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エミリーが忘れた日
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◆AsngP.wJbI
[saga]:2019/06/10(月) 20:29:55.03 ID:9pdDfgPfo
「──どうかな?」
「同感です」
隣にいた秋月律子に尋ねると、真剣なまなざしをステージに向けたまますっぱりと返された。
リハーサル前、エミリーのことも気になるから同行させてほしい、と頼まれたのでこうして一緒になって見てもらっている次第だ。
律子は過去プロデューサーとして活動していた経験もあるので、こういうときに意見をもらえるのは非常に頼りになる。
エミリーのパートを肩代わりした結果一番Aメロを全て伊織が歌っていることについては、
「悪くないですけど、おかげで息がちょっと続いてないかな。 肺活量とスタミナには少々難有りですからね、あの子は……」
サビ直前のロングトーンが切れるのが伊織だけ一瞬早かった、と俺には気づけなかった指摘もくれた。
そのことに感心していると「プロデューサー殿もまだまだですね」と茶化されてしまったが。
二番も終わり、間奏に入ったタイミングで後ろを振り返る。
ポツンと置き去りのパイプ椅子に捕まって観念したような表情を貼り付け、エミリーはただ黙りこくって伊織たちの歌を聴いているだけ。
あまり物寂しそうにしていたので声をかけてやりたかったが、何と声をかけていいのか──文字通りの意味で──分からなかったので、やめてしまった。
♪ウンメイならSo sweet きっと本物 迎えにいこう……♪
軽快なアウトロが止まり、一回目の通しリハが終わった。三人をこちらへ呼び寄せる。
「律子に見られながらリハやるなんて、随分懐かしいわね」
伊織がほんの少し乱れた呼吸を整えながらクスリと笑った。
「二人の反応を見てて、なんとなく分かったわ。 今ひとつって顔してたもの」
「すまないな。 別にお前たちに不満は何もなかったんだけど」
「そうね。 私も、エミリーちゃん抜きじゃ“なんか違う”って思ってたし」
莉緒も考えは同じのようだ。瑞希もそれに合わせてコクコクと頷いていた。
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