江ノ島「明日に絶望しろ!未来に絶望しろ!」戦刃「…終わりだよ、ドクターK!」カルテ.8

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178 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/09/11(水) 01:44:29.51 ID:HATRucof0

石丸「こう見えて剣道三段だ! ムッ?!」

大和田「どうした?!」

石丸「一番弱そうな目を突いたのだが、一撃で沈んだ。弱点かもしれない!」

大和田「なんだと!」

霧切「目にカメラが仕込んであるはず。弱点の可能性は高いわ!」

石丸「また情報が増えたな!」

モノクマ「ムキー! さっさと倒れろ、オマエラー! ていうか、なんで学園長室なんだよ!
      フツー隠し部屋か情報処理室でしょー! バカなの?!」

大和田「うるせえ! んなの、俺達の勝手だろうが!!」

モノクマ「へヘンッ! どうせこんな所、なんにもないのにさ! バーカバーカ!!」


一見呑気に話しているようだが実際はそんな暇はなく、モノクマの数は徐々に増えていく。


石丸「霧切君、あまり時間が……!」

霧切「わかっているわ!」


霧切はピッキングを諦め、爆薬をセットした。爆破して、引き出しの中身を取り出す。


霧切(これは……!!)


最後に本棚やソファの付近を入念に調べた。


大和田「霧切、まだか?!」

霧切「終わったわ!」

179 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/09/11(水) 01:48:56.81 ID:HATRucof0

大和田「よっし! 二人共乗れっ!」

石丸「行けるかね?!」

大和田「突っ切るんだよ!」

モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」
モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」
モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」
モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」モノクマ「クマー!」


ギャリリリッという音を立てながら、バイクは学園長室から出た。


戦刃「待機してろって言われたけど、盾子ちゃんは私が守る!」


情報処理室から出た戦刃がナイフを構えて仁王立ちになるが……


大和田「あーばよー!!」

石丸「さらばだ!」

霧切「フッ」ファサッ


彼等は戦刃を相手にしないでそのまま三階へ走って行った。


戦刃「……あれ? え???」


廊下にはポツンと取り残された戦刃むくろただ一人。


戦刃「なんだったんだろう……??」

180 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/09/11(水) 01:52:26.29 ID:HATRucof0

             ・

             ・

             ・


その後もしつこくモノクマが攻めてきたが、バイクに乗った超高校級の暴走族を止められるはずもなく、
あっという間に一階まで戻ってきた。一階ではKAZUYA達が待機しているためモノクマもいない。


K「戻ったな?!」

大和田「戻ったぜ!」

石丸「生きて戻って参りましたぁ!」

苗木「良かった! 三人共無事だね!」

朝日奈「あー、怖かった」

十神「早く入れ! バリケードを戻すぞ!」


慌ただしく三人を受け入れ、再び保健室は籠城の構えに入る。


桑田「で、なんか収穫あったか?」

山田「出来れば武器とか望ましいのですが!」

霧切「残念だけど、武器のたぐいはなかったわ」

葉隠「マジかー。期待してたんだけどな」

腐川「まあ、学園長室だものね……ある方がおかしいわよ」

不二咲「本当に何もなかったの?」

181 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/09/11(水) 02:00:00.79 ID:HATRucof0

霧切「収穫はあったと思う」

舞園「本当ですか?!」

セレス「見せてくださいな」


霧切はリュックを降ろし、中身を取り出していく。


K「これは、書類か」

霧切「戦刃むくろのことが書いてあるわ。新入生名簿によ」

苗木「本当だ! 江ノ島盾子との関係も書いてある」

十神「フェンリル出身だと……?! あの最凶の傭兵団か」

大和田「知ってるのか?」

十神「当たり前だ。裏の世界に通じている人間でその名を知らん者はいない」

朝日奈「あの子、そんなに危険な相手だったんだ……」

K「もっと、早く調べるべきだったか……江ノ島が戦刃だと早めに看破できたら打つ手もあった」

桑田「他にはなんかねーの?」

霧切「書類ね。人類史上最大最悪の絶望的事件についての詳細……」

十神「またそれか。うんざりする」

不二咲「世界各地でテロが頻発……」

舞園「ですが、そんなこと私達の誰も知りません……」

大神「……一体何が起こったというのか」



K「――実は、俺はぼんやり思い出してきた」

182 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/09/11(水) 02:02:59.21 ID:HATRucof0


「えっ?!」


とうとうKAZUYAは切り出した。まだ真実全ては言えないが、部分的になら明かしてもいいだろう。


K「お前達、集団ヒステリーという言葉は知っているな?」

苗木「知っていますが、まさか……」

K「集団に対して同時に極端な不安やストレスがかかった場合、全員がパニック症状を起こしたり
  妄想に囚われることが時としてある。……俺達も今、その状態なのかもしれない」

十神「馬鹿な! そんなことが……!」

K「ないと言い切れるか?」

十神「…………」

K「例えば東京で大規模なテロが発生し、お前達希望ヶ峰の新入生は学園に保護された。
  だが、その際に極度のストレスで記憶障害を発症。そこを江ノ島盾子につけこまれたとしたら?」

苗木「筋が通ってる……!」

大和田「おいおいおい、マジかよ……」

葉隠「い、いや、いくらなんでも突拍子もなさすぎるって……」

山田「信じられない。信じたくない……」

霧切「通常の精神状態ならムリでも、記憶障害を起こしている時に催眠術でも使えば……」

セレス「だから、図書館にあった新聞などは未来の日付けだったのですか?」

桑田「お、おいおい。あれ、結構未来のがあったぞ。流石に作りもんだろ、あれは……」

舞園「……先生は知っていたんですか? だから、脱出に消極的だったんですか?」

183 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/09/11(水) 02:05:18.36 ID:HATRucof0

K「すまない。俺もはっきりとは覚えていないんだ。だが、世界各地でテロが起こっていたのは思い出した」

石丸「では、少なくともその書類に関して言えば本物という訳か……」

腐川「なんか……脱出する気が失せるじゃない……」

十神「ハッ! テロがなんだ! だったら尚更十神家当主のこの俺がこんな所に
    引っ込んでいる訳にはいかん。他に見つけたものはないのか?」

霧切「……最後に、これを」

苗木「鍵?」


霧切が出したのは、キーヘッドにモノクマの飾りがついた鍵であった。


朝日奈「えっと……それだけ?」

霧切「ええ」

葉隠「か、鍵一本って?! あんだけ危ないことして手に入ったのがこれだけか?!」

山田「宝の鍵ならいいですけど、宝箱はないですもんね……」

セレス「そもそもこれはどこの鍵なのでしょう?」

不二咲「まだ開いてない所だよね、きっと」

大和田「まさか、学園長室の鍵じゃねえよな?」

霧切「この鍵は、鍵のかかった引き出しに入っていたわ。つまり、モノクマにとって重要なものよ」

舞園「重要な鍵と言いますと……」

K「――マスターキーか?」


ザワッと生徒達が騒ぎ始めた。

184 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/09/11(水) 02:10:37.33 ID:HATRucof0

ここまで

今週は暑いけど最近は比較的涼しくなってきたのでやっと体調が安定し、
モチベも回復してきました。ただ、一次で大事な締切があるため、相変わらず
更新はやや遅め。ゆっくりお付き合いください


>>175
最近気づいたのですが、Twitterで告知してもタイムラインが流れるんですよね……
はっきりこの日に更新する!て決まってる時は事前に一回予告した方が良いのかもですね

185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/09/12(木) 02:07:06.85 ID:viYKP4XtO

そろそろ乗り込むか?
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/13(金) 13:00:44.85 ID:xUT2iWMoO
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/01(火) 01:24:44.43 ID:JjSawN1XO
リアタイはなかなかできないけど更新待ってる
188 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 22:44:18.07 ID:c8x6QoJY0

桑田「ちょ、マスターキー? それって全部開けられるってことか?!」

朝日奈「情報処理室も開けられるのかな?!」

苗木「あと、僕達が行ってないところってどこだろう?」


騒ぐ生徒達をKAZUYAは手で制し、霧切を見つめる。


K「霧切、その鍵を俺に預けてくれないか? 試したい場所がある」

霧切「倉庫の横の階段ね?」

K「ああ、寄宿舎の二階。脱出に決定的なものはないかもしれないが、
 今回のように何らかのヒントがある可能性がある」

十神「では、また探索チームを作るか」

K「いや……まずは俺一人で行く」

大和田「ハァ? なんでだよ。俺が行けば早いぜ?」

K「機動力がある大和田はここに残って万が一保健室が襲われた場合、俺を呼びに来て欲しいんだ」

霧切「私も駄目なのかしら?」

K「食堂と違って、保健室との距離が長い。俺一人だったら戦いながら
  逃げて来れるが、誰かを庇いながらだと厳しい」

石丸「で、でしたら僕が行きます! 自分の身くらい守ってみせます!」

十神「俺も行くぞ。あそこは前から気になっていたんだ。この目で見てやる」

朝日奈「危ないのなんてみんな承知だよ! さっきだって、みんなで探索したしさ!」

K「…………」

189 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 22:50:39.62 ID:c8x6QoJY0


距離が長い、危険だからなどというのは単なる言い訳に過ぎなかった。

KAZUYAは思い出していたのだ。寄宿舎の二階には自分や学園長の私室があったことを。
……すなわち、生徒達に見られたら不味い物がある可能性があるのだ。


K「俺達が学園長室に突入したことで、江ノ島側はもういつ仕掛けてくるかわからない。
  保健室を守りつつ早急に探索しなければならんのだ。頼む、わかってくれ」

苗木「うーん、先生がそこまで言うなら……」

舞園「そうですね。もう、いつ攻めてくるかわかりませんからね」

霧切「本当に、それだけ?」


霧切が疑い深くKAZUYAを見つめる。KAZUYAは頷いた。


K「ああ、“それだけ”だ……!」

霧切「…………」


霧切は明らかに納得していなかった。だが……KAZUYAの言葉を信じ、鍵を渡した。


霧切「絶対に、戻ってきて頂戴」

K「ああ!」


――彼等は知らなかった。

今この瞬間に、大いなる運命の分岐点が迫っていたことを。


K「そうだ。俺がいない間、モノクマに気を付けてほしい」

190 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:00:33.68 ID:c8x6QoJY0


去り際に、KAZUYAは振り返って、生徒達に注意を促す。


K「奴め、本当に狡賢い奴だからな。いきなり攻めてくるのではなく、
  なんらかの策を使ってくるかもしれない。奴の言葉に耳を傾けるな」

K「――決して」


そう言い残すと、KAZUYAはマントを翻して保健室から出て行った。



               ◇     ◇     ◇


KAZUYAがいなくなった保健室には妙な緊張感があった。

先程も、階段の前にバリケードを作りに行っていたが、その時は他の生徒も出払っていたため、
今より慌ただしい雰囲気であった。全員が揃っていて、KAZUYAだけがいない。

その空気が、なんとも言えない寂しさと不安をもたらすのだ。


「………………」


生徒達は気まずげに視線を合わせては苦笑する。

社交性の高い苗木が、なんとか場を持たせようと立ち上がった。


苗木「あ、はは。なんか……落ち着かないね」

朝日奈「そうだね……」

191 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:11:10.02 ID:c8x6QoJY0

舞園「西城先生は本当に存在感が大きいから……」

桑田「体も大きいしな」

「ハハハ……」


ガタッ!!


「?!」


突然バリケードの外で音がした。


不二咲「ヒッ……?!」

大和田「お、おいおい……戻ってくるの早すぎだろ……」

十神「何をしている! 早く武器を持て!」


全員が青ざめながら、武器を取って構える。外からは場違いに呑気な声がかけられた。


モノクマ「そう、怖がらなくてもいいんじゃない?」

苗木「モノクマ!!」

霧切「……何の用なの?」

大和田「今すぐ帰らねえとぶち壊すぞ!」

モノクマ「――おやおや? もしかして今そこに西城先生はいないのかな?」

「?!」

192 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:16:10.58 ID:c8x6QoJY0

苗木(な、なんで……?!)

モノクマ「簡単だよ。だって、いつもなら真っ先に怒鳴ってくるじゃない。……ふ〜ん、いないんだ?」

「…………」

モノクマ「ボクとしては今すぐここに突っ込んでオマエラを全滅させることも出来る。
      でもオマエラも知っている通り、ボクはあくまでゲームがしたいんだよね」

モノクマ「だからさ、ボクから一つ提案。みんなでゲームをやらない? その名も宝探しゲーム!」

山田「宝探し?」

葉隠「何があるんだ? い、いやいや聞くだけだべ!」

セレス「……それが一体何だというのです?」

モノクマ「オマエラはボクが隠したあるものを探すだけ。それがあれば
      ボクのいる情報処理室への扉を開くことが出来る」

桑田「ハッ! それがなんだってゆーんだよ。入った所で蜂の巣とかだろ、どーせ」

モノクマ「正規の方法で入ってきた人間にそんな卑怯な手は使わないよ。ゲームなんだから」

石丸「入ったらなんだというのだ! 君は大人しく捕まってくれるのか?!」

腐川「そうよ! 胡散臭いことこのうえないわ!」

モノクマ「それはオマエラ次第かな? 情報処理室にたどり着くこと、それは即ち将棋で言う王手!
      そこで初めて、オマエラはボスであるこのボクと戦う最終決戦の権利を得るってワケ!」

十神「最終決戦に勝てばなんだ? 俺達を潔く解放するとでも?」

モノクマ「その通り! 悪い条件じゃないと思うけどな?」

苗木「そ、そんな……?!」

舞園「解放?!」

193 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:28:33.01 ID:c8x6QoJY0


大和田「ウ、ウソだろ……?」


モノクマが持ち出した条件は驚くべきものであった。
今まで散々彼等を苦しめた元凶が解放という言葉を出してくるとは。


十神「騙されるな! お得意の口八丁だ。本気で解放する気などない!」

石丸「そ、そうだ。モノクマはそういうヤツだったじゃないか!」

モノクマ「疑り深い所は誰かさんに似ちゃったかな? ボクは約束を破ったことはないのにね」

霧切「どうせ隠してることでもあるんでしょう?」

モノクマ「そりゃ、あるけどさ。じゃあ、特別に何でも質問に答えてあげようか?
      ただし、3つくらいね。西城先生が戻ってきちゃうからさ」


全員が顔を見合わせる。何を聞くべきか思案すると、頭の回る不二咲が口を開いた。


不二咲「……ほ、本当に勝ったら全員揃って生きたまま出してくれるの?
     誰かを生贄にする、とか出た瞬間に襲いかかったりとかはなくて?」

モノクマ「無条件に出してあげるしその後ボクから何かすることはないよ。勝てたらの話だけどさ」

セレス「ここは本当に希望ヶ峰学園なのですか? 実は絶海の孤島で出ても家に帰れないということは?」

モノクマ「ここは日本だし東京にある本物の希望ヶ峰学園だよ。外に出たら各自勝手に帰ればいい。
      ボクもボクの部下も一切手は出さないよ。オマエラは完全に自由!」


そこまで聞いて、生徒は沈黙した。


モノクマ「さーて、最後の質問だよ。慎重に考えてね!」

「…………」

194 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:41:45.51 ID:c8x6QoJY0

桑田「どーする?」

霧切「外の状況を聞くというのはどうかしら? もしかしてテロで危険かもしれない」

朝日奈「でも! さくらちゃんは怪我してるしここにいるよりは絶対外に出た方がいいよ!
     いくらなんでも外が完全に廃墟ってことはないはずだし!」

大神「我に気を遣うな、朝日奈よ……」

舞園「家族は……無事なのでしょうか?」

葉隠「あ、それは気になるべ……」

山田「家族が無事じゃなきゃ正直外に出ても仕方ないですよね……?」

苗木「僕も……最初に見た映像が本物なのか気になるな」

十神「どいつもこいつも! 貴重な質問をそんなことに費やす気か!」

石丸「家族のことは大事に決まっているだろう!」

モノクマ「時間がないから、あと5秒で決めてね。5,4,3,2……」


急かしだしたモノクマに慌てて苗木が質問した。


苗木「僕達の家族は無事なのか? 実は死んでいたりとか……」

モノクマ「生きてるよ。全員ね」

桑田「本当か?! じゃああのDVDなんだったんだよ?!」

モノクマ「あれは、まあ……演出?」


「ハアアアアアアアアアッ?!」

195 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:44:45.08 ID:c8x6QoJY0

生徒達は絶叫する。それは恐怖ではなく怒りの絶叫だ。


十神「それ見たことか! やはりこいつは信用ならん!」

石丸「大嘘つきめ!!」

大和田「今すぐスクラップにしてやる!!」

セレス「あまりふざけたことヌかしてっとぶち壊すぞクマ野郎おおおおおお!!」

桑田「そーだそーだ!!」

モノクマ「ちょっとちょっと?! 落ち着いてよ!! あの映像にはっきり顔は映ってた?
      オマエラが勝手に勘違いしただけでしょーが!!」

舞園「だからってあんまりです!!」

不二咲「酷いよ!」

朝日奈「あんなの信じるに決まってんじゃん!!」

腐川「最低最悪ね!!」

葉隠「だべだべ! 俺より悪質だ!」

山田「ふざけんなあああああああああ!!」


想像以上の紛糾ぶりに流石のモノクマも慌てたらしく、わざとらしく言い訳を始めた。

196 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:46:29.95 ID:c8x6QoJY0

モノクマ「大体、続きは卒業の後でってちゃんと書いてあったでしょ! 卒業したら
      約束通り言うつもりでした! それに、実は生きてましたの方がいいんじゃないの?」

モノクマ「それとも何? 死んでる方が良かった? じゃあお望み通り今すぐ殺してこようか?」

「…………?!!」


その言葉にピタッと糾弾が止まる。モノクマならやりかねないと思ったからだ。


モノクマ「ハァー……本当に手が掛かるね、キミ達……ボクがゲームマスターってこと
      忘れてるんじゃないの? オマエラに出来ることは、せいぜいボクが与えた
      選択肢の中から一番良い選択を選ぶこと。それだけだよ」

霧切「笑わせないで頂戴。何を選ぶか、全てあなたが決めているくせに」

苗木「そうだ。僕達に選択肢なんてあったことなかった! いつもお前の掌の上じゃないか!」

モノクマ「そんなことないよ。今だってボクはオマエラに選ばせてあげているじゃない。
      ボクの提案に乗るか乗らないかをさ!」

モノクマ「さあ、時間はないよ。一体どっち?! ボクの挑戦を【受ける】? 【受けない】?」



→【受ける】
  【受けない】
  【セーブする】


197 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:48:36.51 ID:c8x6QoJY0


オートモードのため安価省略。自動選択



→【受ける】
  【受けない】
  【セーブする】


ピピッ!


  【受ける】
→【受けない】
  【セーブする】


ピピッ!


→【受ける】
  【受けない】
  【セーブする】


ピピッピピッ!


  【受ける】
  【受けない】
→【セーブする】


ピコンッ!

198 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:51:29.81 ID:c8x6QoJY0





             【 ス ロ ッ ト 1 にセ ー ブ し ま し た 】




199 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:52:35.05 ID:c8x6QoJY0


ピピッ!


→【受ける】
  【受けない】
  【セーブする】


ピコンッ!





                   【    再     開    】




200 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:54:02.79 ID:c8x6QoJY0





             【  ル  ー  ト  分  岐  し  ま  す  】       




201 : ◆takaJZRsBc [saga]:2019/10/19(土) 23:55:44.37 ID:c8x6QoJY0


ここまで。

最近急に寒くなってきましたね。皆様、体調崩しませんように

202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 06:08:18.50 ID:FIAEHaTkO

吉と出るか、凶と出るか
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 00:29:41.38 ID:4e6q8gyb0
乙ー
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/02(土) 18:43:37.04 ID:jpi+75tsO
205 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:34:03.12 ID:T13XxN850

苗木「……どうする?」

「…………」

モノクマ「早くしてよー!」

苗木「僕は……賭けてみてもいいんじゃないかなと思うけど」

舞園「そう、ですよね。怖いですけど、逃げ続けても状況は良くなりませんし」

十神「フン。虎穴に入らずんば虎子を得ず、か……」

霧切「……気乗りはしないけど、きっと断らせてはくれないでしょうしね」

石丸「逃げるより立ち向かうべきだ!」

大和田「そうだな。要は勝ちゃいいんだ!」

セレス「ギャンブルと同じですわ」

葉隠「やってやるべ!」

山田「頑張りましょう!」

腐川「で、何をすればいいのよ?」

モノクマ「フフフ、いいねいいね! ルールは簡単、5階の植物庭園にある大事な物を
      隠したんだ。それを制限時間以内に見つけられたら君達の勝ち」

モノクマ「見つけられなかったら負け。シンプルだろう?」

苗木「もし、見つけられなかったら……?」

モノクマ「別に何もしないよ。すごすごとここに戻ってくれば?」

朝日奈「モノクマにしては親切だね。なんだか不気味……」

206 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:37:16.97 ID:T13XxN850

十神「チーム分けをするぞ。いくら手出しをしないと言われていても単独行動は危険だ」

桑田「俺は今回は流石に休ませてもらうぜ。なにかあったら足引っ張っちまいそーだし……」

山田「僕も行けません。素早く動けそうにないですから」

朝日奈「私も残るよ。さくらちゃんが心配だし」

大神「いや、我に構わず行け。一人でも多い方が良いだろう」

朝日奈「でも……」

大神「モノクマも言っていただろう。ここに攻め込むつもりならとっくにしているはず」

苗木「朝日奈さん、時間がないよ」

朝日奈「……わかった。私も行く」

十神「戦闘能力で考えて、俺と石丸と大和田の三班で行くぞ」

腐川「あたしは白夜様の班よ!」

不二咲「僕は大和田君の班がいいかな」

石丸「霧切君は目を離すと単独行動をしそうだから僕の班に入りたまえ!」

霧切「……構わないけど、足を引っ張らないで頂戴ね」

石丸「ど、努力しよう……」

葉隠「あとはどうする?」

山田「時間もないですし、グーチョキパーで決めたらどうですか?」

苗木「そうだね。せーの!」


苗木、舞園がグー、朝日奈がチョキ、葉隠、セレスがパーとなった。

207 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:38:58.34 ID:T13XxN850

霧切「苗木君達はうちに入りなさい」

苗木「うん……(そんな気がしてたよ)」

舞園「邪魔をしないようにしますね……」

十神「葉隠、セレス。来い」

大和田「じゃあ、朝日奈が俺の班だな!」

朝日奈「行ってくる。すぐに見つけて戻るからね!」


大神、桑田、山田の三人を残し、11人は保健室を飛び出し植物庭園に向かった。


モノクマ「見つけられるといいねぇ」


ほくそ笑むモノクマを残して。



  ― コロシアイ学園生活六十九日目 植物庭園 PM4:12 ―


大和田「見つかったかー?」

朝日奈「ないよ!」

不二咲「こっちも!」

朝日奈「種の袋も探した方が良いかな?」

大和田「全部見た方がいいだろうな」

208 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:41:28.70 ID:T13XxN850

不二咲「あ、ひっくり返すなら別の袋に入れながらだと汚れなくていいかも」

大和田「流石不二咲だぜ!」

不二咲「う、うん。頑張るよ!」


植物庭園の小屋の中を三人は探している。以前大和田のチーム名が刻まれたツルハシは
ここにあった。他に何かめぼしいものがあれば良いのだが……

一方、十神達のチームは鶏小屋の付近を捜索している。
小屋の中に入りたがるのが葉隠くらいだったので、中を任せたのだ。


葉隠「おーい、お前さんら。宝物を知らねえかー?」

鶏「コッコッコッコッ?」

セレス「ご自慢の占いで鶏の言葉がわかったりしませんの?」

葉隠「人の占いを何だと思ってんだ! オカルトじゃねえんだぞ?!」

腐川「葉隠、喋ってないで手を動かしなさいよ!」

十神「おい腐川。お前も小屋の中を探せ。どうせ臭いんだからニオイも気にならないだろ」

腐川「はい、ただいまー!!」


ガチャッ、バタバタ。


十神「中は二人に任せる。周辺を探すぞ」

セレス「人を使うのが上手ですわねぇ。わたくしも人のことは言えませんが」

209 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:42:52.89 ID:T13XxN850

花壇の辺りを中心に探しているのが石丸のチームである。


霧切「地面に気を付けて。掘り返した場所は色が違うはずよ」

苗木「そうか、成程!」

舞園「流石霧切さんですね!」

石丸「了解した!」

霧切「ちなみに石丸君は花壇に入らないで頂戴。気付かないでうっかり踏み固めてしまいそうだから」

石丸「ぬなぁ?!」

舞園「私が見張ってます! 一緒にこっちを探しましょう、ね?」

石丸「う、うう……了解……」

苗木(流石にちょっと気の毒だ……一応、昔よりは注意力も上がってるんだけどな……)


一緒に医療訓練をしてきた苗木は石丸の成長を如実に見てきた。……が、未だに凡ミスを
することもあるのでこの大事な局面で足を引っ張らせる訳に行かないのは確かだ。


苗木(……ごめんね。君の分も僕が頑張るから!)

霧切「苗木君、何をしているの? 時間がないのよ?」

苗木「あ、うん。今行くよ!」

210 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:45:38.18 ID:T13XxN850

ちょっとだけだけど。多分今週中にもう一回来ます。

新年明けましておめでとうございます。
今年も細々とですが頑張ります。

211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 09:17:29.15 ID:xJxQhSnh0
あけおめえええええええええ!!!
さて、どんな展開になるか楽しみだ
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/08(水) 20:06:55.86 ID:d53gD+iSO
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/02(月) 11:26:58.04 ID:09XtriY50
最近うんこしてて詰まらせた上イキみで便座ぶっ壊した・・・弐代と同じ気持ちになれたかも知れない
214 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:35:44.60 ID:VQvOGne50


               ◇     ◇     ◇


一方KAZUYAは――


K「フム……監視カメラはなし、か。元々立ち入りを禁止していた区域だからな」

K(ここが寄宿舎の二階か……ボロボロだな。五階のあの教室のように修復されていない)キョロキョロ


その時、頭痛と共に記憶が蘇ってきた。


K(うっ……そうだ。あそこが学園長の私室でここが俺の部屋。手前はロッカールーム……)


まず手前のロッカールームに入った。生徒達が記憶を失う前に使っていたもので私物が入っているはずだ。


K(当たり前だが開かないな。いや……)


KAZUYAは電子キーの場所に己の教師手帳を当ててみた。教師の権限は強い。もしかしたら……

ピー、ガチャン。


K「やはり……」


すんなり開いたロッカーの中を見てみる。ノートを見るに、ここは葉隠のロッカーだったようだ。
他のロッカーも順番に開いて覗いていく。


K(まだ見せる訳にはいかないな。しかし、いずれ真実を明かした時のための証拠はいる……)

215 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:38:04.85 ID:VQvOGne50

持ち出すのに一番手頃だった霧切の手帳を取り出すと、次に自分の部屋に行く。
殺風景な部屋だ。そもそも、騙し討ちのような形でこの学園に閉じ込められたため、
本当に必要なものしか置かれていない。


K(これは……)


机の上には、シンプルな写真立てに入ったいくつかの写真が置いてあった。
勝手に閉じ込めることに一応罪悪感があったのか、仁が気を利かせて写真を用意していたのだ。

写真に写っているのは柳川、大垣、高品、七瀬と言ったお馴染みのメンバー達。
その横の写真には、どうやって手に入れたのか父・一堡(カズオキ)の写真もあった。
探偵は辞めたとはいえ、伊達に仁も霧切家の人間ではないということだろう。

懐かしくなって、KAZUYAは写真を指で撫でた。そして、部屋の中を精査する。


K(……いかんな。だいぶ時間を取られてしまった)


ロッカールームの調査に加え、KAZUYAの部屋には使える医療器具や薬品類が多かったため、
それらを調達していたらすっかり時間がかかってしまった。

急ぎ足で最後の部屋に向かう。


K(フム、ここに来るのも久しぶりか……)


大人が少ないため、KAZUYAは仕方なく仁の話し相手を務めたものだった。
絶望的なまでに考え方は合わなかったが、ただの雑談であれば知識の豊富な
仁は話し相手としてけして悪くはなかったものだ。

隅から隅まで部屋の中を物色するが、特に目ぼしいものはない。


K(パソコンの中にも手がかりはなし、か。……ム? パスワードだと?)

216 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:41:37.67 ID:VQvOGne50

パソコンの中に一つだけ開かないファイルがあったのだ。
気になったKAZUYAは手当たり次第に単語を打ってみるが、なかなか開かない。


K(待てよ? あんな男ではあったが、娘に対する期待と愛情は確かだった。となると……)


試しにKYOKOと入れてみるとロックは解除され、隠し扉が顕わになったのである。


K(こんな物があるとは……つくづく隠し部屋の好きな男だ)


二階の男子トイレ、保健室に続き3つ目の隠し部屋である。いい加減驚かなくなっていた。


K(中にあるのは……箱?)


部屋の中には棚と机しかない。棚の中身は持ち去られたのか空であった。
机の上には装飾されたプレゼントボックスがポツンと置いてある。


K(霧切に何かあげようとしていたのだろうか。学園長には悪いが中を改めさせてもらおう)


しかし、KAZUYAは開けたことを後悔することになる。パンドラの箱とは言ったものだ。

中には絶望しか入っていなかったのだから……


K「これは……! 人骨か」

K(大きさ、形状からして成人男性の物に間違いない。一体、誰の……)


思い当たる人物は一人しかいない。これを置いたのは恐らく黒幕だ。
となると、この部屋を使っていた人物だと考えるのが妥当だろう。

217 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:47:32.40 ID:VQvOGne50

K(霧切学園長……いけ好かない男ではあったが、まさかこんなことになってしまうとはな……)


静かに手を合わせると、KAZUYAは蓋を戻した。


K(本当にこれだけか? 何か収穫は……)


きょろきょろと周囲を見渡し、棚の上の写真立てに気付く。幼い霧切が写っている写真だ。
特に考えがあった訳ではないが、なんとはなしに手に取って裏を見てみる。


K(これは……!)


メモリーカードが貼り付けられていた。早速それをパソコンで開いて見てみる。


K(映っているのは生徒達か……)


中に入っていたのは動画であった。この学園に一生住むことになっても良いかと
学園長が問いかけ、生徒達が覚悟を決めて答えている映像である。


K(これがあれば記憶喪失の決定的証拠になるな。……ムッ!)


鋭敏な感覚を持つKAZUYAは背後から侵入者が近づいたことを察知し、すぐに動画を消した。
案の定、扉からモノクマが入ってくる。


モノクマ「ヤッホー!」

K「……何の用だ?」

218 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:49:01.41 ID:VQvOGne50

モノクマ「何の用? 学園長の僕が学園の中を歩いていたらいけない?」

K「フン、本物の学園長はこの部屋の主だろう」

モノクマ「全く、泥棒した鍵でここまで来ておいて偉そうなこと言うよねぇ。よっこいしょ、と」


ソファに座るモノクマを怪訝に見ながらKAZUYAは警戒する。


K「戦刃むくろはどうした? 俺を殺しに来たんじゃないのか?」

モノクマ「そういう野蛮なやり方は好きじゃないんだよね。聞きたいんじゃない?
      先代の学園長がどうやって死んだかをさ」

K「確かに気にはなるが……」


KAZUYAは違和感を覚えていた。何故このタイミングでモノクマはここを訪れ、
自分と意味のない話をしようとするのか。それに、相方である双子の姉はどうした?


K(成程、時間稼ぎをするつもりか。そうはさせんぞ!)


自分をここに釘付けにし、その間に戦刃を使って生徒達を強襲させる腹づもりに違いない。


K「悪いがその手には乗らん。お前の小狡い謀略に乗るのはここまでだ」

モノクマ「あーあ、君のような勘の良い大人は嫌いだよ」

K「…………」


相手にせず部屋を出ようとするKAZUYA。
その背中に、足を組み頭の後ろに手をやったモノクマのせせら笑いが突き刺さる。

219 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:58:08.61 ID:VQvOGne50

モノクマ「――でもさ、残念だけどもうシナリオは決まってるんだよね」


KAZUYAが急いで扉を開けると、そこにはモノクマ軍団が待ち構えていた。


モノクマ軍団『クマー!!』

K「クソッ! 用意周到な……!」

モノクマ「無駄だよ。もう間に合わない。あの選択をした時点で未来は決まってしまったんだから」

K「うおおおおおおおおおおおッ!!」


KAZUYAはモノクマ軍団を蹴散らしながら前に進む。


K(急がなくては! もしあいつらの身に何かあったら……!!)


何体のモノクマを倒しただろうか。

KAZUYAが廊下を突破し、寄宿舎の階段を降りて校舎へ向かう途中だった。



『ピンポンパンポーン! 死体が発見されました。一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』



―― 今、絶望の最終シナリオが始まる。

220 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 02:15:40.53 ID:VQvOGne50

ここまで。

投下遅れてすみません。素直に忘れていました。
リアルの方の創作活動が忙しくて、3月いっぱいはバタバタしそうです。

久しぶりにKAZUYA描いたので、Twitterの方にうp
https://twitter.com/doctor_ronpa_K
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/03(火) 02:29:31.43 ID:IMCYvvTH0

まずはバッドからか
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/03(火) 11:02:44.44 ID:LcqkckFQO

誰か死んでしまったか……
223 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:29:54.52 ID:o/fTASlA0

K「何があった?!」


バンッ!と保健室の扉を蹴破らんばかりに飛び込む。
KAZUYAはバリケードがなくなっていることに気が付き、青ざめた。


桑田「せんせー……」

大神「西城殿」

K「……何故お前達しかいない?」


保健室には負傷している桑田、大神、山田の三人しかいなかったのだ。


山田「実はですな……」

K「……!」


説明を聞く前にKAZUYAは飛び出した。ちょうど階段を降りてきた生徒たちと鉢合わせになった。


K「お前達! さっきのアナウンスは?!」

苗木「先生! 大変です!」

石丸「し、しし……!」

朝日奈「死体! 死体が!!」

十神「こっちだ! 早くこい!」

K「!!」


生徒に連れられ、KAZUYAは二階に上がった。階段のすぐ前の廊下、そこにあったのは――

224 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:30:54.52 ID:o/fTASlA0

K「なんだと……そんな、馬鹿な……?!」


「……………………」


そこには血溜まりの中、物言わぬ姿となって倒れている女の姿があった。

黒く短い髪、細く締まった肉体。右手の入れ墨。



――戦刃むくろの死体であった。



K「狸寝入りはよせ、戦刃……その手はくわんぞ……」

不二咲「先生、それが……」

舞園「死んでいるんです。確かに……」

葉隠「は、はは……本当にありえないべ」

腐川「罠だとっ、思ったのよぉぉ!」


離れたところに立っている腐川が叫ぶ。訓練でほぼ血液恐怖症を克服した彼女だが、
顔見知りの人間の死体はやはり恐ろしいようだ。


K「ば、馬鹿な……」


医者のKAZUYAは一目見た瞬間、死んでいるとわかっていたが恐る恐る脈を取り瞳孔を確認した。


K「間違いない……確かに死んでいる……だが、これは一体どういうことだ?」

225 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:32:04.28 ID:o/fTASlA0

大和田「仲間割れ……ってことか?」

セレス「ですが、霧切さんの持ってきたデータによりますと彼女は江ノ島盾子の双子の姉。
     怪我もしていますし、この大事な状況で裏切るでしょうか?」

十神「裏切ったというよりは用済みになって一方的に捨てられた方がしっくりくるな」

霧切「いよいよ彼女の計画の最終局面に入った……ということではないかしら?
    戦刃むくろはもう必要ないから消された。むしろ、これは演出……」

K「…………」


顎に手をやる霧切の表情は非常に険しい。KAZUYAの表情もまた同じく。


モノクマ「大せいかーい! コロシアイ生活はいよいよ最終フェーズに入ったのであります!」

苗木「モノクマ……!!」


やってきたモノクマは、嬉しそうにピョコピョコと飛び跳ねている。


モノクマ「どうなっちゃうんだろうねぇ? ドキドキするねぇ? あー、早くネタバラシしたいなぁ」

霧切「学級裁判を行うのね?」

モノクマ「もう! 霧切さんたら相変わらず空気が読めないんだから!」


「えっ?! 学級裁判?!」


全員が驚いて霧切を見る。


石丸「学級裁判も何もないだろう……犯人はわかりきっているのだから……」

226 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:33:01.87 ID:o/fTASlA0

大和田「テメエでテメエの首をしめるってことか? そんなバカな」

朝日奈「一体なに考えてるの?」

モノクマ「とりあえず、保健室のメンバーと合流したら? モノクマファイルは送っておくからさ。
      それじゃ、裁判場でお会いしましょー!」

「…………」


全員黙ったままKAZUYAの顔を見た。


K「……とりあえず、お前達が無事で本当に良かった。一旦、保健室に戻ろう」


KAZUYAが促し、全員保健室へと戻る。


               ◇     ◇     ◇


桑田「ハァ?! 戦刃が死んでた? なんで?!」

山田「そんなバカな?!」

K「間違いない。あれは仮死状態などではなかった」


胸元をナイフで一突きにされての失血死である。血糊を使ってもKAZUYAの目と鼻はごまかせない。


大神「何故、そんなことを……」

K「……それより、俺からも聞きたいことがある。お前達は何故保健室の外に出ていた?」

舞園「実は、モノクマからゲームを持ちかけられたんです」

227 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:33:43.35 ID:o/fTASlA0

K「なに、ゲームだと?」


生徒達は、その場にいなかったKAZUYAにモノクマとの取引について話した。


                  ╂


植物庭園を探していた生徒たちは、なかなか目的のものが見つからずに焦りを感じていた。


葉隠「そもそもよぉ、俺達は一体なにを探してんだ?」

セレス「宝物、とは言いますが具体的なことは何も聞いていませんからね」

腐川「そんなんじゃいつまで経っても見つからないわよ!」

十神「セレス。ギャンブラーの勘とやらは働かんのか?」

セレス「わたくしは超能力者ではありませんのよ。そういうことは葉隠君の分野では?」

葉隠「お、いっちょ占ってみっか?」

腐川冬子「やめなさいよ。葉隠に占わせたら七割の確率で外れちゃうじゃない!」

葉隠「んなこと言われてもなぁ! 何もしないよりはマシだべ!」


話していると、物置周辺を探していた大和田チームが合流した。


大和田「おーい! そっちはなにか見つかったか?」

朝日奈「こっちは全然ダメ!」

不二咲「肥料の袋も全部見たんだけど、それらしいものはなかったんだ」

十神「チッ。そっちも収穫なしか」

228 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:34:41.71 ID:o/fTASlA0

苗木「みんな! ちょっとこっちに来て!」


その時、苗木がメンバーを呼びに走ってきた。


苗木「妙なものを見つけたんだ!」


苗木に連れられモノクマフラワーの前に全員集まる。舞園が花の裏側を指し示した。
遠目でハッキリしないが、小さな袋のようなものが置かれているように見える。


舞園「あそこです!」

石丸「苗木君があの花に襲われそうになったところを霧切君が助けて、その時に舞園君が見つけたのだ」

大和田「デカした、兄弟!」

腐川「見事に一人だけ役に立ってないわね……」

石丸「僕は転んだ苗木君を助け起こして運んだぞ!」

十神「そんなことはどうでもいい。……位置が悪いな」

霧切「あの花は巨大な食虫植物のようなものよ。迂闊に近づけば呑み込まれるわ」

不二咲「どうしよう。せっかく見つけたのに……」

大和田「俺に任せろ。花なんてぶっ潰してやるぜ!」

朝日奈「あ、危ないって! 万が一のことがあったらどうするの?!」

霧切「……物置に除草剤はないかしら? 植物だから、枯らしてしまえば……」

不二咲「あ、そういえばあったよ!」

大和田「持ってくるぜ!」

229 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:35:27.78 ID:o/fTASlA0

             ・

             ・

             ・


モノクマフラワー「」シナシナシナ……

苗木「貴重な植物かもしれないから、可哀想な気もするけど……」

舞園「仕方ないですね。こうしないと取れませんし」

葉隠「霧切っち、まだ危ねえって!」

霧切「…………」


モノクマフラワーが枯れるや否や、霧切は素早く袋を回収する。


十神「中身はなんだ?」

霧切「――鍵だわ」

セレス「鍵? どこの鍵ですか?」

霧切「調べるのは後でも出来る。とにかく今は戻りましょう」


                  ╂


K「それがこの鍵か……俺の持っているマスターキーとは形状が違うな」

霧切「私が見た限り、一箇所だけこの鍵が入りそうな場所がある」

K「マスターキーが使えない場所。すなわち、黒幕にとって最も重要な場所と言うわけだな」

K「恐らく……情報処理室。黒幕の本拠地!」

230 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:36:48.57 ID:o/fTASlA0

桑田「な、なんでそんな重要なもんを渡したんだよ? 殴り込みにこいってことか?」

山田「……まさか、僕達に降参するつもりとか?」

朝日奈「ええ、そんな……そんなことってあるのかな?」

セレス「では、戦刃むくろを殺したのは有終の美を飾るためということですか?
     自分で作り上げた舞台の幕を引くために、自ら犯人となったと」

十神「ヤツのことだから何か仕掛けているだろうが、面白い。この謎を説けば全て終わりと言うわけだ」

大神「文字通り最後の戦い、か」

不二咲「この裁判が終われば、なんらかの決着が着くってことなんだね……」

桑田「おっし! 燃えてきた! やってやろーじゃん!!」

大和田「おうよ! 完膚なきまでにやっつけてやるぜ! まあ、推理はおめえらに任せるけどな」

山田「そこで人任せですかー?!」

腐川「そ、捜査の最中に襲ってこないわよね? 大丈夫よね?」

舞園「大丈夫だとは思いますが、なるべくバラバラにならないようにしましょう」

苗木「よし、なら早速モノクマファイルを確認して捜査に……」

K「…………」

苗木「先生?」

K「……何か言ったか?」

苗木「ぼうっとして、どうかしたんですか?」

K「いや、なんでもない……。そうだな。捜査に行こう」


KAZUYAの口数は少ない。
231 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:39:10.42 ID:o/fTASlA0

ここまで。


皆様、ご体調はいかがでしょうか?1は生きております。
コロナの影響で相変わらず仕事は忙しいですが、無事です。

皆様もお気をつけて。それでは。

232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/28(木) 13:26:18.39 ID:0sbo+b+dO

身体に気を付けて
233 : ◆takaJZRsBc [sage]:2020/09/06(日) 22:36:12.10 ID:p54HlrUJ0

生存報告

ミスが有ったので修正。戦刃さんの死体発見現場は一階と二階の踊り場でした。


ちょっと暑さが落ち着きましたね。皆様いかがでしょうか。
1は夏バテに弱くて熱中症に何度かなりかけてました。おかげで
更新が大幅に遅れてました。すみません。

だいぶ間が空きましたがけして遊んでるわけではなく……
賞金もないようなささやかな小さい賞ですが、この間初めて賞を頂きました。
あと、初めて新人賞の一次を通過しました。もしいつかデビューできたら、
余った時間全部このSSに回して完結させるのでどうか祈っててください……
234 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:38:27.31 ID:p54HlrUJ0

K「これが最後になるなら準備をしないとな。お前達は先に行っていてくれ」

大和田「おっし! 気合い入れるぞ!」

葉隠「最終決戦だべ!」

不二咲「みんな、頑張ろうねぇ!」


ぞろぞろと保健室を出ていく生徒達。


K「……石丸。ちょっといいか?」

石丸「はい? なんでしょう?」


他の生徒達が出ていったのを見計らい、KAZUYAは引き出しから分厚い封筒を取り出した。


K「ここに俺の知り合いの医者達のリストがある。念の為、アルターエゴにもデータを入れたが
  もしなにかあったら頼るといい。外がどうなっているかわからんが、いくらなんでも
  全滅はしていないはずだ」

石丸「ありがとうございます! ちなみに、先生は……」

K「……俺はここを出たら忙しくなる。残念だがずっとお前達を構っている訳にもいかないだろう。
  だから、苗木と協力して立派な医者になるんだぞ」

石丸「はい! わかりました!」


KAZUYAは手を差し出した。


K「――医者の道は険しい。みんなと手を取り合って、頑張れ。
  何があってもくじけるんじゃないぞ!」

石丸「……はい!」


がっしりと握手を交わし、石丸も走っていった。

235 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:39:21.99 ID:p54HlrUJ0

K(本当に成長したな……)


KAZUYAもゆっくり後を追った。途中、気になった桑田が戻ってきた。


桑田「せんせー! どうしたんだよ! 早く捜査しねーと」

K「なに、俺はもう大体見当がついている。だから焦る必要はない」

桑田「お! さすがせんせーだな! もう全部お見通しってワケか。
    っても、今回の犯人はモノクマこと江ノ島で決まりだろーけど」

桑田「証拠とかもうバッチリな感じ?」

K「……まあな」

桑田「頼りにしてますよーっと」


桑田がKAZUYAの背をバンバンと叩き、KAZUYAは笑った。


K「ありがとう」

桑田「へ? なんだよ、急に。なんか辛気くせーなぁ。そーゆーの死亡フラグっぽいぜ?」

K「いや、なんとなくな」

桑田「……やめろよな。ほんと、縁起悪いから。早く江ノ島をやっつけようぜ!」

K「おっと」


桑田がKAZUYAの背をグイグイと押して、現場検証が始まった。

236 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:40:43.73 ID:p54HlrUJ0


               ◇     ◇     ◇


霧切「状況はすべて江ノ島盾子を犯人と示しているわ」

十神「フン、あっけない終わり方だったな」

セレス「裁判が待ち遠しいですわね」

山田「なーんか、いやにあっさりしてますねぇ……」

大神「江ノ島盾子があのモノクマを操っていたのだろう? すぐ諦めるような性格だろうか?」

舞園「裁判場で、私達ごと自爆とかしないですよね……?」

腐川「こ、怖いこと言うんじゃないわよぉ! もしそうだったらどうするの?!」

苗木「でも行くしかないんだ。僕達には他に選択権なんてないんだから」

朝日奈「これで、終わるんだよね……? 本当に……」


キーンコーンカーンコーン……


『時間となりました。みなさま、赤い扉の前に集まりください。うぷぷ……』


エレベーターに乗り、地獄へ向かうような気持ちで地下へ向かう。
三度目の裁判場は悪趣味なデザインへ生まれ変わっていた。


苗木(これで終わりなんだ。終わりのはずなんだ。なのに……)

苗木(不安な気持ちがなくならないのはなんでだろう……?)


朝日奈と腐川が震えていた。葉隠もだいぶ顔色が悪い。

237 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:53:45.48 ID:p54HlrUJ0

苗木「大丈夫? なんだか、顔色が悪いけど……」

朝日奈「ありがとう。自分でもなんだかわからないけど、寒気がしちゃって……」

腐川「作家の勘てやつ? なにも起こらないといいけど……」

葉隠「全部終わる。これで全部終わる……はず……」


この学園生活で直感力が磨かれたものは、薄々これから起こる事態を感じ取っているようだった。


             ・

             ・

             ・


モノクマ「さて、オマエラ。自分の席についたね?」



             裁判席

             モノクマ

        朝日奈  K  葉隠 

    大和田            不二咲               

   霧切                 十神

 大神                      セレス

   江ノ島                桑田

     石丸            腐川

        舞園 苗木 山田


238 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:57:24.68 ID:p54HlrUJ0


          !   学   級   裁   判   開   廷   !


モノクマ「じゃあ、いつものお約束から始めようか。学級裁判のルール説明ね」


「学級裁判の結果はオマエラの投票により決定されます」

「正しいクロを指摘出来れば、クロだけがオシオキ。だけど……」

「もし間違った人物をクロとした場合は……クロ以外の全員がオシオキされ、
 みんなを欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!」


モノクマ「えー、説明もこの辺にして。それでは、戦刃むくろさん殺しの
      クロを当てる学級裁判を始めます! じゃんじゃん議論しましょう!」

「…………………………」


シーーーーーーーーン。


モノクマ「ありゃ?」

十神「白々しい……」

セレス「あなたが犯人でしょう?」

霧切「犯人はあなたしかありえない。今更仲間割れを狙っても無駄よ」

モノクマ「んー、そうかなぁ? オマエラが思い込みで話してるだけじゃないの?」

大和田「ああん? 思い込みだぁ?!」

桑田「おめー以外ありえねーっつーんだよ!」

石丸「ただちに投票を要求する!」

239 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:21:47.39 ID:f10LM6ye0

モノクマ「まずは状況を整理しようよ。思わぬところに犯人が潜んでいるかもしれないよ?
      投票に失敗したら全員オシオキなんだからさ。もっと慎重になったら?」


モノクマは頬杖をつきながら優雅にワインを飲んでいる。


山田「ぶ、不気味ですね。なんであんなに余裕なんですか……?」

大神「落ち着け。我らを迷わせるいつもの手だ」

舞園「状況を整理して、反論できないようにしてやりましょう」

不二咲「まずは、現場の状況から?」

苗木「僕達が植物庭園から戻る途中、一階と二階の間の踊り場で死んでいる戦刃むくろを発見したんだ」

霧切「死因はナイフによる刺殺。心臓を一突きだったわ」

十神「手負いとはいえ、超高校級の軍人を正面から殺せる人間など限られている。
    例えば、身内なら油断しているだろうな」

山田「ほらみろ! やっぱり犯人はお前だけだ!」

葉隠「完璧な議論だべ!」

朝日奈「早く負けを認めちゃいなよ!」

モノクマ「……オマエラ、本当にそれでいいんだね?」

腐川「な、なによ……なんで含みがあるのよ……それが正解でしょ……?」

モノクマ「別に、ボクはどっちでもいいんだよ? ただ、議論が足りてないんじゃないかなぁって」

苗木「なにが言いたいんだ?」

240 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:23:03.74 ID:f10LM6ye0





「――アリバイだろう?」




241 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:39:38.87 ID:f10LM6ye0

全員が声の方向を見た。


K「アリバイを確認していない」


目を閉じ、腕を組んだままKAZUYAは静かに言った。
その時、全員が初めてその違和感に気づいた。


苗木(あれ……?)

苗木(……そういえば、裁判が始まってからKAZUYA先生は一言も話してなかった)

桑田(おかしいよな。いつも率先してリードしてくれるのに……)

舞園(どうして……今まで黙って聞いていただけだったんですか、先生……?)

霧切「あ、あ……あぁ……!!」


霧切がガクガクと震え始めた。呼吸が荒い。


大神「き、霧切……大丈夫か?」

大和田「おい、顔色があ真っ青だぞ……?」

霧切「……どうして、どうしてこんな簡単なことに私は気が付かなかったの……?!」

苗木「霧切さん……?」

十神「まさか……?!」


今度は十神が青ざめ始めた。

242 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:42:11.00 ID:f10LM6ye0

セレス「どうしたんです? 全員一緒に行動していたのですから、アリバイは……ああっ?!」

葉隠「お、おい……やめろって。その、なんかヤバいことに気がついたみたいな顔すんの……」

不二咲「西城先生が……先生だけがあそこにいなかった……!!」


すでに涙を浮かべた不二咲がなかば悲鳴混じりで叫ぶ。


桑田「お、おいおい……せんせーがいなかったからってなんだよ……」

石丸「まさか?! 君達は西城先生が戦刃むくろを殺したとでも! そう言うのかね?!」

大神「馬鹿な……?!」

朝日奈「う、ウソでしょ?!」

舞園「ウソです! 私は信じません!」

苗木「落ち着いて考えてみようよ! 凶器とか、死因とかさ!」

K「無駄な議論はしなくていい」

苗木「先生?!」

K「俺は確かにやっていない」

K「……だが、それを証明する証拠がないんだ」


「……………………」


静まり返った。

243 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:58:39.16 ID:f10LM6ye0

ここまで。

次は一気に裁判後編まで行きたいところ。
それでは皆様、夏バテにご注意ください〜!

244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 13:51:31.35 ID:F2QY0WUS0
乙!あと受賞おめでとうございます!
さて、メタ的に考えてもメタ抜きで考えてもKのクロは無いが・・・
いや、寧ろこれはKに犯行が不可能と言うことを証明して間接的に黒幕がクロという事を証明する裁判になるのかな?
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/11(水) 11:31:13.42 ID:upJU8rf00
捕手
246 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/11/30(月) 23:50:46.79 ID:nBI8lKjw0

腐川「い、いや……認められない! 信じたくない!」

山田「西城先生は今まで何度だって奇跡の逆転をしてきたはず! 今回だって……

!」

K「すまない」

大和田「なんで、謝るんだよ……おい……」

朝日奈「イヤだよ……そんなの、イヤだってば……」


朝日奈がKAZUYAのマントを掴む。桑田が駆け寄った。


桑田「わかってたのか……? わかってたから、さっきあんなこと……!!」


他のメンバーも続々と駆け寄る。


石丸「う、ウソだ! ウソだウソだウソだッ!!!」

舞園「先生ッ!!!」

セレス「ウソと言ってください!」

葉隠「こんな結末、誰も得しねえって……あんまりだ!」

K「みんな、聞いてくれ!」

K「安心しろと言っていいのかはわからんが……この中でもし誰か一人が
  死なないとならんなら、それが俺でなければならん正当な理由があるんだ」

桑田「理由ってなんだよっ!! そんなもんあるわきゃねーだろ!!」

K「――俺はな、癌なんだ」

247 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/11/30(月) 23:51:38.07 ID:nBI8lKjw0


「?!!」


大和田「おいおい、冗談だろ……?」

K「冗談ではない。ただ事実を言っている」

K「俺は医者だぞ。自分の体については俺が一番よくわかっているさ。
  だから、間違いない。今まで黙っていたが、前に血を吐いたこともあるんだ」

苗木「せ、先生……」

苗木(そんな素振り……少しも見せなかったのに……!)

K「前に癌で手術をしたと言っただろう? 完治したと思っていたが、
  この学園での過酷な生活でどうも再発したようだ。だから、この裁判で
  生き残ったところでどうせ長くは生きられないんだ」

石丸「そんなもの、手術をすれば……!」

K「前に言っただろう! 外がどうなっているかわからないんだ。
  おそらく、そんな余裕はない……」

不二咲「そ、そんなぁ……」

大神「我らを安心させるためのウソではないのか……?」

K「ありがたいことに嘘ではない。仮に嘘でも、お前たちに証明できるのか?
  超国家級の医師と呼ばれた、この俺の命がけの嘘を」

大神「…………」


KAZUYAはまず、十神の方を向いた。


K「十神」

十神「……なんだ?」

248 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/11/30(月) 23:53:12.90 ID:nBI8lKjw0

K「お前に後を任せていいか? この中では、お前が一番冷静だと思う」

十神「……イヤだと言っても、断らせる気など更々ないくせに……卑怯者め……」


珍しく十神は顔をそむけ、必死に涙をこらえるように鼻の付け根を掴んでいた。


十神「だが、仕方ない……引き受けてやるさ。この借りは大きいぞ。覚悟しろよ」

K「ありがとう。そう言ってくれると思った」


次に、霧切の方に顔をやった。霧切は背中を向ける。


K「霧切、すまん……」

霧切「最低だわ……! こうなることも最初からわかっていたんでしょう?!
    あなたって人は、本当に最低よ……」


霧切の凛とした目から、初めて涙が流れた。
裁判場のあちらこちらから嗚咽が漏れはじめていた。


K「何度もだましてすまなかった。だが、これで最後だ」

霧切「お願いだから、最後だなんて言わないで……」


その願いには答えず、KAZUYAは石丸に声をかけた。すでに涙と鼻水で顔面がひどい

ことになっている。


K「石丸」

石丸「…………」

249 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/11/30(月) 23:55:39.46 ID:nBI8lKjw0

K「しばらくは立ち直れないかもしれない。出会った頃に比べたら見違えるように
  成長したが、人間というのはそう簡単には変われないものだ」

K「だからみんなに支えてもらえ。風紀委員だからといってムリをすることはない



石丸「せ、先生……先生っ……!!」


なにか言おうとする石丸の視線をKAZUYAは振り払った。


K「桑田」

桑田「こんなの認めねー……マジでありえねーだろ……」

K「お前にも世話になったな。あんなに手がかかるヤツだったのに。
  すっかり頼りになってくれて、俺はいつも助かっていた」

桑田「な、なにすんなり諦めちまってんだよ! まだなにかあんだろ?!
    いつもみたいになんかすげー案出してなんとかしてくれよ?!
    先生のアホ! アホアホアホアホアホアホアホ!!」

K「苗木」

苗木「……はい」

K「お前は本当に頼りになるやつだった。超高校級の才能なんてなくても
  ひたむきさや誠実さがあれば少しも劣らないということをお前は証明した」

苗木「ありがとうございます……」

K「みんなを支えてやってくれ。お前ならできるはずだ」

苗木「わ、わかりました……グスッ。約束します……」


涙をぬぐっている苗木の隣に目をやると、青ざめた舞園が立っている。

250 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:01:09.65 ID:uXYgdOZG0

K「舞園」

舞園「イヤ……イヤです……先生……!」

K「君も溜め込むところがあるから心配だな。真面目なのはいいが
  適度に息を抜いたほうがいい。自分を追い詰めるな」

舞園「先生がいなくなったら、私……」


崩れ落ちそうになった舞園を、苗木が慌てて支えた。
KAZUYAは苗木にアイコンタクトを送ってうなずき、次の生徒を見る。


K「不二咲」

不二咲「本当に……これでお別れなんだ……うぅ……」

K「残念だがな。しかし、お前は本当に強くなった。もう誰かに憧れなくても、
  自分の強さで他人を助けられるはずだ。わかるな?」

不二咲「約束します……! 先生が心配しなくていいように、
     僕がみんなを助けるって約束します……!」

K「ありがとう。頼りにしてるよ」


不二咲の言葉にKAZUYAが安心すると、大和田が割って入った。


大和田「……待てよ! なにしみったれたこと言ってやがるんだ!」

K「大和田」

大和田「ぶっとばそう! 俺の命なんていらねえ!
     あんたはみんなに必要とされてるだろうが!」

K「そううまく行かないのが人生だ。お前も本当はわかってるだろう?」

大和田「うぅ……クソッ、クソッ! クソがッ……! チクショウ……」

251 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:02:20.19 ID:uXYgdOZG0

K「お前だって大勢の人間に必要とされている。自分の命の価値を見誤るな」

大和田「グゥゥゥ……!!」

腐川「こんなのって、こんなのってあんまりじゃない!」

K「腐川、約束を守れなくてすまなかったな」

腐川「本当よ! 生まれて初めて、ちゃんとしたデートできると思ったのに……!
    あたしを嫌がらない人と遊びに行けると思ったのに……!!」

K「大丈夫だ。次はみんなと行けばいい。君はもう一人じゃないだろう?」

腐川「ひどいわ……世界はどれだけあたしに厳しいの……
    みんな、みんな死んじゃうんだから……わああああん!!」

朝日奈「うわあああああああん!!」


腐川の嘆きに合わせるように、朝日奈もまた涙を流していた。


K「朝日奈……」

朝日奈「ひぐっ……ひぐっ……一緒にドーナツ屋さん行きたかった……
     プールも、海も、遊園地に、それから、それから……!」

K「…………」

朝日奈「みんなで……いろいろなことがしたかった……
     そのみんなには、KAZUYA先生も含まれてるんだよ?」

K「朝日奈、俺は君を泣かせてばかりだったな。許してくれ」

朝日奈「許さない……なんて、言えるわけないよ……」

252 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:03:30.81 ID:uXYgdOZG0


そこに容赦のない言葉を入れたのはセレスである。


セレス「私は許しませんわ」

K「安広……いや、ルーデンベルク」

セレス「最後くらい名前で呼んでほしいものですわね。多恵子、と」

K「まったく、君という女性は……」

セレス「まあ、冗談ですが。あなたという御方は、本当に最初から最後まで
     罪作りな人でしたわね。今までも外で相当な数の女性を泣かせてきた
     のではないですか?」

K「否定はしない」

セレス「せっかく、わたくし新たな夢を見つけましたのに……
     二つも生きがいだった夢を失ってこれからどう生きればいいのです?」

K「弱音なんて君らしくないな。君は強い女だったじゃないか」

セレス「……そう、ですわね。最後くらい笑ってお別れをいたしましょうか。
     また来世でお会いしましょう。その時はわたくしを……」


喉元まで言いかけた言葉をセレスは飲み込んだ。


セレス「いえ……なんでもありませんわ」

K「…………」


KAZUYAが大神の方を向くと、車椅子に座った大神は神妙に頭を下げた。


大神「西城殿……今まで長らく世話になった」

253 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:05:00.88 ID:uXYgdOZG0

K「君にもずいぶん世話になったよ。君もれっきとした女性なのに、
  強さに甘えてあまり面倒をみられなかった。本当にすまない」

大神「こちらこそ、内通者の件では不用意に騒がせ申し訳なかった。
    西城殿を信頼して、もっと早く打ち明けるべきであった」

大神「あなたに会えて本当に良かったと思っている。
    皆のことは任せてほしい。西城殿の毅然とした態度を見て
    思い出したのだ。我は絶望している場合ではないとな」

K「もう大丈夫なようだな。俺も安心して逝けるよ」


そろそろ自分の番だろうと察した山田はKAZUYAを見た。


山田「西城KAZUYA先生……今までお世話になりました。
    僕がいまこうやって生きているのも、先生のおかげです」

K「ちゃんとリハビリするんだぞ。ダイエットもな。
  お前はやればできるヤツなんだ。もっと自分に自信を持て」

山田「見てもらってた原稿……完成させられませんでしたね。
    完成したら真っ先に見せるつもりだったんだけどな……」

K「あの世でちゃんと見てるさ。みんなと力を合わせてこれから頑張れ」

山田「はい。……ウッ、涙が止まらない。うぅぅ……」

K「……さて、最後だな」


葉隠は珍しくピシリと背筋を伸ばしてKAZUYAの言葉を待った。


K「葉隠、お前とは色々あったな」

葉隠「……なんか、今でも実感ないべ。先生みたいなゴッツイのが、
    癌だとかオシオキだとか……本当に、本当に死んじまうんか……?」

254 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:09:16.33 ID:uXYgdOZG0

K「お前も最年長の割にはなかなか手がかかったな。掴みどころがないように
  思えて金に汚かったりトラブルを持ってきたり……例を挙げればキリがない」

葉隠「そ、そりゃないべ。最後だってのに……」

K「だが、なんだかんだみんなが困っていたら率先して面倒をみてくれたな。
  授業にも真面目に参加していた。俺はちゃんと見ていたぞ」

葉隠「…………」

K「占いもいいが、時には自分の直感を頼ってもいいんじゃないか?
  自分のいいところと悪いところ、俺に言われなくともわかっているだろう?」

葉隠「そういういい方、反則だって……うぅ……」

K「信じてるぞ。これからも縁の下の力持ちとして頑張ってくれ」

葉隠「わかった。わかったべ! 俺はいざって時にはちゃんとやる男だ!
    俺たちのこと、天国から見ててくれよな。オカルトは嫌いだったけど
    K先生なら幽霊になって現れてもいいぞ!」


最後に全員の顔を見回し、KAZUYAは振り向いた。


K「お前にしては珍しく待ったな」

モノクマ「ボクは飽きっぽい性格だけど欲しい物のためなら綿密に計画して
      準備するタイプだよ? オマエラのこの顔が見たかったんだ」

モノクマ「今この瞬間のためだけに頑張って来たといってもいい」

モノクマ「うぷぷ。うぷぷ。うぷぷぷぷ!」

K「……お前をこの手で葬れなかったことだけが俺の唯一の心残りだ」

255 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:13:13.03 ID:uXYgdOZG0


モノクマ「西城先生もそんな物騒なことを言うんだねぇ

モノクマ「さてさて、では犯人も決まったようですし
      お楽しみの投票タイムに行きましょうか」


「うう……」
「ああああ!」
「イヤ! イヤァ!」


苗木「KAZUYA先生……」

K「ちゃんと俺に入れろ。大丈夫だ。俺を信じろ」

モノクマ「……はいっ! では三度目の投票、心してどうぞ!」

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か?!
      その答えは、正解なのか不正解なのか――?!」



裁判場の壁にかかっている大型パネルと席のパネル、両方に
もはやおなじみとなったスロットマシーンの映像が映し出された。
スロットの絵柄はKAZUYAや生徒達の顔写真であり、徐々に絵柄が揃う。




                   VOTE

         【西城カズヤ】【西城カズヤ】【西城カズヤ】

                   GUILTY





        !   学   級   裁   判   閉   廷   !



256 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:15:10.05 ID:uXYgdOZG0


モノクマ「大正解ッ! 今回、戦刃むくろさんを殺したクロは
      ――ドクターKこと西城カズヤ先生でした!」


「……………………」


モノクマ「最愛の生徒たちを守るため、医者の矜持を捨ててまでオシオキ覚悟で
      超高校級の軍人を始末したんですねぇ。いやぁ、泣けるなー」

霧切「……待ちなさい」

モノクマ「もう待たないよ? さっき十分お別れをしてたでしょ?」

霧切「これは黒幕側の明白なルール違反だわ……!」

モノクマ「はにゃ? ルール違反?」

霧切「あなたは学園長として学園の秩序を守るために生徒を罰することができる。
    逆を言えば、それ以外は生徒に手出しできないはずよ。
    なのに、あなたは自ら手をくだし戦刃むくろを殺害した」

霧切「これをルール違反と言わずなんていうの?」

十神「その通り。俺たちの学園生活は外部の人間にエンターテイメント
    として供給しているはず。そのお前がルール違反を犯せば、もはや
    ゲームとして成立せず外の奴らにとって興ざめなんじゃないのか?」

十神「違うか?」

大和田「そうだ! この卑怯者!」

桑田「せんせーがやったっていうなら証拠を見せろよ!」

257 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:16:03.38 ID:uXYgdOZG0

石丸「学園長ならルールを守りたまえ!」

朝日奈「こんな裁判卑怯だよ!!」


生徒達が騒ぎ出すが、モノクマは不気味に笑っているだけである。
KAZUYAもまたなにも言わない。


苗木(なんでモノクマは平気な顔をしているんだ……開き直ったのか?)

セレス「早く証拠を出せっつってんだよ! ビチグソ野郎!!」

モノクマ「証拠? 証拠なんてあるわけないよ」

大神「な、なんだとぉっ?!」

腐川「こいつ……証拠がないってあっさり認めたわ……!」

葉隠「やっぱり不正裁判じゃねえかぁ!」

モノクマ「だからぁ、証明するなんて不可能なんだよ。だって――」

舞園「だって……なに?」

モノクマ「先生が証拠を隠滅するために一階の監視カメラを
      全部破壊しちゃったんだから。できるわけないんだよ」

「?!!!」


水を打ったように、全員が黙り込む。


不二咲「見て……なかった? 外の人も……?」

山田「なにそれ? 潔白を証明できないってこと……?」

258 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:20:33.81 ID:uXYgdOZG0

モノクマ「アリバイがない、自分の犯行を隠すためにカメラを破壊した。
      状況証拠としては十分すぎるくらいだよね?」

モノクマ「ついでに言うとルール違反を犯してるのはそっち!
      学園長室の扉を破壊して勝手に中に入ったでしょ!」

霧切・石丸・大和田「!」

モノクマ「本来なら処刑すべきだけど、校則に一度に殺せるのは
      二人までって書いちゃったし、大事な先生がオシオキされる
      ことに免じて今回は特別に見逃してあげてるんじゃない?」

モノクマ「寛大なボクに感謝しなよ?」

石丸「あ……! あぁ……!!」

大和田(先公のやつ! こうなることがわかってて俺たちをかばったのか!)

K「……気にするな。俺は医者だ。誰のためであれ、命がかかっていれば
  俺は守るために体を張った。だからお前たちのせいじゃない」

K「今回たまたまお前たちだっただけだ。自分を責めるな」

石丸「だからってぇ……!!」

霧切「…………」


爪が手袋を突き破りそうなくらい、霧切は悔しげに拳を握った。
誰もが同じ顔でうつむいていた。


K「最後に全員と握手させてくれ。それくらいいいだろう?」

モノクマ「時間が押してるんで、巻きでお願いしますよ」


KAZUYAは一人ひとりに声をかけて握手をしていった。

259 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:21:29.22 ID:uXYgdOZG0

K「元気でな」ギュッ

苗木「!」

苗木(これは……)

霧切「……絶対に黒幕を倒して、仇を取ってみせるわ」


霧切は手袋を外して、KAZUYAと握手をかわした。


K「お前たちならできる。頼むから、俺を悲しませないでくれよ」

K「さあ、オシオキの時間だ。来るなら来い」

モノクマ「クロもオシオキを待っていることですし、ではでは!
      皆さんお待ちかねのオシオキタイムと参りましょーか!!」

モノクマ「学級裁判の結果、オマエラは見事クロを突き止めましたので
      クロである西城カズヤ先生のオシオキを行いまーす!!」

モノクマ「うぷぷ! うぷぷぷぷ! アーハッハッハッハッ!!!」

モノクマ「ハーッハッハッハッハッハッ!!!」

桑田「心底うれしそうに笑ってやがる……」

石丸「こんなに誰かを憎いと思ったのは生まれてはじめてだ……!」

苗木「許さない。絶対に……!」

K「せいぜい楽しんでおけ。お前の楽しみはこれで終わりだ」

260 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:23:27.00 ID:uXYgdOZG0



「今回は――!」


「超国家級の医師である西城カズヤ先生のために!」


「スペシャルな!」


「オシオキを!」


「用意させて頂きました!!」




「張り切っていきましょうッ!! オシオキターイムッ!!!」


261 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:31:42.84 ID:uXYgdOZG0

ここまで。次回オシオキから。

遅れてしまいましたが、ダンガンロンパ10周年おめでとうございます。
年内にエンド1つ目の予定でしたが……終わるかな?

次回で決着、エピローグ、個別エンドが確か二つ、オマケとあるので
あと四回くらい必要になりそうな……

もうすぐ大事な賞の締切があるので、そのあと集中して書けばなんとか……
……がんばります。

262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/01(火) 12:46:17.76 ID:aqhHLEqF0
乙!とりあえずBADかなこれは
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/02(水) 22:18:29.32 ID:nwVtJ+K7o
久しぶりに開いてやっと追いついた
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/12/24(木) 04:10:59.99 ID:5i6S2+hSO
絶望姉妹ハピバ!
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/03/14(日) 03:56:05.33 ID:6mSJUqhOO
久々に捕手
266 :1@携帯 [sage]:2021/04/04(日) 22:19:54.95 ID:fdmAquuto
遅れてゴメンヌ……

創作自体スランプだったのと体調もあんまり良くなくてしばらく離れてました。
だいぶ復活してきたのでそろそろまた書きます。
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 12:31:52.55 ID:SAcw1/ED0
舞ってる
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 21:28:17.41 ID:dWlQd0uMo
期待して待ってます
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/14(金) 08:13:40.39 ID:PIsnP63KO
続き楽しみにしてます
270 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:11:08.50 ID:VGuDKbI20


準備万端で持っていたハンマーで、モノクマはオシオキスイッチを押した。

スイッチの下の部分についていた液晶画面と、裁判席のパネルに一昔前のゲームのような
ドット絵が映り、モノクマを模したドットキャラがKAZUYAのキャラを引きずっていく。








              GAMEOVER

      サイジョウカズヤせんせいんがクロにきまりました。
            おしおきをかいしします。




271 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:18:32.02 ID:VGuDKbI20


             ― Medical Error(医療ミス) ―


KAZUYAが連れてこられたのは馴染み深い手術室。
赤十字を模した巨大な赤い十字架に上半身裸のKAZUYAが磔にされていた。

その前には白衣を着て医者のコスプレをしたモノクマ。
胸には聴診器、頭には額帯鏡(耳鼻科が頭に付けているアレ)をつけている。

そして、手には巨大なメスを持っていた。

手術に似つかわしくない陽気な音楽が流れ始め、モノクマはメスを両手に特攻。
まずKAZUYAの胸を大きく縦に切り開く。麻酔なんてしていないのでKAZUYAは
一瞬顔を歪め呻いたが、その後は精神の力でいつもどおりの顔を保った。
しかし、冷や汗だけはごまかせず病人のように全身から絶えず汗が流れ落ちた。

医療知識なんてないモノクマ。見様見真似で適当に皮膚を切開して、
まず心臓を切り取り、次に肝臓、胃、肺、腎臓、腸をメスでえぐり取る。

白い床が真っ赤な血に染まった。
内臓をすべて失ったKAZUYAはぐったりとうなだれる。

医師免許もないのに手術なんてできるわけないね。
やっぱり患者は死んでしまいました。残念!


272 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:20:03.07 ID:VGuDKbI20


               ◇     ◇     ◇


「うわあああぁぁああああぁぁぁあああぁあああッ!!!」

「いやああぁぁあああぁあああぁぁぁああああああッ!!!」


オシオキが終わった瞬間、生徒はバリケードを破壊してオシオキ場に飛び込んだ。


「先生っ! 先生っ!!!」

「先生ぇえ!!!」


まだ体温が残る恩師の体に生徒たちはしがみついた。


「ぬ、ぬ、縫わないと……」


石丸がいつも以上に狂気的な瞳でつぶやいた。


「先生の体をバラバラにしたままになんてできない……!」

「石丸君……」


KAZUYAから預かったマントには医療道具が入っている。
苗木は周りを見渡し、全員がうなずいた。

273 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:22:12.66 ID:VGuDKbI20


――まさしく、狂気の光景だった。

たったいま死んだばかりの男の内臓を、教え子たちが泣きながらかき集め
空っぽになった腹に詰め直しているのだから。さながら黒魔術のようだった。

いつもは冷静な霧切や十神さえ他の生徒に混じって黙々と作業を行った。
血液恐怖症を克服したとはいえ、まだ苦しい腐川も吐き気をこらえて耐えた。

愛するKAZUYAの内臓を気持ち悪いなどと思うはずがなかった。
嗚咽と呻き声だけが辺りを支配した。

全員、医療知識があったのが幸いして綺麗に内臓を収めることができた。
石丸と苗木が協力して傷口を縫っていく。苗木が口を開いた。


「残りは全員でやろう。縫合術、覚えてるよね?」


最後、順番に一針ずつ縫った。舞園が自身の制服のリボンで表面の血を
拭き取ると、死んでいるとは思えないくらいに綺麗になった。

……凄惨な処刑に反し、KAZUYAの死に顔は信じられないほど穏やかだった。


「先生……先生、うっ……」


不二咲は口を手で抑えたまま涙をこぼす。とうとう耐えられなくなった
腐川は気絶した。すぐさまジェノサイダー翔に交代する。


「…………あ」


一瞬で状況を察したジェノサイダーはいつもの騒がしい自己紹介をせずに、
黙ってKAZUYAの遺体を見つめた。

274 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:26:47.89 ID:VGuDKbI20

「とうとう死んじまったのか。いい人だったなぁ……殺人鬼のアタシが
 泣くなんてさ、世界中探したってそんな人間ほとんどいやしないってのに……
 馬鹿だよ、あんた。大馬鹿だ……」


そう言って、ジェノサイダーは顔をそむけた。
KAZUYAの手を握りしめたまま泣きじゃくる朝日奈の肩に、霧切は手を置いた。


「気持ちはわかるけど、このまま常温で置いておいては腐ってしまうわ」

「そうですわね……西城先生の体を腐らせるわけにはいきませんわ」


セレスは沈痛な表情で同意する。


「……生物室に遺体保管庫があったな」


十神が提案したが、桑田と大和田が難色を示した。


「あんなところにせんせーを入れちまうのかよ……」

「俺たちが見ていない間に、モノクマのヤツが捨てたりしねえだろうな……」


他のメンバーも、モノクマならやりかねないと口々につぶやいた。


「僕、倉庫にドライアイスがあるのを知っています。
 ギリギリまで保健室に安置するのがいいんじゃないですか?」

「山田っち、ナイスだ。そうするべ」

275 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:30:07.64 ID:VGuDKbI20


舞園がKAZUYAの手を握りながらつぶやいた。


「お葬式くらい、私たちの手でしてあげたいですよね……」

「その通りだ。我らで弔おう」


話し合った末、しばらくは保健室に遺体を保管することに決めた。
ベッドに横たえ、両手を組み合わせてドライアイスを置いた。

眠っているようにしか見えないKAZUYAに、朝日奈はすがって泣いている。
アルターエゴを起動して事の端末を報告した。


『そう……そうだったんだね。僕にもっと力があれば……』

「みんな。実はみんなに見せたいものがあるんだ」


苗木はKAZUYAから託されたものを出した。握手の時、メモリーカードを
渡されていたのだ。学園長の隠し部屋で見つけたものだった。


「きっと、寄宿舎の二階で先生が見つけたものだと思うんだ。
 最後に渡したということは、きっと僕たちの切り札になるもののはず」


全員がうなずいたのを確認して、苗木はノートパソコンにメモリーカードを挿した。



             ・

             ・

             ・


「なに……これ……」

276 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:31:25.99 ID:VGuDKbI20


全員画面を見ながら青ざめていた。


舞園「こんなこと……私、覚えてない……!」

朝日奈「私もだよ!」

大和田「いったいどういうことだ?!」

桑田「またモノクマの罠かよ?!」

十神「いや、それはおかしい……もしそうなら西城が隠すはずがない」

霧切「これを託したということは、これは私達にとって切り札となるもののはず」

石丸「こんなおかしな映像がかね?」

苗木「……この映像、もしかしたら本物なんじゃないかな?」

桑田「本物って、おいおい……」

不二咲「僕達は学園長に会ったこともないのに……」

セレス「おかしいですわね。まさか揃いも揃って記憶喪失ではないでしょうし」

葉隠「そうだべ。そんなんオカルトじゃねえか」


その時、山田は一人離れてうつむいていた。


大神「どうしたのだ、山田よ」

山田「……これは、時が来たのかもしれない」

277 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:38:24.81 ID:VGuDKbI20

ここまで。あんまり間を開けすぎるのも良くないので、
最悪にキリが悪いけど一旦投下

本当はラストまで突っ走りたかったのですが、
今すごく仕事が忙しいのと重要なシーンのデータが飛んだので
もうちょいお待ちください。KAZUYAの復活は来年になりそうですね……

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