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千歌「猥談と百合」
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71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:35:43.93 ID:zgnNCZ8K0
二人が帰った後、私は本棚の中から古いアルバムを取り出した
久しぶりに見たそれに懐かしさを覚えつつ、開いて中を確認する
そこには、赤ちゃんの頃からの私の写真がたくさん貼られていた
これは、私が家族に大切にされて育ってきたんだという証だ
途中から、私の横に果南ちゃんと曜ちゃんが写っている写真が増えて来る
こうしてみると改めて思う、果南ちゃんとはこんなに昔から一緒にいたんだって
もう家族も同然な、私の大切な人
でもその人は、中学以降の写真からパタリと消えた
果南ちゃんと別れて、なんだか少し気まずくなって
曜ちゃんが私達の仲を取り持ってくれるまで、私達はほとんど会うこともなくなった
私が高校に入る直前くらいかな、私達がまた友達のように話せるようになったのは
そう、戻れたのは友達まで
私達が恋人に戻るなんてことは、もうないことだと思っていたけど
今日のダイヤさんの話を聞いて、想像以上にショックを受けてる私がいて
否が応でも私は自分の本当の気持ちに気づかされる
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:38:00.99 ID:zgnNCZ8K0
私は、果南ちゃんが好きだ
その気持ちは、昔からずっと変わることはなかった
出来ることなら今だって、果南ちゃんとデートをして、ロマンチックな場所でキスをして、そしていつかその先に進んでいくような、そんな普通の恋人になりたいと思う
でもそれは無理なんだって、あの時の私は思い知った
私達は女の子同士だから
たったそれだけの理由で、周りから後ろ指を指され続けることになる
だから果南ちゃんが男の人と結婚したいというのなら、その方がきっと果南ちゃんも幸せになって、私も応援しなくちゃいけないのに
曜ちゃんが言ってたことを思い出す
それで私は後悔しないのかって
そんなの、後悔するに決まってる
だって苦しいんだよ、辛いんだよ
果南ちゃんが他の誰かと一緒に幸せになってる姿を想像すると、胸の奥が痛くなるんだよ
だけど、もう周りからあんな風に見られるのも怖くって、でも果南ちゃんが他の人と一緒になるのは嫌で
そんなのただのワガママじゃん
最悪だ、私って
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:39:04.60 ID:zgnNCZ8K0
本当にどうすればいいんだろう
私は開いていたアルバムを閉じて、自分のベッドに倒れこむ
ふと枕元に置いてあるものが目に入った
それは、私がこの間初めて買ったBL小説
花丸ちゃんにオススメされた、腐女子界隈では有名な名作らしい
私も読み終えたけど、面白くって結構夢中になって読み進めてしまった
なんとなく適当にページをめくってみる
そしてたまたま目に付いたのが、主人公の千佳彦が幼馴染の果奈人に告白するシーン
両親や周りの人間みんなに反対されながら、それでも千佳彦が果奈人への気持ちを貫き通す名シーンだ
すごいなと、私はこのシーンを読みながら思っていた
誰も認めてくれない、祝ってなんてくれない
それなのに、どうして千佳彦はそんなに勇気を持つことが出来るんだろうって
なんて、フィクションの物語にそんなことを思ってもしょうがないかもしれないけどさ
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:41:52.07 ID:zgnNCZ8K0
そういえば、花丸ちゃんも言ってたよね
花丸『いいずらか、千歌ちゃん。BLはファンタジーずら。現実とごっちゃにすると痛い目見るずら』
花丸『おらも昔、道行く男の人がみんなホモに見えて、勝手に脳内でカップル認定して応援してたりした時期もあったずら』
花丸『それだけならまだしも、つい暴走してあんなことをしてしまって……』
花丸『千歌ちゃんには、まると同じ目にあってほしくないずら』
そんなことをこれまた遠い目をして言ってたっけ
BLはファンタジー
そりゃそうだよね
現実はBL小説みたいにハッピーエンドばっかりなんて訳にはいかない
私達みたいに、きっとどこかで辛い思いをしている人達だってたくさんいるはずだ
小説を真に受けて、私達も幸せになれるなんて思うのは間違ってるのかもしれない
分かってる、そんなことは分かってるけど
それでも憧れてしまったんだ
私も、この主人公達みたいにハッピーエンドになれたらなって
私がBLにハマったのも、登場人物に自分を重ね合わせて見ていたからなのかもしれない
逆境の中で、どんな酷い目にあったとしても
それでも、勇気を持って恋人との幸せを掴みとる
そんな主人公みたいに私もなりたかったんだ
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:42:52.39 ID:zgnNCZ8K0
ねえ、私もなれるのかな
貴方達みたいに、誰にも流されず、好きな人に好きと言えるような、そんな主人公に
難しいかもしれない、大変なことばかりかもしれない
怖い、すっごく怖いけど
それでもやっぱり、私は果南ちゃんが大好きなんだよ
ずっと押し込めてたけど、それが私の本当の気持ちなんだ
私も、果南ちゃんと幸せになりたい
そのためには、千佳彦みたいに立ち向かわなきゃいけないんだ
そうじゃないと、きっと何も変わらないと思うから
だったら、私は
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:43:39.87 ID:zgnNCZ8K0
私は勢いよく立ち上がる
でも、実際どうしよう
いくらこうして決意してみても、果南ちゃんがどう思うかは分からない
今更何を言ってるんだって思われるかもしれない
半端な気持ちでは、きっと果南ちゃんには届かない
私は、覚悟を示さないといけないと思う
私の本気を、果南ちゃんに分かってもらいたいから
考えて、そして思いつく
これが正しいかは分からないけど、それでももう私は後には退きたくないから
私はスマホを取り出して、ある人物に電話をかける
千歌「もしもし、善子ちゃん?うん、私。あのね、突然で悪いんだけど、善子ちゃんにお願いがあるんだ。いいかな?」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:45:11.07 ID:zgnNCZ8K0
「5」
それは、突然だった
aqoursのグループラインに、善子ちゃんからのとあるメッセージが書き込まれたのは
善子『感じます。今宵満月が空に登る時、漆黒の力がこの地上に満ちるのを』
果南『?』
花丸『まただてんしがな』
梨子『というか、今日は満月じゃないし』
善子『それにより、魔なる者が降臨し、人々を恐怖に陥れるサバトが開かれるでしょう』
曜『サバトって何?』
花丸『んかいってるず』
善子『私のリトルデーモンの諸君、世界の終焉をその目に焼き付けたくば、今夜19時からのヨハネの放送をチェックしなさい』
花丸『ら』
善子『このヨハネの魔眼を通して、あなた達は新たなる歴史の目撃者となるのです』
ルビィ『善子ちゃんの生放送?見る見るー!』
善子『ヨハネ!』
ダイヤ『興味ありませんわ』
善子『うっさい!いいから見なさい!特に果南!』
果南『え、私?』
鞠莉『面白そうね!それで、どんな内容なの?』
善子『ふっふっふ、それはまだ内緒。でもそうね』
善子『世界に混沌が訪れる、とだけ言っておくわ』
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:47:07.99 ID:zgnNCZ8K0
善子ちゃんがそんなラインを送ってきたのが今日の昼ごろのこと
相変わらずの善子ちゃん節で、私には正直何を言ってるのかよく分からなかったけど
とにかく、今日の善子ちゃんの配信を見てほしいってことみたい
しかも私は特にって、なんで?
こう言うのもなんだけど、私と善子ちゃんって特に接点ないっていうか、あんまり絡むことも少ないんだよね
そんな私に、いったい何を見てほしいんだろう
うーん……
鞠莉「果南?かーなーん!何ボーッとしてるの、そろそろ始まるわよ!」
果南「え?ああ、ごめんごめん」
ダイヤ「本当に見るのですか?あんまり気が進まないのですが」
鞠莉「イエース!だって面白そうじゃない!今日は何を見せてくれるのかしらねあの堕天使ちゃんは」
ルビィ「善子ちゃんの生配信、楽しみ!」
花丸「どうせろくでもないことずら」
というわけで、私達は今みんなでダイヤの家に集まっている
鞠莉がみんなで見ようって言い出して、賛成多数で決定した
ダイヤは嫌がっていたけど、それでもなんだかんだ付き合いはいいんだよね
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:48:27.87 ID:zgnNCZ8K0
だけど……
曜「梨子ちゃん、千歌ちゃんと連絡ついた?」
梨子「ダメ、スマホの電源を切ってるみたい」
曜「そっか。どうしたんだろ千歌ちゃん」
そう、善子ちゃんを除いてただ1人、千歌だけがこの場にいなかった
そういえばあの時のグループラインでも、千歌だけが話に参加していなかった
いつもなら真っ先に入ってきそうなものなのに、何か用事でもあったんだろうか
少し、心配だな
千歌……
鞠莉「あ、ほら。そろそろ始まるみたい」
19時になり、パソコンの画面が切り替わる
蝋燭に灯った炎が、風に吹かれてゆらゆらと揺れている
そしてその奥から、堕天使衣装に身を包んだ善子ちゃんが現れた
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:50:33.02 ID:zgnNCZ8K0
善子「ふっふっふ。ようこそ、私の可愛いリトルデーモン達。今宵もこの堕天使ヨハネが、あなた達に堕天の力を授けましょう」
善子「さて、前回黒の予言書の予言にあった通り、今回はこのヨハネのとびきりの堕天エピソードをあなた達に聞いてもらう……予定だったのですが」
善子「急遽予定を変更し、緊急特別堕天生放送とさせていただきます」
善子「今日これを見ているあなた達はとても運がいい。なにせ天界をも揺るがす大事件を、このヨハネと一緒に見ることが出来るのですから」
善子「これは永久保存版。みなさん録画の準備は出来ましたか?出来たのなら●RECと書き込みなさい」
善子「……分かりました。みなさん準備は万端のようですね」
善子「それでは、特別ゲストを紹介しましょう。今宵ヴァルプルギスの夜、そのサバトの主演!」
善子「私のリトルデーモン1号、その名も!堕天使チカエル!」
そうして善子ちゃんに紹介されて現れたのは
これまた堕天使の姿をした、私のよく知るAqoursのリーダー高海千歌だった
果南「千歌!?」
曜「ホントだ、千歌ちゃんじゃん!」
梨子「何やってるのよ……」
いや本当に何やってるの千歌
そんな変な格好までしちゃってさ
まあ、似合ってるか似合ってないかで言ったら、そういう格好も新鮮で可愛いんだけど
って、だからそんな場合じゃなくて
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:53:43.44 ID:zgnNCZ8K0
千歌「善子ちゃん、これもう映ってるの?」
善子「善子言うな!映ってるわよ、画面見れるでしょ」
千歌「あ、本当だ。えー、皆さん初めまして。私はAqoursの高海千歌っていいます」
千歌「あ、Aqoursっていうのは私達がやっているスクールアイドルの名前で、そこの善子ちゃんも一緒に活動しています」
善子「ヨハネ!」
千歌「他にもメンバーがいるんですけど……。え、あ、はい、本物です、はい。か、可愛いってそんな、いやあ」
善子「いちいちコメント拾わなくていいから!早く話しなさい!」
千歌「あ、うん。えー、今日私がここにいるのは、ある人に伝えたいことがあるからです」
千歌「それはとてもプライベートなことなんですけど、出来れば皆さんにも聞いてほしくて、善……ヨハネちゃんにお願いしました」
千歌「少しの時間、私の話を聞いてくれると嬉しいです」
千歌はそこで目を閉じて、自分を落ち着けるように深く深呼吸をした
そして目を開けると、しっかりとカメラの方を見つめ、はっきりとした声で話し始める
千歌「私には、好きな人がいました。小学生から中学1年の時まで、ずっと付き合っていた人が」
その瞬間、流れているコメントが一気にざわつき始めたのが分かった
何が始まるのかと楽しみにしていた感じだったのが、今では困惑の声が画面に広がっている
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:55:00.19 ID:zgnNCZ8K0
ダイヤ「な、何を言っているのですかあのおバカは!」
ルビィ「お、お姉ちゃん、これ……」
ダイヤ「ええ、こんなの前代未聞ですわ」
花丸「そ、そんなにまずいずらか?」
ダイヤ「当たり前ですわ。私達はスクールアイドル。いくら学生だからと言って恋愛は御法度。そんなことが知られたら大問題になりますわ」
ルビィ「過去にも恋人がいることがバレて、人気が落ちたスクールアイドルはたくさんいるんだ」
曜「千歌ちゃん、まさか……」
ダイヤ「とにかく、まだ間に合います!今すぐ中断するように善子さんに電話を」
鞠莉「待って!」
ダイヤ「鞠莉さん?」
鞠莉「もう少しだけ、様子を見ましょう」
ダイヤ「そんな悠長なことを言っている場合では!」
鞠莉「お願い、あと少しだけだから。ね、果南?」
果南「えっ?う、うん」
善子ちゃんが私に放送を見るように言った理由が分かった
千歌は、私に何かを伝えようとしているんだ
それがなんなのか、私は最後まで千歌の話を聞きたかった
果南「千歌……」
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:56:41.13 ID:zgnNCZ8K0
千歌「その人とは、子供の頃からずっと一緒でした。歳は一つ上なんですけど、大切な友達で、私が泣いたり困ったりしてきた時はいつも助けに来てくれました」
千歌「いつからその人のことが好きだったのか、それは分かりません。一緒にいることが当たり前で、大好きで。その人に告白された時も、私は自然とそれを受け入れました」
千歌が喋るたび、コメントの荒れ具合がどんどん大きくなっていく
「悲報、千歌ちゃん非処女だった」
「なんだよ中古かよ、萎えたわ」
「なんか裏切られた気分」
そんな、下品で勝手な感想が次々と書き込まれていった
私は怒りでどうにかなりそうなのを、拳を強く握りしめて必死に抑える
今、千歌は精一杯話してる
私は、それをちゃんと聞いてあげないといけないんだから
千歌「それからしばらくは特に問題もなく、私とその人は仲良く付き合っていったんですけど」
千歌「だけど私達が大きくなるにつれて、私達の前に厳しい現実が立ちはだかるようになったんです」
昔のことを思い出したのか、辛そうな表情をする千歌
それでも千歌は、覚悟を決めた表情でその続きを口にする
千歌「実はその人は、私の大好きな恋人は。私と同じ女の子だったんです」
その言葉で、コメントの荒れ具合は最高潮に達していた
たくさんのコメントが画面を覆い尽くし、千歌の姿が見えなくなってしまいそうなくらいだ
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 01:58:47.63 ID:zgnNCZ8K0
ダイヤ「鞠莉さん!」
鞠莉「……」
果南「ねえこれ邪魔!コメント消すからね!」
千歌「大人の人は、あまりに仲の良すぎる私たちに不安げな表情を向けました。一部の友達やクラスメイトは、私達の事を気持ち悪い、普通じゃないと罵りました」
千歌「その人は、そんな周りの言うことなんて全然気にしていないようでした。むしろ、悪口を言ってくる人たちから私のことを守ろうとしてくれました」
千歌「だけど弱い私は、どうしても周りの視線に耐えることが出来ませんでした。そして守ってくれていたその人に酷いことを言って、傷つけて、私達の関係は終わりました」
千歌「そうして、私は普通の女の子になりました」
千歌「クラスメイトからのイジメもなくなって、これでよかったんだって、これが普通なんだって、そう自分に言い聞かせて今まで過ごしてきました」
千歌「でも本当は、ずっとずっと後悔してたんです。自分の気持ちを心の奥に隠して、普通なふりをしていただけだったんです」
千歌「私は今日、それを謝りたい。そして、私の本当の気持ちを伝えたい。その人に、果南ちゃんに!」
花丸、ルビィ「ええ!?」
2人が驚いて私を見たが、私は画面から目が離せなかった
千歌が私の名前を呼ぶ
それだけで、私は胸が熱くなるのを感じる
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:00:04.81 ID:zgnNCZ8K0
千歌「果南ちゃん。この配信見てくれてる?私の声、ちゃんと届いてる?」
うん、見てる
千歌の声、ちゃんと届いてるよ
千歌「果南ちゃん、あの時はごめん!私、本当はっ!」
そこで、千歌の言葉が止まる
唇を震わせ、目を大きく見開いて
そしてその瞳は、ある一点を見つめていた
果南「千歌?」
ダイヤ「きっと見てしまったんですわ」
ダイヤが、こちらも唇を震わせながら、絞り出すように声を出す
ダイヤ「おそらく、今までは話すのに夢中で気が付いていなかったのです。ですが、とうとうそれが目に入ってしまった。千歌さんがこうなってしまうのも無理ありませんわ」
果南「な、何が?ねえ、なんのこと!?」
ダイヤ「これですわ!」
そういってダイヤは乱暴な手つきでパソコンを操作して
ダイヤ「あなたがさっき消した、このコメントの山のことです!」
動画のボタンをクリックすると、さっきまでなかったコメントが大量に表示され始めた
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:02:04.07 ID:zgnNCZ8K0
「気持ち悪い」
私の目に真っ先に飛び込んできたのがそれだった
その他にも、失望したとか引くだとかと千歌を罵倒したり、この状況を面白がって笑っているようなコメントもある
果南「なに、これ……。なんなのこいつら!」
千歌のことなんて何にも知らないくせに、どうしてお前達がそんなことを言えるんだ!
画面の中の千歌を見る
千歌「か、果南ちゃん……。私、本当は……」
千歌は、こんな状況でも必死に言葉を紡ごうとしていた
だけどその声はどんどんと小さくなって、ついに千歌は俯いてしまう
表情は見えないけど、その体は小刻みに震えていて
私は、もう我慢の限界だった
ダイヤ「鞠莉さん。今すぐ配信を止めるよう、善子さんに連絡します。……もう、手遅れかもしれませんが」
鞠莉「……ええ、そうね」
果南「ねえ鞠莉。このコメントしてる人達の住所とか、小原家の力でなんとか割り出せない?」
鞠莉「ホワイ!?何するつもりよ!」
果南「何って?そんなの決まってる。こいつら全員私がぶん殴って」
その時だった
千歌「ああああもう!!!うるさーーーーい!」
千歌が、キレた
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:03:37.08 ID:zgnNCZ8K0
千歌「うるさいうるさい!なんなのさっきから好き放題言ってくれてさ!普通じゃない?気持ち悪い?」
千歌「それがどうしたああああ!!!」
突然の千歌の大声に動揺したのか、流れ続けていたコメントが一瞬止まる
それは、私たちも一緒だった
さっきまでの怒りを忘れ、千歌の奇行にその場の全員が目を奪われる
千歌「普通じゃなかったらなんなのさ!そのことで、私があなた達に迷惑かけた!?無関係な人達に、そんなこと言われる筋合いなんてないんだよ!」
千歌「それと!言っとくけどね、普通じゃないのは私だけじゃないから!Aqoursはみんな、大概どこか変な人の集まりなんだよ!」
ダイヤ「ちょっと、千歌さんは何を!?」
千歌「まず曜ちゃん!」
曜「わ、私!?」
千歌「曜ちゃんはすっごいコスチュームフェチで、衣装の話になると止まらないし、正直時々ついていけない!あと少しファザコン入ってるのもどうかと思うよ!」
曜「え、えー!?」
千歌「次、梨子ちゃん!」
梨子「嘘、私も!?」
千歌「梨子ちゃんはねえ、壁クイオタク!あのね、壁クイってなんだー!!もう全然理解出来ない!」
梨子「お、オタクじゃないから!」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:05:56.57 ID:zgnNCZ8K0
千歌「花丸ちゃんは腐女子だし!」
花丸「ずら!?」
千歌「善子ちゃんは中二病堕天使だし!」
善子「ふふ、それは私への最大の賛辞!」
千歌「ルビィちゃんは若干腹黒いとこあるし!」
ルビィ「ぴぎぃ!?」
千歌「鞠莉ちゃんの外人みたいなキャラ付け変だし!」
鞠莉「オーウ、言ってくれるじゃない」
千歌「ダイヤさんはオナニーの声が大きすぎだし!」
ダイヤ「ちょおおおおおお!!?!??!?」
千歌「果南ちゃんはレズ!」
果南「うん」
千歌「みんなみーんな!私の周りは変な人ばっかりで、なんだこいつって思う時もあるけど!」
千歌「でも、でも!それでいいんだよ!普通じゃなくたって、気持ち悪くったって、私はAqoursのみんなのことが大好きだから」
千歌「みんなだって、きっと私のことそう思ってくれてるはずだから!」
鞠莉「……ふふ、アッハッハ。さいっこう!面白いじゃないちかっち!」
ダイヤ「何を笑っているのですか鞠莉さん!ルビィ、今すぐ善子さんに電話しなさい、早く!」
ルビィ「ぴぎぃ!わ、分かった!」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:07:42.99 ID:zgnNCZ8K0
善子「ふっふっふ、それでいいのですチカエル。あなたの内に秘めたる感情を、全て吐き出しなさい!」
善子「っと、誰よこんな時に電話なんて。はいもしもし」
ルビィ「あ、善子ちゃん!?」
善子「あら、その声はリトルデーモンルビィ。どうです?今宵のサバト、楽しんでもらえているかしら」
ルビィ「善子ちゃん、さすがにまずいよぉ。お姉ちゃんもカンカンに怒ってるし。配信止めた方がいいよ!」
善子「何言ってんのよ、今がいいところじゃない。このまま最後までやるに決まってるでしょ」
ダイヤ「ルビィ、貸しなさい。善子さん、自分たちが何をしているのか分かっているのですか!?」
善子「げっ、ダイヤ」
ダイヤ「げっ、とはなんですの。いいから今すぐ配信をやめなさい!」
善子「嫌よ!見てみなさいよこの再生数とコメント数!こんなに動画がバズってるのなんて初めてなんだから!」
ダイヤ「これはバズっているのではなく炎上していると言うのですわ!」
善子「うっさい!とにかく絶対やめないから。千歌の気が済むまではね」
ダイヤ「どうしてそこまで……。あなただって分かるでしょう、このままではどうなるか!」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:09:01.41 ID:zgnNCZ8K0
善子「Aqoursは終わりかもね」
ダイヤ「だったら!」
善子「別にいいじゃない。ラブライブはもう終わったし、あんた達は卒業するし。人気が地に落ちたって、また0から始めればいいのよ」
ダイヤ「本気で言ってますの?」
善子「まあね。それじゃ、もう切るから」
ダイヤ「ちょっと、まだ話はっ!」
善子「ふう。相変わらずダイヤは頭硬いんだから」
千歌「私だってレズだー!それに最近は腐女子にもなりかけてるし!それがどうしたー!」
善子「そう!もっと、もっとです!今こそ普通という殻を破り、本当の自分を解き放つのです!」
善子「……私がこうして堕天使ヨハネでいられるのも、あんたの言葉のおかげなんだから」
千歌『ステージの上で、自分の好きを迷わずに見せることなんだよ』
千歌『お客さんにどう思われるかとか、人気がどうとかじゃない。自分が一番好きな姿を、輝いてる姿を見せることなんだよ』
千歌『だから善子ちゃんは捨てちゃ駄目なんだよ!自分が堕天使を好きな限り!』
善子「自分の言ったこと、忘れるんじゃないわよ。バカ千歌」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:10:14.84 ID:zgnNCZ8K0
善子ちゃんにかけた電話はどうやら無理矢理切られてしまったらしい
画面の中の千歌は相も変わらず、今も思いの丈を世界中の人達に向かって叫び続けている
普通から外れることに怯えていた、あの千歌が
千歌「っていうか、私は果南ちゃんにだって怒ってるんだからね!」
千歌「ねえ、結婚って何!?私そんな話聞いてない!」
千歌「そりゃ果南ちゃんのことフったのは私だし、それで果南ちゃんが他の人を選んだって私に文句なんて言う資格ないのかもしれないけどさ!」
千歌「でも私、嫌だからね!果南ちゃんが結婚するのなんて!呼ばれたって結婚式なんて出席してしてあげないし、子供が出来たって会いになんて行かない!」
千歌「だって、だって!」
千歌「好きだから!果南ちゃんのこと、大好きだから!」
千歌の言葉が、気持ちが、私の心に響いていく
なにさ、私の気持ちも知らないで、自分勝手に色々言ってくれちゃって
そんなの、そんなの聞かされちゃったら
私……
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:11:05.27 ID:zgnNCZ8K0
鞠莉「果南!」
果南「鞠莉……」
鞠莉「どうするの?このままちかっちに言われっぱなしにするつもり?」
果南「えっ?」
鞠莉「車、外に用意してあるわよ」
果南「っ!ありがと!」
鞠莉「さあ、みんなも乗って!私たちの大好きなおバカさんに会いに行くわよ!」
「「「「「おー!!!」」」」」
ダイヤ「あ、安全運転で頼みますわよ!」
果南「でも、超特急でね」
鞠莉「オッケー、任せて。それじゃあ、レッツゴー!」
ダイヤ「だから安全にって言って……ピ、ピギャァァァァ!!」
千歌、待っててね
今すぐ、会いに行くから
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:12:45.66 ID:zgnNCZ8K0
千歌「好きだから!果南ちゃんのこと、大好きだから!」
ああ、ついに言っちゃった
いつも私の心の中にあったのに、目を背け続けていた気持ち
千歌「本当は、ずっと好きだったんだよ!果南ちゃんと別れた後だって、一瞬だって果南ちゃんのことを忘れたことなんてなかったんだよ!」
私は、全然普通になんてなれていなかった
友達と恋愛話をする時だって、口ではカッコいい人がいいなんて言ってても、頭では果南ちゃんのことを考えていた
千歌「問題がたくさんあることだって分かってる。ダイヤさんにも言われたよ。果南ちゃんの1番の幸せを考えろって」
千歌「確かに果南ちゃんにとって、普通に結婚した方が幸せなのかもしれない。女の私と付き合ったって、大変なことばっかりかもしれない」
千歌「私だって、本当は怖いよ。今も足が震えてる。全国の人の前でこんなカミングアウトして、この先どうなるかを考えたらすごく怖い」
千歌「私が覚悟を決めたって、そんなの周りの人には関係ない。私たちのことを、指をさして笑うかもしれない。馬鹿にするかも。結婚することも、子供を作ることも出来ないし、両親だって悲しませちゃうかもしれない」
千歌「だけどそれ以上に、私は果南ちゃんが他の人と幸せになることの方が嫌なんだよ!」
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:13:52.96 ID:zgnNCZ8K0
千歌「私が勝手なことを言ってるのは分かってる、ごめん。だけど、私はもう逃げないから!誰に何を言われても、それでも果南ちゃんとずっと一緒にいたいって思うから!」
千歌「果南ちゃんはどうなの!?果南ちゃんだってレズのくせに男の人と結婚って、それが果南ちゃんの本当の気持ち!?果南ちゃんにとっての幸せなの!?」
千歌「違うでしょ!逃げないでよ!私に何も言わないで、そんな事勝手に決めないでよ!」
千歌「結婚だなんて、そんなありふれた幸せを掴もうとしないでよ!」
千歌「私と一緒に、辛くて大変な現実と立ち向かってよ!」
千歌「BL小説みたいにうまくなんていかなくっても、それでも私たちなりのハッピーエンドを目指そうよ!」
千歌「だから!つまり!」
千歌「私と付き合えー!馬鹿野郎ー!!!」
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:15:10.36 ID:zgnNCZ8K0
静かな部屋に、私の荒い呼吸だけが残る
言った、全部言ってやった
途中からなんてもうめちゃくちゃで、全然まとまってないし何を言ったかもはっきり覚えていないけど
でも、私が思ってること、ホントの本音、全部全部吐き出してやった
あーあ、またコメントで何か言われてるかな?でも知らない、もう見ない
どうでもいい、誰に何を言われようが知ったことか
どうだ、これが私だ
普通なんかじゃない、これが本当の高海千歌なんだ
果南「千歌!」
静寂を破り、善子ちゃんの部屋のドアが勢いよく開かれる
果南ちゃん、そしてAqoursのみんながそこにはいた
千歌「果南ちゃん……」
果南「千歌……」
ダイヤ「千歌さん!あなたは本当に何を!」
曜「ダ、ダイヤさん空気読んで!」
鞠莉「はーい、ダイヤは引っ込みましょうねえ」
梨子「善子ちゃん」
善子「堕天使奥義、堕天龍鳳凰縛!」
ダイヤ「ピギャァァァァ!」
花丸「哀れずら」
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:16:40.85 ID:zgnNCZ8K0
果南ちゃんが、私の目の前にいる
私の気持ち、聞いてくれたかな
聞いてくれたよね、だからここに来てくれたんだよね
心臓がドキドキとなっている
緊張と興奮、そして不安
他にも言葉に出来ないたくさんの感情が、私の中に溢れて止まらなくって
私は熱い眼差しを向けながら、果南ちゃんからの言葉を待った
果南「千歌ってさ、やっぱり馬鹿でしょ」
そんな果南ちゃんの口からまず飛び出たのは、私への罵倒だった
千歌「は、はあ!?」
果南「後先のことなんて何も考えてないし。なんでこんなことしたの?」
千歌「こ、これは私の決意の表明っていうか……。こうでもしなきゃ私の本気が伝わらないかなって思って」
果南「そんなの私は求めてない。言いたいことがあるなら直接言ってくれるだけでよかったのに」
千歌「うっ……」
厳しい口調で果南ちゃんは言う
そりゃあ、冷静になったらちょっとやりすぎたかも、なんて思わなくもないけど
でもこれでも一応、私なりに考えての行動だったんだよ
だから、そんな全否定するようなこと言わないでよ
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:18:15.61 ID:zgnNCZ8K0
果南「どうするの?ネットの配信であんなこと言っちゃって。これから先、全国の人は千歌のことをそういう目で見るんだよ」
千歌「そ、そんなの気にしないし!」
果南「私が気にするの!」
果南ちゃんの大声に、ビクッと肩が竦む
果南ちゃんは怒っていた
そりゃそうか
私は自分のことだけじゃなくて、果南ちゃんのこともレズだなんて暴露しちゃって
怒るのも当然のことだった
それなのに、私は何を一人で勝手に期待していたんだろう
千歌「ご、ごめんなさい……」
やばい、泣きそうだ
こんなことをして、その結果果南ちゃんを怒らせて
私、かっこ悪すぎ
馬鹿みたいだ
千歌「本当にごめん……。果南ちゃんやAqoursのみんなのこともいろいろ言っちゃって……」
果南「はぁ?そんなのどうでもいい」
千歌「えっ?」
果南「私が言ってるのはそんなことじゃない。私は千歌の心配をしてるんだよ」
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:19:41.62 ID:zgnNCZ8K0
千歌「私の……?」
果南「だって千歌、中学の時すごい辛そうだったよ。酷いこと言われて、いじめられて、泣きそうなの必死に堪えてたじゃんか。あんな千歌、もう見たくないよ」
果南ちゃんが、とても辛そうな顔をする
果南「ねえ、本当に大丈夫?もし無理してるなら、やっぱり……」
千歌「ううん、無理なんてしてない。ほんとだよ。果南ちゃんと一緒なら、それだけで私は平気だから」
果南「……そっか。なら、いい」
そう言って、果南ちゃんは両手を広げる
果南「おいで、千歌」
千歌「果南ちゃん……!」
私は、迷わず果南ちゃんの胸に飛び込んだ
果南「千歌、あの時はごめん。千歌のことちゃんと守ってあげられなくて」
千歌「違うよ。果南ちゃんは私のことをちゃんと守ってくれた。あれは、私が弱かったのがいけなかったんだよ」
果南「それでもごめん。今度こそ、千歌は私が守るから」
千歌「えっ?それって……」
果南「私も千歌が好き。こんなことやらかして、バカ千歌って怒鳴ってやりたいけど、でも本当はすっごく嬉しかった」
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:21:14.73 ID:zgnNCZ8K0
千歌「本当に?嘘じゃないよね?」
果南「本当に」
千歌「じゃあオナニーとどっちが好き?」
果南「え!?うーん……」
千歌「ちょっと!?なんでそこで悩むの!?」
果南「ははは、冗談だってば。そんなの千歌に決まってるよ」
千歌「もー!……だけど、嬉しい。私も、果南ちゃんが好き」
果南「うん」
千歌「でもね、果南ちゃんがさっき言ってたことは違うよ」
果南「えっ?」
千歌「私はもう、果南ちゃんに守られるだけの私じゃない。これからは、どんなに大変なことも二人で乗り越えていくんだよ」
果南「……うん、そうだね。じゃあこれからは、お互いに助け合いながら生きていこうか」
千歌「うん!あ、そういえば果南ちゃん」
果南「ん、何?」
千歌「結婚、しないんだよね?そういうことでいいんだよね?」
果南「ああ、あれ?うん、しない。結婚なんてしないよ」
千歌「果南ちゃん……!」
果南「だって結婚するって話、あれ嘘だから」
…………は?
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:25:54.30 ID:zgnNCZ8K0
ダイヤ「はああああああ!?」
私より先に、ダイヤさんが驚きの声をあげる
え、何、どうなってるの?
ダイヤ「果南さん!嘘ってどういうことですの!?あなた、私にお見合い相手を紹介してほしいって言いましたわよね!?」
果南「まあ、うん。言ったんだけどさ。別に本気で結婚するつもりはなかったっていうか、どんな人でも断るつもりだったんだよね」
果南「そもそも、千歌の言う通り私レズだし。男の人と結婚とか、ないない」
千歌「な、なにそれ!?じゃあなんでそんなこと言ったの!?」
果南「いや、それは……」
私が問い詰めると、果南ちゃんは顔を少し赤くして私から目を背ける
果南「結婚するって言ったら、千歌が嫉妬してくれるかなって」
千歌「ええっ!?」
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:27:19.29 ID:zgnNCZ8K0
ダイヤ「そんなことのために!?」
果南「そんなことじゃないよ!私にとっては大問題!」
果南ちゃんは、開き直ったかのように力強くそう言った
果南「だって千歌ってば、私が積極的にアピールしてるのになんかイマイチ反応悪いし。卒業する前に違う手をうっておきたいなって思って」
千歌「待ってよ!アピールってなに?私なんかされてた?」
果南「ええ?してたじゃん、下ネタ言ったりとか」
千歌「あれが!?果南ちゃんの頭がおかしくなったとしか思わなかったよ!」
果南「でも鞠莉が、千歌は初心そうだからそういうこと言い続ければ私のこと意識してくれるって」
鞠莉「ちょ、果南!?」
ダイヤ「またあなたですの!?」
鞠莉「いや、ジョークのつもりだったんだけど……。まさか本気にするとは思わないじゃない」
果南「なにそれ!?私結構恥ずかしかったんだけど!」
千歌「でも果南ちゃん、全然恥ずかしくないみたいなこと言ってなかった?」
果南「そんなの嘘に決まってるじゃん。そう家えば千歌も話してくれるかなって思っただけだよ」
果南ちゃんも恥ずかしかったんだ
ごめん果南ちゃん、私は果南ちゃんには羞恥心なんて感情はないんだと思ってたよ
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:28:25.12 ID:zgnNCZ8K0
果南「はあ……。まあもういいけどさ。これまで色々あったけど、こうやって千歌と付き合えたわけだし、結果オーライだもんね」
千歌「結果オーライだもんね、じゃなーい!!」
果南「ち、千歌?」
千歌「嘘ってなに!?私がそのことでどれだけ悩んだと思ってんの!?」
果南「だ、だからそれはごめんって」
千歌「果南ちゃんなんてもう知らない!バーカ!」
果南「千歌ー、許してってば。ほら、ハグしよ?」
千歌「しない!」
ダイヤ「はあ、まったく果南さんは。人騒がせにも程かありますわ」
鞠莉「まあまあ。それより、ダイヤはこれでよかったの?果南とちかっちが付き合うこと、反対だったんでしょ?」
ダイヤ「……確かに反対ですが。お二人がそう決めたのなら、それに口を出すようなことはしませんわ」
鞠莉「……ふふ、そうね。この先果南達がハッピーになれるのかどうか。それは、これから2人で決めていくことだわ」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:29:07.12 ID:zgnNCZ8K0
曜「まあ、なんとか丸く収まってよかったね」
梨子「ええ?なんか喧嘩してるけど、ほっといていいの?」
花丸「あんなのじゃれてるだけずら」
善子「そうそう、ほっとけばいいのよ」
ルビィ「……ねえ善子ちゃん。さっきから気になってたんだけど」
善子「だからヨハネ!何よ」
ルビィ「配信、止めなくていいの?今もずっと流れっぱなしだけど」
善子「あっ……」
千歌「絶対許さないから!果南ちゃんとはもう別れる!」
果南「ええ!?さっき大変なことは二人で乗り越えていこうって言ったばっかでしょ」
千歌「もう無理!」
果南「そんなあ……。ちかぁ……」
千歌「ふーんだ!」
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:30:45.46 ID:zgnNCZ8K0
「6」
ダイヤ「それで、何かこの世に言い残すことはありまして?」
千歌「はい……」
ダイヤ「はいじゃありませんわ」
後日、私と善子ちゃんはダイヤさんの前で正座をさせられていた
ダイヤ「なにちょっといい感じで終わろうとしてるんですの。あなた達には言いたいことが山ほどありますわ」
果南「まあまあ。もう終わったことだしさ」
ダイヤ「お黙らっしゃい!いいですか千歌さん、善子さん!あなた達のせいで私達がどれだけ迷惑を被ったと思っていますの!?」
善子「なによ、あれくらいのことで」
ダイヤ「ああん!?」
善子「ひっ……」
千歌「はい、返す言葉もございません……」
鞠莉「まあ、実際大変だったわよ。もう毎日いろんな所からのテレフォンが鳴り止まなくって」
ダイヤ「停学三日で済んだことを鞠莉さんに感謝するのですわね」
千歌「はい、ありがとうございます……」
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:33:06.83 ID:zgnNCZ8K0
ダイヤ「まあ、今更言っても仕方ありませんが。あの件以来、きっとAqoursの人気も下がってしまったでしょうし」
ルビィ「あの、そのことなんだけど」
花丸「どうかしたずら?」
ルビィ「あれからちょっとネットで調べてみたんだけど、なんか思ったよりも人気は落ちてないみたい」
千歌「本当!?」
ルビィ「うん。もちろんいなくなっちゃったファンも多いんだけど、千歌ちゃんの本気の告白に心打たれたって人も多いみたいで」
梨子「新しいファンも増えたってこと?」
ルビィ「そうみたいです」
千歌「それじゃあ、あれはセーフってことだよね!よっしゃー!」
ダイヤ「全然セーフじゃありませんわ!」
善子「まだなんか文句があるっての?」
ダイヤ「ありますわ!ありまくりですわ!千歌さん、あなた自分が何を言ったか覚えてまして!?」
千歌「えーっと。あの時は熱くなってたから完全には…….」
ダイヤ「なら思い出させてあげますわ!あろうことかあなたは、全国の人が見るネット配信で私のことを、オ、オ……」
曜「オナニーの声が大きいって言ったんだよ」
ダイヤ「いやあああああああああ!!」
ダイヤさんは叫びながらその場に蹲ってしまった
ああ、そう言えばそんなこと言ったかも
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:34:19.46 ID:zgnNCZ8K0
ダイヤ「もう外を歩けませんわあああ!」
梨子「お、落ち着いてください」
ダイヤ「というかあなた達も恥ずかしい秘密をバラされたのですよ!?よくそんな平気でいられますわね!?」
曜「まあ、もちろん少しは恥ずかしいけど」
花丸「それでもダイヤさんに比べたら」
梨子「ねぇ?」
ダイヤ「そもそも、なんで千歌さんがそんなことを知っているんですの!?」
千歌「それはルビィちゃんが」
ダイヤ「ルビィィィィイ!」
ルビィ「ぴぎゃ!!」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:35:20.60 ID:zgnNCZ8K0
鞠莉「カームダーン。大丈夫、そんな悲観することでもないわよ」
ダイヤ「鞠莉さん……」
鞠莉「知ってる?あれ以降ダイヤの人気も急上昇してるみたいよ」
ダイヤ「マジですの!?」
善子「そうよ、見てみなさい。こんなにダイヤファンのレスが増えてるのよ」
「オナニーの声大きいとかギャップが最高すぎる」
「ダイヤさんのオナニー声毎日聞けるルビィちゃん羨ましい」
「隣の部屋でダイヤさんのオナニー声を聞きながら俺もオナニーしたい」
ダイヤ「あぁ……」
ルビィ「お姉ちゃんが倒れた!」
梨子「何やってるのよもう!」
曜「あれ、そういえば千歌ちゃんと果南ちゃんは?」
花丸「言われてみればいないずらね」
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:36:35.22 ID:zgnNCZ8K0
果南「いいの?黙って抜け出してきちゃって」
千歌「いいのいいの」
果南ちゃんの手を引きながら、私たちは二人で学校の廊下を歩いている
ダイヤさんが騒いでいる隙に、こっそりと部室から抜け出してきてしまった
果南「後でダイヤに怒られても知らないよ」
千歌「その時は果南ちゃんも同罪だもん」
笑って話をしながら、行く当てもなく校内をふらふらと彷徨う
もうすぐなくなってしまうこの学校との思い出を懐かしむように
途中すれ違った人たちが、少しだけ私たちに目を向けた
別に、ただそれだけだ
ひそひそと話す声やクスクスと笑う声が聞こえてきたわけじゃない
ただ、ちらっと少し見られただけ
それでも私は無意識に、繋いだ手に力を込める
そしてそれに応えるように、果南ちゃんも私の手を強く握った
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:38:26.64 ID:zgnNCZ8K0
千歌「あれからちょっとゴタゴタしてたから、こうやって二人きりになるのは久しぶりだね」
果南「って言っても、まだ一週間も経ってないけどね」
千歌「むぅ。私の気持ち的には久しぶりなの!」
果南「ははは、ごめんごめん」
私も寂しかったよ、と果南ちゃんは言う
たったそれだけでこんなに嬉しい気持ちになってしまう私はなんて単純なんだろう
まあ、別に単純でもいいや
好きな人と同じ気持ちなんだと分かったら、誰だって嬉しいものだろう
こうやってただ歩いているだけで、手と手が触れ合っているだけで、こんなにも幸せな気持ちになるなんて
知らなかった、ううん、もうずっと長い間忘れていたことだった
失ってしまった時間は帰ってはこないけど、これからその分を取り返すくらい、ずっと一緒にいたいって思う
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:39:27.03 ID:zgnNCZ8K0
果南「千歌、ごめん。せっかくまた付き合い始めたのに、すぐに海外だなんて」
千歌「ううん、仕方ないよ。果南ちゃんが決めたことだもん」
果南「出来るだけ急いで戻ってくるからね」
千歌「うん、待ってる。あ、そうだ」
私は果南ちゃんの耳元に口を寄せて、誰にも聞こえないように小声で言う
千歌「その間は、果南ちゃんのことを想ってオナニーするね」
果南「こ、こら!私をからかわないの!」
千歌「なんで照れてるの?変な果南ちゃん」
顔を真っ赤にする果南ちゃんの反応に私は笑った
セクハラ親父の正体は、案外普通の女の子だったんだ
それなのに、私の気を引く為に無理して頑張ってたんだと思うと、この一つ年上のお姉さんのことがすごく可愛く見えてくる
まあ、やってたことはバカだなーって思うけど
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:41:01.26 ID:zgnNCZ8K0
果南「そ、それより!千歌、あの後大丈夫だった?」
千歌「ああ、うん。めちゃくちゃ怒られた」
果南「まあ、そりゃそうだよね」
あの後家に帰った私を待っていたのは、これまで見たことも無いような顔で怒るお母さんからの説教だった
話が広がるのは早いもので、すぐに学校から家に電話があったらしい
ホント、あんなに怒られたのはいつぶりだろう
千歌「でね、美渡姉ってば私が怒られてるのを見ながら笑ってるの。酷くない!?」
果南「あはは、美渡姉っぽい」
千歌「もうホント最悪!……でもね」
果南「ん?」
千歌「美渡姉だけだった。果南ちゃんとのこと、反対しないでくれたのは」
果南「……そっか」
お母さんには、予想通り反対された
お父さんは何も言わなかった
ショックだったのは、志満姉にも反対されたことだった
優しい志満姉なら、私の味方になってくれると思ってたのに
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:42:46.99 ID:zgnNCZ8K0
果南「ねえ千歌。おばさんも志満姉も、別に千歌の事が嫌いだから反対してるんじゃないんだと思う。それだけは分かってあげな」
千歌「……うん」
分かってる
ちゃんと分かってるよ
お母さんも志満姉も美渡姉だって、私の事を大切に思ってくれてる
だから味方にもなってくれるし、間違ってると思うことは反対してくれる
私が本当に幸せになれる道を真剣に考えてくれている
分かっているから、辛い
果南ちゃんとの事を認めてもらえないことが
そして私を想ってくれる大切な家族の気持ちに応えられないことが、すごく辛いんだ
千歌「果南ちゃんの方はどう?やっぱり反対された?」
果南「うちは全然。そもそも私がレズなの知ってたからね。千歌のこともよく知ってるし、むしろ喜んでるくらいだよ」
千歌「そっか、良かった」
果南「うん。まあ表向きは、だけどね」
千歌「えっ?」
果南「昔ね、私がレズだって知られてない頃、父さんが言ってたことがあるんだ。いつか自分に孫が出来て大きくなったら、一緒に海に潜るのが自分の最後の夢なんだって」
果南ちゃんはそう言って、少し悲しそうな顔をする
果南「ほら、私は一人っ子だからさ。父さんのその夢を叶えてあげることが出来ないから、本当はどう思ってるのかなって考えちゃう時はあるよ」
千歌「……うん」
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:43:48.44 ID:zgnNCZ8K0
そのまま少しの間、私たちは無言で歩く
気付いたら、私達は自然と学校の屋上についていた
いつも練習で使っていた、私たちにとって思い出深い場所
私たちはそこの壁を背にして地面に腰を落とした
果南「引き返すなら、多分今が最後だと思う」
果南ちゃんが、私の目を見てそう問いかける
果南「私は大丈夫。だけど千歌がもしやっぱりやめたいって思うなら、私は……」
千歌「やめないよ」
果南ちゃんの問いに、私ははっきりとそう答える
千歌「絶対にやめたりしない。果南ちゃんと付き合うことも、果南ちゃんを好きでいることも、もう二度と」
誰に何を思われたとしても
たとえ私たち以外の全ての人が私たちを否定したとしても
果南が一緒にいてくれるなら、私はそれだけで十分だから
果南「千歌……」
少しの間、私たちは見つめ合う
そしてどちらからともなく、私たちは口付けた
軽く、触れ合わせるだけのキス
久しぶりの果南ちゃんとのそれは、とても幸せで、少し切ない味がした
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:45:14.34 ID:zgnNCZ8K0
果南「今度、ちゃんと千歌の家に挨拶に行くよ」
体を寄せ合いながら余韻に浸っていると、果南ちゃんがそう言った
千歌「え?でもそんな今更」
果南「そりゃ千歌の家族とは付き合いも長いし、お互いよく知ってる間柄だけどさ。次は千歌の恋人として、改めてちゃんと挨拶したいんだ」
果南ちゃんの気持ちがとても嬉しかった
お父さんお母さん、親不孝な娘でごめんなさい
それでも私は、やっぱり果南ちゃんと一緒に生きていきたいから
だからいつか、ちゃんと分かってもらえる日がきたらいいなって思う
千歌「果南ちゃん」
果南「んー、なに?」
千歌「好き」
果南「うん、私も千歌が好き」
千歌「ずっと一緒にいようね」
果南「うん、ずっと一緒にいよう」
私達はもう一度キスをする
交わした約束を忘れることのないように
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:45:51.32 ID:zgnNCZ8K0
果南「さてと、そろそろ戻ろうか」
千歌「えー、もう?」
果南「ほら、ダイヤからライン来てる」
千歌「げ、ほんとだ」
気付いたら、私のスマホにダイヤさんからの鬼のようなラインが何通も来ていた
私はため息をついて、果南ちゃんと一緒に立ち上がる
千歌「はあ……憂鬱だ」
果南「ほら、文句言わない。私も一緒に怒られるからさ」
そう言って、果南ちゃんは私に向かって手を差し出した
果南「行こ、千歌」
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/07(月) 02:46:33.48 ID:zgnNCZ8K0
千歌「うん!」
私はその手をしっかりと握る
この先何があったとしても、もう二度とこの手を離さない
どんな大変なことも、二人一緒なら大丈夫
私達は向き合い、そして同時に笑い合う
それじゃまずは手始めに、部室で待つ最初の困難に立ち向かいに行くとしよう
そうして私達は二人並んで、未来に向かって歩き出すのだった
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/07(月) 02:47:21.35 ID:zgnNCZ8K0
これで終わりです
ありがとうございました
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/07(月) 23:16:59.20 ID:gqOtr0luO
おつおつ
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/08(火) 19:58:32.84 ID:bplyqlLCO
面白かった、おつ
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/12(土) 16:42:39.00 ID:y2dl94Mv0
いいんじゃないすか?
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