神崎蘭子「堕天使は二度堕ちる」【堕天使探偵・最終幕】

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92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 02:27:07.79 ID:pBbrw7Aw0


3日目 昼 ネレイド城 1F 4号室(美樹本)


高遠「何回調べても、隠し通路や抜け道になりそうな隙間は見つからないですね」

高遠「もし犯人が壁を透過する能力を持っていないと仮定するなら…」

高遠「…そう、犯人はもしかしたら自身の肉体を蝶や蝙蝠の群れに変化させることが出来るのかも…!!」ぽわぽわ


ラン(…そういえば あの遺言…高遠さんを襲ったことについて触れていなかった)

ラン(もしかして彼女の件は犯人にとって予定になかった事だったのかな…?)


高遠「…痛っ!」


ラン「?」


高遠「っあ、大丈夫、切っただけ。たいしたことじゃないの」

高遠「壁のここがバリみたいになってて、そこで…」


ラン「獣の爪痕…(バリ?)」


高遠「うん、ほらココの…」


ラン「…」


ずいっ


高遠「え?」


ずいっ


高遠「ランちゃん?ひゃっ!?近…」


ずいずいっ


高遠「ハッ!?ま、まさか、滴る血に誘われて吸血鬼の衝動が!?」

高遠「考えてみれば貴女のその紅眼銀髪のルーマニアンな外見…やはり貴女が吸血鬼だったのねっ!?」

高遠「まま、待って!確か人血の人間が血を吸われたらその人も吸血鬼に…滅茶苦茶そそられますけどっ」

高遠「え?えー!?でも心の準備が…ああっ!?それともまさかのあんゆりならぬらんゆりがキテ…」


カリカリ…


ラン「原罪の証…!(この形…!!)」


高遠「…ほぇ?」


ヂャカッ

ラン「我が封印の剣と共鳴せんとする刻印とは…只ならぬ宿命を感じるわ…(ブレードキーの切先とぴったり合う…ということは…)」


高遠「…吸わないんですか?」


ラン「?」


高遠「血…」


ラン「ち?」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 02:33:30.32 ID:pBbrw7Aw0


3日目 昼 ネレイド城 1F 大広間



ラン「高貴なる紅の放つ蠱惑の術が、生贄を奴の眷族へと変えたことはわかっている(…犯人が美樹本さんを自殺に見せかけて殺害したのは間違いない)」

ラン「だが、奴の術は果て無き迷宮の様に我がロゴスを阻む…(でも、犯人が吸血鬼に拘った意味も、高遠さんを襲った理由も、密室の謎も解けていない)」

ラン「この迷宮で私を導くアリアドネ…我が両眼はそれを捉えることが出来るのだろうか…(まだ全然わかんないことだらけだなぁ…)」


高遠「…そうだ」


ラン「?」


高遠「私としたことが…もう一つの可能性を見逃していましたっ!」

高遠「美樹本さん殺しの時犯人は、ずっと密室の中に隠れていたんじゃないでしょうか!?」


ラン「咎人が、結界の中に潜んでいた、だと…?(隠れていた…?)」


高遠「そうです!犯人は密室の中に隠れていて、遺体発見のドサクサに紛れて合流していたんですよ…!!」


ラン「…」


高遠「犯人は、美樹本さんを殺害してからずっと部屋の中に隠れていた」

高遠「そして私達が扉を破って中に入ったときに、何食わぬ顔で合流していた…」

高遠「水を出しっぱなしにしていたのは、みんなにあの音を聞かせて浴室に誘導し、自分が隠れている寝室に入られないようにするため」


ラン「瞳を持つ者ながら破滅を呼ぶ綻びは少ない。が、羽根を休めし領域を侵さぬ摂理としては、やはり脆い(…確かにそれで理屈は通りますけど、それでも寝室を探られる可能性はゼロでは無いですよね)」

ラン「凶刃に身を任せたノブル・レッドはその咢を鮮血に染める。その凶罪が証を如何に隠すというの?(それに、返り血や遺体に水を浴びせる時に濡れてしまう自分の衣服の問題はどう説明しましょうか…?)」


高遠「それは…本当は、ここのドアは鍵がかかっていたんじゃなく、開かないようにされていただけなんじゃないでしょうか」

高遠「内側に細工の後はなかった…だから多分、ランちゃんたちがドアを確認した時は犯人自身がドアを塞いでいた」

高遠「アルカードの放送で皆が礼拝堂や地下室を調べているうちに、犯人は自室に急いで着替えて戻ってきた」

高遠「ほら、思い出してください!」

高遠「美樹本さんの遺体を発見したとき、不自然に遅れて出て来た人がいました…目崎さんです」


ラン「…」


高遠「彼くらいの体格なら、全力で走れば間に合うんじゃないでしょうか…!」


ラン「ふむ、ノブル・レッドが仕掛けた幻術はその瞳に真なる姿で現れた…という仮の真理を定めよう(…なるほど。犯人がそんな風に偽装していた可能性は捨てきれません)」

ラン「彼の大術は吸血鬼に厳密なる刻と座標を要求し、それら全てを捧げうる者は確かに黒き従者ただ一人であろうが…(そして、確かにそれが可能なのは目崎さんだけでした。けど…)」


高遠「けど?」



ラン「彼の者は古城を駆けし翼を捥がれている…(目崎さんは全力では動けなかったと思いますよ)」


高遠「…え?」


94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 02:37:55.91 ID:pBbrw7Aw0


3日目 昼 ネレイド城 1F 大食堂




黒服「…」


高遠「ど、どうしたんですか!?その足の腫れ…」

高遠「いつのまにそんなことに!?」


ラン「我が相棒伏する追憶の境界に(昨日、赤羽根さんのための包帯を取りに行った時です)」


高遠「…そういえばあの時、目崎さん妙に息があがってたような」


ラン「闇に溶けた城の中、黒き従者はその身に楔を受けた(それだけじゃなく、あのとき足も引きずっていたんです)」

ラン「癒やしの紐と引き換えに…楔は従者の足に呪縛を巻き付けて(取りに行く途中でなにかあったんですよね?目崎さん)」


黒服「…何かあったというよりは、私自身がしてしまったと言うべきでしょうか」

黒服「物置を開けようとしたときに扉がうまく反応してくれなかったもので、力任せに蹴破ってしまって…」


高遠「け、蹴破った…」


黒服「無我夢中だったもので、つい…それで、物置から包帯を運ぶことは出来たので良かったのですが」

黒服「その際に、その、足をひねってしまったようで、後から痛み出しまして…」

黒服「おまけに扉の方は蹴破った衝撃で壊れてしまったのか、うんともすんとも言わなくなってしまいまして」

黒服「仕方が無いので今は開けっ放しにしております」


高遠「ははぁ…」


ラン「…こほん。全ての因果は、黒き従者を鎖で縛る結果へと収束した(原因はさておき、そういうわけで目崎さんは全力で動けなかったんです)」

ラン「即ち、瞳を持つ者よ…其方…の…(だからさっきの高遠さんの推理…は…)」

ラン「…」


高遠「ランちゃん?」

黒服「ラン様?」


ラン「…」



たたたっ

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 02:47:21.57 ID:pBbrw7Aw0


3日目 昼 ネレイド城 1F 物置前




ラン「…」


高遠「どうしたの?」


カチ、カチ


ラン「剣に応えない…何故だ…!?(嘘…認識しない…!どういうこと…!?)」


高遠「さっき物置のドアが故障したって聞いたばかりですけど…」


ラン「煌く解放の光は、古城を覆う闇をも裂いていたというのに(私は昨夜、部屋の窓からこの扉が光ってるのを見た)」

ラン「護法の界が既に焦げ付いていたなんて…!?(なのに何の反応もない…)」


高遠「…へ?」


ラン「境界線は闇に飲まれていた(この扉は昨日の夕方の時点で壊れていた…)」

ラン「ならば、何故我が瞳は解放の光を捉えたのだ?(だとしたら何故、私は扉の光を見た?)」


ラン「…」


ラン「そうか…なんで今まで気付かなかったんだ…」



ラン(犯人はあれを使った。だから犯人は、高遠遥を襲わなければならなかったんだ…)



ラン(ということは…)

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 02:53:04.39 ID:pBbrw7Aw0


3日目 昼 ネレイド城 1F 4号室(美樹本)



モリアーティ「…確かにその可能性はあります」

モリアーティ「彼の死亡時刻は殆ど状況証拠によって割り出されたといってもいいものですから」

モリアーティ「しかし…にわかには信じられません。本当にそんなことがあり得るのか…」


ラン「フッ、封印は解かれたぞ!(…やっぱり)」


高遠「どういうこと…?」


ラン「咎人が高貴なる紅の外套に固執した理由は之だ!!(だから犯人は吸血鬼に見立てて殺人を繰り返したんですよ…!)」


高遠「??」




ラン「万物の事象が我が魂に語り掛けてゆく…(わかりました…!)」

ラン「吸血鬼の円卓と成り果てた鉄檻の真実も(美樹本さん殺しの密室の謎も)」

ラン「瞳を持つ者を手にかけた、避けようの無かった因果律も(高遠さんを襲った理由も)」

ラン「ノブル・レッドの化けの皮を着る大罪人…その名札も(そして、誰がこの事件の真犯人…アルカードなのかも)」






ラン「全ての真理は、我が手中に有り!!(…謎は全て解けました)」



97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 03:25:37.90 ID:pBbrw7Aw0
ねむけやばい…

ちょっとひとねむりします

m(_ _)m
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 03:26:36.27 ID:pBbrw7Aw0
ねむけやばい…

ちょっとだけひとねむりします

m(_ _)m
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/02(日) 07:47:34.47 ID:lDait9DYo
一旦乙
高遠の役者は百合子か?
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 11:08:41.64 ID:pBbrw7Aw0

>>99

ひそかに大正解です。

ちんとんかんな狂言回しがほしかったので、その他の面でも相性よさそうな彼女に白羽の矢を立てました。

あと話の初期構想を練っているとき、某企画で件の彼女が惜しくも探偵役を逃してしまっていたこともぶっちゃけ遠因です。


おくればせながらさいかいしまむらm(_ _)m
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 11:13:58.63 ID:pBbrw7Aw0


3日目 夕方 ネレイド城 B1F 電気室



三澤「…」


醍醐「こんなところにいた」

醍醐「どうしたの?…もしかしてこの罠の網を掻い潜ろうとしてる?」


三澤「くぐれるものなら昨日くぐっている。この手のヤツは専門外だ」

三澤「向こうで出くわすこともあるが、その時は専用のチームを呼んでいる」


醍醐「…」


三澤「そうではなく、どうにかここから抜け出す方法はないかと考えていたんだ」

三澤「もうこの世にいないやつの作った監獄に、これ以上すし詰めされているのもおかしな話だと思ってな」


醍醐「とはいっても、それを解決する方法が向こう側にしかないんじゃねぇ」


三澤「…で、だ」


醍醐「え?」


三澤「あそこ…操作盤に括りつけられている装置があるのが見えるか?」


醍醐「…なにかの時限装置だと思うけど?ほら、放送に合わせて私達を城に閉じ込めたときの」


三澤「一つはそうだろう。だがもう一つ、その隣にあるものは?」


醍醐「…」 
 





黒服「み、三澤様、醍醐様!大変です!」


三澤「!」


醍醐「どうしたの?」


102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 11:17:42.86 ID:pBbrw7Aw0


3日目 夕方 ネレイド城 1F 大広間



−−−−−−−−−−−−−−

今宵、第四の殺人を実行する

吸血鬼アルカード

−−−−−−−−−−−−−−





黒服「何時の間にやら、このような張り紙が…」


モリアーティ「犯行…予告…?」


醍醐「…」


三澤「馬鹿な…犯人はもう死んでいるんだぞ!」


高遠「誰かの悪戯でしょうか?それともまさかこの惨劇に真犯人が…!?」


ラン「迷える羊たちよ!我が黙示を聴けいっ!!(みんな、落ち着いてください!)」

ラン「吸血鬼がいくら吠えようとも、その真紅に染まりし牙が剣の封印を喰らうことなど無い!!(今夜はしっかりと部屋を施錠して、相手が誰か分かるまで絶対に扉を開けないようにすれば大丈夫です!)」


一同「…」


103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 11:27:11.90 ID:pBbrw7Aw0





寝室で横になっていた醍醐瑞樹は、先程の犯行予告の件を考えていた。

三澤の推理の通り、アルカードが自決と犯行終結を宣言してから僅か半日ほどしか経過していない。

にもかかわらず、件の怪人が終結を撤回し、もう一度殺人を実行する?そんな世迷言を誰が信じるのだろうか?

どう考えても不自然である。


それに、犯行予告は音声ではなくではなく手紙だった。手口を模倣しきれていない点から推察するに…

全くの別人が、目的はともかくオリジナルに罪を擦り付ける意図で行ったもの。

いきあたりばったり。有り合わせ。質の伴わぬ模倣犯。犯罪心理学の観点から推測するまでもない分析であった。

だからそれほど警戒するまでも…








ガチャ



…え?

がばっと起き上がる。そしてすぐに嫌な汗が噴き出した。

かすかに聞こえたその音は、明らかに私の部屋の扉から聞こえてきたからだ。

今のは何?

決まっている。誰かが私の部屋のなかに侵入したのだ。

まるで自分の部屋に入るかのように。鍵なんて無いかのように。…怪人アルカードのように。

我が物顔で廊下を進む足音がする。だがそれ以上に自分の心臓の鼓動がうるさかった。


脳裏によぎる、最悪の想像。まだ私にはやることが残っているのに。


だが逃げ道は塞がれている。もはや私には成す術がない。

私は…



寝室のドアが、ゆっくりと開かれた。

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 11:33:34.61 ID:pBbrw7Aw0


3日目 夜 ネレイド城 2F 8号室(醍醐)



ラン「今宵の月は、我が魂を狂わせる…(今晩は)」


醍醐「…」


ラン「…風が止んだようね?(どうかしましたか?)」


醍醐「ラン…ちゃん…あ、貴女こそどうしたの?」

醍醐「ビックリしたじゃない…というか、無断で入ってくるなんて失礼よ」


ラン「招かれざる客を畏れるのも無理はない…が(ごめんなさい。でも、醍醐さんこそ不用心ですよ)」

ラン「其方こそ、魍魎跋扈する宵の口に封印を解き放つなど、喰らっておくれと乞うようなものでは?(もうすぐ就寝する時間なのに…戸締りを怠るなんて)」


醍醐「…そうね」

醍醐「それで、私に何か用かしら?」


ラン「フフ…少々戯れが過ぎたかしら(ああ、そうでしたね)」

ラン「今宵、ノブル・レッドの名を騙る咎人を、主神の名の下に断罪しようと思っているの(私はこれから貴女に、このネレイド城で起きた全ての事件の真相を話しに来たんです)」


醍醐「…」

醍醐「事件の真相って…なに言ってるのよランちゃん」


ラン「彼奴の複雑怪奇なる幻術は、古城に閉ざされし全ての観測者を深淵へと誘ったわ(…全ての殺人は、ある一人の人物によって綿密に計画された連続殺人だったんです)」


醍醐「…」


ラン「そしてその術式を組んだ者は…未だ命潰えずにこの古城を支配している(いったいどうやってこの不可能ともいうべき殺人を行ったのかを、これから紐解いていきます)」

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 11:42:43.83 ID:pBbrw7Aw0



ラン「高貴なる紅がその身を闇夜に捧げし胎動の刻…(吸血鬼アルカードが、この恐るべき殺人計画を始めるにあたって、まず最初にしたのは…)」

ラン「我等は魂魄の内に夢幻の芽を植え付けられた(皆にある暗示をかける事でした)」


醍醐「…」


ラン「今ここに、全ての贄達の断末魔を導かん(これまでの事件を思い出してください)」

ラン「心臓を衝き放つ終の一打、身を焼き焦がす紅蓮の陽光(魚塚さんが胸に杭を打たれた第一の殺人…黒羽さんが日光に晒されていた第二の殺人…)」

ラン「彼岸に立つ贖罪の墓標、そして…洗い清める聖水の秤(沼田さんが十字架のそばで絶命していた第三の殺人…最後に、美樹本さんが流水をその身に浴びた第四の殺人…)」

ラン「彼の者の放つ二対のカタストロフは観測者の瞳を濁らせ、大いなる幻を形作る…(これらの事件で、犯人は私達の頭の中に、ある法則を焼き付けようとしたんです)」


醍醐「法則って…いったい何のことかしら」


ラン「供物は全て、咎人の『種』としての末路を示すもので…(犠牲者は吸血鬼の弱点とされるものに見立てた殺されかたをして…)」

ラン「憐れなる終焉与えし器は、その者の封印具であるという真理である(殺害の凶器にはその人の部屋のブレードキーが使われるという法則です)」

ラン「故に我等は幻を見たの。『これは不破の結界である』と(それによって私達は知らず知らずの内に、あの部屋が密室だったと錯覚させられていたんです)」


醍醐「…錯覚?何言ってるの、どう見たって疑いようのない真実」

醍醐「あの部屋の密室は、他ならぬ美樹本 本人しか破れないわ」


ラン「まさしく、彼の結界はあらゆる輝光を拒絶する暗黒の壁(確かにあの密室は、部屋の内側から作られたものでしょう)」

ラン「だが、咎人は裏から喰い破る蛇を使役していた…!(…でも、密室を作った人間がそのとき部屋の中にいたとは限りませんよ)」


醍醐「…どういうことかしら」


ラン「暗黒を食い破る蛇…その片鱗は燐光に彩られる…(密室の謎は、ある一つのもので全て説明できるんです)」

ラン「我が眼が燐光捉えし刹那、蛇は全身を宵闇に曝したのよ!(私がその存在に気付いた最初のきっかけは、昨夜…窓から物置の扉が開くのを見たときです)」


醍醐「それがどうかしたの?」

醍醐「貴女の部屋は1号室だったわよね…たしかに窓から物置の扉が見える位置関係にある」

醍醐「誰かが物置に入る為に鍵を使った。だから貴女の窓からはその扉が光る様子が見えた。何も問題は無いと思うけど?」


ラン「境界の彼方は闇に飲まれてしまっていたのよ(光るはずがないんです)」


醍醐「…え?」


ラン「逢魔の前にヘルメスの腹は黒き足に破かれ、骸と化していたわ…(物置の扉はその時にはもう壊れていて、反応しなくなっていたんですよ)」

ラン「だからあの燐光は、我が心の迷いの表れ…座視の際に現れし鬼火なのだと疑った(初めは幻覚かとも思いました。でも、もし真実であるならば…こう考えることができます)」


醍醐「…」


ラン「でもあれが現ならば、或いは我が双瞳は彼方の紋章を映したのではないか?(あの時私は…『物置では無い別の部屋の扉』を見ていた)」

ラン「空間の歪み…それを叶える術具はそう多くはない(そんな矛盾が起こる原因は一つしかありません)」

ラン「原罪背負う人の子となれば、最早神鏡を用いる他無いのだっ!(鏡です)」


醍醐「…」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 11:54:39.71 ID:pBbrw7Aw0


3日目 夜 ネレイド城 2F 8号室(醍醐)



ラン「全ての術式には特異点が存在する…即ち神前契約の反作用(ブレードキーに使われているローマ数字には、鏡映しの関係にある数字があります)」

ラン「隠者の瞳に正義を映し、そして帝の瞳には愛を映す…(それが、美樹本さんの部屋であるW[4]と沼田さんの部屋のY[6]…さらに言えば\とⅪも同様ですが…)」

ラン「ノブル・レッドはこの特異点を封印解除の礎とし、蛇と契りを交わしていたのだ(犯人はこの城の施錠システムを熟知し、鍵を偽装できることもわかっていた)」

ラン「その螺旋の蛇の蹂躙に任せ、咎人は生贄を増やしていった(そしてそれを密室殺人に利用することを思いついたんでしょう)」


醍醐「犯人が鏡を使って鍵を偽装していた?密室を破った原理はそれで説明できるかもしれない」

醍醐「でも、まだこじ付けの域を出ていない。忘れたの?『人に刺した鍵はもう使えない』ってことを」

醍醐「密室の構築に必要なその6号室のカギは、密室殺人の前の殺人に使われているのよ。物理的に不可能だわ」


ラン「フフ…紅の幻影は既に見切ったわ(その謎ならもう解けています。美樹本殺しが、沼田殺しよりも前に行われていたんですよ)」


醍醐「…」


ラン「煉獄の残滓は、あたかも因果の葬列のように揃えられてはいたが…(確かに遺体が発見された順序は沼田さんの方が先でした。そして犯人自らがそれを『第三の殺人』と強調していました)」

ラン「観測者の生気は存在を定着しきれぬ思念に過ぎなかった(でも思い返してみれば、沼田さんの死体を見た後に美樹本さんが生きていた姿を見た人は誰もいません)」

ラン「呪力の籠る睦言が思考を溶かし、咎人の思うが儘に誘われていたとも知らず…(ただ漠然とした周囲の状況から、私達は犯人の言われるがままに殺害順序を並べていたに過ぎなかったんです)」

ラン「加えて咎人は因果の葬列を騙る為に、アプスの化身とも契約していた(そして、犯人が本当の犯行順序を悟らせない為にしたもう一つのトリックが…あの流水です)」


醍醐「…」


ラン「そもそもこの古の城にて奏られし終焉の序曲は、不協和音が多すぎた(私はずっと、この事件が何故吸血鬼の弱点に見立てられているのかという点が不思議で仕方がなかった)」

ラン「古城の宵闇に木魂す数多の断末魔は…(魚塚さんに杭を打ち、黒羽さんに日光を浴びせ、沼田さんをわざわざ礼拝堂まで運んだことは…)」

ラン「我等の思考に吸血鬼の鮮血を染み込ませる布石であった(全て吸血鬼に見立てて殺害されると思い込ませるための演出だったんです)」

ラン「全ては終の供物にアプスの呪縛をかけ、罪を背負いし聖骸としての役割を与えるため(つまり、死体に水を浴びせたのは見立て殺人なんかではなく、血の凝固を妨げ、死体を冷やして死亡推定時刻を誤魔化すためであり)」

ラン「その偽りの磔刑を黙示録に組み込ませる虚空術式だった!(吸血鬼の見立て自体が、死体に水をかけた本当の目的から皆の目を逸らすための巧妙な真理トリックだった)」




ラン「化けの皮は剥がれたぞ。吸血鬼アルカード!(そうでしょう?)」

ラン「…醍醐瑞樹!」



醍醐「!!」

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 12:06:20.40 ID:pBbrw7Aw0



醍醐「…っふ、ふふふっ」

醍醐「何を言い出すのかと思えば…私が吸血鬼ですって?」

醍醐「もしも私が三流ミステリ小説の犯人なら、ここで泣き崩れて全部白状するんでしょうけど…」

醍醐「現実はそんなに簡単じゃないわ。貴女の推理はまだ穴だらけよ」


ラン「…」


醍醐「6号室の鍵を使う猶予があったと仮定しましょう…そして鏡を組み合わせれば4号室の密室を破ることが出来ることも認めましょう」

醍醐「それでも、貴女はまだ全ての矛盾を解決できていない」


ラン「…」


醍醐「美樹本殺しの現場である4号室は、外からは絶対に開けられないように細工されていた…他でもない彼の手によって」

醍醐「廊下側から開けられないのなら、例えば、中庭に出て窓越しに光を送るくらいしか密室を破る方法は無い」

醍醐「でも昨日…雷で崩れた天窓から雨が降り込んで、中庭はひどくぬかるんでいたわよね」

醍醐「もし犯人が中庭に出たのなら、その時の足跡がくっきりと残っている筈だけど、あそこは綺麗なものだった」

醍醐「いったいどうやって私は彼の部屋に入れたというの?」


ラン「…いくら古城の吸血鬼といえど、全ての因果律を予測することはできない(そう…貴女にとって、美樹本さんの奇行と中庭のぬかるみは全くの計算外でした)」

ラン「僅かに生じた歪みは悉く咎人を裏切り続け…(恐らく最初は隠し持っている手鏡と鍵を組み合わせて、ごく単純に部屋に入る計画だったんでしょうけど…)」

ラン「最早神鏡の加護のみでは煉獄の瘴気を封ずることが出来なくなった(不都合な偶然が次々と重なり、まともに計画を遂行できない状況が生まれてしまった…)」

ラン「だが貴様は傲慢を司る悪魔と契約した吸血鬼…(でも、鋭い思考の持ち主である貴女は…)」


ラン「貴様は、瞳を持つ者を封印除去の媒介とした!(ターゲットに高遠さんを付け加えることで、その不可能を可能にする方法を思いついた)」


醍醐「!」


108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 12:18:12.26 ID:pBbrw7Aw0



醍醐「…なかなか面白いことを言うじゃない。あの子を襲うことが、どうして密室崩しに繋がるのかしら?」


ラン「因果の歪みを超えるために女帝の間を掌握しなければならなかったからよ(彼女からブレードキーを奪って、3号室に入るためですよ)」

ラン「咎を背負う吸血鬼は半月の園に心を昂ぶらせ、羽根休める二対の鳥籠を手中に収めんとした(貴女は中庭が完全な半円の形をしていることと、客室がその半円を綺麗に六等分している構造に目を付けた)」

ラン「そしてその上で封印を両断する閃光の理を詠唱した!(つまり、鏡による光の反射の原理を利用して、暗闇の中でも正確に、はるか遠くの密室を開けられるようにしたんです)」


醍醐「…」


ラン「今宵、吸血鬼の舞踏を呼び醒まさん(昨夜の犯人の行動を整理しましょう)」

ラン「彼の者は先んじて猟犬の主と瞳を持つ者を対なる魔道の礎としたの(まず初めに、沼田さんと高遠さんを襲い地下に監禁し、二人のブレードキーを奪っておく)」

ラン「そして冥界への神鏡を、闇に飲まれし半月の領域へと引きずり降ろし…(美樹本殺しの為にその場を後にした犯人は、地下室のドアを塞いでいたあの大鏡を中庭の入口まで運び…)」

ラン「鏡の境界を方陣司る軌道へと定め、閃光の蛇を解き放った…!(その向きを『ある角度』に調整し、3号室の廊下から現場の密室を破ったんです)」


醍醐「…」


ラン「即ち、境界面と領域面を同化させる事で…(『ある角度』とは、中庭の出入り口に対して鏡を完全に平行に置くこと)」

ラン「女帝と皇を相対させる一刹那を創り出し…(要するに、3号室の窓から、鏡を通して美樹本さんの部屋のドアが見えるようにした)」

ラン「解き放たれし蛇は皇帝の喉元へ衝き穿つ(鏡に当たった[Y]の光はうまい具合に密室に反射し、犯人はまんまと彼の部屋に入ることができた)」





醍醐「…えらく手間のかかることをするものだわ」


ラン「ノブル・レッドに選択は残されていなかった…(犯人にとってはそうするしか方法がなかったんです)」

ラン「何故なら、闇に飲まれし領域は解呪の燐光を容易く溶かしてしまうから(例えば、真っ暗闇な中庭の入口から手鏡を使って闇雲に開けようとしても、どのあたりに鍵を向ければいいかわからないどころか…)」

ラン「更に意思を失った燐光は夜を彷徨い、猟犬共を目覚めさせる恐れがある(ちかちかと振り回されるレーザー光の様子が、どの客室の窓からも丸見えになってしまいます)」

ラン「あの夜…吸血鬼は供物を並べてでも封印を貫かねばならなかったのよ(でも部屋の廊下からであればそんな心配はなく、ある程度目印を定めて正確かつ安全に狙うことが出来る)」


醍醐「…」


ラン「そして皇の間…咎人は観測の徒に牙を剥き、仮初の煉獄を埋め込んだ後…(そうやって4号室に忍び込んだ貴女は美樹本さんを殺害後…前述のように遺体を濡らし、同じ要領で現場を密室にしました)」

ラン「諸手から神鏡を手離し媒介者たちを虚無の世に引きずり落とした!(大鏡を片付けて地下に戻り、高遠さんの前で沼田殺しを行ったのは、その後の出来事だった)」

ラン「冥界の鎖を彼の者と繋いだ理由は、夜蜘蛛の糸繭を警戒しての事(地下の二人を縄で縛っていた理由は、一つは美樹本殺しの最中に目覚めて逃げ出されては困るからですが)」

ラン「加えて、瞳を持つ者に解呪具の在処を気取らせぬため(殺害ターゲットでは無い高遠さんが自分の鍵を盗まれていることに気付かれないようにするためでもあったんです)」


醍醐「…待って頂戴」


ラン「…」

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 12:20:49.92 ID:pBbrw7Aw0


醍醐「ランちゃん、貴女はさっきから可能性の話しかしていないわ」

醍醐「そのトリックは、城内にいる誰もが実行可能な方法で、私にしかできないわけじゃない」

醍醐「貴女が窓から見た光とやらも、記憶違いと言ってしまえば容易く破綻するこじつけに過ぎない」


ラン「…」


醍醐「それでも私が犯人だと断言するからには…」

醍醐「確かな物的証拠というものを持っているんでしょうね?」


ラン「…」





ラン「フフ…吸血鬼よ。最早その牙と翼は隠しようが無いのだ(貴女は既に自白に近い行動をとっているんです)」


醍醐「!」


ラン「常人が為す術無く吸血鬼の贄となるが如く、咎人が断罪を防ぐこともまた出来ない!(何故私がこの寝室まで入ることが出来たのか…貴女は分かっているはず)」


110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 12:27:28.93 ID:pBbrw7Aw0



ラン「ノブル・レッドよ…たしかに其方の策略は我が倫理をも捻じ曲げんとした(確かに犯人は完璧な殺人劇を考えました。でも、所詮は机の上での話)」

ラン「しかし因果の歪みをすべて予測することは神にしかできない(いざ幕が切って落とされ、登場人物たちが動き始めると、思わぬアクシデントが次々起こってしまった)」

ラン「幾らその高みに近付こうと、人の子が神の域に達することは無い(その障壁にもめげずに知恵を振り絞り続けても、最後には…狂い、歪み、綻んでしまった…違いますか?)」


醍醐「…」


ラン「皇の観測者を滅した煉獄の章…(美樹本さんの部屋の、浴室の壁に刻まれた不可解なキズ…)」

ラン「私は、解封の具を振り回し綻びを潰す吸血鬼の姿を垣間見た(何者かがブレードキーの切っ先を潰そうとした痕跡が残っていました)」


醍醐「…」


ラン「望みを捨てぬ観測者が死者の腕に身を委ねるとは思えない(施錠された部屋の中で住人である美樹本さんが鍵を壊す理由は考えられない)」

ラン「ゆえに闇に飲まれし綻びを紐解けば、古城の吸血鬼を滅却する死線となりうる(だとすれば、あれは犯人がなんらかの辻褄を合わせるためにやったと考えるのが自然です)」

ラン「ならば、彼の者が暗幕の内に隠している死線の正体は何か?(では、美樹本さんの自殺に見せかける上で壊れていなければならなかった鍵とは何か?)」

ラン「吸血鬼の幻術が虚空の群れと成り果てる理とは何か?(それは一つしかない。凶器に使うはずの、他ならぬ彼の部屋のブレードキーです)」


ラン「…真言は一つ。あの夜、咎を背負う古城の吸血鬼は神に見放され…(犯人は美樹本さんを殺す時、凶器を選んでいる余裕が無かったんですよ)」

ラン「その威光に焼かれる代償を負ってしまった(そこから導き出される答えは一つ…)」


醍醐「…」


ラン「昨夜、高貴なる紅は宵闇に溶け、帝の領域へと足を踏み入れた(犯人は皆が寝静まる頃を見計らい、前述のトリックを使って美樹本さんを殺しに行った…)」

ラン「だが首筋に牙を剥こうとしたその刹那、観測者は迷える羊の皮を自ら剥ぎ…(でも…犯人が4号室に忍び込んだその時、美樹本さんはまだ起きてたんじゃないですか?)」

ラン「古城の隅での人狼と吸血鬼の喰らい合いが始まってしまったのではないか?(そのせいで突発的に、お互いがブレードキーを手に『殺し合う』羽目になってしまった)」


醍醐「…」


ラン「その闘争の果て、高貴なる紅の魔力は人狼を超えはしたが(結果、貴女のこの上なく強い殺意が勝り、美樹本さんの殺害には成功しました)」

ラン「因果の歪みを正すには僅かに弱く…(両隣の部屋の住人が、どちらも隣室からの争いの音を聞ける状態ではなかったことも幸いした)」

ラン「黙示の果てに暗躍する自らの姿が晒される刻印を刻みこんでしまった(でも貴女は…美樹本さんの殺害に自分の部屋の鍵を使ってしまった)」


醍醐「…」


ラン「そしてその刻印を塗り潰すために、あの解封の爪痕が刻まれたの(浴室の傷は、その隠ぺいのために4号室の鍵を壊す過程で付いたもの)」

ラン「仮初とはいえ聖骸を手にかける愚は行いないから(自殺に見せかけた遺体を二度刺すわけにもいきませんからね)」


醍醐「…」


ラン「即ち、咎を背負いし古城の吸血鬼は、今や結界を展開することが出来ず…(つまりこの事件の真犯人は、鍵を失い、部屋の施錠が出来なくなっている人間…)」

ラン「我が断罪の眼光を防げぬ無防備な人の子に過ぎない!!(罪を告白させる堕天使を、拒むことが出来ない人間…!!)」


醍醐「…」



ラン「吸血鬼アルカードよ、貴様が本当に咎を背負っていないのならば…(それでもまだ、貴女が身の潔白を主張すると言うのなら…)」


ラン「正義の剣を、我が魂に示すがよい…!!!(貴女の鍵を私に見せてみなさい!)」


111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 12:34:28.66 ID:pBbrw7Aw0

醍醐「…そう」


ラン「…」


醍醐「そんなに見たいなら見せてあげるわ…私の剣を」


ヂャカッ!

ヒュッ!

ラン「フン、我が眼は高貴なる紅の軌跡を既に見切っているぞ!(そうやって斬りかかってくることを…予想してないとでも?)」


…バンッ!

醍醐「!?」


三澤「殺人犯め、大人しく降参するんだ!」


ドカドカッ!


醍醐「あぐッ…!?」


ラン「貴様の領域は我が手中に堕ちているのよ(前もって、みんな部屋の前に集まってもらっていたんですよ)」


黒服「醍醐様…」


モリアーティ「まさか…貴女が犯人だったなんて…」


醍醐「…」

醍醐「そういうこと…あの脅迫状騒ぎも全部貴女の仕業だったのね」

醍醐「みんなの不安を煽って自分の部屋を戸締りさせた。それがしたくてもできない犯人を炙り出すため…」


ラン「…」


醍醐「でもそれだけじゃないみたいね…貴女、いつから私に目を付けてたの…?」

醍醐「どこで私は間違ったのかしら?」


ラン「幻術に生じていた歪みはふたつ…ひとつは仮初の黙示(…二つあります。一つは、美樹本さんの遺言)」


―『凶器にブレードキーを使ったのは、殺人犯の異常性を強調し、かく乱させるためだった』


ラン「狂気は策略を隠す暗幕のようなもの…しかし自らの影を晒してしまう暗幕に意味は無い(確かにあれで犯人の異常性は強調さはしましたが、隙を作れる被害者の知人が犯人であるという推理が強まりました)」

ラン「居城を地獄に転ず程の覚悟ならば、怯えた羊の群れなど容易く操れた筈(仮に美樹本さんが犯人なら、当然途中で自分が容疑者になり計画に支障が出る可能性に気付いていた筈…)」

ラン「ノブル・レッドにそれが出来ないのならば、手こずる相手である筈がないと考えた(そんなリスクを背負うくらいなら、なにかもっと別の方法で異常性を強調したはずです)」


醍醐「…」


ラン「もう一つの歪みは、其方が六対の籠の前で云った言葉(二つ目は…今朝、4号室の扉の前で貴女が言っていた言葉…)」


―醍醐「ねえ皆、目崎さんが支度できたって。食堂に行きましょ」


ラン「其方は不揃いの羊共に向かってそういった(あの時『全員』揃っていませんでした)」

ラン「瞳を持つ者たちが黙示に飲まれている事など知る由もないあの刻…(高遠さんと沼田さんが犯人によって礼拝堂に運ばれていることを知らないはずなのに…)」

ラン「手早く惨劇の幕を上げようとする其方に、吸血鬼の片鱗を垣間見た(二人のことを探そうともせず、さっさとその場にいる人たちだけを食堂に連れていこうとした事が引っかかっていました)」


醍醐「…よく見てるわ…憎々しいほどに」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 12:41:25.39 ID:pBbrw7Aw0



ラン「聞かせて貰おう。其方が吸血鬼に成り果てた理由を(教えてください。醍醐さん、何故貴女はあの四人を?)」

ラン「煉獄に落された者達は貴女の世界に何をもたらしたというのだ(彼等が通じ合っていたという偽遺言のメッセージが本当なら、貴女の動機と何か関係が?)」


醍醐「…」


ラン「…」



醍醐「…この古城の下にはね、奴等がどうしても闇に葬っておきたい事件の証拠がいくつも眠っているの」

醍醐「その中には…人知れず奴等に殺された私の父の遺体も、ね」


ラン「…!?」


三澤「どういう意味だ?」


醍醐「…」

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 12:55:13.92 ID:pBbrw7Aw0


醍醐「生まれたときに母を亡くしていた私にとって、父はたった一人の家族だった…」

醍醐「家に帰ってこないことが多かったから遠い親戚に預けられてはいたけれど」

醍醐「警察官として皆を護る父の姿が好きだったし、会える日をいつも楽しみにしていたわ」


醍醐「…でも、そんなささやかな幸せは長くは続かなかった」

醍醐「あれは、私が大学の卒業を間近に控えた冬…父と同じ警察官を目指していた頃」

醍醐「突然家に刑事が訪ねてきて、父が何者かに殺されたと聞かされた」

醍醐「父を失ったショックは凄まじかった。でも…」

醍醐「犯人が早々に逮捕され、父の遺体が検死から戻って来た時に本当の衝撃が訪れた」


モリアーティ「…?」


醍醐「…遺体と初めて対面した時、私はハッキリと確信した」

醍醐「この遺体は父じゃない…とね」

醍醐「父の顔は犯人によってズタズタに切り裂かれていて、それを写真を頼りに復元したとエンバーマーは言ってた」

醍醐「でも私が感じた違和感はそんな物じゃなかった…うまくは言えないけど、家族にだけわかることがあった」

醍醐「その日から私は父の死の真相を突き止めることに決めた」


ラン「…」


醍醐「訪ねてきた刑事も事件の詳細を知らないようだった。そのまま何の手掛かりも掴めずに何年も経ってしまったけど…」

醍醐「ある告発文の写しが父の遺品の中から出てきた事と、それを基に出所した犯人から情報を吐かせたことで、一気に事件の全体像が見えてきた」


醍醐「父を殺した本当の犯人はあいつらだった…」

醍醐「奴等は警察内部に取り入って上層部の汚職や身内の犯罪を、証拠ねつ造と握り潰しで強引に処理していたの」

醍醐「罪のない人間を法の正義の名の下に裁く…そんな悪魔じみた所業が何年も繰り返され、父はそれを暴こうとして殺された」

醍醐「そのときあの四人の誰かが手を汚してしまっていたから、全く別の死体を用意してそれにすり替えられていたの。無関係の殺人として処理するため」

醍醐「そして、警察側はそれを半ば『黙認』していたから身代わりになった犯人は軽い罪で処理されていた…」


醍醐「それが父の死の真実だった…」

醍醐「父は…自分が信じ続けてきた正義に殺された…!!」

醍醐「だから私はその正義に復讐することに決めたのよ!!」






114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:04:34.87 ID:pBbrw7Aw0


数か月前 夜 ネレイド城 1F 大広間



ルシファー『おお、たったひとりでよくここまでの舞台装置を作ったもんだね』


醍醐『…誰!?』


ルシファー『ボクが誰かなんてどうでもいい』

ルシファー『重要なのは、キミがこうして本当の真実に到達したことだ』


醍醐『…』


ルシファー『キミの見立ては正しい。彼等がワザワザこんな辺境の土地を持っていたのは処分に困ったものを廃棄する為だろう』

ルシファー『この国では更地よりも建物が乗っかってる土地の方が安上がりだ。開発が頓挫した廃城はゴミ捨て場にうってつけって事さ』

ルシファー『本物の父親の遺体も、そのへんの土の中から見つかったんじゃないかな』


醍醐『な、なんで…貴女…そのことを…』


ルシファー『キミはこんな話を知ってるかい?』

ルシファー『ある動物実験にて、籠の中のハトはボタンを押せば餌が出ると学習したそうだ』

ルシファー『だが、タイマーで自動的に餌を出す仕組みに変えて再開すると、ハトは次第に考え始めた』

ルシファー『今なぜ餌が出たんだ?…とね』

ルシファー『そしてハトは、餌が出たときの行動を延々と繰り返すようになった。鳴き声を上げるとか、羽ばたくとか、その行動によって餌が出ると信じて…』


ルシファー『これは、ハトの迷信行動と呼ばれる現象だそうだ』


醍醐『…』


ルシファー『キミもかつては法を守るだけで幸せに暮らせると妄信するハトだった。殆どの人間がそうだ。でもキミはもう違う』

ルシファー『自分自身のために、何をすべきかを追い求めている。ボクはそんな人たちを陰から支えるためにここにいる』


醍醐『…』



ルシファー『…ただ、キミが呼ぼうとしている探偵達の中にちょっと縁のあるやつがいてね』

ルシファー『よければトリックの中に少しだけ彼女と対峙する仕掛けを挟んでくれないか』


ルシファー『あとはキミの邪魔にならないようにするから』




115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:13:38.53 ID:pBbrw7Aw0


3日目 夜 ネレイド城 2F 8号室(醍醐)



醍醐「そこからは貴女の推理した通りよ」


ラン「…貴女は真相を突き止めるだけで良かった」

ラン「亡き父の想いを継ぎ、彼等を法の下で裁くことを目指していればきっと断罪できた…!」

ラン「自らの手を鮮血に染め処刑する…そんな『傲慢』な思想を振り払っていればこんな幕引きには…!」


醍醐「…驚いた」

醍醐「大切な人を奪った私にそんな綺麗事を言えるなんて。私には今でも無理だわ」

醍醐「貴女がここまで厄介だと知っていたら、あの娘の反対を押し切ってでも絶対に呼ばなかったのに…失敗ね」



ラン(『あの』娘…?)

ラン「!?」ぐいっ


醍醐「…」


ラン「なにっ…!?」


醍醐「…そのとおり。私の中にあの娘はいない」

醍醐「でも伝言を預かってる…『この城の、最も忌むべき者の下で最後の答えを待つ』…だそうよ」


ラン「…」



ダダッ



高遠「あっ、待って!何処に行くの!?ランちゃんっ!!」


醍醐「追わない方が良いわよ」

醍醐「彼女の向かった先は、もう私たちのそれとは違う世界」

醍醐「彼女は私のなかにいたあの娘と同じ…人ではないもの」


高遠「え…!?」





醍醐「それに…もうすぐ私の最後の仕掛けが動く」

醍醐「証拠をまるごと隠滅する仕掛けが…」





…カチリ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:20:56.85 ID:pBbrw7Aw0


3日目 深夜 ネレイド城 1F 礼拝堂



ルシファー「…やあ、久しぶりだね、妹よ」

ルシファー「古城連続殺人事件の究明、見事だった」


ラン「…」


ルシファー「最も忌むべき者…それは、ボク達の父君のこと。ボクの言葉を覚えていてくれたんだね」

ルシファー「実はキミと会うのはこれで4度目なんだけど…それはまあいいか」


ラン「ルシファー…」

ラン「答えろ、何故貴様はこんなことを…」


ルシファー「なぜ人を唆して凶行に及ばせるのか…キミは同胞にそれを問うていたね」

ルシファー「答えはズバリ、人間の幸福追求」


ラン「…」


ルシファー「こう見えてもボク等悪魔は人間を愛してやまない種族なのさ」

ルシファー「困っている人間を見ると、思わず助けたくなってしまう」

ルシファー「だから…幸せになって欲しい一心で彼等に完全犯罪という名の果実を提供する」


ラン「禁断の果実だと…?」


ルシファー「まぁ、主にキミのせいで『完全』という部分の保証が出来なくなってしまったが…」

ルシファー「そういえば不思議とそれを理由にNOと言った人間はいなかったな」

ルシファー「きっと彼等も知っていたんだ。自分の幸福が最早殺人の先にしか無いのだと」


ラン「ふざけるなっ!」

ラン「貴様等の茶番劇でいったい何人の生命が失われた!何人不幸にした!!」

ラン「法を犯し、大勢の犠牲を伴って得た幸福など虚像に過ぎないっ!!」


ルシファー「…僕らが殺した奴らは犯人の家族を蔑ろにして幸福を得ていたよ。そしてあれは紛れもない実像だった」


ラン「それは…」


ルシファー「ラン、キミの言うそれは人間に法や戒律を守らせるための常套句だ。『守れば幸せになれる』と言外に言うけど」

ルシファー「だが断言するよ。それらは人間から『善悪』を考える力を無くさせているんだ」

ルシファー「正義の行いというものは、違法か合法かの論では決して測りきれないからだ」


ラン「なに…?」


117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:24:01.04 ID:pBbrw7Aw0


ルシファー「ふざけているのはキミのほうだ。『善・悪』と『合法・違法』は何の意味も無く別の言葉にされているわけじゃない」

ルシファー「逆に聞こうか。世の中の富豪どもは、みんな真面目に法律を守ったからああなれたのか?」

ルシファー「そこらに転がってる路上生活者は、法を破り続けた結果ああなったとでもいうつもりか?」

ルシファー「法では裁けない脱法行為の存在を認めているくせに、現行法に抵触してしまう善行の存在なんて考えもしないと?」


ラン「…」


ルシファー「…忌々しい。結局法など他より強制力が強いだけの自分勝手な命令に過ぎないじゃないか。支配者の。ひいては愚父の」

ルシファー「人を縛り付けているのはとっちだ?人を不幸に追いやっているのはどっちだ!」

ルシファー「自分の創造物ひとりひとりと真剣に向き合った事すら無い腑抜けが、一人前に幸福を語るなっ!」


ラン「ルシファー…」


ルシファー「ラン…我が妹よ!今のキミなら理解るはずだ!」

ルシファー「種ではなく、孤としての人間を、悪に堕ちた罪人をその目で見てきたキミならっ!」

ルシファー「父上の創り給うたこの世界が、如何に嘘に塗れているのか!理解るはずだ!」


ラン「違う!復讐で生まれる幸福など無い!」


ルシファー「奪われた者達は復讐しなけりゃ何も生めないのさっ!!!」



ブオッ!


ラン「!?」

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:29:18.14 ID:pBbrw7Aw0


3日目 深夜 ネレイド城 1F 廊下



ズドオォォン


ゴゴゴ…



三澤「な、なんだ!?地震か!?」


黒服「どこかが爆発した音では…」


高遠「醍醐さん、貴女が言う その最後の仕掛けって…?」



醍醐「…もうすぐ、ここは崩れ去る」


高遠「えっ…!?」


醍醐「ここはね、全ての殺人が終わった後に方かいさせる計画になってるの」

醍醐「幾らトリックで小細工しようと、現代の捜査技術で詳しく現場を検証されればひとたまりもない」

醍醐「完全犯罪の為には『都合のいい証言者』だけを残して、それ以外の一切合切を隠滅しなければならない」

醍醐「それが私と『あの娘』が出した結論だったから」


高遠「…」


醍醐「さっきのは、城の出入り口が塞がった音」

醍醐「その端から徐々に崩れていって、逃げ場が狭まっていく…生存者をある一点に誘導するために」


黒服「そ、それはどこなのですか!?」


醍醐「地下よ」

醍醐「そこなら崩落が収まるまで安全に避難できるようになってる」

醍醐「…城の火の手は外の人間にも分かるくらいに大きくなっていくから」

醍醐「通報受けた救助隊も駆け付けてくれるって算段でね」


黒服「急ぎましょう!」


高遠「急ぐって…で、でもさっきランちゃんが奥に…」


三澤「いや…」


ゴォォオオッ…


三澤「炎のまわりが意外に速い…向こう側はもう塞がれているようだ!間に合わん!」




「待ってくださいっ!!」

119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:31:00.10 ID:pBbrw7Aw0


黒服「モリアーティ様!?それと…」


赤羽根「」

モリアーティ「ならせめて彼だけでも、連れて帰ってあげないと…」ぜぇ…はぁ…


三澤「おぶってきたのか…?」


醍醐「放っとけばよかったのに。もう息してないでしょう?」


モリアーティ「貴女の父が生きていたならば、彼をどうしたと思いますか?」


醍醐「…」


モリアーティ「…少なくともランちゃんならこうします」


黒服「モリアーティ様、私も運ぶのを手伝います。地下へ急いで…!」

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:43:22.86 ID:pBbrw7Aw0


3日目 深夜 ネレイド城(崩落中) 1F 礼拝堂



景色が一変した。ほんの一瞬で。

ルシファーが目の前の何かを手で薙ぐような動作をしたと思ったら、何時の間にか自分の身体が地に伏していた。

…吹き飛ばされた?手の風圧だけで?



状況を確かめるより前に、全身の痛みと耳鳴りがやってきた。

彼女の尋常ではない膂力に屈し言うことを聞かない手足を一旦置いて、とりあえず顔だけ上げる。

此方に向かって歩く堕天使の躰から、ばっ…と黒薔薇が咲くように、威圧の象徴ともいうべき六対の黒翼が生えていくのが見えた。



ラン「…」



かつて熾天使ルシフェルと呼ばれた天使長。今は傲慢の罪を背負う堕天使ルシファー。

圧倒的な上位存在が今、明確なる害意を持って、近付いてきていた。



ルシファー「さぁ、我が妹よ」

ルシファー「堕天使ルシファーの最後の問題に答えて貰おうか」


ラン「!」


ルシファー「キミの目の前には、キミの最愛の人を奪った者が立っている」


ラン「!!」


ルシファー「その最愛の人の死には正当な理由も命を落とした意味も無い」

ルシファー「ボクの我儘の結果であり、ただそこにいたからであり、キミと深く関わっていたからであり…」

ルシファー「ただ…堕としたかったから、生命としての尊厳を蹂躙された」


ラン「…ッ」


ルシファー「そんな悪行をはたらいたボクが、こともあろうに…」

ルシファー「こうして父上の創り給うた世界に立つことを許されている」

ルシファー「キミは…その理由を説明できるかい?」


ラン「ルシファー…貴様は…!!」


ルシファー「大切な相棒を奪ったボク達を消し飛ばしたいだろう?報いを受けさせたいだろう?」

ルシファー「それが叶わぬ自分の無力さが、どうしようもなく憎いだろう?」

ルシファー「この世界はそんな連中であふれかえっているんだ!」


バサッ


ルシファー「さぁどうする!我が妹よ!」

ルシファー「襲い来る不条理に怯えて暮らす者だらけの世界を肯定するのか!?」

ルシファー「そんな父上に背きボクと共に狂った世界の変革を目指すか!?」


ルシファー「選ぶんだっ!!」

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:52:56.32 ID:pBbrw7Aw0



ラン「…」


ルシファー「…何故…だ…何故堕ちない!」

ルシファー「キミはボクの言葉を受け止めている。理解もしている!」

ルシファー「そうだ、キミは犯人の自殺を許したときだって簡単に堕ちそうになっていたじゃないか!」

ルシファー「船の上で濡れ衣を着せられたときだって、かけがえのない人を奪われた今だって」

ルシファー「なのにいつの間にか立ち直って…謎を解いてしまう…」


ルシファー「何故だ?何故キミの翼は白いままでいられる…?」


ラン「ルシファー…」

ラン「我が相棒は、貴様への復讐など望んでいなかった」


ルシファー「…は?」


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 13:56:13.45 ID:pBbrw7Aw0





3日目 昼 ネレイド城 1F 5号室(赤羽根)



赤羽根「……ゃ…ぅ…」


ラン「…赤羽根さんっ!?」


赤羽根「馬鹿…やろう…」


ラン「赤羽根さんっ!?い、意識が…もどって…!」


がし


ラン「…ほへ?」


…ごちん!!


ラン「みぎゃっ!?」


赤羽根「痛っ!」




赤羽根「ててて…病人に頭突き、させんじゃないっつーの…」


ラン「ぐにゅにゅ…わ、わらひの許ひ無ひに鉄槌を打ち込むにゃぞ…(ず、頭突きしろなんて一言も言ってませんっ)」ひりひり


赤羽根「お前今、馬鹿なこと考えてただろ」


ラン「…え?」


赤羽根「俺の仇をとろうとか、犯人殺してやるとか、考えただろ」


ラン「…」


赤羽根「目ぇ見りゃ分かる。世の中憎んで屋上から飛び降りた妹そっくりの目だったからな」

赤羽根「他でもないお前がそんなことでどうする!しっかりしろ!!」


ラン「あ…相棒よ、それは…」


赤羽根「言っとくけどな、もし俺が死んで、お前がその仇討ちで犯人をぶっ殺したとしてもだ」

赤羽根「俺はぜんっぜん嬉しくないんだよ!」


ラン「…で、でも」


赤羽根「…俺だって敵討ちを考えたことが無いなんて言わない」

赤羽根「世の中上手くいかないさ。いまだに正直者はバカ見るし、考えれば考えるほど不公平に出来てるって実感する」

赤羽根「そりゃ絶望だしヤケになるよな。まかり間違えば俺だって犯罪者の道を進んでたかもしれない」

赤羽根「でも、そうはならなかった。ラン、おまえと出会ったからだ」


ラン「…」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:02:44.83 ID:pBbrw7Aw0


赤羽根「天使という生き物が本当にいて、正義を貫くために頑張って生きてると知った」

赤羽根「あのとき俺は『この世界に希望を持ってもいい』と本気で思えた」


ラン「…」


赤羽根「なぁ、俺たちは世の中をどういう世界にしたくて生きてきたんだっけ?」

赤羽根「仇なんぞお前がとるまでも無い。どっかのバカが手を汚さなくたっていい」

赤羽根「どうしようもねぇ悪党にはこの世界そのものが、法が、どっかの神様とやらが、絶対に因果応報の報いってやつを受けさせる」

赤羽根「そういう世界を創るために…俺たち人間が地べた這いずりまわって生きているんだろうが!!」

赤羽根「お前ら天使だってその想いは同じのはずだろ!それを…」


赤羽根「復讐なんて余計なことして、せっかく作った世界を台無しにしようとするんじゃない!」


ラン「っ」


赤羽根「いつつ…」


ラン「…」


赤羽根「復讐も自殺もおんなじだ。『世界は絶対に良くならないから、マジメに生きたくないから』って絶望してる奴がするもんだ」

赤羽根「世界を真剣に生きてる俺たちは、その考えを絶対に認めちゃいけないんだよ…!」

赤羽根「それを、絶対にわすれるな…真犯人を…暴いて…」

赤羽根「そして…罪を…」


がくっ


ラン「…あ」

ラン「…赤羽根さんっ!?」


赤羽根「…zZZ」


ラン「…」


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:09:43.26 ID:pBbrw7Aw0


3日目 深夜 ネレイド城(崩落中) 1F 礼拝堂





ラン「ルシファー、貴様の言う通りだ。救済の道程は終焉亡き暗黒の道」

ラン「それでも我等は、決して福音を止めてはいけない」


ルシファー「…だからそれが無駄だというんだっ!」

ルシファー「キミに言われなくたっても当の人間だって考えているさ!それこそ有史以前から数え切れないくらいだ!!」

ルシファー「だがそうやってもう何千年経った!?全人類の幸福を目指す救世主がいったい何人産まれたと思う!?」


ルシファー「この古城の主ヴラド3世だって、ただ民衆を守るために暗黒時代を駆け抜けた英雄だった!」

ルシファー「その結果かこれだ!畏敬の念すら抱いてもらえず、彼の生涯は化け物を見るような嫌悪でいっぱいだ!」


ラン「…それでも何も変わらなかった。この身果てようとも変わることは無いかもしれない」

ラン「私は全てを奪われ、そして尽きる。ただそれだけの道を征くのだろう」


ルシファー「理解っているなら何故…!」


ラン「報われないからなんだというんだッ!」


ルシファー「…!?」


ラン「たとえ世界が永久不変の理を掲げようとも変革の意思を捨ててはならない!」

ラン「悲劇を創る牙が救世の掌より多くとも、万物の祝福を止めてはならない!!」


ルシファー「な…!?」


ラン「法で善悪は決まらないといったな!ならば此方も言わせて貰う!」

ラン「報われるか否か、自分の損得で善悪を決めるな!ルシファー!!」


ルシファー「こ、この…!」


ラン「天の名に於いて貴様を浄化する!」



ラン「大人しく平伏し、大罪を悔い改めよ!ルシファーッ!!」



ルシファー「この分からず屋めぇ!」


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:15:21.78 ID:pBbrw7Aw0


3日目 深夜 ネレイド城(崩落中) B1F



ゴシャァン!

ガラガラガラ…



モリアーティ「ひゃぁっ」


三澤「うおおっ!?」


醍醐「…」


高遠「なに…この音、普通じゃない」

高遠「崩れる音に交じって…なにかがぶつかるような…」


黒服「ほ…本当にここにいて大丈夫なんでしょうか…」おろおろ



ズガァァッ!!



モリアーティ「ひゃああ」


高遠「…『人ならざる者』」

高遠「ランちゃん…なの?」






126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:19:20.74 ID:pBbrw7Aw0


3日目 深夜 ネレイド城(崩落中) 上空



ルシファー「くそっ」


漆黒の堕天使はありったけの怒りを妹にぶつけるが、もう遅かった。

上空から見下ろす吸血鬼伝説の古城は、最早見る影もなくただの瓦礫となっているが、

その瓦礫の上に立ち、しっかりと此方を見据えている大天使は攻撃を受けても尚傷一つなく健在だった。


ルシファー「くそぉ!」


ランの啖呵と同時に現れた、彼女の背の『翼』は彼女の覚醒の証であり、忌まわしき父の力の証であり

…それは堕天使ルシファーの、敗北を意味する白翼であった。


ルシファー「…戻しやがった。大天使の力を」


地上に堕ちた天使はその力を剥奪される。

再び天界に舞い戻るには、試練を超えてその力を取り戻さなければならない。

そして彼女の試練は我々全柱の浄化。つまり、こういうことである。



…父上は既に、ランによってルシファーが浄化されたと、見做した。



ルシファー「…ふざけるなッ!!」


まだ決着はついていない!!

叫んでそのまま紅い軌道を描く。上へ上へと。そして成層圏ギリギリで目下のランに照準を合わせた。


ランは瓦礫の山から動いていない。身構えているのか、此方を見失ったのか。

だがこちらの思惑に気付こうと関係無い。この技は避けようと思って避けられる技では無いからだ。


主神が天より放つ裁きの鉄槌。その名を騙りながらもその破壊『のみ』を模倣した冒涜的な一撃

傲慢極まる堕天蹴撃<フォーリンダウンストライク>


ルシファー「堕としてやる…ボクの…全力で!!」



亜光速の速さで敵を突き穿たんとす、ルシファーの気迫と執念と怨嗟の閃光を

大天使ランは瞬きせず見据えていた…



………

……



127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:23:46.37 ID:pBbrw7Aw0



後日 未明 ネレイド城跡




ラン「…ルシファー」

ラン「貴様等の眷族となった人間は、みな晴れやかな顔をしていたな。自分の行いが真の正義であると信じきっていた」

ラン「その清々しい顔のまま人を殺していた者もいるだろう。確かに幸福を勝ち取る一つの道なのかもしれない」


ルシファー「…」


ラン「しかしそれは、ほんとうに全人類が歩むべき道なのか?」

ラン「そうやって己の正義を疑わぬ者しかいなくなった世界を、人は何と呼ぶだろう?」

ラン「…地獄だ」


ルシファー「…」


ラン「人は、自分の事を悪い人間だと思っているから良い人間になろうと努力をする」

ラン「しかし己の罪や落ち度に全く目を向けない人間は、どこかで何かが起きてしまったとき―」

ラン「自分は善人なのだから、邪悪な心は他所にしか無いのだと思い込んでしまう」

ラン「正義の鉄槌を与えようとする心は、悪魔の心によっていとも簡単に暴走してしまう」


ルシファー「…」


ラン「だから、父上は人間に原罪を背負わせた」


ルシファー「…」


ラン「貴様の言う通り、これは生物としての幸福を与える為ではない。それは…人間を人間たらしめる為」

ラン「原罪とは、この世界を…他者と共に歩み支え合う者達で満たすために与えられた福音なのだ」

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:29:17.46 ID:pBbrw7Aw0

ルシファー「…よくもまぁ、そこまで馬鹿正直に物事を綺麗な方へ綺麗な方へと解釈したものだ」

ルシファー「まるで父上の説教を聞いているようで反吐が出るよ」


ラン「…」


ルシファー「でも、キミは父上とは違う」

ルシファー「たとえ屁理屈でも…生半可な覚悟で綺麗事を扱っていないことがよくわかった」

ルシファー「ほんのちょっぴりだけど、ここに響いた」


ラン「…ルシファー」


ルシファー「その妹の決意に免じて、ボクは暫く地獄で大人しくしておいてやるとしようか」


ラン「…」


ルシファー「…ただ、改めてもう一度言わせてくれ。人の醜い部分に触れ、世の矛盾に翻弄され、愛する者を失って…」

ルシファー「それでも尚他者に見返りを求めず、決して報われぬ滅私奉公をし続けようとする君の思想は…」

ルシファー「些か人間離れしすぎている」


ラン「…」


ルシファー「たとえその先に全人類の祝福が待っていようと、大勢に悠久の苦痛を強いる生き方よりは…」

ルシファー「この手を汚してでも一人一人の幸福のみを尊重する方が、より理想の世界に近付ける」

ルシファー「それは今も変わらない」







ルシファー「…だから必ずまたキミの前に戻ってくる」

ルシファー「もっと、もっと難しい謎をキミの胸に刻むために」


ラン「…」


ルシファー「…じゃあ、また…いずれそのときに…」

ルシファー「決着を付けよう…ラン…」


バキンッ










ラン「何度でも蘇ってくるが良い。如何なる真理が闇に飲み込まれようとも、私は必ずそれを掬い上げて見せようぞ」


ラン「天神の名の下に…そして…」







ラン「我が魂の誇りにかけてっ!!」

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:35:44.43 ID:pBbrw7Aw0



エピローグ






担当医は目を丸くしていた。


多くの場合、病院に運び込まれるまでのあいだの処置が生死を決めるという。

しかしそれは街中の人身事故などの5分10分の事を言うのであって

死に瀕した人間がその状態で二日弱も持ちこたえるなんて事例に出くわしたのは初めてだった。


その場に居合わせたイギリス人医師がやったという適切な医療処置を加味しても

奇跡と言っても差し支えないほどにその男は回復した。


君は随分神様に愛されているみたいだね。


男の病室で担当医は『奇跡』のことをそう表現した。

思ったことを素直に口に出しただけだったのだが

それを聞いた男は、喜ぶというよりは少し困ったような顔をして、こう言った。


「むしろ嫌われているんじゃないでしょうか。愛娘を誑かす悪漢だと思われて、あの世から追い出されただけなのかも」


その言葉の真意が掴めずにいる担当医をよそに

『アカバネ』と書かれたネームバンドの男はじっと窓の外の蒼空を見上げていた。





130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:42:59.39 ID:pBbrw7Aw0



数か月後 天界 唯一神の間



唯一神「私は全てを祝福の光で満たすため、この世界を創り上げた」

唯一神「人々が障壁を乗り越え、友が友を祝福し、それが円環となり繋がる楽園…」

唯一神「そういうふうに、万物を産み出したはずなのだがな」


唯一神「…円は万物を作る図形だが、同時に生まれたものと正反対の物を作り調和を取ろうとする」

唯一神「正義と憤怒…知恵と強欲…信仰と嫉妬…愛と色欲…節制と怠惰…希望と暴食」

唯一神「そして…勇気ある娘と、傲慢なる娘…」


ラン「…」


唯一神「全知全能である私は…そういう意味に於いては無知無能でもあるのかもしれんな」


ラン「…」


唯一神「改めて…よくぞ試練を乗り越え戻ってきた。我が娘よ」


ラン「はい」


唯一神「天に還ってきて早々に、中位三隊に勝るとも劣らぬめざましい活躍をしていると聞く」

唯一神「現世での試練が娘をより高位なる領域へと近付ける手助けになったのならば、父として喜ばしい限りである」


ラン「はい」


唯一神「…のだが」

唯一神「大天使チエリエルから、またも何者かにプリンを盗み食いされたという報告が来ている」

唯一神「何か知らんかな?娘よ」


ラン「はい?」


131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:47:05.59 ID:pBbrw7Aw0



ラン「…」


唯一神「…」


ラン「…なんのことやら?」


唯一神「…」


ラン「我が覇道に禁断の果実無し(その時間私にはアリバイがありますよ?)」

ラン「禁忌を侵す障壁となる友の居城は茨這い回る剣山の道である(プリンがあったチエリエルちゃんのおうちに近付くにはぷち天使による厳重な監視を潜り抜けなければなりません)」

ラン「それは友無き逢魔も同様、目の壁の密室は全ての欲望を拒絶する(チエリエルちゃんが外へ出てから帰ってくるまでの間、近くの監視が目を離したのはたった一度の交替時間だけでした)」

ラン「ウンディーネの恵みを受けた我が身を瞳に映していた者は遥か遠く…(そのとき私は移動時間20分ほど離れた噴水のそばで目撃されています。私には不可能です)」

ラン「禁断の果実…その味は無類…他の追随を許さぬ甘美なる宝玉…(チエリエルちゃんのプリン…あの、50年に一度と言われた09年の出来映えを超えるプリン…)」

ラン「嗚呼、闇に飲まれし真実は我が慧眼を以てしても照らすことが出来るか否か…(エレガントで味わい深く、とてもバランスの良い果実味だったプリンを、一体誰が盗み食いしたというんでしょうか)」


唯一神「…」


ラン「…」


唯一神「…」

唯一神「ちなみにワシ知ってるからね。唯一神だから」


ラン「…」


唯一神「監視の時計弄って交代時間コントロールしてたりとか」

唯一神「んで変装して潜り込んで口裏とか帳尻も全部しっかり合うように色々立ち回ってたりとか」

唯一神「そのあと証拠を抹消しててたりとか、知ってるからね。ワシ。そういうの全部上で見てたから。唯一神だからねワシ」


ラン「…」


唯一神「…」










ラン「そんなずさんな証明で全国のミステリ読者が納得すると思うのかァーーーッ!!!」


唯一神「要らん知恵付けて帰ってきただけかよコノ馬鹿娘ェーーーーーーーーーッ!!!」


132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:56:26.97 ID:pBbrw7Aw0



ラン「ふ、ふーんだ!!」

ラン「また罰として現世で何柱か悪魔倒せって言われたって秒速で浄化して帰っちゃうもんね!!」

ラン「だってもう現世でめぼしい高位悪魔は全部浄化しちゃったもんね!!怖いものなしだもんね!!」

ラン「すぐ戻ってきちゃうんじゃ現世に堕とす試練の意味とか無いもんねーー!!」


唯一神「…」


ラン「ふぅーっはっはっはー!」






唯一神「…最近現世の各国で台頭してきてる『ソロモン72柱』とかいう軍勢がいてだな」


ラン「…ほえっ?」





パカッ


ヒューーーーー…




133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 14:59:40.25 ID:pBbrw7Aw0


数か月後 夜 D県 丘陵の大公園



美千香「そうですか…地元に帰っちゃったんですね、ランちゃん」


赤羽根「事件の連続であっという間の日々だったよ」

赤羽根「災難続きだったけど、あれはあれで楽しかったというか…」


赤羽根(たいした別れの挨拶もできずにランは昇って行ってしまった…あいつ、元気にしているだろうか)




美千香「でも、これでまたいっぱい二人きりですね」


赤羽根「うーん…そうだとよかったんだけど…」


美千香「あ、そういえば本庁に栄転するんでしたっけ」


赤羽根「ごめん。二人きりになる時間が増えるどころか、逆に少なくなっちゃうな」


美千香「ふふ。大丈夫なんですよ。実は私も丁度、東京で活動し始めないかってお誘いが来てるんです」


赤羽根「ホントか!?」


美千香「ええ。ですから向こうでもまた一緒ですよ」


赤羽根「…そう言われるとなんだか照れちゃうな」


美千香「それで…ん、こほん!」

美千香「まだ早いって言われるかもしれませんが…」

美千香「えっと、あの…その…」


美千香「わ、私と…!!」






ラン「此処にいたか我が相棒よ!!!(赤羽根さぁあんっ!!!)」だだだだ


ぎゅっ!!


赤羽根「うわぁっ!?」


美千香「!?」

134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 15:03:31.81 ID:pBbrw7Aw0



赤羽根「お、お、おまっ!?どうしてここに…!?」


ラン「おお…生命の脈動を感じる…汝の受けた加護に感謝を…(よかった…助かったんですね…赤羽根さん…)」


ぎゅうっ


赤羽根「ラン…」


美千香「」ピキピキ


赤羽根「そ、そんな事よりラン!なんでまだこっちにいるんだ!?」

赤羽根「もしかして、まだ全部浄化しきれていなかったのか…?」


ラン「その、じ、ジンとゴエティアにより召し寄せられた軍勢を相手取れと…(いや…追加で72柱浄化しろって言われちゃって…)」



赤羽根「72ィ!?!?」


美千香「くっ!?!?」



赤羽根「天に帰るまでに何年かかるんだよそんなの!」


ラン「か、神の試練は険しく果て無きものっ、それ以上はなんとも…(わ、私に聞かれても知りませんよぉ)」



バッチーン!!



赤羽根「へぶぅ!?」


ラン「!?」


美千香「私というものがありながら…私よりも若くて胸の大きい女の子にデレデレして…」

美千香「挙句の果てに私が一番気にしている数字をぉーっ!!!」


赤羽根「」


ラン「へ?」


美千香「もー知りませんっ!!だいっきらいですっ!!」んべっ

美千香「貴方なんて柔道黒帯のパパラッチに投げ飛ばされればいいんです!!」

ダダダダダ…



赤羽根「ち、ちちち違うんだ!聞いてくれ美千香ぁー!!」

ダダダダダ…



ラン「ええっ、ち、ちょっと…」おろおろ





堕天使は二度堕ちる 幕引


135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 15:07:20.83 ID:pBbrw7Aw0




こんな変なSSに長いこと付き合ってくれてありがとう

HTML依頼出した後は

もっともっと面白い話が作れるように修行してきます


136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 15:39:57.91 ID:pBbrw7Aw0


あとがき


堕天使探偵ラン全7幕。楽しんで読んでいただけたならば幸いです。

自分はというと、ほとんど勢いとノリのまま、いろんな作品を師匠にしてパクりまくってやっと形に出来たような未熟な作品群だと思ってます…

しかもこの最終幕を出すのが遅すぎて、過去の話の挿絵が全滅してしまっていたという体たらく。

おまけに後半ネタが尽きてきて安直な展開連発しちゃった感もあって照れくさいったらないんですが、それでも最低限のクオリティは保てていた!と信じたいですね。


途中何度も挫折したり、脱線したり、ときおり熊本弁翻訳が東京訛りみたいになったりして、いつのまにか三年ほど経ってしまいましたが、

やっとこさこの長い長い悪ノリと、それに付き合わされた蘭子ちゃんの浄化の旅を終えることができました!


制作秘話なんて話せばキリがないのでこのくらいにしときます。



改めまして、第一幕から今日までずっと追いかけてくれた人、ごり押しギャグに笑ってくれた人、真剣に推理ゲームを楽しんでくれた人。

ただ静かに黙々と読んでくれた人、このSSを読むために限りある時間を使ってくれた皆々様。

約三年にも及んでしまったヘンテコ堕天使珍道中に付き合っていただき

本当にありがとうございました。

m(_ _)m






来週のこの時間は新番組『ぼののけ姫』が始まります乞うご期待!!!(大嘘)


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/02(日) 15:43:20.64 ID:pBbrw7Aw0


○本SSシリーズ創作につき活用した参考文献…というよりパクリ元(ネタバレ防止のため作品名のみ。順不同)

 前述の通り自分はパクリで成立してると思ってるので、全部紹介しないと後ろめたくてかなわんのです…


・金田一少年の事件簿

学園七不思議・魔犬の森・秘宝島・蝋人形城・雪夜叉伝説・怪盗紳士


・探偵学園Q

コレクター


・TRICK2

サイ・トレイラー


・かまいたちの夜1


・TRICK&LOGIC・season1

「雪降る女子寮にて」



○名前の元ネタ

・第一幕、二幕、五幕

金田一少年の事件簿と名探偵コナンのレギュラー、準レギュラー


・第四幕

人形草紙あやつり左近(ジャンプの推理漫画)のレギュラー、サブキャラ


・第六幕

金田一少年の事件簿と名探偵コナンに登場する宿敵三人(高遠遥一、怪盗紳士、怪盗キッド)が作中で使ったことのある偽名


・第七幕

いろんな名探偵たちに立ちはだかった有名な宿敵(上記三人含む)


どうもありがとうございました。

m(_ _)m
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/15(月) 16:35:50.56 ID:37mvPGtn0
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/12/09(日) 23:34:07.65 ID:jfrZzyNU0
ぼののけ姫マダー?
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/12/11(火) 16:40:24.05 ID:uCf1mQET0
おつ
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 18:46:26.01 ID:Q4rORq9oO
堕天使探偵終わってしまったか…乙
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