艦娘サンダーボルト DECEMBER SEA

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 20:41:20.33 ID:0vHeIz+u0
ニ隻は、沈め合う宿命…

元ネタ 
『艦隊これくしょん -艦これ-』
『機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY』
但しガンダムのキャラは出ません。

今回書くのは以下の物話の続編ですが、前作未読でも楽しめるように書きます。

前作
『深海棲艦 女騎士級「シン・オンナキシ」』
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1468844874/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1541850079
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 22:12:10.48 ID:0vHeIz+u0
客1 「ほら……あのテーブル」

客2 「何?」

客1 「あのテーブルの女の人、綺麗じゃない?」

客2 「……本当だ。モデルかな?」

客3 「やっぱり美人は美人同士でつるむんだね」

客1 「うちらと大違いだわ」

客2 「ひっどーい! ハハハハハ!」

客1と客3 「ハハハハハ!」

装甲戦艦姫(以下、姫騎士級) 「聞こえた? 長門のこと、綺麗だって」

長門 「お前も同じ評価だぞ、陸奥」

姫騎士級 「それは光栄ね。でも私達の正体を知ったらあの娘達びっくりするわよ」

長門 「私はともかく、お前の正体を知ったらパニックになるだろうな」

姫騎士級 「大丈夫よ。今は髪も染めてるし、サングラスしてるから。こうして艤装を外して人間と同じ服装をしてたら区別なんてつかなくなる。少なくとも私はね」

姫騎士級 「流石に真っ白な髪のままで赤い眼を見せながらココには来ないわ」

長門 (非番の日に街のカフェでテーブルを挟んで妹の陸奥と語らう)

長門 (怨みを纏って海に沈み深海棲艦に姿を変えたかつての妹は、肌が極端に白いことを除けば艦娘だった頃と似ていた)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 22:25:07.41 ID:0vHeIz+u0
長門 (深海棲艦化した陸奥は驚異的な装甲と火力を誇る)

長門 (西洋甲冑に似た鎧を纏ったその姿から、海軍に発見された当初『姫騎士級』と呼称された)

長門 (その後大本営は彼女の正式名称を『装甲戦艦姫』としたが、今でも軍では『姫騎士級』の名が通称として使用されている)
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 22:36:27.22 ID:0vHeIz+u0
コトッ

長門 「これは?」

長門 (陸奥がテーブルに箱を置いた)

姫騎士級 「乙姫様からの玉手箱。以前のオーキシジェンデストロイヤー搭載弾頭のお礼よ」

長門 「玉手箱なら開けたら一気に老人になるのか?」

姫騎士級 「そうだとしたら?」

長門 「提督への贈り物にしよう」

姫騎士級 「今の提督が嫌いなの?」

長門 「ああ、正直好かん。艦娘を兵器としか思っていない。私以外の艦娘達からも不平不満が出ている」

姫騎士級 「言うわね〜」

長門 「話を戻すが、箱の中身を今あけても構わないか?」

姫騎士級 「開けてもいいけどそれは明石に見せないと意味無いわ。それに、仮に危険物だったらここに居る大勢の無関係な人間を巻き込むことになるわよ」

長門 「陸奥はそんなことしないだろう?」

姫騎士級 「それでも警戒心なさ過ぎ」

長門 「それはお互い様だ。陸奥だって単艦かつ丸腰で上陸してる」

姫騎士級 「長門は私を売ったりしないでしょ?」

長門 「当たり前だ」

姫騎士級 「平和になればお互いこうしてお忍びで会う必要もないのにね」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 22:47:19.70 ID:0vHeIz+u0
姫騎士級 「ただ明石がこれを気に入ってくれるといいけど」

長門 「……明石のこと、気にしてるのか?」

姫騎士級 「まあね」

長門 「その……」

姫騎士級 「何?」

長門 「そっちに……酒匂はいないか?」

姫騎士級 「残念だけど居ないわ」

長門 「ありがとう」

姫騎士級 「えっ?」

長門 「即答したということは事前に調べておいてくれたのだろう、その事への礼だ」

姫騎士級 「ええ、聞かれるかと思ってたから」

長門 「私よりも余程秘書艦向きだ」

姫騎士級 「おだててるつもり?」

長門 「いや、ただ……」

長門 「酒匂がどんな思いで死んでいったかと考えると今でも胸が締め付けられる」

姫騎士級 「長門のせいじゃないわ」

長門 「しかし……酒匂は私が産んだケダモノのせいで……。私が奴らをこの世に産み出したんだ」

姫騎士級 「望んで産んだ訳ではないでしょう」

長門 「だからと言って……」

姫騎士級 「これだけは言わせて」

姫騎士級 「酒匂があんな目に遭ったのは下劣な人間共のせいよ。長門のせいじゃない」

長門 「陸奥……」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 22:58:03.80 ID:0vHeIz+u0
姫騎士級 「そろそろ行くわ。鎮守府に帰ったら明石に伝えて」

姫騎士級 「『勝手なことしてごめんなさい、どうか自分を責めないで』と私が言っていたって」

長門 「ああ」

姫騎士級 「私が沈んだのは自業自得。明石が極秘に開発した試製弾頭を勝手に持ち出して使ったからよ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 23:12:20.56 ID:0vHeIz+u0
長門 (鎮守府に帰って来た)

長門 (陸奥の言う通り平和になれば、私も妹と人目を気にせず会えるのだが)

長門 (しかし……)

長門 (深海棲艦、それも姫級と密会。見つかれば解体処分どころの話ではない)

長門 (だがあの忌まわしき計画の復活を阻止するには、地上での私の仲間はあまりに少ない)

長門 (例え深海棲艦であっても妹なら信頼出来る。陸奥だって危険を承知で会いに来てくれているのだから)
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 23:17:54.01 ID:0vHeIz+u0
長門 (今は第六駆逐隊は遠征中だったな)

長門 (今日は非番だし部屋に戻るか)

ドオオオン

長門 (今の音、46cm砲か)

長門 (武蔵、また清霜と演習してるのか。大分気に入られてるな)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 23:35:33.07 ID:0vHeIz+u0
武蔵 「大分腕を上げたじゃないか」

清霜 「また負けた〜」

武蔵 「少しは喜べ。この武蔵を中破させたんだ」

清霜 「それはそうだけど、あああ、もう! 清霜も戦艦になりたい!」

武蔵 「戦艦と演習したら戦艦になれるというものでもないと思うが」

清霜 「今のうちに戦艦の動きを覚えておけば、将来戦艦になった時に役に立つでしょ」

武蔵 「それで私相手に演習か。いい心がけだ」

清霜 「でしょ」

清霜 (カッコいいなあ、武蔵さん)

清霜 (清霜も近代化改修で戦艦になれたりしないのかな……)
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 23:47:18.47 ID:0vHeIz+u0
明石 「これは凄いですよ、長門さん!」

長門 (陸奥の玉手箱を明石に渡して二日後、明石が興奮しながら現れた)

長門 「箱の解析が出来たか。中身は何だったんだ?」

明石 「はい、簡単に言うと革新的な艤装開発技術の資料とそれを使った新型艤装の設計図です」

長門 (新技術、深海棲艦の技術か……。陸奥の奴、そんな機密を流出させて大丈夫か?)

明石 「これの凄いところは、艦種に縛られずに艤装を装備可能なことです。理論上は、例えば赤城さんに潜水能力を付与して潜水正規空母にするとか」

明石 「駆逐艦に戦艦の主砲を搭載することが可能です」

長門 「雲を掴むような話だな」

明石 「ええ、この技術書を見るまでは現実味の無い話でした。使い方次第ではこの戦争の行方を左右する技術です。ただ……」

長門 (何だ?)

明石 「確かに凄いですが、問題が」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/10(土) 23:57:44.52 ID:0vHeIz+u0
長門 「問題?」

明石 「はい、艦種に縛られない艦娘と艤装のマッチングを可能にするのにかなり強引なことをしています。この製法で造られた艤装は艦娘との直接接続でのみ運用が可能です」

長門 「もう少し分かり易く説明してくれ」

明石 「すみませんでした。つまり……」

明石 「艦娘の四肢を切断して義肢化し、義肢を艤装に差し込んで接続するんです」

長門 「!」

長門 (……力を手にする代償に手足を切り落とされるというのか)
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/11(日) 00:13:42.50 ID:UgIgClF80
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
スレ立てしてから一時間半アクセス出来なかった時は困った。
前作完結から2年経ちますが、これからお付き合い頂ければ幸いです。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/11(日) 23:40:20.17 ID:8fo2Cjew0
サイコ清霜になるのか

そして大音量で加賀岬を歌う正規空母を殺りに行くのか
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/13(火) 20:58:38.42 ID:9z4/xoFZ0
明石 「あまりにも非人道的です」

明石 「ここには義手や義足の製造方法も記されてはいますが、だからといって……」

長門 「研究して、手足を切断せずにこの技術を使えるようにならないか?」

明石 「研究したいのはやまやまですが、研究開発にトライアンドエラーはつき物です。誰かがこの研究の被験者になる必要があります」

長門 「……」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/13(火) 21:10:22.90 ID:9z4/xoFZ0
長門 (さっき明石と話した時に思いついた事)

長門 (どうしても言い出せなかった……)

長門 (……?)

長門 (あれは第六駆逐隊?)

長門 (倉庫の方に向かっている、それに何か様子がおかしい)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/13(火) 21:23:53.51 ID:9z4/xoFZ0
ガラガラッ

第六駆逐隊一同 (倉庫の扉が開いた!?)

長門 「何をやっている」

暁 「長門さん!?」

長門 「何をしてる? こんなところで」

電 「はわわっ、これは……」

響 「ハロウィンの予行演習です」

長門 「ハロウィン?」

雷 「そ、そうです! ハロウィンの予行演習で歌の練習をしようとしてたんです」

長門 「そうか、だから人気の無い倉庫に来たのか」

暁 「そうなんです。このこと、他の皆には内緒にして欲しいんです」

長門 「分かった」

長門 「この時間、私はここに立ち寄っていない。何も見てないし聞いてもいない」

長門 「ただ、練習が終わったら後片付けと倉庫の戸締り、それと倉庫の鍵を所定の場所にきちんと返すんだぞ」

暁、雷、響 「はい!」

電 「はいなのです!」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/13(火) 21:34:23.43 ID:9z4/xoFZ0
長門 (ハロウィンか、もうそんな季節になったんだな)

長門 (私は何を迷っていたのだ)

長門 (さっきの第六駆逐隊の笑顔が思い出させてくれた)

長門 (深海棲艦の脅威からこの国を、いや……)

長門 (人類を護る。それが艦娘としての私の為すべきこと)

長門 (ならばもう迷うことはない。文字通りこの身を捧げよう)
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/13(火) 21:53:35.50 ID:9z4/xoFZ0
暁 「さっきは焦ったわ」

雷 「響ったらよく咄嗟にハロウィンなんて嘘思いつけたわね」

響 「我ながらハラショーな作り話だった」

電 「でも、本当のことを話しても良かったんじゃ……」

暁 「駄目よ。遠征中退屈だから音楽聞きながら航行したい、なんて言ったら叱られるに決まってるじゃない」

響 「退屈は言い過ぎだけど、気分転換に音楽を聞きながら航行するっていいアイデアだと思った」

暁 「と、当然よ! この暁の考えたアイデアなんだから。これで遠征も退屈じゃなくなるわ。それに遠征は私達第六駆逐隊に一任されてるんだから見つかりようが無いし」

雷 「でも本当にここでアカペラで歌って録音するの?」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/13(火) 22:02:02.88 ID:9z4/xoFZ0
明石 「本当にいいんですか?」

長門 「義手や義足の製造は可能なのだろう? むしろ私のような女には鋼の手足がお似合いだ」

明石 「義手や義足はあっても私達艦娘の手足に匹敵する巧緻性はありません。不自由な生活を強いられますよ」

長門 「構わん。それでこの戦争に勝てるなら安いものだ」

明石 「……」

明石 「分かりました……。長門さんの為にも、艦娘が義手や義足にならずにこの技術が扱えるよう研究します」

長門 「よろしく頼む。そうと決まれば提督に相談しよう。予算を組んで貰わんとな」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/13(火) 22:04:05.07 ID:9z4/xoFZ0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/15(木) 20:51:22.83 ID:mDlOQU7U0
提督 「確かにこの技術が普及すれば戦局をひっくり返せる……」

提督 「でかしたぞ、長門、明石」

長門 「では、予算については?」

提督 「ああ、出来る限り優遇しよう」

長門 「良かった」

明石 「ありがとうございます」

提督 「但し、テストベッドはお前ではなく別の艦にする」

長門 「えっ?」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/15(木) 21:01:17.31 ID:mDlOQU7U0
提督 「当たり前だろう」

提督 「お前は秘書艦だぞ。軍の内外から来るお客にも姿を見られる立場だ」

提督 「秘書艦が不格好な義手や義足で出て来たら相手が引くだろうが」

長門 「待ってくれ、私は自分が被験者になるつもりで――」

提督 「そうだな、第六駆逐隊、あいつ等をテストベッドにしよう」

長門と明石 「!?」

長門 「何故だ!? 何故よりによって第六駆逐隊なのだ!?」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/15(木) 21:10:57.99 ID:mDlOQU7U0
提督 「予算を優遇するとは言ったが無駄使いを許すとは言ってない」

提督 「新型艤装の研究開発……建造や改修と同じで大型艦ほど資材と時間を食うだろう」

提督 「予算と時間を抑える為に駆逐をテストベッドにする。当然の発想だ」

提督 「それに艦種の制約を受けずに自由に艤装を装備する為の研究なら」

提督 「駆逐に駆逐以外の艤装を付けられる研究をすべきだろう」

提督 「お前に駆逐の艤装を付けられたとして何になる?」

長門 「だからといって!」

明石 「待って下さい、提督!」

提督 「これ以上お前達の話は聞かん!」

提督 「少なくとも俺は新型艤装の研究開発を進めたいというお前の提案を聞いたぞ! 予算も優遇すると言ったぞ!」

提督 「何から何まで我儘を言うな!」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/15(木) 21:20:52.04 ID:mDlOQU7U0
長門 (何ということだ……)

長門 (提督を必死に説得し、四肢全てではなく、両腕のみ、もしくは両脚のみの切断ということで手を打ったが)

長門 (まさかこんなことになるとは……)

長門 (陸奥よ、お前はこうなることを見越していたのか?)

長門 (お前が私にくれた物は玉手箱ではなく)

長門 (とんでもないパンドラの箱で私はそれを開けてしまった)

長門 (私は……愚かだ)

明石 「長門さん……」

長門 「……何だ?」

明石 「私、この技術を研究して早くあの子達が義手や義足無しで済むようにします」

明石 「だからあまり自らを責めないで下さい」

長門 「よろしく頼む、明石も根を詰めるなよ」

明石 「はい」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/15(木) 21:31:50.09 ID:mDlOQU7U0
電 「司令官、本当なのですか!?」

提督 「ああ、本当だ。お前達の成長に伴っての改修だ。頑張ったな」

響 「遂に近代化改修……」

暁 「近代化改修した暁達はどうなるの?」

提督 「射程も火力も格段に向上するぞ」

暁 「暁が聞いてるのは見た目の話よ」

提督 「そうだな、サイバーパンクなカッコいい姿になる」

暁 「……そう、さいばあ……とにかくカッコ良くなるのね。暁、また一歩レディに近づいたわ」

雷 (きっと『さいばー何とか』の意味分かってない。雷もだけど)

提督 「詳しくは工廠にて明石の指示に従え。時間に遅れるなよ」

第六駆逐隊一同 「はい!」

提督 (ガキ共の相手は疲れる……。せいぜいテストベッドの役目は全うしろよ)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/15(木) 21:33:35.16 ID:mDlOQU7U0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 19:53:37.78 ID:7ZHX5iqX0
【一人目 暁の場合】
電 「暁ちゃん、その手……」

暁 「手? 手がどうかしたの?」

暁 「!?」

暁 「……何よこれ?」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 20:04:21.59 ID:7ZHX5iqX0
【ニ人目 雷の場合】
雷 「……」

雷 「雷もこうなるんだ」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 20:13:54.59 ID:7ZHX5iqX0
【三人目 電の場合】
電 「あの、長門さん……」

長門 「どうした、電?」

電 「これ、本当に近代化改修なのですか?」

長門 「ああ、そうだ」

電 「……分かりました」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 20:22:20.05 ID:7ZHX5iqX0
【四人目 響の場合】
響 「イヤだ」

長門 「我儘を言うな」

響 「今のままでいい。機械の手になんかなりたくない」

長門 「近代化改修で強くなれるんだ」

響 「演習ももっと頑張って今のままでもっと強くなるから!」

響 「これからはお風呂で毎日ちゃんと髪も洗うし、湯船でオ○ッコもしないから!」

長門 「お前は姉達を改修させて自分だけ今のままでいるつもりか?」

響 「ウッ……ウウ……グズッ」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 20:29:46.63 ID:7ZHX5iqX0
暁 (こんなの……レディに似合わない)

雷 (これで誰か助けられるの……)

電 (この手、指が三本しかないのです)

響 (もう改修前に戻れないのか……)

長門 「皆、ご苦労だった。艤装も近代化改修に伴い、装備等を変更している」

長門 「艤装の扱いは明石に聞くように。それからお前達の艤装に装備した新しい主砲を使っての訓練は私が直々に指導する」

明石 (こんなことまでして……)

電 「長門さん」

長門 「何だ?」

電 「一つお願いがあるのです」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 20:37:05.84 ID:7ZHX5iqX0
長門 (明石の説明を受けた後、第六駆逐隊が工廠を出ていった)

長門 (第六駆逐隊の艤装に装備された51cm連装砲)

長門 (本来駆逐艦には装備不可能だが、陸奥のもたらした新技術により装備可能となった)

長門 (とはいえ駆逐艦にとって重量過多となることに変わりなく)

長門 (他の装備を全て外した上で一隻につき1基2門が限界、さらに駆逐艦の快速も失われた)

長門 (提督は装甲の薄い駆逐艦を後方支援砲撃艦として活用する気か)

長門 (しかし一隻につき主砲1基だけで艦載機も無しでは弾着観測射撃も出来ない)

長門 (第六駆逐隊をこんな姿にまでして提督は何を考えている……)

長門 「明石」

明石 「はい?」

長門 「こんな嫌な任務をさせてしまって済まない」

明石 「私のことはいいんです。あの子達の方がよっぽどか辛いですよ。ただ、六駆の子達も思ったより大人だなって」

長門 「ん?」

明石 「電ちゃんがさっき、出撃中に音楽を聞く許可を求めたでしょう?」

長門 「ああ」

明石 「今なら長門さんも断り辛いって思ったのかもしれません」

長門 「電はそんな計算高いタイプじゃないだろう。確かに許可したが」

明石 「勿論計算高い子じゃありません。この場合は状況判断に長けると見るべきです」

明石 「あの子達は私達が思っている以上の成長を遂げるかもしれません。乗り越えてくれることを期待しましょう」

長門 「そうだな……」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 20:48:47.36 ID:7ZHX5iqX0
雷 「きっと、上手く洗えてないよね」

電 「そんなこと無いのです。雷ちゃんは髪を洗うのが上手なのです」

雷 (電の髪を洗う……)

雷 (せめて片手だけでも元の手なら……)

暁 (シャンプーハットが上手く被れない……)

響 「手伝う」

暁 「一人で出来るわ」

響 「無理しないで」

暁 「無理なんてしてないわよ!」

赤城 「フフフフッ、仲良しさんですね」

暁 「あら、赤城さん」

電 「ど、どうもなのです」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 20:57:20.09 ID:7ZHX5iqX0
第六駆逐隊一同 「赤城さん、ありがとうございました!」

赤城 「どう致しまして。皆が遠征に行ってくれるから私は資材が消費出来るんだし」

赤城 「さっき皆の髪を洗ったのはそのお礼」

暁 (赤城さんこそ真のレディーだわ……)

雷 (雷もこんなふうに人から頼られたい)

電 (赤城さん、優しいのです)

響 (ハラショー)

赤城 (噂には聞いていたけど……可哀想に……)
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/18(日) 20:59:05.82 ID:7ZHX5iqX0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/20(火) 02:20:38.11 ID:CwHs3nuk0
これが人間のやることかよぉ!
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/21(水) 21:17:02.72 ID:roEEAxBB0
長門 「緊張してるな、身体が強張ってる」

長門は両手を電の肩に乗せた。
電の身体がビクッと反応する。

長門 「怖いか?」

電 「はい……少し……」

長門 「誰にだって初めてはある。かつて私もそうだった」

長門 「気持ちは分かるが案ずることは無い」

長門は電の肩に乗せていた両手を電の喉元辺りで交差させるように抱きすくめた。
いわゆるあすなろ抱きである。
電の栗色の後ろ髪が長門の頬を撫でる。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/21(水) 21:24:25.84 ID:roEEAxBB0
電 「はわわ……」

動揺を隠せない電だが、長門の手を払いのける素振りはない。

長門 「それでも電の不安が打ち消せないのなら、私が自信を失くしてしまう」

長門 「私では電の相手に相応しくないのかと」

電 「そんなことないのです!」

長門 「済まない。こんな言い方は卑怯だったな」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/21(水) 21:31:05.93 ID:roEEAxBB0
長門 「しかしこう話してばかりで埒があかん」

長門は左手を電の首に絡めたまま、右腕を緩めた。
その右手の指先は電のセーラー服の襟、その紺の布地の上を滑りながら、赤いタイの結び目で一旦止まり、そこから下を目指す。
長門の人差し指と中指は、電の谷間とも呼べない並らかな胸の間を抜け、その下に続くお腹を経ても止まらない。
その指先が撫でる布がいつしかセーラー服の上着の白地からスカートの紺地に変わって間もなく、長門の指は電の臍から3cm程下でようやくその歩みを止めた。

電 「ひゃっ!? 長門さん!?」

長門 「電のここには何があるのかな?」

電の紺色のスカートの上から、長門の指先が小さく円を描くように電の下腹を撫でる。

電 「そ、そこは……」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/21(水) 21:43:45.41 ID:roEEAxBB0
長門 「私が何と教えたか覚えてるか?」

電 「はい……覚えてるのです。……艦娘にとってとっても大事なところだって」

長門 「口に出して言うんだ」

電 「それは……」

長門 「もう一度問おう。電のここの奥には何があると教えた?」

長門が再び後ろから電の耳元に囁く。
電の腹部で円を描いていた長門の指が止まり、そのまま軽く押しこまれた。

電 「はうぅッ!?」

堪らず電は内股になって腰を引くがその結果、電は斜め後ろに立つ長門の太股に自らの臀部を押し付けることとなった。
右太股に電の未発達な尻肉の感触を受け、指先には柔らかでかつ弾力に富んだ電の下腹の感触を感じながら、長門は電に囁いた。

長門 「さあ、言うんだ」

電 「そこにあるのは……電のお腹の中にあるのは……」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/21(水) 21:50:33.70 ID:roEEAxBB0
電 「丹田です!」

長門 「そう、丹田だ。よく覚えていたな」

長門 「丹田に力を込め、両足を肩幅と同じだけ開き、真っ直ぐに目標を見据える。これが主砲斉射の基本姿勢だ」

長門 「後は自分のタイミングで撃ってみろ。大丈夫だ、私が支えている」

電 「はい……撃ちます!」

ドオオオン!
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/21(水) 21:56:17.90 ID:roEEAxBB0
電 「はわわ……外れたのです」

長門 「……いや、スジは悪くない」

長門 「ただ、もう少し上体を起こすんだ。反動に備えたいのは分かるが、へっぴり腰ではかえって反動に耐えられない」

電 「はい」

長門 「もう3発撃ったら響と交代だ。さあ、続けるぞ」

電 「はい」

長門 (51cm連装砲、駆逐艦には例え1基でも砲撃時の反動は大きいだろう)

長門 (私が出来るのは、教導で彼女達の戦果と生還率を上げること。償いにもならんが……)

電 (長門さんが後ろで支えていてくれなかったら転倒していたのです)

電 (長門さんの指導に報いる為にも頑張るのです……)
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/21(水) 21:58:59.92 ID:roEEAxBB0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 20:49:38.52 ID:1OJtWd2T0
電 (さっき脱衣場で鎮守府カレー大会のポスターを見つけたのです)

電 (優勝者のカレーは食堂のメニューに起用される。それは名誉なことだと教わったのです)

暁 「暁達も鎮守府カレー大会に出るわよ」

雷、電、響 「え?」

暁 「お料理と言えばレディのたちなみ! ……嗜み」

雷 (噛んだ)

響 (噛んだ)

電 (難しい言葉を使おうとして噛んだのです)

暁 「オッホン、つまり優勝してお料理チャンピオンになることがレディへの近道なのよ」

雷 「この両手で?」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 20:57:57.25 ID:1OJtWd2T0
暁 「ウ……」

雷 「魚肉ソーセージの皮もまともに剥けない手で優勝なんて無理よ」

暁 「雷が魚肉ソーセージ剥けないのは元からじゃない」

雷 「何ですって!」

響 「二人とも落ち着いて。……ただ、出場には反対だ」

暁 「どうして?」

響 「ただでさえ新しい艤装を使いこなせてない。今は料理の腕よりも練度を上げるべきだ」

暁 「それは……」

電 「電は……出たい」

雷 「電?」

電 「電はもう鎮守府の皆に心配かけたくないのです」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 21:05:49.28 ID:1OJtWd2T0
電 「最近、皆が近代化改修した電達を気遣ってくれるのです」

電 「特に長門さんは毎日付きっきりで主砲の撃ち方を教えてくれるのです。秘書艦のお仕事だってあるのに」

雷 「そう言えば今日の長門さん、目が少し充血してたわ」

電 「きっと電達に時間を取られて寝不足なのです」

電 「改修後の身体に慣れてない電達を皆が心配してる。だったらカレー大会で優勝して……」

電 「電達が義手を使いこなせることを見せれば皆が安心するのです!」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 21:14:24.81 ID:1OJtWd2T0
暁 「よくぞ言ったわ! それでこそこの暁の妹よ」

響 「ハラショー……。義手を使いこなす為の訓練としてなら悪くない」

雷 「決まりね。だったら皆で優勝目指しましょう」

第六駆逐隊一同 「オーッ!」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 21:23:30.96 ID:1OJtWd2T0
長門 「本年度鎮守府カレー大会優勝は……」

長門 「第六駆逐隊!」

第六駆逐隊一同  「ワアアアアアッ! ヤッター!」

暁 「これで一人前のレディー……」

雷 「もう……みんな私に頼り過ぎィ……」

響 「ハラショー……」

電 「なのです」

長門 (みんな……頑張った甲斐が……あったな……)
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 21:34:52.54 ID:1OJtWd2T0
提督 「カレー大会は第六駆逐隊が優勝か……」

長門 「ああ、これで第六駆逐隊も自信がついた筈だ」

提督 「悪いが子供の作ったカレーに興味はない」

長門 「……」

提督 「長門、確かに俺は第六駆逐隊の近況をお前に尋ねた」

提督 「だがそれはお前が演習であいつ等を教導する立場にあるからだ」

提督 「今、俺が何を聞きたいか、分かるな?」

長門 「教導艦としての見解だが、新型艤装を装備した第六駆逐隊の練度は既に実戦に通用すると思われる」

提督 「よろしい」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 21:39:11.99 ID:1OJtWd2T0
今回はここまで。
ようやく50レスまで来ました。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:38:40.68 ID:i3EIB1K/0
加賀 「制空権確保したわ」

暁 「攻撃するからね」

ドオオオオオン!

暁 「初弾、外れた!?」

金剛 「全砲門!Fire!」

ドオオオン!

金剛 「ヒット!……軽巡ホ級、轟沈!」

響 「凄い……」

暁 「次弾は暁も当てるんだから!」

金剛 「リラックスね暁。敵の攻撃はミーが引き受けるわ」

暁 「はい」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:46:23.28 ID:i3EIB1K/0
加賀 「敵残存艦隊、撤退します」

電 「大勝利なのです」

雷 「51cm連装砲、凄過ぎ」

響 「主砲の威力もさることながら演習の成果が出た」

暁 「どう? 暁は敵空母まで沈めたわよ」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:58:02.30 ID:i3EIB1K/0
加賀 「報告は以上です」

提督 「ご苦労だった、下がっていいぞ」

加賀 「失礼します」

バタン

提督 (……面白い)

提督 (戦死した原の後釜でここの鎮守府に赴任したのは気に食わなかったが、どうやら俺に運が向いてきたらしい)

提督 (原益三、お前が提督だった時に新技術が入手出来なくて残念だったな)
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 21:04:24.95 ID:i3EIB1K/0
加賀 「金剛さんと私と第六駆逐隊で敵2艦隊を殲滅、残りの敵は撤退しました」

加賀 「暗礁海域という地の利があったとはいえ大戦果です」

長門 「流石だな」

長門 (この鎮守府周辺に広がる海域の一つ、暗礁海域……。文字通り暗礁が多い為に艦船での移動は危険かつ時間がかかる)

長門 (それ故この海域で敵は空母を主力とした攻撃を仕掛けてきた。航空機なら暗礁は関係無い)

長門 (当然こちらも空母で対抗するが、この鎮守府に配属された空母は赤城と加賀の2隻のみ。赤城と加賀を交互に休息させる為に一隻ずつしか出撃させられない)

長門 (敵空母が複数だった場合、いくら一航戦が優秀でも一隻では制空権の優勢が精一杯。艦爆等の艦載機による敵艦隊への攻撃まで手が回らない)

長門 (以降は砲雷撃戦に移行し、敵を撃退する為に我が軍も複数の大型艦を投入せざるをえなかった。そして戦闘の度に艦隊はそれなりに損害を被ってきた)

長門 (だがこれで戦術が変わった)

長門 「引き止めて済まなかった。次に敵が現れた時は榛名と赤城に出て貰う。加賀は入渠してくれ」

加賀 「ええ、そうさせて貰うわ」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 21:12:22.07 ID:i3EIB1K/0
長門 「51cm連装砲の三式弾で敵の航空戦力を削って空母の負担を減らす」

長門 「以降はアウトレンジから一方的に51cmで敵の艦船を叩く。それでも敵が接近してきたら被害担当艦が敵を引き付け、その敵を51cmが仕留める」

長門 「こちらは正規空母1、駆逐4、それから被害担当艦として戦艦1の編成で敵を撃退可能となった」

赤城 「しかし51cm砲とはいえ4隻で4基とは効率が悪いですね」

長門 「そう思うだろう。戦艦なら1隻で3基から4基の主砲を装備出来る」

長門 「だが4隻に分散して持たせたことに意味がある」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 21:23:36.62 ID:i3EIB1K/0
長門 「1隻に4基の主砲を装備させても一方向からの砲撃にしかならん」

長門 「しかし第六駆逐隊の場合、4隻を分散配置することで複数方向からの砲撃が可能となった」

長門 「こちらに接近すればする程、敵は51cmの十字砲火にさらされることとなり、最終的に四方から来る超大型徹甲弾の餌食になる」

赤城 「敵にしてみれば挟撃される訳ですからたまりませんね」

長門 (暗礁を避けながら接近せざるを得ない敵を、大火力で一方的に叩くこの戦術は功を奏し、その後第六駆逐隊は戦闘の度に多くの戦果を挙げた)
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 21:24:25.34 ID:i3EIB1K/0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 21:30:57.74 ID:eDIi9wTQ0
雷 「音楽かけます」

長門 「ああ、好きにするがいい」

♪さぁ、起きて みんな Are you ready?

赤城 「可愛らしい歌ですね」

電 「第六駆逐隊の皆で皆で合唱したのです」

赤城 「前の出撃では『加賀岬』を流したと加賀さんからは聞いたわ」

響 「加賀さんにはそういう露骨におもねるようなことはするなと叱られました」

暁 「『あなた達に演歌が分かるの?』って言われて何も言えなかったわ」

赤城 「あら、そうだったの。……加賀さんらしいわ」

赤城 「きっと加賀さんは貴女達自身が好きな歌を流して欲しかったのよ」

赤城 「貴女達に気を使わせてはいけない、という加賀さんなりの気配りよ」

暁 「そうなんですか?」

赤城 「そう。加賀さんって結構キツい印象を持たれがちだけど本当は優しいから」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 21:38:44.95 ID:eDIi9wTQ0
赤城 「航空優勢。……索敵で判明した敵の戦力は……空母2、重巡1、軽巡1、駆逐1、識別不能艦1」

長門 「識別不能だと?」

赤城 「恐らく新型ですね。既存の敵で最も形状が近いのは戦艦棲姫ですが、更に大きいです」

長門 「ならば戦艦か? やり甲斐がある」

赤城 「はやる気持ちは分かりますが、まずは私が敵の戦力を削ぎます」

長門 「ああ、分かっている。よろしく頼む」

赤城 「任せて下さい」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 21:45:01.21 ID:eDIi9wTQ0
暁 「赤城さんの艦爆の後は新生第六駆逐隊のお出ましよ! 今回も楽勝だわ」

電 「いくら連戦連勝しても油断はいけないのです」

雷 「もう私達は何度も出撃して勝ってきたじゃない。もっと自信持ちなさい。こっちは長門さんと赤城さんが居るだけでも勝ったようなものだわ」

響 「敵に同情する位だ」

暁 「音楽にノッてジャンジャンいくわよ!」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 21:55:37.43 ID:eDIi9wTQ0
赤城 「敵新型艦、今だ健在」

赤城 (九九艦爆でも沈まないなんて……)

長門 「敵は旗艦と思われる新型艦を先頭に単縦陣で接近している。我が艦隊はこれをT字有利で迎撃する。第六駆逐隊は私の合図で主砲一斉射せよ」

第六駆逐隊一同 「了解!」

長門 「赤城、攻撃続行出来るか?」

赤城 「はい、少し時間を下さい」

長門 「流石だな。ヲ級2隻相手に航行優勢を取り、うち1隻を撃沈するのだから」

赤城 「しかし、あと1隻ヲ級が小破で残っています。これを次の艦爆で沈めます」

長門 「了解した。私と第六駆逐隊は敵の新型に一斉射を加える」

長門 「第六駆逐隊、間もなく敵がこちらの射程に入る。事前に照準を合わせろ」

暁、雷、響 「はい!」

電 「はいなのです!」

長門 「……砲撃十秒前、九、八、七、六、五、四、三、ニ、一、全艦主砲一斉射!」

長門 ドオオオン!

第六駆逐隊一同 ドオオオオオン!
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 22:07:33.23 ID:eDIi9wTQ0
長門 「堅いとはいえ流石に効いた筈だ」

長門 (せめて中破までいって欲しいが。しかし……)

長門 (何故敵は攻撃して来ない?)

赤城 「攻撃隊、全機発艦!」バシュッ!

長門 (我が艦隊の第六駆逐隊のような例外はあるが、基本的に重装甲の艦は強力な主砲を有する。あの敵艦、艤装からして戦艦棲姫の亜種か後継……)

長門 (なのに何故撃ってこない? やはり赤城の艦爆やこちらの主砲が効いているのか? いや……)

長門 (もし撃てないのでなくこれまで敢えて撃たなかったとしたら……)
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 22:13:22.06 ID:eDIi9wTQ0
長門 「!」

長門 「赤城、敵の新型と距離を取れ!」

赤城 「はい?」

敵識別不能艦 ドオオオオオン!

赤城 「砲撃!? 長門さん、気を付けて!」

長門 「違う! 赤城を狙ってる!」

赤城 「!?」

ドゴオオオッ!

赤城 「きゃぁっ!」大破

長門 (これが狙いか!)
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 22:14:05.23 ID:eDIi9wTQ0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 19:54:18.25 ID:3VF3bCYr0
長門 (私も第六駆逐隊も既に敵の射程圏内だった)

長門 (だが敵の新型は敢えて後方に居る赤城を射程に捉えるまで砲撃を控えていた。射程を悟られたくなかったのだ)

長門 (後方の赤城まで届いた射程、赤城を一撃で大破させた威力……)

長門 「第六駆逐隊!」

第六駆逐隊一同 「!?」

長門 「敵識別不能艦の主砲はお前達の51cm連装砲に匹敵すると思われる」

長門 「油断するな! お前達も既に射程圏内だ」

長門 「回避が間に合わなければ主砲を盾にしろ。それがお前達の装甲で最も厚い!」

第六駆逐隊一同 「はい!」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 20:10:31.25 ID:3VF3bCYr0
長門 「赤城、自力で動けるか?」

赤城 「はい、何とか……」

長門 「敵はこちらで引き受ける。撤退するんだ」

赤城 「分かりました。せめて……さっき発艦させた攻撃隊でヲ級を沈めます」

長門 (敵の新型は相当数被弾した筈だが健在、さらに敵は無傷の艦が3隻に小破のヲ級まで控えている)

長門 (あの新型が旗艦の筈。あれを沈めて敵の統率を乱す。そうすればまだ勝機はある)

長門 (厄介なのはあの新型の主砲。第六駆逐隊が食らえば一撃で大破。私が受けてもどれだけ持つか……)
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 20:33:16.07 ID:3VF3bCYr0
長門 (敵の新型が次弾装填を終えるまでに考えろ、超大型の主砲ならその分装填時間も長い筈)

電 「はわわ、赤城さんが……」

暁 「赤城さんの撤退支援よ!」

雷 「撤退支援って具体的にどうするのよ?」

響 「敵の注意を支援対象から逸らす、もしくは敵の進軍や攻撃の妨害」

雷 「そんなの分かってるわ。それをする為に具体的にどうするかって話よ」

電 「妨害しようにも、主砲が重くて煙幕を置いて来たのです」

暁 「この主砲が連射出来ればいいのに……」

雷 「今そんな話したって――」

長門 「……いや、それでいい」

雷 「だから……え?」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 21:12:27.56 ID:3VF3bCYr0
敵識別不能艦 ドオオオオオン!

長門 「回避!」

長門 (私じゃない! 誰を狙った!? 誰にも当たるな!)

バアアアアアン!

長門 「!?」

暁 「!?」

雷 「!?」

電 「!?」

響 「!?」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 21:27:18.86 ID:3VF3bCYr0
赤城 「敵の三式弾でこちらの航空隊が結構落とされましたが、まだ攻撃可能です」

長門 (さっきの敵の狙いは赤城が被弾直前に放った航空隊か……)

響 (命拾いした)

電 (妖精さんが気の毒なのです)

長門 「赤城、2分でいい。航空隊を上空で待機させることは可能か?」

赤城 「出来ますが、何をする気ですか?」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 22:22:23.25 ID:3VF3bCYr0
♪沈め 沈め 沈め 深く 深く 深く

敵識別不能艦 「役に立たぬ……忌々しい……ガラクタ共めっ!!」

敵識別不能艦 (敵空母は大破、さっき三式弾で削った航空隊がお前達に残された最後の航空隊)

敵識別不能艦 (敵空母最早恐るに足らず。これからお前達を一隻一隻沈めてやる)

敵識別不能艦 (次は徹甲弾だ。泣き叫んで……沈んでいけ……!)
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 22:24:03.55 ID:3VF3bCYr0
大分投下がグダグダになりましたが今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/04(火) 20:03:55.19 ID:ZRixyDz50
長門 (味方への作戦の説明を速攻で終えた)

長門 「手筈通りで行くぞ……作戦開始! 私から撃つ」

長門 「全主砲、斉射!て――ッ!!」ドオオオン!
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/04(火) 20:07:55.27 ID:ZRixyDz50
♪ 崩れて 剥がれて もう二度と届かないの

敵識別不能艦 (この海域にはこの歌がよく似合う。歌を聴きながら敵を屠る楽しみ……)

敵識別不能艦 (私は中破だがまだ余力があるのに対し、敵は私の一撃で大破になる。ここからは一方的に――)

ドォォォン

敵識別不能艦 「撃って来たか」

敵識別不能艦 「チィッ!」ドゴオオオォ

敵識別不能艦 「なかなか、や――」

ドォォォォン

敵識別不能艦 (別方向から砲撃!)

敵識別不能艦 「アガッ!」ドゴオオオオオォ

敵識別不能艦 「おのれ調――」

ドォォォォン

敵識別不能艦 (また別方向から!)

敵識別不能艦 「イギッ!」ドゴオオオオオォ

敵識別不能艦 「これでは反――」

ドォォォォン

敵識別不能艦 「またか!」

敵識別不能艦 「ウグッ!」ドゴオオオオオォ

敵識別不能艦 「このままでは――」

ドォォォォン

敵識別不能艦 (反撃出来ない……)

敵識別不能艦 「ギャッ!」ドゴオオオオオォ
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/04(火) 20:16:53.30 ID:ZRixyDz50
長門 (ヲ級の艦載機を別にすれば、敵艦隊の内、我が艦隊に砲撃が届くのは今のところあのデカブツだけ。敵艦隊の全てがこちらを射程に捉えたら一気に我が艦隊が不利となる)

長門 (その前に敵旗艦の攻撃を封じながらこれを沈め、優位に立つ!)

長門 (基本戦術は、私、暁、雷、電、響の順に5秒おきに砲撃を加え、敵に反撃の機会を与えない)

響 「初弾、命中!」

長門 (そして一巡した25秒後、私の40cm連装砲の装填は終わっている!)

長門 「てーッ!」ドオオオン!

敵識別不能艦 「ウゴォッ!」ドゴオオオオオォ

長門 (しかし第六駆逐隊の50cm連装砲は再装填に40秒弱かかる。つまり暁は私が撃った5秒後には撃てない)
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/04(火) 21:30:54.22 ID:ZRixyDz50
赤城 (だから私が!) 

赤城 「航空隊、急降下爆撃開始!」

キイィィィン  

敵識別不能艦 「グウウッ!」ドゴオオオオオォ

暁 (赤城さんが稼いでくれた時間で次弾装填完了よ!)

暁 「やぁ!」ドオオオオオン!

雷 「ってー!」ドオオオオオン!

電 「命中させちゃいます!」ドオオオオオン!

響 「無駄だね」ドオオオオオン!



長門から響まで5秒間隔で砲撃

その5秒後に長門のニ巡目の砲撃

その5秒後に赤城が艦爆で、敵に5秒間爆弾の雨を降らせ

その5秒後に暁から響までニ巡目の5秒間隔での砲撃

その間55秒



戦艦水鬼 「ヒイイイッ!」

長門達はその名を知らず、大本営もその時点では存在を把握していなかった深海棲艦、戦艦水鬼。レ級はおろか深海棲姫をも凌ぐ性能を誇る海の怪物を、長門達は一気に大破まで追い込んだ。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/04(火) 21:41:20.80 ID:ZRixyDz50
敵識別不能艦 (もう大破……これ以上は……)

長門 (初弾からジャスト一分!)

長門 「これでもか!」ドオオオン!

敵識別不能艦 (ナニィッ!)

ドゴオオオオオォ
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/04(火) 21:51:43.93 ID:ZRixyDz50
赤城 「航空隊より……敵新型艦が沈んでいきます」

雷 「フウ……」

響 「沈んだのか……」

暁 「と、当然よ……」

電 「一時はどうなるかと思ったのです」

長門 「気を抜くな!」

第六駆逐隊一同 「!」

長門 「敵随伴艦が接近中だ。直に撃って来る」

長門 「単縦陣の敵の先頭から潰す、第六駆逐隊は砲撃用意。赤城は今のうちに撤退してくれ」

赤城 「分かりました、ご武運を」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/04(火) 21:52:28.53 ID:ZRixyDz50
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/09(日) 21:24:14.37 ID:gFup6p2q0
長門 (三巡目の私の砲撃で遂に敵の新型が沈んだ)

長門 (その後、我が艦隊は敵の残存艦と交戦。ヲ級以外の敵を全て沈めた)

暁 「残り1隻よ、あと少し――」

長門 「もういい、撤退する」

暁 「どうしてですか!? 後1隻沈めれば完全勝利ですよ!」

長門 「赤城を撤退させたし私も大破だ。何かあった時にお前達をフォロー出来ない」

暁 「敵航空隊に三式弾をいっばい食らわせました。ヲ級に艦載機は殆ど残ってない筈です」

暁 「それに長門さんが敵を引き付けてくれたおかげで暁達は無傷です。戦わせて下さい」

響 「響もまだ行けます」

雷 「暁だけにカッコつけさせるつもりはありません」

暁 「カッコつけてなんかないわよ!」

雷 「電はどうするの?」

暁 「コラーッ! 無視してんじゃないわよ!」

電 「電は……」

電 「電も一緒に戦うのです!」

長門 「今そこまで無理する必要はない。何故完全勝利に拘る?」

暁 「少しでも戦果を挙げたいんです。そうしないと……」

暁 「暁達は機械の腕になった意味がありません!」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/09(日) 21:36:26.88 ID:gFup6p2q0
長門 (暁……)

長門 (その言葉、私にとっては殺し文句だ)

長門 (今、第六駆逐隊の両腕はマニピュレータを外され、義肢の先端を艤装のアタッチメントに挿し込んでいる)

長門 (航海中、彼女達の両腕の代わりを務めるのは艤装から伸びた貧弱な2本のサブアーム)

長門 (私はそんな第六駆逐隊の姿を見るのが辛かった)

長門 (明石、お前の言った通りだ)

長門 (ひよっこ共は私が気付かない間に成長してたんだな)
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/09(日) 21:45:17.83 ID:gFup6p2q0
長門 (そうだ……第六駆逐隊はその両腕と引き換えに戦果の源を得た)

長門 (より戦果を挙げることで、彼女達が機械の腕になったことが報われるというのなら)

長門 (私には断ることなど出来ない)

長門 「承知した。第六駆逐隊、ヲ級を追撃せよ」

暁 「ありがとうございます!」

長門 「私は現在位置を確保する。思う存分やれ。但し無理はするな」

第六駆逐隊一同 「はい!」

長門 (第六駆逐隊よ、今日のお前達の勇姿、決して忘れない)
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