アスラン「頼りにしているぞ、シン」

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34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/14(土) 10:31:40.92 ID:Wsw+3DSL0
乙ー
アニメよりちょっと素直になってるね

やっぱ一言でも会話が増えると感情って変わってくるよね
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/14(土) 18:21:52.62 ID:qB9L1hfAO
>>33
つうよりシンの場合元々はザフトの赤服でエリートだったのにオーブでずっと何もせずにいたくせに急にまた出戻りしてフェイスなって隊長になったからムカつくんでしょ
今のザフトは自分達が頑張った結果なのに急に出戻りし、しかも議長に信頼されてムカつくって
36 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:27:42.37 ID:LVOQTlxo0
ガルナハン基地を攻略したミネルバは、美しい港町"ディオキア"にあるザフト軍基地へと到着した。

上陸許可を得るや否や、クルーたちは一目散に基地の一角に集まった。
それというのも、この日ディオキア基地でラクス・クラインの慰問コンサートが行われるからだった。

ミーア「みーなさぁーん!ラクス・クラインでぇーすっ!」

殆どの兵士たちが熱狂する中、壇上の歌姫の正体を知るアスランだけは、冷や汗をかいていた。
天真爛漫なキャラクター性も、扇情的な衣装も、以前のラクスとは明らかに違って見える。
もし別人だとバレたら、議長はどうするつもりなのだ。

メイリン「ラクス様かわいい!でも、なんか変わられましたよねぇ」

アスラン「え!?あ、ああ…まあ…」
37 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:29:11.16 ID:LVOQTlxo0
なんとかコンサートを乗り切ったアスランは、シンとルナマリアを連れ立って、デュランダルの元へとやってきていた。

アスラン「失礼します」

デュランダル「久しぶりだね、アスラン」

先にテーブルについていたレイとタリアを含めれば、ミネルバの中心人物が一堂に会したことになる。

デュランダル「それから、君たちは…?」

ルナマリア「ルナマリア・ホークであります」

シン「シン・アスカです!」

デュランダル「ああ、君のことはよく憶えているよ、シン」

シン「え…?」
38 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:31:03.57 ID:LVOQTlxo0
思いがけない言葉に目を丸くするシンを見て、デュランダルは微笑んだ。

デュランダル「君の活躍の知らせは、私の元にも届いているよ。特にガルナハンでは、大活躍だったそうだね」

シン「い、いえ…ザラ隊長の作戦が凄かっただけで…」

アスラン「それは違うぞ、シン。あの作戦は、おまえだからこそ任せることができたんだ。誇っていい」

デュランダル「実践はアーモリーワンが初めてだったというのに、本当に大したものだよ。」

シン「あ、ありがとうございます!」

デュランダルとアスランから手放しの賛辞を受け、シンは小躍りしそうになるのを必死に抑えていた。
39 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:34:12.09 ID:LVOQTlxo0
その後、デュランダルの話は今現在の戦況の説明へと向かい、
シンはデュランダルにひとつの問いを投げかけられる。

デュランダル「シン、なぜ戦争が無くならないのか…考えてみたことはあるかな?」

シン「え…それは…」

シン「ユニウスセブンのときみたいなやつらや、ブルーコスモスみたいな自分勝手な連中がいるから…」

デュランダル「ふむ」

シン「…違いますか?」

言いながら、シンはいまいち自分の答えに自信を持てずにいた。
今までこんな根源的なことを訊かれたこともなかったし、考えてもみなかったのだ。

デュランダル「もちろん、それもある。憎いとか怖いとか、自分と違う考えを許せないとか、そういった理由で戦いが起こることも少なくない」

デュランダル「だが…それよりも、もっと救いようのない理由が、戦争にはあるのだよ」
40 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:41:18.90 ID:LVOQTlxo0
シン「救いようのない理由…で、ありますか?」

デュランダルは静かに頷き、話を続けた。

デュランダル「戦争の中では、MSを中心に多くの兵器が消費される」

デュランダル「そして、次から次へとまた新しい兵器が造られる…その一機一機の値段を考えてみてくれたまえ」

シン「…それって!?」

デュランダル「そう、戦争を産業と考え、利用する者たちがいるのだよ」

デュランダル「死の商人"ロゴス"。ブルーコスモスの母体でもある」

シンは愕然とした。金儲けのために何千、何万という人間の血を貪るなど、想像を超えた狂気だ。
憎しみや怖れから剣を手に取るという方が、ずっと理解できるというものだ。

デュランダル「今回の戦争の裏にも、間違いなく彼らがいるだろう。なんとかできればいいのだがね…」
41 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:46:23.60 ID:LVOQTlxo0
デュランダルの計らいで、ミネルバのパイロットたちはディオキアのザフト軍宿舎に一泊することとなった。
軍の宿舎といっても、内装は最高級ホテルにも引けをとらないほど豪華なものだ。
ルナマリアは年相応にはしゃいでいたが、シンはそんな気分にはなれなかった。
デュランダルの口から語られた、戦争を裏で操る存在ロゴス。それがシンの心に暗く影を落としていた。
死の商人。そんな奴らのくだらない金儲けのために、自分の妹と両親は殺されたのだ。
そう思うと、全身の血が沸騰し、怒りに支配されてしまいそうだった。

不意にドアをノックする音が鳴り、シンは我に返った。時計に目をやると、時刻は午後七時を回っていた。
レイとルナマリアあたりが夕食の誘いにでも来たのだろうかと思いドアを開けると、思いがけない人物が立っていた。
42 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:48:11.17 ID:LVOQTlxo0
アスラン「シ、シン!説明は後でする!とにかく匿ってくれ!!」

シン「はぁ!?」

返事を待たず、シンを押しのけて部屋へと侵入したアスランは、そのまま地面を這い、ベッドの下へと潜り込んでいく。

シン「ちょっと!なにやってんですか、あんたは!!」

アスラン「説明は後だと言った!誰か来たら俺の居場所は知らないと言ってくれ!!」

アスランはすっかりベッドの下に隠れてしまい、シンは状況を飲み込めずに茫然とするほかなかった。
43 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:51:35.86 ID:LVOQTlxo0
シン「…いつまでそうやってる気なんです?」

アスラン「………」

シン「ここに誰か来るとしたら、レイかルナぐらいのもんですよ。まさか、二人から逃げてるわけでもないでしょう」

アスラン「油断するなシン!それと、俺はここにいないものだと思え!」

シン「はあ」

上司の奇行は放っておいて、食事にでも行こうかとドアノブに手を伸ばしたとき、再びドアがノックされた。

アスラン「きた…!?」

シン「今開けます。って、え…?」
44 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:53:50.83 ID:LVOQTlxo0
ミーア「こんにちは、兵士さん☆」

シン「…すみません、どなたですか?」

ミーア「え?」

シン「え?」

訪ねてきた少女に心当たりがなかったシンからすれば当然の問いかけなのだが、
どうやら少女にとってそれは信じらない言葉だったらしい。

ミーア「あなた、私のこと知らないの!?嘘でしょう!?」
45 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:56:13.31 ID:LVOQTlxo0
シン「えっと…ああ!昼間のコンサートで歌ってた人!」

ミーア「そうだけど…そうだけど〜!」

不満気に頬を膨らませる少女に、シンは戸惑いつつも再び問いかける。

シン「それで、俺に…あーいや、自分になにか用でありますか?」

ミーア「あら、わたくしったら…忘れるところでしたわ」

ミーア「あなた、ミネルバの方でしょう?アスランがどこにいったか、ご存知ありませんか?」

シン「!」

ああ、なるほど。うちの隊長は、この少女から逃げ回っていたのだ。
ようやくシンはこの異様な状況のワケを理解した。
46 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 00:59:01.07 ID:LVOQTlxo0
シン「自分は知らないであります」

ミーア「そう…それは残念ですわ」

シン「隊長の追っかけかなにかでありますか?」

ミーア「あなた、本当に私のこと知らないんだ…!」

シン「用件は以上でありますか?自分はお腹が空いたので、失礼するであります」

ミーア「……」

シン「まだ、なにか…?」

ミーア「じゃあ、あなたでいいわ」

ミーアは悪戯っぽく笑い、シンの腕を掴むと、そのままずんずんと歩き始めた。

シン「え、ちょっと」

ミーア「お腹が空いてるんでしょう?席はもうとってあるから」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 01:01:12.13 ID:atd+BmLSO
『シン』?
48 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 01:01:46.44 ID:LVOQTlxo0
ドアが閉まり、二人分の足音が聞こえなくなった後で、アスランはようやくのそのそとベッドの下から這い出た。
自分の代わりに連行された部下のことは気がかりだが、ひとまず窮地は脱したと考えていいだろう。
緊張から解放され、ほっと息をつく。

アスラン「許せよ、シン」

すぐにここを出てミーアとすれ違ってはまずいので、アスランはもう少しばかりこの部屋に留まることにした。
なんの気なしに周囲を見回してみると、愛らしい桃色をした、小さめの携帯電話が目に入った。

アスラン「これは…」

シンのものだろうか。それにしては趣味が可愛らしすぎる気がする

アスラン「…形見、か」

シンがオーブで起きた戦闘の際に家族を失ったことは、以前アレックスとしてカガリと共にミネルバに乗艦した際に聞いていた。
デュランダルからロゴスの話を聞いて、シンはきっと誰よりも憤っているだろう。
49 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 01:04:35.80 ID:LVOQTlxo0
怒りや憎しみという感情が悪だとは思わない。
だが、一度経験したから分かるのだ。
抱えた憎悪を戦場で相手にぶつけるようなことになれば、その先には後悔しかないのだと。

今でもニコルのことを思い出すたび、胸が締め付けられる。
そしてキラも、同じ苦しみに苛まれているだろう。
キラの友を葬ったのは、ほかの誰でもない自分だ。

自分の部下たちには、決して同じ思いはさせまい。
導く、とまで言う自信はないが、一緒に正しい道を探していくことはできるはずだ。
自分と、ミネルバの皆と、そしてデュランダル議長と一緒ならば。
アスランはこのとき、そう信じて疑わなかった。
50 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/15(日) 01:07:10.25 ID:LVOQTlxo0
今回の更新はここまでです。
1話完結でやっていきたかったんですがディオキアの話は1話にまとめきれず…。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 02:08:44.45 ID:V6GxPQJDO
復讐に囚われ怒りでシンはSEEDに目覚めたが、怒りとかではなくキラみたいな感じだったらキラにも勝てる強さ持ってる気がするんだよね
まあシンがなぜSEED持ってるのかはガチで謎だけど
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 02:43:27.80 ID:ndMrpgkQ0
おつー
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 09:52:39.11 ID:7khO/f5o0
乙です。
さてアスランの身代わりになったシンはどうなることやら
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 12:41:48.48 ID:EgEkVg2Ao

面白いからゆっくりでもいいから頑張って
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 13:07:27.26 ID:SyVtZmrA0
コミュ力のあるアスランなんてあれだ!
しっかりしてるクワトロだ!
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 16:15:15.14 ID:Q6ehXFas0
しっかりしてる時点でクワトロじゃないだろ!いい加減にしろ!
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 18:42:03.82 ID:nJnOwiFl0
まあ二の腕隠してる時点でアスランの方がまともだよね
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 20:06:04.49 ID:MxX17HzEO
身代わりになったシンは翌日ファンになってたら笑う
59 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 00:55:29.73 ID:TTCM1fps0
ミーア「あなた、お名前は?」

シン「シン・アスカであります」

ミーア「わたくしはラクス・クライン。ラクスって呼んでね。それと、もう堅苦しいのはナシ!」

シン「…わかった、ラクス」

ミーアは満足そうに微笑み、エレベーターへと乗り込む。

ミーア「ほら、シンも!この上に美味しいレストランがあるの!」

ミーアの一方的な誘いにシンは戸惑ったが、強く拒絶する気にもなれず、ついていくことにした。
案内されたのは、施設上階にあるレストランのVIPルームだ。
60 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:00:18.88 ID:TTCM1fps0
注文を済ませたあとで、シンは今更な疑問を口にする。

シン「なんで俺、君と一緒にこんな高そうなレストランに来てるんだ?」

ミーア「アスランとご一緒するつもりだったのよ。でも、どこにもいないんですもの」

シン「まあ、忙しい人だし」

ミーア「それに、あなたが面白そうだったから」

シン「え?」

ミーア「私のことを知らないなんて言うザフトの兵士さん、初めて見たわ」

シン「それは…少し前までオーブにいて、プラントに来てからも訓練ばかりだったからさ」

ミーア「ふぅん。それでプラントの有名人には疎いんだ」
61 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:02:47.64 ID:TTCM1fps0
ミーア「でも、ライブは見てくれたんでしょう?ラクス・クラインを知らない人から見て、私の歌はどうだった?」

シン「どうって、良かったと思うよ。みんな、君の歌で元気出たみたいだし」

なんとも当たり障りのないことを言ってしまった、とシンは思ったが、目の前の少女は特に気にした様子もない。

シン「けど、ラクスは普段はプラントで歌ってるんだろ?どうして地球に?」

ミーア「さっき、あなたが言ったじゃない。みんなを元気にしてあげたいからよ!」

シン「そのためだけに、わざわざ…?」

シンは驚きを隠せなかった。
今自分たちがいるこのディオキアという街も、元々は地球連合軍に占領されそうになっていたところを、ザフト軍によって解放されたばかりなのだ。
プラントのあたりでは小競り合いこそ起きているものの、大きな戦闘があったとの報告はない。
今起きている戦争の中心地がこの地球であり、プラントにいるよりずっと危険だということは、目の前にいる少女も承知しているだろうに。
62 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:07:18.31 ID:TTCM1fps0
ミーア「戦う力のない人たちや、戦うことを選ばなかった人たちのために、そういう人たちを守るために、軍の人たちは戦ってくれているんでしょう?」

ミーア「それって、凄く大変なことだと思う。私には想像も及ばないぐらいに」

ミーア「だから、私の歌でその人たちに元気を与えることができるなら、いくらでも頑張るつもり!」

シン「ラクス…」

屈託なく笑う少女の言葉には、なんの打算も、嘘偽りも感じられなかった。
軍人である自分とはまた別の手段で、平和のために力を尽くしている人がいる。
その事実は、ロゴスへの憎悪で暗く沈み込んでいたシンの心に、希望の火を灯してくれたような気がした。
63 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:10:46.13 ID:TTCM1fps0
ミーア「ねえ、シンはミネルバの人なんでしょう?色々お話聞かせてほしいの!アスランって、軍務のときはどんな感じなの?」

シン「そうだなあ…うちの隊長は凄い人だよ。MSの操縦も上手いし、俺なんかよりずっと大人で」

シン「最初は怒鳴られたり殴られたりして、ちょっとムカついたけど…」

ミーア「へぇ、アスランって意外とスパルタなのね」

シン「まあね。でも、俺のこと心配してくれてたってわかったから、もう気にしてないよ」

シン「ただ怒るだけだったアカデミーの教官たちとは違う。ちゃんと俺のこと認めて、歩み寄ってくれたんだ、あの人は」
64 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:13:25.32 ID:TTCM1fps0
食事を終え、すっかり意気投合したシンとミーアは、施設内の庭園へとやってきていた。
空は藍色の夜闇に覆われ、ライトに照らされた噴水が煌いている。

ミーア「私、シンのこと気に入っちゃった。専属のボディガードにならない?」

シン「え?…無理だよ、俺がミネルバ離れるわけにはいかないし」

ミーア「そう、残念。でも、あなたを除いてもアスランと赤服のパイロットさんが二人いるんでしょう?」

ミーア「そこにフェイスが一人加わるんだから、戦力としては十分だと思うんだけどなあ」

シン「フェイスが…?なんのこと?」

ミネルバのパイロットが増員、それも議長直属の特務隊であるフェイスが加わるなど、シンには全く心当たりのないことだった。
65 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:14:53.31 ID:TTCM1fps0
ミーア「聞いてないの?ハイネ・ヴェステンフルス。"緋蝶"の二つ名を持つ、凄腕のパイロットなんだって」

シン「そんな報告は受けてないけど、なんでラクスがそんなことを知ってるんだよ?」

ミーア「議長がお話してたの聞いちゃった!」

シン「えぇ…」

ミーアを部屋まで送り届けたあと、シンは自室へと戻ってきていた。
ロックを解除して扉を開くと、そこにアスランの姿はなかった。

シン「後で説明するって言ってたのに、逃げたな…」
66 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:16:57.18 ID:TTCM1fps0
翌朝、シンがラウンジへと向かうと、オレンジの髪をした赤服の兵士が、他のミネルバ隊のメンバーと談笑していた。
その赤服の襟元に輝くフェイスのバッジを見て、シンは昨夜のミーアの話を思い出す。
彼がミネルバに新たに着任するパイロットということだろうか。
シンに気づいたルナマリアが、こっちだと手招きする。

ルナマリア「シン!こちらは…」

シン「ハイネ・ヴェステンフルス…」

ルナマリア「え?」

ハイネ「おっ、なんだよ!俺ってば有名人?」

シン「あ、すみません。自分は、シン・アスカであります!」

挨拶が遅れたことに気づき、慌てて敬礼してみせるシンに、ハイネは気にするなと肩を叩いた。

ハイネ「ミネルバには休暇明けから配属される。よろしくな、シン」

シン「はい!」
67 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:18:45.45 ID:TTCM1fps0
顔合わせが済んだところで、レイがひとつの疑問をアスランへと投げかける。

レイ「隊長、一つの部隊にフェイスが二人となると、作戦指揮は…?」

アスラン「ハイネの方が先任だ。これからミネルバ隊は、彼の預かりになる」

レイ「了解しました。ではヴェステンフルス隊長、よろしくお願いします」

ハイネ「ハイネでいいよ、堅っ苦しいのは得意じゃないんだ。大体、ヴェステンフルス隊長ってなげーだろ」

レイ「は、はあ…」
68 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:20:21.36 ID:TTCM1fps0
ハイネ「ていうか、アスランおまえ、隊長って呼ばれてんの?」

アスラン「ああ、まあ…」

ハイネ「……」

レイ「戦闘指揮を執られますので、我々はそうお呼びしてきました」

ハイネ「なるほどね…じゃ、これからはアスランでいこうか」

アスラン「俺はそれでも構わないが…」

当惑するシンたちに、ハイネはやれやれ、と肩を落としてみせた。

ハイネ「あのな、俺たちザフトのパイロットは、戦場に出ればみんな同じだろ?赤でも、緑でも、フェイスでも…」

確かに、ザフト軍には階級制度というものが存在しない。
その代わり、部隊の中でリーダーを決め、その者が隊長の役割を果たす。
故に、シンたちはなんの疑問も抱かずに自然とアスランを隊長と呼んできた。

ハイネ「だからさ、隊長なんて余所余所しい呼び方する必要はないんだよ」

ハイネ「おまえもおまえだぜ、アスラン。なんで名前で呼べって言わないの」

アスラン「はは…俺も、おまえみたいにやれたらなと思うよ…」
69 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:23:01.11 ID:TTCM1fps0
ハイネ「艦の方には、また改めて挨拶に行くよ。それじゃあな!」

景気よく言い放ち、ラウンジから立ち去るハイネ。
それと入れ違いに入ってきた人物に、アスランの顔がこわばった。
その人物はアスランをみとめると、はしゃぎながら彼に駆け寄る。

ミーア「ア〜スランッ☆」

アスラン「ミ…いや、ラクス…!」

ミーア「ごめんなさいアスラン。せっかくお会いできたのに…わたくし、もうここを発たなければいけないの」

アスラン「そ、そうですか。お気をつけて」

どこまでも余所余所しいアスランに、不満気に目を細めてみせたあと、
ミーアはシンの方に向き直り、小さく手を振ってその場を後にした。
70 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:25:34.97 ID:TTCM1fps0
レイとルナマリアは思わず顔を見合わせる。

ルナマリア「…ねえ、今」

レイ「…ああ」

ルナマリア「ラクス様、シンに手振ってた?」

レイ「…ああ」

ルナマリア「どういうことなの…」

レイ「…わからん」

ルナマリア「ちょっとシン!…って、いない?」

エレベーターの方を見やると、ちょうどアスランとシンが乗り込んだところだった。
声をかける間もなく扉は閉まり、ルナマリアは茫然と立ち尽くす。
71 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:26:37.97 ID:TTCM1fps0
ルナマリア「最近のシン、全然読めない…。この前の作戦から、急に隊長と仲良くなってるし」

レイ「隊長ではなく、アスランだろう?」

ルナマリア「あっ…」

レイ「休暇はまだ残ってるんだ、一緒に街にでも行ってくればいいじゃないか。最近シンとゆっくり話す機会もなかったろう?」

ルナマリア「そりゃ、まあ…」
72 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:27:28.83 ID:TTCM1fps0
レイ「それとも、おまえが誘いたいのはアスランの方か?」

珍しく冗談を言ってみせたレイに、ルナマリアは少し驚いたあと、むくれてみせた。

ルナマリア「もう!からかわないでよね!…レイはどうするの?」

レイ「俺はミネルバでシンと同室だからな。いくらでも話はできるさ。それに、今日は先約があってな」

ルナマリア「ふーん。せっかくだから、久々に三人で出かけるのもいいと思ったんだけど…仕方ないか」

レイ「悪いな」

ルナマリア「ううん。じゃあ私、行ってくるわね」

レイ「ああ」
73 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:30:13.64 ID:TTCM1fps0
エレベーターの中で、シンは率直な疑問をアスランにぶつけてみた。

シン「なんでラクスのこと避けてるんです?いい子じゃないですか、彼女」

アスラン「ああ、いや…いい子なのは間違いない、と思うが…」

シン「自分の歌でみんなを元気にするんだって…そのために、危険な地球まで降りてきて…」

シン「…俺、ちょっと感動しました。CDも貰ったんで、ちゃんと聴いてみるつもりですよ」

アスラン「そう、だな…」

シン「……?」

いつものアスランとは違う歯切れの悪さに違和感を感じたものの、シンは余計な詮索をするような性格でもなかったから、それ以上は聞かないことにした。
74 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:32:05.75 ID:TTCM1fps0
アスランと別れ、自室で残りの休暇の過ごし方を考えていると、ルナマリアから着信が入った。

シン「ルナ、なにか用?」

ルナマリア「せっかくだから街に出ようと思って。でも、一人じゃつまらないでしょ?」

シン「ああ、荷物持ちね。しょうがない、付き合ってやるよ」

ルナマリア「オッケー。じゃ、ラウンジに集合ね」

通話を切り、身支度を整えながら、ルナマリアはほくそ笑む。
実戦に出てから活躍を重ね、エースとして昇り詰めていくシンに、少しばかり気後れしていたのが馬鹿馬鹿しく思えたからだ。

ルナマリア「よーし、思いっきり羽伸ばしちゃお!」
75 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:34:01.38 ID:TTCM1fps0
さっさと支度を終えたシンは、ラウンジのソファーに腰掛け、
小型の音楽プレーヤーで、ラクスの歌を――正確にはミーアの歌だが――を聴きながら、少しばかりの安らぎを感じていた。

この休暇が終われば、またミネルバは戦場に赴くことになるのだ。
今日ぐらいは呑気でいてもバチは当たらないだろう。

この日、自分の運命を揺るがすような出会いが待ち受けていることを、シンは知る由もなかった。
76 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:35:43.55 ID:TTCM1fps0
今回の更新はここまでになります。
ディオキアの話はもう少し続きます。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 01:42:19.63 ID:/16P/48EO
おつー
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 08:29:36.73 ID:m2fm34tko
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 09:02:23.54 ID:E7MlZUmw0

当時シンミアとかありじゃねって友人に言ってた黒歴史を思い出したよ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 09:44:51.42 ID:8CTIn4ADO

ミーアはマジでアスランとしか絡まなかったから、もったいないと思った
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 09:57:20.20 ID:kLdCUxdw0
乙です。
ディオキアってことは次ステラと出会うのかな?
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:09:40.60 ID:0vIyDXEOO
俺の見間違いじゃなきゃ一度レイのシャワーシーンあっておっぱいあったような気がするんだがレイは男なんだよな?
シャワーシーンでおっぱいあったから女性陣の誰だろと期待してたらレイだったから驚いた記憶あるんだ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:35:51.47 ID:E7MlZUmw0
そんなシーンあったっけ
ちょっと前までテレ玉のリマスター見てたけど記憶に残ってないな
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:37:42.74 ID:/aAWcxQio
いまさらながら思うけど、
種運命って料理の仕方を間違えた感じだよなあ。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 14:23:11.23 ID:1ugkKQwC0
だからこそ色んな作品で種運命は原作アニメから変化させていい展開、納得のいく話に持って行ってるんだよなー
漫画版然りスパロボZやL然りガンダム無双2のシンルート然り
ここではさらに他では絡んだことのなかったミーアと絡んでるから新鮮な感じ
ミーアもラクスを演じてはいるけど戦争を早く終わらせたいその手伝いが出来ればっていうのは本心だから悪い娘じゃないんだよね
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 17:22:41.63 ID:3WJkM/1p0
前作キャラを無理にageて活躍させようとした結果があの惨状だからな
あとバンク挟み過ぎて話の流れがくっそダレたのを思い出した
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 17:53:45.94 ID:VroXjc0mO
種は良かったよな?
たまに種ごと叩くのがいるけど種は良作だと思うんだ
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 18:17:23.03 ID:E7MlZUmw0
シャア板でやっても良い話題にシフトしそうだからSSに関して以外は今後も落ち着いてレスしたいところだね…
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 07:54:54.72 ID:DX9NxUIhO
種は良かった思うし好評だと思う
種タヒはなぁ…最初の頃は面白い感じでワクワク感はあった
でも中盤前から酷くなってきたし最後はOPキラに乗っ取られたからギャグになった気する
フリーダムがいくら強くても最新式のセイバーが一発でバラけるシーンもおかしいしな
あとはミゲルと違い多少ハイネは出落ちじゃなく少しは活躍したのは良かった(種タヒでよかったのはそこだけ個人的に)
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 18:32:13.82 ID:zPGybNKf0
種死は面白くなる要素はいっぱいあったけどほとんど無駄にしちゃってるからねぇ
シンvsキラだって入念な分析と他にはない機体特性を活かしたシンの勝利ってのもまだ納得がいくが私怨と顔芸ラッシュでやるのは明らかに調理方法を間違えた
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 19:43:28.86 ID:OWHJUwvb0
演出用に素材の設定を作るスタイルだから先に演出があるわけでしょ
調理法を間違えたってのは素材が先にあった場合の話じゃないのかなあ
92 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:31:52.79 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリア「お待たせ」

シン「ああ、バイク借りられるみたいだけど、どうする?」

ルナマリア「ううん、歩いていきましょ」

シン「いいのか?街までそこそこ距離あるだろ」

ルナマリア「だからいいのよ」

シン「ふぅん…」
93 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:33:20.09 ID:k+y3Cfxv0
空は快晴。街道は見晴らしもよく、陽光を浴びて輝く海の美しさと、吹き抜ける潮風に心地よさを感じる。
どうやら、ルナマリアの提案に乗ったのは正解だったようだ。

ルナマリア「ほんっと綺麗!プラントの人口海とは違うわねー!」

シン「ルナが歩くっていった理由が、よくわかったよ」

ルナマリア「景色だけじゃないわよ。最近ゴタゴタしてて、ゆっくり話をする機会もなかったでしょ」

シン「そういや、そうかも」

ルナマリア「色々聞きたいことあるんだから、覚悟してもらうわよ!」

シン「あはは…」
94 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:34:52.48 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリアの質問攻めにほとほと疲れ果て、一旦会話を打ち切って海の方を見やると、崖の突端で、一人の女の子が歌いながら踊っていた。
ステップを踏むたび、やわらかそうな金髪と、軽やかな白と青に彩られたドレスが、ふわりと風にはためく。
波の音に混じって耳に届く歌声は、ディオキアの海のように澄みきって美しかった。

シン「綺麗だな…」

ルナマリア「歌の話?それともあの子が?」

シン「…からかうなよ」

シンはしばし目を閉じ、彼女の歌声に聞き惚れていた。
戦いに明け暮れる世界の中にも、こんなに優しい時間があるのだ。
95 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:36:53.43 ID:k+y3Cfxv0
ずっとそうしていたかったが、隣にいたルナマリアの悲鳴に驚いて目を開けると、崖の上に少女の姿はなく、
下方に水音が聞こえたのとほぼ同時に、シンは走った。

少女のいた崖から身を乗り出して下を覗き込むと、水の中で少女が必死にもがいているのが見えた。

シン「あの子、泳げないのかよ!?」

念のため基地に連絡するよう、ルナマリアに目で合図し、シンは迷うことなく崖から飛び降りた。

海面が身体を打つが、痛みに悶えている余裕などない。
波をかきわけ、少女へと手を伸ばす。

シン「掴まれ!」

パニック状態にある少女は、シンの声も聞こえない様子で、めちゃくちゃに手をばたつかせている。

シン「くそっ!」

少女を抱き寄せようとするが、細腕からは想像もできないような強い力でもがくものだから、今度はシンまで水に引きずりこまれそうになる。
遅れて海に飛び込んだルナマリアが少女の背面に回り、身動きできないよう二人で抱きかかえて、なんとか浅瀬まで辿り着いた。
96 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:39:05.17 ID:k+y3Cfxv0
シン「泳げもしないのにこんなところで…死ぬ気かっ!このバカ!」

怒鳴りつけられ、少女の身体が、縮み上がる。

ルナマリア「ちょっとシン!」

シンの言っていることが間違っているわけではないが、つい先ほどまで命の危機に晒されていた相手に、
それは冷たすぎるのではないかと、ルナマリアが押さえ止めた。

ルナマリア「ほら、怖がってるじゃない!」

シン「あ……」

見れば、少女は目に涙を溜めて肩を震わせていた。
ルナマリアの言う通りだ。命を落としかけた直後に、随分と乱暴な言葉をかけて、怯えさせてしまった。

シン「ごめん、俺…」

謝ろうと顔を近づけると、少女は弾かれたように立ち上がり、シンから逃げるように走り出した。

「いやぁぁっ!!」

シン「え、!?」

「怖い!死ぬのは嫌ぁっ!!」
97 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:41:27.35 ID:k+y3Cfxv0
半狂乱になった少女の向かう先は、今さっき逃れたばかりの海だった。
シンは慌てて走り寄って少女の身体を抱きとめ、懸命に叫んだ。

シン「大丈夫だ!君は死なない!」

少女の細い身体を、かたく抱きしめる。

シン「俺がちゃんと…君を守るから!!」

少女の身体から、ゆっくりと力が抜けていく。
涙に濡れたつつじ色の瞳が、おずおずとシンの顔を見上げる。

「まも…る……?」

シン「…うん」

少女を安心させるために、咄嗟に出た言葉だった。
それでも、この無垢な瞳に見つめられれば、その言葉を嘘にはしたくないと思った。

シン「俺が、君を守るよ。約束だ」

少女はシンの手を取り、その温もりを確かめるように、自分の頬に当てた。

「守る……」

シンは空いた方の手で、少女の髪を優しく撫でてやった。
少女はうっとりと目を閉じ、シンに身を委ねた。
98 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:42:50.65 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリア「もう大丈夫みたいね」

シン「ルナ、基地には連絡してくれたんだろ?」

ルナマリア「ええ。でも、救援が来るまでずっとこのままってわけにも…」

シン「あっ、あそこ!」

岩壁に、小さな洞窟のようなものができていた。
流木を集めて火でも焚けば、水浸しの服と身体を乾かすぐらいはできるだろう。

焚き木の周りに、脱いだ服を広げ、三人は肩を寄せ合って座り、身体を温めた。
シンとルナマリアは、少女を怖がらせないように、言葉を選びながらいくつかのことを聞いた。
少女の名前は、"ステラ"というらしい。
ステラは、スティングと、アウルという人たちと共にこのディオキアを訪れたのだという。
今頃、その二人もステラを探しているのだろうか。
99 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:45:41.81 ID:k+y3Cfxv0
ステラは、シンの肩に頭をもたせかけ、揺らめく火をぼうっと眺めている。
洞窟の中に聞こえるのは、火がパチパチと弾ける音と、寄せて返す波の音だけ。
安心しきったステラを見て、シンとルナマリアも、心地よい静けさに身を任せた。

どれぐらいの時間そうしていただろうか。
波の音に混じってエンジン音が聞こえ、徐々に近づいてくる。
ステラが不安そうにシンとルナマリアの手を握るようにしたから、シンは大丈夫だと言い聞かせて、洞窟の外へと向かった。

アスラン「なんでこんなところで遭難するんだ?」

シン「すいません、色々あって…」

服を着て洞窟から出てきたルナマリアとステラの手を取ってボートに引き上げ、アスランに事情を説明していると、
上方からかすかに声が聞こえた。崖の上に目をやると、小さな人影が二つ、並び立っていた。

「おおーい!ステラ、どこだぁー!?」

シン「ステラ、あれって…」

ステラ「スティング、アウル…」

アスラン「ここからでは無理だ。一旦基地まで戻って、車を出そう」
100 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:47:16.72 ID:k+y3Cfxv0
スティングは焦っていた。ステラを一人にして、アウルと共に街で遊び惚けていたのは失敗だった。
ステラは朝、街の近くにある海岸で遊んでいた。だが、夕暮れになって迎えに来てみれば、彼女の姿はなかった。
艦にいるときも、甲板で一日中海を眺めているようなやつだから、海岸に置いておけば平気だろうと軽んじていた。
ネオには、ステラから目を離すなと言われていたのに。

アウル「ひょっとして、海にドボンとか?」

スティング「縁起でもないこと言うんじゃねえ!ネオにどう説明する気だ!」

アウル「けどよ、こんだけ探しても見つからないんじゃ…」

スティング「……」

スティングはそれ以上の叱責を止めた。
アウルの目を見れば、口ではそう言いながら必死なのはわかったからだった。
101 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:49:15.24 ID:k+y3Cfxv0
それからしばらく探し続けて、いよいよ途方に暮れたとき、一台の軍用車両が、スティングたちの近くで停まった。

アウル「おい、あれ!」

スティングたちが驚いたのは、それがザフト軍の車両だったということよりも、その車上に、探していた少女の姿があったからだった。

ステラ「スティング!」

見知った顔を見つけたステラは、車から降り、嬉しそうにスティングたちの方に駆け寄る。

スティング「ステラ!おまえ、一体どこに…」

シン「海に落ちたんですよ」

ルナマリア「私たち、偶然そばにいて」

ステラの代わりに答えたのは、黒髪の少年と赤い髪の少女。
きっと、彼らはザフトの人間だろう。こちらを警戒する様子はないし、どうやら自分たちの正体を知っているわけではないようだ。

スティング「そうですか。それは御迷惑をおかけしました、ありがとうございます」

シン「いえ、そんな」

ルナマリア「良かったねステラ、お兄さんたちに会えて」

ステラ「うんっ」
102 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:51:06.66 ID:k+y3Cfxv0
やがて車が軽くクラクションを鳴らし、赤い髪の少女は車の助手席に乗り込む。

シン「それじゃあ、自分たちはこれで」

少年も後部座席の扉を開けるが、ステラに服の裾を掴まれ、こちらを振り向く。

ステラ「行っちゃうの…?」

切なそうなステラの表情を見て、少年は困ったように頭を掻く。

シン「ああ…ごめんね、ステラ」

ステラ「んー…」

尚も悲しげに顔を曇らせるステラ。少年は少し考え込んだあと、ハッとした顔をする

シン「そうだ!名前言ってなかったよな」
103 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:53:14.00 ID:k+y3Cfxv0
シン「俺はシン。シン・アスカ」

ステラ「シン…?」

シン「うん。…また会えるよ、きっと」

ステラ「シン、また会える…?」

シン「っていうか、会いに行く!約束な!」

ステラ「…やくそく!」

ようやく笑顔を取り戻したステラは、ふと思い出したようにドレスのポケットから薄紅色の綺麗な貝殻を取り出し、それを少年の掌に乗せた。

シン「これ、俺にくれるの?」

ステラ「うん!」

シン「…ありがとう!」

今度は、少年も嬉しそうに笑う。
幸せそうに笑う二人を見て、スティングは形容しがたい気分になった。
自分たちと一緒にいるときでさえ、ステラはこんな風に笑ったりはしないのに。
ふとアウルの方を見やると、面白くなさそうに少年の方を睨んでいたので、肘で小突いて止めさせた。
104 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:55:15.16 ID:k+y3Cfxv0
やがて車両が動き出し、それを追ってステラは二、三歩走った。
少年の方も、車上から顔を出して、ステラに手を振り続けていた。
車両が角を曲がり、少年が見えなくなっても、ステラはしばらく立ち尽くしたままだった。

スティングは、少年とステラが二度と出会わないことを祈った。
なぜなら、彼とステラが再会するようなことがあるなら、それはきっと戦場でのことだからだ。

らしくない、と感傷を打ち切って、スティングはステラに声をかけた。

スティング「帰るぞ、ステラ。ネオが待ってる」

ステラ「…うん」
105 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:57:35.86 ID:k+y3Cfxv0
シンたちを宿舎まで送り届けて車を返し、自分も部屋に戻ろうとしていたアスランは、
テラスに見覚えのある人影があるのに気づいて足を止める。

アスラン「ハイネ…?」

ハイネ「ん…?ああ、アスランか」

振り返ったハイネの顔には、赤みが差していた。

アスラン「酔ってるのか?」

ハイネ「まあ、そうだな。…俺はずっと本部にいてな。隊を率いて、開戦時の防衛戦にも出た」

ハイネ「そこで、一人死んだんだよ。そいつのこと思うと、ついな…」

アスラン「…そうか」
106 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:59:14.22 ID:k+y3Cfxv0
ハイネ「しかし休暇中に遭難とは、ミネルバのエースくんもやることが派手だねえ。戦闘中に無茶しなけりゃいいんだけどな…」

ハイネ「もう、仲間が死ぬのは御免だぜ」

拳を握りしめるハイネに、アスランはなんと声をかけたものか迷ったが、ひとつだけ確かな答えがあった。

アスラン「心配しなくても、あいつは大丈夫さ」

なんの根拠も保証もない。シンと共に戦場を駆けたのも、まだ数えるほどだ。
それでも、不思議とそう思えるのだ。

ハイネ「…そっか。おまえがそう言うなら、まあ大丈夫なんだろうな、あいつは」

ハイネ「けどさ、おまえ自身はどうなんだ?」

アスラン「え…?」
107 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 18:01:25.08 ID:k+y3Cfxv0
ハイネ「前の大戦のあと、おまえ…オーブにいたんだろう?」

ハイネ「オーブは地球連合軍と同盟を結んだ。今はオーブも地球軍ってことだ」

ミネルバがカガリをオーブに送り届けたあと、地球連合軍とオーブに挟撃されたことは聞いていた。
地球連合軍とオーブの同盟条約が締結した今、再びオーブ軍がミネルバを襲う可能性は十分にあった。
それは、アスランが無意識に目を逸らし続けていたことだった。

アスラン「………」

ハイネ「割り切れよ、アスラン」

ハイネ「でないと…死ぬぜ」
108 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 18:04:14.34 ID:k+y3Cfxv0
部屋に戻ったシンは、備え付けのソファーに腰を下ろし、ステラに貰った貝殻を掌で弄びながら、彼女に想いを馳せた。
出会って半日も経っていないし、交わした言葉も少ない。それでも、彼女のことを心の底から守りたいと思った。
信頼しきって、全てを委ねるようなステラの瞳は、シンを誇らしい気持ちにさせてくれた。
この子には、俺が必要なのだと。そしてきっと、俺にもこの子が必要なのだと思った。

シン「もう一日、休暇が残ってればなあ…」

彼女のフルネームも、住んでいる場所も聞かずに戻ってきてしまったことを、心底後悔した。
だが、なんとなくではあるが、ステラとは再び会える気がしていた。
戦争が終わったら、ディオキアにまた来よう。そして、ステラの手がかりを探そう。
君を守ると、会いに行くと、そう約束したから。
109 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 18:06:08.92 ID:k+y3Cfxv0
今回はここまでとなります。
次回は多分戦闘シーンも書くことになるので時間かかりそうです。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 18:18:33.89 ID:R3/O5zVy0
なんか昔似たようなの見た気がする。
SEEDは懐かしいし好き。いろいろ言われてるけどキラとフリーダムも好きなので上手く書いてくれるとうれしいな。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 18:23:56.64 ID:UthX1hnp0
乙です。
次はダーダネルス海峡での戦いだけどハイネの処遇はどうなることやら
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 20:31:06.99 ID:dz2tvT3Xo
乙ー
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 21:23:48.78 ID:5fwMS7/R0
おつー
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 11:44:49.15 ID:IwfdMJSQO
種死ってなんであんなネタ化されるんだろうな
アスランはカガリ一筋なのにお墓のシーンでメイリンが隣にいただけでメイリンを選んだとか言われるし
シンはシンでステラステラ言ってたくせに最後はルナマリア選ぶし
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 02:24:04.40 ID:xuw2XrQ4O
エヴァのとあるシーンを種運命変えてみた

シン「ステラステラ」ハァハァシコシコ

シン「ステラ!…うっ」ドピュ

シン「ハァ…俺って最低だ」ネチャァ

……違和感仕事放棄?
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 02:29:37.55 ID:hguaXYc0O
気持ち悪い
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 03:26:37.00 ID:eQ+E/NpKo
>>115
頭大丈夫?精神科いく?
118 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:10:19.91 ID:Ln/MZHyB0
研究員「大佐、本当によろしいんですか?」

ネオ「君もしつこいなあ、何度同じことを言わせるんだ?」

ネオ「記憶をデリートするんじゃ、あいつらに休暇をやって、街にまで出してやった意味が無いだろ?」

ネオ「成果をあげさせるには、恐怖で縛るより、報酬を与える方がずっと効果的だ。特に子供相手にはな」

研究員「彼らは兵器です。MSのパーツのひとつにすぎません。余計な記憶や感情が故障を引き起こしたら、どうするおつもりです?」

ネオ「そうは言うがな、生物を完全に兵器として扱うのは無理だ。いつか必ず綻びは出てくる」

研究員「綻び、ですか?」
119 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:12:16.42 ID:Ln/MZHyB0
ネオ「"ゆりかご"による記憶のデリートは完璧じゃない。つぎはぎだらけの自分の記憶に、疑問を持たない人間などいるものか」

ネオ「自分たちが育った環境、今置かれている状況が異常なことぐらい、あいつらもとっくに気づいてるはずだ」

研究員「ですが…」

ネオ「あーもう!全責任は俺が負う!だから言うとおりにしろ!!」

研究員「…どうなっても知りませんよ」

ネオ「そう心配するなよ。ちゃあんと保険もかけてある」

研究員「保険?」

ネオ「オーブのお坊ちゃんは、上手いこと口車に乗ってくれたよ。無能な権力者ってのは、どこにでもいるもんだよなあ…」
120 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:14:27.43 ID:Ln/MZHyB0
ユウナ「"ダルダノスの暁"作戦、開始ッ!!」

トダカ「……は?」

突然わけのわからない作戦名を叫ぶユウナに、トダカは言葉を失う。

ユウナ「わからないの?君たち軍人は、本当に教養ってものが無いよなあ…。ギリシャ神話だよ、かっこいい作戦名だろう?」

わざとらしく肩をすくめながら、ユウナは言った。

トダカ「………」

呑気なものだ。オーブ軍がこの作戦で前衛を担うことになったのは、一体誰のせいだ。
黒海奪還を掲げ、ミネルバを強襲し撃墜するのが、今回の作戦。
地球軍の都合で行われる作戦だ。なのに、なぜオーブが矢面に立たなければならない。
怒りを通り越して、もはや呆れるしかなかった。
トダカは、大きな溜息が出そうになるのを必死に堪え、号令をかけた。

トダカ「MS隊、発進!」

空母"タケミカヅチ"から、次々とMSが飛び立っていく。
ユウナには聞こえぬように、トダカは小さく呟いた。

トダカ「カガリ様を送り届けてくれた艦を討つ…か。恩知らずだな、我らは」
121 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:16:47.86 ID:Ln/MZHyB0
メイリン「MS接近、機種特定!ムラサメ、アストレイ!オーブ軍です!」

タリア「インパルスとセイバーを発進させて!」

敵の戦力を確認し、タリアは指示を出す。
まずインパルスとセイバーを出したのは、長期戦も視野に入れての判断だった。
この二機は、デュートリオンビームによって、通常の機体よりも素早い補給が可能であるからだ。
122 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:17:43.28 ID:Ln/MZHyB0
理念のために自分の家族を殺したオーブが、その理念をあっさりと捨てて、地球軍に付いた。
その事実に対し、シンは自分でも驚くほどに冷静だった。
怒りが湧かなかったわけではない。ただ、怒りに勝る思いが、今のシンにはあった。

力を手にしたそのときから、今度は自分が誰かを泣かせる者となる。それだけは忘れないでくれと、アスランは言った。
それに対して自分は、はいと答えた。
ならば、もう怒りに任せて引き金を引いたりはできない。

シン「ミネルバは、やらせないっ!」

インパルスのビームライフルが光を放ち、次々に敵MSを撃ち堕としていく。
セイバーの巨大ビーム砲"アムフォルタス"が、敵艦の発射したミサイル群を薙ぎ払う。
二機のコンビネーションは、オーブ軍の攻撃を完璧に防いでみせた。
エース二人の力量に頼もしさを感じながら、タリアは次の指示を出す。

タリア「ミネルバ離水!敵艦隊の前面に回り込む!!」
123 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:19:40.61 ID:Ln/MZHyB0
ユウナ「なにをやってるんだ!敵のMSはたったの二機だぞ!?」

トダカ「……」

ユウナは狼狽しているが、既に一度ミネルバの戦いを目にしているトダカからすれば、この状況は予測の範囲内だった。
オーブ領海線際の戦闘で、地球軍の虎の子であるMAを討ち取り、そのまま空母含む戦艦六隻を沈めたインパルス。
そして、その隣で戦う赤いMS。初めて目にする機体だが、動きは間違いなくエースのそれだった。

ユウナ「MS隊を全機出撃させろ!取り囲んで堕とすんだよ!」

トダカ「それではこちらの被害が大きすぎます!」

ユウナ「うるさい!これは命令だぞ!」

オーブ軍オペレーター「待ってください!これは…!?敵艦首砲、発射態勢!!」

ユウナ「なに!?」

トダカ「この距離で、もう陽電子砲の射程内だというのか…!?」

今からでは、回避も間に合わない。トダカは、己の迂闊さを呪った。
ミネルバに陽電子砲が搭載されていることは事前に知っていたというのに、後手に回るとは。なんたる無様だ。
だが、そこに一筋の光が射した。
124 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:21:52.56 ID:Ln/MZHyB0
一瞬のことだった。
天から降り注いだ翡翠色の光が、ミネルバの陽電子砲を貫いたのだ。
その爆発によって艦首を吹き飛ばされたミネルバは、煙を上げながら海へと落ちていく。

太陽を背に、十枚の蒼い翼を広げた白亜のMSが舞い降りる。
その神々しさに圧倒されるように、戦場は一瞬、静寂に包まれた。

インパルスのコクピットに、ハイネからの通信が入る。

ハイネ「シン、気をつけろ!奴はヤキン・ドゥーエの"フリーダム"だ!」

シン「フリーダム…?」
125 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:22:53.53 ID:Ln/MZHyB0
フリーダムと呼ばれた機体の背後から、大型の白い戦艦が接近してくるのが見える。
その戦艦から、一機のMSが飛び出した。薄紅色のフェイズシフトを纏う、どこかインパルスにも似た機体。

シン「あれも地球軍の増援なのか…!?」

アスラン「いいや、違う。あれは…!」

薄紅色のMSから、全周波での通信が発せられる。

カガリ「この空域で戦闘中の全ての者に告げる!ただちに戦闘を停止せよ!」

カガリ「私は、オーブ連合首長国代表…カガリ・ユラ・アスハ!」

カガリ「その名において命ずる!オーブ軍はただちに戦闘を停止し、軍を引け!!」
126 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:24:23.99 ID:Ln/MZHyB0
ダリフラ見たいのでちょっと小休止入れます
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 23:29:06.31 ID:9QZ+1whnO
そういや種死にはカガリ!カガリ!と鳴くことしか能のない無能指揮官がいたっけか
128 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:03:32.66 ID:xt3V/HfJ0
再開します
129 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:05:39.02 ID:xt3V/HfJ0
タリア「なんてこと…!」

ミネルバのブリッジでは警報が鳴り響き、クルーたちが対応に追われていた。
発射寸前の陽電子砲を破壊されながらも、薬室への誘爆をまぬがれたのは不幸中の幸いだった。
とはいえ、被害は甚大である。今の攻撃で、何人の死傷者が出たことだろう。

アーサー「か、艦長…?」

副長のアーサーが、不安げにタリアを仰ぎ見る。

タリア「ちょっと待ってちょうだい。今は、相手の出方を窺うしかないわ」

頼りない副長に溜息をつきながら、タリアは大空に鎮座するフリーダムを睨みつけた。
130 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:08:11.06 ID:xt3V/HfJ0
ネオ「これは一体、どういうことですかな?ユウナ・ロマ・セイラン」

ユウナ「えっ…いや…これは…」

タケミカヅチのモニターに映し出された仮面は、静かにユウナを威圧する。

ネオ「今すぐキッチリお答えいただかないと…色々と面倒なことになりそうですが?」

ユウナ「あ…あ……あんなもの、僕は知らない!」

トダカ「ユウナ様!?」

信じられない、といった表情で、トダカはユウナに食って掛かる。

トダカ「あのストライクルージュは、獅子の紋章は、紛れもなくカガリ様のものです!!」

ユウナ「黙れ!あれは偽物だ!本物の…僕のカガリなら…!夫の僕に恥をかかせるような真似をするはずがない!」
131 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:10:21.84 ID:xt3V/HfJ0
ユウナ「早くあの偽物を討つんだよっ!!合戦用意!!」

トダカ「あ、あなたという人は……!」

尚も食い下がろうとするトダカに、ユウナは、指揮官席のアームレストに拳を叩きつけて怒鳴った。

ユウナ「でなけりゃ、オーブが地球軍にやられる!!また国を焼きたいのか!?」

不服を隠そうともしていなかった将校たちの顔色が変わる。
それを見て、ユウナはここぞとばかりに畳み掛ける。

ユウナ「僕らはオーブのためにここまで来たんだぞ!!撃てえっ!!オーブのためにぃ!!」

トダカ「くっ…!ミサイル照準!アンノウンMS!」

フェイズシフトを持つストライクルージュならば、ミサイルが命中したとしても致命傷を負うことはないだろう。
この攻撃の意図が伝わることを祈りながら、トダカは発射指示を出した。

トダカ「撃てえっ!!」
132 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:12:40.04 ID:xt3V/HfJ0
カガリ「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない!それがオーブの理念だったはず!」

カガリ「それを忘れたかっ!!」

懸命に呼びかけるカガリに、オーブ軍はミサイルの掃射で答えた。
フリーダムがストライクルージュを庇うように前に出て、ミサイルを撃ち落としていく。
こちらは撃たざるを得ない状況にある、だからカガリ様を守ってくれ。
今の攻撃に含まれていたメッセージを、キラは理解していた。

カガリ「なぜだ、オーブ軍!私の声を…!」

キラ「カガリ、もう駄目だ。残念だけど、こうなってしまったら…」

カガリ「そんな……」

キラ「カガリは下がってて。ここからは、僕ができるだけやってみるから」
133 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:14:21.58 ID:xt3V/HfJ0
オーブ艦隊の発砲を皮切りに、地球軍本隊が攻撃を開始する。
次々とウィンダムが発進していく。カオスが空に躍り出て、アビスが変形して海へ飛び込む。

ミネルバ側も、甲板にレイとルナマリアを配置して迎撃にあたらせ、ハイネのグフを出撃させる。

グフは、まるでオレンジの矢のように戦場を駆け抜ける。
電撃を纏う"スレイヤーウィップ"がしなり、押し寄せる敵機を海面へと叩き落していく。
両腕の四連装ビームガン"ドラウプニル"からばら撒かれた光弾が、次々と空に火の華を咲かせる。
期待を上回るグフの性能に、ハイネは高ぶりを抑えきれずに叫んだ。

ハイネ「ザクとは違うんだよ!ザクとはっ!!」
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