千歌「GANTZ?」穂乃果「もうひとつの物語」

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44 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:39:50.77 ID:Oxw6Sm3G0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜同刻 新宿 カフェテラス〜



ことり「……むむむぅ」カキカキ

花陽「……ゴクリ」

ことり「出来た……出来たよ。完成だよ!!」

花陽「おお!! やったねことりちゃん!」

ことり「ありがとう! おかげで凄くいい衣装案が提出できるよ」

花陽「役に立てて良かったです♪」

ことり「ささ、好きなメニューを何でも注文してね。お礼にご馳走するよ」

花陽「いいんですか!? な、なら前から気になっていた新作のモンブランケーキを……」



「あぁ、居ました居ました。写真の女です」


ことり「ん?」

花陽「ことりちゃん、知り合い?」

ことり「違うけど……」


幹部B「なんだよ……この二人か。こんなに連れてくる必要無かったな」

吸血鬼「まあそう言わずに。サクッと終わらせましょうよ」

幹部B「だな」
45 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:41:04.92 ID:Oxw6Sm3G0
部下の吸血鬼の一人が懐から取り出した拳銃をことりの額に当てる。
その様子を目撃した他の客は悲鳴を上げながらその場から逃げ出す。

ことりは顔色一つ変えず、銃口を突き付けてきた吸血鬼の目を見つめる。



ことり「………」

吸血鬼「ああ? 何見てるんだよ」

吸血鬼「怖くて声も出ないんですよ、こいつ」

花陽「こ、ことりちゃん……!」



ことり「……はぁ。心外だなぁ」

幹部B「心外?」

ことり「だって、私達を見てがっかりしたんでしょ?」

吸血鬼「当然だ。コウサカとソノダ以外は雑魚だと聞かされているからな」

ことり「へぇ……」ニコッ

幹部B「っ!! おい、早く撃―――」



―――バンッ!!!



銃口を向けていた吸血鬼の腹部が爆発四散した。
周囲のテーブルやその上にあったスケッチブック、地面に吸血鬼の“中身”と血が飛散する。
返り血で真っ赤に染まった ことり の手にはXガンが握られていた。



ことり「うぅ、この距離で銃は失敗だったなぁ。全部浴びちゃった」ベットリ

幹部B「やりやがったな……貴様」ギロッ

ことり「……あーーーーっ!!! 提出用の衣装案が!!? 折角完成したのにぃ!!」ガーンッ

花陽「あーあ……新作のモンブランケーキはお預けですか。残念です……」シュン

吸血鬼「この状況で嘘だろ……」

吸血鬼「こ、こいつら狂ってやがる!?」

幹部B「クハハハハハッ!! 見た目に寄らず頭のネジがぶっ飛んでやがる。ちょっと安心したぞ」ニヤッ



ことり「花陽ちゃん、やっちゃおうか?」カチャッ

花陽「うん……そうだね」ブウゥゥン


46 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:41:40.14 ID:Oxw6Sm3G0



Xガンを構えることり
ガンツソードを展開する花陽

ステルスモードを起動し、二人は吸血鬼の集団の中へ突撃するのだった―――



47 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:42:34.86 ID:Oxw6Sm3G0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



〜同刻 病室〜



伊波「………」ペラッ

希「〜〜〜〜♪」シャカシャカ

海未「………」

凛「………」カキカキ

絵里「……ねえ」


伊波「………」ペラッ

希「〜〜♪〜〜〜♪」シャカシャカ

海未「………zzz」

凛「………」カキカキ

絵里「……ねえってば!!」

伊波「うぉっ!?」ビクッ!!!

希「ん? えりちどうかした?」

海未「……何ですか? 私は今、瞑想中なのですが」

絵里「いや、折角こんなに集まってるのに誰一人喋らないって寂しくない!?」

凛「うるさいなぁ……勉強中なんだから静かにして欲しいにゃ!」

海未「私達は絵里の護衛に来ているのです。お喋りに来ているのではありません」

絵里「で、でも……私両手が使えないから何も出来ないのよ! お喋りくらい付き合ってくれてもいいじゃない」グスッ

希「日中に伊波さんとお話しているんやないの?」

伊波「まあ……世間話くらいは」

海未「ならいいじゃないですか。別に私達と話す事なんてないでしょう?」

絵里「なんか冷たくない!?」

海未「ふふ、冗談ですよ。ただ、気を張り詰めていないと敵襲に一早く気付けないと思いましたので」

凛「今は海未ちゃんが見張りの時間だからね」

絵里「だったら凛や希は私の相手をしてくれてもいいじゃない」

凛「凛はテストが近いから無理にゃ」

希「ウチは凛ちゃんの勉強をみてるから」

絵里「思いっきり音楽聴いていたじゃない……」
48 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:47:40.45 ID:Oxw6Sm3G0



海未「伊波さんは帰らなくていいのですか? 朝からずっとここに居るのですから、お疲れでは?」

伊波「大丈夫だよ。ホテルに戻っても暇なだけだしさ」ペラッ

凛「伊波さんが読んでるそれは何て雑誌なの?」

伊波「この雑誌ですか? そうだなぁ……見た方が早いかな。どうぞ」

凛「ありがとう! ふむふむ、これは声優の雑誌かにゃ……?」

伊波「そうだよ。この雑誌には旬の声優さん達が特集されているの」

凛「へー、最近の声優さんは可愛い人が多いんだね」ペラッ

希「どれどれ、お、本当だ。べっぴんさんばかりやん」

凛「今はあく……“あきゅおす”ってグループが人気なんだね」

絵里「アクアね」

海未「凛……相変わらず英語は苦手なのですね」ハァ

絵里「昼間はずっとその話をしているの。おかげで私もこの界隈に詳しくなったわ」

伊波「あはは……つい夢中になって話しちゃうんだよね」


海未「ふむ、詳細なプロフィールまで記載されているのですか。皆さん多彩な趣味や特技をお持ちのようですね」

凛「この写真見て! この人が作ったハンバーグ凄いよ! 凛がいつもスーパーで買ってるハンバーグとそっくりにゃ!」

希「売り物と同じクオリティの料理が作れるんか……何と言う女子力や」

伊波「……くっww」プルプル

凛「にゃ?」キョトン

希「何か変なこと言いましたか??」

伊波「い、いや……凛ちゃんって意外と鋭いんだな、って思ってさ……ww」

凛「ん?? まあいいや。はい、返すにゃ」

伊波「ありがとう」
49 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:48:28.37 ID:Oxw6Sm3G0


伊波「ふふっ♪」ペラッ

海未「本当に好きなのですね。アイドル雑誌を読んでいる時の花陽にそっくりです」

凛「確かに! かよちんにそっくりにゃ♪」







伊波「………」パタンッ



伊波はおもむろに雑誌を閉じた。
先ほどまでの穏やかな表情から一変、鋭い目つきで窓の外を眺める。

海未も伊波が雑誌を閉じるのとほぼ同じタイミングで立ち上がった。



海未「―――凛、希」

凛「分かってるにゃ」

希「いよいよ出番やね」

伊波「流石は穂乃果ちゃんと海未ちゃんのチームだね。感覚が鋭い」

海未「伊波さんはここで待っていて下さい」

伊波「いいの? 多い方が楽じゃない?」

希「これくらいウチらだけで十分です。伊波さんはえりちの近くにいて下さい」

伊波「そっか……分かった」ニコッ


絵里「……三人とも気を付けて」

海未「分かってますよ。さあ、行きますよ……凛、希」

凛「合点にゃ!!!」パシンッ

希「すぐ戻ってくるから待っててな〜」フリフリ



―――ガラガラッ



絵里「……」

伊波「心配?」

絵里「多少はね……」

絵里「海未が一緒なのが安心でもあり不安でもあるのよね……あの子、意外と負ける事多いから」

伊波「あー……ちょっと分かるかも」アハハ…
50 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:49:02.96 ID:Oxw6Sm3G0





凛「どんな作戦で行くの?」

希「特に作戦は必要無いやない? 各自好きなように暴れようや」

海未「いや、希は凛のサポートをお願いします」

凛「え?」

希「凛ちゃんのサポート?」

海未「凛のスタイルは乱戦に向きません。技を仕掛けてる隙を突かれてしまってはお終いです」

希「なるほどね。了解や!」

凛「なんか不本意にゃ……」ムスッ




―――カツッ、カツッ、カツッ




吸血鬼’s「………」ゾロゾロ

凛「うそ!? もう病院の中に入って来てるよ!?」

希「前だけやない、後ろからも大勢来てる!!」

海未「予想以上に接近されていましたね……厄介な!」ギリッ

凛「ちょっと待って、後ろからも来たってことは……絵里ちゃんは!?」

希「威勢のいい事言ったクセに早速このザマやん!! 急いで戻らんと―――」

海未「凛、希!!!!」


凛・希「「!!!」」ビクッ!



海未「……ここで戦うわけにはいきません。奴らを引き付け、移動します」

希「り、了解や」

凛「え、絵里ちゃんは……絵里ちゃんはどうするのさ!?」

海未「不本意ですが仕方ありません……“彼女”の力を借りましょう」

凛「彼女って伊波さんの事? 本当に大丈夫なんだよね!?」

海未「目の前の敵に集中しなさい。足元をすくわれますよ」
51 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:50:06.34 ID:Oxw6Sm3G0




絵里「ちょっと何よ!? 早速突破されちゃってるじゃない!!?」

伊波「うーん……コイツらの気配は私も感じ取れなかった。これは仕方ないね」ウンウン


吸血鬼「兄貴、ターゲットの他に妙な女がいますぜ」

幹部B「ああ? 構わねぇ、まとめて始末しろ」

吸血鬼「へい」カチャ


絵里「ひぃ!!?」ビクッ

伊波「ハンドガンか……物騒なもの持ってるね」


幹部B「運の無い女だ……この場に居なければ早死にすることもな……か、った……っっ!!?」ゾワッ

伊波「?」

吸血鬼「兄貴? 急に顔色を変えてどうしたんです?」

幹部B「……なんで、なんでお前がここにいる!!? おい、すぐに銃を下せ!!!」

吸血鬼「は?」


伊波「……へぇ、私の事も知っているんだね」ニッ

幹部B「あ、ああ……知って、いる」

伊波「なら話は早いや、今すぐここから立ち去って」

幹部B「立ち去る……? 俺たちを見逃す、のか?」

吸血鬼「あ、兄貴?」

伊波「私は絵里ちゃんを守るように頼まれただけだからさ。この子に危害を加えないなら別に私は何もしない」
52 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:50:34.04 ID:Oxw6Sm3G0



伊波「――ただ、それでもやるって言うなら、話は変わってくるけどねぇ……」ギロッ

吸血鬼「ッ!!?」ゾクッ

幹部B「……戻るぞ」

吸血鬼「!? い、いいんですか!?」

幹部B「命令を聞け!!! ……行くぞ!!」

吸血鬼「は、はい……」



―――ガラガラ…



伊波「ありゃ、帰っちゃった」

絵里「た、助かった……の?」

伊波「話が分かる吸血鬼で助かったよ。下手にここを汚さずに済んで良かった良かった♪」

絵里「は、はぁ……」

伊波「でも、ちょっとガッカリだな……」ボソッ

絵里「はい? 何か言いましたか??」

伊波「何も言ってないよー」

絵里「???」キョトン
53 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:52:34.37 ID:Oxw6Sm3G0




吸血鬼「あ、兄貴!! どうして殺さなかったんですか!? 奴らは丸腰だったでしょ!!」

吸血鬼「そうですよ! 兄貴とこの人数なら―――」

幹部B「病室にあの女居た……あの女だけはダメだ」

吸血鬼「アイツが何だって言うんです!?」

幹部B「あの女の実力は身をもって知ってる。正直、奴に挑んだ俺がどうして今日まで生きているのか不思議なくらいだ……。ボスや他の幹部、その他の全戦闘員で挑んで勝てるか分からない」

吸血鬼「そんなバカな……たかがスーツを着た人間でしょう?」

幹部B「黙ってろ。とにかく、絢瀬 絵里は後回しだ。先にあの三人を片付けるぞ」

54 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:53:06.70 ID:Oxw6Sm3G0

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〜同刻 矢澤家〜



にこ「晩御飯出来たわよ。準備手伝って〜」

こころ「はーい、今行きますね!」

ここあ「もうお腹ペコペコだよぉ」グウゥゥ

矢澤母「はいはい、分かったから準備手伝いなさい」

ここあ「分かってるよ」

こころ「こうやって家族みんなでご飯を食べるのも久しぶりですね!」

矢澤母「そうね、いつも私か にこ が居ないことが多かったから」

にこ「未来のスーパーアイドルは忙しいのよ」

こころ「流石はお姉様です!」

ここあ「でも、本当にスーパーアイドルになったら今以上に揃う機会が減っちゃうんだよね……それは寂しいな」シュン

こころ「あ、そっか……」

にこ「何言ってるのよ。そんな事にはならないから安心しなさい」

ここあ「お姉ちゃん……本当?」

にこ「私が今まで嘘ついた事ある?」

こころ「ええっと、過去に何回か」

にこ「あ、あれ、そうだっけ?」アセアセ

矢澤母「あはは……」

にこ「と、とにかく! この約束だけは必ず守る。だから安心しなさい」ニコッ

ここあ「お姉ちゃん……!」

矢澤母「ま、そのことはスーパーアイドルってのになってから考えましょうねー」

にこ「ま、ママ!!」
55 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:53:44.26 ID:Oxw6Sm3G0
こころ「ふふ、じゃあ、そろそろ食べましょう!」



―――プルルルルル…



にこ「あ、真姫ちゃんから電話だ。ちょっと待っててね」



にこ「もしもし、どうしたの?」

にこ「……うん、うん。……なんですって!?」ゾッ



ここあ「どうしたんだろう……お姉ちゃん、凄く怖い顔してる」

こころ「お姉様……」

矢澤母「……」



にこ「……うん、分かった。すぐに出るわ。ありがとう」ピッ

矢澤母「出掛けるの?」

にこ「うん。ちょっと急用」

ここあ「えぇっ!!? 今から出掛けちゃうの!?」

にこ「ごめんね……出来るだけ早く帰るつもりだけど、御飯は一緒に食べられそうにないわ」

こころ「そ、そんなぁ」ガッカリ

にこ「あと、三人とも私が帰って来るまで家から絶対に出ないでね! 窓やベランダにも近づかないで。いい?」

ここあ「どうして?」

にこ「どうしてもよ」

矢澤母「分かったわ。言いつけは守るから安心して。だから、あなたはちゃーんとこの家に帰って来なさい」

矢澤母「約束出来るわね?」

にこ「ママ……うん、分かってる」



にこ「じゃあ、行ってきます」ニコッ




56 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:54:35.46 ID:Oxw6Sm3G0




斎藤「あ? こいつ、のこのこ出てきやがったぞ」

にこ「うげぇ……こんなに沢山居るじゃない。これ一人でやらなきゃいけないの……」ハァ

斎藤「何言ってるんだコイツ。俺らに勝てると思ってるの?」

にこ「あーはいはい、そういう三下みたいなセリフはいいから」

吸血鬼「はあ?」イラッ

にこ「こっちは折角の家族団らんの機会を台無しにされて虫の居所が悪いのよ。さっさとかかって来なさい」

吸血鬼「……っ!!!」カチャッ


57 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:55:46.71 ID:Oxw6Sm3G0

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〜矢澤家から北北西500m 雑居ビル屋上〜



彼のライフルのスコープには にこ の頭部が映し出されている。
先ほどまでは家の窓に付近に彼女が姿を現すのをずっと狙っていたのだが、部下からの連絡を受け予定を変更。
自宅での暗殺から部下の戦闘補助に徹することにした。

前回は対物ライフルを使用していたが、暗殺を意識していた為、今回使用しているのは対人ライフルであった。
ナイトビジョンやサーマルビジョン、サプレッサー等が装着できる彼が愛用している狙撃銃である。

ボルトを引き、初弾を装填。
後は落ち着いて狙いを定め、引き金を引くだけ。

寸前のところで背後に気配を感じ取った。



幹部A「……驚いたな。どうしてここが分かった?」



ほふく状態から立ち上がり、屋上の入口の方へ体を向ける
そこにはガンツソードを携えた真姫の姿があった。



真姫「敵に狙撃手がいるって聞いていたからね。メンバーの家を狙える狙撃ポイントすべてに動体検知機を設置しておいたのよ」

幹部A「そんな物が……気が付かなかったよ」

真姫「おかげで預金はすっからかん……もう最悪よ」

58 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:56:31.16 ID:Oxw6Sm3G0


幹部A「だが、君も狙撃手なのだろ? わざわざ姿を現すのはいかがなものだ?」

真姫「そんな事分かってるわよ。でも、肝心なこの場所を狙える所が無いんじゃ仕方ないじゃない。あなたもそれが分かっていたからここにしたんでしょ?」

幹部A「まあな」ニヤッ



真姫(気づかれないように注意していたのに……大急ぎで駆け付けて大きい方のXガンを忘れたのは致命的だったかしら)

真姫(この距離はXガンの射程範囲外。奴もそれは分かっているハズ……なら、一気に接近して斬り伏せる!!!)



真姫は力強く一歩目を踏み出す。
同時に吸血鬼はライフルの銃口を真姫に向け、発砲。

撃ち出される弾丸は真姫のガンツソードの柄の部分を正確に捉えた。
武器を弾き飛ばされたが、真姫はそのまま吸血鬼への接近を止めない。



真姫(この距離なら腰だめでも正確に当ててくるか! でも、あのライフルはボルトアクション方式。装填よりこっちの攻撃の方が早く―――)

幹部A「―――甘いぜ、嬢ちゃん!!」バンバンッ!!



吸血鬼はライフルを発砲後、すぐさま銃を破棄。
素早く腰のホルスターからハンドガンを取り出し、真姫の左右の太ももの側面を撃つ。



真姫「コイツ、ホルスターのXガンを破壊しに来た!?」

幹部A「装備の無力化は基本だろう? あとはスーツだけだ!!!」



刀を生成した吸血鬼が真姫に襲い掛かる。
ギリギリで避け続ける真姫だが、徐々に不利な状況に追い込まれていく。



真姫「くっ、やばッ!!!」

幹部A「鈍いな! やはり接近戦は不得手か!!!」

真姫「う、るさい……!!」
59 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:57:57.46 ID:Oxw6Sm3G0
幹部A「ほら、避けなきゃ死ぬぜ!」



真姫の首筋へ刀を振り抜く。
スーツの防御機能により宣言通りに死ぬことは無かったが、真姫の精神力を削るには充分の手応えを感じた。

ダメ押しにハンドガンの残弾を真姫の体に全て撃ち込む。



幹部A「ハチの巣にしてやるよ!!!」バンバンバンッ!!

真姫「ぐ、ぐあぁ!?」グラッ



体勢を大きく崩し、背中を向ける。
スーツを一瞬で無力化できる顎と耳下にある四つのレンズを壊すには絶好の機会。



幹部A「あばよ!!!!」

真姫「………ッ」



―――バンッ!!!



銃声が鳴り響く。
吸血鬼の左胸には真っ赤な小さな穴が空く。

急所を撃ち抜かれ、崩れるように倒れた。
振り返った真姫の手にはハンドガンが握られていた。



幹部A「んな……に…?」ガクンッ

真姫「――上着で射線を隠す作戦は成功だったわね」

幹部A「何故、何故お前が……銃を持って、いる!?」

真姫「ああ、これのこと? ここに来る前にあなたの部下と遭遇してね。そいつから拝借したってわけ」

幹部A「Xガン以外の武器は……想定外だった、な……」

真姫「見ないで狙ったけど、まさか急所に当たるとはね。流石は私って感じね」

幹部A「スーツさえ……スーツさえ壊せればッッ!!」

真姫「吸血鬼も頭を撃ち抜けば大丈夫よね」カチャッ

幹部A「クソッ、があぁ!!」




―――バンッ!!!




幹部A「」ドサッ

真姫「……ッあ、ふぅ……危なかった。あれ以上攻撃を受ければ壊れていたわね」

真姫「さてと、このライフル貰っていくわ」

真姫「この真姫ちゃんが援護してあげるわ、にこちゃん」カチャッ
60 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 00:59:11.82 ID:Oxw6Sm3G0

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穂むらを襲撃しに来た吸血鬼を殲滅
部下の一人からメールで読み損ねた雪穂の居場所を聞き出した穂乃果と千歌は予め部屋から持ち出していたガンツバイクを走らせていた。
このバイクなら、コントローラーのステルス機能が適応される。

向かうは押上。
運転を任された千歌はアクセル全開で道路を走る。

後方からは同様にバイクで追ってくる吸血鬼の集団。
徐々に距離を詰められる。



穂乃果「……全く、面倒だな」

千歌「穂乃果さん! これ以上はスピードが出ません、追いつかれちゃいます!!」

穂乃果「分かってる、ここで片付けるよ」カチャッ


吸血鬼「待てオラァ!!!」

吸血鬼「撃て撃て撃て撃て!!!!」ズダダダダダダ!!!

穂乃果「ッ!! 無差別に乱射してくるか!!?」

千歌「穂乃果さん早く何とかしないと!!」

穂乃果「分かってるよ!!!」ギョーン!ギョーン!


吸血鬼「はっ!!! どこ狙ってんだよ!!!!」


穂乃果「もう! 千歌ちゃん真っすぐ走ってよ、上手く狙えないからさ!!」ギョーン!

千歌「無茶言わないで下さいよ!?」

穂乃果「くッッ!!!」カチャッ
61 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:00:09.51 ID:Oxw6Sm3G0



穂乃果はXショットガンで敵のバイクの前輪を狙い撃つ。
態勢を崩したバイクは次々と転倒
他の車両を巻き込み連鎖爆破を起こす。



千歌「うおぉ!? 爆発した!?」

穂乃果「ヤバッ、撃ち漏らした!!」



撃ち漏らしたバイクが一台
千歌の運転するバイクの側面まで接近された。
マシンガンの銃口を向けられる。



千歌「うッ!!!?」ゾッ

吸血鬼「死ねや!!!」

穂乃果「あなたがね!」ザクッ!!!



ガンツソードを伸ばし、吸血鬼を串刺しにする。



穂乃果「これで全部。千歌ちゃん大丈夫?」

千歌「は、はいお陰様で」



そのままバイクを走らせる。
穂乃果達の目の前には日本一高い電波塔の姿が見えた。



穂乃果「見えてきたね、目的地が」

千歌「そうですね……初めて来る場所ですが、まさかこんな形で来る羽目になるとは思いませんでした」

穂乃果「バイクを隠したらすぐに展望台に登ろう」


62 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:01:38.51 ID:Oxw6Sm3G0

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カフェテラスの周囲は花陽と ことり によって倒された吸血鬼の屍で埋め尽くされていた。
その中には駆け付けた警察官や機動隊もある。
その場にいた吸血鬼の幹部が二人の相手をしながら邪魔ものである第三勢力を排除したのだ。

現在、この場に立っているのは幹部と花陽と ことり の三人。



幹部B「ほう、少々貴様の評価が甘かったのは確かだったようだな」

ことり「ふぅ、ふぅ……痛ッ」ドクドクッ

花陽「この敵……強い……!!」

幹部B「この刀は特注品でな、貴様らのスーツを紙みたいに切れる」

ことり「だろうね。おかげでスーツがボロボロだよ」


花陽(マズいです……絵里ちゃんの言う通りこの吸血鬼の剣の腕は海未ちゃんレベル。私達二人で勝てるかどうか……)

花陽「ことりちゃ―――」

ことり「大丈夫だよ。花陽ちゃんは下がってて」

花陽「えっ、ひ、一人でやるつもり!?」

ことり「私達の相性は悪くは無いけれど、下手に連携するより一対一で戦った方がやりやすいと思うの」

花陽「うっ、確かに一理ありますけど……」

ことり「っという事で、私が相手だよ〜」

幹部B「おいおい、正気か? 力の差は見せつけたつもりだが?」

ことり「……力の差だって? うふふ、面白いこと言うんだね」

幹部B「は?」

ことり「ふふ、うふふふふ」

花陽(こ、ことりちゃん……?)

ことり「うふふふ……試してみれば分かるよ」

幹部B「自棄になったか……まあいい」
63 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:04:16.36 ID:Oxw6Sm3G0


先に仕掛けたのは ことり だった。
吸血鬼の喉元目がけガンツソードで鋭く突く。

ことりの習得している流派は一つもない。戦い方は全て我流である。
そんな彼女では、基礎からみっちりと鍛え上げてきた剣士相手に同じ武器で勝てるわけが無かった。
初撃を軽々と躱され、脇腹を浅く斬り裂かれる。

痛みに顔を歪ませながらも二撃、三撃と斬りかかるが、全ていなされ体中を切り刻まれる。
辛うじて急所や筋は外しているが、彼女を襲う痛みは想像に難くない。




幹部B「粋がっていたクセにその程度か!」ズバッ!!

ことり「……ぅぅ!!!!」ブシュゥッ!!!

花陽「ことりちゃん!! これ以上斬られると危ない!!!」

ことり「うわああああああ!!!!!」ブンッ!!!



ことりは刀をでたらめに振り下ろす。
そんな攻撃に呆れた吸血鬼は力任せに刀をぶつけ、ことりの手からガンツソードを弾き飛ばした。



ことり「あっ」

幹部B「胴体ががら空きだぜ」ビュン!!!!

花陽「ことりちゃん!!!!!」







―――ガキンッ!!






幹部B「はあぁ!!!?」

花陽「う、うそ!?」

ことり「……ふふ」ニタッ
64 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:04:56.61 ID:Oxw6Sm3G0



腰のあたりを狙った吸血鬼の斬撃。
これを ことり は白刃取りと同じ要領で肘と膝で刀を挟み込んで防いだのだ。
一瞬でもタイミングを外せば真っ二つになる状況で予想外の防御策を取られた事実に動揺を隠せなかった。



幹部B(馬鹿な!? そんな防ぎ方があってたまるかよ!!?)



そのまま刃をへし折り、吸血鬼の胸倉を掴む。



ことり「そーーーれっ!!!!」ブンッ!!

花陽「な、投げ飛ばした!?」

幹部B「うおおお!!?」



空高く投げ飛ばされる吸血鬼。
ことりはホルスターからXガンを取り出し、落下してくる彼に銃口を向けた。



ことり「バイバイ、私の勝ちだね♪」ギョーン!ギョーン!ギョーン!

幹部B「う、くそがアアアアアアアアアア!!!!!!!!」



―――バババンッッ!!!



爆発四散する。
吸血鬼の幹部の一人の撃退に成功したのだ。

戦いを終え、安堵した ことり はその場に座り込んだ。



ことり「ふぅー、勝った勝ったー」
65 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:05:59.52 ID:Oxw6Sm3G0
花陽「ひ、冷や冷やさせないでよぉ。もうダメかと……」アセアセ

ことり「えぇー、花陽ちゃんは私が勝つって信じてくれなかったの?」

花陽「……ちょっぴり」

ことり「ひどい! ことりは大変怒っています!!」プンプン

花陽「うぅ、ごめんなさい」シュン

ことり「まあ、“能ある鷹は爪を隠す”って事だよ。それに……」

花陽「?」

ことり「大切な幼馴染みと一緒に戦うって決めたから。もしもの時は二人を守る。それだけの力はつけないとね」ニコッ

花陽「!! ……うん、そうだね!」



ことり「それと大変申し訳ないのですが……花陽ちゃん、私を病院まで連れて行ってくれませんか?」

花陽「あ、うん、そうだよね。応急手当したらすぐに連れて行くね」アセアセ

ことり「この切り傷……ちゃんと消えるかなぁ」


吸血鬼「おい、居たぞ!!!」

吸血鬼「既にボロボロだ、仕留めるぞ!!」


ことり「全く……面倒だなぁ」

ことり「よっこいしょ……痛ッッたああい!!? 体中痛いよぉ……」

花陽「ことりちゃん、ちょっと待っていてね。すぐに終わらせて来るからさ」

ことり「うん……お願いしていい?」

花陽「当然です。ドーンと任せてください!!」


66 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:06:33.71 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



〜スカイツリー 第二展望台〜



ボス「――やっとお出ましか。随分と遅かったな」

千歌(この人が吸血鬼集団のボス……他の吸血鬼もそうだけど、見た目は完全に人間だよね)

穂乃果「……雪穂はどこだ」

ボス「まあ、慌てるな」

穂乃果「雪穂はどこだって聞いてるんだ答えろよ!!!!!!!」

千歌「ッ!!?」ビクッ!

ボス「……この裏で寝てるさ。連れて行くときに少々負傷したが、簡単に手当はした。だが、早く治療しないと危ないかもな」

穂乃果「〜〜ッ!! 〜〜〜ッッ!!」ギリギリッ

千歌「ほ、穂乃果さん、落ち着いて下さい」

ボス「ん? おい、そこのお前」

千歌「え、私?」

ボス「天狗、天狗だよな? 何でお前がそこにいる?」

千歌「は? 天狗??」

穂乃果「知り合いなの?」

千歌「まさか」

ボス「他人の空似か……別にいい」

67 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:15:07.05 ID:Oxw6Sm3G0



千歌「あなたに聞きたい事がある」

ボス「何だ?」

千歌「ここに来るまでに多くの吸血鬼に襲われた。奴らは私達を殺す為なら周囲の人々を巻き込むことに躊躇しなかった……」

千歌「―――そして、無関係の人が何人も、何人も死んだんだ!!!」

ボス「……」

千歌「あなた達は……あんた達はこれまで何人の命を奪って来たんだ!!?」




ボス「……32人だ」

千歌「は?」

ボス「いや、昨日で33人だったな」

ボス「……ミヤシタ アイ、ミヤシタ ココ、クロバネ サクヤ、イトウ マコト、オサカ シズク、俺が直接殺した人間は顔も名前も全て覚えているさ。今も鮮明にな」

穂乃果「……」

ボス「吸血鬼は全員元人間だ。俺はある日突然、吸血鬼になったんだ」

千歌「元……人間」

ボス「俺だって人を殺したくは無い……だが、生きる為には仕方なかったんだ! 生きる為には人の血肉がどうしても必要だった。喰わなきゃ死ぬならやるしかないだろ?」

ボス「俺はこの手で殺した人は全て覚えている」



ボス「これが人の命を奪う側の、俺の覚悟だ―――!!!」

千歌「……ッ!」


ボス「では逆に聞くぞ、貴様らはここに来るまでに殺した俺の仲間の人数を憶えているか? 名前は分かるか!? 答えてみろよ!!!」

千歌「そ、それは……」
68 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:16:29.32 ID:Oxw6Sm3G0




穂乃果「知った事じゃないね」

千歌「えっ」

ボス「……なんだと?」

穂乃果「知ったこっちゃないって言ったんだよ。あなたの価値観を私達に押し付けるな」

ボス「……ッ」

穂乃果「あなたが生きる為に人を殺したように、私達は私達の日常を守る為に戦っている。それを脅かすものを排除しているだけだよ」

ボス「その為なら、ただ殺しても構わないってか?」

穂乃果「襲ってくる連中をいちいち数えたり、名前を聞いたりすると思う? 話が根本的にズレているんだよ」


ボス「お前は、俺たちを悪だと言うのか?」

穂乃果「悪? まさか、思うわけないじゃん。吸血鬼が生きる為に人を殺さなければいけないのなら好きにやればいい。私がそっちの立場ならそうするし」

千歌「!?」

穂乃果「顔も名前も知らない人がどうなろうが関係ない。目の前の全ての人を救うなんて考えは“とっくの昔”に捨てたよ。どんなに力を付けた所で私が救えるのは自分自身と、身近にいる人だけで精一杯だからね」


穂乃果「……だから、私の守ろうとしている人達を傷つける輩は徹底的にぶっ潰す。相手がどんな組織でも関係ない」

穂乃果「吸血鬼だろうが秘密結社だろうが潰す。全部壊すし、全員殺す―――!!!」

千歌(ほ、本気で言ってるよこの人……)

69 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:17:18.73 ID:Oxw6Sm3G0



ボス「ふふ、あははははははははは!!! こんなイカれた奴がリーダーなのか。仲間はさぞかし大変だな。そうだろ?」

千歌「……まあ、そうなの……かな?」


ボス「コウサカ ホノカ、だったな?」

穂乃果「うん」

ボス「こんな立場で出会わなければ、いい関係になったかもな」

穂乃果「いや、それは無い。お前なんかとは仲良くなれないし、仲良くしたくもない」

ボス「辛辣だな……仕方ないか!!」カチャッ



吸血鬼の手にはいつの間にかサブマシンガン二丁が握られていた。
二人のスーツを破壊すべく、マガジンが空になるまで撃ち尽くす。

千歌と穂乃果は別々の方向に走り出し、銃撃を回避。
撃ち尽くしたタイミングでガンツソードを展開させて斬りかかる。



―――ピピピッ



穂乃果「ッ!!? 危ない!!!」

千歌「ぐわっ!!!!?」ドスドスドスッ



奇妙な機械音の後、千歌の足元が爆発し、無数の小さな鉄球が飛び散る。



穂乃果「……まあ、トラップくらいは仕掛けてるよね―――!!」

ボス「クレイモア地雷だ。仕掛けたのはあれ一つだから安心しな」
70 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:18:02.81 ID:Oxw6Sm3G0
穂乃果「よく言うよ!!!」



刀と刀がぶつかり合う。
爆風と鉄球で吹き飛ばされた千歌も遅れて参加した。



千歌「こ、この!!」ガキンッキンッ!!

ボス「……ッッッ!!」



激しく打ち合う両者。
千歌は足払いやパリィ等で穂乃果のサポートに徹するも、ことごとく防がれる。

お互い、決定打に欠ける場面が続く。



穂乃果(そんな……こっちは二人がかりなのに攻めきれない!?)

ボス「オラァ!!!」ズドンッ

千歌「ごほっ!!?」



銃声と同時に後方へ吹き飛ばされる。



穂乃果「千歌ちゃん!!」

ボス「遅い」カチャッ

穂乃果(うッ、ショットガン!!?)ギョッ



顔面に向けられたショットガン。
これを上体を後ろに反らして回避する。



ボス「オラァ!!!!」

穂乃果「があッ!!?」



無謀になった胴体に強烈な蹴りが炸裂し吹き飛ばされる。
発射された弾丸で後方にあったガラスがヒビだらけになった為、展望台のガラスを突き破り落下していく。
71 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:18:59.33 ID:Oxw6Sm3G0



穂乃果「う、うわあああああああ!?」

ボス「空中なら避けらないよな?」カチャッ



落下する穂乃果を追随する吸血鬼。
その手にはサブマシンガンが握られている。



穂乃果「―――うりやぁあああ!!!!!」ビュン!!!!

ボス「!!?」ガキンッ



穂乃果は持っていたガンツソードを投げ飛ばし、吸血鬼の銃を弾き飛ばす。



穂乃果「ぐはっ!?」ドサッ

ボス「チッ、空中でスーツを壊して落下死させるつもりだったんだがな」ストッ



第一展望台の上部に落下した二人。
背中から落下した穂乃果だが、スーツの機能により無傷で済んだ。
だが、先の攻防で武器を失ったことにより丸腰になってしまった。
このチャンスを吸血鬼が逃さない。
畳みかけるように攻め込む。



穂乃果「く、危なッ!?」

ボス「よく躱すな!」ビュン!!!!

穂乃果「うらぁああ!!!」ドゴッ

ボス「軽い!!! パンチはこうやってやるんだよ!!!」バキッ!!

穂乃果「ッッッ!!!!?」グラッ



カウンターパンチをお見舞いするも、大したダメージにならない。
鋼のように鍛え抜かれた身体を持つ吸血鬼には並大抵の攻撃ではビクともしない。
72 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:19:54.58 ID:Oxw6Sm3G0



千歌「おおおおおおおおおおお!!!!!」ビュン!!!!

ボス「チッ、思ったより早く来たな」



展望台から飛び降りた来た千歌。
千歌が戦っている内にガンツソードを拾いに走る。



千歌「せい、せいやあああ!!!!」キンッ!!ガキンッ!!


ボス(動きは悪くない。剣の腕もいい。一流の師匠に教わっているのだろう)

ボス「―――だが、まだまだ発展途上だな!!!」ズドンッ!!

千歌「ぐっ!?」

千歌(この敵、凄く戦い慣れてる! 対人戦にここまで特化してると……今の私じゃ勝て、ない……!!)ギリッ



―――キュウゥゥン……



千歌「んな!? スーツが!?」ドロッ…

ボス「ふ、終わるときは呆気ないものだな」ニタッ

千歌「ッう……!!!?」バッ



―――ゴキャッ!!!!



スーツが壊れた千歌の頭を蹴り飛ばそうとする。
千歌は咄嗟に左腕を上げ、何とか直撃を防ぐ。

スーツと互角に戦えるだけのパワーを兼ね備えた吸血鬼の蹴りだ。
勢いよく吹き飛ばされ、一回、二回とバウンドした後、足場から外に飛び出す。



千歌「―――あッ」ゾッ



第一展望台の高さは約350メートル。
その高さから放り出されたのだ。
助かる可能性は万に一つもない、数秒後には確実な死が待っている。



千歌「う、うあああああああああああああああ!!!!!!?」

穂乃果「千歌ちゃん……千歌あああああ!!!!!」
73 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:20:44.38 ID:Oxw6Sm3G0





千歌「うああああ、あああ、あああああぁぁぁ……はぁ、はぁ…!!」

穂乃果「声が……聞こえる……?」

ボス「ほう、ギリギリで何かを掴んだか」

穂乃果「千歌ちゃん聞こえる!? 大丈夫なの!?」

千歌「な、何とか! 今は片手で出っ張りに掴まってる状態です!!」

千歌「ただ……もう片方の腕が動きません!! 掴まってる手の小指も力が入らない……自力で登るのは、む、無理……です!!」

穂乃果(その様子じゃ、ぶら下がっていられる時間も余りなさそう……マズイ、本当にマズイ!!)

ボス「こりゃ、より一層急いで決着をつけなきゃいけなくなったな」

穂乃果「言われなくても分かってる……!!!」ダッ



走り出す穂乃果。
千歌が落としたガンツソードを拾い、二刀流で斬り込む。



ボス「安直な……二刀で戦った経験は少ないだろ」

穂乃果「どうかな?」



―――ガキンッ!! ガキンッ!! ガキンッ!!



ボス(むッ、これは……)

穂乃果「資料には無かったでしょ? 最近海未ちゃんに教わったんだよ!!」

ボス「みたいだな。だが、習いたての技で勝てる程甘くはない!」ドゴッ

穂乃果「く、そぉ!!!」ビュン!!!!



距離を取りつつ、一刀を投擲。
これを易々と弾き落とす。
74 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:21:55.44 ID:Oxw6Sm3G0



穂乃果「ふぅ……ふぅ…」

ボス「正直ガッカリだな。もう少し強いと思っていた」

穂乃果「それは申し訳ないね。多分、今は定期的に訓練している海未ちゃんや凛ちゃんの方が強いと思うよ」

ボス「いや、それは無いな。どんなに訓練をしたところで、一年間たった一人で戦い続けた経験値には敵わない」

穂乃果「そりゃどうも。でも……そんな事まで調べたの?」



―――プルルルルル



ボス「来たか」

穂乃果「何の連絡?」

ボス「ああ、撃退連絡だよ。俺の仲間が貴様の仲間の誰かを仕留めたって連絡がな」

穂乃果「……」

ボス「信じられないか?」

穂乃果「当たり前じゃん。私の仲間が負けるなんてあり得ない」

ボス「確かに貴様のメンバーは強敵揃いだ。こちらもそれなりの戦力を整えていったさ」

ボス「俺の直属の部下が倒せればベストだが……質でダメなら量、こっちの戦闘員を総動員したんだ。百戦錬磨の貴様らも、一人30人以上と戦えば体力、スーツ共に持たないだろう?」

穂乃果「……まさか!?」ゾワッ

ボス「この電話が証拠だ。聞けばわかる」ピッ


ボス「もしもし、俺だ。誰を殺した?」
75 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:22:43.96 ID:Oxw6Sm3G0










『―――にっこにっこにーー♪ こちら、宇宙ナンバーワンアイドルでぇ〜〜〜す☆彡』










76 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:23:44.98 ID:Oxw6Sm3G0
ボス「……はぁ?」イラッ

穂乃果「……プッ」




にこ『あれ? 聞こえて無いのかしら……にっこにっこ―――』

ボス「うるせぇ、ぶっ殺すぞ」

にこ『何よ、聞こえてるじゃない。連絡先に“ボス”ってあったから電話したけど、合ってる?』

ボス「……だったら何だ」

にこ『この……よくも家族団らんの時間を奪ってくれたわね!! この日の為に毎日頑張って来たってのに……この、ええっと、バーカ、バーカ!!!』

穂乃果(語彙力……)

にこ『あと、差し向けてきた刺客よ!! 数だけ多いだけで雑魚ばかりじゃない。私の事馬鹿にしてるの!?』

ボス「……ッ!?」

真姫『はぁ、よく言うわよ……私が居なければ瞬殺だったくせに』

にこ『ちょっ、余計なこと言わなくていいの!』

穂乃果「ま、真姫ちゃん……!」

真姫『他のメンバーも無事よ。海未達はちょっと数が多かったみたいだけど、何とかなったみたい』

にこ『こっちは大丈夫だから、さっさとケリを付けちゃいなさい、穂乃果』

真姫『何なら、今から向かいましょうか?』

穂乃果「……いや、大丈夫だよ。みんなには家に帰って休んでって伝えて」

真姫『そっ、分かったわ。じゃあ、また明日ね』ピッ



77 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:24:28.28 ID:Oxw6Sm3G0


ボス「チッ、勝手に切りやがった……」

穂乃果「総動員したって言っていたね。なら、あなた以外は全滅したみたいだけど……まだやる?」

ボス「……愚問だな」カチャッ

穂乃果「だよね」



両者、刀を構え直す。

打ち合っても埒が明かないのはお互いに分かった。
雪穂の怪我の具合、片手でぶら下がっている千歌の様子が不明な以上
これ以上戦いを長引かせるわけにはいかない。

防御を捨て、最速の一太刀で斬り伏せる。
リスクは極めて高いが、これが早期に決着をつける最善策だと判断した。



穂乃果(にこちゃんのおかげで心の余裕が出来た……今の私なら出来る)

穂乃果(―――試してみよう……!)ギリッ




78 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:25:19.82 ID:Oxw6Sm3G0

――

――――

――――――



穂乃果『―――ま、負けたーーー!! 海未ちゃん強すぎだよ!?』

海未『よく言いますよ……こっちは定期的に訓練しているのに、全力で戦ってギリギリだなんて』

穂乃果『私だって密かに鍛えているのだ♪』

海未『良い心掛けです』


穂乃果『園田流の剣術は一通り覚えたけれど……なんかしっくりこないなぁ』

海未『穂乃果は型にはめるよりも自由にやった方が性に合うタイプでしょう』

穂乃果『ねえねえ、園田流奥義みたいな技とか無いの? “天翔龍閃”みたいなやつ』

海未『まぁ……無い事も無いですが』

穂乃果『えぇ!? あるの!!?』

海未『明確な“技”としての奥義はありませんが、“境地”としての奥義ならあります』

穂乃果『境地?』

海未『……いいですか? 人間の五感というのはどこかが劣れば、別のどこかがそこを補うべく鋭くなるものなのです』

穂乃果『え、じゃあ、目が見えない人は見えている人より強いって言うの? 嘘だー』

海未『この話止めますか?』

穂乃果『ごめんなさい続けてください』
79 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:25:46.35 ID:Oxw6Sm3G0
海未『ゴホン……この奥義は自らの五感全てを意図的に消失させることにより、極限まで研ぎ澄まされた感覚で見出した数秒先の未来を元に脊髄反射のみで最速の斬撃を繰り出せるのです』

穂乃果『ん? んん??』

海未『私の流派ではそれを「先読みの境地」と呼んでいます』

穂乃果『「先読みの境地」ねぇ……海未ちゃんは出来るの?』

海未『出来るわけ無いでしょ』

穂乃果『え、出来ないの!?』

海未『そもそも五感を意図的に消失させるなんて不可能です。物理的に消失させるなら話は別ですが、修行や発動の度に大怪我を負う羽目になります』

穂乃果『確かに』

海未『簡単に習得できないからこそ、これは奥義なのですよ』

穂乃果『海未ちゃんに出来ないなら私にも無理だよね……ガッカリだよ』

海未『いえ、不完全な状態なら私でも出来ますよ』

穂乃果『えぇ!?』

海未『消失まで至らなくとも、機能を低下させればいいのです。私は長年の修行でなんとかその術を身につけました』

穂乃果『長年って……すぐには身に付かないじゃん!!』

海未『さあ? もしかしたら穂乃果なら実践で使えるレベルまで直ぐに身につくかもしれませんよ?』

穂乃果『本当に!? ねえねえ、どうすればいいの!?』ワクワク

海未『そうですね……穂乃果だったら“凄く集中すれば”案外出来るんじゃないですかね。多分』

穂乃果『随分と適当だね!!!?』ガーン

海未『そうと決まれば早速修行です! 準備してください、穂乃果!』

穂乃果『う、うそぉー……』




80 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:26:37.84 ID:Oxw6Sm3G0
――――――

――――

――



穂乃果「―――すぅーーー、ふうぅぅ……」


穂乃果(思い出せ……何度も練習したじゃん。実践でだって使える)

穂乃果(私なら……使える………!!!!)



―――ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ



目を瞑り、全身の力を抜き、自然体となる。




穂乃果「すぅ、すぅ………すぅ…」



―――ドクンッ、ドクンッ……



鉄骨から漂っていた鉄の匂いが感じなくなった。



―――ドクンッ、ドク……、……



耳障りだった心音、顔に当たる風圧が消えた。
81 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:27:18.72 ID:Oxw6Sm3G0




穂乃果「………」パチッ



ゆっくりと、目を開ける。
目の前には吸血鬼。
そのほかの景色や色はハッキリと認識できない。


視界内にショットガンの引き金を引こうとする指を確認。



穂乃果「………ぅ」ダンッ!!!



いや、“確認したと脳が判断するより前”に体は既に動き出していた。


吸血鬼はギョッとした。

無理もない
発砲で一瞬だけまばたきをした刹那、敵はすぐ目の前まで接近されていたのだから。



ボス「何故、近―――!!?」

穂乃果「おおおおおおおおおおお!!!!!」



―――ズバッッッ!!!!!



ガラ空きとなった上半身は穂乃果によって一刀両断されたのだった。
82 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:28:12.08 ID:Oxw6Sm3G0


ボス「がッ……なに、が……」ドサッ

穂乃果「……かはッ!? ごほっ、ごほっ!!? こ、これ滅茶苦茶しんど……流石は奥義だな、ね」

ボス「か、あ、はは、あはははは……お、俺は…斬られた、のか……」

穂乃果「……そうだよ」

ボス「はは、凄げぇな……全く反応、出来なかった……やっぱ、強いな……お前」

ボス「はぁ……やっと、死ねるのか………やっと…解放……され、るのか」

穂乃果「……名前は?」

ボス「……あ?」

穂乃果「あなたの言う奪う側の覚悟ってやつだよ。だからあなたの名前が知りたい」

ボス「……ふ、なる……ほど、な」

ボス「……クロノ、だ。ク、ロノ アキラ……だ。覚、えて……お………け…………」

ボス「」



穂乃果「………」

穂乃果「……ああ、なるほど。これが“奪う”ってことなんだ。今まで意識してなかったけど、思った以上にキツイなあ」


穂乃果(――でも、私は自分の考えは曲げない。これからも私が正しいと思った道を突き進む。それが私の覚悟だから)
83 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:28:45.76 ID:Oxw6Sm3G0




千歌「あ、あの!! 終わったんですか!? なら大至急来てくれませんか!!? そ、そろそろ限界……ですうううう!!!!」

穂乃果「あ、ごめんごめん。……って、あれ? その位置じゃ手が届かないじゃん」

千歌「だ、だから、どこかからロープを……」

穂乃果「今から探すのも面倒だから、一緒に飛び降りようか」

千歌「―――はい?」

穂乃果「上手く空中でキャッチして、華麗に着地してみせるよ! だから、安心してその手を放してねー」

千歌「い、いや、……でも、え? この高さですよ???」

穂乃果「じゃあ行くよー。……それ!!」ピョン

千歌「うそ!? 待っ、ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!?」


84 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:29:26.81 ID:Oxw6Sm3G0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



〜翌日〜



絵里「―――ケガ人が増えたわね」

ことり「暫くお世話になりまーす」ニコニコ

絵里「暫くって言ってもたった一週間でしょ? 軽傷でいいわね……私は肩の肉をロースにされたってのに」

ことり「千歌ちゃんは大丈夫なの?」

千歌「はい。左腕の骨にヒビと小指の脱臼で済んだので入院はしないです」

絵里「スカイツリーから飛び降りたんでしょ? スーツが壊れた状態だったのによくもまあ死ななかったわね」

千歌「あ、あははは……今までで一番怖かったかも…」


ことり「雪穂ちゃんは?」

千歌「それが全くの無傷だったんですよ。薬で眠らされただけだったみたいで、部屋にあった血痕も別人のもので……どういう事なんですかね?」

ことり「うーん……別に深く考える必要はないんじゃないかな。雪穂ちゃんが無事ならそれでいいもん」

千歌「それはそうですけれど……何かモヤモヤしちゃうんだよなぁ」



―――ガラガラ



希「あ、千歌っち! ここにいたんやね」

千歌「どうかしたんですか?」

希「穂乃果ちゃんが探してたよー。ロビーで待ってるって」

千歌「分かりました」

ことり「またね、ちかちゃん♪」

千歌「また来ますね。二人ともお大事に!」
85 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:30:16.76 ID:Oxw6Sm3G0





穂乃果「来た来た、おーい千歌ちゃーん!」フリフリ

伊波「ほ、穂乃果ちゃん、ここ病院だよ!?」

穂乃果「あ、しまった……」

千歌「あれ、伊波さんも一緒だったんですね」

穂乃果「うん。これから地元に帰るんだけど、最後に千歌ちゃんと会いたかったんだって」

千歌「私に……ですか?」

穂乃果「折角だから駅まで送ってあげてよ。あ、もしかしてこの後予定とかあった?」

千歌「何も無いですよ」

穂乃果「良かった」ホッ

伊波「いきなりごめんね? 千歌ちゃんとはあんまり話せる機会が無かったからさ」

千歌「いえいえ、じゃあ行きましょうか!」


86 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:32:08.59 ID:Oxw6Sm3G0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



千歌「……」

伊波「……」

千歌「………」

伊波「………」


千歌(あ、あれ……歩き始めて結構過ぎたけど、会話が始まらない。話があるんじゃなかったの!?)アセアセ

伊波「いやー、事前に内容は考えてきたんだけれど、何て言えばいいのか……」

千歌「は、はい……?」



伊波「……曜ちゃんは元気だよ」

千歌「へ?」

伊波「以前に亡くなったメンバーも全員復活して、カタストロフィに向けて着々と準備を進めている」

千歌「な、何を言って……」

伊波「千歌ちゃんの話は穂乃果ちゃんから聞いている。だからあなたが何者なのか、どんな経緯でここにいるのかも“全部”知ってる」

千歌「……あなたは何者なんですか?」

伊波「あ、言ってなかったっけ? 私はホテルオハラの従業員なんだよ。正確には小原家で執事をやってるんだ」

千歌「ホテルオハラ……淡島にあるあのホテル?」

87 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:33:25.39 ID:Oxw6Sm3G0
伊波「ゴホン……シャイニー♪」

千歌「? しゃ、しゃいにー???」

伊波「……そうだった、この千歌ちゃんはお嬢を知らないんだったね」


千歌「みんなにはその……私の事は話したの?」

伊波「話してないよ。私が言うべきことじゃないもん」

千歌「そっか……よかった」ホッ

伊波「いつか戻ってくるつもりなの?」

千歌「えっ、それは……」

伊波「ああ、無理して答えなくていいよ。すぐに答えられる問題じゃないからね」

伊波「ただ、気が向いた時に帰っておいでよ。内浦だって千歌ちゃんの帰る場所なんだからさ」
88 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:35:09.17 ID:Oxw6Sm3G0
千歌「……はい」

伊波「うん、待ってるよ♪」ニコッ



―――〜〜〜〜〜♪ 〜〜♪ 〜〜〜♪



伊波「―――あっ」

千歌「ん? ビルのスクリーンで何か上映してる??」



―――『ホンキをぶつけ合って 手に入れよう未来を〜〜♪』



「Aqoursだ! この前のライブ映像が流れているよ!」

「もうすぐブルーレイの発売だもんね。予約した?」

「当然でしょう? なんてったって―――」



千歌(おぉ、これが例のAqoursかぁ……凄くキラキラしているし、みんな楽しそうに歌って踊ってる)



―――『未来をどうしようかな!? みんな夢のカタチを〜〜♪』



千歌(初めて見たけれど、こころちゃんが好きになる理由が分かった気がするな)

千歌「私もスクールアイドルを始めれば、この人達みたいに輝けるかな……?」ボソッ

千歌「……ふふ、なんてね」

千歌(本当だったら存在してはいけない私だよ? そんな私が輝くなんて……)


千歌「行きましょう、伊波さん」

伊波「………」ジッ

千歌「……伊波さん?」


伊波「―――みんな頑張ってるなぁ……“私も”頑張らないとね」フフ

千歌「?? 何かいいことでもあったんですか? 凄く幸せそうに笑ってますけど」

伊波「ん? 何でもないよ」ニコッ
89 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:36:02.22 ID:Oxw6Sm3G0



伊波「送ってくれてありがとう。ここまででいいよ」

千歌「あれ? 駅までもう少しなのに……」

伊波「ちょっと人と会う約束があるからさ」

千歌「分かりました。では、またどこかで会いましょう!」

伊波「うん! じゃあ……またね」
90 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:36:30.78 ID:Oxw6Sm3G0



千歌「―――行っちゃった。さてと、これからどうしようかな……?」



凛「あっ、千歌ちゃん! おーい!!」フリフリ

花陽「り、凛ちゃん待ってよぉ〜」アセアセ

千歌「凛さん、花陽さん!」

凛「怪我の具合は大丈夫?」

千歌「んー……見ての通りって感じかな。入院中の二人よりは大したことないよ」

凛「そっか、良かった」ホッ

花陽「これからその二人のお見舞いに行くんだけれど、千歌ちゃんもどう?」

千歌(さっき行ったんだけどな……)

千歌「―――ま、いっか。いいですよ、一緒に行きましょう」

凛「じゃあ、フルーツバスケット買って行こうよ!」

花陽「いいけど、凛ちゃんお金あるの?」

凛「……にゃ??」

千歌「あ、あははは……」
91 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:39:21.53 ID:Oxw6Sm3G0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



伊波「―――またどこかで、か」


「伊波〜!こんな所に居たのね!」


伊波「お待たせしました、お嬢」


鞠莉「もう! 業務中以外は鞠莉って呼びなさいって言ってるでしょう!!」プンプン

伊波「わざわざ迎えに来てくれたの?」

鞠莉「まあね。ついでに東京の方にも行きたかったところだったし」


鞠莉「それで、長期休暇は満喫できた?」

伊波「そうだね……まあまあ有意義な時間を過ごせたと思う」

鞠莉「なら良かった。あ、そうそう……」

伊波「?」

鞠莉「私と合流する前に誰かと一緒だったみたいだけれど、誰だったの?」

伊波「あの子? 東京に住んでる友人の妹さんだよ。ここまで送ってもらったんだ」

鞠莉「ふーん……なんかあの後ろ姿に見覚えがあったんだけれど、私も会った事ある子かしら?」

伊波「お、よく分かったね! 鞠莉ちゃんもよく知る子だよ」

鞠莉「やっぱり! でも誰か分からないのよ……教えてくれる?」

伊波「んー、内緒〜〜♪」

鞠莉「ええー、どうしてよ!?」

伊波「そのうち向こうから会いに来てくれるから、それまでのお楽しみ」ニコッ

鞠莉「むぅ……じゃあヒント! ちょっとくらいいでしょ?」

伊波「ヒントねぇ……強いて言うならば―――」

鞠莉「……ごくり」


伊波「―――“今、みんなが一番会いたい子”かな?」






End.
92 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/04/11(水) 01:48:41.97 ID:Oxw6Sm3G0
ここまで読んで頂きありがとうございます。
最後に別の過去作と最初のリンクが上手く貼れなかったのでもう一度

前作
千歌「カタストロフィ…か」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497714031/

過去作
ダイヤ「今夜も」花丸「鬼退治ずら!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1505737141/
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 17:39:39.06 ID:koIUkrao0
乙乙
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