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絵里「例え偽物だとしても」

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920 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:20:49.34 ID:raJY7OxV0
絵里「ゴールド免許っていくら運転が酷くても一度も運転しなきゃゴールド免許じゃない!!」

鞠莉「教習所の時は超真面目に普通の上位免許を取りに行ったんだからゴールド免許なのよ?」

絵里「というか鞠莉の年齢じゃゴールド免許取れなくない!?」

鞠莉「それは気のせいデース!」


絵里「何なのよそれはぁ!!!」


絵里(一応信号は守ってはいるけどあまりにも荒い。こんな破天荒なことに付き合わされてると今まで鞠莉を殺すために色々してきた自分が本当に馬鹿みたいに思えてくる)

絵里(ルビィはルビィでおそらく鞠莉に対して本来とは違う意味で恐怖を植え付けられたでしょうね……)
921 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:24:23.38 ID:raJY7OxV0
絵里「真姫!聞こえる!?」

ブウゥウウゥウン

絵里「鞠莉うるさいわよ!」

鞠莉「エンジン音は消せないのよ!」

真姫『…どういう状況?』

絵里「話は後!とにかく花陽のライブ会場に来て!」

鞠莉「その無線私にも繋げない?」

絵里「え、でも鞠莉って…っ!?」

絵里(赤信号で止まってるのをいいことにイヤホンをかけパソコンを用意してる鞠莉を見て言葉を失った、事故を起こせば終わりなのにどんだけリスキーなことをしてるのよ…)

鞠莉「それで繋げない?」

絵里「わ、分かったわ。この携帯の電波に入ってきて」

鞠莉「了解よ」カタカタカタカタ

絵里(ふざけながら真面目にパソコンをタイピングしてるのを見てると鞠莉という人物がよく分からなくなる。最上階に行ってから鞠莉に引っ張られっぱなしだ)

絵里(……でも、不思議と悪い気はしなかった。一緒に行動しててこの何も企んでなさそうな純粋な感じはむしろ心地いい感じがして、鞠莉は私で私は鞠莉————同じ存在だからこそ裏に何もないことが分かってしまって鞠莉への信頼はこの短い時間でとても厚くなったような気がした)
922 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:27:13.69 ID:raJY7OxV0
鞠莉「hello!」

真姫『は、はろー……』

鞠莉「私たちは今花陽というアイドルのライブ会場に向かってるの」

絵里「花陽がスナイパーに狙われてるかもしれないの、だから急遽だけど花陽を助けにいくわよ」

ことり『花陽?アイドル?それってあの高校一年生の?』

絵里「ええ、昔助けてもらったことがあるの。だから今度は私が花陽の事を助けてあげたいの」

穂乃果『…それはいいけど、鞠莉ちゃんは信用出来るの?私にとって鞠莉ちゃんと戦線を共にするっていうのはにわかにも信じ難いことなんだけど』

真姫『…ええ、それは正直私も思う』


真姫『今まで敵だったのに急に味方になるのはなんかおかしいんじゃない?』


鞠莉「それは………」

絵里「…いや……」

真姫『え?何?』


絵里「今は鞠莉を信じていいわよ」


鞠莉「絵里……」

絵里(私は鞠莉の事を知ってる、もし鞠莉が私であるなら私と戦線を共にした時点で裏がない。それは私がそうだから、私が鞠莉であるなら鞠莉は私と同じ気持ちを抱いてるはずだから)

絵里(……今の鞠莉は信じていいでしょう)
923 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:28:23.43 ID:raJY7OxV0
穂乃果『…分かった、じゃあその花陽ちゃんって子のライブ会場に向かえばいいんだね?」

鞠莉「いや、待って」

鞠莉「向かうならこっちね」

絵里「そこは……」

絵里(鞠莉がパソコンを使って真姫のパソコンにどこかの位置情報を送ってた、鞠莉のパソコンを確認すればライブ会場周辺のいくつかのビルに赤点がついてた)

真姫『これは…?』

鞠莉「その殺し屋がいると思わしきビルよ、あなたは分からない?」

ルビィ「う、うーんと……階段から見たのが西で、飛び降りて向かった方も西だから……」

ルビィ(思い出して…!)

ルビィ(階段を上ってる時に見えた光…近くに大きなアンテナがあって…かなり高いビルで…でも距離はそこそこあって…だけど丁度ライブ会場が見えるようにビルが並んでて……)

ルビィ「………」

ルビィ(ライブ会場があっち、ならそのスナイパーがいるビルはどう考えても向こう……)

ルビィ「……!」


ルビィ「あれ!あれだよあれ!!」


鞠莉「あれ…ってあれね!」
924 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:29:36.22 ID:raJY7OxV0
絵里「じゃあこのマップでいうと…ここよね!」

鞠莉「ええ!聞いて!このマップだとライブ会場が中央辺りにある緑色の建物なの、その緑色の建物から西一直線にあるビルの赤点!そこに向かって!」

真姫『わ、分かったわ』

穂乃果『行ってどうする?そのスナイパーを止めればいいの?』

鞠莉「止めたいけど止めれるかしら…」

真姫『この距離ならすぐにつくわ、とりあえずいくしかないわよ』

ことり『そうだね』


ルビィ「任せて、ルビィが時間を稼ぐよ」


カチャッ


絵里「…!」

絵里(オープンカーで、しかも高速で走ってるというのにルビィはトランクフードに片足を乗っけてそのスナイパーがいると思わしき屋上に向かってスナイパーを構えた)

絵里(さっきまで絶叫してたのにスナイパーを持つと急に変わるのは何ともルビィらしくて、ルビィのスナイパーの射線を確認をしてても射線がぐらぐらと揺れることなくレーザービームのようにただ一点を貫いていた)
925 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:30:33.88 ID:raJY7OxV0


鞠莉「こ、ここから撃つつもり!?」


絵里(そして流石に鞠莉もルビィ以上のスナイパーテクニックを見たことがなかったのでしょう、目を丸くして驚いてた)

ルビィ「すぅ……」


ドォンッ!


ルビィ「はぁ………」

ルビィ「ちょっと屋上から飛び出してたスナイパーの銃口にヒットさせたよ、でも当たりが浅いから多分壊すことは出来てないと思う…」

鞠莉「い、今のを当てたの…」

絵里「さ、流石ルビィね…」

ルビィ「これで少しは下へ意識を向けることが出来たはず」

ルビィ「後はお願い!」


真姫『ええ、分かったわ』

ことり『もちろんだよっ』

穂乃果『任せて!』

926 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:31:10.58 ID:raJY7OxV0
絵里「…あれ?そういえば曜は?」

ことり『あ、えっとね……』

絵里「…?」

真姫『ちょっと大怪我をしたの、今喋るのもおそらく辛いだろうけど死んではいないわ、安心して』

絵里「そ、そうなの…」

ルビィ「曜さん……」

絵里「…まぁ、とりあえずお願いね」

真姫『ええ、了解よ』

ピッ

絵里「…とんでもないことになってるわね」

絵里(無線がきれると悟りだす私の心)

絵里(私鞠莉と仲良くなるためにあそこに行ったわけではないんだけど…なんて思っちゃって、しかもその後にみんなして花陽を助けにいくんだから想像も出来ないわよ、曜も喋るのも辛くなるくらいに大怪我したって言ってるし)
927 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:32:04.00 ID:raJY7OxV0
ルビィ「…花陽さんを助けた後、ルビィたちと鞠莉さんは……どうなるの?」

絵里「……まだ、決まってないかしら」

絵里(…正直言って、この結果は私の予想していなかった未来だ)

絵里(もし、世界がいくつもあって同じ世界の同じ私がいたとしたらこの未来はきっと…そう多くはないはずよ)

絵里(鞠莉を殺す為に動いてきたのに、鞠莉が仲間のような存在になってしまっては私は不完全燃焼だし、心が晴れたとは言えない)


絵里(だけど、鞠莉を殺して私の心が晴れるわけじゃない)


絵里(ここから色々あったとしても、また平和に暮らすのが一番なのかしら)

絵里(……いや…ここで色々してきたから平和には暮らせないのかも…ってそれはどうか知らないけど、とにかく私たちの未来は何も分からない状態だった)


鞠莉「花陽を助けることが最優先事項よ、その他の話は全部後」


絵里「……ええ、そうね」

ルビィ「…うん、分かった」
928 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:34:37.29 ID:raJY7OxV0
鞠莉「花陽は東京のみならず日本のトップレベルのアイドルよ、だからファンの数は尋常じゃないし、今回のライブに参加してるファンの数もおそらく数えられたものじゃない、今丁度ライブ中だからライブ会場の外にわんさか人がいるわけじゃないとは思うけど移動には充分気をつけなさい、はぐれる可能性もあるわ」

絵里「なるほど…分かったわ…」

鞠莉「今回花陽の使ってる会場はドームみたいな全方位から見渡せるような感じじゃなくて一つの方向をみんなで見る舞台型の会場よ、だから最悪ステージへの侵入も出来る…いや、最悪じゃなくてもステージへ上がって直接花陽を助ける可能性の方が高い」

ルビィ「アナウンスで避難しろーっていうのはダメなの?」

鞠莉「それだとまるで意味が無いわ、だって花陽は人間なんだから避難しろって言われても避難してる最中に撃たれて死ぬわ」

ルビィ「あ、そっか…」

鞠莉「私たちがあのビルに行くっていう考えもあったけどそれもダメ、あそこにいって屋上に上るまでの時間とライブ会場にいって花陽を直接助けるまでの時間はどう考えても花陽を直接助ける方が早いわ」

絵里「…なるほど、じゃあ私たちがやることは」


絵里「一早くライブ会場に入って、ステージに上がり、花陽を助けることね」


鞠莉「その通りよ、私は花陽の事務所のスポンサーやってるからステージ裏には上がらせてくれるはず、だから早く行きましょう」


絵里「ってうわぁ!?」

ルビィ「ぴぎっ!」


絵里(そういい突然アクセル全開にしてくるもので心だけが置いていかれてまた声を出してしまった、真面目だろうと不真面目だろうとどんな鞠莉でも運転は相変わらず荒かった)

絵里(…が、しかしそんな荒い運転に気を取られてるだけじゃない。突然私たちに歯向かう射線に目を丸くして戦いの意識を急激に研ぎ澄ました)
929 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:35:54.55 ID:raJY7OxV0
絵里「射線!あの屋上から!」

絵里「…!ルビィに向いてる!ねえ鞠莉もっとスピードあげて!」

鞠莉「了解よ!!」ブウウン

絵里「んくっ……」


カチャッ


ルビィ「…ホントだ、こっち向いてる」


絵里「撃てる?」

ルビィ「…!!身を引いたよ…?」

鞠莉「…!そいつアンドロイドよ!ルビィの射線が見えてる!」

絵里「アンドロイド…!?」

鞠莉「当たらなくてもいいわ!射線で威嚇して!さっきルビィが一発当てたから射線だけでも充分脅威になるわ!」

鞠莉「絵里もやって!!」

絵里「え、ええ!!」カチャッ!

絵里(そういいあの屋上が見える限りハンドガンの銃口を当て続けた)
930 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:36:33.68 ID:raJY7OxV0
絵里「……今って花陽のライブ中でしょ?」

鞠莉「ええ、そうよ」

絵里「なんで相手は撃たないの?花陽はもうステージに上がってるはずよ、殺すのが目的ならさっさと撃てばいいじゃない」

ルビィ「確かに……」


鞠莉「……何か他にあるのかも」


ピッ!

絵里「!」


真姫『ねえ絵里聞こえる!?』


絵里「え、ええどうしたの?」

真姫『スナイパーの件だけど絵里はおかしいって思わない?』

絵里「おかしい?何が?」


真姫『殺すのが目的なら今ライブしてる花陽を撃てばもう終わるじゃない』


絵里「!」
931 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:38:04.43 ID:raJY7OxV0
真姫『それなのに何故か花陽は死んでない、おかしいでしょ?』

絵里「ええ、それを今私たちも話してたところだったの」

真姫『そ、そうだったの?』

絵里「ええ」

真姫『…まぁとにかく私たちも絵里との無線を切った時におかしいって思ったの、だから穂乃果と私でネットを駆け巡って見つけたの!』

絵里「何を?」


真姫『花陽が死ぬタイミングを!!』


絵里「!!」
932 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:39:28.18 ID:raJY7OxV0
鞠莉「oh what!?どういうこと!?」

穂乃果『殺し屋っていうのは依頼人がいないと成立しない、だから多くは殺し屋サイトみたいなのを所有してることが多くて、またその殺し屋サイトっていうのは大体表面上は普通のサイトなんだけど例えばサイトの一番上にあるロゴの一部分だとかサイトの端っこに透明なリンクが貼ってあるとか何らかの方法で本来の殺し屋サイトにいけるんだよ』

絵里「へぇ…」

穂乃果『だから花陽ちゃんを狙ってる殺し屋を希ちゃんや花丸ちゃんが残してくれた情報網で片っ端から調べた、そしたらヒットしたよ!しかも実行日が今日!』

絵里「!!」

穂乃果『その殺し屋サイト、本当かどうかは知らないけどアンドロイドがいるみたいなんだ!だからスナイパーの精度は相当いいよ!絶対に撃たせちゃいけない!』

ルビィ「アンドロイド…!?」

絵里「それってさっきの…!!」


鞠莉「…もはや確定ね」


絵里「それで花陽が死ぬタイミングっていうのは?」

穂乃果『それは————』



穂乃果『孤独なheavenを歌い終わり次第殺害を実行するらしいんだ!!』


933 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:40:24.56 ID:raJY7OxV0
絵里「孤独なheaven?」

鞠莉「花陽の代表曲よ、花陽といったらまずこれというくらいに、そして花陽を知らなくても孤独なheavenは知ってるという人がいるくらいに有名で、花陽を飾る曲なの」

ルビィ「ルビィも花丸ちゃんからたくさん聞かせてもらったけどものすごくよかったよ、まず開幕のウィンドチャイムから感じるボルテージがすごくて!」

鞠莉「ええ!そして片思いの子の気持ちを綴った切ない歌詞もまた魅力の一つ……」

ルビィ「いつもはワイワイとした盛り上がる曲を歌ってるのにも関わらず孤独なheavenは真面目で切なくて、いつもの花陽さんとのギャップも楽しめる一曲だよね!」

鞠莉「そう!そうなのよ!ウィンドチャイムに続くどこまでも奥ゆかさを感じてしまうダークトーンなピアノ!そしてサビ前ではドラムが最前線を仕切ってボルテージを上げてくれたりCメロではギターが織りなすノスタルジーのようなものが良い味出してて後ろの演奏の良さはまさにexcellent!」

ルビィ「Cメロ後の“言えないよ…”は感情移入しちゃって本当に鳥肌が立つよ!」

鞠莉「Yes!あれは花陽の良さが詰まってるのよぉ!そして花陽も当事者になり切ってるようなあの必死な顔も必見!そう、まさにあれは——」


ルビまり「奇跡の歌!!」


絵里「そんな曲が…」
934 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:42:18.74 ID:raJY7OxV0
ルビィ「まだその孤独なheavenは歌われてないの?」

ことり『今ライブ中継見てるけどまだ歌われてないよ』

真姫『…とまぁそんな感じなの、あなたたちも花陽のライブ中継開いて孤独なheavenが流れたらもうすぐだと思って』


キラキラキラ


絵里「!」

絵里(そんな時ある音が流れた。最初はどこからともなくというようなどこから鳴ってるのかもわからなかったけど、よく耳を澄ませばそれは無線から聞こえてるものだということに気付いた)



『すぅ…あなたへのHeartbeat…熱く…熱く——————♪』



絵里「!!」

絵里(そして次に流れるメロディと共に乗せられた声に鳥肌が立った)

絵里(この透き通った声、高校一年生とは思えない大人びた雰囲気、声から感じられる本気度のようなもの)

絵里(ルビィの言う最初のウィンドチャイムが鳴った瞬間聞こえるファンの歓声を聞くとまるで別の世界へ誘われたかのような錯覚と高揚の気分になっていた)
935 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:43:20.11 ID:raJY7OxV0
絵里「これ……!」

絵里(私の心も乗せられて…いやその花陽さんの声に心を奪われてしまって、無線から聞こえるその花陽さんの言葉一つ一つがとても恋しく感じてしまう)


絵里(確かにこれは、奇跡の歌だ)


ルビィ「!!!」

鞠莉「この曲は……!」

ことり『わぁ!?始まっちゃったよぉ!』

穂乃果『えぇ!?』


真姫『ついた!ついたから行って!』


ことり『う、うん!』ダッ

穂乃果『任せて!』


真姫『絵里!孤独なheavenが始まった!』


真姫『時間がもうないわ!!』

936 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:44:07.09 ID:raJY7OxV0
絵里「なら急がなきゃ!!鞠莉!」

鞠莉「言われなくてもアクセルぜんっかいよッ!!」

絵里「孤独なheavenが終わるまでどのくらいかかる!?」

鞠莉「約四分半よ!孤独なheavenが終わるまで後四分くらい!」

絵里「四分って…!」

真姫『そんな無茶な————』


鞠莉「無茶じゃないわ!」


真姫『!』

鞠莉「私たちなら出来る!後四分もあれば充分よ!」

鞠莉「今は一秒たりともバカには出来ないわ!」
937 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:45:23.14 ID:raJY7OxV0


『——————眠たげなのね。後ろからそっと語り掛けるの』


鞠莉「…っ!ついた!こっちもついたから行きましょう!」

絵里「ええ!」

ルビィ「うんっ!」

絵里「真姫!行ってくるわ!」

真姫『え、ええ!』

ダッ


タッタッタッタッ


絵里「間に合って…!!」

絵里(オープンカーを駐車場の適当な場所に留めて会場へ突っ走った、ルビィは携帯で花陽のライブ中継を開いてて、今ここに、今ここで————)


絵里(————ロストソングがクレッシェンドを含み始めた)

938 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:46:02.17 ID:raJY7OxV0


ピッ


鞠莉「!」

果林『こちら果林よ』

鞠莉「果林!?どこに行ってたの!?」

果林『説明は後、それより今から』


果林『防衛対象に殺意を抱くアンドロイド三体と交戦するわ』


梨子『同じく私もです』

鞠莉「…!それってあの屋上の?」

果林『あの屋上かは知らないけど、屋上で、殺害方法はスナイパーよ』

鞠莉「…分かった、気をつけなさい」

果林『了解』

梨子『了解です!』

ピッ

鞠莉「……だけど時間を遅らせることは無理そうね」
939 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:47:31.54 ID:raJY7OxV0


果林「初めて会ってから一回も姿を見なくなったから何をしてるのかと思えばこんなことを企んでたなんてね」


果林「綺羅ツバサ」


ツバサ「別に企んでたわけじゃないのよ?これも殺し屋としてお仕事の一環だから」

梨子「それでもあの花陽ちゃんを殺すなんてアンドロイドとして道を踏み外してます!」

英玲奈「別に我々はアンドロイドの道を往こうとはしていない、殺し屋として生きていくと決めた以上殺すことを重点的に置いた道を往くだろう」

果林「…何故人を殺すの?」

ツバサ「平和な世界っていうのは案外つまらないものなのよ、知ってる顔と毎日笑いあって、時に苦難を乗り越えて過ごしていく日々…最初はそれで充分だと思っていたけど、つまらないって感じた途端急に生きることに対してやる気が失せた」

ツバサ「当時目標だった成績学年一位も何やってるんだろうなーんて悟っちゃってイヤになったわ」


ツバサ「だからこそ私たちは殺しという新たな境地へ辿り着いた」


梨子「…!」


鞠莉『何も無いと、破壊を生み出すということに』


梨子「これ……」

梨子(鞠莉さんの言ってたことだ、もしかしたらこのアンドロイドもその類のアンドロイドなのかもしれない)
940 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:49:57.26 ID:raJY7OxV0
ツバサ「元々私たちは全員戦闘型アンドロイド、だから戦う事に特化してたし、ちゃんと殺害目標を立てて行う殺害っていうのは面白いほどに心が満たされるというか…やり遂げた気分になれるのよ」

梨子「………」

梨子(全ては鞠莉さんの言うことに沿っていた。アンドロイドという生き物は目標を失うと破壊を生む、それは本当だったんだ)

梨子(このアンドロイドの場合、殺しを目標としてしまった以上は人という生物が消えるまで永遠に殺しを目標にするのだと思う)

梨子(…やっぱりアンドロイドはまだまだ危険な存在だ)

果林「…そう、それは分かったけど、そろそろ二人の後ろにいるスナイパーの子にも喋ってもらえないかしら?」


あんじゅ「えー私?」


果林「あなたがそのスナイパーを下げてくれれば私たちとしてはミッション完了なんだけどね」

あんじゅ「それは無理かしら」

果林「…そう、なら話はもう終わりね」
941 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:51:28.12 ID:raJY7OxV0


カチャッ


果林「これよりミッションを開始するわ」


果林「梨子」ダッ

梨子「はいっ!」ダッ

梨子(あのスナイパーがさっさと花陽ちゃんを撃たないのが引っかかるけどいずれにせよ撃たないのであればこちらとしても好都合だ)

梨子(だから決めるなら即行、私たちが動き出すと同時に動き出す射線をかいくぐって近づく刹那に高まる緊張感は全て銃弾が切り裂いた)


梨子「はぁッ!」ババババッ


梨子(射線が見えてる者同士銃弾が当たらないのは基本、相手から飛んでくる銃弾を避けたら今度は私たちのターンで、私が発砲をする)
942 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:52:35.84 ID:raJY7OxV0


英玲奈「おっと」シュッ


梨子(だけど相手もそれを避けるのは当然、するとたちまち発生する接近戦。ナイフを首元目掛けて横に振れば体を反って回避され、相手の後ろから飛んでくるカバーの銃弾は右に飛び退き回避した)

梨子「はっ…ふッ…!」

梨子(だけど避けても尚まだ飛んでくる銃弾は全てのあの後ろのスナイパーからの攻撃。銃弾を避けること自体はそこまでの事だけど追撃に来る英玲奈というアンドロイドの攻撃が鬱陶しかった)


英玲奈「人数の有利はやはり偉大だなっ!」ブンッ


梨子「ちっ……」

梨子(私がなんとか銃弾を避ける中で右ストレートが私の顔に向かってくるもので、それを姿勢を低くして片手を地につけた状態で回避)

梨子「そっちも見えてる!」シュッ

梨子(何故片手を地につけたのかといえば、それは次に来る銃弾を前転回避する為で、地についた手を使って勢いをつけた)


ツバサ「じゃあ、こっちの銃弾は見えてた?」


梨子「!」
943 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:54:40.54 ID:raJY7OxV0
果林「梨子っ…!」

梨子(果林さんは負けてない、けど戦ってる合間に撃たれたその銃弾に、果林さんは焦ってた)


梨子「そんなっ…!!」


梨子(そんな果林さんの顔を見て悟った)


梨子(私、死ぬんだって)


梨子(偏差撃ちに偏差撃ちを重ねた人数の有利をもろに受けた戦いだった、放たれた銃弾は果林さんの手じゃ止めることも出来なくて、前転回避を終えた直後にはもう迫ってた銃弾だったから私も回避が出来ない)

梨子(見える射線は私の頭を射貫いてる)

梨子(流石に急ぎすぎたかな…最後になって自分の行動に対して反省をした)

梨子(だけど、これでよかったんだと私は思う。元々私の人生なんて腐ってたものだ、アンドロイドを殺す為だけに生きている私は元々死ぬべき存在なのだ)

梨子(…それに花陽ちゃんを守る為に、鞠莉さんからの任務な為に、私が出来ることを尽くして死ぬのなら戦人冥利に尽きるまでだ)


梨子「…はぁ」


梨子(死を受け入れた私は小さな溜め息と共に目を閉じた)

944 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:55:58.84 ID:raJY7OxV0


穂乃果「させないっ!」バンッ


カンッ!


梨子「!!」

梨子(一つの銃声と同時に私の目の前で飛び散る火花と甲高い音に目を見開いた)

梨子(そして見開いて尚意識があって、自分の手を開いて閉じてを繰り返しててようやく自分が生きてることに気が付いた)

梨子「あなたは……」

穂乃果「…助けたわけじゃないよ、ただ目の前で人が殺されてるのを見ていい気分になる人はいないから」

梨子「……ありがとう、穂乃果ちゃん」

梨子(突然現れた穂乃果ちゃんは私に飛んでくる銃弾を穂乃果ちゃんの放った銃弾で跳ね飛ばした)

梨子(アンドロイドだから射撃の精度はもちろんその弾速を機械的に見て自分がどこにどのように撃てば目的が銃弾と接触するかが分かる。だから穂乃果ちゃんはそれを実行して私を助けてくれた)

梨子(その時の穂乃果ちゃんのクールな眼差しといったら痺れてきちゃって、これが軍神たる所以なんだなって思った)


梨子(強いだけが全てじゃないって)

945 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:58:06.97 ID:raJY7OxV0


ことり「こっから逆転だよっ」


穂乃果「絶対に勝つ」カチャッ


英玲奈「…軍神と南ことりが来たことは正直驚いたが、そろそろ時間のようだ」

穂乃果「…!」

ことり「この声…」

果林「何?どういうこと…?」


ツバサ「聞こえる?この歓声」


ツバサ「東京ドーム以上に人を動かしたこのライブの歓声はかなり離れたここまで聞こえてくる凄まじいものよ」

ツバサ「そしてその歓声の元である歌、そして人物————」



ツバサ「——————孤独なheaven、小泉花陽」


946 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:59:53.32 ID:raJY7OxV0
ツバサ「…あんじゅ!」


あんじゅ「了解よ」カチャッ


ことり「! 待って!」ダッ

梨子「それはダメ!」ダッ

果林「撃つ気!?させないわ!!」


あんじゅ「ほいっと」ポイッ


ことり「っ!グレネード!?」シュッ

果林「ちっ…」シュッ


梨子「わっ…」


梨子(スナイパーのアンドロイドはスナイパーを構えるのではなくて腰にかけてあったグレネードを投げて私たちを注意と視界を奪った)

梨子(そのせいであのアンドロイドを止めるべくして動く足も止まり、トリガーを引くためにある手もグレネードの爆破範囲から外れるのに精一杯で手を動かすことが出来ず、突然の不意打ちグレネードにみんな怯んでしまった)
947 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:01:03.18 ID:raJY7OxV0


穂乃果「そんなの希ちゃんに比べたら手品にも届かないよ!!」ダッ


英玲奈「無駄だ」バンッ



穂乃果「舐めないで!」シュッ



梨子(だけど、穂乃果ちゃんだけは足も手も止まらずにあのスナイパーのアンドロイドに牙を向けた)

梨子(もうすぐ爆発するというのにそれすらも恐れずに、転がるグレネードを蹴ってグレネードを相手に返却した)

梨子(これが軍神たる所以……その勇ましくグレネード如きで怯まない姿は私たちとの格の違いを知らしめている気がした)
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 22:01:27.44 ID:/GuFGKn50
もう今日の更新は無さそうだな
949 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:02:29.90 ID:raJY7OxV0


ツバサ「流石軍神だけど、それも無駄よ」


穂乃果「偽物…!?」

ツバサ「惜しかったわね、もしこれが本物のグレネードだったら私たちは死んでいた。けど生憎そんな危険性を秘めたグレネードを投げるほど私たちはバカじゃないの」

穂乃果「ッ……!」

梨子(穂乃果ちゃんが決死の判断で蹴り返したグレネードは着弾しても地面に転がるだけだった、ピンはちゃんと抜かれてるのに、でもそれはただのおもちゃで——私たちはまんまと嵌められた)



あんじゅ「さよなら東京の歌姫!!」ドォンッ!



ことり「あ………」


梨子「そんなっ…」

穂乃果「間に合わなかった…!!」

果林「……くそっ」

梨子(凄まじく低い銃声がビルからこの摩天楼へ響くと聞こえる絶望感)

梨子(ファンの人が騒いでる。穂乃果ちゃんは強く握った拳を下げて悔しさが隠しきれてない、果林さんも下を向いて喋らないまま、ことりちゃんに関しては崩れ落ちてる)
950 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:03:28.89 ID:raJY7OxV0
梨子「…鞠莉さん」

梨子(一人虚しく呟いた)

梨子(鞠莉さんは今どういう反応をしてるんだろう、気になるけど考えたくない)

梨子(私自身、鞠莉さんの命令だからっていう理由以上に花陽ちゃんを守りたかった)


梨子(それなのに守れなかった)


梨子「……鞠莉さん」


梨子(……この場に残るスナイパーの銃声は、私の心にいつまでも悔しさという残響を発生させていた)

951 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:05:09.15 ID:raJY7OxV0
〜四分前


タッタッタッタッ


絵里「どうやってステージまでいくの!?私この会場全然知らないわよ?」

鞠莉「もう時間がないわ!とりあえず入って関係者用のところからステージ裏まで突っ走りましょう!」

ルビィ「そんな許可も無しにいって大丈夫なの?」

鞠莉「そんなこと気にしてる場合じゃないわ!」


『————見つめることも、迷惑ですかと…』


絵里「なんか会場外なのに人いっぱいじゃない!?」ピタッ

鞠莉「会場内にいなくても花陽の声は聞こえるからそのおこぼれを狙ってこうして集まるのよ!」

ルビィ「どうやっていくの…?」


鞠莉「正面突破しかないでしょ!」ダッ


絵里「仕方ない…ルビィ行くわよ!」

ルビィ「え、うんっ!」

絵里(会場を前にして分厚い人混みと遭遇した私たちは一斉に足を止めた。迂回は多分出来るけどそんなことしてたら曲が終わる、ここは正面から行くしかなくて考える暇もなく鞠莉は止めた足を再び人混みの方向へ動かし始めた)
952 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:05:55.79 ID:raJY7OxV0
絵里「ルビィ、少し私の元へ来て」

ルビィ「う、うん」

絵里(鞠莉は人混みの中へ突っ込んでいった、けど私はルビィをおんぶして会場に行くためにかかっている橋の手すりを走った)


ルビィ「え、絵里さんそれ大丈夫!?」

絵里「心配しないで!いくわよっ!」


絵里(手すりが無くなれば私はそこから大ジャンプ————人混みを一気に跳び越えてここで聞いてるファンを抑えていた警備員の列さえも跳び超えた)


鞠莉「絵里!」


絵里「ええ!」

絵里(そうして着地した頃に後ろから声が聞こえて振り替えれば警備員の抑制をスルーしてやってくる鞠莉がいて鞠莉がある程度近くにきたら再び私とルビィは走り出した)
953 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:07:10.27 ID:raJY7OxV0


『————放課後のバス停の前で』



タッタッタッタッ


絵里「ここからどう行くの!?」

鞠莉「ステージ前にはちょっと深い水があるから正面から花陽を助けるのは不可能よ!だからステージ裏から行くしかない!その為には入ってすぐ左にある関係者用の通路を通ってそこから花陽に近づく必要があるわ!!」

絵里「了解よ!」


「————同じクラス?隣のクラス?」


絵里(入口を超えるとライブの中継じゃなくても聞こえてくる)

絵里(心臓の鼓動と共鳴しだすこの音と声、今も上がり続ける会場のボルテージを肌で感じることができる)


鞠莉「……やはりすごいわね、花陽は」

絵里「ええ…これは心が奪われてしまうわ」


絵里(関係者用の通路を走る際に交わしたそんな言葉はすぐに花陽の歌にかき消された)

絵里(無限に広がっていく波状攻撃のような強い音色と印象を与えていくこの歌————この歌を聞けば聞くほど花陽を守らなきゃという気持ちが強くなっていく)
954 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:08:29.15 ID:raJY7OxV0
絵里「!!!」

鞠莉「!!」

ルビィ「ど、どうしたの?」

絵里「花陽に射線が向かってる…」

鞠莉「まずいわね…」

ルビィ「…!ならルビィが威嚇するから二人は先に行って!」カチャッ

絵里「え、でも」


ルビィ「いいから行って!花陽さんを助けるんでしょ!」


絵里「!!」

絵里(ルビィの必死の声でさえ花陽の歌声やファンの歓声にかき消されてしまう、けどルビィの思いは充分なほどに伝わった)

絵里(スナイパーのトリガーに加わる強い力はルビィの本気の表れ。普段は見せない強気な表情を私に見せることでルビィの真剣さはより分かりやすいものになっていた)
955 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:09:53.44 ID:raJY7OxV0


絵里「…分かった、頼んだわよ」

ルビィ「任せてっ!」


絵里(ルビィはその場で片膝を立てて向こうの屋上に向かってスナイパーの銃口を向けた。そこの角度から果たして見えるものなのか疑問なところだけど動かないということはきっと見えてるのでしょう)

絵里「行きましょう」

鞠莉「ええ!」

絵里(そうして私たちも花陽のところに向かって走る。ルビィの事や私たちの事を気にするスタッフはいっぱいいたけどそんなのに構ってられない。今はとにかく分け目もふらずに走って走って走り続けるだけだった)


『————抱きしめたい…』


絵里(悲愴感が広がるピアノの音色と哀愁漂うギターの音色が合わさり、歌もそろそろクライマックスへ入ろうとしてて、私の身体もクライマックスな汗を流してた)


絵里(そろそろ雌雄を決するでしょう)


絵里(音で切羽詰まる私の心の行方は————)

956 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:11:13.52 ID:raJY7OxV0


「言えないよ……」


絵里「はああああッ!」

鞠莉「もうすぐよ!!」

絵里(花陽の声にエフェクトがかかりだした。会場のボルテージもこの上ない最高潮なのが分かる、だからそのボルテージに乗せられて私たちの足もより加速していく)


「————私だけの、孤独なheaven」


絵里「…っ!!!」

鞠莉「まずい!射線がっ!!」

絵里(はっきりと見えるその射線。真っ赤な線が花陽さんの頭を貫くその様はこの瞳に焼き付いて見える)
957 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:12:50.76 ID:raJY7OxV0


絵里「花陽ッ!!」


絵里(クライマックスなメロディは私の限界を限界でなくしてくる。充分に加速した足は更なる加速を遂げてやっとステージ裏まで来た)

絵里(心臓に響くビート、心に刻まれたその金声、熱が迸るボルテージ、感情さえ司るメロディ)


絵里(私を本気にさせる花陽の心)


絵里(全てが合わさったカオスなフィールド————その階段を私たちは上って——)


「——————熱いねheaven……♪」




ドォンッ!



958 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:15:01.82 ID:raJY7OxV0


花陽「わっ!?」


絵里(広大な人口宇宙の中で響くひっくい銃声が鳴る刹那——直後、この世界で流れる時間は何もかもがスローになり、この世界からほとんどの音が消えた)


『花陽です!私…花陽って言うんです!だからもし…助けが必要だったら絶対に助けますから!』


絵里(すると、突然花陽さんの声がどこからともなくこの世界で木霊し始めた)


花陽『ふふふっ照れてる絵里さんも可愛いですね』クスッ


絵里(そして次に、いたずらっ子みたいに笑う花陽さんの顔が浮かんできた。結局、今になっても私を助けてくれた理由はよく分からない)


花陽『私、絵里さんのファンなんです!音ノ木坂高校のビューティフルスター!』


絵里(理由らしい理由も、なんだかふにゃふにゃしてて変な感じだし、やっぱり花陽さんは不思議な人だ)

959 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:16:04.34 ID:raJY7OxV0


花陽『だからまた今度、お会いした時はもっといっぱいお話しましょう♪』


絵里(でも…そしてだからこそ私は花陽さんを助けたいのよ)

絵里(命を助けてもらった恩があり、次を作りたい私がいる)

絵里(助けたい————抱く思いは当然鞠莉と同じ、だから鞠莉と一緒にこのステージで翔ぶの)

絵里(勢いをつけて、足にこれまでの全てを賭す。これまでの苦難を乗り越え、死を直視して、それでいてようやく手にしたこの翼の耀きで私は————)



えりまり「いっけえええええええええ!!!」



絵里(このクソみたいな東京《ミライ》を変えるのッ!!!)


960 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:17:02.83 ID:raJY7OxV0
絵里「はぁ…はぁ…はぁ…」

鞠莉「たす…けれた…?」


花陽「え、絵里さん…?鞠莉さん…?」


絵里「…うぅううううううう…!はなよぉ…!!」ギューッ

鞠莉「よかった…!ぐすん…よかったわ…!!」

花陽「わわわっ…ど、どうしたんですか!?」

絵里(花陽の歌声が無くなり後奏が鳴り始めた同時に飛んでくる銃弾————それを私と鞠莉で花陽に向かって飛び込み抱き着くことで回避させた)

絵里(花陽に当たらなかった銃弾はステージ後ろのモニターを割り、会場は大パニック。だけど、今も後奏として響くこのメロディは紛れもない勝利のメロディであり、今も溢れでる涙の源でもあった)
961 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:19:34.85 ID:raJY7OxV0

ピッ


真姫『絵里!大丈夫!?どうなった!?』


絵里「…勝ったわ、勝ったわ……」


絵里「花陽を助けれたわぁ…!!!」


穂乃果『そ、それホント!?』

絵里「ええ!やったわ!!」

ことり『よ、よかったぁ…』

ルビィ『ルビィもよかったよぉ…』

穂乃果『ごめん…止めれなくて……』

鞠莉「いやいいわ、多分あの状況じゃ私たちが行っても止めることは出来なかった。だから仕方ないことよ」
962 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:20:56.71 ID:raJY7OxV0


曜『おめで…とう……』


絵里「曜!?大丈夫なの?」

曜『なん…とか……ね』

絵里「そう…よかったわ……」

花陽「もしかして花陽を助ける為に……」

絵里「当たり前じゃない」

鞠莉「その為に私たちここまで本気で走ってきたんだから」

花陽「あ、ありがとうございます!」ペコリッ

花陽「花陽狙われてるなんて気付かなくて…お二人にはなんてお礼したらいいのか…」

絵里「お礼なんていいわ、それよりもこれは私と鞠莉だけの力じゃない」
963 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:21:48.35 ID:raJY7OxV0


真姫『…ふふふっ』

穂乃果『あははっ』

ことり『えへへへ……』

ルビィ『んふふふっ』

曜『よーそろー……』


絵里「寛容で強く、絶望にも負けなかった私の仲間や」


善子『ヨハネよ!』

果南『絵里は人に言えないことがありすぎるんだよ、抱えないで言ってよ?私たち親友でしょ?』

花丸『だからいつまでの話になるか分かりませんが、しばらくの間ここでよろしくお願いします』

にこ『あんたらを狙って悪かったって話よ、私も目が覚めたわ、あいつらとはいたくないもんでね。海未には悪いけど』

せつ菜『……とにかくよろしくお願いしますね、絵里さん』


絵里「……今、ここにはいないけど、彼女たちも寛容で強くて、私を信じてついてきてくれた大切な仲間」

絵里「そのみんなの力が合わさって花陽を助けることが出来たの」
964 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:23:24.32 ID:raJY7OxV0
花陽「…そうだったんですね」

花陽「あれから…また色々あって…それでも絵里さんが生きていてくれてて、花陽はすごく嬉しいです」

花陽「Y.O.L.Oが爆破されたと聞いた時は、少し不謹慎ですけど花陽嬉しかったんです。絵里さんがまだ生きてるって思って…」


花陽「だからまた…こうして会えたこと…そして助けてくれたこと…すごく嬉しい!」ニコッ


絵里(勝利のBGMがまだ響いてる。この胸に宿した勝利があまりにも大きすぎる)

絵里(後ろのモニターは黒く染まってしまったけど、それでもステージはまだキラキラしてる)

絵里(…これなのかもしれない、このキラキラ輝いた場所。この心躍る素敵な場所)


絵里(この“輝き”を私はずっと待ってたのかもしれない)


絵里(ここにいる時はアンドロイドとか人間とかどうでもよくなる気がする…いやそれは根本的にはいけないことだけど、今は…この勝利を胸に宿してる今はそれでいいのよ)


絵里(この余韻はいつまで、続くのかしら…?)

965 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:24:36.84 ID:raJY7OxV0


ツバサ「あーあ、やり逃しちゃったわね」

英玲奈「やはりあの金髪二人は厄介そのものでしかないな」

あんじゅ「あらら、やっぱり殺し屋って難しいものね」

穂乃果「よくもやってくれたね」

果林「…正直、あなたたちの殺しに対する考え方には興味あるけど花陽を殺そうしてた以上は私たちの敵にしかなりえない、悪いけどここで死んでもらうわ」

梨子「その通りです!」

ツバサ「あぁごめんなさい、もう戦う気なんてないから」ピョーン

ことり「っ!?飛び降りた!?」

英玲奈「悪いな、だが消化不良なのはお互い様だ。ここは痛み分けといこうじゃないか」ピョーン

あんじゅ「ばいば〜い」ピョーン
966 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:25:18.43 ID:raJY7OxV0
穂乃果「っ!逃がさない!」ダッ

ことり「ダメ!穂乃果ちゃん追っちゃダメ!」ギュッ

穂乃果「どうして!?あの三人はここで殺さないとまた何かするよ!?」

ことり「穂乃果ちゃんにはここから飛び降りて確実に助かる術があるの!?ここで死んじゃったらまたみんなとの出会いが消えちゃうよ!」

穂乃果「っ……」

果林「…やっぱりあの三人、謎ね」

梨子「鞠莉さんの言ってた通りのアンドロイドとして典型的な破壊衝動を抱いてますね」

果林「ええ、まぁいずれまた会うことになるでしょう」


果林「だって、彼女らもこの東京が好きなアンドロイドだから」

967 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/14(月) 22:26:34.91 ID:raJY7OxV0
終わりがすぐそばまで来ていてこんなこと言うのも難ですが、ちょっと三十分くらい席外します。
また戻ってきます。
968 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/14(月) 22:53:24.03 ID:raJY7OxV0
戻りました。
終わりはもうすぐなんですけど、このスレだけで完結出来るかは微妙で、中途半端なところで区切ってスレを立てないといけない状況にはしたくないので、この時点で次のスレを立てようと思います。
969 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/14(月) 22:57:26.86 ID:raJY7OxV0
絵里「例え偽物だとしても」 part2
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立てました。
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