相棒×聲の形「灯台下暗し」

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161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:58:59.50 ID:1GsLvrze0
右京「その通りです。こんなこと間違っている……」

「彼らに裏切られたのは石田君の自業自得ではあります」

「しかし、6年2組の生徒達と竹内先生が石田君にした事は、石田君が硝子ちゃんにしたこと以上に許しがたい……」

「全ての真実を明らかにし、彼らを自身の罪と向き合わさなければ、何も解決しませんよ……!」

冠城「…………」


強い口調で言い放つ上司の姿に、冠城は自分と彼の意思が一致していると確信した。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:03:42.02 ID:1GsLvrze0
冠城「お互い意見が合いましたね……」

「しかし……ひとつ、大きな問題があります」

「どうやって彼らの罪を暴くのかです」

「石田家と西宮家の示談が成立している今、うかつに手出しできないし……」

「生徒達や竹内先生を攻めようにも、こちらは証拠がない……」

「石田君いじめから事を進めようにも、俺達は島田君達と何度か顔を合わせている」

「これ以上、不用意に嗅ぎ回りでもしたら、彼に対するいじめをかえって助長する恐れがある」

「はっきり言って、お手上げですよ」


と言いながら、本当に両手を上げて見せる一方で、
「けど、あなたの事だから、何か手は考えてあるのでしょう?」とも聞いてみせた。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:04:43.90 ID:1GsLvrze0
右京「君も察しが良くなりましたねぇ……」

冠城「という事は、ビンゴですか?」

右京「そんなところです」

冠城「それで?どんな手、考えてるんです?」


冠城の問いに右京は「水田校長を利用します」と答えた。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:05:26.80 ID:1GsLvrze0
冠城「あの校長を、ですか?」

右京「冠城君……昨日僕達の質問に対して彼、何と答えましたか?」

冠城「……そう言えば、硝子ちゃんいじめの事隠しましたね」

右京「そう……彼は我々に対し、いじめなどのトラブルはなかったと嘘の証言……即ち、偽証を図ったのです」

「ここまで言えば、分かりますね?」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:06:03.98 ID:1GsLvrze0
冠城「………………」


「彼の偽証から事を進め、そこから芋ずる式に6年2組のいじめ問題を引きずり出そうというわけですね」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:09:09.55 ID:1GsLvrze0
右京「そういう事です。彼が、今回の件を何処まで把握しているかは分かりませんが……」

「一度示談で決着を着けたと思っていた問題に、別の問題が隠れていると知れば、否が応でも事の真偽を確かめたくなるはずです」

「警察が6年2組に立ち入ることをあの方に許可させれば、それで問題ない……」

冠城「しかし、どのみち証拠は必要になりますよ」

右京「そこで僕に考えがあります」

冠城「考えって?」


右京は、冠城に自分の考えを話した。
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:10:09.17 ID:1GsLvrze0
冠城「確かに、それを調べさせるのが確実そうですが……」

「そう都合良く今も保管していますかね?」

右京「だからこそ、君にも動いてもらおうというわけですよ……」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:11:02.53 ID:1GsLvrze0
冠城「………………」

「分かりました」

「ただ、俺らの顔と身分は割れていますからね……別の奴にやらせる事になりますが、構いませんか?」

右京「構いませんよ……元より、そうさせてもらうつもりです」

冠城「んじゃ、明日朝一番に『アイツ』に連絡入れてみますかね……」

右京「頼みますよ」


そうして、右京の考えを実行に移す事となった冠城。

6年2組のいじめ問題に終止符を打つべく、ついに特命係が動き出した……
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:12:34.79 ID:1GsLvrze0
2日目(第2話)はここまで。

途中で中断しなければならないアクシデントがありましたが、何とか書ききれました……

ただ、都合良く詳細が明らかになり過ぎかな?

次回は、問題解決の仕込みを開始します。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 17:13:58.77 ID:1GsLvrze0
そして、脱字を発見……

×「けどそれは、いじめに加担した生徒や原因を作った竹内先生も同じはずなのに、彼らは石田君の非を利用して自分達だけ責任逃れた」→〇「けどそれは、いじめに加担した生徒や原因を作った竹内先生も同じはずなのに、彼らは石田君の非を利用して自分達だけ責任を逃れた」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/27(日) 17:17:21.06 ID:gSRzgvDvO
乙。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/27(日) 23:20:29.78 ID:3kHUDDmWo
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/28(月) 01:08:54.01 ID:iLUTQ06c0
乙です
冠城君は法務省の、それも行政職員出身という変わり種ですね
警察官になった後も、しばしばその経験が活用されています(劇場版3、「少年A」他)
そして、「聲の形」はいじめ、差別が関わる話としても有名な作品ですね
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/30(水) 08:42:31.64 ID:yOQtWqrDO

相棒のドラマ見てるみたいで面白い
是非完結させて下さい
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/30(水) 16:31:16.20 ID:BmcsDMdUO
別の人が書いたので壮絶な奴があったな。こちらも若干視点が違ってて面白い。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:03:33.49 ID:5sCMbn110
皆さんレスありがとうございます。
>>60でも書いた通り、完結はさせたい所存です。

そういう訳で続きですが、その前に……
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:04:26.37 ID:5sCMbn110


今回は結構不快な表現が含まれるので、苦手な方はご注意下さい。

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:06:05.58 ID:5sCMbn110
相棒×聲の形 〜3日目〜


―翌日―


硝子は、水門小学校へと足を進めていた。

いつも通りの、通い慣れた道。

しかし、その表情はどこか曇りがちだ。


右京「おっと!これは失礼……」

硝子「…!」


その時であった。突然、右京が通り掛かり、彼女と軽くぶつかってしまった。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:08:00.33 ID:5sCMbn110
硝子「あ…!」


そんな彼を見送ったその時であった。
硝子は、足元に一枚のハンカチが落ちている事に気付く。
見た所、大人の男性が使っていそうなデザインであり、硝子は先程ぶつかった際に右京が落とした物なのではないかと考える。

そこで彼女は、急いでそれを拾い上げ、急いで右京の下に駆け寄る。


硝子「あ…あ、にょ……!」


何とか追い付いた硝子は、スーツの裾を引っ張りながら呂律の回らない声で右京を呼び止めた。


右京「どうしました?」

硝子「こるぇ……」


振り返った右京に、硝子はハンカチを差し出した。


右京「おやおや…これは僕のじゃありませんか。拾ってくれたんですか?」


と言いながら手話を交えると、硝子は首を縦に振った。
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:10:37.72 ID:5sCMbn110
右京「どうもありがとう……君も学校で頑張って下さいね」


ハンカチを受け取りながら、手話を交える右京。
それを見た硝子は、一瞬複雑な表情になったが、すぐに愛想笑いを浮かべて頷くと学校の方へと歩みを進める。


右京「…………」


だが右京は、その表情が心配を掛けまいと作った顔である事を見抜いていた。
そしてどういう訳か、その際髪から見え隠れした彼女の右耳を注視する。

その後、硝子が拾った自分のハンカチに少しの間目を向けたのち、ポケットにしまい込みながらある場所へ向かった。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:15:22.23 ID:5sCMbn110
―西宮家―


いと「はい……あら?」


呼び鈴が鳴ったので、いとは顔を出すとそこには右京が立っており、彼女に対して深々とお辞儀をする。
それから、彼はまたリビングに案内された。

この時間、硝子はもちろん彼女の母親もいなかった。


結絃「あれ?刑事さんまた来たんだ」


そこへ、結絃が奥の部屋から姿を現した。


右京「おや……君もいたんですか?」

結絃「え?うん、まあ……」

右京「学校に行かないんでいいんですか?」

結絃「そ、それは……」


右京の問いに結絃は言葉を詰まらせた。


いと「刑事さん…ゆずは硝子の事で色々とありまして………」

右京「…………」


いとの一言で、右京は察した。

結絃は、姉の障害をネタにいじめに遭い、不登校になったことを……
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:18:44.33 ID:5sCMbn110
右京「なるほど……知らなかったとはいえ、辛い事を聞いてしまい申し訳ない」

結絃「いいんだよ。元はと言えば、アイツが……」

「母さんが、姉ちゃんをちゃんとした学校に連れて行かないのが悪いんだから!」

いと「これ、ゆず!」

結絃「だってそうじゃんかよ!そのせいで姉ちゃん何度もいじめられてんのに、アイツはその事まるで分かっちゃいない!」

「おまけに姉ちゃんに解決させるとか何とか言って今まで助けもしなかった癖して」

「今回に限ってはちゃんと石田の母さんに補聴器の弁償させて……」

「まったくわけ分かんないよ!」

いと「ゆず……!すみません、刑事さん……」

右京「いえ……構いませんよ」

「しかし、彼女とお母様はあまり仲がよろしくないんですねぇ……」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:19:55.89 ID:5sCMbn110
結絃「当たり前だよ!姉ちゃんの事中々助けようとしなかったばかりか、髪まで切って補聴器を見えるようにしようとして……!」

「そんな事したら余計いじめられるって分かんねぇのかなあ?」

いと「ゆず!ちょっと外に出てってもらおうかしら?刑事さんが落ち着いて話が出来ないでしょう」

結絃「ちぇ…!しょうがねぇな……」


さすがのいとも、他人の前で結絃が愚痴々言うのを良しとせず退室を命じると、結絃は渋々と部屋を出て行った。
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:21:01.60 ID:5sCMbn110
いと「本当にすみません。孫が、お見苦しいところを………」

右京「いいえ……彼女が愚痴をこぼすようなきっかけを作ってしまったのは、こちらです」

「あなたが頭を下げる必要はありませんよ」

「それに……お母様が硝子ちゃんに何をしてきたのか、それが少しばかり分かりました」

いと「八重子がしてきたこと……?」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:21:46.79 ID:5sCMbn110
右京「…………」

「今の結絃ちゃんの話しを聞く限り、彼女は硝子ちゃんに対し、結構な無茶振りをなさっていたようですね?」

「硝子ちゃんが普通の小学校に通っているのも一昨日の厳しい態度も、それが関係している……違いますか?」

いと「……………」


右京の問いの、いとはしばし黙ったのち、こう答えた。


いと「娘は……八重子は、本当はあんな娘じゃないんです……」

「昔から不器用で、周囲から誤解される事がしょっちゅうあるもんで……」

「それに、好きでああやっている訳でないんですよ」

右京「と、仰いますと?」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:23:05.90 ID:5sCMbn110
いと「…………」

「あれは、13年以上前の事です……娘は、1人の男性と結婚しました」

「その男性と結婚して最初に産まれたのが、硝子でした……」


その時の八重子は、実に幸せだったのだといとは語る。

だが……


いと「硝子が産まれてから3年後……あの娘の幸せは終わりを告げました」

「ある日、硝子の様子がおかしい事に気付いたんです。こちらの声に、ほとんど反応しなくなって……」

「そこでお医者様に診てもらったところ、高難度難聴であると診断されました」

右京「硝子ちゃんが障害を持っていると分かったのは、産まれてから3年経った後だったのですか……」

いと「産まれた直後はまだある程度耳が聞こえていたらしく、最初の検査の段階で見逃されていたようで……」

「おまけにお医者様の話によると、『先天性風疹症候群(せんてんせいふうしんしょうこうぐん)』の可能性が高いと……」

右京「先天性風疹症候群……母親の持つ風疹ウィルスに由来する障害ですか」

「ということは、八重子さんは硝子ちゃんを身ごもった当時、風疹ウィルスを発症していた……」

いと「えぇ……」

「心当たりがないか聞いてみたら、夫と子作りをした後、調子が悪くなった時期があったと言っていました」

「そこで、夫の持っていた菌が移ったのではないかと思い、八重子は硝子の障害の件も含め、彼にその事を話しました」

「しかし………」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:24:29.42 ID:5sCMbn110
八重子がそうしたところ、夫は態度を一変させ、
『八重子が予防接種を怠ったせいだ』などと言い出し、自分の責任を八重子に押し付け、
その上硝子が聴覚障害を患ったことを理由に、彼女を毛嫌いし始めたのだ。

彼だけではない……彼の両親もだ。

彼らは自分達の息子の非を咎めるどころか、彼に肩入れし……
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:25:08.61 ID:5sCMbn110


『障害を抱え、国などから補助を受けて生きる子供など要らない』


『責任逃れをする世間知らずな親の子は、きっと世間知らずに育つ』


『不満があるなら1人で育てろ』

189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:25:56.41 ID:5sCMbn110
などと散々文句を言って硝子や八重子を毛嫌いした末、
八重子に硝子を押し付け、そのまま別れてしまったそうである。
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:27:36.98 ID:5sCMbn110
いと「以来、彼らが何処で何をやってるか……今はもう分かりません」

「八重子は、その時のことを酷く悔やみました。『私がもっと強気に出ていれば、硝子を守れたのに』と……」

「私もあの娘の事を庇い切れなかったので、『あなた1人のせいではない』と言ったのですが、それでも彼女は自分を責めました」

「そして、お腹に結絃がいると分かった頃からでしょうか?」

「あの娘は、涙を捨てて硝子を『障害に甘えない強い子に育てる』と誓ったんです」

「こうして八重子は、硝子達に対して厳しく接するようになった訳なのです」

右京「硝子ちゃんが普通学校である水門小学校に通っているのも、その一環のようなものだったのですね?」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:28:17.29 ID:5sCMbn110
いと「はい……」

「しかし、刑事さんの言う通り無茶振りが過ぎるところがありましてね……」

「この6年間、硝子は他の学校でも補聴器を紛失したり不適切な扱いを受けました」

「それでも八重子は、硝子自身が強くなり、自力で解決出来るようになる事を望み、普通学校に入れるのを止めませんでした」

「その一環として、先程結絃が話した通り、硝子の補聴器がはっきり見えるよう髪を切ろうとまでして……」

「結絃が、男の子の様に振る舞う様になってしまったのも、それが原因です」

「あの娘は、八重子から硝子を守る為、自ら髪を切って女の子らしく振る舞う事を捨ててしまった……」

「ただ……さすがの八重子も、今回の石田君の所業は見逃せなかったようですがね」

右京「硝子ちゃんは今年で6年生……小学校生活も残り僅かですからねえ」

「『今回ばかりはしっかり解決しなければいけない』と考えたのでしょう」

いと「えぇ、恐らくは……」

右京「………」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:31:13.31 ID:5sCMbn110
今の話を聞き、右京は八重子の中に宿る意思の正体を理解した。

彼女は、夫の不備を押し付けられ、それに対して抵抗が出来なかったのだろう。
だからこそ、絶対に弱みを見せないと心に誓った。

娘達を強く育てようと手厳しく接しているのも
自分の二の舞を踏ませたくないという意図がある事も充分考えられた。

しかしそれは、母としては苦渋の決断でもあったに違いない。
真面目にやればやるほど、かえって理解されなくなるというリスクもない事はないのだ。
結絃が彼女に反感を持っている事からも、それは明らかだ。

それでも八重子は自身の信念を曲げず、今日まで彼女らを育ててきたのだろう。

並の人間なら、途中で挫折してもおかしくない……

そう考えると、八重子は親としては立派な人物と言えよう。

しかし……
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:31:45.90 ID:5sCMbn110
右京「お婆様……八重子さんがどれ程の覚悟を持って、硝子ちゃん達と接して来たのか理解出来ました」

「彼女があそこまで厳しい態度を取るのは、旦那様一家の押し付けから硝子ちゃんを守れなかった弱い自分を隠す為……」

「硝子ちゃんを守れなかった自分に対する、一種の責任と戒めの表われでもあった」

「障害を患うお子様を持つ親は、周囲から見下される事も多い」

「旦那様もおらず、あなた以外に頼れる人間がいなかった彼女は、そうするしかなかった……」

「その決意は、生半可なものではない……だからあなたは、今までずっと彼女のやり方を見守ってきた」

いと「…………」


何の返事を返さないいとではあったが、否定をしているわけではない事はすぐに理解出来た。
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:33:52.48 ID:5sCMbn110
右京「しかし……本当に八重子さんのやり方に、問題はなかったのでしょうか?」

いと「え…?」

右京「人は完璧ではありません。例え真っ当な理由で動いているつもりが、知らない間に間違いを犯すことがあります」

「この13年間、八重子さんを見守ってきたあなたは、そう感じることがあったのではありませんか?」

「例えば、先程申した無茶振りとか……」

いと「…………」


右京の問い掛けに、いとは思い当たる節がある様な表情を浮かべた。


右京「あなたも、理解なさっているとは思いますが……」

「子供という存在は、いじめに対しては無力です。そこに障害の有無は関係ない……」

「結絃ちゃんが健常な人間であるにもかかわらず、いじめに耐えかねて不登校になってしまっている事からも明らかです」

「人がいじめられる理由は色々とありますが、一番分かりやすいものとしては、『自分達と異なる存在を受け入れられない』というものが挙げられます」

「今回の件はまさにそれです。これまで、硝子ちゃんに対して不当な扱いをしてきた者達は、彼女の障害を理解し、歩み寄ろうとしなかったのでしょう」

「しかし何故、そんな事になってしまうのか?」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:34:59.87 ID:5sCMbn110


「それは、硝子ちゃんが同じ人間でありながら、彼らと異なる点があるからです」

196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:36:41.13 ID:5sCMbn110
右京「人は、自身と異なる存在を見ると、それを排除しようとしてしまう……ある意味、本能のようなものです」

「健常な人間の多い普通学校では、そのような思想の人間が特に多い」

「障害を持つ人間が、普通学校で上手くやっていけたという事例はない事はありませんが……」

「硝子ちゃんの事を理解出来る人間がいなければ、どんなに強くあれと望んだところで、それは意味を成さなくなる……」

「彼女に歩み寄り、理解しようとする人間がいなければ、硝子ちゃんに対するいじめがなくなる事はないでしょう」

「何故硝子ちゃんはいじめられるのか?何が駄目なのか?」

「そして、どのような学校に入れれば、彼女がいじめられる確率が減るのか?」

「今一度、八重子さんと話し合ってみてはいかがでしょうか?」

いと「…………」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:38:46.55 ID:5sCMbn110
右京の話しを聞き、いとの表情は複雑であった。

八重子は今は二児の母……子供ではない。

母親の自分が、今更干渉すべきではないと考えているのだろう。

それ故、娘と孫の領域に必要以上に足を踏み込んではいけないと、
今まで自制を掛けてきたことは想像出来た。

しかし……それでも右京は、このままにすべきではないと考えていた。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:40:53.86 ID:5sCMbn110
右京「…………」

「僕も無茶な事を言っているのは分かっているつもりです」

「母として、大人になった娘さんの意思を尊重してあげたい気持ちも分かります……」

「しかし、硝子ちゃんは来年で中学生……大人への道を歩み始める頃です」

「それなのに、八重子さんは自身の誤りに気付かず、お孫さん達も彼女の真意を知らず、溝を作ったまま……」

「果たして、このままでいいのでしょうか?」

「場を取り持つ為、中立の立場を保つのも大事ですが……」

「時としては、踏み込んだ対応を取っても罰は当たらないと思いますよ」

いと「…………」


右京のいう言葉を、いとはただ黙って聞いていた。
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:43:26.43 ID:5sCMbn110
右京「…………」

「申し訳ない。僕とした事が、年上の方に対し、なんと説教じみたことを………」

いと「……そんな事、ありません。久し振りに、いい話しを聞かせてもらって感謝しています……」

「ここまで真摯な言葉を掛けてくれる男の人に会うのは、何年振りでしょうねぇ……」

「私も、長生きして色々知ってるつもりでいたけれど、まだまだだったのかもしれません……」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:47:51.64 ID:5sCMbn110
右京「………」

「そう言って頂けると、幸いです………」


と、右京は安心の意を見せた。

何故、わざわざいとに呼び掛けたのか?

それは、この件はあくまで西宮家の問題であるからだ。

八重子が姉妹を虐待していたというなら話しは別だが、
今回のケースは、硝子の事を考え過ぎたが故の失敗に近い。

相手が犯罪者でない以上、警察がうかつに足を踏み込んでいい領域ではない。
例え杉下右京個人として言ったところで、第三者の横槍と断じられるのも目に見えている。

そもそも、自分達が今追っているのは6年2組のいじめ問題……

西宮家の問題の解決ではない。

西宮家の問題は西宮家の人間に解決させなければならない。

それが、彼女らの為なのだ。
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:50:29.48 ID:5sCMbn110
いと「ところで、今日は何のご用で?生憎、硝子は学校ですが……」

右京「その事なんですがねぇ……」

「独自に調べてみたところ、硝子ちゃんにわざわざ話を伺う必要はないことが判明しまして……」

いと「では、その事をお知らせに?」

右京「えぇ……」

「しかし、それとは別に『ある物』が必要になりました」

いと「ある物?」

右京「それはですねぇ……」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:54:36.51 ID:5sCMbn110


―水門小学校―


男「お願いです!どうかこの通り…!」


学校の事務室にいる事務員の前で、1人の男が両手を合わせ頭を深々下げながら何かを頼み込んでいる。
どうやら、この学校に何か用事があって来た者のようだ。
そこへ、職員に連れられて水田校長がやって来る。


水田校長「この人かね?」

職員「はい……先程から、あなたに会うまで絶対帰らないと言って聞かないもので……」


職員の説明を聞き「ふむ……」と言ったのち、水田校長は男に声を掛ける。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:55:15.31 ID:5sCMbn110
水田校長「君……私が、校長の水田ですが」

青木「おぉ!やっと来ましたか……あぁ、これはどうも初めまして!」

「僕、『青木年男』と言いましてね、どうしてもこの学校に用がありまして……

「その為に、どうしてもあなたと話がしたかったんですよ〜」


なんと、この学校を訪れた男の正体は警視庁サイバー対策課の青木であった。

何故彼が、ここにいるのか?

一方、目の前の青年が警察の人間だと知らないまま、校長は質問を続ける。
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:56:47.62 ID:5sCMbn110
水田校長「用事とはなんだね?」

青木「実は、僕の友人が教師の勉強やってましてね、その勉強の為に小学校の授業を見学しようと思ってたみたいなんですが……」

「運が悪い事に高熱でぶっ倒れて、出来なくなってしまったらしくて……」

「だから僕が代わりにその様子を見学して、見た内容まとめて持って来いって頼まれたんですよ」

「僕は断ったんですが、この時期のこの学校じゃないと絶対駄目だと言って聞かないもので……」

「ですのでここは、あなた様直々に見学許可を頂きたいと……」

職員「こ、校長……どうします?」

水田校長「うーむ……」

青木「もちろん、授業の邪魔になる事は一切やりません!廊下から黙って見てるだけなんで…!」

「用が済んだら、すぐ帰りますから……ね?」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:57:44.85 ID:5sCMbn110
水田校長「………」


青木の頼みに、水田校長は少し考えたのちこう答える。


水田校長「分かった…そう言う事なら、好きにして構わんよ」

青木「ありがとうございます!では、ちゃっちゃと行ってちゃっちゃと終わらせてきます」


と言って青木は、早々に学校の奥へと足を進めて行った。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:58:32.91 ID:5sCMbn110
職員「校長……良かったんですか?」

水田校長「見学くらいなら構わんだろう」

「それに、これが元でこの学校に注目が集まるかもしれんし……」

職員「は、はぁ……」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:00:25.71 ID:5sCMbn110
―水門小学校内の廊下―

青木「ふぅ……」

「何で僕がこんな遠くまで来て、こんな猿芝居打たなきゃなんないんだか……」


廊下を歩きながら愚痴る一方で、
「しかし、こんなにあっさり通してくれるなんて……あの水田とか言う校長、とんだ無能だな」と校長の事を嘲笑ってもみせた。


青木「さて…6年2組の教室はっと………」


6年2組の教室を探し歩く青木。しばらくそうしている内に、彼はその教室を発見する。


青木「あったあった……何の授業やってるんだ?」


青木はこっそりと6年2組を覗き込むと、竹内が授業内容を黒板に書いて生徒を指導している最中であった。
そこに書かれた文字や、生徒達が開いている教科書を見る限り、国語の授業をやっているようだ。
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:01:04.88 ID:5sCMbn110


青木「撮影開始……」

209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:01:53.59 ID:5sCMbn110
それを確認するや、青木は懐からスマホを取り出して動画撮影を開始した。
しかしそのスマホは、良く見れば彼のものではない。

そして、彼が『誰かのスマホ』で撮影している授業風景は、次のようなものだ。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:06:58.36 ID:5sCMbn110
竹内「次は朗読だ。西宮、読んでみろ」

硝子「………」


教科書の内容を読むよう、竹内は硝子に指示する。


硝子「あ、う……ひ…………」


映像の中の硝子は、必死に教科書に書かれた内容を口にするが、呂律が回らず意味不明な言葉になってしまう。


竹内「何やってんだ……」

「おい植野、どう読むか教えてやれ!」

植野「………」

「はい……」


それを見かねた竹内は、隣に座る黒髪の少女……

即ち、植野直花に梢子の朗読のサポートを指示すると、植野は渋々了承した。


植野「ほら……ここはね、こう読むのよ」

硝子「う…いぃ……」

植野「違うわよ!……あぁ、もう!」


隣から大きな声で発音の仕方を教える植野だったが、
耳の不自由な硝子がすぐに理解出来るはずがなく、授業は中々進まない。

そうしている内に、植野の表情はあからさまに険しくなり、
周りの生徒達も笑っていたが、竹内はと言うと笑うのを止めるよう喝を入れただけで、
硝子と植野を助けようとはしなかった。

青木は、この一連の様子を念入りに撮影した。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:08:43.35 ID:5sCMbn110
青木「これで良しっと……」


動画撮影を終える青木。だが、彼の目的はこれで終わりではなかった。

次の目的達成の為、彼は手近な男子トイレの個室に身を潜めた。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:09:09.16 ID:5sCMbn110


―西宮家―


右京「わざわざ無理を言ってしまって、申し訳ありませんね」

いと「いえいえ…構いません。刑事さんの役に立てるのなら、それで充分です」


どうやら、ある物を借りる事に成功したらしく、右京は礼を述べながら西宮家の玄関に足を運ぶ。

そんな中、いとはある疑問を投げ掛ける。


いと「しかし、どうしてそれが必要なんですか?」

右京「申し訳ありません。現段階では、お話しする事は出来ないものでして……」

いと「守秘義務…ですか?」

右京「えぇ……」

「しかし、全て終わったらきちんとお返ししますので、どうか心配なさらずに……」

いと「はい、分かりました」


いとの返事を確認すると、右京をお辞儀をした後立ち去ろうとしたが、
「あ!最後にひとつだけ……」と言いながら振り返り、次のような事を聞いた。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:09:50.29 ID:5sCMbn110
右京「石田君の事で、硝子ちゃんは何か言っていませんでしたか?」

いと「えぇ……昨日、あの娘が学校から帰った後、結絃が聞いていました」

右京「彼女は何と?」

いと「それが……何も答えてくれなかったそうです」

右京「何も答えなかった?」

いと「えぇ…結絃は、『まるで石田君の事を庇ってるみたいだ』と言っていましたが……」

右京「そうですか。いや、少し気になったものでしてね……」

「では、今度こそ失礼します」


そう言うと、右京は西宮家を後にする。

そして、『ある場所』へと向かって行くのだった。
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:12:28.09 ID:5sCMbn110


―水門小学校 校内―


チャイムの音を合図に、青木はトイレの個室から出てくると
廊下に出ている生徒に見付からないようにしながら、再び6年2組の教室に向かった。


???「ねえアンタ…どういうつもりなの?」

青木「ん…?」


そして、例の教室を訪れると、怒気の籠った声が聞こえる。

それは、先程硝子のサポートを指示されていた、植野直花……

彼女は、腕を組んだ格好で席に座る硝子を睨んでいる。


硝子「………」

植野「どうしていつもいつも、あたしがあんだけ教えてやってるのに分かってくれないの?」

硝子「……………」

植野「そうやってまた、だんまり決め込もうっていうの?」

「ふざけんなよ!」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:13:07.84 ID:5sCMbn110
パチン―――!

怒鳴りながら植野は、硝子の頬に平手打ちを叩き込む。

痛みで顔を歪める硝子。


一方、周りの生徒達はというと……
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:13:44.00 ID:5sCMbn110
川井「〜♪」


川井みきを始めとした、多くの女子・男子生徒は知らん振りしており、
中には何事もないかのように談笑している者達もいた。

見ている生徒もいるにはいたものの、その多くが硝子の姿を見て笑っている。


硝子「…………」


しかし、硝子は自衛の為だろう、愛想笑いを浮かべている。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:14:34.75 ID:5sCMbn110
川井「何だよ……笑って許される問題じゃねぇんだよ!」

「大体、アンタが来てからこんな事ばっか……」

「石田もいじめられるようになったし、あたしもアンタのせいで恥かいてばっかだし……」

「アンタが来てから、何もかもがおかしくなったのよ!分かってる?」

「いや……分かってないだろ!」
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:15:11.86 ID:5sCMbn110


「この悪魔……!!」

219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:15:54.56 ID:5sCMbn110
硝子「…………」


と、硝子を罵ってみせる植野。

硝子も聞こえているわけではないが、植野の様子から何を言われているのか何となくは感じ取っている。

一方、こんな事になっているにもかかわらず、周囲の生徒達は止めに入らない。

それどころか………
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:16:44.14 ID:5sCMbn110
女子生徒A「あーあ……可哀想に」

女子生徒B「けど、いい気味よね」

女子生徒C「アイツのせいで私らの授業、滅茶苦茶だもんね〜」


と、陰口を叩いている生徒が大多数であった。

青木は、その様子も『誰かのスマホ』で撮影している。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:17:35.70 ID:5sCMbn110



男子生徒「おっちゃん、何やってんだ?」

青木「い!?」


その時であった。たまたま近くを通り掛かった
他のクラスの生徒に話し掛けられ、青木は思わず変な声を上げてしまう。

そして、急いで『誰かのスマホ』をポケットにしまい込む。
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:19:12.08 ID:5sCMbn110
男子生徒「今、なんか隠さなかった?」

青木「隠してない!隠してないよ〜……」

男子生徒「つーか、おっちゃん誰?先生じゃないよね?」

青木「あ、あのね……『お兄さん』はね、学校のお勉強に来てる人でね………」

女性教師「どうしたの?」


そこへ、他のクラスの教師がやって来る。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:20:26.72 ID:5sCMbn110
男子生徒「変なおっちゃんが、こそこそ何か覗いてたんです」

「しかも、何か怪しいもの隠しました」

女性教師「え!?」

青木「ち、違います!僕は、友達の頼みで学校の勉強に来た者です!」

女性教師「そうなんですか?」

「けど……今は休み時間ですけど」

青木「休み時間の様子観察も、学校の勉強の内なんです!」

「それに、見学許可もちゃんともらってます!後で校長先生に聞いてみれば分かります!」

「それに、もうそろそろ帰りますんで、校長先生にそう伝えておいて下さい!」

「それじゃ!!」


と言って強引に押し切ると、青木は足早に逃げ出した。

そんな彼に、生徒と教師は呆気にとられるのであった。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:22:13.77 ID:5sCMbn110
―水門小学校 敷地内―


青木「はぁ…はぁ……危なかった………」

「たく……何がおっちゃんだよ、あのガキ!僕はそんなに言われる程老け込んでないっつーの!」

「……うん?」


青木は、ふと前を見ると、そこには池があった。


青木「池……」

「丁度いい……ここにある物拾って、こんな学校さっさとおさらばだ!」


そう言いながら、青木は池の中を覗き込んでみる。

覗いた先にあったものは果たして……?
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:23:19.42 ID:5sCMbn110


―職員室―


島田と広瀬は、急に竹内にこの場所に呼び出された。


広瀬「お、おい……先生、どうして急に俺達を呼び出したんだ?」

島田「知らねぇよ……お前、何かしたんじゃないのか?」

広瀬「やってねえよ……!」


竹内「お前達……」


そのようなやり取りを交わす2人の前に、竹内が姿を現す。
それを見た2人は、ぴたりと黙って彼と向き合った。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:23:57.92 ID:5sCMbn110
竹内「実は聞きたいことがある……正直に答えてくれ」

島田「な、何ですか…?」

竹内「お前達、最近石田へのことで、やり過ぎてはいないだろうな?」

島田と広瀬「「!」」


竹内の問いに、2人は背筋を凍らせた。

彼は、自分達の石田いじめに対しては、ほとんど無関心だったはず……

どうして今頃、そんな事を聞かれなければならないのだろうか?

その疑問に答えるかのように、竹内は次のような事を話す。
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:24:53.16 ID:5sCMbn110
竹内「実は昨日、校長先生に呼び出されてな……」

「『この学校の生徒が、暴力を振るわれている現場を見た』と、警察に聞かれたらしいんだ」

島田「け、警察の人に?」

竹内「そうだ……」

「お前達は特に石田に手を出しているからな……何か目を付けられる事でもしたんじゃないか?」

島田「そ、そんな訳ない……な?」

広瀬「う、うん……!」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:25:44.12 ID:5sCMbn110
竹内「…………」

「そうか、ならいいんだ」

「だが、くれぐれもやり過ぎないように……いいな?」

島田と広瀬「「はい」」


こうして、2人は開放された。

だが、何故竹内にあんなことを聞かれたのか……

その疑問は尽きなかった。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:26:58.19 ID:5sCMbn110
広瀬「島田……一体、どういう事なんだろうな?」

島田「…………」

広瀬「何で急に、竹内先生はあんな事聞いてきたんだろ?」

「それに、警察の人がどうして校長先生のところに……?」

島田「……」

「は!」


その時であった……島田の脳裏に、ある人物の姿が思い浮かぶ。

それは、二度に渡って自分達のいじめを妨害した、あの男……

冠城亘の姿が……
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:29:21.41 ID:5sCMbn110
島田「まさか!アイツ……!」

「ん……?」


冠城の正体に勘付く島田。

するとその時、教室にいたくなくてウロウロしていたのだろう……

目の前の廊下を歩く石田の姿が目に留まる。


島田「…!」


その姿を見るや、島田は速足で石田に駆け寄ると、胸倉を掴んで壁に押し付ける。


石田「!? な、なんだよ……!」


突然の出来事に困惑する石田。

そんな彼の事などお構いなしに、島田は「おい……知ってる事全部話せ!」と問い掛ける。
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:33:03.87 ID:5sCMbn110
石田「何の事だよ……?」

島田「とぼけんじゃねぇよ……昨日、お前を助けた奴いただろ?」

石田「あ……あの、男の人?」

島田「そうだ……」

「アイツ、誰だ?」

石田「へ…?」

島田「誰だって聞いてんだよ!」


そう言って島田は、乱暴に石田の体を揺すった。

彼の行動の理由が分からず、石田はますます混乱する。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:36:40.86 ID:5sCMbn110
石田「だ、だから何なんだって……!」

島田「さっきな……竹内先生からお前のことを聞かれたんだよ!」

石田「俺のこと……?」

島田「あぁ……」

「校長先生から『警察の人から、俺がお前をボコボコにしてること聞かれた』ってな!」

石田「け、警察が校長先生に?」

「……け、けど、それと俺に何の関係が?」

島田「昨日と一昨日、俺達の邪魔したアイツ……警察だろ?」

「アイツに何か話したんじゃないのか?」

石田「……!」


島田の問いに、石田は思わず反応してしまう。

その様子を島田は見逃さない。
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:37:10.13 ID:5sCMbn110
島田「やっぱ知ってんのか?アイツのこと……」

石田「そ、それは……」

島田「一体、何話した?正直に言え……!」

石田「…………」


鬼気迫る様な島田の問いに、石田は一瞬言おうか否か迷ったが、
すぐに冠城が言ってくれた、あの言葉が彼の脳裏を過ぎった。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:37:59.02 ID:5sCMbn110


『大丈夫……君から聞いた事は、上司以外には誰にも話さない』


『僕の上司も、同じ対応を取ってくれるだろう』

235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:38:46.97 ID:5sCMbn110
石田「…!」


そうだ、彼も自分が全てを話した事を秘密にしてくれると約束してくれたのだ、

だったら、自分も……!
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:39:14.86 ID:5sCMbn110
石田「さ、さあ……?」

島田「はあ?」

石田「だ、誰なんだろうな?あの人……」

島田「…………」

「お前、それ本気で言ってるのか?」

石田「あ、あぁ……」

「確かにあの人、俺のこと助けたけどさ……」

「あの後、すぐに俺を家の側まで届けてくれて……」

「だから、警察の人なのか全然分からないし、なんにも話してない……」

島田「…………」

「ふざけてんのか?」

石田「ふざけてねぇよ……」

「大体、お前が正直に言えっつったんじゃねぇか……」

島田「……………」
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:41:03.24 ID:5sCMbn110
こうして、しばし無言で石田を睨む島田。

同じく無言で見つめる広瀬……

そして……
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:41:35.03 ID:5sCMbn110
ドカッ―――!

島田は、石田の顔を殴りつけた。


石田「いって……!」


殴られ、赤くはれた頬を押さえ、その場に跪く石田。

一方、殴った本人は忌々しそうに舌打ちしたのち、
「行くぞ!」と言って、広瀬と共にその場から離れて行った。


石田「…………」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:43:38.53 ID:5sCMbn110
広瀬「お、おい……島田、大丈夫なのかよ?さっき竹内先生に……」

島田「あぁ……だからさっきは、一発殴るだけで済ませてやった」

広瀬「けど、石田の奴、本当にアイツのこと何も知らないのか?」

島田「分からない。けど、あんなんじゃ聞くだけ無駄だろ」

「とにかく、ほとぼりが冷めるまでアイツへのインガオーホーは、しばらく休みだ」

広瀬「あぁ……」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:44:12.32 ID:5sCMbn110


だが、島田達はまだ知らなかった……

こうしている間に、自分達を裁こうとする者達が、着々と準備を進めていることに……

241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:47:19.44 ID:5sCMbn110


水門市内某所カフェ……

このカフェの一角で、1人の青年がコーヒーをたしなんでいた。

冠城亘である。

そこに、水門小学校でやるべき事を終えた青木年男が姿を見せる。
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:47:56.50 ID:5sCMbn110
青木「やれやれ……」

「こっちはやりたくもない猿芝居やらされるは、正体バレそうになって肝を冷やす思いをしたっていうのに……」

「あなたと言う人は、安全地帯でコーヒー飲んでサボタージュですか?」

「お高く留まった身分だ事ですねえ!」

冠城「別にサボって何かねぇよ。お前が来るまでの間、する事がないから休憩してただけだ」

青木「はいはいそーですかっと!」


あからさまに納得していない声色で、青木は冠城の向かい側の椅子に腰かける。
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:48:40.89 ID:5sCMbn110
冠城「それで?ちゃんと撮ってきたんだろうな」

青木「その前にひとつ言いたい事があります」

冠城「なんだよ?」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:50:27.25 ID:5sCMbn110
青木「顔も身分も明かしてて入りずらかったと言うのも分かりますし……」

「いきなり岐阜県警に頼む事も出来ないと言うのも分りますよ?」

「けど……何で僕なんですか!?」

「僕はサイバーセキュリティー課の特別捜査官であって、潜入捜査官じゃないんですよ!」

「大体、こう言うのは伊丹さん達に頼むのが筋ってものじゃありませんかね?」

冠城「まあまあ……あの2人だって、わざわざ遠くの小学校に忍び込みに来てくれる程暇じゃないんだよ」

「それに引き換え、お前は今日は非番……つまり休暇中」

「偶然にも、彼らや俺達以上に動きやすい立場だったんだ」

「おまけに、遅刻する心配もない……上から怒られないだけマシだろ?」

青木(休暇じゃなかったら遅刻させる気だったのかよ……)


心の中で呟きながら、青木は恨めしそうな目線を送る。

それに気付いているのかいないのか、冠城は「それに、お前を選んだ理由はそれだけじゃない」と言う。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:53:21.96 ID:5sCMbn110
青木「それだけじゃないって、どういう事ですか?」

冠城「よく考えてみろ……」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:55:30.89 ID:5sCMbn110



「芹沢さんはともかく、伊丹さんのあの顔は潜入に向いてないだろ?」


247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:56:25.30 ID:5sCMbn110
青木「…………」

「確かに、それは言えてますね」

「あんなこっわ〜い顔の人がやってきたら、門前払いは確実です」

「それどころか、ヤクザか何かと間違われて通報されるかもしれませんね」

冠城「だろ?」


この間、警視庁にいる本人が背中のかゆみを訴えながら「誰かが俺のこと、悪く言ったような気がする」と言い出し、
芹沢から「病院予約しますよ?」とブラックジョークを飛ばされたのかどうかは定かではない……
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:57:00.91 ID:5sCMbn110
青木「しかし、貴重なお休みの時間を潰した罪は重いですよ」

冠城「それは悪かったっと……」

青木「本気で謝ってるんですか?それ……」

冠城「一応は……」

青木「…………」

冠城「それより、早いところ結果を報告しろ」

青木「分かりましたよ……」


冠城の受け答えにイラっとしつつ、青木は『誰かのスマホ』を差し出した。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:57:52.84 ID:5sCMbn110
青木「ほら……要求通り、『あなたのスマホ』にばっちり収めてきましたよ」

冠城「どれどれ……」


出された『誰かのスマホ』=自分のスマホを手に取ると、
冠城は先程青木が撮影した事の一部始終を確認した。


青木「どうですか?」

冠城「……よく撮れてるじゃないか。さすが、お向かいさんを覗き見する趣味があるだけの事はあるな」

青木「失敬な!あの時は、たまたま事件が起きたのが目に入ったので、とっさに撮影しただけです」

「そんな趣味断じてありません!」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:59:21.68 ID:5sCMbn110
冠城「はいはい……それで?」

青木「何です?」

冠城「だから……西宮硝子ちゃんの筆談用ノート。それも回収したんだろ?」


そう言いながら、硝子のノートを出すよう促す冠城。

だが、青木は……
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:02:47.13 ID:5sCMbn110
青木「残念ながら回収出来ませんでした」

冠城「はあ?何で?」

青木「それらしい池を見付ける事は出来ました。しかし、そんなものなかったんですよ」

冠城「ど、どうしてだよ?」

青木「こっちが聞きたいですよ……」

「本当にその石田とかいう少年は、学校の池にノートを捨てたと言ったんですか?」

冠城「あぁ、間違いない」

青木「だとしたら、騙されたんじゃありませんかね?」

冠城「とか言って、ホントはちゃんと確認しなかったんじゃないのか?」


疑いを掛ける冠城に対し、青木は何も分かっていない奴を見るような目でこう返した。
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:03:59.14 ID:5sCMbn110
青木「あのですね……あの池は、それなりに深さはありましたが、かと言って底が見えない程でもありませんでした」

「ノートなんか沈んでたら分かりますよ」

「まあ……仮にあったところで、証拠隠滅の為に学校が処分したと思いますよ」
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:04:55.35 ID:5sCMbn110



「なんせあの学校、腐ってますからね」


254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:08:32.71 ID:5sCMbn110
冠城「腐っている?」

青木「えぇ……あのクラスの様子を見てすぐ分かりましたよ」

「クラスの担任は西宮硝子の授業を生徒に丸投げ、あのクラスのガキんちょはその事で西宮硝子に八つ当たり」

「それでもって周りの連中はガン無視決め込んで、ケラケラ笑って陰口叩く始末……」

「挙句の果てに、校長は僕をあっさり通す無能ときた」

「何とまあ、ド低能なこと!」

「これを腐っているといわずに何と言いますか?」

冠城「……………」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:09:55.70 ID:5sCMbn110
青木「けど、何処の学校もこんなものなんでしょうね」

「自分達の失敗を怒られるのが怖いから、知らん振りを決め込んで……」

「いざ咎められそうになれば、いじめた奴に全部擦り付けて自分達だけはのうのうと仕事を続けていく……」

「子供連中も、そんな奴らの背中を見て、真似をして……そして汚い大人に育っていく」

「まるで犯罪者育成教室……う〇こだ!」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:10:23.32 ID:5sCMbn110



「そして、こんなう〇こどもを満足に掃除出来ず、日本中にゴロゴロさせている警察はもっとう〇こですよ」


257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:13:24.78 ID:5sCMbn110
冠城「…………」


普段なら反論するところであったが、今回冠城は珍しく青木の言い分を真面目に聞いていた。

警察嫌いの青木の事だ、学校問題にかこつけて警察の事を叩きたかっただけなのかもしれない……

だが、言っている事自体は割と的を得ていた。

この日本には今回のような事件が起きた学校は、数が知れないだろう。
それらちゃんと解決出来ているのか聞かれると……

それは出来ているとは胸を張って言えない。

学校内のいじめは、限られた空間内で行われている。
それが故に、警察が気付くのに遅れ、そして気付いた時には既に内密に処理された後であることが大半だ。
今、こうしている間も、何処か別の学校でも同じ事が起こり、その真実が闇に葬られ続けているに違いない。

この問題で一番罪深いのは、ある意味日本警察なのかもしれない……
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:13:58.95 ID:5sCMbn110
そう思った時、ふと冠城は昨日の右京の表情を思い出した。

石田の話しを聞いて何を感じたのかと問い掛けた際に見せた、あの真剣な表情が……


恐らく……いや、間違いなく彼も分かっている。

今回の問題は、水門小学校に限った事ではないことを……

他の学校の過ちを裁けず、野放しにしてしまっている日本警察の現状を……


今この瞬間、冠城は自分達が今回の件に関わるのがいかに大事なことであるのかを再認識させられた。


そして「まさか……お前にその事を教えられるなんてな………」とボソリと呟く。
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:15:40.51 ID:5sCMbn110
青木「何か言いました?」

冠城「ん?あぁ……」

「『ノートがなくても、これくらいあれば充分だ』ってな」


と言って誤魔化す冠城。誤魔化しと知らないまま、
青木は「それは良かった。また行って探して来いと言われたら、どうしようかと思いましたよ」
と言ってみせた。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:16:46.71 ID:5sCMbn110
青木「という訳で、僕はこれで……」

冠城「おいおい……せっかくここまで来たんだし、一杯くらい飲んでけよ」

「ここのコーヒー、美味しいぞ?」

青木「お断りします。休みと言えども暇ではないんで……」


冠城の誘いを突っぱねると、青木は席を立って足早に帰っていった。
そんな彼の後ろ姿を見送ると、冠城は静かにまだカップに残ったコーヒーに口を付ける。

その後、飲み終え、会計を済ませると、『ある場所』へと向かって行った。
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