【アマガミ】橘「七咲、許してくれるかな」

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30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:38:26.27 ID:/jkNf6yh0
七咲(私は何をやってるの…)

七咲(自分から橘先輩のこと…)

七咲(たまたま会っただけなのに)

七咲(もうあの人のことなんて…)

七咲(あの人なんて…どうでもいいはず…なのに)

七咲「……」

七咲(もうきっちり忘れよう)

七咲(いつまでもこんなことを考えていたって意味はない)

七咲「……」

七咲「よし…」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:39:39.55 ID:/jkNf6yh0
一週間後

七咲(さて、今日もがんばろう)

七咲「あれ、まだ行ってなかったの?学校に遅刻するよ」

郁夫「大丈夫だよ、まだ余裕で間に合うって」

郁夫「あ、そうだ今日学校が終わったら遊びに行ってくるよ」

七咲「正一君のところ?あまり遅くならないようにね」

郁夫「いや、純一兄ちゃんのところ」

七咲「え…?」

郁夫「あと夕飯もいらない、そのまま食ってくるから」

郁夫「ああ、母さんにはもう言ってあるから」

郁夫「んじゃ、行ってきます」

七咲「先輩の…」

七咲「……」

七咲「あ、私も仕事に行かないと」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:40:50.67 ID:/jkNf6yh0


店員「ありがとうございました」

郁夫「ごちそうさま、今日はありがとう」

橘「うん、よかったらまた来てね」

橘「あっそうだ僕も駅のコンビニに行きたいから一緒に駅まで行くよ」

橘「それにもう暗いから心配だしね」

郁夫「もう高校生なんだから何も心配されるようなことなんてないよ」

橘「いやいや、その油断がいけないぞ」

橘「もし郁夫君に何かあったら僕は七咲に…」

橘「あっ…いや、なんでもない」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:42:00.94 ID:/jkNf6yh0
郁夫「もう二人ともいい大人なんだから仲直りぐらいすればいいのに」

橘「うーん…仲直りって言われてもね…」

橘「七咲はきっともう僕とは会いたくないだろうからこのままの方がいいと思うんだけどな」

郁夫「本当にそうかな」

郁夫「俺が仲を取りもとうか?」

橘「それは…いいよ」

郁夫「俺弟だからさ、なんとなくだけど姉ちゃんのことわかるんだよ」

郁夫「今でも純一兄ちゃんのことが好きだってこと」

橘「ははは、そんなわけないよ」

橘「僕のことなんか嫌いに決まってるじゃないか」

郁夫「もちろん100%好きってわけじゃないだろうけど」

〜♪

郁夫「メールだ」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:42:42.46 ID:/jkNf6yh0
橘「こらこら、歩きながら携帯なんてしちゃダメだぞ」

郁夫「はいはい」つるっ

郁夫「おっと」スコーン

郁夫「ああ、携帯があんなところまで…」

橘「ほらこうなるから」

郁夫「はぁ…」

郁夫「ちょっととってくる」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:43:30.09 ID:/jkNf6yh0
郁夫「よいしょっと」

郁夫「あー…ちょっと傷ついちゃってる」

プーッ

橘「!」

橘「車が…っ」ダッ

橘「郁夫君危ないっ!」ドンッ

キキーッ

バンッ

郁夫「いたた…何が…?」

郁夫「!?」

橘「…っ」

郁夫「純一兄ちゃん!」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:44:02.71 ID:/jkNf6yh0
―――――――――

七咲「はぁ…はぁ…」

七咲「郁夫っ!」

郁夫「しーっ、ここ病院だよ」

七咲「あ、ご…ごめん」

七咲「それより事故って…大丈夫なの?」

郁夫「俺は大丈夫、ちょっと頭打っただけ」

七咲「よかった、なんともないのね」

郁夫「でも俺より純一兄ちゃんが」

七咲「え?橘先輩…?」

郁夫「うん、俺を助けるために車とぶつかって」

七咲「……」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:44:45.13 ID:/jkNf6yh0
コンコン

七咲「失礼します…」

郁夫「一番左奥だよ」

郁夫「…純一兄ちゃん」

橘「あれ?まだ帰ってなかったの?」

七咲「……」

橘「!」

橘「な、七咲…!」

七咲「静かにしてください、他の人に迷惑ですよ」

橘「あ、ああ…」

郁夫「……」

郁夫「俺外で待ってるね」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:45:52.58 ID:/jkNf6yh0
七咲「先輩…郁夫を助けていただきありがとうございます」ぺこっ

橘「そ、そんな…七咲」

七咲「すいません、こんな怪我までして…」

橘「ただ足を骨折しただけだって」

橘「入院することになっちゃったけど…」

橘「でも僕はこうなって当然だよ、だって七咲にあんなこと…」

七咲「……」

七咲「そんなこと気にしないでください」

七咲「私もう…橘先輩と何があったかなんて覚えてないです…」

橘「そ、そう…なんだ…」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:46:32.75 ID:/jkNf6yh0
七咲「……」

七咲「では失礼します」

橘「えっも、もう?」

七咲「はい、一言お礼を言いたかっただけですから」

橘「そうか…」

七咲「本当にありがとうございました」

橘「……」

橘(七咲…)
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:47:33.29 ID:/jkNf6yh0
翌日

美也「にぃにはドジだね〜、何して遊んでたの」

橘「遊んでてこうなるわけないだろ」

美也「はいはい、わかったわかった」

橘「それにいつまでにぃにって呼ぶつもりなんだ」

美也「にしし、いいじゃん」

美也「にぃにはいつまでたっても美也のにぃにだよ」

橘「じゃあせめて外にいるときはやめてくれ」

美也「あ、そうだったね」

美也「早くよくなってよお兄ちゃん」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:49:04.37 ID:/jkNf6yh0
美也「もうちょっとでみゃーの結婚式なんだよ」

橘「あれ、そうだっけ?」

美也「むっ、まさか忘れてたの」

橘「そんなわけないだろ、冗談だよ」

美也「にぃにのバカ」

橘「冗談だって言ってるじゃんか、退院したらまんま肉まん買ってやるからさ」

美也「ほんと?やったー」

橘「まさか美也が結婚するとはな」

美也「ほんとはお兄ちゃんが結婚してからと思ったんだけど」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:49:40.94 ID:/jkNf6yh0
美也「お兄ちゃんも早くいい彼女見つけてよね」

橘「…いや、僕は」

橘「……」

美也「僕は…何?」

橘「し、仕事が最近忙しいからな、ちょっとそれどころじゃないな」

美也「……」

美也「あっもうこんな時間だ、行かなきゃ」

美也「それじゃあまた来るね、お兄ちゃん」

橘「おう」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:50:23.10 ID:/jkNf6yh0
――――――――

橘「最近働いてばっかりだったから、たまにはこうゆっくりするのも悪くないな」

橘「あとはお宝本でもあれば…」

橘「梅原にでも連絡して持ってきてもらおうかな」

橘「いくら美人の看護師さんが多いといっても退屈だからな」

橘「よし、後で梅原に電話しよう」

橘「とびっきりのお宝本を…」

七咲「相変わらずですね」

橘「えっ!?七咲!」

橘「どうしてここに…」

七咲「お見舞いですよ、私が来るのは嫌ですか?」

橘「そ、そんなことない、嬉しいよ」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:52:00.22 ID:/jkNf6yh0
橘(ど…どういうことだ?七咲が来るなんて…)

橘(昨日来たばっかなのに…)

橘(てっきりもう来ないものかと)

七咲「不思議そうな顔してますね」

橘「えっ」

七咲「私は悪いと思ったら自分のことでなくても相手に許してもらえるように努力するんです」

橘「僕は別に許すもなにもそんなつもりは…」

七咲「口だけの言い訳なんてしません」

橘「……」

七咲「郁夫から聞きました」

七咲「先輩は注意してくれたんですよね」

七咲「それなのに郁夫が聞かなかったから」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:53:59.64 ID:/jkNf6yh0
橘「……」

七咲「……」

七咲「そうだ、お菓子持ってきたんですよ」

七咲「果物を持ってこようかと思ったんですけど、先輩にはこういった洋菓子の方がいいかなと思って」

橘「ああ、ありがとう…」

橘「せっかくだからいただくよ」もぐもぐ

橘「うん、おいしい」

七咲「そうですか、よかった」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:55:18.30 ID:/jkNf6yh0
橘「七咲はさ、どうなの最近?」

七咲「まあまあですね」

橘「そうか」

橘「……」

橘「仕事は大変?」

七咲「はい」

橘「へ、へえ」

橘「……」

橘(会話が続かないな…)
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:56:11.92 ID:/jkNf6yh0
橘(やっぱり七咲と二人だけの状況は少し気まずいな…)

橘(しかも両者が無言だとよけいにだな)

橘(何かいい話題…そうだ)

橘「郁夫君ってしばらく見ないうちにだいぶ成長したね」

橘「えっと何年ぶりだっけ…」

七咲「9年…じゃないですか」

橘「あっそう?そうか9年か」

七咲「…先輩は忘れちゃうんですね」ぼそっ

橘「え?」

七咲「いえ、なんでもないです」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:57:58.97 ID:/jkNf6yh0
橘「当たり前だけどだいぶ成長してたね」

橘「小学生のときは七咲もだいぶ苦労してたみたいだけど、今はその心配はなさそうだね」

七咲「橘先輩がいたからです…」

橘「僕が?」

七咲「先輩が郁夫と遊んでくれたり、私では思いつかなかったようなことをアドバイスしてくれたおかげで真面目になってくれたんです」

七咲「私の言うことも少しずつ聞いてくれるようになりましたし」

七咲「本当はその時のことを先輩に言いたかったんです」

橘「……」

七咲「郁夫のことだけじゃなくて私のことも…」

七咲「水泳の大会で優勝したことも勉強でいい成績をとれたことも大学に合格したことも会社に就職できたことも…」

七咲「全部…橘先輩に言いたかった…」

橘「七咲…」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 00:58:52.23 ID:/jkNf6yh0
七咲「すみません、こんなこと話しちゃって」

橘「いや、いいよ」

橘「僕は七咲のことをもっと聞きたいぐらいだし」

橘「あっ…でも七咲はあまり言いたくないよね、嫌いな相手に」

七咲「橘先輩は嫌いではありません」

橘「えっ…?」

七咲「もう…好きじゃないだけ…です」

橘「…そうなのか…嫌われてても全然おかしくないのに」

七咲「…美也ちゃんのお兄さんですから」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:02:00.09 ID:/jkNf6yh0
橘「はは、なんだその理由」

橘「美也がいなかったら嫌われてたのか」

七咲「……」

橘「美也とは仲良くしてくれてたんだね」

七咲「親友ですから」

七咲「今でも一緒に遊んだりするんですよ」

七咲「今週の休みもごはん食べに行く予定ですし」

橘「へえ、そうなんだ」

橘「美也は七咲のこと何も教えてくれなかったから、七咲がどうしてるか知らなくてね」

七咲「…私にも先輩のことは話さないようにしてましたね」

橘「美也も一応気をつかうんだな」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:02:38.89 ID:/jkNf6yh0
橘「…僕があんなことしたのに美也と仲良くしてくれてありがとう」

七咲「……」

七咲「美也ちゃんと先輩は別の人ですから」

七咲「美也ちゃんの方が私を避けて疎遠になっちゃうんじゃないかとは思いましたけど…」

橘「美也はそんなことしないよ」

七咲「そうですね、とても橘先輩の妹さんとは思えません」

橘「おいおい、ひどいなその言い方」

七咲「美也ちゃんは約束は守ってくれます」

橘「……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:04:25.43 ID:/jkNf6yh0
橘「七咲…ごめん…」

七咲「何がです?」

橘「その…高校のときの…」

七咲「終わったことをいくら言っても元に戻るわけじゃないですよね」

橘「……」

七咲「ふふ、冗談ですよ」

七咲「もうあの時のことはもう気にしてませんから」

七咲「さて、私はこれで失礼します」

七咲「早く治るようにがんばってくださいね」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:05:07.87 ID:/jkNf6yh0
数日後

美也「はぁ…はぁ…ごめんねお待たせ、逢ちゃん紗江ちゃん」

七咲「ううん、時間には間に合ってるからいいよ」

美也「はぁ…ふぅ…よかった〜」

紗江「美也ちゃん、すごい汗、ハンカチ使う?」

美也「あ、ありがとう、でも大丈夫自分の持ってるから」

美也「久しぶりに全力で走ると疲れるね〜」

美也「寄る年波には勝てないってやつかな」

七咲「まだ私たち20代だよ」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:06:16.12 ID:/jkNf6yh0
美也「全然運動しないからかな…」

美也「逢ちゃんと紗江ちゃんは運動してるの?」

七咲「私は週に何度かランニングする程度かな」

紗江「私はあまり…」

紗江「あっでも子どもを乗せて幼稚園まで自転車をこぐのはけっこうな運動になるかも」

七咲「中多さ…じゃなかった、えっと紗江ちゃんのお子さんは今いくつなの」

紗江「3歳だよ」

七咲「そっか、いいなぁ」

美也「そうだよね、紗江ちゃんのまんま肉まんを好きにできるんだから」

紗江「まんま肉まん…」

七咲「美也ちゃん、そこじゃない」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:07:15.37 ID:/jkNf6yh0
七咲「美也ちゃんも結婚するんだよね、おめでとう」

紗江「私も直接は言えてなかったね、おめでとう美也ちゃん」

美也「二人ともありがとう」

七咲「そうだ、今日は私が食事代出すよ」

七咲「美也ちゃんへのお祝いとして、もちろん紗江ちゃんの分も私が出すから」

美也「えっ、い、いいの?」

七咲「うん」

紗江「私はいいよ、逢ちゃんに悪いもの」

七咲「気にしないで、一人だとこういうときぐらいじゃないと使い道がないから」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:08:18.17 ID:/jkNf6yh0
―――――――――

紗江「ねえ美也ちゃんのお相手ってどんな人なの?」

美也「んー、そうだねー」

美也「ちょっぴりエッチだけどやさしい人だよ」

紗江「へぇ、なんだか橘先輩みたい」

七咲「……」

美也「さ、紗江ちゃん!」

紗江「あっご、ごめんなさい逢ちゃん」

七咲「いいよ二人とも」

七咲「たしかに先輩とはいろいろあったけど、もう全部過去のこと…終わったことだから」

七咲「気にしないで続けて」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:10:39.09 ID:/jkNf6yh0
美也「……」

紗江「……」

美也「さ、紗江ちゃんってお見合いで旦那さんと出会ったんだよね」

美也「どうなの?うまくやれてる?」

紗江「う、うん」

紗江「すごく真面目な人で私のお手伝いもよくしてくれるの」

美也「へぇ〜、あの人もそうなってくれるといいけどな」

美也「言えばやってくれるけど、甘えん坊っていうかなんでも頼ってくるって感じで」

美也「同じ年とは思えないんだよね、そういうとこがかわいいんだけど」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:12:07.97 ID:/jkNf6yh0
美也「逢ちゃんって弟君いたよね」

美也「弟君に頼られるとついやっちゃう?」

七咲「小学生のときはちょっとやっちゃったけど、もう高校生だからね」

七咲「自分のことは自分でやるようになってるから今はほとんどやらないよ」

美也「そっかー…参考にさせてもらおうと思ったんだけど」

七咲「どう参考にするつもりだったの…」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:12:58.24 ID:/jkNf6yh0
美也「でもよく考えたら逢ちゃんはみゃーより数段しっかりしてるから逢ちゃんみたいにってのは無理か…」

紗江「そんなに困ってることなの?」

美也「困ってるってほどじゃないけど…」

美也「ちゃんと常識はあるし、いざというときは頼りになるんだけどね…」

紗江「じゃあ何か不満があるの?」

美也「不満はー…少しあるけど、人間完璧じゃないからね」

紗江「それとも将来の不安?」

美也「ううん、あの人とならうまくやっていける」

紗江「えっと…それじゃあ…」

七咲(もしかしてノロケ…?)
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:13:32.65 ID:/jkNf6yh0
七咲「二人ともいいなぁ…」

七咲「私なんか高校のときの高橋先生みたいになっちゃいそう」

紗江「そ、そんなことないよ」

美也「そうだよ、逢ちゃんがその気になれば男の人なんてイチコロだよ」

七咲「そのイチコロにする男の人がいないんだけどね…」

美也「い…いるよいっぱい!」

美也「男の人が逢ちゃんをほっとくわけないじゃないの」

七咲「…その中に橘先輩は入ってるのかな」

美也「お兄ちゃんが!?ど、どうして…」

七咲「なんとなく…」

美也(詳しいことはよくわからないけど、逢ちゃんはお兄ちゃんのこと嫌いなんじゃ…)

美也(もしかしてそれは勘違いで、実はお兄ちゃんのことを…)

美也(まさか…ね)
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:14:35.92 ID:/jkNf6yh0
紗江「逢ちゃんって橘先輩のこと好きなの?」

美也「!?」

美也(紗江ちゃんストレートすぎ!)

七咲「ふっ…」

美也(な、なんなのその微笑は…)

紗江「そっかー」

美也「えっ、ど、どっちなの…?」

紗江「美也ちゃん」

美也「なに?」

紗江「ふっ…」

美也「どういうことなの!?」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:15:42.97 ID:/jkNf6yh0
紗江「それで、どっちなの逢ちゃん?」

美也「わかってなかったんだ」

七咲「高校生の時はね、今はもう違うよ」

美也「さっきのくだりいらなかったんじゃ…」

紗江「高校生のときは面白い人だったもんね」

紗江「そういえば先輩って今何してるの?」

美也「おや〜、お兄ちゃんのことが気になるのかな」

紗江「ううん、逢ちゃんが聞きたそうな顔してたから」

七咲「し…してないけど」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:16:25.29 ID:/jkNf6yh0
美也「しょーがないなー、じゃあ教えてあげる」

美也「と言ってもずっと変わってないみたいだけど」

美也「相変わらずエッチな本読んでて、実物の女の人と仲良くしようとしない」

美也「そうそう、お兄ちゃんったらいい年して階段で遊んで怪我しちゃったんだよ」

七咲「階段で…?」

美也「そうだよ、ドジだよねー」

紗江「先輩ってもしかして高校生から成長してないの?」

美也「そうかもね、にしし」

七咲「ち、違うよ美也ちゃん!」

七咲「先輩の骨折は郁夫が悪いの」

美也「へ?郁夫君が?どういうこと?」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:17:01.68 ID:/jkNf6yh0
七咲「…ってことがあったみたいなの」

美也「それ本当なの?」

七咲「…うん」

七咲「だから悪いのは私たちなの、本当にごめんなさい」

美也「い、いや、みゃーに謝られても…というより逢ちゃん悪くないよね」

美也「それにどっちにしろ逢ちゃんが気にすることじゃないよ」

美也「お兄ちゃんが逢ちゃんにしたことに比べたら小っちゃい小っちゃい」

美也「罰が当たったぐらいの考えでいいよ」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:17:44.61 ID:/jkNf6yh0
夜・七咲家

七咲「今日は楽しかったな、久しぶりに二人に会えたし」

コンコン

七咲「郁夫?」

郁夫「うん」

七咲「開いてるよ」

ガチャ

七咲「どうしたの?」

郁夫「ちょっと教えてほしいことがあってさ」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:18:36.66 ID:/jkNf6yh0
郁夫「これまだ習ってなくてさ、どうやって解くのかわからないんだよ」

七咲「……」

七咲「ここをこうして、これをこうすればいいのよ」

郁夫「おお」

郁夫「じゃあこっちは?」

七咲「これは少し難しいけど、これを使って、こうするの」

郁夫「ああ、なるほど」

郁夫「やっぱり姉ちゃんは勉強できるし、教えるのもうまいね」

七咲「…教え方が上手な人に教えてもらったからね」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:19:53.51 ID:/jkNf6yh0
郁夫「ふーん…純一兄ちゃんか」

七咲「えっ!?な、なんで…」

郁夫「当たったんだ」

七咲「……」

七咲「次の問題は…」

郁夫「なんだかんだ言って気になってるんだ」

七咲「大人をからかわないの、お姉ちゃんのことはどうだっていいんだから」

七咲「お姉ちゃんより自分のこと考えなさい」

七咲「高校生なんて今しかないんだから私みたいに勉強もそういうことも後悔しないようにしてほしいの」

郁夫「後悔してるんだ」

七咲「!」

七咲「……」

七咲「あ、明日も早いからもう寝る、郁夫も自分の部屋に戻りなさい」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:20:31.68 ID:/jkNf6yh0
翌日

七咲(ふう…今日もつかれた)

七咲(お腹すいたし、早く帰ってごはん食べよ)

先男1「よう七咲、この後暇か?飯食いに行かねえか?」

七咲「先輩…」

七咲「……」

七咲「はい、いいですよ」

先男1「よしっ」

先男1「で、何か食いたいもんあるか?」

七咲「私は何でも構いませんよ」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/16(土) 01:20:57.64 ID:pO2SY8T0O
蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528712430/
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:21:18.61 ID:/jkNf6yh0
―――――――――――

先男1「ほんと課長って…だよな」

七咲「ふふっ、そうですね」

七咲「私の時も…なんてことありましたよ」

先男1「やっぱりか、困った課長だな」

七咲「先輩は…あっ」

先男1「ん?どうした?」

七咲「い、いえ、なんでもないです」

先男1「あの病院か?誰か入院でもしてんの?」

七咲「知り合い…いえ、弟の友人が入院してるだけです」

先男1「ふーん」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:22:07.68 ID:/jkNf6yh0
梅原「ここだな、大将が入院している病院は」

梅原「お?」

梅原「あれって七咲…だよな」

梅原「隣の男は誰だろ?」

梅原「……」

梅原「楽しそうな顔してるな」

梅原「そっか…そういうことなのか」

梅原「あいつに教えてやった方がいいのかな…?」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:22:47.63 ID:/jkNf6yh0
病室

梅原「いようっ」

橘「梅原、来てくれたのか」

梅原「当たり前だろ、親友じゃねえか」

梅原「と言っても遅くなっちまったな、悪い」

橘「いや、来てくれただけでもうれしいよ」

橘「ところでよ梅原」

梅原「ああ、わかってるって」

梅原「これだろ?」チラッ

橘「おおっ心の友よ」ガバッ

ガタッ

橘「い…っ!!」

梅原「おいおい、怪我してんだから無理すんなよ」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:23:58.92 ID:/jkNf6yh0
梅原「一応俺も家庭を持ってる身だからさ、そういうのを集めるのは苦労したぜ」

橘「この恩は必ず返すよ」

梅原「おお、何食わしてくれるんだろうな」

橘「まあ…適度に期待しててくれ」

梅原「……」

梅原「なあ、俺が言うのもなんだけどよ、そういうのはもうほどほどにしていった方がいいんじゃねえか?」

梅原「いつまでこういうの見続ける気なんだ?」

橘「無論死ぬまで」

梅原「……」

梅原「そっか」

橘「なんか反応してくれよ」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:24:57.10 ID:/jkNf6yh0
橘「僕だってこういう本をずーっと読み続けるのはどうかって思ってるよ」

橘「美也にもお前みたいなこと言われたし…」

橘「でも梅原も言ってくれたじゃないか」

橘「自分で幸せになっていいような人間じゃないなんて言うなって」

橘「だったら僕でも幸せになっていいってことだよな」

橘「僕が今一番幸せな瞬間がこういった本を読んでる時なんだ」

梅原「なんていうかその…間違っちゃいないとは思うんだけどな…」

梅原「あ、そうだ、お前がそんな考えになった七咲ならさ、もう気にしてなさそうだったよ」

橘「…な、なんでそんなことわかんだよ」

梅原「まずそんな昔のこと覚えてる女はいない」

梅原「それにさっき見かけたけど、若い男と歩いてて、表情も楽しそうだった」

梅原「わかったろ?七咲は別に傷ついてなんかない、よかったな」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:25:40.35 ID:/jkNf6yh0
橘「そ…それ本当…?」

梅原「ああ、すごい笑顔だったぞ」

梅原「だからさ、退院したら彼女でも作ってみたらどうだ」

橘「……」

橘「梅原…1つ、いや2つ勘違いしてるぞ」

橘「まず、七咲がどうとか、そういう問題じゃないんだ」

橘「傷つけたという事実がある限り僕の考えは変わらない」

梅原「真面目だねぇ…そこまで行くとなんか異常があるか疑っちまうレベルだけどな」

橘「それともう一つ」

橘「彼女は作ろうと思っても簡単に作れるもんじゃない」

梅原「……」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:26:24.88 ID:/jkNf6yh0
半年後・東寿司

梅原「らっしゃいっ!…ってなんだ大将か」

橘「なんだはないだろ、客なんだからさ」

梅原「へへ、悪いな」

梅原「それより足はもういいのか?」

橘「あれ、言わなかったっけ?結構前に完治してたよ」

梅原「そうだったか…?」

橘「そうだよ、美也の結婚式にも無事出れたし」

梅原「おっ、よかったじゃねえか」

橘「まあ、式はよかったんだけどな…」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:27:44.82 ID:/jkNf6yh0
梅原「なんだ?他で何か嫌なことがあったのか?」

橘「嫌なことは何もなかったんだけど、少し困ったことが…」

梅原「…言いにくいことならビールでも飲みながらの方が楽だろ、ほら」

橘「悪いな」

梅原「今回はおごりじゃねえけどな」

橘「……」

梅原「それで、何があった?」

橘「式に七咲も来てたんだよ」

梅原「そりゃ親友は呼ぶだろ」

橘「そうなんだけどさ」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:28:53.96 ID:/jkNf6yh0
――――――――――

美也「どう、お兄ちゃん?」

橘「どうってさっきからずっと見てるだろ」

美也「感想は?」

橘「10回目だぞ…」

橘「さっきと同じ」

美也「もうっ、そんなんじゃ女の子にモテないぞ」

橘「いいよ、別に」

橘「それより呼んでるぞ、僕のところよりもっと大切な人のところに行ってやれよ」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:30:59.96 ID:/jkNf6yh0
七咲「キレイですね、美也ちゃん」

橘「ああ」

橘「…って、うわっ!七咲!?」

橘「ど、どうしてここに…」

七咲「どうしてって招待されたからに決まってるじゃないですか」

橘「そ、そうか…」

七咲「何をそんなに慌てているか知りませんが、せっかくの妹さんの結婚式なんですから、もう少しシャキっとした方がいいんじゃないですか」

橘「失礼だな、シャキッとしてるだろ」

七咲「そうでしたね、先輩は昔からそういうことの基準が人より低かったですもんね」

橘「どういうことだよ…」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:31:38.82 ID:/jkNf6yh0
七咲「…足、治ったんですね」

橘「ああ、もうバッチリだよ」

橘「謝ろうとしなくていいよ、あれは事故だって、七咲も郁夫君も悪くないよ」

七咲「…まだ何も言ってませんよ」

橘「表情見てればわかるよ」

橘「七咲のことはよくわかってるし」

七咲「私と先輩はついこの前、数年ぶりに会った関係ですよ」

七咲「その数年間で私の考えもいろいろ変わりました」

七咲「それでも私のことをわかってるって言えますか?」

橘「うっ…その…」

七咲「冗談ですよ、私そんなに変わってませんから」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:32:38.10 ID:/jkNf6yh0
橘「な、なんだ…そうなのか」

橘「……」

橘(口では冗談と言っているが、よく考えると僕だって変わってるんだから、七咲も変わってるに決まってるよな…)

橘(そもそもよくわかってると言ったけど七咲と関わった期間はそんなに長くない…というより短いよな)

橘(実は七咲のこと全然わかってないんじゃ…)

七咲「先輩」

七咲「橘先輩」

橘「はっ、な、なに?」

七咲「やっぱり聞いてなかったんですか」

橘「ごめん、もう一回言ってもらっていい?」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:35:49.79 ID:/jkNf6yh0
七咲「先輩に聞きたいことがあるんです」

橘「僕に?」

七咲「はい」

七咲「ただ、こういう場で話すようなことではないので後日会ってくれませんか?」

橘「えっ…」

橘「…僕は構わないけど」

七咲「ありがとうございます」

七咲「そうだ、連絡先交換しておきませんか?郁夫とも交換したんですよね」

橘「うん、いいよ」

七咲「…完了っと、また連絡しますね」

七咲「失礼します」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:36:21.37 ID:/jkNf6yh0
――――――――――

橘「ってなことがあったんだ」

梅原「なるほどねぇ…ほい、えんがわとあまえび」

梅原「で、それの何が困ったことなんだ?」

橘「七咲が僕に聞きたいことなんて、あの時のことを…」

梅原「そんなわけねえだろ」

橘「なんでそう言い切れるんだよ」

梅原「なんとなく」

橘「お前、親友が真剣に悩んでるんだぞ」

梅原「俺の勘を信じろ」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:37:26.15 ID:/jkNf6yh0
梅原「いつ会うんだ?」

橘「明日」

梅原「へー、それで直前になって会うのが嫌になったと」

橘「そうじゃない」

梅原「じゃあどうなんだ?」

橘「何言われるんだろうって考えちゃってさ…」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/16(土) 01:38:36.53 ID:WizgQZhUo
支援
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:39:16.71 ID:/jkNf6yh0
香苗「こんな時間に珍しく元気な声が聞こえると思ったら、橘君が来てたのね」

橘「香苗さん」

橘「…やせたね」

香苗「あんたわざと言ってんの?」

橘「冗談だよ」

橘「二人目生まれたんだね、おめでとう」

橘「梅原も教えてくれればよかったのに」

梅原「あれ、言ってなかったか?」

橘「聞いてないよ」

梅原「見てみろ、かわいいだろー」

橘「うん、そうだね…」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:40:37.34 ID:/jkNf6yh0
ガラガラガラ

梅原「ヘイ、ラッシャイ!」

香苗「いらっしゃいませー」

女性「……」こそこそ

香苗「お客様、ケーキ屋さんでしたらそこの角を右に曲がって、3軒行ったところにありますよ」

女性「それは後で行くよ、じゃなくて今はお寿司だよ」

女性「あっ」

香苗「バレバレ」

女性「……」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:42:01.90 ID:/jkNf6yh0
梅原「どうしたの、かなちゃん?」

香苗「わかんない?桜井だよ」

桜井「か、香苗ちゃん!一応変装してるんだからさ」

梅原「おお、桜井さんか、久しぶりだな」

香苗「大丈夫、この時間は他にお客さんいないから」

桜井「えっでも…」

香苗「ほら、よく見てみなさいよ」

橘「り…梨穂子…か?」

桜井「どちら様ですか?」

橘「!?」ガーン
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:43:05.50 ID:/jkNf6yh0
橘「……」ガクッ

桜井「冗談だよ、純一〜」

桜井「幼馴染でしょ、忘れるわけないじゃん」

橘「本当かっ!?」

桜井「当然でしょ」

橘「本当の本当の本当に?」

桜井「どうしたの純一?しばらく会わないうちに変になった?」

梅原「こいつにもいろいろ悩みがあるんだ、適当にでも答えてやってくれ」

桜井「うーん…純一、仕事がうまくいってないのかな」

梅原「仕事はどうだろうな、毎日がんばってるみたいだけど」

桜井「じゃあ食べ過ぎて、お腹痛めたとか」

香苗「あんたじゃないんだから」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:44:08.29 ID:/jkNf6yh0
赤ちゃん「おぎゃあ!おぎゃあ!」

香苗「おーよしよし、お腹すいたの?」

香苗「あっ、ごめんね桜井、せっかく来てもらったのに」

桜井「ママさん大変だね」

桜井「しょうがないことだよ、がんばってね」

香苗「忙しいかもしれないけど、また顔出してよね」

桜井「はーい」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:45:21.13 ID:/jkNf6yh0
桜井「ねえねえ純一」

橘「ん?」

桜井「最近どうなの?」

橘「どうって…?」

桜井「なんだか元気なさそうだから仕事で失敗したのかと思って」

橘「い、いや仕事は順調だよ」

桜井「じゃあプライベート?」

橘「う、うーん…」

桜井「はっきりしないなんて純一らしくないよ」

桜井「私が協力できることなら何でもするよ」

橘「梨穂子はやさしいなあ」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:46:39.53 ID:/jkNf6yh0
橘「実は…」

橘「僕はもうだめかもしれない」

桜井「ええっ!?何があったの!」

梅原「大げさに言いすぎだ」

橘「でも可能性はあるよ」

橘「あれは復讐されるってことだろ」

梅原「…いや、どう解釈したらそうなるんだ」

桜井「えっ?えっ?よくわからないよ、どういうことなの?」

梅原「そうだな、桜井さんにもわかりやすく教えてやんねえと」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:47:51.75 ID:/jkNf6yh0
梅原「そうだな…どう言おうか…」

梅原「大将が昔捨てた女性が大将のことを忘れられずにまた会いたい…と」

橘「変なこと言うなよ」

橘「そうじゃなくてな、そのー…」

橘「久しぶりー…でもないか、えっと高校の時の後輩と会うんだよ」

橘「それだけ」

桜井「それだけ?」

橘「うん」

桜井「会えばいいじゃん」

梅原「だよなー」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:48:50.51 ID:/jkNf6yh0
桜井「純一は普段何も考えてないくせに、こういう時だけ深く考えすぎなんだよ」

橘「今ちょっとひどいこと言わなかった?」

桜井「心配しなくても、純一は誰かに恨まれたりするような人じゃないよ」

桜井「私が保証するよー」

梅原「桜井さんの言う通りだ、とりあえず会ってみろよ」

梅原「案外どうでもいいことかもしれねえぞ」

橘「だといいけどな…」

橘「……」

橘「よし、わかった…覚悟を決めるか」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:49:36.71 ID:/jkNf6yh0
翌日

上司「やあ、橘君飲みに行かんかね?」

橘「あー…すいません、この後大事な予定がありまして…」

上司「お?めずらしいね」

上司「もしかして彼女でもできたのか?」

橘「いえ、そういうわけでは」

上司「なんだ…」

上司「そうか、今日はだめなのか」

橘「すみません」

上司「はー…だめなのかー」

上司「ん?あれ?橘?」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:50:44.76 ID:/jkNf6yh0
―――――――――

橘「ここか」

橘「よし、時間ピッタリだ」

橘「危なかった、あの上司の話をあのまま聞いてたら待ち合わせに遅れるところだった」

橘「えっと、七咲は…」キョロキョロ

橘「あれ…?いないじゃないか」

橘「仕事がまだ終わってないのかな」

橘「七咲の性格だとこういう時は連絡があるはずだけど、メールも来てないし…」

橘「うーん…」

橘「仕方ない、少し待つとするか」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:52:14.89 ID:/jkNf6yh0
七咲「橘先輩っ」

橘「な、七咲…いたのか」

七咲「はい、遠くから先輩の姿を見つけたので、ちょっと隠れてみました」

橘「えっ!?」

七咲「ふふふっ、すみません」

七咲「ちょっとした冗談ですよ」

七咲「突然声をかけて、ビックリさせようと思ったんです」

橘「そうだったのか」

橘「それにしても…」

橘(スーツ姿の七咲がすごく大人っぽくて…いいな)

七咲「それにしても…何ですか?」

橘「い、いや…何でもない」

七咲「そうですか、じゃあ入りましょう」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:52:50.27 ID:/jkNf6yh0
橘「……」そわそわ

七咲「ここのお店は安いのが特徴ですが、これすごくおいしいんですよ、先輩も食べてください」

橘「あ、ああ…」

七咲「ふふっ」

橘「う、うん…おいしい」

橘「……」そわそわ

七咲「どうしたんですか?さっきから」

橘「あ、ああ…えっと…その…は、話ってのは…?」

七咲「あっそうでしたね」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:53:56.23 ID:/jkNf6yh0
七咲「橘先輩って何かほしいものはありますか?」

橘「えっ!?」

橘「ほ、ほしいもの…」

橘「急にそんなこと言われても…」

橘「どういうことなの?」

七咲「あっ、すみません、ちゃんと説明しますね」

七咲「私の会社に来月誕生日の先輩がいるんです」

七咲「その先輩が橘先輩にすごく似てるタイプと思ったんです」

七咲「だからもしかすると、ほしいものも似てるのかと思いまして」

七咲「一応その先輩には秘密なので、会社の人に相談しちゃうとバレちゃう可能性があるので橘先輩に相談したんです」

橘「あ…そ、そういうことだったんだ…」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:55:12.12 ID:/jkNf6yh0
橘「……」

橘(考えすぎだったか…)

橘(よかった…まともなことだった)

七咲「先輩?」

橘「あ…そ、そうだな…」

橘「そういうことだったら…」

橘「ネクタイピンとか名刺入れとかちょっとしたものがいいんじゃないかな?」

七咲「ネクタイピンや名刺入れですか、なるほど」

橘「その先輩がほんとにほしいかどうかは知らないけどね」

七咲「はい、ありがとうございます」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:55:42.30 ID:/jkNf6yh0
――――――――

店員「お会計が3240円です」

橘「はーい」

七咲「あっ私が出しますよ」

橘「いや、いいよ僕が出すよ」

七咲「誘ったのは私なんですから」

橘「僕一応先輩だし」

七咲「私の方が(たぶん)お金に余裕がありますよ」

橘「うっ…」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:56:45.65 ID:/jkNf6yh0
橘「な、七咲…ほんとにいらないのか?」

七咲「いいですよ、元々私が支払うつもりでしたから」

橘「でも…」

七咲「一人暮らしは大変なんですから、節約できるところは節約した方がいいですよ」

橘「それはそうだけど」

橘「僕だって」

七咲「…では橘先輩にもっと余裕ができたときにお願いします」

橘「はは…いつになるのかな…」

七咲「何年だって待ちますよ」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:58:07.43 ID:/jkNf6yh0
翌週

七咲「お店に来たはいいけど、どれがいいのかな」

塚原「あら、七咲?」

七咲「はい?」

塚原「やっぱり、久しぶりね」

七咲「あ、あの…」

塚原「何年ぶりかしら、私が高校を卒業して以来だから…」

七咲「すみません…どちら様…ですか?」

塚原「えっ…」

塚原「わ、私のこと…覚えてないの…?」

七咲「いやっ…お名前を教えていただければ…!」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 01:58:49.66 ID:/jkNf6yh0
塚原「高校の時同じ水泳部だった塚原響だけど…」

七咲「つっ…塚原先輩っ!?」

七咲「すみませんっ!雰囲気が全然違ったもので…!」

塚原「そんなに変わった?」

七咲「はい…塚原先輩と言われるとなんとかわかるぐらいに…」

塚原「それは悪く言われてるのかしら」

七咲「ち、違います」

七咲「高校生の時から大人っぽい塚原先輩がさらに大人の女性の雰囲気を纏ってらっしゃるので」

七咲「まるで別人みたいですし」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:00:34.82 ID:/jkNf6yh0
塚原「たしかにちょっとはイメチェンはしたかな」

七咲「ところで塚原先輩は何を買いに来たんですか?」

塚原「私はネクタイを買いに」

塚原「ちょっとプレゼントにね、七咲は?」

七咲「私も誕生日プレゼントを買いに」

塚原「もしかして彼氏かしら」

七咲「違います、会社の先輩ですよ」

七咲「普段お世話になっているので、先輩が普段でも使えそうなものを探していたんです」

塚原「ふーん…」

七咲「な、なんですかその顔…」

塚原「今の七咲の顔がね、自分の好きなことを話す子どもそっくりなのよ」

七咲「…!?」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:02:57.42 ID:/jkNf6yh0
塚原「だから私の推理ではその先輩のことが好きなのね」

七咲「それも違います!私はその先輩じゃなくて…はっ」

塚原「ふーん、そう」

塚原「冗談のつもりだったけどあなたにも好きな人がいたのね」

七咲「……」

塚原「安心した」

七咲「…?」

塚原「大きなお世話だけど七咲のこと心配してたのよ」

塚原「高校のとき見ているこっちまでつらかったもの」

塚原「何かを忘れようと必死で水泳に打ち込んでたわね」

塚原「その甲斐もあって優秀な成績だったけど、結局心の傷は隠しきれてなかった」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:05:00.78 ID:/jkNf6yh0
七咲「そんなつもりはなかったんですが、心配をおかけしてたみたいですね…」

塚原「それで…あなたの好きな人ってどんな人?」

塚原「少し興味があるわ」

七咲「…好きな人は今はいませんよ」

塚原「何かを隠してる時の子どもと一緒の顔してるわよ」

七咲「……」

七咲「少し…気になるかなって…程度です」

塚原「別に誰かに言いふらしたりしないんだから正直に言ってくれればいいのに」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:06:24.41 ID:/jkNf6yh0
―――――――――――

塚原「久しぶりに会えて楽しかったわ、じゃあね」

七咲「はい、失礼します」

七咲「……」

七咲「塚原先輩きれいだったなぁ…」

七咲「すごく大人っぽいし、うらやましい」

七咲「私なんかいまだに年齢確認されるし…」

七咲「……」

七咲「帰ろ…」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:07:48.95 ID:/jkNf6yh0
3日後

七咲(あ、時間だ、今日も終わった)

七咲「うーん…」

七咲「さて…帰る用意をして…」

七咲「お疲れ様です、失礼します」

先男1「あっ待ってくれ七咲」

七咲「はい、なんでしょう」

先男1「ちょっと話があるんだけどさ、この後時間ある?」

七咲「はい、いいですよ」

先男1「さんきゅっ、じゃあちょっと待っててくれ、すぐ用意するから」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:09:41.07 ID:/jkNf6yh0
先男1「よし、行こうか」

七咲「どこへ行くんですか?」

先男1「そうだな、ちょっとゆっくりできるとこがいいな」

七咲「……」

先男1「な、なんだよその目は」

先男1「普通の居酒屋だよ」

先男1「やらしいことなんか考えてねえって」

七咲「何も言ってませんよ」

先男1「め、目で訴えてた…」

七咲「そういうことを考えてたつもりはなかったんですが…」

七咲「先輩はそういうこと考えてたみたいですね」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:10:34.38 ID:/jkNf6yh0
七咲「会社の近くにこんなお店があったんですね、知りませんでした」

先男1「ああ、俺も最近知ったんだ」

先男1「いいところだろ?」

七咲「はい、落ち着いてて、こういうところは好きです」

先男1「おお、そうか」

先男1「お前の好きそうな店探しててよかったぜ」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:11:24.53 ID:/jkNf6yh0
―――――――――

先男1「ほんとあの時は困ったよ」

七咲「それは大変ですね」

先男1「ああ…」

先男1「……」

先男1「……」

七咲「…先輩?」

先男1「七咲…」

七咲「はい」

先男1「俺と…付き合ってくれ!」

七咲「……」

七咲「はい?」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:12:30.38 ID:/jkNf6yh0
先男1「……」

七咲「せ…先輩、ちょっと酔ってるんじゃないですか?」

七咲「明日も仕事がありますし、今日はこれぐらいにしましょ」

先男1「七咲!俺は本気だ!」バンッ

七咲「……」

七咲「…ッ」

先男1「……」

七咲「すみません…」

先男1「…!」

先男1「な…ど、どうしてだ?」

七咲「……」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:14:06.32 ID:/jkNf6yh0
七咲「き、気持ちはうれしいのですが…」

七咲「私は…その…」

七咲「……」

先男1「俺のことが嫌いなのか?」

七咲「そうじゃないです」

先男1「ほ、他に好きな人がいるとか…?」

七咲「……」

先男1「そうなのか?」

七咲「はい…」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:14:54.08 ID:/jkNf6yh0
七咲「……」

七咲「すみません…私はこれで失礼します…」

先男1「ちょっ…おい、七咲!」

先男1「あ…」

先男1「……」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:16:00.88 ID:/jkNf6yh0
翌日

七咲「おはようございます」

先男2「おはよう」

先男1「……」

七咲「あ…お、おはようございます…」

先男1「……」

先男2「ん?どうした、あいつ機嫌悪いのか?」

七咲「…いえ、わかりません」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:17:20.58 ID:/jkNf6yh0
次の日

七咲「あの、先輩」

先男1「……」ぷい

七咲「あ…」

さらに次の日

七咲「先輩、課長が頼んでいた資料を…」

先男1「……」

七咲「先輩、あの…」

さらにさらに次の日

七咲「先輩、明日の会議のことなんですが…」

先男1「……」すたすた

七咲「……」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:24:13.04 ID:/jkNf6yh0
先輩の誕生日

先男1「んじゃ、おつかれ〜」

七咲「……」

七咲「あ、あの…先輩…」

どんっ

七咲「!」

先男1「……」すたすた

七咲「……」

七咲「はぁ…」

先男2「…なんか最近お前ら仲悪くね?」

七咲「…嫌われてしまったみたいですね」

先男2「なんかミスしたとか?それにしては怒りすぎなような」

先男2「何があったんだ?」

七咲「……」

七咲「私が仕事でミスをしてしまっただけです」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:25:16.95 ID:/jkNf6yh0
公園

七咲「……」キィコキィコ

七咲「はぁ…」

七咲「結局渡せなかったな…」

橘「黒」

七咲「?」

橘「もしかして、と思ったけどやっぱり七咲だったか」

七咲「橘…先輩…」

七咲「…ふっ」

七咲「痴漢ですか?」

橘「なっ、声をかけただけじゃないか」

七咲「私のスカートの中をのぞいたんじゃないですか?」

橘「言ってみただけだよ」

七咲「わかってますよ」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:26:20.16 ID:/jkNf6yh0
橘「こんなとこで何やってたんだ?」

七咲「…少し仕事のことで考え事を」

七咲「先輩こそどうしたんですか?」

七咲「今はこっちじゃないんですよね」

橘「ああ、ちょっと梅原に用事があってな」

橘「今から帰ろうと思ってたんだ」

橘「そしたら大人がブランコに乗ってるから、ちょっと見てみようと思ったら七咲がいたってわけ」

七咲「そうですか…」

橘「…七咲、何か悩んでるのか?」

橘「顔を見ればすぐにわかるよ、どうした?」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:27:19.92 ID:/jkNf6yh0
七咲「…この前、橘先輩に相談したこと覚えてますか?」

橘「あー…確か会社の先輩への誕生日プレゼントだったな」

七咲「はい」

七咲「実は今日がその先輩の誕生日だったんですが、渡せなかったんですよ…」

橘「病気とかで休んでたってわけじゃなさそうだね」

七咲「…その先輩に付き合ってくれって言われたんです」

橘「なにっ!?」

橘「そ…それで七咲はなんて…」

七咲「お断りしました」

橘(ふぅ…)
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:28:20.41 ID:/jkNf6yh0
七咲「そしたら次の日から仕事のことでも口を聞いてもらえなくなってしまったんです」

七咲「……」

七咲「先輩、もしよかったらこれ受け取ってもらえませんか?」

橘「これは…」

七咲「会社の先輩に渡すつもりだったのですが、きっともう渡せそうにないので」

橘「え、いいの?」

七咲「はい、先輩さえよければ」

橘「ありがとう」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:30:02.63 ID:/jkNf6yh0
七咲「…さて、私はそろそろ帰ります」

橘「待って七咲」

七咲「はい?」

橘「…七咲…僕に…僕にもう一度だけチャンスをくれないか?」

七咲「チャンス…?」

橘「ああ、もう一度だけ、高校のときのようにやりなおさせてくれないか」

橘「僕は七咲を…」

橘「……」

七咲「先輩…」

七咲「……」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:31:01.48 ID:/jkNf6yh0
七咲「覚えてますか?」

七咲「高校のときも、もうしないって約束をしたのに破ったじゃないですか…」

橘「ああ、はっきり覚えてるよ」

七咲「もう気にしていないことと信用は別の話です…」

橘「……」

七咲「まあ…でも…その…だからといって…」

七咲「断るのも…」

七咲「もう先輩も私も大人ですし…」

七咲「高校生のときとは違うでしょうから…」

七咲「あ、でも…前科もあるわけですから…」

七咲「高校の続きから…ではなく…」

七咲「また友だちからということでしたら…チャンスを…」

橘「!」

七咲「も、もう一度だけですよ」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:31:44.67 ID:/jkNf6yh0
翌日

橘「〜♪」

同僚「おっ、なんか今日機嫌いいな」

橘「そうかな?僕はいつも通りだと思うけど」

上司「おーい橘、これやっといてくれるか?」

橘「はい、わかりました」

橘「うおおおお〜!」シュバババババ

同僚「お…おおっ!早えぇ!」

橘「終わりました」

上司「もう!?」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:32:22.64 ID:/jkNf6yh0
――――――――――

七咲「……」カタカタ

七咲「ふぅ、終わったぁ」

先男2「お疲れさん」

七咲「あ、お疲れ様です」

先男2「何かいいことでもあったの?」

七咲「どうしてですか?」

先男2「昨日までは何しても落ち込んだような顔してたのに、今はすごい良い顔してるから」

七咲「そうですね…いいこと…」

七咲「はい、ちょっといいことがありました」

先男2「へ〜」

先男1「……」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:34:04.59 ID:/jkNf6yh0
七咲家

七咲「ただいまー」

郁夫「おかえりー」ぽちぽち

『ファル●ンパーンチ!』『ショウタイムだ』『ピカ〜!』

七咲「……」

郁夫「勉強ならちゃんとやったよ」

郁夫「これ終わってからもするつもりだし」

七咲「ねえ、そのゲームっておもしろいの?」

郁夫「うん、おもしろいよ、人気もあるし」

七咲「……」

七咲「ねえ、私にもそのゲーム教えてよ」

郁夫「え?」 
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:34:53.19 ID:/jkNf6yh0
七咲「ええっ!?どうしてゴリラが女の子に飛ばされちゃうのよ」

郁夫「そういうゲームだよ」

七咲「うう…もう一回!」

郁夫「別にいいけど…何回目のもう一回だよ」

……

七咲「ああっなにそれ!?」

……

七咲「今のどうやって避けるの…」

……

七咲「あっ…また負けた…」

郁夫「なんで姉ちゃんドン●ーしか使わないの?」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/16(土) 02:36:07.43 ID:/jkNf6yh0
郁夫「そのゲームさ、純一兄ちゃんもやってるんだ」

七咲「そ、それが何?」

郁夫「次の日曜日に純一兄ちゃんのとこで遊ぶ約束してるんだ」

郁夫「姉ちゃんも一緒に行かない?」

七咲「なっ…なんで私も」

七咲「正一君とかいるじゃない」

郁夫「ああ、正一はその日無理らしいんだ」

七咲「一人で行くのが嫌なの?」

郁夫「そういうわけじゃないよ」

七咲「私が行ったら先輩驚くでしょ」

郁夫「来てほしいって言ってたよ」

七咲「……」

七咲「まあ…どうしてもって言うならついて行くぐらいいいけど」
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