相棒×聲の形「灯台下暗し」

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61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/27(日) 11:53:22.33 ID:1GsLvrze0
改めて見てみると細かいミスが……

>>23

×冠城「けど…何であの娘、ベルの音に気付かなかったんでしょうか? → 冠城「けど…何であの娘、ベルの音に気付かなかったんでしょうか?あれだけ鳴らされたら、普通誰だって気が付くのに……」
あれだけ鳴らされたら、普通誰だって気が付くのに……」

>>51

×冠城「この事から石田君は硝子ちゃんをいじめた事で、クラス内から報復を受けている可能性が高い。」→ 冠城「この事から石田君は硝子ちゃんをいじめた事で、クラス内から報復を受けている可能性が高い」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:56:05.69 ID:1GsLvrze0
そして、続きです。

今回不快な話が出てくるので、苦手な方はご注意を……
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:56:44.37 ID:1GsLvrze0
相棒×聲の形 〜2日目〜


翌日の朝……

西宮宅では硝子は朝食を終え、服を着替えて学校に行く時間になっていた。


硝子「………」


だが、硝子は1人気乗りしない表情を浮かべている。
そんな彼女が自身の脳裏に浮かべているのは、昨日いじめられたり、
教師に突き放されたりしていた石田の姿……

そして、その事を調べに来た右京の顔であった。


八重子「硝子!学校に行く準備は出来たの?!」


それを遮らんと言わんばかりに、怒鳴るような声と共に八重子が姿を現す。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:57:13.85 ID:1GsLvrze0
八重子「もう出来てるじゃないの!早く行きなさい、遅刻するわよ!」

硝子「………」

八重子「何よその顔は!あの事はもう終わったのよ?」

「そんな顔をしてると、またあのクソガキに舐められるわよ!」


娘の表情に苛立つような表情を浮かべる八重子は、彼女の腕を無理矢理引っ張り、玄関へ連れて行く。
それを結絃は見逃さない。


結絃「母さん!ちょっとは優しくしてやれよ!」

八重子「うるさいわね。ほら!行きなさい硝子!」


反論しようとする結絃を無視して、八重子は硝子を押す。
八重子の強い押しに硝子は素直に従うしかなく、学校へと出掛けて行った。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:57:40.01 ID:1GsLvrze0
八重子「さて…私も早く仕事に行かなくちゃね」

「母さん!私がいない間結絃を甘やかさないで頂戴」

結絃「ちょっと…婆ちゃんはオレらのこと甘やかしてなんか……」


バタン!

だが、結絃の言葉を無視して、八重子も仕事に出て行ってしまった。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:58:52.22 ID:1GsLvrze0
結絃「またシカトかよ!」

いと「ゆずや、仕方ないよ……」

「それに、石田君の事ももう終わったんだから………」

結絃「石田の事……か」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:00:11.58 ID:1GsLvrze0
いと「……どうしたんだい?」

結絃「いや、昨日の刑事さんの言ってた事が少し気になってさ」

いと「石田君がいじめられている……確かそんな事言ってたねぇ」

結絃「アイツがいじめられようが、知った事じゃないけどさ…」

「『何でそれを、刑事さんが調べてるんだろ?』って思って……」

「しかも、姉ちゃんがそれを見てたっていうし……」

「一体、何が起きてるっていうんだ?」

いと「…………」

結絃「とにかく、学校が終わったら姉ちゃんに聞いてみるよ」

いと「そうね……そうするのが一番かもね………」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:00:39.65 ID:1GsLvrze0
―石田宅―


石田「母ちゃん…俺、行ってくるから」


一方、石田もまた学校へ登校しに行く所であった。


美也子「行ってらっしゃい……ショーちゃん」


そんな彼を、母親の『石田美也子』は見送る。

しかし、玄関を出る石田の後ろ姿は、とても暗く映った。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:03:27.04 ID:1GsLvrze0
美也子「…………」


何故彼は、あんなに暗いのだろうか?

そう言えば昨日、傷だらけで学校から帰ってきた。

いや、昨日だけではない。

本人は、また学校ではしゃぎ過ぎたといっていたが……

その割には、あまりにも傷の具合が酷過ぎる。


美也子(やっぱり……あの子………)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:04:01.04 ID:1GsLvrze0
いじめられているのか?

そう考え、美也子は首を横に振った。

もし仮にそうであったとして、自分に何が出来る?
彼が硝子をいじめたのは紛れもない事実……

いじめの加害者の母親の自分がいくら言った所で、
よその子をいじめた母親が何を言うのかと断じられるのは目に見えている。


美也子「ショーちゃん……」


それでも彼女は、これ以上何もしてあげられない自分に、歯がゆさを感じた。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:06:22.77 ID:1GsLvrze0
―水門小への通学路―


小学校低学年・高学年が自身の母校へと向かう道。

その途中で、石田と硝子が出くわした。


石田「あ…」

硝子「…………」


目が合ってしまう2人……

石田はとても複雑そうにしている一方、硝子は彼の顔をジッと見ている。
彼の顔には、未だに昨日の傷の手当てをした跡である、絆創膏が貼られてある。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:06:51.50 ID:1GsLvrze0
石田「な…なんだよ?」

硝子「…………」

石田「なに人の顔ジロジロ見てんだよ!」

硝子「……………」

石田「あぁ…そういやお前、耳聞こえなかったんだっけ?それでいて、凄く音痴で……」

硝子「……………」

石田「大体、俺がこうなったのは全部お前のせいだ!お前なんか来なかったら…!」


まるで、今の自分の状況に対する苛立ちをぶつけるかのように言い放つ石田。
しかし硝子は、表情を崩さず彼を見続けている。

そんな彼女に、石田は余計苛立ちを募らせた。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:07:22.20 ID:1GsLvrze0
石田「ンな顔されても分かんねぇよ!なんか言いたきゃはっきり言えよ!このぉ!」


当たり散らすように硝子を軽く押し飛ばすと、石田はさっさと先に行ってしまう。
それでも梢子は、怒らずに彼の後ろ姿をジッと見つめていた……
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:07:57.56 ID:1GsLvrze0
―旅館の前―


冠城「さあて…右京さん、今日は何処から行きますか?」


そう言いながら旅館から出て来つつ、「やっぱり、石田君のお宅ですか?」と冠城は隣を歩く上司に尋ねた。


右京「そうするつもりですが、今日は別行動と行きましょう」

冠城「別行動ですか。それは面白い……」

右京「…………」


面白がっている様に振る舞う冠城に対し、右京は冷ややかな目を向けた。


冠城「冗談です!だから、何をすればいいか教えてくれません?」

右京「………それはですね」


右京は、冠城に何をして欲しいのかを説明した。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:09:40.82 ID:1GsLvrze0
冠城「分かりました。出来る限りやってみましょう」

右京「お願いします。僕は、石田君のお宅を当たります」


こうして、2人はそれぞれ別の場所へと向かって行った。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:13:35.97 ID:1GsLvrze0
一旦切ります。何とか今日中には終わらせたいです
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:13:20.56 ID:1GsLvrze0
―HAIR MAKE ISHIDA―


店内には客がおらずガラガラであった。

石田の硝子いじめが発覚して以来、こんな調子なのだ。

あんな出来事が起きたのだ、何処からか噂が流れて石田家に不信感を抱かれてもおかしくない……


???「お邪魔します」


だがその時、誰かが店に入って来る。


美也子「いらっしゃいませ…」


美也子が店の出入り口に目を向けると、そこには眼鏡とスーツ姿の男が1人……

言うまでもなく、特命係の杉下右京だ。

右京は、「どうも初めまして。こういう者です……」と言いながら警察手帳を見せた。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:14:30.44 ID:1GsLvrze0
美也子「警察?」

右京「東京の警視庁にある特命係から来ました、杉下右京です」

「あなたが、石田将也君のお母様ですか?」

美也子「は、はい。母の石田美也子ですが………」

右京「少々お話があります。お時間頂いても、よろしいですか?」

美也子「…………」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:15:55.70 ID:1GsLvrze0

「はい、構いません……」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:16:44.17 ID:1GsLvrze0
警察がウチに来た……

この事実に、美也子はある確信を抱き、右京を自宅の居間に案内した。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:19:14.94 ID:1GsLvrze0
―石田家の居間―


右京「本当にいきなり押し掛けて、申し訳ありませんねぇ……」

美也子「そんな事ありません。最近めっきりお客様が減ってしまって、暇でしたから…」


最近、客が減っている……


何故、そうなっているのかについて、右京はあえて言及しなかった。
石田の硝子いじめが関連している事は、今までの調べで明らかであったからだ。

一方、美也子は恐る恐るこう尋ねた。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:20:31.54 ID:1GsLvrze0
美也子「ところで、刑事さん……お話と言うのはもしかして、息子の……」

「ショーちゃ…じゃなくて、将也のことで来たのでは……?」

右京「そんな所です」

美也子「じゃあ目的は……」

右京「彼が、西宮硝子ちゃんに対して行ったいじめについて、詳しい話を伺いに……」


右京の一言に、美也子の表情が一気に重苦しくなる。

それだけ、息子の所業を憂いているという事なのだろう。

息子が硝子をいじめた事実に対する
強い責任と自任の念を美也子から感じつつ、右京は話しを続ける。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:21:07.63 ID:1GsLvrze0
右京「ご察しであると思いますが、我々はとある事情から息子さんのした事を調べました」

「結果、西宮硝子ちゃんの事をいじめていた事実が判明した……」

「しかし、動機の面が未だ不透明でありましてねぇ……」

「硝子ちゃんの妹さんは、硝子ちゃんの難聴の事を馬鹿にしていたのではないかと仰っていましたが……」

「実際のところ、どうなのでしょう?」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:22:32.24 ID:1GsLvrze0
美也子「…多分、その娘の言う通りだと思います」

「ショーちゃんは、友達とつるんで度胸試しとか言って河に飛び込んだり、自分より体の大きい人に喧嘩を売ったり……」

「親の私が言うのも何ですが、やんちゃ過ぎる悪ガキでした」

右京「随分と無茶をなさっていたのですねぇ……」

「しかし、止めなかったんですか?」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:24:33.34 ID:1GsLvrze0
美也子「…………」

「はい……」

「数年前に夫が出て行って以来、1人で店を切り盛りしていて忙しかったですし……」

「何より、変に叱るより、好きにさせておいた方がいいと思っていました」

「一番上の娘も、しょっちゅう恋人をとっかえひっかえに連れて来てたので」

「尚更、子供達は自由にしておくべきだと……」

「けど、それがこんな事になってしまうなんて……」

右京「普段からやんちゃが過ぎていたという事は、硝子ちゃんへのいじめもそれの延長線上のようなものだったと?」

美也子「恐らくは…………」

「それに、今年に入ってから、お友達の子とつるむ事がなくなってきたので、それも関係しているのかもしれません」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:25:04.63 ID:1GsLvrze0
右京「………」

「ところで、息子さんが硝子ちゃんをいじめた事で、学校から他に何か聞いていませんか?」

美也子「いいえ…将也が西宮さんのお子さんをいじめていたこと以外、なにも……」


彼女のその言葉に、右京は「なるほど……そうですか」と納得してみせる。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:26:41.40 ID:1GsLvrze0
美也子「あの…聞きたいのは、それだけですか?」

右京「えぇ……何か?」

美也子「…せっかくお伺いしてくれた所、こんな事を言うのは申し訳ありませんが……」

「出来るなら、もう息子の事で来ないで欲しいんです……」

右京「…………」

「…息子さんの事で色々とお辛い事はご察しします」

「しかし、警察としてこの問題に目を瞑る訳には……」

美也子「違うんです」


これ以上、石田の事で責められるのが
嫌なのだろうと思って言った右京であったが、美也子はそれを否定した。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:27:57.81 ID:1GsLvrze0
右京「違う?それは、どういう事で……?」

美也子「………」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:28:23.80 ID:1GsLvrze0


「実は…………」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:29:08.13 ID:1GsLvrze0
―水門小学校―


6年2組の教室では、いつも通りの授業が行われ、いつも通りの時間が過ぎていた。

ただ1人、石田を除いては……
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:29:37.42 ID:1GsLvrze0
石田「……………」


昨日特命係の2人に見付かった事があったのか、向こうがそう言う気分なのかは不明だが、
今日は肉体的苦痛を与えるようないじめは行われはしなかった。

だがその代わり、誰からも無視され、一部の生徒からはケラケラと笑われている……
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:30:17.64 ID:1GsLvrze0
石田「ん…?」


その時であった。石田は自分の席に目を向けると、そこには梢子がいた。
一体彼女は何をしているのかと言うと、彼の机を雑巾がけをしている。

本来ならば、自分の机を誰かが掃除してくれる事は喜ばしい事であるはずなのだが、
相手がよりによって自分がいじめた相手……

石田は、それが不愉快に感じた。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:31:04.35 ID:1GsLvrze0
石田「おい!何勝手に人様机拭いてんだよ!あっち行け!」

硝子「あ……」


彼は怒鳴りながら梢子を机から突き放すと、もう手を出されまいと言わんばかりに席に腰掛ける。
それでも硝子は心配そうな目を向けるが、「何見てんだよ?さっさと行けよ!」と結局突き放されてしまう。

耳がはっきりと聞こえないとは言え、彼の様子からそう言われていると察したのだろう、
硝子はシュンとしながら彼の席から離れるしかなかった。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:32:18.47 ID:1GsLvrze0
石田(たく…何なんだよ!)


そう言えば、この前も勝手に机の中を漁っていた事もあったっけ……?

と、硝子の行動を思い出したが、今の状況の事で頭が一杯な石田は、
その理由まで考える余裕はなかったのであった……
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:33:57.92 ID:1GsLvrze0
その頃、校長室ではある男が水田校長に呼び出されていた。
石田がいる6年2組の担任教師である。


担任「校長…いきなり呼び出して、何でしょうか?」

水田校長「竹内君。実は昨日、警察の方が私のとこに来てね……」


校長の問いに、『竹内』と呼ばれた6年2組の担任は「警察が?」と少しばかり驚く。


竹内「一体、何の用で来たんで?」

水田校長「…………」

「『この学校の生徒が、暴力を振るわれている現場を見た』と……」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:35:00.48 ID:1GsLvrze0
竹内「……………」

水田校長「一応、喧嘩と言う事にはしておいたんだが……」

竹内「…………」

「あなたが喧嘩だと思っていらっしゃるのなら、そうなのでは?」

水田校長「んーまあ…そうだと思いたいんだが……」

「向こうは『いじめか何かがあったのではないか?』と疑っているみたいでね」

竹内「それに対しては、何と答えたんです?」

水田校長「『特に何もなかった』と……」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:36:01.65 ID:1GsLvrze0
竹内「……………」

「だったら、問題ないじゃないですか」

「西宮いじめの犯人は石田……そういう事で話しは付いたはずです」

「あれ以来、私のクラスも平和です。今更聞くような事じゃないでしょう?」

水田校長「それも、そうだな……」

「すまんね……西宮君のいじめ問題があったばかりだから、少し心配になって………」

竹内「本当に、要らない心配ですね」


呆れた風に返すと、竹内は「では、業務に戻らせてもらいます」と言って退室する。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:37:34.28 ID:1GsLvrze0
竹内「ふぅ…………」


そして、校長室の外で安堵するかのように息を吐いた。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:39:56.24 ID:1GsLvrze0
―放課後―


石田はいじめられる前にさっさと家に帰ろうと、足早に学校を出ようと歩いていた。


???「おい…!」


だが、正門を出た辺りで、彼は後ろから誰かに呼び止められる。
その声に石田は反射的に反応し、振り返ってしまう。


???「お前……さっさと帰って逃げようとか思ってるんじゃねぇよな?」


振り返った先には、昨日自分に暴力を振るっていた2人の少年……

名前は、『島田一旗』と『広瀬啓祐』
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:41:18.59 ID:1GsLvrze0
石田「な……なんだよ?何の用だよ?」

島田「インガオーホーの続き……」

石田「え…?」

島田「だから、昨日のインガオーホーの続き」

石田「…!」


島田の言葉に石田の表情が青ざめた。

要するに、昨日特命係に中断させられた暴行の続きを、今から始めようと言われたのだ。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:42:19.98 ID:1GsLvrze0
石田「お、おい……こんな所で続きやるの、まずいんじゃねぇか……?」

島田「だから、今から場所移すんだよ……広瀬!」

広瀬「おう!」


島田に命令され、広瀬は石田を押さえつける。


石田「や、止めろよ…!明日でもいいだろ?!」

島田「そうやって逃げようたってそうは行かねぇよ」


考えを見透かしたかのように返す島田。

そして抵抗虚しく、何処かに連れて行かれそうになる石田。


だが……
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:45:17.35 ID:1GsLvrze0


???「ちょっと、そこの君達ぃ〜」

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:45:48.54 ID:1GsLvrze0
突然、自分達以外の男性に呼び止められ、彼らはその声がした方向を振り返る。


島田と広瀬「「!」」


振り返った瞬間、2人は驚きの表情を見せる。
何故ならそこには、昨日自分達の石田へのいじめを止めてきた冠城亘がいたからだ。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:46:26.62 ID:1GsLvrze0
冠城「その子を何処へ連れて行く気かな?」

島田「え…あ……」

広瀬「そ、それは……その………」

冠城「もしかして、昨日僕達のせいで出来なかった喧嘩の続きかな?」

島田と広瀬「「………」」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:48:18.68 ID:1GsLvrze0
冠城「駄目だなぁ……」

「君達みたいな年頃になると色々あるのは分かるけど、だからって喧嘩は良くないよ?仲良くしなきゃ〜」

広瀬「お、おい…!島田……」

島田「に…逃げろ!」


何でまた邪魔が……!

と悔しさを感じたものの、今この場で捕まっては元も子もない。

そう言う訳で、広瀬と島田は一目散に逃げて行った。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:48:58.03 ID:1GsLvrze0
冠城「…………」


この場から立ち去る彼らを見た後、冠城は「大丈夫かい?」と石田に声を掛ける。

彼らから解放された石田は、何も言わずにさっさとその場から立ち去ろうとした。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:50:49.77 ID:1GsLvrze0
冠城「石田将也君だね?」


石田「!?」


だが、冠城に自分の名前を呼ばれ、石田は驚き、足を止めて彼を見た。

何故、彼は自分の名前を知っているのだろうか?

昨日、少し顔を合わせただけで、一言も会話していないのに……
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:51:27.52 ID:1GsLvrze0
冠城「やっぱり……君が石田君なんだね?」

石田「あ…アンタ、一体……?」

冠城「話したいのは山々だけど、ここだとちょっとまずい……場所を移そう」

石田「あ…あ、あぁ……」


冠城の提案に流されるままに乗っかる石田。

こうして、彼を連れて移動を開始しようとする冠城であったが……
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:53:59.95 ID:1GsLvrze0
冠城「?」


その時、後ろの方を見ると、硝子が遠くからこちらを見ている事に気付く。
しかも良く見てみれば、彼女の目線は石田の方にも向けられているようにも見えた。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:55:26.48 ID:1GsLvrze0
冠城「…………」


冠城はその様子が少し気になったものの、
今は石田の方が優先であった為、その場を立ち去るしかなかった。

こうして冠城は、石田を連れて近場のファミレスに入り、
そして隠れるのに最適そうな席に腰掛けた。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:56:46.01 ID:1GsLvrze0
冠城「ここなら、向こうの席からはすりガラス越しで君の姿は良く見えないし」

「外からも、僕の陰になって君の姿は誰にも見えない」

「唯一の目撃者は店の人とそこの監視カメラだけど……」

「店員が他の客に君の事を話すわけないし、監視カメラの映像だって一般人が見れるものじゃない」

「そもそもこんな店、子供だけで入れやしない……」

「どうだい?彼らから身を隠すには、打って付けだろ?」


そう言ってウインクしてみせる冠城。
だが、石田は彼に対する不信感を拭いきれなかった。

そんな中、店員の女性が冠城が注文したオレンジジュースを石田に持って来る。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:57:33.87 ID:1GsLvrze0
冠城「ほら……喉乾いただろ?」

石田「け、けど……」

冠城「僕からのおごりだ。遠慮しないで飲めって」

石田「………」


冠城にそこまで言われると、石田は半ば仕方なしにオレンジジュースに口を付ける。

そして、彼が全部飲みきったあたりで、冠城は表情を切り替える。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:58:48.84 ID:1GsLvrze0
冠城「自己紹介がまだだったね。僕はこういう者だ……」


そう言って冠城は、自分の手帳を見せる。


冠城「警察手帳……一度くらいは見た事あるだろ?」

石田「! じゃ…じゃあ、アンタは……!」

冠城「僕は、東京の警視庁から来た刑事だ」

「名前は、冠城亘……」

石田「冠城亘……」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:59:50.19 ID:1GsLvrze0
冠城「さて、どうして僕があそこにいたのかだけど……」


身分を明かした冠城は、昨日島田達のいじめを止めた後、
右京と共に色々と調べて回った事を石田に明かした。


冠城「そうして君の事を調べていく内に、君が西宮硝子ちゃんをいじめていた事が分かったという訳だ」

「だから、あそこで君を待っていたんだ。その事を詳しく聞く為にね」

石田「…………」


事情を聞かされた石田の表情は重かった。

当然だろう、自分の所業がこんな形で警察に知られるとは、思ってもみなかったのだから。

そして、冠城がその事を咎めに来たのだろうとも考えた。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:01:58.60 ID:1GsLvrze0
冠城「言っとくけど、僕は君を咎める為に話しを聞こうってわけじゃないんだ」


予想外の言葉に石田は「え…?」と疑問符を浮かべる。


冠城「君、今いじめられているでしょ?」

石田「い、いや…それは……」

冠城「隠さなくたっていい。昨日のあれは、どう見ても喧嘩なんかじゃない」

「無抵抗な相手をリンチにして痛めつける……立派ないじめだ」

「さっきだって、そうなり掛けていたんじゃないのかい?」

石田「……」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:03:47.09 ID:1GsLvrze0
冠城「しかし、何故硝子ちゃんをいじめる側だった君が、今度はいじめられる立場になったのかっていう疑問があってね……」

「僕は最初、硝子ちゃんをいじめた事に対する報復だと思ったんだけど……」

「ウチの上司は、他の可能性も疑ってるみたいでね……君に直接聞いて来いって言われたんだ」

石田「…………」

冠城「だから…正直に話して欲しい」

「今君がいじめられているは、硝子ちゃんをいじめた事に対する報復なのか?そうじゃないのか?」


真剣な面持ちで、石田と顔を合わせながら冠城は問い掛ける。
一方石田は、そわそわした様子で答えようとしない。

答えるべきかどうか迷っているようだ。

そこで冠城は、次のような事を言った。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:04:22.81 ID:1GsLvrze0
冠城「話したくないのなら、それで構わない」

「一般人……それも子供から強引に事情を聞き出すなんて、警察のする事じゃないからね」

「けど……それでいいのかい?」

石田「え…?」

冠城「君は今、担任の先生からの助けも得られない状況に陥っているんじゃないのかい?」

石田「どうして、そのことを?」

冠城「昨日、学校でたまたま見たんだよ。君が、先生に相手にされていない現場を……」

石田「…………」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:06:22.25 ID:1GsLvrze0
冠城「それに、被害者が被害に遭ったと認めてくれなければ、僕達警察も手の出しようがない。事件性が、認められないからね」

「しかも僕らは違う所轄の刑事だ……この市には長くはいられない。いつ、警視庁に呼び戻されてもおかしくないんだ」

「そうなったら、君を助ける大人はいなくなるだろうね」

「それでも乗り切れる……後悔しないという自信があると言うのなら、僕達は引き下がるつもりでいるけど」

石田「……!」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:07:23.90 ID:1GsLvrze0
冠城の言葉に、石田は表情を曇らせる。

少しばかり脅すような真似をして冠城は心を痛ませたが、間違った事は言っていないつもりだ。

このまま石田が何も話さなければ……救いを求めてくれなければ、意味がない。

6年生と言えども、彼はまだ子供……大人の助けがなければ生きていけない年頃だ。

だから尚更、彼自身が自分達大人に救いを求めてくれなければ、その時点で終わってしまう。

それこそ、昨日今日といじめから救ったことすら無意味になる。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:08:10.17 ID:1GsLvrze0
冠城「大丈夫……君から聞いた事は、上司以外には誰にも話さない」

「僕の上司も、同じ対応を取ってくれるだろう」

石田「ほ、ホント……か?」

冠城「僕達は警察だ……秘密は守るよ」


秘密は守るという冠城の言葉……

この一連の流れで、石田の心は揺れ動く。

そして……
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:08:38.75 ID:1GsLvrze0


石田「じ、実は……」

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:09:30.31 ID:1GsLvrze0
―西宮家―


結絃「姉ちゃんお帰り」

硝子「おきゃ…えり……」


学校から帰って早々、待ち構えた結絃に硝子は呂律の回らない声で「お帰り」と返してみせる。

ランドセルも下ろし、手も洗い、少し落ち着いた頃合いを見計らい、
結絃はいよいよ、気になることを聞き出そうと動く……
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:10:07.09 ID:1GsLvrze0
結絃「姉ちゃん…ちょっと聞きたい事あるんだけど」


手話を交えて聞いて来る妹に、硝子は「なに?」と手話で返す。


結絃「昨日、刑事さんが石田がいじめられてて、姉ちゃんがそれ見てたって言ってたけど……」

「一体、どうしてそんな事してるんだ?石田に何が起きてるんだ?」

硝子「…………」


その事を聞かれた途端、硝子はまた昨日の時の様に手話をする手を止めて黙ってしまう。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:10:44.34 ID:1GsLvrze0
結絃「ね、姉ちゃん……?」


何も答えない姉を不思議がる結絃。

一方、本人は手話で「宿題やってきます」と伝え、足早に自室に行ってしまった。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:11:21.38 ID:1GsLvrze0
結絃「姉ちゃん…!」

いと「ゆず…どうしたんだい?」

結絃「婆ちゃん……姉ちゃんに、石田がいじめられてる事を聞いてみたんだけど」

「何も答えてくれなかった……」

いと「そうかい……」

結絃「どうしてだよ……何で話してくれないんだよ?」

「なんか…アイツのこと庇ってるみたいだ……」

いと「……………」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:13:14.42 ID:1GsLvrze0
一方その頃……

ファミレスで話しを終えた冠城は、石田を彼の自宅まで送り届けていた。


石田「この辺でいい。ここまで来れば、アイツらには会わないから」

冠城「そうかい?じゃあ、気を付けて……」


こうして、石田に背を向けてその場を立ち去ろうとする冠城。
そんな彼に対し、石田は「待って…!」と言って彼を引き止める。


冠城「ん……?」

石田「さ、さっき話したこと……」

冠城「…………」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:13:48.13 ID:1GsLvrze0



「何の事かな?」


128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:14:37.89 ID:1GsLvrze0
石田「え…?」

冠城「僕は、喧嘩沙汰になりそうになった君を助け、君を家の側まで送った……」

「それ以外に何もしていない」

「つまり、君は僕に何も話していない……」

「そうだろう?」


すっとぼけた風に言って見せた後、冠城は改めてこの場から去っていく。

彼の受け答えに、石田は絶対に彼は秘密を守ってくれる……

自分の味方だという確証を得るのだった。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:15:17.90 ID:1GsLvrze0
冠城「…………」

こうして、石田を送り終えた冠城は、泊っている旅館の部屋に戻ってみると、
そこには既に右京がおり、ちゃぶ台の上のお茶を優雅にすすっていた。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:16:04.46 ID:1GsLvrze0
冠城「そろそろ、紅茶が恋しくなってきたんじゃないですか?」

右京「やっと戻りましたか。僕はずっと、ここで待っていたのですが……」

「一体何処で油を売っていたんでしょうかねえ?」

冠城「せっかく戻って来て、そりゃないじゃないですか〜」

右京「では、君はちゃんと石田君から話しを聞く事が出来たんですか?」

冠城「もちろんです。下校時間を狙って正門で待ち構え、捕まえました」

「その際、例の2人にまたいじめられそうになってたので、助けてあげましたよ」

「そちらは?」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:17:18.18 ID:1GsLvrze0
右京「石田君のお母様……石田美也子さんから、話しを伺うことが出来ました」

冠城「お母様にですか……」

右京「どうやら、シングルマザーのようで……」


右京の答えに「そうだったんですか……」と冠城は納得する。
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:18:16.98 ID:1GsLvrze0
冠城「で?彼女は、なんと?」

右京「その前に、君が石田君から聞いたことを話して下さい。何を聞いたかは、その際お話しします」

冠城「分かりましたが……その前に、ひとつ聞いて宜しいですか?」

右京「何でしょうか?」

冠城「朝は特に気にしていませんでしたが、わざわざ別々に行動する必要あったんでしょうか?」

「2人で石田君のお母様に話を伺って、その後石田君に話しを聞く……」

「それでも、問題なかったと思うんですが……」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:19:36.98 ID:1GsLvrze0
右京「大の大人……それも男2人が揃って話しを聞くよりも、一対一で話した方が向こうも話しやすいだろうと判断しました」

「それに、あのようなお子様から証言を引き出すのは、僕よりも君の方が向いていると思いましてねぇ……」

冠城「つまりそれは、俺の能力を買ってくれたので?」

右京「それはともかく、早く話してくれませんかねぇ……」

冠城「そこは『はいそうです』って言って下さいよ……」


そう言って残念そうにしつつも、冠城は石田から聞いた話を語り出す。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:20:31.32 ID:1GsLvrze0
何でも石田は、今まで島田や広瀬と言った学校の友達と一緒に、
よく馬鹿騒ぎして遊んでいたのだが、今年に入りその2人が
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:21:22.93 ID:1GsLvrze0


『いい加減危ないから』


『来年の中学校への進学に向けての勉強を進めたいから』

136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:21:49.76 ID:1GsLvrze0
などの理由で、石田の馬鹿騒ぎの輪から離れて行ったのだという。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:22:22.75 ID:1GsLvrze0
冠城「それで石田君、凄く退屈だったそうで…」

右京「その矢先に、硝子ちゃんがやって来た……」

「石田君のお母様も、友人とつるまなくなったのが関係していると言ってしましたが……」

「彼女に手を出したのはやはり、普段の行動の延長線上のようなものだったわけなのですね」

冠城「えぇ…彼が言うには、最初は自分にとっての非日常……。悪く言えば、退屈しのぎの道具みたいに見ていた様なんです」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:23:29.65 ID:1GsLvrze0
最初はただからかっていただけだったものを、面白がって続けてい行く内にエスカレート。
からかいから嫌がらせへと変わっていったのだと、冠城は語った。

6年生と言えども、石田はまだやんちゃ盛りの子供……

調子に乗って事を大きくしてしまうのは、彼でなくとも十分あり得る。

だが、そう考えると『担任に止められなかったのか?』という疑問が出てくるが……
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:24:29.00 ID:1GsLvrze0
右京「そして、彼の担任はその事を黙認していた訳ですか……」

冠城「良く分かりましたね」

右京「学校からは『硝子ちゃんいじめの犯人は石田君である』という事実しか聞かされなかった……」

「石田君のお母様は、そう仰っていました」

「それに、昨日の硝子ちゃんのお婆様の話しを聞いた時から、その時点で教員が止めなかったのかという疑問があったもので……」

冠城「さすがです。まさにその通り……」

「しかも、石田君の担任……昨日我々が見たあの人、竹内というんですが……」

「問題はいじめの黙認だけではないらしいんですよ」

右京「と、言いますと?」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:25:28.74 ID:1GsLvrze0
冠城「……………」

「どうやら彼、硝子ちゃんが石田君のいるクラスに入った時点で、彼女の世話を生徒達にやらせていたそうなんです」

「要するに、丸投げですね」

「それが原因で、6年2組の授業はいつも遅れていて、生徒達はその事で梢子ちゃんを忌々しく思っていたみたいなんです」


石田が硝子へのいじめをエスカレートさせたのも、それが一因しているのだと冠城は語った。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:25:57.18 ID:1GsLvrze0
冠城「それと、竹内先生は確かにいじめの黙認はしましたが、一応注意はして来たそうですよ」

右京「ですが、軽い注意しかしなかった……」

冠城「ご名答」

「石田君が言うには、彼は注意してくる事はしてきたものの……」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:27:34.81 ID:1GsLvrze0


『やり過ぎは良くない』


『こんな事を続けていると、いつか自分に返って来るぞ』

143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:29:23.59 ID:1GsLvrze0
冠城「と、忠告めいた事を言ったくらいで、それ以上の事はしなかったと………」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:34:34.27 ID:1GsLvrze0
注意しかしなかった……

つまり、竹内は硝子いじめを黙認したばかりか、必要最低限の対応しか取らなかった事になる。

その上、硝子の世話を生徒に押し付けていたとは……


他人の子供を預かっている以上、教員は彼らの身の安全と教育の場を保証出来なければならないはずだ。

しかし、竹内は硝子に対し、それが出来ていなかった……

生徒を指導する立場の人間がして許されることではない。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:35:44.67 ID:1GsLvrze0
冠城「で、話しはここからなんですが……」

「実は、あの学校でクラス対抗の合唱コンクールが行われたそうでしてね……」

「その事で、『喜多』という教師と竹内先生が『ある事』で揉めていたんです」

「その『ある事』と言うのが、硝子ちゃんをコンクールに参加させるかどうかでした」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:36:35.57 ID:1GsLvrze0
何故竹内と喜多が、そのような事で揉めたのか?

理由は言わずもがな、硝子は耳がよく聞こえず、声も上手く出せないからだ。
そのような人間が合唱コンクールに入れば、どうなるか……

結果は言うまでもない。
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:37:01.97 ID:1GsLvrze0
冠城「まあでも、喜多先生の強い推しで、結局硝子ちゃんも参加させられたんですが……」

「結果は言うまでも無く、6年2組の惨敗」

「それをきっかけに、6年2組の生徒達のフラストレーションが爆発……」

「石田君の硝子ちゃんいじめに積極的に、参加するようになっていったそうです」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:38:50.10 ID:1GsLvrze0
そうして石田は、硝子の机に落書きしたり、
教科書や靴を隠したり、筆談用ノートに落書きした上で校内の池に捨てたり、
そして例の補聴器を破損・紛失させたりなどと言った事件を、起こしてしまったのだという

しかもこの件には石田だけでなく『植野直花』という女子生徒を始めとした、多くの生徒が関わっていたそうだ。

直接手を出していない生徒も、彼らの行いを止めるどころか、遠くから笑っていたり、
中には『川井みき』の様に必要最低限の注意にとどめ、後は安全圏に避難しているような者もいたのだという。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:40:03.98 ID:1GsLvrze0
冠城「その時、石田君はとても楽しくて……それでいて、嬉しかったそうです」

「『クラスのみんなを苦しめる相手に制裁を加えるだけで、離れて行った友達が戻って来たから』と……」

右京「彼からして見れば、そうだったのかもしれませんねぇ……」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:42:18.06 ID:1GsLvrze0
だが右京は、石田の行いを肯定する気はなかった。

今まで共に遊んできた友達が離れて退屈だったのも分るし、
それを理由に、何かに手を出したくなってしまう気持ちも分かる。
そして、健常な人間に囲まれて生きてきた石田にとって、硝子は大変珍しい存在に映った事だろう。

だが、先程の冠城の言の通り、石田は硝子の事を人間として見ていなかった節がある。

それでいて、この所業。

これはただのいじめ……犯罪だ。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:43:27.51 ID:1GsLvrze0
だが、それ以上に右京が許せなかったのは、周りの人間の行動であった。

竹内は硝子への対応を生徒に丸投げし、石田の行動に対しては軽く注意しただけ。
障がい者児童への理解を乞うべき人物がそれを放棄したことが原因なのに、
生徒達は硝子に対してストレスを溜め、石田と共謀する始末……

この時の6年2組の教室は、硝子に対するいじめが横行する無法地帯と化していたのは想像に難しくない。

それでも竹内は、彼らを止めなかったのだろう。

これだけでも充分悪質であったが、そんな右京の怒りに更に火を点けるような話が冠城の口から語られる……
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:45:29.87 ID:1GsLvrze0
冠城「けど、そんな事も長く続くはずがなく、補聴器が8回紛失・破損させられた事で西宮家が学校側を訴えた」

「ところが、犯人捜しのために行われた生徒会で、いきなり竹内先生が『硝子ちゃんいじめの犯人は石田君だ』と言い出した」

「竹内先生は、自分が何度も注意したのに石田君がそれを聞かなかった事にし……」

「自身の注意不足を有耶無耶にしたどころか、生徒達が石田君に加担した事すらなかった事にしてきたんです」

「6年2組の生徒達も、その流れに乗って自分達の責任を石田君に擦り付けた……」

「結果、硝子ちゃんの補聴器の件で生じた賠償金170万円を、石田君の母親一人が支払う事になった」

「おまけに、学級裁判で6年2組がカーストになった事で、生徒達は石田君をいじめるようになった……」


「……と言うのが、石田君があの2人から暴行を受けていた事の真相です」

「同時に、これがあの学校で起きた、硝子ちゃんいじめの実態でもあります」

「彼らは、全ての責任を石田君に押し付け、まるで何事もなかったかのように学校生活を続けているという訳です」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:51:23.99 ID:1GsLvrze0
右京「…………」


冠城から聞かされた、水門小学校での石田と硝子の詳細な状況に、
右京は表情ひとつ変えなかったものの、何となく怒気らしきものが滲み出ているのを感じた。

それを察した冠城は「ところで…そちらは他に何か聞きませんでしたか?」と無難に尋ねた。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:52:12.04 ID:1GsLvrze0
右京「……………」

「このようなことを、仰っていました……」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:54:01.93 ID:1GsLvrze0
〜回想〜


右京「違う?それは、どういう事で……?」

美也子「………」

「実は私、補聴器の賠償金170万円を西宮さんに払ってきたんです」

右京「賠償金を?」

美也子「えぇ…それが、私があの家族さんに出来る、せめてもの償いでしたから……」

「だから、この件はもうケリが付いているんです……」

「悪い言い方をすれば、刑事さんの出る幕は無いと言う事になります……」

右京「…………」


そう語る美也子の様子に、さすがの右京もこれ以上問い質すのは酷だろうと判断した。
しかし、それでも聞いておきたい事があった。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:54:37.12 ID:1GsLvrze0
右京「お気持ち、察しします…」

「ただ……最後にひとつだけ、お伺いしてよろしいですか?」

美也子「何ですか?」

右京「実は昨日…息子さんが、同じ学校の児童から暴行を受けている現場を目撃しました」

「この事から、彼は学校内でいじめを受けている可能性があります」

「あなたは、その事をご存知ですか?」


右京の問いに、美也子はそこまで動揺する様子はなかった。
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:55:18.89 ID:1GsLvrze0
右京「…ご存知なのですね?」

美也子「学校から聞かされた訳ではありませんし、本人が話していわけでもありません」

「むしろ、あの子は『学校ではしゃぎ過ぎたんだ』と言ってましたが……」

「私も母親です…心配かけまいと誤魔化しているのは分かります」

「明らかに、いつもより酷い有様で帰って来る事が多くなりましたから……」

右京「学校には訴えなかったんですか?」

美也子「出来るならそうしたいです。けれど、将也はよその子をいじめてしまいました……」

「そのような子の母親が声を上げたところで、かえって反感を買われるだけです……」


そうは語るものの、彼女の顔からは悔しさややり場のない怒りなど、
様々感情が複雑に入り混じっていた。

その表情から、我が子を助けられない自分に対する
歯がゆさが滲み出ているのを、右京は感じた。


〜回想終了〜
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:56:17.74 ID:1GsLvrze0
冠城「確かに、加害者の身内は加害者と同列に扱われるもの……」

「石田君のお母さんが手を出せずにいるのも、無理はありませんね………」

右京「…………」

冠城「…右京さん?」

右京「…冠城君。君は、この話しを聞いてどう思いましたか?」

冠城「どうしたんですか?急に……」

右京「いいから答えて下さい」


急に意見を求めてきた上司に、冠城は少しばかり動揺したが、
右京の真剣な表情に並々ならぬものを感じ、素直にこう答えた。
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:57:40.38 ID:1GsLvrze0
冠城「許せない…と言うのが正直な感想です」

「最初に手を出したのは石田君である事は確かだし、硝子ちゃんにした事も擁護出来たものじゃない」

「裁きを受けるのは当然です」

「けどそれは、いじめに加担した生徒や原因を作った竹内先生も同じはずなのに、彼らは石田君の非を利用して自分達だけ責任逃れた」

「おまけに、クラスの順位がカーストになった責任すら、いじめという形で石田君に押し付ける始末です」

「こんな事やってるんだ……硝子ちゃんいじめも、誰かが石田君に代わって継続させている可能性が高い」

「彼らにも思うところがあったのかもしれませんが……」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:58:10.18 ID:1GsLvrze0



「そうだとしてもこんなこと、間違っていると思いますよ」


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