「路地裏で猫を撫でたら、不思議な場所についた」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/05/11(土) 18:10:33.78 ID:HFGR9fg7O

先ほどまで右手にあったふわふわとした感触はもうなかった。

突然路地のアスファルトが苔の匂いのする地面に変わり、薄汚いファミリーレストランの裏手は太い幹回りの木々に変わった。

「えっ?」

状況が分からず、思わず口から声が漏れた。
左手には書類の入った通勤用のカバン、恰好は退勤時のパーカーのまま。
傍らには、帰ってクリーニングしようと思っていた白衣が無造作に丸まっている。

幻覚でも見ているのだろうか?
見上げると、先ほどまで夕闇の色だった空には、木々の隙間から見える真っ白な太陽が昇っていた。


「おんやぁ、ヌシは誰ぞ?」

後ろから、中年男性を思わせる声がした。

ああよかった。
何か起こっているかさっぱりだが、とりあえず人がいる。

「すみません、ここっていったいどこなん――」

勢いよく振り向いて、とうとう彼は――望田大樹(モチダ ダイキ)は声が出せなくなった。


「ここはツンガリ森の湖側じゃがどうした、迷子かね?」

目の前には、かっちりとスーツを着こなした猫が二本足で立っていた。

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