清霜「Saxophone Colossus 」

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129 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/16(火) 22:39:41.29 ID:ZfbL7gDA0
6月23日 午後7時00分
Lazy Bird


客で賑う店内、今日は艦娘による演奏が開かれる
それを聞きに今宵も人が集まる


「ねーねーそういえばさー 私たちバンド名決めてないよね?」

「あら、そういえば決めてなかったわね」

「あーすっかり忘れてたな」

「どうするんですか?」


バンド名、結成してまだ間もない彼女たちは全くそのことを考えてなかった
皆アイデアを出し合うがいまいちピンとくるものがなく難航していた
そんな時に早霜のかけるレコードからある曲が流れる





Blue7/Sonny Rollins
https://youtu.be/59aXJ8GvMYE



(あ、Blue7...)


聞き慣れているこの曲、そしてそれを聞いた瞬間思いついたように清霜は言葉を発した


「Blue4!!」

「あん?」

「へ?」

「ブルー4...?」

「そう! 四人だし! ちょうどいいかなって!」

「おい清霜、お前まさか今Blue7が流れてるからそういったな?」

「うん!」

「うふふ、清霜ちゃんらしいわね」

「おい、もうちょっと考え――」

「あ、あの! いいと思います!」


ガンビアベイの声に思わず驚く摩耶と榛名
摩耶は何か言いたげだったが彼女は続ける


「なんていうか... たしかにその場の思いつきかもしれないけど... でもなんかそれもなんていうかジャズっぽいなって... 勝手に思ったり...」


ジャズっぽいね... と口をこぼす摩耶
しかし先ほどとは打って変わって笑みを浮かべていた


「即興って意味じゃあってるかもな」

「榛名も、その名前いいと思うわ」

「ふふーん! 言ってみるもんだね!」

「Blue4かあ...」


一歩、たった一歩だが進んだ気がする
そしてその一歩はいつか巨人の一歩となる


第9話
おわり
130 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/16(火) 22:41:05.13 ID:ZfbL7gDA0
今日はここまで
おかしい前書いたSSの時と同じで違う子が主人公みたいになりかけてる(前々作は吹雪で前作は初月)けどまあいいか
ありがとうございました
131 : ◆0rjCWOlcd8we [sage]:2019/07/22(月) 22:25:53.36 ID:L7q+K0RE0
時間できたので明日更新します
132 : ◆0rjCWOlcd8we [sage]:2019/07/24(水) 10:47:47.59 ID:WuVlszLmO
復旧したので貼っておきます
133 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:48:13.44 ID:WuVlszLmO
第10話
Mayden Voyage(後編)


6月24日 午後10時48分
Lazy Bird

「うっし! じゃあCherokeeの合わせは終わり!」


四人での練習は基本的に摩耶が仕切っている
演奏の指示や音楽的な指導はほとんど彼女が行なっている
そしてバンドの武器である『オリジナルの曲』も彼女が作った


「じゃ、最後『新曲』やるぜ」

「摩耶さん、その曲名前どうすんの?」

「考えてはいるんだけどよー いまいちピンと来ねーんだよ...」


曲を作ったものの、題名は決まらなかった


「あの... そういえばその曲は今度のライブではやらないんですか?」

「なんだガンビー? お前その曲こなせてんのか?」

「え!? い、いや... まだ...」

「そ、だからはえーんだよやるのは 今度のライブは場慣れだ、一回経験してもらうだけでいい」

「が、頑張ります!」


ガンビアベイはこの時自信に溢れていた
練習を積んできた、拙いけどきっと自分はできる
やる気と情熱に満ち溢れていた


(大丈夫! 初めてだけど! 練習してるからきっと大丈夫!)
134 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:48:46.70 ID:WuVlszLmO
6月29日午後6時00分
とある駅前の広場


「7時からジャズやります! よろしくお願いします!」


広場に立ち、清霜はこれからやるライブの宣伝をしていた
しかし道行く人は誰も目に留めなかった


「おい清霜... そろそろ恥ずかしいからやめろ」

「うー... だって初めてのライブだし来て欲しいし」

「あのな、宣伝の方法間違ってるぞ? こんなんで来るわけねーだろ」

「うーん...」

「お客さんは演奏で集めんだよ、あと店が宣伝してくんないと人は来ねえ」

「やってみなきゃわからないもん! あ! お兄さん! ジャズ! 聞きませんか!?」

「へ? お、俺?」

「そうです! お兄さんです!」

「(あ、怪しいキャッチかな...? でも楽器持ってるし本物か...)ジャズをやるの?」

「はい! 今日初めてのライブなんです!」

「それは...すごいねライブやるなんて」

「それで! 来る確率何パーセントくらいですか!?」

「え!? い、いや それは... 」

「おい清霜、そろそろ迷惑だからやめろ すいませんうちのが...」

「い、いえべつに...」

「じゃあねー! 来てくださいねー!」

(変な子だなあ...)
135 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:49:12.69 ID:WuVlszLmO
6月29日 午後6時45分
ライブハウス 『D♭』


「客の入りはどうだ?」


摩耶が清霜に問いかける、初めての外でのライブであったからか客の入りを気にしていた


「5、6人かあ」

「ま、そんくらいか」

「こういうものなの?」

「今日ははっきり言ってこれでも人が来てるほう、アタシらは無名も無名だからな 仕方ねえよ」

「そっかあ...」

「榛名が無理をしてこの店でやってくれるように頼んだんだよな」

「...でもさ、お客さん 居るんだね」

「あん?」

「私たち、カッコいいね!」

「...そうだな!」



午後6時47分
『D♭』 控え室

一方で榛名とガンビアベイは演奏のために精神を整えていた
榛名はリズムキープの練習のためにスティックでパッドを黙々と叩き、ガンビアベイは曲の進行を再確認していた


「わ、私たち 人前でやるんですね」

「そうね」


再び沈黙、響くのはトコトコとパッドを叩く音のみであった


「あ、あの 榛名さん 初めて演奏する時って... どんな気持ちでした...?」

「そうね... とても緊張したわ これが本番の空気なんだって思った」

「うう、やっぱり...」

「緊張してるの?」

「急に... どうしてだかわからないけど急に... 怖くなって...」

「...良くも悪くも今のあなたを出して」

「え...?」

「練習、してきたんでしょう?」

「...」

「練習してきたことを出す、それ以上でもそれ以下でもないの 大丈夫、やれるわ」

「...はい」
136 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:49:45.37 ID:WuVlszLmO
午後7時00分
『D♭』ステージ


客はテーブル席に5人、カウンターに一人
店内の広さがその少なさをより際立てていた
四人がステージ上に立つが拍手は起こらない


(初めてのライブ...)

(この日は一生忘れないようにしよう)


清霜は心に誓った



「ワン、ツー、ワンツー」



ボーンバーンボボボン


摩耶のベースがリズムを作りそこにテナーサックスが乗る
榛名がスネア、ハイハット、タムでそれらを包み込む
だがピアノは... 乗れない


(あ、あ、あれ? な、なんで!?)


この時すでにガンビアベイは限界を迎えていた
客もその様子に気づく



「おいピアノのあの子... 大丈夫か?」

「ちょっと心配だな... でも他の3人は相当うまいぞ、どう見ても10代とかだよな...」


バラバーッバッバー!!
バラバラバラバラ


「あのテナー... 何者だ...?」






(クソ! ガンビー! 持ちこたえろ!)


摩耶が心配そうにガンビアベイを見るが当の本人はそんな摩耶を見る余裕はない


(E♭m7→A♭7→D♭7...)


コードを追うことに必死で3人の作るグルーブに乗れなかった
137 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:50:29.44 ID:WuVlszLmO
午後7時20分
ライブハウス前

仕事終わりのサラリーマンと言った風貌の男が店の前に現れる
彼は夕方清霜から必死にライブの勧誘を受けていた男だった


「あのちっちゃい子の言ってたライブハウスここか...」

「ジャズなんて全くわかんねえのに... お人好しだな俺って」


店への階段を下り、防音扉を開けた
店の中は閑散としており、ちょうど演奏を終えた後だった



「ありがとうございました! 3曲目はIn A Mellow Tone でした!」

(あ、喋ってるのあの子だ...)


男がカウンター席に座り注文を取る

「注文は?」

「あ、バランタインを...」

「かしこまりました」

(ジャズかあ...)
138 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:50:56.20 ID:WuVlszLmO
「次の曲で最後になります! やる曲は...」


最後の曲名を言おうとした時、どこか清霜は落ち着かない様子だった
心の奥に、このまま終わりたくない そんな気もちが宿っていた


「おい! 清霜! 早く!」

「...ねえ摩耶さん」

「あん?」

「『あの曲』やろう」

「ば、バカ! できるわけねーだろ! ガンビー見てみろ!」

「このままじゃ、終われない お客さんの心に火をつけたい」

「だからって...!」

「大丈夫、うまくいく」

「おまえなあ...!」

「新しい事、やろうよ」

「...あークソが! どうだ?」

「榛名は大丈夫です」

「や、やります...」

「クソ... 知らねえぞ」

「4曲目はベースの摩耶さんが作曲した曲です、名前は...」


清霜の考えていることはたった一つだった
『客の心に、火をつけてやる』


「IGNITION(点火)です、どうぞ」

139 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:51:22.41 ID:WuVlszLmO
「ワン、ツー、ワンツー」


バーーーーー!!
バッバラバラババババラー!!




(え、なにこれ...)

(ジャズって... こんな激しいの..?)

カウンター席の男はジャズというもをの今までは静かなもの、年寄りが聴くものと思っていた
清霜の音を聞いた瞬間
彼の常識は覆った




バーラー ババラバラバラバラバラ
バッバー!


テナーが引っ張りベースが支え、ドラムが包む
摩耶はふと思う

(清霜のやつ、やっぱりそうだ)

(客の前、人の前だと枠を大きく超えられる)

(じゃあこっちも乗ってやる!)



バラバラッバー!!!!


ーーーーーーーー
ーーーーーーーー


140 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:51:48.18 ID:WuVlszLmO
パチパチパチパチパチ


「ナイスプレー!」

「ヒューッ!」


客こそは少ないが歓声が上がっていた


カウンター席の男もスタンディングオベーションをする
思わず席を立ちステージに近づいていった


「ありがとうございました! Blue4でした!!」

「あ! サックスの子! 夕方の...覚えてる?」

「あ! お兄さん! 来てくれたんだ!」

「うん、ジャズって全くわかんない状態できてみたんだけど... なんていうか... ジャズってすごいんだね」

「あ、ありがとうございます!」

「また聞きに来ていいかな!?」

「ぜひ来てください!」


他のメンバーも質問責めにあっていた


「ねえベースの子! 君ほんとはプロなんじゃないの?」

「ドラムのお姉さん! かっこよかったよ! いつもどこでやってるの!?」



そんな中ガンビアベイは一人隅で佇んでいた


(そっか... これが差なんだ... やっぱりみんな積み上げてきたものが違う...)

(夢みちゃってたんだ... 私)

141 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:52:15.19 ID:WuVlszLmO
午後7時35分
控え室


「みんなお疲れ様!」

「おう、お疲れ」

「清霜ちゃん、今日はのびのび吹いてたわね」

「うん! なんだかもっと吹きたい気分!」

(そりゃそうだろうよ...)


そう思いながら摩耶はガンビアベイを見る


(あいつを置いてきぼりにしやがって...)

「ガンビーさん! お疲れ!」

「...」

「が、ガンビーさん?」

「...ごめんなさい」

「えっ!? あっ! ガンビーさん!」


そう言い残しガンビアベイは足早に部屋を出ていった


「榛名が追いかけていきます!」

「わ、私も...」

「お前は行くな」

「えっ...?」

「まだ未熟だったあいつをステージに上げたアタシも原因だけど、半分はお前のせいだからな」

「え...」

「自信喪失した状態で、お前が出来上がってもいない曲やらせたんだよ」

「あっ...」

「だから行くな」

「...」

142 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:52:52.90 ID:WuVlszLmO
午後7時49分
公園

「...」

公園のベンチに一人座るガンビアベイ
月は雲に隠れ、街灯だけが彼女を照らしていた
今にも雨が降りそうだった

「...何やってんだろ私」

「ガンビーさん」

「わあ!?」


ガンビアベイのことを追いかけていた榛名がようやく追いついた
その目はどこか慈愛に溢れていた


「ガンビーさん... 今日はお疲れ様、色々思うことはあるかもしれないけど もう帰りましょう」

「...私、何かできると思ってました」


ガンビアベイは泣きながら吐き出すように己の心の奥底にあることを言う


「練習したんだから... 少しはできるって...! ぐすっ...」

「知ってるわ、あなたは頑張ってた」

「でも! 本番... あの舞台にたったら... 何も... 」

「...」

「ピアノだって買って... 練習しようって... 一人で舞い上がって...」

「...」

「でも私は何もできなかった...! やっぱりみんなは積み上げてきたものが違う... ジャズやりたいなんて夢みるんじゃなかった...!」

「...」

「私... もう抜けます... 迷惑だから...」

「ガンビーさん...」

「何ですか...? もういいんです... 間違ってたんです... 夢みてたのがバカだったんです...」

「プレイヤーが一番やっちゃいけないことってなんだと思います?」

「え...?」

「コードを間違える事? アボイドを弾く事? ロスト(※)する事? 違う...」

※ 自分がどこを演奏してるかわからなくなる事

「一番やっちゃいけないのは...」

「お客さんの前で『私の演奏は最悪でした』って顔をする事よ」

「!!」

「それに比べれば今日のことなんて全く気にしなくていいの」

「...!」

「あなたは、お客さんの前で演奏したの 結果はどうであれ これってすごい事だと思わない?」

「榛名さん...」

「また一緒に、ジャズやりましょう? ジャズって楽しいのよ?」

「榛名さ〜ん!!」

「よしよし」

「うわあああ〜ん!!」


雲は消え、いつのまにか月が出ていた


第10話
おわり
143 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 10:56:28.91 ID:WuVlszLmO
今日はここまで、榛名の言っていた「お客さんに自分の演奏は最悪でしたという顔を見せる」は一番やってはいけない事です
あなたの調子が最悪だとしてもお客さんはその演奏しかあなたの事を知りません、なので顔に出してしまったら最悪というのは伝わります もしかしたらお客さんにはいい演奏だったかもしれないのです
結果は覆せないので胸を張るしかないと私は考えてます

ありがとうございました
144 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/07/24(水) 22:56:39.18 ID:IofAfu2n0
(運営ちゃん次のジャズイベメセニーかマイケルリーグかベイシービッグバンド呼んでくれないかな)
145 : ◆0rjCWOlcd8we [sage]:2019/07/24(水) 22:57:33.41 ID:IofAfu2n0
sageミスした最悪...
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 01:54:03.33 ID:QUaGtbRh0
乙でした
お客の前に出る以上、お客から見れば新人だろうがプロなんですよね
色んな所で言えることですな…
147 : ◆0rjCWOlcd8we [sage]:2019/07/30(火) 21:33:54.83 ID:2ooxR6dFO
合宿の準備などあるので更新二週間後です、すみません
148 : ◆0rjCWOlcd8we [sage]:2019/08/16(金) 18:14:40.95 ID:ge+gLBPN0
色々遅れました... 日曜に更新します
149 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/18(日) 22:14:40.61 ID:F8UcP6o90
第11話

Twin Tenors(前編)



7月14日 午後3時00分
Lazy Bird


「はいストップ! テーマもう一度さらうぞ、榛名! なんでもいいから7拍目にアクセントつけて、清霜もそれに乗っかる感じで! ガンビー! 13thの方が多分響きがいい! 変えて!」

客のいないLazy Birdに摩耶の指示が飛び交う
今日もまた彼女らは練習を積み重ねる
あのライブ以来彼女らはより一層励むようになった
特に彼女、ガンビアベイはあの日から何か変わった様子だった
そしてまたその影響を受けたのは...


「おうガンビー! 前よし良くなったけど自信持って弾け!」

「はい!」

「...」


清霜だった



150 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/18(日) 22:15:29.77 ID:F8UcP6o90

午後11時02分
鎮守府 埠頭

「...」


今日までのガンビアベイを清霜は振り返った
彼女はこの数ヶ月、たった一人で伸びてきた
だからこそ清霜は、絶対に負けたくなかった


「ガンビーさんは一人であそこまで伸びてきたんだ... 普通じゃない...」

「...よし! 私も頑張らなきゃ!」


楽器を構え一呼吸置いた


「すう...」


バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!



「ぷはあっ!! はあ... はあ... あ! 何秒吹けたか測り忘れちゃった...」

「よし! 今度こそ! もう一回!」



バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー.....





151 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/18(日) 22:18:48.08 ID:F8UcP6o90
7月31日 午後9時24分
Lazy Bird


客で賑わうLazyBird、今日のプレイヤーはBlue4の四人だった
はじめてのライブをあえて外でやる目論見が功を奏しこのライブはなにもなく終わるはずだった
清霜と同じく、テナーサックスを持った彼女が来るまでは...


「...」

「どしたのよ朧、神妙な顔してるけど」

「ねえ秋雲」

「あん?」

「一緒に吹きたいというか... 音であいつに勝って見たくて横で吹きたいって思った事ある?」

「あー... ちょっとまさか...」

「ひさびさに心を突いてくるプレーヤーに出会えた気がする」

「勝ちたいの?」

「勝ってくる」

「はあ... 行っておいで」

「ありがとう」

「朧」

「何?」

「勝てよ」

「... 言われなくても」


言うや否や朧は楽器を舞台裏にセットしに行ってしまった
もう彼女を止めるものはいない


「あ、ただいま二人とも... あれ? 朧ちゃんは?」

席に戻ってきたのは朧や秋雲と同じくビッグバンドをしている照月だった
いつもは秋月、朧、秋雲の3人だったが今日は秋月が夜間演習のため不在、チケットを非番だった照月が受け取る形になった


「あー照、それが朧のやつ『勝ってくる』なんて言って楽器持って...」

「え、ええっ!?」

「でもさ」

「へ?」

「見たくない?」

「見たくないって...?」

「あの二人がどんな世界作るかさ」


----------------
----------------


「...ありがとうございました! Tricotismでした! 続いてが最後の曲になります、ベースの摩耶さん作曲でIGNITION...」

「ねえ」

「!? お、朧ちゃん!?」


朧がテナーサックスを持ちステージに上がる
まるでこれから戦うかのような佇まいを見せていた
そして... 勝ちに行く そんな目をしていた


「一緒に吹かない?」


第11話
おわり
152 : ◆0rjCWOlcd8we [sage]:2019/08/18(日) 22:21:18.81 ID:F8UcP6o90
すみません夏はゴタゴタしてたので更新遅れました
前書いてたSSの方の登場人物を呼びました、似てるようで似てない二人のぶつかりは果たしてどうなるのか
ありがとうございました
153 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/18(日) 22:23:08.93 ID:6LNgmsKVO
おまけ
ジャズピアノのバッキング講座が割と面白そうなのが見つかったのでよかったらどうぞ(英語ですみません)
https://youtu.be/DhJshy1Nfyg
154 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 00:04:24.55 ID:MxzcDZH50
書けたので続き貼ります
155 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 00:05:34.98 ID:MxzcDZH50
第12話
Twin Tenors(後編)
7月31日 午後9時24分
Lazy Bird

「お、おい!いまライブ中で...」

「いいの摩耶さん」


摩耶が制止にかかるが清霜はそれをはねのけた


「... ただ一緒に吹きたいって感じじゃないよね」

「勝ちに来た」

「いいよ... やろう 曲は?」

「Giant Steps」

「お、おい!マジで言ってんのか!? コルトレーン(※)の曲を!?」


※ジョンコルトレーン

156 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 00:06:00.92 ID:MxzcDZH50
「ふふ、朧ちゃん勝負しに来たわね」

「榛名! 呑気に言うなっての! おいガンビー! 行けるか?」

「ええっ!? いきなりやれなんて...」

「ほら言わんこっちゃねえ... また今度に...」

「あの! 私がやります!」


そう言いステージに上がったのは照月だった
彼女もまたビッグバンドをやっている、そして偶然にもピアノであった
あまりの事態に客席からどよめきが聞こえていた
一体これから何が起こるのか、ステージにいる彼女たちにも、神様にも分からなかった


「さ、ガンビーさん 変わりますね」

「照月ちゃん...」

「さ、揃った やるよ テンポはこのくらい」


朧が指を鳴らしテンポを出す
ピアノもベースもドラムも、そして2本のテナーサックスも準備は整った
榛名がカウントを出す

「ワン、ツー ワンツー」

157 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 00:06:31.26 ID:MxzcDZH50
※イメージ
Giant Steps/Bob Mintzer Michael Brecker
https://youtu.be/bhkb-_SEtxQ


バーラーラーバーラー!
バーラー バーラーラーバーラー!




(朧ちゃんの音! 鋭い! 突き刺さってくる!)

(清霜... この子、音に厚みがある!)



似ているようで似ていない二人の音、それらが混ざり合い化学反応を起こす
朧の技巧溢れる鋭いサウンド、対して清霜は重厚な音を出し、二人の音でバーを埋め尽くしていた



(アタシのソロ!)


バラバーバララーバラー!!



(す、すごい技術! 指回しもすごいけど上の音も下の音も全部に鋭さがある! 一体どうやったらこんなに!?)

真横で聞く清霜は朧の技術に圧倒されていた
サックスを操る正確無比な技術力、それによって可能となる数々の音が彼女の強みだった
そして技術だけでなく『心』も彼女には備わっていた


(もっと! ありったけ!! アタシはいま勝負をしにきている! 小手先のフレーズじゃ勝てない!!!)


バラバラバラバーーーー!!!


(まだ! 足りない!!)


バッバラババララーー!!


(もっとだ!!!)


バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラ!!!!


(よし!! 行けた!! このまま照月にパス!!)

158 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 00:06:59.43 ID:MxzcDZH50
(朧ちゃん! ナイスソロ! よし! 照月も...!)


ポポポロポロロロ


(アドリブソロなんてひさびさ... やっぱり楽しい!!)


ポポロロロロロ


(おっと! あくまでもメインはこの二人... さ! 清霜ちゃん! 見せて!)

(清霜の番!!)



バララーラ バララーラ!!


(朧ちゃんはきっと全力で勝負しにきたんだ...!)


バラバラバラバラバラバババ!!
バーラッバーラッバーララー


(私も本気を出す!!)

バラッババラバラー!!


(... 違う いつもはこんなのじゃない! どうして!?)

(何か... 何か違う... わたしだけ... 一人...?)


バラバーバラッバー!


(...違う! 朧ちゃんと勝負することに夢中になってた! もっと後ろをきかなきゃ!)


バラバーバー バラバラバラ!!


(よし! 噛み合った! 基本を忘れてた!)


バラバラバラッバーラッバババ!!!


(行ける! もっと! フレーズが溢れ出る!)



清霜の重厚な音がバッキングと噛み合う瞬間だった
この変化を朧は感じ取り、それと同時に笑みを浮かべる


(清霜と勝負してみてわかった、やっぱり...)

(ジャズって楽しい...!)


ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー

159 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 00:07:33.76 ID:MxzcDZH50
パチパチパチパチパチ
ヒューッ!!



会場は二人の話題で持ちきりだった
どっちが良かったか? どっちがうまかったか?
しかし当の二人にはここまでくれば些細な問題であった



「朧ちゃん... すごいね!!」

「... 最初勝とうって思ってた」

「すごかったね、朧ちゃん」

「でも途中でそんなこと忘れて無我夢中で、自分をさらけだすことに夢中になってて... アタシはまだまだだった 清霜は途中からバッキングちゃんと聴いてたでしょ?」

「わ、わかっちゃうんだ...」

「アタシは... まだまだ自分勝手だった だからこの勝負はまた今度やりたい」

「...いいよ! もっと一緒にやろう!」

「またね! いこう照月」


そう言い残し客席に戻った



ーーーーーーーー
ーーーーーーーー





客席で秋雲は二人を迎えていた
茶化すように彼女は言う

「うっすヒーロー、勝負はどうだった?」

「負けたつもりはないけど...」

「ほう?」

「次は勝つ」




第12話
終わり

160 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 00:11:02.92 ID:MxzcDZH50
今日はここまで
Giant Stepsですが前半はマイケルブレッカー、後半はボブミンツァーだそうです(多分)
マイケルブレッカーは超絶技巧のサックス奏者として有名でした(白血病で死去)、死の間際に出したアルバム「聖地への旅」は命を削るように紡ぎ出された彼の音を聴くことができます、是非どうぞ
161 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 13:39:25.84 ID:MxzcDZH50
第13話
Speak Like a Child/kin(←→)



8月13日 午前9時07分
鎮守府 埠頭


非番の時清霜はいつもこの埠頭で吹いている
どんなことがあろうと彼女はいつも吹き続け、四季をここで感じ取っていた
ただ時折ハプニングも起きる
この日は雲行きが怪しく、ついにはポツポツと雨が降り始めた
天気予報じゃ曇りのままだったのにと愚痴をこぼす清霜だったがそれ言っても仕方がなく、急いで雨の日に練習するトンネルまで逃げていった
トンネルに入るや否や雨はザアザアと振りはじめる


「うう〜傘持ってくるの忘れちゃた... 今日曇りだってきいたのに...」


不幸にも傘すらなく、しばらくここで練習する以外何もできなくなってしまった


「...ううん! ここで練習しよう!」


トンネルに彼女のサックスが響き渡る
162 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 13:40:02.04 ID:MxzcDZH50
午後12時22分
トンネル


「もう戻らないといけない時間なのにまだ雨降ってる... 」


雨は依然勢いを増しとても帰れる状況じゃなかった
そんな中傘を持ち清霜を迎えに来る者がいた
武蔵だった


「清霜、迎えにきたぞ」

「あ! 武蔵さん!!」


清霜の憧れでもありサックスを与えてくれた武蔵が来たと言うことに喜びを隠せなかった


「武蔵さんが来てくれるなんて... すごく嬉しい!」

「清霜がいつも外で練習してるのは知ってたからな、それでなかなか帰ってこないから心配したんだ」

「本当にありがとう! 武蔵さん!」

「さ、帰るぞ」

「あ、ねえ武蔵さん」

「ん?」

「武蔵さんがさ、昔サックスやってた頃のお話聞いてみたいなって... 少し」

「... 昔の話か」

「うん」

「いいだろう」




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163 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 13:40:42.78 ID:MxzcDZH50

「私がサックスを始めたのは10歳の頃だった、父親がサックス、母親がピアノをやってて自然とサックスをやりたいと思うようになっていたんだ」

「練習を重ねて海外の音大に入学した、そこでリシュリューと出会ったんだ 」

「彼女はすごかったよ、スタンゲッツが相当好きで音もフレーズもそっくりだった」

「私は彼女をライバルでもあり目標にしていた、よく一緒にライブもやってたさ」


武蔵は目を輝かせ、子供のように話していた


「初めてのライブ! あれは良かった! 私とリシュリューがバトルソロ(※)をしたんだが客はみんなスタンディングオベーションだ、何もかもが上手くいってた」

※バトルソロ 二人で交互にソロを回すこと

「お互い馬があっていつも将来はどうしたいとかどう言うのをやりたいか、Blue Noteでいつか演奏したいとか色々語り合ってた!」

「でもある日だった...」


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164 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 13:41:10.93 ID:MxzcDZH50
数年前
アメリカ ニューヨーク 武蔵とリシュリューのアパート


「アンナ(※)! 帰ったぞ! いいスコッチを差し入れでもらったんだ! 飲もうか!」

※リシュリューが艦娘になる前の名前と思ってください、今更ですが艦娘は人間設定です

「...」

「アンナ...? お、おい! どうした! なんかされたのか!!」

「私は... もうだめみたいね」

「何があったんだ!」

「私は... 古い人間だった...」

「な...」

「私はスタンゲッツが好きでこの世界に入った... なのにそれを根底から否定されたら... 私は何をしたらいいの?」

「...」

「『君の音は古すぎる』『君は場末のパブで演奏をしたいのか、第一線に立って世界で活躍したいのかどっちなんだ? 今の君の音はただの模倣に過ぎない』」

「そんな...」

「私は... 巨人の足跡をなぞっていただけだった...」



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165 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 13:41:37.97 ID:MxzcDZH50
「私もそんな彼女をみて、ジャズの世界で巨人を目指すのは無理だと思ったんだ」

「そうだったんですか...」

「二人で音大をやめて、新しいことをやろう、そこで艦娘募集の案内を見て今に至ったんだ」

「...」

「リシュリューは... 今でもサックスをやってるな」

「はい、教わりました」

「彼女の心は、今もきっとニューヨークにあるんだろうな... 」

「あの、武蔵さん」

「なんだ?」

「どうして私にそんな大事なサックス、渡してくれたんですか?」

「なんでだろうな... ただ...」

「ただ?」

「巨人になってくれると、直感で思ったんだ」
166 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 13:42:04.41 ID:MxzcDZH50
午後12時39分
トンネル外


先ほどまでの雨が嘘のように晴れ、水たまりが太陽を反射し、より一層輝きを見せた
二人は鎮守府へと帰ろうとしていた


「ねえ武蔵さん」

「なんだ?」

「ジャズの巨人になろうとして多くの人が失敗してきた... 私もなれるかどうかわからない」

「...そうか」

「でもね、私は毎日自分はなれるって信じて吹いてる」

「!!」

「だから、私 なるよ ジャズの巨人に」

「...ああ!! お前ならやってくれる!」


魂は引き継がれる、時代を超えて


第13話
おわり
167 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/19(月) 13:43:22.80 ID:MxzcDZH50
今日はここまで、清霜を主人公にしたのは真っ直ぐさを持っている子だと思ったからです
誰もがなれるわけではないジャズの巨人、本気で目指そうと思える、そんな子だと思ってます
ありがとうございました
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/23(金) 13:28:51.46 ID:59N+9OGiO
乙です
清ちゃんは真っ直ぐで我武者羅ってのがよく似合う
169 : ◆0rjCWOlcd8we :2019/08/26(月) 23:34:10.18 ID:EQy3bn6M0
大会近いので更新そこそこ遅れます... すみません
170 : ◆0rjCWOlcd8we [sage]:2020/05/10(日) 02:46:12.03 ID:EHuQkfzS0
色々あって更新止まってました、ごめんなさい
近いうちに更新します... テナー清霜描いたやつでお茶濁す
https://i.imgur.com/3ZvmsWg.jpg
https://i.imgur.com/KWpt3N4.jpg
171 : ◆0rjCWOlcd8we :2020/10/19(月) 11:57:09.75 ID:6wb3q4St0
久しぶりに更新します
172 : ◆0rjCWOlcd8we [saga]:2020/10/19(月) 11:57:50.83 ID:6wb3q4St0
人生は夢だらけ

8月14日 午前7時01分
鎮守府 食堂

鎮守府の朝は早い、海の安全を守るため今日もまた艦娘たちは働く
間宮さんのおいしい朝食を食べ1日の活力を生み出すのだった
そしてそんな食堂の隅に彼女たちはいた


「ねえねえ、摩耶さんと榛名さんってどうしてジャズ始めたの?」


唐突に話を振ったのは清霜だった
あまりにも突然のことで摩耶は思わず顰めっ面をする


「お前... ほんと唐突だな」

「昨日ね、武蔵さんとちょっと話してて... だからちょっとみんなのも聞きたくなったの」

「私もちょっと気になるかも...」


ガンビアベイも少し気になる様子であった
彼女はつい最近ジャズの世界へ足を入れたばかりであったため気になるのも当然だったかもしれない


「じゃあ私からお話ししましょうか」


そこで口を開いたのは榛名だった


「...榛名はなんというか、自分の演奏で喜んでもらえるのが嬉しかったの」

「小さい頃にお父さんが持ってたドラムのセットで遊んだことがあるの」


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173 : ◆0rjCWOlcd8we [saga]:2020/10/19(月) 11:58:37.98 ID:6wb3q4St0
数年前 


「ねえお父さん、これ何?」

「これか? これはドラムっていうんだ」

「ドラム...?」

「そうだ、叩いてリズムを...いやそれだけじゃない、世界を作る楽器なんだ」

「へえ...」

「叩いてみるかい?」

「うん!」

「よし! じゃあ今から組み立てるぞ! ちょと待っててな...」



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1週間後

初めてのお客さんはお父さんとお母さんだったわ


「パパ、ママ、行くよ!」

「いいわよ! あなた、ビデオ回ってる?」

「バッチリだ!」


ドツタンドツタン ドンタンドトタン...


「できた!」

「すごいな!もう8ビートが叩けた!」

「将来はドラマーね!」

「えへへ...」


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174 : ◆0rjCWOlcd8we [saga]:2020/10/19(月) 11:59:17.39 ID:6wb3q4St0
そこから数年後

「やっぱり君とプレーするの楽しいよ!」




「なあ、うちのバンド入らないか?」




「明日のライブも叩いてくれよ!」






でもある日ふと思ったの、毎日が変化がなくてただ惰性で叩いてる...

だから一回ドラムから離れて別のことをやろう... そこで艦娘として働こうとした...



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「でも結局は艦娘になってもまたドラムを叩いてた、やっぱり好きなのかもしれないわ 人とやるのが」

「そうだったんだ...」


清霜もまた人とやるのが楽しいという気持ちを持っていたからその気持ちが理解できていた
榛名の言葉にどこか親近感を覚えたのだった

「さ、次は摩耶さんの番よ」

「あ、アタシ!? いいよ別に...」

「摩耶さんの話聞きたいなー!」

「わ、私も...」

「ああん!?」

「ひいいい!! やっぱ無理無理い〜...」

「しゃーねえな...」

「え! 教えてくれるの!?」

「だいぶ昔の話だけどよ...」


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175 : ◆0rjCWOlcd8we [saga]:2020/10/19(月) 12:00:39.95 ID:6wb3q4St0
数年前

ちっちゃい頃両親ともに働いててさ、よく親戚の家に預けられてたんだよ
その親戚のおじさんがベーシストでさ、よくライブとかやってて連れて行ってもらってたんだ


「おじさん! アタシもその楽器やってみたい!」

「お、やってみたいかい? そうだな... もうちょっと大きくなってからかな」

「今やりたいの!」

「はは... 困ったな... よしそれじゃあ...」



「僕が弦を押さえてるから... そう! その弦を弾いて!」

「よいしょ!」

ボーン

「おじさん! 弾けた!」

「やったね! うん、将来きっといいベーシストになる!」

「ほんと!?」

「ほんとだとも、体のわりに君は大きな手をしてる... いい素質を持ってる」

「ベーシストかー... かっこいい!」

「ベースはね、バンドを支える一番大事な役割なんだ」

「うん!」

「だから君も、誰かを支える立派な人になってほしいな」



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176 : ◆0rjCWOlcd8we [saga]:2020/10/19(月) 12:01:10.68 ID:6wb3q4St0
「...でも現実は甘くなかった、アタシより上手い奴なんてごまんといた そこで一回心折れちゃってさ」

「でも栗田艦隊のみんながやるっていった時... またやってもいいかなって少し思って... また始めた」

「多分アタシはどこか未練があったんだろうなきっと」


そういって摩耶は口を閉じた


「2人ともまた戻ってきてくれてよかったな」


清霜が口を開く


「だってこうやって一緒にジャズができたんだもの」

「お、お前...」

「あら、清霜ちゃん嬉しいこといってくれるのね」

「わ、私も!!」


ガンビアベイが声を上げる


「私も... こうしてジャズ始められるようになって...だからみんなと出会えたというか... なんというか...」

「おうなんだよはっきり言えよ」

「ひいい... やっぱ無理ぃ〜...」

「おい、冗談だ アタシもこうしてなんだかんだジャズ続けられたのはすごい嬉しいと思ってるよ」

「榛名もです」

「清霜もよ!」

「み、みんな...」

「ま、このメンバーで色々やるの楽しいし、続けてこうぜ!」



4人が、また一つとなって動き出す
そんな予感を清霜は感じ取った



「あ、ごちそうさま おいガンビー 置いてくぞ」

「え、ま、待ってえ!」


第14話
おわり
177 : ◆0rjCWOlcd8we :2020/10/19(月) 12:03:47.04 ID:6wb3q4St0
一旦ここまで、久しぶりに書きました
最近自分は楽器から離れてしまいましたが何かをきっかけにまた戻るのもありなのではないかと思います
ありがとうございました
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 12:48:13.53 ID:hJ4ZvHr10
おー、久しぶりに更新来てた
乙です、かわいい
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