【たぬき】早坂美玲「ウチの七日間妖怪戦争」

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87 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 01:53:30.88 ID:ZOgt4kq00


「東京行きを決めた時から、心のどこかで覚悟はしていたんです」

「いつか何かの形で、罰を受ける時が来るって。だってまゆは色んなものを裏切ってしまったから」

「それが美玲ちゃんだっていうなら、納得します。こんなに早かったのは意外だけど……」


「けど、できれば、まゆだけにして欲しいんです。だって他の子には何の罪もありませんもの」

88 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 01:54:11.21 ID:ZOgt4kq00


 腹の底からグツグツした感情がせり上がって、それが何なのかわからない。

「違う……違う、違う、違うッ!」
「……美玲ちゃん?」

「聞いてたのと違うじゃないかッ! オマエらは怖くて、強くて、悪いことするヤツらで!
 だから人間が祓わなきゃいけないんだって、ウチはずっと修行してたんだぞッ!!」


 佐久間の家の者に注意しろって言われてた。
 アイツらは思い詰めると何をするかわからないって。 
 
 それが、無抵抗?
 あまつさえ他のヤツを庇う?

 何が違う? どこで何が変わった?

 間違ってるのはどっちだ?

89 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 01:55:33.46 ID:ZOgt4kq00


「なのに、最初会った時からずっと、オマエらはのほほんとしてて……」

 鼻の奥がツンとする。
 開けた視界は、見えすぎる筈なのになんでか霞んだ。

「やさしくて、あったかくて……」

 震える息を呑み込んで、叫ぶ。


「オマエがそんなんじゃ、ウチは一体どうすりゃいいんだよッ!!」


 どこかで、またカラスが鳴いた。
 マユはじっとウチを見つめていた。

90 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 01:56:40.63 ID:ZOgt4kq00


「美玲ちゃん……」

 マユが一歩踏み出してきて、思わず後ずさる。

「帰りましょう?」
「……ッ」
「どうにもしなくたっていいんです。みんなわかってくれますよぉ」

 言って、手を差し伸べた。
 取れば帰れる。今夜はカレー。足元には転がりっぱなしの日常があって。

「だって美玲ちゃんはもう、まゆ達の……」

 そこから先を言わせちゃいけなかった。

「やめろッ!! ウチは一匹狼なんだッ!!」


 結局、その手は取らなかった。
 大きく飛びすさって眼帯を付け直す。視界が普通に戻って、一房ぶん赤くなった髪が風に揺れる。

91 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 01:58:04.34 ID:ZOgt4kq00


「遊びは終わりだッ! 他のヤツらにも言っとけ、ウチはもう敵なんだってなッ!」
「美玲ちゃん……!」

「せいぜい覚悟しろーッ! ばーかばーか! オマエのかーちゃんおしらさまーッ!!」

「ああっ! おおむねその通りですけどぉ!」

 背を向けて、走った。
 ホンキで走った。
 カラスは逆方向に飛んでいた。赤トンボの群れを突き抜けた。


「美玲ちゃん!!」


 走った。走って走って、耳を塞いで走って、どこに行くとも決めないで走って。
 どこかの家から晩ご飯の匂いがして……。 

「――ぐしゅっ」


 こんな顔、誰にも見せられない。

92 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 01:59:24.63 ID:ZOgt4kq00

  ◆◆◆◆

  ―― 一方 事務所


P「今日も残業頑張るぞい(死)」

ちひろ「この世のものとは思えぬほど不景気な顔しないでください」

P「だってエアコンまだ直ってないし……アーニャいないし……」

P「あ、知ってます? 女子寮の晩飯ってカレーなんですって」

ちひろ「現実逃避やめろ」

P「ヒィン……カレー食べたい……」

  プルルル プルルル

P「あっ電話だ。まゆから?」

ちひろ「カレーのお誘いですか?」

P「もしそうだったら行かせてくれます?」

ちひろ「……」ニコッ

P「ヒエッ……はいもしもし」ピッ

93 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 02:04:09.24 ID:ZOgt4kq00


P「……なんだって? 美玲がいなくなった!?」

ちひろ「……?」

P「どうしたんだ? 喧嘩か? あー……いや、とにかく細かい話は後にしよう」

P「この後すぐ寮に電話するんだ。まず芳乃に声をかけろ。あの子なら探せる」

P「あーあー泣かない泣かない! 俺もすぐ行くから! 車で行くから寮で落ち合おう!」ピッ


P「……ということでちひろさん、後は任せました!!」クワッ

ちひろ「そう言うと思ってましたよ!!」

94 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 02:09:58.21 ID:ZOgt4kq00


P「うわもう暗くなっちゃうな、急がないと……」バタバタ

ちひろ「プロデューサーさん」

P「はい?」

ちひろ「美玲ちゃんは、うちのアイドルってわけじゃありませんよ。それでも行くんですか?」

P「? 行きますよ。関係ないでしょ」

ちひろ「そうですか。……そうでしょうね、ふふっ」

ちひろ「あ、帰りにダッツ買ってきてください。これ全部片付けるんだからそれくらいの役得はあっていい筈です」

P「オッスオッス。何味ですか?」

ちひろ「定番のクッキー&クリームとマカデミアナッツと最近出た甘夏とクリスピーのキャラメルクラシック」

P「多いな!!!」

95 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 02:12:47.18 ID:ZOgt4kq00
 短めですが一旦切ります。
 次で最後までいくと思います。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/15(日) 05:41:38.51 ID:WgdLnGADO


あとちょっと頑張れ

おいらも頑張る
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/15(日) 17:52:58.75 ID:am3aZVe/0
ちくしょう
泣かせやがるぜ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/15(日) 19:29:18.61 ID:WgdLnGADO
つか、チッヒにはクッキー&クリームが定番かよ

……好きな味、変えないとな
99 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 23:48:45.38 ID:ZOgt4kq00

  ◆◆◆◆


 美玲……ミレイ。ハヤサカミレイ。 
 験の現れた有望な子に、字を変えて代々与えられる名前。
 先祖代々の御霊(みたま)に護られて在れ、と。


美玲「…………」トボトボ

美玲「どこだっけ、ここ……」

デビキャ「捲土重来の時は遠からぬ。消沈せぬことだ(バリトンボイス)」モゾ

美玲「オマエ、言ってることわかりづらいんだよ」

デビキャ「汝が望む限り、機は幾らでも訪れよう(バリトンボイス)」

デビキャ「堅物共の目を啓かせるには、手柄を立てねばならぬは真理……(バリトンボイス)」

美玲「……オマエはウチのやり方どう思ってんだ?」

デビキャ「是非も無し、従うのみ。汝に与えられし依代は快適なり(バリトンボイス)」

美玲「…………そか」


美玲「でも、楽しかったんだ」

美玲「アイツらといるの……悪くなかったんだ」

美玲「……おなか空いたなぁ」グゥ

100 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/15(日) 23:56:50.90 ID:ZOgt4kq00


  ブロロロロロ バタンtゥ


芳乃「こちらでしてー」

P「あっ、いた!」

美穂「美玲ちゃん!」


美玲「……!!」

美玲(そうか、ヨシノの……!)


まゆ「――美玲ちゃぁん!!」ダキッ

美玲「!?」ムギュッ

101 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 00:05:57.17 ID:mGF8+a/i0


美玲「や……やめ、やめろッ! 離せよッ! ウチは慣れ合うつもりなんか……!」

まゆ「ごめんなさい! まゆ、あなたにひどいこと……」

まゆ「美玲ちゃんはたくさん悩んでるのに、そんなことも知らないで……!」

美玲「な、なんでオマエが謝るんだッ! ウチはウチのやりたいようにやっただけだ! なのに……」

美玲「なのに、こんな……」ジワ

美玲「こんなこと教えるなんて、ひどいじゃないかぁ……!」


芳乃「……美玲さんー」

芳乃「そなたの御家の事情は、皆まで語らずともわかりまするー」

芳乃「なれどそれは、お一人で抱えるべきではなきものー……」

芳乃「わたくし達と、分かち合うわけには参りますまいかー」

102 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 00:07:59.96 ID:mGF8+a/i0


美玲「…………」ムギュムギュ

まゆ「美玲ちゃん……」

美玲「……それは……できない。これは、ウチのケジメなんだ」

美玲「ここでウンって言ったら、自分で決めたことを自分で捨てることになっちゃう」

美玲「……ウチらしさで、アイツらを見返す。だから…………」

芳乃「…………」


美穂「わかった」

美穂「戦おう、美玲ちゃん。私が相手になるよ!」


P「!?」

103 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 00:15:30.35 ID:mGF8+a/i0


P(いやいやいや、急にどうした!? そういうの苦手だろお前!?)ヒソヒソッ

美穂(大丈夫です。その……美玲ちゃんの気持ち、ちょっとわかるんです)ポショポショ

美穂(熊本からここまで来た私と同じです。だから……私なりに、美玲ちゃんと向き合ってみたいんです……!)

P(……そうか。わかった)


美玲「……いいのかよ。ウチは祓うぞ。ホンキだぞッ」

美穂「うん。私も、私のやり方で美玲ちゃんと向き合うから!」

まゆ「美穂ちゃん……」

美穂「大丈夫、まゆちゃん。私に任せて! これでもお姉さんだからねっ!」フンス

芳乃「……」

芳乃「よろしいでしょうー。然らば、わたくし達が立ち合いましてー。まずは、場所を改めましょうー」

104 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 00:21:57.44 ID:mGF8+a/i0


   〇


  ―― 女子寮 庭


  ヒュゥゥゥウ……


美穂「……」

美玲「……」


周子「……え、どゆこと?」

輝子「な……なんか、西部劇の……決闘みたい、だけど……」

小梅「…………うん。決闘だね」

みく「ちょちょちょ、大丈夫なの? だってあれ絶対危ないにゃ……!」

デビキャ「狼狽えるなかれ……(バリトンボイス)」

みく「なんか喋っとるねんけど!?!?!?」

P「慌てるなみく。美玲の相棒は喋るのだ」

デビキャ「彼の者らは、己が覇道を突き進まんとする猛者の様……何者とて阻むべきではないのだ(バリトンボイス)」

みく「なんかこのぬいぐるみだけ作風違わない?」

P「俺もそう思う」


まゆ「美穂ちゃん……美玲ちゃん……」

105 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 00:27:01.01 ID:mGF8+a/i0


芳乃「合図はわたくしが致しまするゆえー。双方とも、悔いのなきようー」

美玲「わかった。……全力でいくぞッ」ガンタイハズシ

  カッ!


蘭子「ふおおおおおおおお!!!」シャシャシャシャシャシャシャシャ

周子「蘭子ちゃんがめちゃくちゃスケッチしとる!?」

由愛「わぁ……す、すごい……!」シャシャシャシャシャシャシャシャシャ

みく「こっちも!?」


美穂「それじゃあ私も、全力でいくよ……!」

美穂「はぁぁあああああああああっ!!」シュインシュインシュインシュインシュイン


紗枝「なんたることや……美穂はんのたぬきゲージが限界値を越えてはる……!」

智絵里「危険粋です……!」

周子「なんなんたぬきゲージて」

蘭子「はふーっ、はふーっ! か、かっこいい……!!!」シャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ

みく「蘭子チャンお水飲んどいた方がいいにゃ」

106 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 00:35:25.95 ID:mGF8+a/i0


美玲(たぬきの化け術だって、ナメてかかっちゃいけない……)

美玲(凄いヤツは、でかい虎とか電車とか、山一つにだって化けられるって聞いたことあるからな)

美玲(アイツだって、それだけのヤツじゃないなんて保証はない……!)


芳乃「それではー……」


美玲(だけど、ウチの目があれば見切ることはできるッ)

美玲(どんな姿に化けたって、必ず見通してやる……!)


芳乃「よーい……」


美玲(何が出る、何が……鬼が出るか蛇が出るか、それとも別の……?)

美玲(いや、集中しろッ。油断するな。いつも通りのウチで、やっつけてやるんだ……!)


芳乃「どんっ」


 ポ ン ッ ! !

107 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 00:56:51.26 ID:mGF8+a/i0


美穂(たぬき)「ぽこん」キメポーズ


美玲「…………ってたぬきに戻っただけかよッ!!!」ガビーン


美玲「はッ! ついツッコミを……!」

美穂「ぽこ!」キュピーン

まゆ「あぁっ! 美玲ちゃんがついつい突っ込んでしまった隙を……!」



※いかなる達人にも隙は生じます。
 たとえほんの一瞬であれ、それを見極めることこそ遍く武道の神髄。
 畢竟(ひっきょう)立ち合いとは、相手の技の起こり・終わりを見切り、生じた空隙に自らの技を打ち込む「読み」の戦いと言えるでしょう。
 だからこそ、相手の油断を誘い、意図的に隙を作らせるフェイントが活きてくるのです。
 極論すれば、そのフェイントが突飛なものであればあるほど……相手の攻め気を抜くものであればあるほど良いとの見方もあります。
 そう。室町時代を発祥とする、かの有名な武道セクシーコマンドーの教えですね。
 特に突っ込み気質のある相手なら効果はてきめんでしょう。
 たぬきさんの技法はむしろそちらに近いものかもしれません。
 本日は解説にお呼び下さりありがとうございました。押忍っ!

(ゲスト解説員:Y・Nさん)

108 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 00:58:44.87 ID:mGF8+a/i0


美玲「しまッ……!!」

  シュバッ!!

美穂「ぽっぽこぽーーーーーーーーーーんっ!!!!」
(顔面突撃!! もふもふおなかプレーーーーーーーースッッ!!!!)


 も っ ふ ぁ ぁ ・ ・ ・


美玲「ふぁっぷ……!?」


※もふもふおなかプレスとは……
 相手の顔面におなかを直接ぶつけ、その魅惑的ふかふかもふもふ感で一瞬にして和みの地平に吹き飛ばすたぬきボディタックル。
 安全第一・早寝早起を信条とする小日向流タヌキカラテの裏奥義である。

(346書房刊:『アニマル奥義五輪書』より)

109 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 01:36:59.40 ID:mGF8+a/i0


  ドサッ……


P「け……」

周子「決着……」

芳乃「でしてー」


美玲「…………う……う、うぅうっ」

美玲「たぬきに……たぬきに負けた! 眼帯まで外して! 負けた……ッ!!」

美穂「ぽこ」モゾモゾ

  ポンッ!

美穂「美玲ちゃん……」

美玲「なんだよ! そんな目で見んなッ!」

美玲「けっ……結局、ウチはここまでだったってことだッ! あんだけツッパっといて、カッコ悪い……!」

美穂「かっこ悪くない。正面からちゃんとやったら、私絶対勝てなかったもん」

美玲「……ふざけんなッ! 勝っといて慰めかよッ!」

110 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 01:40:31.68 ID:mGF8+a/i0


美玲「大体こんなッ、こんな遊びみたいなやり方で……! バカにして楽しいかよッ! ウチのこと何だと思ってんだよッ!!」


美穂「友達だよっ!!」


美玲「……ッ」

美穂「友達なんだから、かっこいいとか悪いとか無いよ! だから私のやり方でぶつかりたかったんだもん!」

美穂「美玲ちゃんの言うことはわかるよ。でもこうして一緒に過ごして、本当は優しくて、まっすぐな子なんだってわかって……」

美穂「一緒に暮らしてて、すごく楽しくって……」

美穂「……なんにも言わないでいなくなったら、悲しいよ……!」

まゆ「…………」


美玲(友達……)

美玲(それは、言わせちゃいけなかった。だって、一回も言われたことが無かったから……)

美玲(……初めて知った。すごく嬉しいんだ)

111 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 02:01:34.92 ID:mGF8+a/i0


美玲「わかったよ。ウチの負けだ」

美玲「ごめんな。もうオマエらに手を出そうなんて思わない」

美玲「……帰るよ。帰って、やり直す。それで、ちゃんと自分を見直して……」


デビキャ「その必要は無い(バリトンボイス)」

小梅「と思う……よ……」

あの子(コクコク)


美玲「え……」

小梅「だって……一回、負けただけだもの」

小梅「美玲ちゃんの、やり方は……その全部が、一回で否定されたわけじゃ、ない……でしょ」

美玲「で、でも、ウチはミホに……」

デビキャ「此は修行なり。汝は未熟なれども、故にこそ越ゆるべき青山(せいざん)は数多く……(バリトンボイス)」

周子「……まあ、実家に思うところがあるってのはなんとなく察せるけどさ」

周子「腕を磨きたいとかだったら、ここほど好都合な場所もないと思うけどねー。だってこんなバラエティ豊かな場所無いでしょ」

112 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 02:03:17.87 ID:mGF8+a/i0


美玲「だけどウチ、みんなにひどいこと……!」

まゆ「いいんですよぉ、そんなこと」

デビキャ「此は汝の武者修行。確固たる決意さえあらば、我は主と共に征くことこそ快なり(バリトンボイス)」

みく「いやおめーは結局なんなのにゃ……いい声してるけど……」

美玲「………………」


  パタパタパタ

響子「みんなーっ! ごはんできましたよーっ!」

菜帆「お待たせしました〜っ」

イヴ「すっごくおいしいカレーですよぉ!」 ←味見担当

ブリッツェン「ブモンヌ!!!」 ←同じく

響子「はぁ、はぁ……えっと、間に合いましたか!?」

みく「ばっちりにゃ!」

113 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 02:11:55.13 ID:mGF8+a/i0


美玲「修行……修行、か」

美玲「でもウチ、それだと、みんなと戦う為にいるってことになっちゃう……」

美穂「うんっ。私で良かったら、いつでも相手になるよ!」

紗枝「最後にどうなるかはわかれへんけど……お稽古やったら、うちもお付き合いできる思います〜」

智絵里「その。もし気が変わったら、それでもいいと思いますからっ」

美玲「…………い、いい……のかな。もうちょっと……ここにいても……」

美穂「いいよ。だって、友達だもん!」

美玲「……っ」

まゆ「まゆも、最初は同じでした。自分の目的ありきで、周りが見えなくて……」

まゆ「だから今、言わせてください。美玲ちゃん、あなたはここにいていいんです。……いてくれないと、寂しいですよ」

まゆ「ほら、晩ご飯の時間ですよぉ。一緒に食べましょう?」

114 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 02:13:26.40 ID:mGF8+a/i0


響子「はいっ、美玲ちゃん。カレーよそってきましたよ」

美玲「!」

響子「あ、ご飯の量とかこれくらいで良かったかな? 好きみたいだから、粉チーズもかけてきたんだけど……」

美玲「……ウン、ちょうどいい。ウチ、いつもこんくらいチーズかけるし……」

美玲「にんじん、細かく刻んでる……食べやすい……」モソッ


美玲「おいしい。……おいしいよ゙ぅ゙……」グスッ



P「…………うん」

芳乃「これにて一件落着、ということでよろしいのでしてー?」

P「ああ。後はこっちのフォローで済む」

P「あの子がうちにいられるように、色々便宜を図らないとな――」

115 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 02:37:28.50 ID:mGF8+a/i0


  ―― 後日 事務所


P「ということで部外者がこれ以上女子寮に居座ることは普通にダメっす」

美玲「はァッ!?」

美穂「え、そ、そんな!?」

P「色々言い訳を付けて上にも納得させてたんだけどね。そろそろ限界っぽいんだ」

ちひろ「ギリギリまで粘りましたけど、やっぱり厳しいんですよ。うちも会社ですから……」

美玲「じゃ、じゃあ、寮は出てかなきゃダメってことか……!?」

美穂「でもそれじゃ、どうすれば……そうだ、ライラちゃんみたいにすれば!」

美玲「そ……そうだ! ウチ、自分で稼いで部屋とか借りるッ!」

P「ライラの場合も特殊なケースだしなぁ。あっちにはメイドさんもいたし」

P「宮城から家出同然で出てきた14歳の女の子に、任せる仕事も貸す部屋もあるかってことでな」

P「そもそも、学校どうするって話でもあるだろ?」

美玲「はうッ! ……う、うう……」

P「だが安心しな。すぐに仕事を紹介してやるぜ」

美玲「!?」

116 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 02:38:21.56 ID:mGF8+a/i0


P「その仕事に年齢制限はないんだ。下は9歳、上は今のところ31歳まで確認されている」

美玲「おおッ! なら、ウチもやれるってことか!?」

P「そうとも。これは頑張り次第だが、成果によって儲けもガンガン入るしな」

P「更になんと、この仕事を始めると引き続き女子寮にもいられるし、なんと個室もゲットできちまうんだ!」

美玲「わ、わっ……! ホントにいいのか!? そういうのゴツゴーシュギって言うんじゃないのかッ!?」ソワソワソワ

P「ご都合主義の何が悪い! その全部を実現できる職業が確かにあるのさ!」

美穂(あっ)

ちひろ(♪)


美玲「………………ってオイ、ちょっと待てよ。それって」

P「アイドルやろうぜ」

美玲「ああああああッ! やっぱりかああああああああッ!!」


117 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 02:50:00.37 ID:mGF8+a/i0


まゆ「ほんとですかぁ?」ヒョコッ

周子「ええやん」ヒョコッ

蘭子「魂の共鳴を今ここに!」ヒョコッ

小梅「あの子も喜んでる……♪」ヒョコッ

輝子「トモダチたくさん……」ヒョコッ


美玲「おい! すごい勢いで外堀が埋まっていくぞッ!!」

P「はっはっは。はっはっはっはっはっはっは」

美玲「笑うなーッ!!!」

P「まあまあまあ早坂さん、これを見てみなさいよまあまあまあまあまあ」ピラッ

美玲「え……な、なんだこの……デザイン……?」

118 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 02:53:28.46 ID:mGF8+a/i0


P「実は最初のステージまで構想が見えててさ。これはその衣装案なんだが」

美玲「えっあっ……わ……すご……っ」

P「パンクでポップで、キュートな感じな。ガルモンのイメージを参考にしてて」

P「この衣装デザインには、美嘉と莉嘉にも協力して貰ってるんだ。こないだ一緒に原宿行ったろ?」

美玲「あ……う、ウン……」クギヅケ

P「これは、美玲にこそ似合う衣装だと思うんだが……」

P「どうだろう。修行がてら、社会勉強もしてみるというのは」

美玲「ぁ……」


美玲「……わ、わかった。他に選択肢なんか無いんだろッ!」

P「よし!!」


周子(あの詰め方よ)

小梅(結局……人間が、一番……ずるいのかもね……)ニヘェ♡

119 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 03:06:47.98 ID:mGF8+a/i0


   〇


  ―― しばらくして 事務所


ちひろ「ところで……宮城のご実家には事前に連絡したんですか?」

P「しましたよ。全部説明しました」

ちひろ「それで、何と?」

P「いやぁ、あっさりしたもんでした。文句の一言もありゃしなかった」

P「娘さんがいきなり東京に行って、それでアイドルになるってのに、はいそうですかってなもんで」

P「NG出たらそりゃ従うつもりでしたよ。なんなら向こうまで馳せ参じて一発殴られるくらいのつもりでいたのに」

P「……あっさり見限れるもんですかね。仮に意に沿わないお子さんだったとしても、そんな……」

楓「向こうからすれば、もう勘当しているつもりなんでしょう」

P「楓さ、えっ、いつの間にいたの」

楓「さっきからいました。ビール頂いてます♪」グビー

P「そりゃ事務所で缶ビール冷やしてるのなんてあんたくらいだからな!」

楓「けぷっ」

P「この数秒で一本空いたの?」

120 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 03:09:28.48 ID:mGF8+a/i0


楓「ともあれ、旧い家にはそういうところがあるんですよ」

楓「あの子はうちには関係ない、何をしようが家名に響かない、なんて。早坂家も知らぬ存ぜぬの段階に入ったんでしょう。要は切り捨てです」

楓「どうでしょうプロデューサー。今度、早坂さんのお宅にご挨拶に行きませんか?」

P「……やめておきましょう」

楓「あら」

P「思惑は知らんけど、あの子がアイドルになることのお許しは頂いたわけだ。じゃあその世界で成功するよう頑張るのがこっちの仕事だ」

P「いいじゃないですか、それで。うちは芸能事務所なんだから」

楓「…………」

楓「……ふふ♪ そうですね、その通りです」モグモグ

ちひろ「ま、私は私の仕事をこなすだけですよー……」カタカタ

ちひろ「…………ん? 今楓ちゃんが食べてるダッツ、クッキー&クリーム味だったりしません?」

楓「あっ」

ちひろ「あっ」

121 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 03:48:53.98 ID:mGF8+a/i0


   〇


  ―― 後日 ライブ会場楽屋


美玲「……」ジャジャーン

美穂「わぁ、かわいいっ!」

まゆ「とってもお似合いですよぉ♪」

小梅「ゴーストハンターみたい……♪」

美玲「そ、そうかッ?」

莉嘉「うん! お姉ちゃんのデザイン、美玲ちゃんのイメージにぴったし!」

美嘉「莉嘉も協力したでしょ? でも……ま、バッチリみたいで良かった★」


美玲「う、ウチ、これで踊るのか……」

美玲「へへッ。カッコいいし、カワイイじゃないか……♪」


幸子「なるほど悪くありませんね!! ボク達の事務所にはありそうでなかったカワイイです!!」ババァーン

美玲「わ!? 誰ッ!?」


桃華「このようなファッションの方向性もありますのね! 新感覚ですわ……!」

藍子「わぁ、色使いがすっごく綺麗ですね! まるで夜のお祭りみたい♪」

奏「ふふ、いいわね。人は何色にでも染まる……真理だわ」

122 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 03:50:26.95 ID:mGF8+a/i0


  ワイワイ ガヤガヤ

美玲「おおぅ……!?」

美穂「美玲ちゃん大丈夫?」

まゆ「まだ知らない子もいますから……」

美玲「だ……大丈夫だッ。ウチは負けない! そう決めたんだからなッ!」


デビキャ「七転八起……(バリトンボイス)」

<フギャー!? ヌイグルミガシャベリマセンデシタ!?
<アルアル〜
<ナイデスヨソンナノ!!


P「よし。美玲の最初の仕事はバックダンサーだ」

P「いずれ自分がメインに立つステージだ。あそこに立つ感覚を覚えておきなさい」

美玲「すーっ……ふーっ……わ、わかった……!」

美玲(修行の時より、緊張するかも……)

123 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 03:51:53.67 ID:mGF8+a/i0


デビキャ「賽は投げられた。武運長久を祈る(バリトンボイス)」

<ヤッパリシャベリマシタヨ!? ヤタライイコエデシタヨ!?
<ハハハコヤツメ
<サチコハンツカレテハリマスナ〜


美玲「…………フン。励まし方までドヘタかよッ」

P「いけるか?」

美穂「がんばってね!」

まゆ「ここで待ってますから……!」


美玲「ん。……それじゃあ」

輝子「フヒ……いこうか……」

124 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 03:55:07.57 ID:mGF8+a/i0


美玲(ウチは、ウチのやり方でやる。ウチなりの生き方を決める)

美玲(これもまた、その一つなら……全部ホンキでやる。その中で本当の自分らしさを見つけ出すんだ)

美玲(友達が待っててくれるなら、怖くない……ッ!)



輝子『マーーーーーーーーッシュ!!! アーーーーーーーーーーーップ!!!!』


  ビリビリビリビリビリ

美玲「」 ←ひっくり返りそうになる

美玲「――上ッ等ッだッ!」


美玲「行くぞッ!!!」


 〜おしまい〜

125 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 03:57:55.93 ID:mGF8+a/i0

〇オマケ

  ―― 後日 女子寮


美玲「んー……」

こずえ「んー……?」


美玲「一個、でっかいナゾがまだあるんだよな」

こずえ「なにー……?」

美玲「オマエだよッ。結局なんなのかわかんないままだぞ!」

こずえ「おー……」

126 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 04:02:25.75 ID:mGF8+a/i0


美玲「んん……聞くより見るのが手っ取り早いな。コズエ、いいか?」

こずえ「いいよー……」

美玲「あっさりOK出た。よしッ、それじゃ眼帯外して……」

デビキャ「小さき者よ……(バリトンボイス)」モゾ

美玲「うわまた出た! 今度は何だよ!?」

デビキャ「一つの杯に海を収めること能わず……いかなるものにも限界があるのだ……(バリトンボイス)」

美玲「はぁ? どういうことだよッ」

デビキャ「……」

こずえ「……」

デビキャ「……よかろう……それもまた修行……(バリトンボイス)」

美玲「な、なんだよ。聞き分けがいいのか悪いのか……まあいいや」

127 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 04:03:07.15 ID:mGF8+a/i0


美玲「それじゃ……見るぞッ」カッ


美玲「……ん?」

美玲「あれ?」

美玲「コズエ? おーい、コズエーッ」

美玲「ど、どこ行っちゃったんだよ!? いないぞ!?」


美玲「なんだよ、やっぱイヤだったんじゃ……」ガンタイツケ

こずえ「みえたー……?」

美玲「うわいた!! び、びっくりさせんなッ、どこ隠れてたんだよ!」

こずえ「ずっと……ここにいたー……」

128 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 04:07:14.65 ID:mGF8+a/i0


美玲「いや、そんなすぐにいなくなれるわけ……」

こずえ「みれい……かみのいろ、きれいー……」スッ

美玲「わっ、こ、こら。あんまりそこは触っちゃダメだぞッ」

こずえ「でも……このいろは、だめー……」スルスル

美玲「ダメって……もう、なんなんだよオマエは」

こずえ「こずえは、こずえだよー……」

こずえ「こずえはー……ずっと、ここにいるよー……」ニコ

129 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 04:09:49.38 ID:mGF8+a/i0



美玲(その後、洗面所で鏡を見て驚いた)

美玲(赤くなった髪の色が元に戻ってる)

美玲(ちょうど、ここに来て左目を使っただけの分が、時間を戻したみたいに無くなっていた)


美玲(原因はわからない。ウチだって戻し方がわからなかったんだから)

美玲(……アイツ、ほんとに何者なんだ?)


 〜オワリ〜

130 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/07/16(月) 04:22:06.04 ID:mGF8+a/i0
 おしまいです。

 デレステ限定SSR美玲ちゃんの衣装を見て「アニメの妖怪モノとかに出てくる、使い魔連れたゴーストハンターっぽくない?」「YO-KAI Disco(https://www.youtube.com/watch?v=A2ZoG_rBjBs)とか似合いそうじゃない?」と思い浮かび、退魔師美玲ちゃんというネタが浮かび上がってからは止まりませんでした。
 今となっては大人しく復刻を待ちます。

 長くなってしまいましたが、お付き合いありがとうございました。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 05:10:09.65 ID:Mg+saM9DO


とりあえずスカートをめくればこずえの正体が



あれ?オレは何をやっていたんだ
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 07:05:08.48 ID:SaLosSzQo
乙でした〜
確かに美玲は(ちょろい)退魔師っぽいなw
主人公をライバル視して突っかかってくるけど、ドジで自滅するタイプのw

しかしこうなると、夜市のリスさんが事務所にいないのがもったいないな
古本屋さんとかもアイドルになっていいのよ?
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 07:39:34.25 ID:zAhkg5pQ0
おつおつ、美玲の実家周りは思いのほかシビア後奈良のすごい人は襲来したらみくにゃんが大変なことになるあの人かな?
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 07:50:05.87 ID:AoafCRtiO

民明書房便利だわ
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 10:08:39.66 ID:MUiv+wDCo
ぅゎこずぇっょぃ
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/22(日) 03:59:55.89 ID:MqRzGDLxo
こずえ何者だよwwおつ
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