八九寺真宵「はにかみましょうか?」阿良々木暦「是非お願いします!」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 21:00:13.35 ID:p06yTTmjO
梅雨時に連想する草花を尋ねられた際に、まず初めに紫陽花を思いつく人が大多数を占めるであろうことは、想像に難くない。

かくいう僕もそのひとりではあるものの、紫陽花に対してそこまで思い入れがあるわけではないので、むしろ紫陽花のイラストとセットで描かれることの多い蝸牛にこそ、目を惹かれる。

「ふむふむ。ちなみに阿良々木さんは、実際に紫陽花の葉っぱの上に蝸牛が這っている姿を、その目で見たことがあるのですか?」
「そう言えば、実際に見たことはないな」
「でしょうね。紫陽花の葉には毒がありますので」

食べられもしない毒の葉の上をわざわざ這いずり廻るほど蝸牛は暇ではありませんよと、蝸牛の怪異となり、そして今は神となった、八九寺真宵が得意げに薀蓄を聞かせてきた。

とはいえ、後から調べたところ必ずしも全固体に毒が含まれているわけではないらしいので、あくまでも一般論として、僕は受け止めた。

「じゃあ、お前も紫陽花が嫌いなのか?」
「私は葉っぱなんて食べないので、特別に好きでも嫌いでもありませんが、その紫陽花のお花を見て阿良々木さんが私の元に足を運ぶきっかけとなった今ならば、大好きになれそうです」

なんだか紫陽花に手柄を全て取られた気分だ。
別にきっかけなんかなくたって気が向いたらいつでもこの北白蛇神社に足を運ぶ敬虔なる信者であるこの僕を、今と同じように目一杯の愛を込めて大好きだと言って貰いたいものである。

「あらあら、不満そうですね、あらあらさん」
「あらあらなんて普段言わないような台詞をわざわざ前に付けてまで名前を間違えるのはやめろ。僕の名前は阿良々木だ」
「失礼、かみました」
「違う、わざとだ」
「はにかみましょうか?」
「是非お願いします!」
「にぱっ!」

にぱっと八九寺真宵の可憐な笑顔が咲き誇る。
嬉しそうにはにかむ幼い少女が神様だと言うことも忘れて、僕はお持ち帰りしそうになった。

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