アスラン「頼りにしているぞ、シン」

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71 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:26:37.97 ID:TTCM1fps0
ルナマリア「最近のシン、全然読めない…。この前の作戦から、急に隊長と仲良くなってるし」

レイ「隊長ではなく、アスランだろう?」

ルナマリア「あっ…」

レイ「休暇はまだ残ってるんだ、一緒に街にでも行ってくればいいじゃないか。最近シンとゆっくり話す機会もなかったろう?」

ルナマリア「そりゃ、まあ…」
72 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:27:28.83 ID:TTCM1fps0
レイ「それとも、おまえが誘いたいのはアスランの方か?」

珍しく冗談を言ってみせたレイに、ルナマリアは少し驚いたあと、むくれてみせた。

ルナマリア「もう!からかわないでよね!…レイはどうするの?」

レイ「俺はミネルバでシンと同室だからな。いくらでも話はできるさ。それに、今日は先約があってな」

ルナマリア「ふーん。せっかくだから、久々に三人で出かけるのもいいと思ったんだけど…仕方ないか」

レイ「悪いな」

ルナマリア「ううん。じゃあ私、行ってくるわね」

レイ「ああ」
73 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:30:13.64 ID:TTCM1fps0
エレベーターの中で、シンは率直な疑問をアスランにぶつけてみた。

シン「なんでラクスのこと避けてるんです?いい子じゃないですか、彼女」

アスラン「ああ、いや…いい子なのは間違いない、と思うが…」

シン「自分の歌でみんなを元気にするんだって…そのために、危険な地球まで降りてきて…」

シン「…俺、ちょっと感動しました。CDも貰ったんで、ちゃんと聴いてみるつもりですよ」

アスラン「そう、だな…」

シン「……?」

いつものアスランとは違う歯切れの悪さに違和感を感じたものの、シンは余計な詮索をするような性格でもなかったから、それ以上は聞かないことにした。
74 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:32:05.75 ID:TTCM1fps0
アスランと別れ、自室で残りの休暇の過ごし方を考えていると、ルナマリアから着信が入った。

シン「ルナ、なにか用?」

ルナマリア「せっかくだから街に出ようと思って。でも、一人じゃつまらないでしょ?」

シン「ああ、荷物持ちね。しょうがない、付き合ってやるよ」

ルナマリア「オッケー。じゃ、ラウンジに集合ね」

通話を切り、身支度を整えながら、ルナマリアはほくそ笑む。
実戦に出てから活躍を重ね、エースとして昇り詰めていくシンに、少しばかり気後れしていたのが馬鹿馬鹿しく思えたからだ。

ルナマリア「よーし、思いっきり羽伸ばしちゃお!」
75 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:34:01.38 ID:TTCM1fps0
さっさと支度を終えたシンは、ラウンジのソファーに腰掛け、
小型の音楽プレーヤーで、ラクスの歌を――正確にはミーアの歌だが――を聴きながら、少しばかりの安らぎを感じていた。

この休暇が終われば、またミネルバは戦場に赴くことになるのだ。
今日ぐらいは呑気でいてもバチは当たらないだろう。

この日、自分の運命を揺るがすような出会いが待ち受けていることを、シンは知る由もなかった。
76 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/17(火) 01:35:43.55 ID:TTCM1fps0
今回の更新はここまでになります。
ディオキアの話はもう少し続きます。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 01:42:19.63 ID:/16P/48EO
おつー
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 08:29:36.73 ID:m2fm34tko
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 09:02:23.54 ID:E7MlZUmw0

当時シンミアとかありじゃねって友人に言ってた黒歴史を思い出したよ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 09:44:51.42 ID:8CTIn4ADO

ミーアはマジでアスランとしか絡まなかったから、もったいないと思った
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 09:57:20.20 ID:kLdCUxdw0
乙です。
ディオキアってことは次ステラと出会うのかな?
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:09:40.60 ID:0vIyDXEOO
俺の見間違いじゃなきゃ一度レイのシャワーシーンあっておっぱいあったような気がするんだがレイは男なんだよな?
シャワーシーンでおっぱいあったから女性陣の誰だろと期待してたらレイだったから驚いた記憶あるんだ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:35:51.47 ID:E7MlZUmw0
そんなシーンあったっけ
ちょっと前までテレ玉のリマスター見てたけど記憶に残ってないな
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:37:42.74 ID:/aAWcxQio
いまさらながら思うけど、
種運命って料理の仕方を間違えた感じだよなあ。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 14:23:11.23 ID:1ugkKQwC0
だからこそ色んな作品で種運命は原作アニメから変化させていい展開、納得のいく話に持って行ってるんだよなー
漫画版然りスパロボZやL然りガンダム無双2のシンルート然り
ここではさらに他では絡んだことのなかったミーアと絡んでるから新鮮な感じ
ミーアもラクスを演じてはいるけど戦争を早く終わらせたいその手伝いが出来ればっていうのは本心だから悪い娘じゃないんだよね
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 17:22:41.63 ID:3WJkM/1p0
前作キャラを無理にageて活躍させようとした結果があの惨状だからな
あとバンク挟み過ぎて話の流れがくっそダレたのを思い出した
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 17:53:45.94 ID:VroXjc0mO
種は良かったよな?
たまに種ごと叩くのがいるけど種は良作だと思うんだ
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 18:17:23.03 ID:E7MlZUmw0
シャア板でやっても良い話題にシフトしそうだからSSに関して以外は今後も落ち着いてレスしたいところだね…
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 07:54:54.72 ID:DX9NxUIhO
種は良かった思うし好評だと思う
種タヒはなぁ…最初の頃は面白い感じでワクワク感はあった
でも中盤前から酷くなってきたし最後はOPキラに乗っ取られたからギャグになった気する
フリーダムがいくら強くても最新式のセイバーが一発でバラけるシーンもおかしいしな
あとはミゲルと違い多少ハイネは出落ちじゃなく少しは活躍したのは良かった(種タヒでよかったのはそこだけ個人的に)
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 18:32:13.82 ID:zPGybNKf0
種死は面白くなる要素はいっぱいあったけどほとんど無駄にしちゃってるからねぇ
シンvsキラだって入念な分析と他にはない機体特性を活かしたシンの勝利ってのもまだ納得がいくが私怨と顔芸ラッシュでやるのは明らかに調理方法を間違えた
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 19:43:28.86 ID:OWHJUwvb0
演出用に素材の設定を作るスタイルだから先に演出があるわけでしょ
調理法を間違えたってのは素材が先にあった場合の話じゃないのかなあ
92 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:31:52.79 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリア「お待たせ」

シン「ああ、バイク借りられるみたいだけど、どうする?」

ルナマリア「ううん、歩いていきましょ」

シン「いいのか?街までそこそこ距離あるだろ」

ルナマリア「だからいいのよ」

シン「ふぅん…」
93 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:33:20.09 ID:k+y3Cfxv0
空は快晴。街道は見晴らしもよく、陽光を浴びて輝く海の美しさと、吹き抜ける潮風に心地よさを感じる。
どうやら、ルナマリアの提案に乗ったのは正解だったようだ。

ルナマリア「ほんっと綺麗!プラントの人口海とは違うわねー!」

シン「ルナが歩くっていった理由が、よくわかったよ」

ルナマリア「景色だけじゃないわよ。最近ゴタゴタしてて、ゆっくり話をする機会もなかったでしょ」

シン「そういや、そうかも」

ルナマリア「色々聞きたいことあるんだから、覚悟してもらうわよ!」

シン「あはは…」
94 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:34:52.48 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリアの質問攻めにほとほと疲れ果て、一旦会話を打ち切って海の方を見やると、崖の突端で、一人の女の子が歌いながら踊っていた。
ステップを踏むたび、やわらかそうな金髪と、軽やかな白と青に彩られたドレスが、ふわりと風にはためく。
波の音に混じって耳に届く歌声は、ディオキアの海のように澄みきって美しかった。

シン「綺麗だな…」

ルナマリア「歌の話?それともあの子が?」

シン「…からかうなよ」

シンはしばし目を閉じ、彼女の歌声に聞き惚れていた。
戦いに明け暮れる世界の中にも、こんなに優しい時間があるのだ。
95 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:36:53.43 ID:k+y3Cfxv0
ずっとそうしていたかったが、隣にいたルナマリアの悲鳴に驚いて目を開けると、崖の上に少女の姿はなく、
下方に水音が聞こえたのとほぼ同時に、シンは走った。

少女のいた崖から身を乗り出して下を覗き込むと、水の中で少女が必死にもがいているのが見えた。

シン「あの子、泳げないのかよ!?」

念のため基地に連絡するよう、ルナマリアに目で合図し、シンは迷うことなく崖から飛び降りた。

海面が身体を打つが、痛みに悶えている余裕などない。
波をかきわけ、少女へと手を伸ばす。

シン「掴まれ!」

パニック状態にある少女は、シンの声も聞こえない様子で、めちゃくちゃに手をばたつかせている。

シン「くそっ!」

少女を抱き寄せようとするが、細腕からは想像もできないような強い力でもがくものだから、今度はシンまで水に引きずりこまれそうになる。
遅れて海に飛び込んだルナマリアが少女の背面に回り、身動きできないよう二人で抱きかかえて、なんとか浅瀬まで辿り着いた。
96 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:39:05.17 ID:k+y3Cfxv0
シン「泳げもしないのにこんなところで…死ぬ気かっ!このバカ!」

怒鳴りつけられ、少女の身体が、縮み上がる。

ルナマリア「ちょっとシン!」

シンの言っていることが間違っているわけではないが、つい先ほどまで命の危機に晒されていた相手に、
それは冷たすぎるのではないかと、ルナマリアが押さえ止めた。

ルナマリア「ほら、怖がってるじゃない!」

シン「あ……」

見れば、少女は目に涙を溜めて肩を震わせていた。
ルナマリアの言う通りだ。命を落としかけた直後に、随分と乱暴な言葉をかけて、怯えさせてしまった。

シン「ごめん、俺…」

謝ろうと顔を近づけると、少女は弾かれたように立ち上がり、シンから逃げるように走り出した。

「いやぁぁっ!!」

シン「え、!?」

「怖い!死ぬのは嫌ぁっ!!」
97 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:41:27.35 ID:k+y3Cfxv0
半狂乱になった少女の向かう先は、今さっき逃れたばかりの海だった。
シンは慌てて走り寄って少女の身体を抱きとめ、懸命に叫んだ。

シン「大丈夫だ!君は死なない!」

少女の細い身体を、かたく抱きしめる。

シン「俺がちゃんと…君を守るから!!」

少女の身体から、ゆっくりと力が抜けていく。
涙に濡れたつつじ色の瞳が、おずおずとシンの顔を見上げる。

「まも…る……?」

シン「…うん」

少女を安心させるために、咄嗟に出た言葉だった。
それでも、この無垢な瞳に見つめられれば、その言葉を嘘にはしたくないと思った。

シン「俺が、君を守るよ。約束だ」

少女はシンの手を取り、その温もりを確かめるように、自分の頬に当てた。

「守る……」

シンは空いた方の手で、少女の髪を優しく撫でてやった。
少女はうっとりと目を閉じ、シンに身を委ねた。
98 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:42:50.65 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリア「もう大丈夫みたいね」

シン「ルナ、基地には連絡してくれたんだろ?」

ルナマリア「ええ。でも、救援が来るまでずっとこのままってわけにも…」

シン「あっ、あそこ!」

岩壁に、小さな洞窟のようなものができていた。
流木を集めて火でも焚けば、水浸しの服と身体を乾かすぐらいはできるだろう。

焚き木の周りに、脱いだ服を広げ、三人は肩を寄せ合って座り、身体を温めた。
シンとルナマリアは、少女を怖がらせないように、言葉を選びながらいくつかのことを聞いた。
少女の名前は、"ステラ"というらしい。
ステラは、スティングと、アウルという人たちと共にこのディオキアを訪れたのだという。
今頃、その二人もステラを探しているのだろうか。
99 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:45:41.81 ID:k+y3Cfxv0
ステラは、シンの肩に頭をもたせかけ、揺らめく火をぼうっと眺めている。
洞窟の中に聞こえるのは、火がパチパチと弾ける音と、寄せて返す波の音だけ。
安心しきったステラを見て、シンとルナマリアも、心地よい静けさに身を任せた。

どれぐらいの時間そうしていただろうか。
波の音に混じってエンジン音が聞こえ、徐々に近づいてくる。
ステラが不安そうにシンとルナマリアの手を握るようにしたから、シンは大丈夫だと言い聞かせて、洞窟の外へと向かった。

アスラン「なんでこんなところで遭難するんだ?」

シン「すいません、色々あって…」

服を着て洞窟から出てきたルナマリアとステラの手を取ってボートに引き上げ、アスランに事情を説明していると、
上方からかすかに声が聞こえた。崖の上に目をやると、小さな人影が二つ、並び立っていた。

「おおーい!ステラ、どこだぁー!?」

シン「ステラ、あれって…」

ステラ「スティング、アウル…」

アスラン「ここからでは無理だ。一旦基地まで戻って、車を出そう」
100 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:47:16.72 ID:k+y3Cfxv0
スティングは焦っていた。ステラを一人にして、アウルと共に街で遊び惚けていたのは失敗だった。
ステラは朝、街の近くにある海岸で遊んでいた。だが、夕暮れになって迎えに来てみれば、彼女の姿はなかった。
艦にいるときも、甲板で一日中海を眺めているようなやつだから、海岸に置いておけば平気だろうと軽んじていた。
ネオには、ステラから目を離すなと言われていたのに。

アウル「ひょっとして、海にドボンとか?」

スティング「縁起でもないこと言うんじゃねえ!ネオにどう説明する気だ!」

アウル「けどよ、こんだけ探しても見つからないんじゃ…」

スティング「……」

スティングはそれ以上の叱責を止めた。
アウルの目を見れば、口ではそう言いながら必死なのはわかったからだった。
101 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:49:15.24 ID:k+y3Cfxv0
それからしばらく探し続けて、いよいよ途方に暮れたとき、一台の軍用車両が、スティングたちの近くで停まった。

アウル「おい、あれ!」

スティングたちが驚いたのは、それがザフト軍の車両だったということよりも、その車上に、探していた少女の姿があったからだった。

ステラ「スティング!」

見知った顔を見つけたステラは、車から降り、嬉しそうにスティングたちの方に駆け寄る。

スティング「ステラ!おまえ、一体どこに…」

シン「海に落ちたんですよ」

ルナマリア「私たち、偶然そばにいて」

ステラの代わりに答えたのは、黒髪の少年と赤い髪の少女。
きっと、彼らはザフトの人間だろう。こちらを警戒する様子はないし、どうやら自分たちの正体を知っているわけではないようだ。

スティング「そうですか。それは御迷惑をおかけしました、ありがとうございます」

シン「いえ、そんな」

ルナマリア「良かったねステラ、お兄さんたちに会えて」

ステラ「うんっ」
102 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:51:06.66 ID:k+y3Cfxv0
やがて車が軽くクラクションを鳴らし、赤い髪の少女は車の助手席に乗り込む。

シン「それじゃあ、自分たちはこれで」

少年も後部座席の扉を開けるが、ステラに服の裾を掴まれ、こちらを振り向く。

ステラ「行っちゃうの…?」

切なそうなステラの表情を見て、少年は困ったように頭を掻く。

シン「ああ…ごめんね、ステラ」

ステラ「んー…」

尚も悲しげに顔を曇らせるステラ。少年は少し考え込んだあと、ハッとした顔をする

シン「そうだ!名前言ってなかったよな」
103 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:53:14.00 ID:k+y3Cfxv0
シン「俺はシン。シン・アスカ」

ステラ「シン…?」

シン「うん。…また会えるよ、きっと」

ステラ「シン、また会える…?」

シン「っていうか、会いに行く!約束な!」

ステラ「…やくそく!」

ようやく笑顔を取り戻したステラは、ふと思い出したようにドレスのポケットから薄紅色の綺麗な貝殻を取り出し、それを少年の掌に乗せた。

シン「これ、俺にくれるの?」

ステラ「うん!」

シン「…ありがとう!」

今度は、少年も嬉しそうに笑う。
幸せそうに笑う二人を見て、スティングは形容しがたい気分になった。
自分たちと一緒にいるときでさえ、ステラはこんな風に笑ったりはしないのに。
ふとアウルの方を見やると、面白くなさそうに少年の方を睨んでいたので、肘で小突いて止めさせた。
104 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:55:15.16 ID:k+y3Cfxv0
やがて車両が動き出し、それを追ってステラは二、三歩走った。
少年の方も、車上から顔を出して、ステラに手を振り続けていた。
車両が角を曲がり、少年が見えなくなっても、ステラはしばらく立ち尽くしたままだった。

スティングは、少年とステラが二度と出会わないことを祈った。
なぜなら、彼とステラが再会するようなことがあるなら、それはきっと戦場でのことだからだ。

らしくない、と感傷を打ち切って、スティングはステラに声をかけた。

スティング「帰るぞ、ステラ。ネオが待ってる」

ステラ「…うん」
105 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:57:35.86 ID:k+y3Cfxv0
シンたちを宿舎まで送り届けて車を返し、自分も部屋に戻ろうとしていたアスランは、
テラスに見覚えのある人影があるのに気づいて足を止める。

アスラン「ハイネ…?」

ハイネ「ん…?ああ、アスランか」

振り返ったハイネの顔には、赤みが差していた。

アスラン「酔ってるのか?」

ハイネ「まあ、そうだな。…俺はずっと本部にいてな。隊を率いて、開戦時の防衛戦にも出た」

ハイネ「そこで、一人死んだんだよ。そいつのこと思うと、ついな…」

アスラン「…そうか」
106 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 17:59:14.22 ID:k+y3Cfxv0
ハイネ「しかし休暇中に遭難とは、ミネルバのエースくんもやることが派手だねえ。戦闘中に無茶しなけりゃいいんだけどな…」

ハイネ「もう、仲間が死ぬのは御免だぜ」

拳を握りしめるハイネに、アスランはなんと声をかけたものか迷ったが、ひとつだけ確かな答えがあった。

アスラン「心配しなくても、あいつは大丈夫さ」

なんの根拠も保証もない。シンと共に戦場を駆けたのも、まだ数えるほどだ。
それでも、不思議とそう思えるのだ。

ハイネ「…そっか。おまえがそう言うなら、まあ大丈夫なんだろうな、あいつは」

ハイネ「けどさ、おまえ自身はどうなんだ?」

アスラン「え…?」
107 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 18:01:25.08 ID:k+y3Cfxv0
ハイネ「前の大戦のあと、おまえ…オーブにいたんだろう?」

ハイネ「オーブは地球連合軍と同盟を結んだ。今はオーブも地球軍ってことだ」

ミネルバがカガリをオーブに送り届けたあと、地球連合軍とオーブに挟撃されたことは聞いていた。
地球連合軍とオーブの同盟条約が締結した今、再びオーブ軍がミネルバを襲う可能性は十分にあった。
それは、アスランが無意識に目を逸らし続けていたことだった。

アスラン「………」

ハイネ「割り切れよ、アスラン」

ハイネ「でないと…死ぬぜ」
108 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 18:04:14.34 ID:k+y3Cfxv0
部屋に戻ったシンは、備え付けのソファーに腰を下ろし、ステラに貰った貝殻を掌で弄びながら、彼女に想いを馳せた。
出会って半日も経っていないし、交わした言葉も少ない。それでも、彼女のことを心の底から守りたいと思った。
信頼しきって、全てを委ねるようなステラの瞳は、シンを誇らしい気持ちにさせてくれた。
この子には、俺が必要なのだと。そしてきっと、俺にもこの子が必要なのだと思った。

シン「もう一日、休暇が残ってればなあ…」

彼女のフルネームも、住んでいる場所も聞かずに戻ってきてしまったことを、心底後悔した。
だが、なんとなくではあるが、ステラとは再び会える気がしていた。
戦争が終わったら、ディオキアにまた来よう。そして、ステラの手がかりを探そう。
君を守ると、会いに行くと、そう約束したから。
109 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/19(木) 18:06:08.92 ID:k+y3Cfxv0
今回はここまでとなります。
次回は多分戦闘シーンも書くことになるので時間かかりそうです。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 18:18:33.89 ID:R3/O5zVy0
なんか昔似たようなの見た気がする。
SEEDは懐かしいし好き。いろいろ言われてるけどキラとフリーダムも好きなので上手く書いてくれるとうれしいな。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 18:23:56.64 ID:UthX1hnp0
乙です。
次はダーダネルス海峡での戦いだけどハイネの処遇はどうなることやら
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 20:31:06.99 ID:dz2tvT3Xo
乙ー
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 21:23:48.78 ID:5fwMS7/R0
おつー
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 11:44:49.15 ID:IwfdMJSQO
種死ってなんであんなネタ化されるんだろうな
アスランはカガリ一筋なのにお墓のシーンでメイリンが隣にいただけでメイリンを選んだとか言われるし
シンはシンでステラステラ言ってたくせに最後はルナマリア選ぶし
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 02:24:04.40 ID:xuw2XrQ4O
エヴァのとあるシーンを種運命変えてみた

シン「ステラステラ」ハァハァシコシコ

シン「ステラ!…うっ」ドピュ

シン「ハァ…俺って最低だ」ネチャァ

……違和感仕事放棄?
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 02:29:37.55 ID:hguaXYc0O
気持ち悪い
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 03:26:37.00 ID:eQ+E/NpKo
>>115
頭大丈夫?精神科いく?
118 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:10:19.91 ID:Ln/MZHyB0
研究員「大佐、本当によろしいんですか?」

ネオ「君もしつこいなあ、何度同じことを言わせるんだ?」

ネオ「記憶をデリートするんじゃ、あいつらに休暇をやって、街にまで出してやった意味が無いだろ?」

ネオ「成果をあげさせるには、恐怖で縛るより、報酬を与える方がずっと効果的だ。特に子供相手にはな」

研究員「彼らは兵器です。MSのパーツのひとつにすぎません。余計な記憶や感情が故障を引き起こしたら、どうするおつもりです?」

ネオ「そうは言うがな、生物を完全に兵器として扱うのは無理だ。いつか必ず綻びは出てくる」

研究員「綻び、ですか?」
119 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:12:16.42 ID:Ln/MZHyB0
ネオ「"ゆりかご"による記憶のデリートは完璧じゃない。つぎはぎだらけの自分の記憶に、疑問を持たない人間などいるものか」

ネオ「自分たちが育った環境、今置かれている状況が異常なことぐらい、あいつらもとっくに気づいてるはずだ」

研究員「ですが…」

ネオ「あーもう!全責任は俺が負う!だから言うとおりにしろ!!」

研究員「…どうなっても知りませんよ」

ネオ「そう心配するなよ。ちゃあんと保険もかけてある」

研究員「保険?」

ネオ「オーブのお坊ちゃんは、上手いこと口車に乗ってくれたよ。無能な権力者ってのは、どこにでもいるもんだよなあ…」
120 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:14:27.43 ID:Ln/MZHyB0
ユウナ「"ダルダノスの暁"作戦、開始ッ!!」

トダカ「……は?」

突然わけのわからない作戦名を叫ぶユウナに、トダカは言葉を失う。

ユウナ「わからないの?君たち軍人は、本当に教養ってものが無いよなあ…。ギリシャ神話だよ、かっこいい作戦名だろう?」

わざとらしく肩をすくめながら、ユウナは言った。

トダカ「………」

呑気なものだ。オーブ軍がこの作戦で前衛を担うことになったのは、一体誰のせいだ。
黒海奪還を掲げ、ミネルバを強襲し撃墜するのが、今回の作戦。
地球軍の都合で行われる作戦だ。なのに、なぜオーブが矢面に立たなければならない。
怒りを通り越して、もはや呆れるしかなかった。
トダカは、大きな溜息が出そうになるのを必死に堪え、号令をかけた。

トダカ「MS隊、発進!」

空母"タケミカヅチ"から、次々とMSが飛び立っていく。
ユウナには聞こえぬように、トダカは小さく呟いた。

トダカ「カガリ様を送り届けてくれた艦を討つ…か。恩知らずだな、我らは」
121 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:16:47.86 ID:Ln/MZHyB0
メイリン「MS接近、機種特定!ムラサメ、アストレイ!オーブ軍です!」

タリア「インパルスとセイバーを発進させて!」

敵の戦力を確認し、タリアは指示を出す。
まずインパルスとセイバーを出したのは、長期戦も視野に入れての判断だった。
この二機は、デュートリオンビームによって、通常の機体よりも素早い補給が可能であるからだ。
122 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:17:43.28 ID:Ln/MZHyB0
理念のために自分の家族を殺したオーブが、その理念をあっさりと捨てて、地球軍に付いた。
その事実に対し、シンは自分でも驚くほどに冷静だった。
怒りが湧かなかったわけではない。ただ、怒りに勝る思いが、今のシンにはあった。

力を手にしたそのときから、今度は自分が誰かを泣かせる者となる。それだけは忘れないでくれと、アスランは言った。
それに対して自分は、はいと答えた。
ならば、もう怒りに任せて引き金を引いたりはできない。

シン「ミネルバは、やらせないっ!」

インパルスのビームライフルが光を放ち、次々に敵MSを撃ち堕としていく。
セイバーの巨大ビーム砲"アムフォルタス"が、敵艦の発射したミサイル群を薙ぎ払う。
二機のコンビネーションは、オーブ軍の攻撃を完璧に防いでみせた。
エース二人の力量に頼もしさを感じながら、タリアは次の指示を出す。

タリア「ミネルバ離水!敵艦隊の前面に回り込む!!」
123 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:19:40.61 ID:Ln/MZHyB0
ユウナ「なにをやってるんだ!敵のMSはたったの二機だぞ!?」

トダカ「……」

ユウナは狼狽しているが、既に一度ミネルバの戦いを目にしているトダカからすれば、この状況は予測の範囲内だった。
オーブ領海線際の戦闘で、地球軍の虎の子であるMAを討ち取り、そのまま空母含む戦艦六隻を沈めたインパルス。
そして、その隣で戦う赤いMS。初めて目にする機体だが、動きは間違いなくエースのそれだった。

ユウナ「MS隊を全機出撃させろ!取り囲んで堕とすんだよ!」

トダカ「それではこちらの被害が大きすぎます!」

ユウナ「うるさい!これは命令だぞ!」

オーブ軍オペレーター「待ってください!これは…!?敵艦首砲、発射態勢!!」

ユウナ「なに!?」

トダカ「この距離で、もう陽電子砲の射程内だというのか…!?」

今からでは、回避も間に合わない。トダカは、己の迂闊さを呪った。
ミネルバに陽電子砲が搭載されていることは事前に知っていたというのに、後手に回るとは。なんたる無様だ。
だが、そこに一筋の光が射した。
124 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:21:52.56 ID:Ln/MZHyB0
一瞬のことだった。
天から降り注いだ翡翠色の光が、ミネルバの陽電子砲を貫いたのだ。
その爆発によって艦首を吹き飛ばされたミネルバは、煙を上げながら海へと落ちていく。

太陽を背に、十枚の蒼い翼を広げた白亜のMSが舞い降りる。
その神々しさに圧倒されるように、戦場は一瞬、静寂に包まれた。

インパルスのコクピットに、ハイネからの通信が入る。

ハイネ「シン、気をつけろ!奴はヤキン・ドゥーエの"フリーダム"だ!」

シン「フリーダム…?」
125 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:22:53.53 ID:Ln/MZHyB0
フリーダムと呼ばれた機体の背後から、大型の白い戦艦が接近してくるのが見える。
その戦艦から、一機のMSが飛び出した。薄紅色のフェイズシフトを纏う、どこかインパルスにも似た機体。

シン「あれも地球軍の増援なのか…!?」

アスラン「いいや、違う。あれは…!」

薄紅色のMSから、全周波での通信が発せられる。

カガリ「この空域で戦闘中の全ての者に告げる!ただちに戦闘を停止せよ!」

カガリ「私は、オーブ連合首長国代表…カガリ・ユラ・アスハ!」

カガリ「その名において命ずる!オーブ軍はただちに戦闘を停止し、軍を引け!!」
126 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/21(土) 23:24:23.99 ID:Ln/MZHyB0
ダリフラ見たいのでちょっと小休止入れます
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 23:29:06.31 ID:9QZ+1whnO
そういや種死にはカガリ!カガリ!と鳴くことしか能のない無能指揮官がいたっけか
128 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:03:32.66 ID:xt3V/HfJ0
再開します
129 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:05:39.02 ID:xt3V/HfJ0
タリア「なんてこと…!」

ミネルバのブリッジでは警報が鳴り響き、クルーたちが対応に追われていた。
発射寸前の陽電子砲を破壊されながらも、薬室への誘爆をまぬがれたのは不幸中の幸いだった。
とはいえ、被害は甚大である。今の攻撃で、何人の死傷者が出たことだろう。

アーサー「か、艦長…?」

副長のアーサーが、不安げにタリアを仰ぎ見る。

タリア「ちょっと待ってちょうだい。今は、相手の出方を窺うしかないわ」

頼りない副長に溜息をつきながら、タリアは大空に鎮座するフリーダムを睨みつけた。
130 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:08:11.06 ID:xt3V/HfJ0
ネオ「これは一体、どういうことですかな?ユウナ・ロマ・セイラン」

ユウナ「えっ…いや…これは…」

タケミカヅチのモニターに映し出された仮面は、静かにユウナを威圧する。

ネオ「今すぐキッチリお答えいただかないと…色々と面倒なことになりそうですが?」

ユウナ「あ…あ……あんなもの、僕は知らない!」

トダカ「ユウナ様!?」

信じられない、といった表情で、トダカはユウナに食って掛かる。

トダカ「あのストライクルージュは、獅子の紋章は、紛れもなくカガリ様のものです!!」

ユウナ「黙れ!あれは偽物だ!本物の…僕のカガリなら…!夫の僕に恥をかかせるような真似をするはずがない!」
131 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:10:21.84 ID:xt3V/HfJ0
ユウナ「早くあの偽物を討つんだよっ!!合戦用意!!」

トダカ「あ、あなたという人は……!」

尚も食い下がろうとするトダカに、ユウナは、指揮官席のアームレストに拳を叩きつけて怒鳴った。

ユウナ「でなけりゃ、オーブが地球軍にやられる!!また国を焼きたいのか!?」

不服を隠そうともしていなかった将校たちの顔色が変わる。
それを見て、ユウナはここぞとばかりに畳み掛ける。

ユウナ「僕らはオーブのためにここまで来たんだぞ!!撃てえっ!!オーブのためにぃ!!」

トダカ「くっ…!ミサイル照準!アンノウンMS!」

フェイズシフトを持つストライクルージュならば、ミサイルが命中したとしても致命傷を負うことはないだろう。
この攻撃の意図が伝わることを祈りながら、トダカは発射指示を出した。

トダカ「撃てえっ!!」
132 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:12:40.04 ID:xt3V/HfJ0
カガリ「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない!それがオーブの理念だったはず!」

カガリ「それを忘れたかっ!!」

懸命に呼びかけるカガリに、オーブ軍はミサイルの掃射で答えた。
フリーダムがストライクルージュを庇うように前に出て、ミサイルを撃ち落としていく。
こちらは撃たざるを得ない状況にある、だからカガリ様を守ってくれ。
今の攻撃に含まれていたメッセージを、キラは理解していた。

カガリ「なぜだ、オーブ軍!私の声を…!」

キラ「カガリ、もう駄目だ。残念だけど、こうなってしまったら…」

カガリ「そんな……」

キラ「カガリは下がってて。ここからは、僕ができるだけやってみるから」
133 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:14:21.58 ID:xt3V/HfJ0
オーブ艦隊の発砲を皮切りに、地球軍本隊が攻撃を開始する。
次々とウィンダムが発進していく。カオスが空に躍り出て、アビスが変形して海へ飛び込む。

ミネルバ側も、甲板にレイとルナマリアを配置して迎撃にあたらせ、ハイネのグフを出撃させる。

グフは、まるでオレンジの矢のように戦場を駆け抜ける。
電撃を纏う"スレイヤーウィップ"がしなり、押し寄せる敵機を海面へと叩き落していく。
両腕の四連装ビームガン"ドラウプニル"からばら撒かれた光弾が、次々と空に火の華を咲かせる。
期待を上回るグフの性能に、ハイネは高ぶりを抑えきれずに叫んだ。

ハイネ「ザクとは違うんだよ!ザクとはっ!!」
134 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:17:11.88 ID:xt3V/HfJ0
タリアは、獅子奮迅の勢いで敵を堕としていくグフを見て、ひとまずは胸を撫で下ろした。
しかし、一番の問題は所属不明機たちの動きだ。彼らの行動によって、ミネルバは一気に不利な状況に立たされた。
かと思えば、今は所属不明艦"アークエンジェル"はミネルバを援護し、地球軍の攻撃を押しとどめている。

タリア「まさか、本当に戦闘を止めたいだけ…?」

見れば、フリーダムは敵機を撃墜することなく、メインカメラや武装だけを破壊して戦っている。
アークエンジェルの砲撃も、命中はさせず、あくまで牽制としてのものだ。
馬鹿げている。こんなことをしても、戦場は混乱し、ただ戦闘が長引くだけだ。
これが、ヤキン・ドゥーエの英雄と呼ばれた者たちのやることなのか。
135 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:18:07.72 ID:xt3V/HfJ0
アスラン「くそっ、キラ…!」

アスランは焦っていた。
キラたちは、自分が今ミネルバの一員として戦っていることを知らない。
なんとか接触して、こんなことはやめさせなければ。
だが、それを許してくれるほど、この戦場は甘くない。
襲い来るカオスを捌きながら、ミネルバへ向かおうとするウィンダムを撃ち落とすのが精一杯だった。
オーブという第二の祖国を相手に、覚悟を決めきれないでいる今のアスランにとっては。
136 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:21:58.09 ID:xt3V/HfJ0
ハイネ「どれだけ数で勝っていようが、その程度の腕でぇっ!!」

グフが、ビームソード"テンペスト"を振り下ろし、ウィンダムを両断した直後、モニターの死角からビームが浴びせかけられた。
コクピットに響く警告音によってそれを察知したハイネは、咄嗟に回避運動をとり、ビームが放たれた方へと向き直る。

ハイネ「なっ…ガイアだと!?」

アーモリーワンで奪われた三機の情報は事前に聞いていた。
だが、陸戦用の機体であるガイアが、この海上戦で前に出てくるとは思っていなかったのだ。

艦艇の上を次から次へと飛び移りながら、舞い踊るように攻撃を仕掛けてくるガイア。
足場を潰してしまいたいが、あいにくとグフは艦艇を一撃で葬るほどの破壊力を持ち合わせてはいない。
ガイアの斬撃をすんでのところで躱しながら、ハイネは冷や汗が伝うのを感じていた。

ハイネ「チィッ!こいつ、できる…!」
137 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:23:40.86 ID:xt3V/HfJ0
足場を移動しながら、グフへと猛攻を仕掛けるガイア。
ガイアに踏みしめられた艦艇はバランスを崩すが、ステラは気にも留めない。

ステラ「ふふふっ…」

戦いの最中にあって、ステラは、先日自分を助けてくれた少年――シンのことばかりを考えていた。
抱きしめてくれた腕の温もりを、焔のように紅い瞳を思い出すと、ステラの身体は熱くなる。
また会うと約束した。その約束を果たすためには、生き延びなければならない。
だから、敵には死んでもらわなくちゃ。
グフの腕から伸びた鞭をビームサーベルで切断し、その爆発によろめいた隙に、コクピットに向けてビームライフルの狙いを定める。

ハイネ「しまった!」

ステラ「…ばいばい」
138 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:24:53.21 ID:xt3V/HfJ0
だが次の瞬間、急接近したフリーダムの振るう光の刃を受け、ガイアの腕はビームライフルごと宙を舞った。
フリーダムはそのまま身を翻し、今度はグフの両腕を切り飛ばす。

ステラ「なんなの…!?」

ハイネ「この野郎、手当たり次第かよ!」

一方的に武装を破壊して飛び去るフリーダム。
ハイネは、今まで味わったことのない屈辱に唇を噛んだ。
139 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:27:11.65 ID:xt3V/HfJ0
カオスの猛攻を凌ぎながら、アスランは苛立ちを募らせていた。
フリーダムの攻撃を受け、ハイネ機が戦えなくなった。状況は悪化する一方だ。
一刻も早く、キラを止めなくては。
こんなところで足止めを食らっている場合ではないというのに。

スティング「オラァ!!沈めッ!!」

アスラン「ええい、邪魔をするな!!」

爪先にビームサーベルを纏ったカオスの両足が、ギロチンのように振り下ろされるが、
セイバーは、それをシールドで防ぎ、押し返した。
かち上げられてバランスを崩したカオスに照準を合わせ、アムフォルタスの一撃を見舞う。

スティング「ぐあっ!?」

バックパックに直撃を受けたカオスは飛行能力を失い、海面へと叩きつけられる。
140 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:30:47.90 ID:xt3V/HfJ0
アスラン「なんとか、キラに呼びかけないと…!」

周波数を切り替えるために通信機を探る。その動作が生む一瞬の隙に、他とは違う紫檀色のウィンダムが、セイバーに迫っていた。

ネオ「悪く思うなよ、こっちも必死なんでね」

アスラン「くっ!?」

ほぼ同時にビームライフルを向け合った両者は、その引き金を引く前に、フリーダムによって攻撃の手段を奪われる。

アスラン「キラ!?今のうちに、周波数を…!」

邪魔が入らないうちにと、アスランはまた通信機を探る。

ネオ「……はははっ!」

堪えきれず、ネオは嗤った。
こちらが武装を失ったのを見て、目の前の紅い機体も、第三勢力の白い機体も完全に油断している。
最初から、囮作戦だということにも気づかずに。
141 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:31:53.85 ID:xt3V/HfJ0
ネオ「アウル!」

アウル「待ってましたぁ!」

突如として海中から姿を現したのは、アビス。
その手に握られた槍が、セイバーを刺し貫くべく、先端にビームを発生させる。

ハイネ「アスラン!」

アスラン「!」

コクピットにハイネの声が響き、ハッとしてモニターに目を向ける。
迫りくるアビスの槍。回避は間に合わない、シールドは、腕ごとフリーダムに叩き落された。
アスランは、背筋が凍るような感覚に身を震わせた。

アスラン「カガリ…!」
142 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:34:00.27 ID:xt3V/HfJ0
アスランが身を竦め目を閉じた次の瞬間、機体に衝撃が走った。
アビスの攻撃によるものだろうか。ならばなぜ、自分は生きている?

目を開けると、モニターに映し出されていたのは、アビスの槍に貫かれたオレンジのグフ。
ハイネは咄嗟に自分の機体をセイバーにぶつけ、槍の一撃からアスランを庇ったのだ。

アスラン「あ……ああ…!」

ハイネ「仲間が死ぬのは、もう御免だと言ったろ…」

それが、ハイネの最期の言葉だった。
143 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:36:22.40 ID:xt3V/HfJ0
アスラン「ハイネェェェッ!!」

アスランは、爆散し海に散っていくグフの破片を、呆然と見つめるしかできなかった。
セイバー同様、ハイネのグフも、敵に対応する手段を失っていた。
もし、その手に武器さえあったなら、こんな結果にはならなかったかもしれない。

だが、アスランはこんな風に思っていた。
ハイネを死に追いやったのは、キラじゃない。
キラを止めることばかり考えて、目の前の戦いに徹しきれなかった、自分の愚かさだ。


――アスラン、下がって!!


ニコルの声が、脳裏に蘇る。

アスラン「俺のせいで……また……!」
144 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:37:36.91 ID:xt3V/HfJ0
アウル「今度こそ、堕ちろよっ!!」

キラ「させない!」

再びセイバーに襲い掛かったアビスは、フリーダムによって推進部を破壊されて海へと沈んでいった。

フリーダムは、そのまま戦場にいるほぼ全てのMSの戦闘能力を奪い、地球軍とオーブは撤退を余儀なくされた。
それを見届けたアークエンジェルも、フリーダムと共に去っていった。

アスラン「キラ…カガリ…おまえたちは、戦いが起こるたびに、こんなことを続けるつもりなのか…?」
145 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/22(日) 00:40:28.83 ID:xt3V/HfJ0
今回はここまでです
原作とちょこちょこ変えてる部分ありますが基本的に行き当たりばったりで書いているので
ここ変えた意味なくね?って部分も多々出てくると思いますが許して
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 00:50:10.11 ID:awGb8TGO0
乙です
ハイネはどうあっても逝くのか
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 00:55:54.50 ID:9iW8WSICO
ハイネはどうあがいても死ぬのか……
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 01:30:09.01 ID:EFyrrgGA0

記憶消さない理由付けが自然でいいね
消しちゃうほうが連合っぽいっちゃぽいのかもだけど
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 02:32:29.06 ID:ejZqZzyFO
記憶がないとはいえネオはあの人だしな
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 10:19:46.79 ID:cI7B2kyg0
これハイネ死んだのアスランのせいってシンが怒るのでは?
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 15:52:57.34 ID:SO3W7VsCo
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 09:31:48.28 ID:5kNKIauDO
乙 またしてもニコル死亡回数が加算されてしまった
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 12:17:27.16 ID:2DwgUH3i0
ハイネが残ってたら機体受領できないからしょうがないね
154 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 20:51:14.58 ID:NlmXOd7+0
戦いを終えたミネルバは、マルマラ海にある小さな港"ポートタルキウス"に停泊していた。
激しい損傷を負ったミネルバと、そこから運び出された黒い袋を見て、タリアは何度目かの溜息をついた。
袋の中に納められているのは、先の戦いで命を落としたクルーたちだ。
これが、敵軍と戦った結果であるなら、まだ納得もできただろう。
だが、彼らを撃ったフリーダムは、今のザフト軍にとって、敵とみなしていいのかどうかも分からない存在だった。

タリア「……次に戦場で会ったら、こちらもそれなりの対処をしなければならないわね」
155 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 20:53:37.93 ID:NlmXOd7+0
ハイネの遺品を載せた車が走り去るのを、ミネルバのパイロットたちは重苦しい気持ちで見送った。
車が見えなくなってから、四人はミネルバへと向かう。

ルナマリア「こんなのってないよ…あの人、これからよろしくって…」

シン「クソッ!あいつらが変な乱入してこなけりゃ、こんなことにはならなかったのに!」

アスラン「……!」

前を歩いていたシンとルナマリアの会話に、アスランは耳を塞いでしまいたくなった。
シンの言う"あいつら"とは、フリーダムとアークエンジェルのことだ。
彼らが無謀な行いをしたのは、アスランにも否定しようのない事実だった。
ふと、レイが足を止め、ひとつの疑問を口にした。

レイ「アスランは先の大戦で、フリーダムとアークエンジェルと共に戦ったとお聞きしました」

レイ「今回の彼らの行動について、なにかご存知なのでは?」
156 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 20:56:53.18 ID:NlmXOd7+0
レイの懐疑的な視線に、思わずアスランの頭に血が上る。
本来アスランは、自分が疑いを向けられた程度で怒りを露わにする人間ではなかったが、
フリーダムとアークエンジェルの一件が、アスランから冷静さを失わせていた。

アスラン「もし知っていたら、あんなことを許すはずがないだろう!!」

突然大声を上げたアスランに、シンとルナマリアが何事かと振り返った。

ルナマリア「アスラン…?」

アスラン「……あ…」

心配そうに見つめてくるルナマリアに気づき、アスランは自分を戒める。
ハイネがいなくなった今、この部隊を纏め上げるのは、再び自分の役目になった。
だというのに、苛立ちを部下にぶつけてしまうなど、隊長失格ではないか。

アスラン「…すまない、八つ当たりだ」

レイ「いえ、お気になさらず。俺が無神経でした」

レイは怒鳴られたことを気にした様子もなく、踵を返して歩き始めた。
シンとルナマリアは戸惑っていたが、アスランに先に戻っていてくれと促され、レイに続くようにミネルバのハッチに消えた。
157 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 20:58:54.44 ID:NlmXOd7+0
アスラン「なにやってるんだ…俺は…」

またも仲間の命と引き換えに生き延びてしまった。
頭の中で、ニコルとハイネの笑顔が重なる。

アスラン「いいや違う…あのときとは…」

話をしなければならない。だが戦場では駄目だ。
軍服を脱ぎ、誰からも邪魔されないところでなければ。
158 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:01:14.74 ID:NlmXOd7+0
タリア「アークエンジェルと、接触を…?」

アスラン「はい。艦長は既にご存知かもしれませんが、私は先の大戦で、あの艦と共に戦いました」

アスランは当初、そのことを話さないつもりだった。公式記録には残されていないことだし、
なによりフリーダムがミネルバを攻撃したあとでは、余計な誤解を招く可能性があるかと思ったからだ。
ダーダネルス海峡の戦闘で、全周波通信を使わなかったこともそれが理由だった。
だが、軍に入って間もないレイですら知っているのであれば、もう隠していても仕方がないと判断したのだ。

アークエンジェルを説得したいというアスランの申し出を、タリアは許可した。
あの艦と交渉するのにアスランほど適した人物はいないと思ったし、
なによりアスランには、フェイスとしてその権限があった。
159 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:03:53.24 ID:NlmXOd7+0
アスランが去ってからしばらくして、再び艦長室のドアを叩く者がいた。

レイ「レイ・ザ・バレルです。艦長、少しよろしいでしょうか」

タリア「どうぞ」

レイ「失礼します」

入ってくると、レイは律義に敬礼してみせた。

タリア「そんなに畏まらなくていいわ。それで、なんの用?」

レイ「…少し、申し上げにくいことなのですが…」
160 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:05:24.60 ID:NlmXOd7+0
エーゲ海。小さく波が打ち寄せる海岸に、セイバーを着陸させる。
街で偶然再会したミリアリア・ハウの助力が得られなければ、こうも早くにキラたちと接触することは叶わなかっただろう。

セイバーから降りると、先に到着していたミリアリアが手を振っていた。

アスラン「キラたちは…?」

ミリアリア「もうすぐだと思うけど…あっ、あれ!」

アスラン「!」

ミリアリアの指さした岩場の影に、二人の人影が見える。

アスラン「キラ…カガリ…」

キラ「アスラン…」
161 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:07:36.56 ID:NlmXOd7+0
カガリ「アスラン、おまえ…ザフトに戻ったって、本当なのか…?」

アスラン「…ああ。その方がいいと思った。俺自身のためにも、オーブのためにも」

カガリ「そんなっ!なにがオーブの…!」

キラ「カガリ」

カガリを抑え、今度はキラがアスランへと疑問を投げかける。

キラ「あれは、君の機体?」

アスラン「…そうだ。今はミネルバの一員として戦っている」

キラ「じゃあ、この前の戦い…」

アスラン「おまえを止めようとした。だが、通じなかった」
162 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:09:15.53 ID:NlmXOd7+0
アスラン「キラ、カガリ…おまえたちは何故あんな馬鹿げたことをしたんだ?おまえたちのせいで、ミネルバからも要らぬ犠牲が出た!」

カガリ「馬鹿げたこと…!?」

吐き捨てるように言うアスランに、カガリはたまらず言い返した。

カガリ「あのときおまえたちが戦おうとしていたのは、オーブ軍なんだぞ!?私たちはそれを…」

アスラン「あそこで君が呼びかけたぐらいで、オーブが素直に撤退するとでも思ったのか!?」

カガリ「それは……」

キラ「二人とも、ちょっと落ち着いて」
163 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:12:09.98 ID:NlmXOd7+0
アスラン「キラ…」

キラ「君はどうしてプラントに戻ったの?僕たちを探していたのは何故?」

アスラン「…プラントは、議長は、今のこの状況を終わらせるために尽力している。その手伝いがしたいと思った」

アスラン「だというのに、おまえたちはただ戦況を混乱させているだけじゃないか!」

キラ「…本当に、そう?」

アスラン「なに…?」

キラから向けられた目に、アスランは既視感を覚えた。
先日、レイから向けられた、疑うような目。
164 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:14:47.19 ID:NlmXOd7+0
アスラン「どういう意味だ?おまえだって、デュランダル議長の言葉は聞いているはずだ!」

キラ「…だったら、今プラントにいる、あのラクスはなに?どうして本物の彼女が殺されそうになるの?」

アスラン「ラクスが狙われた…!?それはどういう…」

キラ「君がプラントに上がって、戦争が始まった後…僕らはコーディネイターの特殊部隊に襲撃されたんだ」

キラ「狙いはラクスだった。彼らはMSまで用意していて…だから僕は、またフリーダムに乗ったんだよ」

キラ「ラクスも、みんなも…もう誰も死なせたくなかったから」
165 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:17:34.36 ID:NlmXOd7+0
キラ「どうしてラクスが狙われなければならないのか…それがはっきりしないうちは、議長もプラントも信じられない」

アスラン「……」

確かに、デュランダル議長には動機がある。
議長にとって必要なのは、ラクス本人ではなく、その求心力。
ミーアという自分に都合のいいラクスを手にしたのなら、本物は必要ない。むしろ邪魔ですらある。
だが、誰よりも戦争の終結を望み、そのために力を尽くしている議長が、そんな――。
嫌な想像を振り払うように、アスランは言葉を紡ぐ。

アスラン「…プラントにだって、色んな想いの人間がいる。ユニウスセブンの事件を引き起こした犯人たちのような…」

キラ「この一件も、議長のあずかり知らない人たちが、勝手にやったことだって言うの?」

アスラン「口にしたくはないが…ラクスが狙われる理由はいくらだってある。例えば、失脚させられた旧ザラ派の逆恨みだって…」
166 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:19:34.46 ID:NlmXOd7+0
キラ「アスラン、君はおかしいと思わないの?ラクスが襲われたのと同時期に、偽物のラクスが出てくるなんて」

そんなことはキラに言われずとも分かっていた。ただ、信じたくなかったのだ。
アスランがザフトに復隊したのは、議長の力になりたいと思ってのことだったから。

アスラン「…その件は、艦に戻り次第、俺も調べてみる。だからもう、この前のようなことはするな」

カガリ「戻るって、ミネルバにか?じゃあ、オーブにもアークエンジェルにも、戻らないつもりなのか…?」

アスラン「ミネルバの仲間たちだって、俺を必要としてくれている。彼らを放り出すような真似はできない」

カガリ「そんな…」

泣きだしそうなカガリを見て、アスランはやりきれない気持ちになる。
本当なら今すぐにでも抱きしめてやりたかったが、今の自分にその資格は無いような気がした。
167 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:22:15.18 ID:NlmXOd7+0
キラ「じゃあ君は、これからもザフトで戦うつもりなの?この前みたいに、オーブとも?」

アスラン「俺だって、オーブとの戦いは避けたい。だが攻めてきているのは、地球軍とオーブだ」

キラ「でも…それでも僕たちは、オーブを撃たせたくないんだ」

キラ「カガリの国を、ウズミさんの残してくれた国を…」

キラ「本当は、オーブだけじゃない。戦って失ったものは、二度と戻らないから……」

アスラン「キラ、おまえっ…!」

綺麗事を言うな、という言葉が、喉まで出かかったが、アスランはそれを堪えて、懸命に言葉を探す。
今日ここに来たのは、彼らに怒りをぶつけるためではなく、想いを伝えるためだから。
168 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:26:28.89 ID:NlmXOd7+0
アスラン「キラ、カガリ…俺たちの想いは、きっと同じだ。だが、おまえたちはそれを伝えるために何をした?」

アスラン「戦いをやめろと叫んで、やめなかったときは力で捻じ伏せて…それが本当に、オーブを守ることに繋がるのか?」

カガリ「それは…」

俯くカガリをよそに、キラは真っ直ぐにアスランを見つめ、今までと違う強い口調で言った。

キラ「……それでも僕は、オーブ軍の戦いを放っておくことはできない…カガリが泣くのを、ただ見ているだけなんてできないよ!」

アスラン「キラ…!」

キラ「今みたいになるのを止められなくて、悔やんで…それでも諦めきれずに、カガリは僕の力を必要として…!」

キラ「君はそれを、無駄なことだって、馬鹿なことだって切り捨てるの!?」

アスラン「………」

分かっている。カガリが傷ついていることなど。
だが、戦争を終わらせるための最善の道だと思ってザフトに戻ったんだ。
いつでも手の届く距離で、大事な人を直接守れるなら、それで望む未来が得られるのなら、誰だってそうするだろう。
世界がそんな風に単純であったなら、こんなに苦しまなくてもよかったのに。
169 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:28:39.31 ID:NlmXOd7+0
アスラン「…時間だ。もう、ミネルバに戻らなければ…」

キラ「アスラン!まだ話は…!」

アスラン「あんなことを続けていれば、軍はおまえたちを野放しにはしない!いずれ、おまえたちを倒すための戦いだって起きてしまう!」

アスラン「ミネルバに…俺の仲間に、おまえたちを撃たせるようなことには、なってほしくない…!」

キラ「………」

カガリ「アスラン…」

アスラン「…理解はできても、納得のできないこともある…俺にだって…」

キラたちに背を向け、セイバーへと向かう。
これ以上カガリの顔を見ていたら、きっと戻れなくなってしまうから。

セイバーのコクピットに乗り込み、ハッチを閉じる。
これでいい。伝えるべきことは伝えた。

アスラン「今は違う道を歩んでいても、目指す先は同じはずなんだ……」

ザフトに復隊した自分の選択が、間違いでないように。
そしてもう二度と、戦場で彼らに会うことのないように。
そんなアスランの願いをのせて、セイバーは空へと舞い上がった。
170 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/23(月) 21:34:22.51 ID:NlmXOd7+0
今日の更新はここまでです
個人的にレイが好きなんですが今のところちょっと空気気味でどうにかしたい…
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