零羅「僕らの世界」【遊戯王ARC-V】

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67 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 16:46:05.54 ID:smndEJtZO





瑠璃(……その決定に思うことが無いわけじゃない。だからこうして、また思い返している)

瑠璃(だけど、零羅ちゃんが言うには、ズァークは既に無害で緊急性が無い)

瑠璃(また、身体の支配権は、零羅ちゃんにあるから、ズァークが大それた真似をすることはできない)

瑠璃(何より、零羅ちゃん自身が、ズァークを受け入れている)

瑠璃(なら、私にできることは、家政婦として零羅ちゃんを支えることだけ)

瑠璃(それは、わかってる……わかってるはずなのに……)ギュッ



68 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 16:47:38.80 ID:smndEJtZO




零羅「……ふう、あったまったーー」ホカホカ


瑠璃「あっ、お風呂終わったのね、零羅ちゃん」


零羅「うん、いつもより早いけど、早くお風呂を終わらせた方がダイエットに良いって聞いたからね」

零羅「短い時間だったけど、良いお湯だった。ありがとね、瑠璃」


瑠璃「……ふふっ、それは何よりだわ」


零羅「ははっ、とりあえず部屋に戻って、塾の課題片付けちゃうね」


瑠璃「学校の課題も忘れないでね?」


零羅「そっちは、今のところ全部片付いているから大丈夫だよ」


瑠璃「あら、流石ね、零羅ちゃん」



69 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 16:48:55.89 ID:smndEJtZO





零羅「当たり前だよ、このくらいーーー」

零羅「ーーーあっ、もう起きて良いよ、ズァーク」

ズァーク『……ん、もう風呂は終わりか』フワアーッ

零羅「そうだよ。ゴメンね、起こすの忘れてた」

ズァーク『……ふん、甘いもの断ちなどして、糖分の供給を減らすからそうなるのだ』

ズァーク『よって、これよりパンケーキを解禁ーーー』

零羅「いや、これは単純に忘れてただけで、糖分関係ないと思うよ?」

ズァーク『ぬうっ、!!』



70 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 16:50:41.13 ID:smndEJtZO





零羅「起こし忘れることは、これまでにもあったからね。服を脱ぐ際、ズァークに眠ってもらうようになってから、ずっと……」

ズァーク『……人間なのだ。つまらんミスを重ねることもある』

ズァーク『それよりも、お前は時々、俺を眠らせないで着替えようとすることがある。そっちの方が問題だ』

零羅「…………ああー、確かに、そういう時もあるね」

ズァーク『相手が俺とはいえ、年頃の娘がやすやすと身体を見せるものではないぞ? 高校生になった今なら、なおのことだ』

零羅「……んー、今更ズァークに見られたところで、僕は恥ずかしくも何ともないけどね。気にしてるのは主にズァークだし」

ズァーク『な、何を抜かすか! 俺は赤馬零児たちの気持ちを汲んで、ああしているに過ぎん! 俺がお前の身体を気にするなど……!』カアアッ

零羅「……はあ、ほんとウブだなあ。自称48歳のくせに、恋愛経験ゼロの16歳よりウブとかどういうことなの……」

ズァーク『う、うるさい! 俺は硬派なだけだ! 断じてウブなどではない!』



71 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 16:52:53.77 ID:smndEJtZO





瑠璃(……また、ズァークと話してる)

瑠璃(……私にはズァークの声は聞こえないけど、零羅ちゃんの発言から察するにーーーー今のズァークには本当に邪な気持ちが無いのね)

瑠璃(……信じて良いのよね)


零羅「ははっ、ねえ、瑠璃もズァークがウブだって思わーーー」


瑠璃「…………」


零羅「……あっ、ごめん、瑠璃。意味わかんないよね」

ズァーク『………っ、』

零羅「……また、やっちゃった」



72 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 16:54:18.53 ID:smndEJtZO





瑠璃「……気にしないで、零羅ちゃん」


零羅「えっ、でも、勝手に話の流れを止めちゃったし。いや、それ以前に洗い物の邪魔をーーー」


瑠璃「良いのよ、大事な話があるわけじゃないし、洗い物も、もう終わったところだから」

瑠璃「だから、気にしないで」


零羅「……部屋に戻るね」ペコッ



スタスタ………




73 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 16:55:57.11 ID:smndEJtZO





瑠璃「………」


瑠璃(……受け入れなきゃ)


瑠璃(そうよ、私は零羅ちゃんの中に、ズァークがいることを受け入れる)


瑠璃(それが真実。なら、受け入れなきゃーーー)


瑠璃(でなきゃ、壊れるのはーーー)



74 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:04:49.06 ID:smndEJtZO





…………………………………………………………………………



カキカキカキ………



零羅「……ふう、今日はこのくらいで良いかな」カタッ

零羅「また明日、気づいたことを箇条書きにして、まとめないと……」

ズァーク『………ふん、この程度のことしか気づけないとは、まだまだだな』

零羅「えっ、そう? 割と多くのことに気づけたと思うんだけど」

ズァーク『俺は今日、もっと多くのことに気づいたし、もっと多くのことを書ける』

ズァーク『零羅、やはり、お前はまだまだだな』

零羅「……そっか」

ズァーク『………』

零羅「……つまり、今のダイエット中の僕とそれ以前の僕に、思考能力の差は無いってことだね」

ズァーク『!?』



75 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:07:02.20 ID:smndEJtZO





零羅「だって、もしダイエットで思考能力が落ちているのなら、僕が気づけた部分は今よりも遥かに少ないはずだよ」

ズァーク『………!』

零羅「そして、ズァークほどのデュエリストなら、普段の僕がどのくらいところまで気付けるか、見当がついているはずだ」

零羅「なのに、ズァークは今回、ダイエットによる思考能力の低下について話さなかった」

零羅「それって、つまり、僕の思考能力は落ちてないってことだよね?」



76 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:08:17.16 ID:smndEJtZO





ズァーク『……本当に捻くれた考え方をするようになったものだ。昔とは大違いだ』

零羅「ははっ、褒め言葉と受け取っておくよ」

ズァーク『………』

零羅「とにかく、これでダイエットを中止する意味は無さそうだね」

零羅「パンケーキはしばらく後。我慢してね、ズァーク」

ズァーク『……ぬうっ、』



77 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:12:05.91 ID:smndEJtZO





零羅「……それに、どんなにズァークが誘惑したところで、僕はダイエットをやめない」

零羅「もちろん、アクションカードの使用も、ね」

ズァーク『………!』

零羅「わかっているよ」

零羅「ズァークが僕にダイエットをやめさせようとするのは、体重の増加でアクションカードを取りづらくなったことを口実に、アクションカードの使用をやめさせるためだ」

零羅「もちろん、パンケーキを食べたいということも嘘じゃないだろうけどさ。一番の理由はアクションカードの使用をやめさせるため、違う?」



78 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:14:35.03 ID:smndEJtZO





ズァーク『………』

零羅「ズァークがアクションカードを否定する理屈はわかる」

零羅「アクションカードには、デメリットカードだって混じっているんだからね。それを思えば、使うのをやめさせたいと思うのも無理は無い」

ズァーク『……だが、零羅はアクションカードを使うのをやめる気がない』

零羅「うん、そうだね」

ズァーク『………………』

零羅「さっきも言った通り、アクションカードにはデメリットカードも混じっている」

零羅「つまり、何が出るか本当にわからないんだ」

零羅「自分を有利にするどころか、かえって不利にするかもしれない」

零羅「だからこそ、僕は、アクションカードを面白く思うし、拾いたくなるんだ」



79 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:16:05.59 ID:smndEJtZO





ズァーク『………』

零羅「ズァークにとって、デュエルとは、既に定まったデッキ同士で戦うものなのかもしれない」

零羅「お互いに万全を期して、確実に勝つよう心掛けるものなのかもしれない」

零羅「だけど、僕が求めるデュエルは、そうじゃない」

零羅「既に定まったデッキだけでなく、アクションカードをも駆使して戦うものなんだ」

零羅「何が出るかわからない……そんな刹那の楽しみに身を浸らせて戦う。それが僕にとってのデュエルなんだ」

零羅「だから僕はアクションカードの使用をやめない」

零羅「そして、そんなアクションカードを取り合うことが面白くて仕方がないんだよ」

ズァーク『………………』

零羅「……僕の価値観は、ズァークには認めがたいものなのかもしれない」

零羅「だけど、いつか必ず、僕の求めるデュエルを認めさせてみせる」

零羅「その時を楽しみにしててよ、ズァーク」



80 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:17:34.74 ID:smndEJtZO





ズァーク『……ふん、お菓子を前に我を失いかけた奴が大層なことを抜かすものだ』

零羅「あ、あれは、ちょっと混乱しただけだから! もう大丈夫だから!」アセアセ

ズァーク『そうかそうか、ちなみにお菓子やパンケーキはいつでもお前を待っているからな』

零羅「食べませーん! 僕には朝昼晩、瑠璃のダイエット料理があるんでーす!」

ズァーク『……ダイエットも、アクションカードの使用もやめる気は無いか』

零羅「やめませーん! それが僕だから!」

ズァーク『……そうか、それが零羅の『自分』か』

零羅「そうだよ! そう言ってるじゃないか!」

ズァーク『なら、せいぜい貫いてみせることだな』

ズァーク『それができるかどうかで、零羅の未来も変わってくるだろう』



81 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:18:48.46 ID:smndEJtZO





零羅「……言われなくても、貫いてみせるよーだ!」

ズァーク『ふん、ならいいがな……』

零羅「……はあ、今日は疲れちゃったよ、歯磨きしたら寝ることにするよ」トボトボ

ズァーク『おう、そうしろそうしろ。早寝早起き、規則正しい生活はデュエリストには必須だからな』

零羅「………」トボトボ



82 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:20:46.12 ID:smndEJtZO





…………………………………………………………………………




零羅「……瑠璃にもおやすみの挨拶はしたし、後は寝るだけだ」フワアーッ

ズァーク『少し早いが、このくらいなら生活リズムに大した影響は無い。寝るか』

零羅「……ねえ、ズァーク。少しだけ良いかな?」

ズァーク『……なんだ?』



零羅「なんで、ズァークは僕に取り憑いているの?」



83 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:22:22.39 ID:smndEJtZO





ズァーク『………』

零羅「僕はもう高校生なんだよ。精神も身体も、一概には子供と言えない年齢だ」

零羅「……そろそろ、教えてくれても良いんじゃないかな?」

ズァーク『………』

零羅「……ズァーク」



84 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:23:41.61 ID:smndEJtZO





ズァーク『……なあ、零羅』

零羅「……なあに、ズァーク?」

ズァーク『エクシーズ次元は好きか?』

零羅「……なに言ってるの? 話を逸らさないでーーー」

ズァーク『大事なことだ。答えてくれ』

零羅「……好きに決まってるじゃないか。瑠璃たちの故郷だよ? アレンとサヤカだっているんだよ?」

ズァーク『……そうか』

零羅「……これで良い? なら、教えーーー」

ズァーク『シンクロ次元は好きか?』

零羅「………」

ズァーク『………』

零羅「……好きに決まってるよ。ジャックとシンジたちがいるもの」



85 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:25:36.02 ID:smndEJtZO





ズァーク『……なら、融合次元とこのペンデュラム次元はどうだ?』

零羅「好きに決まってるじゃないか!」

零羅「……兄さま、母さま、父さま、洋子さん、瑠璃、遊矢、柚子、アユ、タツヤ、フトシ、素良、デニス、遊勝さん、修造さん、明日香、カイト、月影、セレナ、黒咲、ユート、沢渡、勝鬨、BB…………」

零羅「そう、家族と友達がいるんだ……好き以外の答えなんてないじゃないか」

ズァーク『……そうか』

零羅「もう良いよね? だったら、本当のことをーーー」

ズァーク『言うことはできんな』

零羅「なっーーー!」

ズァーク『やはり、お前に本当のことを教えるわけにはいかん』



86 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:27:11.22 ID:smndEJtZO





零羅「……なんでさ、意味がわからないよ」

ズァーク『………』

零羅「……どうして、ズァークや兄さま達は、本当の理由を教えてくれないの?」

ズァーク『……その質問になら答えてやっても良い』

零羅「!」

ズァーク『そもそも、お前だって本当のことを話せない理由くらい、薄々わかっているんじゃないのか?』

零羅「……っ、!?」

ズァーク『……やはりそうか』

零羅「そ、それは……っ、!!」

ズァーク『……そうだ、お前に真実を受け入れる覚悟が無いからだ』



87 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:28:15.21 ID:smndEJtZO





零羅「………っ、!!」

ズァーク『覚悟のいらぬ話ならば、とうに話している』

ズァーク『だが、俺たちは話そうとはしない。つまり、それほどまでに、受け入れるには覚悟のいる話だということだ』

ズァーク『そのくらい、お前なら分析できているはずだ』

零羅「……」

ズァーク『……それを受け入れる覚悟を、お前は本当に決めることができるのか?』



88 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:31:02.35 ID:smndEJtZO





零羅「そ、それは……」

ズァーク『……覚悟の無い奴が、本当のことを知ったところで壊れるだけだ』

ズァーク『だから、俺たちは今のお前に、本当のことを教えることができないんだ』

零羅「………っ、」

ズァーク『……わかったら早く寝ろ。起きているだけでは、強い覚悟は決められん』

零羅「……わかったよ、ゴメンね。ワガママ言って」

ズァーク『………』

零羅「……おやすみ、ズァーク」

ズァーク『ああ、おやすみだ、零羅……』



パチンッ



89 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:33:05.66 ID:smndEJtZO





…………………………………………………………………………




ズァーク(……なぜ、俺や赤馬零児たちが、零羅に本当のことを話すことができないのか?)

ズァーク(それは、本当のことを話せば、『かつて零羅が』『4つの次元に対し』『何をするつもりだったのか』、思い出してしまうかもしれないからだ)


ズァーク(そうなれば、零羅は己を責め続け、心を壊してしまうかもしれない)


ズァーク(もちろん、全ての元凶は俺だ。零羅を唆したのは、あの小娘だ)


ズァーク(それでも、零羅は己を責め続ける。この子はそういう子だ)

ズァーク(だが、零羅が己を責め続けるなど、誰も望まない。望むはずがない)

ズァーク(だから、俺や赤馬零児たちは、零羅に本当のことを教えることができないのだ)



90 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:35:04.25 ID:smndEJtZO





ズァーク『………』チラッ

零羅「ーーーーーーーーー」


ズァーク(……眠ったか)


ズァーク『……さっきはキツイこと言ってしまったな。それで、お前を突き放しもした』

零羅「ーーーーーーーーー」

ズァーク『……その詫びと言ってはなんだが、少しだけ昔話をしてやる』



91 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:36:24.97 ID:smndEJtZO





ズァーク『……かつて、二人の人間がいた』


ズァーク『……その二人には、『自分』が無かった。それゆえに、『自分』を信じることができなかった』


ズァーク『できたのは、せいぜい他者を信じ、傀儡となることだけだった』


ズァーク『だが、自分でさえ信じられない者に、他者を信じ続けることなどできるはずがなかった』


ズァーク『信じるべき相手かどうか、判断するのは、結局のところ自分だ』


ズァーク『その自分を信じられないのでは、他者を信じようとしたところでボロが出るに決まってる』


ズァーク『そうして、他者の傀儡であることすら放棄しはじめた』



92 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:38:11.22 ID:smndEJtZO





ズァーク『……そんなある日、ある声が囁いてきた』


ズァーク『それは、己にしか聞こえない、“特別な声” だった』


ズァーク『二人の人間は、それぞれの “特別な声” に運命を感じた』


ズァーク『今までの他者とは違う、特別な存在だ、そんな存在であれば従う意味がある……』


ズァーク『そう感じた結果、“特別な声” に導かれるまま、行動すること決めた』


ズァーク『そして、その声のためなら、なんだってする気でいた』


ズァーク『たとえ、いまある世界を滅ぼすことだってーーーーーー』



93 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:40:10.62 ID:smndEJtZO





ズァーク『ーーー結局、二人の人間の行為は、どちらも失敗した』


ズァーク『片方は未遂で終わり、もう片方は結果的に世界を滅ぼせたものの、新たな世界が創生されて、自身が封印されるに至った』


ズァーク『まあ、後者は封印を解いた後、もう一度世界を滅ぼすために暴れまわって、その結果改めて封印されることになったのだがな』


ズァーク『それで、封印されたそいつは、ある日を境に世界を滅ぼすことをやめた』


ズァーク『それは、 “特別な声” の持ち主たちが、一人の人間の元でデュエルしている様を見たからだ』


ズァーク『封印されたそいつでは、到底できない、楽しいデュエルを、な』


ズァーク『 “特別な声” の持ち主たちは、新たな主人と心を通わせ、心の底から、そのデュエルを楽しんでいたんだ』



94 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:41:55.93 ID:smndEJtZO





ズァーク『……元主人は、一人だけ取り残された』


ズァーク『そして、その時、はじめて『自分』が空っぽであることに気づいた』


ズァーク『最後の最後まで、誰かの声に縋ることしかできなかった、哀れな人間であることに気づかされたんだ』


ズァーク『……だが、そんな奴でも、できることもあると気づいた』


ズァーク『……それは、もう二度と、過ちを繰り返えさせないことだ』



95 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:43:34.36 ID:smndEJtZO





ズァーク『……そいつ自身が過ちを繰り返すことは無い。繰り返そうにも、そいつは身動きの取れない状態にあるからな』


ズァーク『だが、そいつのそばにいた奴は違う』


ズァーク『……『自分』を持たないもう一人は違う』


ズァーク『もう一人の方は、自由だった。人生をやり直すことが可能だった』


ズァーク『それで、思ったのだ。せめて、そのもう一人には、過ちを繰り返して欲しくは無いと』


ズァーク『そのために生きることこそが、自分にできる唯一のこと、そう思った』


ズァーク『それが、そいつがはじめて定めることのできた『自分』だった』


ズァーク『だからこそ、空っぽだったという真実を受け入れ、前に進むことができたんだ』



96 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:45:26.56 ID:smndEJtZO





ズァーク『ーーー長々と述べたが、結論はこうだ』


ズァーク『ーーー必ず『自分』を持ち続けろ。そして、決して忘れるな』


零羅「ーーーーーーーーー」


ズァーク『……その二人のようにはなるな、零羅』


ズァーク『お前は、俺と違って、帰る場所があるのだからな……』



97 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:46:28.43 ID:smndEJtZO





零羅「……違う」

ズァーク 『!』

零羅「そうじゃない……そうじゃないよ、ズァーク……」ムニャムニャ

ズァーク『寝言か……驚かせてくれる』

零羅「ズァーク……ズァーク……」

ズァーク『まったく、どんな夢をーーー』

零羅「ズァークには、僕がいるから……」



98 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:47:55.23 ID:smndEJtZO





ズァーク『なっーーー』

零羅「僕がズァークの帰る場所で、ズァークが僕の居場所ーーー」

零羅「ーーー僕らが、僕らの世界なんだ」

ズァーク『零羅、何を言って……』

零羅「いやだいやだ、そうじゃなきゃ、いやだ……」



99 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:49:10.65 ID:smndEJtZO





ズァーク『!?』

零羅「……君だけは本当のことを言ってよ、僕を一人にしないで、そんなの嫌……」

ズァーク『……違う! お前は一人なんかじゃーーー』

零羅「……聞こえるのは、僕一人だけ……!」

ズァーク『!』

零羅「寂しいよ、ズァーク……!」グスッ



100 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:51:00.42 ID:smndEJtZO





ズァーク『ーーーーっ、!!』


零羅「ズァーク、ズァーク……っ、」


ズァーク『……そうだな』

ズァーク『お前には、他者には聞こえない声が聞こえるんだからな……』

ズァーク『……そんな自分が、怖くて不安で仕方がない……』



ズァーク『寂しいに、決まってるよなあっ、!』



101 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:53:03.84 ID:smndEJtZO





零羅「ズァーク……っ、」ヒッグ


ズァーク(……零羅をこうしたのは誰だ?)

ズァーク(言うまでもない……俺だ)グッ


零羅「………っ、」ギュッ


ズァーク(……なら、俺がやることはーーーーーー)



102 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:54:28.39 ID:smndEJtZO





…………………………………………………………………………




チュンチュン……



零羅「う、うう〜〜ん……」



ジリジリ! ジリジリ!



零羅「……っ、」ピッ



103 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:55:33.95 ID:smndEJtZO





零羅「……ふわあ〜〜、よく寝た〜〜」ムクッ

ズァーク『……起きたか、零羅』

零羅「……ん、おはよう、ズァーク。僕が起こす前から起きてるなんて珍しいね」

ズァーク『………』


零羅「……黙っちゃって、どうかしたの?」


ズァーク『……起きたばかりで悪いが、お前に話がある』



104 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:56:58.34 ID:smndEJtZO





零羅「……なあに、話って?」

ズァーク『俺は3つ、お前に伝えなきゃならないことがある』

零羅「………?」

ズァーク『まずは、一つ目だ』

ズァーク『……昨夜は突き放すようなことを言って悪かった』

零羅「!?」

ズァーク『……本当のことはまだ話せないが、それでも言い方というものがあった』

ズァーク『本当に悪かった……』

零羅「ズァーク……そんな、僕は別にーーー」



105 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:58:09.59 ID:smndEJtZO





ズァーク『……そして、二つ目』

零羅「………」

ズァーク『……お前は一人じゃない』

零羅「………!」

ズァーク『お前には家族がいるし、友達がいる』

ズァーク『みんな、お前が大好きなんだ。本当のことを話さないのは、お前に壊れて欲しくないからだ』

ズァーク『それだけお前のことを大切に思っているからなんだ』


ズァーク『それをどうか、わかって欲しい』



106 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 19:59:42.32 ID:smndEJtZO





零羅「ズァーク……」


ズァーク『そして、三つ目』


ズァーク『……何があろうと俺たちは一緒だ』


零羅「!!」


ズァーク『……もし、分離することがあったとしても、俺は必ずお前の側にいる』

ズァーク『お前が嫌がろうと変わらず取り憑いてやる』



ズァーク『だから、何があろうと俺たちは一緒なんだ。覚えておけ』



107 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:01:13.31 ID:smndEJtZO





零羅「…………」

ズァーク『……話はそれだけだ。悪かったな、時間を取らせて』

零羅「……悪くなんてないよ」

ズァーク『!』

零羅「ありがとう、ズァーク。僕を想ってくれて……」

ズァーク『……礼を言われるようなことでもないと思うがな』

零羅「何言ってるの、嬉しい気持ちにしてくれたら、お礼を言うのは当然だよ」

ズァーク『………ふん』プイッ


零羅「……いやー、それにしても、まさか、ズァークからプロポーズされるなんてねー」



108 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:02:36.70 ID:smndEJtZO




ズァーク『ぷ、ぷろぽ……っっ、?!!』

零羅「だって、さっき、ズァークは、異性の僕とずっと一緒にいる宣言したわけじゃん」

ズァーク『!』

零羅「それって、つまり、そういうことじゃーーー」

ズァーク『ち、ちがわい! 誰がお前のようなガキと……!』カアアッ

零羅「あはは、冗談だよ」

ズァーク『なっ……!!』

零羅「いや、ズァークが僕をそういう対象として見ていないことくらいわかってるからね?」

零羅「なのに、そんなに照れるだなんて、ズァークって本当にウブだねー」



109 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:04:40.31 ID:smndEJtZO





ズァーク『〜〜〜〜っ、零羅! お前ーーー!』

零羅「でも、さっきの言葉を嬉しく思ったのは事実だし、お礼を言いたかったのも事実だよ」

零羅「本当にありがとう、ズァーク」

ズァーク『〜〜っ、ふん! 本当に捻くれたガキだ! まったく、なんでこんな風になってしまったんだか……!』

零羅「ウブな反面教師がいるからじゃない?」

ズァーク『ああっ!?』

零羅「それよりも、ほら、今日の朝食のことでも考えようよ。きっと美味しいよ」

ズァーク『……うおおっ、そうだった!』

零羅「ほんと、今日の朝ご飯はどんな味がするんだろうねー? 今から楽しみだよ♪」



110 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:06:23.93 ID:smndEJtZO





零羅(……僕の名前は赤馬零羅。どこにでもいる普通の女子高生だ)

零羅(もし、普通と違うところがあるとすればーーーーーー)



ズァーク『うおおっ! メシ! メシ! メシ!』



零羅(……かなりボケまくりの幽霊に取り憑かれているってとこかな?)



111 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:07:28.57 ID:smndEJtZO





零羅「……とりあえず今から制服に着替えるから、一回眠ってね?」

ズァーク『ん? ……ああ、すまん。それじゃおやすみ……ぐぐーっ!』スヤスヤ

零羅「……ほんと眠るの早いよね。取り憑く前は、スリープが基本なナマケモノ生活でもしてたのかな?」

ズァーク『ぐぐーっ、ぐがーっ、』スヤスヤ

零羅「……完全に寝ちゃってるね。まあ、いつものことだけど……」



112 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:08:49.28 ID:smndEJtZO





零羅「……ねえ、ズァーク」

ズァーク『ぐごーっ、ぐがーっ、』

零羅「僕はズァークがいつ眠っても起きても、それを受け入れるよ」

ズァーク『ぐがーっ、ぐぐーっ、』

零羅「……着替える時でも、お風呂の時でも…………たとえ、どんなことをしている時であっても、起きてくれて構わない」



零羅「僕はそれを受け入れる」



113 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:09:52.22 ID:smndEJtZO





ズァーク『………』


零羅「……なぜなら、僕がズァークの帰る場所で、ズァークが僕の居場所なんだからーーー」


零羅「ーーーそう、僕らが、僕らの世界なんだ」


零羅「だったら、お互い変な気をつかう必要は無い。そうでしょ?」


ズァーク『………………』



114 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:10:57.82 ID:smndEJtZO





零羅「だからーーーね、?」スッ


ズァーク『………………………』






零羅「……ずっと一緒だよ、ズァーク」ニコッ


ズァーク『……ぐーっ、』



115 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2018/06/24(日) 20:12:54.71 ID:smndEJtZO
以上で完結です。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 22:35:20.66 ID:2wuw07aZo

この世界ではBBや勝鬨も平和に暮らせてるってことでいいのかな
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