侑「カップル限定の」

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41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/26(月) 22:36:01.99 ID:KAiCA0/L0


侑(うーなんだろ……やたらのど渇く)ズゴー

聖司「あ、ごめん、やっぱり暑かったよね」

侑「ぷへ? なんで?」

聖司「もう飲み切ってるから。 それになんだか少し顔も赤いような」

侑「えっまじで」

侑(確かに、言われてみれば)

侑「あーでも、暑いのはたぶん温度とかがっていうより」

聖司「え?」

侑「……」

侑(っていうより、……なに?)

聖司「……」

聖司「小糸さん、具合悪い?」

侑「いや……全然」

聖司「そっか。ならいいんだけど」

侑(え、あれ)

侑(なんだ…これ)


聖司「小糸さん?」

侑「へっ?」




42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/26(月) 22:37:18.63 ID:KAiCA0/L0


聖司「何か難しいこと考えてるような顔してるけど」

侑「えっ、いや、べつに?」

聖司「そう?」

侑「わたしは、ただ…」

侑(この、なにかわからない感覚が……)


侑「……」チラ

聖司「…?」



侑(もしかして、これって)





侑「槙くん」

聖司「ん?」

侑「わたし………わかったかも」

聖司「……」


聖司「何が?」


侑「……」




43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/26(月) 22:50:50.23 ID:KAiCA0/L0



燈子(結局、侑たち見失っちゃった…)ズーン

沙弥香「もういいでしょ? 下手に動いたら逆に見つかって尾行してたのバレかねないわよ」

燈子「うっ、でも」

沙弥香「小糸さんがどう思うかしらね。 人のプライベートを覗き見してくるストーカーさん?」

燈子「かっ帰る! 帰るからそれ以上言わないで!」

沙弥香(やっぱりあの子目当てなんじゃない)

沙弥香「はぁ……ほら燈子、もう行くわよ」

燈子「うう」

燈子「さ、沙弥香? このことは侑…小糸さんには内緒に」

沙弥香「そうね。 なら槙くんには言おうかしら」

燈子「それもダメ!」

沙弥香「嘘よ。 というか私も共犯なんだから言えるわけないでしょう」

燈子「……」ホッ



44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/26(月) 23:09:19.11 ID:KAiCA0/L0


沙弥香「けど……なんかなぁー」

燈子「え?」

沙弥香(わざわざ急いで仕事を済ませて、久しぶりに燈子とお出かけだったのに…)

燈子「あっごめん、チケット代は私が持つから」

沙弥香「そういうことじゃありませーん」

燈子「……どうしたら許してくれる?」

沙弥香「学年一頭いいんだから自分で考えたら?」

燈子「え〜沙弥香ぁ〜」

沙弥香(たまには困らせてあげなきゃ)

燈子(うーん、何か嬉しいことしたら機嫌直るかな?)

燈子(嬉しいこと嬉しいこと……あ)

燈子「……手!」

沙弥香「え?」

燈子「つながない?」スッ

沙弥香「……」


沙弥香「……へっ!?」ボッ


45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/26(月) 23:10:43.05 ID:KAiCA0/L0
眠さMAXでいろいろ間違えそうなのでまた明日にしまうす
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/26(月) 23:29:54.03 ID:S9iErBI5O
おつ
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 19:22:49.92 ID:joGLKcjX0



スタスタ


燈子(沙弥香と仲直りできてよかった。 スキンシップは大事だなぁ)

燈子(……けど)

燈子「侑…」


燈子(あれからどうなったんだろ)

燈子(まだ明るいけど、さすがにもう帰った?)

燈子(侑に連絡してみようかな)スッ


燈子「……」


燈子(でももしまだ一緒だったら)

燈子(……邪魔、になるよね)




48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 19:36:22.37 ID:joGLKcjX0


燈子(まぁ、槙くんについてはともかくとして)


燈子(侑も本当はきっと誰かと一緒にいたいんだ)

燈子(友達として、仲間として)

燈子(だけじゃなくて……)

燈子「……」


燈子(たぶん、それは私じゃない)

燈子(というか……私の勝手なわがままを、侑はわかってくれていて)


燈子(ずっと今のままではいられないなんてこと、最初からわかっていたのに)

燈子(いつまでも甘えたきりじゃ)



燈子(それでも、私は………)





49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 19:37:19.57 ID:joGLKcjX0


燈子「あ」

燈子(ここ、昨日侑と一緒に通ったカフェ。 そういえば同じ最寄駅だっけ)

燈子(侑はまた今度普通に来ようって言ってくれたけど)

燈子「……」

燈子(会いたいな)





侑「……七海先輩?」





燈子「……」



燈子(って、)


燈子(え? 幻聴? 侑のこと考えすぎて?)

燈子(うそ! なにそれやばい! 私絶対危ない人じゃ…)


侑「なーなーみーせーんーぱい?」ズイ

燈子「ひゃああ!?」



50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 19:38:51.02 ID:joGLKcjX0


燈子「えっ、えっ?」

侑「やっぱり七海先輩」

燈子「侑…?」

侑「なんですかその顔、鳩豆みたいな。 てかどうしたんです?」

燈子「ほ、本物?」

侑「…はぁ?」

燈子「……」サワサワ

侑「ちょっ先輩!? くすぐった!」

燈子「侑……侑だ……っ!」ギュ

侑「!?」

侑「せっ先輩! ここ外! 外だからっ!」

燈子「へ? ……あっ!」





51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 19:44:09.79 ID:joGLKcjX0


侑「もーー……なんなの急に」

燈子「ごっごめん。 嬉しくて…つい?」

侑「いやどんだけですか」

燈子「侑に会いたいって思った瞬間に会えたから」

侑「はあ」


侑「とりあえず、ここ入りません?」

燈子「え?」

侑「わたしちょうど先輩と話したいことがあって……時間あればですけど」

燈子「えっ、ある! 全然ある!」

侑(っていうかここ昨日の)

燈子「入ろう?」

侑「あ、はい」

侑(まいっか)


カランカラン…



52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 19:46:50.01 ID:joGLKcjX0



店員「お待たせしました」



侑「外観のわりになんというか」

燈子「アンティークカフェっていうのかな? お洒落だね」

侑「ですね」

燈子「コーヒーもいい香り。侑の紅茶は?」

侑「おいしいですよ。 アップルシナモン」

燈子「よかった」

侑「飲みます?」

燈子「ううん。 ありがとう」

侑「…そうですか」

侑「……」フー フー

燈子「……」

侑「なに」

燈子「ん? ふーふーしてるの可愛い」

侑「っ……り、リアクションに困ること言わないでください」



53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 19:50:11.34 ID:joGLKcjX0



燈子「それで侑、私に話したいことって?」

侑「あ、と」

侑(うーん、どう切り出せばいいか)

燈子「言いにくいこと?」

侑「言いにくいっていうか…」

燈子「……はっ!」

燈子「もっもしかして、『私たちもう終わりにしよう』みたいな」

侑「始まってもないのになにを終わらせるんですか」

燈子「なんちゃって…」

侑「……」

侑「まぁ、あながち間違ってないかも…ですけど」

燈子「………え?」



54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 20:04:12.64 ID:joGLKcjX0


侑「…えっと」

侑「これは例えばの話、なんですけど」

侑「わたしが男子と2人だけで遊びに行くとするじゃないですか」

燈子「……ダメって言ったら?」

侑「た、例えばですって」

燈子(行ったくせに)

侑「こほん。……で」

侑「思いがけずその、なんともカップル的なシチュエーションになり」

侑「その時に、今までにない不思議な感覚があったとします」

燈子「それは、どんな?」

侑「なんていうか……このあたりが、ふわってするような」

燈子「っ……」



55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 20:05:28.31 ID:joGLKcjX0


燈子(やっぱり、侑は…)


侑「それで七海先輩に聞きたいのが」

侑「わたしと一緒にいる時って…どういう気持ちなのかなって」

燈子「……」

侑「先輩はわたしのこと好きなんですよね」

燈子「…うん、好きだよ」

侑「それってどんな感じです?」

燈子「えっ、と」

燈子「……」

燈子「まず、ドキドキする」

侑(ドキドキ…)

燈子「それから、ふわふわする、かな」

侑「……え」


56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 20:08:34.90 ID:joGLKcjX0


侑「ふわふわって?」

燈子「胸の……このあたりがね、ふわっとして」

燈子「1人だったらなんでもないようなことでも楽しくなって」

燈子「傍にいると嬉しくて、でも同時に落ち着かなくて」

燈子「まるで自分が自分じゃないみたいな」

侑「……」

燈子「すごく、不思議な感じだよ」

侑「そう…ですか」

燈子「侑もそうだった?」

侑「……わかりません。 似てるような、どこか違うような」

燈子「そっか」

侑「……」

侑「あっいや、例えば! 例えばですけどね! あはは」

燈子「そうだね」

侑「はは…」



57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 20:59:06.67 ID:joGLKcjX0


侑(バレた……かな、今のはさすがに)

燈子「侑」

侑「はっはい!」

燈子「前に約束してくれたこと、覚えてる?」

侑「……」

燈子「私と一緒にいて」

燈子「ほかの人を好きにならないでって」

侑「…はい」

燈子「……」


侑「あの、せんぱ」

燈子「ごめんね」

侑「えっ」

燈子「わかってたんだ。 いつかはこうなるだろうってこと」



58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 21:07:46.42 ID:joGLKcjX0


燈子「侑に特別がわからないのを、私は自分勝手に利用してるんだってこと」

燈子「侑のことずっと閉じ込めてたんだよ」

侑「せ、先輩?」

燈子「だから侑、もう大丈夫だよ」

侑「……!」

燈子「もう、私と……」

侑「っ、待って先輩! ちがう!」

燈子「えっ?」

侑「そうじゃ、なくて」

燈子「…侑?」

侑「……」

侑「わかりました、ちゃんと話します」

燈子「…?」



59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 21:11:23.06 ID:joGLKcjX0



侑「気づいたと思いますけど、さっきの例えばの話……あれは今日わたしに起こったことで」

燈子「うん」

侑「前に先輩と入った水族館」

侑「あそこに行ってきたんです。 男子と2人で」

燈子「…うん」

侑「それでさっき言ったみたいに、不思議な……初めての感覚があって」

侑「もしかしてこれが『特別』、なのかなって」

侑「そう思って…」



60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 21:18:27.66 ID:joGLKcjX0


侑「最初は本当なんともなくて」

侑「でも、いるうちに楽しいなって思って」

燈子「…ドキドキした?」

侑「ってわけじゃないんですけど」

侑「ただ…密着というか、肩が触れるくらいの距離になると息が詰まって」

侑「暑いし、手汗出てくるしのど渇くし」

侑「ざわつく?ような、ふわっ?みたいな」

燈子(う、うーん)

燈子「それは、やっぱり」

侑「ですかね?」

燈子「うん…」

侑「ですよね…?」

燈子「たぶん、としか言えないけど」

侑「はぁーー………」グデン

燈子「えっ!?」


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 21:26:19.43 ID:joGLKcjX0


燈子「えっ、侑? どうしたの?」

侑「いや、わたしもそうかもと思って言ってみたんですよ」

侑「そしたら…」





ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーー




侑「わたし………わかったかも」

聖司「……」


聖司「……何が?」


侑「……」



侑「特別、って気持ち」




62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 21:34:02.22 ID:joGLKcjX0



聖司「…ふうん?」

侑「あっいや! たぶん…なんだけど」


侑「今日槙くんに彼氏役をしてもらって、結構くっついたりとかして」

侑「なんかこう、変な感じ」


侑「今まで感じたことない、なんとなくふわっとするような」

侑「無駄に汗かくし、のど渇くし」

侑「自分でもよくわからないんだけど」

聖司「……」

侑「でもたぶん、そういうことなのかなって」


侑(そうだ。 漫画なんかで見た『特別』は)

侑(ふわふわして、羽根が生えたようなーーー)

聖司「ちがうね」

侑「……」



侑「…え?」

聖司「それはちがうよ」


63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 21:40:47.61 ID:joGLKcjX0


侑「ま、槙くん? ……ちがうって」

聖司「小糸さんのそれは特別なんかじゃない」

侑「え」

聖司「ごく当たり前のことさ。 言うなれば生理現象だね」

侑「せ、生理現象?」


聖司「例えば、パーソナルスペースって言葉を耳にしたことはない?」

侑「パーソナル…」

侑(聞いたことあるような)

聖司「人は誰しも距離感というものを持っていて、ある範囲にまで近づかれると不快に感じる」

聖司「さっき小糸さんは『くっついたりして』と言ったけど、それはまさしく僕が小糸さんのパーソナルスペースに入っていたということ」

侑「……、えっと」

聖司「人は感情で心拍や体温だって変わるし、汗をかいたりもする。 つまりはそういうことさ」

侑「ま、待ってよ」




64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 21:52:40.49 ID:joGLKcjX0


侑「わたし、不快とか全然思ってない」

聖司「意識と無意識はちがうよ。 パーソナルスペースは無意識下での話だから」

侑「でも、それじゃあ!」

侑「なんで今になってこんな…」

聖司「今まで同年代の異性とこういうことは?」

侑「え? ……ない」

侑「くはないけど、ここまで距離が近かったのは、ないかも」

聖司「うん」

聖司「まぁ、不快に限らず、感情は普通意図せず起こるものだし」

侑「っていうと?」

聖司「未知の体験ではいろいろあるからね。 例えば恐怖だったり、興奮したり」

侑「こ、興奮て」

聖司「変かな?」

侑「あっいや、あはは……変っていうか」

聖司「僕は興奮したよ?」

侑「!?」


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 21:58:30.93 ID:joGLKcjX0


侑「え、なに!? したの?」

聖司「正直ね。 僕なんかよりずっと華奢でやわらかくて、それに良い匂いがした」

侑(正直すぎ…)ドンビキ

侑「へー……槙くんが興奮……わたしに」

聖司「あはは、そう聞くと変態みたいだね」

侑「いや完全に変態だよ。 普通本人に言わないよ」

聖司「まあ小糸さんにというよりは、状況にっていうのが正確かな」

侑「状況?」

聖司「うん」

聖司「君が言ったのと同じで僕も今までにない感覚だった。 こんなことしたのは初めてだから」

聖司「かなりドキドキしたし、たぶん顔にも出てたんじゃないかな」

侑「うそ? 全然そうは見えない」

聖司「今はね。 さっきはお互い見えてなかっただろうし」



66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:05:19.22 ID:joGLKcjX0


侑(そっか、槙くんもだったんだ)

聖司「だけど僕は、これを特別だとは思わない」

侑「…え」

聖司「自分が同年代の女子とデートをしている。 隣に座って肩が触れ合っている」

聖司「そんな初めての状況に興奮しただけ、未知との遭遇に驚いただけ…」

聖司「そうなってしまうのはごくごく自然で、至って普通のことじゃないかな?」

侑(普通の…)

聖司「だからこれはただの生理現象」

聖司「君の言う『特別』とは似てもいないし、非なるものだ」

聖司「まして、『好き』だなんてものじゃあないね」

侑「…っ!」



67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:07:32.96 ID:joGLKcjX0


聖司「小糸さんは以前、寂しくなんかないし、誰も好きにならなくていいって言ってたよね」

侑「……うん」

聖司「僕にはどうもあの言葉が信じられなかった」

聖司「やっぱり君は誰かと一緒にいたくて、その誰かを好きになりたいんだと思う」

聖司「特別を知りたい。 わかりたいんだ」

侑「……」

聖司「つまり、わかりたいがためにそう思い込んでしまったんだよ」

侑「勘違い、ってこと?」

聖司「そういうことだね」

聖司「たぶん君が抱いた感覚や感情も、僕のと全く同じとはいかないまでも同種だと思うよ」

侑「う、うーん…」


侑「なんか槙くんが言うとそんな気がしてきた…」

聖司「まぁ、元より僕と小糸さんは恋愛に関して共通するところがあるから」

侑「そっかー違うのかー」ガク

聖司「わかってくれた?」

侑「……一応は」

聖司「んー」


68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:11:22.92 ID:joGLKcjX0


聖司「じゃあ、僕の場合だけど」

聖司「例えば今日の相手が小糸さんじゃなくて佐伯先輩だったとするでしょ?」

侑「ほう」

聖司「それで同じことがあったとして、僕はおそらく同じような感情を持つと思うよ」

侑「佐伯先輩に興奮するってこと? 」

聖司「さすがに語弊があるかな……いやまあそうなんだけど」


聖司「つまり言いたいのは、相手が誰でも起こる現象は同じってこと」

侑「……あ」

聖司「なのに、それを特別と捉えるのはおかしいよね」

侑「たっ確かに! そう考えると…」

侑「わ、なんかすっきりしたかも」

聖司「でしょ」

聖司「君もまた然りさ。 仮に今日誘ったのが僕じゃなくて堂島でも、結果は同じだったと思うよ」

侑「……」

聖司「……」

侑「ごめんそれはない」

聖司「あ、あれ?」ガク



69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/27(火) 22:14:30.28 ID:joGLKcjX0


侑「ってか、まず堂島くんは絶対誘いたくない」

聖司「そ、そうなんだ…」

聖司(堂島…なんかごめん)

侑(面倒なことになりそう男子ナンバーワンだし)

侑「でも、うん。 槙くんの言った通りだ」

侑「わたしは…」

侑「わたしは、誰かを好きになりたい」

侑「誰かを好きになって、その人と一緒にいたい」

聖司「それは…どうして?」

侑「えっ」


70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:16:35.72 ID:joGLKcjX0


聖司「寂しいから?」

侑「……どうだろ。それもあるかもだけど、わかんないや」

聖司「そっか」

侑「わかんないけど」

侑「でも、眩しいなって思う」

聖司「……眩しい?」

侑「うん」

侑「物語に出てくる恋はいつもキラキラしてて、眩しくて」

侑「いつかわたしにも訪れるんだろうなってワクワクしてた」

聖司「憧れみたいなもの?」

侑「っていうより、みんなそうなるのが普通だと思って過ごしてたから」

侑「そうじゃない自分はなんて普通じゃないんだろう…って感じちゃうのかな」

聖司「…なるほどね」

聖司(周りが明るいから眩しいんじゃなくて、小糸さんにとっては自分のいる場所が暗闇なんだ)


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:21:21.11 ID:joGLKcjX0


侑「ってごめん、いつの間にか恋愛相談みたいになってた」

聖司「僕は慣れっこだよ」

侑「う……確かに、槙くん話しやすい。なんか悔しい」

聖司「あはは、悔しいって」

侑「はー」

侑(そっか。 じゃあこれも全然、特別なんかじゃないんだ)


侑(やっぱり……私に『好き』は訪れないのかな)


聖司「……」


聖司「君は」

侑「ん?」ズゴゴー

聖司「……、いや」

聖司(君は僕と似ているけれど)

侑「……?」


聖司「小糸さんは、七海先輩とどこまで進んだの?」ニヤ

侑「ぶっ!!?」

侑「けほけほっ……槙くん! だからわたしと七海先輩はべつに……っ!」

聖司「あはははっ、ごめんごめん」

侑「〜〜っ……もー」


聖司(でも、やっぱり君は、僕とはちがうと思うな)




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ーーーーー



72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:24:24.40 ID:joGLKcjX0



侑(の、一部を簡単に話してみたわけだけど)



燈子「うーん…わかるようなわからないような」

侑「わたし妙に納得しちゃってたんですけど、時間置いてから本当にそうなのかなって」

燈子「やっぱり腑に落ちない?」

侑「なんていうか、もやもや〜が晴れなくて」

燈子「……」

燈子「侑はその人にいろいろと言われたみたいだけど、あまり気にしなくていいんじゃないかな」

侑「へ?」

燈子「特別かどうかって、その場の感情よりも普段のほうが重要だと思うよ」

侑「普段、ですか?」

燈子「うん」


73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:31:53.04 ID:joGLKcjX0


燈子「……私はね、侑が好き」

侑「…はあ」

燈子「だからこうして侑に会えると嬉しいし、逆に侑と離れてる時は寂しいよ」

燈子「侑が私と一緒にいてくれたら幸せだけど、それがほかの誰かとだったらすごく嫉妬する」

侑「それは、男女問わず?」

燈子「男女問わず」

侑「愛が重いです」

燈子「それくらい本気なのっ!」

侑「………はい」

燈子「だから、つまりね」


燈子「特別だったり好きだったりするのは、その人と一緒にいたいってことなんだと思う」

侑「…!」

燈子「少なくとも私はそうだから」



74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:37:40.49 ID:joGLKcjX0


侑(一緒に、いたい)

侑「……たったそれだけ?」

燈子「うん。 たったのそれだけ」

侑「そう、ですか」

侑「……」

侑(わたしは…)


燈子「侑は」

燈子「どうしてその人と行こうと思ったの?」

侑「えっ!?」ビク

侑「そ、それはっ」

燈子「……それは?」

侑「う」



75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:41:15.56 ID:joGLKcjX0


燈子(もし、侑が一緒に行きたくて槙くんを選んだのだとしたら)

侑(……隠してもしかたないか)

燈子(それはやっぱり……)

燈子(侑は、彼のことを)

侑「す……」

燈子(好……)

侑「ストラップ……が、欲しくて」


燈子「……」

侑「……」


燈子「うん?」



76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:47:31.75 ID:joGLKcjX0


燈子「す、ストラップ?」

侑「……これ」チャリ

燈子(あ……侑の好きな)

燈子「えっと、メンダコ?」

侑「やっその、あそこの水族館でもらえるやつなんですけど」

燈子「う、うん」

侑「あれです、ここのお店のパフェと同じで」

燈子「……」


燈子「あっ、もしかして……カップル限定?」

侑「……」コク

燈子「……」ポカン

侑「わ、笑えばいいじゃないですか。 わたしは特典のためにリアルに彼氏のフリとか頼む女ですよ」

燈子「えっ! あ、いや」




77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:52:46.57 ID:joGLKcjX0


燈子「ごめん、ちょっとタイム」

燈子(えー、えーー……? まさかそういうこと?)

侑「…呆れて物も言えないんですよねそーですよね」

燈子「ちっちがうよ! そうじゃなくて」

燈子「……じゃあ侑は、別にその人と行きたくて行ったわけじゃなく?」

侑「まぁ、行きたいと言えばそうですけど、あとあと面倒にならなそうなって感じで」

燈子「そ、そう」

燈子「あっでも、ちょっとドキドキはしたんだよね?」

侑「そうは言ってませんよ。てか、結局勘違いなんだと思いますし」

燈子「あれ〜…?」



78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 22:56:22.78 ID:joGLKcjX0


燈子「でっでも侑、さっきは納得できないみたいな」

侑「…?」

侑「そのあと先輩が言ってたじゃないですか」

燈子「え?」

侑「『好き』や『特別』は、一緒にいたいって思う気持ちなんでしょ?」

侑「べつにそういうわけじゃないし。 あーじゃあちがうなぁーって」

燈子「……そうなんだ」

侑「はい」

燈子(ってことは、私は私でとんだ勘違いを…!)ガーン




79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 23:03:51.40 ID:joGLKcjX0


燈子(うう、あとで沙弥香になんて謝ろう)

侑「それに…」

侑「その、好きとか特別とかじゃないですけど」

侑「わたしがいま一番一緒にいたいのって…たぶん七海先輩だし」

燈子「……」


燈子「へ」ポロ

侑「ちょっ」


侑「先輩、カップちゃんと持っ……あーっ! こぼれてるこぼれてる!」

燈子「ゆ、侑? いまなんて」ボタボタ

侑「いやだからそーいう意味じゃないですから! ってかめっちゃこぼれてるから!」ガタッ

燈子「へっ? わ、わっ!」

侑「もーー!」





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ーーーーー


80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 23:08:39.25 ID:joGLKcjX0



店員「またのお越しを」



カランカラン


侑「まったく先輩はー……」

燈子「ごっごめんってば」

燈子「でも、まさか侑がそんなこと言ってくれると思わなくて」

侑「だーかーら、べつに変な意味じゃないです」

燈子「うん。だから、嬉しい」

侑「……一緒にいて余計な気遣いしなくていいから、とかだけでも?」

燈子「うん。 だけでも」

侑「そう、ですか」

燈子「っていうかそれって、居心地がいいってことでしょ?」

侑「うわぁーポジティブ」

燈子「ふふっ」

侑(ほんと、この人は…)


81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 23:10:51.96 ID:joGLKcjX0



燈子「ねぇ、侑」

侑「はい?」

燈子「好きだよ」

侑「…っ」

燈子「……大好き」

侑「…はいはい」

燈子「また一緒に来たいな」

侑「……」

侑(わたしだって)


燈子「侑?」

侑(また先輩と一緒に……)

燈子「どうかした?」

侑「いえ」

侑「また一緒に来ましょう」

燈子「…! うん!」

侑「ま、先輩が粗相したせいで入りにくくなりましたけど」

燈子「あーっ、そういうこと言う!!」

侑「あはははっ」

燈子「うー…侑のいじわる」


侑(……言わないよ。 今は、まだ)



82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 23:12:56.45 ID:joGLKcjX0



ガヤガヤ



侑「すいませんこっちの駅まで」

燈子「ううん。なんなら家まで送るよ?」

侑「さすがにそれは」

燈子「残念」

侑「じゃあ先輩、また」

燈子「うん。 またあしーー」


聖司「あれ?」


燈子「…え?」

聖司「やっぱり七海先輩」

侑「えっ?」

聖司「と、小糸さんも」

燈子(ま、槙くん? どうして…)

侑(先に帰ったんじゃ)

聖司(……えっと?)



83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 23:15:56.04 ID:joGLKcjX0


燈子(っと! なに慌ててるの私)

燈子(結局、槙くんは侑となんでもなかったんだから。 平常心、平常心)

聖司「先輩と小糸さんは二人でどこかに?」

燈子「ああ、うん。偶然会ってちょっとカフェに」

聖司「へえ、偶然」

侑「…なに」

聖司「……デート?」ヒソ

侑「っ、ちがうほんとに偶然!」ヒソ

燈子(近い…!)



84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 02:43:52.90 ID:aB+fXrD10


燈子「あー、あー」コホン!

燈子「それより、槙くんは?」

聖司「と言いますと?」

燈子「電車使ってたみたいだから」

聖司「ああ……えっと」チラ

侑「?」

聖司「僕はちょっと用事が」

燈子「ふうん?」

侑(あ、槙くん一応秘密だと思ってるんだ)

燈子「あんまり遅くまでうろついたらダメだよ? 生徒会は学校の顔でもあるんだから」

聖司「それ、現状だと七海先輩が一番当てはまりません?」

侑「同感です」

燈子「うっ……そ、そうだけどっ!」


85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 02:46:12.01 ID:aB+fXrD10


聖司「それじゃあ、僕はお先に」

侑「あっうん、また明日」

燈子「気をつけてね」

聖司「……」


聖司「あれ」ゴソ

侑「? どしたの?」

聖司「自転車の鍵が……いつもポケットに入れてるんだけど」ゴソ

燈子「鞄の中は?」

聖司「いえ、必ずズボンの左と決めているので」

侑「え、落としたのかな」

聖司「うーん落とすようなことあるかな」


86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 03:15:07.85 ID:aB+fXrD10


燈子「何か思い当たる節はない?」

聖司「そうですね」

聖司「ポケットから落ちるとすればこう、どこか低めの椅子に腰掛けでもしないと」

侑「…あ、ショーの席とか! あそこ結構深いし」

燈子「ああ確かに」

聖司「……なるほど」

聖司「まだ間に合うかな。 七海先輩、あそこって何時まででしたっけ?」

燈子「閉館は20時じゃなかったかな。 問い合わせてみる?」

聖司「番号わかります?」

燈子「待ってね、ホームページに……はい」スッ

侑(ん?)

聖司「さすが七海先輩、よくわかりましたね」

燈子「ん? ただ調べただけ…」

燈子「……っ!!」

燈子(しまっ…)

侑「わたし、七海先輩に槙くんと行ったって言いましたっけ」

燈子「えっ!!」

聖司「……」ニヤニヤ


87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 03:18:09.47 ID:aB+fXrD10


燈子「あ、や、その………?」スイー

侑「……」ジーー

聖司「ああ、鍵右ポケットにありました」

燈子「!?」

燈子「ちょっ槙くん、……まさか」

聖司「そうそう七海先輩」

聖司「佐伯先輩にもどうぞよろしく」ニコ

燈子「!?!?」


聖司「じゃあ僕はこれで」

燈子「えっ、えっ」




侑「………」ゴゴゴ…

燈子「………」ダラダラ








侑「…………せーんーぱーいー?」

燈子「ご、ごごごめんなさーーーいっ!!」






おわり



88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 03:24:05.52 ID:aB+fXrD10
おまけ



翌日



ガララッ


聖司「こんにちは」

沙弥香「槙くん、こんにちは」

聖司「あれ、まだみんな来てないんですね」

沙弥香「そうみたいね」

聖司「……」

聖司「あの、佐伯先輩」

沙弥香「なに?」

聖司「昨日はすみませんでした」

沙弥香「ああ、気にしないで。 本当にやること少なくてすぐ終わったもの」

聖司「それもですけど、七海先輩とのデートをお邪魔しちゃったみたいで」

沙弥香「ぶっ!!」

沙弥香「で、デートってあなたね……別にあれはそんなんじゃ…」

聖司「あ、僕飲み物淹れますね。 先輩は紅茶でいいですか?」

沙弥香「あ…うん、ありがとう」

沙弥香「……」



沙弥香(え…?)ゾッ

聖司「〜♪」コポコポ




おわり


89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 03:29:25.63 ID:aB+fXrD10
変なとこで寝落ちしてしまったけど以上です。
読んでくれた方ありがとござます

槙くんつよいイメージある
もっとやきもちかやきもきする燈子が書きたかったのに迷走した次頑張りやす
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 20:46:09.37 ID:6BesDcbkO
乙 とても良かった
慎君が強そうなのよくわかる

やが君SSもっと流行れ
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