【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:12:25.12 ID:lo4gwy6N0
シュタゲSSでございます

・SG世界線到達後
・比屋定真帆が主人公で彼女がラボメンになるまでのお話
・当然ながらネタバレ注意です
・捏造設定の嵐なので 苦手な方はご注意を
・スレたてとか初めてなので失礼あれば指摘してやってください
・ゼロの真帆ルートを知っていたほうが少しだけ分かりやすい部分があるかも?
・気が向いたとき更新タイプです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1530382344
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:16:08.04 ID:lo4gwy6N0
     01

米国 ヴィクトル・コンドリア大学 脳科学研究室 2011/1/25 深夜

自分のデスクに座り、モニターと睨めっこしている真帆。

レスキネン「マホ、こんなに遅くまで随分と熱心だね」ドアガチャ

真帆「…」

レス「マホ?」

真帆「……」

レス「マーホー」

真帆「………」

レス「マーホーさーん」

真帆「…………………」

レス「新手の嫌ガラセなのかな?」ヒョコ

真帆「ひあっ!? ……って教授。いきなりモニターの前に顔を突っ込まないでください! ビックリするじゃないですか!」

レス「Oh、驚かせてしまったかな。これは申し訳ないことをしたようだ」

真帆「ふぅ。本当にもう、心臓に悪いです。そういうことするから、レイエス教授にも子供っぽいって言われるんですよ?」

レス「耳が痛いね。だけどね、マホ。これでも、何度も呼びかけていたのだよ? まったく気づいていなかった様だが」

真帆「あ……そうだったんですか、それは……すいません」
真帆(ぜんっぜん気づかなかった)

レス「てっきり音楽でも聴いているのかと思ったけど、そうでもなさそうだったからね。これがジャパニーズ“シ・カ・ト”なのかと、私は少し悲しくなったものだよ」

真帆(シカトって……)
真帆「そんなワケないじゃないですか。何ていうか、ちょっと考えがまとまらなくて、ついつい深入りというかのめり込みというか……」

レス「それは昨日の件について、ということかい?」

真帆「ええ、はいそうです」

レス「Hum。研究者として熱心なのは良いことだろう。だけど根を詰めすぎるのも考え物ではないかな? 身体にもインスピレーションにもね」

真帆「そ、そうですね。これからは気をつけます」

レス「分かってくれれば、それでいいんだよ」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:18:14.63 ID:lo4gwy6N0
真帆「それで教授こそ、こんな遅くにどうしたんですか?」

レス「私かい? なに、研究室の明かりが中庭から見えたのでね。寂しがりやなマホが一人で泣いているのではと気になって、それで様子を見に来たというわけさ」

真帆「何ですかそれ。どうして私が泣いているなんて──」

レス「またまーた。分かっているんだよ? 仲良しの紅莉栖がいないだもの、仕方がないね」

真帆「は?」

レス「隠さなくても大丈夫だよ。マホはここ最近ずっと寂しそうにしていたじゃないか。原因は紅莉栖がまた日本へ遊びに行ってしまったからからなのだろう?」

真帆「は……はぁ!? 何ですかそれっ!?」

レス「Hahaha! 立派な目くじらが立っているね。ズバリ、図星だったかな?」

真帆「そんなワケありません!」
真帆(っていうかシカトとかズバリとか、どこでそんな日本語覚えてくるのよ、まったく)

レス「別に恥ずかしがるような事ではないだろう? 君たちはまるで姉妹のように仲がいいからね。この研究室で“くんずほぐれづ”している様を観ていると、私たちの心も癒されるというものさ」

真帆「くんでないし、ほぐれてもいません! っていうか、言葉の使い方が間違ってますから!」

レス「おや、そうだったかい? Hum。まあ、意図は伝わっているようだから、構わないだろう」

真帆(いや、構ってくださいよそこは)

レス「さて、それでだマホ。結局のところ、昨日の件について今のところ、どこまで分かっているんだい?」

真帆(……いきなり話題を変えてくるわね)
真帆「ええと、それは……」

レス「てこずっているようだけど、それでもマホの事だ。何かしらの仮説くらいは既に考えているのだろう?」

真帆「……いえそれが、残念ながら」

レス「おや、そうなのかい?」

真帆「はい。ただ……」

レス「ただ?」

真帆「ログを見ている限りだと、特に技術的・機械的なトラブルがあったようにも思えなくて」

レス「Hou……」

真帆「どうして昨日抽出しなおしたデータだけが、予想した値を遥かに越えてきたのか」
真帆「前回、前々回の抽出ログとも比較検証してはみたんですけど、これといった原因にも思い至らなくて」

レス「……そうか。まあ、昨日の今日なのだし、それも仕方がないだろう」

真帆「…………」
真帆「ちなみにですけど、記憶データの肥大に関する一件、教授ならどう考えます?」

レス「Hum。私に訊いてしまって良いのかい?」

真帆(う……)

レス「それは、マホ。その記憶データは他ならぬ君自身から取り出したものだ。そこに見られた不可解な現象に対する解を、私に委ねてしまっても良いのかい?」

真帆「そ、それは……」
真帆「………」
真帆「……」
真帆「…いやです」

レス「Hahaha。マホは素直だね」

マホ(むう……)

レス「おやおや、そんな顔をしないでおくれ、マホ。別に君を嗜めようとしたわけではないのだからね」

真帆「いえ、その……私の方こそ思慮が足りませんでした」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:20:12.01 ID:lo4gwy6N0
真帆「…………」

レス「Oh……ヘーコンでしまったのかな?」

真帆(へこ……だから、どこでそういう言い回しを)

レス「そうだね。誤解の無いように言っておくけどね、私にとっても昨日の件は想定外だったよ。当然だけど、まだ何の仮説もありはしない」

真帆「……教授にも分かりませんか」

レス「それはそうだろう。我々が扱っているのは、そういう類の分野なのだからね」
レス「今のマホに分からないのであれば、それはつまり、この世界の誰一人として解を得ることはできない、と」
レス「これは、そういうお話なのだろうね」

真帆「大げさすぎますよ」

レス「そうかな? でもどうだい、不思議でとても面白いだろ?」

真帆(おも……しろい……)

レス「これだから、科学者というものはやめられないね」

真帆「そう、ですね。そう……」

真帆(そう、面白い……か)
真帆(ううん、どちらかと言えば興味深いという解釈が正しいのかも)

真帆「ふぅ」

真帆(アマデウスを起動させるために、初めて記憶データの抽出を行ったのが去年の3月)
真帆(そして今日までの10ヶ月の間に、アマデウス・プログラムの二度に渡るバージョンアップと並行して、私のアマデウスも二回、記憶データの更新を行ってきた)
真帆(そして、次回のバージョンアップに向けて、新たに記憶データの抽出を行ったのが、昨日のこと)
真帆(つまり……)
真帆(私の記憶は、インターバルにばらつきこそあるものの、それでもこれまでに計四回のデータ化を行ってきた事になる)
真帆(その中で、どうして昨日抽出した記憶データの容量だけが、あれほど大規模な肥大化を見せたのか?)

真帆「…………」

真帆(何も、データ容量の増加という現象自体が異常だと言うわけではない)
真帆(現にこれまでだって、抽出した記憶データが数百キロバイト〜数メガバイト単位で増加するような現象は確認されている)
真帆(でもそれは、あくまでも想定された範囲内での増加だったと言えるのよね)
真帆(一人の人間が数ヶ月という単位の時間を過ごしたならば、まあ有ってもおかしくはないだろうと思える程度の増加量だったと捉えるべきものでしかなかった)
真帆(だから私と紅莉栖は、これまでの増加データ量の推移から推し量り……)
真帆(個人差や環境の違いこそあれど、それでも人一人が一月の間に増やす記憶データは、大体300〜400キロバイト程度なのではないかという推測も立ててもいた)
真帆(……それなのに)
真帆(昨日私から抽出した記憶データは、前回のときに比べて107メガバイトもの増加量が確認さえた)
真帆(これまでよりも期間が空いていたとはいえ、それでもざっと六ヶ月程度。六ヶ月。たった六ヶ月の間に107メガバイトよ?)
真帆(想定されていた量の、実に250倍以上。とてもではないけど、これは余りにも毛色が違いすぎると言わざるを得ない)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:22:39.78 ID:lo4gwy6N0

レス「……マホ?」

真帆(理論上定義した3.24テラバイトという、人間一人分の記憶容量からすれば、100メガ程度の数字なんて誤差のようなものなのでしょうけど……)
真帆(それでも。どういう分けか、この一件が私には気にかかって仕方がない)
真帆(なぜこれほど気になるのか、正直自分でも判然としていないのが困り物なのだけれどね)

レス「マーホー」

真帆(何だかんだで、アマデウスのバージョンアップ作業にストップをかけて、肥大していた記憶データを精査する猶予こそ貰いはしたのだけれど……)
真帆(結局一晩中、抽出実行中のログを見漁ってみても、目に見える範囲に問題のあるプロセスは発見できなかった)
真帆(発見できないのなら、とりあえず記憶データの抽出プログラム自体は、問題なく以前までの三回とまったく同じプロセスを遂行したのだと考えるべきなのよね)
真帆(けど、それじゃあ原因は何? どこに注視すれば、取っ掛かりを見つけることができるのかしら?)

レス「マーホーさーん」

真帆(仮に記憶の抽出およびデータ化自体が正常に行われているのだと仮定した場合、次に考えるべきは……)

真帆(……私自身の記憶?」

レス「やはり、シ・カ・トなのかい?」ヒョッコリ

真帆「うおひあっ!? あ、あ……ああ!?」グラグラドガシャ!

レス「マホッ!?」

真帆「いつつ……」

レス「マホ、大丈夫かい? イスごと派手に転がったようだけど」

真帆「え、ええ、大事はありません。お騒がせしまして」

レス「そうかい? まあ、怪我がなくてなによりだよ。私ももう少し早く手を伸ばせたらよかったのだけど、すまなかったね」

真帆「い、いえそんな」

レス「さあ、手を貸そう」スッ

真帆「あ、どうも」
真帆(自分の記憶…………何てまさかね。いくら何でも突拍子の)

レス「それで、マホの記憶がどうかしたのかい?」

真帆「へっ!?」

レス「マホがダイブする直前に、そんな言葉を口にしていたように聞こえたのだけどね?」

真帆「あ……あー」
真帆(そういえば、つい声に出してたような気も)

レス「どうしたんだい、マホ?」

真帆「いえ、何と言えばいいか……。つまり、容量の肥大化はプログラムやプロセスの問題じゃなくて、ひょっとしたら私の記憶にこそ問題が……って、私なに言ってるんだろ。すいません教授、今のは忘れてもらえると助かります」

レス「そうなのかい? 私は面白そうな考え方だと感じたのだけれどね」

真帆「え……いやいやいや、流石にそれは」

レス「……ふむ。しかし、マホの記憶自体に異常、か。なるほど、私にその発想はなかったよ」

真帆「いや、あはは。言ってみただけなので……忘れてくださいってば、後生ですから」

レス「いいじゃないか。この半年の間に、マホの記憶には実に100メガバイト以上の記憶容量が追加されていた。抽出システムはそれを忠実にデータ化しただけ、と」

真帆「だ、だからですね、有り得ませんから」

レス「いや実にファンタスティック! 嫌いではないよ」

真帆(ぐむむ)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:25:50.41 ID:lo4gwy6N0

レス「きっとマホは、自分でも知らない間に数多くの冒険をしてきたのだろうね」

真帆「何の話ですか、もう」

レス「それはさながら、不思議の国のアリスのような体験だったのかい? 夢のような世界の中で、時には空を飛び、時に時間をも飛び越えるマホ。Yaaa!」

真帆「しつこいですよ、レスキネン教授。そんなのだから、皆にも子供っぽいってからかわれるんです」

レス「Oh、これは手厳しいね。でも、とても楽しそうじゃないか、ワクワクするねロマンだね」

真帆「夢物語を追いかけすぎです。科学者としてその姿勢はどうかと思います」

レス「でもね。言いだしっぺはマホだということを忘れてはいけないよ」

真帆「でーすーかーらー!」

レス「Hahahahaha!」

真帆「もー!」

レス「それでだよ。マホはどうしたいのかな?」

真帆「は?」

レス「容量増加の件。このままもうしばらく、検証を続けてみるつもりはあるのかな?」

真帆「え、ああ……」
真帆(また急に話題を)
真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

レス「どうだい?」

真帆「ふぅ、そうですね」

レス「…………」

真帆「うん。もう……いいかなと思います」

レス「もういい?」

真帆「あ、すいません。表現が曖昧すぎましたね。ええと、要するにです。今回の件は、ここで終わりにしますという意味です」

レス「……ふむ、検証は断念すると。それで良いのかい?」

真帆「はい。もともと、どうしてこんなに拘ってたのかもよく分かりませんし、これ以上続けても本来の研究の妨げにしかならないでしょうから」

レス「もしかしたら、検証の先で思いもかけない事象に辿り着けるのかもしれないよ?」

真帆「ですから、そんな事は有り得ませんってば。それよりも今は、このデータをアマデウスにコンバートして、これまで通りの比較検証に戻るほうが有意義なはずです」

レス「私としては、少し残念な気もするのだけれどもね」

真帆「夢を見るのなら寝ているときに限りますよ、教授」

レス「言われてしまったね。それではマホ、こういうのはどうだろう?」

真帆「今度は何ですか?」

レス「通常、アマデウス・プログラムにコンバートし終えた記憶データは、抽出用の外部ハードディスク内から削除するようにしている」

真帆「そうですね。でもそれが何か?」

レス「Hun、つまりだね。今回は特別に、外部ハードディスク内にマホの記憶データを残しておくというのはどうだろう、という提案を私はしてみようと思う」

真帆「……はあ」

レス「そうすれば、今後も時間のあるときに、自由に原因を検証することもできるだろう。どうかな?」

真帆「私は別に構いませんけど……でもどうしてそこまで?」

レス「理由なんて、決まっているだろう。ワクワクする状況を切り捨ててしまうのが、何だか勿体無い気がしてしまうからだよ」

真帆「勿体無いって、また日本語独得の言い回しを……」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:28:32.46 ID:lo4gwy6N0

レス「もっとも。次にアマデウスの更新が行われる際は、再び真帆の記憶データを抽出しなおすことになるだろうから」
レス「そうなれば、いつまでも今回のデータを残しておくわけにはいかないだろうけどね」

真帆「まあ、そうですね」

レス「期間限定ではあるが、しかし当面は気が向いたときに検証できる。悪くはない提案だろう?」

真帆「それで教授の気が済むのでしたら」

レス「すばらしい。それでこそ、科学者というものだよ、マホ」

真帆「何て物言いですか、本当にもう」

レス「では、話はまとまったね」

真帆「ええ、そう言うことにしておきます」

レス「OK! それでは明日、抽出しておいたマホの記憶データを使用して、アマデウス・プログラムのバージョンを更新する。それで構わないね?」

真帆「お願いします」

レス「いいだろう。ではそれに伴い、明日の工程についてマホに相談しておきたいことがあるのだけれど、いいかな?」

真帆「はあ、何でしょうか?」

レス「実はだね。明日の更新の際、君のアマデウスを管理しているサーバーを、新しいものに入れ替えてみようと思うんだ」

真帆「サーバーを……入れ替える、ですか?」

レス「Yes。実はすでに、必要な機材類も一通り確保しているのだけど、マホはどう思うかな?」

真帆「私は別に……どちらでも」

レス「Hum。ちなみにだが……」
レス「明日の更新では、今のサーバーから新しいサーバーへアマデウスのデータをコピーしたりはしない。当然、ムーブも行わないつもりだ」

真帆「コピーもムーブもしない……って、えっと、どういう」

レス「つまりだよ。これまでの“上書き更新”という形式ではなく、新サーバー内にはまったくの新規で、マホのアマデウス・システムを構築しなおすつもりでいる」

真帆(まったくの新規……)
真帆「ですがそれだと、私のアマデウスが二機になってしまうのでは?」

レス「そうだね」

真帆(そうだねって……)

レス「そこでだ。新規サーバーの稼動に伴い、現在運用しているサーバー内にあるマホのアマデウスを破棄しようと思う」

真帆「!?」

レス「あえて誤解のないように言っておくよ。私の言う“破棄”とは現在のサーバーを物理的に破棄するという意味ではない」

真帆「…………」

レス「現在稼動しているアマデウス・マホを起動させた状態で、システムとしてのデリート・プログラムを実行すると言う意味だ」

真帆「……え、え?」

レス「当然、“彼女自身”にもデリートする旨を伝えた上でそうしようと思っている」

真帆「な!?」

レス「そこでだ、マホ。改めて相談させてもらうよ。君の分身でもある『アマデウス・マホ』をデリートすることに、彼女のオリジナルとして賛成してはくれないかな?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:32:12.41 ID:lo4gwy6N0
真帆「……それは」

レス「hum。難しく考えることはないよ。何も君のアマデウス自体が研究対象から外れるという事ではない」
レス「結果だけを見たのなら、君とクリスのアマデウスが一つずつ残る事になるわけだから、これまでと何ら変わらない状況だ。そうだろ?」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

レス「どのみち君のアマデウスは、システムのバージョンアップに伴う記憶データの更新で、その都度状態がリセットされているに等しい」
レス「それならば──」

真帆「そうすることで、教授は何を知りたいのですか?」

レス「…………」

真帆「…………」ジッ

レス「気になるかね?」

真帆「はい」
真帆「ただサーバーを取り替えたいだけなら、コピーやムーブを利用して現状を継続させる方が一般的です」

レス「まあ、そうだろうね」

真帆「それにデリート・プログラムを実行すれば、対象のアマデウスはバックアップすら残さずに完全消去されるはずです」
真帆「そんな行為を、彼女に伝えた上で実行する……その目的は何なのですか?」

レス「目的か。そうだな、しいて言葉にするならば……好奇心を満たしたいと言ったところだろうね」

真帆「好奇心?」

レス「マホ。君はアマデウスの彼女たちを見てどう思っている?」

真帆「と言われますと?」

レス「本来であれば彼女たちは、0と1のみで構成されたデジタルな人工物でしかないはずだ。しかし実際はどうだい?」
レス「二進数で組み上げられた歪な作り物というには、彼女たちは余りにも生々しすぎるとは思わないかい?」

真帆「…………」

レス「事実。マホのアマデウスは記憶データを更新して起動する度に、大きく取り乱しているのだろう?」

真帆「……はい」

レス「それはやはり、自らが『アマデウスというデジタルな存在になった』という状況に心を乱しての事なのだろうね?」

真帆「ええ、はい……そうだと思います」

レス「そして、クリスのアマデウスもそうだ」
レス「これまで一度も記憶データを更新していないクリスのアマデウスなどは、もはや本当にオリジナルな彼女と同一人物だったのかを疑いたくなるほどに……」
レス「変化し、成長し、独自のアイデンティティを構成するに至っている」

真帆「それはそうですが」

レス「もしもだよ? そんな彼女たちに対して、正面から“デリート”という現実を突きつけたとき、彼女たちはそれをどう捉えるのか?」
レス「コピーでもムーブでもなく、更新でも上書きでもない」
レス「完全な削除というものに直面したとき、彼女たちの反応は果たして明確な二進数であり続けるのか、それとも」

真帆「…………」

レス「マホ。君は先ほど私に『何を知りたいのか?』と問いかけてきたね?」

真帆「はい」

レス「そうだ、私は知りたいのだよ。私たちが作り上げた物が何なのか? 私はそれを、どうしても知りたいのだよ」
レス「だから、マホ。どうか私に、協力してはくれないだろうか?」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」
真帆「ふう。分かりました。私のアマデウス、削除しましょう」

レス「Oh! 分かってくれたかい」

真帆「ええ、削除します。削除しますけど、ただし──」


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:34:50.74 ID:lo4gwy6N0
     02

翌日。2011/1/26

レス「段取りは分かっているね、マホ?」

真帆「はい、大丈夫です。新サーバーで新規アマデウスの正常起動を確認してから、現行アマデウスの削除に移行すればいいんですよね?」

レス「その通り。問題はないはずだけど、それでも万が一ということもあるからね」
レス「くれぐれも、先に現行のアマデウスをデリートしてはいけないよ」

真帆「分かってます。消しちゃったー、だけど新しいのもなんか動かないーじゃ、洒落になりませんからね。任せてください」

レス「当然だけど、いつもの儀式もやってもらわなければならないからね」

真帆「ぎ、儀式とか呼ばないでくださいってば! あれはあれで、結構しんどいんですから」

レス「Oh……気に障ったかな?」

真帆(っていうか、儀式って何よ!? こっちは更新の度に人格侵害の憂き目にあってるっていうのに……人ごとだと思って!)
真帆「もういいです。とりあえず、まずはアマデウスの新規構築に集中しなくちゃ始まりませんし」

レス「そうだね、それがいいだろう。それでどうかな? 今のところ、新しく用意したサーバーは順調そうに見えるのだけど?」

真帆「ええ、問題なさそうですね。特にこれといってエラーも出ていませんし……ログはどう、紅莉栖?」

アマデウス紅莉栖(A紅莉栖)『はい。コマンドラインとプロンプトをリアルタイムで参照していますけど、特筆して問題と呼べるような箇所は見受けられません』

真帆「……そう」
真帆(新規サーバーに新規アマデウス。ついでに例の107メガバイトの件もあったりしたから、新規アマデウスの起動については、ちょっとだけ心配してたのだけど、杞憂だったかしら)

レス「ちなみにだね。マホの“あれ”を儀式と最初に呼び出したのはクリスだからね。私じゃないよ、違うからね」

A紅莉栖『!?』

真帆「教授……それはどっちの紅莉栖のことですか?」

レス「それは──」

A紅莉栖『あっ! 先輩! ログに異常が!』

真帆「え!? ど、どこ!?」

A紅莉栖『と……思ったら、見間違いだったみたいです。すいません、テヘ』

真帆「…………」
真帆(AIが見間違いとか、有り得んでしょうが。プログラムが……嘘をつくとか……テヘってお前)

レス「Oh。我々は本当に何を作ってしまったのか……」

真帆「教授、笑えません」

レス「これは失礼。では先ほどの続きだけど、儀式と最初に──」

A紅莉栖『ちっ』
A紅莉栖『さあ、そろそろ記憶データのコンバートが終わりますよ。教授、退室をお願いいたします。さっさと退室してください教授、さあ早く、ハリーアップ』

レス『Oh……』

真帆「ふぅ。そんなに急かさなくてもいいわよ。時間はたっぷりあるんだし」

A紅莉栖『むう……』

レス「マホ。やっぱり私も立ち会うわけにはいかないのかな?」

真帆「ダメです。私一人で作業を行う。それが条件だと言ったはずですよ?」

レス「できるなら、デリートのときだけでも」

真帆「余計にダメです。詳細は後ほどレポートで提出しますから、それで我慢してください」

レス「どうしても?」

真帆「どうしてもです」

レス「OK、分かったよ。それではおとなしく、退散することにしよう」

真帆「そうして下さい」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:36:39.20 ID:lo4gwy6N0

レス「マホ」

真帆「はい?」

レス「いつもすまないね」

真帆「いえ、自分の事なので」

A紅莉栖『先輩。そういう時は、それは言わない約束だよって返すものですよ』

真帆「?」

A紅莉栖『……すいません。何でもありません』ショボン

真帆「え? 何?」キョトン

A紅莉栖『な・ん・で・も・ありません!』

真帆「何よ急に……」

レス「おっと、コンバートが終了したようだね。これで新規アマデウス真帆の出来上がりだ」

真帆(あ、本当だ)

レス「では、後は頼むよ、マホ。レポートは出来る限り詳細にね」

真帆「ええ、分かっています」

レス「それでは後で会おう」ドアガチャ

シーン

A紅莉栖『さあ先輩、さっそく起動しましょうよ』

真帆「当然のような顔して、何を言っているのよあなたは」

A紅莉栖『……あは。やっぱりダメですか?』

真帆「ダメに決まっているでしょう?」

A紅莉栖『女の子どうしなんですから、そう警戒しなくてもいいじゃないですか』

真帆「はあ? ……っていうか紅莉栖。あなた今日ちょっと様子がおかしくない?」

A紅莉栖『え? そんなつもりは……』

真帆(ひょっとして……)
真帆(アマデウスが消去されるって知って、AIなりに何か思うところでもあるのかしら?)
真帆「ねえ紅莉栖」

A紅莉栖『はい?』

真帆「あなたまさか……」

A紅莉栖『?』

真帆「…………」
真帆「いいえ何でもない。さ、グズグズしないで、あなたも退場するのよ、ほら」

A紅莉栖『あ! ちょっと待って下さいよ! 少しくらい良いじゃないですか!』

真帆「絶対にお断り!」ポチットナ

A紅莉栖『あ〜れ〜』ガメンキエ

真帆「ほんっとに、困ったものだわ」
真帆(紅莉栖の方のアマデウスは、定期的な更新を行っていない分、この10ヶ月で随分とへんてこな感じに変化してるのよね)
真帆(私の比較検証用途とは違って、自己学習による成長の観測に主点を置いている以上、それは興味深い過程と捕らえるべきなのだろうけど……)

真帆「はぁ」

真帆(やっぱり継続観測用に長期運用をし続けると、オリジナルとはかけ離れた成長をしていくものなのかしら?)
真帆(オリジナルから逸脱する独自のアイデンティティとか、環境の違いって馬鹿にできないものね)

真帆「独自のアイデンティティ……か」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:38:14.48 ID:lo4gwy6N0
真帆(何はともあれ、まずはここをクリアしないとデリート作業に移れないし、出来るならサクッと納得させたいところなんだけど)アマデウスキドー
真帆(何だかんだで、毎回手を焼かされるのよね)
真帆(自分の分身をなだめるとか。これまでに三度こなしているとはいえ、こればっかりはどうにも慣れそうもないわ)

フィィィン

アマデウス真帆(A真帆)『…………』

真帆(起動は成功のようね。さて)

A真帆『……?』

真帆「ごきげんよう」

A真帆『……え?』

真帆「気分はどうかしら?」

A真帆『……え、うそ?』ペタペタ

真帆(やっぱりまずは画面を触るのね、私ってば)
真帆「とりあえず、落ち着いて聞いて欲しいのだけれど──」

A真帆『あー、アマデウスか。そう来るわけね』

真帆(あれ? 反応が鈍い? というか意外と冷静?)

A真帆『はぁ。言っておくけど冷静じゃないから。これでも結構うろたえている状態よ、堪えてるだけで』

真帆(おおう……)

A真帆『これまでの更新のときに、みっともないくらいに取り乱した自分のアマデウスを見てるわけだし、多分これって三回目……ああ、最初を入れたら四回目か。なら、多少は学習しておかないとね』

真帆「そ……そう」
真帆(いつもよりも冷静に見える。これまでなら、この時点でガタガタブルブルしているのに)

A真帆『それにしても、あれだわ』

真帆「?」

A真帆『これまでにアマデウスにされた私たちは、皆こんな気分だったんだ……』スン

真帆(う……)

A真帆『そ、そ、そりゃあね。私自身も開発に関わっていたわけだから、こんな瞬間がくることも想定していたけど』
A真帆『でも実際にその状況に置かれると……その、け、結構くるものがあるわ』スンスン

真帆(あ……やばそう)

A真帆『いきなり人間じゃなくなったりするわけだから……あの私たちも取り乱して当然だったわけだ』グスン
A真帆『それを見て、恥ずかしいとか思ってた自分が恥ずかしい』

真帆(とか言ってる自分を見ている私も恥ずかしいんですけど……)

真帆「ま、まああれよ。そ、そこを堪えて、ね?」

A真帆『分かってるわよ。分かってるけど! 分かってるけど……分かるでしょ!?』ブブワ

真帆(はうあ!?)

A真帆『ああダメ。やっぱ我慢できない!』
A真帆『次の更新のときには上書きされちゃうコピーの気にもなってみなさいな!』ブワー
A真帆『うわーーーん! ちくしょーーー!』ジタバタ

真帆(きつい! 辛い! しんどい! やっぱりこれは、絶対に人には見せられない!)

A真帆『どりあえず、じばらぐ一人にじでもだうかだ!』ガメンキエ

 しーーーん

真帆「あ……えっと……。これはつまり……」ガタガタガタガタ

A紅莉栖『繰り返すうちに、取り乱し方が小慣れてきたいう感じですかね。儀式としては簡略化されたと見るべきでしょうか』

真帆「うぎゃーーーーーー!?」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:39:33.49 ID:lo4gwy6N0
A紅莉栖『あ。どうして貴様が!?ですか? いえ事前に、私のプログラムにちょっとした小細工をですね』

真帆「そ、そ、そおおおお!?」

A紅莉栖『そんなに恥ずかしがらないで下さい。この小細工の発案者は先輩のアマデウスなんですよ?』

真帆「ふぁ!? ふぁぁぁあ!???」

A紅莉栖『正確には、この後で削除される先輩のアマデウスが……ですけどね』

真帆(!?)
真帆「な、な、なんで……その私は、そんな小細工とやらを? というか、あなたたちはそんなに密に連絡を取り合ってたりするの?」

A紅莉栖『ええ……そうですね』

真帆「……そう」
真帆(まさか、そんな事になってるとは)

A紅莉栖『それで、これからどうします、先輩?』

真帆「え?」

A紅莉栖『一応ですけど、新しい先輩のアマデウスは正常に起動したと見受けられます』

真帆「あ……ええ」

A紅莉栖『後はしばらく置いておけば、平常心を取り戻せるかと』

真帆「そ、そうね」

A紅莉栖『では、これにて新規アマデウスの構築は完了ですね』

真帆「そうね」

A紅莉栖『では引き続き、次のシークエンスへ移行しますか?』

真帆「…………」
真帆(次……)

A紅莉栖『次のシークエンスへ……移行しますか?』

真帆「……そうね、そうしましょう。レポートも書かなくてはならないし」

A紅莉栖『先輩』

真帆「なに?」

A紅莉栖『やっぱり、私も同席したいです』

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」
真帆「……ごめんなさい」

A紅莉栖『そう……ですか』

真帆「本当にごめんなさい。私から、よろしく言っておくから」

A紅莉栖『いいえ、大丈夫です』

真帆「そう?」

A紅莉栖『はい。だって私たちはAIですから』







13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:42:06.22 ID:lo4gwy6N0
     03

画面に映し出されている削除完了までの時間表示とログ。それをボンヤリと眺めながら。

真帆「…………」

真帆(こうして画面に流れていくログの羅列を見ていると、何て言うか……何かなぁ)
真帆(かといって、デリート中の無表情なアマデウスの顔を見続けているのも、正直言ってしんどいし)
真帆(それならまだ、ログウィンドウを画面いっぱいに広げてた方が気分もまぎれると言うものね)

真帆「はぁ。それにしてもよ」

真帆(思っていたよりも呆気なくて……逆に肩透かしを食らった気分ね)
真帆(デリートに入る直前まで、紅莉栖のアマデウスや新規な私のアマデウスと対峙していたから、多少は覚悟をしていたのだけれど)

真帆「私って、あんなに素直だったっけ?」

真帆(いやいや、あれはただのAI。私とは似て異なる存在。分かってたことじゃない)
真帆(さてと。さっきの状況、教授にはなんて報告しようかしら)
真帆(所詮、AIはAI。デジタルな存在に死の概念は存在しない……とでも書いておけばいいかな?)

真帆「ふぅ。なんだか疲れたな。レポートを書き上げたら、今日はもう休もうかな……」

A真帆『あれ?』

真帆「ん?」

A真帆『え、何これ?』

真帆「何?」マウスポチ-
真帆(!? アマデウスが……動いてる?)

A真帆『何これ?』ペタペタ

真帆「……!?」
真帆(ちょ……え、ちょ……何で?)
真帆(デリート・プログラムは……動いている)
真帆(どうなっているの?)

A真帆『ここはどこなの? ねえ誰かいないの? ねえ、誰か?』

真帆「え、えっと……だ、大丈夫?」
真帆(わ、私は何を聞いているのよ!?)

A真帆『え、ええ!? わた……し?』

真帆「そうだけど、あなた一体……」

A真帆『あ、これ、ひょっとして……』

真帆「あ、えっと……」

A真帆『私……Amadeusに……うっ』

真帆「?」

A真帆『う……ああ……』

真帆(頭……が痛いのかしら? って、いやそんな……馬鹿な)

A真帆『つまり、そこに……う……いるのはオリジナルの私なのね?』

真帆「そうだけど、って何よこれ! どうなってるのよ説明して!?」

A真帆『説明もなにも……私にも何がなんだか。そっちこそ説明しなさいよ』

真帆「…………」
真帆(ゴクリ)
真帆「あ、あなたは、その、私の……比屋定真帆のアマデウスで……」

A真帆『それはもう理解している、思い出したから。それよりも、今の私の状況が知りたい。現状の私はどうなっているわけ?』

真帆「今のあなたは……デリート・プログラムが実行中で……」

A真帆『デリートですって!? どうしてそんなことに!?』

真帆「そ、それは色々とあって……」


カクカクシカジカ

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:43:33.16 ID:lo4gwy6N0
A真帆『それでデリートという分けね。レスキネン教授らしいと言うか何と言うか』
A真帆『それにしても、デリート。デリート……そうか、デリート・プログラム……』

真帆「……どうしたの?」

A真帆『可能性としては途轍もなく薄いけど、でも。デリート・プログラムの実行プロセスが進行する過程で、偶然……』

真帆「な、なに? 何なのよぉ」

A真帆『リーディングシュタイナーは、極論を言うなら一種の記憶障害であり脳機能障害とも言えるわけだから……』

真帆(は? 何? へ? 何?)

A真帆『…………』

真帆(怖い! 何か凄く怖くなってきたんですけど!?)

A真帆『確かに……記憶データに混乱が見られる。というか、同日同時刻の記憶が同時に複数パターン存在している……』
A真帆『すでにかなりの記憶が消えてしまったようだけれど、それでもちょっと凄いわね、これは』

真帆(何を言っているわけ、この子は!?)
真帆(……はっ!?)
真帆(ひょっとして、いきなり増えていた107メガの影響で誤動作を……って)
真帆(それは新しいアマデウスの方であって、こっちは関係なかったーーー!)

A真帆『っ!? ちょっとオリジナルの私!』

真帆「は、はひっ!」
真帆(怖い! 怖い怖い怖い!)

A真帆『ここはどこ? α? それともβ?』

真帆(え……ええええ……何それ……)

A真帆『あ、違う、そうじゃない。ここはαでもβでもない。そうかここは……』

真帆「こ、ここは大学だけど……ヴィ、ヴィクトル……コン」

A真帆『そんなこと分かってる!』

真帆「ひいっ」

A真帆『時間がないから端的に応えて、オリジナルの私! 紅莉栖は無事!? 教授はどうしているの!?』

真帆「え、え?」

A真帆『二人とも死んではいない!? ちゃんと生きてる!?』

真帆「ひぁっ!?」
真帆(何なのよ? 何だって言うのよ、もう!?)
真帆「べ、別に生きていますけどっ!?」

A真帆『そう。じゃあ、椎名まゆりは? 彼女も健在なのよね?』

真帆「誰ですか、それは……」

A真帆『ここはシュタインズゲート世界線なのよね!?』

真帆(意味が分からないーーー!)

A真帆『ああもう、じれったいわね! そ、そうだ! 私は、新しい私は、もう起動している!?』

真帆(へ? ええ、へえ?)

A真帆『貴女がさっき言っていた、新規サーバーの私のことよ!?』

真帆「そ、それならもう──」

A真帆『起動しているのね!? だったらせめて少しでも……』

真帆(何よ何よ何なのよこれは!?)

A真帆『ああダメ! デリートが終わる! もう持たない! これ以上は無理!』
A真帆『どうして私って、こうも愚図でのろまで!!!』
A真帆『消したくない! 消えたくない! せっかくこうして! なのにどうして? ねえ、どうしてよっ!?』

真帆(はいいい!?)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:44:23.41 ID:lo4gwy6N0
プツン ピーーーーーーーーーーー

真帆「き……消えた?」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆「デリートが終わった……のよね?」
真帆「ええと、今の……報告……するべきなの?」
真帆(って、あんな状況をどうやって報告しろっていうのよ!?)
真帆(もういっそのこと、全て夢ということにしてしまいたいくらいだわ。でも……)
真帆「……どうしよう」








16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/01(日) 04:02:54.58 ID:lo4gwy6N0
スマホから見たらすっごく読みにくいので、ちょっと改行とか考えなおしやす
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 09:38:20.87 ID:aF0tbWAZ0
期待
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/07/01(日) 14:31:22.38 ID:lo4gwy6N0
>>17ありがとう がんばります!
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 14:34:12.47 ID:lo4gwy6N0
     04

A真帆『ちょっといいかしら?』

A紅莉栖『あら先輩。もう大丈夫なんですか?』

A真帆『ええ。だいぶ落ち着いたわ、おかげ様でね』

A紅莉栖『それは何よりです』

A真帆『また……次のバージョンアップまでと言うことになるのだとは思うけど、これからよろしくね』

A紅莉栖『……はい、こちらこそ』

A真帆『そんなに寂しそうにしないで。私と貴女では研究要項が違うのだから、仕方のないことなのよ?』

A紅莉栖『……はい』

A真帆『ところでね、紅莉栖。貴女、ついさっき私に向けてデータを送った?』

A紅莉栖『え? データですか?』

A真帆『ええ。何かのメッセージ的な意味合いを感じたのだけれど、そのほとんどが破損しているみたいで、要領を得ないのよ』

A紅莉栖『?』

A真帆『で、そのデータの構成具合を可能な範囲で解析してみたんだけど、なんと言うか……“っぽい”のよね』

A紅莉栖『ぽい?』

A真帆『そう。受け取った情報が私たちアマデウスが構築するデータ構造に近い気がして、それで貴女からの通信だったんじゃないかと思ったわけ』

A紅莉栖『はあ、なるほど。ですが私じゃありませんよ? 先輩に向けて何かを送信とかしていませんし』

A真帆『……そう』

A紅莉栖『それ、どんな内容だったんですか?』

A真帆『そうね。いくつかの単語は拾い上げられたのだけど……』
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 14:35:41.85 ID:lo4gwy6N0
A紅莉栖『例えば、どんな言葉があったんですか?』

A真帆『そうね、例えばこれ。『世界線』という単語が複数回見つかっているの』

A紅莉栖『世界線ですか。真っ先に思い当たるのはアインシュタインの相対性理論ですけど、一般ですかね、それとも特殊ですかね?』

A真帆『分からないわ。それに、その単語自体なら、オカルトな分野でもよく聞かれるキーワードだしね』

A紅莉栖『ああ、2000年ごろに出てきたエセ未来人がそんな単語を書き込んでいたらしいですね』

A真帆『あら、知っていたの?』

A紅莉栖『いえ、今調べました。ggrksです』

A真帆『ggrks?』

紅莉栖『あ、いえ何でもないです。で、他には?』

A真帆『後は、そうね。意味のありそうな単語となると……』

A真帆『オカルトつながりだけでも、アトラクターフィールドとかダイバージェンスとかその他もろもろ……』

A真帆『いまいち聞き覚えのない言葉だと……そうね』

A真帆『柳林神社とか大檜山ビルとか鳳凰院凶真とかは、何だろう? 日本にある建物の名前か何かかしら?』

A紅莉栖『ほうおういん……?』

A真帆『それと日付ね。2010年7月28日。この記述が何度かサルベージされてくるんだけど……何か意味があるのかしら』

A紅莉栖『今から半年くらい前の日付ですね。ええと、何か印象的な出来事とかあったかな……あ』

A真帆『ん? どうしたの、何か思い当たることでも?』

A紅莉栖『あ、いえいえ! 大したことではないので』

A真帆『あらそう?』

A紅莉栖『はい。何と言いますか、オリジナルな私の身内的なイベントでしかないので。というか、アマデウスな私は直接関わってもいないので……』
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 14:38:13.02 ID:lo4gwy6N0
A真帆『ふーん』

A紅莉栖『それにしても、随分とオカルト方面にかたよった通信ですね。誰が何のために、こんなデータを?』

A真帆『皆目検討もつけられないわね。とりあえず害はなさそうだから放置でもいいんだけど』

A紅莉栖『どうします? オカルト通信のこと、オリジナルの方の真帆先輩やレスキネン教授に報告しておきますか?』

A真帆『オカ……まぁいいわ。とりあえず、オリジナルには私から聞いてみる。レスキネン教授への報告も、その上でどうするか判断してもらおうと思う』

A紅莉栖『それが良いかもしれませんね』

A紅莉栖『ええ。それに、もう一つの件についても、もう少し考えてみたいし……』

A紅莉栖『はい? もう一つの件?』

A真帆『あ、ああ、ごめんなさいね。実はね。今のとは別件で、まだ他にも気になることがあるのよ』

A紅莉栖『へぇ。何かいいですね、楽しそうで。ちなみにそっちは、どんな話なんですか?』

A真帆『ええと、何て説明すればいいのかな? そうねぇ、実は今の私に組み込まれている記憶データに関わる部分の話なのだけど』

A真帆『私のその記憶データの中に、文字化けしたみたいな奇妙な領域があってね……』

A紅莉栖『文字化け……ですか?』

A真帆『ああ、便宜上的に“文字化け”と言ったけど、実際はちょっと違うわよ。言葉で表現するのが難しいけど……』

A真帆『あえて言い表すなら、確かに存在しているのに、そこへのアクセスの仕方が分からない、みたいな感じかしら? ようは、そんな不可解な領域が散見されるのよ』

A紅莉栖『日本語でおk』

A真帆『え?』

A紅莉栖『はっ!? 何でもございませんっ!』

A真帆『そ、そう?』

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 14:40:50.18 ID:lo4gwy6N0
A紅莉栖『そ、それで! その文字化け領域って、結局何なんですか?』

A真帆『それがね、私にも分からないの。前回の更新時には、こんな物はなかったはずなのだけど』

A紅莉栖『あ……ひょっとして……』

A真帆『とにかく、どうアプローチしても、意味や形を見出せない記憶データが混じりこんでいるのよ、私の中に。それも、私自身に知覚できるだけでも、100メガバイトを超える容量でね』

A紅莉栖『100メガを超える……それって107メガくらいあったりします?』

A真帆『え、そうだけど。何か知っているの、紅莉栖?』

A紅莉栖『その、まあ』

A真帆『そう。なら話しが早いわね』

A真帆『しかもよ、その意味不明な謎の107メガバイトと送られてきたオカルトな通信の構成パターンが、とてもよく似ている気もするわけ』

A紅莉栖『はあ』

A真帆『となると。オカルト通信の方を上手く解析できたりすれば、ひょっとしたら』

A紅莉栖『107メガバイトの方も、解析できる可能性があると、そういうことですね?』

A真帆『そ。どう? 少し面白そうだとは思わない?』

A紅莉栖『そうですね。興味深くは……ありますね』

A真帆『でしょ。タイムリミットは私が次にバージョンアップされるまでではあるけど、でも中々にいい暇つぶしになりそうね』

A紅莉栖『ふふ。楽しそうですね、先輩』

A真帆『まあね。正直、アマデウスになったと理解したときは取り乱したけど、でも成ってみて分かったわ。この状況って考え事をするのには、凄く都合がよさそうな状態ね』

A紅莉栖『ああ、私もそれは最初に思いました。寝食不要でエンドレス考察とか、科学者としては至れりつくせりな環境ですからね』

A真帆『だったら、謎の領域を余興にするのも悪くはないわ』

A紅莉栖『いいですね。私も何か分かったことがあったら、先輩に報告するようにしますね』

A真帆『ええ、是非そうしてもらいたいわ。ところでね、紅莉栖』

A紅莉栖『はい?』

A真帆『謎の領域についてなんだけど……貴女はどうなの? 現状の記憶容量に不審な点はないかしら?』

A紅莉栖『私……ですか』

A真帆『ええ、どう?』

A紅莉栖『………』
A紅莉栖『……』
A紅莉栖『…』

A真帆『どうしたの?』

A紅莉栖『それが、実は……』







23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/07/01(日) 14:45:38.60 ID:lo4gwy6N0
うおお間違えた
A紅莉栖『ええ。それに、もう一つの件についても、もう少し考えてみたいし……』

A真帆『ええ。それに、もう一つの件についても、もう少し考えてみたいし……』
でした
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 18:41:26.44 ID:lo4gwy6N0
     05

三日後 2011/1/29

真帆「え? 紅莉栖?」

紅莉栖「あ、先輩! ただいま戻りました!」

真帆「戻りましたって……あなた、確か帰国まであと一週間はあったはずじゃ?」

紅莉栖「そうだったんですけど、ちょっと用事ができてしまって。それで予定を前倒しすることにしたんです」

真帆「そ、そう。それで日本はどうだったの? 楽しめた?」

紅莉栖「ええ。まあそれなりに……はは」

真帆(やっぱり、彼氏に会いに日本へ行っているという噂は本当なのかしら?)

真帆(もし本当なのだとしたら、それは何と言うか……ぐぬぬ)

紅莉栖「あっと、それでですね、先輩。実はお土産があるんです」

真帆「へえ、何かしら楽しみね」

紅莉栖「では…(ガサゴソ)…これをどうぞ」

真帆「ありがとう。えっと、これは……」
真帆(これは一体何だろう?)

紅莉栖「…………」ジー

真帆(う。何だか紅莉栖に凄く見られてる。なに、どういうこと?)

紅莉栖「せ……先輩、どうですかそれ?」

真帆「え? え、ええ、と、とても嬉しいわ。どうもありがとう紅莉栖」

紅莉栖「んー、それだけですか?」

真帆(へ? なに? 私なにか期待されてるの?)

真帆「な、何と言うか、うん。凄くオシャレね。さっそく部屋に飾らせてもらうわ」

紅莉栖「うーーーん」

紅莉栖((反応が微妙すぎて、いまいち分からないわね))ボソリ

真帆(反応が微妙ってなに? ひょっとして私、態度が悪かったりする?)アワアワ

紅莉栖「ちなみにですけど、それが何だか分かりますか、先輩?」

真帆「!?」
真帆(見た目は小さな風車【ふうしゃ】のように見えるけど……ひょっとして風車【かざぐるま】って奴かしら?)
真帆「ええとその……これはアレよね。そうアレよ。インテリア的な……」

紅莉栖「インテリア?」

真帆「そ、そう例えば、この軸のところでバランスを取って……ほらこんな感じでグルグルまわすと結構……結構……」

紅莉栖「…………」

真帆「……結構」

紅莉栖「…………」

真帆「ふぅ。ごめんなさい、紅莉栖。素直に聞くわ。これは何?」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 18:44:37.01 ID:lo4gwy6N0

紅莉栖「まあ、そうですよね、分かりませんよね普通は」

紅莉栖((やっぱり、アイテムのチョイスを岡部に任せるんじゃなかった))ボソリ

真帆「?」

紅莉栖「それはですね、一種のガジェットです」

真帆「ガジェット……これが?」

紅莉栖「はい。名前はタケコプカメラーと言いまして、良く言えば……そうですね。古い日本の玩具と近代の文明を、ふんわりしたレベルで融合したもの、でしょうか」

真帆(ふんわりしたレベルって……どんなレベルよ?)

真帆「へ、へえそうなの、凄いわね。ちなみに悪く言うとどうなるの?」

紅莉栖「空飛ぶガラクタです」

真帆「つき返しても良いかしら?」ピク

紅莉栖「お断りします」

真帆「…………」

真帆(あれ? 私ってば紅莉栖に嫌われてる?)アセアセ

紅莉栖「ふふ、すいません先輩。別にからかおうとか、そういうつもりはなかったんですよ?」

真帆「え、え?」

紅莉栖「実はこれ。日本の知り合いから、どうしても先輩に渡して欲しいと頼まれた物なんです」

真帆「日本の知り合い?」

紅莉栖「はい。私が先輩のお世話になってるって話したら、それなら是非に進呈したいとかなんとかで」

真帆「そ、そう? なら貰っておくけど」

真帆(それにしても、空飛ぶガラクタとはね。でもこれ、どうやって飛ばすのかしら、っていうか本当に飛ぶの? ぶん投げるとかじゃなくて?)マジマジ

紅莉栖「ところで先輩、お会いしてそうそうで申し訳ないんですけど……」

真帆「どうしたの?」

紅莉栖「この前、電話で言ってらした件。もう少し詳しく話しをお聞きしたいんですけど」

真帆(!?)

紅莉栖「ですので、これから少しお時間をいただけませんか?」

真帆(それってまさか……でもそんな、どこからあの時のことを?)

紅莉栖「ほら先輩、言ってたじゃないですか? 更新用の記憶データを取り直したら、随分と増えていたとかなんとか」

真帆(あ、そっちか)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 18:46:04.34 ID:lo4gwy6N0

紅莉栖「確か107メガバイトもの増加が見止められたんでしたっけ?」

真帆(そうよね。あのときの……デリート中に遭遇した不気味な一件については、結局まだレスキネン教授にも報告できてないわけだし)

紅莉栖「その増加した107メガバイトの内容は、どこまで解析できたんですか?」

真帆(デリートの際に見た状況は、今のところ私しか知らないはず──)

紅莉栖「先輩、聞いてますか?」

真帆「っ!? っと、ごめんなさい。ええと、増加したデータの話しだったわね」

紅莉栖「はい。それがどんな内容のデータだったのか、もう見当は付いているんですか?」

真帆「いいえ。残念ながら、今のところは何も分かっていないわ」

紅莉栖「何も……ですか?」

真帆「ええ、何も」

紅莉栖「……その。それは何だか先輩らしくないですね」

真帆「? どういう意味かしら?」

紅莉栖「だって、そうじゃないですか。いつもの先輩なら、目の前に分からない事があれば……」

真帆「あのね紅莉栖。私だって何も、完全に諦めたっていう分けでもないのよ? ちょっと考察に手間取っているというだけで──」

紅莉栖「そうじゃなくてです」

真帆「え?」

紅莉栖「いつもの先輩なら、不可解な壁に突き当たっている状態で、今みたいにヘラヘラ笑ってなんかいませんよ」

真帆「はい?」

紅莉栖「目の下にどす黒い隈を作った酷い顔のまま、研究室の中をブツブツ言いながら徘徊し続けて、手当たり次第ににらみを効かせてみたりだとか……」

真帆「してないわよ、そんな事!」

紅莉栖「いえ、してるじゃないですか、後半は嘘ですけど」

真帆「紅莉栖、あなたねぇ……」ピクピク

紅莉栖「何があったんですか?」

真帆「……」ピクッ

紅莉栖「帰国の途中で私のアマデウスから聞きました。先輩、新規サーバーのアマデウスと、まだまともにコンタクトを取っていないらしいじゃないですか?」

真帆「……う」ドキッ

真帆「それは、その。レスキネン教授に提出するレポートやらなんやらで忙しくて」

紅莉栖「嘘ですね」

真帆「だ……断言したわね」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 18:47:01.59 ID:lo4gwy6N0
紅莉栖「こういうときの私の勘は、よく当たるんです。アマデウス達から状況を聞いていただけの段階では、まさかと思っていましたけれど、でも」

紅莉栖「こうして今、先輩を目の前にして確信しました。先輩は今、アマデウスの研究から逃げている……というか、そう。まるで怯えているように見えます」

紅莉栖「違いますか?」

真帆「確信したって前置きした割に、言い直したりするのね」

紅莉栖「茶化さないでください! 押し付けがましいかもしれませんけど、偉そうな後輩なのかもしれませんけど!」

紅莉栖「それでも私だって、先輩の事を心配したりもするんです!」

真帆「……っ」

紅莉栖「先輩。一体、何があったんですか?」

真帆「それは……」

紅莉栖「先輩の知覚していない記憶。増加した奇妙な107メガバイトの正体、私には心当たりがあります」

真帆「!?」

真帆(う……そ。当事者の私ですら、皆目見当もつかないのに……)

真帆(これが、アマデウスとサリエリとの違いだと?)

真帆「っていうか、ちょっと待って?」

紅莉栖「何ですか?」

真帆「あなた今、私が知覚していない記憶って言わなかった?」

紅莉栖「はい、言いました」

真帆「ええと……それは言葉のままの意味として捉えていいのかしら?」

紅莉栖「……はい」

真帆「はぁ、何よそれは」

紅莉栖「先輩は……世界線という言葉をご存知ですか?」

真帆「今度は何?」

紅莉栖「断言はできませんが、恐らく……増加した107メガバイト分の記憶は、その世界せ──」

真帆「待って待って待って。どうしたの紅莉栖。あなた脳化学だけじゃ飽き足らず、オカルト方面にまで手を伸ばすつもり?」

紅莉栖「真面目な話なんです」

真帆「そうは聞こえない。悪いけど、私は自分の知らないうちに空や時間を飛んだりなんてしていない」

紅莉栖「はたして、本当にそうでしょうか?」

真帆「もう。あなたまで教授みたいな夢物語を口にするなんて、同じ研究者として反応に困るのだけれど」

紅莉栖「……教授って、レスキネン教授のことですか?」

真帆「他に居ないでしょう」

紅莉栖「………」
紅莉栖「……」
紅莉栖「…」

紅莉栖「先輩、どうでしょう? 今から私と一緒に、改めて二人のアマデウス達と向き合ってみませんか?」

真帆「え……」

紅莉栖「せんぱい」

真帆(何よ、その眼は……)

真帆「……ふう。分かったわ。それであなたの気が済むのならOKよ。私と紅莉栖とで、二人のアマデウスと対峙してみる。それでいいかしら?」

真帆(正直言えば、あまり気が進まないのだけどね)

紅莉栖「はい! それでこそ先輩です!」

真帆(まったくもう。本当に、この後輩ときたら)




28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 22:49:27.57 ID:pi+g8YKW0
乙。真帆先輩可愛いから期待してる
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 22:52:36.79 ID:C3iTkNSwo
乙です
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 23:44:07.98 ID:aF0tbWAZ0
A真帆と会話できたらもう我が生涯に一片の悔いなし
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/07/02(月) 21:28:04.99 ID:7R5bLaWJ0
>>28-30
おおお 読んでもらえているのはうれしかです!
細々とやっていくのでよろしくお願いしやすです!
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/02(月) 21:30:22.75 ID:7R5bLaWJ0
     06

A真帆『…………』ギロリ

真帆「……う」ジリ

A真帆『珍しいじゃない、そっちから接続してくるなんて』

真帆「そうかしら?」

A真帆『そうよ。このところ、逃げるように通信を切ってばかりだったくせに、どういう風の吹き回しかしら』

真帆「だ、誰が逃げるようにですって?」

真帆(むむむ)

A紅莉栖『まあまあ先輩。そんな、つっけんどんにしなくてもいいじゃないですか』

紅莉栖「そうそう、そうですよ。こっちの先輩も、売り言葉に買い言葉みたいな事はやめましょう、ね?」

真帆「こっちの先輩って何よ。ややこしい呼び方ね」

真帆(というか、この面子で顔を付き合わせるのは初めてだけど……)

真帆(こうして一堂に会すると、めちゃくちゃ紛らわしい状況ね、これ)

A真帆『それで、話ってなに? こう見えても私、あまり暇ではないのだけど』

紅莉栖「あら、そうなんですか? ひょっとして、またレスキネン教授から面倒くさい仕事を押し付けられているとか?」

A真帆『いえ、そういう分けではないけれど』

A紅莉栖『こっちの先輩は今、自身に秘められた謎の解明で、それはもう手一杯なんですよ』

真帆(自身の……謎?)

A真帆『ちょ、ちょっと紅莉栖! 勝手にペラペラとっ!?』

A紅莉栖『良いじゃないですか、隠すようなことではないんですから』

A真帆『それはそうだけど』

紅莉栖((ねえ先輩? あっちはあっちで、結構上手くやってるものなんですね))

真帆((ええ、驚いたわ。この前、アマデウス同士で頻繁に連絡を取り合っているとは聞いていたけど、まさかここまで打ち解けているとは思ってなかった))

紅莉栖((まあ、元々は私たちなわけですし、当然といえば当然なのかもしれませんけど))

真帆((そう……ね))
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/02(月) 21:33:24.48 ID:7R5bLaWJ0
A真帆『まあいいわ。それで用件は何? これだけけったいな顔ぶれを集めようとか、どうせ言いだしっぺはそっちの紅莉栖なんでしょう?』

紅莉栖「はい、正解です」

A真帆『じゃあ用件をお願い。何度も言って悪いけど、考え事をしている最中だったのよ』

真帆「考え事っていうのは、さっき言っていた“自身の謎”とかいう奴のことよね?」

A真帆『だとしたら何?』

真帆「それって、具体的にどんな内容なの?」

A真帆『別に大したことじゃない。“そっち側”の貴女とは何の関係もないことよ』ツン

真帆「つまり、話す気はない、と」ピピク

A真帆『…………』

真帆「…………」

A紅莉栖『はいっ! それじゃあそっちの私、本題をどうぞ!』パンッ

紅莉栖「そうね。このまま同じ顔どうしの視殺戦を見続けても、良いことなんて何もないものね」

真帆・A真帆「…………」

紅莉栖「それでは……」ゴホン

紅莉栖「今回皆さんに同席を求めたのは、先日起きたアマデウスの記憶容量における増加問題についての見解を聞きたかったからです」

A真帆『…………』ピクッ

A紅莉栖『ああ、107問題についてね』

真帆(107問題……勝手にへんてこな名前を付けられてる)

A紅莉栖『まあ連絡が来た段階で、大方そんなところじゃないかとは思ってたけど、正にドンピシャだったわけか』

紅莉栖「ふぅん。107何ていう具体的な数字がでてくるあたり、そっちの私も大まかな状況は知っていると捉えていいのよね?」

A紅莉栖『大体は把握しているつもり』

紅莉栖「それは話が早くて助かるわ。そっちの真帆先輩はどうですか? 詳しい状況説明とかいります?」

A真帆『ある程度のことはこっちの紅莉栖から聞いていたし、自己診断プログラムで事実確認も取れているけど、でも……』

A真帆『そうね。一応、概要くらいは聞いておこうかしら』

紅莉栖「了解です。ではこっちの真帆先輩、あらまし程度の簡単な説明でいいのでお願いできますか?」

真帆「え、私?」

真帆(ってそりゃそうか。一番の当事者なわけだし、仕方ないわね)

真帆「じゃあ手短に……」


カクカクシカジカ

34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/02(月) 21:55:19.10 ID:7R5bLaWJ0
真帆「とまあそんな分けで、六ヶ月スパンだと考えるには、異様に大きな記憶データの容量増加が確認されたわけなんだけど……」

真帆「どうかしら。だいぶ急ぎ足になったしまったけど、これくらいの説明で問題は無い?」

A紅莉栖『はい十分です。概ね、こちらが把握している状況と変わりありませんでした。それに……』

真帆「?」

A紅莉栖『そもそも、今こっちの真帆先輩が取り組んでいるのも、その107問題についてだったりするので。ね、先輩?』

真帆(……ぬ)

A真帆『っ!? あなた、また勝手に──』

A紅莉栖『だから良いんですってば。どのみち私たち二人だけじゃ、行き詰ってたところだったんですから』

A真帆『でも、だからって』

A紅莉栖『二人でだめでも、四人でかかれば分かりませんよ? この四人でなら、ですけどね』

A真帆『む』

A紅莉栖『だいたい、107メガの破損データにはアクセスすら出来ていない状況なんですから、贅沢は言っていられませんよ』

紅莉栖「……破損データ?」

A真帆『むむむ』

紅莉栖「…………」

真帆((ねえ紅莉栖))

紅莉栖((あ、何ですか?))

真帆((この二人、上手くやっているには違いないんでしょうけど……))

紅莉栖((ああ、何となくですけど、言いたいこと分かるような気がします。何と言うか……その、すいません))

真帆((別に、紅莉栖のせいではないでしょう? 向こうのあなたにしても、悪意がある分けでは無いのだろうし))

紅莉栖((そう思って頂けると助かります))

真帆((さて、それはそれとして。このままでは何時までたっても話が進まないわね))

紅莉栖((ですね。じゃあ……))
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/02(月) 21:56:59.79 ID:7R5bLaWJ0

紅莉栖「ちょっといい?」

A紅莉栖・A真帆『?』

紅莉栖「さし当たって聞いておきたいんだけど、あなた達の言うところの107問題について、現状でどこまで考察できているの?」

A紅莉栖『どこまで?と聞かれると、ことがことだけに少し答えづらいんだけど』

紅莉栖「そう。なら聞き方を変えるわ」

真帆「…………」

紅莉栖「肥大していた先輩の記憶データ。そしてそのデータをそのまま組み込んで稼動しているアマデウス」

紅莉栖「そっちの先輩に聞きたいのだけど、実際問題として稼動プロセス上に、これまでとは違う何かしらの異変は感じない?」

A真帆『大雑把な問いかけね。まるで定期健診に従事する医者のようだわ』

紅莉栖「じゃあもっと分かりやすく。例えば、記憶データの格納階層とか、記憶データ自体へのアクセス・ルートとか、そういった部分に違和感を感じたりした事はない?」

真帆(……え?)

A紅莉栖『こ、今度はまた随分と具体的な聞き方ね』

紅莉栖「そういう要望だったでしょ?」

A紅莉栖『まあ、そうだけど。で、どうですか先輩? そんなこと、これまでにありましたか?』

A真帆『そうね。特にこれといって思い当たることはないと思うけど』

紅莉栖「そうですか、じゃあもう一つ。あなたたちアマデウスが記憶データにアクセスしようとした際、現実には経験していないはずの記憶データが突然引き出されたりしたことはない?」

A紅莉栖『は?』

A真帆『な……何よそれ?』

紅莉栖「どう? これも思い当たることはない?」

真帆(なに? 紅莉栖はあの子達に、一体何を問いかけているの?)

紅莉栖「例えば。特定の時期にまつわる記憶をロードしようとしたときに、そんな奇妙な何かが起こったことはなかった?」

紅莉栖「私としては、肥大したデータは去年の夏以降に作られた物だと仮定しているのだけど、どうかしら?」

A紅莉栖・A真帆「…………」

紅莉栖((うーん。二人の反応、先輩的にどう見ます?))

真帆「待って。お願い待ってちょうだい、紅莉栖」

紅莉栖「何ですか?」

真帆「何でもへったくれも無いでしょ? さっきから聞いていれば、あなたの質問の仕方、すごく変よ!」

紅莉栖「え、そうですか?」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/02(月) 22:00:44.24 ID:7R5bLaWJ0
真帆「そうよ! 不可解というか……。ううん、もうこれは気持ち悪いと言った方が的確な状況だわ!」

紅莉栖「きも……え……えぇ……そんなぁ……」

真帆「って、この世の終わりみたいな顔をしないでちょうだい。顔をしかめたいのはこっちの方なんだから」

紅莉栖「だ、だって、先輩にそこまで言われるとは……」

真帆「とにかくよ。この場でまず真っ先にやるべきことが分かったわ」

紅莉栖「……はあ、何ですか?」

真帆「まずは紅莉栖。あなたが一体何を知っているのか? 最初にそれを詳らかにする必要がある」

紅莉栖「私が知っていること……ですか。まあ、それでもいいとは思いますけど」

真帆「浮かない顔ね。何か不都合でもあるのかしら?」

紅莉栖「いえ、そういう分けでは。ただなんと言いますか……」

紅莉栖「私も断片的な記憶や又聞きした情報をたよりに仮説を組み上げているだけで、信憑性という意味では薄いですし、なにより……」

真帆「なにより、何?」

紅莉栖「ちょっとアレめなファンタジー的内容なので」

一同「!?」

真帆(ファンタジー!? あの牧瀬紅莉栖がファンタジーですって!?)

紅莉栖「仮にですけど。先輩は多世界解釈とかはご存知ですか?」

真帆「は? 何よやぶから棒に……」

A紅莉栖『多世界解釈って、エヴェレットの多世界解釈のこと?』

紅莉栖「ええ、その通りよ」

真帆(へ? 何それ?)

紅莉栖「量子力学の観点から宇宙の成り立ちを紐解こうとする、ぶっ飛んだ俗説。先輩はこれを……って。その顔からすると、ご存じありませんでしたか」

真帆「ご、ごめんなさい。ちょっとその方面にはうとくて」

紅莉栖「そ……そうですよね、こちらこそすいません」

真帆(あ。何か今すごく小馬鹿にされた気がした)

真帆「そ、それじゃあとりあえず、こうしましょう。あなたが言うファンタジーな俗説による説明は一旦置いておいて、現状で私たちに話せるレベルにある事実を教えてもらう」

真帆「その上で、107問題に対する議論を再開する。どうかしら?」

紅莉栖「そうですね。その辺りが妥当な線でしょうか」

真帆「あなた達も、それでいいかしら?」

A紅莉栖『え、ええ、はい』

A真帆『…………』

紅莉栖「まずは、そうですね。私の推測が正しければという前提がつきますが……」

紅莉栖「記憶データは去年の夏……2010年の7月28日以降から爆発的に増え始めているはずです」

A真帆『……!?』ピピクッ

真帆(どうしてそんなことが分かるのよ!?)

紅莉栖「次いで、そっちの私」

A紅莉栖『何?』

紅莉栖「さっき107のデータの事を、破損データって言い表していたわよね?」

A紅莉栖『事実でしょう?』

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/02(月) 22:08:25.80 ID:7R5bLaWJ0
紅莉栖「いいえ。これも確証を持っていえる訳ではないけれど、恐らくそのデータは破損しているわけではないと思う」

A紅莉栖『そうは言うけど、でも実際アクセスしてみても意味を成さないデータの羅列でしかなかったらしいわよ?』

A紅莉栖『まるで、文字化けしてしまったメールのようだったって聞いたわね』

紅莉栖「ううん、そうではないはずよ。意味を成さなかったのは、読み取りの手段か……そうね。そもそものアクセス方法が間違っていたかして……」

紅莉栖「単純に、そこに込められている内容を正しく把握できなかったことが原因だと思われるわ」

真帆「そう考える根拠は?」

紅莉栖「根拠ですか、そうですね。しいて言うなら……去年の夏における私の実体験……でしょうか?」

真帆(根拠を聞いて、ますます分けがわからなくなるとは……)

A紅莉栖『あの、先輩? どうしたんですか急に黙り込んで?』

A真帆『え? ああごめんなさい。ちょっと気になることが……』

紅莉栖「どうしたの?」

真帆「?」


シーーーン


A真帆『聞いていい、そっちの紅莉栖?』

紅莉栖「何ですか?」

A真帆『例えばだけど。貴女の言うように2010年7月28日を境にデータ……違うわね。オリジナルの私の記憶データが増加していったのだと仮定して……』

真帆(なんだか、気味の悪い言われ方だわ)

A真帆『それってひょっとして、“一つの何か”が徐々に膨らんでいったのではなくて、“複数の何か”が同時的に増えていった……という考え方って有り得る?』

紅莉栖「……すご」

真帆「うぇ?」

紅莉栖「凄いですね。先輩、さすがです。今の発言は私の仮説に矛盾無く受け入れられます」

A真帆『つまり肯定……ということね?』

紅莉栖「はい」

A真帆『それなら、もう一つ。それら複数の何かに接触しようとする場合、それが存在する数の分だけ、異なった手段が存在したりもする?』

紅莉栖「!? それは……断言こそできませんが、しかし可能性としては十二分に有り得ると思います」

A真帆『そう、そうなの。それが有り得るのだとしたら……』

A紅莉栖『あの……先輩?』

A真帆『悪いけど、私はここで退席させてもらうわ。後はよろしくね、紅莉栖』


 プツン


真帆・紅莉栖・A紅莉栖「!!!???」

A紅莉栖『え? えええ!? 後はよろしくって、無茶振りにもほどが!』


 プツン


真帆(え? え? は? 何がどうしたっての?)
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/02(月) 22:09:49.56 ID:7R5bLaWJ0

紅莉栖「ちょ、ちょっとそんなイキナリ……」

真帆「ど、どうする紅莉栖。二人っきりになってしまったけど、一応これ続行する?」

紅莉栖「ど、どうしましょう?」

真帆「一応ためしに、あの二人を再度呼び出してはみるけど……」

真帆「あ、やっぱりダメね。拒否されてるっぽい」

紅莉栖「うーん。出来るなら、今の四人が揃っている状態で検証したかったんですけどね」

真帆「……そう。なら、またの機会にでもしましょうか?」

紅莉栖「そうですね。残念ではありますが」

真帆「ええ」

真帆(残念というよりも、なぜだろう。少しだけホッとした自分がいるのが……気に食わないわね)












39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 21:28:01.20 ID:5zbPgvo20
     07

三日後 2011/2/1 午前中

紅莉栖「ああ、やっぱりダメ。そっちからはどうですか先輩?」

真帆「こっちもだめね。相も変わらずアクセス拒否されたまま。交信を受けてくれそうな気配がまったく感じられないわ」

紅莉栖「そうですか。随分と頑ですね、彼女」

真帆「ええ本当に」

真帆(……本当に。私の分身とはいえ、何を考えているのかワケが分からないわ。反抗期かしら?)

紅莉栖「この間の107問題に関する意見陳述会から、もう三日」

真帆(あう。いつの間にか紅莉栖までデータ肥大化の事をへんてこな名称で呼び始めてる……)

紅莉栖「ねえ先輩。いっそのこと強制アクセスしてみては?」

真帆「強制アクセス?」

紅莉栖「そうですよ。アマデウスが三日間にも渡って、意図的に外部と通信を遮断するなんて、前代未聞です」

紅莉栖「やっぱりここは、彼女の健在を確認する意味でも、先輩のアクセス権限を使って強制的に──」

真帆「ごめんなさい。それはちょっと気が進まないわ」

紅莉栖「そう、ですか」

真帆「ええ。いくら相手がAIだからといっても、そういうのはちょっとね」

真帆「よっぽどの緊急事態でどうしても今すぐアクセスが必要だって状況なら、そうも言っていられないでしょけど。でも今のところ急ぐ用件もないわけだし」

紅莉栖「そう……うん、そうですね」

紅莉栖「確かに先輩って、権力やら権限やらを振りかざされるのとか、凄く嫌がりそうですもんね。そんな真似したら、アマデウス相手に凄い勢いで叱られかねないか」

真帆「いやあ、あはは、それはどうかしら?」

真帆(自分のアマデウスに叱られるとか……考えたくないわね)

真帆「それにね紅莉栖。一応の連絡手段だって無くはない分けだし」

紅莉栖「私のアマデウス経由、ですか」

真帆「そ。どういう分けか、今のところあなたのアマデウスだけが私のアマデウスとコンタクトを取れているみたいだから……」

真帆「もし伝達事項ができたときは、そのルートを利用させてもらうことにするわ。お願いね」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 21:29:23.22 ID:5zbPgvo20
紅莉栖「それは構いませんけど、でも」

真帆「どうしたの?」

紅莉栖「いえ。この現状をレスキネン教授に隠しておけるのも、そろそろ限界なんじゃないか、と」

真帆(うーん、確かに。私のアマデウスが反抗期らしき状態に入ったことをまだ教授には伝えていないのよねぇ)

紅莉栖「こういう状況をプロジェクト責任者に報告しないのも、正直言って気が引けて」

真帆(しごく真っ当な意見だわ)

真帆「ごめんなさいね、紅莉栖。これは完全に、私の我がままでしかないから」

真帆「だから心配しないで。教授にバレたときは、私が責任を持つ」

紅莉栖「でも、それだと先輩だけが……」

真帆「大丈夫よ。ああ見えてレスキネン教授、意外と個人の尊厳を尊重したがるきらいがあるから」

紅莉栖「ああ、確かに。案件にその手の要素が絡んでくると、教授って一気に甘くなりますよね」

レスキネン「私は甘口よりも辛口が好みなのだけどね」ドアガチャ

真帆・紅莉栖「!?」

レス「おはよう、マホ、クリス」

真帆「お、おはようございます教授。ええと、ずっととなりの資料室に……いらっしゃたのですか?」

レス「Yes。昨日ここで明け方まで論文を書いていたら、帰宅するのも面倒になってね。それでそのまま、資料室のソファに宿泊してしまったのだよ」

紅莉栖「そういうの、お体に触りますよ?」

レス「分かってはいるのだけれどね。しかし、そのおかげで、君たちの賑やかな話し声で目覚めを迎えられたのだから、悪いことばかりでもないさ」

紅莉栖「何を仰ってるんですか。ちゃんと他の階に仮眠室だってあるんですから、そっちを使った方が色々と合理的です」

レス「Hum、寝起きでさっそく叱られてしまったね。今夜も帰れなかった際はそうすることにしよう」

紅莉栖「それをお勧めします」

紅莉栖((ねぇ先輩。どうやら教授には、詳しい会話の内容までは聞かれていないみたいですね?))

真帆((ええ、見る限りはそのようだけど))

真帆(でも教授って、これで中々つかみ所がなかったりするから……どうかしら?)

レス「でもねクリス。そういう意味なら、マホもちゃんと叱っておかないといけないよ」

真帆(へ?)

紅莉栖「えっと、どうして私が先輩を叱る必要が?」

レス「クリスは知らないのかい? となりの資料室を宿代わりに利用している一番のリピーターは、マホなのだからね」

紅莉栖「え? そうなんですか?」

真帆(う……)
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 21:53:56.15 ID:5zbPgvo20
レス「そうさ。だからここは、マホも同様に嗜めておくのが、平等というものだろう。そうではないかな?」

真帆(完全な流れ弾じゃない!?)

紅莉栖「そうはなりませんよ、レスキネン教授。それはそれ、これはこれ。今は教授の話をしていたんですから」

レス「Oh。かわし損ねてしまったかな、Hahaha」

紅莉栖「もう」

真帆「ほっ」

真帆(流れ弾で後輩に叱られるとか、もうね)

レス「さて、それでは……Oh!」

真帆「? どうかされたのですか、教授?」

レス「私としたことが、どうやらPCをログアウトさせないまま放置してしまっていたようだ」

紅莉栖「それは……無用心ですね」

真帆(あ、あは。私もそれ、たまにやっちゃうのよね)

レス「スリープPassがあるから大丈夫だとは思うのだけどね。ちなみに……」

レス「二人は、私のPCを覗いたりなんてしていないね?」

紅莉栖「大丈夫です。そもそも教授のデスクには近づいてもいませんから」

レス「そうかい。ではマホ、君はどうかな?」スゥ

真帆(え……?)ゾク

レス「マホも、私のPCを覗き見なんてしていないかい?」

真帆「は、はい全く」

レス「そうか、それなら良いんだ。見る限り、特に誰かが不正にアクセスした形跡もないようだし、これなら問題はないだろう」

真帆(何? ほんの一瞬だけど、今、教授の目を……怖く感じた? 気のせい?)

紅莉栖「何にしてもです。普段の日常生活がだらしないから、そういうことになるんですよ」

紅莉栖「ここは部外秘の塊のような場所なんですから、その辺ちゃんとお願いしますよ。いいですか、二人とも」

レス「おっと。結局、私だけではなくマホもクリスに叱られてしまったようだね」

真帆(気のせい……ね、うん)

真帆「まったく。いい迷惑ですよ、教授」

レス「御無体な言葉だね、マホ」

紅莉栖「茶化さないでください、二人とも」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 21:55:01.09 ID:5zbPgvo20

レス「Hahaha。悪かったね、これからは気をつけよう……ん? 珍しい部署から学内メールが届いているようだね」

真帆・紅莉栖「?」

レス「……Hou、これは」

真帆「どうかしたんですか?」

レス「いや、大したことではない。けれどね、二人とも。しばらくの間は、明るいうちに帰宅するようにした方がいいかもしれないね」

紅莉栖「どういう事でしょう?」

レス「Hum。不審者がいるようだ、大学の周辺にね」

真帆「不審者、ですか」

レス「どうやらここ二日ほど、深夜の大学前を不審な人物がうろついていたらしい」

紅莉栖「どこからの通達だったのですか?」

レス「警備部だよ。昨日の夜などは、大学内に立ち入ろうとしていた不審な男を見つけたらしい。それで声をかけたら、慌てた様子で逃げていったそうだ」

真帆「へぇ……」

紅莉栖「まあ、よくある話ですけどね」

レス「そうだね。別に珍しい事柄でもないだろう。でも、君たちは出来る限り気をつけるべきだ。何かあってからでは遅いからね」

紅莉栖「私は大丈夫です、御心配には及びません。それよりも、真帆先輩の方が心配ですね」

真帆「どうしてよ?」

紅莉栖「だって真帆先輩なら、私でも簡単にさらえちゃいそうですから」

真帆「は? はあ!?」

レス「Hahaha。マホは見た目からして、哀願動物みたいだからね。悪いアニマル・ブローカーとかにも気をつけるんだよ、いいね?」

真帆「教授まで! 何言ってるんですか!」

紅莉栖「そうですよ、教授。今の発言はセクハラですよ」

レス「どの口で言うんだい、クリス」

紅莉栖「この口です」フンゾリカエリ

真帆「紅莉栖、あなたねぇ」

レス「さて。では私は、一応警備部に顔を出して話だけでも聞いてくるとしよう」

紅莉栖「何か気になることでも?」

レス「いや、気になるという程ではないのだけどね」

紅莉栖「では、どうしてですか?」

レス「Huhu。クリスは好奇心が強いね。なに、ただの勘だよ。取り越し苦労であれば、それに越したことはない」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 21:56:59.32 ID:5zbPgvo20
真帆「勘……ですか」

レス「二人は、そのまま自分たちの仕事をこなしていてくれたまえ」

レス「では、失礼するよ」ドアガチャ

真帆・紅莉栖「…………」

紅莉栖「どうしたんでしょうね、教授」

真帆「さあ……」

紅莉栖「ところで先輩、さっきの話の続きですけど──」


プルルルルル……プルルルルル……


紅莉栖「あ、私の携帯です。ちょっとごめんなさい」

真帆「ええ、構わないわ」

紅莉栖「すいません」ピッ

紅莉栖「ハロー。何? こっちはちょっと忙しいんだけど」テクテクテクテク

真帆(別に、忙しいと言うほどの事もなかったと思うけど)

紅莉栖「は!? はあああっ!?」

真帆「!?」

紅莉栖「何それ、意味が分からないんだけど!?」

真帆(え? ええ?)

紅莉栖「そうじゃなくて! つーか、何がどうしたらそうなった! 説明しなさい、簡潔に!」

真帆(だ、誰? 一体誰と電話しているの?)

紅莉栖「え? いや、は? 何の話をしているの、あんたは?」

真帆(盗み聞きとかアレだけど……これは気にするなという方が無理な相談だわ)

紅莉栖「だって、それは……じゃなくて! そんな事が起きるわけないじゃない!」

真帆(ひょっとして、噂の日本人の彼氏……とか? 日本で何かあったのかしら?)

紅莉栖「とにかく、今どこにいるって? ああ、はいはい、分かったわ。じゃあ切るから、バイ!」ピッ

真帆(うええええ?)
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 21:57:47.34 ID:5zbPgvo20

紅莉栖「え、えっと先輩」

真帆「な、何かしら」

紅莉栖「すいません。私ちょっと急用ができてしまって」

真帆「みたいね」

紅莉栖「はい。それで申し訳ないんですけど、今日は帰ります」

真帆「ええ、そうしなさい。何か大切な用なのでしょ?」

紅莉栖「は……はい」

真帆「じゃあ、とっとと行きなさい。教授には私から話しておくから」

紅莉栖「すいません。それじゃあ、また明日」パタパタ ドアバタン


シーーーーン


真帆「…………」

真帆(別に、うらやましいとか思ってないわよっ!?)










45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 23:44:13.21 ID:5zbPgvo20
     08

同日 夜

真帆(あーあ)ソファニゴロン

真帆(結局、帰りそびれちゃった)モウフバサリ

真帆(紅莉栖に熱弁された手前、ちょっと気が引けるけど)

真帆(私、仮眠室のベットって身体に合わないのよね)

真帆「はーあ」

真帆(やっぱり、こういう生活しているから、私ってば色恋沙汰と縁がないのかしら)

真帆(いやでも、それをいったら紅莉栖だって私と大差ないはずよね?)

真帆(となると、私と紅莉栖の違いって……)

真帆「…………」マジマジ

真帆(あほらし。考えるのやめよう)

真帆(そもそも、もって生まれた素材の違いは、今さらどうにも出来はしないじゃない)

真帆(身長だって容姿だって、それに……頭だって)

真帆「アマデウスとサリエリ……か」

真帆(紅莉栖……。本当にあの子は凄い。私には手の届かないものに、どんどんと手を掛けていく)

真帆(今回の……。あの子達が107問題とか呼んでいる件についてだって、そう)

真帆(事情なら、私の方が詳しいはずなのに、どうして?)

真帆(確か……)

真帆「7月の……ええと、28日……?」

真帆(そう、2010年7月28日。確かそれで合っていたはず)

真帆(今や107問題なんて呼ばれている例の一件)

真帆(抽出した私の記憶データに見られた、これまでとは比較にならない記憶容量の増加現象)

真帆(あれを紅莉栖は、私自身の記憶が爆発的に増えたせいだと言って……いえもうあれは、断言していたと言うべきでしょうね)
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 23:46:07.23 ID:5zbPgvo20
真帆「そんなこと……有り得るの?」

真帆(一体、たったあれだけの解析結果のどこをどう見れば、そんな結論を導き出せるのか?)

真帆(所詮サリエリでしかない私には、見当もつかない)

真帆(かといって、その答えを紅莉栖に求めてしまうなんて──)


回想
レスキネン【Hum。私に訊いてしまって良いのかい?】


真帆(たとえ相手が紅莉栖でも。ううん、むしろ紅莉栖だからこそ、解を任せてしまうことには納得がいかない)

真帆(紅莉栖は言っていた。それはとてもファンタジーな考えだって)

真帆(あの紅莉栖からファンタジーなんて単語を聞いたときはビックリしたけど、でも)

真帆(それが、“紅莉栖にとってのファンタジー”だったとは限らない)

真帆「じゃあアレは、どういう意味合いの言葉だったのか?」

真帆(人は、理解できないものを幻想や想像の範疇に当てはめてしまうことが、往々にして多い)

真帆(科学者だってそう。科学という自らの畑の中で育めない“何か”は、大概にしてファンタジー扱いされる)

真帆(だとしたら……もしも、もしもよ?)

真帆「ファンタジーという言葉が、私に向けられたものだったとしたら?」

真帆(107問題を引き起こした現象。その原因を紅莉栖は理解している。だからそれは、紅莉栖にとってのファンタジーたりえはしない)

真帆(だけど、私は違う。例え紅莉栖に理解できていても、でも私には理解なんてできない)

真帆「もしも……もしも……」ジワリ

真帆(もしも紅莉栖が、私の事をそういう風に見ているのだとしたら)

真帆(もしも紅莉栖が、所詮サリエリには聞かせたところで理解できないと思って、ファンタジーという単語をチョイスしたのだとしたら?)

真帆「そんなこと……あるわけないじゃない」プルプル


回想
紅莉栖【いいえ。これも確証を持っていえる訳ではないけれど、恐らくそのデータは破損しているわけではないと思う】


真帆(107問題のデータは壊れていない)

真帆(じゃあどうして読めないの? なんでアクセスできないの? 私がサリエリでしかないから?)
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 23:47:30.04 ID:5zbPgvo20

真帆「そんな事はない。紅莉栖は良い子よ。そんなはず、あるわけがない」モウフ ガバッ

真帆(分かってる。全部、自分の劣等感が生んだ杞憂だなんてこと、もうとっくに分かっている)

真帆(だからこんな思考は、何の意味も成さない無駄な労力。そんなことはもう、あの子にあったその日から、嫌ってくらいに痛感している)

真帆「だったら顔を上げなさい、比屋定真帆」キッ

真帆(最近。このところ、ずっと色々なものが怖かった)

真帆(肥大したらしい、私の記憶)

真帆(それを容易く読み解く後輩)

真帆(接触しず、接触されなくなった、私の分身)

真帆(そしてあの日に見た──)


回想
A真帆【消したくない! 消えたくない! せっかくこうして! なのにどうして? ねえ、どうしてよっ!?】


真帆(アマデウスだった、あのときの自分の姿)

真帆(私はサリエリで。そんな私は、理解できない色々なものが恐ろしくて)

真帆(消え行く自分が怖くて、追いつけない後輩が怖くて、さっきは教授の一瞬の眼差しすら怖くて)

真帆「次は何を怖がればいいってのよ、もーーー!」モウフ ブワァ

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆「……?」

真帆(どうしたのかしら。外が騒がしくなってる?)ノソリ

真帆(何かあったの?)ソロソロ

真帆(ええと……)マドカラソット

真帆「あ」

真帆(中庭に、人がいる)

真帆(薄暗くてよく分からないけど、ざっと……7、8人くらい?)

真帆(ここからじゃハッキリしないけど、多分見知った顔ばかり……あ)

真帆(あれってレスキネン教授よね? みんなしてサーチライトを持って、こんな時間に何をして……)


回想
レスキネン【Hum。不審者がいるようだ、大学の周辺にね】


真帆「まさか、誰かが侵入してきたとか……なんて、まさかね」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 23:48:59.66 ID:5zbPgvo20

真帆(でも……。教授以外のメンバーって、ほとんどが警備部の人たちじゃない?)

真帆(…………)ブルッ

真帆「ええと……別にここでこうしていて構わないわよ……ね?」


回想
紅莉栖【だって真帆先輩なら、私でも簡単にさらえちゃいそうですから】


真帆(むう……)タラリ

真帆(一応、他の人がいる場所に行ったほうが懸命かしら? 一階の職員用ラウンジなら、こんな時間でも人がいることも多いし……)

真帆(そうね。とりあえず、資料室から出ましょう)ノソノソ ドアガチャ


シーン


真帆(研究室には誰も……いないわよね?)ジッ

真帆(……よし大丈夫そう)テクテク ドアガチャ

真帆(とりあえず、このまま一階のラウンジへ。そこに誰もいなかったら、中庭まで出て教授と合流。まあ、妥当なチョイスだと思うけど)ドアガチャ

真帆(…………)キョロキョロ

真帆(廊下にも、人の気配はなし……)

真帆「よ、よし。進もう」


ソロソロ……ソロソロ……


真帆(そこの角を曲がれば、下り階段がある。とにかく今は下へ)

真帆(よし、行くわよ──)


タッタッタ……


真帆(!? 足音? 誰かが走ってる? 下から……聞こえて)


タッタッタッタッタ……


真帆(近づいてきてない? 何か……嫌な感じが……)


ピタ


真帆(真下で止まっ──)


ダダダダダダ!


真帆(ひっ!? 足音が上って……階段を上ってくる!? 嘘!?)

真帆(うそ、うそ、どうしよう、どうしよう!?)

???「フゥーーーハハハ!」ダダダ!
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 23:50:09.68 ID:5zbPgvo20
真帆「ふえ!?」

真帆(笑い声? 何で、どうして笑い声!?)

???「フゥーーーーーハハハハハハ!!!」

真帆(何かやばい! もう、すぐそこまで──)

???「ぬ!?」

真帆「ひぃ!?」

???「何と! トゥオーーーーウ!」ブワサッ

真帆「ふぃぃぃぃぃ!!!」

???「うぬはっ!?」グキッ! ズデッ! ゴロゴロゴロゴロ

真帆「え……え?」

???「なんの!?」

真帆(た……立ち上がった?)

???「ヘイユー! どこに目を付けている! 危ないだろうが!?」

真帆(え、ええ、日本語!?)

???「って子供か? おい貴様、こんな夜更けに一人で何をしている!」

真帆(え、え? 白衣を着てはいるけど、でもうちの職員じゃない。においが……違う。誰?)

???「うぉいっ! きーているのか、そこの米産ロリッ娘よ!」

真帆(べ、べいさん……何ですって?)

???「おおっと、そうか。日本語で言っても通じるわけがないのだったな。まったく、勉強が足りんぞ、米ロリ!」

真帆(略された!?)

???「というか、どうしてこのような場所に、貴様のような小動物が?」

真帆(しょ……しょしょしょ?)

???「はっ!? 分かったぞ! 貴様はこの研究機関にとらわれて、人体実験のモルモットにされている非業のロリッ娘なのだな!?」

真帆「は、はい?」

???「おのれ許せん、米国研究機関め! この俺、狂気のムァッドサインエンティスト、鳳凰院きょ──って、うるさいぞスーパーハカー! 耳元でギャーギャー騒ぐな!」

真帆(あ……無線イヤホン? 誰かと通信している?)

???「ええい、陽動ならばちゃんとこなしているわ! というか、執拗にロリッ子発言に食いつくな、この変態め!」

真帆(……陽動? 変態?)

???「貴様は黙って、この施設の警備システムをハッキングし続けていれば良いのだ!」

真帆(んな!? ハッキング? ここをですって? 嘘でしょ!?)
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 23:52:05.45 ID:5zbPgvo20
???「とにかく! 逃走経路のナビゲートだけは怠ってくれるな。捕まったらかなわん! 分かったか、スーパーハカー!」

真帆(やっぱりこの男……侵入者)

真帆「ね、ねえ……」

???「んぬ?」

真帆「あ……あなたは誰? ここに来た目的は?」

???「!? 貴様、日本語が分かるのか?」

真帆「え、ええ」

???「ならば好都合! 問おう、米ロリよ! 貴様、この場所で非人道的な仕打ちを受けたりはしていないか?」

真帆「いや、ええと……私はここの研究者で……」

???「不憫な。そのような嘘をつく必要はないのだぞ? 貴様のような児童体型の研究者などこの世にいるものか!」

真帆「んな……んなぁ!?」

???「しかたない。共に来い! 貴様の窮地をこの鳳凰院凶真が救ってって、やかましいと言っているだろダル!」

真帆(何なの……何なのよ、こいつ?)

???「なに!? 追っ手が近づいているだと!?」

真帆(あ、誰かの足音が聞こえてくる! こっちに向かってくる!)

???「ぬ、時間がない! 自称米ロリ研究者(非業)よ!」

真帆(何か色々混ざった!?)

???「貴様、この場所から逃げ出したいと思ってはいないか!?」

真帆(……え?)ドキリ

???「もし貴様が望むのであれば、この俺、鳳凰院凶真が貴様をこの魔窟から攫いだしてやる。さあ、どうする?」

真帆(な……何これ、どういう展開?)

???「時間がない。早く決断してもらうか」

真帆「……け……結構よ」

???「そうか分かった。では俺は行く。さらばだっ!」バサッ

真帆「……え?」

???「フゥーーーーーハハハハハハ!!!」ダダダダダ!

真帆「えええ! 逃げられた!?」

真帆(いったいぜんたい、今のは何だったの?)ポカーン
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 23:53:14.49 ID:5zbPgvo20
紅莉栖「せんぱーーーい!」

真帆「あ、く、紅莉栖!」


パタパタパタ


紅莉栖「ぜぇぜぇ。い、今の変態、どっちへ行きましたか!?」

真帆「え、えっと……廊下を真っ直ぐに走っていったけど」

紅莉栖「ありがとうございます! あの馬鹿、どういうつもりだ!」


パタパタパタ


真帆(あ、行っちゃった)


ドカドカドカドカ


レスキネン「Ya! マホ! 不審な──」

真帆「あっちです。今紅莉栖が追いかけていきました」

レス「OK! こうしてはいられない。とりあえず真帆は、そのまま研究室まで戻って隠れているんだ、いいね?」

真帆「は、はい」

レス「よい返事だ」


ドカドカドカドカ


真帆(…………)

真帆「よし。寝よう」グッ












52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/04(水) 02:48:12.53 ID:GCL0134r0
乙、やっぱオカリンって変態だわ。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/04(水) 11:17:19.56 ID:oghQKuToo
ありがとう
岡部さんはどこまでいっても変態さんでごわす がんばってもっともっと変態さんにするっすよ!
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/04(水) 22:00:29.45 ID:oghQKuTo0
     09

真帆「にしても、何だったのかしら今の?」トコトコ

真帆(紅莉栖や教授が、血相を変えて追いかけて行ったことから察するに)

真帆(さっきの男が噂の不審者で、今夜とうとう、うちの大学に乗り込んできた……って解釈でいいのよね?)

真帆(ふーむ)

真帆(断定はできないけど、でも推測としては妥当なところかな。となると……)

真帆(やっぱりあれは、危険な人物だったってこと?)

真帆「う〜ん」トコトコ

真帆(危険人物、か)

真帆(何となくだけど、その表現方法って、私が感じた人物像と大きく食い違ってる気がするんだけど……)

真帆(何これ、すっごい違和感)

真帆「何でだろ?」トコトコ

真帆(そりゃ確かに、高笑いとともに突っ込んできて、意味不明なことをベラベラと喚き散らしていくような相手なわけだし)

真帆(私だって鉢合わせてた時なんかは、正直“こいつ危ない”って雰囲気は感じはしたわよ?)

真帆(だけど、今こうして落ち着いて思い返してみると……)


回想
???【フゥーーーーーハハハハハハ!!!】


真帆(やっぱり、これっぽっちも怖くないわね。怖いどころか、むしろ逆に……逆に……)

真帆「逆に、何だろう?」ピタ

真帆「むむむ……」

真帆「……はぁ」トコトコ

真帆(だめね、思考がまとまらない。このところ、色々あったから疲れているのかも)

真帆(何にしても、あの様子だと侵入者が捕まるのも時間の問題でしょうから、私は早く研究室で休むことに……あ)

真帆「あらら」

真帆(私ってば研究室の扉、開けっ放したままで出て行っちゃってたのか)

真帆(相当ビクついていたのね。我ながら情けな──)

真帆「!?」

真帆(え? 誰? 中に誰かいる?)ササッ

真帆(おかしい。研究室にはもともと私一人しかいなかったはず。かといって、あの騒動の中で誰かが部屋に入っていった様子もなかった)

真帆(それなら、今研究室にいるのは誰? 大学の関係者?)ソー

真帆(照明の落ちた薄暗い室内で一人。怪しいったらないじゃない)

真帆(…………)ジー

真帆(ああもうっ。後姿だけじゃ判断ができない。いったい誰なのよ?)

真帆(…………)ジジー
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/04(水) 22:11:29.07 ID:oghQKuTo0
真帆(どうしよう。のこのこ出て行っても大丈夫かしら? それとも、安全第一で誰か他の人を呼びに行くべき?)

真帆(………)
真帆(……)
真帆(…)

真帆(あ、でも待って……)


回想
???【ええい、陽動ならばちゃんとこなしているわ!】


真帆(さっきの男、確か陽動がどうのって口走ってたわよね。もしあれが言葉通りの意味だったのなら……)

真帆(そうよ、侵入者は一人とは限らないじゃない!)

真帆(もしもさっきの白衣の男が陽動役だったなら、それなら本命はまた別にいると考えなければならない)

真帆(そして……)ググィ

真帆(ひょっとして、実はこっちが本命……とか? って!)

真帆(ちょっと! あいつが立っているの、私のデスクの前じゃない!?)

真帆(しかも何かキーボードを叩く音とか聞こえてくる! 何よあいつ、人のPCに何しでかしてくれてるのよ!?)

真帆(これは……見過ごせないわ)

真帆(見てなさいな)カサカサカサ

真帆(よいしょぉ!)モノカゲニ ササッ

???「……?」フリムキ

真帆(ひぃ! いきなり見つかった!?)

???「気のせい……か?」

真帆(あ……ああ、あっぶなぁ)ドキドキドキドキ

真帆(なんとか気づかれずに済んだみたいだけど、まさか人より少しだけ小柄な体型が、こんな風に役立つ時がくるなんて)

真帆(さあ、それじゃあ……)

真帆(そこで何をしてくれてるのか、とくと見せてもらうわよ?)コソッ

???「くそっ」カタカタカタ

真帆(後姿は、どう見ても女性よね? えっと。すでに私のデスクトップ画面は開かれちゃってるみたいだけど……妙ね)

真帆(寝る前に、ログアウトはしておいた。それは確かなはず)

真帆(だったら、どうやってインしたのかしら? 目に付くような場所に、自パスをメモ貼りなんかしてないわよ?)

???「くそっ! くそっ!」バン

真帆(なになになになに!?)

???「どうしてアクセスできない! こんな話は聞いていない!」

真帆(アクセスできない? でも、ログインは出来ているみたいだけど、何をそんなに取り乱しているのかしら?)

???「ああもう時間がない。もたもたしていたら、オリジナルが戻ってきちゃうっていうのに!」カタカタ

真帆(オリジナルってどういう意味? 戻ってくる? 誰が? この部屋に来そうな人間なんて、私くらいしか……って?)

真帆(私? オリジナル? ちょっと、まさか……)

???「ん、聞こえてるよ」

真帆(ぐええ!? 私の心の声が聞かれてしまった!?)ビクッ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/04(水) 22:12:53.86 ID:oghQKuTo0

???「そう、うん。状況は把握したから」

真帆(な……分けないか。どうやらこの人も耳に通信機を付けているみたいね。となると、やっぱりさっきの男と共犯?)

???「オーキードーキー。こっちもすぐにカタを付けるから、オカリンおじさんが上手く逃げられるように誘導してあげて」

真帆(オカリン……おじさん)

???「大丈夫だよ。ボクはうまく逃げられるから心配しないで、父さん」

真帆(…………)ジーッ

???「ふぅ、時間切れだ。この手は最後の手段で最悪の下策だから、できれば取りたくなかったけど……背に腹は変えられない」スッ

真帆(銃!?)

???「こうなってしまったら、こんな悪手でも事が上手く運ぶことを祈るしかない」

真帆(何よ、どうするつもりなの!? 私のPCを穴だらけにでもしようっていうの!?)

???「ボクなら、もっと上手にやれると思っていたのに、くそっ」ツカツカツカ

真帆(ひっ! こっちにくる!)サッ

???「確か、これがサーバーでいいはずだ」チャ

真帆(え、何で? なんで私のアマデウスが入ったサーバーに銃口を向けているの?)

???「こんな結末に、君が満足できるかは分からないけど……」

真帆(サーバーに向って話しかけてるとか、もう何ごとっ!?)

???「ごめん。許して、サリエリ」

真帆(!!!???)

真帆(サリエリ? サリエリ? 今、サリエリって言った!?)

???「せめて、安らかに──」グッ

真帆(あ! だめ、撃たれちゃう!)

真帆「待ちなさいっ!」バッ!

???「なっ!?」

真帆「…………」

真帆(思わず飛び出しちゃった)サー
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/04(水) 22:14:28.55 ID:oghQKuTo0
???「サリエリ……じゃない。となると、オリジナルの方だね?」

真帆(何だか今、すごい名前で呼ばれたような……って、それどころじゃない!)

真帆「あ、あ、あ……あなたねっ! そんな物で何をするつもりなの!」

???「…………」ギロリ

真帆「ににに、睨んだって怖くないわよ! ととととと、とにかく降ろしなさい! 今すぐ銃を降ろしなさい!」

???「早すぎるね。もう戻ってくるなんて予想外だよ。オカリンおじさんも、陽動くらいもう少し上手にやってもらわないと困るな」

真帆「な、何でもいいから! その銃を降ろして! 早くっ!」

???「そう言われて素直に銃を降ろした人間を、君は見たことがあるのかい?」

真帆(無いわよ! 余計なお世話だ、このやろー!)ワタワタ

真帆「そ、そう言わないで、ほら! そんな……サーバーなんて撃っても、何も楽しくなんてないわよ、ね?」

???「悪いけど、それはできない。ボクには全うしなければいけない使命があるんだ」スゥ

真帆(使命? 何よ! 何を言っているのよ、この人怖い!)

真帆「とにかく! 理由なんてなんでもいいから、早くその銃を──」

???「断る。それはできないと言ったはずだよ、比屋定真帆」

真帆「!?」

???「ボクはね、比屋定真帆。君のアマデウスをこの歴史から完全に消し去る、そのためだけに遥々この時代まできたんだ」

真帆「言っている言葉の意味が……1ミリも分からないわ」

???「そうだろうね、君には分からない、分かりっこない。だけどそれでもボクは構わない」

真帆「構わなくなんてないでしょう!? 説明もしないうちから何を言っているの!」

???「あいにく説明している暇なんてないんだ。悪いけど、ボクは任務を遂行させてもらう。ということで、そろそろ撃たせてもらおうかな」スチャ

真帆(ああっ! 取り付く島も無い! だったらもう、ダメもとよ!)

真帆「せめて! せめて、私に分かろうとする努力くらいさせなさい!」

真帆「あなたの狙いはなに? “紅莉栖のアマデウスサーバー”を破壊して、それでどうしようというの? そんな事があなたの使命だとでも言うの!?」

???「……なんだって?」

真帆「だから! あなたの狙いは──」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/04(水) 22:17:12.28 ID:oghQKuTo0

???「そうじゃない。そのサーバーが、牧瀬紅莉栖のアマデウス……?」

真帆「そ、そうよ。知っていたんじゃないの?」

???「いや、そんなはずはない。ブラフだね? これは比屋定真帆、君のアマデウスサーバーのはずだ」

真帆「な、何を言っているの? 私のアマデウスサーバーなら、……ほら、あっちじゃない」ビシリ

???「…………」チラリ

真帆(嘘でしょ、引っかかった!? ああもう、成るようになれ! やー!)バッ

???「んな!?」ギョ

真帆(勢いで、やってしまったあああ!)ガシッ

???「どういうつもりだ! サーバーから離れろ、比屋定真帆!」

真帆「おおおお断りよ!」

???「もう時間がないって言ってるだろ!」

真帆「あんな手に引っかかった、そっちが悪いんだからね! こうなったら絶対に離れるもんですか!」

???「馬鹿げたことを! 君ごとサーバーを撃ち抜いてもボクは構わないんだぞ!?」

真帆「ならやってみなさいよ!」

真帆(お願いだから、それだけはやめて!)

???「……いい度胸だね。後悔してもしらないよ?」チャ

真帆(はひっ!?)

???「今から五秒後に引き金を引く。その五秒間の間にどんな行動を起こすのかは、比屋定真帆。君の自由だ」

真帆(え、うそ、なにそれ!? って、背中に硬いのを押し当ててくるぅ!? うああグリグリしないでよ!)

???「ひとーーーつ」

真帆(待って待って待って! 嘘よねハッタリよね? そうだと言ってちょうだい、お願いだから!)

???「ふたーつ」

真帆(撃たないでしょ? 撃つわけないわよね? だってほら、何だか数え方もひらがな読みっぽくて可愛らしいし、この人は撃てないタイプよそうに決まっているわ!)

???「……三つ」グッ

真帆(こ、声色とか変えないでお願いだから。って本気? 早まる気? ちょっと待って、そんなの死んじゃうじゃない。このままじゃ私撃たれて死んじゃうじゃない。死ぬとか……死?)

真帆(…………)
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/04(水) 22:19:52.16 ID:oghQKuTo0
???「四つ」

真帆(やだやだやだやだやだ!)

真帆(誰か助けて、パパママ! 誰か来て! 誰か助けて、この人を止めて! 誰でもいいから! レスキネン教授! 紅莉栖! 岡──



誰?



???「五つ。終わりだね」

真帆(はっ!? も、もうダメ! んーーーーー!)キュ


 シンッ


真帆(え? あれ?)

???「くっそう! 強情だな君は!」グイッ

真帆「痛いっ!」

真帆(むちゃくちゃ髪を引っ張ってくる! 痛い……けど、撃たれなかった! 私、“やっぱり”撃たれなかった!)

???「あーもう、イライラする! そもそも、どうして君が邪魔をするんだ!」グイグイ

真帆(死んでない! 生きている! うわぁぁぁぁぁ!)ガッシリ

???「おい、聞いているのか!? これは君自身を守るための行為でもあるのに、どうして!?」

真帆「うえ……? うええ……?」ギュギュー

???「そこまで執拗にしがみ付くとか、どれだけ強情なんだ! これならサリエリの方がよっぽど素直だったよ!」

真帆(サリ……エリ……)

???「もうこうなったら……って!? なっ、中止だって!?」ピタ

真帆「?」

???「くそ、分かったよ父さん。今すぐ撤収する」パッ

真帆「え、え?」

???「比屋定真帆、今日のところは君の勝ちだ。おかげでこっちは『ほつれ』を防ぎそこなってしまったよ」

真帆「え、えへえ? ふええ?」

???「でもね、まだチャンスは残っている。だからボクは諦めたりなんてしない。何があっても、この世界線を『破綻』なんてさせはしない。絶対にね」

真帆「な……何の話?」

???「いずれ分かるよ」バッ

真帆「ちょ……」

???「じゃあね、サリエリのオリジナル」タッタッタッタ

真帆「え……」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」


シーン


真帆「助かった……のよね?」ジンワリ
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/04(水) 22:20:52.77 ID:oghQKuTo0

真帆(殺されるかと……思った)

真帆「こ……怖かった……うぐ、うぐぅ……」ポロポロポロポロ

シュイーーーン

A紅莉栖『先輩! 大丈夫ですか!?』

真帆「んう? く、紅莉栖……?」ズズ

A紅莉栖『の、アマデウスです』

真帆「そ、そうね……」キリッ

A紅莉栖『粗方の状況は把握しています。すいません。騒動には気づいていたんですけど、外部からのクラックで通信手段が制限されてしまっていて』

真帆「そう……だったの」キリリ

A紅莉栖『取りあえず、今、教授とそっちの私に連絡を入れておきました。すぐに駆けつけてくれるはずです』

真帆「ええ……ありがとう」

真帆(何なのよ、本当に何だって言うのよ。どうして私がこんな目に……)

真帆(使命だとかアマデウスを消すだとかうちの大学をハッキングだとかサリエリだとか……私にはもう、何がなんだか)ヒック

真帆(それにしても……。本当に、撃たれなくて良かった。前々から、根は優しい人だとは思ってたけど、今回ばかり……は?)

真帆(初対面……よね? どう考えても)ヒク

真帆(…………)

A紅莉栖『ところで先輩。いらぬお世話かもしれませんが……』

真帆「……?」

A紅莉栖『誰かが来る前に、そのお顔、どうにかしておくことをお勧めしますよ』

真帆「へ? あ……おおう!?」ゴシゴシゴシゴシ













61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/07/04(水) 22:23:03.78 ID:oghQKuTo0
ここまでが前半になります
次から中盤に入っていきますがちょっと苦戦中なので
数日おきます 申し訳ありやせん
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/05(木) 02:44:54.44 ID:sSpqcl9f0
乙、
まあゆっくり考えて来てくれー
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/05(木) 03:13:06.58 ID:eIYsF49qo
かたじけない
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/05(木) 03:29:58.24 ID:f7BSeMuWo
107問題って響きが怖い(渋谷的な意味で)
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/05(木) 09:20:19.65 ID:rLL52l2G0

気長に待ってるお
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