだめですよね。よし!)

カムイ「出来上がったスープを持っていきますね」

白夜軍兵士「カムイ王女、本当に大丈夫なのですか。その目では……」

カムイ「大丈夫です、目は見えなくても、ちゃんと何があるかは理解していますから。それに、私ではスープを作ることはできませんので」

白夜軍兵士「わかりました。よろしくお願いしますね。くれぐれも零さないようにお願いしますよ?」

カムイ「はい、任せてください」タッ タッ タッ

カムイ(大勢の人の気配がありますね。ほとんどが子供のようです。ん?」

子供たち「えへへ、おいしいね」

カムイ軍兵士「おお、そうか! もっと食べて元気になるんだぞ」

子供たち「うん! ありがとう暗夜の兵隊さん!」

カムイ軍兵士「ありがとう。だがな、これを作ってくれてるのは白夜の兵隊さんだ。あとでちゃんとお礼を言うんだぞ」

子供たち「うん、ちゃんとお礼を言うね!」

カムイ軍兵士「よーしよし!」

 ガヤガヤ
  ガヤガヤ

カムイ(ここに広がる声はどれもこれも優しく、そして楽しいという思いが感じられる。とても暖かい場所ですね)

カムイ「ふふっ……ん?」

ラズワルド「あれ、カムイ様?」

カムイ「ああ、ラズワルドさん、エリーゼさんも一緒なんですね」

エリーゼ「あ、カムイおねえちゃんだ。もしかして、カムイおねえちゃんも手伝ってくれるの?」

カムイ「はい。今はスープを運んでいるところなんです。これはどちらに運べばいいでしょうか?」

ラズワルド「こっちですよ。僕が案内します」

エリーゼ「あ、ラズワルドずるい! あたしもおねえちゃんを案内したいよ!」

カムイ「二人ともありがとうございます。でも、まだまだ忙しいみたいですから、場所だけ教えていただければ大丈夫ですよ」

ラズワルド「そうですか、わかりました。スープを配っている天幕はこの先にあるので、そこの方々に渡してください」

エリーゼ「うん、あとは配る係の人に任せて大丈夫だよ」

カムイ「はい、ありがとうございます。まだ並んでいる子供たちがいますから、頑張りましょう」

ラズワルド「はい! 子供たちをもっと笑顔にしてあげないとね」

エリーゼ「うん! いっぱい頑張っちゃうよ、せーの、えいえいおー!」

カムイ「ふふっ」
737 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/04/25(木) 15:32:56.59 ID:AOVZyjQR0
今日はここまで

 ペルシード地元何処にもなかった。

 ここで出てくる支援のAの組み合わせは、テンジン砦でにレオン一行が向かった後からAになったペアを中心に書いています。
738 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/04(土) 10:18:53.25 ID:VW2eXoS80
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『城下町西側』―

エリーゼ「はぁ、やっと終わったよ〜」

カムイ「お疲れ様です、エリ―ゼさん」

エリーゼ「うん。でもよかったー、みんな喜んでくれて」

カムイ「はい、子供たちも手伝ってくれた人もみんな笑っていたと思います。エリーゼさんのおかげですね」

エリーゼ「ううん、あたしはやってみようって言っただけだから……」

カムイ「いいえ、エリーゼさんがやろうと思わなかったら、こんな風に賑やかで温かい空気にはならなかったはずです。だから謙遜しないでください」

エリーゼ「カムイおねえちゃん……。えへへ、ありがとう」

カムイ「ふふっ」

 タッタッタッ

アクア「カムイ、待たせたわね」

エリーゼ「あれ、アクアおねえちゃん?」

カムイ「アクアさんは食材の準備を手伝ってくれたんですよ」

エリーゼ「ありがとう、アクアおねえちゃん」

アクア「気にしないで。ちょっと弟子が不甲斐なさそうにしていたから手を貸しただけだから」

カムイ「弟子ってオーディンさんの事ですよね……。アクアさんは一体何の師匠なんですか?」
739 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/04(土) 10:26:11.94 ID:VW2eXoS80
アクア「ふふっ、それは秘密よ。話は聞いたわ、エリーゼがこの炊き出しを提案してくれたんですってね」

エリーゼ「うん! こっちのほうが暖かくていいかなって思ったから」

アクア「食事を貰った子供たちは、みんなとてもうれしそうにしている。エリーゼの提案は大成功したみたいね」

エリーゼ「えへへ〜。ほんとはね、ちょっとだけ不安だったのもしかしたら暗夜のごはんなんていらないとか、そういうこと言われるかと思ってたから……。どんな理由があってもあたしたちと白夜が戦争してたことは消えないことだから……」

カムイ「エリーゼさん……」

エリーゼ「だからね、ありがとうって言ってもらえた時、すっごく嬉しかった。ちゃんとみんなのためになる事が出来たって思えて、やってよかったってホッとしちゃった」

アクア「ふふっ、エリーゼの思いはちゃんと子供たちに伝わっているわ。いいえ、子供たちだけじゃない。手伝ってくれた白夜の人たちもそうだし、もちろん私たちにもね」

カムイ「ですから、配しなくても大丈夫です。エリーゼさんは誰かのために何かをする。そんな尊い行為を行ったのですから」ナデナデ

エリーゼ「えへへ」

カムイ「ふふっ」
740 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/04(土) 10:35:10.14 ID:VW2eXoS80
エリーゼ「それじゃ、あたしは天幕に戻るね。後片付けが残ってるから、それもきちんと終わらせないと」

カムイ「あ、私たちも手伝いますよ」

エリーゼ「ううん、大丈夫。おねえちゃんたちは途中から手伝ってくれたんだから、それだけで十分だと。あとはあたしたちに任せて。おとなの女性は自分の仕事をきっちりとこなせないとね!」

カムイ「エリーゼさん……。わかりました、片付け頑張ってください」

アクア「頑張ってね」

エリーゼ「うん! それじゃね!」タタタタッ

アクア「ふふっ、走る姿はとてもかわいらしいけど、もう立派な大人ね」

カムイ「はい。それにエリーゼさんの優しさは白夜も暗夜も関係ありませんから」

アクア「国に縛られない優しさがあるのだとするなら、エリーゼのような子が持っているものなのかもしれないわ」

カムイ「多くの人にその優しさが伝わってくれるといいですね。長く続いた戦いの傷をゆっくりと癒すのは、こういったもののはずです。戦うことで切り拓くものより、ずっと尊いものであるべきですから……」

アクア「カムイ……」

カムイ「少し休憩しましょうか。体を少しは休めないと作業に支障が出てしまいます」

アクア「……そうね。少し休みましょう」
741 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/04(土) 10:42:54.41 ID:VW2eXoS80
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アクア「はい、水よ」

カムイ「ありがとうございます。それにしても数日前と比べて多くの音が聞こえる様になりましたね」

アクア「ええ。でも、多くなったのが明るい音なのはいい事ね。暗い音をかき消すくらいに徐々に大きくなっている気がするわ」

カムイ「明るい音ですか?」

アクア「ええ、気分が良くなったり、うれしくなったりする、そういう音のことよ。炊き出しの場所はその音で満ちていたもの。前までは暗い音ばかりで満ちていた場所だったけど、まるで生まれ変わっている最中のように感じるわ」

カムイ「暗い音が無くなって、明るい音だけになる日が来るといいですね」

アクア「いいえ、私は同じくらい暗い音も必要だと思っているわ。どちらかだけになってしまうことはあってはならないの。悲しいこともうれしいことも同じよ。今は悲しいことに溢れているから、それを補うほどにうれしいことが起きてくれたらいいと思う。そして二つのバランスがとれるようになって、穏やかになるのが一番理想なことだと思うわ。激しいだけの音楽だと飽きてしまうのと同じね」

カムイ「なるほど、中々に興味深いですね。音楽で例える辺りは歌姫のアクアさんらしい発想だと思います」

アクア「ふふっ、ありがとう」

カムイ「でも、そうですね。そうなるのが一番なのかもしれません。悲しい事もうれしいことも、多く起こってしまっては困りますから」

アクア「そうね……。でも、今は良いことが起きた方がいいわ。それがあなたにとって……」

カムイ「?」

アクア「……ここを発つまでに、復興が進むといいわね」

カムイ「はい、そうですね」
742 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/04(土) 10:48:29.83 ID:VW2eXoS80
 ガタンッ ガタンッ……

カムイ「この音は」

アクア「どうやら、向こうで何かを運んでいるみたいね」

カムイ「そうなんですね。……ん?」

???「ちょっと、こんなに持っていくわけ?」

???「仕方ありません、思ったよりも量が必要なのですから。物資が多く入ったので、消費も激しくなった故でしょう」

???「今まで抑えて使っていた反動か……。しかし、荷車で入れるのは入り口まで……。これを内部に運ぶのは骨が折れそうだ…」

カムイ「この声は……」タッ

アクア「カムイ?」タタタッ

ルーナ「はぁ、入り口に着いたらこれを三人で何十往復とか、もう少し人数回してくれてもいいのに」

フローラ「重症患者の皆さんの移送とお世話に比べれば、こちらの方が単純で楽な仕事です」

ルーナ「だとしてもこの量よ? フローラだって思うところあるでしょう?」

フローラ「いいえ、あなたの買い物に付き合うのに比べればまだマシだと思います」

ルーナ「なんですって!?」

ブノワ「二人とも…、喧嘩はよくない…」

フローラ「ブノワさん、大丈夫よ、いつもこんな感じですから。それとごめんなさい、手伝いをお願いしてしまって」

ブノワ「別にかまわない…。困っている時は支え合うべきだからな…」
743 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/04(土) 10:49:23.19 ID:VW2eXoS80
ルーナ「顔に似合わず、いいこと言うじゃないの」

フローラ「ブノワさんは優しい方ですからね」

ルーナ「見た目と違いすぎて信じがたいわ。あれ、カムイ様?」

カムイ「やっぱり、ルーナさんでしたか。それにフローラさんにブノワさんまで」

フローラ「カムイ様、こんにちは。それにアクア様もご一緒でしたか」

アクア「ええ、こんにちは。それにしてもなんだか不思議な組み合わせね。特にルーナとフローラが話しているのは意外だわ」

ルーナ「ちょっと、それってどういう意味?」

アクア「そのままの意味よ。だって、あなたって、その……」

ルーナ「その、ってなによ。その、って!?」

フローラ「そうですね、色々とありまして。アクア様も苦労されていらっしゃるようですね」

アクア「あなたも私とは違う方面で苦労したのね。大丈夫、今の言葉だけでも大体は察せたわ」

フローラ「私も同じです、アクア様」

ルーナ「ううっ、なんでこんなにボコボコにされなきゃいけないのよ……」

 スッ ナデナデ

ルーナ「え?」

カムイ「落ち込まなくても大丈夫ですよ、ルーナさんの素敵な所、私は良く知ってますから。大丈夫です」

ルーナ「う、うん。ありがと/////」
744 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/04(土) 10:51:16.30 ID:VW2eXoS80
カムイ「そういえば皆さんは何運んでいるのですか? かなりの大荷物のようですけど」

ブノワ「医療物資を運んでいるところだ…」

カムイ「医療物資ですか。でも、運ぶならサクラさんやニュクスさんの作業している天幕の方が正しいのでは?」

フローラ「シラサギ城にいる重傷者の方々用の物です。予想以上に下準備で運んだものが消費されているようで、手の空いている私たちが運ぶことになった次第です」

ルーナ「そういうこと。でも、量がとてつもなく多くて……」

アクア「そうね。運ぶのは馬に任せているといしても、これをシラサギ城内部までとなると」

ルーナ「そう。それに入れるのは入り口までで、中には持てるだけしか持っていけないから。これを持って何度も往復とか、考えるだけでも嫌になりそう」

フローラ「予想通りに事が運んでいれば人手は足りていたのですが、そうは言えない状況ですので」

カムイ「なるほど、そういうことですか。それじゃ、私たちも手伝いましょう。丁度、手伝っていたことも終わりましたので」

フローラ「いいのですか?」

カムイ「はい。ブノワさんも言っていたじゃないですか、困った時は支え合うべきだと。私もそう思いますから」

ブノワ「き、聞こえてたのか……////」

フローラ「ふふっ、ブノワさん照れてらっしゃるんですね」

ブノワ「あ、ああ……。こういうのは、やはり慣れない……」

フローラ「でも、それがあなたの良い所だと私は思いますよ」

ブノワ「ありがとう……」

フローラ「ふふっ。それではカムイ様、お手伝いをお願いできますか?」

カムイ「はい、任せてください。アクアさんもいいですよね」

アクア「構わないわ。それに、フローラからルーナの事を聞いておくのも悪くないと思うしね?」

フローラ「私も色々とお聞きしておきましょう。今後、何かしらの役に立つかもしれませんから」

ルーナ「え、なんで意気投合してるの?」

カムイ「ふふっ、それでは行きましょうか」タッタッタッ

ブノワ「ああ……」

 ガタンッ ガタンッ……
745 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/04(土) 10:56:06.93 ID:VW2eXoS80
今日はこれだけ

 フローラは仲良くなった同性友人はさん付けをしないで呼ぶ気がする。

 ビジュアル資料集のボスエネミーに星竜の成体絵があったけど、とても強そうでした
746 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:05:23.19 ID:wwGvfTI70
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『城内・癒しの間』―

カムイ「この物資はこちらで大丈夫ですか?」

フローラ「はい、そちらにお願いいたします。アクア様の物資もこちらへ」

アクア「わかったわ」

フローラ「ブノワさんは奥の部屋へお願いいたします」

ブノワ「ああ、わかった…」

フローラ「それから……」チラッ

ルーナ「ふふん、あたしはもう運んでおいたわよ」

フローラ「でしたら、すぐに入り口に戻って荷物を持ってきてください。まだ、あと二往復はしないといけませんから」

ルーナ「ちょっと、ここは仕事が早いとか言うところでしょ?」

フローラ「……はいはい」ナデナデ

ルーナ「あ、頭は撫でなくていいわよ」

アクア「その割には嫌がらないのね」

ルーナ「あ、アクア!? こ、これは違うわ、フローラが頭を撫でたいから撫でさせてあげてるだけで」

カムイ「私には褒めてもらいたそうにフローラさんに報告していた気がしますけど」

ルーナ「カムイ様まで何言ってんの!?」
747 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:08:52.87 ID:wwGvfTI70
フローラ「すみません、頑固で意地っ張りな子ですから」

アクア「わかるわ。その癖、負けず嫌いな所もあるし」

カムイ「そうですね。だけど、このような公衆の面前で素直に褒めてもらいたいと迫られるなんて、フローラさんが羨ましいです。私に甘えてくれるのは二人きりの時だけだというのに」

ルーナ「そ、それは色々と事情があるからで……あ」

アクア「……え、カムイ。ルーナと甘えているって……」

フローラ「ルーナ、どういうことなのか説明してくれますね?」

ルーナ「ちょ、変な意味じゃないから! そうでしょ、カムイ様」

カムイ「そうですね。色々と触ったり、慰めたりとかそんな感じ、でしょうか」

ルーナ「その説明はおかしいでしょ? なんで、疑惑が深まるような答えしか出せないのよ」

カムイ「深まるというか、実際そういう事だったわけですし」

ルーナ「そ、そういうところ何とかしてよ。これじゃ、まるでその…あたしとカムイ様が、その……////」ゴニョゴニョ

カムイ「?」

 ガシャン ガシャン

ブノワ「すまない、少し遅れた……」

ルーナ「ナイスタイミングよ、ブノワ! さぁさぁ、まだ後二往復はするんだからさっさと戻るわよ」タタタタッ

ブノワ「?」
748 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:12:35.45 ID:wwGvfTI70
フローラ「カムイ様たちが手伝ってくれるおかげで、予定より早く終わりそうです」

アクア「残っている物資の量を考えるとあと二往復というところかしらね。看護に従事している人たちの役に立っているといいのだけれど」

ブノワ「ああ、おかげで看護に集中できるからありがたいと、ここにいる者たちは言っていた……」

カムイ「それは良かったです。ん?」

 ……ホッ……ゴ……

アクア「カムイ、どうかしたの?」

カムイ「あちらの部屋から何か聞こえて……」

重傷者「ゴホゴホッ、ううっ……、うううっ!!!」

カムイ「大丈夫ですか!?」

重傷者「ぐぅっ、ううっ……」

フローラ「ルーナ薬を持ってきて、ブノワは水をお願い」

ルーナ「わかったわ」

ブノワ「ああ…」

フローラ「カムイ様、その方の手を握って声を掛けてもらえますか。不安にならない様にしてあげてほしいんです」

カムイ「わ、わかりました」
749 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:17:51.24 ID:wwGvfTI70
重傷者「ぐっ、誰か、誰か……」

カムイ「大丈夫、私が傍にいますから安心してください」

重傷者「あ、ああ……はぁ……はぁ……」

カムイ「もう少しだけ待っていてください。すぐに良くなりますから」

ルーナ「フローラ、持ってきたわよ」

フローラ「ありがとう。そこに置いておいて、ブノワ水の準備は」

ブノワ「大丈夫だ…」

フローラ「まずは治癒魔術で処置を……はっ」シュオンッ

重傷者「はぁ……、はぁ……。う、ううっ」

フローラ「ゆっくりでいいです、口を開けてください。痛み止めです、これで少しは痛みが和らぐはずですよ」

重傷者「んっ、んっ、はぁ……はぁ……。ありがとう…」

フローラ「ゆっくり休んでくださいね」

重傷者「……すぅ……すぅ……」

カムイ「もう大丈夫でしょうか?」

フローラ「はい、どうにか落ち着いたみたいです」

カムイ「よかったです。しかし、物資があるからといってすぐに解決するわけではないのですね」
750 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:19:34.35 ID:wwGvfTI70
フローラ「はい、こうして大きな部屋を準備できたことで環境は整っていますが、やっている事は前までいた場所と変わりません。魔術や祈祷で治療をして痛みを和らげ、薬を処方する以外に出来ることはありませんから」

アクア「魔術や祈祷を用いて傷を癒したとしても、それで完治というわけにはいかないのね…」

フローラ「はい。でもよかったです、カムイ様が気づいてくれなかったら、辛い思いをさせてしまったでしょうから」

カムイ「そんな、私はただ気づいただけです。必要な処置を行ってくれたのはフローラさん達です。私はただ声を掛けていただけで、それ以外の事は……」

フローラ「それだけでも十分です。それに、あの方の不安をやわらげたのは薬でも治癒魔術でもありません。カムイ様が手を取って声を掛けたことなんですから」

カムイ「そうでしょうか?」」

ブノワ「ああ、カムイ様が声を掛けてから表情が柔らかくなっていた…」

ルーナ「それに辛い時、誰かがいてくれると安心できるでしょ。それと同じよ」

フローラ「そういうわけですから、そんなに謙遜しないでください」

カムイ「ありがとうございます、皆さん。それでは、残りの荷物を運びましょうか」

フローラ「はい。あと二往復くらいなので、よろしくお願いします、カムイ様、アクア様」

アクア「ええ」
751 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:24:26.97 ID:wwGvfTI70
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『城内・ヒノカの部屋』―

 コンコン

ミタマ「……ん? 誰ですか?」

カムイ「私です、今入っても大丈夫ですか?」

ミタマ「はい、大丈夫ですよ」

カムイ「失礼しますね」

アクア「ミタマ、お疲れさま。ここからは私とカムイに任せても大丈夫よ」

ミタマ「アクア様、ですが……」

カムイ「朝からずっと様子を見ていてくれたんですから、あとは私たちに任せてください。サクラさんとカミラ姉さんも見に来てくれます。だから心配いりませんよ」

ミタマ「わかりました。少しの間、お休みさせていただきますわ。何かあったら起こしに来てくださいまし」

カムイ「はい」

ミタマ「それでは、ヒノカ様の事よろしくお願いいたします」
 
 タタタタッ

アクア「ミタマにずっとまかせっきりにするわけにもいかないものね」

カムイ「はい。それに出来ればヒノカさんの傍にいたいんです」

アクア「カムイ……」
752 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:26:29.56 ID:wwGvfTI70
カムイ「それにしても、皆さん色々な事をしていましたね。エリーゼさん達は炊き出しの手伝い、レオンさんとエルフィさんは中央広場の設営、サクラさんとニュクスさんは薬剤の準備、フローラさん達は医療物資の輸送と看護。みんな、自分に出来ることを頑張っていました」

アクア「それはあなたも同じよ」

カムイ「そうでしょうか?」

アクア「ええ、出来る事を精一杯に頑張るという点では、他のみんなと何も変わらないでしょう?」

カムイ「それはそうかもしれませんが……」

アクア「大丈夫。思っているよりもあなたはきちんとしているわ。出来ることを探して、出来ることをしているでしょう?」

カムイ「誰かのために出来ること……。それがきちんと出来ているといいんですが、あんまり自身は無いですね」

アクア「私もがそうよ。自分が行ったことが誰かのためになっているなんて胸を張って言えないわ」

カムイ「だけど、アクアさんのしている事は役に立っていますよ」

アクア「え?」

カムイ「今日は私と一緒に来てくれましたし、こうして私の話を聞いて意見も述べてくれる。私はそれに助けられていますから」

アクア「それならカムイも私の役に立っているわ。こうして、一緒にいてくれるもの」

カムイ「それだけでいいんですか?」

アクア「それだけでいいわ。あなたが一緒にいてくれることが、私にはとてもうれしいことだもの」

カムイ「アクアさん……」
753 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:28:30.36 ID:wwGvfTI70
アクア「え、えっと、今の言葉に深い意味は無いわ。えっと、ルーナが言っていたことと同じよ。辛い時に誰かがいてくれると安心できるって。今はまだ戦いは終わっていないから、その……」

カムイ「ふふっ、わかっていますから。そんなに早口にならなくても大丈夫ですよ。ヒノカさん、早く目覚めてくれるといいですね」

アクア「そうね。でも大丈夫よ、あいつの力はもう無くて、ヒノカはこうして生きているんだから」

カムイ「……はい」

カムイ(アクアさんの言葉を聞いてとても安心している私がいる。それは未だに心に残るあの音が不安を煽り続けているから、それを打ち消す何かを得たいからなのかもしれません)

カムイ(ヒノカさんとの戦いで聞いた音。私の頭の中にこびりついたあの大きな音……。それは今も、まだ……)

カムイ「……っ」ギュウッ




(私の中を動き回っている……)



 休息時間3 終わり
754 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/08(水) 16:29:36.94 ID:wwGvfTI70
今日はこれだけ
755 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 19:29:35.63 ID:CeobMKZW0
◆◆◆◆◆◆
―???―

タッタッタッ

カムイ「ここは……一体?」

カムイ(確か、アクアさんと一緒にヒノカさんの様子を見に行ったはずなのですが……)

カムイ「……アクアさん、アクアさん?」

カムイ(アクアさんはどこへ……。いえ、そもそもここはどこなんでしょうか? 周りに気配が感じられませんし、一体……)

 ……パキッ

カムイ「ん?」

 パキンッ……
  ピシィ…… 

カムイ「なんでしょうか、この音は……」

 パキッ……ピキッ……

カムイ(だんだんと近づいている。一体どこか……)

 スッ

カムイ(気配を探れば、何処からしているのかわかるはずです。もしかしたらこの耳に響く音の正体がわかるかもしれません)
756 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 19:33:09.43 ID:CeobMKZW0
 ピシッ……

カムイ(右、違いますね。それでは左から近づいている?)

 ピキッ……
  パキンッ……

カムイ(違う、それではこっち? いえ、反対側ですか)?)スッ

 パキンッ
  ピキキッ……

カムイ(だめです、何も気配を感じません。なのに、どうしてこの音だけは聞こえてくるのですか)

 パキンッ……

 ジリッ

カムイ(わ、わかりません。でも、これに捕まってはいけない。そんな気がします)ダッ
 
 ピキンッ
  パキンッ

カムイ「っ!」

カムイ(離れているはずなのに、音が近づいてくる……。このままじゃ、追いつかれて――)

 ピキッ……キキッ……

カムイ「がっ!」

カムイ(体が……動かない……)

 パキッ……
  ピキキッ……
   バリンッ……
757 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 19:36:20.61 ID:CeobMKZW0
カムイ「がっ、ううっ……」

カムイ(胸が苦しい。音が響くたびに、体の中が壊れそうになる。この音は……)

 バリッ……バリッ……
  ザシュンッ!!!!!

カムイ「!」

 ピキンッ……ドクンッ……
  ドクンッ……パキンッ……

カムイ(な、なんですか今の音……それにこの増えた音……)

 ドクンッ……ドクンッ……

カムイ(これは心音? でも、どうしてこんなに鮮明に音が聞こえるのですか? 何も妨げるものがないみたいに……)

 スッ スッ
  ズリュッ……

カムイ(何もない? 心臓が手に感じられる。これは……私の胸に大きな穴が開いているということなんですか?)

 ピキッ……パキンッ……
  ガシャンッ…………ボロボロ……

カムイ(穴の縁から崩れて……。私が、崩れて――)

 ガシャンッ……ゴトンッ

  パラッ……パラッ……

 ドクンッ……ドクンッ……
758 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 19:39:13.67 ID:CeobMKZW0
カムイ「っ!!!!」ガバッ

カムイ「はぁ、はぁ……はぁ……。はぁ……」

カムイ(今のは一体……そうだ)スッ

 ペタペタッ

カムイ「胸に穴は……開いていません、よね……。体も崩れていませんし、心臓の音だって……」

 ドクンッ……ドクンッ……

カムイ(大丈夫、ちゃんと私の中から聞こえます)

カムイ「そうですよね。胸にあんな大きな穴が開いて、生きていられるなんてことがあるわけないですから。悪い夢ですね……」

カムイ(それより、ここはどこでしょうか? 夢から覚めたのならここは、私の知るどこかのはずです……)スッ

カムイ「……私の部屋みたいですね」

カムイ(確か私はヒノカさんのお部屋で様子を見ていたはずだったのですが、どうしてここに……。たしか、アクアさんと話をしていてそれから……)

カムイ「駄目です、思い出せません。でも、ここにいるということは誰かが運んでくれたということですよね……」

カムイ(やはりアクアさんでしょうか。どちらにしても、一度ヒノカさんの部屋に戻ってみましょう。今が朝なのかまだ夜なのかわかりませんけど、ここで待っていても何もできませんから……)スタッ

 シャン……
759 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 19:42:51.11 ID:CeobMKZW0
カムイ「っ!」

 シャン……
  シャンッ…

カムイ「夢から覚めたというのに、その音は消えてくれないんですね」

カムイ(これを聞き続けていると夢のように自分が崩れてしまう気がします。そんなことあるわけがないとはわかっていますけど、あのようなものを見てしまったあとだと、漠然と不安が大きくなってしまいます)

 ガサゴソ ガサゴソッ

カムイ「……行かないと」

カムイ(はやく、誰かがいる場所に……)

 パタンッ
760 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 19:46:21.09 ID:CeobMKZW0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋前の廊下』―

カムイ「ここまで誰ともすれ違いませんでしたね」

カムイ(となると、まだ陽は上がっていないのかもしれません。確か、ヒノカさんの部屋にいた時は夕方くらいだったはずですから、もうかなり時間が過ぎていることになりますね)

カムイ「うーん、だとしてもどうして私は部屋に戻っていたんでしょうか。誰か事情を知っている人がいればいいのですが……。あ、着きましたね」

カムイ(ですが、今が真夜中ならもう誰もいないかも。返事が無かったら、違う場所に行くとしましょう)

 コンコンッ

???『? こんなに早くから誰でしょうか?』

???『私が出てくるから。サクラ王女は待っていて』

サクラ『はい』

カムイ(サクラさんともう一人いるみたいですね。この話し方、カザハナさんではないようですけど……)

 タッタッタッ

 スーッ

???「はい。あら、誰かと思ったらカムイじゃない」

カムイ「その声、カミラ姉さんですか?」
761 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 19:50:32.38 ID:CeobMKZW0
カミラ「ええ、おはようカムイ。まだ朝日が出るには早い時間よ」

カムイ「は、はい。その目が覚めてしまって……」

カミラ「そう。たしかに昨日は早めに眠ったから、この時間に起きちゃうのも仕方ないかもしれないわね」

カムイ「というと、やっぱり私は……」

カミラ「概ね予想してる通りかしら、さぁ話の続きは中に入ってからにしましょう」

カムイ「はい、失礼しますね」タッ

 ピシャッ

サクラ「あ、カムイ姉様だったんですね。おはようございます……、いえ、こんばんはと言えばいいのでしょうか」

カムイ「どちらでも大丈夫ですよ」

サクラ「えっと、ではおはようございます、姉様。その、大丈夫ですか?」

カムイ「大丈夫、といいますと?」

サクラ「昨日、ここで疲れて眠ってしまわれていたんです。覚えていないんですか?」

カムイ「そ、そうだったんですか……」

カミラ「眠っちゃったあなたをアクアが部屋まで運んでくれたそうよ。あとでお礼をいわないとね?」

カムイ「はい。やっぱり、アクアさんが運んでくれたんですね。予想通りではありましたが、なんだか面目ない気持ちになります」

カムイ(小さなことでも迷惑を掛けてばかりですね、私は……)ズキンッ
762 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 19:52:00.76 ID:CeobMKZW0
カミラ「ふふっ、でも仕方無いわ。広場での炊き出し、医療物資の運搬を手伝っていたんだから、疲れてしまうのも仕方のないことよ」

カムイ「そんな……。私がしたことなんてそれほど大きなことじゃありませんよ。むしろ、皆さんに比べたらたかが知れています」

サクラ「そんなことありません。カムイ姉様は誰かのためになることを進んでやってくれているんですから」

カミラ「サクラ王女の言う通りね。カムイが誰かのために何かをしたことが重要なの。だから、そんなに卑屈にならないで」

カムイ「カミラ姉さん、サクラさん……。はい、ありがとうございます」

カミラ「ふふっ。あ、そろそろ頃合いね。サクラ王女、大丈夫かしら?」

サクラ「はい、お湯も丁度いいくらいになりましたから、大丈夫ですよ」

カムイ「えっと、お二人は何をされるんですか?」

カミラ「今からヒノカ王女の体を清めるところよ。女の子だもの、体は奇麗にしてあげないと」

カムイ「それじゃ、私も手伝いますよ」

カミラ「ありがとう。御湯に付けた布を絞ってサクラ王女に渡して頂戴」

カムイ「わかりました。サクラさん、必要になったら言ってくださいね」

サクラ「はい、カムイ姉様」
763 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 20:00:10.77 ID:CeobMKZW0
サクラ「えっと、まずはカミラさん、ヒノカ姉様の服をゆっくりと脱がしてあげてください」

カミラ「ええ。ヒノカ王女、失礼するわね」ガサゴソッ ガサゴソッ

 シュルルッ バサッ……

カミラ「上半身はこれで全部ね。サクラ王女」

サクラ「はい、それじゃ……」

カムイ「布ですね。んっ、はい、どうぞ」

サクラ「ありがとうございます。ヒノカ姉様、失礼しますね」フキフキッ

カムイ(サクラさん、流石は治療などをこなしてきただけあって斑がありませんね)

カミラ「……」スッ

サクラ「あ、ありがとうございます」

カミラ「気にしないでいいわ。さぁ、早く拭いてあげて。大丈夫、あなたの動きに合わせてヒノカ王女を支えてあげるから」

サクラ「はい、カミラさん。えいしょ、えいしょ」フキフキッ

カムイ(それに、なんだか二人の息がとても合っていて、それだけで互いに信頼しているのが伝わってきます)

カムイ「……なんだかいいですね」

サクラ「姉様?」

カミラ「何がいいのかしら?」

カムイ「いいえ、こちらの話なので気にしないでください」
764 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 20:04:45.69 ID:CeobMKZW0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

サクラ「これで拭き残しはないはずです」

カミラ「それじゃ、これでおしまいね。ふふっ、やっぱりこうしてみるとヒノカ王女も可愛いわ」

サクラ「はい。ヒノカ姉様も笑うととても可愛らしいんですよ。その、本人はあまり可愛くないと言っていたんですけど、そんなこと無いと思います」

カミラ「ゆっくり話せるようになったら、そこを一緒に指摘して恥ずかしがらせてあげましょう、サクラ王女」

サクラ「お、怒られそうで、少し怖いです」

カミラ「そんなことないわ。妹から褒められて怒るおねえちゃんなんてこの世にいないわ。カムイに褒められたら私はとっても嬉しいもの」

サクラ「え、えっと、それじゃカムイ姉様のことを私が褒めたら、カムイ姉様は嬉しいですか」

カムイ「もちろん、とってもうれしいですよ」

サクラ「そ、そうですか。なら、私勇気を出して言ってみようと思います」

カミラ「ふふっ、ヒノカ王女が真っ赤になる姿を見るのが楽しみね」

サクラ「はい。早く目を覚ましてくれると嬉しいです。いろいろと話したいこともあります、そうですよね、カムイ姉様」

カムイ「もちろんです。いい話ばかりというわけにはいきませんけど、ヒノカさんに伝えなくてはいけないことがたくさんありますから……」

カムイ(ユキムラさんのこと、リョウマさんのこと。それは伝えなくてはいけないことなのですから)ズキンッ
765 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 20:08:00.75 ID:CeobMKZW0
カムイ(ユキムラさんのこと、リョウマさんのこと、そして今の白夜の状況の事も。それらは私が伝えなくてはいけないことなのですから)ズキンッ

カミラ「……カムイ、今の状況はあなたの所為じゃないわ。リョウマ王子が亡くなったことも、そして白夜の現状も」

カムイ「カミラ姉さん……」

サクラ「カミラさんの言う通りです。確かにリョウマ兄様のことはとても残念です。だけど、悪いのはカムイ姉様じゃありません」

カムイ「サクラさん……」

カムイ(もしも奴がいなければリョウマさんは生きていたかもしれません。本当は助けたかったとしても、私がリョウマさんを打った事実は変わりません。ならそれを私はきちんと伝えないといけない、それが私にできる唯一の……)

カムイ「大丈夫です。私はその役目から逃げるつもりはありません。ヒノカさん、そしてタクミさんにも全てをお話しします。それがどんなに辛いことだとしても、私がしなくてはいけないことなのですから」

カミラ「カムイ……」

サクラ「カムイ姉様……」
766 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 20:10:05.36 ID:CeobMKZW0
カムイ「もう朝ですから、こういう話はいったん止めにしましょう。清めの作業も終わりましたし、御湯などを片づけてしまいましょうか。そろそろ朝になるということはミタマさんが起きてくる時間でしょうし」

カミラ「そうね。私は脱いだ服を片づけてくるわ」

サクラ「私、お湯を片づけてきますので、カムイ様は少しの間ヒノカ姉様をお願いします」

カムイ「わかりました。二人とも気を付けていって来てくださいね」

 スーッ パタンッ

カムイ「……」

 ……

カムイ「…あの音は聞こえなくなりましたか。どうしても、一人でいる時は意識してしまうものなのかもしれませんね」

カムイ(あの音がヒノカさんが目覚めないことと関係しているのは間違いないです。早く目覚めてほしい、無事であったことを知りたいと願っている。そして、その願望から逃れるために私は……)

(誰かと一緒にいることに安心しているのでしょう……)
767 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/15(水) 20:13:44.63 ID:CeobMKZW0
今日はここまで

 サクラとカミラはお姉さんと妹みたいな交友ではなく、普通の交友関係を築いてくれそうな気がするのです
768 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/17(金) 20:03:20.12 ID:9X+lP/tU0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『城門へと至る道』―

サクラ「カムイ姉様、ありがとうございます。いろいろと手伝っていただいて」

カムイ「いいえ、私も役に立ててよかったです。今までヒノカさんの様子を見ているだけで、あまり何かをしてあげるということが出来ていませんでしたから。カミラ姉さんとサクラさんのおかげです。ありがとうございます」

サクラ「なんだか、お互いにありがとうって言ってばかりですね」

カムイ「たしかにそうですね。ふふっ、でも悪いことでは無いと思います」

サクラ「はい、そう思います」

 タッタッタッ

サクラ「カムイ姉様はお城に戻らなくてもいいんですか?」

カムイ「はい、アクアさんもまだ眠っていると思いますから。それに、昨日は色々と迷惑を掛けてしまいましたから、ゆっくり休んでもらいたいんです」

サクラ「……ふふっ」

カムイ「え、なんですか?」

サクラ「いいえ、なんでもありません。ふふふっ」

カムイ「そ、そうですか? ん?」

 ガシャンッ ガシャンッ ゴトンッ!

サクラ「なんでしょうか、この音?」

カムイ「ちょっと確認しましょう」タタタッ
769 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/17(金) 20:11:55.62 ID:9X+lP/tU0
エルフィ「ふぅ、これで全部ね」

サクラ「あれ、エルフィさん?」

エルフィ「サクラ様? それにカムイ様も、おはようございます…」

カムイ「おはようございます、エルフィさん。もしかして今日も朝から作業ですか?」

エルフィ「はい、カムイ様も今日は早いですね…」

カムイ「ええ、なんというか不甲斐無い理由でなんですけどね…」

サクラ「あはは……」

エルフィ「そう……。これからどこかかへ向かうの?」

サクラ「今から医療天幕に行くところなんです。まだまだ薬の数が足りていませんからね。朝から作業に入ってできる限り多く作っておきたいんです」

カムイ「それで天幕までお送りしようかと思いまして。まだ明け方で暗いですし、万が一ということもありますからね」

エルフィ「それじゃ、わたしも付いて行っていい?」

サクラ「え、いいんですか? その作業の途中なんじゃ……」

エルフィ「これは下準備、瓦礫の撤去とかは暗い内からできる作業じゃないわ。ただ訓練としてその道具を事前に運んでおいただけなの…。だから今は暇よ…」

カムイ「わかりました、一緒にサクラさんを送りましょう」

エルフィ「ええ」
770 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/17(金) 20:16:54.62 ID:9X+lP/tU0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カムイ「……やっぱり朝だけあってとても静かですね」

エルフィ「みんなゆっくり休んでいるみたい」。昨日は色々と新しいことも始まって、それにお腹いっぱい食べられたはずだから」

サクラ「はい、ようやく十分な量の物資が届きましたからね」

カムイ「クーリアさんたちには本当に感謝しないといけませんね。早く到着してくれて本当に良かったです」

エルフィ「はい、それに早く復興してもらいたいから…」

サクラ「そうですね。復興が終われば、エルフィさんにいっぱい白夜の御菓子を紹介できます。えへへ、またエルフィさんと一緒胃にお饅頭とかも食べられますね」

 キュウウッ……

エルフィ「……サクラ様、今お菓子の話は駄目です。お腹が減っちゃいます…」

カムイ「ふふっ、エルフィさんは本当に食いしん坊なんですね」

エルフィ「サクラ様と一緒に食べた御饅頭、とってもおいしかったから…」

サクラ「そういってもらえるととっても嬉しいです。そういえば、カムイ姉様は御饅頭を食べたことはありますか?」

カムイ「私は……ないですね。前に白夜に来た時はそのような時間はありませんでしたから」

エルフィ「それは人生を損してる。あれは、一回は食べないと後悔するくらいおいしいから」
771 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/17(金) 20:20:02.24 ID:9X+lP/tU0
カムイ「エルフィさんにそう言わせるとは、さすがはサクラさんお勧めの逸品ですね」

サクラ「や、やめてください。なんだか恥ずかしいです。でも、カムイ姉様にも白夜のお菓子を知ってもらいたいです」

カムイ「ええ、いろいろと落ち着いたら食べてみることにします。でも、まずはエルフィさんにいっぱい和菓子を教えてあげてください」

サクラ「はい、もちろんです。まずは羊羹でしょうか、でもみたらし団子や三色団子とかもいいかもしれません」

エルフィ「どういうものかわからないけど、サクラ様が勧めてくれるものなら、きっとおいしいはずね」

サクラ「はい! 私のお気に入りの和菓子をいっぱい紹介してあげますね」

カムイ「むむ、サクラさんのお気に入りフルコースですか、中々のボリュームになりそうですね」

サクラ「そ、そんなこと、ないと思います……、はい、きっと、たぶん」

カムイ「なんだか自信がどんどん失われているようですけど……」

エルフィ「ふふっ、どれだけでてくるのか、今からでも楽しみよ。いっぱい食べたいから、限界まで教えてね?」

サクラ「わ、わかりました。その時が来たら私の全てを出し切っちゃいますから、覚悟してくださいね」

エルフィ「ええ」
772 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/17(金) 20:27:29.77 ID:9X+lP/tU0
エルフィ「ん、どうやら着いたみたいね」

カムイ「みたいですね。ここからは一人でも大丈夫ですか?」

サクラ「はい、ありがとうございます。カムイ姉様、エルフィさん」

エルフィ「気にしないで、あなたもわたしの守りたい人だから」

サクラ「えへへ、私もです。なにかあったら来てくださいね、すぐに治療しますから」

エルフィ「ええ」

カムイ「薬の調合、頑張ってくださいね、サクラさん」

サクラ「はい!」タタタタッ

エルフィ「それでは、わたしも作業場に向かうことにします」

カムイ「わかりました。お仕事がんばってくださいね」

エルフィ「はい。それじゃ」ガシャンッ ガシャンッ

カムイ「エルフィさんとサクラさんですか。こういう時でなかったら、一緒においしいものを食べて過ごしていたのかもしれませんね」

カムイ(そんな二人が日頃から見掛けられる日常がくるように、頑張らないといけません)
773 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/17(金) 20:30:04.48 ID:9X+lP/tU0
カムイ「さて、一度城に戻りましょうか。まだ、作業の準備も整っていないようですから……ん?」

 タタタタタッ

カムイ軍兵士A「それは本当か?」

カムイ軍兵士B「ああ、正門の部隊からの通達だ。賊などでなければいいのだが」

カムイ「何かあったのですか?」

カムイ軍兵士A「カムイ様、それが正門を監視する者たちから王都に近づく者たちがいると報告がありまして」

カムイ「タクミさんたちが到着したというわけでは無いのですか?」

カムイ軍兵士B「残念ながら。ともかく、相手が何者かわからない以上、計画するべきだろうと、今その応援に向かうところです」

カムイ「私もご一緒してもいいですか?」

カムイ軍兵士A「いいのですか?」

カムイ「はい、何かが起きてからでは遅いですから」

カムイ(もしも、奴の軍勢だとするならなんとしても阻止しなくては。再びあのようなことをさせる訳にはいきません!)

カムイ「今、正門の監視の指揮は誰が執っているのですか?」

カムイ軍兵士A「はい。今指揮を執っているのは――」

「ギュンター様です」
774 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/17(金) 20:32:16.26 ID:9X+lP/tU0
今日はここまで

 着物姿のエルフィとサクラが縁側に座って和菓子を食べている、そんな世界があってもいいと思う
775 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:25:09.90 ID:pPXDb3ND0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜王都『正門前』―

ギュンター「接近してきた者たちに、まだ動きはないということだな?」

カムイ軍兵士「はい。こちらの様子を伺っているようです」

カムイ軍兵士「いっそのこと、こちらから仕掛けますか? 規模はそれほど多くはありませんし、こちらから動けば恐れて逃げるかもしれません」

ギュンター「……ふむ」

 タタタタタッ

カムイ「ギュンターさん!」

ギュンター「む、カムイ様。どうしてこちらに?」

カムイ「賊が現れたかもしれないと聞いて、状況はどうなっていますか」

ギュンター「はい。確認できたのは二十人ほどです」

カムイ「もしかして奴らですか?」

ギュンター「もう姿を偽る必要がないというのであれば視認できることに不思議はありませんが、おそらく奴らでは無いでしょう。姿を消せるという点を捨て、離れた距離から迫ってくる理由がありませんので」

カムイ「たしかにそうですね……」
776 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:28:40.52 ID:pPXDb3ND0
カムイ「となると、その集団は……」

ギュンター「賊か、それに近い存在であることは間違いないかと…」

カムイ「そうですか……。ん?」

 パカラパカラッ

サイラス「ギュンター、確認してきたぞ。あれ、カムイ?」

カムイ「サイラスさんもこちらにいたんですね」

サイラス「ああ、ちょっとギュンターに頼まれて例の集団を確認してきたところだ」

ギュンター「それでどうだった?」

サイラス「すでに攻撃態勢を整えている。でも、まだ動かないみたいだ」

ギュンター「……そうか。どうにかして、争いを避けられればいいのだが」

サイラス「ああ、できるなら丸く収めたいし、無用な流血は避けないと……」

カムイ「でしたら、数人で近づきましょう。まずは彼らの要求を聞いて解決の糸口を探るのが一番かと」

サイラス「そうだな。まだ動かない以上何か事情があるのかもしれないし、大勢で動けばそのまま戦闘になってしまう可能性もある。よし、ここは俺が行こう」

カムイ「私も行きます。この問題を無視するわけにはいきませんから。ギュンターさん、よろしいですか?」

ギュンター「では、私もお供しましょう。残りは合図があるまでここで待機せよ。カムイ様、どうぞお乗りください」

カムイ「はい。それでは、行きましょう」

ギュンター「はい。サイラス、前を頼む」

サイラス「わかった。行くぞ!」

 パカラパカラッ
  パカラパカラッ!
777 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:30:29.61 ID:pPXDb3ND0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王都周辺―
 ザワザワ……

賊と思われる者C「い、一応準備は出来たが……」

賊と思われる者B「……ほ、本当に王都を攻めるのか? 小さな集落を攻めるのとはわけが違うんだぞ?」

賊と思われる者A「これ以外に何をしろって言うんだ? わずかでも生きられる可能性に賭けるしかないだろ!?」

賊と思われる者B「だ、だけどよ。王都を落とした暗夜軍を相手に、俺たちみたいなのが敵うわけ……」

賊と思われる者A「俺達が暗夜軍を相手にして騒ぎを起こすから、その隙に何人か入り込んで食料を奪ってくればいい。そうすれば、数日分くらいは――」

サイラス「そんなことをさせるわけにはいかないぞ」

賊と思われる者たち『!?』

ギュンター「……」チャキッ

カムイ「……」スタッ

賊と思われる者B「な、向こうから来やがった。ど、どうするんだよ?」

賊と思われる者A「お、落ち着け。相手はたった三人だ。こっちは二十人もいる、数で圧倒すれば……」

ギュンター「ふっ、そのような不格好な構えの二十人で、か。お前たちが相手にできるほど、こちらは甘くないぞ」チャキッ
778 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:32:40.18 ID:pPXDb3ND0
賊と思われる者A「う、うるせえ! やってみなきゃわからないだろ!」チャキッ

カムイ「剣を収めてください。私達はあなた方と争うためにここに来たわけではありません。ですから――」

賊と思われる者A「へっ、だったら食料を寄越せ。寄越せば何もしないで帰ってやるからよ」

ギュンター「それがお前たちの望みということか……」

賊と思われる者A「ああ、そうだ。渡さないって言うならここでおまえらを倒して、そこの女を人質に入口の奴らと交渉するだけだ。そいつカムイ王女だろ? 白夜の裏切りものだが、今はあの暗夜軍の一員だ。お前を盾にすれば、それなりに食料をくれるはずだ。そうすれば、みんな助かる……」キッ

カムイ「……」

カムイ(今食料を差し出せば、ここは丸く収まるでしょう。しかし、それで問題が解決するわけではありません。彼らにどんな事情があるにせよ、ここで渡してしまっては……)

サイラス「……」スタッ チャキンッ

カムイ「え、サイラスさん?」

サイラス「カムイ、ここは俺に任せてくれないか?」

カムイ「任せるって、一人では――」

ギュンター「カムイ様、ここはサイラスに任せてみましょう。奴なりに確信があってのことでしょうから」

カムイ「ギュンターさん……。わ、わかりました、あまり無茶はしないでくださいね」

サイラス「ああ」タッ
779 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:34:52.72 ID:pPXDb3ND0
サイラス「……」ザッ

賊と思われる者A「な、なんだ。話を聞いてなかったのか、痛い思いをしたくなかったら早く食料を――」

サイラス「残念だが、今のお前達に無条件で食料を与えることはできない」

賊と思われる者A「……そうか。なら、力づくでも!」チャキッ

サイラス「まぁ、待ってくれ。無条件って言っただろう、条件さえ受けてくれれば、食料を渡そう」

賊と思われる者A「条件?」

サイラス「ああ、俺と勝負しないか?」

賊と思われる者A「し、勝負だって!?」

サイラス「ああ、単純だ。勝負を受けてくれたら、食料を渡そう。お前達が望む量を絶対にな」

賊と思われる者A「な、なに出鱈目なことを――」

サイラス「出鱈目じゃないさ。きちんと渡すよ、俺の親友と目標の前で誓うんだ。反故になんてしない。ただし、一対一の勝負を受けてくれるならさ」

賊と思われる者A「……」

サイラス「さぁ、どうする?」

賊と思われる者A「先に、俺が勝ったら俺達全員に食料を渡すと約束しろ。それなら受けてやる」

サイラス「ああ、約束する。それで受けるのか、受けないのか。どっちだ?」チャキッ

賊と思われる者A「……受けてやる、その勝負!」
780 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:36:31.09 ID:pPXDb3ND0
サイラス「よし、成立だな」

賊と思われる者B「お、おい、大丈夫か。あれ暗夜騎士だぞ。あんなのに一対一で戦ったって……」

賊と思われる者A「こんな機会、今後絶対にないんだ。なら、ここで……」

賊と思われる者B「……だ、だけどよ……」チラッ

サイラス「……」

賊と思われる者A「大丈夫だ……一発で決めれば」

サイラス「……いつ来ても構わない。全力で来てくれ」スッ

賊と思われる者A(これに勝てば、食料が手に入る。略奪なんかしなくても食料が手に入る。だから、負けられない!!!」

賊と思われる者A「はあああああっ!!!!!」ダッ

サイラス「……」

賊と思われる者A「そこだ!!!!」ブンッ

サイラス「……」

賊と思われる者A(よし、これなら当たったはず! これでしばらくは嫌なことを忘れてみんなと笑いながら、ゆっくりと――)

サイラス「勝負が終わるまで、気は抜かない方がいいぞ」チャキッ サッ

賊と思われる者A「な、避けられ――」

サイラス「はああっ!」チャキッ ブンッ

 ガキィンッ!!!!! カランカランッ
781 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:38:57.86 ID:pPXDb3ND0
賊と思われる者A「がっ……ぐううっ」ドササッ

賊と思われる者B「だ、大丈夫か!!!」

賊と思われる者A「っ、くそ、ううっ……」

サイラス「この勝負は俺の勝ちだな」

賊と思われる者A「ううっ、ううううっ。くそ、またどこかを襲うしかないのかよ」

サイラス「……」

賊と思われる者A「こんな、こんな簡単で俺以外誰も傷つかない時にどうして、どうして負けちまうんだよ……」

サイラス「……それはお前が迷っていたからだ」

賊と思われる者A「っ!!!!」

サイラス「本当はこんなことしたくはないんだろう? お前だけじゃない、ここにいる全員がそう思っているみたいだからな。賊になったのも、そうならないと生きていけないからだった、ちがうか?」

賊と思われる者A「……そうだ。俺たちの村は最初の裏切り狩りでバラバラにされそうになっていた……。だから村を棄てて逃げて、今日までずっと隠れて生きてきたんだ」

サイラス「……」

賊と思われる者A「みんな、生きるために必死だった。生きるためにはなんだってしなくちゃいけなかった。小さな村を襲って食料を奪って……そんなことばかりしてきた。そうしなくちゃ生きていけなかったんだ! 俺たちだって、死にたくない……。まだ腹を空かせてる奴が森に隠れて住んでる、だから、だから……俺はお前との勝負に負けるわけにはいかなかったのに……ぐううっ……」

サイラス「……」

賊と思われる者A「他の皆は関係ない。これは俺が受けた勝負だ。殺すのは俺だけにしてくれ……。だから、他の奴らのことは、見逃してくれ……」

サイラス「……いや、見逃すわけにはいかない」

賊と思われる者A「っ! な、なんでだ、この勝負は俺だけが――」

サイラス「残念だが、見逃すことはできない。なぜなら……」

賊と思われる者A「っ!」

 ポスッ

サイラス「約束通り、食料を渡す約束を守らないといけないからな」
782 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:41:28.70 ID:pPXDb3ND0
賊と思われる者A「……え?」

ギュンター「……ふむ」

カムイ「ふふっ」

サイラス「ん? どうしたんだ、そんな信じられないって顔をして」

賊と思われる者A「だ、だって、俺はお前との勝負に負けて――」

サイラス「言ったじゃないか、俺との勝負するのが条件だって。勝ったらっていう条件を付けたのはお前であって、俺じゃない」

賊と思われる者A「え、あれ?」

サイラス「ははっ、カムイを人質にするという話の時、お前は自分のためじゃなくて誰かのために戦っているそんな気がした。直観的に悪い奴じゃないと思って勝負を挑んだんだが、思った通りでよかったよ」

賊と思われる者A「……だ、だけど俺達は……もう、何度も酷いことをしてきた。いくつか、村を襲ってそれで……、もうそんな俺たちが普通の生活になんて……」

サイラス「それはもう過ぎたことだ。それを悔やみ続けることはできるけど、それを直すことができるのは今しかない、俺の親友がそうしたようにお前たちも新しく歩むことはできる。諦めなければ、な」

賊と思われる者A「俺達は、まだやり直せるのか?」

サイラス「それはお前次第さ。こっちで話を付けておくから、準備ができたら王都に来てくれ。ちゃんと受け入れるから、安心してくれ」

賊と思われる者A「……ああ、ありがとう、本当に、ありがとう……」

サイラス「気にするな、困った時はお互い様だからな」

賊と思われる者A「ううっ、うううっ……」
783 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:43:59.18 ID:pPXDb3ND0
サイラス「すみません、戻りました」

カムイ「サイラスさん、すごいですね。見事に解決してしまいました」

サイラス「ありがとう、カムイ」

ギュンター「ふむ、お前の考えが相手に筒抜けであったらどうしようかと思ったが。うまくことは運んだようだな」

カムイ「ふふっ、でもギュンターさんが信用しているというのはすごいことですよ。ジョーカーさんやフローラさんでも、まだまだ厳しく見られている部分はありますからね」

サイラス「ああ、でもまだまだ精進しないとだめだ。これじゃ、いつまで経っても誓いを交わせないよ」

カムイ「誓い? 何の話ですか」

ギュンター「お気になさらず、これは私とサイラスの話ですので」

サイラス「そうだな。これはカムイにも言えないな」

カムイ「ええ、気になりますね」

カムイ(でも、二人の間にはなんだか師弟関係に似た何かがある気がします。それが、さっきサイラスさんにすべてを任せると判断した理由なのかもしれません。二人の誓いというのがどういうものかはわかりませんけど、きっととても重要な意味があるのでしょうね)

カムイ「うーん、そう考えるとますます気になってしまいますね」

サイラス「ははっ。だけど、本当にうまく行ってよかった。これ以上、無用な争いは避けたかったし、なにより彼らにも助かってほしかったから」

カムイ「はい、本当に良かったです」

ギュンター「正門部隊への通達などは私たちで行っておきますので、カムイ様は城へお戻りください」

カムイ「え、いいのですか?」

サイラス「あとは任せてくれていい、カムイがここまで頑張ってきた分、俺達がそれを支えてみせるからさ」

カムイ「サイラスさん、ギュンターさん……。ありがとうございます」

カムイ(では、一度城に戻りましょう。もう陽も上がったみたいですし、それに――)

(この時間ならアクさんも、もう起きているはずですから)
784 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/19(日) 22:58:37.51 ID:pPXDb3ND0
今日はここまで

 最後のところ、アクアのアが抜けていました。申し訳ない。
 
 なんだか、無駄に長くなりすぎて申し訳ありません。
 支援A同士のキャラクター支援についての話はあと二組で終わりにしようと思います。ちょっとすべてやるのは無理がありました。
 
 その二組を安価で決めたいと思います。参加してくれる方がいてくれれば幸いです。
 次回はルーナとアクアで決まっています。

◆◇◆◇◆◇
・スズカゼ×ベルカ
・アクア×ゼロ
・ラズワルド×ピエリ
・エリーゼ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・マークス×リンカ
・フェリシア×エルフィ
・ルーナ×オーディン
・ルーナ×カザハナ
・シャーロッテ×カミラ

 この中からでお願いいたします。

 一組目
>785

 二組目
>786

 色々と変な形になってしまっていますが、すみませんがよろしくお願いいたします。
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/20(月) 08:47:57.98 ID:QFj4ACyPO
ルーナ×カザハナ
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/20(月) 09:13:29.19 ID:TfOTo3zqO
ギュンター×ニュクス
787 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 21:47:27.65 ID:MS0CdGYm0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『アクアに宛てられた部屋前』―

カムイ「ふぅ、確かアクアさんの部屋はここでしたね」

カムイ(昨日は付き添ってもらったり、眠ってしまった私を運んでくれたりと、いろいろ迷惑を掛けてしまいましたからね。お礼を言わないと…)

カムイ「?」

 ガサゴソ ガサゴソ

カムイ(中から物音が……。もう起きているみたいですね。でも、アクアさん一人にしては音が複数するような…)

ルーナ『はぁ、本当に朝からアクア様はすごいわね。激しいって言うか、なんて言うか…』

アクア『なに、怖気づいたの?』

ルーナ『ち、違うわよ。その、なんだか圧倒されるっていうか、そんなに堂々とされると……』

アクア『ふふっ、前みたいにビチャビチャにしても構わないけど?』

ルーナ『したところで、それがそのままあたしに返って来るんでしょ?』

アクア『ええ、そのつもりよ。あなたがした分だけ、私も返す。ただ、それだけのことよ』

カムイ「……」

カムイ(一体何の話をしているんでしょうか? 激しい、ビチャビチャ? うーん、わかりません。もう少し様子を伺っておきましょう)

788 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 21:54:45.43 ID:MS0CdGYm0
ルーナ『ふ、ふん。そんな風に強気でいられるのも今の内よ。今回こそ、アクア様を蕩けさせてやるんだから。そういうわけで、後ろ失礼するわね』

アクア『ん、ちょっとくすぐったいわ』

ルーナ『そんなのすぐ気にならなくなるから安心しなさい。えっと、軽く手に塗って……。それじゃ、触るわよ』

アクア『え、ええ……』

 ヒタッ

アクア『んっ、どう?』

ルーナ『うそ、こんなに硬いなんて……。いや、もう少し揉んでみれば何とかなるはず。それ、それ』キュッ キュッ

アクア『ひゃっ! ルーナ、そんな、激しく……ひうっ……』

ルーナ『ようやく柔らかくなってきたじゃないの。ふふっ、これは当たりね! 一気に仕上げてあげるわ』ピチャピチャッ

アクア『んっ、冷たい……』

ルーナ『さぁ、アクア様の素直にさせてあげるわ。それ、それ! えいえいっ』ワシワシッ

アクア『ん、ふぅ、はぁ……』

カムイ「………」

カムイ(なんでしょうか。アクアさん、なんだか気持よさそうですね。そして、ルーナさんは優越感でしょうか、そういったものに浸っているかのようです)
789 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 21:58:10.47 ID:MS0CdGYm0
 アッ……

 フフッ、アタシノテクナラカタイノモコンナモノヨ

カムイ「……これは、何をしているのか確認しなくてはいけませんね」

カムイ(ちょっとだけ、戸を引いて中の気配を探りましょう……。色々と今後を左右する事態が起きているかもしれませんから)

 スッ

カムイ(……よし!)

 スーッ

ルーナ「どう?」

アクア「……すごいわ」

ルーナ「ふふんっ、当り前よ。今日までそれなりに努力してきたんだから、その成果がこれよ」

アクア「まさか、こんなになるなんて思わなかったわ」

ルーナ「この配合で間違いないわ。アクア様の超強力寝癖も簡単に解せたんだから、もうこれ以上の結果はないはず!」

アクア「ええ、あの頃に比べてここまでできるようになるなんて思わなかったわ。それに頭のマッサージも、すごく気持ちいい」

ルーナ「ふふん。今、部隊の中で頭皮マッサージが一番うまいのはあたしのはずよ。ほらほら〜、ここがいいんでしょ?」クリクリッ

アクア「んー」
790 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:00:39.66 ID:MS0CdGYm0
 ストンッ

カムイ「……」

ルーナ「あれ、カムイ様? こんな朝早くからどうしたの?」

カムイ「……まぁ、こんなことだろうとは思っていましたよ」

ルーナ「ん? 何のこと?」

カムイ「いいえ、なんでもありません。おはようございますルーナさん、アクアさん」

アクア「おはよう、カムイ」

カムイ「はい、おはようございます。それより、二人は一体何をしていたんですか?」

ルーナ「ああ、これね。アクア様って寝癖がすごいから、それを直してたの」

カムイ「なるほど、そういうことだったんですね。たしかに朝アクアさんに会うと時々なにやらおかしな気配を感じることはありましたが、あれは寝癖だったんですね」

アクア「おかしな気配って……」

ルーナ「そりゃそうでしょ、あの爆発みたいな寝癖を気配だけで探ったらおかしいって思うわ、髪の毛だけにね」

アクア「……」

カムイ「……」

ルーナ「……なんか言いなさいよ」
791 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:06:57.45 ID:MS0CdGYm0
アクア「それよりどうしたの? こんなに朝早くに私を訪ねてくるなんて…」

カムイ「昨日、アクアさんが私を部屋に運んでくれたと聞いたので、そのお礼を言いに来たんです」

アクア「そう、別に気にしなくても大丈夫よ。あのまま、寝かして置くのはまずいと思っただけだもの」

カムイ「いいえ、さすがにあそこで眠りっぱなしではミタマさんにも迷惑が掛かっていたはずですから。ありがとうございます、アクアさん」

アクア「どういたしまして。ところでルーナ、こんな感じでいいかしら?」ワシワシ

ルーナ「それくらいよ。でも、あたしそれほど寝癖酷いわけじゃないんだけど……」

アクア「同じようにするというのが私との約束だったはずよ?」

ルーナ「ううっ、それはそうだけど。なんだかすっごくビチャビチャで気持ち悪いわ。ちゃんと使う量調節してくれたわよね?」

アクア「ふふ、私に使った量と同じ量を使ったに決まっているでしょう?」

ルーナ「ちょっと、少しは調節しなさいよ。使いすぎはよくないってわからないわけ!?」

アクア「あなたの、買うだけ買って使わない性格を考えれば、消費に貢献しているとさえ思えてくるけど?」

ルーナ「ど、どうしてそれを知ってるのよ」

アクア「昨日、フローラから聞いたのよ。あなたの浪費癖はすごいって。おそらく買ったけど使っていないものがたんまりあるんじゃないかしら?」

ルーナ「た、たしかにそうかもしれないけど……、あ、お皿は結構使ったわよ!」
792 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:09:49.58 ID:MS0CdGYm0
アクア「なんで、お皿だけ? まぁ、あなたなりのストレス発散方法なのかもしれないから、口出しはしないけど」

ルーナ「もう口出ししてるでしょ!? ちょっと、カムイ様も笑って話を聞いてないで何か言ってよ」

カムイ「ごめんなさい。二人とも仲良く話されているので」

ルーナ「え、あたしとアクア様、仲良く見える?」

カムイ「はい、とても」

ルーナ「そ、そう。ま、まぁ、そう見えるのも仕方ないわよね。なんたってあたしが友達なんだから///」

アクア「……私達友達だったの?」

ルーナ「え……、え……」

アクア「冗談よ。冗談だからしょんぼりとしないでちょうだい。あなた、熱しやすくて冷めやすい典型例なんだから」

ルーナ「べ、べつにしょんぼりなんてしてないんだから!」グスッ

カムイ「アクアさん、ルーナさんを虐めちゃだめじゃないですか」

アクア「ふふっ、ときどき弄りたくなってしまうのよ。ルーナは素直でいい子だから」

ルーナ「ううっ、こんな一方的な展開、面白くないわ……」

アクア「そう怒らないで、あなたの素直だったり素直じゃなかったりするところは嫌いじゃないわ」

ルーナ「どっち!?」
793 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:13:47.45 ID:MS0CdGYm0
ルーナ「ううっ、何かアクア様をぎゃふんと言わせられることがあればいいのに……」

ルーナ(でも、アクア様の弱点になる様な話題……、そんな話題なんてあるわけ……)チラッ

カムイ「? なんですか、ルーナさん?」

ルーナ「そうそう、今日の朝なんだけどカムイ様のこと話してたわね」ニヤニヤ

カムイ「私のことですか?」

アクア「ちょ、ルーナ!?」

ルーナ「そういえば、起こしに来た時すぐに部屋を飛び出そうとするくらい、カムイ様のことを心配してたわ。昨日、カムイ様がいきなり眠っちゃったこと、かなり気にしてたみたいね」

カムイ「そうだったんですか」

ルーナ「ふふっ、だからちゃちゃっと済ませて欲しいて言われてさ。それにしても、こんな風に朝起こしに行ったり心配したり、まるで――ぎゃっ! ちょ、アクア様、なんでそんな力入れて――」

アクア「……」ガシガシッ

ルーナ「はうっ、ちょ、そこはやさしくマッサージするべきとこ――、いたたたっ!」

アクア「これが私流のマッサージよ」グリグリッ

ルーナ「指先に力入れてるだけじゃないの! それにあたし間違ったこと言ってるわけじゃ――」

アクア「……」ギュムギュム

ルーナ「あうううっ! ちょっとカムイ様、見てないであたしを助けなさいよ!」

カムイ「すみません、アクアさんを止められる自信はないので……」

ルーナ「少しは意地見せなさいよ! あたしの頭が変な形にされる前に一回くらい!」

カムイ「……そうですね。えっと、アクアさん」

アクア「なに?」

カムイ「もう、その辺にしてもいいと思いますよ? その、アクアさんにそんなに心配を掛けてしまったことがわかって、しっかりしないといけないって思えましたし」

アクア「そう。だけど、あなたの改めとルーナのしたことは関係がないわ。それとも、あなたもワシワシされたいの?」

カムイ「……ルーナさん、力及ばず申し訳ありません」

ルーナ「もう少し頑張りなさいよ!」
794 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:15:19.71 ID:MS0CdGYm0
ルーナ「はぁ、酷い目にあったわ……」

アクア「自業自得ね」

ルーナ「何が自業自得よ、先にからかってきたのはそっちなのに……。うう、髪がぼさぼさになっちゃったじゃない……」スッ スッ

カムイ「まぁ、ある種の愛情表現ということにしましょう。アクアさんがこんなに牙を剥く相手なんてそうそういませんから」

ルーナ「そんな愛情要らない……。カムイ様みたいに頭を撫で撫でしてくれる方がいいわ」

カムイ「えっと、それはこんな感じですか」ナデナデ

ルーナ「あ……そう、こういう感じね」

アクア「……ふん」

カムイ「アクアさん」

アクア「なに? 私は何も気にしてなんて――」

 ナデナデ

アクア「え……」

カムイ「ありがとうございます。昨日だけじゃなくて、今日も色々と私のことを考えてくれて」

アクア「と、当然よ。私とあなたは……」

カムイ「運命共同体、ですもんね」

アクア「そ、そういうことよ……。ふふっ////」

カムイ「ふふふっ」
795 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:18:32.19 ID:MS0CdGYm0
ルーナ「はぁ、さっさと素直になればいいのに」ボソッ

カムイ「?」

ルーナ「なんでも無いわ。それじゃ、あたしは一度部屋に戻るから、今日の内に色々とやらないといけないことたくさんあるでしょう?」

カムイ「そうですね。早ければ今夜にでもタクミさんたちが到着する可能性もありますからね。いろいろと準備に取り掛からないと」

ルーナ「わかったわ。あと、それ以上続けるとアクア様があれだから、タイミング見て止めてあげた方がいいわよ」

カムイ「?」

ルーナ「それじゃね」

 スーッ ピシャッ

カムイ「……」ナデナデ

アクア「……ん、カムイ……。もういいかしら?」

カムイ「あ、すみません。さわり心地がとてもよかったので。これもルーナさんの寝癖直しのおかげかもしれませんね」

アクア「そ、そう……。なんだか少し癪ね」

カムイ「?」
796 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:19:53.64 ID:MS0CdGYm0
アクア「それよりカムイ。その……大丈夫だった?」

カムイ「えっと、どういう意味ですか?」

アクア「その、昨日眠っている時、とても苦しそうにしていたから」

カムイ「え……」

アクア「何か悪い夢でも見ているんじゃないかと思って……すぐに収まっていたけどそれが気になっていたの」

カムイ(なんであなたは私が悪夢を見ていたと分かるのですか……。そんなことを言われてしまったら、私は……)

 パキ…ン…

カムイ(また、音が聞こえて……)

カムイ「そ、そんなことないですよ。たぶん疲れていただけです。今日はそんな夢は見ていませんし、そもそも目が見えない私では、それが悪夢かどうかなんてわかりませんから」

アクア「本当に?」

カムイ「はい、アクアさんは私のことを心配し過ぎです。たしかに、こうやって心配されていること自体はとてもうれしいことですから悪い気はしませんけど」

アクア「そ、そう。ならいいのだけど」

 ピキッ……
  パキッ……

カムイ(音が増えていく。なんで、さっきまで聞こえなかったはずなのに。どうして……)

カムイ「そ、それじゃ私は行きますね。アクアさんも準備ができたら来てください。朝食の準備を皆さんが整えてくれているはずですから」

アクア「ええ、着替えたら向かうわ。また後でね、カムイ」

 ピシッ……

カムイ「は、はい。それでは」タッタッタッ

アクア「……カムイ?」
797 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:21:36.52 ID:MS0CdGYm0
カムイ「はぁはぁ……」

 タタタタッ

カムイ「……っ…」グッ

 ピシッ……
  パキッ……

カムイ(苦しい。胸の奥から何かがせり上がってくるみたいです)

カムイ「くっ」

カムイ(あの悪夢のように……胸を突き破って何かが出てきそうになる。誰かと一緒にいれば落ち着くのではなかったのですか)

カムイ「はぁはぁ……」

 ……
  ……

カムイ「落ちついた……のでしょうか。もう、音は聞こえませんね……。はぁ、はぁ……」

カムイ(誰かと一緒にいて安心したから音が聞こえなくなったのだと思っていましたけど、そういうことでは無いということなんですか?)

カムイ「この、残り続ける音は――」

「私のなんだというのですか……」
798 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/22(水) 22:27:05.91 ID:MS0CdGYm0
今日はここまで

 アクアとルーナは仲良くなったらこんな感じに軽口を叩き合う感じになるのではないかと思う。
799 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:15:39.54 ID:dorHokeY0
◆◆◆◆◆◆
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王国・シラサギ城『城内・広間へ続く廊下』―

カムイ「あの音は、どうして聞こえてくるのでしょうか?」

カムイ(アクアさんに悪夢を見たのではないかと指摘されたのが原因でしょうか? それとも――)

カムイ「何を考えているんですか。アクアさんが原因だなんて、そんなことあるわけないじゃないですか」

カムイ(そもそも悪夢を見たのはアクアさんの所為じゃありません、私がみてしまっただけなんですから)

カムイ「そうです、アクアさんが原因なんてことはありません」

カムイ(でも、アクアさんから逃げるように、見ていないと嘘を吐いてしまったのは、変わらない事実ですし……)

カムイ「……はぁ、どうしてと理由を探しても、その場から逃げるためだったとしか言いようがないですね」

カムイ(情けない、先ほどの理由が何だったのかを考えても、結局それ以外に答えなんてないわけですから……)

カムイ「とりあえず、朝食をもらいに行かないと……。お腹が減っていては何もできませんし」
800 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:18:36.66 ID:dorHokeY0
エリーゼ「あ、カムイおねえちゃん」

カムイ「あ、エリーゼさん。おはようござ――」

エリーゼ「えーいっ!」バッ! ダキッ

カムイ「わ、どうしたんですか? いきなり抱きついて来て……」

エリーゼ「ん、大丈夫かなって思って……」

カムイ「え? 大丈夫とは一体…」

レオン「昨日、姉さんが倒れたって話を聞いたからだよ」

カムイ「レオンさん?」

レオン「おはよう、姉さん」

カムイ「おはようございます。えっと、昨日私が倒れたというのは……」

カムイ(もしかして、私がうなされていたことも皆さん知っているのですか?)

レオン「いや、噂が大きくなっているだけだと思う。昨日、アクアが姉さんを背負っていたって話を聞いて、姉さんが倒れたんじゃないかって思った人がいるらしくてさ」

カムイ「なるほど、そしてその中の一人が私に抱きついているエリーゼさんということですね?」

エリーゼ「だ、だって、昨日色々と手伝ってもらったから……。もしかしてって……」

カムイ「エリーゼさん……」

カムイ(よかった、私がうなされていたということは、アクアさん以外知らないんですね…)
801 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:20:32.19 ID:dorHokeY0
カムイ「ふふっ、大丈夫です。昨日は気を失ったというわけじゃありませんから。思ったよりも疲れてしまって、眠りこけてしまっただけなんですよ」

エリーゼ「ほ、ほんと? ばったーんって倒れちゃったわけじゃないの?」

カムイ「はい、ですから大丈夫です」

エリーゼ「……そっか、よかったー」

レオン「まったく、だから大丈夫だって言っただろう?」

エリーゼ「うー、だって……」

カムイ「ふふっ、心配させちゃってごめんなさい。でも、こうやって私のことを思ってくれたのはとっても嬉しいですよ、エリーゼさん」ナデナデ

エリーゼ「えへへー」

レオン「まあいいや、姉さんは大丈夫そうだから、僕は城下町に向かうとするよ」

カムイ「もしかして天幕の設営ですか?」

レオン「ああ、今日で終わらせないといけないからね。そろそろ現場に向かわないと」

カムイ「わかりました。そう言えば、エルフィさんが色々と準備をしていたようですけど」

レオン「エルフィか。暇だから準備をしておくって言っていたけど、こういうことだったのか。尚更早く行かないといけないね。それじゃ」タタタタッ
802 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:22:59.41 ID:dorHokeY0
エリーゼ「レオンおにいちゃん、がんばってきてねー。カムイおねえちゃんは朝ごはんまだだよね?」

カムイ「はい、まだですよ」

エリーゼ「向こうに準備してあるから一緒に食べよ。カミラおねえちゃんとマークスおにいちゃんは済ませちゃったし、サクラは部屋にいなかったんだ」

カムイ「ああ、サクラさんは朝から医療天幕に向かわれましたからね」

エリーゼ「そうなんだ。それじゃ、あたしとカムイおねえちゃんと、アクアおねえちゃんの三人で朝ごはんだね」

カムイ「え……」

エリーゼ「向こうに準備してあるから、先に二人で待って――」

カムイ「え、えっと、エリーゼさん」

エリーゼ「ん? どうしたの、カムイおねえちゃん」」

カムイ「あ、その、実は私もすぐに向かわなくてはいけないところがあってですね」

エリーゼ「え、そうなの?」

カムイ「はい。なので、そちらに向かいながら済ませるので、軽めの物を頂けたら……と」

エリーゼ「そっか、なら仕方ないね。わかったよ、軽いけどとってもおいしくて元気が出るもの持ってくるから!」タタタタッ

カムイ「はい、よろしくお願いします」

カムイ「……」

カムイ「……ごめんなさい」
803 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:25:22.15 ID:dorHokeY0
 タタタタッ

アクア「ごめんなさい、遅れてしまって……」

エリーゼ「あ、アクアおねえちゃん、おはよー」

アクア「あれ、エリーゼだけ?」

エリーゼ「うん、みんな朝からお手伝いとかあるって言ってたから……。皆忙しいのはわかるけど、ちょっとだけ寂しいな」

アクア「そう……。もしかしてカムイも?」

エリーゼ「うん」

アクア「そう……」

エリーゼ「それじゃ、一緒に食べちゃおう。今日はいっぱいお手伝いしないといけないからね」

アクア「ええ、いただきます」

エリーゼ「いただきまーす!」

アクア「……」

アクア(待っていてくれると思ったのだけど、何か手伝いがあるのなら仕方ないわね……)

 ギュッ

アクア(カムイ……)
804 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:29:29.59 ID:dorHokeY0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『城門前・街道』―

カムイ「……はぁ。本当に情けないですね。エリーゼさんにもあんな嘘を吐いてしまうなんて……」

カムイ(手伝う約束なんてないわけですから、この後どうするかも決まっていないのに)

カムイ「はぁ……。本当に何をやっているんでしょうか」

ギュンター「いかがされましたか、カムイ様」

カムイ「わっ! ギュ、ギュンターさん? どうしてここに?」

ギュンター「少しこちら側に用がありましてな。それを終えて戻ろうとしていた所、お姿が見えましたので」

カムイ「そ、そうですか……」

ギュンター「何かお悩みですかな?」

カムイ「え、どうしてそう思うんですか!?」

ギュンター「何かをお悩みのように溜息を吐かれておりましたので」

カムイ「そ、そんなことしていたでしょうか……」

ニュクス「そうね。エリーゼ王女に嘘を吐いてしまって、それに後悔して溜息を吐いていたなんて口に出すわけにはいかないものね」

カムイ「うわっ! ニュ、ニュクスさん!?」

ニュクス「おはよう、カムイ王女」
805 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:32:31.72 ID:dorHokeY0
カムイ「お、おはようございます……。ではなくて、私の独り言を聞いていたんですか?」

ニュクス「ええ、ギュンターと一緒にね」

カムイ「ギュンターさん……」

ギュンター「申し訳ありません」

カムイ「……いいえ、謝るのは私のほうですね。本当なら心の中に閉じ込めておくべき問題のはずですから。それを言葉に出してしまった私に責任ですから」

ニュクス「思ったより、その嘘はあなたにとっては重たいものになってしまっているみたいね。独り言として零れてしまうほどのようだし」

カムイ「……はは、面目ないです。今日は朝から自分でもよくわからないことばかりで、本当にどうしたらいいのか」

ニュクス「そう…。なら、気晴らしに手伝いでもする?」

カムイ「手伝いですか?」

ニュクス「ええ。もちろん手が空いているなら、だけど」

カムイ「手は……空いてます」

ニュクス「そう、それじゃこれを持ってくれる?」スッ

カムイ「えっと、これは?」

ニュクス「サクラ王女と一緒に作りあげた薬の一覧よ。これを中央広場の医療班に届けるのよ」

カムイ「ギュンターさん、もしかして今朝やってきた方たちの分ですか?」

ギュンター「はい。すでに数名が訪れましたが、病や怪我で動けないものがいるという話を受けましたので、現在サイラスたちが確認に向かっているところです」

ニュクス「サイラスたちの返事を待ってからでもいいけど、事前にこういうのを渡しておけば必要な物をすぐに準備できるでしょう?」

カムイ「なるほど。でも、これだけなら私が手伝わなくても……」

ニュクス「手に持ったのだから、諦めて付いてきなさい」

カムイ「は、はい」

 タッタッタッ
806 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:38:25.68 ID:dorHokeY0
ニュクス「それで、どうしてエリーゼ王女に嘘を吐いたのかしら?」

カムイ「やっぱりそれを聞くんですね」

ニュクス「ええ、あなたは気づかれないようにしているみたいだけど、かなり無茶をしているみたいだからね」

カムイ「そ、そんなことは……」

ギュンター「すみませんが、私もニュクスと同じ考えです。カムイ様」

カムイ「ギュンターさんまで……」

ニュクス「ふふっ、私達はあなたを心配しているのよ。実際怪我をしたわけじゃないにしても、こうして悩んでいるあなたの力になりたいと思うことが間違いだとは思わないし、そうありたいとも思っているわ」

カムイ「ニュクスさん……」

ギュンター「ふ、私には何も言わせてはくれないのだな」

カムイ「大丈夫ですよ、ギュンターさん。ギュンターさんが私のことを心配してくれているのはわかっていますから、でも、そう言われてしまったら話さないといけませんよね」

ニュクス「すべてとは言わないけど、話せる部分だけで構わないわ。それにカムイも出来れば話したいでしょう? 人間、少し話すだけでもだいぶ変わるものよ」

カムイ「ニュクスさん……」

ニュクス「それで、何があったの?」

カムイ「は、はい。実は――」
807 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:43:26.86 ID:dorHokeY0
ギュンター「ふむ、悪い夢を見たということですか」

ニュクス「それを思い出してしまうと胸が苦しくなるかもしれない。だから嘘を吐いてその場から逃げてきたと……」

カムイ「はい、その御恥ずかしい話なのですが」

ギュンター「昨日はとても疲れていたと聞きましたが。それが原因かもしれませんな」

ニュクス「あとは、ある種の呪いね。だけど、あなたからそういった類の気配や残り香は感じられないわ」

カムイ「やっぱり疲れていただけでしょうか……。昨日はアクアさんにお部屋までおぶってもらったので、誰かに何かをされたということはないと思いますし」

ニュクス「そう、悪夢が原因ならそれを思い出さないようにするしかない。けど、それが本当に理由かは、あやしいところね」

カムイ「え? どういうことですか?」

ニュクス「単純な話よ。今、カムイはこうして話をしてくれているけれど、悪夢が原因で胸が苦しくなるのなら、もう苦しくなっているはずだけど、私にはそう見えないわ」

カムイ「……あ」

ギュンター「ふむ、となると他の原因があると考えるべきかと……」

ニュクス「ええ、だけどカムイとしてはそれを話すことはできないという感じみたいね。無自覚なのか、自覚しているのかは置いておくとして」

カムイ「すみません」

ニュクス「謝らないで、話せることだけでいいって言ったでしょう?」

カムイ「……はい」
808 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:45:02.46 ID:dorHokeY0
ニュクス「それにしてもあなた、本当にアクアのことを信頼しているのね」

カムイ「え?」

ニュクス「だってそうでしょう? 呪いの可能性を示唆した私に、アクアがいたから大丈夫って言ったじゃない」

カムイ「そ、そうですね……」

ニュクス「ふふっ、長年付き添ってきた臣下からすると、こういった話を聞くと複雑な気持ちになるのかしら?」

ギュンター「ふっ、ニュクスはそういったことに目がないようだが、期待に添えるような答えはないぞ」

ニュクス「そう、残念ね。臣下としての仕事を取られて嫉妬するのかもと思ったのだけど」

ギュンター「そういう歳では無いのでな。むしろ、カムイ様が城塞を離れられるようになってからは、もっぱらニュクスの本を取る仕事のほうが多かった気もするが」

ニュクス「そ、それを言うのはどうかと思うわ」

ギュンター「ふっ、ならば届くように工夫すればいいだろう。そうすれば、私を頼る必要もなくなるだろうからな」

ニュクス「ちょっとカムイ、あなたの臣下、すこし失礼だと思うのだけど?」

カムイ「そうですよ、ギュンターさん。本を取るだけじゃなくて、その本を朗読してあげないと」

ギュンター「朗読ですか……」
809 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:48:30.17 ID:dorHokeY0
カムイ「はい。昔私に読み聞かせてくれたみたいに、ニュクスさんにもしてあげてください。ニュクスさん、ギュンターさんは朗読がとても上手なんですよ」

ニュクス「知っているわ。でも、あなた恋愛小説を朗読させるのはどうかと思うのだけど……」

カムイ「そうですか? ギュンターさんの声で聞かされる御話はすごく迫るものがありますし、とても面白いですよ」

ニュクス「確かに自分で朗読するのは嫌だけど、してもらう分には面白そうね。少し気になっていた本があったから、戦いが終わって城塞に戻ったら聞かせてもらおうかしら?」ニヤニヤッ

ギュンター「く、面白がりよって……」

ニュクス「ふふっ。あ、着いたみたいね。カムイ、ここまで運んでくれてありがとう」

カムイ「いいえ、ただ持って歩いていただけですから。それに話を聞いてもらえたから、助かったのは私の方です、ありがとうございます」

ギュンター「いいえ、御役に立てて光栄に思います、カムイ様」

ニュクス「あなたの抱えている問題が少しでも解決する役に立ててることを祈っているわ。それじゃね」タタタタッ

ギュンター「では、私も失礼いたします」タッタッタッ

カムイ「はい、頑張ってくださいね」

カムイ(ギュンターさんとニュクスさん、いろいろな交流があったんですね。それに、二人のおかげで少しは問題の本質がわかってきた気もします……)

カムイ「でも、そうなると、やっぱりこの胸の痛みや聞こえる音の原因は……」

カムイ(やっぱり、そう言うことなのでしょうか? 悪夢を見たことが原因ではないのなら、結局この音は――)

(……アクアさん)
810 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/05/29(水) 11:51:09.50 ID:dorHokeY0
今日はここまで

 ニュクスは面白がって際どいのを読ませようとするが、ギュンターの語りに途中から恥ずかしさを覚える気がする。
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/29(水) 19:16:03.47 ID:qBBSc1CDO

ギュンターのインキンでの迫真芝居を見るからに、力いれて朗読しそう
812 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:19:14.26 ID:Un8Y+Che0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜王都『城下町』―

カムイ「……悪夢が原因ではないということですよね」

カムイ(そうです。そもそもあの音は悪夢を見るよりも前、ヒノカさんとの戦いが終わった時から聞こえ始めたものですから。今日見た悪夢が原因のはずがありません)

カムイ「でも、だとしたらなんでアクアさんの言葉に反応するかのように、大きくなるのでしょうか?」スッ

 ドクンッ…… 
  ドクンッ……

カムイ(今は問題ありません、これはいつもどおりの私の音です)

カムイ「あの音はこれとまるで違います。体を内側から切り開かれるような、そんな恐怖を感じる音です」

カムイ(そもそも初めてこの音を聞いたのは……、ヒノカさんとの戦いの時でしたね)

カムイ「ヒノカさんが目覚めないという不安を、誰かと一緒にいることで抑え込んでいるというのなら、現状に少なからずの説明ができます」

カムイ(なら、どうしてアクアさんと一緒にいる時だけは……)

カムイ「っ、だめですね。こういうことばかりを考えていても、誰かのためになるわけではありませんから」

カムイ「朝ご飯、今の内に食べておかないと」

カムイ(……悩むことがなければエリーゼさん、アクアさんと一緒に食べられたんですよね)

カムイ「……ははっ、なんだか変な気持ちです。ごちそうさまでした」

カムイ(さて、座っているだけじゃいけません。なにか私にできることを探さないと……)
813 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:23:29.36 ID:Un8Y+Che0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カムイ軍兵士「ありがとうございます、カムイ様。おかげで物資の輸送は完了しました」

カムイ「お役に立てて何よりです。他に何か手伝えることはありますか?」

カムイ軍兵士「いいえ、これ以上は大丈夫ですよ。あとは私達にお任せください、もう昼を過ぎていますからね。長い時間、手伝っていただきましたから」

カムイ「もうそんなに時間が経っていたのですか……」

カムイ軍兵士「カムイ様は昼食を取りに行ってください。私達も、作業に一区切り付いたら昼食に入らせていただきますので」

カムイ「わかりました。それでは失礼しますね」

カムイ軍兵士「はい」

カムイ(ふぅ、簡単な作業ではありますけど、御役に立ててよかったです。さて、とりあえず昼食を済ませないと……)

カザハナ「あれ、カムイ様?」

カムイ「? その声、カザハナさんですか?」

カザハナ「そうだよ。こんなところでどうしたの?」

カムイ「物資を運ぶお手伝いをしていて、それが終わったところです。カザハナさんは?」

カザハナ「昨日と同じで炊き出しの手伝いをしてたの。それで、落ち着いたからご飯をもらいに行こうかなーって」

カムイ「そうなんですね。炊き出しの方、うまく行きましたか?」
814 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:25:59.35 ID:Un8Y+Che0
カザハナ「うん! 昨日はご飯食べられるか不安で割り込みとかもあったけど、今日はみんな落ち着いてから問題なかったよ」

カムイ「それはよかったです」

カザハナ「うんうん、これでみんな元気になってくれるとうれしいな。そうすれば白夜にも活気が戻っていくと思うし、これでレオン王子もようやく安心してくれるはずだよね」

カムイ「レオンさんですか?」

カザハナ「うん。まだ、あたしたちを白夜にちゃんと帰せてないって言ってる。おかしいよね、最初はすごい塩対応だったのに、今はなんかすごく心配してくれてさ」

カムイ「ふふっ、レオンさんも色々とありましたし、それを支えてくれたのはカザハナさん達でもありますから」

カザハナ「さ、支えたって、あたしはそんなことないよ。サクラのほうが頑張ってたし、あとツバキだって色々してくれた。それに比べてあたしは騙されて死にかけたりとか……そんなことしかしてないわけで……」

カムイ「そんなことありませんよ。カザハナさんもきちんとレオンさんを支えていました。レオンさんのお姉さんである私が言うのですから、間違いありません」

カザハナ「えへへ、そうかな……。でも、そうだと嬉しいかな……」

???「ふーん、つまり、カザハナはレオン様に気があるっていうことね」

カザハナ「ちょ、そういうんじゃないから、ってルーナ!?」

ルーナ「ふふん、あたしの気配に気づかないなんて、あんたもまだまだね」
815 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:29:43.14 ID:Un8Y+Che0
カムイ「ルーナさん、いつからそちらに」

ルーナ「見たことある背中が二つ並んでたから尾行させてもらったのよ。それと、話は聞かせてもらったわ」

カザハナ「話って何のことかなー」

ルーナ「ふふん、恍けちゃって。普通気にならない相手のことなんて口にしないわ。さっさと素直になりなさい」

カザハナ「素直って、あたしは素直に思ってることを言ってるだけだし」

ルーナ「ほんと?」

カザハナ「ほんとだってば! だって、もう白夜王国にいるのに、まだ無事に帰せたわけじゃないって言われたら少し困るでしょ?」

ルーナ「たしかにそうね」

カザハナ「でしょ?」

ルーナ「でも、そう言われてまんざらでもないって思ってるでしょ?」

カザハナ「え、えっと、それは……たしかに、その、えっと……」

カムイ「ルーナさん、これはそう思っているということでいいのではないでしょうか?」

カザハナ「カムイ様!?

カムイ「ふふっ、ごめんなさい。ルーナさんもそれくらいにしておきましょう。こういったことは個人の問題だと思いますし」

ルーナ「まぁ、そうね。カザハナは放っておいてもなんか丸く納まりそうだしね」

カザハナ「それ、どういう意味?」
816 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:34:21.72 ID:Un8Y+Che0
ルーナ「そのままの意味よ。あんたなんかよりやばいことになりそうなのがいるからね。あれは正直放っておいたらどうなるかわかったもんじゃないわ」

カザハナ「え、誰のこと? ちょっと気になるから教えてよ」

ルーナ「そうね、まぁ名前は伏せておくわ、名前を出しても本人は認めようとしないと思うし。そうね、簡単に言えば無自覚で歯痒いって感じね」

カザハナ「無自覚で歯痒い?」

ルーナ「そう。その子、相手を思ってるんだけど使命感が勝っているって感じがするのよ。こう守ることに特化してるって言うか、保護対象的な扱いをしててね。でも、ときどき相手のことを独り占めにしたいようなことするし。見てて、いつまで揺れてんの!?って言いたくなるそんな奴よ」

カムイ「へぇ、そのような人がいるんですね。その、思いを寄せられている方は気づいていないのですか?」

ルーナ「……」

カムイ「えっと、ルーナさん?」

ルーナ「そうね、気付いてないかもしれないわ。むしろ、そっちも無自覚って可能性が十分あるし」

カザハナ「え、そんな人間が二人もいるの?」

カムイ「それは思いを寄せている方が不憫ですね。寄せられている方も守られているなら、少なからず思うことがあるとは思うんですけど」

ルーナ「そうだといいけど、ただ負い目は感じてるのかもしれないわね」

カムイ「負い目ですか。確かに、私もアクアさんに助けられてばかりですから、その方の気持ちが少しだけわかる気もします」

カザハナ「あー、ほんとにいた……」

ルーナ「ね、いるもんでしょ?」

カムイ「?」
817 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:38:35.62 ID:Un8Y+Che0
ルーナ「ところで、カムイ様」

カムイ「はい、なんですか?」

ル−ナ「アクア様と、何かあった?」

カムイ「え!?」

ルーナ「はぁ、何かあったのね。今朝アクア様、今日もカムイ様の傍にいた方が良いかもしれないって言ってたの。なのに、カムイ様一人だけでいるし、そんなに動揺されたら何かあったと考えるのが自然でしょ」

カムイ「ルーナさんには隠しごとは通用しないようですね」

ルーナ「とりあえず話しなさいよ」

カムイ「はい、実は――」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カザハナ「悪い夢で聞いた変な音が聞こえる、ね」

ルーナ「それって、その悪夢を見たことが原因なんじゃないの?」

カムイ「いいえ、それがこの音は悪夢を見る前から聞いていましたし、こうやって悪夢の話をしても聞こえないからそれが原因では無いと思いまして」

カザハナ「うーん、だけど夢の内容がすごく怖いね。自分を内側から破られる夢なんてさ」

ルーナ「そうね、聞くだけでも不安になりそうな内容だわ。見るならもう少しロマンチックな夢にしなさいよ」

カムイ「す、すみません」
818 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:41:02.02 ID:Un8Y+Che0
ルーナ「それで、その悪い夢が原因じゃないのがわかってるってことは、本当の原因が何かは掴みかけてはいるわけ?」

カムイ「は、はい。その、推測の域ではありますが」

カザハナ「だったら、それをどうにかすればいいんじゃないかな?」

カムイ「そうなんですけど……。もしもそうだとするなら、苦しめられる理由がまったく分からないんです」

カザハナ「苦しめられる理由がわからない……ね」

ルーナ「何かしら理由はあるとは思うけど。それで、その推測している原因って言うのはなんなの?

カムイ「……そ、その」

ルーナ「いいから話しちゃいなさい。あたしとカムイ様の仲でしょ?」

カザハナ「そうだよ、あたしとだって毎朝素振りした仲なんだからさ」

カムイ「ルーナさん、カザハナさん……」

カムイ(そうですよね、ニュクスさんやギュンターさんと同じように私の事を気に掛けてくれている人がいるなら、頼ってもいいんですよね……。アクアさんに頼るわけにはいかない、内容ですから)

ルーナ「それで、その原因は何だと思ってるの?」

カムイ「はい。その……アクアさんじゃないかと思っているんです」

ルーナ「アクア様?」
819 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:43:43.67 ID:Un8Y+Che0
カムイ「はい。朝、アクアさんに悪夢を見たのではないかと心配されて……。そうしたら、胸が苦しくなって、その変な音も聞こえてきてしまったんです」

カザハナ「胸が苦しくなる……」

ルーナ「変な音も聞こえる」

カムイ「それで、夢のように自分が内側から破裂してしまうような気がして、咄嗟に悪い夢なんて見ていないと嘘を吐いてしまったんです。それで、アクアさんがその原因なのではないかと思っていて、でもその理由がまったく思い浮かばなくて……。すみません、なんかわからないことばかりで」

ルーナ「……いや、聞いたのはあたしたちだからいいんだけど」

カザハナ「これって、そういうことなのかな?」

カムイ「そういうこととは?」

カザハナ「えっと、カムイ様はアクア様のことが気になってるんじゃないかって、あたしは思ったけど」

カムイ「気になっている?」

カザハナ「そうそう」

ルーナ「まぁ、それが一番簡単な答えよね。それがどういう意味なのかはわからないけど」

カムイ「……」

ルーナ「あとは、アクア様は原因ではあるけど大本の原因ではないって可能性くらいね」

カムイ「何かの原因の所為で、アクアさんが直接の原因ではないということですか?」

ルーナ「そういうこと。でも、その原因がわかってないんだからアクア様との問題を解決するのが一番の近道かもしれないわね」
820 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:45:59.65 ID:Un8Y+Che0
カムイ「……私はどうすればいいのでしょうか」

カザハナ「うーん、カムイ様から動くしかないかも。あたしだって、レオン王子の屋敷で暮らすってなった時、かなり気まずかったから」

ルーナ「そうね、こればっかりはカムイ様次第ね。逃げるって言うのも手だけど、カムイ様はアクア様から逃げたいってわけじゃないんでしょ?」

カムイ「は、はい」

ルーナ「そう、なら答えは単純よ。今あたしたちに話したことをアクア様に話してみるといいわ。アクア様のほうが色々とカムイ様のことよく見てるんだし、きちんと考えた上で言葉を掛けてくれるはずだからさ」

カザハナ「うんうん、あたしもそれがいいと思うよ」

カムイ「きちんと話す、ですか……。中々に難しい課題ですね」

ルーナ「ここまでの戦いに比べたら朝飯前でしょ?」

カムイ「そうかもしれませんが。ここまでは逃げの一手でしたし、攻勢に出るとなると……」

ルーナ「はぁ、頼りないわね。もしかして、アクア様に嫌われるのが怖いの?」

カムイ「そ、それは……」

カムイ(そうなんでしょうか? 私はアクアさんに嫌われることを恐れているんでしょうか?)

ルーナ「アクア様ならそんなことでカムイ様を嫌ったりしないわ。あたしが言うんだから安心しなさい」

カザハナ「うーん、安心していいのかな?」

ルーナ「カザハナ、それどういう意味よ?」
821 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:50:18.46 ID:Un8Y+Che0
カムイ「……そうなるかもしれませんが、逃げるわけにはいきませんよね」

ルーナ「カムイ様?」

カムイ「御二人の言う通りだと思ったんです。戦いがあと少しで終わろうとしているときに問題を抱えたままではいられませんし、それにアクアさんに悪いことをしてしまったことは確かですからきちんと謝って、このことを相談してみます」

カザハナ「うん、解決するといいね」

カムイ「はい。まぁ、最初は嘘を吐いたことを怒られそうですけど」

カザハナ「うーん、アクア様って怒ると怖い気がするんだけど、実際どうなの?」

ルーナ「怖いわよ。怒ってるときは基本ニコニコ笑顔で近づいてきて、力でねじ伏せに来るから」

カザハナ「アクア様って美人だから、尚更怖さが際立ちそうだね。あれに着物でびしっと決めてたら、威厳が過ごそう」

ルーナ「確かに着物とか似合いそうね」

カムイ「着物ですか?」

ルーナ「そう。白夜といえば和服で、和服といえば着物よ。あたしも一つお気に入り持ってるわ」

カザハナ「あたしも着たことはあるけど、基本的には見てる方が楽しいかな。花柄の着物とかどれだけ見ても飽きないんだ」

ルーナ「まぁ、戦いが終わって落ち着いたらカザハナにも何か着てもらうけどね。あたしのお気に入りだけ見てそっちは見せないなんてフェアじゃないわよ」

カザハナ「わ、わかってるよ」
822 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:52:33.80 ID:Un8Y+Che0
カムイ「ふふっ、着物姿のカザハナさんとルーナさん、とても奇麗なんでしょうね。そういう時に目が見えないと、とても損しているって思えてきます」

ルーナ「ふふん、残念ね。あたしのお気に入りが見られないなんて」

カムイ「はい、残念です。それにアクアさんの着物姿もとてもきれいなんでしょうね」

カムイ(アクアさんの髪は水色らしいですから、それに合わせて青い物になるのでしょうか。それとも白でしょうか? うーん、何時かそういう機会があったとしても、見られないのはとても残念ですね)

ルーナ「……」

カザハナ「……」

カムイ「? どうしたんですか?」

カザハナ「なんでもないよ」ニヤニヤ

ルーナ「そうそう、なんでも無いわ。ともかく、そういうわけだからアクア様と一度話を付けてきなさいよ」

カムイ「はい、そうさせてもらいます。すみません、私の話に付き合ってもらって」

ルーナ「いい知らせを期待してる。さてと、早くご飯もらって作業に戻らないと」

カザハナ「あ、そうだった。カムイ様も早くしよ」

カムイ「はい」

カムイ(もしも、アクアさんが原因であるならそれを私は理解しないといけません。こんなにもアクアさんに迷惑をかけているのですから)

カムイ「……少し怖いですね」

カムイ(今、私は何かを怖がっている。それがなんなのかはわからないけれど、それを理解しないでいることはきっと良くないことだと思います。だってそれを解き明かさない限り――)

(あの音は、私を苦しめ続けるものであるはずだから……)
823 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/02(日) 17:53:46.73 ID:Un8Y+Che0
今日はここまで

 アクアに着物と考えると、綺麗より強そうというイメージが先行してしまう
824 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 19:44:11.38 ID:1bXVgG5w0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋へと続く廊下』―

カムイ「ふぅ、どうにか作業を終えることができました。暗くなってから設営作業をするわけにはいきませんからね。それに物資の移送や配給場の設置も完了しましたから、私たちが出発した後も大丈夫でしょう」

カムイ(明日からはテンジン砦へと戻る準備も始まるでしょうから、今日の内にアクアさんに一度相談しておかないと……)

カムイ「はぁ、こういう時もアクアさんに頼ってしまうなんて……」

カムイ(いいえ、アクアさんだけじゃありません。皆さんにも迷惑をかけてばかりでしたから、本当に不甲斐ないです)

カムイ「はぁ。とりあえず、アクアさんを探しに行く前にヒノカさんの様子を見にいかないと。今日はずっとミタマさんに任せっぱなしでしたから」

カムイ(あまり休まれていないようでしたら、交代して休憩してもらうようにしましょう。夜になって私に出来ることは、ヒノカさんを見守ることくらいしかありませんからね)

 コンコン

カムイ「ミタマさん、いらっしゃいますか?」

 ………

カムイ「返事がありません。おかしいですね、中に誰かがいる気配はするのですが……」

カムイ(おそらくミタマさんだとは思うのですけど、もしかして眠っているのでしょうか?)
825 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 19:51:40.86 ID:1bXVgG5w0
カムイ「失礼します。ミタマさん、いらっしゃいますか?」

???「すぅ……すぅ……」

カムイ(眠っているみたいですね。ん、でもこの感じはミタマさんじゃない?)

アクア「すぅ……んっ……んんっ……すぅ……すぅ……」

カムイ「アクアさん?」

カムイ(先にヒノカさんの様子を見に来ていたんですね。よかった、すれ違うことが無くて。それに……)

カムイ「あの音は聞こえてきませんね。やっぱり、私の思い違いだったのでしょうか?」

カムイ(もしかしたら、離れていることでそうなっていないだけかもしれません。ここは思い切って……)

カムイ「失礼しますね」

 スッ ポスッ

アクア「ん……」

カムイ「……」スッ

 ドクンッ……
  ドクンッ……

カムイ(大丈夫、あの音は聞こえません。これだけ接近しているのに何も異常は置きませんし、不安も恐怖も感じません)

カムイ「むしろ、安心していると言えばいいんでしょうか……」
826 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 19:56:47.07 ID:1bXVgG5w0
カムイ(今朝と全く違っていて、困惑してしまいますね。あの音と感じた恐怖、それが起きた理由が何なのかまったくわからなくなってきます……)

カムイ「はぁ、自分のことだというのに何もわからないとは。まるでルーナさんが言っていた無自覚な人みたいですね」

カムイ(全く内容は異なっているとは思いますけど、なんというか共感したくなる部分は多くありましたからね)

カムイ「でも、私はただ迷惑を掛けているだけですから、ルーナさんの言っていた方々とは天と地くらいに差がありますね」

カムイ(そう、アクアさんに迷惑を掛けたくないと思っていても、こうして頼ってしまっている。情けないですね)

カムイ「私にもう少し受け入れる力があれば、あなたを支えられるかもしれないのに……」スッ

 ナデナデ

アクア「ん……、んんっ……」ポスッ

カムイ(向かい合うことを決めたのに、何と向かい合えばいいのかわからない。そんなことを言う私に、あなたは幻滅してしまうでしょうか?)

カムイ「……アクアさん」
827 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 20:02:26.90 ID:1bXVgG5w0
アクア「ん……あ、れ?」

カムイ「あ……」

アクア「カムイ?」

カムイ「そうですよ。すみません、起こしてしまいましたか?」

アクア「……私、眠ってしまったのね」

カムイ「どうします、もう少し眠っていても大丈夫ですけど」

アクア「ううん、もう大丈夫よ。ありがとう起こしてくれて」

カムイ「どういたしまして。ところで、ミタマさんはどちらへ」?」

アクア「休憩に行っているところよ。とても眠そうにしていたから、お昼寝をしてきなさいって交代したの。それでしばらくしたらウトウトしてしまって……、ごめんなさい、ヒノカのことを任されたのに眠ってしまって」

カムイ「いいえ、そんなことはありませんよ。アクアさんが来てくれたおかげでミタマさんは休憩に出られましたし、本当なら私がアクアさんよりも早くここを訪れて、交代するべきでしたから」

アクア「そう、あなたらしいわね」

カムイ「ですから、もう一度ミタマさんが来てくれるまでは一緒にいます。そうしないと。アクアさんがまた眠ってしまうかもしれませんから」

アクア「ふふっ。昨日とは立場が逆になっている気がするけど……」

カムイ「いいえ、何も変わっていません。私は何もわかっていないだけですから……」

アクア「カムイ?」
828 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 20:06:02.26 ID:1bXVgG5w0
カムイ「アクアさん、今朝のことを覚えていますか?」

アクア「今朝の事?」

カムイ「はい、アクアさんが私を心配してくれたことです。あの時、悪い夢を見たんじゃないかと、アクアさんは私に声を掛けてくれたと思います」

アクア「ええ、確かに聞いたわ。でも、あなたは大丈夫って……」

カムイ「ごめんなさい、実は……嘘を吐いたんです」

アクア「嘘? じゃあ、本当は……」

カムイ「悪い夢を見たんです。とても怖い夢で、今日はそれにうなされて目を覚ましました」

アクア「そう。だったらなんで、話をしてくれなかったの?」

カムイ「本当はアクアさんに心配されたときに話してしまおうと思っていたんです。だけど、その時に音が聞こえ始めてしまって……」

アクア「音?」

カムイ「夢の中で聞いた音です。その音自体は前に聞いたことはあります。だけど夢を見た所為でその音がとても怖くて、夢自分の体が引きちぎられてしまいそうな気がして、すぐにでも逃げないといけないと思って……」

アクア「それで私の問い掛けに、夢は見ていないと答えたわけね」

カムイ「はい……」
829 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 20:24:59.36 ID:1bXVgG5w0
カムイ「幻滅しましたよね。向き合うと決めたのに、それが何かわからないからと一度逃げ出してしまったのですから」

アクア「そうね、逃げたままなら幻滅していたかもしれないわ」

カムイ「……」

アクア「だけど、今はこうして向き合っているのでしょう? こうして私に嘘を吐いたことを伝えに来たことは、それが何かを知って向かい合おうとしてるからだと私は思うわ。あなたは向かい合おうとしているのだから、幻滅したりしない。だから、顔を上げてカムイ」

カムイ「アクアさん、ごめんなさい、私は……」

アクア「謝るのはもういいわ。とりあえず、あなたの悩んでいることを私に聞かせてちょうだい」

カムイ「は、はい……。その――」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アクア「そう、夢について私が訪ねた時に音が聞こえてしまったと言う事ね?」

カムイ「はい。ですが、皆さんに色々と意見を貰って悪夢の話が原因ではないということはわかって、その……」

アクア「私が原因かもしれないと思った、というわけね……」

カムイ「は、はい。でも、それもなさそうです、だって、こうして傍にいても話をしても音は聞こえませんし、不安になったりはしませんから。むしろ、安心できるというか……」
830 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 20:35:31.98 ID:1bXVgG5w0
アクア「そ、そう。と、ともかく原因じゃないのなら、もう私の事で悩む必要は無いわ。あと、エリーゼには謝っておきなさい。私と一緒にならないようにあの子にも嘘を吐いたんでしょう?」

カムイ「はい、本当に申し訳ないことをしました……」

アクア「それはエリーゼに言ってあげなさい。それと、明日はあの子と一緒に朝ご飯を取ってあげて」

カムイ「わかりました、アクアさん」

アクア「いい返事ね。それじゃ、本題に入りましょう。まず確認だけど、今は特に異常はないのね?」

カムイ「はい、アクアさんと一緒にいても、悪夢の事を話しても何かが起きる気配はありません」

アクア「そう、ここまでに立てた仮説はすべて否定されているのね……。その音自体は前に聞いたことがあると言っていたけど、それは何処で聞いたの?」

カムイ「音を初めて聞いたのは、先のヒノカさんとの戦いだったと思います」

アクア「ヒノカとの戦いで?」

カムイ「はい」

アクア「となると、その時あなただけに見えた何かがあったのかもしれない」

カムイ「私だけに見えた?」

アクア「ええ、見えたというよりは感じた事というべきかもしれないわ」

カムイ「あの時に感じた事ですか……」
831 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 20:39:21.75 ID:1bXVgG5w0
カムイ(ヒノカさんの言葉、優しくて暖かく、そして気高い思いでしょうか。だとすると、これらが原因だという事なのでしょうか? とてもそうは思えません……)

カムイ「……」

アクア「どうかしら?」

カムイ「感じたことは確かにありますが、それがこの症状と関係があるのかと言われると、正直自信がありません」

アクア「そう」

カムイ「すみません」

アクア「いいえ、あなたが謝る事ではないわ。となると、やっぱりヒノカが目覚めていないことに関係があるのかもしれない」

カムイ「やはり、そうなのでしょうか?」

アクア「ええ、ヒノカは助かったけど、まだ目を覚ましていないわ。そのことであなたは負い目を感じているのかもしれない。本当ならこうやって眠り続けていることもなかったはずという思いが、今の異常に通じているのかもしれないわ」

カムイ「それが、私の中で響き続ける音の正体……」

アクア「これは飽く迄も推測よ。実際は違うことが原因かもしれないわ」

カムイ「……いいえ、やっぱりそうなのかもしれません。ヒノカさんが目覚めない今の状況に、負い目を感じていることは確かなのですから……」

カムイ(そして、そういった負い目から逃れるために、誰かの傍にいることを望んでいたのかもしれません…)

アクア「大丈夫、あなたはきちんと向かい合うことを選んでいる。逃げてなんていないわ」

カムイ「……ありがとうございます」
832 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 20:47:59.51 ID:1bXVgG5w0
アクア「だけど、音のする原因がヒノカに関することとなると、すぐに解決とはいかないわ」

カムイ「そうですね。それに数日後にはテンジン砦へと戻らなくてはいけませんから」

アクア「ええ、それまでに目を覚ましてくれればいいのだけど……」

カムイ「はい」

カムイ(やはり、私は結果を求めているということなのでしょうか? それがどんな形であってもちゃんとした結果を求めているから、あんな音に悩まされてしまう……)

カムイ「?」

カムイ(では、どうしてアクアさんに心配された時音が聞こえたのでしょうか? あの時、私はヒノカさんのことなんて考えてもいなかったのに……)

カムイ「……」

アクア「カムイ?」

カムイ「え?」

アクア「大丈夫?」

カムイ「あ、すみません。その……色々と考えていただけです、大丈夫ですよ」

アクア「そう」

カムイ「それに、今はアクアさんがいるから大丈夫そうです。今日も私と一緒に行動しようか考えてくれていたんですよね?」

アクア「な、何を言って……」

カムイ「ふふっ、ルーナさんから聞いたんです。アクアさんがそういうことを考えていたって」

アクア「あの子、口が軽すぎるわね。ちょっと、固く結んだ方がいいかもしれないわ」

カムイ「でも、その話を聞いてとてもうれしかったです。こんなに親身になってくれて、ありがとうございます、アクアさん」

アクア「当り前よ。だって私とあなたは……」

カムイ「運命共同体、ですよね?」

アクア「ふふっ、ヒノカが目を覚ましてくれるといいわね」

カムイ「はい」

カムイ(そうですね。ヒノカさんが目覚めてくれれば、きっとこの音の謎も分かるはずです)

カムイ「きっと……」
833 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 20:55:32.76 ID:1bXVgG5w0
 ザワザワ

カムイ「ん、なんだか外が騒がしいようですけど、何かあったんでしょうか?」

アクア「そうみたいね。カムイはヒノカを見ていて、私が様子を見てくるわ」

カムイ「はい、わかりました」

アクア「大きな問題でなければいいのだけど」タタタタッ

カムイ「……」

カムイ(何があったのかは気になりますが、今はヒノカさんの傍にいましょう)

ヒノカ「……」

カムイ「もしも、あなたが目覚めてくれたら、この悩みは全て解決するのでしょうか……」

カムイ(でも、私の求めた答えがヒノカさんの目覚めだとすると……)

カムイ「悩みは、ほぼ解決していると言ってもいいんですよね……」

カムイ(そうです、だって、私は最初にその可能性に気づいていたのですから、こんなに悩むこともなかったはずですし)

カムイ「どんなに望んでも、どんなに急いでも、待つしかないことはわかっていたはずなのに。どうして、私はその結果を求め続けているのでしょうか?」

カムイ(まったく、本当に駄目ですね、私は……)

カムイ「そんな、もう分かり切っていることに、どうして固執しているんでしょうか……」

カムイ(……あれ?)

 パキッ……
834 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 21:00:09.13 ID:1bXVgG5w0
カムイ(今、私はなんて……)

カムイ「分かり切っていることって……」

 ピシィッ……

カムイ「私はなにを分かっているというんですか?」

カムイ(私が怯えるこの音の原因はヒノカさんの安否でしょう?)

カムイ「そうです、アクアさんが言っていたじゃないですか)

カムイ(待っていればわかること、それがどんなに悲惨な結果であったとしても、いずれわかることじゃないですか……)

 パキキッ…

カムイ「待ってください、なんでそんなことを考えているんですか? おかしいです。だって、だって私はヒノカさんの無事を祈っているんです、そんな最悪な結果を想像する理由は無いはずです……」

カムイ(ヒノカさんが無事であることを願っている。なのに、そんな悪い可能性を思い浮かべることができるのですか……)

カムイ「これでは、まるで……」

カムイ(私は、もう……)

 ガサッ

カムイ「!」

カムイ(なんですか、今の音? アクアさんが戻られたのでしょうか?)

カムイ「あ、アクアさん?」

カムイ(いえ、戸のほうに気配はありませんし、閉じられたままです。この部屋には私だけしか……)

???「ん……んん……」

カムイ(いや……。私以外にもう一人……ここにいます……)

 ピシッ……
  ピシンッ……

カムイ(音が……、不安の音が私の中で膨れ上がっていく。今、私の求めていた答えが手に入ろうとしているのに? ヒノカさんの無事を確認することだって……)

カムイ「ちがう、これは答えなんかじゃない。だって私は……」

 ガシャンッ……

カムイ(私は……それを……)

 ドクンッ……
  ドクンッ……

カムイ(その答えを――)



 バキンッ!‼‼‼‼




(もう知っているのだから……)

835 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/10(月) 21:01:48.35 ID:1bXVgG5w0
今日はここまで

 次回で休息時間は終わりになります。長くなりすぎて申し訳ないです
836 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:17:53.51 ID:06CIArgx0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『城下町へと続く正門』―

カムイ軍兵士A「それは本当なのか?」

カムイ軍兵士B「ああ、今到着したらしい。予定より一日は早いんじゃないか?」

アクア「誰が来たの?」

カムイ軍兵士A「あ、アクア様。明日到着と思われておりました白夜の第二王子、タクミ王子が今到着されたのです」

アクア「タクミが?」

カムイ軍兵士B「はい、すでにレオン様が対応されているそうです。いずれはシラサギ城にやってくるかと」

アクア「そう……」

アクア(タクミが到着したのね。早ければ今日の夜とは言っていたけれど、本当に到着するなんて…)

アクア「少しは空気を読んでほしかったわ……」ボソッ

カムイ軍兵士B「は?」

アクア「いいえ、こっちの話よ。ありがとう」タタタタッ
837 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:22:03.00 ID:06CIArgx0
アクア「このタイミングでやってくるなんて」

アクア(正直、今のカムイがタクミと話をするのは難しいわ。今は落ち着いているけれど、その幻聴症状がいつ出るかわからないもの)

アクア「カムイの問題は解決していない、どうすれば……」

???「カムイ様の問題は、解決に至ってないってこと?」

アクア「ええ、原因だと思われることは突き止めているのだけど……ん?」

ルーナ「ふふん」

アクア「ルーナ……」

ルーナ「朝以来ね、アクア様」

アクア「え、えっと……今の話は――」

ルーナ「大丈夫、あたしもカムイ様からその問題は聞いてる、変な音が聞こえるとかなんとか。それに、アクア様に話を聞くように言ったのはあたしなんだから」

アクア「そう、あなたの差し金だったのね」

ルーナ「そういうこと。それで実際のところどうなの? 解決してないけど原因はわかったんでしょ? あたしにも教えなさいよ」

アクア「わかったわ。えっと――」
838 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:24:37.28 ID:06CIArgx0
ルーナ「ヒノカ様が目覚めないことが原因ねぇ」

アクア「ええ、色々と考えてみて、ね。でも、これがその本当の原因かはわからないわ」

ルーナ「で、そんな中、タクミ王子が到着しちゃったわけね。おそらく、カムイ様に話し合いの申し出があるでしょ」

アクア「本当はカムイにゆっくりと休んでもらいたかったの。今は落ち着いているけれど、一時的なもののはずだから。タクミたちが到着したことを黙っておくこともできるけど……」

ルーナ「やめといたほうがいいわ。こんな騒ぎになってるんだからすぐ耳に入るに決まってる。ここは話し合いを明日にしてくれるのを期待するしかないわね」

アクア「そうね……」

アクア(だけど、タクミはリョウマが死んでしまったことも、ヒノカが目覚めていないことも知っているはず。カムイから何が起きたのかを聞くために急いで来たのなら、すぐに話し合いの場を求めてくるはず)

アクア「……」

ルーナ「それにしても、悔しいわね」

アクア「悔しいって、何のこと?」

ルーナ「何のことって、アクア様のことに決まってるでしょ」

アクア「私のこと?」

ルーナ「そう。こんなにカムイ様から信頼されてるんだから」

アクア「それは他の皆も同じよ。カムイはみんなを信頼しているわ」

ルーナ「信頼しているっていう意味ならね。だけど、その厚みは人によって異なってる。現に、あたしとカザハナはアクア様の答えが浮かぶほどの話をしてもらえたわけじゃなかった」

アクア「え……」

ルーナ「その時点であたしたちには解決できない問題だってわかったから、カムイ様に直接アクア様に聞いた方がいいって言ったの」

アクア「そんなことがあったのね」

ルーナ「そんなことがあったの。まったく、アクア様もアクア様よ。さっさと昼間の内にカムイ様を捕まえて色々聞けばよかったのに。嘘を吐かれたことはわからなくても、様子がおかしいことは察してたんでしょ?」

アクア「察していたわ。でも、無理に聞くことじゃないって思ったの。カムイが話をしてくれるまで待った方がいいと思ったから……」

ルーナ「はぁ、こういうところだけ、なんで奥手になるのよ。まったくわからないわ」

アクア「?」
839 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:26:43.18 ID:06CIArgx0
ルーナ「とにかく、タクミ王子がカムイ様との話し合いを求めてきたら、ちゃんと傍にいてあげなさい。カムイ様を守れるのは、アクア様しかいないんだから」

アクア「私だけってことはないと思うけど」

ルーナ「そうとしか思えないんだけど。まぁ、まずはカムイ様にタクミ王子が到着したことを報告しないと。今から報告に行くんでしょ?」

アクア「そうね」

ルーナ「カムイ様はヒノカ様の部屋にいるの?」

アクア「ええ、ヒノカのことを見てもらっているわ」

ルーナ「うーん、ヒノカ様が目覚めてくれれば、タクミ王子にもいい知らせになるとは思うんだけど……。そんなうまく行かないわよね」

アクア「ヒノカだって、眠り続けていたいわけじゃないはず。すぐにでも目を覚まして、カムイやサクラ達と再会したいはずよ」

ルーナ「まあね。でも、リョウマ王子の件もあるし、タクミ王子との話し合いの場で少しは明るい話題はあったほうがいいでしょう?」

アクア「だけど、今私達がタクミに話せることに明るい話題なんて何もないわ。カムイもそれはわかっているはずだから……」

アクア(だとしても、ヒノカがこうして生きているという事実は大きな希望よ。だけど、カムイにとって生きているということが、意識のある状態だとするなら喜ぶことはできないわ。きちんとした覚醒以外に、カムイの問題は解決しないということだもの……)

アクア「難儀な状況ね」
840 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:27:11.77 ID:06CIArgx0
ルーナ「あたしたちの戦いで難儀じゃなかったことなんて少ないでしょ。よし、着いたわ。カムイ様いる?」ドンドン

アクア「ルーナ、ヒノカも寝ているのよ。静かにして頂戴」

ルーナ「ご、ごめん。だけど、もしかしたら今ので起きたりするかもしれないし」

アクア「はぁ、そんなことで起きるわけがないでしょう?」

ルーナ「わ、わかってるわよ。って、返事がない?」

アクア「……え? カムイ?」トントン

 ………

ルーナ「カムイ様、部屋にいるの?」

アクア「……おかしいわね。さすがにヒノカを置いてどこかに行くなんてことをするとは思えない……」

カムイ『その音がとても怖くて、夢のように自分の体を引きちぎられてしまいそうな気がして、すぐにでも逃げないといけない、そう思ってしまったんです』

アクア(まさか、幻聴が聞こえ始めて!?)

アクア「カムイ!」ダッ

カムイ「……」
841 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:28:43.90 ID:06CIArgx0
アクア「……よかった」

アクア(苦しそうにしているわけじゃない。よかった……、てっきり気を失っているんじゃないかって……)

ルーナ「ちょ、アクア様、静かにってあたしに言っておいて、いきなり何してるのよ?」

アクア「あ、これは……」

ルーナ「まぁ、カムイ様が心配だっていうのはわかるけど。それとカムイ様、いるんだったら返事くらいしなさいよ」

カムイ「……」

ルーナ「カムイ様?」

アクア「カムイ?」タッ

アクア(私達に気づいていない? 何かを見ているようだけど、この部屋にそんな珍しいものなんて何もなかったはず)

 ガサッ……
  
アクア「この音?」

ルーナ「はぁ、カムイ様。何見てるわけ? あたしとアクア様が報告に来たんだから、少しはこっちに気を向けて……も……」

アクア「ルーナ、どうしたの?」

ルーナ「え、うそ……」

アクア(私の角度からじゃ見えない何かが、ルーナには見えてる。カムイの視線の先、あの視線の先にあるのは確か……)

アクア(まさか!)タッ

アクア「……ヒノカ」

ヒノカ「……?」
842 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:30:37.20 ID:06CIArgx0
ルーナ「起きてる……。ヒノカ王女が起きてる……」

アクア「ルーナ、すぐにミタマを呼んで来てちょうだい、早く!」

ルーナ「わ、わかったわ!」タタタタタッ

アクア「カムイ、ヒノカが目を覚ましたのね。よかったわ」

アクア(カムイは驚いているのね。だって、目の前に望んでいた結果がこうしてあるのだから。タクミにも少なからず良い報告ができるはず、悪いことしかない中でこの希望は大きなものに違いないわ。それに――)

アクア(カムイの抱える問題も解決する。だって、あなたが苦しんでいるのはヒノカが目覚めなかったことのはずだから……)

アクア「カムイ」

カムイ「……」

 ドクンッ……

アクア「……カ、ムイ?」

カムイ「……」

アクア(とても冷たい顔だった。さっきまでの悩みも辛さも何もない、自信がないのに大丈夫と言っていたような危うさもない……)

アクア(まるで何も感じていないというくらいに、無表情なカムイがそこいる……)

カムイ「……」
843 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:35:24.22 ID:06CIArgx0
アクア(興味が無いように、今の目の前の状況を見ている。とても落ち着いてる。いずれ、目覚めるということを知っていたみたいに)

アクア(知っていた? 今日、ヒノカが目覚めることを? いえ、誰がいつ目覚めるのかなんてわかるわけがない。わかることがあるとすれば、ヒノカが無事だったかどうかくらい……)

 ドクンッ……

アクア(カムイはヒノカが無事なことを知っていた? でも、だったらどうしてそれに悩まされていたの? だって、ヒノカが無事なら悩む必要なんてどこにもない。無事だったのなら、カムイは幻聴にも悪夢にも悩まされなかったはず)

カムイ「……」

アクア「カムイ……?」

アクア(あなたは今、何を思って――)

???「……その人はカムイさん……というんですか?」

 ゾクッ
 
アクア(今の声は……なに? この聞きたかったのに聞きたくなかったと思える言葉を発した、今の声は……)

 ドクンッ

???「ごめんなさい、声を掛けるべきかわからなかったので、ヒノカというのは私の名前なんでしょうか?」

アクア(さっきまで暖かくなっていた心が急速に冷える。発せられた言葉が乗り移た鼓動は、体の力を奪っていく。希望に弾んだ心を蝕んでいくみたいに……)

 ドクンッ
  ドクンッ

アクア(あれほど望んでいたヒノカの覚醒に恐怖を覚えた。夕陽の光が色あせていくように思える。心の中にある何かが死に絶えていく……。何かが崩れ去ろうとしている……)

???「その……」













ヒノカ「あなたは……なんという名前なんですか?」
844 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:38:16.59 ID:06CIArgx0
 ドクンッ!

アクア「ヒノカ?」

カムイ「……」

ヒノカ「この人に聞いても何も答えてくれなかったんです。目が覚めてから、ずっと私を見てくるばかりで。いえ、目を瞑っているから見ているわけでは無いんですよね?」

アクア「ヒノカ、悪い冗談はよして頂戴……。そんな冗談……カムイだって」

ヒノカ「やはり、そちらの方がカムイさんでいいんですね? よかった、ようやく声を掛けることができます。まだ確信が得られなくて、どうすればいいのかわからなかったんです」

 ドクンッ!

アクア「っ!!!」

アクア(頭の中がぐちゃぐちゃになる。性質の悪いイタズラだと認識しようと、いいえちがう、したい部分がある。でも、それはありえない)

アクア「ヒ……ノカ……」

ヒノカ「はい?」

アクア(これは現実、これが私達に突きつけられる現実。白夜と暗夜の長きにわたる争いの終わりは最大の悪夢でしかなかった。ヒノカは……消えてしまった。ここにいるのはヒノカでありヒノカではない。もう、ヒノカはどこにもいない……)

アクア「これが……これがあの戦いの結果だというの?」

ヒノカ「え、えっと……どうしたんですか? 戦いって……」

アクア(カムイがここまで苦しんで、諦めずに戦い抜いて得たのがこんな……)

 グッ

アクア(こんな終わりだというの……)

カムイ「……」
845 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:39:12.35 ID:06CIArgx0
ヒノカ「あの……私は……」

カムイ「大丈夫ですよ、ヒノカさん」

アクア「カムイ?」

ヒノカ「カムイさん……?」

カムイ「すみません、無視するような真似をしてしまって。その、あなたが目を覚ましたのが突然過ぎて、驚いてしまったんです」

ヒノカ「私が目を覚ましたことが、ですか?」

カムイ「はい、自覚はないと思いますけど、ずっとあなたは眠っていたんです。いつ目覚めるかもわからない、そんな眠りについていた。それがこうして無事に目を覚ましたんです、奇跡としかいいようがありません」

アクア「カムイ……、あなた」

カムイ「大丈夫です、アクアさん。私は大丈夫ですから……」

ヒノカ「そんなに眠っていたんですか……」

カムイ「はい。あなたのことを心配していた方々も喜ぶはずです」

ヒノカ「私のことを心配していた人達?」

カムイ「ええ、私達以外にもいらっしゃるんです。その困惑されてしまうかもしれませんけど……」

アクア(背中しか見えない。声も落ち着いている。今目の前にある現実を、カムイは認識している)

アクア(だけど、どうしてそんなに落ち着いていられるの? あなたにとって、これは……この事実は、そんな簡単に受け止められることだというの?)
846 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:43:23.75 ID:06CIArgx0
ヒノカ「そうなんですか……。すみません、私にはそれが誰なのか見当がつかなくて……。もしかして、私は何かを忘れているんでしょうか……」

カムイ「目覚めたばかりで混乱しているんですよ。少しすれば何か思い出すかもしれません」

アクア(言葉に震えはない、すでに知っていることをただ紡いでいるみたいに。驚きも何もない、言葉に詰まってもいない。まるですべてが予定調和のように……)

アクア(カムイはこの事実に震えていない。それは、私達が来るよりも先にその事実に直面していたから? でも、だったらカムイの体を幻聴が支配してるはず、逃げだしたくなるほどのものだとカムイは言っていたのに、今は逃げ出す素ぶりもない)

カムイ「まだ起きて間もないんです、体を横にしていても大丈夫ですよ」

ヒノカ「は、はい。その、実はお腹が空いてしまって……」

カムイ「わかりました。すぐに食事を手配します、ちょっとだけ待っていてくれますか?」

アクア(強い、異常なほどに……。さっきまで怯えていたことが嘘のように、すべての事実を受け入れる事をカムイは受け止めている。私はまだ手の震えが止まらないのに、カムイはきちんと受け止めて……)

カムイ「……」

アクア(なら、どうして私たちが来るまでの間、何もしていなかったの? 全てを受け止めて強くいられるなら、私がヒノカの真実に気づく前にあなたからそれを告げていたはず)

カムイ「……」

アクア(そうしなかったのは、ヒノカのこの状態を受け止めているからじゃない。意図的にそうしないといけなかったから。だって、あなたはこんな事実に耐えられるほど、強い人じゃない……)

アクア(もしかして、あなたは……)
847 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:45:02.83 ID:06CIArgx0
アクア「カムイ……」

カムイ「なんですか、アクアさん?」

アクア「……知っていたのね?」

カムイ「なにを……ですか?」

アクア「ヒノカがもうヒノカでなくなってしまっていたことを……知っていたのね?」

カムイ「……知っているって」

アクア「カムイ、あなたの幻聴はヒノカが原因じゃない、それはこの状況を見ても明らかよ。あなたにとって今が辛いものでないはずがない」

カムイ「……」

アクア「あなたは知っていたのよ、この事実を……。だから、ヒノカとの戦いの終わりにその音を聞いた。あなたは――」

カムイ「止めてください!」

アクア「!」

 ジリッ……

カムイ「……アクアさん止めてください。そんなことを言わないでください、そんなことをあなたに言われたら……。私は……わたしは――」

カムイ「ぐっ、うううっ!!!!!」

アクア「カムイ!?」

カムイ「ううっ、うあああああっ!!!!」ダッ

アクア「っ! 待って、カムイ!!!」

ヒノカ「わ、私は……」

アクア「あなたは誰かが来るまで待ってて! カムイ!」ダッ
848 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:45:51.72 ID:06CIArgx0
 タタタタタッ

カムイ「はぁ……はぁ……。ぐっ、ううっ……」タタタタッ

ミタマ「あ、カムイ様、ヒノカ様が目を覚まされたルーナ様が――って、あれ?」

 タタタタッ

ミタマ「え、カムイ様? な、なにが起きて……。あ、アクア様、今カムイ様が――」

アクア「話は後よ。ミタマ、ヒノカをお願い!」タタタタッ

アクア(私に言われたら? あなたは何を理解したの? ヒノカのことをあなたが忘れていたことと、私にどんな関係があるというの? だけど、きっとそれが、カムイが悩まされてきた幻聴の正体のはず)

アクア「カムイ、待って!!!!」

 タッ タタッ
  ガクッ

カムイ「ぐううううっ……。はぁ、はぁ……! ううううっ!!!!」

 シュオオオンッ

アクア「カムイ!」

アクア(竜に変身する、まさか獣の衝動!?)

竜化カムイ「グオオオオッ!!!!」ヒュンッ

 ドゴンッ

アクア「っ、壁を壊して何を……」
849 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:47:05.97 ID:06CIArgx0
竜化カムイ「グウウウッ」グッ

アクア「待って!」

 タッ ヒュオオンッ 
  ガシャンッ! ドササッ!

 ナ、ナンダ!?
 ソラカラナニカガフッテキテ……

 グオオオオオオッ!!!

 ウワアアアアアッ!!!!

アクア「カムイ!」

竜化カムイ「……」ダッ!

アクア「あの方角……正門? カムイは城下町に向かうつもりなの?」

アクア(いちいち城内を抜けていたら追い着けない…。なら……)

アクア「っ。この高さくらいなら……」グッ

 ジリジリ

アクア「……っ!」ダッ

 ヒュオオオオッ
  ダンッ ズササーッ!

アクア「っ!」

カムイ軍兵士「うわっ、また何か落ちてきた!?」

アクア(少し打った……。でも走るのに支障はないみたいね)

カムイ軍兵士「アクア様、一体何が起きて、今のはカムイ様のようでしたが……」

アクア「カムイが暴走しているの。みんなに知らせて! 私はカムイを追いかけるわ」

カムイ軍兵士「は、はい。わかりました!」タタタタッ

アクア(カムイ!)タタタタッ
850 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:48:50.21 ID:06CIArgx0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王国・白夜王都『城下町・中央広場へと続く大通り』―

 ニゲロ!ハヤク!
 オオドオリニハゼタイニデルナ、キケンダカラチカヨルンジャナイ!

アクア「町中が混乱している。そうよね、突然あんなものが乱入してきたら、こうなってしまうわよね」

アクア(一体、カムイはどこへ……)

白夜兵「そうか、中央広場へと向かっているのか?」

カムイ軍兵士「ああ、ドラゴンナイト部隊からの情報だ。まっすぐに中央広場に向かっている。今日の配給は終わっていることが不幸中の幸いと言ったところかもしれないな、大広場にいた市民たちはすでに避難済みになっている」

白夜兵「よし、そこでどうにか止めるしかあるまい。もしも向こうが危害を加えてくるようなら……」

アクア「駄目よ!」タッ

カムイ軍兵士「アクア様。その怪我は!?」

アクア「大丈夫、こんなのかすり傷よ。それよりもカムイを攻撃するのは許さないわ」

白夜兵「しかし、あんな狂った獣を放っておくわけにもいかない! わかるだろう。ようやく安心できる状況が整いつつある中だというのに――」

アクア「整いつつあるからよ。そんなことになれば、再び不安が溢れだしかねないわ」

白夜兵「ならどうすればいい!?」

アクア「私が止める。私にならあの子の暴走を私は止められるはずだから……」チャキッ
851 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:50:06.82 ID:06CIArgx0
アクア(私の歌の力……。それを使えば、カムイの暴走を止めることはできる……。それが私の命を削ることだったとしても……)

アクア「私が中央広場に入るまでに止めて見せる。だから――。攻撃をしないで」

白夜兵「し、しかし……」

???「まだ状況が分からないのに、カムイを攻撃する前提で話を進めないでくれるかしら?」

 バサバサッ ドスンッ

アクア「カミラ……」

カムイ軍兵士「カミラ様……」

カミラ「カムイの事は私たちに任せて、あなた達は市民の保護と危険区域に近寄らない様にすることを優先しなさい」

カムイ軍兵士「わかりました!」タタタタッ

カミラ「それと白夜の兵隊さん、思っていることはわかるけれど、ここは私たちに任せてちょうだい。大丈夫、ちゃんとあの子を止めてみせるわ」

白夜兵「し、信じていいんだな?」

カミラ「ええ、だからあなたたちはあなたたちが守るべきものを守りに行って」

白夜兵「……わかった。市民の避難を最優先にする、行くぞ」タタタタタッ

アクア「カミラ……ありがとう」

カミラ「いいのよ、それより早く乗りなさい。カムイを追い掛けるんでしょう?」

アクア「ええ!」タッ
852 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:50:55.44 ID:06CIArgx0
カミラ「それにしても、何があったの? もしかして、タクミ王子が到着したことが関係しているの?」

アクア「ちがうわ……」

カミラ「それじゃ、一体……」

アクア「さっき、ヒノカが目を覚ましたの」

カミラ「いい知らせじゃないの」

アクア「目覚めたことはね。でも、ヒノカはヒノカじゃなくなっていた……」

カミラ「え……」

アクア「言葉や物事は理解できるみたいだけど、自分の名前も私たちのことも知らないようだった。忘れているんじゃなくて、知らないように感じたわ」

カミラ「そんな……」

アクア「……」

カミラ「私との約束も守らせてはくれないのね……」

アクア「カミラ……」

カミラ「それで、そのヒノカが原因でカムイは暴走を?」

アクア「ちがう、直接の原因はヒノカのことじゃない。カムイは、ヒノカがこうなっていたことを知っていたみたいなの」

カミラ「なら、なんで暴走しているの?」

アクア「わからない。でも、間接的に私に原因があるような気がしているの……。分かっていないだけで私は……カムイを苦しめている」
853 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:53:02.68 ID:06CIArgx0
カミラ「そう……。ふふっ、妬いちゃうわね」

アクア「?」

カミラ「あなたがカムイの特別という点にね。私の方がおねえちゃんだったのに」

アクア「ルーナもそんなことを言っていたわ」

カミラ「あらあら、飼い主に似ちゃったのかもしれないわ。どちらにしても、カムイを止めないとだめね」

アクア「ええ、最悪の場合、力を使ってでも……」

アクア(獣の衝動に支配されている以上、放っておけばさらに被害が広がっていく……。死者が出てしまったら、もう取り返しがつかない……)

カミラ「……いいえ、その力を使わなくてもアクアにならカムイを止められる、そんな気がするわ」

アクア「え?」

カミラ「カムイの通った後、よく見なさい」

アクア「?」チラッ

アクア(……路上がめちゃくちゃになってる。これじゃ巻き込まれた人も……)

アクア「……あれ、でも負傷者がいない?」

カミラ「ええ、暴走しているのなら人を巻き込まずに動くなんて器用な事は出来ないわ。たとえ人影がまばらだとしても、ここまで巻き込まれた人がいないのを運が良かった。それで済ますのも無理がある。きっと、あの子はきちんとした意識を持っているはずよ」

アクア「カムイは正気だというの?」

カミラ「シュヴァリエでカムイが暴走したときとは状況が違う。それだけでも、十分信じられるわ」

アクア「……」

カミラ「これでも、あなたよりはカムイと過ごした時間は長いんだから。おねえちゃんの目利きを信じなさい」

アクア「わかった、カミラを信じるわ」

カミラ「ふふっ。それでどうするの? 中央広場まで時間がないわ。さすがに立ちはだかったところで、抜けられるのがオチよ」

アクア「なら、捕まえればいいだけよ」

カミラ「え?」

アクア「カミラ、カムイの背後から接近して頂戴」

カミラ「それからどうするの?」

アクア「やることは一つだけよ」
854 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:54:27.55 ID:06CIArgx0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王国・白夜王都『城下町・中央広場』―

レオン「状況はどうなってる?」

ゼロ「まっすぐこっちに向かってます、あんなのに追突されれば簡単にイっちまうでしょうね。この程度の妨害柵、簡単に」

レオン「そうか……」

タクミ「カムイはなにをしてるんだ!? こうやって白夜をめちゃくちゃにするのが目的だっていうのか?」

レオン「何か理由があるはずだ。姉さんは、そんなことができる人じゃない……」

タクミ「でも、この現状じゃ……」

レオン「わかってる、だから何か理由があるはずなんだ!」

ゼロ「レオン様、白夜の王子と乳繰り合っている暇はありません。あと少しでここに到着します、止めるにせよ、見送るにしても、動かないといけません」

レオン「わかってる!」

レオン(くそっ、安全に捕らえる準備なんて何も出来てない、どうにかして動きを止めようにも攻撃する以外に手なんて……)

 バサバサッ

ゼロ「レオン様、カムイ様の後方から接近している何かが……。あれはカミラ様か?」

レオン「カミラ姉さん?」

レオン(あんなに接近して一体何をするつもりなんだ……ん?)

レオン「え!?」

ゼロ「カムイ様に飛び移りましたね」

レオン「あんな無茶をするなんて、一体誰が……」

ゼロ「あれは……アクア様ですね」

レオン「アクアだって!?」
855 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:55:53.03 ID:06CIArgx0
カミラ「アクア、大丈夫!?」

アクア「私は大丈夫! カミラは離れていて」

カミラ「わかったわ」バサバサッ

アクア「……カムイ、止まって! 何があったというの?」

竜化カムイ「グオオオオッ!!!」

アクア(カムイ、何をそんなに恐れているの? あなたは、何を知っていたの?)

竜化カムイ「グオオオッ! ウオオオッ!」ブンブンッ

アクア「ううっ! カムイ、落ち着いて、大丈夫、何も恐れることなんてないのよ」ギュッ

竜化カムイ「グオオオオオッ!!!!」

アクア「カムイ!」

竜化カムイ「グオオオオオッ!!!」ダッ タッ

アクア「っ! このままじゃ、振り落とされる……」

アクア(カムイ……)

竜化カムイ「グオオッ グオオッ」ブンブンッ!

 タタッ!

アクア「カムイ、怖がらないで……。どんなことがあっても、私はあなたの傍にいる」ギュッ

竜化カムイ「!」

 ドゴンッ!!!!

アクア「っ!」

竜化カムイ「!!!!」

 ゴロゴロッ ガシャンッ!!!!
  ドゴンッ…… カランカラン……




レオン「! 荷車に当たって転んだみたいだ。いくよ、ゼロ」

ゼロ「はい、レオン様。他の奴は建造物の上から回り込め、最悪の場合に備えろ」

カムイ軍兵士「はっ」タタタタッ

タクミ「もう、何がどうなってるんだ……」

レオン「タクミ王子はここで待っててくれて構わない」タタタタタッ

タクミ「こんなものを見せられて黙っていられるわけないだろ。僕も行く、あいつには聞かないといけないことがたくさんあるんだからね」タタタタッ
856 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:58:36.03 ID:06CIArgx0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜王都『城下町・中央広場入口付近』―

アクア『カムイ、怖がらないで……。どんなことがあっても、私はあなたの傍にいる』

カムイ(その言葉で世界が真っ赤に染まった……)

カムイ(その言葉で世界が悲鳴で満たされた。二つの悲鳴が重なって、私の中を渦巻いて行く……)

カムイ(違う。二つでもこれは私の悲鳴だ……)

カムイ(作り上げようとする私と、それを否定する私が互いに悲鳴をあげている……)

カムイ(そうしないといけないのに、なんで作り上げることが出来ないのか? もうそんなことをしなくてもいいのに、なんで作り上げようとするのか? 互いの主張が私の中で爆発していく)

カムイ(だけど、まだ私は作り上げようとしている、私はまだ諦められない)

  バキンッ……

カムイ(音が聞こえる。私の、私がなるべき姿が崩されていく音が……)

 ガシャンッ
  ゴトンッ……

カムイ(やめて、崩さないで……)

竜化カムイ「グオオオッ! グアアアアアアッ!!!」

カムイ(まだ終わっていない戦いへと向かうために、それは必要な物なんです……)

 ドクンドクンッ

カムイ(崩れないで……それがないと私は……戦えなくなってしまいます)
857 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 14:59:44.80 ID:06CIArgx0
 バサバサッ

カミラ「カムイ、アクア!」

カムイ(カミラ姉さん。いや、見ないで……見ないでください……)

竜化カムイ「グオオオオッ!」ググッ

 タタタタッ

レオン「カムイ姉さん、動かないで!」スッ

ゼロ「……レオン様」チャキッ

タクミ「カムイ……」

白夜兵たち『……』

カムイ軍兵士たち『……』

カムイ(いやだ……。みんな見ないで……こんな私を、見ないでください……)

竜化カムイ「グオオオオオオオオオオッ!」

レオン「姉さん!」ググッ

竜化カムイ「グオ! グアアアアッ!!!」ググッ

カミラ「カムイ、じっとして、お願い!」

カムイ(私は……私は!!!!)

「カムイ……」ギュッ
858 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:00:38.99 ID:06CIArgx0
 ポタタッ ポタタタッ

アクア「もう、大丈夫……。私が傍にいるから……」

竜化カムイ「……」

アクア「もう隠さないでいいの。私が全部、受け止めてあげるから……。だって私はあなたの傍に……いる、そう言ったでしょう?」ギュウッ

カムイ(弱弱しいけど、私を放してくれないアクアさんの言葉は、真実の力を強くする)

竜化カムイ「……ずるい…ですよ……アクアさん……」

カムイ(もう、ここに私を囲うことのできるものはなかった。わずかな間、私の中で入り混じっていた真実と偽り。私は偽りを選んだけれど、もう、ここには偽りを塗り重ねられるものはない)

カムイ(偽りが崩れ去った今、私の中で悲鳴を上げるのは、そんなことをしなくてもいいという真実だけ……。そう。私が知っていて目をそらしていた真実……)

カムイ(アクアさんにさらけ出さないように必死で取り繕っていた、醜い自分の姿……)

アクア「カムイ……」

竜化カムイ「わかっていたんです。私はヒノカさんを助けることができなかった、と……」
859 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:02:10.27 ID:06CIArgx0
カムイ(私は知っていた。ヒノカさんが消えてしまったことを……)

カムイ(あの時、感じた物が何なのかわかっていた。優しさも力強さも、それらが私に向けられた最後の思いだと理解していた。あれはヒノカさんが命を賭して私に託してくれた思いだった)

カムイ(なのに私は、それを見なかったことにしたかった。ヒノカさんがいなくなってしまったことを認めてしまったら、私がここまで戦ってきたことの意味。それがすべて崩れ去ってしまう)

カムイ(私の目指す場所がもう無くなってしまう。私の戦ってきたことの意味が消えてなくなってしまう)

カムイ(だから私は知らないふりをした。知らないままでいようとした。ヒノカさんがいなくなってしまった現実から目を逸らして、みんなからこの戦いの成果を明け渡してもらった)

カムイ(配給の徹底、難民の保護、負傷者への治療、瓦礫の撤去……。そして、白夜と暗夜との戦争が終わったという大きな一つの結果)

カムイ(それを使って壊れないようにしていた。守りたかった人たちを誰一人として助け出せなかったという現実、私の願いは何一つ成しえなかったという事実から身を守るために……)

カムイ(そしてみんなに聞いた、私は何を成し遂げたのか? 私は誰を助けられたのか? みんな答えてくれた。多くの人が助かった、白夜との戦いは終わりを迎えたのは私のおかげだと……)

カムイ(それがどれだけ居心地のいい逃げ道かを理解していたから、私はそれで現実から目を背け続けた。いずれ、覚める夢だということを知っていながら、私は私を守るための城壁をずっと重ねて保持することに努めた)

カムイ(誰かの役に立ちたい、誰かの力になりたい。白夜の人に嫌われていようとも誰かの役に立ちたい、そんなことを思いながら……)
860 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:03:12.95 ID:06CIArgx0
カムイ(事実はちがう、自分に何もできないという現実を否定したかっただけだ。この数日、私が手がけたことは私である必要なんてなかった。私は、城壁を強固にするためだけに手伝いをしていたに過ぎない)

カムイ(だって、そうすれば、みんなが私に言ってくれる。ありがとう、おかげで助かりました、と。その賛辞に私はこう答える。こんなことしかできませんけど……。そうすればみんなはこう返してくれる。そんなことありません、あなたがいてくれてよかった。それがこの数日の私という存在。必要とされていたという結果を使って、私は私を守った)

カムイ(卑しく醜い、卑怯で無様。みんなから同情してもらえるそんな私を作り上げて、本当の結果から逃れようとしてきた。だけど、あの人の前でだけは全てをさらけ出したい、そんな思いがくすぶって仕方なかった)

竜化カムイ「あなたに話したかった。でも、私はそれに蓋をして、今日までずっと逃げていたんです」

アクア「苦しんでいたのね。あなたはあの戦いが終わった時から、ずっと……」

竜化カムイ「わかっていたんです……。私には救えなかった……。リョウマさん達も、ヒノカさんも、誰も救えなかった。生きててほしかった……命を賭してでも助けたかった……。なのに、なのに……誰も救う事は出来なかったんです」

アクア「……カムイ」

竜化カムイ「その事実を受け入れたくなかった……。だから私は心を守ろうとしたんです……。そうしないと戦い続けることが出来ないから。でも……そんな幻想が現実に立ち打ちできるわけがないんです……」

カムイ(ヒノカさんはいなくなって、リョウマさん達も死んでしまった。二人を助けたいと思ったのはタクミさんと約束したからだけじゃありません。私にとって、それが戦う意味だった。戦争を終わらせることはその延長線上にあるだけで、私は二人に生きててほしかっただけ。二人が生きていてくれるだけで、この先に待っている戦いにも意味が持てた。そのためになら命を落としたって構わないと……。でもそれは失敗に終わって、私の中の光が潰えた)
861 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:04:47.96 ID:06CIArgx0
カムイ(いつの間にか、私の暗闇(せかい)のように何も見えなくなっていた。その現実から逃れるために暗闇(せかい)を包むように壁を作って凌ごうとした……)

カムイ(でも、その壁も光の潰えた真実の前に力を失ってしまう。いや、もう逸らし続けることはできなくなっていた。私はあの音を、あの破滅の音を聞いていて、それはずっと叫んでいた)

カムイ(目を逸らさなくてもいい、大丈夫きっとあの人なら受け止めてくれる……。だから、もう楽になればいいと……)

竜化カムイ「嫌だった……。辛いことをから逃げ続ける自分が嫌だった。認めたくない現実や辛い出来事はあなたに支えてもらう、そんなことを考えている自分を認めたくなかった……。自分があの頃から何も変わらない。弱いままだという事実を知りたくなかった……」

 パキンッ……

竜化カムイ「アクアさんに悪夢のことを最初に話さなかったのも、自分を守るためでした。あなたに話す前にどこかで違う誰かが聞いた物語にしたかった。それはあなたにさらけ出す初めての悩みで無くなればいい、そんな私の基準があったんです。私は私の弱みをアクアさん以外の誰かで浄化した。あなたにさらけ出すための演習のように、利用していただけなんです……」

アクア「……」

竜化カムイ「私はアクアさんに弱さを認めてもらいたい自分が情けなかった。だから偽りの弱さで偽装しながらみんなに支えてもらうことで調整しようとしたんです。これは偽りだから、その気になればいつだって立ち直れた。演出したかったのは辛い現実を克服して立ち直っていく自分、そんな強くなった自分を演出したかっただけ……」

カムイ(本当の私は何も培えなかった。何も成長などできなかった。何もなしえなかった。そして世界を救うことが、私の目的になり得ることはない……。こうして戦う道を選んだことも、ただ大切な人たちを守るということで自分の意味を見出したかっただけ……)

竜化カムイ「私は自分で自分の価値を見出せない。私の命に見合った価値なんて見つけられない……。だって、私の手ではなにも救えないって分かってしまった。私は奪うこと以外に何もできない……弱い存在なんです」
862 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:06:31.48 ID:06CIArgx0
アクア「カムイ……」スッ

竜化カムイ「アクアさん……」

アクア「……馬鹿ね。あなたが弱いことくらいわかってる。あなたと出会った時間は長くなくても、あなたと過ごした時間はあなたを知りたいと思えるくらいに充実していたから」

竜化カムイ「……」

アクア「だから今になって理解した……。私は酷なことを言ったって……」

竜化カムイ「……」

アクア「テンジン砦であなたは戦いから離れようとしていた……。あなたの戦いの一つが崩れたことはわかっていた。白夜との同盟はあなたにとって一つの結果で、一番求めていた結末だった……」

竜化カムイ「……」

アクア「それを奪われたあなたの逃げ道を……私は塞いだ。あなたに立ち向かうことを強要した。あなたが倒れることを許さなかった」

 ギュウッ

アクア「あなたをここまで追い詰めたのは……私よ」

竜化カムイ「……」

アクア「……カムイ、ごめんなさい」

竜化カムイ「……ちがうんです、アクアさん」

竜化カムイ(私はあなたと一緒にいたからここまで戦ってこれたんです。そして、ここまで支えてくれたあなたに……)

竜化カムイ「私はあなたに……見てもらいたかった……」

アクア「え?」
863 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:09:08.10 ID:06CIArgx0
竜化カムイ「きちんと出来るって……。ちゃんと成し遂げられるって……。あの日、私を繋ぎとめてくれたあなたに……その選択が間違いでなかったと、示せるように……」ポタタタッ

アクア「カムイ……」

竜化カムイ「でも私が示せたのは、ただの地獄でしかなかった……」

カムイ(私が得たのは、何も得られないことを見せつける地獄。どんなに願っても、どんなに叫んでも、そして希望を得て歩んだとしても……。最後に待っているのが地獄だという絶望。私はそれを生き延びた人々、そして共に闘ってくれた人々に示しただけだった……)

カムイ(リョウマさんの死という中でヒノカさんが生きてきたという希望。でも、結局その希望は塗りつぶされた希望だった。それを知っていながらそれを認めなかった、挙句に自分を守るために利用して、そしてアクアさんに見透かされて逃げ出した)

竜化カムイ「ごめんなさい、アクアさん……。私はあなたからもらった全てを……無駄にしてしまったんです。ここは地獄でしかありません……、救いや希望、犠牲を伴って生まれる地獄なんです……」

カムイ(そんな地獄しか生み出せない私が、これ以上戦う理由なんてどこにもない。願った分、受け継いだ思いの分だけ、地獄は大きくなっていく。それはまるで炎のように、小さな火でも集まれば業火になるように、私が作る地獄は大きさを増していく……)

竜化カムイ「私はみんなを地獄に連れてきただけだったんです……。私は救うのでは無く、奪うだけしかできない……。みんなの信頼も、みんなとの絆も、すべて…」

カムイ(食い荒すだけの……存在なんです)

アクア「…………の……」

竜化カムイ「?」

アクア「それがどうしたっていうの!?」

竜化カムイ「アクア……さん?」
864 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:11:10.39 ID:06CIArgx0
アクア「ここが地獄だから何? 奪うだけしかできないからどうしたって言うの!? 私は奪われても構わない! 私の信頼も絆も……全部奪っていい。ここが地獄だというなら、あなたとい一緒に落ちても構わない!」

 ギュッ

アクア「私はあなたと運命を共にしているつもりよ。あなたがここを地獄というのなら、私も同じ地獄にいるのを忘れないで。最初一人で戦うことを決めていた私を、あなたは引き上げた。一緒に歩んでくれるのがあなたなら、きっと大丈夫だと思えた。なのに、あなたは一人で戦って一人で傷を癒して、偽りの心のまま戦いを続けるつもりだったの?」

竜化カムイ「それは……」

アクア「私は私の戦いをあなたに預けた、この暗い闇のような世界であなたと共に闘うことを望んだの。なのにあなたは私にそれを預けてはくれないというの? あなたと共に戦うことを選んだ私は、結局一人で戦っていただけだったなんて思わせないで……」

竜化カムイ「………アクアさん」

アクア「カムイ、私はあなたを見捨てたりしない。こんな地獄に一人になんてさせない。あなたが一人だなんて思えなくなるくらい、私はあなたを見捨てたりしない。絶対に!」

竜化カムイ「……手を取ってくれるんですか……。こんな私の……」

アクア「ええ、もうあなたの手を放したりはしない。私の使命はあなたと共に歩むことなんだから……」
865 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:13:13.33 ID:06CIArgx0
カムイ(その言葉ですべてが崩れていく、もう私の偽りはどうあがいてもこの光にはかなわない。それは残酷な光なんだと思う。私の願いはすべて崩れてしまった。誰も失いたくないという願い、白夜との同盟という願い、そしてタクミさんを助けられたことで膨れ上がった願いも、そのすべてが今、音を立てて崩れさった)

カムイ(私に残ったのは届かなかった願いの抜け殻だけ、そこに入り込んでいた私は、その抜け殻を捨てないといけない。ここは、心を隠すには冷たく孤独に満ちていたから……)

 シュオオオッ

アクア「カムイ……」

カムイ「わたし、私は……」

 ギュッ

アクア「……何も言わないで。出来なかったことも、成しえたかったことも、全部わかっているから。だから、今はもうそんなことを言わなくていいのよ」ギュウッ

カムイ「ううっ、うあああああああ!!!!!」

アクア「……」ギュウッ

カムイ(心を囲っていた願いが崩れていく。戦いは終わらない、終わっていない。だけど、私の戦いは終わってしまった。終わってしまった心に壁はなくて、どこまでも広がる暗闇は私を中心に奥へ奥へと広がり続ける。もう、辿り着く場所はどこかへと消え去った)

カムイ(もう誰に見られても構わなかった。私を慰めてくれた人にも、私を敵として見た人にも、希望を託してくれた人にも。何もかも消え去った私に言葉はなくて、謝ることもできなくて。ただ、私を包んでくれる温もりだけが私を守ってくれる。もう、何も果たされない願いを失った丸裸の私を……)

カムイ(私の戦いは終わった。だけど、現実は続いて行く。まだ、戦いが終わっていないという、その現実は……)

(まだ、私の前に大きく広がっていた……)

 休息時間終わり
866 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:15:10.43 ID:06CIArgx0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB++
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワB
(動物の餌やりを一緒にやることになっています)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
867 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:17:26.82 ID:06CIArgx0
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540] A[6スレ目・699]

【支援Bの組み合わせ】
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
・カミラ×ジョーカー
 C[6スレ目・671]
・エルフィ×スズカゼ
 C[6スレ目・698]
868 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:19:17.59 ID:06CIArgx0
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250] B[6スレ目・700]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
869 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/19(水) 15:25:06.89 ID:06CIArgx0
今日はここまで

 カムイは誰かのために戦うことはできるが、思想や国と言ったもののためには戦えないタイプの人間であると思っています。


 安価でこの先の展開を決めたいと思います、参加していただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 カムイと話をする支援Aのキャラクター

 ギュンター
 フローラ
 ラズワルド
 オーディン
 レオン
 ルーナ
 カミラ
 エリーゼ
 サクラ
 カザハナ
 シャーロッテ

 この中から1人
  >>870

このような形ですが、よろしくお願いいたします。
 
 
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/19(水) 22:53:13.88 ID:S42Qwwgy0
カミラ
871 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 16:42:12.63 ID:UPnI7y9m0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『カムイの部屋』―

カムイ「……」

カムイ「……ん」

カムイ「んんっ……ここは……」

カムイ(私の部屋のようですね……。誰かがここまで運んでくれたみたいですけど……)

カムイ「今の私にはここよりも牢獄のほうがふさわしいと思うのですけどね」

カムイ(もう目をそらす必要がなくなったからなのかもしれません。私は全てを覚えている。ヒノカさんを助けられなかったことも、それから目を逸らしていたことも……)

カムイ「誰も助けられなかった。それが私の現実なのですね」

カムイ(そればかりか、助けられなかった事実から逃れるために白夜と暗夜の戦争が終わったという結果で自分を繕っていた。確かに白夜と暗夜の戦いは終わりを迎えて、こうして手を取り合って過ごしている日々は尊いものだと思います。でも、それは私の願いとは異なる願いです。私はリョウマさんとヒノカさんに生きていてほしかったのだから)

カムイ(でもそれ以上に現実は私の中を圧迫していく、ただただ繕っただけの鎧でどうにかなるほど、現実は甘くなかった。潰えた願いを心に秘め続けることができるほど、私は強くなかった。近くに私を支えてくれる人がいたから、支えてもらいたくなってしまう。そう、アクアさんに支えてもらいたかった、でも、それを素直に受け止められるほど、私は素直でもなかった)

カムイ「その結果があれなのですから、不甲斐無いものですね」

カムイ(辛い現実も乗り越える強い自分を見せるために気丈に振舞って、でもアクアさんにはそんなものは見透かされていた。そうです、もしも本当にあの場でヒノカさんがいなくなっていることを知ったのなら、私はきっと倒れていた。ここまでの戦いの意味や、ずっと信じてきた希望が消え去るその瞬間に耐えることはできなかったはずですから)

カムイ「自分でもわかっていることじゃないですか、私がそんなことに耐えられるわけがないことくらい……」

カムイ(だから私は受け入れる自分を演じたのかもしれません。アクアさんに強くなった私を見てもらいたくて……。でも結局、最後に見せたのは弱いいつもの私でした)

カムイ「……一緒に落ちても構わない、ですか」

カムイ(あの言葉は今でもしっかり残ってる。裸になった私の心を優しく包んでくれるような、そんな言葉でしたから)

カムイ「……本当にどこまでも甘えん坊ですね、私は……」
872 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 16:45:51.13 ID:UPnI7y9m0
カムイ「そう言えば、あれからどれくらいの時間が経ったのでしょうか?」

カムイ(意識が途切れてからそれなりに時間が過ぎているような気がします)

カムイ「一度、確認した方がいいですよね」

カムイ(今が何時なのかは分かりませんし、早く状況を確認しないと……)グッ

 ギュッ

カムイ「?」

カムイ(腰を誰かに掴まれている。となりに誰かがいたみたいですけど、一体誰が……)

アクア「……カムイ、目が覚めたのね」

カムイ「アクアさん?」

アクア「……ん」ギュウッ

カムイ「……」

アクア「よかった、ちゃんと目を覚ましてくれて」

カムイ「はい、すみません、迷惑をかけてしまって。私のことをずっと見ていてくれたんですか?」

アクア「ええ。でも、傍にいると言ったのは私の方だから気にしないで。具合はどう?」

カムイ「そうですね……。っ……」

カムイ(ようやく意識が起きてきたのかもしれません。体の節々に痛みを感じるようになってきました。よくよく感じてみれば、体中に治療の痕跡があるみたいです)

アクア「昨日、あなたが気を失ってからサクラやエリーゼ、他にも多くの人が治療を手伝ってくれたの。っ……」

カムイ「アクアさん?」

カムイ(抱きしめてくれているアクアさんの感触に布のようなものがある)
873 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 16:48:06.09 ID:UPnI7y9m0
カムイ「怪我をされているんですか?」

アクア「ええ、あなたと一緒に転んだの。でも大丈夫、治療は済んでいるから休んでいればどうにかなる、気にしないで」

カムイ「気にしないでと言われましても……」

アクア「いいの。それに、今のあなたを一人になんてできないわ。言ったでしょう? 傍にいてあげるって、約束をすぐに忘れる薄情者じゃないわ」

カムイ「アクアさん……」

カムイ(様子を見る限り、私より怪我は重いようです。なのに、私の傍にいてくれたというんですか)

カムイ「……アクアさんは、どうして私にそこまでしてくれるんですか? 私は取り柄なんてあまりにもない、弱いだけの人間だというのに」

アクア「……あなたの力になりたい。それだけではいけない?」

カムイ「十分すぎるくらいアクアさんは力になってくれています。でも、それに釣り合うだけのことを私は、何も示せていません。むしろ、示すことのできたものは……」

カムイ(ここが奴の言う私にとっての地獄だったという現実だけ、そんなものを示されたところで……)

 ギュッ

アクア「地獄だとしても私は構わない、それが私の答えだったはずよ」

カムイ「……アクアさんはそれでいいんですか? あなたが力を貸した人が、こんなことしか造り上げられない人間だとしても……」
874 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 16:51:20.82 ID:UPnI7y9m0
アクア「何が起きるのかなんて、その時にならないとわからないものよ」

カムイ「でも、この先はずっと地獄かもしれないんですよ?」

アクア「構わないわ。その地獄の中をあなたと一緒に落ちてもいい。私はあなたと一緒にいるわ」

カムイ(背中に感じるアクアさんの感触に鼓動が少しだけ早くなった。見えないはずの世界なのに、アクアさんの姿だけがなぜか鮮明に感じられる。抱きしめてくれるアクアさんの腕、触れた髪、背中に押し付けている頬、怪我を覆った包帯の途切れ目から除く肌の感触。それらは鼓動が早くなるにつれて鮮明になっていく気がする)

カムイ「アクアさん……」

アクア「カムイ……」

 ポフッ

アクア「……まだ、怖い?」

カムイ「いいえ、何も怖くありません。何もなくなってしまいましたから」

アクア「そう……。まだ少し時間はあるから、もう少し眠りましょう?」

カムイ「ええ」

カムイ(アクアさんの手が私の手を取る。優しく包んでくれたその手の温かは早くなった鼓動をゆっくりとしたものに変えていく。昨日まで渦巻いていた不安はもうなくなって、今はただ真っ暗な世界の中にしっかりとした温もりだけがあった)

カムイ(もう不安はないから、意識を閉じるのも怖くはなかった)
875 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 16:53:29.54 ID:UPnI7y9m0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『談話室』―

カムイ軍兵士「テンジン砦へ向かう準備はあと少しで完了します」

マークス「わかった、今日中に仕上げられるように頼む。それから先日の件で破損した大通りについてだが……」

カムイ軍兵士「そちらの件は白夜の方々を中心に着手が進んでいます。すでにこちらの部隊も合流し、今日中には整うかと」

マークス「そうか。わかった。下がっていいぞ」

カムイ軍兵士「はっ! 失礼します」タタタタッ

マークス「しかし、昨日は色々と大変だったようだが、レオンの方は大丈夫だったか?」

レオン「それを言うなら兄さんも、例の件で住民への説明を進んでしてくれたそうじゃないか」

マークス「カムイを守るために兄としてできる限りのことはするべきだろう」

レオン「うん、だけど多くの人がカムイ姉さんのことを心配している。少なからず、姉さんが白夜を滅ぼすつもりであんなことをしたっていう噂を信じているのもいるみたいだけどさ」

マークス「そういった声では無く、心配する声が大きいのは、カムイが白夜の人々のために支援を続けていたことを多くの民が見ていたからだろう」

レオン「うん、きちんと伝わったんだと思う。ちゃんと、姉さんがしたことは実を結んだんだと思う」

マークス「ああ、こうしたことが今後の暗夜と白夜を繋いでくれるはずだ。ところでタクミ王子の様子はどうだ?」

レオン「……正直なんともいえない。タクミ王子も昨日の内にヒノカ王女に会ってきたみたいで、それから自室に籠っているみたいで……」
876 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 16:55:01.45 ID:UPnI7y9m0
マークス「仕方あるまい、色々と整理する時間が必要なはずだ。なにせ姉と兄を一度に失ったのだからな……。無理もないだろう。それとサクラ王女も大丈夫なのか?」

レオン「今朝見掛けた時はいつもどおりに見えたよ。でも、サクラ王女は強い人だから、気丈に振る舞っているだけかもしれない。昨日、ヒノカ王女を見に行った時は、言葉を失っていたみたいだから、思いつめていないといいんだけど」

マークス「むう……」

レオン「カザハナとツバキに傍にいるように伝えてあるから、大丈夫だとは思う。状況によっては三人には白夜ですべてが終わるまで待っていてもらうべきなのかもしれない」

マークス「ああ。それとカムイにも待っていてもらうべきなのかもしれん」

レオン「姉さんも?」

マークス「もしも戦うことに疑問を感じているのであれば、それは奴を相手にする際に致命傷になるかもしれない。奴にとってはあらゆる疑問がそのまま付け入る隙になりえると思えてならないからな」

レオン「異形神ハイドラのことだね……」

マークス「ああ、どんなに強い力を持っていようとも、心に隙があるのならば、そう簡単に守れるものでは無い。リョウマ王子やヒノカ王女、そして父上がそうだったように」

レオン「……姉さんが疑問を持っているなら、この先の戦いに同伴させない方がいい、そういうことだね」

マークス「だが、こちらから強制的にというわけではない。カムイに疑問を投げかけその答えが出せるかどうかで決めよう。それが今のカムイにとって必要なことでもあるだろうからな」

レオン「戦う意味……」

レオン(そして、願いか……)
877 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 16:58:01.54 ID:UPnI7y9m0
 トントン

マークス「む?」

アクア「失礼するわね」

レオン「アクア、おはよう。そうだ、カムイ姉さんは……」

カムイ「ここにいますよ。おはようございます、レオンさん。それにマークス兄さんも」

マークス「おはよう、カムイ。それにアクアも」

レオン「カムイ姉さん、もう平気なのかい?」

カムイ「はい、大丈夫です。すみません、色々と迷惑をかけてしまったみたいで……」

マークス「気にするな。互いに助け合うことに迷惑も何もない、そうだろう?」

カムイ「マークス兄さん……」

マークス「もう直ぐカミラとエリーゼも来る。今後のことについて、いろいろと決断の時が迫っている。昨日の今日で疲れているとは思うが……」

カムイ「ありがとうございます、気遣ってくれて。でも、本当に大丈夫ですから」

マークス「そうか。お前がそういうのならばいいだろう。席についていてくれ」

カムイ「はい。アクアさん、あそこに座りましょう。肩をお貸ししますね」

アクア「ええ、ありがとう。はぁ、やっぱり体の節々が少し痛むわね」

カムイ「すみません、あれは激しかったですよね?」

アクア「さすがに死ぬかと思ったわ。もう少し手加減してほしいのだけど」

カムイ「うっ、ごめんなさい」

カムイ(やはり、思った以上に傷は深いんですね……。今日も一日安静だという話ですし、悪いことをしてしまいました)

カムイ「はぁ……」
878 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:00:14.65 ID:UPnI7y9m0
マークス「……」

 トントンッ

マークス「どうした、レオン?」

レオン「マークス兄さん、あの二人って実際その、どうなんだろうね?」

マークス「わからない。わからないが、先ほどの話の激しいとは一体何のことか、それが少しばかり気になってはいる」

エリーゼ「何が気になるの?」

レオン「わっ、エリーゼ!?」

マークス「む、エリーゼ。何時の間に入ってきたんだ?」

エリーゼ「今だよ? ねぇねぇ、レオンおにいちゃん、何が気になるの?」

レオン「え、えっと……」

カミラ「エリーゼだめよ、レオンが困っているじゃない」

レオン「カミラ姉さん」

カミラ「おはようレオン、それにマークスお兄様も」

マークス「ああ、おはようカミラ」

エリーゼ「ねぇねぇ、カミラおねえちゃんにはわかるの? レオンおにいちゃんが気になってること」

カミラ「ふふっ、そうね。少しくらいなら……わからなくもないわね?」チラッ

エリーゼ「えー、分かってないのはあたしだけなの!?」

カミラ「ふふっ、いずれエリーゼにもわかるわ。とりあえず、カムイの様子を見に行きましょう?」

エリーゼ「うん!」タッタッタッ

レオン「やっぱり、そういうことなのかな……」

マークス「うむ……」
879 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:02:09.51 ID:UPnI7y9m0
エリーゼ「カムイおねえちゃーん!」バッ ダキッ

カムイ「わっ、エリーゼさん。いたたたっ……」

エリーゼ「あ、ごめん、カムイおねえちゃん。まだ痛むの?」

カムイ「はい。でも、少しですからそれほど問題ではありませんよ。昨日、私の治療をしてくれたとアクアさんから聞きました、ありがとうございます」

エリーゼ「だって、カムイおねえちゃんすごく傷だらけだったから。いっぱい心配したんだよ」

カムイ「すみません、心配をおかけしたみたいで。それに、昨日の朝食で、あなたに嘘を吐いてしまってごめんなさい」

エリーゼ「ううん、そのことはもういいよ。カムイおねえちゃんが無事なら、それだけですっごく嬉しいもん」

カムイ「ありがとうございます、エリーゼさん」

エリーゼ「えへへ。えっとね、今日は駄目だけど、今度は朝ごはん一緒に食べてくれる?」

カムイ「はい、もちろんですよ。今度、一緒に食べましょう」ナデナデ

エリーゼ「わーい! カムイおねえちゃん大好き!」

カムイ「はい、私もエリーゼさんが大好きですよ」

アクア「……」

カミラ「あら、アクア。なんだかおもしろくなさそうな顔ね?」

アクア「気の所為よ」

カミラ「ふふっ。カムイは大丈夫そうね」

アクア「ええ、もう不安は無いみたい。皮肉よね、こうして追い込まれることが一つの解決になるなんて……結局、私はカムイを支えられてなんていなかったことを見せつけられた気がするもの」

カミラ「いいえ、あの場にあなたがいなかったらカムイはどうにもならなかったわ。あなたはカムイのことを思って色々としてくれていた、それがカムイにはちゃんと伝わっていたはず。だから、今カムイはここにいられるのよ」

アクア「カミラ……。ありがとう」

カミラ「ふふっ」
880 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:06:07.75 ID:UPnI7y9m0
マークス「すでに荷造りの準備は整っている。おそらく明日にはテンジン砦へと向かうことになるだろう」

アクア「イレギュラーなことはそれなりにあったけど、ほぼ予定通りみたいね」

マークス「ああ、それと今朝テンジン砦から新たな伝令が届いた。父上、いや旧暗夜の軍勢がテンジン砦北部の渓谷地帯に集結しつつあるという話だ。この機に乗じて最後の攻勢に出るつもりかもしれん。おそらく、奴の最後の手が動きつつあると考えた方がいいだろう」

カミラ「その軍勢、奴が操っている死体とかじゃないのかしら? あれほどの損害に物資だって滞っているはずなのに、大規模な派兵が行えるとは思えないわ」

マークス「残念だが、軍勢の正体は不明だ。しかし、規模は膨れ上がっている。旧暗夜がテンジン砦で失った戦力は膨大だが、全滅という規模には達していないということだろう。向こうとしても離反を始めている者たちを引きとめる意図に加え、ここまでに募った敗走の不満を糧に人々を動かそうというつもりなのかもしれん」

レオン「情報を見る限り、奴らの規模は僕らとほぼ互角になりつつあるみたいだ。テンジン砦の兵力も白夜の支援に充てている今、一気に攻められれば崩されかねない。砦が無くなっているとしても、あそこに陣を組まれれば突破するのは至難の業だ。奴にみすみす時間を与えることにもなりかねない」

マークス「実際、この戦争はどう転んでも旧暗夜に勝ちの目は無い。この攻勢も防御に徹していれば切り抜けられるのも事実だ。しかし、時間を掛けて消耗を待つ時間がこちらには無い。旧暗夜を支配する異形神をこれ以上野放しにすることはできん」

アクア「それに、その気になれば奴は際限なく例の兵士を使ってくる。そういうことを私達が考えた上でどう動くのか、それを見て楽しむつもりなのでしょう」

カムイ「どうあっても、私達は動かなければならない状況にいるというわけですね」

レオン「うん。白夜の復興は到着した増援に任せつつ、裏でイザナ公王に支えてもらうことになってる」

マークス「イザナ公王にならば任せられると思っている。白夜の支援に関しては後続にすべてを委ねることにあるが、それで構わないか?」

一同『……』コクリッ

マークス「よし、本日で明日の出発準備を整えよう。各部隊への通達も忘れずに頼む。何かあるものはいないか?」

カムイ「あの……」スッ
881 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:09:25.50 ID:UPnI7y9m0
マークス「なんだ、カムイ?」

カムイ「……私はこのまま一緒に戦ってもいいのでしょうか?」

マークス「どういう意味だ?」

カムイ「先日の暴走で、私が危険だということは広まっているはずです。そんな私が皆さんと一緒に戦っていいのかどうか……」

マークス「つまり、また暴走するかもしれない。そうお前は思っているということか?」

カムイ「……」

マークス「未だに暴走するかもしれないという不安があるのであれば、悪いことは言わない。白夜ですべてが終わるのを待っていてくれて構わない。しかし、それをこちらから強制するつもりはない」

カムイ「……私を拘束したりはしないのですか?」

マークス「ああ、お前がどれだけ苦しみ戦ってきたのかを知っている。だからこそ、お前自身に決めてほしい。ここに残るか、それともまだ歩むのかを」

カムイ「マークス兄さん……」

マークス「お前が望むのならば共に闘おう。だが、少しでも不安があるのであればここに残れ。この先の戦いは力以上に、そういったものが求められる気がしている。それを十分に加味して、この先の戦いに迎えるかどうかを判断してほしい」

カムイ「力以上のもの……」

カムイ(それは私が願ったことのようなものなのでしょう。心の強さ、心の在り方、そういったものがこの先の戦いで命運を分けるのだとしたら、今の私には……)

カムイ「……」

マークス「明日までは時間がある、それまでにお前の中の答えを見つけ、それを私に示してほしい。できるか?」

カムイ「……わかりました」

アクア「カムイ……」

カムイ「大丈夫です。いろいろと気持ちの整理もして、マークス兄さんに示してみせます。もう不安はありませんから」

カムイ(そう、不安はないんです。その代わり、今の私には何もありません。だからこそ命令があれば剣を取ることも、戦うこともできるでしょう。でもそれは壊すことしかできない力、そう思えて仕方がありません)

カムイ(それはマークス兄さんの求める答えでは無いはずです……。私が私の意思で戦う理由をマークス兄さんは見せてほしいはずですから……)
882 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:11:38.69 ID:UPnI7y9m0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『アクアに宛てられた部屋』―

アクア「ごめんなさい、ここまで連れて来てもらって」

カムイ「いいえ、私のために色々としてくださったんですから、これくらい当然です。その、怪我の具合はどうですか?」

アクア「ええ、今日一日休めば問題はなくなると思う。今日はここで静養しているわ」

カムイ「はい。それにしてもすみません、そんな状態なのに昨日の夜から私に付いていてくれて」

アクア「気にしないで。あなたの傍にいると言ったし、それに一人じゃないって思えるくらい傍にいてあげるとも言ったでしょう?」

カムイ「アクアさんがいつも傍にいるとなると、怖いものがなくなってしまいそうです」

アクア「ふふっ……。でも、大丈夫。今のあなたならきっと…見つけられるはずだから」

カムイ「アクアさん……。さぁ、布団に入ってください」

アクア「ええ、カムイ、おやすみ……」

カムイ「はい」

アクア「……すぅ……すぅ……」

カムイ「すぐに眠ってしまいましたね。かなり疲れていたみたいです」

アクア「ん、カムイ……」

カムイ「ふふっ。夢の中まで私のことだなんて、勿体無いですよ」

カムイ(本当に勿体無いと思います。でも、そう言いながらもアクアさんが私の傍にいてくれることに安心している私がいるのも確かです)

カムイ「一緒に落ちても構わない……ですか。今思うと凄いことを言われてしまった気がしますね」

カムイ(それは死んでも一緒という意味にも取れますからね。これから先死んでも一緒だなんて、まるで告白みたいです)

カムイ「まぁ、アクアさんもそういう意味で言ったわけではありませんよね」

カムイ(だけど、アクアさんが私のことを大切に思ってくれていること、それだけは思い違いでないとうれしいです)
883 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:14:14.89 ID:UPnI7y9m0
 タッタッ 
  スーッ トン

カムイ「……私も部屋に戻って休みましょう。今日はさすがに外へ出ることは控えた方がいいでしょうし」

カムイ(昨日のことで、多くの人を不安にさせるわけにはいきませんから……。でも、出発するまでに謝りに行かないといけません。あれは私の起こした事件なのですから)

カムイ「出発するまでですか……。もしかしたら、私はここで待っているしかないかもしれないというのに……」

カムイ(マークス兄さんが求める私の答え、戦う意思。たしかに今、私の中には何もありはしません。広大な印の無い暗闇の中を照らす光、向かうべき光はなくなってしまったのですから)

カムイ「私が選んだ多くのことは、誰かのために多くの犠牲を生むものばかりだったんですから……」

カムイ(認めてしまえば全てわかってくる。私の願いは最後に結果を残せなかった。そして結果を分かっていながら、私は自分の願いと戦うことの意味を守るために目をそらした。認めたくないものを認めようとしなかった。あまつさえ、それを使ってアクアさんに強くなった自分を見せようとしていた)

カムイ(結局すべては無になって、今の何もない私がいる……)

カムイ「何もない今に不安がないのは……。希望も絶望もないからなのかもしれませんね」

カムイ(何かを願えば、それが光として私を導いてくれる。でも、その希望の光が指し示すものが絶望なのかもしれない。それがどちらなのかは辿り着くまでわからない。今の私にその光へと進む力があるのかどうか……。光へと進むことに疑問を持たないでいられるのかどうか……)

カムイ「その光を追う中で、進むことが不安に変わってしまうのなら、私はここで……」

???「あら、カムイ。アクアの部屋で休むんじゃないのかしら?」

カムイ「カミラ姉さん? どうしてこちらに?」

カミラ「ちょっとね。それよりどうしたの、何かを悩んでいるみたいだけど? もしかしてアクアのことかしら?」

カムイ「いえ、マークス兄さんからの問いかけのことを考えていて……」

カミラ「あなたが戦う意味のことかしら?」

カムイ「はい……。いろいろと考えてはいるのですが」

カミラ「そう、カムイ、時間はあるかしら?」

カムイ「は、はい。大丈夫ですけど……」

カミラ「少しお話をしましょう」
884 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:15:59.80 ID:UPnI7y9m0
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『カミラに宛てられた部屋』―

カミラ「さぁ、入ってちょうだい。と言っても、私の自室ではないけど」

カムイ「は、はい。失礼しますね」

カミラ「それで、カムイはなにを考えているのかしら?」

カムイ「何をとは……」

カミラ「考えているのでしょう? 戦う意味、それに見合う願いとか。そういうことを……」

カムイ「……はい。少し考えてみたんです。色々なことがありました。でも、私がしてきたことは……」

カミラ「最後に結果を残せなかった。そういう結論に至ったんじゃないかしら?」

カムイ「……はい。結局、私はヒノカさんもリョウマさんも助けることはできませんでした。それに」、ヒノカさんを助けると決めた結果、白夜全体の被害は大きなものになってしまってもいる。私の選んだことは、すべて被害を大きくすることばかりだったと……」

カミラ「それは結果論というものよ。争いが始まってしまった以上、被害は大きくなり続けるものよ」

カムイ「ですが、ヒノカさんを助け出せなかった上に、この被害では……」

カミラ「じゃあ、ヒノカが助かっていたら、あなたは被害を容認できた? 被害は大きかったけれど、ヒノカ王女が助かったことを埋め合わせに帳尻を図ることができたのかしら?」

カムイ「それは……」

カミラ「もしもそう考えることができたというのなら、あなたはヒノカ王女の言う通りに彼女を殺すことを選んでいたと私は思うわ」

カムイ「え?」

カミラ「ねぇ、カムイはどうしてヒノカ王女やリョウマ王子を助けたいと願ったの?」

カムイ「それは……」

カミラ「この後の世界のため、戦争の後の両国のため?」

カムイ「いいえ。……私は、ただ守りたかっただけです。両国のこととか、今後の世界のためとか、そういうことは何もありませんでした。ただがむしゃらに、生きていてほしいと思ったから……」

カムイ(そんな子供みたいな話なのです。大きな理由なんて何もありません、戦争が終わることも関係ありません。ただ、守りたかっただけなのですから)
885 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:17:15.05 ID:UPnI7y9m0
カミラ「そう、ならもう答えは簡単だと、私は思うわ」

カムイ「簡単ですか?」

カミラ「ええ、あなたに心が芽生えたのがいつなのかはわからない。でも、あなたにとって戦うことはそういう事なのよ。マークスお兄様のように新しい暗夜のために戦うことや、レオンみたいにサクラ王女たちが帰ることのできる白夜を取り戻すためでもない。守る事っていうあなただけの戦う意味を口にしているのよ」

カムイ「……でも、私は守ることができませんでした」

カミラ「いいえ、守ることのできたものはあるわ」

カムイ「え?

カミラ「これを預かってきたの」

カムイ「……これは手紙ですか?」

カミラ「ふふっ、さっきヒノカ王女にもらったものなの。あなたに届けてほしいって。あなたの目が見えないことを教えたら驚いていて、読んであげてほしいって言われたの」

カムイ「ヒノカさんが、私に?」

カミラ「ええ。でも実際は手紙というよりは伝言ね、あなたと話がしたいそうよ」

カムイ「私と話したいって……。私はヒノカさんを守れなかったのに、どうして」

カミラ「そうね。私達が戦ったヒノカ王女はもうこの世にはいない。私の約束も永遠に果たされることが無いのも事実よ」

カムイ「……」

カミラ「だけど、カムイは今いるヒノカの未来を守ったわ。あの子の言う通りに命を奪っていたら、あなたにこの手紙は届かなかったし、私も会いに行くことは無かった。あなたは今いるヒノカ王女にとっての未来を守ったのよ」

カムイ「……本当に守れたのでしょうか?」

カミラ「それを確かめるためにも会いに行ってあげて。それがあなたのためにもなるっておねえちゃんは思っているから」
886 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:18:47.17 ID:UPnI7y9m0
カムイ「……」

カミラ「カムイ……」

カムイ「カミラ姉さん、色々とありがとうございます。行ってきますね、ヒノカさんの下に」

カミラ「ええ、私も付いて行った方がいいかしら?」

カムイ「いいえ、大丈夫です。こうしてカミラ姉さんに支えてもらえましたから、ここからは一人で行けます」

カミラ「そう……。やっぱり、少し妬いちゃうわね」

カムイ「?」

カミラ「ふふっ、気にしないで。ほら、女の子を待たせちゃだめよ、早く行ってあげて」

カムイ「はい」タッタッタッ

カミラ「……カムイ」

カムイ「なんですか、カミラ姉さ――」

 ギュッ

カミラ「……」

カムイ「姉さん?」

カミラ「……大丈夫、あなたは強い子だから、きっと見つけられるはずよ」

カムイ「はい」タタタタッ

カミラ「……」

カミラ「……妬いちゃうわね。あの子の特別になれちゃうアクアが羨ましいわ……」

カミラ(私が抱きしめても、あの子は何も思わない。それはどんなに頑張ってもおねえちゃんにしかなれないっていうこと……)

カミラ「本命以外に無頓着なんだから……」
887 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:22:09.67 ID:UPnI7y9m0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋前』―

カムイ「ここですよね。ヒノカさんのお部屋は…」

カムイ(昨日、あのような形で立ち去ってしまった私に、一体何の話があるのでしょうか? 私が戦う意味を確かめられるはずと、カミラ姉さんは言っていましたが……)

カムイ「いいえ、考えてもしょうがないですよね。今の私は何もないのですから」

 コンコンッ

ヒノカ『どちらさまですか?』

カムイ「すみません、今大丈夫ですか?」

ヒノカ『その声、カムイさん?』

カムイ「そのカミラ姉さんからお話がしたいと聞いたので……。今大丈夫ですか?」

ヒノカ『はい、大丈夫ですよ。入ってください』

 スーッ 

カムイ「失礼しますね」

カムイ(部屋の中に重苦しい空気はありません。どちらかというと落ち着いていると言えばいいのだと思います。もう、すべてが白日の下に晒された今、この部屋に不安と言ったものが無くなったように澄んでいるように感じられる)

ヒノカ「すみません、こんな大事な時に呼び出してしまって……」

カムイ(私に語り掛けてくる気配のシルエットはヒノカさんその物で、私は守れなかった現実――)

(その存在の前にようやく立ったのでした)
888 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/06/28(金) 17:25:21.88 ID:UPnI7y9m0
今日はここまで
 
 FEifが発売されてから4年が経ったんですね。このスレも長く続け過ぎているので、今年中に完結させたいです。
 
 来月には新作が発売されますが、私は青赤黄色の順で楽しむ予定です。
889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/29(土) 14:25:52.27 ID:D4apZBpDO

パルレが「パーフェクトティータイム」になるとは…
890 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:19:00.14 ID:bONghvNA0
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋』―

ヒノカ「明日にはここを発つと先ほどカミラさんがいらして教えてくれて、今の内にカムイさんにお話を聞きたいと。すみません、本当に目が見えなかったんですね。それなのに私は……」

カムイ「いいえ、気にしないでください。初対面の人が分かるわけもないことですから」

ヒノカ「そうですか……。今日は明日の準備などで忙しいはずなのに、こうしてお呼びしてしまって」

カムイ「いいえ、今日は特にやることはありませんので気にしないでください。それよりも体の具合はどうですか?」

ヒノカ「はい。長い間眠っていた所為か、すこし体が動かし辛い気もします。でも体調が悪いという感じはしないので、平気だと思います」

カムイ「それは良かったです。でも、昨日目が覚めたばかりですから、あまり無茶はしないでくださいね」

ヒノカ「はい。でも、カムイさんは私よりも大怪我をされているように見えますけど、大丈夫なのですか?」

カムイ「ええ、大丈夫です。傷自体はもう塞がっていますから、変な事をしなければ明日には問題なくなっているはずです」

ヒノカ「そうですか……。うん、カムイさんがそういうなら、きっと大丈夫ですね」

カムイ「ふふっ。それで、私とお話をしたいということなのですが……」

ヒノカ「はい。その……私について、お聞きしたいことがあったんです」
891 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:21:06.68 ID:bONghvNA0
カムイ「私……、それはヒノカさんのことですか?」

ヒノカ「はい」

カムイ「どうして、ヒノカさんの事を知ろうと?」

ヒノカ「昨日、多くの人が私を訪ねてくれて、カムイさんが言ってくれたように、私が目覚めたことが大変なことだということはわかりました。みんな喜んでくれました。でも、今の私を理解するたびにみんな悲しい顔をしてしまいます」

カムイ「……」

ヒノカ「おそらく、まったく違うのでしょう。そのヒノカさんと私は……」

カムイ(それはかつてのヒノカさんを知っている人たちならそう思うはずです。言葉遣いも、あり方も違う。なのに、容姿はヒノカさんそのものという矛盾は、ヒノカさんを大切に思っていた人たちにとって言葉で表せないものでしかないのかもしれない)

ヒノカ「だから、私は本当の私がどんな人だったのかを知りたいんです。最後に会ったのがカムイさんだという話を聞いたので、それで……」

カムイ「それを聞いてどうするんですか?」

カムイ(それを聞いてヒノカさんになるというのですか? みんなを安心させたいから、ヒノカさんになろうということなんですか?)

カムイ「それを聞いたとしても、あなたが皆の知っているヒノカさんになれるわけは――」

ヒノカ「勘違いしないでください、私は本当のヒノカさんになろうとなんて思っていません」

カムイ「え?」
892 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:22:06.40 ID:bONghvNA0
ヒノカ「今の私と話に聞くヒノカさんは全く別の人間ということはわかっています。そして、その人の事を知ったところで、代わりになれるはずもないんです」

カムイ「ではどうして、ヒノカさんのことを知りたいんですか?」

ヒノカ「……私が生きていくためにです」

カムイ「生きていくため?」

ヒノカ「はい」

カムイ(そう話すヒノカさんの視線はとても強く感じられる。私には、今ヒノカさんがどのような顔をしているのかわからないけれど、その真摯に何かと向き合っている姿勢だけは刺さるくらいに鋭いと感じた)

カムイ「でも、生きるだけなら、私達の知るヒノカさんのことを知る必要は……」

ヒノカ「カムイさんの言うとおり、私がそれを知ることは生きる上で必要のないことだとは思っています」

カムイ「なら、どうして……」

ヒノカ「私が私として生きることは、今までのヒノカさんを本当の意味で殺すことになります。この先、それは避けることの出来ないことです。唯一避けることができるとするなら、今私が死ぬこと以外に方法はありません」

カムイ「……」

ヒノカ「だけど、それをすることを私は選べません。死ぬのが怖いという理由もあります。だけどそれ以上に、私はヒノカさんが魂を賭して紡いできた絆を忘れて生きていくわけにはいかないからです」

カムイ「絆……?」
893 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:23:47.25 ID:bONghvNA0
ヒノカ「本当なら私は存在してなどいません。それが今いる私なのだと思います。そんな私を紡いでくれたのは、カムイさんとヒノカさんだと思っています」

カムイ「私とヒノカさん?」

ヒノカ「カミラさんから聞きました。ここで大きな戦いがあって、ヒノカさんは悪い何かに心を奪われていたと。その悪い何かからヒノカさんを助けるために、カムイさんは戦ってくれたと」

カムイ「ですが、私はヒノカさんを守れなかった。逆に守ってくれたんです。私は何もできなかった……」

ヒノカ「何もできなかったのなら、今こうして私とカムイさんが話をしている事は無かったと思います。ヒノカさんが魂を掛けてまで守ろうとしたのが誰なのかは、予想がつきます。それはきっとカムイさんの事だと思うんです」

カムイ「どうして、そう思うんですか?」

ヒノカ「カムイさんがここで私を見てくれていたこと、そして今来てくれたことが何よりの証だと思うからです。ヒノカさんがあなたを大切に思っていたことを、あなたは理解していたのだと思います。そして、あなたもヒノカさんを大切に思っていたはずです。その二人の思い、絆が私を紡いだのかもしれないと」

カムイ「私の思いとヒノカさんの思い……」

ヒノカ「はい。そして、絆は今もきちんと紡がれています。私があなたに話を聞こうとしたことも、そしてあなたが私のお願いを聞いてくれたことも、それは絆が紡ぎあげてくれるものだと思います」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「だから私はヒノカさんのことが知りたい。私という存在がこうして生まれる前に、一生懸命に生きていた本当の私のことを理解したい。すべてを理解することはできないとわかっています。でも、その人が苦しんだり悲しんだり、笑ったり泣いたりしながらも紡いできたものを、忘れ去るわけにはいきません。ヒノカさんの歩んで来た道を無にすることは絶対に許されないんです

894 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:25:51.24 ID:bONghvNA0
カムイ(脳裏にヒノカさんの姿が思い浮かぶ。私の記憶にあるヒノカさんはとてもまっすぐな人で、同時にとても優しい人だった。勇ましい外見とは裏腹に、とても繊細で人に優しくできるそんな人。その姿が今のヒノカさんに重なった)

カムイ「あなたはヒノカさんになるのですか?」

ヒノカ「はい。今の私としてのヒノカさんになります。それはこの先を託された私の歩むべき道、そう思っています。それに……」

カムイ「?」

ヒノカ「今、私がいるのはあなたがヒノカさんを守るために戦ってくれたからです。私はあなたの願いとは違う存在で、多くの人が望んでいる者でないことも分かっています。でも、あなたの誰かを守るという気持ちの絆、それを私で終わらせたりしません。私はそれを紡いでいきたいんです」

カムイ「誰かを守るという絆……」

カムイ(誰かを守る事、それは何とも簡単な言葉だと思った。だけど、それはとても簡単に受け入れられる言葉にも思えた。難しい理由や、願いの無くなった私の中心に溶け込んでいくように感じる。違和感も何もなく、私はそれを受け入れる)

カムイ(……そうか。結局、それだけの事なんですね)

カムイ(私にとって、戦う意味なんていうものは、それだけで十分だった)

カムイ(元々、私は難しいことなんて考えていなかった。ただ誰かを守りたいという思いだけがあって、だけどそれは私を動かしてくれる確かな意味だったから…)
895 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:28:15.05 ID:bONghvNA0
カムイ「……ふふっ」

ヒノカ「あ、あの、私は何かおかしなことを言ってしまったのでしょうか?」

カムイ「いいえ、何もおかしいことなんてありませんよ。その、自分は思ったよりも単純な人間なのだと、思ってしまっただけです」

カムイ(カミラ姉さんの言う通り、私の心に根ざしているのはそういうものだった。それ以上もそれ以下も無く、ただ守りたい人を守るために戦う、そんな単純な人間に過ぎなかったのだから)

カムイ「ありがとうございます、ヒノカさん」

ヒノカ「え、えっと、どういたしまして?」

カムイ「それでヒノカさんのどんな話をお聞かせすればいいのでしょうか?」

ヒノカ「え、本当にいいのですか?」

カムイ「はい。あなたはヒノカさんなんですから。ヒノカさんのことを知る権利はありますし、あなたにそのことを伝えるのも、絆の一つであるはずです」

カムイ(初めて白夜にやってきた私が、お母様に聞かされた昔の私の話。私は当然信じなかった、私では無い何かが元々この体にあったという事実を鵜呑みにできるわけがなかったからだ。そんな私に比べてヒノカさんはとても強く、それを受け止めることが出来る人です)

カムイ(普通そんな状況になったら知ろうとなんて思わない。耳をふさぐに決まっている。多くの視線がヒノカさんに刺さったはずだ、憐れみや落胆、中には怒りのようなものもあったかもしれない。それをこの人は受け止めて先へと進もうとしてる。ヒノカさんが紡いでくれた意味が消え去らないように……。私は、そんな思いと絆を守りたいと思った)

カムイ「ですが、あまりいい話ばかりというわけではありませんよ?」

ヒノカ「わかっています。でも、教えてください、カムイさん」

カムイ「……わかりました。でも、その前に一つお願いがあるのですが、いいでしょうか?」

ヒノカ「はい、何でしょうか?」

カムイ「あなたの顔を触らせてもらってもいいですか?」
896 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:29:11.13 ID:bONghvNA0
ヒノカ「顔ですか?」

カムイ「はい。こうして目が見えないので相手の顔に触れて覚えるようにしているんです」

ヒノカ「そうなんですね。ふふっ、カムイさんは不思議な人ですね。どうぞ、気軽に触ってください」

カムイ「はい、失礼しますね」スッ

カムイ(ヒノカさんの肌に触れる。顔の輪郭、目尻の形、髪の毛の触り心地、それらすべては記憶の通りのヒノカさんを思い出させる)

ヒノカ「ん、くすぐったいです……」

カムイ(ヒノカさんの声を聴きながら、前に触れた時のように頭の中にもう一つのヒノカさんの像を作り上げる。目の前のヒノカさんを受け入れる準備は整った)

カムイ「ありがとうございます」

ヒノカ「いいえ」

カムイ「それじゃ、少しずつ話していきますね。気になる事があったら言ってください」

カムイ(そうして、私はヒノカさんのことを懐かしむように口にした。それはヒノカさんがいなくなってしまった現実を本当の意味で受け入れるための儀式のように感じる)

カムイ(徐々にだけれど、自分の中の暗闇に何かが入り込んでくる気がした。でも、それは悪いものではないという気はしている。おそらく、これは私にとって必要なものなんだろう。そう考えていけばいるほど、本当の意味で私の願いが砕けたことを私は受け止め始めていく)

カムイ「……」

カムイ(ヒノカさんは守りたかった人を守れなかった私が、また誰かを守るために戦うことを許してくれますか?)

カムイ(心の中での言葉に答えはない。私の中にはその誰かを守るために戦う事だけがあるだけ)

カムイ(だけど、それがわかっただけで十分。それがあるだけで、まだ暗闇の中を歩いて行ける。そう思えた)
897 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:30:57.86 ID:bONghvNA0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『城内・廊下』―

カムイ「……守るために戦う……そうですよね。それが私の戦う理由でもあったんですから」

カムイ(どんな選択をしても、どんなことがあっても、私は誰かを守るために剣を振るってきた。現実の前にすべてを守れないことを知っても、守りたい人を守るためになら戦うことが出来た)

カムイ(それを愚かなことだという人もいるとは思います。実際、愚かな事なのかもしれません。私はその多くを救えずにいるのですから……。でも――)

カムイ「それが私なんですよね……」

カムイ(まだ時間はあるけれど、マークス兄さんに話に向かおう。この答えはとても漠然としているものだけど、今の私はそれ以外に剣を取って戦う理由はありません。誰かを守るために剣を取ることが、私の……)

???「やっと戻ってきたわね」

カムイ「その声……、オボロさん?」

オボロ「ええ、そうよ。昨日は色々大変だったみたいだけど」

カムイ「はい、多くの人に迷惑を掛けてしまいましたからね……」

オボロ「自覚があるなら何も言わないわ。それに、そのことを話しに来たわけじゃないの」

カムイ「では、何を話しに……」

オボロ「私が誰の命令で動いているかなんて、簡単に分かるでしょう?」

カムイ「……そうですね。たしかに簡単な気がします」

オボロ「物分かりが早くて助かるわ。それじゃ付いてきてくれる?」

カムイ「はい……」

 タッ タッ

オボロ「……ヒノカ様の件、私も聞いたわ」

カムイ「そうですか。もう聞いているんですね」

オボロ「ええ。白夜王都には広まっているわ。まぁ、あの場であなたが口にしたのだから当然でしょうけど。ともかく、そういったことも含めてあなたから事情を聞きたいそうよ」

カムイ「わかっています。それは私が伝えるべきことですから……」

オボロ「そう。……ここよ、ちょっと待っててちょうだい」

 トントン

???『誰だい?』

オボロ「……タクミ様、カムイ様をお連れいたしました」

タクミ『……わかった。入っていいよ』

オボロ「失礼します」

カムイ「失礼します」

 スタッ スタッ

タクミ「……久しぶりだね、カムイ」

カムイ「はい、タクミさん。お久しぶりです」

タクミ「早速で悪いけど、色々と話してもらえるかな。今の白夜王国のことやユキムラたちのこと、そして――」

「リョウマ兄さんとヒノカ姉さんの事を……」
898 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:32:46.21 ID:bONghvNA0
今日はここまで

 新作発売までのあと三週間、待ち遠しいですね。
899 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/04(木) 10:36:44.31 ID:bONghvNA0
 この先の展開を安価で決めようと思います、参加していただけると幸いです。

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◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
 現在の仲間の支援表は>>867 >>868を参照ください。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>900>>901

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)

 このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 21:53:39.26 ID:OnzSNWeOO
モズメ
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/09(火) 18:37:28.80 ID:ez4220Z8O
エルフィ
902 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/13(土) 08:51:44.39 ID:CamgFmbF0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『地下市場』―

モズメ「うーん、どないしよ……」

エルフィ「あれは、モズメ?」

モズメ「暗夜の食材、中々癖が強くてまだ慣れてへんから、どれ選んでいいかわからへん。少しだけ買ってそれぞれの癖とか見極めんと……」

エルフィ「モズメ、何をしてるの?」

モズメ「ひゃっ! エルフィさん!?」

エルフィ「驚かせちゃってごめんなさい、何か悩んでいるように見えたから……。ここは野菜を扱ってる市場ね」

モズメ「そうやね、白夜の食材って思ったより暗夜では出回ってないみたいやから、まぁ戦争中で細々とやってた場所も今の状況じゃ商売出来ないんやろうな」

エルフィ「それで、白夜の食材が無くて落ち込んでいたの?」

モズメ「ちがうんよ。慣れてる食材が使えないのは辛いけど、それが料理を止める理由にはならへんよ。だから、暗夜の食材で何か作れへんかなって思って……。でも、やっぱり勝手がちがうのも多くて、どれを選んだらいいのかわからないんよ」

エルフィ「白夜ではどんな食材があったの?」

モズメ「うーん、お米が主食やったな。それで、お味噌汁に切った根野菜を入れて煮込むんよ。お味噌の味が染み込むようにちょっと刃を入れたり、うまく行くと歯ごたえと味が溜まらん塩梅になるんよ」

エルフィ「おいしそうね」

モズメ「でも、暗夜にはお味噌なんてないし、あるのは葉野菜だけみたいやから……。エルフィさんは、何か暗夜の料理でおすすめとかあるん?」

エルフィ「わたしは大抵の物は美味しいって思ってる。だけど、ごめんなさい、レシピとかそういうものはわからないの」

モズメ「そっか……。はぁ、失敗したらどないしよ」

エルフィ「大丈夫、モズメは料理が上手だから、きっと暗夜の食材でもおいしい物が作れると思うわ…」

モズメ「エルフィさん……」

エルフィ「その、わたしが言っても説得力はないかもしれないけど……」

モズメ「そんなことあらへんよ。うん、そうやね。ここはガツンと試してみないと。ありがと、エルフィさん」

エルフィ「気にしないで、悩んでいたら話をしてと言ったのはわたしだもの。役に立ててよかったわ」

モズメ「よし、そうと決まれば色々と買って試して――」

 きゅるるる〜

エルフィ「……食材を見てたらお腹空いちゃった」

モズメ「エルフィさん、女の子がこんなところでお腹ならしたらあかんよ……」

【エルフィとモズメの支援がBになりました】
903 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/13(土) 08:59:48.61 ID:CamgFmbF0
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『タクミの部屋』―

カムイ「――以上が、今の白夜王都の状況です。といっても、私が知っている限りの部分ではありますけど」

タクミ「いいや、ユキムラが死んで強硬派は崩壊したっていうのが分かっただけでも十分だよ。僕はすべてをあんたに任せてしまったんだから……」

カムイ「あの時、タクミさんが私達と共に行動していたら、ヒノカさんやリョウマさんがどうなるかわからなかった以上、あなたの判断は間違っていなかったと思います。問題なのは、それに応えることが出来なかった私の方です」……」

タクミ「応えるって、王都に辿り着いた時、リョウマ兄さんはすでに死んでいたって、あんたは言ったじゃないか。どんな仕掛けかもわからないけど、リョウマ兄さんはもう、人間じゃなかったって。だったら……」

カムイ「私がスサノオ砦でヒノカさんを無事に保護することが出来ていれば、きっとリョウマさんは命を絶つことはなかったと思うのです。リョウマさんが命を絶ったのはスサノオ長城での一件のはずですから」

タクミ「スサノオ長城の一件?」
904 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/13(土) 09:04:51.94 ID:CamgFmbF0
カムイ「スサノオ長城での戦いについては、タクミさんも耳にしていると思います」

タクミ「ああ、白夜軍もあんたたちもかなりの損害を出したって。ヒノカ姉さんも多くの仲間を失ったって聞いた……。だけど、それがなんでリョウマ兄さんの死と関係が出てくるんだ?」

カムイ「スサノオ長城での戦いでヒノカさんは暗殺されかけたんです。ユキムラさんの指示によって……」

タクミ「なんだって!?」

カムイ「現にサクラさんたちは暗夜兵に扮した白夜兵を見つけ、交戦しています。そして、彼らの口からヒノカさんの暗殺に関して依頼を受けていることも聞いたそうです。ヒノカさんには、私達と祖国を守るために勇敢に戦い散っていったという筋書きが用意されていたのだと思います」

タクミ「ヒノカ姉さんの死をあんたたちの所為にしてまで暗殺したい理由っていうのは……」

カムイ「……ユキムラさんは私を苦しめると同時に、暗夜という存在そのものを悪としたかったのだと思います」

カムイ「ユキムラさんが私を恨んでいる事は知っていました。私を苦しませるのと同時に、白夜の人々にとって暗夜が悪であるというその事実だけを植え付けたかったのかもしれません。私たちがヒノカさんを殺したということになれば、王族派の人たちも私たちに悪意を向ける可能性もありましたから」

タクミ「そんなことのために、ヒノカ姉さんの命を狙ったっていうのか?」

カムイ「それがユキムラさんの目的だった以上、そうなるのだと思います」

タクミ「……それはわかったよ。でも、それは阻止できたんだろう?」

カムイ「はい、そのユキムラさんの野望を阻止することは出来ました。ですが、阻止したところで、奴らが現れたんです」
905 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/13(土) 09:09:46.48 ID:CamgFmbF0
タクミ「奴らって、白夜王都にも現れたっていう……」

カムイ「はい。最初、奴らの狙いはわかりませんでした。ですが、奴らの戦力はスサノオ長城で籠城戦を続けることが出来ないくらいに多かった。だから、白夜兵の皆さんにヒノカさんを白夜王都まで連れて行ってほしいと撤退させたんです。その時は白夜兵の数も多く、それに私達が足止めも出来た。ヒノカさんに生きていてほしい一心でそう判断したんです。ですが――」

タクミ「そいつらはヒノカ姉さんを狙いに行ったっていうのか」

カムイ「はい……。私達を無視して、奴らはヒノカさん達を追うことに専念したんです。私達は足止めをされて何もできず、奴らが見えなくなるのを待つしかなかった。私は手の届く場所にあった人を守り通せなかった……」

タクミ「カムイ……」

カムイ「それが引き金だと思います。たしかに、すべての白夜兵が殺されてしまったわけではありません。ミタマさんなどは白夜王都に到着しています。でも、ヒノカさんの護衛を引き受けた方たちは一人も王都に戻らなかった。唯一辿り着いたヒノカさんは錯乱していたとミタマさんから聞きました」

カムイ(おそらく、ヒノカさんは奴に見せつけられたのでしょう。共に戦ってくれた人たちが一人残らず殺されていき、そして自分だけが生かされるという、そんな地獄を体験した。そして奴から何らかの形で力を受け取った、もしくは明け渡された……。その力は苦しみや絶望そのものにとって代わってしまったのかもしれません……)

カムイ(だからこそ、あの時ヒノカさんは抑えられないと言っていたのかもしれません。自分の意思ではどうにもできないほどの苦しみだからこそ、私に殺してほしいと……)
906 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/13(土) 09:11:37.16 ID:CamgFmbF0
タクミ「それがリョウマ兄さんの死に繋がったっていうのか……」

カムイ「ヒノカさんのこともそうですが、ユキムラさんは誰かにスサノオ長城での敗退の責任を取らせようとしていたそうです。それが王族派の人々と強硬派の間に大きな火種になろうとしていた。だけど、それをリョウマさんはどうにか阻止したかったのだと思います」

タクミ「敗退の責任って……」

カムイ「そして責任を取る人間は位の高い人間であることが好ましかったはずです」

タクミ「まさか、それでリョウマ兄さんは……」

カムイ「……」

タクミ「なんでそんな馬鹿なことをするんだ」

カムイ「白夜のためだったのだと思います」

タクミ「白夜のためだって?」

カムイ「スサノオ長城が陥落したという知らせが入った頃、白夜は内乱寸前で王族派の多くは強硬派と戦うつもりだったそうです」

タクミ「そうだろね。もう強硬派に従う理由は無くなりつつあったはずだ」

カムイ「戦力の差はそれなりにあったようですけど、王族派が白夜の主導権を握るために強硬派の排斥に乗り出すのも時間の問題だったんでしょう。それがリョウマさんをさらに追い込んだのかもしれません」

タクミ「追い込んだって、どうして……」

カムイ「リョウマさんは白夜の民同士で戦いが起こることだけは、どうにかして避けたかったのだと思います」
907 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/13(土) 09:15:44.87 ID:CamgFmbF0
タクミ「もう一度手を取り合うことができるかもしれないって、そう信じていたっていうのか?」

カムイ「リョウマさんにはリョウマさんの信じる正義があったのだと思います。その正義は白夜の人々同士で戦いが起きる事態を容認できなかった」

タクミ「同士討ちを避けようとしていたって、もうすでに状況は――」

カムイ「ええ、状況は内乱状態と言ってもいい物だったと思います。だけど、ユキムラさんも強硬派を抑えられるほどの求心力を失っていたようですし、状況は詰まっていたのかもしれません。ユキムラさんは戦争に勝つことも、負ける事にも興味は無かった。後世に暗夜を悪逆非道な国家として残すことだけが目的だった。もう、誰も白夜をコントロールできていなかったんです。でも、リョウマさんは諦めなかった」

カムイ「信じていたんです。白夜が元の白夜に戻ることを。もう一度、民と民で力を合わせられる日が来ることを……。そんなリョウマさんにとって、内乱という出来事は阻止しなくてはいけないことだった。内乱という、同じ国の民が殺し合うという事態を、引き起こしたくなかったのだと……」

タクミ「だから、自害したっていうのか……」

カムイ「リョウマさんは、自分の命を犠牲にすることで、この内乱に似た状況を終わらせられる可能性に賭けていたのかもしれません。最初に行った裏切り者の処罰の時から、もうすべては狂ってしまった、それを許したのは自分自身だと悔やんでいたようでした……」

タクミ「……」

カムイ「それを抱えたまま、ずっと戦っていたのだと思います。誰にも伝えることはできないままに……」

タクミ「なんだよ、それ。そんなことがあったのなら、どうしてあの時話してくれなかったんだ…」

カムイ「あなたを巻き込みたくなかったのだと思います。リョウマさんは自分の正義は自分の物でしかなかったと言っていましたから……」

タクミ「そんなの聞いてみなくちゃわからないじゃないか!」

カムイ「タクミさん……」
908 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/13(土) 09:19:57.58 ID:CamgFmbF0
タクミ「……わかってる。リョウマ兄さんが、どうして僕にそれを言わなかったのかも、分かってるついもりだよ……。僕はきっと、それを聞いたらユキムラ達と戦うことを決めていたはずだから、それがリョウマ兄さんとヒノカ姉さんを助けることだって思ったはずだから……」

カムイ「あなたも含め、白夜の人々に同士討ちなどしてほしくなかったのかもしれません」

タクミ「兄さん……。ごめん、取り乱して。ユキムラに従っていた強硬派の生き残りは?」

カムイ「全員が地下牢にいると聞いています。ユキムラさんを失った今、素直に従ってくれています」

タクミ「だけど、あいつらはユキムラに従っていたんだろ? だったら、その考えを引き継いで何か悪巧みをする可能性だって……」

カムイ「ユキムラさんにとっての願いはユキムラさんだけの物でしかありません。現にユキムラさんは、その強硬派に殺されたのですから」

タクミ「え……」

カムイ「結局、ユキムラさんもリョウマさんと同じ、自分だけの正義をもって戦っていただけだった。その正義を私は認めるわけにはいきません。でも、それがユキムラさんにとっての正義だったんでしょう……」

タクミ「ユキムラも裏切られて死んでいったっていうのか……」

カムイ「はい……。そう聞いています。だから、もう強硬派に何か事を成す理由はありません。彼らにはそういった正義が、命を賭ける程のものがあるとはおもえませんから」

タクミ「だけど、ユキムラを殺した奴らは放っておくわけにもいかないだろ。そいつらは――」

カムイ「ユキムラさんを殺し、ヒノカさんを使って私たちに交渉することを目論んでいた方々はみんな殺されてしまいました。ヒノカさんの手によって……」

タクミ「え?」

カムイ「タクミさんにはお話をしないといけないと思っています。この白夜王都で起きた戦いの訳、そして――」

「ヒノカさんについてのことを……」
909 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/13(土) 09:25:04.46 ID:CamgFmbF0
今日はこれだけ

 新作発売まで二週間きりましたね。
 1ルート80時間掛かるボリュームという話で、すごく楽しみです。
910 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 20:45:11.84 ID:HGVyuzrT0
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『タクミの部屋前』―

ヒナタ「……うーん」

オボロ「ヒナタ、なんか落ち着かないみたいだけど、どうしたの?」

ヒナタ「いや、その、シラサギ城に戻ってきたっていうのに、なんか全然落ち着かなくてさ」

オボロ「落ち着かない?」

ヒナタ「なんか知らない場所に来てるような気がしてくるっていうか……。悪い、なんか変なこと言ってさ」

オボロ「謝らないでいいわ。それ、なんだか私もわかる気がする」

ヒナタ「え、オボロも?」

オボロ「まぁ、感じていることは違うかもしれないけどね」

ヒナタ「そっか……。なんていうかシラサギ城にいるって実感がなくってよ……。こんなに静かだったかとか、そんなことばっかり考えちまって」

オボロ「私達が覚えてる白夜の面影がないからかもしれないわ。まだ戦いの傷跡は癒えていないし、みんな不安や怒りを抱えてる。戦争が始まってから、ここはそういう感情とかが募り続けてきた場所で、今の私達にはそれが呑み込めないだけかもしれないわ」
911 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 20:52:27.81 ID:HGVyuzrT0
ヒナタ「変わっちまったのは俺達ってことなのか?」

オボロ「今の白夜を見て違和感を覚えているのなら、そういうことかもしれないわ。一度、この戦いから離れていた身でもあるわけだから。でも、重要なのはその違和感が無くなった時だと思うわね」

ヒナタ「違和感が無くなった時って、それは慣れたからとかそういうものじゃないか?」

オボロ「そうね。だけど私達じゃなくて、白夜の雰囲気が私達の違和感に近づいたってなれば、それはとてもいいことだと思う。悪い空気が無くなって来たってことになるでしょう?」

ヒナタ「なるほど、白夜の雰囲気がこの違和感に近づくか……。何かよくわからないけど、確かにそうなってくれたらいいな。こんな重くて暗い感じじゃなくて、前みたいにどこか過ごしやすい、そんな雰囲気に戻ってくれたらさ」

オボロ「ええ、そうね」

 ギシッ

ヒナタ「……ん?」

オボロ「どうしたの?」

ヒナタ「今、向こうから何か音が……」

 タッタッタッ

ヒナタ「誰か来るみたいだな」

オボロ「うーん、ここに来るってことはタクミ様に用事だとは思うけど、話し合いの最中だし今は待ってもらいましょう。あたしが見てくるから、ヒナタはそこで待ってて」

ヒナタ「ああ、任せたぜ」

 タッタッ

???「えっと、確かタクミ兄様のお部屋はこっちでしたよね……。箱に入れて持ってきましたけど、思ったより大きいです……」

オボロ「あれ、あなたは……」
912 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 20:57:03.80 ID:HGVyuzrT0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カムイ(私はヒノカさんの事を話した。ユキムラさんを裏切った強硬派の生き残りがヒノカさんを確保するために、ミタマさんなどの王族派と争いになったこと。そしてそれを引き金にヒノカさんの中にあった力が動き、失われたはずの人々がヒノカさんの前に現れたこと。そして、敵となるだろう人たちを排除するという考えを止めるために、私達が戦う道を選んだことを……)

タクミ「それが、ヒノカ姉さんと戦うことになった理由なのか?」

カムイ「ヒノカさんは全てが怖かったのかもしれません。白夜も暗夜も関係なく、ヒノカさんにとっては全てがいずれ敵になるものに見えていたはずですから……。奴の力は、きっとヒノカさんにとって一つの希望になってしまったのだと思うんです。それが、ヒノカさんの心を蝕んで行ったのだと思います」

タクミ「その力っていうのは一体……」

カムイ「詳しいことは分かりません。人々を争いへと扇動するような力だともいえますし、死者を操る力だともいえます。タクミさんにとっては不安になる囁きのようなものといえばいいかもしれません」

タクミ「! もしかして、僕が聞いた声って言うのは……」

カムイ「おそらく奴の力の一つでしょう。現にタクミさんは風の部族村で、その衝動に操られかけていたのですから」

タクミ「じゃあ、僕が抱いた感情なんかも……」

カムイ「いいえ、私への恨みや憎悪は本当の感情だと思いますし、タクミさんがリョウマさんやヒノカさんのために行動した意思は、タクミさん自身の意志だったはずです。ただ、それを奴は利用したんでしょう。そうやって、奴は多くの人々を扇動してきたんです」

タクミ「踊らされているだけだって言うのか。戦争が始まってから奴の、ガロン王の思惑のままに動かされていたっていうのかよ……」

カムイ「いいえ、それは違います」
913 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:04:54.40 ID:HGVyuzrT0
タクミ「何が違うっていうんだ!? あんたの話の通りなら、全てが計算されたことになる。サクラがあんたの後を追ったことも、白夜の混乱も、リョウマ兄さんの捕縛も、暗夜での革命も、この今の状況も……。僕たちはガロン王の手のひらの上で踊らされているだけじゃないのか!?」

カムイ「……確かに、私達は奴の掌で踊らされているだけなのかもしれません。でも、それはガロン王も同じです」

タクミ「同じ?」

カムイ「ガロン王も掌で踊らされていた一人だとしたら、タクミさんはどうします?」

タクミ「え?」

カムイ「……」

タクミ「でも、ガロン王は旧暗夜を率いて白夜平原にいるはずだよ。その見えない兵士も、その力を使って送って来ているんじゃないのか?」

カムイ「ガロン王がその力を持っているのなら、白夜はとっくに制圧されていたと思います。それこそ、内乱の心配などしている暇もない内に暗夜の勝利でこの戦争は終わっていたはずです。そもそも勝利が目的ならその力を使わないでいる必要はないでしょう?」

タクミ「じゃあ、一体何が目的だって言うんだ。これはガロン王が始めた征服戦争じゃないって言うのか?」

カムイ「この戦いが始まった当初はそうだったのかもしれません。でも、もうその戦争を始めたガロン王はいないんです。クマゲラさん達が奇襲をしかけてきたアミュージアでの戦いで、この世を去っています」

タクミ「馬鹿なことを言わないでくれ。じゃあ、白夜平原に陣を敷いているガロン王は一体何者なんだ?」

カムイ「この状況を維持するためだけに体を動かされているだけに過ぎません。重要なのは人々を動かすための肉体だけということなんでしょう」

タクミ「動かすためって……」

カムイ「旧暗夜の人々はガロン王に従って来た人たちです。その人たちを操るためにすることは、ガロン王の姿を騙るだけで十分と言う事でしょう」
914 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:09:00.51 ID:HGVyuzrT0
タクミ「……だけど今の状況で、旧暗夜の人間が素直に言うことを聞くとは思えない」

カムイ「ええ、旧暗夜の兵士たちの中には離脱している者たちもいるそうですから。でも、それを問題だとは思っていないのでしょう。むしろこの状況の中で苦悩する人たちを見て楽しんでいるのかもしれません」

タクミ「それじゃ、旧暗夜の連中も……」

カムイ「奴の思惑通りに動かされているだけなのかもしれません。テンジン砦の北に集結し、最後の攻勢に出ようとしているらしいですが、正直今の旧暗夜の兵力でこの白夜王都に辿りつけるとは思えません。無駄な戦いと犠牲を発生させることを、奴は楽しんでいるのだと思います」

カムイ(いえ、楽しんでいるんでしょう。人がわずかな希望に縋る姿、それが崩れ去り絶望する姿を見たいだけ。誰も絶望するために戦ってなどいません。誰もが、それぞれの理由で戦っている。それを奴は操って楽しんでいる)

タクミ「……カムイ、奴って言うのは何なんだ?」

カムイ「……私達も姿は知りません、ですがそれは確実に存在していることは間違いありません。そして、それのことをガロン王は異形神と呼んでいました」

タクミ「異形神?」

カムイ「はい、異形神ハイドラと……」

タクミ「……そいつが、リョウマ兄さんとヒノカ姉さんを……」

カムイ「それは違います……。二人のことは私の責任です」

タクミ「カムイ……」

カムイ「私は奴から二人を守れなかった。守れなかった上に、自分を守るために目を逸らしさえした……。ヒノカさんに助けてもらっておきながら、私は自分の心を守ることを優先したんです。タクミさんとの約束もリョウマさんの願いも……何一つ守れない弱い自分が壊れないように、ただ自分を守ろうとしただけでした」

タクミ「……」
915 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:13:04.06 ID:HGVyuzrT0
カムイ「異形神は関係ありません、守れなかったのは私が弱かったからです。こうして、今も生きてここにいられるのは、ずっとそばにいてくれた人たちのおかげなのに、私は自分だけで戦っているつもりになっていて、弱い自分のことを認めることもできなかった

カムイ「それがこの結果を――」

タクミ「……それはちがうよ」

カムイ「え?」

タクミ「確かに僕は全てをあんたに託した。だけど、僕だってそれより前にできることはあったはずなんだ」

カムイ「出来たこと、ですか?」

タクミ「……リョウマ兄さんが捕縛されたとき、僕はあんたを殺して王族の信頼を取り戻すことを選んだ。でも、それ以外のことを選ぶことだってできた。いや、できたはずなんだ。それを選ばなかった、選ぶことができなかった……」

カムイ「タクミさん……」

タクミ「今さらそんなことを後悔するなんて、虫がいいってわかってるよ。すべてが終わってから悔やんだって意味なんてないんだ。この事態を回避する可能性はいくらでもあった。たとえ、暗夜に敗れたとしても、白夜が一致団結して立ち向かう道があったかもしれない。だけど、僕は根元の原因だけを考えて、起きてる問題に向き合わなかった。それが、この現状を引き寄せたんだ」

カムイ「でも、それを崩してきたのは――」

タクミ「異形神がリョウマ兄さんとヒノカ姉さんに何をしたのかなんてわからない。だけど、僕達は互いを支え合ってことに当たるべきだった。あんたが僕を救ってくれたみたいに、僕は二人を支えるために動くべきだった。そうすればきっと、ここには二人がいてくれたはずなんだ……。それなのに、僕はずっと戦いが終わるのを待っていただけで、何もしなかった……」グッ
916 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:14:31.56 ID:HGVyuzrT0
タクミ「これは僕たちにも原因があったことだ。あんたの所為にするのは簡単だ。でもそれは結局、今の白夜の現実から逃げてるだけで、何も解決なんてしない……。僕は、もう逃げるわけにはいかないよ」

タクミ「今さら、僕が立ってどうにかなるかなんてわからないし、誰も認めてくれないかもしれない。でも僕は……守りたいんだ。リョウマ兄さんが守ろうとした白夜を、人々を僕は守りたい。だから、僕にここを任せてくれないか……」

カムイ「タクミさん……」

タクミ「……」

カムイ「わかりました。タクミさん、白夜のことをお願いできますか?」

タクミ「い、いいのか?」

カムイ「はい。タクミさんの気持ちは伝わっていますし、白夜の方々もきっとそれを望んでいるはずですから」

タクミ「望んでいるって……」

カムイ「マークス兄さんは白夜を属国とする気はありませんし、白夜は白夜王国として残り続けることを求めています。そして、指導者がいない状態が続けば、人々の不安は増えて行ってしまう。それをどうにかするためには、誰かが今の白夜を導いて行く必要があるはずです」

タクミ「導く……」

カムイ「はい。今のタクミさんにとって守るべきものは白夜の人たちであり、白夜そのものだと感じます。それは、国を守っていく人にとって必要な考えだと私は思うんです」

タクミ「……僕に、それが務まるのかな」

カムイ「白夜を守りたいと言ってくれたあなたの姿はそれに適っていると私は思いますよ」

タクミ「カムイ……」

カムイ「タクミさん、白夜のことよろしくお願いしますね」

タクミ「ああ、わかってる、絶対に守ってみせる。後悔なんてさせないよ」

カムイ「タクミさん……ありがとうございます」

タクミ「礼を言うのは僕のほうだよ。ごめん、本当はまだ休んでいたい時なのにこんな形で話を聞いて……」

カムイ「いいえ、気にしないでください。それに今しかその時間はないと思っていましたし、何よりも私一人でタクミさんにお話をしなくてはいけないと思っていましたから」

タクミ「ありがとう、カムイ。僕を信じてくれて、そしてヒノカ姉さんのこともリョウマ兄さんのことも、白夜のことも知っていることを教えてくれて……」
917 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:17:11.57 ID:HGVyuzrT0
 コンコンッ

タクミ「ん?」

オボロ『タクミ様』

タクミ「ああ、オボロ。ごめん、ずっと部屋の前にいてもらって。ヒナタもありがとう」

ヒナタ『気にしないでください。えっと、そのタクミ様にお話がある人がいて、待ってもらってるんですけど』

タクミ「わかった、入ってもらっても大丈夫だよ。カムイも構わないよね?」

カムイ「はい、私は一向に構いません。あ、込み入ったお話でしたら私は外しますが」

???『い、いえ、そのカムイ姉様も一緒にいてもらっていいでしょうか』

カムイ「え?」

タクミ「その声、サクラか?」

サクラ『は、はい。その、タクミ兄様にお返ししたいものがあって、その……』

カムイ「とりあえず入ってください、話はそれからだと思いますよ」

サクラ『は、はい。その失礼します!』スッ

 タッタッ

サクラ「タクミ兄様……」

タクミ「サクラ……」

カムイ「サクラさん、こちらに」

サクラ「はい、カムイ姉様。よいしょ、んっ」コトンッ

タクミ「サクラ、それが僕に返したいものなのかい?」

カムイ「長細くてそれなり大きな箱ですね」

サクラ「はい、そのまま持ち歩くのもどうかと思ったので……」ゴトンッ
918 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:23:24.05 ID:HGVyuzrT0
サクラ「タクミ兄様、これを」

タクミ「……うん」

 ガサガサッ

タクミ「え、これは……」

サクラ「はい、風の部族村でタクミ兄様から御預かりした風神弓です。今後、タクミ兄様にはこれが必要になると思うんです」

タクミ「……僕がもう一度これを持っていいのかな?」

カムイ「タクミさん?」

タクミ「だってそうだろう? まだ、何も成し得ていない僕がこれを持ったって何の意味も……」

サクラ「タクミ兄様、今までの事はどうにもなりません。でも、これからは変えることが出来ます」

 スッ

サクラ「まだ、こうして生きている私達には、その義務があると思うんです。タクミ兄様にとって、白夜を守ることは未来を生きる意味だと私は思います。だから、これを使ってほしいんです」

タクミ「サクラ……」

サクラ「……」コクリッ

タクミ「……カムイ、僕はもう一度これを手にしてもいいのかな?」

カムイ「それは元からタクミさんの物です。そして、今のあなたにとってそれはきっと力になってくれます。あなたが守りたいと思った人たちとの絆が、きっと力を貸してくれるはずです」

タクミ「……」スッ

 グッ

タクミ「……僕はもう逃げない。白夜を守ってみせる。だから……」

タクミ「もう一度、僕に力を貸してくれかい」

 ガシッ
 シュオンッ……フオオオッ

タクミ「……風神弓、また僕に力を貸してくれるのか」

サクラ「きっとそうですよ、タクミ兄様」

タクミ「……うん、ありがとうサクラ」
919 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:27:20.38 ID:HGVyuzrT0
タクミ「……サクラは行くんだよね」

サクラ「はい、カムイ姉様と一緒に向かいます。リョウマ兄様との約束を守るために。倒さなければいけない悪意を撃ちに行きます」

タクミ「……わかった。僕はサクラが帰る場所を守る。こっちのことは心配しないで、サクラはサクラの戦いに集中してほしい、ちゃんとここは守り抜くから」

サクラ「はい、タクミ兄様」

タクミ「それとカムイ」

カムイ「なんですか、タクミさん」

タクミ「その、あんたも無事に帰ってきてほしい」

カムイ「えっと、それは……」

タクミ「勘違いしないでほしいんだけど、これは白夜のためじゃなくて……。僕が個人的にそう思ってることだから。その……」

カムイ「タクミさん……」

タクミ「そ、それだけだよ。ほら、話はもう終わりだよ」

カムイ「ふふっ、それでは私は部屋に戻らせてもらいますね。サクラさんはどうしますか?」

サクラ「私はもう少しだけタクミ兄様とお話していきます」

カムイ「わかりました。タクミさん」

タクミ「な、なんだよ」

カムイ「その、ありがとうございます。こんな私の事を心配してくれて、とっても嬉しいですよ」

タクミ「も、もういいだろ////」

カムイ「ふふっ、失礼しますね」

 タッタッタッ

カムイ「無事に帰ってきてほしい……ですか。私なんかにはもったいない言葉ですね」

カムイ(とりあえず、一度部屋に戻って身支度を済ませましょう。もう、迷うことはありません。私はまだ剣を取り続けましょう、異形神ハイドラ――)

(あなたをこの手で倒すまでは……)
920 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:28:54.77 ID:HGVyuzrT0
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540] A[6スレ目・699]

【支援Bの組み合わせ】
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
・カミラ×ジョーカー
 C[6スレ目・671]
・エルフィ×スズカゼ
 C[6スレ目・698]
921 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:29:27.71 ID:HGVyuzrT0
仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250] B[6スレ目・700]
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425] B[6スレ目・902]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
922 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/07/22(月) 21:37:17.44 ID:HGVyuzrT0
今日はここまで

 ハイドラは暗夜編では絶対的な力を有して人々を操っているという感じの方がいいと思うのです。

 新作まであと四日を切ってますが、クロニエちゃんに早く会いたいですね。
 出来れば第2部まで生き残ってほしいけど、果たして……

 この先の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・アシュラ×サクラ
・ブノワ×エルフィ
・レオン×ピエリ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・マークス×エリーゼ
・ジョーカー×カミラ
・エルフィ×スズカゼ

 この中から一つ>>923
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド
・マークス×ギュンター
・ピエリ×フェリシア
・エルフィ×モズメ

【支援Cの組み合わせ】
・ピエリ×リンカ
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ
・カミラ×アクア
・シャーロッテ×カザハナ
・エリーゼ×カミラ
・レオン×ハロルド
・スズカゼ×ブノワ

 この中から一つ>>924

 このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/24(水) 11:35:49.68 ID:MAgyRXVDO


アシュラサクラ

ガロン王に見せ場はあるのか、それとも案の定ハイドラに即パックンされてしまうのか
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/26(金) 04:57:28.24 ID:u2rplBW5O

新作楽しみだけど本家触れるの久しぶりすぎてミスりまくるだろうなあ

ピエリ×フェリシア で
925 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/05(月) 21:45:43.79 ID:QG9LqHTS0
◆◇◆◇◆◇
―マイキャッスル『中庭』―

アシュラ「サクラ様、ちょっといいか?」

サクラ「あ、アシュラさん、どうしたんですか?」

アシュラ「ええ、ちょっとサクラ様に渡したいものがあって、これなんだが」

サクラ「渡したいものですか? あ、とってもいい香りがしますね。甘味のようですけど……」

アシュラ「ああ、コウガでよく作られていた奴だ。ここにはいろいろと材料が揃ってるからよ、試しに作ってみたわけだ」

サクラ「そうなんですね、あ、微かに果物の香りがします。でもいいんですか、私がもらって」

アシュラ「気にしないでいい。それに、サクラ様にはこれじゃ足りないくらい甘味を貰ったからな」

サクラ「そんなことないですよ。でも、どうしてこれを私に?」

アシュラ「……その、少しだけ畏まってもいいか?」

サクラ「え、えっと、どうぞ」

アシュラ「ありがとうございます。正直な話、俺は多くの人間と関わるつもりはありませんでした。それが一番いい、すでに滅んだ国の人間で小悪党でしかない俺が誰かのために戦うことを選んだ人間達と交わってはいけないことだと思っていました。賊と関わりがあったっていう部分に付け入る隙を見つけようとする者もいますからね。だから、俺は力は貸すが輪には入らないいようにしようと決めてたんです」

サクラ「アシュラさん……」

アシュラ「ですが、それをサクラ様は変えようとしてくれた。俺みたいな賊に話しかけてくれたし、何より対等な立場で接してくれました。最初は中々うまく行きませんでしたが、サクラ様にも口調の事を注意されなくなりましたし、俺自身の囲ってきた気持ちもかなり和らいだ気がします」

サクラ「そうですね。最初の頃に比べてアシュラさん、すごく柔らかくなった気がします。私の甘味大作戦、大成功ですね」

アシュラ「はは、甘味の事もありますが、どちらかというとサクラ様の姿勢が俺を変えてくれたんだと思います。サクラ様は俺のような者にも、もう一度関わる可能性をくれたんですからね。本当にありがとうございました」

サクラ「そんな、私のほうこそありがとうございます」

アシュラ「あー、ん、一度畏まると、なんだか懐が落ち着かないな……。んー、困りましたね」

サクラ「アシュラさん固くなってますよ」

アシュラ「すみません、その、一度真面目になっちまうと、その色々とごちゃごちゃしてしまって……」

サクラ「なら、そんな時こそ甘味です! アシュラさんの作った物、一緒に食べましょう」

アシュラ「あ、いや、さすがにそれは」

サクラ「いいんです。それに一人で食べるよりは誰かと食べた方がおいしいはずですから」

アシュラ「そっか、サクラ様がそういうならありがたくいただくぜ」

サクラ「はい、それじゃ半分にして、はいアシュラさん」

アシュラ「ああ、ありがとな、サクラ様」

【アシュラとサクラの支援がAになりました】
926 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/05(月) 21:58:04.21 ID:QG9LqHTS0
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞『廊下』―

ピエリ「フェリシア、今日も戦いに行くの!」

フェリシア「わっ、ピエリさん、いきなりどうしたんですか?」

ピエリ「どうしたのじゃないの。ピエリ、フェリシアと一緒に戦いに行きたいの。今すぐ支度するのよ」

フェリシア「わわ、待ってください。まだお仕事中ですし、そもそもこの前一緒に出撃したじゃないですか」

ピエリ「うん、したの! とってもびっくりしたの! フェリシア、戦うのとっても上手だったの!」

フェリシア「あ、はい……」

ピエリ「ピエリ、戦うお手本を見せる暇なんてなかったの。フェリシア、いっぱい敵を引き付けてポンポン倒してたからすごかったの! ピエリ、フェリシアのこと見直しちゃったのよ。いつもドジばっかり踏んでるフェリシアとは思えなかったの」

フェリシア「そ、そこまで言わなくてもいいじゃないですかぁ」

ピエリ「仕方ないの。だってピエリ、フェリシアが転んだりとか、武器を落としちゃったりするかもって思ってたの。いつものフェリシアを見てたら、そう思うのが普通なの」

フェリシア「うう、反論できません」

ピエリ「うーん、戦ってるときのフェリシア、とっても動きが良かったの。もしかして、お仕事の時はわざとドジしてるの?」

フェリシア「わざとじゃありません、そもそもそんな器用なことなんてできません……」

ピエリ「うーん、とっても不思議なの。だって、いつもと動きが全く違ってたのよ」

フェリシア「なんでかわからないんです。その、戦う時はなんだか自分のするべきことが分かるっていうか、自然と体が動くっていうか……」

ピエリ「すごいの。フェリシア、メイドさんじゃなくてピエリみたいに兵士になった方がいいの!」

フェリシア「それ、ギュンターさんにも言われたんです。その方がいいって」

ピエリ「ピエリもそう思うの。フェリシアなら、メイドさんの時よりいっぱい活躍できるはずなの」

フェリシア「そうかもしれません。でも、私、やっぱりこのお仕事をしたいんです。そのドジだとか、おっちょこちょいだってみんなから言われても、この仕事をしていたんです」

ピエリ「フェリシア、やっぱり変わってるの。なら、ピエリは友達だからサポートしてあげないといけないの」

フェリシア「え、サポートって?」

ピエリ「フェリシア、メイドさんのお仕事続けたいんでしょ? なら、ピエリがお料理とかお洗濯とか、そういうのはサポートしてあげるの」

フェリシア「いいんですか? そのとっても迷惑かけちゃうと思うんですけど……」

ピエリ「大丈夫、ピエリに任せてなの! そのかわり、時々でいいからピエリと一緒に出撃してほしいの。ピエリはフェリシアのサポートをして、フェリシアはピエリのサポートをするのよ」

フェリシア「ピエリさん……。わかりました、その色々と迷惑を掛けちゃうと思いますけど、よろしくお願いしますね」

ピエリ「えへへ。それじゃ、すぐに出撃するの! もう、準備は出来てるから、安心するのよ」

フェリシア「わ、ちょっと待ってください、私まだお掃除の途中で―――ひゃああああっ」ドンガラガッシャンッ!

【ピエリとフェリシアの支援がAになりました】
927 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/05(月) 22:05:45.78 ID:QG9LqHTS0
今日はこれだけで

 風花雪月、とても楽しいですね。
928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 15:47:01.94 ID:GIIlPcMDO

風花雪月で学んだ贈り物アタックを実践するアシュラ
929 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:16:21.92 ID:vv/k8+EC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『マークスに宛てられた部屋』―

マークス「そうか、それがお前の戦う意味、ということだな」

カムイ「はい。私にとってはそれが始まりでした。きっと、私にとって剣を取るということは、そういうことなのだと思います」

マークス「誰かのために剣を取る事か」

カムイ「私にはこれ以上の意味はありませんし、それが揺らぐことはありません。それが私の戦う意味の根なのですから」

マークス「……ふっ、ならばもう何も言うことはない。その顔に迷いは無いだろう。この戦いも終局に至りつつある、その終わりまで共に戦ってほしい」

カムイ「はい、もちろんです。それとシラサギ城の防衛に関しての話ですが」

マークス「ああ、すでにタクミの臣下から話は来ている。こちらとしては受けない理由はないし、今それをしなければ白夜はこの先、潰えてしまう可能性もあった。王族が成すべきことをタクミ王子は理解している。今、白夜にとって必要なのは、この白夜という国がこの先も続くことを示す事のできる王族の行動だ。そして、それを示せるのはここ以外にあり得ん」

カムイ「タクミさんは白夜を守りたいと言っていました。その心に偽りはないと私は思っています」

マークス「うむ、イザナ公王もその話を聞いてようやく楽ができると言っていた。本当に裏で動くのは好きだが表舞台では不真面目に見せたいという変わった奴だ」

カムイ「ふふっ、それで出立は予定通りに?」

マークス「ああ、このまま予定通りに事を進めるつもりだ。明朝よりテンジン砦に向かうことになるだろう。明日は早い、十分に体を休めるといい」

カムイ「はい、わかりました。そう言えば、レオンさんはどちらに? いつもでしたら、出発の前ということで資料などを整理していると思ったのですが」

マークス「ああ、レオンはサクラ王女の様子を見てくると言っていた。あいつもあいつなりに、心配に思っている相手がいるということだろう」

カムイ「ふふっ、みたいですね。レオンさんにとって、きっとサクラさん達を守ることはとても大きな物になっているのかもしれませんね」

マークス「ああ、そうなんだろう。だからこそ、奴に負けるわけにはいかない」

カムイ「ええ、もちろんです。長く続いて来たこの戦い、必ず終わりにしましょう」

マークス「うむ、今日はゆっくりと休んでくれ」

カムイ「わかりました。それじゃ、マークス兄さん、おやすみなさい」

マークス「ああ、おやすみカムイ」

 タッタッタッ
  ピシャンッ

カムイ(明日は早いと思うのですが、なんだか眠れる気配ではありませんね。眠くなるまで、すこし歩きまわりますか)

カムイ「……ん?」

 ヒソヒソ

カムイ「こちらから声がします、誰かいるのでしょうか?」タタタタッ
930 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:24:10.93 ID:vv/k8+EC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

レオン「この先の戦いにも付いてくることにしたんだね」

サクラ「はい、それが私に託された思いに応えられることだと思いますから」

レオン「だけど、ここにはヒノカ王女もタクミ王子もいる。白夜王都で僕達が戻ってくるのを待つっていうのも……」

サクラ「ありがとうございます、レオンさん。でも、私はここで待っていることなんてできません。私は姉様やあなたと一緒に戦ってきた一人です。ここで、その戦いから離れるわけにはいきませんから」

レオン「それはカムイ姉さんのため?」

サクラ「姉様のためというのもあるかもしれません。でも、それ以上に私は私の意思でこの戦いの終わりを見届けたいんです。そして、そこからがリョウマ兄様との約束の始まりで、今はまだなにも始まっていないんだと思います」

レオン「……そうだね。僕もまだ終わってない。戦いが終わっても白夜の復興に掛る時間は並大抵のものじゃないだろうからね。君たちを本当の意味で帰すことができたと思えるのは、まだまだ先のことなのかもしれないよ」

サクラ「ふふっ、そんな長い間、私達のことを気にかけなくてもいいんですよ。もう、ここに帰ってくることができましたから。あらゆるものが変わって、あらゆるものが失われたとしても、ここは私にとって故郷であることは間違いないんですから」

レオン「サクラ王女……」

 タッタッタッ

レオン「ん、誰だい?」

カムイ「私ですよ、レオンさん。それにサクラさんもご一緒でしたか」

レオン「姉さん」

サクラ「カムイ姉様、こんばんは」

カムイ「こんばんは。こんな時間に二人きりだなんて、レオンさんもやりますね」

レオン「はぁ、誤解を招くような言い方は良くないと思うよ、姉さん」

カムイ「ふふっ、ごめんなさい」
931 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:30:06.75 ID:vv/k8+EC0
レオン「……その様子だと、もう大丈夫なのかな?」

カムイ「はい、いろいろとご迷惑をかけて済みませんでした」

レオン「ううん、迷惑だなんて思ってないよ。姉さんが立ち直ってくれて良かった」

カムイ「ありがとうございます、レオンさん」

レオン「ところでサクラ王女から話を聞いたけど、白夜王都の防衛はタクミ王子に任せるって」

カムイ「はい、マークス兄さんにもお話は済んでいますし、了承も得ています。もしかして、レオンさんとしては反対でしたか?」

レオン「いや、むしろこっちとしてはとても助かるよ。正直、戦力が多くなることに越したことはないし、何よりいくらあっても足りるかわからないくらい奴の力は強大だ。生半可な準備で太刀打ちできるとは思えない」

カムイ「ええ、でもこれで多くの戦力を得ることができましたから、こうなった以上負けるわけにはいきませんよ」

サクラ「はい、カムイ姉様。絶対に負けるわけにはいきませんから」

レオン「ああ、これ以上奴の思い通りにさせるのは癪だ。絶対に叩き潰してやらないといけない。ここまで好き勝手やってきたことを何十倍にしてでも返してやらないと気が済まないよ」

カムイ「ええ、私もそう思います」
932 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:33:13.96 ID:vv/k8+EC0
タタタタタッ

レオン「?」

カザハナ「あ、いたいた。レオン王子、サクラ様ー!」

サクラ「カザハナさん、それにツバキさんも、そんなに慌ててどうしたんですか?」

ツバキ「どうしたんですか、じゃありませんよ。サクラ様が部屋に戻って来なくて、心配したんですから」

サクラ「あ、ごめんなさい。そのタクミ兄様のお部屋から戻る途中でレオンさんに会って、お話をずっとしていて……」

カザハナ「もうレオン王子、部屋にサクラ様が全然戻って来なくて心配したんだから。あたしとツバキの気持ちも考えてほしいんだけど」

レオン「話しが終わったら部屋に送るつもりだったんだけどね。悪かったよ」

カザハナ「まぁ、レオン王子と一緒ってわかって安心したよ。何かあったらきちんとサクラ様のこと助けてくれる気がするし」

ツバキ「たしかにねー」

レオン「信頼してもらえて嬉しいよ。お前たちも平和になった白夜へ帰れるまで守っていくつもりだから」

カザハナ「うーん、もう白夜にはこうして帰って来たんだから気にしなくてもいいのに。まっ、そんなこと言ってもレオン王子は聞く耳持たないだろうからね」

カムイ「そうですね。レオンさんもなんだかんだ頑固ですから」

レオン「頑固って……、僕はただサクラ王女達が安心できる白夜でないといけないって思っているだけで、別に……」

ツバキ「そうやって理由付けする当たりが頑固な証拠ですねー」

カザハナ「うんうん、でもそういう風に考えてくれるのはとてもうれしいなー。ね、サクラ様」

サクラ「はい。でも無理はしないでくださいね。私達はあなたに守っていただいてますけど、同時に私達もレオンさんを守りたいと思っていますから。だから、レオンさんが思う私たちを帰せる白夜が実現するまで、一緒に頑張らせてください」

レオン「……ああ、一緒に頑張って行こう」

カムイ「ふふっ、これで戦いの後の目標が決まりましたね」

レオン「ああ、奴を倒すのは通過点だよ。奴が大きな存在だとしても、それを最終地点に何てするつもりはない。重要なのはその先のことだからね」

カムイ「……そうですね。それは正しいことだと思います。きっと、そうあるべきなのだと思いますから」

レオン「?」
933 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:35:40.07 ID:vv/k8+EC0
レオン「さてと、それじゃ僕も自室に戻るよ。それじゃね、サクラ王女。二人とも、あとは任せたよ」

カザハナ「はいはい、任せといて!」

ツバキ「それじゃ、サクラ様行きましょうか」

サクラ「はい。レオンさん、おやすみなさい」

カムイ「それじゃ私も失礼しますね、サクラさん」

サクラ「はい、カムイ姉様」

 タタタタタッ

レオン「姉さん」

カムイ「なんですか、レオンさん」

レオン「……姉さんはこの戦いが終わったらどうするんだい?」

カムイ「何も考えていませんよ。今はただ、奴をこの手で倒すことしかありません。でも、レオンさんのように他の皆さんがこの戦いの先を思い描いてくれているのなら、それはとてもいい事だと思います。その願いが叶うといいですね」

レオン「ありがとう、姉さん。よかったら部屋まで送っていくけど」

カムイ「すみません、一度アクアさんのお部屋に寄って行こうと思っているんです。今日のことで、色々とお話ししたいこともありますから」

レオン「わかった。だけど、明日は早いから早く休むようにね」

カムイ「はい、気を付けます。それじゃレオンさん、おやすみなさい」

レオン「ああ、おやすみ姉さん」
934 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:38:10.15 ID:vv/k8+EC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―白夜王国・シラサギ城『アクアの部屋前』―

カムイ「……あ」

アクア「……」

カムイ(アクアさん、まだ起きていたんですね。てっきり、もう眠っているかと思ったのですけど)

カムイ「ただいま、アクアさん。体の方はもう大丈夫なんですか?」

アクア「カムイ。ええ、今日はずっと休んでいたからかなり良くなったわ。これなら明日からの行軍も問題ないはずよ」

カムイ「そうですか、それは良かったです」

アクア「ふふっ、ありがとう……。あなたは大丈夫みたいね」

カムイ「はい。色々と皆さんに迷惑を掛けてしまいましたけど、どうにか自分の戦う意味を見つけられた気がします」

アクア「ふふっ、あなたが立ち直ってくれたのなら、むしろ喜んでくれるはずよ。少なくとも私はとてもうれしいわ」

カムイ「アクアさん……。ありがとうございます」

アクア「お礼なんていいわ、それに私はなにもしてない。私はあなたを信じただけ、それだけよ」

カムイ「いいえ、信じてくれただけでも十分です。私にとってはアクアさんがずっとそばにいてくれることが何よりの支えですから。昨日の言葉が、私に力をくれたんです」

アクア「そ、そう……改めるととても恥ずかしいわね。あんなことを言うなんて……」

カムイ「大勢の前で言っていたのに、今さら恥ずかしいというのは……。カミラ姉さんやレオンさん、タクミさんもそうですけど、その他大勢の人たちもいたと思いますし」

アクア「わ、わかっているわ。だけど今思うとあの言葉は……あなたと……その……」

カムイ「?」

アクア「な、何でもないわ」
935 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:40:40.62 ID:vv/k8+EC0
カムイ「私は言葉の通りアクアさんに傍にいてもらえてうれしいです」

アクア「そ、そう。……ありがとう」

カムイ「私の方こそ、お礼を言いたいです。私が自信を持っていられるのはあなたのおかげですから」

アクア「それはあなたが戦う理由についてかしら?」

カムイ「はい。正直私の戦う理由は漠然としています。国のためとか思想のため、そうしたもののために私は剣を振るうことのできない人間だと改めて思うんです。私は誰かを助けるために剣を振るので手一杯のようですから」

アクア「誰かを助けるため、ね」

カムイ「はい。……失っても、助けられなくても、私はまた誰かを助けるために剣を取ります。それくらいしか、私には取り得がありません。無力な自分をわかっていても、それを求めないままではいられないようですから」

カムイ「わがままにどん欲に、ただ誰かを守る剣であり続けたいのが私なのかもしれません。何も助けられない鈍らだとしても……」

アクア「大丈夫、あなたは確かに救っている。鈍らなんてことは無いわ」
936 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:42:55.67 ID:vv/k8+EC0
カムイ「……そう言われましても、全然そうだとは思えません。リリスさんやクリムゾンさん、ヒノカさんやリョウマさん、他の多くの人たちを助けられなかったのですから」

アクア「だけど、あなたは剣を下ろしたりはしないのでしょう? どんなことがあっても、あなたはきっと誰かのために戦うことを選ぶ、そうでしょう?」

カムイ「たぶんそうなんでしょうね」

アクア「ふふっ、そういうあなただから命を賭けてでも守りたいと思うのよ。あなたはいなくなってしまった人たちのためじゃなくて、今を生きている人たちのために剣を取ることを決めた。それはなかなかできる事じゃないわ」

カムイ「アクアさん……」

アクア「この先を生きる人たちのためにも、奴と決着を付けないといけないわね」

カムイ「はい、もう逃げる必要はありませんし、相手の動きをこれ以上待つこともありません」

カムイ「奴に多くの未来を奪わせるわけにはいきません。絶対にみなさんの未来を守ってみせます……」

カムイ(絶対に奪わせたりしません。絶対に……)
937 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:46:48.74 ID:vv/k8+EC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜平原『旧暗夜軍・駐屯地『軍師の天幕』―

 タッタッタッ
 
 ゴトンッ

マクベス「…………これを使えば戦況が覆る、ですか。ガロン王様がいうのですから、この武器はそういうものなのでしょう」

マクベス(とても禍々しい力を感じる。そんなものをガロン王様は言っていました。これはお前が奴らを相手にするのに必要な物だと……)

マクベス「カムイ王女や革命を起こした恥知らずな王子たちが持つ神器に匹敵する力がある、ですか……」

マクベス(それを私に渡したと言う事は、これを使えという意味でしょう。奴らは必ず仕掛けてくる、その時にこれほどの力が必要だということでしょう。ですが……)

 コンコン

マクベス「む……」パサッ

メイド『マクベス様、私です』

マクベス「あなたですか、入ってください」

メイド『失礼いたします』タッ

マクベス「それで、お願いしたものは手に入りましたか?」

メイド「はい、これがテンジン砦から白夜平原へと続く地形図になります」

マクベス「助かります、これがなければ策も立てられませんからねぇ。ふむ、道は外れますが、どうにかテンジン砦周辺に繋がる道があるのですね……この地形ならば……」

メイド「今、紅茶を淹れますね」スッ

マクベス「いいえ、結構です。それに、そこに残っている茶葉は今嗜むべきものではありませんので」

メイド「そう、ですか……」

マクベス「ええ、それは特別な茶葉ですからね。暗夜王国がこの戦争に勝利したときに、嗜むものだと決めていますので。ですから封を開ける必要はありません……」

メイド「……マクベス様」

マクベス「……」
938 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 21:55:22.06 ID:vv/k8+EC0
メイド「あの、何かお手伝いできることは……」

マクベス「いいえ、特にはありませんよ。それに、作戦はとうに練り上がっています。あまりにも出来が良かったためか、誰一人として反対はしませんでしたがね……」

マクベス(耳を傾ける者もいない軍議という意味の無い場でしたからね……)

メイド「マクベス様……」

マクベス「ですから、大丈夫です。あなたはすぐに休みなさい。休める時に体を休めるのも、勤めの一つですからねぇ。まぁ、あのような損害を出した私の命令など、意味は無いと思いますがね」

メイド「あのテンジン砦で、マクベス様の下した撤退の判断は間違っていなかったと思います……」

マクベス「いいえ、私に考えが足りなかった故に対処が遅れたのです。もっと、早く手を売れてば良かった。テンジン砦の異様さに気づけていたのならばあのようなことにはならなかったでしょう。よもや、砦と陣地そのものを殺傷兵器とするような考えは、さすがにありませんでしたからねぇ」

メイド「ですが、ガロン王様はマクベス様の処遇を考慮してくださいました……」

マクベス「……」

メイド「多くの兵を失いましたが、それでもガロン王様が許されたのはきっとマクベス様を信頼して――」

 ドンッ!‼‼‼

マクベス「黙りなさい」

メイド「!」
939 :938の誤字訂正  ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 22:00:22.66 ID:vv/k8+EC0
メイド「あの、何かお手伝いできることは……」

マクベス「いいえ、特にはありませんよ。作戦はとうに練り上がっています。あまりにも出来が良かったためか、誰一人として反対はしませんでしたがね……」

マクベス(耳を傾ける者もいない軍議という意味の無い場でしたからね……)

メイド「マクベス様……」

マクベス「ですから、大丈夫です。あなたはすぐに休みなさい。休める時に体を休めるのも、勤めの一つですからねぇ。まぁ、あのような損害を出した私の命令に従うことに意味は無いと思うかもしれませんが……」

メイド「テンジン砦で、マクベス様の下した撤退の判断は間違っていなかったと思います……」

マクベス「いいえ、私に考えが足りなかった故に対処が遅れたのです。もっと早く手を打っていれば、あのような結果にはならなかった。テンジン砦の異様さに気づけていたのならばあのようなことにはならなかったでしょう。よもや、砦と陣地そのものを殺傷兵器とするような考えは、さすがにありませんでしたからねぇ」

メイド「ですが、ガロン王様はマクベス様の処遇を考慮してくださいました……」

マクベス「……」

メイド「多くの兵を失いましたが、それでもガロン王様が許されたのはきっとマクベス様を信頼して――」

 ドンッ‼‼‼

マクベス「黙りなさい」

メイド「!」
940 :938の誤字訂正  ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 22:02:48.60 ID:vv/k8+EC0
マクベス「……」

メイド「も、申し訳ありません……」

マクベス「……今日はもういい、下がりなさい。明日は早いのですから」

メイド「はい……。失礼します、マクベス様」ペコッ

マクベス「……」

 タッタッタッ

マクベス「……はぁ。自身の失敗を口にした挙句、臣下に当たるようでは軍師の器とはいえませんね……」

マクベス(実際、私に今あるのは肩書だけでしかない。各部隊からの離反は続き、それを抑え込むことも出来ず。もう、この軍勢をコントロールできるほどの力は私にはない。よもや、最後の作戦の会議に参加してくれた隊長格など数えるほどしかいなかった)

マクベス(でも、それは仕方のないことだ。多くの兵を失い、多くは見捨てたに等しいあの散々たる結果を前に、私を信頼するものなど要るわけもない。そして、そんな無能を生かして置く必要もないとガロン王様はすぐに処分を下すと思っていました)

マクベス(大失態の末に処断されるという最悪の結果を、私は受け入れて死ぬことを決めていた)

マクベス(だが、ガロン王様は私を許した。そして、私は今もここに生きている。それが私を苦しめる……。考えたくもなかったことを考えさせる。そして、突き詰めると一つの答えが浮かび上がるのだ。そう今のこの状況が……)

マクベス「……こうして私が未だに生きている事こそがその証明、と言う事なのでしょう……」

「ガロン王様……」
941 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 22:04:06.24 ID:vv/k8+EC0
 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540] A[6スレ目・699]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106] A[6スレ目・925]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
・カミラ×ジョーカー
 C[6スレ目・671]
・エルフィ×スズカゼ
 C[6スレ目・698]
942 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 22:06:20.90 ID:vv/k8+EC0
仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250] B[6スレ目・700] A[6スレ目・926]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425] B[6スレ目・902]

【支援Cの組み合わせ】
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
943 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/08/17(土) 22:13:50.73 ID:vv/k8+EC0
今日はここまで
 
 カムイ達は戦いの決意を新たにし、そしてマクベスも最後の戦いへと悩みながらも動き始める。
 
 940名前欄を消し忘れました。申し訳ないです。

 あと二回くらいしたら新スレを建てようと思いますので、よろしくお願いします。

 次の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×エルフィ
・レオン×ピエリ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・マークス×エリーゼ
・ジョーカー×カミラ
・エルフィ×スズカゼ

 この中から一つ>>944

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その次の安価になります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド
・マークス×ギュンター
・エルフィ×モズメ

【支援Cの組み合わせ】
・ピエリ×リンカ
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ
・カミラ×アクア
・シャーロッテ×カザハナ
・エリーゼ×カミラ
・レオン×ハロルド
・スズカゼ×ブノワ

 この中から一つ>>945

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 20:32:14.61 ID:7OgwIRCR0
レオン×ピエリ
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/19(月) 22:39:55.32 ID:qe1wf7Qx0
・ベルカ×ニュクス
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 17:47:49.88 ID:guJygcXDO


>>936
「いなくなってしまった人たち…」の事しか考えないゴリラと、一切考える気がないゴリラがいましたね…
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/23(金) 21:20:21.74 ID:tUcm90y+0
未来しか見えなくなってしまったゴリラと過去しか見えなくなってしまったゴリラと夜明けの光の話はやめるんだ
948 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 10:49:45.85 ID:cC0M2qKd0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『レオンの執務室』―

レオン「来たか、ピエリ」

ピエリ「命令だから仕方なく来たの。レオン様、ピエリに何か用なの?」

レオン「そんな露骨に嫌な顔しなくてもいいだろう?」

ピエリ「だってレオン様、ピエリのこと怒るから呼んだんでしょ? そうに決まってるの!」

レオン「怒るためか……。まぁ確かに僕から話となると注意とかそう言う事ばかりだったからね。それも仕方ないか」

ピエリ「きっと、この前の戦闘の事で怒りに来たに決まってるの。ピエリには御見通しなのよ」

レオン「そうだね、話は前の戦闘についての事だよ」

ピエリ「やっぱりなの! ピエリ、怒られるの嫌だから帰るの!」

レオン「早合点しないでくれるかい。僕はピエリのことを叱るために呼んだわけじゃない。むしろ、その逆だ」

ピエリ「え?」

レオン「前回の戦い、君は僕の指示にきちんと従ってくれただろう? 特に攻勢ではなく防衛に主体を置いた戦いであったにも関わらずね」

ピエリ「だって、ピエリわかったって言っちゃったの。約束は守らないといけないの。そうしないとレオン様にまた呼び出されると思ったから…」

レオン「まぁ、流石に僕の指揮下に入っておいて自由気ままに動かれたら堪った物じゃない。正直なところ、我慢できずに飛び出していくと思っていたからね」

ピエリ「ひどいの。ピエリ、これでも我慢できるのよ。我慢してレオン様の命令通りにしたの」

レオン「そうみたいだね。見直したよ」

ピエリ「ふふーん。ピエリ、やるときはきちんとやるのよ」

レオン「ああ、よくやったね」

ピエリ「えへへー」

ピエリ「……」ソワソワ

ピエリ「……レオン様はナデナデしてくれないの?」

レオン「え?」

ピエリ「マークス様はピエリが活躍した時とか、約束を守れた時は頭をナデナデしてくれるの。ピエリ、レオン様の命令きちんと守ったの。だから、ナデナデしてもらいたいのよ。よくできたって、いっぱいいーっぱいナデナデしてほしいの!」

レオン「な、ナデナデって……」

ピエリ「ひっぐ、ピエリ頑張ったのに、レオン様ナデナデしてくれないの? 酷いの、ピエリ、ピエリ……うええええん」

レオン「わ、わかった、わかったから。ナデナデすればいいのか?」

ピエリ「ううっ、ひっぐ……。ナデナデやさしくしてくれなきゃ、嫌なの」

レオン「わ、わかったよ。え、えっと……それじゃ」

 ポンッ ナデナデ

ピエリ「んっ、えへへ。ピエリ、レオン様に褒められちゃったの」

レオン「まったく、さっきまで泣いてたと思ったらすぐに調子を良くして……。本当に子供だよ、お前は」

ピエリ「子供じゃないの! ピエリは命令通りにちゃんとできる大人なのよ」

レオン「そうかい。でも、確かにあの時のピエリは僕の命令をきちんと聞いてくれていたよ、よくやったねピエリ」

ピエリ「えへへ、ピエリ、やるときはきちんとやるから安心してなの」

レオン「出来ればいつもきちんとしてほしいんだけどね。そうすれば、僕がお前を呼ぶ理由も叱る内容じゃなくなるからさ」

ピエリ「なら、ずっと叱らない様にすればいいの。レオン様がピエリを呼ぶときは、褒める時だけにすればいいのよ」

レオン「はぁ、そうなればいいけどね」

ピエリ「えへへ、あ、駄目なの、まだナデナデしててほしいの」

レオン「わかったよ。気が済むまで続けてあげるよ」

ピエリ「わーいなの!」

【レオンとピエリの支援がAになりました】
949 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 11:00:39.41 ID:cC0M2qKd0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・郊外の森―

ベルカ「……ニュクス」

ニュクス「あら、ベルカ。ようやく私を殺しに来たのかしら?」

ベルカ「いいえ、あなたを殺す必要が無くなったことを伝えに来たの」

ニュクス「どういうこと? あなたは受けた仕事は完璧にこなすのではなかったのかしら?」

ベルカ「……そうね。確かにそれが私の……暗殺者としての価値なのは間違いないわ」

ニュクス「それじゃ、なぜ私を殺す必要がなくなったの? 依頼者は私を殺すように依頼していたんでしょう? それとも依頼者が意向を変えたのかしら?」

ベルカ「依頼人は意向を変えてなんていない。だから、あなたを殺す必要が無くなったの」

ニュクス「?」

ベルカ「……依頼人はあなたじゃなくて、私を殺すつもりだった。あなたを標的に選んだのは、単純に子供だったからよ」

ニュクス「……ああ、そういうことね。私が醜い化物であることを知って殺そうとしていたのではなくて、ただ目的のために選ばれたのが私だった、というだけの話だったわけね。それならあの使い魔の理由もはっきりしたわ。それで、その依頼者は?」

ベルカ「問い詰めたら襲い掛かって来た。だから殺したわ」

ニュクス「そう。本当に依頼者が私を殺したいと思っていたのなら、その罰を受けてもいいと思っていたのにね」

ベルカ「ニュクス、あなたは何者なの?」

ニュクス「聞いてもしょうがない事よ。依頼者は私に興味が無かった。なら、あなたがそれを知る必要は……」

ベルカ「私は知りたい。それに、あなたは私を助けてくれたわ」

ニュクス「それを言うならあなたも同じよ。疑問を持たずに私を殺してもよかったのに、それをしなかったでしょう?」

ベルカ「……少し気になっていたの。あなたは私に殺されることを、元より死ぬことを気にしていなかった。それに罪があるとも言っていたわ」

ニュクス「……わかったわ。形はどうあれ、あなたに助けられた以上、教えてあげる」

ニュクス「……私は大きな罪を抱えているの、そしてこの姿はその代償でもあるわ」

ベルカ「罪の代償?」

ニュクス「ええ。本当はね、あなたよりもずっと歳を重ねているの。だけど、この体は死ぬまでずっとこのまま。だから、命を奪われたとしてもしょうがないと思っているのよ。この罪が消えるのは、私の命が尽きた時だけだと覚悟しているから」

ベルカ「……」

ニュクス「この呪いはどうすることもできないのよ」

ベルカ「……なら、その呪いを私が殺してみせるわ」

ニュクス「え?」

ベルカ「……」

ニュクス「ふふっ、面白いことを言うのね。だけど、あの程度の事で恩を感じる必要はないわ。それに呪いを解くなんて依頼――」

ベルカ「馬鹿にしないで、私は依頼を完璧にこなすのが仕事。もしも、あなたが依頼してくれるのなら殺してみせるわ……」

ニュクス「……ふふっ」

ベルカ「なに?」

ニュクス「いいえ、何でもないわ。呪いを解くじゃなくて殺す……ね。ふふっ、あの使い魔に気づかなかったあなたが呪いを殺すと言っても説得力が無いわ」

ベルカ「……それは」

ニュクス「だけど、その考えは本気みたいね。もしも気が向いたら、あなたに依頼してあげる。この呪いを殺すことを。だけど、かなりの時間を掛けないといけないわよ?」

ベルカ「依頼は必ず達成するわ。どれだけ時間を掛けても……」

ニュクス「ベルカ……。ありがとう」

【ベルカとニュクスの支援がAになりました】
950 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 11:19:40.67 ID:cC0M2qKd0
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『新生暗夜軍駐屯地・作戦天幕』―

新生暗夜軍兵士「報告は以上です、レオン様」

レオン「ありがとう助かった。お前は持ち場に戻ってくれ」

新生暗夜軍兵士「はっ! それでは失礼いたします」

 タッタッタッ

マークス「敵に大きな動きは見られないという事か」

カミラ「テンジン砦で戦いが始まっていたらと心配していたけど、よかったわ」

エリーゼ「うん、間に合って良かったー」

レオン「ああ、となればここで待っている必要もない。こちらから攻撃を仕掛けない理由は無いよ」

アクア「そうね。だけど、敵も中々に考えてはいるわ。布陣しているのは平原手前の渓谷地帯出口の村のようだけど、かなりの防衛陣を組みあげているようだから」

レオン「ああ、出来ることなら敵の物資が尽きるのを待ちたいけど、そうは言っていられない状況だ。あえて、この渓谷を迂回して平原を目指すのも手だけど……」

アクア「恐らく挟撃されるわね。旧暗夜にどれだけの兵力があるかはわからないけど、敵指揮官からすれば、迂回して平原を目指す大体を見逃すとは思えないわ……」

レオン「ああ……。それにこの村の防衛陣はかなり厚い。おそらく、最終防衛の要としての役割を担っているはずだ」

カムイ「逆にここを落とすことが出来れば、旧暗夜との戦いも終わると考えていいでしょう。もう、余剰戦力は無いはずですから」

マークス「ああ。だが、残っている敵兵たちはここを維持するために死力を尽くすだろう。現状、旧暗夜の勢力の指揮を執っているのはマクベスらしい」

カムイ「マクベスさんですか……」
951 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 11:29:58.98 ID:cC0M2qKd0
レオン「テンジン砦の爆発で巻き込まれたと思っていたけど。しぶとく生き残ったみたいだね」

マークス「そのようだな」

カミラ「運がいいわね。私達を殺すためにあそこまで追いかけてきたのに、それとも指揮官として直後に後方に下がったから助かったのかしら?」

レオン「さぁね。どちらにしても奴の事だ。どんな理由があっても兵に退却や降伏を許しはしないだろ。どうあっても死守することを選ぶはずだ」

カムイ「……ガロン王がすでに人間でないと言う事を伝えたとしても、ですか?」

レオン「あいつは父上を崇拝している。それを信念にここまでずっと戦ってきたんだ、その判断が鈍る事なんてありえないと思うし、僕たちの与太話に耳を傾けるとは思えない」

カミラ「それなりに評価しているのね。嫌いじゃなかったかしら?」

レオン「あいつのことは嫌いだよ。だけど軍師という肩書は……少なくとも飾りじゃないはずさ。父上がまだ父上として采配を振るっていた時に、それを受けて手腕を振るっていたのは奴だからね。父上に信頼されたのなら、それに全力で答えるはずだよ。もっとも、マクベスが倒れれば、状況は変わるかもしれないけどさ」

マークス「ああ、マクベスを倒すことで、多くの将兵を戦いから引きずり下ろすことができるかもしれん。もっとも、マクベスと同じように戦う多くの者たちが父上を崇拝している者たちなのだとすれば、それもまた難しいだろう」

アクア「人々が何を思うかはわからない以上、それを考えても仕方がないわ。私達の望みと彼らの望みが相反している。それは間違いない事なのだから」

カムイ「だとしても、わずかに可能性があるのなら一度伝えてみるべきでしょう。それで戦闘による死傷者が少なくなるのなら、試さないわけにはいきません」

レオン「わかった。といっても、今から使者を立てて送る時間は無い。それこそ、本当の敵に付け入る隙を与えかねないからね」

カムイ「はい」
952 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 11:34:38.85 ID:cC0M2qKd0
マークス「話はまとまったようだな。それで、どう攻め入る。敵の防衛陣はかなりの厚さを誇っているようだ。元々の村もそれなりに大きかったようだからな」

レオン「でも、兵士の人数は最大というわけじゃない。テンジン砦の損害や脱走兵の件もあるはずだから。となると人外の戦力を大量に投入してそうだね」

カミラ「人外……、ノスフェラトゥやゴーレムが主力になるということかしら?」

レオン「戦力としての難はあるけど、兵士よりは多く配備できるはずだ。だからこそ、出来るなら敵の人員を分散できるといいんだけど」

エリーゼ「うーん、おびき出せないかな? こう、渓谷からこっちに来てもらうとか」

レオン「さすがにこちらの挑発に乗って来るとも思えない。それに今から攻めてくることなんてないだろうね。こっちがここに到着したことは、向こうも察しているだろうからさ」

カミラ「だけど、その村は渓谷の出口にあるのでしょう? 正面から攻めるとなると、ねぇ?」

レオン「ああ、難しい戦いになるとは思う。だけど、そうする以外に手が無いのも……」

マークス「……いや、手が無いこともないぞ」

レオン「え?」

マークス「渓谷と村を迂回する案があるだろう?」

レオン「ああ、だけど迂回ルートの監視には力を入れているはずだし、迂回路はきちんとした道があるわけじゃない。移動だって……」

マークス「ああ、恐らくこちらが後ろを取ろうと動いたところで意味は無いだろう。だが、敵の兵力を分散させることはできるはずだ。マクベスなら、迂回路を進んで来た大隊を放っておく選択はしない。奴が父上を崇拝しているのであれば、出来る限りの戦力を回すはずだ。そうすれば、村の人員を減らすことができるかもしれん」

レオン「マクベスの父上に対する崇拝、その信念に賭けてみるってこと?」

マークス「ああ、少なくとも奴は兵力を割かないわけにはいかないはずだ。唯一の問題は脅威に見せる必要がある以上、迂回路に送る兵力の方が多くなってしまうところか」

レオン「なるほどね。出来るとすれば、今はそれくらいか……」
953 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 11:45:48.05 ID:cC0M2qKd0
カミラ「そうね。マクベスも厄介だけど、それ以上に厄介なのがその先に待っているのだから、どうにかしてこちらの消耗を抑えておきたいわ」

マークス「カムイ、お前はどう思う?」

カムイ「私もその作戦でいいと思います。こちらの戦力を分散することにはなりますが、渓谷も道が険しいので移動に掛かる時間はそれなりにあるはずです。それに……、敵も味方にも犠牲者が少ない可能性があるのなら、その作戦を選ばない理由はありません。もう、人と人で争う理由は何処にもないのですから」

アクア「カムイ……」

マークス「わかった。レオン、迂回路を進ませる兵団の準備を進めてくれるか?」

レオン「任せて兄さん。明日までに整えておくよ。カミラ姉さんは飛行部隊の選定をお願いできるかな?」

カミラ「ええ、任せてちょうだい」

アクア「それじゃ私とカムイ、エリーゼで村の情報を密にしておくわ。エリーゼもカムイも手伝ってくれるかしら?」

エリーゼ「うん、任せて!」

カムイ「はい、もちろんです」

マークス「よし。ではそれぞれの役目をこなしてくれ。渓谷から村を目指す攻撃隊は迂回路組と途中まで随伴し、機を見て渓谷へ進軍するとする。以上だ」

カムイ「……」

アクア「カムイ、どうかしたの?」

カムイ「マクベスさんは私達の策に乗って来るでしょうか?」

アクア「わからないわ。でも、ガロン王を崇拝している彼なら、渓谷を無視して進んで来た方を本軍と見る可能性は高いわ」

カムイ「……マクベスさんも、結局奴の手の上で踊らされているだけなのですよね」

アクア「カムイ……」

カムイ(マクベスさんだけじゃありません。旧暗夜の人たちも同じように……。それを私たちはこの手にかけなくてはいけないんですよね……)

カムイ「……」
954 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 11:55:05.01 ID:cC0M2qKd0
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜平原より東『渓谷入り口の村』―

旧暗夜軍兵士A「はぁ、物資もこれだけになっちまったけど、本当に勝てるのか?」

旧暗夜軍兵士B「おいおい、暗夜王国もマークス王子率いる新生暗夜の物になっちまったし、白夜と講和したって噂が立ってる中でそれを聞くか?」

旧暗夜軍兵士A「それもそうか。はぁ、なんだか思ってた場所とは全然違うところに来ちまったな……。母ちゃん、大丈夫かな。旧暗夜兵士の親だからって酷い目に合ってないかな……」

旧暗夜軍兵士B「わからない。結局、旧暗夜は脱走兵を受け入れてはくれなかったみたいだし、それに無限渓谷を越える橋も落ちた。暗夜王国に戻るには北の極寒地帯を抜けるか、南に出て船で渡るしか手が無い。もっとも、近づいたところで俺たちなんて目の敵にされるだけだろうけどな」

旧暗夜軍兵士A「そうだよな……。死にたくねぇな……」

旧暗夜軍兵士B「俺だってそうだ……。死にたくなんて……」

ランサー女「ちょっと、あんたたち、何しょげた顔してんのさ。死にたくないなんて言ってる暇があったら、敵が来ないか見張ってなさいよ」タッタッタッ

旧暗夜軍兵士A「そうは言うけどよ……。今ここにいる戦力で白夜と新生暗夜の軍勢を相手にするなんて……」

ランサー女「馬鹿! 気持ちで負けてどうするわけ? まったくもう、男なのにウジウジしない。ここは渓谷方角に視界が通ってる。敵の姿をすぐに見つけて準備出来れば、敵を抑えることだってできるはずだよ。そのためにはどれだけ早く敵を見つけられるかが重要なんだからさ」

旧暗夜軍兵士B「それはそうかもしれないけどよ……」

ランサー女「まったくもう、言い訳なんてしてないで――」

ブレイブヒーロー「おい、ランサー、そこまでにしておけ」

ランサー女「あ、ブレイブ。だって、こいつら……」

旧暗夜軍兵士A&B『……』
955 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 12:02:20.14 ID:cC0M2qKd0
ブレイブヒーロー「……お前たち」

旧暗夜軍兵士B「な、なんだよ、悪いかよ。この状況でそんな風に悲観的になるのが、そんなに――」

ブレイブヒーロー「朝から見張っていてくれたらしいな、長い時間ありがとう。ここからは私とランサーが引き継ぐ、だからお前たちは下がって休め」

旧暗夜軍兵士A「え。い、いいのか?」

ランサー女「ちょっと待ってよ、なんで私もすることになってるわけ?」

ブレイブヒーロー「悩んでいる状況で監視をしていれば見落とす可能性が高くなる。そうなってしまえば取り返しがつかない。二人とも疲れているのだ、ならば万全を喫してことに当たらせるべきだろう?」

ランサー女「はぁ、それもそっか。そういうわけだから二人はゆっくり休んできて、ここは私達に任せてさ」

旧暗夜軍兵士B「あ、ありがとう。その、よろしくお願いします」

旧暗夜軍兵士A「し、失礼します」

 タタタタタッ

ランサー女「はぁ、故郷が恋しくなるなんて。本当にメンタルが弱いわね」

ブレイブヒーロー「国に大切な人がいるのだろう。そう考えてしまうこともある。王都は無事だという話が、一人一人の個人の無事を保証するものでないことくらいわかるだろう?」

ランサー女「それはそうかもしれないけど、あんたの考えに私を巻き込まないでよ。はぁ、本当ならこの後メイドちゃんのところに行こうと思ってたのになぁ」

ブレイブヒーロー「メイド……。マクベス様の臣下のことか?」

ランサー女「そうそう、なんかすごく落ち込んでるみたいだったからさ。多分、ここに来る前にマクベス様に何か言われたんだと思うよ。肝心のマクベス様の到着は明日だから、それまでにスッキリさせてあげようって思ってたのにさ」

ブレイブヒーロー「ふっ、お前がその役割に相応しいかはわからないところだな」

ランサー女「あー、そういうこと言う?」

ブレイブヒーロー「事実だから仕方ない。お前は余りウジウジしないところはいいが、それが悩んでいる者たちへの回答となるわけではない。先ほどの兵たちと同じように、な」
ランサー女「う、それはそうかも。だけど、私あの二人より戦うのはうまいよ」

ブレイブヒーロー「そうか。だが、テンジン砦の時に言ったはずだ。未だにそのような貧弱な装備で戦場に立つ意味は無い。せめて、得物をもう一つは持っておけ」

ランサー女「言ったでしょ、私は槍が好きなの。これだけはガロン王様に言われたって変えられないんだから」

ブレイブヒーロー「……なら、せめてもう少し防具だけは厚くしておけ、そうすれば生存率もそれなりに上がるだろう」

ランサー女「えー、だってこの方が動きやすいし、素早く動いて攻撃出来れば勝てるでしょ?」

ブレイブヒーロー「ふっ、脳筋女だな、お前は」

ランサー女「はいはい、私は脳筋女ですよ」
956 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 12:07:01.35 ID:cC0M2qKd0
ランサー女「それにしても、よく生きて帰れたよね。あのテンジン砦からさ」

ブレイブヒーロー「あれはメイドのおかげだろう。あの地下道の件をマクベス様に具申しなかったのなら、ここにいる戦力はもっと少なかったはずだし、我々も生きてはいなかっただろう」

ランサー女「たしかに。でも、テンジン砦そのものを爆発させるなんてね。テンジン砦城内に入っちゃった人たちは全滅したわけだから……」

ブレイブヒーロー「そうだな。我々は運が良かっただけだ」

ランサー女「本当にね。だけど、マクベス様がメイドちゃんの話を信じてくれたのは意外だったなぁ。たしかに私たちも通って来て、四人も目撃者がいるんだから信憑性はあるかもしれないけどさ……」

ブレイブヒーロー「マクベス様にはあのテンジン砦の状況が異様に見えたのかもしれない。特に白夜軍の動きは妙だった。それらを繋ぎ合わせて決断したのかもしれない」

ランサー女「よくわからないけど、マクベス様の英断に感謝しないとね。本当に助かったよ」

???「ま、その英断に耳傾けずに死んだ奴もいたけどな?」

ランサー女「……突然話に割り込んでこないでくれない、アドベン」

アドベンチャラー「そういうなって、なんだか二人していい雰囲気だから邪魔してやろうって思っただけだよ」

ブレイブヒーロー「いい雰囲気か。お前の目はつくづく腐っているようだな」

アドベンチャラー「これでも品の目利きは出来る方だよ。それにしても、マクベス様の命令無視してテンジン砦に走ってた貴族上がりの将兵どもは傑作だったな」

ランサー女「……はぁ、本当にね。マクベス様の言う事聞いてれば、テンジン砦で死ぬこともなかったのにさ。中に入った兵はまだしも、マクベス様の命令を聞かずに砦に向かった奴らは救いようがないよ」

アドベンチャラー「ああ、命あっての物種っていうのによ。馬鹿な奴らだぜ」

ブレイブヒーロー「命あっての物種か……」

アドベンチャラー「そうさそうさ。はぁ、出来れば敵の金品の一つでも奪えればよかったんだが、木っ端みじんに吹き飛んじまいやがった。もう、得る物なんてないっていうのによぉ……」

アドベンチャラー「どうしてここにいるんだろうなぁ、俺は」
957 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 12:11:05.06 ID:cC0M2qKd0
ランサー女「なんだなんだ、見た目に似合わずおセンチなこと言い出して」

アドベンチャラー「ははっ、いいじゃねえか。今日は少し湿っぽい感じなんだよ。まぁ、いる理由なんてわかってはいるんだけどな」

ブレイブヒーロー「敵王族の物品を一つでも奪ってやろうという根性からか?」

アドベンチャラー「その根性はこっちがこの戦争に勝つって思ってた頃の根性だよ。今は俺たちの意見に耳を傾けた上官に恩を返すってところだなぁ」

ランサー女「……」

ブレイブヒーロー「……」

アドベンチャラー「な、なんだよ。二人して黙りやがって」

ランサー女「いや、なんていうか。私疲れてるのかなって思って」

ブレイブヒーロー「同感だ。お前のような奴から、その様な言葉が飛び出すとは」

アドベンチャラー「うるせえ。テンジン砦での借りを返したら、さっさとこんな軍とはさよならだ。そんなこと言ったらブレイブ、てめえだって金と名声が欲しいんだったら、こんな場所にいる意味もねえと思うぜ。あっちに寝返った方が得られるものが得られるはずだぜ」

ブレイブヒーロー「ここで戦況をひっくり返すことできれば、かつてない金と名誉、そして名声が得られる。だから、私はここで戦うだけのことだ」

ランサー女「そんな建前言ってないで、マクベス様の下で戦いたいって素直に言えばいいのに」

アドベンチャラー「多分、恥ずかしくて口に出来ないだけだぜ。けけけっ、思ったより可愛い奴だ」

ブレイブヒーロー「ふん、どうとでもいえばいい。ランサー、お前はどうなんだ? ここで戦う理由がお前にはあるのか?」

ランサー女「兵士にその問いは愚問だね。私は暗夜王国の兵士だからだよ。ガロン王様は倒れていないんだから戦い続ける。ただそれだけ、難しいことは考えないの」

アドベンチャラー「へぇ、愛国心旺盛なこと」

ブレイブヒーロー「少しばかり感心するな」

ランサー女「ふふん、なんならもっと感心してもいいけど?」

ブレイブヒーロー「ふっ、もう少し良い装備に新調したのなら考えてやろう」

ランサー女「ひどい……。それよりもアドベン、あんたって偵察任務に就いてたんじゃなかったっけ?」

アドベンチャラー「ああ、そうだぜ」

ブレイブヒーロー「それがどうしてここにいる?」

アドベンチャラー「偵察に出てた奴がここにいるなら、答えは一つしかないだろ?」

ランサー女「……ああ、そっか。それもそうだね」

ブレイブヒーロー「そうだな、それ以外の理由を考えるほど、余裕はないからな」

アドベンチャラー「そういうわけだよ。報告に戻って来たところさ――」

「敵が動き出したっていう、報告のためにさ」
958 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 12:13:47.90 ID:cC0M2qKd0
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540] A[6スレ目・699]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106] A[6スレ目・925]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107] A[6スレ目・948]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
・カミラ×ジョーカー
 C[6スレ目・671]
・エルフィ×スズカゼ
 C[6スレ目・698]
959 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 12:14:49.83 ID:cC0M2qKd0
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250] B[6スレ目・700] A[6スレ目・926]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410] A[6スレ目・949]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425] B[6スレ目・902]

【支援Cの組み合わせ】
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
960 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/08(日) 12:21:20.62 ID:cC0M2qKd0
今日はここまで

 兵士が戦う理由はそれぞれで、それを戦いは無慈悲に飲み込んでいく。

 ようやく風花の一周目が終わった。
 青ルート235時間掛かった。全員引き抜いた。
 おかげでリシテアちゃんがオールS、踊り子以外のジョブマスター獲得できてとても満足
 
 次でこのスレでの更新はおわります。少ししたら次スレを作ります。
 このスレの残り分で何か小話をちょろっと書くかもしれません。(風花で書くかも)
961 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 20:56:50.26 ID:FkVSa00c0
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜平原へと続く渓谷の途中『簡易天幕内』―
 〜テンジン砦を出発してから五日後〜

 タタタタッ

ゼロ「レオン様、ただ今戻りました」

レオン「ゼロ、待ってたよ。それで、敵陣の様子は?」

ゼロ「はい、ご指摘通り多くの魔物が配備されていました。温存していたのを全部出してきたという感じでしたね」

レオン「なるほどね。それで敵の人員はどうだった?」

ゼロ「見た所、多くはありません。ほとんどの兵は街道の対処に当てたのかと」

レオン「そうか、どうにかこっちの策に乗せることはできたみたいだね。となると、一番心配するべきなのは白夜平原にある旧暗夜の最終拠点、そこから兵を出されて陽動の大隊が挟撃される可能性だけだ。その手を取らせる前に村をいち早く制圧しないとね……。ん?」

 バサッ

カムイ「レオンさん、何か情報は入りましたか?」

ゼロ「ん、カムイ様か?」

カムイ「あ、その声はゼロさん、ということは今報告の最中でしたか?」

ゼロ「ああ、ちょうどレオン様に伝えていたところだ。よければ一から話すが……」

レオン「いや、それは僕が伝えておくよ。ゼロは引き続き敵陣営の情報を集めて密にしておいてくれ。明日の戦いできっと重要になる」

ゼロ「わかりました。それじゃ、カムイ様。失礼させてもらうぜ」

カムイ「はい、お疲れ様です」

 タタタッ

カムイ「それで、どういった状況でしょうか?」

レオン「ああ、今の状況だけど――」
962 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 21:06:26.09 ID:FkVSa00c0
カムイ「大量の魔物ですか……」

レオン「それとゼロが見えない兵を探してみたけど、どうやら園村周辺にはいないらしい。活動している兵士たちもそういった気配を感じているわけでは無いみたいだね」

カムイ「ゼロさんの観察眼は優れていますから、信頼できるはずです。となると、今回の戦いで奴は手を出してこないということなのかもしれませんね」

レオン「もしかしたら、もう旧暗夜の軍勢に手を貸す必要はもうなくなったということなのかもしれない。今の内にここを落として橋頭保にしよう。そしてすぐにでも白夜平原に向かわないといけない。姉さんも前線で戦うことになるから、今日はもう休んだほうがいいよ」

カムイ「レオンさんは休まないんですか?」

レオン「まだ、作戦が煮詰まってないからね。休むわけにはいかないよ。手に入った情報を合わせると、単純ながら強固な陣をマクベスは築いている。気が抜けないくらいに強固にしてるところを見ると、奴はここの死守に全てを賭けてるみたいだ」

カムイ「ここが落ちたらガロン王を守る物が無くなるから、ですよね」

レオン「ああ、僕たちにとって今の父さんは張りぼてでしかないけど、マクベスにとってはずっと父さんは仕えるべき主なんだからさ……。命を賭けて守ろうとするはずだ」

カムイ「ですが、今守ろうとしているガロン王は偽物です。それが伝われるといいのですが」

レオン「あまり期待してない方がいいと思うよ。父さんを崇拝しているマクベスが、怨敵である僕たちの言葉を信用するかどうか……。それに……」

カムイ「?」

レオン「僕は、マクベスが父さんを裏切るような男だとは思っていないんだ。父さんの事だけは見限らない、そんな気がするんだよ」
963 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 21:19:42.47 ID:FkVSa00c0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『旧暗夜軍前戦陣地・軍師の天幕』―

マクベス「……」

 タッタッタッ

メイド「マクベス様、失礼いたします」

マクベス「あなたですか、何かありましたかな?」

メイド「偵察隊からの最終報告です。街道に現れた敵戦力はその数を増しつつある、と…」

マクベス「ふむ、いずれ敵は隊を二分して白夜平原に侵攻する可能性がありますか。他には?」

メイド「小規模ですが渓谷を進む敵兵の姿があるそうです。その部隊にマークス王子やカムイ王女の姿を見たと報告があります。ここを目指しているようです」

マクベス「となると、明日には攻撃を仕掛けて来そうですね。おそらく、渓谷を手早く抜けるために兵力は切り詰めているとなれば、どうにかなるかもしれません」

マクベス(しかし、向こうは神器持ちが数名いる。こちらの手札で相手が出来る程、甘くは無いでしょう。どうにかして、渓谷出口で少し釘付けしなければ……)

マクベス「渓谷側の出口をゴーレムで封鎖するようにお願いします」

マクベス(時間稼ぎにしかなりませんが、それでもそこに釘付けに出来ればいい……。あとは時を見計らって村に誘い込めれば、それと例の仕掛けの準備の方はどうなっているのでしょうか?)

メイド「分かりました。それと命令のありました魔法陣の準備は完了しています」

マクベス「! そうですか、この短時間で準備出来るとは思っていませんでしたが……。良くやってくれました、感謝いたしますよ」

メイド「い、いえ……。マクベス様のご命令ですから。それに他に手を貸してくれた方々がいましたので……」

マクベス「ふっ、あなたは生真面目ですね。自分だけでやったといえばいいものを」

メイド「マクベス様をお助けできればそれで十分です。私は、あなたを支えられるだけでいいんです」

マクベス「……」
964 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 21:29:38.26 ID:FkVSa00c0
メイド「マクベス様?」

マクベス「ふっ、あなたのその献身的な振る舞いに驚いただけですよ」

メイド「そ、そうですか……。ありがとうございます。あの、その――」チラッ

マクベス「む、まだ何か?」チラッ

マクベス(棚の方を見ているようですが、何か置いてあったでしょうか?)

メイド「い、いえ、なんでもありませんでした」

マクベス「そうですか、それでは次の命令になりますが……」

メイド「はい、マクベス様、次は何を――」

マクベス「ゴーレムの配置を終え次第、街道の防衛支援に向かってください」

メイド「……え」

マクベス「敵の数や規模は街道の方が遥かに多い。今はこちらへの攻撃を優先しているようですが、状況によっては白夜平原への進行を開始しかねませんので」

メイド「ですが、こちらの人員では――」

マクベス「この私がいるのです。それに配備している魔物は私が使役し管理下にある物、思いのままに扱えますので心配はいりません」

メイド「ですが、マクベス様がいなくては、私達は……」

マクベス「大丈夫です、そのために今からあなたに彼らの指揮権を与えるのですからね」

メイド「私が指揮官? いえ、そんな、私などに務まりません……。私は兵法もわからない、兵を無駄に死なせるだけです」

マクベス「いいえ、あなたは多くの将兵に信頼されています。例のテンジン砦の件なども含めて評価されていますからね。あなたになら彼らを纏められるでしょうし、彼らも従ってくれる。あなたなら、きっと多くを守れるはずです」

メイド「……マクベス様」

マクベス「そういう事ですから、よろしくお願いしますよ」

メイド「……はい」

マクベス「では、準備に戻りなさい。時間はあまりありませんからね」

メイド「……わかりました、マクベス様。失礼……致します」

  バサッ バサンッ

マクベス「……」 
965 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 21:41:04.73 ID:FkVSa00c0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

メイド「……」

ランサー女「あ、メイドちゃん。マクベス様から指示があったとおりに、ノスフェラトゥの配置は済ませておいたよ」

ブレイブヒーロー「今、防衛部隊の兵士たちも戦闘の準備を整えている。あとは我々の配置についてだが、何かマクベス様から指示を貰ってはいないか?」

メイド「……」

ランサー女「メイドちゃん?」

メイド「新たな指示です。渓谷からの敵に備えてゴーレムで渓谷出口を固めるようにと」

ブレイブヒーロー「わかった。それが終わった後に我々の持ち場の決定か。ゴーレムが遠距離から支えてくれるのなら、避けつつ疲弊した敵を討つのが私の仕事になりそうだ。前線で活躍してこそ、名声が得られるという物だ」

ランサー女「ふふん、腕が鳴るね」

メイド「いいえ、私達はここで戦いません。街道の支援に向かうよう指示を受けています」

ランサー女「え?」

メイド「作業が終了次第、街道の防衛支援に向かうようマクベス様から承っています。同時に皆さんの指揮をするようにと言われています。ゴーレムの配備が終わり次第、出発の準備を始めてください。明朝より移動を開始し、街道の防衛部隊との合流を目指します……」

ランサー女「メイドちゃん……」

メイド「……」

ブレイブヒーロー「……わかった。ここからはお前の指示に従おう」

メイド「ありがとうございます」

ブレイブヒーロー「ゴーレムの配備を進めておく。お前は少しだけ休むといい。指揮官がそのような顔では頼りない」

メイド「はい……すみません」タッタッタッ
966 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 21:51:23.38 ID:FkVSa00c0
ランサー女「そんなに街道の敵って多いのかな?」

ブレイブヒーロー「わからない。しかし、すでに後方を敵により脅かされているのは間違いないだろう。それを考えれば当然かもしれないが……」

ランサー女「ここに駐屯してた兵力のほとんど送ってるんだから、どうにか出来ると思うけどなぁ」

ブレイブヒーロー「確かに、な。……む?」

アドベンチャラー「どうしたんだ、お二人さん。仲良く神妙な顔を並べてよ」

ランサー女「ん、アドベン……」

アドベンチャラー「どうした、何か元気がねえな? これから一世一代の大決戦だっていうのにさ」

ブレイブヒーロー「ならば、手伝え。これからゴーレムの再配置を行うところだ」

アドベンチャラー「おお、それは大変だ。しかし残念、俺は俺でちゃんとマクベス様から命令を受けてる。ゴーレムは二人の共同作業で仕上げてくれ」

ブレイブヒーロー「お前、マクベス様から命令を受けているのか?」

アドベンチャラー「ああ、これをここに置いてくるように頼まれてる。敵を探知するための魔道具らしいが、魔物だけで防衛するつもりみたいだけど人の手を借りた方がいいと思うがね」

ランサー女「あんたは命令について知ってるわけ?」

アドベンチャラー「街道防衛の支援だろ? 聞いてるさ。加えて俺たちの指揮権を持ってるのはメイドだって話も聞いてる。マクベス様も中々にきついことさせるねぇ」

ランサー女「……どうにかならないわけ?」
967 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 21:57:14.37 ID:FkVSa00c0
アドベンチャラー「結局は指揮官次第じゃねえか? あのメイドちゃんが言われた通りに動いたのなら、それで終わりだけどよ」

ランサー女「……」

ブレイブヒーロー「やはり、そうか」

アドベンチャラー「まぁ、俺は俺の役割を済ませてくる、あんたらもゴーレムの準備ちゃんと終わらせとけよ」タタタッ

ランサー女「……」

ブレイブヒーロー「……取り掛かろう。夜明けが近い…」

ランサー女「……ねぇ、ブレイブ」

ブレイブヒーロー「なんだ?」

ランサー女「私達、マクベス様から見て、頼りにならないってことなのかな」

ブレイブヒーロー「いや、それだけは無いと私は思っている。そうでもなければ、マクベス様は我々を最後までここに置いたりはしない。あの人はそういう御方のはずだ。だから、そんなに落ち込む必要は無い」

ランサー女「……ありがと」

ブレイブヒーロー「気にするな」タタタタタッ

ブレイブヒーロー(しかし、今になって更に兵士を街道の防衛に向かわせる必要があるようには思えない。そもそも、街道に現れた敵はそう簡単に動けないはずだ。下手に突出すれば白夜平原側からも狙われ挟撃されかねないのだから。しかし、マクベス様は多くの人員を街道防衛に充てる決定をした……)

ブレイブヒーロー(これでは、増援をハナから期待していないようではないか……)
968 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:07:37.35 ID:FkVSa00c0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―渓谷出口の村『旧暗夜軍前戦陣地・軍師の天幕』―

マクベス「……これで大方の準備は終わりましたか」

マクベス(暗夜王国から何とも遠い場所に来てしまいましたね……。多くの国を取り込み、白夜の大地を手にし、多くの民に豊饒の大地と新たな富を与え暗夜王国の名を轟かせるという野望から……)

 タッタッ
  ガサゴソ ガサゴソッ

マクベス「ふっ、棚に目線をくれていましたが、彼女はこれを見ていたのですね。まったく、紅茶を淹れたくて仕方なかったのでしょうが、これは暗夜王国が勝利した時に飲むべきものだと言ったはずです。まぁ、飲む機会はありそうにないですが」

マクベス(本当ならばもう嗜んでいたかもしれないというのに、本当に残念でなりません。もうこの封は切られないという事実も認めなくてはいけないのですから)コトンッ

マクベス「未だに白夜平原に残っている貴族の者たちは、もう暗夜と共にありはしません。所詮、彼らは国ではなく自身の名誉や地位を高めるために、集っていたに過ぎなかったわけですからねぇ」

マクベス(貴族の者たちは軍を抜け、恥知らずにも新生暗夜などというものへ旗替えを目論んでいたようですが。しかし、向こうは向こうでそれを跳ね除けているのですから、彼らとしても予想外だったのかもしれません。そこは敵の考えに同意せざるを得ませんね。信用する価値のない存在であることは間違いありませんので)

マクベス(だからこそ、分かります。そんな者たちばかりが待機する白夜平原から援軍が来るはずもないと。彼らはガロン王様を護衛すると言っていましたが、恐らく違う目的があるのでしょう。それがどんなものかは……想像に難しくありませんね)

マクベス「まぁ、今の私には関係の無いことです。よもや、守るべきものは平原にはないのですから……」
969 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:18:53.05 ID:FkVSa00c0
  ガチャンッ

マクベス(この前授かった魔道具、これを使えば奴らに一矢報いることはできるでしょう。その結果、どういうことが自分に起きるのかは分かりませんが、今対抗できるものはこれだけしかありません)

マクベス「なにせ、これは私だけの戦争ですからね」

マクベス(その戦争に多くの将兵を巻き込む必要はありません。兵であろうとも、私の下で戦う者たちはガロン王様の築いた暗夜王国の民、守るべき存在です。それに、この状況になって戦う意味を見出すには、彼らは若すぎるでしょう)

マクベス「私の戦う意味は私だけの物。与えるべきものではありませんし、押し付けることもありません。もはや、この戦線にあるのは成されない願いと、色褪せない独りよがりの忠誠ばかり。大義などという物はもう、はるか前に潰えていたのですからね」

マクベス(そんな存在が繋ぎ止めてまで頼っていいものではありません。兵士が死ぬのは戦場よりも、見慣れた部屋の方がいい。こんなところで多くからその最後を奪う必要もないのです)

マクベス「夜明けまで、あと少しですか……。少し休みましょう、これが最後の休みになるはずですからね……」

マクベス(ここに残った兵たちは彼女に任せれば大丈夫でしょう。きちんと私の指示に従ってく街道の支援に向かってくれるはずです。その後の事は彼らが決める事ですが、大丈夫dしょう)

マクベス「賢い彼女ならば、きっと……」
970 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:28:05.73 ID:FkVSa00c0
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―渓谷出口の村『旧暗夜軍前戦陣地・共同休憩用天幕』―

メイド「……」

メイド「マクベス様の助けになる事が私の役目……」

メイド(それが私のいる意味です。暗夜軍の招集に従ったのは何もなかったからで、そしてそれは軍に所属しても同じことだと思っていた)

メイド(だけど、マクベス様は私に新しい道を示してくれた。紅茶の淹れ方もそう、軍議での話し合いを纏めるのもそう、私が知らなかった道をマクベス様は見せてくれた)

メイド(私はマクベス様の役に立ちたい、マクベス様の助けになりたい。暗夜王国や戦争の行方なんてどうでもいいくらいに、ただあなたの役に立ちたいのです)

メイド(この命令を遂行することをマクベス様は望んでいる。街道に現れた敵の規模を考えてマクベス様が下した命令…私がするべき役割……)

メイド「だけど、これは何を守るための配置なのか……」

メイド(やはりガロン王様でしょうか。マクベス様はガロン王様を第一に考えられていますから、それは当然のことです。敵が二分されないように牽制するための兵力……)

メイド「だけど、今さら私たちが支援に向かったところで意味はありません。辿り着いたところで、状況によっては……」

マクベス『あなたなら、きっと多くを守れるはずです』

メイド「多くを守れる……」

メイド(ああ、そういうことなのですね。マクベス様、あなたは私達を……)
971 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:29:29.49 ID:FkVSa00c0
メイド(……多くを生き延びらせること。それがマクベス様の望み。だけど私は……私が守りたいのは……)

メイド「……」

メイド「休む時間は終わりです。何もせずに待っているわけにはいきません」

 タッタッタッタッ
  バサッ バサンッ……

ランサー女「あ、メイドちゃん。ゴーレムの配置とかは終わったよ」

ブレイブヒーロー「他の者たちも準備に入った。あとは街道に向けて進むだけだ」

アドベンチャラー「ああ、いつでも出られるぜ」

旧暗夜軍兵士たち『………』

メイド「皆さんにお願いしたいことがあります」
972 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:32:31.81 ID:FkVSa00c0
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・中央部『白夜平原へと続く渓谷地帯』―

カミラ「もうすぐ夜明けね。一気に近づいて片を付けたいところだけど、そうはいかせてくれない強固な陣を作り上げているみたい」

レオン「ああ、まずは村に肉薄するのが一苦労になりそうだ。今は隠れているけれど、あの一体はゴーレムの攻撃範囲だ。姉さんたち飛竜隊に戦いを任せることになりそうだよ」

カミラ「ふふっ、腕が鳴るわね。安心して頂戴、一気に喰らいついてめちゃくちゃにしてあげるから」

マークス「油断はするな。今回ばかりはこちらの人員も少ない。それにマクベスの事だ、幾重にも罠を仕掛けているはずだ。気を抜けば足をすくわれかねない」

カミラ「ええ、分かっているわ、お兄様」

エリーゼ「マクベスを倒せば、他の兵士の人も戦うのを止めてくれるのかな?」

レオン「わからない。だけど、ここ一帯の指揮権を持っているのはマクベスのようだからね。奴が倒れれば、少なくとも旧暗夜軍の戦意は低下するはずだ。もう、奴らには後が無いはずだからね」

アクア「こうして待っていても始まらないわ。こちらから仕掛けなければいけない以上、もう進む以外に道は無いわ」

カムイ「ええ」

マークス「うむ、よし全員聞け。長きに渡る戦い、その終止符まであとわずかだ。ここに最後に至るための橋頭堡を築く! 目標、旧暗夜の前線拠点、これを制圧せよ!」

一同『おーーーっ!!!!』

マークス「進め!!!!」

 ドドドドドドドドッ!!!!

973 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:33:38.33 ID:FkVSa00c0
○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB++
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワB
(動物の餌やりを一緒にやることになっています)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
974 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:34:11.97 ID:FkVSa00c0
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713〜715] B[1スレ目・928〜929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511〜513] B[2スレ目・297〜299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710〜712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602〜606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839〜840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866〜867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540] A[6スレ目・699]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106] A[6スレ目・925]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107] A[6スレ目・948]

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377〜380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514〜515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
 C[6スレ目・620]
・カミラ×ジョーカー
 C[6スレ目・671]
・エルフィ×スズカゼ
 C[6スレ目・698]
975 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:34:49.78 ID:FkVSa00c0
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888〜889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752〜753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864〜865] B[1スレ目・890〜891] A[1スレ目・930〜931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471〜472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492〜493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926〜927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367〜368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250] B[6スレ目・700] A[6スレ目・926]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410] A[6スレ目・949]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426〜429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423〜425] B[6スレ目・902]

【支援Cの組み合わせ】
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
 C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
 C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
 C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
 C[6スレ目・607]
976 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/09/24(火) 22:44:58.01 ID:FkVSa00c0
今日はこれだけ

 更新があまりできずにもうしわけありません。これでこのスレでの本編更新は終わりになります。
 なんだか無駄に長くなってしまって申し訳ないです。新スレを少ししたら立てようと思います。
 残りは軽い話で埋める予定で、下記のどれかをやろうと思いますので、よろしければ安価にご協力お願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ◆◇◆◇◆◇
―とても短いお話―
・ピエリ×リリスなお話
・リリスの星界的なお話
・オロチ×カゲロウなお話
・風花雪月の百合的なお話

 一つ目>>977
 二つ目>>978
  
 この上記の物で二つやろうと思います。
 すみませんがよろしくお願いいたします。
 
977 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/09/25(水) 08:25:19.84 ID:7YloK70U0
風花雪月の百合的なお話
978 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/25(水) 08:27:06.78 ID:ynTQkoJKO
ピエリ×リリスなお話
979 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 19:47:28.05 ID:0n10eZ/T0
 こんばんはです。

 前回の安価で>>977さんと>>978さんに選んでいただいたものをやっていきます。
 
 すべて短い話になります。

 風花雪月の百合的なお話
 ・レオニー×マリアンヌ
 ・レオニー×リシテア
 ・リシテア×カトリーヌ

 ピエリ×リリスは小話が5つになりますので、よろしくお願いいたします。
980 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 19:59:03.27 ID:0n10eZ/T0
-1- レオニー×マリアンヌ
(支援Bまでのネタバレがあります)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ずっと、多くの人と関わらない様に生きてきたからでしょうか。ああいう風に人を引き留めたのは初めてのことだった。
 多分、それは嫌っていると思われたくないからの行動だったと思う。相手に私自身がどう思われているかを考えない行動で、私は私がそうしたいからその人を引き留めた。
 初めて話した時、私はとても酷いことをレオニーさんにした。でも、それ以上に嫌っていると思われることが嫌だった。だから、嫌っていないと伝えられればと思って、私はレオニーさんを引き留めた。そんな私をレオニーさんはずっと気に掛けてくれていたことを、その時知った。
 多分、それが大きなきっかけだったと思う。昼食の時間、私が一人でいるとレオニーさんが話しかけてくれるようになって、私からも話しかけることが増えて、そして取り留めない話をする。それが日常になっていた。
「はは、思った通りマリアンヌは動物が好きなんだね」
「はい……、その、ドルテはとってもいい子なんですよ…」
「ドルテ……ああ、マリアンヌが良く世話をしてる馬だよね。確かに、あんまり暴れたりしているところを見たことないね。これもマリアンヌが優しく世話をしてるからかな」
「いいえ、ドルテが優しいだけですよ……」
 長くは続かない会話だけど、レオニーさんはそれを特に嫌がることもなく聞いてくれる。聞き上手だからだと思う。彼女に比べて、私は聞くのも話すのも苦手だから気の利いた言葉を返すことが出来ない。
「すみません…」
「ん、当然どうしたんだい?」
「その、やっぱり私と話をしていても……」
「また始まったね。マリアンヌの悪い癖がさ」
「あ……」
 またやってしまったと、自己嫌悪に陥る。
「気にしないでいいって言ってるじゃないか。わたしはマリアンヌと話が出来るだけでも嬉しいよ。前にも言ったと思うけど、ゆっくりでいいからさ、色々と話してほしいんだ」
「レオニーさん……」
「それにいろいろ話してくれれば、それだけわたしはマリアンヌの事を知ることができるし、マリアンヌだってわたしのことを知ることができる。そうやって互いに互いの事を知っていくのが、仲間っていう奴だとわたしは思うんだ」
「仲間……ですか?」
 私の疑問にレオニーさんは自信を持って頷きを返してくれた。
前までなら、それに対して否定的な考えを口にしたかもしれないけれど、今はそれに嬉しいという気持ちと同意したいという思いが強くある。私はレオニーさんの仲間でありたいと願えるようになっていた。
981 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:03:36.62 ID:0n10eZ/T0
「はい、レオニーさん…」
 だから、素直に同意する。素直にそう言いたいから。私の返事にレオニーさんはうれしそうな笑みを浮かべてくれて、それがとてもうれしかった。
「そうだ、マリアンヌ。これあげるよ」
 すると、レオニーさんは何かを取り出して私に手渡してくれる。小さなそれをわたしは掌で受け取る。
「これは……」
「マリアンヌ、この花が好きだって言ってたからさ」
 そこにはあの日、レオニーさんを引き留めた時に好きだと言った花があった。切り花として加工されたそれは、私の掌の中で可憐に開いていて、なんだかとても暖かい気持ちが広がるのを感じた。
「うれしいです、レオニーさん」
「そう言ってもらえてうれしいよ。出来れば故郷にある色違いを見せられたらよかったんだけど、季節が季節だからね」
 そう言ってレオニーさんは頭を掻いていた。でも、そんなことは全然気にならなくて、こうして私のためにレオニーさんが準備してくれたことが、何よりもうれしく感じた。
「これ……付けてもいいですか?」
「いいよ。そのためにあげたようなものだし、むしろ付けて欲しかったからさ」
 そう言ってくれるレオニーさんの視線、それに応える様に胸元へ取り付ける。暗い表情の私にこれが似合うかどうかはわからないけど、今はそれを付けてみたかった。
「ど、どうでしょうか?」
「うん、似合ってるよ、マリアンヌ」
 その声はとても優しくて、胸の奥がなんだか少しだけ熱くなって、私はなんだか恥ずかしい気持ちになる。レオニーさんもなんだか照れくさそうに頬を掻いていた。
「はは、なんだか少しだけ恥ずかしくなってきたよ」
「わ、私もです…」
 私は顔と胸の奥に感じる熱を逃がすように、何かを言おうと考えた。頭に過るのは花とレオニーさんの事だけだった。
「……好きです…」
 そう口にしていた。
「ふふっ、気に入ってもらえてうれしいよ。わたしの故郷にある色違いは一緒に見に行こう。きっと、その花もマリアンヌに似合うと思うからさ」
 そう言って笑うレオニーさんに、私は何も言葉を返せずにただ頷いた。
 色違いの切り花が装飾されるその日に、思いを馳せながら……

 -おわり-
982 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:11:55.08 ID:0n10eZ/T0
-2- レオニー×リシテア
(支援Bまでのネタバレがあります)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 無理をしていたことはわかっていた。だけど、悲しんでいたって死んだ人間が帰って来ないことくらいわかっている。命は誰だって一つしかない、女神様も失われた命を蘇らせてなんてくれない。それがとても尊敬していた師匠だったとしても、帰って来ないものは帰って来ない。だから、それを受け入れようと必死になっていた。
 だって、目の前にいながら助けることが出来なかった先生はもっと悲しんでいたから、わたしは出来る限り平静であることに努めた。師匠だって、わたしが落ち込み続けている姿なんて見たくないはず、そう思って自分を誤魔化していた。そのツケが回って来たのだと思う。
「レオニー、大丈夫ですか。ああ、血がこんなに。だめ、このままじゃ……。レオニー、しっかりして下さい、レオニー!」
 脇腹に感じる重たい痛み、修道院の中で受けるものとは思えない激痛、何が起きたのかを確認することも出来ずに気を失った。
 気が付くとわたしは医務室の天井を見上げていた。
 靄が掛かった記憶は誰かが私を呼ぶ声で終わっていて、何が起きたのかをぼんやりした頭で考える。そして、ようやく何が起きたのかを思い出した。
(そうだ……、武具の手入れの最中に転んじゃったんだっけ。それで、転んだ先に剣があって……、それが脇腹に刺さって……)
「ははっ、こんな笑い話みたいな怪我の仕方をすることになるなんてね」
 情けない声が漏れた。本当に何をやっているのか、こんな怪我をしている暇なんてない。師匠を殺した仇を取らないといけないっていうのに……。
 だけど、体は動かしただけで痛みを感じるほどで、わたしは無力な自分を見ない様に瞼を塞ぐ。途端に目頭が熱くなってくる。悲しみに目尻が濡れるのを感じた。
 師匠を失ったこともそうだが、その悲しみにまだ耐えられていないことを知る。それを乗り越えなきゃと思っている自分と現実との隔たりに弱さを感じずにはいられなかった。
 不甲斐ない雫が頬を伝いかけた。
「レオニー、大丈夫ですか?」
 医務室の入り口から声がする。この声はマヌエラ先生の声ではなくて、気を失う前に聞いたわたしの名前を必死に叫んでいた声……。聞き覚えのある声。
「リシテア?」
「ああ、よかった。目を覚ましたんですね、本当に心配したんですよ」
 そうしてリシテアは歩み寄って来る。零れかけた雫を拭って、わたしは自然と背を向けた。
「……レオニー、無理しちゃダメです」
「無理なんて、してないよ。わたしは、何も無理なんてしてない」
 強がるように告げる。実際、大きく声を上げるのは無理をしているからに他ならないし、そういったことでリシテアを誤魔化せるとは思えない。
983 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:20:23.01 ID:0n10eZ/T0
「嘘です。いつもだったら、何をするにも良い訓練になるって口癖のように言うのに、そんなことほとんどなかったじゃないですか。レオニーらしくないですよ」
 リシテアに言われて、そうかもしれないと改めて思う。この頃は何事も訓練だ、無駄はない方がいいとか、そんなことを考えている余裕はなかった。多分、言葉よりも精神の方が崩れない様に気を配っていたんだと思う。わたしが思っている以上に色々と限界だったのだ、結果的にこんな醜態をさらす羽目になった。本当に、やることなすこと空振りするというのはこのことだろう。
「駄目だね、わたし……。どうにかなるかと思ってんだけど……」
「そういう時もありますよ。今回の事はそう簡単に受け入れることは難しいと思います。先生も慎重に動くとは言っていましたけど、納得できているわけじゃないみたいですから。だけど、先生の事を気遣ってレオニーが悲しんじゃいけないってことは無いと思います」
 そう言ってリシテアはベッドに腰おろして、わたしの背中をやさしく摩る。いつか、わたしがリシテアのことを気遣った時とは逆だった。
「はは……、これじゃわたし、子供みたいだ」
「いいえ、レオニーは子供なんかじゃありません。いっぱい頑張っているじゃないですか」
 背中を摩ってくれる手はとても暖かくて、もう我慢しなくても大丈夫と言われている気がした。だから、静かにわたしは泣いた。不思議だったのは、一人で悲しむよりもずっと安心して涙を流せたことで、その間もリシテアは何も言わずに待ってくれた。
 少しして、ようやく落ち着くとわたしは体を起こした。リシテアはわたしに目元を拭く様にと手拭いを差し出してくれる。甘い香りがして、なんだかとても落ち着いた。
「もう大丈夫ですか?」
「うん、ありがと。おかげですっきりしたよ。迷惑かけて悪かったね」
「気にしないでいいです。これも嫁の仕事みたいなものですからね」
 リシテアがそう言ってきたので、わたしは笑った。前に言ったわたしの冗談を覚えていて、リシテアがそれを言ってくるなんてね。
「ははっ、嫁か。もう、今のわたしはいい旦那って言われる器じゃないよ。こんな風に迷惑を掛けたんだからさ」
 こんな醜態を晒してしまった以上、リシテアの思ういい旦那さんというのではなくなっているだろうなと思う。それにリシテアはなんだか慌て始める。
「そ、そんなことありませんよ。それに、こうやってわたしに弱いところを見せてくれるというのは、その、嫁冥利に尽きると言いますか……」
「?」
「そ、その、わたしの中ではまだレオニーはいい旦那さんのままだから、えっとその、と、ともかく、早く体を治してください。そ、それじゃ、わたしはこれで失礼します!」
 なぜか顔を赤くしたリシテアは医務室を飛び出し、残されたわたしはリシテアのいい旦那のままだという言葉を思い出して、その事実になぜかホッとしていた。

 -おわり-
984 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:26:53.62 ID:0n10eZ/T0
-3- リシテア×カトリーヌ
(支援Bまでのネタバレがあります)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 雨が降り始めたのは、丁度修道院に戻る途中でした。
 最初、ぽつぽつという弱い雨だったから、帰ろうと思えばどうにかなったと思う。だけど、買ったばかりのお菓子が濡れるのを嫌って軒下に隠れた。結果、雨脚は激しくなりわたしは動けなくなっていた。
「はぁ、どうしてこういう日に限って雨が降るんですか……」
 今日はお菓子の市場があった。そこで並ばないと買えない絶品スイーツが売られると聞いて、早朝から頑張った。頑張って手に入れたというのに、この仕打ちはどうかと思う。
「はぁ、やっぱりカロンの紋章は雨にとことん愛されているんですね。正直、こんな愛情いらないっていうのに」
 雨脚は弱まる気配を見せなくて、だんだんと湿気が増して来るのを感じた。買ったスイーツは湿気に弱いクッキーだから、尚更空を睨むように見上げてしまう。この雨の被害にあっているのか、どこからか駆け足の音が聞こえる。多分、衣の準備をしてなかった人が家路を急いでいるんだと思う。多くの不幸を生むこの雨に、なんだか無性に腹が立った。 
「もう、本当になんなんですか」
「仕方ないよ。天気だって、こうなりたくてそうなってるわけじゃないんだからさ」
 その声とともに雨に紛れて聞こえていた足音は消えて、隣に誰かが立っていることに気づいた。視線を上げてみると、そこにはびしょ濡れのカトリーヌ様がいた。
「え、カトリーヌ様、どうしたんですか!?」
「ああ、ちょっと街に用があってね、で、行ったはいいけど雨が降り始めて、撤収作業を手伝っていたらさらに強くなって、この様っていうわけさ。それで、そっちはそんなに憤慨してどうしたんだ?」
 そう言いながら全身水浸しの姿をわたしに披露してくる。だけど、何時もの活発で凛々しいカトリーヌ様は健在の様で、雨に降られたこと自体はそれほど気にしてないように見える。まぁ、わたしだっていつもなら雨に降られることをこれほど嫌う事は無い、でも、今日は事情が異なるのだ。
「この雨だと、これがダメになってしまいそうだからです」
「これ、ああ、なるほどね。確かにこの湿気の中だ、何時もより早く駄目になっちまうかもしれん」
「そうです、これは由々しき事態なんですよ。せっかく、朝から並んで手に入れたのに」
「ははっ、リシテアは甘いものが好きなんだな」
「はい。それに、頑張った分だけ自分にあげるご褒美でもありますからね。カトリーヌ様はそういうのは無いんですか?」
「ご褒美ねぇ。うまい飯を食べて酒を飲めればそれでいいって感じかな?」
「カトリーヌ様って、やっぱり豪快ですよね」
985 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:32:15.50 ID:0n10eZ/T0
「ははっ。しかし、リシテアはアタシと話すとき、気を抜いてくれるようになったみたいだな」
「え、そうでしょうか?」
「ああ、多分だけど前のアタシとアンタの間柄だったら、話しかけてもその袋の中身を教えてはくれなかったと思うからさ」
「そんなことは……」
 いや、多分そうだと思う。わたしは子供扱いされたくないって思っている。そして、カトリーヌ様のような人の前では出来るなら大人として振舞いたいと思ってる。
「はい、多分そうですね。きっと前のままだったら、カトリーヌ様にも何を買ったのか教えてなかったと思います」
「はは、正直だね。でも、そう考えるとアタシはアンタが隠さずにそれを教えてくれることがうれしいよ。こんな雨が降った日だけど、悪くないって思えるよ」
 笑いながらカトリーヌ様は濡れた髪を整え始める。雨が降る日は決まって何かがある日、良いことも悪いことも平等に起こる日で、わたしの体にもう一つの紋章が刻まれた日も雨が降っていた。だから、雨が降る日は悪い日というイメージが付いて回る。だけど、今日はそういう日じゃない気がした。
「あの、カトリーヌ様……」
「なんだい、リシテア」
 袋の紐を解いて中からクッキーを取り出す。手が少し湿っていたけれど、わたしはそれを構わず取り出した。
「あの、良かったら食べてください。これ、とってもおいしいんですよ」
「お、ありがと。でもいいのかい、紐を開けたら湿気がさらに進んじまうよ」
「いいんです。お菓子はまた買う事が出来ますから。それに、今はカトリーヌ様と一緒にお菓子を食べたい気分なんです」
「そうかい、それじゃお言葉に甘えさせて……ん、なかなかいけるな」
「でしょう。お姉様に勧めるんですから、生半可なものじゃありませんよ」
「おっ、また懐かしいことを。でも、可愛い妹が選んだんだから間違いはなさそうだ」
「ふふっ、そういえばお姉様、この前なんですけど――」
 雨脚は怯むことは無いけれど、わたしはカトリーヌ様とのお話に花を咲かせる。
 少し前にカトリーヌ様が言ってくれた姉妹という冗談。だけど、それは気丈に振舞っていないと自信を失いそうになるわたしにとって気を抜くことが出来る間柄で、日頃の張りつめた自分を解すように、わたしはカトリーヌ様をお姉様と呼びながら馬鹿話をする。
 そして、それを聞くたびにカトリーヌ様はわたしを妹と呼んで、冗談交じりに返事をくれる。そんな特別を引き寄せてくれたのは、この雨なのだとわたしは思った。
 雨脚は弱まっているけれど、わたしとカトリーヌ様は雨宿りを続ける。ここはわたしが飾らないままでいられる場所、紋章が呼び寄せる秘密の場所だから。

 -おわり-
986 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:40:28.90 ID:0n10eZ/T0
 ピエリリス 短編1
『暗夜の寒さも悪くない』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「白夜に比べて暗夜は寒くて嫌だねぇ」
 そんな声が耳に入って来た。確かに白夜と比べれば暗夜は寒いですよね、なんて暢気に思う。白夜にも寒い場所はあるだろうけれど、あまりにも陽の光が入らない暗夜の大地はもっと寒い。
 本格的な冬の到来はまだ先ですが、徐々に寒さが磨かれつつあって、外を出歩く人たちが羽織る外装も厚くなっている。もちろん、例に漏れず私も少し厚手です。
普段のティアンドルだけでは肌寒いからと羽織ったコートは、寒さを忘れさせてくれるほどに暖かかくて、ホッと息が漏れた。
凍えた世界に飛び出た安堵が靄になって消えていくのを眺めていると、視線の端に同じような靄が浮かんで私の靄に交じっていく。
「えへへ、リリスの吐息にピエリのも混じっちゃったの」
それが溶けてなくなるのを、隣にいたピエリさんは楽しそうに眺めていた。私の吐息とピエリさんの吐息、それは僅かな時間を共に過ごして消えていった。
「消えていくのを見るのが楽しいんですか?」
「ちがうの、リリスと同じことをしたから楽しいのよ」
 隣を歩くピエリさんも、今日は寒いからと厚着をしている。だけど、お気に入りのリボンは変わらず付けていた。左右にそれぞれ纏めた髪は楽しそうな彼女に連動するように上下に揺れて、それを眺めながら私は歩くのを再開する。
「うう、白夜から帰って来たばっかりだから、とっても寒いのよ」
「今回はイズモ公国とテンジン砦付近で白夜との合同演習でしたっけ? あの地域はこの時期でも暖かいですから、そこから帰って来たとなると暗夜の寒さは堪えますよね」
「うう、殺人的なの。白夜はもっとポカポカしてたのに、こっちは寒いから体が壊れそうだから、今日は体が温まるスープを作るのよ」
 ピエリさんの手提げ袋には、多くの具材が入っている。久しぶりにピエリさんが帰ってくるという事で、屋敷にお邪魔していた私はスープの材料の買い出しで一緒に来たというわけである。
「結構な量を作るんですね」
「うん、久しぶりだから、いっぱいお料理するの。あ、従者のみんなにも手伝ってもらう予定なのよ」
「ふふっ、良かったですね」
 そう笑いながら話しているという事は、多くの従者がピエリさんの提案に賛成してくれたのだと思う。それが受け入れられたのは、ピエリさんが変わったからだと思う。
従者を気分次第に殺していたピエリさんを変えたのは、あの戦いで出会った多くの人々との交流でしょう。それがピエリさんを変えていったのだと思います。
そして、それは私も同じだった。
987 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:44:58.77 ID:0n10eZ/T0
「ピエリさんと初めて会ったのは、確かアミュージアでの戦いでしたよね」
「そうなの。ピエリがカムイ様を捕まえに行ったら、あなたが立ち塞がって来て驚いたの」
「カムイ様を守るためですから。まぁ、直後にピエリさんに叩き落とされちゃいましたけどね。あの時、結構痛かったんですよ?」
「仕方ないの。あの時は敵同士だったの。敵同士だから殺されても恨みっこなしなのよ」
 ピエリさんはそうケロッと言うけれど、実際その通りなので私は何も言い返さない。結局、戦争というのはそういうもので、自分が付く旗の色で戦う相手が変わったりもする。知り合いであろうとも、旗の色が違えば殺し合うことになるのが戦争ですから。
「でも、リリスはすごいの。ピエリ、リリスの事思いっきり叩き落としたのに、合流した時、あんまり気にしてなかった気がするの」
「確かに怪我はしましたけど、気にすることもなかったです。それを言えば、ピエリさんだって気にしてなかったと思いますけど?」
「うん、ピエリまったく気にしてなかったの。それに、あそこで戦ってなかったらピエリはリリスの事なんて忘れてたと思うの。だから、あそこで叩き落として置いて正解だったの」
「うーん、出来れば叩き落とすことなく覚えててくれるほうがいいんですけど」
 昔の話をしていると、どうも当時の古傷が痛むような気がしてきます。現にピエリさんに思いっきり叩かれた脇腹辺り、そこがムズムズと痛み始めたような気がした。
「駄目なの。あれはきっと必要な事だったの。だって、ピエリの攻撃を受けて生き残ったから、ピエリはちゃんとリリスの事覚えてたのよ」
 あれは必要な事だとピエリさんは笑って言う。それに呆れながら、私は仕方ないと笑った。
「まったく、普通に覚えることはできないんですか?」
「んー、分からないの。でも、今はお友達だからこんなこともできるのよ」
 そうして、ピエリさんは私の手をぎゅっと握って来る。ピエリさんの冷たい手の感触、それが私の手を包み込むと、同じくらいの暖かさを感じられるようになった。
「えへへー」
 幸福な笑みを浮かべるピエリさんの手の熱、それはここまで生きてきた中でも特別な熱に感じられた。私はその手を放さないままに、ピエリさんに肩を寄せた。
「まったく、手が冷たいからって、人の手で暖を取らないでください」
「あ、ばれちゃったの。リリスの手、とっても暖かいから仕方ないの」
「ピエリさんの手は本当に冷たいですよね」
「それは暗夜がこんなに寒いのがいけないの。あと、リリスが隣にいるからいけないのよ」
 そう言ってピエリさんの手の力が強くなった。それは私とピエリさんの友人としての絆のように感じられて、私はどういう理屈ですかと零しながら、心の中で小さく笑った。
 白夜に比べて暗夜はとても寒い。
 でも、それも悪くないかもと、手を握り返しながら私は思うのだった。

 -おわり-
988 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:49:22.54 ID:0n10eZ/T0
 ピエリリス 短編2
『私はあなたの痕になる』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 小さな圧力で目が覚めた。
 それはとてもか細いけれど、なんだか逃がさないという意思を示すみたいに私の体を引き寄せている。
 自身の人ならざる竜の体を包む交差した二つの腕、その束縛から逃れようと身を捩る。
 抜けられない、どうやら尾鰭があの子の下敷きになっているようだ。下敷きになっているけど痛くないのは、この高級なベッドのおかげでしょう。決して、下敷きにしている存在の体重が軽いからではないと思う。あんなに大きくご立派なものを二つも持っているのに、これで軽かったら不公平です。一説にはカミラ様と同じくらいだともいうし、そんな人が体重まで軽いなんて言語道断許されない。
 そんなことを思いながら私は逃げることのできない体をそのままに、拘束主であるピエリさんの目覚めを待つ。
 少しして、カーテンの隙間から差し込む太陽の光が瞼に掛かった。眩しさに顔をしかめていると、背後から怪訝な声が聞こえてくる。同時に二つの腕の力が弱くなった。
 尾鰭に感じていた重みがゆっくりと緩和されていき、やがて消え去る。ようやく自由になった尾鰭を動かそうとしたけれど、ずっと下敷きになっていた所為か思ったよりも動いてくれない。そして、腕の拘束はまだ解かれていない。
「んー……。眩しいの」
 ピエリさんが私の体を無理矢理起こす。その結果、お腹をデカデカと晒される形になってしまって、これはセクハラではないかと私は訝しんで、やっぱりセクハラだと理解する。
『セクハラを止めてくれませんか、ピエリさん』
「あ、リリスなの……。おはようなの……ん、やわらかいの〜」
『さらにお腹摩るのを止めてくれませんか』
 言葉を思考して相手に伝える。こんなことをする相手はカムイ様しかいなかったけれど、今一番こうして話をしているのはピエリさんだと思う。ピエリさんはもう慣れてしまった私の声を聞いて、その寝ぼけ眼を数回擦った。
 いつも二つに結んでいる髪も、今だけは解かれて背中に届くほどある。蒼の根元が行き着く先は薄桃の毛先で、それがあどけない子供のような表情と成熟した見た目のアンバランス差をさらに強調しているようだった。
 ようやく拘束が解かれた私は、フワフワとピエリさんの前に浮遊する。
「リリス、服取って。早く取ってなの」
『はいはい、ちょっと待っててくださいね。人の姿になりますから』
 子供のように服を強請るピエリさんに軽く返事をして、私は竜の姿から人の姿に戻る。自分の体が人の形に変化していくのは何とも不思議な感覚で、こればかりは幾度と熟してもなれない。浮遊感が消え、綺麗に敷かれた絨毯の感触を足が覚える。
989 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 20:54:55.10 ID:0n10eZ/T0
 人としての姿で立って、すぐに気になるのは今の格好だ。なにせ、今の私は何も着ていない。そして、視線の先には昨日着ていた衣服の一式がくしゃくしゃに放置されている。私の体系にお似合いの奥ゆかしい下着一式はベッドの近くにポトリと落ちていた。
 そして、その隣に私の数倍くらいが収まりそうな大胆なブラが落ちていて、やはり選ばれる人と選ばれない人というのが存在するのだなと改めて思った。
「ピエリさん、体は痛みませんか?」
 髪をゆっくりと梳かしながら訪ねる。ピエリさんの体には色々と跡が付いている。訓練での怪我、戦闘での負傷もある。だけど、今一番目立つのはうっすらと浮かぶ赤い腫れで、それは私が付けた痕だ。
「体は痛くないの。でもリリス、体のあちこちに痕を付けるのは止めてほしいの。このままじゃマークス様に怒られちゃうのよ。それに見える所に痕が付いてるとみんなが見てきて、とっても恥ずかしいの……」
 頬を染める彼女を見て、昨夜のことがモヤモヤと思い出される。私の指がピエリさんをどう弄んだのかは私だけの秘密。そして、その首筋と背中に何度も行った求愛の証は私が彼女を独り占めしているという証だった。
「ふふっ、もう皆さんに知られている事なんですから。別に気にすることじゃないと思いますよ。私はピエリさんのすべてが大好きですから」
「そ、それはうれしいの。ピエリもリリスの事大好きなの」
「なら問題ないですよね?」
 うなじに残した痕に指を這わせると、ピエリさんの口から甘い息が漏れた。子供の様でいながら、その中身はとても成熟している。だけど、精神が成熟しているわけではないからこそ、私が触れる度にその成熟に私という存在を溶け込ませたくなるのだ。
 誰も見たことのないピエリさんを独占して、ピエリさんもそんな姿を見せる相手が私しかいない。いいえ、私だけにしか見せちゃいけないと思えるように。
 そう考えると髪を梳かす手が自然と伸びていく。さっき昨日の痕に触れたことで、ピエリさんの体も火照り始めているようだった。
「だ、駄目なの、リリス……」
「大丈夫、少しだけですから、ね?」
 それは建前だということくらいピエリさんも分かっている。始まったら少しでは済まないことも、痕がまた増えると言う事も分かっている。それに、逆らえないこともだ。
「……痕を付けないでくれるなら……いいの。リリス……して?」
 そうして体を預けてくる。私は、それを弄んでいく。ちょっとの行為は大きな熱を帯びて長い時間の悦びに変わっていく。その中で、ピエリさんの口から嘘つきという言葉が零れた。
 私はそれにただ笑みを浮かべて赤く火照った筋に小さい圧力を掛けた。唇を使ったその圧力は、私を嘘つきにして、同時に昂らせる。
 痕を付けないでとあなたが望むほどに、あなたは私の痕になれるのだから……

 -おわり-
990 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 21:01:36.06 ID:0n10eZ/T0
 ピエリリス 短編3
『壊れたあなたの隣なら』

  ピエリは壊れてる、おかしいって多くの人が言ってくる。どうしておかしいのかを聞くと、誰もが普通じゃないからだって云う。殺すことに戦場と何か違いがあるのかを聞いても、敵だから殺してもいいんだって、みんなは云う。みんな、人の命を奪っちゃダメだってピエリの事を悪物みたいに云う。言うから、ピエリは何時もここに入り込む。
 星界の端にひっそりと佇む神殿、時々カムイ様だけしか訪れないそこはピエリのお気に入りの場所になっていた。
「それが必要な事なら、殺してもいいのではないでしょうか? 私もカムイ様を守るためでしたら、どんな相手であろうとも殺すでしょうからね」
 リリスはそう言ってピエリの横に座る。リリスはなんだかとても不思議な子で、ここにピエリが入り込んだ時に知り合った。なんだか、変な動物みたいな恰好をしてる時もある。ピエリから見ても不思議な子だった。
「ピエリ、イライラすると人を殺したくなるの。みんな、それがダメな事だっていうの。敵は倒さないといけないから殺してもいいって言うけど、ピエリには違いが分からないの」
「違いはありませんよ。理由がなんであっても人を殺している事実は変わりませんから」
 リリスはピエリの言葉に簡単な答えを返してくれる。よくわからないけど、みんな人を殺すことに色々と理由を付けてるから、リリスの答えは聞いてて分かりやすかった。
 それだけじゃなくて、リリスからはラズワルドと同じですごく血の匂いがした。ピエリと同じいっぱい人を殺してきた匂い、そのことをラズワルドに聞いたら、仕方なかったからって答えた。だけどリリスは、いっぱい殺したって言って、それ以外に何も言わなかった。
 あの頃はピエリを見るみんなの目が、どこか怖かった。声を掛けると用事があるって口にして、どこかに行っちゃう子もいたから、逃げることもなくピエリを見てくれるリリスにこんなことを聞いた。
「リリスはピエリの事、怖くないの?」
「いいえ、別に怖くはありませんよ。敵ではなく仲間なんですから、怖がる必要もありませんし。むしろ、ピエリさんの方が私に怯えているみたいですよ?」
 リリスの言葉は的確だったと思う。だって、その言葉に心臓が変に鳴ったから。
「大丈夫ですよ、あなたを怖がったりなんてしませんから」
「ほ、ほんと?」
「ええ。あなたはカムイを助けてくれた人ですから、嫌いになる理由がどこにもありません。むしろ、そのお礼をしたいと思っていましたから」
 そう微笑んでくれるリリスは、ピエリに座るように横をポンポンって叩いて、それにピエリは従った。そこからいっぱい時間が過ぎて、ピエリは何かがあるとリリスに相談するようになった。リリスはピエリの事を肯定してくれて、優しくしてくれる。それがとても心地良くて他の事なんていらない。そう思えるから、ピエリはリリスの傍が好きなの…。
991 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 21:06:34.91 ID:0n10eZ/T0
「ふふっ、眠っちゃいましたか」
 私に頭を撫でられて眠くなったのか、ピエリさんは肩に寄り掛かるようにして眠り始める。神殿の中に彼女の寝息だけが漂い始めると、私はその左右に纏めた髪を優しく撫でた。
 今日も、こうして私の下にやってきてくれたこの子に感謝するように。
 あの日、みんなの目線に耐えかねて神殿に逃げ込んで来たピエリさんの事は今でも覚えている。とても辛そうな顔をしていて、私を見た時も拒絶されるかもしれないという顔をしていたと思う。それが、狂ったお父様に消されそうになった私と重なった気がした。
 ピエリさんの価値観は、恐らく多くの人に受け入れられることは無いと思う。そして、その受け入れない人たちは殺すことの意味を何かで塗りつぶさないといけない人たちで、そんな人たちにピエリさんが苦しめられている姿は見るに堪えない。そして、誰も彼女なりの意味があるかもしれないと考えたりはしなかった。
「……あなた達が思っている以上に、ピエリさんは純粋なんですよ」
 思い出す、ピエリさんが前に話してくれたこと。従者に殺されてしまったお母様の話。お母様の記憶がピエリさんにとっての考えの根底なのだと私は思う。それは愛情の欠如ではなく、愛情が大きかった故に彼女はこのような価値観を得たのだと思う。
 酷く落ち着かない、殺しを行った従者がいるように感じる恐怖、そしてお母様に会いたいという子供としての願い。それが混ざり合って、ピエリさんは成長を止めたのだと思う。
 そして、そんな不安定な彼女を私は隣で支えたいと思った。私がカムイ様以外の誰かを支えたいと思ったのは初めてのことだと思う。だけど、私にはピエリさんの心の時間を動かす方法が全く分からないし、動かそうとも思わなかった。
 ピエリさんの中で止まった時間、それを動かすためには色々な事をしなくちゃいけない。だけど、それは今のこの支えている時間を崩しかねないもので、私はそれを失うことに恐怖を覚える。
 純粋に私を慕ってくれているピエリさんの価値観が壊れない様に、私は言葉を選んで口にしていった。死の価値観も、人を殺す意味も、正直私にとってはどうでもいい事で、ただピエリさんを支えられることだけを求めた詭弁でしかない。
 私にはピエリさんのような純粋な思いなどありはしない。ただ、自分に意味があることを願うように、ピエリさんの支えであろうとしているだけなのだ。
「……ピエリさん、あなたはずっとそのままでいてくださいね」
 細々とした懇願、だけどそれは近いうちに剥がれ落ちると思う。いずれ誰かの言葉が、ピエリさんの中にある価値観を剥離させる。崩れたそこに私は踏み込まないけれど、ピエリさんを救いたいと思う人は簡単に踏み込むでしょう。そうして新しい価値観が生まれれば、私が支える通りは消えてなる。文字通り、必要とされなくなる。
「……もう、一人ぼっちはいやです……」
 眠っているピエリさんを抱きしめて、私はいずれ終わりが来るこの瞬間に祈りを捧げる。私がそれを望むように、ピエリさんが私を必要としてくれますように、と……

 -おわり-
992 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 21:11:33.88 ID:0n10eZ/T0
 ピエリリス 短編4
『美味しいご飯』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 目の前に置かれた未調理生肉を見て、またか……と私は思ってしまった。
「えっと、リリスさん? どうかしましたか」
『い、いえ、何でもありませんよ。その、いただきます……』
 私は置かれた生肉を頬張るために口を大きく開ける。
 まずは一口目、生肉特有のちょっとした生臭さが広がる。
 続いて二口目、噛みしめる度にちょっとだけ血の臭いが広がる。
 最後の三口目、正直このままでは辛いので一気に飲み込んだ。
 食べ終わった後、空中でくるりと一回りしてカムイ様に感謝の気持ちを示すのですが、内心口の中に広がる生肉の感触がとてもよくなくて、飛翔時間はちょっとで済ませる。結論から言えば、私は食材だけのご飯に飽きていた。
 そして、嫌がらせなのかどうかわからないけれど私の神殿真横には、皆さんが食卓を囲む食堂がある。声などは聞こえないのだけれど、そこから漂ってくる おいしい香りは毎日の食材食生活の大きな足枷になっていた。平たく言えば、私も調理されたご飯が食べたいのである。でも、そんなことを言うのは叶わないから、今日の夕食はお腹いっぱいという名のご飯拒否をするのでした。
 夜、お腹がくぅくぅと鳴った。昼に食べた生肉の感じが拭い去れなくて、カムイ様にお腹がいっぱいだと伝えた結果だ。音を隠すように星界の玉をギュッと握りしめる。けれど、音は止められない。空腹もそうですが、隙間風に乗ってやってくる料理の香りはまるで禍事罪穢の様で、私の精神はどんどん擦り減っていきます。
『……お腹……空いたよぉ……。何か食べたい……』
 誰に言っているわけでもなく、私は心の内を言葉に乗せた。
 しばらくして浮いているのも辛くなって、私はぱたりと床に伏せた。何か音が聞こえたけれど、気にする気にもなれなかった。そして空腹の所為か、ご飯の香りがとても強くなった気がする。さらにライスに焼いたお肉のセットが見え始めた。どうやら幻覚を見るまでになってしまったようで、私はフワフワとその幻に向けて進み、口を大きく開く。
 別に幻覚なら食べてしまっても構わないだろうと、口を閉じようとしたところだった。
「駄目なの、熱々だからそのままだと火傷しちゃうの。待ってて、ふーふーしてあげるの」
 そう言われて意識が戻ると、コック帽子を被ったピエリさんがいた。ピエリさんはマークス様の臣下の方で、この頃仲間になった人です。その人がどうしてここに?
 そう思っていると、ピエリさんはお肉を一口大に切って、ふーっと冷まして私に差し出して来る。
「はい、あーんなのよ」
993 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 21:16:31.94 ID:0n10eZ/T0
 ニコニコの笑顔で差し出されるおいしそうなお肉。それを私はパクリと口にした。昼間に食べた未調理生肉とは比べ物にならないおいしさが口の中に広がる。一噛みする度に溢れ出る肉汁、お肉本体も柔らかくて食べやすくお肉そのものの味を肉汁と一緒に逃がさない。アクセントにと適量に振られたコショウが食欲を倍増させ、口の中が肉の暴力で支配される瀬戸際、そこに間髪入れずスプーン一杯分のライスが差し出された。ピエリさんだ!
「ライスも一緒に食べるとおいしいの。はい、もう一回あーんなの!」
 私にそれを拒む理由は無かった。あーんとライスを頬張る。星界に光が溢れるような感動が広がった。肉という暴力はライスという抱擁によって幸福へと進化する。濃厚な肉汁の風味がライスと溶け合っていくその流れに、私は久しぶりに料理というもの、いいえご飯という物を取ったのだと理解した。
「まだあるから、たくさん食べるといいの」
 その言葉に素直に従い、私は残ったライスと肉をすべて平らげたのだった。
『す、すみません。その、食べさせてもらってしまって……』
「気にしないでいいの。お料理作り終わってお片付けに入ろうとしたら、お腹が空いたって声が聞こえて、ご飯作って持ってきてあげただけなのよ」
『え、も、もしかして私の声、聞こえていたんですか……』
 迂闊でした。私の声、どうやら神殿の壁を突き抜けて聞こえていたようです。
『そうだったんですね。あ、ちゃんとお話しするのは初めてですよね。私はリリス、この星界の管理と運用を任されています』
「リリスっていうのね。ピエリはね、ピエリっていうの。今、お料理作りを任されてるのよ」
 ピエリさんはその豊満な胸を張って言う。私は色々とうらやましい気持ちになった。
『この頃いい匂いが良くすると思っていましたけど、ピエリさんが作っていたんですね。はぁ、毎日こんなおいしいご飯が食べられる皆さんが羨ましいです』
「ん、リリス。ピエリのお料理食べたいの?」
『そ、それは、出来ればまた食べたいです。こんなにおいしくてちゃんと調理されたご飯は久しぶりで、感動しちゃいました』
 本当に久しぶりなので、私の口は偉く饒舌だった。
 そしてピエリさんは、それに気をよくしてしまう人だった。
「えへへ、そう言ってもらえてピエリとっても嬉しいの! わかったの、明日からピエリがお料理作ってリリスに持ってきてあげるのよ。ピエリとリリスは今日からお友達なの!」
『ピエリさん……』
 私はそう言ってくれるピエリさんにスッと寄り添う。ああ、この暖かさはずっと忘れていたものです。やっぱり、誰かが私のために作ってくれたご飯を食べられることは、とても幸せなことだと。
 そして、私は視線を神殿の入り口に何気なく向ける。するとそこには…カムイ様がいた。
 その手には、未調理の生魚が握られている……。
「リリスさん……。私の持ってくるご飯より、ピエリさんのご飯が……いいんですか?」
 これが後に多くの負傷者を出す料理対決事件に発展するのですが、それはまだ別の話…

 -おわり-
994 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 21:29:38.68 ID:0n10eZ/T0
 ピエリリス 短編5
『結んだ思いは、最後まで』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「リリスも、ピエリと同じリボンを付けるの。そうすれば、ピエリと御揃いになれるのよ」
 神殿にやって来たピエリさんは、私に縞々模様のリボンを手渡してきた。どうしてかということを考えながらも、とりあえずそのリボンを受け取って、私はピエリさんに目を向ける。
 口に咥えて受け取ったリボンはやはり大きい。けど、それ以上に印象的だったのは受け取ってもらえてうれしそうにするピエリさんの姿である。
『そんなにうれしいんですか?』
「うん、うれしいの。リリス、すぐに受け取ってくれなかったから気に入らないかと思って、ちょっと不安になっちゃったの」
『柄とかそういうのは嫌いじゃありませんよ。その、どうして私にこれを送ってくれたのか、全然見当がつかなくて……』
「ん、簡単なの。リリスは友達で命の恩人だからなの!」
 恩人、そう言ってくれるピエリさんを見ていると心が痛んだ。
 私がピエリさんと出会ったのは、おそらく大きな偶然だと思います。エリーゼさんが風土病に罹り、治療するためにマカラスへ寄ることになった。そこでリョウマ王子が率いる白夜軍の一団から襲撃を受け、その時援軍としてラズワルドさんとピエリさんがやって来た。
 そして、その戦闘でピエリさんは負傷した。カムイ様の進軍をサポートするために、敵の攻撃を受け止めたそうで、星界の中に運ばれてきた彼女はぐったりしていた。
 私は神殿に彼女を運んでもらい、竜脈の効率を極限まで高めて彼女を救った。そのことを口にしたことは無い、私はカムイ様に頼まれて命を救ったに過ぎない。言い方を変えれば、カムイ様が救えと言わなければ、そのまま放置していたと思う。私にとって大切なのはカムイ様の生命だけ、それ以上に大切な物など無かったからだ。
 だからこそ、そんな私に純粋な感謝の気持ちを向けてくれた彼女に困惑しているのです。
『命の恩人だなんて、そんな大げさですよ。私は星界を維持していますが、傷や疲れが癒されるのは星界の力であって、私の力ではありませんから』
「それでもいいの。ピエリね、目が覚めた時リリスが近くにいてくれてとっても助かったから、だからね、リリスはピエリの命の恩人なのよ」
『……そんなことで命の恩人だなんて、ピエリさんは単純すぎますよ』
「単純でもいいの。リリスは小さなことで考えすぎなの。ピエリはリリスとお友達になったから、これはピエリからの友達へのプレゼントみたいなのよ。命の恩人で友達だから、ピエリのお気に入りをあげちゃうの!」
 ピエリさんの好意は思ったより純粋で、それをのらりくらりと躱すことは私に出来そうにないことだった。それがどうなるのかを知っても尚、私は知りあってしまった後の事をどうにかすることが出来ないのだと、この時になって知った。
995 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 21:32:48.28 ID:0n10eZ/T0
 ピエリさんが私を抱きかかえる形で神殿の台座に腰かける。カチーフを解いた私の頭部を数回優しく撫でてから、今さっき手渡したリボンを綺麗に結んでいく。そのリボンは強すぎず、でも簡単に取れない様にと丁寧に飾り付けられた。
「ふふーん、これでリリスもピエリと御揃いさんなの〜」
 鼻歌交じりにリボンを結んでいくピエリさん、とても楽しそうな声が私の中に入り込む度にうれしいと思う私と、きっと後悔することになると囁く私がいる。
 それはピエリさんと私自身、どちらにも投げかけているように思えてくる。ピエリさんには聞こえない、口にすればいいのに口に出来ないのは、きっとこの関係を私がすこぶる気に入っているからだ。こうやって、膝の上に乗せてもらいながら世話を焼いてくれるピエリさんとの関係、それを自分から壊していくことなんてできない。
「えへへ、出来たの! うんうん、もっともっと可愛くなったのよ。リリスも見るの!」
 リボンを付けた自分の姿を確認させるように、ピエリさんは手鏡を向けてくる。鏡の中に映った私、最初は無表情だったけれど、気が付けばすごくうれしそうにしているのが分かる。私の心は正直に、今この時を幸福に感じていた。
「えへへ、リリスが気に入ってくれてうれしいの。ピエリ、頑張った甲斐があったのよ」
『はい、なんだか新鮮でいいです。それに、うん、ピエリさんの云う通り、お揃いなのが嬉しいのかもしれません。あなたは、私の、お友達ですから』
 その言葉がこの状況を招いた原因だと思う。私はどこかで憧れていたのだ、他のみんなにもあるように、私自身だけの誰かとの繋がりが持ちたかった。
「うん、お友達なの! あ、そうなの、この戦いが終わったらピエリとお買い物に行くの。ピエリのお気に入りのお店、いっぱい教えてあげるのよ」
 私の求めていた絆は、何気ない日々の中で続く友情という絆だった。
 本当ならそれは培われないはずだった。いいえ、培われていけないものだと知っていた。なぜなら、それがきっとその絆を結んだ人の重みとなることが分かっていたから…。
「風の部族村での戦いは終わったから、このままテンジン砦を目指すってマークス様が言ってたの。確か黄泉の階段?っていう場所があって、そこを抜けて進むって聞いたの」
 そこがこの道の終着点、私の命が尽きる場所、私の使命が果たされる場所だと知っている。同時に誰かの重みになる場所だと言う事も。だから、この絆は培わない方がいい。
だけど、ピエリさんと過ごす時間はかけがえのない物で、私はそれを途中で手放すことはできなかった。だから、今日も同じように言葉を返す。
『気を付けてくださいね、何かあるかもしれませんから』
「リリスは心配性なの。ピエリは大丈夫だから、ここで待ってるのよ」
『ふふっ、わかりました。ちゃんと戻ってきてくださいね?』
「うん、リリスはいい子なの! ピエリ、頑張ってくるのよ」
 そうして結んでくれたリボン越しに、ピエリさんは頭を撫でてくれた。
 それは今――

 こうして、意識が途切れようとするその間際でも思い出すことのできる、とても大切な思い出だった。

 ーおわり-
996 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2019/10/10(木) 21:41:48.97 ID:0n10eZ/T0
 以上でこのスレでの更新は終わりになります。
 少ししましたら新スレを立てさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 レオニーは同性関係で支援B終わりが多すぎるのはなぜなのか……
 リリスはもっと、多くのキャラクターと触れあってもいいと思う。
 
 残りの数レスですが、マクベス戦が終わった時に書く短編決めに使おうと思います。
 よろしければご参加していただけると幸いです。

・風化雪月の百合的なもの(今回と同じで複数)
・リリスの星界的な話
・マキュベス
・リリス×誰か(今回と同じで複数)

 最後の書き込みがあった物をやろうと思います。
 このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。
997 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/10(木) 22:44:55.48 ID:Ime3lwko0
・風化雪月の百合的なもの
998 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/12(土) 17:34:46.67 ID:k42DpUOMO
風化雪月の百合的なもの
999 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 23:52:23.62 ID:0jchkVp4O
マキュベス
1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 15:56:37.31 ID:CN0cHGJDO
風花雪月
1001 :1001 :Over 1000 Thread
       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       | アパム!アパム!次スレ建てて来い!アパーーム!
       \_____  ________________
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                      / ̄ ̄ \
      /\     _. /  ̄ ̄\  |_____.|     / ̄\
     /| ̄ ̄|\/_ ヽ |____ |∩(・∀・;||┘  | ̄ ̄| ̄ ̄|
   / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄|  (´д`; ||┘ _ユ_II___ | ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
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1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
女「私の王子様」 @ 2019/10/21(月) 02:44:33.58 ID:oVOzrQGUo
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みほ「昨日沙織さんと一緒にいたよね....」 @ 2019/10/21(月) 02:14:52.71 ID:8PDOZRM+0
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ココア「……殺し合え?」 @ 2019/10/21(月) 00:42:10.15 ID:Y8TE6cYqo
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桃「シャミ子を走らせてたらシャミ子が倒れた」 @ 2019/10/20(日) 23:40:42.55 ID:06K62MaI0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1571582442/

【ローゼン】翠星石「菊の方がいいですぅ!!」 @ 2019/10/20(日) 23:29:00.79 ID:XkGnzIhg0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1571581739/

【ガヴドロ】ヴィーネ「ナデナデシテー」 ガヴ「!?」 @ 2019/10/20(日) 22:12:18.53 ID:cdYByN3VO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1571577138/

【ガヴドロ】ヴィーネ「ナデナデシテー」 ガヴ「!?」 @ 2019/10/20(日) 22:07:14.60 ID:EFyHmvRY0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1571576834/

【安価】上条「とある禁書目録で」猟虎「仮面ライダーですわ」【禁書】 @ 2019/10/20(日) 21:52:47.39 ID:wUMZKej90
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