ヒル魔「ぶっ!こ!ろす!!」雪歩「い、いえぇぇぇい!!」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 15:55:20.12 ID:i5OyujgV0
雪歩「放してっ!!」グァッ!

ドローン「」ヴィーン…!

ヒル魔「!!」


ガンッ!

ビシッ あずさ「いっ……!!」


亜美「あ、あずさお姉ちゃんっ!!」

雪歩「!?」



あずさ「あいたた、たぁ……」

ポタッ…


千早「スコップで弾いたドローンの破片が、あずささんの顔に……」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 15:56:09.96 ID:i5OyujgV0
雪歩「あ、あずささ……!」

あずさ「う〜ん、ちょっと、お手洗いに行ってこようかしら〜……」ポタポタ…

春香「大丈夫ですか、あずささん!?」

伊織「管理人室に救急箱があったはずよ。私取ってくるわ」

貴音「プロデューサーにも連絡をしなくては」



雪歩「……ッ!!」ダッ!

真「あ、雪歩っ!?」


ガチャッ! バタンッ!
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 15:57:43.66 ID:i5OyujgV0
美希「…………」

あずさ「私が、ボーッとしてたから……傷つけてしまったわね、きっと」

伊織「アンタは何も悪くないわ」

真美「ゆきぴょん……どうしよう、真美達、プレッシャーかけちゃったのかなぁ……」

響「心配だぞ……」



亜美「……? あ、あれ?」キョロキョロ

やよい「亜美、どうしたの?」

亜美「ヒルヒルがいない……」



春香「ヒル魔君? あれ、本当だいない……」

千早「いつの間に、いなくなったのかしら」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 15:58:33.82 ID:i5OyujgV0
〜泥門高校〜

ガショーン…! ガショーン…!



ムサシ「…………」



スッ

まもり「ムサシ君」

ムサシ「……精の出る事だな」

まもり「大会前だもの」



ムサシ「あんな連中、よくまとめ上げたもんだ」

ムサシ「俺が知っているヒル魔という男は、ここまで気配りができるヤツじゃなかった」


まもり「気配り、ねぇ……」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:01:25.30 ID:i5OyujgV0
ちっちゃん「めっ、めっ! もー!」どぱぱぱぱぱっ!

こあみ「とかー」どぱぱぱぱぱっ!
こまみ「ちー」どぱぱぱぱぱっ!

モン太「ムキャー!! なんか増えてるぞオイッ!」


夏彦「ん? この弾丸、ほのかに焼き肉の匂いが……」クンクン

ケルベロス「ヘッヘッヘッ……」シーカッシャ シーカッシャ ←ナイフとフォークを研ぐ音


ケルベロス「ガァァッ!!」ドドドッ!

夏彦「アリエナイィィィィイイッ!!」ドドドドド…!



まもり「…………」

ムサシ「……まぁ、言い方は正しくねぇかも知れんが」


ムサシ「実際、アイドルの面倒見てんだろ?」

まもり「えっ? ……あ、うん。765プロの、萩原雪歩ちゃんっていう子」

ムサシ「知らねぇな」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:02:36.24 ID:i5OyujgV0
ムサシ「だが、アイツが事を起こすからには、何か目的があるはずだ」

まもり「何でも、王城高校の機密情報を見返りにもらう事を、765プロと約束してるんだって」

ムサシ「それだけか?」

まもり「えっ?」


ムサシ「それだけのために、アイツがそんな回りくどい方法を取るとはとても思えねぇな」

まもり「……だとしたら、どうしてヒル魔君は、765プロを?」

ムサシ「知らん」



ムサシ「まぁ、俺が心配する筋合いのモンでもねぇ」スッ

まもり「あっ、どこ行くの?」

ムサシ「仕事だ」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:03:34.88 ID:i5OyujgV0
まもり「アメフト部っ!」

ムサシ「……」ピタッ



まもり「皆……待ってるからね」



ムサシ「…………知らんな」ザッ

スタスタ…



まもり「…………」

 <シーラヌーガー ホトケ ホォーット-ケナイ クーチビル ポーカーフェーーイス♪

まもり「あっ! とと……誰だろう?」ピッ!
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:04:19.84 ID:i5OyujgV0
まもり「ヒル魔君から……?」


鈴音「……あ、いたっ。まも姉ー、給水手伝ってー!」


まもり「…………」

鈴音「? まも姉どうしたの?」ヒョコッ



まもり「全員でモグラを探せ……?」

鈴音「?」キョトン
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:06:31.09 ID:i5OyujgV0
〜公園〜

雪歩「うぅ……うぅぅぅ……」ポロポロ…

雪歩「あずささん……う、あぁぁ……!」ボロボロ…



雪歩「私、なんてダメダメなんだろう…………う、うえぇぇ……!」



  ――やーい、よわむしゆきほー!

雪歩「……!」ピクッ



雪歩「ふ、ふぇぇ……」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:07:08.32 ID:i5OyujgV0
雪歩「ヒック…………ヒック……」





ブォン ブォン…!


雪歩「……?」



ドッドッドッドッドッ…!


黒木「そっち、いたか?」

戸叶「いや、いねぇ」


十文字「もっかい回るぞ。下手すりゃ穴掘って埋まってる可能性もある」

黒木「うへぇ。そんなん無理ゲーじゃねぇか……」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:08:16.95 ID:i5OyujgV0
雪歩(あの人達、泥門高校の……)



戸叶「まぁ、雪歩ちゃんに会うためだ、しゃーねぇな。
   ヒル魔の野郎の命令なのは気にくわねぇが」

雪歩(……!)

十文字「関係ねぇ。俺達は信じて従うだけだ」

十文字「アイツの言うとおり、あの萩原雪歩が俺達のキーパーソンになるってんならな」



雪歩(!? えっ……)



黒木「お前の口から「信じる」なんつー言葉が出るたぁな」ニヤニヤ

戸叶「カッカッカ。素直に雪歩ちゃんに会いてぇって言えねぇだけだろ」

十文字「るっせぇな、さっさと行くぞ」グイッ

ブロロロロロロ…!



雪歩(い、今、何て……?)

雪歩(私が、キーパーソン……泥門高校の人達の……!?)

雪歩(ど、どういう事なん……)ソォーッ…
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:09:12.19 ID:i5OyujgV0
桜庭「えっ?」

雪歩「へ?」



雪歩「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」ビクゥッ!

桜庭「うわあぁっ!? き、君は765プロの!?」


雪歩「な、何でジャリプロの桜庭春人さんがここにっ!? ご、ごめんなさいごめんなさい!!」ザックザック!

桜庭「お、落ち着いて雪歩ちゃん! ていうかどうやって掘ってんの遊具の中だよ!?」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:11:03.84 ID:i5OyujgV0
雪歩「………………」

桜庭「そんな事が、あったんだ……」


雪歩「私、あずささんにも、ヒル魔君にも……皆にも、迷惑かけてしまって……」

雪歩「こんな私が、ライブイベントに出る資格なんて、ありません……」

桜庭「…………」



雪歩「……小さい頃」

桜庭「?」

雪歩「私、近所の子達に、いつもいじめられてて……」

雪歩「よわむしゆきほー、だなんて……」

雪歩「時々、助けてくれる子もいたけど……その子にも、いじめられたり……えへへ」



桜庭「アイドルの世界に入ったのは、そんな自分を変えたかったからかい?」

雪歩「ううん」フルフル


雪歩「きっかけは、友達が勝手に応募しちゃったオーディションでした」

雪歩「それが、何かの拍子で受かっちゃって……でも」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:19:10.51 ID:i5OyujgV0
雪歩「考えようによっては、桜庭さんの言ったように、チャンスかもって」

雪歩「ダメダメな自分を変えなきゃって、ずっと……」


雪歩「でも、ダメな人は、きっと……何をやっても、ダメなんだなぁって……」



桜庭「雪歩ちゃん……」

桜庭「俺が所属しているアメフトチームには、高校アメフト史上類を見ない天才がいる」

雪歩「えっ……?」


桜庭「持って生まれた才能が、全然違うんだ」

桜庭「おまけに、誰よりも努力家でさ……そんなの、差が縮まりっこないって思うでしょ?」

桜庭「トップクラスの世界には、そんな選手がゴロゴロいるんだろうな」

桜庭「どうあがいたって、俺はそいつらの足元にも及ばない……」


桜庭「もしそうだとしたら、俺は夢を見てはいけないのかな?」

雪歩「!? えっ……」


桜庭「最後は才能の壁が立ちはだかるのなら、“ダメダメ”な俺の頑張りは、無意味なのかな」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:20:34.00 ID:i5OyujgV0
雪歩「そ、それは……そんな事ありません!」

雪歩「桜庭さんは、私なんかと違って、ちゃんと……!」

桜庭「…………」

雪歩「ッ…………いえ……」


雪歩「すみません……知りもしないのに、無責任でした……」

桜庭「構わないよ……俺も、ついこの間アイドルを辞めた人間だ」

雪歩「……えっ!?」


桜庭「だが、一つだけ言わせてほしい」



桜庭「君はきっと、怖がっているだけなんだ」

桜庭「自分の夢を口にして、裏切られるのが怖いだけなんじゃないかな、って」

桜庭「もしそうだとしたら……どうか、その考えを改めてほしい」

桜庭「無責任な言い方だけど、君の頑張りを笑う人なんて、どこにもいない。
   どうか、俺には追えなかった、アイドルとしての夢の続きを見せてくれ」

桜庭「俺みたいな凡人に、これからも夢を与えてやってくれないか」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:21:47.37 ID:i5OyujgV0
雪歩「……桜庭さん」

桜庭「それとも、簡単に諦められるようなものだったのか? 君の夢は」



雪歩「……違います」フルフル


雪歩「諦めたくなんか、ないんです……」

雪歩「きっかけは、そうじゃなかったかも知れないけど、自分を、変えたい……」

雪歩「簡単に諦められるような夢を、追っていたなんて……」

雪歩「プロデューサーや、皆を付き合わせていたなんて、思いたくなくて、だから……」


雪歩「諦めたくありません」

雪歩「どこまでも私、ダメダメだけど……」

雪歩「強くなりたいと願った自分を、裏切りたくないんです」



桜庭「……ありがとう。すごく、励みになったよ」スクッ

雪歩「え、い、いえっ! 私の方こそ、全部、勇気づけられたというか……」


桜庭「雪歩ちゃんが宣伝してる、『萩原印の焼肉のタレ』、俺好きなんだ」ニコッ

桜庭「これからも応援してるよ、雪歩ちゃん」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:22:51.77 ID:i5OyujgV0
雪歩「は、はいっ」

雪歩「ありがとうございましたぁ!」ペコッ

桜庭「……」スッ

テクテク…



雪歩「…………」

雪歩「皆、心配してくれてるかなぁ……」


雪歩「連絡しなくちゃ、えぇと、まずは……ひ、ヒル魔君かなぁ、やっぱ」


ズドドドドド…!

雪歩「ひっ!?」ビクッ


キキィーッ!



セナ「はぁ、はぁ……!」キョロキョロ
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:23:39.34 ID:i5OyujgV0
雪歩(ま、また誰か来たみたい……い、一体誰が……)ソォー…



セナ「公園……えぇと、雪歩さんが、気弱な子だとしたら……」

セナ「例えば、僕だったらこういう遊具の影とかに隠れたり、なぁんて……」ソロォ…


セナ「えっ」
雪歩「あっ」



雪歩「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」ビクゥッ!

セナ「ひぃぃぃぃっ!? ご、ごめんなさいごめんなさい!!」ペコペコッ!

雪歩「い、いえぇぇ私こそごめんなさい!! あの、び、ビックリしすぎて……!!」アタフタ…!
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:25:23.07 ID:i5OyujgV0
セナ「な、なるほど……それは、大変でしたね……」


雪歩「泥門の人達にも迷惑をかけちゃって、すみません」ペコッ

セナ「いえいえっ! ほら、困った時はお互い様というか、悪魔みたいな人に困らされてる者同士といいますか」


雪歩「ふふっ……ありがとうございます。えぇと…」

セナ「せ、セナです。小早川瀬那、って言います」

雪歩「セナ君……ありがとう、セナ君」



タタタ…!

亜美「あ、いたいた→! 皆ー、ゆきぴょんいたよ→!」

雪歩「!?」

セナ「う、わわっ……!」


あずさ「あらあら〜、泥門の生徒さんも一緒だわ〜」

美希「雪歩ー!! 雪歩はまったく逃げ足速いの!」

雪歩「あずささん、美希ちゃんっ! 皆っ!!」

セナ(あ、完全に場違いになっちゃう気がする)
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/27(土) 16:25:23.75 ID:xo15Gm43O
おもしろいぞ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:26:47.66 ID:i5OyujgV0
雪歩「あ、あずささん……」

雪歩「ごめんなさい! 私、あずささんに謝りもしないで、飛び出して……」

あずさ「ううん」フリフリ

あずさ「いいのよ、大丈夫。ビックリしちゃうのも、無理ないわよね」


あずさ「ケガの事なら平気よ。お医者さんも、一週間もすれば跡も残らず治るでしょう、って」

雪歩「あぁ……良かった、本当に……!」ジワァ…

あずさ「これからは、ドローンの近くでスコップを振り回すのは、止めましょうね?」ニコッ

雪歩「はい……はいっ!」ポロポロ…

律子「ていうかスコップ振り回すのを止めなさいよ、そもそも」


雪歩「それで、その……」グスッ

雪歩「とても、厚かましいお願いなんですけど、私……やっぱり、ライブに……」



伊織「これは、私の推測なんだけどね、雪歩」

雪歩「えっ?」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:34:30.00 ID:i5OyujgV0
伊織「あの日、ヒル魔は私をさらおうとしていたのではなくて……」

伊織「ひょっとして、最初から雪歩を狙っていたんじゃないかしら」

雪歩「えっ!?」


 ――アァッ!? 何だとテメェ、指示された写真通りの人間だろうが!!

 ――知らねぇなァ。



雪歩「ヒル魔君が、最初から私をさらう気だった……?」

千早「なぜ、水瀬さんはそう思うの?」


伊織「今のご時勢、コンプライアンスとか守秘義務とかうるさいでしょ?」

伊織「筆頭出資者が相手だからといって、組織の機密を外部に漏らすような事を行うのはあり得ないの。
   情報管理が疎かだと思われたら、信用もガタ落ちだものね」

伊織「それはアイツも分かりきっていたはずよ」

セナ(だからヒル魔さん、隠しカメラとか、ほとんど非合法的な方法で強引に情報収集してるんだな……)


伊織「つまり、コネを利用して王城大附属高校の情報をある種正面から手に入れろというアイツの要求は、
   周到なアイツの性格から考えても、納得ができないのよ」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:37:35.05 ID:i5OyujgV0
響「うえぇっ!? どういう事だ、ワケが分からないぞー!」ワシャワシャ

真「伊織が目的じゃない、というのはともかく……なぜ、雪歩が目的だったんだろう?」


やよい「うぅー、ヒル魔さんは、ただ雪歩さんをプロデュースしたかった、ってことですかー?」

律子「とても信じられないけど……今ある情報だけでは、そういう事になりそうね」


セナ「ひ、ヒル魔さんが、雪歩さんのプロデュースをしたがっていた……!?」



『ケケケケ、アイドルランクアップだー! ファンもたくさんだー!』

『やったな雪歩! I.A.大賞受賞に向けて突っ走るぜ、Ya―――Ha――――!!』

『はいっ! これからもご指導、よろしくお願いしますぅ!!』



セナ「全然想像できない……」

P「なんか同じ画が浮かんだ……」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:39:20.18 ID:i5OyujgV0
伊織「まぁ、今言った守秘義務云々っていうのは、新堂からの受け売りだけどね。
   知っていたら、私もあの場で言い返せていたんだけど」

セナ「言い返したとして、まともに取り合うような人ではないですけどね……」

真「それは言えてる」


伊織「釈然としないけど……
   結局はアイツも隠れアイドルファンだった、って考えるしか無いんじゃない?」

伊織「そうでもなきゃ、説明つかないでしょう。こんな回りくどい行動原理なんて」

春香「確かに……そうすると、ヒル魔君は雪歩のファンだったんだね」



雪歩「ううん、違うよ」フルフル

春香「へっ?」

雪歩「さっき、泥門高校の人達が、話してたの」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:40:31.19 ID:i5OyujgV0
雪歩「私が、泥門高校のキーパーソンなんだって、ヒル魔君が言ってたって……」

雪歩「バイクに乗った、ちょっと怖い三人組の人達」

セナ「十文字君達だ……」

響「セナは、何か聞いてなかったのかー?」

セナ「え、えぇと……たぶん、僕がいない時に話してたのかなーって」


雪歩「もしそうなら、ヒル魔君はやっぱり、泥門高校アメフト部が第一なんだと思う」

雪歩「でも、どうして私が、キーパーソンなのかなって……」



美希「それって、そんなにじゅーよーなの?」

雪歩「えっ……」


美希「ミキ的には、別にそんなの分かんなくたって、どうでもいいって思うな」

美希「だって、雪歩がパパーッて出てジュピターに勝てばいい、ってのは変わらないでしょ?」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:42:38.15 ID:i5OyujgV0
雪歩「だ、だから! どうして美希ちゃんは、私の事を強いって言ってくれるの?」

美希「そんなの決まってるよ」

美希「雪歩が一番、一生懸命な頑張り屋さんだからなの! アハッ☆」

雪歩「美希ちゃん……」


貴音「えぇ、美希の言う通りです」ニコッ

貴音「雪歩は、蛭魔妖一の『です・まぁち』に、ただの一度も欠席をした事がありません」

やよい「それどころか、終わった後に自主練だってしてて、すごいですー!!」

亜美「コッソリ付いてったら、公園で一人で特訓しててチョ→ビビったよねー、真美」

真美「うんうん! ゆきぴょんのスタミナは化け物か!って思ったよね。
   真美達、ただでさえ足がボーのように辛かったのに」

雪歩「み、見てたのぉ!?」ガーン
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:44:17.99 ID:i5OyujgV0
真「雪歩、夜遅くになるのは、家の人がうるさいんじゃ……」

雪歩「一応、お弟子さんの若頭が味方して、コッソリ裏口から逃がしてくれてるから」

雪歩「セキュリティカメラとか錠前とかも、全部壊して、そこからそぉっと……」

セナ(お、お弟子さん……?)


伊織「まっ! 本来であればこの伊織ちゃん率いる竜宮小町が出てやりたい所だけど」

伊織「あんなに常識外れの努力をしておいて代表になれない子がいるんじゃ、理不尽にもほどがあるもの」

伊織「だから、今回ばかりは努力賞として、アンタに譲ってあげるわ。
   その代わり、ちゃんと961プロをやっつけなさいよね!」

雪歩「ううぅぅ、プレッシャーかけないでぇ……」


ザッ…

セナ「ん?」



ヒル魔「見つけたんならさっさと連絡しろ、この糞チビ!!」ズダダダダッ!

セナ「ひぃぃっ!? ひ、ヒル魔さん!!」

雪歩「ひぃぃぃぃぃっ!!」ビクッ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:46:17.13 ID:i5OyujgV0
伊織「ヒル魔、雪歩ならもう心配いらないわよ」

ヒル魔「あん? そうか」

伊織「何よ、反応薄いわね」

ヒル魔「テメェのデコほどじゃねぇよ」

伊織「でこっ!? ……!!」ムッキィ!

真「伊織、ストップ! 落ち着いて、どうどう!」がっし


ヒル魔「おい、雪歩」

雪歩「は、はいっ?」ピンッ

雪歩(初めて名前で呼ばれた気がする……)


ヒル魔「あの糞ブラックはバカみてぇにでけぇ会場をおさえた上に、あらゆる業界に広告を投げてやがる」

ヒル魔「当日は、ゴミカスみてぇに観客がウジャウジャ集まるだろう。
    お前とジュピターのライブ対決を目にするためにな」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:47:13.25 ID:i5OyujgV0
セナ「ちょ、ちょっとヒル魔さん、これ以上プレッシャーは……!」

貴音「いいえ、良いのです、小早川瀬那」

セナ「あ、はいすみません」ササッ


雪歩「…………」

ヒル魔「いいか、一度しか聞かねぇ」

ヒル魔「たとえどんな手を使ってでも、お前は勝ちてぇと思うか?」



雪歩「……ジュピターさんに、勝ちたいかどうかは、分からないんです」

雪歩「でも……」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:48:34.67 ID:i5OyujgV0
雪歩「私は、自分に勝ちたい」

雪歩「これ以上、ダメダメなままはイヤだから……」

雪歩「ライブで勝てるか分からなくても、それに出て何かが変われるなら……」

雪歩「皆が信じて、送り出してくれたステージの上で、その何かを掴み取って!」

雪歩「強い私になりたいんですぅ!」



ヒル魔「……ケケケ、良く言った」

ヒル魔「勝てなくても精一杯頑張りたい、とかいう生ヌルい返事しやがったらどうしてやろうかと思ったぜ」

雪歩「ヒル魔君……」


ヒル魔「いいか、『死の行軍』も後半戦だ」

ヒル魔「これまで以上に死にたくなるほどの辛さでも、楽に死ねるとは思うんじゃねぇぞ」

ヒル魔「お前が望む、まさに自分との戦いだ。覚悟しやがれ」

雪歩「は、はいっ!」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:51:54.81 ID:i5OyujgV0
セナ(うーん、結局、ヒル魔さんがプロデュースに乗り気だった理由は分からずじまいかぁ)

タタタ…

まもり「セナ、ヒル魔君!」

セナ「あ、まもり姉ちゃん!」

ヒル魔「遅かったな風紀委員、シュークリームでも探してたか?」

まもり「それはもう止めて! って……」

まもり「うわぁ……765プロのアイドルさん、勢揃いなのね」

P(この子、雪歩に似てるな、髪型とか……ちょっとデカくなった雪歩というか)



P「と、えぇと、今日はもう遅いし、泥門高校の方々にもご迷惑だから、そろそろ皆解散しよう」

一同「えぇー?」

P「えぇーじゃない。雪歩の親御さんも、そろそろ心配する時間だろう?
  いくらお弟子さんが協力してくれるとはいえ、年頃の女の子達が夜中にウロウロするのは……」

亜美「あ、じゃあさ!」ハイッ!
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:53:49.50 ID:i5OyujgV0
亜美「皆でゆきぴょんの家に行けばいいんだYO!」

律子「はぁっ!?」

亜美「そうすれば、ゆきぴょんのオヤゴさんも心配しなくて済むっしょ?」

真美「さっすが亜美! 何とも大胆かつ欧米的、チョ→グッドアイデアだYO!」


P「ば、バカ言うな! それじゃますます雪歩の家にご迷惑……!」

雪歩「もしもし」

雪歩「あ、大丈夫って言ってますぅ」

セナ「話早っ!?」

雪歩「泥門高校の人達も、よろしければお越しください。
   お世話になってる皆さんに、おもてなしをしたいってお父さんが」

まもり「そ、それは私達、いいですよそんな! あまりに図々しい…」

ヒル魔「今アメフト部のヤツら全員に「来い」ってメール送ったぞ」

まもり「ヒル魔君っ!」

セナ「すごい、住所と写真付きで……マメだなぁ」

まもり(……?)ピクッ



まもり(どうしてヒル魔君、雪歩ちゃんの家の住所を……?)
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:55:16.62 ID:i5OyujgV0
〜どこかの裏山〜

モン太「ムキャー! 何でだ、全っ然見つかんねぇっ!!」

夏彦「アハーハー! 僕はもう3匹も見つけちゃったよ!」


ピローン♪

モン太「おっ?」

夏彦「どうしたんだい、モン太君?」

モン太「ヒル魔先輩のメールだ。全員モグラの家に来い、って」

夏彦「? どういう事だい? 今まさに、僕達はモグラを家ごと探している最中なのに」


モン太「……あ、住所も送られてきた」

夏彦「へぇー、最近のモグラはすごい豪邸に住んでるんだねぇ、って……」



モン太・夏彦「モグラじゃないっ!!」ガガーン!
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:56:03.73 ID:i5OyujgV0
〜雪歩の家〜

テクテク…

P「こ、これが……」

亜美「ゆきぴょんの家かぁ」

ズゥーーーン…


律子「一度、親御さんとの面談で来ましたが、やはり大きいですね……」

雪歩「この時間はもう、正門は空いてないので、裏口から入りますね。
   どうぞ、こっちですぅ」



テクテク…

セナ「う、裏口までがまた長いですね……」

真「もう少ししたら見えると思ったけど」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:57:25.41 ID:i5OyujgV0
雪歩「……あっ」ピタッ

まもり「…………あれは……!」



トンテン カン…


ヒル魔「何してやがる、糞ジジイ」

ムサシ「……ん? お前らこそ、何だ皆して」



雪歩「裏口……直して、るんですか……?」



ムサシ「ウチに注文があった」

ムサシ「裏口の錠前がぶっ壊されちまってるから、建て付け直して、新しいカメラも設置してくれってな」

ムサシ「夜遅くにココから出入りする奴がいないよう、造りもシステムも強固なものにしてほしいとよ」

雪歩「そ、そんな……!」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 16:59:29.61 ID:i5OyujgV0
響「そ、そんな事しちゃったら、雪歩が夜遅くまで特訓できなくなっちゃうぞ!」

律子「でも、一人娘を預かる親の立場としては、容認しきれないのも無理は無いわよね……」

P「うーん……レッスンメニューの方を検討し直すか、ヒル魔君。
  何も『死の行軍』を夜遅くまでやる事だけが、取るべき手段って訳じゃないだろう?」

ヒル魔「それで勝てるっつーんならな」

雪歩「お、お願いですぅ! どうか……!」

ムサシ「…………」


雪歩「私が両親を説得します! だから、この裏口は直さないでください!」

ムサシ「既に受けた仕事だ。今さらちゃぶ台はひっくり返せねぇ」

雪歩「それでも! ううぅぅ……!」



雪歩「私、やっと決心できたんですぅ。
   ダメダメな私でも、皆の、代表になって、ステージに立つんだって……」

雪歩「お願いです……せめて、悔いや未練は、残したくないんです……」

雪歩「トップアイドル、目指したいんです……!」



ムサシ「…………未練、か」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:01:44.20 ID:i5OyujgV0
ヒル魔「そういやどっかにいたなァ、アメフトに未練タラタラの女々しい野郎が」

ムサシ「…………」

セナ「ムサシ、さん……?」


ヒル魔「納得いかねぇ状況に陥る悔しさを知るテメェが、同じ思いをコイツにさせんのか?」



ムサシ「……寝言を言うな。俺のは遊びじゃねぇ、仕事でやってんだ」

ムサシ「それに、もう工事は終わった」スクッ

雪歩「えっ……」

ムサシ「この時間、この裏口から出入りする事はもうできねぇ」

雪歩「う、うぅぅ……!」



ムサシ「……この裏口からは、な」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:04:30.29 ID:i5OyujgV0
美希「へ?」キョトン

まもり「どういう、こと……?」


ムサシ「おい」

雪歩「ひっ!? は、はい……?」



ムサシ「謙遜なら誰でもできる」

雪歩「……!」


ムサシ「トップを目指すとかいう大言を吐けるのは……」

ムサシ「負けた時、その吐いた唾も、周囲からの嘲笑も、黙って啜る覚悟がある奴だけだ」


ムサシ「お前にその覚悟があるか?」



雪歩「…………」キュッ
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:05:28.88 ID:i5OyujgV0
ムサシ「…………フン」



ザッ

ムサシ「…………」

雪歩「あ、そっちは、生け垣が……」



ムサシ「………………」グッ…


バゴォッ!!!


春香「!?」

セナ「いぃぃっ!?」


真「い、生け垣を……蹴り飛ばして、粉砕した……!」


パラパラ…
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:06:43.98 ID:i5OyujgV0
雪歩「あ、あわわわ……!」


ムサシ「裏口は直した」

ムサシ「新しく出来た『勝手口』については、俺の知った事じゃない」


まもり「ムサシ君……!」

雪歩「……ありがとうございますぅ!」ペコッ

ヒル魔「ケケケ、回りくどい事しやがる」


 ビィーーーーーッ!!

やよい「わあぁぁっ!? な、何ですかー?」

律子「警報っ!?」



雪歩「あ……そういえば、そういう事になるんでしたぁ」

伊織「つ、つまりヤバイって事……!?」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:07:54.48 ID:i5OyujgV0
ダダダダ…!

黒服A「何者だっ!」

黒服B「出あえ、出あえー!!」

黒服C「ざっけんなコラァ!!」


ムサシ「まずいな……親父にどやされる」

セナ「そういうレベルを超えてませんか、コレ!?」

真美「明らかにカタギじゃないっしょー!」


まもり「ちょ、ちょっと待ってください! これには事情が…!」

ザンッ

ヒル魔「……」バチバチバチ…! つ スタンガン

まもり「ヒル魔君……ちょっと、落ち着いて……!」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:08:46.14 ID:i5OyujgV0
黒服達「お縄につけコラァァァッ!!」グワァァ!

響「うぎゃあー!! もうダメだーー!!」

ヒル魔「……」グォ…!


ダッ!

小結「フゴッ!!」ガシィッ!

黒服達「ぬうぅっ!?」


ヒル魔「!」

まもり「こ、小結君!?」



ドッスドッス…!

栗田「こ、小結君待ってぇ〜〜!!」ドッスドッス…
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:09:56.69 ID:i5OyujgV0
黒服A「ぐ、ぐぬぬ……何だこのチビ!?」

黒服B「ナメるな、こっちは三人がかりだぞ!」

黒服C「こ、のっ……!」ググ…

小結「……ッ!」グググ…


がっし

黒服達「え」

栗田「追いついた」ホッ


栗田「ふんぬらばっ!!」ぶわっ!

黒服達「うわあぁぁ〜〜!?」すぽーん



小結「危機っ!」

伊織「え、何?」

栗田「つまり、765プロアイドルの皆さんが悪漢に襲われているとの危機的状況が……」ペラペラ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:12:13.49 ID:i5OyujgV0
ガミガミガミ…!

雪歩父「この馬鹿者共がっ!! 雪歩の友人の方々を襲うたぁ何考えてやがるっ!!」ガミガミ…!

黒服達「す、すみません知りませんで!! どうか平に、平にぃ!!」ペコペコ!


亜美「ゆきぴょんのお父さん、めっちゃ怖いね……」

セナ「えぇと、アハハ……あの顔の傷、どこで付いたんだろ?」



雪歩父「で、だ……」ギロッ

雪歩父「お前にも話がある」


雪歩「……お父さん」

雪歩父「そう怖い顔をするな、雪歩よ」ニヤッ


雪歩父「お前も俺の娘だ。
    一度言い出したら聞かねぇ頑固モンだってのは、俺が一番よく知ってる」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:13:40.49 ID:i5OyujgV0
雪歩「えっ?」


雪歩父「裏口から黙ってコッソリ出て行くのは止めろって言ってんだ」

雪歩父「次からは、ちゃんと正門から出入りしなさい」

雪歩「お、お父さん……!」パアァッ


雪歩母「皆さん、ようこそお越しくださいました。
    お夕食の準備が出来ておりますので、どうぞお入りください」ニコッ

美希「やったー! 一番乗りなのー!」ピョーイ

やよい「雪歩さんのお母さん、すっごい美人さんですー!」キラキラ

栗田「なんだ、お父さんは最初から認めていたんだね」

雪歩「はい、良かったですぅ」



ムサシ「……ん? ひょっとして俺、蹴り損か?」

まもり「ムサシ君、それよりも人の家の生け垣を勝手に壊しちゃダメでしょう」

ムサシ「そうか」

まもり「ていうか雪歩ちゃん、高校三年生で、私達より年上だからね?」

ムサシ「そうか」ミミホジ
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:16:02.42 ID:i5OyujgV0
〜夜道〜

鈴音「あーもう! どこ行ってんのよあのバカ兄!!」プンスコ!

雪光「モン太君も一緒にいるはずだけど……連絡した場所に行っても見つからなかったね」

鈴音「私達が行くから動かないで待ってて、って言ってんのに」


鈴音「あぁーあ! 本当なら今頃私達も萩原雪歩ちゃん家のパーティーにいたのになぁ」

鈴音「バカ兄なんてほっといて、そっちに直行すりゃ良かった」

鈴音「ごめんね雪ぴょん、こんなのに付き合わせちゃって」

雪光「い、いやぁ僕は別に……
   というか、雪ぴょんは止めない? 萩原雪歩さんに失礼的な……」



鈴音「……ねぇ、ところでさ」

雪光「ん?」

鈴音「雪ぴょんはどう思う? 妖ー兄のこと」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:18:02.73 ID:i5OyujgV0
雪光「どうって?」

鈴音「何で妖ー兄が雪歩ちゃんのお世話にお熱なのかってこと」

鈴音「泥門高校アメフト部のキーパーソンになる、って話、どーにも分からないなぁって」



雪光「……これは、僕の推測なんだけど」

雪光「たぶんヒル魔君は、雪歩さんに勝ちたいのかも知れない」


鈴音「雪歩ちゃんに勝ちたい? 妖ー兄が?」

鈴音「どういう事? 雪歩ちゃんはアメフト選手じゃないし、全然関係ないじゃん。
   あ、それともゆくゆくはアメフト選手にさせようとしてるとか?」

雪光「いや、そうじゃなくて」


雪光「あれだけ勝ちにこだわる人が、あんなに熱心になる理由……
   僕には、一つしか考えられないんだ」

雪光「彼は今、何かに勝いを挑んでいる……
   そして、それに勝とうとしているんじゃないか、って」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:19:38.76 ID:i5OyujgV0
鈴音「雪歩ちゃんが、トップアイドルになれたら勝ち……みたいな?」

雪光「うーん……そこには当然、ヒル魔君にも何らかのメリットがあるはずなんだけど……」

鈴音「別に、何にもメリット無いよね?」

雪光「そうだね」


鈴音「なーんだ、やっぱり雪ぴょんにも分かってないんじゃん。頭良いのに」

雪光「ガリ勉だから分かるっていうものではないよ……ただ」

鈴音「ただ?」

雪光「ヒル魔君、楽しそうだな、って」

鈴音「……それは言えてるね♪」



鈴音「あ、でさ。本番はもう、すっごい大きな話になってんでしょ?
   王城の桜庭春人も出るって」

雪光「えぇっ、そうなの!?」

鈴音「それに、これは本当に噂のウワサでしか無いんだけどさ……」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:20:48.71 ID:i5OyujgV0
鈴音「ジャリプロが、他の出演者達を出場不能にしてやろうって画策してるとか……」

雪光「……どういう意味、それ?」

鈴音「わ、私もウワサでしか聞いてないから、分かんないよ」


雪光「そういう滅多な事は、あまり言わない方がいいよ。桜庭君も可愛そうだ」

鈴音「あ……そ、そうだね。ごめんなさい」シュン…

雪光「ハハハ、僕に謝る事は無いよ」

鈴音「それもそうだねっ」シャキン!

雪光「切り替え早いなぁ」

ハハハ…





スッ…


阿含「………………」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:23:39.85 ID:i5OyujgV0
――――――

――――



『……と、二社の芸能事務所共同で開催されるライブイベントに注目が集まっています。
 主催者の一人である961プロダクションの黒井社長のインタビューです』

『我が961プロのジュピターは、社長である私自らスカウトし……!』


『あぁ、なんかジュピターが出てくるライブですよね?』

『ヤダぁ〜〜! 早く北斗サマに会いたいですー!』

『自分達、最初から萩原雪歩さん一筋なんで。当日も精一杯……!』



ガヤガヤ…


「チケット取れた?」「サイトにアクセスすらできねぇ〜」「マジで?」

「えぇ〜、桜庭君出ないの?」「あら、ニュース見てないの?」「桜庭君、この間ジャリプロを……」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:24:47.97 ID:i5OyujgV0
〜レッスンスタジオ〜

キュッ タタン タンッ!


ドテッ!

春香「!?」

真「雪歩っ!!」



雪歩「はぁ…………はぁ……!」



ヒル魔「…………」



律子「…………限界よ、ヒル魔君」

ヒル魔「みてぇだな」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:26:18.60 ID:i5OyujgV0
雪歩「はぁー、はぁーっ……う、ぐっ……」グッ…

フラッ…

真「雪歩、座ってて! 安静に……!」グッ

パシッ!

雪歩「……ッ」フルフル

真「ゆ、雪歩……」



律子「見て分かるでしょ。この状態で、続けさせる訳にはいかないわ」

ヒル魔「常識的に考えりゃな」

伊織「……アンタ、さっきから何が言いたいのよ」

伊織「まさか、無視して続けるだなんて言い出すんじゃないでしょうね」キッ



ヒル魔「この『死の行軍』は、ハナから限界を超えるのを目的とするトレーニングだ」

ヒル魔「限界に達して、初めてスタートなんだよ」

響「こ、このままじゃ雪歩が壊れちゃうぞ! もう止めてあげてよ、お願いさー!」ガシッ!
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:28:47.18 ID:i5OyujgV0
ヒル魔「止めるかどうか、決めるのはアイツだ」



雪歩「はぁ……はぁ……」


ゆきぽ「ぽえぇ〜……」

雪歩「え、えへへ……心配、しなくていいよ?」ナデナデ

雪歩「ちょっと、転んだだけだから……いつもの、事だから……」

ガクガク…



雪歩「……やります」

真美「む、ムチャだよぅゆきぴょん……」グスッ…


ヒル魔「大抵のヤツなら、こう考える」

ヒル魔「自分はやるだけやった、充分に頑張った、もういいだろう、ってな」

千早「……?」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:30:06.94 ID:i5OyujgV0
雪歩「はぁ、はぁ……」スッ


ヒル魔「コイツは、安い慰めで自分を言いくるめる事なんざ考えちゃいねぇ」

ヒル魔「勝利に飢えるってのは、そういう事だ。
    まして、他の誰かじゃなく、自分への勝利ってのは曖昧な分タチが悪ぃ」ジャキン

美希「自分への、勝利……」



雪歩「……ッ」ギリッ



ヒル魔「ちんちくりんのクセして、生意気なヤツだぜ。ケケケ……覚悟はいいか?」

雪歩「はいっ!」


ズダダダダッ…! タタン タンッ タンッ…
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:32:07.62 ID:i5OyujgV0
あずさ「雪歩ちゃん……」


ゆきぽ「ぽ、ぽえぇ〜……」グデー…

伊織「……」ナデナデ

伊織(心なしか、雪歩に似たこの子も、随分くたびれているように見えるわね)


ズダダダッ…! キュッ! タタンッ タンッ…



貴音「……蛭魔妖一」

貴音「貴方の狙いが、少し見えてきた気がします」



  打ちのめされた事が無い選手など存在しない。

  ただ、一流の選手はあらゆる努力を払い、速やかに立ち上がろうとする。

  並の選手は、少しばかり立ち上がるのが遅い。

  そして、敗者はいつまでもグラウンドに横たわったままである。


   ――テキサス大学アメリカンフットボールコーチ ダレル・ロイヤル
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:40:40.78 ID:i5OyujgV0
〜ジャリプロ事務所〜

伊藤「…………」ブクブクブク…


 『辞表  桜庭 春人』



伊藤「さ、桜庭ちゃんが……」

伊藤「こんな……あぁ…………」



伊藤「あ、諦めないぞ……!」グッ

伊藤「絶対に桜庭ちゃんは、アイドルとしてまだやれるんだ」

伊藤「アメフトなんていうボール遊びに取られてなるものか!」ダッ!
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:42:32.51 ID:i5OyujgV0
ガチャッ!

伊藤「おいっ、車を出……!」

伊藤「せ……って、え?」



社員A「あ、あがが……!」

社員B「……」ピクピク



伊藤「え……き、キミは、たしかアメフト、の……」



阿含「……あ゛ぁ〜〜〜〜、やっと来やがったか」スクッ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:43:58.03 ID:i5OyujgV0
スタスタ

伊藤「な、何しにココへ来たんだっ!?
   というか、キミ、まさかウチの社員に乱暴を…」

ガッ ドンッ!

伊藤「ひっ!? い、痛い……!」ググッ


阿含「泥門のカスがバックアップしてるアイドルがいるんだってな」

伊藤「へっ?」



阿含「テメェのカスアイドルを引き立たせてやるってんだよ」

阿含「俺が765プロのソイツを出場不能にしてやりゃいいんだろ?
   王城に持ちかけた話を、俺が代わりにやってやろうじゃねぇか」

伊藤「き、キミ、どうしてそれを……!?」



阿含「もちろんタダとは言わねぇ」

阿含「ビジネスと行こうぜ、なぁ……?」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:45:41.88 ID:i5OyujgV0
〜765プロ事務所〜

ヒル魔「おーおー、天下の961プロ様のクセにケツの穴の小せぇこった」ケケケ

黒井「何だとぉっ!? ぐぬぬいいだろう、では500万だっ!!」

高木「ひ、ヒル魔君〜。ちょっと困るよ、私そんなお金持ってないよ?」

黒井「ハァーッハッハッハ!! さすがは弱小事務所だな高木ィ!
   たかだか500万ぽっちも払えないとは、惨めにも程がある!」

ヒル魔「その500万ぽっちを提示するまで散々ゴネてた、ケチくせぇ社長サマは誰かなァ?」ケーケケケ!

黒井「な、何だとぉっ!? お、おのれぇ言わせておけば、ならば700万だっ!!」

ギャーギャー…!



P「なぁ、あれ何やってんだ?」

律子「ライブイベントでお金を賭けるんですって。負けた方が勝った方に」フンッ

P「えぇっ!? ちょ、ちょっと待てよ、負けたらウチが700万払うってこと!?」

律子「もっと上がるんじゃないんですかー?」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:47:16.37 ID:i5OyujgV0
律子「まったく! 男共ときたら、揃いも揃ってバカみたい!
   勝手にしなさいよ、もう知らないんだからっ」プンスコ

小鳥「ふふっ、それにしても楽しそうですね」

律子「当事者が、あんな必死になって頑張っているのに……!」



小鳥「雪歩ちゃん、あれからどうですか……?」

律子「……何とか、レッスンメニューはこなしています」

律子「でも、終わった後は、自分で立てなくなるほどに疲労困憊の状態で……
   正直、本番当日まで壊れないでいられるかどうか……」

小鳥「……そうですか」



P「……俺から、彼に話をしてみよう」スクッ

律子「あっ、プロデューサーさん」



コンコンッ

ヒル魔「……?」

P「ヒル魔君……ちょっといいかな?」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:49:01.52 ID:i5OyujgV0
〜765プロ事務所 屋上〜

P「…………ふぅ〜、っと」ノビー


P「屋上は、主に喫煙所だ……俺はタバコは吸わないんだけどさ」

P「仕事で失敗したり、嫌な事があったら、ここに来てボーっとして、気分転換するのが
好きなんだ」

ヒル魔「…………」

P「遠くに電車が……ほら、あそこ。あぁして通り過ぎるのを眺めたりさ」

P「泥門高校は、方角的にはあっちかな。君は電車通学かい?」


ヒル魔「……テメェの仕事の愚痴を聞くために俺は呼ばれたのか?」

P「いや、雪歩の話だ」


P「俺は雪歩のプロデューサーだ。
  いくら君への協力が社長の肝入りとはいえ、担当アイドルが壊されるのを黙って見過ごす事はできない」

ヒル魔「…………」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:52:03.50 ID:i5OyujgV0
P「だが、止める気も無い」

ヒル魔「?」ピクッ

P「なぜなら、あのレッスンを完遂してステージに上がる事が、彼女自身の願いだからだ」


P「だから、屋上に連れて来たんだ。
  俺が今言った事を律子に聞かれたら、どやされるからね」

P「実際、担当アイドルを守ろうともしない俺は、プロデューサー失格だろうな」

ヒル魔「…………」



P「だが、教えてくれないか」

P「君は、なぜそこまでして雪歩にこだわるんだ?」

P「アメフトとアイドルは、まるで真逆……真裏の世界だ。
  彼女のプロデュースが、君のアメフトにどれだけ関わるというんだ」



ヒル魔「アメフトは、敵と味方しかいねぇ」

P「…………」

ヒル魔「倒さなきゃならねぇヤツらがいる。
    そのための特訓があり、揃えたカードをどう切るかの戦略を立てる」

ヒル魔「大まかに言えば、その連続だ」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:53:46.26 ID:i5OyujgV0
ヒル魔「逆に聞くが、アイドルの世界はどうだ?」

ヒル魔「倒さなきゃならねぇヤツがいるのか?」


P「どうだろうな……目標は、皆それぞれある」

P「憧れていた人のようになりたい、家族を養いたい、楽しみたいキラキラしたい……
  それぞれだ。一概にはとても言い尽くせない」

P「だから楽しいんだ。
  13人が13通りの夢を持っていて、それぞれに応じたプロデュースがある」

P「倒す、倒されるという明確な結末が無い分、アメフトよりも不明瞭ではあるのかも知れないな」

ヒル魔「そういう事だ」

P「えっ?」

ヒル魔「確かに、世界の裏側だ……だから、違う」



ヒル魔「目標が明確なら、取るべき手段も明確だ」

ヒル魔「到達してぇって願う夢が曖昧で不明瞭じゃ、行き先もルートも分からねぇはずだ」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:54:56.89 ID:i5OyujgV0
ヒル魔「だが、あの糞モグラは自分を見失わずに前を見続けていやがる」

ヒル魔「それが気にくわねぇのと、知りてぇってだけだ」

P「知りたい……雪歩の強さの秘密を、か」


ヒル魔「もうこんなつまらねぇ事聞いてくんじゃねぇぞ、糞アルファベット」ザッ

P「すまない、最後にもう一つだけ聞かせてくれ」


P「君が初めて雪歩に出会ったのは、いつなんだ?」



ヒル魔「賊学のヤツらとさらった時だよ」

ガチャッ キィィ…

バタン…



P(……そんなはずは無い)

P(予め雪歩をさらう事を画策していたのなら、もっと前から雪歩を知っていたはずだ)


P「どういう事なんだ……」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:57:05.32 ID:i5OyujgV0
〜本番二日前 レッスンスタジオ〜

雪歩「〜〜〜ッ♪  〜〜〜〜〜♪」タンッ タン…


雪歩「〜〜♪ 〜〜〜、〜〜〜〜〜!♪」キュッ タッ タンッ!



雪歩「…………はぁ、はぁ……!」



律子「文句無し、ね…………よくやったわ、雪歩」



やよい「うっうー!! 無事『死の行軍』おしまいですー!!」ピョーン!

真美「やったぁー!! 亜美タッチ!」
亜美「タッチ!! やよいっちもタッチ!」パチン!
やよい「はいターッチ!! いぇい!!」パチン!

たかにゃ「しじょ!」 スッ 【祝 完走】
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 17:59:03.38 ID:i5OyujgV0
あずさ「本当に、よく頑張ったわね、雪歩ちゃん……」

雪歩「はぁ、はぁ……あ、あずささん、私……」


あずさ「私、実はね? 本当は雪歩ちゃん、やり遂げられないんじゃないかって、思っていたの」

あずさ「もしそうなっちゃったとしても、雪歩ちゃんが自分を追い詰めたりしないように、
    ちゃんとフォローしてあげなくちゃって、色々と考えてはいたのだけれど……」

あずさ「余計なお世話だったわね。ふふっ……本当に、すごいわ雪歩ちゃん」

雪歩「私は……迷惑、かけちゃったあずささんの、ぶ、分まで……え、っぐ……!」ジワァ…

あずさ「……その思いだけで、十分よ」ギュウッ

雪歩「う、わぁあぁぁ……!」ポロポロ…



春香「ううぅぅ、雪歩ぉ、すごいよぉ頑張りすぎだよぉ……!」グスッ

貴音「彼女の持つ、挫けぬ強い心による努力が結実した瞬間です。真、お見事です」

美希「ほらっ、ミキの言ったとおりでしょ?
   この調子でやれたら、本番もきっとラクショーなの!」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 18:00:48.92 ID:i5OyujgV0
雪歩「そ、そうだ本番!」ハッ!

伊織「さては『死の行軍』を終えた達成感に酔いしれて、本番を忘れてたわね」

響「いいじゃんかそれくらい! すっごいレッスンを終えたばっかりなんだぞ!」

雪歩「ううぅぅ……じゅ、ジュピターさん達に勝てなかったら、
   私達、アイドル辞めなきゃいけないんでしたぁ……!」

千早「しかも、負けた方が勝った方に1000万円を支払うという話らしいわね」

律子(あ、また増えたんだ)



ヒル魔「ケケケ、戦う前からビビってんじゃ勝敗は見えたモンだな」

雪歩「ヒル魔君……」


ヒル魔「テメェみてぇなビビりでも、闘志を奮い立たせる魔法の掛け声がある」


雪歩「えっ!?」

ヒル魔「知りてぇか?」ニヤッ
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 18:01:54.37 ID:i5OyujgV0
〜泥門高校アメフト部〜

一同「ぶっ!!」

一同「こ!」

一同「ろす!!」

一同「Yeah―――!!!」



雪歩「ひいぃぃぃ……!」ガタガタガタ…!

P「何という恐ろしい掛け声だ……」


モン太「それくらい、相手に勝つ! つー気合いが必要なんスよ!」

十文字「別に反則行為をしてまで相手をぶっ殺すワケじゃねぇ」

律子「で、でも、アイドルが本番前に行う掛け声としてはどうかと思うわよ」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 18:03:22.38 ID:i5OyujgV0
栗田「まぁまぁ! 一つのおまじないみたいなものだと思って」

まもり「気持ちは分かりますけど、慣れると意外と、違和感なくなりますよ」

P「そりゃそうだろうけどさ。あんまそのー、アメフトとアイドルは違うっていうかさ……」


セナ「僕も、最初はおっかなかったですけど……」

セナ「誰かに勝ちたいって気持ちを奮い立たせるには、一番だと思っています。
   あと、情けない自分にも、とか」

雪歩「自分に、勝ちたい……アイシールドさんでも、そう願う時があるんですね」

セナ(あ、そっか今防具着けてるから……うん、そうね)



ヒル魔「モノは試しだ。こっち来て一緒にやってみろ、糞モグラ」



雪歩「…………」ゴクッ

イソイソ…


黒木「うっひょぉ……雪歩ちゃんが隣に」

戸叶「バッカお前、鼻の下伸びてんぞ」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 18:05:07.43 ID:i5OyujgV0
雪歩「わ、私は……」

雪歩「皆さんのご期待に応えられるか、分かりません。だけど……」

雪歩「やっぱり、勝ちたいです。
   勝って、支えてくれた765プロの皆や、ファンの人達に、恩返しをしたいなぁって」

雪歩「もちろん、ヒル魔君や泥門高校の皆さんにも……だから」

雪歩「私、勝ちに行きます!」


ヒル魔「勝ちに行くんじゃねぇ。ステージに立ったら考える事は一つだ」

ヒル魔「会場に来ているヤツら、丸ごとビビり倒して殺しやがれ」ケケケ

雪歩「うえぇぇぇっ!?」

一同「ぶっ!!」

雪歩「あ、わっ、ぶっ……!」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 18:08:10.98 ID:i5OyujgV0
一同「こ!」

一同「ろす!!」

一同「Yeah―――!!!」

雪歩「い、いえぇぇぇぇいっ!!」

ヒル魔「寝てんのか糞モグラ!! 主役がタイミング外してんじゃねぇ!!」ズダダダッ!

雪歩「す、すいませぇぇんっ!」

ヒル魔「もう一回だ!」


一同「ぶっ!」

一同「こ!」

一同「ろす!!」

一同「Yeah―――!!!」
雪歩「いえぇぇぇぇいっ!!」





コソコソ…

渋澤「クックック……」スチャッ

渋澤「……旦那。良い土産ができましたぜぇ」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/10/27(土) 18:11:33.91 ID:i5OyujgV0
20時頃まで席を外します。
残りはあと5分の2くらいです。今日中に投下しきる事ができればと思います。
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:02:34.75 ID:i5OyujgV0
〜当日 ライブイベント会場〜

セナ「うわあぁぁ……」


ガヤガヤ…


モン太「すげぇ人数だな。注意マックスしねぇとすぐに迷子になっちまうぜ」

栗田「でいへほいっはいでへふほー(出店もいっぱい出てるよー)」モリョモリョ

セナ・モン太「既にすごい量っ!!」


鈴音「泥門デビルバッツでーす! あっ、こんにちはーデビルバッツでーす!」パタパタ

まもり「鈴音ちゃん、何してるの?」

鈴音「あっ、まも姉も手伝って! 妖一兄から言われて、ウチらの宣伝してるの」ピラッ


 『最凶チーム 泥門デビルバッツ ○月×日 アメフト東京大会初戦!!
  アイシールド21の殺人走法が炸裂する瞬間を見逃すな!!』


セナ「走(ラン)でどうやって殺人を……?」

モン太「これ、本当に宣伝になんのか?」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:04:30.32 ID:i5OyujgV0
鈴音「会場にいる全員をビビらせろ! ハートを掴むってのはそういう事だ!」ケケケ!

鈴音「って言われたもーん♪」

まもり「鈴音ちゃん、ヒル魔君のモノマネ上手いね……」

黒木「主役でもねー俺達が観客のハート掴んでどうすんだよ」

溝六「で、そのヒル魔はどこにいんだ?」グビッ

雪光「一足早く会場に行くって言ってました」


 <シーラヌーガー ホトケ ホォーット-ケナイ クーチビル ポーカーフェーーイス♪

まもり「あっ……」ピッ

セナ「まもり姉ちゃん、どうしたの?」


まもり「……ヒル魔君から。頼みたい事があるんだって。
    ちょっと行ってくるわね。セナ、私の分まで物販見てきて!」タッ

セナ「あっ」

タタタ…



溝六「本当に付き合ってねぇのか、あの二人?」

セナ「うぇ、い、いやぁ〜……僕にはとんと……」ポリポリ
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:06:21.48 ID:i5OyujgV0
溝六「まぁなんだ……結局アイツ、アメフトの練習もしっかりこなしてたからな」

溝六「アイドルさんの面倒の方が疎かになってんじゃねぇかって心配したが……」

セナ「いえ、それが聞いた話じゃ、むしろあっちにいる時の方が生き生きしてたぞ、って」


戸叶「……聞いた話って、お前それ誰から聞いたんだよ?」

セナ「えっ? い、いやあの、我那覇響ちゃん、って子から」

戸叶「ハ?」
十文字「はぁ?」
黒木「はぁぁぁああ!?」

セナ「ひぃぃぃっ!? ご、ごめんなさい!!」

モン太「ていうか、絶対十文字も765プロのアイドル好きだろ」

十文字「あん? む、ぐ……」



十文字「……ま、適当に物販でも見て回るか。まだ時間あんだろ」ザッ

鈴音「誤魔化したー♪」ピョコッ

雪光「あっ、雪歩ちゃんのグッズだ……焼肉のタレ、買おうかな」

夏彦「僕らも行こうか鈴音! 鈴音の着れるサイズのTシャツがあるといいね」グッ!

鈴音「へっ、兄さんそれどういう意味?」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:07:19.01 ID:i5OyujgV0
夏彦「アハーハー、最近言ってたじゃないか、シュークリームを食べ過ぎて太ったとか…」

鈴音「太って!! な、いっ!! つーの!!」ギャリギャリギャガゲガギドギャゴ!!

夏彦「ア゛ア゛ア゛ァァァァァァッ!!!」

黒木「バカはほっとけ」

戸叶「だな」

テクテク…





小結「………………?」

小結「……ッ!?」キッ



ザワザワ…  ガヤガヤ…



小結「…………ッ」ハッ… ハッ…!

セナ「小結君、どうしたの?」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:08:46.80 ID:i5OyujgV0
小結「ッ!!」クルッ

小結「し、神龍!!」

セナ「しんりゅう?」

小結「ッ!!」コクコク!


セナ「しんりゅう? ……」

セナ(ど、どういう意味なんだろう……神竜……げ、ゲーム!?)

セナ(それともあの7つのボールの……でも何でこのタイミングでそんな話題!?)

セナ「ダメだ、小結君ごめん! く、栗田さんちょっと通訳…!」



店員「あー、お客様!! 困りますっ! あー!! お客様っ!! あーお客様!!」

栗田「うまふぃす」モゴモゴ



セナ「他人のフリしといた方が良さそうだ」(真顔)

小結「…………」ゴクリ…
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:10:49.83 ID:i5OyujgV0
〜会場 765プロ控え室〜

春香「はい、雪歩っ! 春香さんお手製のクッキーですよー♪」

雪歩「あ、ありがとう春香ちゃん」

律子「はーるーか。本番前にそんなもの食べたら喉がパサパサしちゃうでしょ?」

春香「ぱ、パサパサしませんよぉ! ちゃんとしっとりテイストに作ったんですから」

貴音「なるほろ、びみでふね」モゴモゴ

春香「なああぁぁぅ!! た、貴音さん全部食べないでっ!」

雪歩「えへへへ」ニコニコ



伊織「私達の命運がかかった大一番の前だってのに、随分とリラックスしてるじゃない」

雪歩「あ、伊織ちゃん」

千早「私では、春香のように気の利いた事は出来ないけれど……」スッ

コトッ


千早「お茶を……萩原さんの口に合わなければ、無理して飲まなくてもいいから」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:12:16.47 ID:i5OyujgV0
雪歩「ううん、千早ちゃん」

ズズズ…

雪歩「はぁぁ……落ち着きますぅ」

雪歩「……ありがとう、千早ちゃん。嬉しい」ニコッ

千早「わ、私は、別に……」カァァ


亜美「ねーねー兄ちゃん、ゆきぴょんの出番そろそろ?」

P「ん? もう少しかな。
  ジャリプロの桜庭春人が出なくなって、セトリも繰り上がったし」

響「アレは驚いたよなー。まーアメフトと両立するのは難しかったんだろうけどさ」


やよい「……あれ? うー、でもおかしい気がします」

真「何が、やよい?」


やよい「ここに来る前、外に桜庭さんの物販スペースがあった気がしたかなーって……」

真美「何だ、じゃあやっぱり出るの?」

律子「いや、もうプログラムは組まれてあるわよ。彼が出る予定は無いわ」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:14:50.22 ID:i5OyujgV0
あずさ「あら〜、じゃあ、何で桜庭春人さんの物販があるのかしら〜?」

律子「そんな事聞かれても……」


律子「……ところで、先ほどからヒル魔君の姿が見えないけれど」キョロキョロ

雪歩「なんか、用事があるって言ってましたぁ」

伊織「本番直前の担当アイドル放るほどの用事って、何よ」

P「今日のステージ用マイクも、彼が持ってきてくれる手筈になっていたはずだ。
  そろそろ準備をさせたい所なのだが……」

響「アイツの事だから、絶対ロクでもない用事に決まってるぞ」


雪歩「あまり良くない事を企んでいるのは、たぶんそうだと思います」

雪歩「だけど、ヒル魔君はたぶん、私を勝たせるための準備をしているんだと思うんです」

伊織「大した信頼関係ね」

雪歩「えへへ、あの……理由が無い事は、たぶんしないと思うから、あの人」

律子「……それもそうね」



P「ところで、美希は寝坊か?」

真「あ、そろそろ着くって連絡ありました。ボク迎えに行ってきます!」ダッ

P「しょうがないヤツだなぁ、アイツも」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:16:12.79 ID:i5OyujgV0
〜会場外 物販スペース〜

キャーッ! サクラバクーン!!  チョーダイチョーダイ!!

伊藤「あ、アハハハ。はい押さないでー、まだまだグッズはありますよー」

女性客「キャーッ!」「Tシャツくださーい!」

伊藤「ハハハ、は、は……!」チラッ



男「ぐっ……う、うあぁ……」ピクピク…



伊藤「ハハハ……」カタカタ… 

伊藤(き、気まずい……ていうか)

伊藤(コレ、犯罪だよねー、フツーに考えて……!)ガタガタ…!

伊藤(やっぱり乗っちゃマズかったかなー! でも断れなかったよなー!?
   殺されるって思っちゃうもんなー!?)
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:17:34.50 ID:i5OyujgV0
女A「ねーねー! 今日は桜庭君ライブに出るんですかー!?」

伊藤「はぇっ!?」ビクッ

女B「やだぁ、出るに決まってるじゃない! 出ないのにグッズ売るわけ無いでしょ?」

女A「えー? だってさーニュースやってたじゃん。引退するとかって」

女B「バカね、私達ファンを驚かせるためのフェイクニュースよ。ねー店員さん?」

伊藤「あ、アハハ……私一応社長なんだけどね」


伊藤(どうしよう。言いづらい……でも、言えない)

伊藤(こんな良い立地で、こんな繁盛してるのに……)

伊藤(正規の販売店員を半殺しにして得たスペースで売った所で、嬉しくもなんとも……!)



伊藤(桜庭ちゃん……ごめん。私は間違えてしまったようだ……)

伊藤(彼に唆されたとはいえ……)
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:19:08.92 ID:i5OyujgV0
〜会場外通路〜

ゴキャッ

警備員「あ、がっ……!?」

ドサッ



ツカツカ…

阿含「……チッ。カスの汚ねぇ血が付いた」ゴシゴシ


阿含「…………」



阿含(……この辺りだな)
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:21:34.51 ID:i5OyujgV0
阿含(…………?)ピタッ



テクテク…


美希「ふわぁぁ…………あふぅ」

美希「おんなじような通路ばっかりで、よく分かんないの」

美希「控え室、どこから入るのかなぁ?」



阿含「…………」ニヤッ



美希「デコちゃんに電話しよっと。あ、でも待っていればそろそろ真クンが迎えに…」

阿含「そこの君」

美希「ん?」クルッ
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:23:09.45 ID:i5OyujgV0
阿含「萩原雪歩さんに会いたいんだけど、どこかな?」

美希「え、雪歩?」

美希「あー。ひょっとしてファンの人でしょ。
   ダメなんだよ? 本当はここ、関係者以外立ち入り禁止なの」

美希「それに、ミキも迷ってる最中だから、聞かれても答えらんないの。ゴメンね?」

阿含「あぁ、そうなんだ。じゃあ一緒に探さない?」スゥ…


美希「えっ、なんで?」サッ

阿含「……!」ピクッ

美希「?」キョトン



阿含(……コイツ、死角から伸ばした俺の手をナチュラルに避けやがった)



美希「ミキの話聞いてた? ファンの人は、ここに来ちゃダメなの」

美希「雪歩のファンなら、そういうレーギはちゃんと持っててほしいって思うな」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:24:49.75 ID:i5OyujgV0
阿含「……あ゛ぁ〜〜〜、そうそう」ポリポリ

美希「?」


阿含「雪歩ちゃんの面倒見てる、ヒル魔ってヤツ、いるだろ?」

阿含「ソイツにちょっと用があるんだわ。言わなくて悪かったけどさ」

美希「あ、なんだ、ヒルの人のお友達? じゃあ話は早いの!」

美希「と言っても、ミキも場所分かんないから、他の人に聞こ?
   どこかいないかなぁ?」キョロキョロ

阿含「…………」



美希「ムムッ、あっちに人の気配が。ねぇねぇ、そこの人ー!」タタタ…


阿含「…………」

美希「あれ、寝てるのかな?
   警備員さんがお寝坊さんじゃ困るの、ねーねー起き…」グイッ

警備員「」ゴロン

美希「て…………」



美希「……ッ!?」ゾォッ…!
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:28:10.87 ID:i5OyujgV0
美希「な……何、これ……!?」

美希「誰が、こんなひどいこと……!」


ズォォッ…!

美希「ッ!?」

シュバッ! スカッ


タッ

美希「……ッ!」

阿含「やっぱりテメー、俺の動きが見えてやがんな」



美希「……ファンの人じゃないの?」

美希「警備員さんに、こんなひどい事をして……!」



阿含「……あ゛〜〜〜〜?」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:30:48.97 ID:i5OyujgV0
阿含「ククク……ファンだと? 俺がカス共の?」

阿含「笑いに来てやったんだよ。それと、現実を教えてやりにな」

美希「えっ……」


阿含「ヒル魔とかいう狡いだけのカスが、同じく才能のねぇヤツ捕まえて、
   夢見て努力しちゃってるらしいからよ」

阿含「そういうウジ虫共を」

阿含「プチッ」

阿含「と踏み潰してやるのが最高に楽しいってだけだ」

阿含「ジャリプロと961プロからは、邪魔者を潰した謝礼もオマケでもらえるしな」


美希「雪歩を、どうするつもりなの!?」

阿含「どうもしねぇよ。ただ横にいるプロデューサーをリタイアさせてやるだけだ」

美希「!!」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:36:42.93 ID:i5OyujgV0
阿含「961の社長、アイドルには危害を加えずに陥れろとかメンドくせぇ注文付けやがったからな」

阿含「今日、萩原雪歩の隣にいるのが、ヒル魔なのか正規のプロデューサーか知らねぇが……」ゴキゴキッ

阿含「精神的支柱が倒れりゃ、夢見ちゃったカスの無駄な努力もめでたくGAME OVERだ」



美希「…………」

阿含「だから安心しな、アイドルには手ェ出さねぇよ」

阿含「まぁ終わった後に違う意味で……」

ザッ

阿含「?」クルッ



テクテク…

P・雪歩「…………」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:37:47.94 ID:i5OyujgV0
美希「あっ! ゆ、雪……!?」

阿含「マイク持ってやがる……ククク、いるじゃねぇか」スッ

ギャオッ!


美希「は、速っ……危ないっ!!」



阿含「死ね」グァッ

ボッ!

P「」ガスッ!!

阿含「ッ!?」


タッ…



美希「が、ガードしたの!?」

阿含「……テメェ」

阿含(あの男……俺の手刀を、まるで槍みてぇな掌底で……)



阿含「“槍”……?」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:38:41.81 ID:i5OyujgV0
美希「あの人、プロデューサーじゃないの」

阿含「あ゛ぁ〜〜〜?」

美希「だって、ミキ達のプロデューサー、頭がPの字だもん」


阿含「……誰だ、テメェ」



P(?)「…………」ゴキッ

スッ



進「…………やるな」ゴキキッ


阿含「王城の、進清十郎……」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 20:40:08.03 ID:ORkM/9GV0
続き続き!
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:40:22.03 ID:i5OyujgV0
阿含「一丁前にスーツか……テメェにコスプレ趣味があるとはな」

阿含「何してやがる。こんなアイドルイベント、テメェの出る幕じゃねぇだろ」

進「ヒル魔妖一に頼まれた。お前を止めろと」

阿含「何だと?」


美希「ていうか……雪歩も、雪歩じゃないよね?」

阿含「……?」



雪歩(?)「うぅぅ……は、恥ずかしい」

クルッ

まもり「でも、畏れ多くても、雪歩ちゃんを守るためならって」


美希「あー! ヒルの人の彼女さんなのー!」

まもり「か、彼女じゃありませんっ!!」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:43:24.58 ID:i5OyujgV0
美希「でもすごいすごい! ソックリだったの。
   あ、それひょっとして本番用のマイク?」

美希「身長も雪歩より大きいのに、きゅ〜って縮こまってる感じがゼツミョーってカンジ」


ザッ

高見「見た目の身長というのは、姿勢の差、気の持ちようによる所が大きい」

高見「姿勢が変われば、見た目の印象なんて5cmくらいは変わるものさ」


美希「あ、また知らない人なの」

阿含「王城の投手(クォーターバック)か。
   何をしてやがる。ヒル魔のカスにこき使われてるたぁ情けねぇ」



高見「こき使われている、か……彼がどう思っているかは知らないが」

高見「俺達にとっても、明確な利があっての事だ。だから彼に協力している」

阿含「……何?」



進「春の関東大会では対峙できなかった、金剛阿含……」

進「一年前、王城が屈辱を味わってから、どれほど力を付けたか。
  俺を狙いに来るお前の、その力量を確かめる機会を得たが……」

進「今の手刀を見るに、どうやらそれほど成長してはいないらしい」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:45:31.45 ID:i5OyujgV0
阿含「あ゛ぁ〜〜〜!?」

阿含「今ので俺の力量を見抜いたつもりか。笑わせんな、カスの分際で」


高見「阿含……君の力はよく分かっているつもりだよ。何せ一年前にこの身で思い知らされた」

高見「だから俺達も努力した。
   それが無駄かどうかは、関東大会でウチと当たった時にでも確かめてみるといい」

高見「そして……今回、ヒル魔に協力しているのは、他ならぬ俺達のチームメイトからの要望でもある」

高見「俺達も、努力する者に感情移入してしまうものなんだ。
   “天才”には、一生分からないことかも知れないがね」

阿含「…………」



まもり「王城の人からの要望?」

美希「ていうか、ミキ、一つだけ気になるんだけど」

美希「彼女さんが持ってる雪歩の本番用マイク、そろそろ届けないとマズくない?」

まもり「あ、そ、それは……どうしよう」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:47:34.11 ID:i5OyujgV0
高見「任せてくれ」スッ

まもり「あっ」

高見「彼から渡された、このバッグに」スッ

高見(なるほど、ご丁寧にアメフトボール型のバッグか……用意周到な事だな)


高見「……あそこに、この会場の別棟となる建物があるだろう」

高見「大物アーティストなどが、ヘリコプターであそこに到着し、会場へ向かう演出も時折あるそうだ」

高見「当然、あそこからステージへ至る通路もある」

美希「それがどうしたの?」



高見「東京大会の本番前に、一足早くお披露目する事になるが……」

高見「まぁ、関東大会まで隠し通すつもりも無いから、阿含……君に見られても問題は無い」グッ

スゥッ…

阿含「……?」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:48:43.52 ID:i5OyujgV0
高見「」ドギュアッ!


美希「!?」

まもり「な、投げた!? アメフトボール型のバッグを……!」


ギューン…!


阿含「ククク、どこに投げてやがる」

阿含「せいぜいあの建物の屋上を狙ったんだろうが、こんな高さじゃ飛び越えて向こう側に落ちるぜ」

高見「いいや、狙い通りだ」

阿含「?」



ダッ!


美希「あっ、誰か屋上にいるの!」

まもり「あ、あの人は……!!」


阿含「……!!」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:50:33.45 ID:i5OyujgV0
高見「これが、新生王城の武器の一つ……」クイッ



桜庭「……ッ!」バッ


『エベレストパス』

バシィッ!!


まもり「桜庭君っ!!」

美希「た、高ぁーい!」


阿含(あの身長、あの腕の長さ……あんな高い到達点で、捕りやがった)



高見「桜庭も、苦しみながら努力を重ねて、今の王城に無くてはならない存在に成長した」

高見「そんなアイツからの頼みだったんだ。
   今日のために非常な努力を重ねた萩原雪歩のステージを、俺達も守りたい」

まもり「高見君……」



阿含「……なるほどな」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:52:16.24 ID:i5OyujgV0
高見「桜庭っ!! それをステージ裏にいる萩原雪歩へ届けろ!」

桜庭「はいっ!」ダッ!



阿含「……カス共が、どこまでも無駄なあがきをしやがって」

阿含「ヒル魔みてぇな素人が、アイドルのプロデュースの真似事をして何になる?
   そんな才能のねぇカスの指導を受けた所で、その道の天才にはどうせ敵わね…」

美希「そこのヘンな髪の人」

阿含「……あ゛ぁぁ〜〜〜?」


美希「さっきから聞いてれば、才能とか天才とか、カスとかうるさいの」

美希「そんなに才能が好きなら、才能と結婚でもすればいいって思うな」

まもり「ちょ、ちょっと、美希ちゃん……!」オロオロ
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/27(土) 20:53:56.60 ID:i5OyujgV0
美希「大体、本当に雪歩が勝てるわけ無いって思うなら、余計なジャマしなくたって良いでしょ?」

美希「まともな勝負にならないように、妨害しようとするのって、なんかおかしいの」

美希「正々堂々とやらない卑怯な人が才能がどうとか、チャンチャラおかしいってカンジ」

阿含「…………」イラッ


美希「雪歩は、強い子だよ。ミキが言うんだから、間違いないの」

美希「才能なんかよりずっと強いものを、雪歩はちゃんと持ってるよ」



阿含「…………」

高見「どうする、阿含?
   このままいけば、桜庭が無事に雪歩ちゃんへマイクを届けるだろう」

まもり(あ、今雪歩ちゃんって言った)

高見「俺達もこれ以上、いたずらに事を荒立てるつもりは無い。
   このまま君が帰ってくれるなら、俺達も何もしない」

進「…………」
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