垣根帝督「協力しろ」鹿目まどか「ええ…」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 23:09:15.72 ID:SF7Za39I0

「キュゥべえに騙される前のバカな私を助けて」

それが"この世界"の彼女の遺言だった。

ーーまた失敗した。

もう何度目かも分からない後悔と涙を連れて、少女はまた飛び立とうとしていた。

走馬灯のように駆け巡る思い出を胸の奥にしまって。

瓦礫と硝煙で覆われた目の前の惨劇から目を背けつつも、彼女はまたそれこそ何度目かも分からない決意を燃やすのだった。

(次こそは、必ず……!!)






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1525097355
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/30(月) 23:09:55.66 ID:3N1ruM6w0
久々のクロスだな
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/30(月) 23:11:18.58 ID:SF7Za39I0




10月初旬の心地よい秋風が吹き込んでいた。

看護婦が気を遣ってくれたのだろうか。

1/4ほど開けられた窓を見てそんなことを考えながら、暁美ほむらはゆっくりと起き上がる。

見慣れた病院の個室だった。

(うう……んっ)

長く昼寝しすぎたような倦怠感は毎度の事ながら慣れない。

彼女はベッドの上で軽くストレッチをすると顔を洗い、身の回りの持ち物を一つずつチェックしていく。

まるで納品された商品を検品するスーパーの店員の用な仕草だ。

それが終わると、今度は病室を出てエレベーターホールへと向かい、一階へ降りる。

受け付けロビーの片隅、数台の自動販売機が設置された待合室に一直線に向かうと、彼女はフリースペースに置かれた朝刊を手に取った。

各新聞社のものを一部ずつ。

自動販売機でコーヒーを買っていた中年の男性が、年端に合わないことをするほむらを不思議な目で見つめるが、彼女は気にも留めずいくつもの朝刊をテーブルに広げ読み進めていく。

とはいえほむらは同世代の少女らが好むであろう人気タレントのスキャンダルやテレビ欄、スポーツニュースなどには目もくれず、政治や経済、さらには上場企業一覧など大抵のサラリーマンが読み飛ばすような記事ばかり熱心に眺めている。

と、スラスラと流れていたほむらの目線が急に止まった。

原因不明の集団昏倒事件があったという記事、だが彼女の目に止まったのはその内容ではない。

(……学園都市?)

常識的に考えて、場所を説明するなら○○県○○市といった風に記載されるのが当然だが、そこにはただ"学園都市"とだけ書かれていた。

まるでそれがどこにあるのか皆が知っていて当然というように。

(……、)

「あの、ちょっといいですか?」

「え? あ、何かな?」

突然声をかけられた中年男性は少し驚きながらも飲んでいたコーヒーをテーブルに置き、ほむらに向き直る。

「この学園都市って、どこにあるんでしょうか?」

「え……?」

しまった。とほむらは思った。

質問した途端、男性の目の色が明確に変わったからだ。

彼女は分かる。これは不審と憐れみの視線だ。

ほむらがした質問は、あまりに常識外れだったのだ。

「すいません。何でもありません!」

彼女はそう言うと、怪訝な顔をしている男性から視線を外し、足早に病室へと戻っていく。

どうやらこの学園都市というのがこの世界では当たり前に受け入れられているらしい。

(前の世界では聞いたこともなかった。都道府県と同レベルでメディアに取り扱われる学園都市っていったい……)





4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 23:16:29.90 ID:NLe++tZH0
どうせなら白垣根くんとの組み合わせが見たかったな……
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 23:31:30.68 ID:TqPqCxyyO
期待

俺はオリジナル垣根の方が好きやで
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/01(火) 00:06:47.97 ID:TEp65Ua+0
>>5
俺ジナル垣根君は好きだけど、まどかとなら白垣根君で見たかったという話
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/01(火) 00:16:25.74 ID:NRv/knmj0



分かった事がある。

"この時代"の日本には国家とは別に独立した行政権を持つ自治体がある。

そこは東京都西部を中心に埼玉県、山梨県、神奈川県を跨ぐように、外周を高さ5メートルの壁で覆われた円形の都市である。

内部は全23学区に分けられ、人口230万人中8割が学生である。

そこは最先端の科学に基づき、超能力開発なんてものを学校のカリキュラムに組み込んでいる。

そこは12人の理事と1人の理事長によって運営され日本国内でありながら独自の条例が優先される治外法権の都市である。

「……なにこれ」

スマホの大手検索アプリが表示したページを見つめながら、ほむらは絞り出すように呟いた。

看護師が仕組んだ盛大なドッキリとかじゃないだろうかと一瞬頭に浮かんだが、すぐに我に帰る。

世界的大企業が、何をとち狂ったら個人の悪戯に加担してくれるのか。

実際にテレビを付けてみればニュースキャスターが神妙な面持ちで、9月30日に起こった謎の集団昏倒事件について報じている。

思わず食い入って見ていると、突如部屋のドアがノックされた。

「暁美さーん、入りますよー」

軽い口振りで入ってきたのは30歳前後の女性看護師だった。

「血圧計りますねー」

彼女はガチャガチャとカートに乗った器具をいじりながらテレビに目を向け、

「あ、暁美さんもそのニュース見てる。最近みんなこの話題ばっかり」

「そんなに、大きな事件だったんですか?」

「そりゃあそうですよ! あの学園都市が原因究明に苦労するなんて、普通ならあり得ないことです。なんたって壁の外と内で科学技術に2、30年の開きがあるって言われてるくらいですし」

「(そんなに……一体どうなってるの)」

ほむらの囁きは看護師に聞こえなかったようで、彼女は自分も学園都市に行ってかっこよく超能力を使いたかったと喋り続けている。

(確かに学園都市の事は気になる。でも……)

実は、彼女には為し遂げなければならない明確な目標があった。

確かにイレギュラーな事態だが、あまりそちらに傾倒して"本業"が疎かになっては元も子もない。

注目はしつつ、使える物があれば拝借して己の武器の足しにするくらいの心持ちでちょうどいいかもしれない。

「でも、所詮は学生の授業だし、超能力って言っても手品くらいのものなのでは?」

「うーん……。いくつかレベル分けがされてるとは聞いたことあるけど詳しい事は分からないや。ごめんなさいね」

(まあそんなところよね。"アイツ"を倒すための戦力には間違いなくならないでしょうね)

そんな風に考えて、ひとまず超能力という単語からは思考を離すことにした。

(自分の足しになるかどうか、それだけを考えて行動しないと。余計な寄り道は良くないわ。自分の興味に振り回されないように)

血圧を計られながら、ほむらは今一度決意を固めた。



8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/01(火) 02:02:41.00 ID:vO9TZd7T0
原作の垣根の顛末が悲惨すぎて……
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/01(火) 11:51:07.01 ID:pybZJL7t0
期待
俺もオリジナルが好きだな、三期もくるし
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/01(火) 18:11:19.59 ID:NRv/knmj0



鹿目まどかは特にこれと言った取り柄のない普通の中学生である、と自分で思っている。

「おっきろーーーー!!!」

まだ幼稚園にも通えない幼い弟タツヤのモーニングコールなどではビクともしない母親に止めの一撃(布団剥がし)を見舞い、少女はいつも通り朝の支度をする。

1階に降りると、父知久が庭に出て家庭菜園の世話をしているようだった。

「おはようパパ」

「おはようまどか。今日はよく晴れたね」

「プチトマト摘んでるの?」

「うん、朝食のサラダに入れようと思ってね」

慣れた手つきでトマトを千切っていく知久。

父が作る朝食は、まどかにとって毎朝の楽しみの一つだった。

ほどなくして、重い足取りで母、詢子が瞼をこすりながら降りてきた。

「おはよう、コーヒーでいいかい?」

「うん、頼むわ」

テキパキと朝食の準備をする知久をよそに、詢子は置いてあった朝刊に手を伸ばした。

まどかは横目でそれを見ると、

「またこの前の昏倒事件のこと? 最近本当にそればっかりだね」

少しうんざりした様な感じでまどかは話しかける。

彼女が言っているのは9月30日に学園都市で起きた事件のことだ。

「まあ被害者の数が半端じゃないようだしなあ。特定の場所にいた人達が集中的にって訳じゃなくて、ほとんどの学区に跨がって一定の割合で被害が出てるってのも気味が悪いよな」

「うーん……、確かに屋内にいた人も被害に遭ってるのも変な話だよね」

まどかにとって、集団昏倒の原因で思い浮かぶものといえば神経性のガスや食中毒などだが、今回の場合そのどちらにしても説明がつかない。

この不思議な事件は学園都市外でも噂になり、様々な憶測が好き勝手に語られていた。

SNS上でも『特殊な電波に寄るもの』『学園都市を疎ましく思う秘密結社の大規模クーデター』『宇宙人の襲撃』など都市伝説のような話まで飛び交っているのをまどかは知っている。

「そもそも学園都市が発表してる情報が全て正しいとは限らないしな。恩恵を受けてるうちらが言うのも何だが、あそこは他より進んだ科学技術で他国と対等に渡り合えるまで成長した都市だ。ある程度情報規制はされてると考えるのが自然だろう」

まどかが住む見滝原市は、近年学園都市からの援助を受け急速に発展した街だった。

そのため、彼女の通う中学校をはじめ、公共施設の外観や設備も他の都市と比べて洗練され、どこか未来的なイメージを受ける。

地元の政治家の一部は最初「これは学園都市の実験だ」と反対していたが、いつの間にかそう言った意見も聞かなくなった。

住民にしてみれば、より快適に暮らせるようになるのだ。反対する理由はない。

きっとその政治家も、科学の恩恵による誘惑に負けたのだろう。

まどかがそんな事を思っていると、丁度知久がプレートを両手に持って運んできた。



11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/01(火) 18:12:38.60 ID:NRv/knmj0



「お待たせ。今日はさっき採れたトマトをサラダに、ホウレン草をオムレツに入れてみたんだ」

真っ白なプレートには、半切りにされたプチトマトとレタス、キュウリのサラダ。さっと湯通ししたホウレン草を混ぜ込んだフワフワのオムレツが綺麗に盛り付けられていた。

「うわぁ、おいしそう、いただきまーす!」

「トーストも焼けたよ」

「コーヒーのおかわりお願い」

「うん、了解」

オムレツをナイフで切り分け幸せそうに頬張るまどか。

知久はそんな娘の表情に柔和な笑みを浮かべながら詢子のカップにコーヒーを注ぐ。

「今日も遅くなるのかい?」

「うん。ちょっと最近立て込んでてな。気張り時なんだ」

「あんまり無理はしないようにね」

「うん、サンキュー」

鹿目家は妻詢子が働きに出て、夫知久は専業主夫として家族を支えている。

結婚当初は逆だったらしいが、効率重視の詢子の意見で今の形になったと、まどかは聞いている。



12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/01(火) 18:13:39.80 ID:NRv/knmj0



朝食を食べ終えると、洗面台の前で歯を磨きながら詢子と他愛もない母娘の会話をする。これもいつもの日課だった。

「でね、和子先生なんだけど今度は上手くいきそうなんだって」

「アイツいつもそう言って上手くいった試しがないからなぁ。もういい歳だし、そろそろ身を固めて欲しいんだけど」

彼女たちが話しているのはまどかのクラスの担任教師である早乙女和子のことだ。

彼女は詢子の旧友でもある。

「和子もそうだけどまどかはどうなんだ? 中学入って告白の1つはされたのか?」

「ええっ!? そんなことある訳ないよ! む、無理だよ私なんて……」

「そうか? もしかしたら隠れまどかファンがいるかも知れないぞ」

「そんなぁ、ないって……」

謙遜するまどかだが、周りのクラスメイトや友達がラブレターを貰っただの告白しただのされただの、そういった類の恋愛話を耳にすることはよくあった。

その度に、少し羨ましいと思ってしまうのも事実だ。

自分に自信がある訳ではないが、もしこれから色恋沙汰に全く無縁で学生生活を終えるというのもいくら何でも寂しすぎる。

詢子はまどかの横顔をチラリと見ると、何本か置かれたリボンの中から一番派手な赤いものを手に取った。

「よし、今日はこれにしな!」

「えー? 派手すぎない?」

「派手なくらいが丁度いいんだよ。アンタは自分からグイグイ行くタイプじゃないんだから、せめて見た目だけでも気を遣って周りに印象付けなきゃ」

「うーん……、そうなの、かなぁ?」

「そうなんだよ」

何の根拠があるのか知らないが、詢子は断言する。

「いいかまどか、恋愛はサッカーと同じだ。自分で立ち位置を考えて動かないといつまでたってもパスは回ってこない。じっとしてても打球が飛んでくる野球とは違う」

「な、何で球技で例えたの……?」

「分かりやすいだろ?」

正直微妙な例えだと思ったが、そんなことを口にするほど彼女は愚かではない。

本人が傑作だと思ったものに対しては、明確な反論がない限り取り敢えず同意しとくのが円滑な人間関係を築く秘訣なのだ。

詢子に言われた通り赤いリボンを身につけ、まどかは支度を終える。

時計を見れば、そろそろ家を出なければ友達と待ち合わせした時間に間に合わない。

「じゃあママ、私先に行くね」

「おう、行ってらっしゃい!」

「行ってらっしゃいまどか」

知久もキッチン朝食の片付けをしながら背中越しに声をかけた。

「行ってきまーす!」

ドアを開けて家を飛び出すと、スッキリとした秋晴れの空が一陣の風と共に出迎えてくれた。

まどかはスカートを押さえつつ、いつもの登校ルートをいつもと同じように足早に駆けていく。

これが、鹿目まどかにとって朝の日常だった。



13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/01(火) 23:01:53.66 ID:NRv/knmj0



美樹さやかと志筑仁美は姫名川沿いのランニングコースで鹿目まどかを待っていた。

別にまどかが遅刻している訳ではないが、生活習慣の違いか、自然と2人がまどかを待つ構図になっていることが多い。

「……ふぁ〜あ。あら、失礼」

さやかがボーっと川の流れを眺めていると隣にいた仁美が口元を押さえて涙目になっている。

あくびを噛み殺そうとしたが、声が出てしまったようだ。

「眠そうだね。昨日は日本舞踊だっけ」

「ええ。思いの外稽古が押してしまって、今日の授業の予習をしていたら深夜までかかってしまいましたわ」

仁美は裕福な家庭の箱入り娘であり、日本舞踊の他にもピアノや茶の湯など様々な習い事をしている。

もっとも、その大半は本人の希望ではなく、半ば両親からの強制らしいが。

「そんな状況でもちゃんと予習してくるあたりさすがは仁美だなあ。あたしなら誰かに聞けばいいやって思っちゃう」

私も本当はそうしたいのですけれど、と仁美は本音を漏らし、

「そうやって他の人に頼ってばかりいると、結局受験の時自分がしっぺ返しを食らうことになりますから」

「うへぇ……」

"受験"という単語が出た途端、さやかは露骨に嫌そうな顔をする。

「朝からテンション下がるようなこと言わないでよー。あー……、考えてみれば来年の今頃は受験に向けて皆ピリピリしてんだろうなあ」

彼女たちは現在中学2年生。あと半年も経たない内に3年生になる。

計画的な生徒ならもうそろそろ準備を始めているかもしれない。

「そうですわねぇ。そうなると、今みたいに登校前ゆっくりする時間も無くなるかも……」

「えー! あたしこうやって仁美と駄弁ってるの結構好きなんだけど。やだよ仁美ー、寂しいよー」

さやかはわざとらしく仁美に抱きつき、ゆらゆらと左右揺さぶる。

だが仁美にとっての受験が自分のそれとは意味が異なることは分かっている。

仁美とは小学校時代からの付き合いだが、彼女はその時から様々な習い事で忙しそうにしていた。

そういった事情や彼女の家柄を考えても、その辺の中途半端な高校への進学など許してくれないだろう。

有名なお嬢様学校か、難関大学への進学者を毎年多数輩出している進学校か。

お世辞にも勉強ができるとは言えないさやかには候補にすら挙げようと思わない学校に違いない。

別に学校が別になったからといって友達じゃなくなる訳ではないが、それでも今と同じようにとはいかない。

一緒にいる時間は、確実に激減する。

当然そういったことは口にも顔にも出さず、さやかはいつも通り明るく努める。

どうしようもないことは考えない。今を楽しく生きるのが彼女のスタンスだ。

「さ、さやかさん! どさくさに紛れて脇腹をつつくのはやめて下さい。ーーひうっ!」

「おやおや、今の声はなんですかな?」

しまった、という顔をする仁美。

こういう反応はさやかが一番喜ぶ類のものだ。

現に彼女の顔を見ると、ニヤニヤとガキ大将のような凶悪な笑みを浮かべている。

仁美は両脇を締めると、加虐心に目覚めた親友から逃げるべく、反対側から駆け足でこちらに向かってくるもう1人の親友に助けを求めることを決めたのだった。


14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/06(日) 15:00:03.11 ID:tVC08wRX0
「今日はみなさんに大事な話があります」

今朝のホームルームは、息巻く担任、早乙女和子の宣言で始まった。

「目玉焼きは半熟ですか? それとも固焼きですか? はい中沢くん!」

突然の指名を受けた男子生徒は、担任の謎の気迫に気圧されながら、どっちでもいいと思います、無難な答えを返す。

その通り! と和子は持っていた指示棒をへし折り、

「たかが玉子の焼き加減なんかで女の価値は決まりません! 女子の皆さんは、くれぐれも半熟じゃないと食べられないとかぬかす男とは交際しないように! そして男子の皆さんは、絶対に玉子の焼き加減に文句をつけるような大人にならないように!」

ベラベラと捲し立てる和子を見ながら、まどかは級友のさやかと顔を見合わせる。

「駄目だったかー」

「みたいだね」

どうやら、3ヶ月交際していた男性とは破局したようだ。

愚痴を吐き出し、スッキリした和子はゴホンと咳をして気を取り直すと言った。

「では、突然ですが転校生を紹介します。暁美さーん!」

一呼吸置いた後、うおおぉぉぉ! という男子の歓声と、何でこっちが後なんだよ、という冷静なツッコミが教室にこだました。

失礼します、と言って入ってきたのは長い黒髪の女の子だった。

(うわー、綺麗な子だなぁ……)

まどかは一目でそう思った。

モデルのようなスラッとした立ち振舞いに、切れ長の目。

まだ教室に入って教壇の上に立っただけなのに、その動作の一つ一つにどこか中学生離れした気品を感じさせる。

周りの生徒(特に男子)も同じ感想らしく、おおぅ……、と感嘆のような呻きがあちこちから聞こえた。

「暁美さんは、この秋ご両親の仕事の都合で、東京から見滝原に越してこられました。みなさん仲良くして下さいね」

「暁美ほむらです」

彼女は深々とお辞儀すると、簡単な自己紹介を始めた。

「まだ、この街について分からないことだらけなので、色々教えてもらえると助かります」

それと、と彼女は続け、

「趣味は特にありませんが、幼い頃から科学や超能力といった分野には興味がありました。この街は学園都市と提携しているそうなので、そういった話ができたらうれしいです」

彼女はそう締めくくって、もう一度頭を下げた。

パチパチパチ、とクラス中から歓迎の拍手が飛ぶ。

(へぇ、以外だなぁ)

とまどかは思った。

(見た目的には窓辺で本とか読んでる方が様になりそうだけど)

女子でそういったジャンルが好きと大っぴらに言うのは珍しいかもしれない。

そう思ってまどかは改めてほむらの顔を見る、と、

(ん……?)

ばっちりと目が合った。

たまたま目線が合ってしまっただけかと思ったが、ほむらは中々視線を外そうとしない。

じっ、とこちらを見つめている。

(え……? え?)

以前どこかで合っただろうか? 急いで記憶を辿ってみるが、思い当たる節はない。

(えっと……、なんなんだろう。ちょっと、怖いかも)

訳も分からず色々考えていると、いつの間にかほむらは用意された席に座っていた。

ちらり、と目線だけ動かして見ると、彼女は何でもなかったかのように荷物を取り出している。

自意識過剰かもしれないが、本当に過去に合っていて、自分だけ忘れているとすればとても失礼なことだ。

機会があれば、さりげなく聞いてみよう。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/06(日) 17:04:54.89 ID:tVC08wRX0
まあこんなところかしら、と暁美ほむらは呟く。

初登校を終えた夜、彼女はマンションの一室で、パソコンと向かい合っていた。

(今までとは勝手が違うけど、何とか上手くいきそうね)

殺風景な部屋だった。

それなりに広さはあるが、無駄なインテリアや小物などはほとんどない。

まるで、夜逃げの準備でもしている様だ。

(それにしても、疲れた……)

初日はやはりというべきか、質問攻めで休み時間は潰れた。

内容は、まあ前の学校のこととか、好きな芸能人だとか、彼氏はいるのかなどといったありきたりなものである。

女子がそういった質問をする理由は簡単だ。

見極めているのである。彼女が自分たちのグループに迎合するかどうかを。

概ね女子の友情は個人と個人で形成されるのではなく、グループとしての繋がりが多い。

なのでAとB、BとCは仲が良いがAとCは仲が悪いといった状況は起こりにくい。

それが学校といういくつものグループが同じ場所に介在するようなシチュエーションでは尚更だ。

特別どのグループに入りたいとも思わないほむらは、そういった質問には適当に返答し、遊びなどの誘いに対しては架空の用事をでっち上げて回避していた。

彼女には『目的』がある。

余計な事に時間を取られる訳にはいかないのだ。

でも、とほむらは思う。

(やはり自己紹介で学園都市の事を口にしたのは正解だったわね)

質問攻めが一段落した午後からは、毎年学園都市に見学に言っているという男子や、科学のテストでは毎回クラス1位だというサイエンティストな女子生徒も話しかけてきてくれた。

特に、見滝原は学園都市のおかげで発展した街ということもあって、そういった分野に詳しい生徒も多かった。

特に男子たちは、一見とっつきにくそうな女子転校生が科学や超能力といった共通の話題を持っている事が嬉しかったのだろう。

他クラスの友人も呼んで、実用されている兵器から都市伝説のような噂まで、色々な事を教えてくれた。

(……大覇星祭、一端覧祭。要するに体育祭と文化祭ね。樹刑図の設計者(ツリーダイアグラム)。謎の攻撃で破壊された高性能演算システムっと)

他にも時速7000キロで飛ぶ超音速旅客機、核爆発にも耐えられる窓のないビル、7人の超能力者(LEVEL-5)など、にわかには信じがたい単語をメモアプリに書き込み、整理していく。

そうしながら、彼女はかすかな笑みを浮かべていた。

これが嘘か誠かは分からない。

しかし本当なら、ほむらにとっては僥倖というしかない。

(使える者は全て使う)

彼女は考える。

(今まで色んな手段を試した。でも駄目だった。少なくとも『私たち』だけじゃ、ワルプルギスは倒せなかった)

これが降って湧いた幸運とは限らない。

この街の様子も今までとは違うし、そもそも学園都市の先進兵器とやらが自分に扱えるかは分からないのだ。

だから最初に聞いた時はそれほど期待していなかった。

効果があるか分からないものに命を預けるほどほむらはバカではない。

しかし、病院で色んな患者から話を聞き、ネットで調べ、クラスメイトに教えてもらい、少しずつ見方が変わって来ていた。

(でも学園都市の科学技術があれば、もしかしたら……)

気づけば日付が変わっていた。

予想以上に考え込んでいたらしい。

ほむらはテキストを保存すると、明日の準備をして寝る事にした。

明日は明日でやる事があるのだ。

(さて、今まで通りなら明日はまどかに接触して放課後にーー)

ぶつぶつと記憶を辿りながら呟き、彼女は床についた。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/06(日) 22:59:44.44 ID:tVC08wRX0



昨日は常に人だかりができていて話しかけられなかったし、今日頃合いを見て聞いてみよう。

鹿目まどかがそんな事を自分に言い聞かせていた3限目終わりの休み時間。

その機会は突然やって来た。

「鹿目さん? ちょっといいかしら」 

「うひぁぅっ!?」

突然背後から声をかけられて、まどかは何とも間抜けな声を上げる。

振り返ると件の転校生ほむらは相変わらずなクールな表情だったが、まどかのあまりの反応に若干動揺したらしく、少し身体が後ろにのけ反っている。

彼女は気を取り直して言う。

「……鹿目さん。あなた保健委員よね」

「う、うん……。そうだけど」

「私、ちょっと頭が痛くて。保健室、案内してもらえるかしら?」

そう言って、ほむらは教室から出ていく。

「……、」

「……、」

スタスタと歩き続けるほむら。

案内してと言ったのに、なぜ勝手に行こうとするのか。

困惑するまどかだが、ほむらはそんな事を知ってか知らずか、後ろを振り向こうとすらしない。

これでは自分がいなくなったとしても問題ないのではないか、と彼女は思う。

「……あ、あのー。暁美、さん?」

たまらずまどかは声をかける。

それに対して、ほむらは振り向きさえせず、歩きながら返した。

「何かしら?」

「えーと、もしかして……、保健室の場所知ってたりするのかなぁって……」

「いいえ、知らないわ」

そうは言うが、彼女が歩いているのは保健室までの最短ルートだ。

間違った方向に行ってれば、無理矢理止めて案内することもできるが、正しい方へ行かれてしまってはただついていくしかない。

ほむらのそっけない雰囲気に、まどかは問い詰めるのを諦め、話題を変えることにした。

「ね、ねぇ暁美さん。もし、勘違いだったら悪いんだけどさ」

控えめな性格の彼女らしく、断りを入れてから話し始める。

「……昨日、自己紹介の時に、不自然に目が合った気がしたんだけど……。もしかして、前に会ったことが、あったり?」

彼女がそう聞いた瞬間、今まで顔さえ向けてくれなかったほむらの足が、ピタリと止まった。

いきなり止まると思っていなかったまどかは、思わず背中にぶつかりそうになる。

「え? え」

何か気に障るような事を言っただろうか? 慌てそうになるまどかに、背中を見せていたほむらがゆっくりと振り返る。

「鹿目まどか。自分や家族、友達の人生が尊いと、思う? 大事にしてる?」

「え、ええ……?」


17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/06(日) 23:01:51.64 ID:tVC08wRX0


返ってきた言葉は予想外のものだった。

なぜ突然哲学的な話なのか? 質問の意図がよく分からず、まどかは思わずたじろぐ。

しかし、ほむらの目はいたって真剣だ。

別にからかっている様子は微塵もなく、こちらが返答するまで終わらないという強い意思が伝わってくる。

「……えーと、私は家族も友達も、みんな大事だし、その……、大好きだよ」

場当たり的な答えとなったが、嘘はついていない。

これはまぎれもない彼女の本音だ。

「本当に?」

「ほ、本当だよ!」

そう、とほむらは再びクールな声色に戻り、

「なら、くれぐれも自分以外の何かになろうなんて思わないことね。あなたは鹿目まどかのままでいればいい」

そう言い残してほむらは去っていった。

「……何だったんだろう」

数十秒ほど、まどかはその場に立ち尽くしていた。

彼女の頭の中には、様々な感情がグルグルと混ざりあって、自分でも分からなくなっている。

暁美ほむら。

よく分からないが彼女がまどかに対し、何か因縁のようなものを抱えているようだ。

しかし、まどかには心当たりがまるでないのだ。

(う、うーん……)

モヤモヤした気分のまま、彼女は教室に戻る。

彼女の表情を見た美樹さやかが心配して話しかけてくれたところで、ほむらが保健室に行きたがっていたことを思い出した。

結局1人で行けたのだろうか?


18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/07(月) 00:04:11.03 ID:OZ3gjuNK0



放課後、まどかとさやかは通学路を歩いていた。

といっても彼女たちの下校ルートとは違う。

二人は街へ遊びに行く道中だ。

ちなみに、仁美は今日も習い事があるようで名残惜しそうに途中で別れた。

「にしても転校生にはビックリだよね。クール系優等生かと思ったら、まさかのサイコなサイエンティスト! 今日も男子たちと学園都市についてトークしてたし」

「ほんとにね。一体なんなんだろう。本当に心当たりなくて……」

美人転校生の以外すぎる一面を知ったさやかは嬉しそうにしているが、まどかにとってはたまったものではない。

あんな衝撃的な事を言われては、これからどう接していけばいいのかすら分からない。

「まあ気にしない気にしない! もし転校生が何かしてきたら、あたしが守ってあげるから!」

「別に意地悪しようって感じではないんだけど……。うーん」

頭を抱えるまどかと、その背中をバンバンと笑顔で叩くさやか。

そうこうしていると、大型のショッピングモールに到着した。

彼女たちは、その中にある音楽ショップへと向かう。

「じゃああたし、クラシックのコーナー見てくるから。適当に潰しといて」

「うん。上条くんのだよね?」

「あ、アハハ……」

バツが悪そうに笑うさやか。

彼女たちがここに来たのは、さやかが幼なじみに渡すCDを探すためだった。

彼女の幼なじみ上条恭介は、将来を嘱望されたバイオリニストだったが、事故で左手が動かなくなり、最近は塞ぎこんでいると聞いている。

さやかは入院中の幼なじみに元気になって欲しくて、彼の好きなクラシックCDをプレゼントしようというのだ。

恭介とさやかの関係は、まどかもよく知っている。

上手くいって欲しいと、彼女は心から応援していた。



19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/07(月) 00:05:28.86 ID:OZ3gjuNK0



(さて、と)

大事な幼なじみにあげるプレゼント。きっとさやかは吟味するだろうから時間がかかるに違いない。

まどかは適当に試曲でもして暇を潰そうと、とあるブースの一角へと向かった。

彼女が向かったのは演歌のブース。

周りは年輩の男性ばかりだが、彼女は気にせずヘッドホンを手に取ると、嬉しそうに曲を再生していく。

こんな所に女子中学生がいるという周りの不思議そうな視線にも気づかず、3曲目を再生した時だった。

「(助けて……)」

「ん?」

まどかはヘッドホンを外す。

それはかすかな声だった。

聞き間違いだろうか?

「……、」

まどかはもう一度ヘッドホンを耳にかけようとする、と、

「(助けて……! まどか!)」

「!」

今度は確実に聞こえた。

まどかは首を振って周りを見渡す。

特におかしな所はない。

だが、

「(助けて……!)」

声は断続して発せられていた。

まどかは慌ててさやかを呼びにいく。

「さやかちゃん! 誰かが私に助けを求めてる!」

「へ? は? な、何言ってんのよアンタ」

さやかは何の冗談かと思ったが、親友の鬼気迫る表情を見て思わず黙りこむ。

まどかは集中して耳を澄ませる。

音は一定の方角から来ていることがすぐに分かった。

「こっち! 来てさやかちゃん!」

「え? ちょ、まどか!?」

音源を探りながら早足で歩くまどか、やがて二人は従業員通路の扉の前に辿り着いた。

まどかは少し逡巡したがすぐにさやかに向き直ると真剣な表情で言った。

「この奥から聞こえる! 行こう! さやかちゃん!」

「え!? ここ一般人は立ち入り禁止でしょ」

「だ、だって助けを求める声はこの奥から聞こえるもん! 私の名前を呼んでる!!」

まどかはそう言うと、さやかの返事も待たずに扉を開けて先に行ってしまう。

さやかはどうするか迷ったが頭をかきむしると、

「あーもう! お店の人に怒られたらアンタが謝りなさいよ!」

意を決したように後を駆けていった。


20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/07(月) 01:53:48.47 ID:OZ3gjuNK0



薄暗い従業員通路の先、荷物が大量に積まれたバックヤード。

そこでさやかが見たものは、血まみれの白い猫のような生き物を抱えたまどかと、黒を基調とした中世ヨーロッパ風の衣装に身を包んだ転校生暁美ほむらだった。

彼女の手には、黒光りする拳銃が握られている。

(な、何!? どうなってるのこれ!)

訳も分からず狼狽していると、まどかが正面をキッ、と睨んで叫んだ。

「どうしてこんな事するの! ひどいよ!」

対してほむらは一切顔色を変えない。

彼女は静かに言う。

「いいからそいつを渡しなさい。そいつは私たちの敵なの」

「何言ってるの!? この子ずっと私に助けを求めてたんだよ? 酷いことしないで!」

白い生き物を庇うようにギュッ、と抱き締めたまどかに対し、ほむらは無言で応じた。

彼女は持っていた拳銃をゆっくりと構える。

まどかの腕の中にいるそれを狙って、

「クソッ!」

さやかは反射的に飛び出した。

彼女は側に置いてあった消火器を掴むと、ほむらに向かって声を上げる。

「こっちだ転校生!」

ほむらの目線がこちらを向いた。

さやかはホースを構えると、躊躇なくレバーを引く。

一瞬にして視界が真っ白に遮られた。

彼女は構わず、巨大な段ボールがいくつも乗せられた台車を横倒しにした。

ガッシャアアアアン!!! という轟音が響く。

ぶちまけられた大量の段ボールやその中身が、ほむらとの間を遮る一時的な壁となる。

「まどか、行くよ!」

「さやかちゃん!?」

驚愕の表情をしている親友の手を無理矢理引っ張り、さやかは出口へと走り出す。


21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/07(月) 01:55:39.01 ID:OZ3gjuNK0



「なんなのあれ! なんでアイツがここにいるの!? 何あの格好!? てかその動物何!!?」

白煙で覆われた通路を目を凝らして走り抜けながらさやかは頭に浮かぶ事をそのまま捲し立てる。

「わっかんないよ!」

血にまみれグッタリした白い生き物を抱えて、まどかは反射的に返した。

「声を辿っていったらこの子が怪我してて、暁美さんが変な格好で拳銃向けてて……!」

「何!? アイツイカれたシリアルキラーでもあるの!? どんだけ個性の塊なのよ!」

視界が晴れると、すぐに従業員通路から外に出る扉が見えた。

さやかは勢いよく扉を開けて飛び出す。

そこは買い物客が行き交うショッピングモールなどではなかった。

「なによこれ……、」

辺りは、見たこともないサイケデリックな空間へと変貌していた。

近くにあったはずのブティックも、気づけば彼女たちが今出てきた扉すら見当たらない。

「さ、さやかちゃん……」

まどかを見ると、白い生き物を力強く抱えながらも、その顔は恐怖に歪んでいる。

「ま、まどか……、」

さやかはまどかに近寄ると、ギュッとその肩を抱く。

ヤバい、と彼女は思う。

何がどうなっているのかは分からないが、ここは危険だと本能が告げている。

「に、逃げようよさやかちゃん!」

「逃げるったってどっちに……、うわあっ!!」

気づけば人型の不気味な人形が、何体もこちらに向かってきていた。

一方からだけではない。

右からも、左からも、

ケラケラと甲高い声で鳴きながら、あちこちから二人に近づいてくる。

「ひ、ひぃぃぃ!!」

さやかの喉が干上がる。

消火器はもう捨ててしまった。武器はない。

ここまでか。

思わず目を閉じまどかを強く抱き締めた時だった。



22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/07(月) 01:56:28.13 ID:OZ3gjuNK0



「間一髪ね」

どこからか響いた声。

ワンテンポ遅れてゴバッッッ!!! という爆音がこだました。

「う、うわっ!」

続いて訪れた爆風に二人は抱き合って目を閉じる。

風が止んで目を開けると、自分たちの周りにいた不気味な存在は跡形もなく消えている。

「な、何がーー」

「ちょっと待っててね」

二人は思わず声の方へ振り向く。

そこにはマスケット銃を抱えた一人の少女が立っていた。

先ほどのほむらとどこか似たような雰囲気を感じさせる衣装を見に纏った少女は、二人を見て軽くウィンクすると、

「さっさと残りも片付けてしまうわよ!」

彼女はそう叫ぶと空高く飛び上がった。

彼女の両手には巨大な大砲が抱えられている。

「ティロ・フィナーレ‼!!」

ゴオオオオオオン!!!! という爆音と共に、砲弾が発射された。

青白い尾を引いて着弾した一撃は、その地点を中心にドーム状の衝撃波を撒き散らした。

まだ何十体も残っていた人形のような化け物が、砂粒のように吹き飛ばされていく。

「す、すごい……!」

自分が置かれている状況も忘れて、まどかが感嘆の声を上げる。

「これは、一体ーー」

「彼女は魔法少女」

真下から聞こえた声に二人は顔を向ける。

声の主は先ほどまでまどかに抱えられていた白い生き物だった。

彼は無機質な瞳で砲撃の残滓を見つめながら言った。

「文字通り、魔女を狩る者さ」

23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/07(月) 03:14:13.80 ID:JyXfJy5m0
無駄に書き込みすぎ……
アニメのシーンを冗長に説明してるだけ。もうちょっと絞った方がいい。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 08:16:43.62 ID:tVzuhkr9o
面白いよ
待ってる
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/13(日) 22:17:32.42 ID:hYnxfslP0



「間に合わなかった、か……」

苦虫を噛み潰したような顔でほむらは呟く。

彼女の目線の先にいるのは3人の少女、それとーー、

「あら、無事だったのね」

最初に気づいたのはほむらと同じ特殊なユニフォームを着た金髪の少女だった。

続いて他の2人もほむらの方へ目を向ける。

「転校生。あんた……!」

「あ、暁美さん! これは一体ーー」

少女達の表情は険しい。

好意的な色は微塵も感じられないが、それは当然だろう。

ほむら自身もそんな事は分かりきっているのか、全く表情を変えずにただ一点を見つめている。

まどかの腕の中にいる、白い小さな生き物を。

「使いなさい。魔翌力を消費したでしょ?」

金髪の少女がほむらに向かって何かを放り投げた。

小さな宝石のようなそれを、しかしほむらはノータイムで投げ返す。

「あなたの得物よ。気を遣わなくてもいいわ」

「そう」

金髪の少女も大して気に留めなかった。

彼女はほむらの目線の先を一瞥すると、

「キュゥべえを狙ってたみたいだけど、どういうつもりかしら?」

彼女の声色は冷たい。

「説明する義理はないわ」

「そう。じゃあ理由もなく"友達"を襲うような人に私も自己紹介する気にはなれないわね。早く使い魔の残党を追いかけたら?」

「……、」

「それともこの子達に何か用かしら? どうやら知り合いみたいだけど」

そう言って、少女は2人に目をやる。

「え、えっと……、」

「コイツはあたしたちのクラスメイトで、転校してきたばっかりなんです」

さやかはほむらを睨みつけると、

「転校生。アンタもその、魔法少女ってやつなの? よく分かんないけど何でこの白いの襲ったんだよ。別にコイツは敵じゃないんでしょ」

「……、」

ほむらは何も答えない。

ただじっとまどかの腕の中を見つめている。

その様子を見ていた金髪の少女は片手でさやかに下がるよう促すとほむらに向き直った。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/13(日) 22:18:37.22 ID:hYnxfslP0
「ねぇ、お互い余計な争いごととは無縁でいたいと思わない?」

「っ、あなたは何も分かってないーー!」

ほむらは何かを言おうとした。だが、

「飲み込みが悪いのね」

厳しい口調で、少女が口を挟む。

「見逃してあげるって言ってるの。今の状況理解してるの? あなたも、この子達に嫌われたくはないんでしょ?」

「ッ……!」

口惜しそうに、ほむらが後ずさりする。

まだ目的は達成できていないがあまりにも状況が悪すぎる。

致し方ない。

そう思って、ほむらは背を向けた。

「ちょっと転校生!? まだ何も聞いてないんだけど! 説明しなさいよ! この白いのの事とか、さっきの化物のこととか!」

「それは彼女たちから聞くといいわ」

そう言って、彼女は薄暗い通路へ消えていった。


27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/13(日) 22:19:56.07 ID:hYnxfslP0



「無事でよかったわ」

暁美ほむらが去った後、金髪の少女は安心したように笑顔を浮かべた。

「自己紹介しなくちゃね。私は巴マミ。見滝原中学校の3年生よ」

「え!? 同じ学校!?」

「こ、これで中学生なんてーー、凄い」

何だか2人の視線が首の下に注がれているような気がするが、恐らく気のせいだろう。

マミそう思い、次にまどかの腕の中にすっぽり収まっている小さな生き物の頭を撫でながら言う。

「そして、この子はキュゥべえ。私の大切な友達よ」

紹介を受けたキュゥべえは、まどかの腕の中からピョンと飛び出し、軽く頭を下げる。

「さっきは危ないところを助けてくれてありがとう、まどか、さやか」

「え? 何であたしたちの名前をーー」

「あなた達に才能があるからよ」

「さ、才能……?」

突然の事に、まどかはキョトンとした顔をする。

さやかも意味が分からないといった顔で尋ねる。

「才能って、何のですか?」

「もちろん、魔法少女のさ!」

代わりに答えたのはキュゥべえだった。

続いて、マミがそれを補足する。

「そもそも、普通の人にはキュゥべえの姿は見えないし、声も聞こえない。この子が見えているという事は、あなた達に魔法少女としての才能がある証なのよ」

「さっきの転校生も、そうだっていうのーー?」

「そうよ。あの子もキュゥべえと契約した魔法少女。なのに何でこの子を狙うのか、理由は分からないけど……」

「契約……、」

「ボクたちは何でも一つ願い事を叶える事を条件に、魔法少女になって魔女を退治してもらっているんだ」

「な、何でもーー!?」

魅力的すぎるキュゥべえの言葉にさやかが食いつく。

キュゥべえは、うん、と肯定するとこう続けた。

「だからさまどか、さやか。ボクと契約して魔法少女になってよ!」


28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/14(月) 00:04:40.39 ID:9IwGh1rH0
        ☆



「0930事件、ねぇ……」

SNSのタイムラインに流れてくるワードを拾いながら、誉望万化はポツリと呟いた。

ここは学園都市にある高層ビルの中。

2つの部屋をぶち抜いたような広大な空間には不自然なほど物が少ない。

殺風景な部屋に無造作に置かれたソファに背をもたれながら、彼はタブレットを操作している。

「はぁ……、もう10月だってのに何なのかしらこの暑さは」

すると、その台詞に反して非常に涼しそうな格好をした少女が入ってきた。

ハイヒールに真っ赤なドレスを着た彼女は、街頭で貰ったのだろうか、その格好に似合わず居酒屋のロゴが入ったうちわで顔を扇いでいる。

「……誉望さん、誉望さん。私、友達とショッピングする夢が叶いましたぁ!」

続いてニヘラァ……、だらしない笑顔を浮かべて入ってきたのは髪をツーサイドアップにまとめた少女だ。

肩にかけられたスクールバックには『弓箭猟虎』と書かれたネームシールがある。

これで『ゆみやらっこ』と読む。

「いやショッピングって……、ただコンビニ行ってただけだろ」

「しかも友達じゃないしね」

ドレスの少女がうちわの柄を向けながらツッコミを入れる。

ひ、酷い! と喚く少女を無視して誉望はビニール袋からペットボトルの炭酸飲料を取り出す。

対してドレスの少女はカップのアイスコーヒーをストローで啜りながら、

「何見てたの」

「ん? いつも通りリアルタイムの情報を漁ってただけだよ」

「はぁ、今なんてどこ見たって0930事件の話題で持ちきりでしょうに」

「ご名答」

誉望は強めの炭酸で喉と胃を潤しながら、

「物的被害は少なかったから実感が湧きにくい部分はあるんだろうけど、それを抜きにしても学園都市に衝撃を与えるには十分だ」

「むしろ目に見える被害が少ないからこそ、分からない部分を憶測で埋めようとして、確証の無い噂が飛び交う原因になっているんでしょうね」

「だろうな」

誉望はドレスの少女の言葉に頷く。

学園都市は9月の終わりに外部からの大規模攻撃を受け、パニックに陥った。

しかし、攻撃といっても街がめちゃくちゃに破壊された訳ではなく、大量の死体がそこら中に転がったという訳でもない。

ただ音もなく、学園都市内のあちこちで謎の集団昏倒事件が起きただけだ。

そして彼らは、全員もう回復している。

起こった日付から『0930事件』と呼ばれるこの出来事は、学園都市ならず、今や日本中でトップニュースになっていた。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/14(月) 00:05:36.86 ID:9IwGh1rH0
「でも不思議ですよね。原理も何も分からないのに何で外部の攻撃だって決めつけるのか」

そう言って、パックのオレンジジュースを飲みながら弓箭猟虎はソファの背もたれに座った。

「統括理事会がそう発表してるからな」

「でもそうなると、学園都市の科学技術を持ってしても解明できない技術を持った集団がいるという事になるわね」

ドレスの少女の言葉に3人は一斉に黙る。

結局今世間を騒がせている理由はそれだった。

なぜ科学の最先端を行く学園都市が原因を把握できていないのか。

学園都市を襲った未知の科学技術とはーー?

そこに天使だの変な格好の女だの黒い翼だのといった関連性があるかどうかも分からない都市伝説の用な噂話が絡んで、各々が勝手なストーリーを作り出していた。

「何だか、SF小説のあらすじ読んでるみたい」

誉望のタブレットを勝手にスライドしながらドレスの少女は溜め息をつく。

「まぁ、確かにこの中のほとんどは読む価値もない書き込みなんだろうな」

でも、と誉望は続けて、

「こういったある種の話題で持ちきりの時こそ、本当の情報をカモフラージュしやすかったりするんだよ」

傍らの少女2人が、ん? という表情をする。

補足を求められていると思った誉望はタブレットの画面を2人に見えるようにして、

「例えば、こんな書き込みとかな」

「『見滝原市を中心に、最近謎の失踪事件多発……?』」



        ☆
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/14(月) 16:10:55.85 ID:iX96PiSP0
ていとくん原作では糞みたな扱いだからSSでは救われておくれやす
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/14(月) 22:32:21.70 ID:7VpgtQsZo
いまだにていとくんが影も形もないことに戦慄を覚える
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 15:54:45.57 ID:6D0BRPE50
このまま全員の心理描写を書き続けると、ワルプル戦は2030年頃になりそう
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/20(日) 00:55:38.40 ID:g+gQ75yp0



「何それ?」

タブレットの書き込みを訝しげに見つめながら、ドレスの少女は半ば呆れたように呟いた。

「今回の依頼」

「は?」

「見滝原やその周囲で怪死や行方不明になる人が多発してるのは事実なんスよ。それを調査しろってさ」

「はあ……。何で私たちが……?」

「確か、見滝原って学園都市と提携して急発展してるとこですよね」

口元に指を当てて考えるようにしながら弓箭猟虎が言う。

「でもそんなのどこででもあり得る話ですし、そもそも県警の管轄なのでは? 私たちの出る幕ではないと思うんですけど……」

彼女が言ってる事はもっともだった。

いくら繋がりがあろうと、街中で起きる出来事全てに干渉していてはきりがない。

学園都市は(体面上は)あくまで一自治体という扱いであり、他の自治体を調査する権限などない。

だが、

「そりゃあ地方の一般市民が多少どうなろうが学園都市は歯牙にもかけないだろうさ」

誉望は何かを確信しているように言う。

「でも忘れてないスか? 見滝原は事実上学園都市の庇護の下成長を遂げた街だ。当然あの統括理事会が博愛精神に満ちた慈善事業としてそんなことする訳ない。見返りはきっちり貰ってる」

「まあ確かにあの街には学園都市の出先機関がたくさんありますしーー」

と、そこまで言ったところで猟虎がハッ、と何かに気づいたような表情をする。


34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/20(日) 00:56:30.83 ID:g+gQ75yp0



一瞬の沈黙の後、ドレスの少女がなるほどね、と静かに呟いた。

「研究員がやられたのね」

「それも1人や2人じゃない。不思議っスよね? いくら外部とはいえ、一応学園都市の研究機関だ。セキュリティに抜かりはなかったはずなのに」

学園都市が派遣した研究員。

それはもちろん大学を出たばかりの若手研修生などではない。

情報漏洩を防ぐため、選ばれた精鋭にそれをさらに監視する何重ものシステム。

世間一般には発表されていないが、当然最新鋭の技術を盗もうとするよからぬ輩の襲撃も想定に入れて、それなりの武装も常備されているはずだった。

その中で起こった、集団失踪事件。

施設が荒らされた形跡もなく、見事に人影だけが切り取られたように消えていたという。

「何人かが結託して逃げ出したとかは……、科学技術を外部に売るために」

「学園都市から外部に出る時は、ミジンコサイズのナノデバイスを血管に注入されるわ。どこへ逃げたってGPSで丸わかりよ」

「じゃあ」

「ま、そういうことだよ」

タブレットをカバンにしまい、誉望は手をヒラヒラと振りながら言う。

「半端な部隊を送り込んでも返り討ちにされると踏んだんだろう。それで俺たちに白羽の矢が立ったってこと」

「0930事件に続いてのこれ。統括理事会はある程度目星を付けてるのかしら」

「うーん……。でもそうなるとかなり危なくないですか? 相手は短時間で都市機能を麻痺させて研究員を痕跡すら残さず暗[ピーーー]るほどの手練れなんですよね」

「この2つの犯人が同じかは分からないけど、まあ危険なのは事実だな」

そこまで言って、誉望はハアと溜め息をついた。

他の2人もそうだが、話の内容の割にはどこか口調が軽い。

まるで、強力な後ろ楯により自分たちが犠牲になることは絶対にないとでも言うかのように。

「ま、ただ俺たちがここであーだこーだ言ってもしょうがないスよ。決めるのはあの人だし」

「そうね。彼も色々と"準備"をしてるみたいだから、恐らく断るんじゃない?」

誉望も同意見だった。

0930事件以来、学園都市の防衛網は弱点が露呈した形になってしまっている。

その隙をついて、いくつかの暗部組織が人目につかないところで様々な企てをしていた。

そして彼らもその中の一つであり、とある目的の為に着々と準備を進めている。

だからこんな依頼受けられるはずがない。

そう思っていたからこそ、誉望は楽観的に考えていたのだがーー。

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/20(日) 00:57:49.91 ID:g+gQ75yp0
        ☆



「おう、いいんじゃねえの?」

「はぇ?」

予想外の好反応に、誉望万化はキョトンとした顔をする。

そこにいたのは背の高いガラの悪そうな少年だった。

少年の名は『垣根帝督』。

彼ら『スクール』をまとめるリーダーである。

驚いたような表情の誉望に彼は言う。

「何か問題でもあるのか? 統括理事会経由で回ってきた正式な"仕事"なんだろ? 直轄の組織である俺たちがそれを受けるのがそんなに不思議か?」

垣根の言葉に、誉望はやや困惑しながらも首を横に振る。

「にしても前の騒動に続き今度は"外"ときたか。アレイスターのクソ野郎はどこまで把握してんのか。案外、ビルの中では顔面蒼白にして焦りまくってたりな」

詳細が記された電子メールを眺めながら、彼は気軽な調子で言う。

ビルというのは学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーが鎮座する漆黒のビルの事だ。

入り口どころか窓すらなく、外から中の様子を伺い知ることはできない。

「本気?」

頬杖をつきながらドレスの少女は訝しげに目を細める。

「『ピンセット』の方は諦めるの? その為に色々準備してきたんでしょ?」

「別に諦めた訳じゃないさ。ただこっちの依頼に底知れぬ可能性を感じただけだ」

「?」

何を言いたいのか分からないといった様子の少女。

彼女は『心理定規(メジャーハート)』という精神干渉系の能力者だが、あくまで他者と自分との"心の距離"を操作するものなので、相手の心の内は読めない。

他の2人も同様の反応で、それを見た垣根は面倒臭そうに溜め息をついた。

「察しが悪いなオマエら。いいかよく考えろ。俺たちは今まで何に向けて準備してきたんだ? 一体誰を相手にしようとしてる?」

「何って、そりゃあ……」

3人は顔を見合わせる。

だが誰も答えを言おうとはしない。

いまいち垣根の意図が掴めていないようだ。

「まだ分かんねえのかよ……」

彼は半ばあきれたように、

「俺たちはアレイスターを出し抜こうとしてんだぞ。『ピンセット』云々もあくまでその為の手段だ。それ自体が目的じゃねえ。履き違えんなよ」

学園都市に対するクーデター。

そんな大層な計画を彼は本気で実行しようとしていた。

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/20(日) 00:59:04.99 ID:g+gQ75yp0



「何もわざわざ相手の得意分野で勝負してやる必要はねえ。『土俵外』に引きずり降ろせるならそれに越したことはないと思わないか?」

得意分野。

学園都市の統括理事長であるアレイスターにとってのそれは、まさしく科学や超能力そのものだろう。

ならその範囲外とは、

「……垣根さん。それってもしかして今ネット上で話題になってる『超能力以外の異能』って奴っスか?」

それは半ば都市伝説のような噂だった。

9月30日に学園都市の襲った謎の現象。

学園都市の科学力を持ってしても解明できないのならもうそれは科学ではない何か別の未知の力なのではないのかという。

「別におかしな事はねえだろ」

しかし、垣根は至極真っ当な顔で言う。

「この街で実用化されてるのが量子論に基づいた能力ってだけで"その他"がないとは限らねえ。まだこの世界には俺たちの知らねえ法則が眠ってるかもしれねえぞ?」

「な、何だか変に夢のある話ですね」

おずおずと弓箭猟虎が発言する。

「『超能力者(Level5)』のあなたが言うと何だか凄く違和感があるけどね」

「じゃあ垣根さんはそれを見つけて自分の糧にしようと?」

「対価としては悪くねえ」

あくまで可能性の話だが。と垣根は前置きした上で、

「もしこの一連の事件が本当に学園都市外の能力に依るものだとしたら、ソイツをモノに出来ればアレイスターに対する有効打になり得る。正直、まだまだ手札は足りねえ。かき集められるだけ集めといた方がいい」

「……そう、分かったわ」

垣根の言葉に、あっさりと心理定規は同意した。

と言っても『スクール』では彼がリーダーであり、彼の意思がグループ全体の意思である。

垣根が一度言い出した事を引っ込めるような性格でないのを彼女も知っているからなのだろう。


37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/20(日) 01:01:10.48 ID:g+gQ75yp0



「もし見当違いだったらどうするの?」

「そん時は適当な理由でっち上げて引き上げるさ。ボランティアに付き合ってる暇はねえしな」

「はあ……、初めから仕事をこなす気はないのね」

気だるそうに息を吐く心理定規。

その横で弓箭猟虎は何故かソワソワしていた。

「あの……、あの……!」

「ん? どうした弓箭?」

不思議な顔で誉望が声をかける。

当の本人は、まるで新作のゲームを待ちわびる子供のような表情で、

「これって……、初の"外"での任務。当然泊まり掛けになるんですよね?」

「んー、そりゃそうだろ。さすがに見滝原まで日帰りはキツいと思うぞ」

いつ終わるかも未定だしな、と誉望は言う。

「てことはてことは……! これって……! 皆で……! お泊まりって事ですよね!? わ、私今まで友達と泊まり旅行とかしたことないんです……! わー、色々準備しないと! ト、トランプとか持って行っていいですか!?」

「いや、旅行じゃないし。てか泊まり初めてって? 修学旅行とか無かったのか?」

「休みました。ボッチが行っても楽しくないので」

「何て悲しい理由……」

しみじみとツッコミを入れる誉望。

そんな2人のやり取りを見ていた垣根は面倒臭そうな顔をしていた。

彼は言う。

「盛り上がってるところ悪いが行くのは俺と誉望だけだぞ」

「へ!?」

誉望と猟虎、2人から間抜けな声が出た。

心理定規は、特に反応もなくじっと垣根の方を見ている。

「オマエらよく考えろ。全員で"外"に出て、もし仕事が長引いたら誰が『ピンセット』回収するんだ?」

「あら、それはもう諦めたんじゃなかったの?」

「諦めてはいないさ。ただ魅力的な仕事が同時に舞い込んだからそっちにも戦力割くってだけだ」

ええー! と弓箭猟虎が悲痛な声を出す。

「せっかく……! せっかく夢が叶ったと思ったのに」

ううぅ、と露骨にテンションを下げる猟虎。


38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/20(日) 01:01:59.07 ID:g+gQ75yp0



そんな彼女を気にも留めず、垣根は淡々と役割分担を言い渡す。

「俺と誉望は見滝原で研究施設中心に調査をする。その間、オマエら2人はトラブルが起きた時に対処できるよう学園都市で待機しとけ」

彼は続けて、

「もし実験予定日までに俺たちが戻れそうも無い時は下部組織の連中と協力して『ピンセット』を奪え。いいか?」

ふぁい……、と猟虎から気の抜けた返事が聞こえた。

他の2人も異存はないようなので、決まりだな。と彼は言って電子メールを返送する。

そうしながら垣根は薄く笑みを浮かべていた。

彼はこれからの予定に希望を馳せる。

学園都市製ではない未知の能力。

ネット上では都市伝説と同列に扱われるようなこの話題も、彼はそれなりに信用を寄せていた。

彼らは学園都市のカリキュラムを受けて発現した能力を扱うが、その中にもあるのだ。

どれだけ能力を解析しても、説明のつかない空白の部分が。

そのわずかな不明点をノイズとして切り捨ててしまう学者もいるが、垣根はそこにこそ能力運用の真髄があるのではないかと考えている。

彼の扱う超能力『未元物質(ダークマター)』。

垣根自身、この能力を隅から隅まで把握しているとは言い難かった。

能力の運用方法は分かるが、それを構成している理論の輪は完全に閉じておらず、一部異物のようなものが混じっている。

それを解き明かした時こそ、新たな制御領域の拡大(クリアランス)を取得し、完全に能力を支配下に置けると彼は信じていた。

「しっかし今回は、本当に棚からぼた餅になるかもなあ」

「……?」

何でもねえよ、と垣根はぶっきらぼうに言う。

あくまで可能性。

だが、もし今回の見滝原の遠征で未知の法則を発見できれば。

それを、上手く取り入れられれば。

"外"から能力を見直す事で、『未元物質』に新しいインスピレーションを付加する事ができれば。

彼はポツリと呟いた。

「……正直まだ中盤戦くらいだと思ってたが、ひょっとしたら一気に詰みまで行くかもなあ。アレイスター?」


39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/20(日) 10:43:47.02 ID:ytWb/FWuo
やっぱり垣根好きだわ
ほんといいキャラしてる
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/20(日) 17:57:43.64 ID:kcCGZy9Uo
おつ
垣根がいればまどかも人のままでいられるかもね
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/20(日) 23:02:41.62 ID:KPp5dyaz0
でも垣根は人のままで居られなかったよね
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/22(火) 12:40:38.50 ID:FGfLaWmF0
垣根もいいキャラしてるけどスクールの面々全員いいキャラしてて好きだな自分は 新しく判明した猟虎ちゃんも魅力的だし
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/22(火) 14:24:04.60 ID:Pi+WE09p0
彼の末路はバレーボール
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/22(火) 15:46:02.50 ID:j6VHgDD70
原作でもなぜか垣根と☆の扱いには天と地ほどの差があるからねぇ……(特に最近。黒幕にしてラスボス候補が女体化してヒロイン化とか草も生えない)
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/22(火) 21:53:24.21 ID:riEDP//8o
噛ませになっただけで、能力はクソ強いし本人も優秀だからな…
46 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 16:17:17.17 ID:yAt26V8VO
一方と垣根はレベル5の中でも自然法則自体を歪める他と比べて別格の能力だからな
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 01:30:08.19 ID:Rbgfgws80
        ☆



「これがソウルジェム。私たち魔法少女の力の源よ」

見滝原のマンションの一室。

巴マミは窮地を救った後輩2人を自宅へ招き入れると、懐から小さい宝石のような物を取り出した。

「うわあ、綺麗……」

それを見てさやかが感嘆の声を上げる。

マミは続ける。

「でもこのソウルジェム。ちょっと色が濁っていると思わない?」

「確かに、そうですね」

まどかはソウルジェムに目を近づけて頷いた。

キラキラと光ってはいるが、磨かれた宝石特有の透き通った光ではなく、どちらかと言うと如何わしい占い師が使う水晶玉のような、暗く怪しい輝きだ。

「さっき使い魔と戦ったでしょ? ああやって魔翌力を使うと、それに応じてソウルジェムが濁ってしまうの。この穢れが溜まると魔法少女として活動できなくなってしまうわ」

「え? じゃあどうするんですか? マミさん、このまま戦い続けてたらいつかはーー」

「大丈夫」

さやかの言葉を遮って、マミはポシェットから小さな髪飾りのような物を取り出した。

彼女はそれをソウルジェムに近づける。

「穢れが……吸いとられた?」

「マミさん、これは一体……」

「これがグリーフシードよ」

マミはニッコリと微笑んで言った。

「魔女がたまに落としていくアイテムで、魔法少女にとって魔女退治の対価みたいなものね。こうやってソウルジェムを綺麗に保つことで、私たちは能力を使う事ができるの」

へえ〜と2人は目を丸くして見る。

でも、とマミは少し声のトーンを落として言う。

「逆に言えばグリーフシードが手に入らないと魔法少女にとっては死活問題になるわ。だから、無茶して魔女を深追いしたり、場合によっては他の魔法少女と争いになったりして、命を落とす子もいるわ」

「……マミさんは、その……、怖くないんですか? いつもあんなのと戦ってるんですよね」

まどかが心配そうな顔をする。

そんな危険に常日頃から隣り合わせだなんて、彼女には考えられないのだろう。

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 01:30:59.89 ID:Rbgfgws80

「もちろん怖いわ」

マミは隠さずに言った。

「だから、あなたたちには真剣に考えて欲しいの。本当に命をかけてまで叶えたい願いがあるのかどうか。キュゥべえに選ばれた以上、他人事ではいられないから」

そう言って、マミは目線を下に移す。

そこには白い猫のような小動物、自称『キュゥべえ』がいる。

彼は真っ赤な目を2人に向けると抑揚のない声で言う。

「ボクはいつでも歓迎するよ。君たちには魔法少女としての才能がある。ボクの力が必要になったらいつでも言って欲しい」

「そう急かさないのキュゥべえ。この子たちも突然言われてまだ困惑してるだろうしね。大事なことなんだから、じっくり考えるべきよ」

「うん、あたしも、まだちょっと実感が湧かないかな」

さやかがどこか困ったように目を反らす。

マミもそれに対して特に責めたりしなかった。

「まあそれが普通よ。いきなり人生賭けてって言われても困っちゃうわよね。そうね……、具体的にどんな感じなのか知っていた方がいいと思うから……」

マミは少しの間う〜んと考え、

「あなたたちがよければ明日の放課後、私に付いて来ない? 魔法少女がどういったものか、体験して欲しいの」

「え? いいんですか?」

突然の申し出に、まどかが目を丸くする。

「ただでさえ危険なのに、足手まといになるんじゃ……」

「そんなに強力な敵とかち合うつもりはないから安心して。それに、これでも私結構強いのよ」

パチっとウィンクして、少しおどけたようにポーズを決めるマミ。

「……、」

さやかとまどかはしばし無言だったが、顔を見合わせると同時に言った。

「じゃあ、よろしくお願いします!」

「はい喜んで」

笑顔で返事をするマミ。

集合時間を決めると、2人は頭を下げて帰っていった。

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 01:32:09.78 ID:Rbgfgws80

        ☆



翌日の昼休み。

さやかとまどかは学校の屋上にいた。

その近くではキュゥべえが気持ち良さそうに日向ぼっこしている。

「ああ言われてもさあ、特にないんだよねえ願い事って」

転落防止用柵に背中を預け、ダラリと座ったままさやかが呟く。

「そりゃあ世俗的な願望ならいくらでもあるよ? 億万長者とか、有名人気タレントとか、満漢全席とか?」

「さやかちゃん。最後のはちょっと……、違うと思うけど」

アハハとまどかは小さく笑って言う。

ちなみに彼女たちはキュゥべえを介することで、言葉を発さずとも会話ができる。

ただそれをすると魔法少女である巴マミにも聞こえてしまうので、よほどの事がない限りは使わないようにしようと決めていた。

下手に失言すれば信用に関わる。

「でもそんなの命賭けてまで叶える事じゃないし、本当に自分がやりたいことって言われると、何にも思いつかないなあって」

「うん。私も、そうかな」

食べ終えたランチボックスを丁寧に包みながら、まどかは言う。

「今まであんまり、将来自分が何になりたいとか、何をしたいとか考えたことなかったし。自分の人生についてすぐ結論を出すのは、ちょっと難しい気がする」

だよねぇ、とさやかも同意する。

でもさ、と彼女は続けて、

「そう思えることって、きっと幸せなんだろうね。だってこの世界にはさ、今本当に困ってて、それこそどんな事をしてでも叶えたい願いがある人だってきっといるはずだし」

その通りだと、まどかも思う。

叶えたい願いが思いつかないというのは、特に今の生活に不自由していないということだ。

もし日々食うや食わずの貧困状態だったら。

もし今日生き延びられるかどうかも分からないような紛争地帯で暮らしていたら。

きっと今のような感想ではなかったはずだ。

と、そんな時だった。

「そう思うなら、無闇に首を突っ込まないことね。後になって悔やんでもどうしようもないわよ」

突然の声の方向に2人は顔を向ける。

そこにいたのは、話題の転校生暁美ほむらだった。

「あ、暁美さん!?」

「転校生……! あんた何しに来たのよ!」

つい今までダラダラしていたさやかの目線が急に鋭くなる。

彼女たちと巴マミは先日、ショッピングモールでキュゥべえを巡って一悶着あった仲だ。

「またキュゥべえを狙いに来たの? 懲りないわね、アンタ」

「別に。できればソイツが鹿目まどかに接触する前に手を打ちたかったけれど、もう手遅れのようだしね」

キュゥべえを守るように脇に抱え、今にも飛びかかろうかというさやかに対し、ほむらは顔色一つ変えず、冷静に話す。
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 01:33:06.02 ID:Rbgfgws80
「ただ忠告しに来ただけよ。恐らくその様子だと、巴マミからあらかたの事情は聞いたんでしょ? ソイツの口車に乗ればあなたたちが不幸になるだけよ。悪いことは言わないわ。手を引きなさい」

「そんなの、あたしらの勝手だろ!」

「ええ……。確かにそうね」

ほむらは喧嘩腰のさやかと張り合うつもりはないらしい。

彼女はでも、と前置きして言った。

「それでもソイツと契約すると言うなら肝に命じることね。魔女と戦う運命を背負って、不幸になるのは自分だけとは限らないわよ」

「は? な、何言ってんのよアンタ」

さやかが面食らったような顔になるが、ほむらに説明する気はさらさらないらしい。

「確かに伝えたわよ。それじゃ」

そう言うと、彼女は踵を返して立ち去ろうとする。

そんな背中に、まどかは思わず声をかける。

「ま、待って暁美さん! 暁美さんは、一体どんな願いで魔法少女になったの?」

「……。貴方には関係ないことよ」

「ちょ、そんな言い方ーー!」

と、さやかは食ってかかろうとしたが、その先の台詞は言えなかった。

ほむらが、今まで見たことないような厳しい目つきでこちらを睨んでいたからだ。

「あ、暁美、さんーー?」

「……鹿目まどか。前にも言ったけど、くらぐれも今と違う自分になろうとしないで。今自分が大切に思っている物を失いたくないのなら、尚更よ」

「え? う、うん……」

「分かったならいいわ」

言って、彼女は再び校舎に向かって歩き出した。

「あとそれと」

「……え?」

「暁美さん、じゃなくて『ほむら』でいいわ」

そう言うと、今度こそ彼女は本当に立ち去ってしまった。

まどかとさやかは、しばしの間大掛かりな手品を見たように呆然としていた。

「な、何アイツ? 名前で呼べって、あたしたちと仲良くしたいのか、対立したいのかどっちなのよ」

「さ、さあ?」

「あー! もうほんと訳わかんないなあ! 結局あの転校生に付き合わされて昼休み終わっちゃいそうだし。つーか同じクラスなんですけど!? あんな話した後、顔合わせるの気まずくない訳!?」

がー、と憤って頭を掻き毟るさやか。

その後できるだけほむらと目線を合わせないようにしたさやかだったが、結局それ以降ほむらが話しかけてくることはなかった。





51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 01:34:17.95 ID:Rbgfgws80
        ☆



徳川幕府時代の江戸には"入り鉄砲に出女"という言葉があったそうだが、学園都市を出入りする人や物資も、最新のセキュリティによって厳重に管理されていた。

ただし、そこは科学の最先端学園都市。

外壁に面し、陸路最大の物資の運搬ルートである11学区でさえ、荷物の受け渡しは完全に自動化されており、目に見える人の影はまばらだった。

当然ゲートのセキュリティも機械化されており、空港の手荷物検査場のように職員が何人も突っ立っていたりはしない。

体内にナノデバイスを注射された垣根帝督と誉望万化は、その横の従業員用通用門から外に出た。

「それにしても凄い荷物の量っスね。まるで貨物列車みたいに途切れることなく入ってきますよ」

「そりゃ学園都市230万人に届ける訳だしな。トラックで積み降ろししてたんじゃ時間がかかりすぎて餓死者がそこら中に転がる羽目になるだろうよ」

そんな会話をしながら彼らは、門のすぐ前で待ち構えていたワンボックスカーに乗り込む。

窓には黒いスモークが施されている。

「そういえば、垣根さん。見滝原についてから一体どうやって調査する気っスか?」

「それについては考えてる。……それよかオマエ、ちゃんと"作業道具"は持って来てんだろうな?」

「ええ、そりゃもちろん」

誉望はスーツケースの中を開けて、垣根に見せる。

みたいだな、と垣根は呟き、

「頼んでたレポートは?」

「見滝原で起きた殺人事件、自殺、失踪事件なんかの情報っスよね。過去1年間のデータをここにまとめてあります」

誉望はタブレットのアプリを開いて垣根に手渡す。

彼はひとしきり眺めた後、なるほどな、と言って誉望に投げ返した。

ひとまず垣根の機嫌を損ねるような仕事ぶりでは無かったようで、誉望はホッと安心する。

それなりに長い付き合いだが、この超能力者の考えてる事はよく分からないと彼は思う。

何気ない会話の中で琴線に触れるのは人間関係ではよくある事だが、垣根の用な人物に対してそれは場合によっては死に直結する。

だから、世間話を振るにしても話題は慎重に選ばねばならないのだ。

彼にしてみればただ神経を磨り減らすだけだが、あからさまにずっと黙りこんでいるのも気を遣っているのがバレバレで印象が悪い。

幸い誉望が横目をやると、垣根はアイマスクをつけて昼寝をしていた。

見滝原がどうなろうが知ったことではないが、自分に火の粉が降りかかるのだけは勘弁して欲しい。

彼は切実にそう思った。

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/26(土) 01:34:56.10 ID:FlVD8QYE0
原作の台詞をそのまま書くのはもう少し控えた方がいい。
SSを読む人は把握してるだろうから、ここぞという時こそ効果がある。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/26(土) 02:00:38.86 ID:wc19/NcPo
好きに書けばいいよ
まどかパート見てないし
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/26(土) 12:51:31.24 ID:mWkHAeSk0
割と面白いんだけど物足りない感も否めん
ちょっと駆け足気味なのが気になる
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/26(土) 21:29:43.66 ID:FlVD8QYE0
アニメから文字おこしをしてる様に書いてるのは、伏線の為なんだろうけど
ちょっとくどい。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/31(木) 02:50:40.08 ID:0yTXSYnu0
        ☆



放課後、さやかとまどかは巴マミと待ち合わせるため、学校近くのカフェにいた。

魔法少女がどのようなものなのか具体的に体験するため、彼女に同行してみるという約束だった。

まどかはチラリとテーブル脚に立て掛けられたさやかの鞄ーー正確にはその横に置かれている金属バットに目をやる。

当然さやかは野球部などではないし、今から気に食わない相手をこれで襲撃する訳でもない。

まどかの視線に気づくと、さやかはアハハと小さく笑って言った。

「いやあ、さすがにマミさんにおんぶに抱っこになるの前提で何の準備もしないのは失礼かなあって思ってさ」

「ええ……、どうしよう。私何も用意してきてないよさやかちゃん!?」

正直こんなもので前に遭遇したような化け物と戦えるとは到底思えないのだが、それでも何の準備もしていない自分に比べると意気込みが違うと判断されてしまいかねない。

何か適当な武器になりそうなものはないだろうか? まどかは辺りを見渡すも、当然普通のカフェにそんなものがあるはずはない。

不安そうなまどかを見て、さやかは笑いながらバンバンと肩を叩く。

「大丈夫だってー! マミさんはそんなの気にしないよ! 多分……」

「何で濁すの!? そこは言い切ってよ! もう、こうなったらさやかちゃんのバット借りるから!」

まどかは金属バットを持ち上げようとするが、恐らくバットを握ったことが無かったのだろう。想像以上の重量感に若干バランスを崩しそうになる。

「ちょ、何やってんのさ。慣れてないなら無理するなっての」

「だいたい何で準備してくるならそう言ってくれなかったの!? このままだと私だけやる気ないみたいに思われちゃうよ!」

「いや、それだとアンタがバット持ってたら逆にあたしがそう思われちゃうじゃん!? というかマミさんだって別に丸腰で来いとは言ってないし」

さやかは金属バットを取り返そうとするが、まどかも中々手を放さない。

女子中学生2人がバットを奪い合う奇妙な光景に、店内の何人かが注目する。

そして、その中には今到着した巴マミの姿もあった。

遅れてごめんなさい、と声をかけようとした彼女は途中で足を止めると、しばらくその光景を見た後、少し考えてカウンターへ飲み物の注文をしに並ぶ。

ひょっこりと肩の上に乗っかったキュゥべえが言う。

「止めなくていいのかい? マミ」

「いいキュゥべえ? この国では不毛な争いには介入せずに他人のフリをするのが礼儀なのよ」

「なるほど、店内の客に君も同類だと思われたくないんだね」

「……、」

マミは無言でキュゥべえを掴むとスクールバッグの中に押し込んだ。

この国では、あえて見え見えの図星を突かないというのが礼儀なのだ。


57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/31(木) 02:51:59.30 ID:0yTXSYnu0

        ☆



夕暮れの街並みを巴マミを先頭に、少女たちは歩いていく。

マミは言う。

「魔女を見つけるには自分の足で歩き回るしかないわ。こうやって、ソウルジェムに反応する魔女が残した痕跡を辿っていくの」

彼女の手にあるソウルジェムは移動する方向によって、その輝きを明るくしたり、暗くしたりしていた。

まるで宝探しの金属探知機のようにソウルジェムを使いながら、彼女たちは少しずつ
核心の場所に近づいていく。

とはいえ、街を全て捜索するとなるといくら何でも心が折れそうだ。

さやかはマミに駆け寄ると、疑問に思ったことを尋ねてみる。

「毎回こうやって手探り状態で見つけるんですか? 少しは範囲を絞らないと、さすがに身体が持たないと思うんですけど……」

「ある程度目星は付けるわ。魔女は人の感情に付け込んでエネルギーを吸いとってしまうの。だから、人通りの多い場所とか繁華街を中心に探すことが多いわね」

巴マミはそう言ったが、ソウルジェムに従って辿り着いたのは人の気配すらほとんどない寂れた裏路地だった。

道路脇には腐食し読めなくなったスナックの看板や、チェーンが錆びついた自転車などが乱雑に置かれている。

辺りの建物も土台はしっかりしていて、割と高さもあるが、エントランスはチェーンで封鎖されていて割れたガラスの中には資材が散らばっているのが見える。

コンクリートはひび割れて剥がれ、中の鉄骨が剥き出しになっているビルもある。

いずれにせよ、現役で使われている様子はない。

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/31(木) 02:52:46.56 ID:0yTXSYnu0
まるで異世界に迷い混んだような光景に、まどかはとある事を思い出した。

「ここって、旧オフィス街?」

最近ニュースで見た内容に、この区画一帯を更地にして大規模なレジャー施設を建設しようとする計画があった。

何でも学園都市13学区にあるテーマパークを運営している企業が関わっているとか。

「そう。ここは元々金融関係の企業ビルが建ち並んでいたんだけど、学園都市の再開発によってビジネス街そのものが移ったことで破棄された地区よ」

明滅するソウルジェムを確認しながら、マミは廃墟の奥へと進んでいく。

その背中にさやかが声をかける。

「あれ? でもさっきマミさん、人通りの多い場所で起きることが多いって言ってませんでしだっけ? こんな所に用がある人なんていないと思いますけど」

さやかはうーんと唸る。

こんな廃墟に来る人なんて、それこそ工事の作業員か溜まり場にしてる不良くらいだと思う。

いずれも、魔女の標的になるような様子はない。

「まあ普通に生活してて立ち寄るような場所ではないわね」

でも、とマミは続けて、

「さっきも言ったけど、魔女は人の感情をエネルギーにしているの。繁華街なんかで回収できるのは主に"怒り"とか"興奮"といった他人に向けられる正の感情ね。でもその逆もあるのよ」

「逆……と言うと、"悲しみ"や"苦しみ"みたいなネガティブな感情ですか?」

「その通りよ」

マミは肯定し、続ける。

「そういった負の感情は主に自分自身に向けられるもの。だからそこを魔女に付け入れられてそのエネルギーを操作されるとーー」

と、そこまで言ったところで彼女たちは何かに気づいた。

正面の廃墟ビル。

その屋上に夕陽に照らされた影が一つ。

不思議な事に、その人影は転落防止用の柵の外側にいる。

さやかがポカンとしていると、まるで石につまづいて倒れるようにその上半身が空中へと躍り出た。

「ーーーッッ!!」

何が起きたのか、その事態をさやかが正しく認識した時にはもう巴マミは走り出していた。

落下する人影に、黄色い糸のような物がまとわりつく。

いや、違う。

黄金色に輝くその細い紐は、リボンだ。

無数のリボンが蜘蛛の巣のように何層にも張り巡らされ、落下の勢いを殺していく。

「……ふんっ!」

巴マミは大きく手を広げた。

それに呼応するようにリボンがビルとビルを繋ぎ、巨大なトランポリンを作り出した。

ポンっと、一度大きく跳ねた女性の身体を彼女はリボンを足場にして受け止める。

「マミさんっ!」

「大丈夫ですか!?」

ようやく事態を飲み込めた2人が、慌ててマミの下へ駆け寄る。

「大丈夫よ。この人にも怪我はないわ」

抱えた女性をゆっくりと下ろし、マミは冷静に答えた。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/31(木) 02:53:33.07 ID:0yTXSYnu0
「これって、魔女の?」

「そう。負の感情を操られたのね。こういった自殺や原因不明の失踪事件も、魔女が絡んでいる事が多いわ」

そう言って、マミはソウルジェムを見せた。

今までにないほど鮮やかに光るそれに、マミは険しい表情になる。

魔女の関与は明らかだった。

「これを見て」

マミは2人に気絶した女性の首筋を見せるように身体をずらした。

「なにこれ……?」

まどかが怪訝な顔をする。

女性の首筋に、直接掘ったようなペイントがあった。

「これってーー」

その模様には見覚えがある。

「グリーフシード?」

さやかは確かめるように呟いた。

その模様は、先日巴マミがソウルジェムの穢れを除去するために使った道具にそっくりだった。

確か、彼女はそれが魔女が残していった物だと言っていたはずだ。

つまり……、

「これが魔女に操られている証なんですか?」

まどかが不安そうに言う。

気絶している女性の事が心配なのだろう。

そうよ、とマミは頷いて2人に向き直る。

「この人を救う為には、魔女を倒すしかない。ここから戦いになるけど、心の準備はいい?」

「も、もちろんオッケーですよ!」

力強くバットを構えながらさやかは言った。

多少足が震えているが、言葉には出さない。

「うう……」

一方のまどかは、身体中に恐怖心が巡っていくのを感じていた。

遊びではないと初めから分かっていたつもりだが、いざこうして実際の被害者を見てしまうと足がすくみそうになる。

一歩間違えれば、自分がこうなるかもしれないのだ。

「大丈夫だよ!」

そんな彼女にさやかが後ろから背中を叩く。

「何かあったらあたしが守ってあげるから。まどかに近づく不届き者には、さやかちゃんのフルスイングをお見舞いしちゃうよ!」

ブンブンと勢いよくバットを振り回すさやか。

不安な親友を安心させる為か、自分自身の恐怖心を紛らわせる為かはわからない。

だが。

「……、そうだね」

そんな彼女を見て、まどかも決意を固める。

足の震えは止まった。

「うん! 私も大丈夫です! 行きましょう、マミさん!」

頬をパチンと叩いて気合いを入れると、彼女たちは廃墟ビルの中へと入っていく。

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/31(木) 02:54:53.44 ID:0yTXSYnu0
       ☆



見滝原に着いた時には既に陽は沈んでいた。

研究施設の前に到着したワゴン車から、垣根帝督と誉望万化が降りてくる。

「お待ちしておりました」

出迎えたのは白衣を着た初老の男だった。

深々と頭を下げる彼に、垣根は苦い顔をする。

「結局"外"に出てから監視の目が付きっぱなしか。俺たちは進んでこの依頼を受けてんだ。目を離したって逃げたりしねえよ」

「いえいえ、そのような意図はございません。ただここは重要な施設でして。職員用のセキュリティチップが無ければ中には入れませんので、私がお迎えに上がったのです」

研究員に案内されて垣根と誉望は中へ入る。

研究施設は比較的中心街からは離れた山手に位置していた。

敷地内には電波塔のようなものも建っていて、外からは発電所のように見える。

「カモフラージュっスか? 学園都市の研究施設だと分かれば面白半分に侵入しようとする奴もいるでしょうし」

「実際に電気の供給もしているのですよ。まああの電波塔は飾りで、発電自体は換気口から出る風を使った風力発電ですが」

「まどろっこしいことしてやがんな。学園都市と提携した段階で何の見返りもなく金と技術だけ得られるとは思ってねえだろうに」

「互いの上層部はそうだとしても、一般市民の支持を得られるかは別です。表向きは"衰退する地方都市を見かねた学園都市が援助してくれた"というふうにしといた方が都合が良いのですよ」

「ハッ、お涙頂戴なストーリーだな。やってる事は大航海時代のヨーロッパと変わらねえのにな」

彼らは研究施設の奥へと進み、やがて半円系の広い部屋に出た。

壁一面には無数のモニタ画面が映し出されている。

そのモニタの中の映像は定期的に切り替わっており、それぞれの画面が全て違う映像を流していた。

「監視カメラの映像はこれで全部か?」

「はい。全部で4500台ほどございます」

「過去のものは?」

「直近3年間の物はここで保管してあります。それ以前のものは学園都市に送付済みです」

「十分だ」

垣根は短く言うと、オイ、と誉望へ声をかける。

垣根の合図を聞き、誉望は傍らのスーツケースから金属製のシャンプーハットのような物を取り出して頭に被った。

周りからはいくつものケーブルが延びており、彼はそのケーブルをモニタの管理端末へと繋いでいく。

「? 何をしているのですか彼は」

「現場を洗い出すんだ」

垣根はニヤリと笑って答えた。

「この機材には最近見滝原周辺で起きた事件、事故、自殺なんかの情報を入れてある。そいつとこの監視カメラの情報をリンクさせて、現場近くのカメラに映っている物をリスト化して共通点を浮き彫りにする」

研究員が誉望を見ると、彼は座り込んだまま目を閉じて何かブツブツと呟いている。

「……映像を照合……。該当127件。……半径200メートル以内で検索……複数該当……、人物、6名……。心理学に基づき反応適正を診査。異常反応あり、1名」

作業はほんの数十秒で終わった。

誉望はケーブルを抜き取るとタブレットに結果を入力し、垣根に報告する。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/31(木) 02:55:27.63 ID:0yTXSYnu0
「ホシは見つかったか?」

「ええ。絶対とは言い切れませんが可能性は非常に高いと思うっス」

「ふぅん」

垣根はタブレットのページを眺め、気軽に呟いた。

「何から当たりますか」

「決まってんだろ」

彼は照合したデータから"人物"のカテゴリに入れられたスクリーンショットを開く。

そこには、とある少女が映し出されていた。

「黒幕捕まえて吐かせるのが一番手っ取り早い。のんびりしてる暇はねえしな。こいつを調べろ」

垣根はそう言うと、画像を開いたままのタブレットを研究員に押し付ける。

個人情報うんぬんなどと言えるような雰囲気では無い。

あっという間に少女の素性は割れた。

「『巴マミ』。見滝原中学校の3年生っスね。両親は他界してて、市内のマンションで一人暮らしだそうっス。情報を見る限り、特におかしな点は無いっスけど」

「とりあえずコイツの事はカメラで随時追っておけ。周りの人間関係も含めてだ。実際の現場を押さえて吐かせる。言い逃れできねえようにな」

「……了解っス」

「分かりました。くれぐれも殺さないようにお願いします」

研究員の言葉に、相手の出方次第だな、と答えて垣根は部屋を出ていってしまう。

「ハァ……」

相変わらずの垣根の傍若無人な振る舞いに、誉望は思わず溜め息をつく。

「あれが第2位垣根帝督ですか……。噂には聞いていましたが、中々個性的な方のようで」

「ああ、別に気を遣わなくてもいいっスよ。別に俺はあの人の友達じゃないんで。悪口言われてようが全く気にならないっス」

そうですか、と研究員は短く答えた。

にしても、と誉望は言って、

「仲間が何人もいなくなってるのにえらく冷静っスね。もうちょっと悲惨な雰囲気になってるかと思ってたんスけど」

「ああ、それに関してはあなたと垣根さんとの関係と一緒ですよ、とでも答えておきましょう」

「……、なるほどっスね」

そう答えて誉望は会話を打ち切った。

同じ学園都市に所属していると言っても所詮は雇われとクライアントだ。

必要以上にコミュニケーションを取る気もない。

「垣根さんはさっさと終わらせて帰るつもりらしいっスけど、そう上手くいくか」

「万全の注意を払って下さい。これだけ多くの犠牲が出ている事を考えると、相手は相当の手練れでしょうから」

「ご忠告どうもっス」

適当に言って、誉望も部屋を出ていった。


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/31(木) 18:15:28.51 ID:Oj8cfWwt0
【悲報】グンマー帝国、学園都市の植民地になる
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 23:30:53.90 ID:X9+uo4Tvo
マミさんは情を捨てればかなりの強者だから、ていとくんも足元掬われかねん
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/12(火) 06:46:56.05 ID:psAQX80k0
        ☆



ほどなくして誉望はホテルの部屋に着いた。

中では、垣根帝督がタブレットの画面を覗きこんでいる。

彼は誉望が入ってきたのを確認すると、顔さえ向けずに、おう、と適当に言葉をかける。

「遅かったな。研究所に興味を惹かれるもんでもあったか?」

「コンビニ寄ってたんスよ。こんな遅い時間じゃホテルのルームサービスも終わってるでしょうし」

誉望は手持ちのビニール袋をテーブルに広げる。

中からは弁当やパン、サラダ、サンドイッチ等の軽食と、飲料のペットボトルが数本出てきた。

垣根はテーブルの上を一瞥して惣菜パンの袋を手に取ると、改めて部屋の中をぐるり、と見渡した。

「しょぼいホテルだよなあ。俺に仕事押し付けといてこの待遇とかナメてんのか?」

「一応街で一番いいホテルのスイートなんスけど。まあ観光都市ではないのである程度は仕方ないっスね」

チッ、と舌打ちして嫌々パンを口に運ぶ垣根。

誉望はカップのサラダにドレッシングをかけながら垣根の手元にあるタブレットに目をやり、

「さっきから何を見てるんスかそれ?」

「ああこれか?」

垣根は誉望が見やすいようにタブレットの向きを変える。

映っていたのはどこかの防犯カメラの映像だった。

リアルタイムではなく、少し前に録画されたものを流しているようだ。

「さっき研究施設で特定したガキいただろ。ええと……、名前なんつったっけな」

「『巴マミ』っスね。ターゲットの名前と顔くらいは覚えておいた方が……」

「ただの"餌"にそんな配慮いらねえよ。と、そうそうソイツについてだ。一応監視の為にある程度行動パターンを絞っていこうと思ってな」

ペットボトルのアイスティーをゴクゴクと飲みながら、垣根は画面の中の少女を指差す。

ここ最近の動きを順に追っていたのだろうか。

しかし、この端末に街中の監視カメラとリンクさせるような機能は無かったはずだ。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/12(火) 06:47:58.22 ID:psAQX80k0
誉望がそんな事を考えていると、垣根の方からネタバラシがあった。

「さっきの研究所でカメラを総括するホストコンピューターを裏側から操作して特殊な無線で繋いである。この端末をデバイスの一つだと認識させた訳だ」

「……ガチ犯罪じゃないっスか。しかもそれ逆探知される危険性があるし」

「回線は俺の能力を使って暗号化してるから心配ねえよ。見つかったとしても解析しようとすると、あやとりみたいにほどけて元の形が分からないようになる仕組みだ」

仮にもクライアントに対してなんてことしてるんだ。

誉望は呆れそうになるが、当の本人はあっけらかんとした表情で気にも留めない。

何罪悪感に苛まれてんだオマエは、と面倒臭そうに言って垣根はタブレットの側面から数センチ程度の小さなチップを取り出した。

恐らくこれが研究所のコンピューターとタブレットを繋ぐツールなのだろう。

これなら何か不都合が起きてもすぐにチップを処分すれば誤魔化せる。

彼の用意周到さに驚く事はないが、本当に私利私欲の為だけに動いてる事を改めて確認させられる誉望。

「俺たちが責められる言われはねえよ。そもそも、あの研究施設自体が街中の監視カメラをハッキングしたり、勝手に住民の個人情報を管理したりと違法行為のオンパレードじゃねえか。なら自分がやられるのも覚悟しねえとな」

当然といった様子で垣根は言う。

極めて独善的だとは思うが、そんなのは今に始まったことではない。

もはや反論する気にもならない誉望は、サラダをプラスチックのフォークでつつきながら質問する。

「それで、何か収穫はあったんスか?」

「ああ」

垣根はニヤリと口角を上げ、タブレットに保存されたムービーを表示する。

全部で10個以上ある。

どうやら監視カメラの映像から一部分を切り取っているようだ。

映像には巴マミと、同じ制服の少女2人が街中を歩く姿が収められていた。

内1人は手に金属バットを持っている。

「学校の友達ですかね?」

「どうやら後輩みたいだな」

はあ、そうっスか。と気の抜けた声を出す誉望。

いまいち意図が掴めない。

映っているのは、3人の少女が放課後仲睦まじく駄弁りながら歩いている姿で、そこに特に不自然な点はない。

何でわざわざこんなシーンを切り取って保存したんだろう?

不思議に思いながら見ていると、数十秒のムービーは何も起こらないまま終了した。

「……ええと垣根さん。特にコメントのしようがないんスけど、何か変な仕草とかありました?」

「いや、別におかしな"行動"はしてねえよ」

垣根はきっぱりと言い切った。

じゃあ何で保存したんスか、と聞く前に彼は続けて言う。

「問題は会話の内容だ」

「会話?」

怪訝な表情で誉望は聞き返した。

が、垣根の答えは変わらない。

「……、」

とりあえずもう一度ムービーを再生してみる。

確かにずっと何かを喋っているが、当然監視カメラに音声機能はない。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/12(火) 06:49:06.20 ID:psAQX80k0
「……、すいません垣根さん。分かんないっス」

「まあそりゃそうだろ」

「……、」

もしかしてからかわれているのだろうか。

誉望の中で微かな不信感が芽生え始めるが、当然口には出せない。

逆らったところで、結末は見えているのだ。

誉望が黙っていると、痺れを切らしたように垣根がタブレットを操作し始めた。

「読唇術だよ」

ボソッ、と彼は呟いて、

「コイツらが会話してる場面だけ抜き出した。口の動きから何喋ってるか推測するんだ」

「垣根さんってそんなスキルあったんですか?」

「バーカ、んな訳ねえだろ。アプリだよ」

垣根はうっとおしそうに答える。

「元々は探偵とかが浮気調査なんかに使う為の物らしいがな。まあ物は使いようだな」

「えぇ!? そんな物あるんスねえ」

誉望にとっては初耳だった。

コンプライアンス的にどうかとは思うが、確かにこの場面においては有効かもしれない。

彼女が本当に今回の事件に関わっているなら、会話の中に何かしらのヒントがあるかも。

もっとも後輩2人の前でそんな事を明かすかは分からないが。

「で、結果はどうだったんですか?」

少しはやる気持ちで誉望は尋ねる。

「やや黒に近いグレーってところ」

「と、言うと?」

「まず思ったのが、会話内容の意味が分からん」

「?」

どういう事だろう、と誉望は思う。

この中学生たちは聡明な超能力者(Level5)でも分からないほど高度な会話をしていると言うのだろうか。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/12(火) 06:49:43.80 ID:psAQX80k0
垣根はハァ、と息を吐いて言った。

「まずこの解析アプリはあくまで"推測"するだけだ。完璧じゃねえ」

「まぁそりゃそうでしょうね。口の動きから分かるのは母音だけですし。それを一定の法則に当てはめて最も自然だと思われる文章を作るのが読唇術っスから」  

「そうだ。その点を踏まえてだ。何言ってるかさっぱり分からん」

半ば投げ出すように言って、テーブルの上のタブレットを誉望の方へ滑らせる。

タブレットには推測された会話内容が羅列されていた。

それらを読み進めていく内に、彼は自分の表情が険しくなるのを感じる。

「……何スかこれ? 魔法少女? ブリーフシード? ホールジェム? 何言ってんスかこの子たち」

「な? 訳分かんねえだろ?」

両手を広げ肩をすくめながら垣根は呆れるように言った。

あくまで推測の為、本当にこの言葉で合っているのかは分からない。

だがそれを抜きにしても、内容がとても現実的ではない。

何かファンタジー小説の話でもしてるのかと思った。

「アニメオタクか重度の中二病ってやつっスかねえ……。とてもそんな風には見えないっスけど」

「俺もそう思ってさっきまで調べてたんだがそんな作品は無かった。つかそんな雰囲気じゃねえしな」

誉望もそれには同意だ。

彼女たちの表情を見る限り、楽しそうな様子は微塵もない。

まるで戦場へ向かう武士のように強張っているように見える。

「……てことはマジなんスか。この魔法少女とか魔女とか」

「分からん。だからグレーだ」

「でも、本当だとしたら巴マミ1人だけじゃなくてこの2人も共犯って事ですよね? もしかしたらもっといる可能性もーー」

「だから確かめる必要があるんだよ」

誉望の声を遮って垣根はきっぱりと言い放つ。

「何にしろ相手の全容が分からない内は迂闊に行動できねえからな。学園都市製じゃないなら尚更だ」

先日学園都市を襲った謎の攻撃。

その脅威は今でもネット上を染め上げているほどだった。

もしそれと同一犯なら、たとえ7人しかいない超能力者でも油断はできない。

彼は続ける。

「もし勘違いならそれでオーケー。黒なら黒で、接触する前に向こうの陣容を把握しときたい。巴マミっつったか? この2人も含めてコイツの周り、くまなく洗え」

「了解っス」

短く答える誉望。

垣根は改めてタブレットに向き直ると、防犯カメラのログから彼女たちの動きを追う作業を再開した。

「にしても魔法少女に魔女と来たか。何が来ても驚くつもりは無かったが、中々にぶっ飛んでやがるな」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 09:23:06.79 ID:LAzL3gGbO
蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528712430/
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/12(火) 23:27:58.59 ID:psAQX80k0
        ☆



魔女退治は何事もなくあっさり終わった。

鹿目まどかは巴マミ、美樹さやかと別れ、繁華街のネオンライトを横目に帰路に着いていた。

「……、」

よく考えるように、とマミが言った言葉を思い出す。

当然の事だろう。

何せ死の危険がつきまとうのだ。

それが強い警告であることは、放課後にカフェを出てからついさっき別れるまで彼女が度々魔法少女として活動することの厳しさ、不便さ、煩わしさを語っていたことからも分かる。

それを分かった上で、マミは彼女たち自身に選択権を委ねている。

魔法少女になるな、とは結局一度も言わなかった。

その意味も、まどかはちゃんと分かっているつもりだ。

「……ねえキュゥべえ。これは誰かがやらなきゃいけない事なんだよね? 魔法少女がいないと、何の罪もない人たちが魔女の餌食になっちゃうんだよね?」

言いながら彼女は目線を左下ーー自分の肩に向けた。

そこには白い小さな獣、通称キュゥべえがちょこんと座っている。

彼は感情の読み取れない表情で、首だけを少し動かして頷いた。

「魔女は使い魔を産み出し、使い魔は人間の感情の起伏を養分として魔女へと成長し、その結果様々な悲劇を引き起こす。もし君が魔法少女になれば、起こるはずだったいくつもの悲劇を未然に防ぐことができるだろうね。君にはその素質がある」

キュゥべえは淡々と答える。

魔法少女としての素質がある。

その言葉は昨日から何度も聞いた。

何を基準に判断しているのかは分からないが、とりあえず魔法少女に適合するには様々な条件が必要で、それが当てはまるのはごく一部の少女だけらしい。

その中に自分も含まれている。

巴マミが言った「あなたたちはキュゥべえに選ばれた人間なのよ」という台詞が頭の中で反芻する。

たくさんの人の中からあなたが選ばれました、と言われて嫌な気分になる人は少ないだろう。

しかも自分の素質を見込んでというなら尚更だ。

実際、まどかも同じ気持ちだった。

当然、魔女と戦う事に対しての恐怖心はある。

願い事も特に決めてない。

だが、それらを抜きにしても誰かが自分に期待をしてくれている。自分が誰かの役に立てるという事に喜びを感じる。

「……マミさんって、いつもあんな風に戦っているの? 怖くないのかな?」

「恐怖心が無いと言えば嘘になるだろうね。実際、魔法少女になりたての頃はしょっちゅう泣き言を言っていたよ。さすがにもうベテランだから、ある程度感情をコントロールしてるようだけどね」

「たった1人で? 何でそんなに頑張れるんだろう」

「マミは正義感が強い子だからね。魔法少女の中には自分の利益だけを追求してグリーフシードの横取りを狙ってばかりの子もいるけど、彼女についてはそんな素振りは全くない。単純に、この街を守りたいんじゃないかな」

「……、」

まどかは改めて巴マミの事を思い出す。

彼女は見滝原でただ1人の魔法少女という事だ。

たった1人で、彼女はこの街を守り抜いてきた。

誰にも知られることもなく。

誰にも褒められることもなく。

その中で出会った魔法少女候補生。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/12(火) 23:29:07.91 ID:psAQX80k0
当然彼女たちが魔法少女になれば、その分マミの負担は減る。

キュゥべえと一緒に、セールスマンのように全力で魔法少女の魅力を語って引き入れようとしてもおかしくないはずだ。

だが、彼女は決して2人に魔法少女になることを勧めたりしなかった。

その実情と弊害を事細かに語り、本当にその覚悟があるのか問いただしている。

普段は柔和な表情のマミだが、その話をする時は真剣な目つきをしていた。

どんな気持ちだったのだろう?

彼女たちが魔法少女にならなければ、またマミは1人ぼっちになる。

それを承知の上で、全部背負ってやると言外に語っているのだろうか。

「……、すごいなマミさんは」

思わず声が漏れた。

自分が同じ立場だったとして、同じ選択ができるとは口が裂けても言えない。

そこまで強くない。

だが、そういう風にありたいと思う気持ちはある。

何の取り柄もない自分に、そうなれるチャンスがあるのなら、チャレンジする価値はあるのかもしれない。

「君ならマミを超える魔法少女になれるよ。その素質は間違いなくある」

「……本当に?」

まどかは目を丸くして聞き返す。

「ああ、本当さ」

キュゥべえは間髪入れずに答えた。

その真っ赤な瞳は、相変わらず何を考えているのか読めない。

気づけば、まどかは自宅のすぐ近くまで来ていた。

考え事をしながら歩いていたからか、意外な程時間が経つのが速く感じる。

両親にただいまと言って、彼女は自室のベッドの上に仰向けで寝転ぶ。

低反発なクッション材は、身体を包み込むように受け止めてくれた。

「魔法、少女……」

何気なくポツリと呟く。

使い慣れたベッドの上で、身体はリラックスしているはずなのに、何か胸の奥にチリチリとした熱さを感じる。

思考を止めるな、と身体が脳に命令しているかのように。

「……なれるのかな?」

思い返せば、これまでまどかには理想の人物像というのは無かったように思う。

自分に自信のない彼女にとって、両親や親友のさやか、仁美などの事はそれぞれ凄いと思うし自慢でもあるが、自分がそうなりたいかと言われると少し違う気がするのだ。

それは恐らく、自分にはなれないと分かっているからなのだろう。

背の低い少年が、バスケットのスター選手に憧れても本気で目指そうとはしないように。

だが、今回巴マミという少女と出会えた事で、空白だった未来図に輪郭ができようとしていた。

そうなれる可能性がある。

その言葉は埋もれていたとある感情を刺激する。

憧れという気持ちを。

そして、その気持ちに従いたいとまどかは思った。

例えそれがどんな結末であろうと。

「私も、なれるかな」

彼女はスマートフォンを操作し、電話帳の中から1つの連絡先を表示する。

そこには、昨日交換したばかりの目新しいアドレスがあった。

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