アスカ「かぐや様は告らせたい?」 弐

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72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/20(木) 23:52:35.42 ID:FkA5FUydO
アスカ「……あいつが恋愛に興味がないのなら、私だって惚れた晴れたに関心を抱かない」

アスカ「あいつが私を好きじゃないのなら、私だってバカシンジのことなんか好きにならない」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/20(木) 23:53:18.12 ID:FkA5FUydO
アスカ「あいつが誘ってこないなら」

アスカ「映画にだって、行きたくもない」

アスカ「……だから、これでよかったのよ」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/20(木) 23:55:17.72 ID:FkA5FUydO
アスカ「……つまり、あいつと私は水と油だったってわけね」

アスカ「一見、根っこが似ているようだけど」

アスカ「その実、とことんソリが合わない」

アスカ「世界中探し回って一人いるかいなかってレベルの、奇跡的な相性の悪さ(マリアージュ)よ」

アスカ「そういう奴を跪かせてこそ、私の優秀さが証明されると思ってたんだけどーー」

アスカ「……ま。私の惨敗みたいね」

アスカ「これに懲りて、勝手にくだらない勝負をあいつに持ちかけるのはもう金輪際止めにーー」



ミサト「ーーいい加減になさい」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/20(木) 23:58:11.07 ID:FkA5FUydO


アスカ「……」

ミサト「あんた、本気でそれでいいと思ってんの」

アスカ「それは……」

ミサト「ごちゃごちゃ理屈を並び立ててるけど、要はシンジ君を映画に誘えなかったのが悔しいだけでしょ?」

アスカ「……」

ミサト「あんたただ、自分の嫌な部分をシンジくんに責任転嫁してるだけじゃないっ」

アスカ「……そうよ。いけない?」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:02:07.38 ID:dK9WPJhfO
アスカ「さっき、バカシンジを『誰でもいい』から自分を見てもらいたがってるって言ったけど」

アスカ「ーーそれは私自身のことでもある」

アスカ「……私はバカシンジと違って『誰でも』じゃなくて『誰か』に見てもらいたい。そうじゃなきゃ嘘だと思う」

アスカ「でもその『誰か』に『誰でも』なれてしまうなら」

アスカ「つまるところ、バカシンジと同じなのよね」

ミサト「アスカ、それは……」

アスカ「だって、仕方ないじゃない。私にも分からないんだもの」

アスカ「その『誰か』が本当にソイツじゃなきゃ駄目なのか。それともソイツ以外の誰でもいいのか」

アスカ「結局のところ」

アスカ「碇司令の代わりに『誰でも』いいから他人を求めるシンジのように。私が『誰か』を求めるのは、代償行為でしかなーー」

ミサト「アスカ」ギュッ

アスカ「……ミサト?」



ミサト「いいのよ、それで」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:06:03.07 ID:dK9WPJhfO
ミサト「私もね、これでも昔好きな人がいたの」

ミサト「でもある日ふと気づいたわ」

ミサト「私はその人のことが好きだったんじゃなくてーーただ父親の面影を重ねていただけだったんだ、って」

アスカ「……どうなったの?」

ミサト「別れたわ。別れて遠ざけた」

ミサト「自分が嫌になったのよ」

ミサト「その人そのものを見ていない自分が、その人そのものに見られたいと思えていない自分が、気持ち悪くて仕方がなかったの」

アスカ「……」

ミサト「でも、失ってから気付いたわ」

ミサト「ただ、面影を重ねてただけじゃなかったんだな、って」

アスカ「? どういう、こと?」

ミサト「人は誰かの代わりになんてなれっこないってことよ」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:09:41.21 ID:dK9WPJhfO
ミサト「……正直なところ、私はあなたたちの保護者代わりにはなりきれてない。
 アスカが私を、保護者として認めてないことも、ちゃんと自覚してる」

アスカ「!」

ミサト「でもだからこそ出来ることもある」

ミサト「今こうして『保護者』ではなく『葛城ミサト』としてあなたに接してるように、ね」

ミサト「つまりそういうことなの」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:11:06.66 ID:dK9WPJhfO
ミサト「人が誰かの代わりになることも、人を誰かの代わりにすることも、最初っから出来っこないの」

ミサト「出来もしないことに嫌悪感いだいたって、仕方がないのよ」

アスカ「……」

ミサト「ーーそれにあなたはシンジくんのことがちゃんと好きよ、私が保証する」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:12:12.67 ID:dK9WPJhfO
ミサト「だからあなたも」

ミサト「不必要に自分を責めたりしないでいいの」

ミサト「ましてや、好きな相手を貶すような真似しちゃダメ。絶対に、ダメなんだからっ」

アスカ「ミサト……」











アスカ「でもシンジの悪口を言えって言い出したのはミサトよね?」

ミサト「…………」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:15:20.91 ID:dK9WPJhfO
アスカ「さっきも責任転嫁がどうとか言ってくれたけど、そもそもミサトが責任はシンジにあるとか言い出」

ミサト「ーーまだそうやっていい訳するつもり?」

アスカ「えっ」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:18:15.42 ID:dK9WPJhfO
ミサト「そりゃ都合の悪いことを全部人のせいにしてれば楽でしょうけどね」

ミサト「あんたはほんとにそれでいいのっ」

ミサト「嫌なことから目を逸らして、逃げて、誤魔化してーー中途半端が一番よくないわよ!?」

アスカ「……あっ、はい」





ミサト(よし誤魔化せた)
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:27:37.43 ID:dK9WPJhfO
ミサト「ともかく」

ミサト「あなたは少し、シンジ君に対して強情っぱりが過ぎるわね」

アスカ「それはバカシンジが逐一私のカンに触るから……」

ミサト「そういうのを強情っぱりって言ってるの」

アスカ「うっ……」

ミサト「ーー来週の日曜日まで、まだ時間があるわ」

ミサト「このペアチケットはあなたにあげる」

アスカ「!」

ミサト「その代わり、来週までにきちんとそれをシンジくんに渡せるようになんなさい」

アスカ「……」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 00:33:54.31 ID:dK9WPJhfO
アスカ「そんなこと言われたって……無理なもんは無理なのよ」

ミサト「たしかに、人は急には変われない。だからといって諦めるの?」

アスカ「じゃあ、どうしろってのよ」

ミサト「電話でダメなら直接誘うのはどう?」

アスカ「…………無理ね。電話越しですらあのざまよ? 直接あのバカの顔を見ようものなら、腹わた煮えくり返って平常心保てなくなるわ」

ミサト「そうかもね、それなら練習すればいいのよ」

アスカ「練習って、何を? どうやって?」

ミサト(シンジ)「こうやるのさ」スッ

アスカ「!?」
85 : ◆MzoIYE0fBBRx [saga]:2019/06/21(金) 16:15:21.96 ID:nfJk4B2IO
ミサト(シンジ)「どうしたんだい、アスカ。鳩が豆鉄砲食らったような顔をして」

アスカ「…………なに、やってんの?」

ミサト(シンジ)「ミサトさんが僕のお面を付けたみたいだよ」

アスカ「どこから持ってきたの、その、バカシンジのアホ面がプリントされたお面」

ミサト(シンジ)「有能なミサトさんにかかれば、こんなの一瞬で用意出来るんだってさ」

アスカ「その口調、バカシンジの真似してるつもり?」

ミサト(シンジ)「そうさ」

ミサト(シンジ)「『碇シンジ』の顔を見て平常心を保てなくなるというのなら」

ミサト(シンジ)「この僕を『碇シンジ』に見立てて、素直に話す練習をするんだ」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 16:58:16.06 ID:nfJk4B2IO
アスカ「あ ほ く さ」

アスカ「考えが安直過ぎ」

アスカ「いくらシンジの口調を真似て、仮面をつけたところで、中身はミサトじゃない」

アスカ「……バカシンジにしては喋り方が軽快過ぎるし」

アスカ「ちょっとでも似せる気があるなら、もっと弱々しく喋って」

アスカ「イメージは産まれたての子鹿ね。ちょっと庇護欲わきそうな感じでお願い」

アスカ「あと服もミサトがいつも着てるものじゃ雰囲気でないわ」

アスカ「……シンジといえばスクールシャツよね。あいつ、私服ダサいし」

アスカ「ちょっと、あいつの部屋からスペアの制服拝借して来るわ」ドタバタ



ミサト(シンジ)「…………アスカが予想以上にノリノリで、ぼくも嬉しいよ」

アスカ「いいからほら、これ着て。はやく」グイグイ



アスカ「うん、まあまあね。これはそこそこのクオリティのバカシンジだわ」

ミサト(シンジ)「最終的にさらしまで付けさせられるとは思わなかったわ……」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 17:09:53.26 ID:nfJk4B2IO
アスカ「ーーよし。このミサト(シンジ)を映画に誘えばいいのね。楽勝よ」

ミサト(シンジ)「……いや、気が変わった」

アスカ「はい?」

ミサト(シンジ)「ここまでさせられたんだ。そのくらいじゃ割にあわない」

アスカ「割にあわないって言われても……どうすればいいの?」

ミサト(シンジ)「僕に”好き”って告白してみてよ」

アスカ「はぁ!?」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 17:15:33.10 ID:nfJk4B2IO
アスカ「な、なんで私がシンジに告白しなくちゃならないのよっ」

ミサト(シンジ)「いいじゃないか。僕はミサトさんなんだから」


アスカ「ややこしいわっ」

アスカ「……どちらにせよ。わたしはバカシンジに告るつもりはないの。逆ならともかく、ね」

アスカ「だから練習する必要もないわ」


ミサト(シンジ)「アスカ、もしかしてビビってるの?」

アスカ「もうその手には乗らない」

ミサト(シンジ)「……そっか。僕のことが好き過ぎて、上手く言える自信がないから。そうしてチキってるんだね」

アスカ「何言ってーー」


ミサト(シンジ)「だってそうでしょう? そもそもは僕を映画に誘えなかったから、こうして練習してるわけじゃない?」

ミサト(シンジ)「そんなアスカに、告白なんて出来るはずがなかったんだ」

ミサト(シンジ)「ほんっと。アスカってば普段は凜としてるのに」

ミサト「一皮剥いたら、女々しいというか、いじらしいというか」


ミサト(シンジ)「ーーお可愛いよね」


アスカ「っ〜〜〜〜!」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 17:16:49.76 ID:nfJk4B2IO
アスカ「いいわよっ。やればいいんでしょ。やってやるわよ! 余裕よそんくらいっ」

ミサト(シンジ)「じゃあ台詞は僕が指定するね」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 17:22:32.02 ID:nfJk4B2IO
ミサト(シンジ)「『わたしは シンジのことが 好きです』」

ミサト(シンジ)「言える?」

アスカ「……何を言わされるのかと思いきや。意外と味気ないのね」

ミサト(シンジ)「シンプルイズベストだよ。エモくはないけどね」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 17:29:58.02 ID:nfJk4B2IO
アスカ「さすがにこれくらいなら楽勝よ」

アスカ「練習にもならないわ」

ミサト(シンジ)「じゃあ、試しに言ってみてよ」

アスカ「ええ」



アスカ「わたしは」

アスカ「シンジのことが」

アスカ「す……」

アスカ「すっーー」

アスカ「すぅぅぅっーーーー!!」








アスカ「しゅきですっ!!!!」



アスカ「……」

ミサト(シンジ)「……」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 17:31:15.84 ID:nfJk4B2IO
アスカ「よし、成功ね」

ミサト(シンジ)「いや、失敗だよ」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 17:35:37.53 ID:nfJk4B2IO
アスカ「なんでよ。ちゃんと言えたじゃない」

ミサト(シンジ)「言えてないよ。全くちゃんとしてないよ」

アスカ「いや、ちゃんと言えた」

ミサト(シンジ)「言えてない」

アスカ「言えてた」

ミサト(シンジ)「『しゅきです』なのに?」

アスカ「……」



アスカ「でもちゃんと言えてたから。そういうことになったから」

ミサト(シンジ)「逃げちゃダメだ」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 17:43:03.24 ID:nfJk4B2IO
アスカ「……言い分がある」

ミサト(シンジ)「いいよ、言ってみて」

アスカ「あんたはミサトでしょ?」

ミサト(シンジ)「今は『碇シンジ』って、ていだけどね」

アスカ「それがいけないのよ」

アスカ「ミサトをシンジと呼ぼうとするから、混乱して噛んじゃうの」

ミサト(シンジ)「じゃあどうしろと?」

アスカ「そのお面、とって」

ミサト(シンジ)「えっ」

アスカ「あと、さらしと制服脱いで普段着に着替えて」

ミサト(シンジ)「えっ」

アスカ「そしたら次は『わたしは ミサトのことが 好きです』に台詞を変えてリトライするから」

ミサト(シンジ)「あんた、この練習の趣旨覚えてる?」



アスカ「よしっ、今度こそ上手くやったるわ」

ミサト「…………何やってんだろ、私」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:04:20.76 ID:nfJk4B2IO
アスカ「わたしは」

アスカ「ミサトのことが」

アスカ「す……」チラッ

ミサト「……」ジーッ




アスカ「すっーー!」チラッ

ミサト「……」ジーッ




アスカ「しゅきですっ!!!」



アスカ「……」

ミサト「……」



アスカ「どうしてこうなるの?」

ミサト「私が聞きたい」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:06:15.63 ID:nfJk4B2IO
アスカ「言い分がある」

ミサト「どうぞ」

アスカ「ミサトいま、私の顔をジーッと見てたでしょ」

ミサト「そりゃ見るわよ」

アスカ「それがいけないのよ。顔を見合わせながら小っ恥ずかしいこと言おうとするからいけないの」

ミサト「いけないのはあなただと思うわ」

アスカ「なら次は電話越しにーー」

ミサト「お願いだから趣旨を思い出して」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:13:20.98 ID:nfJk4B2IO
ミサト(……なるほどね)

ミサト(この子、シンジくんが相手だからああなる、ってだけじゃなくて)

ミサト(他人に好意を伝えることそのものに慣れてないんだわ)

ミサト(ーー表面的ならまだしも)

ミサト(それより内には決して誰にも踏み込ませない)

ミサト(『私は一人で生きていける』か)

ミサト(この子の経歴を考えたら仕方のないことだけど……)


ミサト「……はぁ」


ミサト(ほんとうに、根っこはシンジくんに通ずるものがあんのねぇ)
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:16:26.58 ID:nfJk4B2IO
ミサト(でも、まあ)

ミサト(私がこの子らと同い年だった頃のありさまを考えたら)

ミサト(……とても人のことは言えない、か)
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:18:24.42 ID:nfJk4B2IO
ミサト「ーーけどそれはそれ、これはこれよ」

ミサト「あんたね。私にすら”好き”と言えないようじゃ、とてもシンちゃんに告白できないわよ」

アスカ「す、するつもりないし。出来なくてもいいわよっ」

ミサト「あら。無敵のアスカ様が情けないこというのね」

ミサト「”出来ない”のと”しない”のとじゃ、大違いだと思うけど?」

アスカ「うっ……」

ミサト「ほら、私を練習台にしていいから。もうちょっとトライしてみましょ?」

アスカ「……わかった」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:22:37.92 ID:nfJk4B2IO
Take1

アスカ「私は」

アスカ「ミサトのことが」

アスカ「……しゅき」


ミサト「もう一回」



Take5

アスカ「私は」

アスカ「ミサトのことが」

アスカ「すっ……しゅき」


ミサト「惜しいわね」



Take23

アスカ「私は」

アスカ「ミサトのことが」

アスカ「す、す、すっ……しゅきっ!」


ミサト「もうひと押しっ」



Take?

アスカ「私は」

アスカ「ミサトのことが」

アスカ「しゅ、しゅ、しゅっ……しゅきぃぃぃっ!」


ミサト「……」




ミサト「悪化してるじゃないっ!!」バンッ
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:25:29.75 ID:nfJk4B2IO
アスカ「な、何いってんのよ。私だってちょっとずつ進歩してるわよ」

ミサト「ーー無駄だった。今の努力と時間はぜんぶ無駄だったんだわ……ダメな子に何をやらせてもダメなのよ」

アスカ「や、やめなさいよ。そんな見捨てるようなこと言わないでっ」

アスカ「私はただ『しゅき』って言おうとしたら『しゅき』になるんだけで……ってあれ?」


ミサト「ほらもう、ふつうに『好き』っていうことすら出来なくなってるじゃないの!」バンッ,バンッ
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:27:48.41 ID:nfJk4B2IO
アスカ「なによっ。これも”やれ”って言い出したのはミサトじゃないっ! ミサトってほんとに無責任ねっ」

ミサト「だから今こうして責任とろうとしてるでしょ!」

アスカ「じゃあどうしたらいいのか、もっと具体的に指示しなさいよ!」

ミサト「『私は』『ミサトが』のくだり、は無駄なのよっ。毎回律儀に言わなくていいからっ!」

アスカ「しゅき、しゅき、しゅき、ミサトしゅきっーーはい、これでいい!?」

ミサト「いいわけないでしょ! 『好き』って言えてないじゃないっ」

アスカ「言えないから困ってんのよっ!」バンッ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:30:56.50 ID:nfJk4B2IO
アスカ「しゅき、しゅき、ミサトしゅきっ!」

ミサト「もっと感情を込めて!」


アスカ「しゅき、しゅき、ミサトしゅきぃぃぃ!」

ミサト「もっと!」

ミサト(あれ)


アスカ「しゅきぃぃ、ミサト大しゅきぃぃ!」

ミサト「も、もっと!」

ミサト(何これ)


アスカ「しゅきいぃぃぃ、ミサトしゅきなの!」

ミサト「も、もっと。もっとお願いっ!」

ミサト(すっごい、気分がいい)パァァア


ーー葛城ミサト 29歳
思い返せば、シンジとアスカの保護者を請け負ってこの方、二人に真っ正面から好意を伝えられたことなど、指折り数えるほどしかなかったことに気がつく!
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:33:06.18 ID:nfJk4B2IO


ーー玄関

<シュキィィ??ミサトダイシュキナノォォ??
<モット!モットヨアスカ??


シンジ「……」←電話の内容が気がかりだったのでダッシュで帰って来た


<シュキィィィィ??ミサトシュキィィィィ??
<イイワアスカ!モットォ!モットイッテェ??


シンジ(いまアスカの部屋でとんでもないことが繰り広げられているーー!?)



本日の勝敗

ミサトの勝ち!(ある意味告らせることに成功したため)
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:34:26.60 ID:nfJk4B2IO


ーー玄関

<シュキィィ!ミサトダイシュキナノォォ!
<モット!モットヨアスカ!


シンジ「……」←電話の内容が気がかりだったのでダッシュで帰って来た


<シュキィィィィ!ミサトシュキィィィィ!
<イイワアスカ!モットォ!モットイッテェ!


シンジ(いまアスカの部屋でとんでもないことが繰り広げられているーー!?)


本日の勝敗

ミサトの勝ち!(ある意味告らせることに成功したため)
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:35:29.85 ID:nfJk4B2IO
文字化けしたので>>104>>105
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:36:13.46 ID:nfJk4B2IO
おまけ

シンジ「アスカって、その……ソッチの人なの?」

アスカ「は?」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:36:53.24 ID:nfJk4B2IO
おまけのおまけ

ーー後日・ネルフにて

加持「好きだ」

ミサト「……はぁ」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:37:53.24 ID:nfJk4B2IO
ミサト「……はいはい。どうせ他の女にも言ってるんでしょ。忙しいから後にして」カタカタ

加持「好きだなんて歯の浮きそうなこと言えるのは、葛城だけさ。君以外に言ったことなんかないよ」

ミサト「そのセリフからして浮いてるものね」カタカタ

加持「ははっ、一本取られたな」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:40:53.69 ID:nfJk4B2IO
加持「おや、嫉妬かい? やっぱり脈ありとみて良さそうだな」ハハハ

ミサト「……」イラッ

加持「ところで葛城。来週の日曜日の件、考えてくれたか」

ミサト「……ああ、あんたのくれた映画のペアチケットなら、もうないわよ」

加持「なに?」

ミサト「今更あんたなんかと恋愛映画なんて観に行くもんですか。忌々しいから、破いて捨ててやったわ」

加持「そうか。時に葛城。お前、別の恋愛映画のペアチケットを裏ルートで買ったそうじゃないか。それも飛び切りの高値で」

ミサト「……なんでそんなん知ってんの」

加持「俺の仕事をご存知ないのかな」

ミサト「職権乱用」

加持「ーーもしかしてそのペアチケット。俺に渡すつもりで買ったんじゃないか?」

ミサト「……残念ながら。それも忌々しいから破り捨てたわ」

加持「自分で買ったのにか!?」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 18:44:26.30 ID:nfJk4B2IO
ミサト「私のものをどう扱おうが勝手でしょ。さっ、用がないなら向こういって」

加持「用ならちゃんとあるんだよな。これが」

ミサト「用があるなら、手短にお願い」

加持「仰せのままに」スッ

ミサト「…………なに、これ」

加持「ライラックの花束さ。いい香りだろ?」

ミサト「それ、アスカがシンジ君に買って来いって言ったやつ……」ボソッ

加持「知ってるのか? らしくないな。花より団子ってのは葛城のためにある言葉だろうに」

ミサト「うっさいわね、バァカ」

ミサト「……で。これはなに?」

加持「プレゼントさ」

ミサト「それこそらしくないわね。あんたが花束なんて」

加持「なに。とある少年から、『ライラック』の花言葉について相談されてな。それで調べてみたら、中々にいい言葉だったんで、俺も葛城に渡すことにしたのさ」

ミサト「……とある少年って、もしかしてシンジくん?」

加持「悪いな。クライアントの秘密は、漏らさない主義なんだ。信用第一の商売なんでね」

ミサト「……なぁーにが商売よ。この自由人気取りが。ほんとのあんたは、二人の上司に板挟みにされた中間管理職のおっさんみたいなもんじゃない」

加持「ははっ、手痛いところをついてくるなぁ」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 19:08:28.08 ID:nfJk4B2IO
ミサト「それで。ライラックの花言葉、ってなんなの?」

加持「『謙虚』『無邪気』『友情』」

ミサト「…………ナニソレ。よーするに、お友達でいましょうってこと? それ、こっちの台詞なんだけど」

加持「そう心配するなよ、葛城。ライラックの花言葉は後二つある」

加持「『恋の芽生え』『初恋』だ」

ミサト「……ふうん?」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 19:09:15.16 ID:nfJk4B2IO
加持「『謙虚』な少年と『無邪気』な少女。二人の仲は『友情』によって繋がれていた」

加持「しかし『友情』はやがて『恋の芽生え』を促し最後には『初恋』に成る」

加持「ーーーー実にあの二人にぴったりな花言葉だとは思わないか?」


ミサト「……クライアントの秘密は守る主義じゃなかったの?」

加持「誰とは言ってないだろう? 要は個人名を出さなきゃいいのさ」

ミサト「信用第一の名折れったらないわね、ったく」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 19:11:00.17 ID:nfJk4B2IO
ミサト「……なるほどね。アスカも苦し紛れにしちゃあ、ロマンチックな感情の伝え方するじゃない。ちゃんとシンジ君に伝わってるようだし」

加持「偶然じゃないのか? ま、俺は男の子の方から断片的に状況を聞いただけなんだが。とても意図的にやったようには……」

ミサト「偶然なんかじゃないわよ、あの子はこれを狙ってやった」

加持「どうして分かる?」



ミサト「女の勘よ」

加持「……なるほど。そりゃ間違いないな」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 19:56:52.57 ID:nfJk4B2IO
ミサト「でもそこに気が付くシンジくんも大したものね。そんなに人の心の機微に聡い子じゃないはずなのにーー」

ミサト「……なんだ。じゃあ、あの子、ちゃんと『他人に興味』持てるんじゃない。やっぱりちょっと『鈍感』なだけだったんだわ」クスッ

加持「なんの話だ?」

ミサト「……昔から。その人のことを一番正しく理解している他人は『恋人』よりも『保護者』に決まってる、って話よ」

加地「そうかな? 少なくとも俺は、君の親父よりも君の寝相の悪さを熟知しているつもりだが」

ミサト「黙れバカ」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 19:58:11.06 ID:nfJk4B2IO
ミサト「ーーして、この花束を私に渡す心は?」


加持「そのままの意味だよ。『無邪気』な君に、実は『謙虚』な君。その両面に『友情』を感じていたかつての俺は、いつしか『初恋』に落ちてしまったっていたって昔話さ」


ミサト「…………うげぇ」

加持「なんだよその反応、傷つくな」

ミサト「反応してやるだけありがたく思いなさいよ。ぬわぁにが、初恋よ。適当ほざいてんじゃねぇっての」

加持「……それは本気で傷つくぞ。事実、あれは初恋だったんだからな」

ミサト「……え?」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 19:59:52.63 ID:nfJk4B2IO
加持「言ったろ? 浮ついたことを言えるのは葛城だけだって。俺が恋をしたのは最初から最後まで、ただ葛城一人だよ」

ミサト「……よくもまあ、そんな小っ恥ずかしいこといえるわね。この部屋、監視されてるのに」


加持「なあに、すでにダミーを走らせてある。映像も音も、な」

加持「この部屋の様子を覗き見出来るのは、特殊回線を握ってる碇司令くらいなもんだよ」

加持「そして碇司令はここを覗き見するほど暇じゃない」


ミサト「……ばーか。アスカじゃあるまいし。んな回りくどーいアプローチが許されんのは、若い子だけよ。あんたがやるとただただみっともないわ」

加持「恋は盲目っていうだろ? それだけ葛城の魅力にやられちまってるってわけだな、今の俺は」

ミサト「…………ほんと、バカね」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 20:01:28.19 ID:nfJk4B2IO


ゲンドウ「……レイ」

レイ「はい」

ゲンドウ「何をしている」

レイ「加持一尉と葛城三佐のやり取りを覗き見しています」

ゲンドウ「…………そうか」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/21(金) 20:03:25.75 ID:nfJk4B2IO
レイ「碇司令。一つ、質問があります」

ゲンドウ「なんだ」

レイ「なぜ葛城三佐は、さきほどからしかめ面をしながら顔を綻ばせているのですか?」

ゲンドウ「……」

ゲンドウ「……気になるのか?」

レイ「はい」

レイ「私の友人も、よく似たような表情をするので」

ゲンドウ「……」

ゲンドウ「……お前には、まだはやい」

レイ(人の心ってむずかしい)


終劇
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/21(金) 20:04:53.90 ID:nfJk4B2IO
終わります
読んでくれた人いたら、ありがとう
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/21(金) 20:53:11.09 ID:dvXdXrCDO
おつ
いいなこれ…すごくいい
もう皆可愛い
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