江ノ島「明日に絶望しろ!未来に絶望しろ!」戦刃「…終わりだよ、ドクターK!」カルテ.8

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1 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/08(日) 22:34:48.07 ID:sgIdvRvl0
★このSSはダンガンロンパとスーパードクターKのクロスSSです。
★クロスSSのため原作との設定違いが多々あります。ネタバレ注意。
★手術シーンや医療知識が時々出てきますが、正確かは保証出来ません。
★原作を知らなくてもなるべくわかるように書きます。


〜あらすじ〜

超高校級の才能を持つ選ばれた生徒しか入れず、卒業すれば成功を約束されるという希望ヶ峰学園。

苗木誠達15人の超高校級の生徒は、その希望ヶ峰学園に入学すると同時に
ぬいぐるみのような物体“モノクマ”により学園へ監禁、共同生活を強いられることになる。

学園を出るための方法は唯一つ。誰にもバレずに他の誰かを殺し『卒業』すること――

モノクマが残酷なルールを告げた時、その場に乱入する男がいた。世界一の頭脳と肉体を持つ男・ドクターK。
彼は臨時の校医としてこの学園に赴任していたのだ。黒幕の奇襲を生き抜いたKは囚われの生徒達を
救おうとするが、怪我の後遺症で記憶の一部を失い、そこを突いた黒幕により内通者に仕立てあげられる。

なんとか誤解は解けたものの、生徒達に警戒され思うように動けない中、第一の事件が発生した……


次々と発生する事件。止まらない負の連鎖。

生徒達の友情、成長、疑心、思惑、そして裏切り――

果たして、Kは無事生徒達を救い出せるのか?!


――今ここに、神技のメスが再び閃く!!


初代スレ:苗木「…え? この人が校医?!」霧切「ドクターKよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382255538/

二代目スレ:桑田「俺達のせんせーは最強だ!」石丸「西城先生…またの名をドクターK!」カルテ.2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387896354/

三代目スレ:大和田「俺達は諦めねえ!」舞園「ドクターK…力を貸して下さい」不二咲「カルテ.3だよぉ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1395580805/

四代目スレ:セレス「勝負ですわ、ドクターK」葉隠「未来が…視えねえ」山田「カルテ.4ですぞ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403356340/

五代目スレ:十神「愚民が…!」腐川「医者なら救ってみなさいよ、ドクターK!」ジェノ「カルテ.5ォ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416054791/

六代目スレ:モノクマ「学級裁判!!」KAZUYA「俺が救ってみせる。ドクターKの名にかけてだ!」カルテ.6
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444145685/

前スレ:大神「…もう決めたのだ。許せ」朝日奈「そんなの、嫌だよ…お願い、ドクターK!」カルテ.7
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474553743/


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1531056887
2 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/08(日) 22:36:13.83 ID:sgIdvRvl0

☆ダンガンロンパ:言わずと知れた大人気推理アドベンチャーゲーム。

 登場人物は公式サイトをチェック!
 …でもアニメ一話がニコニコ動画で無料で見られるためそちらを見た方が早い。
 個性的で魅力的なキャラクター達なので、一話見たら大体覚えられます。


☆スーパードクターK:かつて週刊少年マガジンで1988年から十年間連載していた名作医療漫画。

 KAZUYA:スーパードクターKの主人公。本名は西城カズヤ。このSSでは32歳。2メートル近い長身と
       筋骨隆々とした肉体を持つ最強の男にして世界最高峰の医師。執刀技術は特Aランク。
       鋭い洞察力と分析力で外の状況やこの事件の真相をいち早く見抜くが、現在は大苦戦中。


 ・参考画像(KAZUYA)
 http://i.imgur.com/xFAepBe.jpg
 http://i.imgur.com/wgyt4k2.jpg
 


ニコニコ静画でスーパードクターKの1話が丸々立ち読み出来ます。
http://seiga.nicovideo.jp/book/series/13453

3 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/08(日) 22:38:16.12 ID:sgIdvRvl0

《自由行動について》

安価でKの行動を決定することが出来る。生徒に会えばその生徒との親密度が上がる。
また場所選択では仲間の生徒の部屋にも行くことが出来、色々と良い事が起こる。
ただし、同じ生徒の部屋に行けるのは一章につき一度のみ。


《仲間システムについて》

一定以上の親密度と特殊イベント発生により生徒がKの仲間になる。
仲間になると生徒が自分からKに会いに来たりイベントを発生させるため
貴重な自由行動を消費しなくても勝手に親密度が上がる。

またKの頼みを積極的に引き受けてくれたり、生徒の特有スキルが事件発生時に
役に立つこともある。より多くの生徒を仲間にすることがグッドエンドへの鍵である。


・現在の親密度(名前は親密度の高い順)

【カンスト】石丸 、桑田 、苗木、舞園

【凄く良い】不二咲、大和田、腐川、朝日奈

【かなり良い】霧切、セレス、大神、ジェノサイダー

【結構良い】山田

【そこそこ良い】葉隠、十神 、?????

【普通】江ノ島、戦刃、???


      〜〜〜〜〜

【戦刃の認知度】KAZUYA派の生徒と十神は正体を既に知っているか怪しんでいる。

4 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/08(日) 22:39:09.94 ID:sgIdvRvl0

人物紹介(このSSでのネタバレ付き)

・西城 カズヤ : 超国家級の医師(KAZUYA、ドクターK)

 閉鎖されたこの学園で“唯一の大人”であり生徒のためなら自ら犠牲になることも辞さない。
半数近くの生徒を手術で救い、苗木と石丸に医療技術を仕込む。失った記憶は半分ほど取り戻し、
希望ヶ峰学園の闇に近づきつつある。モノクマに危険視されており残された時間が少ないことを
悟ったKAZUYAは、己の知識を伝えるために78期生達元担任の遺体の解剖を行った。


・苗木 誠 : 超高校級の幸運

 頭脳・容姿・運動神経全てが平均的でとにかく平凡な高校生。希望ヶ峰学園にはいわゆる抽選枠で
選ばれた『超高校級の幸運』の持ち主。自分を平凡と謙遜するが我慢強い性格と前向きさで、誰とでも
仲良くなれる。K曰く、超高校級のコミュニケーション能力の持ち主。 石丸と共に医者を目指すことを
決意し、現在はKの指導を受けている。その幸運で学園長の遺した保健室の隠し空間を発見した。


・桑田 怜恩 : 超高校級の野球選手

 類稀な天才的運動能力の持ち主。野球選手のくせに野球嫌いで努力嫌い、女の子が大好きという
超高校級のチャラ男であったが、舞園に命を狙われたことを契機に改心しだいぶ真面目になったようだ。
その後、命の恩人で何かと助けてくれるKにすっかり懐き、積極的に協力するようになった。
石丸と苗木の医療実習にも頻繁に顔を出し、静脈注射や点滴くらいなら容易にこなせる。


・舞園 さやか : 超高校級のアイドル

 国民的アイドルグループでセンターマイクを務める美少女。謙虚で誰に対しても儀正しく
非の打ち所のないアイドルだが、真面目すぎるが故に自分を追い詰める所があり事件を起こした。
 その後、自分を責め続けたことにより精神が限界を迎え、現在は「脱出のための駒」としての
自分を演じている。常に求められることをしなくてはならないという強迫観念に取り憑かれている。


・石丸 清多夏 : 超高校級の風紀委員

 全国模試不動の一位を誇る秀才。苗木を除けば唯一才能を持たない凡人であり、努力で今の地位を
築いてきた。堅すぎる性格故に長年友人がいなかったが、大和田とは兄弟と呼び合う程の深い仲となる。
 大和田の起こした事件で顔と心に大きな傷を負い一度は廃人となるが、仲間達の熱い友情により
無事復活。現在は尊敬するKAZUYAに憧れ医学の猛勉強を行っている。あり得ないレベルの不器用だが
睡眠すら削る不屈の努力によって、研修医と同程度の手技をマスターしつつある。

5 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/08(日) 22:40:18.83 ID:sgIdvRvl0

・大和田 紋土 : 超高校級の暴走族

 日本最大の暴走族の総長。短気ですぐ手が出るが、基本的には男らしく面倒見の良い兄貴分である。
石丸とは最初こそ仲が悪かったが、後に相手の強さをお互いに認め合い義兄弟の契りを交わした。
 己の弱さから事件を起こすが、後に自ら秘密を告白し克服する。石丸の顔の傷や不二咲を危険な目に
遭わせたことを後悔しているが、自分なりに償っていく決意をした。手先の器用さや力が強いことを
活かし、KAZUYAからも何かと仕事を任されている。 桑田同様、簡単な医療処置は出来る。


・不二咲 千尋 : 超高校級のプログラマー

 天才プログラマー。その技術は自身の擬似人格プログラム・アルターエゴを作り出す程である。
少女と見紛う容姿と性格をしており、男らしくないのがコンプレックスで今までずっと女装して
逃避していた。石丸が自分を庇って怪我したことに責任を感じ、単独行動を取った結果襲われ
死にかけるが、友情の力でギリギリ蘇生した。現在は等身大の自分で出来ることを探し、前向きに
他のメンバーを支えている。血は苦手だが少しずつ医療実習にも参加するようにしている。


・朝日奈 葵 : 超高校級のスイマー

 次々と記録を塗り替える期待のアスリート。恵まれた容姿や体型、明るい性格でファンも多い。
食べることが好きで、特にドーナツは大好物である。あまり考えることは得意ではないが直感は鋭い。
 モノクマの内紛工作でストレスが爆発し、KAZUYAに不満をぶつけるがお互い本音で話したことで和解。
現在は苗木達同様、KAZUYAの派閥に入っている。大神が内通者だった件で元々不仲だった十神と衝突し、
再び事件を起こすが最終的に和解する。舞園同様、看護婦になろうと勉強を始めた。


・大神 さくら : 超高校級の格闘家

 女性でありながら全米総合格闘技の大会で優勝した猛者。外見は非常に厳つく冷静だが、内面は
女子高生らしい気遣いや繊細さを持っている。由緒正しい道場の跡取り娘であり、地上最強の座を求め
日々の鍛錬は欠かさない。実は道場の人間を人質に取られておりモノクマと内通していた。KAZUYAを
殺害する命令を受けたが殺せず、内通者だと暴露される。その後、責任を取って自殺を試みた。


・セレスティア・ルーデンベルク : 超高校級のギャンブラー

 栃木県宇都宮出身、本名・安広多恵子。ゴシックロリータファッションの美少女である。徹底的に
西洋かぶれで自分は白人だと言い張っている。いつも意味深な微笑みを浮かべ一見優雅な佇まいだが、
非常な毒舌家でありキレると暴言を吐く。穏健派の振りをしているが、実は脱出したくてたまらない。
 満を持して事件を起こし、完璧と思われるトリックで周囲を華麗に翻弄するが超国家級の医師を
欺くことは出来なかった。自分とは真逆の捨身とすら言えるKAZUYAの自己犠牲精神に惹かれている。


・山田 一二三 : 超高校級の同人作家

 コミケ一の売れっ子作家でオタク界の帝王的存在。セレスからは召使い扱いで毎日こき使われている。
普段は明るく気のいいヤツだが実はプライドの高い一面もあり、密かに周囲に対し引け目を感じていた。
 その負の感情をセレスに利用され事件に加担してしまったが、セレスに裏切られたことにより己の
愚かさと浅はかさを悟り深く後悔する。無事昏睡状態から覚醒したが、左腕に麻痺が残っている。
記憶を取り戻したが、嫌われることを恐れて誰にも言うことが出来ない。

6 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/08(日) 22:41:03.23 ID:sgIdvRvl0

・十神 白夜 : 超高校級の御曹司

 世界を統べる一族・十神家の跡取り。頭脳・容姿・運動神経全てがパーフェクトの超高校級の完璧。
傲慢な態度で周囲と何度も衝突し、コロシアイをゲームと言い放つなど人間性にかなり問題がある。
 自ら事件を撹乱するなど危険人物ではあるが、内心では現在の状況に多大なストレスを感じている。
そんな自分に苛々し周囲に対して過剰に攻撃している面も。内通者問題でとうとう完全な四面楚歌となり
初めて己の失敗を悟る。最終的には石丸の説明ができない愚直な誠実さを目の当たりにしたことで根負け、
人間は論理だけの生き物でないことを知った十神は和解を選択したのだった。


・腐川 冬子 : 超高校級の文学少女

 書いた小説は軒並みヒットして賞も総ナメの超売れっ子女流作家……なのだが、家庭や過去の
人間関係に恵まれず暗い少女時代だったために、すっかり自虐的で卑屈な性格になってしまった。
 十神が好きで、いつも後を追いかけている。実は二重人格であり、裏の人格は連続猟奇殺人犯
「ジェノサイダー翔」。翔が事件を起こしたことがショックで閉じこもっていたが、自分を外に
連れ出したKAZUYAに深い感謝と好意を持っている。……最近は十神に加えKでも妄想してるらしい。


・ジェノサイダー翔 : 超高校級の殺人鬼

 腐川の裏人格であり、萌える男をハサミで磔にして殺す殺人鬼。腐川とは真逆の性格でとにかく
テンションが高くポジティブ。重度の腐女子。粗暴だが頭の回転は非常に早く、味方にすると頼もしい。
腐川とは知識と感情は共有しているが記憶は共有しておらず、腐川の消された記憶も保持している。
コロシアイが起こる以前、自分と腐川に親身だったKAZUYAに好感を持っておりその関係で何かと協力的。


・江ノ島 盾子 : 超高校級のギャル

 大人気モデルで女子高生達のカリスマ……は本物の江ノ島盾子の方で、彼女はその双子の姉である。
本名は戦刃むくろといい、超高校級の軍人だった。天才的戦闘能力を誇るが、頭はあまり回らず全く
気が利かないため残念な姉、残姉と妹からは呼ばれている。このコロシアイ学園生活のもう一人の内通者。
ちなみに大半の生徒からは軒並み怪しまれKAZUYAや霧切、十神と言った頭脳派達にはバレている。残念。

十神が全員と和解しコロシアイが実質的に終了したため、最後の作戦へと移る。それは――


・葉隠 康比呂 : 超高校級の占い師

 どんなことも三割の確率でピタリと当てる天才占い師。事情があって三ダブし、高校生だが成人である。
飄々として常にマイペース、KAZUYAからは掴み所がないと評されている。普段は割りと落ち着いているが、
非常に臆病ですぐパニックになる悪癖がある。また、自分の保身第一であり、借金返済のために友人を
利用しようとする面も……。大神が内通者だというインスピレーションを得ていた。
また、内通者を占った葉隠のメモは実は当たっていたことが後に判明する。


・霧切響子 : 超高校級の探偵

 学園長の娘にして、名門探偵一族霧切家の人間。初めは記憶喪失で名前以外何も思い出せなかった。
KAZUYAがたまたま霧切について知っていたため、現在は順調に記憶が回復している。いつも冷静沈着で
洞察力も鋭く、的確な指示をするためKAZUYA派の中では副リーダー兼参謀的役割を担っている。
 手に火傷の痕がありKAZUYAに手術してもらったが、すぐには治らないのでまだ当分手袋は外せない。
少しずつだが、周囲に対し確かな信頼や絆といった感情を持ち始めている。


・モノクマ

 コロシアイ学園生活のマスコットにして学園長。苗木達を監禁しコロシアイを強制している
黒幕である。中の人は超高校級の絶望・江ノ島盾子。人の心の弱い部分やコンプレックスを
突くのが 得意で、このSSでは幾度も生徒達の心を踏みにじってきた最強のラスボス。強靭な
精神力と 高い医療技術を持つKAZUYAがいよいよ真剣に邪魔になってきており、排除を企む。

7 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/08(日) 22:48:25.58 ID:sgIdvRvl0

テンプレ終わり。投下まで少し待ってください。

8 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 00:12:00.84 ID:6cyapzra0







Chapter.5  疾走する青春の絶望アナフィラキシー (非)日常編






9 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 00:14:42.48 ID:6cyapzra0


「江ノ島はどこだっ?!」


KAZUYAは背中に冷や汗を感じながら、震える声を搾り出した。
切迫した雰囲気が伝わったのか、おずおずと山田と葉隠が答える。


「……そういえばいつのまにかいなくなっていますな」

「トイレじゃねえか?」


江ノ島がいない。

その事実はKAZUYAだけでなく一部の生徒達を震撼させるには十分だった。


(おい、江ノ島だけいないってなんかやべーんじゃねえか? どこ行ったんだ?)


真っ先に江ノ島の正体を看破した桑田が柄にも合わず顔を蒼白させる。


「それってさ、マズいんじゃねーの……?」

「……探しに行くか?」


同じく正体を知る大和田もKAZUYAの顔色を窺っていた。


「どこに行ったんだろ、江ノ島ちゃん?」

「江ノ島さんがいないことに何か問題でもあるのですか?」

「江ノ島君は団体行動が苦手だからな。いなくても別におかしくはないが」

10 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 00:19:27.45 ID:6cyapzra0

後からKAZUYAの派閥に合流した朝日奈やセレス、内通者について知らされていない石丸は
情報量に差があるため、何故こんなにKAZUYA達が深刻な表情をしているかわかっていない。


(事態は一刻を争うが、どこまで話すべきか……)


KAZUYAが逡巡する中、十神がピシャリと言い放つ。


「江ノ島は敵のスパイだ。しかも奴は内通者などという甘い存在ではなく訓練を受けた軍人だぞ」

「えっ?!」

「な……?!」


KAZUYAは驚愕して十神を見たが、十神はフンと鼻を鳴らして逆にKAZUYAを見返す。


「江ノ島君がスパイだと?!」

「ウソでしょ? 江ノ島ちゃんがスパイだなんて。ウソだよね?!」

「本当だ。西城、桑田と大和田を連れて探しに行け。ここは俺達で何とかする」

「……!」


以前の十神なら朝日奈の気持ちを考えずに江ノ島は保健室に向かった、
大神は既に手遅れだと言っていたことだろう。そして二手に別れて戦力を
分散させるより全員で固まっていた方が良いと提案していたはずだ。

だが、人の心を蔑ろにすることはかえってスムーズな解決を妨げると学んだ十神は
必要最低限の情報と指示だけを出した。元々十神は指導者としての才覚を持っていた。
決断力と周囲を動かすことにかけてはKAZUYAより上回っている。

11 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 00:28:13.07 ID:6cyapzra0


(説明はしておいてやる。この場は任せてさっさと行け!)

(――助かる!)


もはや一瞬のアイコンタクトだけで十分だった。


「桑田! 大和田! 行くぞ!!」

「お、おう!」

「ああ!」

「ここはアタシが守ってやっから死ぬんじゃねえぞ!」


ジェノサイダーの叱咤を背に受けながら、弾けるように三人は駆け出した。


(俺がもっと早く手を打っていれば……)


KAZUYAは大神に対して負い目があった。

二度目の裁判の前に、舞園が渡してくれた葉隠のメモ……
今から思えばあれは内通者を占ったものだったのだ。

常に三つのグループに別れた生徒達の名前だが、後に内通したセレスを含め
内通者の三人は必ず一緒の組にならないようになっていた。


(俺がもっと早く気付くか、或いは霧切に解読を託していれば良かった。
 そうすれば早い段階で十神や葉隠の説得に当たれたのだ!)


この事実に気付いたのは最近で、大神が内通者だという事実は最悪の形で露見した。

12 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 00:44:55.95 ID:6cyapzra0

そして大神の――カッターまで飲んで死のうとした姿は、
朝日奈だけでなくKAZUYAの心まで深く傷付けていたのだった。


(頼む! 間に合ってくれ!!)


               ◇     ◇     ◇



多少の躊躇いはあったかもしれない。

感慨にふけっていないと言えば嘘になる。

だが、KAZUYA達がここに来るまではまだ時間があったはずだ。


――なら、何故ナイフを降ろしたこの腕は宙に浮いたまま静止しているのだろう。


「ふーん、意識があったんだ」

「…………」


理解が追いつかないのか、どこかぼんやりとした目で『彼女』は自分を見上げている。


「江ノ島……?」


しかしぼんやりとした表情とは反対に、その大きな右手は戦刃の腕を力強く掴んで離さない。
もはや本能のなせる技だろう。戦刃の発する殺気に無意識に体が反応しているのだ。


「……そうか。もう一人の内通者とはお主のことだったのか」

13 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 00:49:43.26 ID:6cyapzra0


大神は静かに呟くと、ゆっくりとその腕を降ろす。


「あれ? いいの? 流石にこの状況がわからない訳じゃないよね?」

「我を殺すのだろう?」

「そうだけど、別に抵抗してもいいんだよ? 流石にこの状況で負けるつもりはないし」

「構わぬ。お主の好きにすれば良い」

「……死ぬのが怖くない訳?」

「恐れていないと言えば嘘になる。だが、我は過ちを犯した。皆は許してくれないだろう」


「我は“絶望”しているのだ」


「……ふーん、そう」

(見慣れた目……希望の象徴なんて言われてても盾子ちゃんの手にかかればみんなこうなる。
  大神さんも結局はその程度の人間だったんだね。少しだけ残念だよ)


戦刃は刃を構え直した。


「じゃあ友達として、苦しまないように終わらせてあげるのがせめてもの優しさだよね?」


今度こそとナイフを振り上げようとして――





戦刃は斜め後ろに裏拳を放った。

14 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 00:55:23.83 ID:6cyapzra0


「! グッ?!」


カウンター気味に入った一撃を受け、その人物は鳩尾を押さえてうずくまる。


「しぶといね。それとも気絶した振りをしてたの、霧切さん?」

「……………」


不意打ちを防がれ未明の窮地に陥った霧切は、目前の敵を睨みながらギリッと歯を食いしばる。


「まあどっちでもいいや。大神さんだけのつもりだったけど、別に殺すなとは言われてないし」

「江ノ島、さん……!」

(ドクター達が来るまで、時間を稼がなければいけないのにッ!)


頭の回転の速さなら生徒達の中でも上位の霧切だが、交渉の余地のない相手では
その頭脳も活かすことは出来ない。まさしく絶対絶命だった。


(お祖父様……お母さん……)


走馬灯めいて霧切の脳裏に祖父と母の姿が映る。


(……お父、さん)


そして、幼い自分を切り捨て――既に縁を切ったはずの父の後ろ姿が映った。

15 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 01:09:32.90 ID:6cyapzra0


―響子、すまない。


(すまない? すまないって何? 私は一言謝れば済む程度の存在ということ?)


両手が熱い。


(結お姉様……)


五月雨結。

心を閉ざした霧切響子が再び周囲に心を開くキッカケとなった存在。


探偵図書館。


最後の事件。


火傷。

火傷。

熱い。




火傷。


誰にも見せられない――。

16 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 01:15:13.69 ID:6cyapzra0


―絶対綺麗にしてやる。約束だ。


男の顔。

無骨。

不器用。

口下手。




温かい――。



(…………)


(…………)



全てがスローモーションとなる。命を刈り取る刃が迫ってきている。

だがあえて霧切は、“目を閉じた”。


(――まだ約束を守ってもらってないわよ、ドクター?)


意識するよりも先に体がどう動くか理解していた。


「ッ?!」

17 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 01:20:48.58 ID:6cyapzra0


霧切は糸で引っ張られたように不自然なくらい真っ直ぐ後ろに倒れ込む。

受け身なんて全く考えていない。強かに背中を打ち付けて
思わず顔をしかめるが、そんな痛みに構っていられなかった。


(――まだ生きている)


そのまま勢いよくゴロゴロと転がって距離を取る。


「無駄な抵抗はやめなよ。どうせ逃げ場なんてないんだからさ」


戦刃は霧切の予想外の動きに一瞬だけ怯んだが、すぐさま立ち上がった霧切に襲いかかった。


(狙いは真っ直ぐ――首!)


戦刃の持っているサバイバルナイフは厚みのある刃だ。肋骨が邪魔な心臓より
少し掠っただけで致命傷となる頸動脈を狙うのはわかりきっていた。


「このッ……!」

「……!!」


霧切は戦刃の右腕を両手で掴みナイフを寸前で止める。


「大神、さん! 逃げてッ……!」

18 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 01:29:54.36 ID:6cyapzra0

「馬鹿だね。どうして逃げなかったの? そうすれば自分だけは助かったのに。
 仮に大神さんが逃げたって今から自分は死んじゃうんだよ?」

「大神さん!! 今のうちに!! 早くッ!!!」

「無駄だよ。大神さんは絶望してる。いくら叫んだって逃げないしあなたもここで死ぬ」

「…………」


大神はぼんやりとその光景を見ていた。

刃が霧切の白く細い首に食い込む。うっすら血が滲み始めた。


(私だって何故こんな真似をしているかわからない。私はそんな利他的な人間じゃないわ)


父との決着。

霧切家の使命。

まだ何一つ終わっていない。

やりたいこともやらなければいけないことも沢山あって、死んではいけないはずなのに、
死にたくなどないのに、だが体は戦う道を選んだのだ。逃げようとはしなかったのだ。

江ノ島を騙る目の前の女の言うように、逃げるだけなら出来たのに。


(きっと、あなたのせいね)

19 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 01:35:34.26 ID:6cyapzra0


刃が食い込む。


(でも不思議とまるで後悔していない。多分、あなたが私達みんなの希望だから……)


刃が更に食い込む!


(ここで私が死んでも、あなたがみんなを正しい方向に導いてくれる)

(――そうでしょう、ドクターK?)


霧切は確かに微笑んでいた。免れない死がすぐ目の前まで来ているというのに。


(笑った……? この状況でどうして??)


戦刃は何度かこれに近い感覚を戦場で感じていた。
そしてそれは総じて彼女に良くない事態の前触れであり、仄かに寒気がした。










「うおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」


20 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 01:45:38.25 ID:6cyapzra0


ドガッシャアアアアンッ!


「何ッ?!!」


その瞬間、保健室のドアが荒々しく蹴り破られた。

そして男は野獣のごとき太い腕で蝶番の取れたドアを乱暴に掴むと、
何の躊躇いもなく侵入者に向けて投げ飛ばす。


「クッ!」


いくら鍛えている戦刃でもこれに直撃するのは不味いと判断し、即座に後ろに飛び下がった。


ガッシャァァァンッ!!

激しい衝突音と共に、扉が壊れる。


「霧切ィッ!」

「大丈夫か?!」


KAZUYA、次いで桑田と大和田が駆け込んだ。


「きっと……来てくれると思ったわ」


青ざめながらも、男達に向けて霧切は穏やかに微笑みかけたのだった。

21 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/07/09(月) 01:52:42.06 ID:6cyapzra0

ここまで。

霧切さんは覚醒条件満たしてたか満たしてないか覚えてなかったけど、
部屋には入ってるのでセーフってことでこの展開になりました

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 02:22:27.40 ID:BRY84cybO
次回、残姉VSドクターK+2名
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 06:45:17.85 ID:tEY+wDkk0

>>22 絶望的に不利だねぇ・・・かませがさくらちゃんに直接謝罪してくれれば希望を取り戻してくれるかな
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 08:34:44.89 ID:OgBIMorCo
きてた、おつ!
ハラハラする〜〜!
さくらちゃん絶望してても、絶望堕ちはしないって信じてる……
25 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 00:49:44.40 ID:2lixqv+p0


KAZUYAの到着に気が抜けたのか、霧切はその場に座り込む。
少なくとも今は戦える状況ではないだろう。


「大和田、霧切を!」

「おう!」


大和田が霧切を抱えて廊下に連れ出す。
庇うようにKAZUYAは仁王立ちし、戦刃をキッと睨みつけた。


「戦刃むくろ……! もうお前の、お前達の好きにはさせん!」

「それで形勢逆転のつもりなの? 素人が数人来た程度で私を止められると思ってる?」


ナイフをきらめかせて戦刃は目を細めた。


「ちゃんちゃらおかしいね」


戦刃はKAZUYA達を無視して左を向いた。


「…………」


その先にいるのは大神だ。


「しまっ……!」

「フンッ」

「――えっ?」

26 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 00:59:00.40 ID:2lixqv+p0


プシャァァッ……


「え、えっ……?」


―― 一瞬の早業だった。

戦刃は大神を攻撃すると見せかけて高く跳躍し、KAZUYAの右側にいた桑田に切り掛かったのだ。
桑田は咄嗟に後ろに飛びのいて右手で防いだ。超人的動体視力と反射神経の為せる技だったろう。

だが、鋭いナイフはバターのように桑田の右手を切り裂き白い壁に鮮血が飛び散った。


「……あああああああっ?!」

「桑田ッ!」


追撃を受ける前にKAZUYAは桑田の襟首を掴んで後ろに放り投げる。
戦刃はそのままKAZUYAを追撃することも出来たはずだが、あえて一度距離を取った。

焦って万が一の反撃を受けるリスクを避けたというのもあるが、
そこまでする程の敵ではないという余裕の表れでもある。


「桑田ッ?! クソがぁッ!」


霧切を置いて戻ってきた大和田は保健室に常備していた木刀を手に取り構える。
だが、不良の喧嘩とは訳が違うことは大和田もよくわかっていた。

戦刃が持っているのは木刀より遥かにリーチの短いサバイバルナイフである。
にも関わらず、迂闊に切り込めば唯一の武器であるこの木刀が真っ二つにされるだろう。
故に、間合いを確かめながらゆっくりと戦刃の後ろに回り込む。

27 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 01:09:17.59 ID:2lixqv+p0


「挟み撃ちは基本だよね?」


戦刃は至極冷静だった。たかだか素人に毛が生えた人間二人程度、
彼女にとって何の障害でもない。予想外の行動を取りそうなKAZUYAにだけ
注意を払っておけば、大和田一人くらい容易に捌けるだろう。


「クソォォ……」


桑田は既に自分がカウントさえされていないことを察し右手を押さえ呻いた。


「桑田君、利き手をやられちゃったからもう大好きな野球も出来ないね?
 あれ、前は嫌いって言ってたから逆にちょうど良かったのかな?」

「……!」

「テメエッ……!」


明らかな挑発だ。以前の大和田なら今の言葉で飛び込んでいただろう。
だが精神的な成長を積み、冷静な判断力を手に入れた大和田は悔しげに顔を歪めるだけだった。


K(隙がない……それになんというプレッシャーだ)


相手が女、それもまだ高校生だという事実に脅威を覚える。

彼女は誰かが作り上げた生物兵器などではない。ただ才能を持って生まれただけの、
普通の人間だ。今更ながら才能という存在にKAZUYAは自然の畏怖を感じていた。


「来ないなら、こっちから行くよ」

28 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 01:17:29.35 ID:2lixqv+p0


「!」


戦刃がKAZUYAに仕掛ける。今度はフェイントなしの真っ向勝負だ。
下手な小細工を使うよりも、確実に相手側の戦力を削ることを選択したのである。

KAZUYAさえ潰せば問題ない。全滅させることも出来るし、江ノ島の指示を待って動くことも出来る。


「クッ!」


KAZUYAはいざという時のため、アームカバーの下に食堂のナイフなど金属類を仕込んでいた。
それを用いて戦刃のナイフを弾いていなす。狭い保健室に鈍い金属音が響いた。

首、脇腹、手首、大腿……残像が見える程に高速で打ち合っていく。


(少しはやるようになったみたいだね。でも)

「これはどうかな?」


斬撃からの足払いと見せかけた鋭い中段蹴り、KAZUYAは咄嗟に後退するが腹部に掠った。
後ろに跳んだことで威力をある程度殺したはずだが、その攻撃は尚重い。


「グゥッ?!」

「おらあああああ!」


追撃をかけようとしたが、背後から大和田の援護があったため振り向かずに
戦刃は横に跳ぶ。大和田も焦らず再び距離を維持しながら構え直した。

以前だったらここで大和田は仕留められたのに、と嘆息しながらもまだ戦刃は余裕である。

29 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 01:26:37.21 ID:2lixqv+p0

「良かったよ。二人が強くなってくれて。弱いものイジメはしたくなかったからね」

「…………」

「…………」


軽口を叩く戦刃に反し、二人は無言だった。会話をする余裕などない。


「でも私もプロだから、あまり時間はかけられない。――だから、さようなら」

「!!」


息もつかせぬ連続攻撃がKAZUYAを襲う。全身を使いまるで踊るような戦刃の動きは、
KAZUYAと大和田の息の合った連携攻撃すらビクともしない。やられるのは時間の問題だろう。


(こちらからも攻撃しなければ……!)


攻撃は最大の防御とも言う。思えば、KAZUYAはこの期に及んで未だに及び腰だった。


(大和田には殺す気で行かなければ駄目だと大口を叩いたくせにな……
 俺自身、まだ覚悟が出来ていなかった。だが)


視界の端には右手を抑えて呻く桑田の姿があった。白い上着が血で染まっていた。
あの時、KAZUYAが覚悟を決めていたら守ってあげられたかもしれない。

――男はとうとう覚悟を決めた。

30 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 01:34:23.85 ID:2lixqv+p0


(あれは……!)

「フッ!」


戦刃は本能で攻撃をやめ腕を引く。その一瞬後の空気を小さい、
それでいて世界のどんなナイフよりも鋭い刃が切り抜けていった。

KAZUYAは手にメスを持っている――掠っただけで相手の命を奪うメスを。


(この悪寒……間違いない。あのメスは【毒】が塗られてる!)

(俺は医師失格かもしれん。だが、生徒の命を守るためにはもはやこうする他ない……!!)


毒を塗ったメスを両手に持ち、KAZUYAは戦刃の手や足を狙う。流石の戦刃も飛び道具がない以上、
むやみやたらと突っ込む訳には行かず、攻撃の手は緩むが掠り傷すらつけてくれない。

結局趨勢をひっくり返すには至らず、若干の膠着状態となっただけであった。


(クソッ! 俺がもう少し強ければなんとかなりそうなのによ!)


大和田は今までの粗い攻撃から、相手の急所を狙った繊細な攻撃へと転換していたが
所詮付け焼き刃であり、戦刃の反撃に気を付けるのが精一杯である。

こんなことならKAZUYAと一緒に大神から特訓でも受けていれば良かったと歯噛みしたが、
後悔したところで時は戻ったりはしない。今出来ることはKAZUYAの援護をして
けして浅慮な行動は取らず足手まといにならないことである。


一方、桑田は立ち尽くして三人の攻防を眺めているしかなかった。

31 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 01:42:28.79 ID:2lixqv+p0

「ち……くしょう」

(痛てぇ……痛てえよ……)


血が止まらない右手を押さえながら、涙を堪える。大事な右手を傷付けられたことも痛みも
桑田にとっては重要だが、既に自分が戦力外となっている事実が何より辛かった。


(クソッ! クソクソクソッ! なんで……これじゃなにしに来たかわからねえじゃねーか!)


桑田の体格では大神を抱えて待避することも出来ない。かといっておめおめ一人だけ
逃げ帰ることは絶対に有り得ない。自分が囮となって飛び込めば戦刃の意識も一瞬くらいは
逸れるかもしれないが、……その場合、確実に生きては戻れないだろう。

傍観者。

それが今の桑田の非情な立ち位置だった。


(神経は……無事だ。メチャクチャいてーけど指の感覚はある。なにか、なにかしねーと……)


痛みを無理やり押さえつけながら周りを見渡した時だった。彼女と目が合ったのは。


「……!」


壊された扉からは廊下が丸見えであり、そこには未だ動けない霧切がいた。

いや、震える足に鞭を打ち今立ち上がろうとしている。


(お、おいおいおい……まさかおめー……)

32 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 01:49:06.32 ID:2lixqv+p0


「…………」


霧切は無言でコクリと頷く。先程自分が却下した案を、霧切はまさに実行しようとしていた。


(ダ、ダメだろ! 死ぬぞ! せんせーだって喜ばねーだろ、そんなの!)


桑田は血相を変えて顔を横に振るが、霧切の意思は固かった。


(ごめんなさい、桑田君。誰かがやらないといけないの)

(いやいやいや! よせって! 他に何かあるはず! 絶対にっ!!)

(……ごめんなさい)

(や、やめろッ!)


不思議と、声を出さずとも二人の心は通じていた。

このコロシアイという極限状態で、長く苦難を共にしていたからかもしれない。
桑田には霧切の決意が痛い程伝わってきていた。止められないということも。


(いいのか、女に特攻させて?! それでも男か?!)


だが建前とは別に、桑田の脳裏には走馬灯のごとく様々な思い出が浮かぶ。

両親、従姉妹、チームのメンバー達……

33 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 01:55:15.50 ID:2lixqv+p0


やっと素直になれた野球。

初めて努力をした音楽。

共に戦う仲間、親友、そして恩師――


何一つ手放したくない。死んだら全てを失うことになる。


(死にたくねえ……正直死にたくねえ……)


桑田は唇を深く深く噛みしめる。


(俺にはまだ夢が、将来がある。こんなところで終われねーんだ!)


霧切が、壁に手をかけながら立ち上がった。戦刃はKAZUYAのメスと大和田に気を取られている。
彼女が一瞬でも隙を作れば、KAZUYAのメスがたちまち戦刃を斬りつけるだろう。


(これは私にしか出来ない。――さようなら、桑田君。みんな)


悲壮な決意を固めた霧切が駆け出した。


「!」


戦刃が背後の異常に気が付く。

そして――


「う、うわあああああああああ!!」

34 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 01:57:21.03 ID:2lixqv+p0










……桑田は霧切の手を左手で掴むと全力で引き戻した。


35 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/08/13(月) 02:02:49.22 ID:2lixqv+p0

ここまで。

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 15:15:58.00 ID:2gIY5zMkO
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/23(木) 09:49:29.46 ID:oArkndIq0
お願い!死なないで桑田!
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/09/01(土) 10:30:09.84 ID:Kxg0XJfx0
気になるところで…
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/01(土) 23:43:38.15 ID:yzRhRmTk0
まだこれが日常編という恐怖
残姉が銃火器持ってたら本当に殲滅戦になってたんやろなぁ
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/02(日) 09:18:57.80 ID:aZZ82fJl0
殲滅戦っていうか戦いの体にすらならんと思う
装備万端かつ屋内の残姉とかさくらちゃんでもキツいでしょ
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 01:53:37.79 ID:lk1EoBRH0
そういえば、いつのスレか忘れたけど、銃を渡したらただの殺戮になるとか江ノ島も言ってたな
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/15(月) 09:12:52.51 ID:yC7lOaFI0
復活記念age
43 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/10/18(木) 02:41:10.90 ID:fHyjlLB70

生存報告

ツイッターの方にも書きましたが、近日更新します。
とりあえずドラえもんロンパの方は更新しました。

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 18:33:52.30 ID:jJZZSiyBO
乙!
45 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 00:17:07.23 ID:K+hs65Mt0

長らくお待たせしました。

更新再開します!

46 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 00:19:46.48 ID:K+hs65Mt0


「桑、田……くん?!」


何を――?!と言いたいのだろう。霧切が目を見開き驚愕している。


(死にたくねえ! でもそれは霧切だって同じだろッ!!)

「く、た、ば、れええええ!!」


桑田は手の傷が広がることも顧みず、ボールを掴んでフォームを取った。

天を突かんがごとく足を振り上げる絶対のフォーム。幾度も敵のバッターを討ち取ってきた。


「甘いよ!」


だが戦刃の経験は遥かに上だ。手に持っていたナイフをすかさず投擲する。人数的に不利と
感じた戦刃は、即座にターゲットを桑田に変更しそのまま撤退することを選択したのだ。


「!!」

「桑田君ッ!!」


戦刃にとって最優先なのはとにかく生徒を殺害してKAZUYA達に
精神的ダメージを与えることであり、殺害対象自体は誰でもいい。

初期から精力的に動いていた桑田を殺害出来れば戦果としては十分である。
感情のない鋭い瞳が哀れな獲物を捕捉する。


「うっ……!?」

47 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 00:28:44.77 ID:K+hs65Mt0


自分に攻撃が向くことは桑田も予期していた。
たとえ刺し違えても戦刃に打撃を与えられればいいと思っていた。

……だが想いとは裏腹に、思わずナイフを避けて態勢が崩れてしまったのだ。


(あ、倒れる……)


『本能』だった。危険から避けたいという本能。

桑田の決意が弱かった訳ではなく、本当に思わず動いてしまった。
投球という精緻な動きをしていた体は、ほんの少し重心がズレただけであっさり崩れてしまう。

戦刃がこちらに向かってくる姿が瞳に映った。壁に刺さったナイフを回収して
自分にトドメを刺し、場合によっては霧切も殺しながら逃げるのだろう。

――ここで終わりなのか?


(あ、終わった)


桑田は心の中で呟く。

あが、死を目前とした超感覚と言うべきだろうか。
世界が非常にゆっくりとしたスローモーションへと塗り変わっていく。

一コマずつ近づいてくるナイフ。

体勢の崩れた自分の体。

斜めになる視界。

向かってくる戦刃。

獰猛な獣のような目が、今驚きで見開いて――

48 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 00:47:56.02 ID:K+hs65Mt0





俺はな――お前をうちのチームのエースだと思っているんだ。




49 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 00:54:33.92 ID:K+hs65Mt0


「!!!」


いつかKAZUYAに掛けられた言葉が唐突に脳内でリフレインする。

……あれはいつだったか。

初めて学級裁判とオシオキを経験して、酷い悪夢にうなされた夜のことだった。
もう高校生なのに、男なのに、悪夢が怖くて眠れないと情けない弱音を
吐いた桑田に、KAZUYAは優しい言葉を掛けてくれたのだ。


ドクンと、心臓が一際大きく鳴る。
それは一瞬で早打ちドラムのように加速し、目の奥が脈打っているのを感じた。
頭から体中に広がるように、心臓のリズムが全身の細胞に連鎖していく。
全身の毛穴が浮き出すようだ。ビリビリと雷に打たれたように震え……

そして、それは傷ついた右腕にも――





―俺はエース。


―エース。

50 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 00:58:44.04 ID:K+hs65Mt0





超高校級の野球選手




















ヴゥンッ……










―――――――――







51 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:01:34.97 ID:K+hs65Mt0





超高―――――――




52 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:02:12.26 ID:K+hs65Mt0







超高校級の――――






53 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:03:17.80 ID:K+hs65Mt0










超 高 校 級 の エ ー ス ! ! !









54 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:04:13.71 ID:K+hs65Mt0



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



                      超 高 校 級 の エ ー ス


                        桑  田   怜  恩



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


55 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:14:53.05 ID:K+hs65Mt0


「おらああぁあああぁぁあああぁあああぁぁぁッッッ!!!」


――桑田は投げた!!


地面と斜めになり倒れゆく体から無理やり放った投球は、滅茶苦茶だった。

全身の筋肉を力付くで動かしての投球である。いつもの華麗なフォームは歪み、
当然いつも通りのスピードも精度も出ていない。だが桑田は、元よりほとんど練習せずに
己の恵まれた肉体と才能だけで155キロという剛速球を生み出していた。

その桑田がこの閉鎖生活で改心し、空いた時間の多くを練習に費やしていたのである。
今の桑田は通常時なら【時速168キロ】という脅威の球速を弾き出すことが出来る。

体勢が崩れ大幅にスピードが落ちたとはいえ、時速百数十キロの硬球が戦刃に向かった!


(クッ!!)


しかし桑田が天才であるように、戦刃もまた才能に愛された天才であり怪物だった。

桑田が投球を諦めていないことを察知した瞬間から既に回避行動に入っている。
転ぶことも覚悟してわざと大きく体勢を崩した。


「当たれえええああぁぁあああぁああッ!!」

(避けるッッ!!!)


二人の天才の才能が音を立ててぶつかる――!

56 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:16:32.92 ID:K+hs65Mt0


前のめりになりながら戦刃の上半身は床に向かって落ちていくが、
桑田の腕と手の位置から硬球の射線は見切っている。


(……勝った!)


寸での所で戦刃は硬球の射線からズレた。


(ハ、ハハ! 私の勝ちだよ桑田君!!! このくらい避けられなきゃ軍人なんて務まらな……)

「まだ……終わりじゃねえッ!!」

「ッッ?!!」


――有り得ないことが起きた。

完璧に射線から外れた戦刃を追い掛けるように、ボールが曲がったのだ。


(有り得ない有り得ない有り得ないッ!! なんでッ?!!)


戦刃の理解を超えた凶弾は、彼女の右肩に直撃した。


“デッドボール”


――文字通り死のボールである。

57 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:24:04.61 ID:K+hs65Mt0


「ぐ、ああああっ!!」


確かに戦刃むくろは恵まれた肉体の持ち主だが、体格的には特別大きくもないし
大神のように筋肉の鎧を着ている訳でもない。尚且つ、関節は人体にとって弱点である。

減速した硬球は骨を砕くまでには至らなかったが、関節は衝撃で外れ骨には幾許か亀裂を作った。


「ど、うして……?!」

「あら、知らなかったの?」


倒れ込んだ桑田を起き上がらせながら霧切が不敵に笑った。


「桑田君は野球選手なのよ?」

「!!」


ハッと戦刃は桑田の右手を見た。血まみれのその指はいまだ特徴的な形で固まっている。
独自の回転をかけてボールを曲げる技術――変化球。桑田といえば剛速球のイメージが強いが、
超高校級の野球選手である桑田はなんと全ての変化球を自在に投げ分けることが出来た。

戦刃に避けられることは桑田も読んでいたのだ。そうなると右に避けるか左に避けるかの二者択一だが、
当然逃げるなら扉の方向だろう。桑田にとって左側、則ちスライダーボールを投げたのだった。

スライダーは通常オフスピードピッチといい、けして早い球種ではない。
だが桑田の投げるスライダーは、速さもキレも通常のものとは比較にならないのだ。


「年貢の納め時のようだな」

「くっ……」

58 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:33:54.58 ID:K+hs65Mt0


転んだままの戦刃を見下ろしながら、KAZUYAと大和田が囲む。
不用意に近付いたりはしない。何か隠し持っている可能性があるからだ。


「利き手を潰した時点で桑田を戦力外と判断したようだが、残念だったな」


珍しくKAZUYAが勝ち誇った。生徒の活躍が己のことのように嬉しかったのだ。


「桑田はうちのエースなんだ。俺の生徒に足手まといはいない!」

「へへっ……おめー、スポーツ詳しくなさそうだから教えてやるけどさ」


霧切に止血して貰いながら、青ざめた顔で桑田は笑う。


「エースってのは強いだけじゃねーんだ……みんなが辛い時に引っ張って行ったり、
 試合で悪い流れになったらその流れを切り替えるためにいるんだよ……!」


それはあの夜に、KAZUYAが教えてくれたことだった。


「……デビルかっこよかったろ、俺?」

「まだ終わっていない。油断するな」

「もう勝ったつもり? 肩が外れただけなのにさ……」

「動くな、戦刃むくろ。少しでも妙な真似をしたらお前を殺す。俺は生徒達と違って甘くないぞ!」

「…………」

59 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:35:54.20 ID:K+hs65Mt0


脅しではなかった。

もし戦刃が立ち上がったり外れた肩を治せば、KAZUYAは即座に毒のメスで切り掛かるだろう。
半端に情けをかければ生徒が危険に晒されることをKAZUYAはわかっている。


(こいつさえいなければ付け入る隙はあるのにっ……!!)


戦刃は歯がみした。このままでは間違いなく捕虜になるだろう。
そうなれば、最愛の妹である江ノ島に迷惑がかかる。


――『自決』。


その二文字が戦刃の頭に浮かぶ。


(ゴメン、盾子ちゃん……)


どうせ死ぬならせめてKAZUYAを殺して一矢報いたい所だが、利き手をやられ
武器もない今それは厳しいだろう。そうなると、誰を道連れにすべきか。


(西城と大和田君は無理。大神さんは距離がある。なら……)


戦刃は息を整え、獲物を見据える。


(霧切さんを狙えば確実に桑田君が庇う。そこを突く!)

60 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:42:55.53 ID:K+hs65Mt0


桑田は右手を怪我しボールを手放した今、他に武器も持っていない。
油断するなと言われていても、左手のみの戦刃が自分を殺せるとは思っていないだろう。
所詮気を付けろといくら口で言われていても、実戦を経験していない者にわかるはずなどないのだ。


(両目を指で潰し、その勢いで延髄を破壊する。私なら出来る……)


思えば―― 一度殺すと決めたとは言え、やはり元同級生達を残酷な方法で殺すのは
戦刃にも多少抵抗があった。少しでも楽な方法で終わらせてやろうという一滴の情が介在した。

だからこそ大神と霧切を仕留め損ね、桑田からは反撃すら許してしまったのである。
戦刃はその甘さを認め、反省し、今一度神経を研ぎ澄ましていく。


(……何だ?)


KAZUYAは無意識に髪が逆立ち、肌が粟立っていく感覚を覚えた。
それが戦刃から発される殺気が原因だと気付くのに時間はかからない。


「ウアアアアアアアアアアアッ!!」

「戦刃アアアアアアアッ!!」


バネで弾かれたように飛び上がる戦刃、同じように前へ飛び込むKAZUYA。

どちらが早いか――


……だが、両者とも予想だにしない出来事がその時起こったのだ。

61 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/11/09(金) 01:47:27.35 ID:K+hs65Mt0

お待たせしてすみませんでした!

ここまで。

62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/09(金) 12:25:08.63 ID:U70GAmyjO
乙!
桑田やるじゃん!
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/11(日) 03:44:19.29 ID:1ZX5aylDO
んんんんんううう!!!
素晴らしいよ!!!手負いの身で戦刃を仕留めるなんて…
流石超高校級の野球選手…いや、今は超高校級のエースというべきかな?
ああ、ボクみたいなゴミクズがこんな希望に満ち溢れた光景に出会えるなんて身に余る幸運だよ!!!
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 19:17:06.79 ID:0JEPbwqp0
ついに追いついてしまった
アニメ一期しかまともに知らないにわかだけど、[たぬき]クロスのほうで興味惹かれてこっちも読んでます
みんなキャラが立っててすごいなーと思います
これからも更新頑張ってください
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 19:06:38.58 ID:7LLGCkMHO
全部読み返してしまった…やっぱすっごい面白かった。こんな作品書いてくれてありがとう!
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/18(日) 23:09:42.96 ID:YY5rxaUU0
桑田の育成が成功するとこんなヒーローになってしまうんか…
絶対オンナにモテる(確信)
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/22(木) 00:15:03.36 ID:iV8OedZjO
これ覚醒したら他の生徒も肩書き変わるのかな?
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 03:18:47.03 ID:pOrg4zLIO
レオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃんレオンお兄ちゃん…。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/25(日) 00:11:38.08 ID:pHcU40cU0
でもこの桑田、ガールフレンドよりもK先生や野球を選びそうなんだよなぁ…
70 : ◆takaJZRsBc [sage]:2018/12/03(月) 02:46:46.61 ID:2NI7p81X0
>>64>>65
ありがとうございます。体調悪かったりスランプだったりしても
皆さんのコメント読み直して気持ちを奮い立たせて頑張って書いてます

>>67
変わります。一番最初に改心して味方になった桑田がやはり覚醒一番手かなと
もう終盤なので書いちゃうけど、覚醒条件としては親密度一定以上、思い出アイテム、
特殊イベント発生してるかですね。そして、覚醒用のイベントが発生するか

ちなみに霧切さんが覚醒してると撃退は無理でも、無傷で凌いでいたという……
71 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 01:46:40.09 ID:WC6v0Vwb0

ちょっとどころじゃない間があいちゃったけど、
新年一発目の投下だー!

72 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 01:47:39.93 ID:WC6v0Vwb0


「クマアアアアアアアー!!」


『??!』


どちらも獲物を捕らえることなく、二人の目線は闖入者へと注がれた。


「えっ?!」

「モノクマだとっ?!!」


扉を壊された保健室の入り口から大量のモノクマが殺到した。


「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」
「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」


一同が唖然としている中、モノクマの波はKAZUYA達を相手にせず戦刃だけを回収して
撤退していく。一瞬の出来事に思わず茫然とするが、KAZUYAはハッとして叫んだ。


「今がチャンスだ!」


生徒達が未だ混乱している中、KAZUYAはあっという間に保健室の監視カメラを破壊する。


「?!」

「先公っ?!」


いつも理性的なKAZUYAの突然の凶行に大和田達は驚いているが、
丁寧に説明する余裕はない。KAZUYAは最低限の指示だけ飛ばした。

73 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 01:50:27.18 ID:WC6v0Vwb0

「食堂のメンバーをこちらに連れてくる! お前達は篭城の準備をしろ!!」

「えっ?! 篭城??」

「バリケードを作るんだ。ただし俺の机だけは絶対触るんじゃない!! いいな!」

「! わかったわ。行って頂戴!」


霧切の頼もしい返事を背にKAZUYAは駆け出す。


             ・

             ・

             ・


KAZUYAの迅速な決断により、食堂組はスムーズに保健室へと合流することが出来た。

保健室の入り口には霧切の指示の元に大和田が並べた空きベッドや
空になった薬品棚が置かれており、生徒達が中に入ると入り口は封鎖された。


霧切「使うかもしれない薬品だけ急いで抜いたわ。ドクターが綺麗に
    管理してくれていたおかげで時間がかからなくて済んだわね」

K「いい判断だ」


一息つく間もなく、部屋についた朝日奈が叫ぶ。


朝日奈「さくらちゃん!!」


大神が目を覚ましたことに気付くと、朝日奈は涙ぐみながら駆け寄った。

74 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 01:58:51.61 ID:WC6v0Vwb0

朝日奈「目を覚ましたんだね! 良かった……本当に良かったよ……」

大神「…………」


大神はチラリと目線を朝日奈にやるが、すぐに俯いて視線を落とす。


朝日奈「……さくらちゃん?」

K「朝日奈、大神は……」


戦刃と大神のやり取りは見ていないが、大神の様子がどこかおかしいことはKAZUYAも気付いていた。
普段の大神なら仲間を傷つけられて黙っていることなど有り得ないからだ。


霧切「朝日奈さん、大神さんは疲れているのよ。少し前、ここではとてもショックなことがあったの」


霧切は全てを知っているが、余計なことは言わずただ目線で壁の血痕と桑田の傷を示した。


朝日奈「あっ、桑田?! 大丈夫なの?! さくらちゃんも、怖かったんだね……」

霧切「怪我もあるし、今はそっとしてあげた方がいいと思うわ」

朝日奈「……うん。騒いでゴメン」

葉隠「まあ、その……生きてて良かったじゃねえか」


今度は、負傷した桑田に生徒達の注意が集まる。


不二咲「桑田君、怪我したのぉ?!」

石丸「大丈夫かね?!」

舞園「く、桑田君! 手が……!」

75 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:10:18.61 ID:WC6v0Vwb0

桑田「ハハ……神経は無事だから心配すんなって」

苗木「とにかく無事で良かった……」

十神「呑気に会話をしている暇はないぞ。そうだろう、西城?」

K「ああ、事は一刻を争う! お前達の協力が必要だ!」


床に乱雑に置かれた薬品類を避けながら生徒達は奥に進み、KAZUYAを囲むように向き直った。


K「まず、見ての通り保健室から食堂までの監視カメラとモノクマ搬入口は全て俺が破壊した」

大和田「モノクマ搬入口だぁ?」

K「奴の出入り口だ」


KAZUYAは話しながら、机の引き出しを開き学園の見取り図を取り出す。
そこには今までにKAZUYAと霧切が調べあげた情報が事細かに書き込まれていた。

KAZUYAは日頃からカルテや日記など物を書く作業が多かったが、
それはこれらの作業を隠すカモフラージュの意味もあったのである。


セレス「いきなり椅子を投げたり壁を蹴り壊した時は何事かと思いましたわ」

ジェノ「アタシも協力したわよん!」

山田「そ、それにしても大丈夫なんですかこんなことをして……」

葉隠「カメラを壊すのって校則違反だろ? ヤベエんじゃ……」

K「もうそんなことにこだわっている段階ではないぞ! 俺達はコロシアイを終え、
  敵は実力行使に出た。もはやこんな校則で俺達を縛ることは出来ん!」

K「既に黒幕と俺達の戦いは始まっている! わかるな?」

「…………」

76 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:26:39.30 ID:WC6v0Vwb0


ゴクリと生徒達が唾を飲み込む。もはや自分達は後戻り出来ない次のステージへと
来てしまったことを嫌でも自覚したのだ。


十神「フン、望む所だ。むしろ遅すぎたくらいだな」

K「だが勘違いするな! あくまで脱出を最優先事項にしろ。万が一の時は
  俺が黒幕と決着をつけるが、その場合お前達は先に逃げるんだ」

石丸「そんな! ここまで来て引けませんよ!」

大和田「水くせえぞ、先公!」

K「馬鹿者! お前達だけだったら連れて行ってもいいが、怪我人と非戦闘員は誰が守る?」

大和田「あっ……」

K「とにかく時間がない。俺の言う通りにしてくれ! 頼む……!!」

石丸「ク……了解しました」

苗木「僕達はどうすればいいですか?」

K「まずは敵の動きを封じるために一階に残っている全ての搬入口とカメラを破壊する。
  俺が寄宿舎を回るから翔は学園側を頼む。モノクマが来たら破壊して構わん。出来るな?」

ジェノ「お安いご用よん! この殺人鬼にまっかせなさーい!」

K「保健室から食堂までは既に破壊してあるから安全だ。苗木は教室の前の廊下に待機して
  異常があったら大声で俺を呼び戻して欲しい。残りは保健室を死守!」

苗木「わかりました!」

舞園「気をつけてください!」

十神「ここは俺が守ってやる。行け!」

ジェノ「ガッテン!」

77 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:29:46.26 ID:WC6v0Vwb0


……そして、さして時間もかからずに三人は戻ってきた。


朝日奈「大丈夫だった?!」

K「……妨害されるかと思ったが、何もなかったな」

セレス「妙ですわね」

葉隠「きっと仲間が大怪我して慌てふためいてんだろうなぁ」

山田「そういうタイプではないと思いますが……」

十神「フン、楽しんでいるのだろう。俺達とのゲームを」

霧切「そうね。今までの行動を見ていたら、わざと泳がせているように見えるわ」

ジェノ「あ、ヤバ。くしゃみ出そう。ふ、ふぇあっくしょん!」

腐川「な、なに今度は?! 保健室? 解決したの?! 包丁は?!」

朝日奈「……ごめん。もう和解したんだ」

十神「寝ぼけている暇はないぞ。既に俺達は次のステージに来ている」

腐川「は、はぁ……?」

K「ちょうどいい。一度情報共有を兼ねて整理しよう。不二咲、アルターエゴは?」

不二咲「準備出来てます」

アルターエゴ『いよいよなんだね……』


食堂から撤退する時にKAZUYAはアルターエゴを保護していた。
全員が揃ったことを確認し、今まで隠していたことも含めKAZUYAは話し始める。

――ただし、失われた二年間についてはやはり言えなかった。
混乱した生徒達が焦って早まったことをしないか心配だったのだ。

78 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:31:05.50 ID:WC6v0Vwb0

苗木「黒幕は……本物の江ノ島盾子?!」

山田「超高校級の絶望姉妹……?!」

朝日奈「許せないよ。こんなことするなんて!」

セレス「やはり、外が異常事態な可能性は高いのですね……」

葉隠「さ、流石に人類が滅亡してるってことはないよな? な?」

十神「ここの映像は恐らく誰かに放送されている。人類が滅亡している可能性は低いはずだ」

霧切「カムクライズル……初代学園長の名前ね」

石丸「その人物が江ノ島盾子に手を貸す可能性は本当にないのですか?」

K「わからん。ないと思いたいが所詮向こう側の人間だ。信用はするな」

舞園「これからは江ノ島さんと戦刃さんを倒すように動く、ということですか?」

K「可能ならな。だが、俺達の勝利条件は敵の打破ではなくあくまでここからの脱出だ。
  奴等の手のうちから逃れることが出来たらこちらの勝ちと言っていい」

K「俺が本物の江ノ島と会ったのは短い時間だったが、奴は異常だった……
  とても高校生とは思えん何かがある。お前達が対峙せずに済むならそう済ませたい」

腐川「本当に二人だけなの? どうせ、自分が危なくなったら仲間を呼ぶに決まってるわよ……!」

K「俺もその可能性を危惧している。倒すのではなく逃げろと言った理由がそれだ。
  仲間が来たら一巻の終わりだからな。俺達に長期戦の選択肢はない」

不二咲「それまでに全部終わらせなきゃいけないんだねぇ……」

「…………」

山田「戦刃むくろの負傷はどの程度なんです?」

K「肩が外れていた。恐らく骨折もしているだろうな」

79 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:32:20.29 ID:WC6v0Vwb0

葉隠「じゃ、じゃあもう襲っては来ないんだな?」

不二咲「そうなんだね。良かったぁ」


だが、直接戦刃と相対し命のやり取りをした桑田にはそうは思えなかった。

野生の獣じみた殺気、使命に対する異常な執着、豹のような身のこなし……
脳裏に浮かべるだけで、額に脂汗がにじんでくる。


桑田「……いや、あいつバケモンだわ。あの程度ならまた来るかもしれねー。いや、絶対来る」

大和田「骨折っつっても、骨が真っ二つになったんじゃなくてせいぜいヒビだろ?
     だったら、肩ハメ直して痛み止め打てばなんとか動かせるだろ」

K「そもそも次は銃火器を持ち出してくる可能性もある。その前に終わらせなければ……」

葉隠「ヒィィ、どうすればいいんだべ?!」

朝日奈「それをこれから話すんでしょ!」

山田「しかし、一体なにをすればいいのやら……」

K「監視カメラを破壊されたことによって敵はこちらを見失ったはずだ。向こうが
  こちらの様子を知るには直接モノクマを送ってそのカメラで情報を得るしかない」

K「だが、先手を打って食堂と廊下のモノクマ搬入口は破壊した。体育館と
  赤い扉は簡易だが入り口を封鎖してある。ヤツがここに来るには、残り二ヶ所だ」

石丸「二ヶ所? 学園の階段だけでは?」

苗木「もしかして、寄宿舎にあった階段かな?」

桑田「そういえば、そんなのあったな」

舞園「あの奥には何があるんでしょうか?」

不二咲「もしかして、あっちに脱出口があるんじゃない?」

80 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:37:51.96 ID:WC6v0Vwb0

K「その可能性は低いだろう。はっきり思い出せてはいないが学園同様上に向かうだけだったはず。
  三階くらいなら飛び降りても問題ないが、それ以上だとお前達は厳しい」

山田「先生は平気なんですね……」

セレス「ではどうしますか? 篭城戦は篭城する側が不利と決まっていますわ」

十神「何せ奴等の手の内だからな……時間稼ぎをしても撤退は望めないぞ」

霧切「やるべきことは決まっているわ」

苗木「霧切さん、何か考えが?」

霧切「今こそアルターエゴを使う時よ。二階の男子トイレの隠し部屋。
    そこにはネット回線とインターネットケーブルがあったわ」

十神「何?! 何故それを早く言わん! 今すぐそこからクラッキングを……」

K「……それは出来ん」

霧切「どうして! あなたはいつもまだ早いと言ってきたけど、一体いつ使うの?!」


珍しく霧切が声を荒げる。


腐川「ま、待ちなさいよ……先生が反対するからには何か理由があるんでしょ」

石丸「そうだぞ。怒るのは理由を聞いてからでも遅くはない」

K「当然理由がある。俺だって出来ることならそうしたい所だ」

K「だが出来ない……」


KAZUYAは電子教員手帳を出す。名前が違うだけで機能は生徒達の電子生徒手帳と全く同じだ。

81 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:41:16.74 ID:WC6v0Vwb0

K「これを見て欲しい」

苗木「学園の見取り図ですね」

不二咲「何かおかしい所でもあるんですか?」

K「よく見ろ」

十神「ム……?」

葉隠「なにかわかったんか?」

十神「何故隠し部屋が見取り図に載っている」

大和田「ハァ?」

桑田「なに言ってんの、おめー?」

不二咲「あれ? 言われてみれば……」

朝日奈「えっと、私は男子トイレに入ったことないからよくわからないんだけど」

腐川「普通はそうでしょ……」

苗木(霧切さんは入ってるんだよな、それが……)

セレス「この部分のことでは?」

朝日奈「えーっと……あ、本当だ! 気付かなかったけど、なんか不自然な空間がある」

山田「そりゃ部屋があるんだから見取り図にも描いてあるでしょう」

石丸「うむ。この見取り図が正確なことはよくわかったな!」

大和田「で、なにがおかしいんだ?」

苗木「いや、十神君の言う通りだ……!」

舞園「隠し部屋って隠してある部屋のことですよね? 地図に記載してあったら
    それは隠し部屋にはならないのではないでしょうか?」

82 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:42:55.21 ID:WC6v0Vwb0

桑田「あー、確かにな」

葉隠「バレバレだべ」

K「で、この地図を用意したのは誰だ?」

「!」

不二咲「この電子生徒手帳はモノクマが用意したもの……!」

セレス「まさか、罠……?!」

K「部屋には本棚があった。埃の跡からして、中に何かしらの資料が入っていたのは
  間違いないが、全て持ち去られている。黒幕の手によるとしか考えられん」

K「霧切、お前の推理力なら当然わかっているだろう? あの場に行く危険性が」

霧切「…………」

K「そして理由はもう一つある。隠し部屋の位置だ」

K「狭い男子トイレの更に一番奥……こんな所で敵の襲撃を受けたが最後、俺達は袋の鼠だ」


「…………」


山田「ぜ、全員でまとまって行くのはどうでしょうか?
    それで今みたいに篭城すればいいんじゃないですか?」

大和田「そうだ! 戦刃が来る前に、俺と先公で守りながら行けば……」

83 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:44:34.78 ID:WC6v0Vwb0

K「移動中に襲われたらまだ反撃出来る。だが男子トイレにぎゅうぎゅうに
  詰まっている状態を襲撃されたらどう迎撃するんだ?」

K「あそこは狭い。小柄なモノクマの方が有利だ」

大和田「言われてみりゃあ、そうか……」

K「何より一番最悪なのは待ち伏せだ。外と中から挟み撃ちになればどうしようもない」

桑田「じゃあ……手をこまねいて見てるしかねーってことか?」

石丸「そんな! ここまで来て……!」

K「怪我人が何人もいる。無理は出来ない」

腐川「あ、あんまりだわ! 寄宿舎は行き止まり、隠し部屋には行けないなんて!」

十神「フン……江ノ島め。こうなることを見透かして手を出さなかったな……!」

セレス「打つ手なしですか……」

大和田「そ、そうだ! なら、いっそのこと打って出るってのはどうだ?」

苗木「どういうこと?」

大和田「戦刃は流石にまだ動けねえだろ。だったら江ノ島一人制圧しちまえば俺達の勝ちだ」

十神「成程。攻撃は最大の防御という。単純だが確実性のある手段だな」

84 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:50:14.48 ID:WC6v0Vwb0

朝日奈「いいね! あれこれ悩んでるよりよっぽどいいよ! みんなで力を合わせてやっつけちゃおう!」

葉隠「おう! 殴り込みだ! 先制攻撃だべ!」

石丸「行こう! ……で、江ノ島盾子はどこにいるのだ?」

「あ……」

セレス「呆れました。敵の居場所もわからずに攻撃に行くと?」

朝日奈「でも、KAZUYA先生は当然知ってるんだよね? 会ったことあるんだし」

K「…………」


KAZUYAは沈黙した。あからさまに怪しい場所はあるが、確証がない。

……つまり、彼等はこの段階になっても未だに敵の居城すらわかっていなかったのだ。

85 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 02:51:54.30 ID:WC6v0Vwb0

ここまで! 昨年はお世話になりました。

今年もよろしくお願いします!今年中には正規エンディングの一つにはたどり着けるかも?

86 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/01/01(火) 03:04:35.90 ID:WC6v0Vwb0

あ、そうそう。遥か昔に書くと言っていたロンパ×笑う犬の
アヤカ追加verを書いて投下しといたので、こちらもよろしく!

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269303/
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 22:21:22.56 ID:q8jEzYcnO
腐川…あの状況から元に戻ったのに意外と冷静だな、まあ集団(自分も含め)で十神を殺人未遂しようなんて事知ったら確実にパニクるなww
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 05:20:03.78 ID:xpmHU79EO
気になったんですけど残姉の負傷度って固定なんですか?
例えば桑田の能力がもっと高かったら右肩完全粉砕で大和田とかでもタイマンで倒せるレベルまで弱体化するとか
逆に桑田の能力が今より低かったらこのイベントで重症者が出るとかっていう事はないんですかね?
89 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 01:25:09.79 ID:i4ZHJSM30

山田「え? 知らない……? いやいやいや、そんなはずは……」

舞園「本物の江ノ島さんと会ったんですよね?」

K「俺が奴と会ったのは五階の教室だ。奴がどこに潜伏しているかまではわからん」

苗木「そんな……」

桑田「勘弁してくれよ……」

霧切「潜伏場所はわからないけれど、その可能性の高い場所はわかるわ」

大和田「おっ、マジか!」

十神「ちょっと考えればわかるだろう」

石丸「十神君もわかっているのかね?!」

葉隠「もったいつけずに言えって!」

霧切「この建物は五階で、現在入れない場所は二ヶ所」

不二咲「学園長室と情報処理室がまだ開いてないね」

腐川「わ、わかったわ! 学園長室でしょ? モノクマはこの学園の学園長を名乗っているものね!」

十神「惜しいな。お前にしては冴えているがまだ足りない」

腐川「お、惜しい?! 白夜様に褒めてもらえた?!」

十神「確かに学園長室は怪しい。だがその気になれば簡単に破壊出来る貧弱な扉だ。
    そんな所に潜伏して、もし俺達が攻めてきたらどうする?」

大和田「敵は一人だ。あっという間に制圧出来ちまうな」

霧切「不自然にガードの固い場所があるでしょう?」

セレス「情報処理室ですね」

90 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 01:26:40.16 ID:i4ZHJSM30

十神「見た所あの扉の鍵は特別製だ。扉自体も頑丈。黒幕が潜伏するにはお誂え向きだな?」

朝日奈「じゃ、じゃあ情報処理室に?!」

セレス「その可能性は高いでしょうね。今だから言いますが、実はわたくし……
     あの部屋の中に入ったことがあります」

「?!」

K「何っ?!」

セレス「はい。モノクマさんと内緒の話をした時、特別に入れてもらいまして」

十神「何故もっと早く言わん!」

山田「そうですぞ! 何で黙ってたんです!」

セレス「黙っていたといいますか、言うタイミングがなかったのですわ。仮に黒幕が
     潜伏していたとして、皆さん戦いに行く流れではなかったでしょう?」

石丸「ま、まあそれどころではなかったのは確かだが……!」

苗木「だからって普通はもっと早く言うでしょ!」

K「本当に食えん奴だな、お前は……」

セレス「フフ、褒め言葉として受け取っておきますわ。恐らく、大神さんも入ったことがあるはず」

朝日奈「さくらちゃん……?」

大神「そうだな。何度も入った。……我は内通者であったが故に」

霧切「中には何があったの? 本物の江ノ島さんには会っていないのね?」

セレス「ええ。あくまでモノクマとしての姿でした。……紙とペンはありますか?」


セレスはその時のことを思い出していた。

91 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 01:48:19.72 ID:i4ZHJSM30


『まま、座って座って。お茶でもどうぞ。君はロイヤルミルクティーしか飲まないから
 特別にボクが用意したよ。感謝してよね!』

『…………』ズズッ


出された茶を楽しむ振りをして、セレスは注意深く室内を観察していた。
受け取った紙に、その時の記憶を基にして情報処理室の内容を描いて行く。


セレス「広さはさほどありませんわね。保健室よりも狭いですわ。
     壁の一面にモニターがあり、監視カメラの映像が映っていました」

十神「……フム。そこから学園を監視していたのか。黒幕の潜伏場所で間違いないようだな」

霧切「モニターはいくつあったの?」

セレス「正確な数は覚えていません。20、いえ30くらいはあったはずです」

霧切「画面はどうだったか覚えてる? 同じ場所を固定で映してるとか、順番に切り替わっているとか」

セレス「基本的にわたくし達がいる場所とその周辺を映していましたね。手動では大変でしょうし、
     カメラにセンサーでも付いていてオートで映しているのではないでしょうか?」

K「中央のこれはなんだ?」

セレス「それはよくわかりません。モノクマのイラストが描かれた壁……いえ、扉ですか?」

霧切「その奥には行っていないのね?」

セレス「ええ。あくまで情報処理室の中のみです」

舞園「大神さんもですか?」

大神「……ウム」

K「モノクマを操作するための装置は何かあったか?」

92 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 01:52:25.37 ID:i4ZHJSM30

セレス「そのようなものは見当たりませんでした。違う場所で操作しているのでしょうね」

不二咲「怪しいのはモノクマの扉かなぁ?」

十神「そこか、学園長室のどちらかだろうな。正確には寄宿舎の上も見てはいないが、
    監視場所が情報処理室である以上その付近でなければおかしい」

苗木「寄宿舎に潜伏してたら、情報処理室に移動する時僕達に見つかるもんね……」

十神「上の階の監視カメラは破壊していない。奴は今頃、情報処理室で
    目を皿のようにして俺達の動向を見ているのだろう」

大和田「場所はわかった。後は殴り込むだけだな」

桑田「じゃあ早速行くか? 俺はちょっとムリそーだけど……」

K「……俺は反対だ」

葉隠「またか! さっきから反対しかしてねえじゃねえか!」

苗木「先生……慎重なのもわかるけど……」

K「確かに俺は慎重過ぎるのかもしれん。だが、情報処理室が敵の本丸なら
  当然向こうも相応の準備をしていると思うのが普通じゃないか?」

霧切「例えば?」

K「二階の更衣室の扉には機関銃が付いていたな? あんなどうでもいい場所に
  設置出来るということは、簡単に調達出来るということだ。もし江ノ島が
  情報処理室の中に同じように銃器を用意していたらどうする?」

「……えっ」


KAZUYAの質問は生徒達にとって予想外だったらしく、思わず固まった。

93 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 01:57:04.24 ID:i4ZHJSM30

朝日奈「倉庫にヘルメットがあったよね? それで防げないかな?」

大和田「俺達ゾクがよくやるのは分厚い雑誌を体に巻き付けて防具代わりにすることだな」

十神「馬鹿を言うな……あれはミニガンだぞ……本来は武装ヘリに取り付けるような代物だ……」

K「通常の拳銃でさえ十分危険なのにそれを上回る殺傷力の機関銃……
  もしそんなものが置いてあったら、束で行けばどうにかなるほど甘くない」

山田「どうにか……なりませんかね?」

K「銃弾が避けてくれるのは映画やドラマの中だけだ。残念だが……」

山田「そ、そんなぁ……」

舞園「では、どうすればいいんですか?」

不二咲「やっぱり、アルターエゴで内部から制圧するしかないんじゃないかな……」

石丸「それが最善だと思うが……」

舞園「でも、待ち伏せの可能性もあるんですよね……」

朝日奈「で、でも百パーセントじゃないよね?! 意外と、行ってみたら何もないかもしれないし」

葉隠「よ、よし! ここは一つ俺が占ってみるか!」

腐川「やめなさいよ……良い結果が出ても悪い結果が出ても縁起悪いじゃない!」

葉隠「あんまりだべ!」

霧切「それで……あなたはどうしたいの、ドクター?」

十神「そうだな。反対するばかりで対案がない。何か意見はないのか?」


全員の視線を受けながら、KAZUYAは俯いた。

94 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 01:58:34.28 ID:i4ZHJSM30

K「実を言えば……ない」

苗木「な、ないってそんな?!」

桑田「ウソだろ……せんせーならいつもビビッとナイスな案出してるじゃんか!」

K「今回に限っては本当にないんだ……どの選択肢もリスクなしには選べん。
  だが、ここで篭城していれば事態が好転する訳ではないこともわかっている……」

K「……だから、もしお前達がどうしてもアルターエゴを使うというのなら、
  もう俺は止めん。ただしその場合は俺一人で行く」

石丸「な、何故ですか?!」

桑田「ハァァァ?! いまさらそれはねーだろ!」

山田「全員で行けばいいじゃないですか!」

K「さっきも言った通り、男子トイレの中は狭い。お前達がいれば足手まといだ。それに、
  もし待ち伏せされていたら中に入った人間は生きて戻れるかわからない。文字通り特攻となる」

大和田「だったら今まで散々迷惑かけた俺に行かせろや! チキンレースは今までだって
     やってきたんだ! 今こそ俺が行くべきだろ! 医者がいなくなったら困るだろうが!!」

K「気持ちは有り難い。だが……」

大和田「いつまでもガキ扱いしてんじゃねえ!! この土壇場で俺達は対等じゃねえのかよ!
     医者とゾク、どっちが生き残るべきかなんてそんなの小学生でもわかる。ケガ人もいるしよ!」

石丸「兄弟! そんな、人の命に優劣なんて……!」

大和田「黙っててくれ! 先公がいなきゃ誰が治療すんだよ!」

石丸「それは……」

K「……大和田よ」

95 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 02:01:27.17 ID:i4ZHJSM30


KAZUYAは目を閉じて呟く。


K「普段の俺ならお前の心意気を買った所だ。みんなのために危ない橋を渡って貰ったかもしれん」

大和田「じゃあ、今はなにがダメだってんだ……!」

K「残念だが、お前は俺より弱い」

大和田「!!」

K「だからより成功率の高い俺が行くと言っているのだ。俺だってみすみす死にに行く訳じゃないさ」

大和田「…………」

K「卑怯かもしれないが、これからどうするかはみんなで決めてくれ。俺はお前達の意見に従う」

苗木「そ、そんな……」

舞園「死ぬかもしれない場所に先生を送るかってことですよね……?!」

不二咲「い、嫌だよ……他に何か方法は……」

朝日奈「もし情報処理室の中に銃があったとしても、みんなでなんとか出来ないかな?!」

山田「ね、熱膨張で弾が出なくなったりとか……」

十神「馬鹿か。近付く前に全員蜂の巣にされるだけだぞ……」

桑田「オートはジャムりやすいって漫画で読んだことあるけど……」

腐川「そうなる前にあたし達はミンチでしょうね……」

十神「小型のハンドガン程度ならともかく、ミニガンやマシンガンは砂漠やジャングルで
    使うことも想定されて作られている。ちょっとやそっとで壊れるものか」

葉隠「もういっそのこと白旗あげてみんなで降参しちまうか?!
    土下座して命ごいしたら命だけは助けてくれるかもしれねえ!」

96 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 02:04:58.50 ID:i4ZHJSM30

山田「悔しいけど……それもありっちゃありですよね」

霧切「こちらの話を聞いてくれるかしら? 今までに得た情報から鑑みるに、
    江ノ島盾子は異常者だわ。交渉が失敗したらその時点で終わりよ」

不二咲「助けるって言って今より酷いことをさせられたらどうしよう……例えば、
     この中の何人かを生け贄にすれば助けてくれる、とか……」

腐川「そ、そうよ! あいつがあたし達に強要したことって要はそれでしょ?!
    無事に解放なんて有り得ないわ! どうせ条件を変えてまたコロシアイをさせるわよ!」

苗木「それは、確かにありそう……」

舞園「江ノ島さんに直接会ったことはありませんけど、今までのモノクマの
    発言を見ていたら十分有り得ると思います……」

山田「リアルバトルロワイアル……最後の一人になるまでコロシアイ……」

桑田「冗談じゃねえ……なんのためにここまで頑張ったんだよ……」

石丸「白旗は最後の手段にしよう! まだ何か手があるはずだ!」

葉隠「そう言われても……何もないから困ってんだって!」

K「だから俺達は選ぶしかない。男子トイレの隠し部屋、情報処理室――そして学園長室だ」

苗木「え? 学園長室?」


予想外の言葉に生徒達はさざめく。


十神「学園長室か……確かに普段なら江ノ島が潜伏していた可能性はある。だが、
    俺達が討って出る可能性もあるのにモニターから目を離しているとは思えんな」

霧切「江ノ島盾子は監視カメラでいつ私達が出てくるか今か今かと待っているはずよ。
    可能性が高いのは情報処理室だと思うわ」

97 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 02:10:58.99 ID:i4ZHJSM30

K「そうだ。確かに江ノ島がいる確率は限りなく低い……だからそれ以外の物を探す」

苗木「それ以外って?」

K「俺にもわからん。何もないかもしれん。奴の性格を考えたら
  もぬけの殻になっていて苦労した俺達を嘲笑う可能性の方が遥かに高い」

K「ただ、江ノ島は常に卓越した頭脳で俺達の行動を読み、その上を行ってきた。
  今回も俺達の行動を読んで隠し部屋に向かうと思っているはずだ」

十神「だからこそあえて裏をかく。無駄に見える選択肢を選ぶ、と?」

K「もしかしたら……そこに油断があるかもしれない。何か、一つでも
  小さな手がかりがあれば……今のこの状況をひっくり返せるかもしれん」

K「……という、俺の希望的な観測だ。根拠は何もない」

「…………」


誰かがため息をついた音が聞こえた。


K「結局の所、強行軍になるのは隠し部屋と変わらん。どうするかはお前達で決めてくれ」

霧切「待ち伏せの可能性が低いだけで、移動距離を考えたらリスクは変わらない……」

山田「そもそも二階より上はトラップだらけで足を踏み入れた途端にドカン!はないですよね……」

K「トラップはあるかもしれないが、大規模なものはないだろう。奴は俺達に絶望を
  味合わせるのが目的だ。一気に皆殺しにはせず、一人ずつ殺していくつもりのはず」

K「そうでなければ戦刃に銃火器を渡してさっさと殲滅しているはずだからな」

葉隠「本当にえげつねえヤツ等だべ……」

98 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 02:18:03.99 ID:i4ZHJSM30

桑田「で、どうするんだ?」

舞園「二階は……確かに危ないかもしれませんね。現在最有力な手段ですし。学園のシステムを
    掌握されたら向こうも困りますから、絶対に何か手を打っていると思います」

朝日奈「そういう意味だと情報処理室も制圧されたら不味いし、何もないってことはないよね……」

腐川「で、でも学園長室はムダ足になる可能性が高いのよね? 江ノ島の警戒は薄いかもしれないけど」

セレス「無駄足になるというか、現状無駄足そのものですわね」

石丸「難しい決断だ……どれがいいともいえない……」

不二咲「四階は距離もあるしね。エレベーターとかですぐに移動出来たらいいんだけど……」

苗木「生き残れそうなのはどれですか?」

K「学園長室だろうな……さっき大量のモノクマが現れたが、普段と動きが
  違っていた。恐らく江ノ島が直接操っていないものは簡易AIなのだろう」

大和田「さっきは驚いて何も出来なかったけどよ、あいつらそんなに強くなさそうだったな。
     数が多いと厄介だが、逃げながら戦えばある程度は持ちこたえられそうだぜ」

十神「焦って戦力を消費するよりは情報処理室の制圧法を考える方がよほど現実的だと思うがな。
    敵の居場所はわかっているんだ。重火器を突破する方法さえあれば勝機はある」

山田「まあ、その方法が浮かばないから悩んでるんですけどね」

「…………」


議論は再び振り出しにもどってしまった。

99 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/02/06(水) 02:20:15.31 ID:i4ZHJSM30

ここまで。長く続いた会議回ですがそろそろ話動きます。

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/06(水) 07:52:39.77 ID:dECBt/J3O
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/09(土) 09:11:33.79 ID:F6MdzFJ+o
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