井村雪菜「高峯のあの事件簿・高峯のあの失踪」

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67 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:14:21.07 ID:wT2tO75h0
雪乃「知り合いということでしょうか」

都「おそらく。探偵高峯のあが警戒しない人物は」

まゆ「考えてみると多いですねぇ」

雪乃「人に関わる仕事ですもの」

真奈美「絞り込むのは難しいな」

都「ええ。他の切り口から、高峯のあといえば何者でしょうか」

雪乃「資産家ですわ。このビルのオーナーでもありますの」

都「身代金目的の誘拐は最初に疑うべきことです、が」

真奈美「私もそれは考えている」

まゆ「のあさんが関係するところに連絡はないんですよね?」

真奈美「ああ。関西の親族にも連絡はない」

都「資産家高峯のあを狙ったわけではなさそうです、今の所は」

雪乃「そうなると……」

都「高峯のあといえば何者でしょう、他には」

まゆ「のあさんは、のあさんです」

真奈美「私人としての高峯のあは、何者だろうな」

まゆ「推理小説は好きですねぇ」

雪乃「紅茶とコーヒーはお好きですわ。食事は甘みよりも刺激的なお味がお好みですわね」

真奈美「趣味は天体観測だが、独学でやっているようだな」

まゆ「お友達も警察の人とかお仕事での知り合いが多いですねぇ」

真奈美「そうなると……前川君の大ファンくらいか?」

雪乃「みくにゃんさんですわね」

まゆ「でも、ただのファンですよぉ?」

都「いいえ、そこです」

真奈美「どういうことかな」

都「残念ですが、わからないことが多すぎます。少しでも手掛かりを手に入れましょう」

まゆ「わかっていることは……」

雪乃「のあさんはみくにゃんさんのライブに行きましたわ」

まゆ「留美さんとは終了後に分かれました」

真奈美「何時誘拐されたかは、正確にはわかっていない」

都「手掛かりを手に入れましょう。その場にいた人物と連絡は取れますか」

真奈美「前川みくニャンニャン親衛隊、と名乗る一団は名刺があるはずだ」

都「秘密結社ですか」

まゆ「ただの趣味の集いですよぉ……たぶん?」
68 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:15:08.31 ID:wT2tO75h0
真奈美「のあは連絡先や書類はアナログでも保存している。部屋を探してみよう」

都「ええ。相原さん、お願いがあるのですか」

雪乃「はい、何でも仰ってくださいな」

都「ファンの方に連絡を取っていただけますか。のあさんの情報が知りたいです」

雪乃「わかりましたわ。真奈美さん、のあさんの部屋にお邪魔しますわ」

真奈美「非常事態だ、許してくれるだろう。佐久間君、手伝ってあげてくれ」

まゆ「わかりましたぁ。雪乃さん、のあさんのお部屋に案内しますねぇ」

真奈美「私はどうしようか」

都「真奈美さんには聞きたいことがあります」

真奈美「何かな」

都「のあさんではなく、犯人を切り口として考えてみましょう」
69 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:16:04.06 ID:wT2tO75h0
44

高峯探偵事務所

真奈美「犯人か……」

都「わかっていることは少ないですが」

真奈美「警戒心が少ない時とはいえ、のあが警戒しない人物だ」

都「誘拐の実行犯は、ですね」

真奈美「協力者もいる。誰かはわかっている」

都「古澤頼子」

真奈美「ああ、のあから聞いているか」

都「聞いています。本当はどんな人物だったかも」

真奈美「登場人物は彼女だけだ、ある意味上手くやられたな」

都「ある意味とは」

真奈美「既に疑われている人物が出てきても何も進展しない。消息も不明だったからな」

都「なるほど、本来はメッセンジャーになるような人物ではありませんが」

真奈美「今回に至っては適役だ」

都「役割を分担した、と」

真奈美「そうか、複数犯か」

都「人を手配するのは」

真奈美「古澤頼子の仕事だろうか」

都「そうなると、彼女が出てきたことは手掛かりになります」

真奈美「その意味は」

都「そう簡単に信頼感のない人物を使うとは思えません」

真奈美「古澤頼子と関わりのある人物、ということか」

都「何人かいるはずです」

真奈美「小室千奈美、吉岡沙紀、小松伊吹、それとシスタークラリス」

都「私の会った人物なら、沢田さんですね。後、亡くなっていますが乙倉さん」

真奈美「大石泉君は、古澤頼子にも会ったことがあるはずだ」

都「いわゆる仲間は何人いるのでしょうか……」

真奈美「わからない。サンタクロースのトナカイは古澤頼子については知らなかった」

都「他にいらっしゃいますか」

真奈美「松永涼もだな、後は……東郷邸の関係者」

都「……」

真奈美「これも聞いているか?」

都「すみません。まゆちゃんと同居している理由は気になってしまって」

真奈美「秘密にはしていない……佐久間君に協力してもらおう」

都「少しでも良いです、手掛かりを」

真奈美「ああ、こちらも始めよう。まずは、ここで出来ることからだ」
70 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:17:11.36 ID:wT2tO75h0
45

清路市内某所

雪菜「へぇ、なるほどぉ」

のあ「あなた」

雪菜「なんですかぁ?」

のあ「今は何をしているのかしら」

雪菜「メイクの勉強ですよぉ。もしかして、退屈ですかぁ?」

のあ「いいえ、必死に考えているわ」

雪菜「退屈で死にそうなら良かったのに、ふふっ」

のあ「悪趣味ね」

雪菜「早く来ないかなぁ、ねぇ、そう思いませんかぁ?」

のあ「そう願いたいところだけれど、厳しいわね」

雪菜「そうですかぁ?」

のあ「ここがどこかも、あなたが犯人であることも、例え目撃者がいたとしてもあなたに辿り着かない」

雪菜「いいえ、必ずわかりますよ」

のあ「その根拠は何かしら」

雪菜「推理させてあげますよぉ。必死に考えてください、探偵さん?」

のあ「……」

雪菜「話は終わりですかぁ?」

のあ「あなたと、希砂二島で会ったのは偶然かしら」

雪菜「誰がですか?」

のあ「私が、よ。あなたが糸を引いたことならば、あなたの意思があるはずよ」

雪菜「思い上がりですよぉ」

のあ「どういう意味かしら」

雪菜「あなたが来るかどうかは重要じゃないですから」

のあ「私には意味がわからない」

雪菜「質問に答えていませんでしたねぇ、意図はありましたよぉ。完全な偶然じゃありません」

のあ「矛盾しているような気がするのだけれど」

雪菜「来てくれたことで、この場面を私で作ることは出来ました。感謝しますよぉ」

のあ「流石の私でも、藤居朋と杉坂海を失ったあなたを疑うのは難しい」

雪菜「探偵さん、ちゃんと考えないとダメですよぉ?」

のあ「そうね、あなたの正体について少し考えるわ」

雪菜「どうぞ、ご自由に。大切な人質ですからぁ、体調だけは気をつけてくださいねぇ」
71 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:18:29.05 ID:wT2tO75h0
46

高峯探偵事務所

真奈美「ひとまず集合だ」

都「情報共有をしましょう」

まゆ「はい……」

真奈美「ファンの方はどうだったかな」

雪乃「のあさんはお見かけされてますわね」

まゆ「留美さんを知っている人がいて、別れたのを見た人もいました……」

都「どうやら出待ちをしているようですが」

雪乃「場所はわからないそうですわ」

真奈美「それはわかってる。前川君に聞いた」

まゆ「みくちゃんに……のあさんには言えませんね」

真奈美「駐車場から出た側道だ。手を振り返したくらいはしたそうだ」

都「問題は……」

まゆ「誰といたか……」

雪乃「はい。高校生から大学生くらいの女性といたそうですわ」

真奈美「前川君もそう言っていたが、見慣れないファンだったそうだ」

雪乃「身長はのあさんより少し低いくらいだそうですわ」

都「ライブには来ていたのですか」

真奈美「ああ。同行者も女性だったらしいが、こちらも見慣れないファンだったようだ」

まゆ「そちらの方は……」

真奈美「赤いメガネ、黒髪ロング、長身だそうだ」

都「古澤頼子、でしょうか」

真奈美「こっちはそうだろうな」

雪乃「犯人は、その方なのですか」

都「誘拐の実行犯ではあるかと思います」

雪乃「……どなたなのでしょう」

まゆ「わかりません……」

真奈美「無駄だったわけじゃない」

都「はい。出待ち以降で目撃者はいません」

まゆ「つまり……誘拐されたのは」

真奈美「会場近辺だ」

都「なので、この人物が重要です」

まゆ「でも……誰かわからない」

真奈美「佐久間君、東郷邸の人と連絡を取ってくれたか」

まゆ「はい……でも」

都「情報はありませんでしたか」

まゆ「そうなんです……古澤さんは由愛ちゃんの個展が終わってから、特に連絡をしてないそうです」

都「目撃された人物はどうでしょう」

まゆ「見たことはないみたいです……」

真奈美「こちらは関係なし、か」
72 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:20:04.68 ID:wT2tO75h0
都「他に関係があった人はどうでしょう」

真奈美「小松伊吹、吉岡沙紀は完全に手を引いた。何も知らないそうだ」

まゆ「シスタークラリスも、今回は、何も知らないと……」

都「今回という単語が気になりますが、追及するのは辞めておきましょう」

まゆ「のあさんと一緒にいた人物に思い当たる人はいないみたいで……」

都「他を当たりましょうか」

真奈美「アポイントは取ってある」

まゆ「どなたですかぁ……?」

真奈美「松永涼、小室千奈美、それと大石泉だ」

都「大石さんは色々な人の顔を見ていますし、会うべきです」

真奈美「佐久間君、一緒に行くとしよう」

まゆ「わかりました」

真奈美「雪乃君には留守番をお願いしていいか」

雪乃「もちろんですわ」

都「私も残ります。相原さんはファンの方に引き続き連絡を」

雪乃「わかりましたわ」

真奈美「都君は何を」

都「のあさんの資料を探してみます。真奈美さん、そちらはお願いします」

真奈美「ああ。行くぞ」

まゆ「はい、真奈美さん」
73 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:20:43.31 ID:wT2tO75h0
47

清路市内某所

のあ「この音は……電話の着信音かしら」

雪菜「『井村雪菜』のケータイに連絡が来てしまいましたぁ。この番号は、どなたでしょう?」

のあ「……」

雪菜「もしもし、井村雪菜ですぅ」

のあ「誰なのかしら……」

雪菜「お久しぶりですねぇ。え?高峯さんですかぁ?知らないですよぉ?」

のあ「……真奈美ではなさそうね」

雪菜「そうなんですかぁ、お役に立てないで申し訳ないですぅ。また、はい、さようなら」

のあ「……」

雪菜「安斎都ちゃんでしたよぉ、希砂二島で会った」

のあ「安斎都?真奈美が協力を頼んだのかしら」

雪菜「のあさんがふらりと旅に出たので探してる、ですって」

のあ「気づいたわけではない、私の部屋にある連絡先を洗っているだけね」

雪菜「残念でしたぁ。都ちゃんは、警察を頼っていないので不問ですよぉ」

のあ「……それは良かった」

雪菜「こんな所で気づかれるのは不本意ですから」

のあ「方法、過程、人、何が問題なのかしら」

雪菜「ヒミツですよぉ、分かった時のお楽しみです」
74 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:21:48.29 ID:wT2tO75h0
48

高峯探偵事務所

都「背の高さだけで連絡しましたが、そんなわけないですよね」

雪乃「都さん、お茶をどうぞ」

都「相原さん、ありがとうございます」

雪乃「いえいえ。何かわかりましたか?」

都「何もです、ローラー作戦をやっていますが」

雪乃「まだ情報が少ないように思いますわ」

都「ええ。このままだと犯人に繋がっていても見定められません。ですが」

雪乃「ですが?」

都「砂の粒ような情報でも必要です。地道にやりましょう」

雪乃「はい。ご協力しますわ」
75 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:22:36.60 ID:wT2tO75h0
49

ダーツ場・フィデラークラブ

フィデラークラブ
フォーレビルの地下1階にあるダーツ場。松永涼が出入りしていたライブハウス跡地の隣。

真奈美「お邪魔するよ」

塩見周子「来た来た。いらっしゃいませー、今は営業時間外だけど」

塩見周子
フェデラークラブのアルバイト店員。趣味は献血なので、痩せすぎに注意しているらしい。

真奈美「ワガママを言って済まない」

周子「いいよー、千奈美ちゃんが居たから捕まえて置いた方を褒めて」

まゆ「ありがとうございます……」

周子「あれ、助手さんだけ?探偵は?」

まゆ「えっと……」

真奈美「誘拐された。だから、探している」

周子「は?」

真奈美「佐久間君、この反応はどうかな」

まゆ「眉をひそめて……怪訝そうです」

真奈美「隠している態度でもないな」

まゆ「目撃された人と特徴も……違います」

周子「……本当に誘拐?」

真奈美「内密に」

周子「もちろん、それは守る主義だけど」

真奈美「君にも聞いておこう。この人を知っているか」

まゆ「古澤頼子、という人なんですけど……」

周子「うーん……」

真奈美「猫背気味だが長身だ。職業は美術館の学芸員だった」

周子「ごめん、記憶にない」

真奈美「そうか。小室君達はどちらかな」

周子「こっち。部屋は用意しておいたから、使っていいよ」
76 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:23:25.02 ID:wT2tO75h0
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ダーツ場・フィデラークラブ・個室

まゆ「こんにちは……お久しぶりです」

松永涼「ああ。千奈美、来たぞ」

小室千奈美「……」

松永涼
隣にあったライブハウスに出入りしていたボーカル。歌い続けているらしい。

小室千奈美
ライブハウスの件での依頼人。今日も朝までいたらしくウトウトしている。

まゆ「おやすみみたいですね……」

千奈美「起きてるわ……ふわぁ、探偵さんが何か、あら?」

真奈美「おはよう。そんなに時間は取らせない」

千奈美「探偵さんがいないけれど、何かあったのかしら」

真奈美「そうだ」

涼「事件でもあったのか?」

真奈美「聞きたいことがある。この人物を知っているか?」

まゆ「古澤頼子、という名前です……」

千奈美「……」

真奈美「身長は165センチくらい、細身で黒の長髪だ」

涼「……コイツか」

千奈美「心当たりがあるわけ?」

涼「顔は覚えていないが、シルエットに見覚えがある」

千奈美「へぇ……」

涼「アタシに吹き込んだ」

まゆ「事件のこと……」

涼「ああ」

真奈美「最近、接触はあったか」

涼「いいや。無くてラッキーだよ」

真奈美「小室君は、見覚えがあるか?」

千奈美「ちょっと、その写真良く見せて」

真奈美「ああ」

千奈美「うーん、違うわ」

まゆ「違う……?」

千奈美「背丈とか黒髪とか共通点はあるけど、絶対に違う」

涼「どういうことだ?」

千奈美「私が会ったのは、もっと目がネコとか獣みたいなハッキリとしてたわ。こんなに何を考えてそうかわからない感じじゃない」

まゆ「……真奈美さん」

真奈美「別の人物が増えたか」
77 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:24:15.17 ID:wT2tO75h0
千奈美「写真は返すわ。こいつが裏で糸でも引いてる訳?」

真奈美「ああ。君が言っていた、悪の組織の親玉だよ」

涼「悪の組織……か」

千奈美「イメージと違うけれど、私には関係ないこと」

まゆ「関係ない……?」

千奈美「縁は切ったわ。私だってあんな緊張感はいらないもの」

真奈美「2人とも関係は続いていないな?」

涼「ああ」

千奈美「もちろん」

まゆ「お話しても大丈夫そうですねぇ……」

真奈美「ああ。実は、高峯のあが誘拐された」

涼「……誘拐か」

千奈美「探偵さんが?あんなに目立つ存在をよく誘拐できるわね、すぐに見つかるでしょ」

まゆ「そうなんですが……」

真奈美「今の所見つかっていない」

千奈美「そう。それだけ?」

涼「それだけ、って……」

千奈美「犯人はその女が関係していて、私達はもう何も知らない。それだけよ」

真奈美「その通りだ。赤髪の女は知ってるか?」

千奈美「いいえ。涼は?」

涼「わからない。悪いな」

真奈美「協力は依頼されているか」

千奈美「いいえ」

涼「連絡はない」

千奈美「あったとしても協力しないわ」

まゆ「何か知りませんか……?」

千奈美「残念だけど、何も知らないわ」

まゆ「そうですか……」

千奈美「目的は何かしらね」

真奈美「目的?」

涼「目的というか……標的か」

千奈美「コインロッカーは涼だったけれど」

涼「……ああ」

まゆ「標的……」

涼「誰かをターゲットにして眺めている。目的は……事件にあるとは思えない」

千奈美「探偵さんを誘拐して、誰を眺めているのかしらね?」
78 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:25:46.14 ID:wT2tO75h0
51

高峯探偵事務所

雪乃「都さん、お客様をお連れしましたわ」

都「お客さん?誰でしょう?」

大石泉「こんにちは」

大石泉
頼子が産み出したハッカー。弟の病気は治療が始まったらしい。

都「えっと、大石泉さんですか?」

泉「うん」

都「真奈美さん達が訪ねに行ったのではありませんか?」

泉「来た方が良いと思ったから。見た方が早いし」

都「その通りですね」

泉「助けてもらったから、協力するよ。何をしたらいい?」

都「のあさんの資料を探しています。心当たりがある人物がいたら、教えてください」

泉「わかった。これから見て行けばいい?」

都「お願いします」

雪乃「そろそろお昼ですわね。準備をしますわ、泉さんもどうぞ」

泉「ありがとう、ご馳走になる」

都「しかし、何も進んでない状態です」

泉「PCの方も見よっか。いいかな」

都「非常時です。後で謝りましょう」

泉「これか……簡単に入れた、あっ」

都「どうしました?」

泉「みくにゃんのデータばっかり……壁紙もだし……」

都「……」
79 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:26:57.09 ID:wT2tO75h0
52

清路警察署・科捜研

梅木音葉「こんにちは……」

松山久美子「音葉ちゃん、今日は非番じゃないの?」

梅木音葉
科捜研所属。今日は私服で白衣は着用していない。趣味は森林浴。

松山久美子
科捜研所属。どんな休日を過ごしているか想像がつかない、そもそもいつ休んでいるのか、とは署員談。

音葉「はい……今日は出かけようかと」

久美子「急ぎの仕事はないし、こっちは問題ないわよ」

音葉「ええ……志希さんを探していまして」

久美子「志希ちゃん?見てないけど。昨日帰ってこなかった?」

音葉「いいえ……事件後に戻ってきたのですが」

久美子「今はいない、と」

音葉「ええ……」

久美子「昨日の報告書はここにあるし、一度来たのかもね」

音葉「ケータイも連絡がつきません……」

久美子「非番でしょ?明日には帰ってくる、と思う」

音葉「ええ……心配しているわけではないのですが」

久美子「志希ちゃんも、彼女なりにしっかりしてるから大丈夫。音葉ちゃん、安心して出かけて行って」

音葉「そうですね……」

久美子「良い休日を」

音葉「はい……あら……こんにちは、新田巡査」

美波「こんにちはっ!お出かけですか?」

音葉「はい……失礼します」

久美子「今度は新田さんね、どうしたの?」

美波「一ノ瀬さん、いらっしゃいますか?」

久美子「志希ちゃんが人気ね。いないけれど、報告書はここにあるわ」

美波「それを受け取りに来たんですっ。中身、確認しますね」

久美子「ええ。今日はお仕事?」

美波「非番ですけど、やれることはやっておこうかと」

久美子「熱心ね」

美波「中身、大丈夫ですっ!」

久美子「それは良かった。明日は来ると思うから、何かあったら明日ね」

美波「はい。あの、高峯さんは来てませんか?」

久美子「のあさん?いないけど、どうしたの?」

美波「いいえ、何でもないんです。警部補が気にしてまして」

久美子「留美さんが気にしてた……ああ、昨日大変だったわね」

美波「そうなんです。一ノ瀬さんのおかげで助かりました」

久美子「志希ちゃんがすぐに動けて良かった」

美波「それじゃあ、失礼しますっ。久美子さんもお体にはお気をつけて」

久美子「ムリはしてないわ。またね」
80 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:27:51.30 ID:wT2tO75h0
53

高峯探偵事務所

真奈美「帰ったぞ」

まゆ「ただいま帰りましたぁ……」

槙原志保「お帰りなさい!昼食の準備が出来てますよっ」

槙原志保
喫茶St.Vの店員。パフェを原動力に良く働くが、食べ過ぎてしまうとお肉がついてしまうらしい。

都「実に美味しい」

志保「マスターも喜びますよ!」

真奈美「ありがとう。雪乃君の手はもう少し借りるよ」

志保「お仕事は任せてください!私はこれで」

まゆ「ありがとうございます……」

真奈美「雪乃君は」

都「お店だと思います。そのうち戻ってくるかと」

泉「……うん、美味しい」

真奈美「大石君も来てくれてありがとう」

泉「大丈夫、美味しいご飯も食べれるし……今のところ、役に立っていないけど」

まゆ「何か……進展はありましたか」

都「残念ですが……」

雪乃「お茶を淹れてきましたわ」

まゆ「雪乃さん」

雪乃「お帰りでしたのね」

泉「こっちは、難航しそう」

雪乃「志保さんに甘い物も用意させていますわ。ここはリフレッシュしましょう」

都「発想の転換が必要かもしれません」

泉「頭に栄養入れて」

真奈美「……転換か」

まゆ「……そうかもしれません」

泉「どうしたの?」

都「思い当たるフシがありますか」

真奈美「いや、まずは食事しようか」

都「賛成です」

泉「私も。話してたら、何か閃くかも」

まゆ「はい……いただきましょう」
81 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:29:04.28 ID:wT2tO75h0
54

清路市内某所

のあ「……」ズルズル

雪菜「カップラーメンで良かったんですかぁ?」

のあ「カップラーメンを提示したのはそちら。心象を悪くして、食事抜きは避けたい」

雪菜「もっと良い物を食べてるかと思いましたぁ」

のあ「食べ物に貴賤はないわ」

雪菜「そうですかぁ、お金持ちの考えていることはわかりませんねぇ」

のあ「私にはあなたの考えがわからない」

雪菜「そうですねぇ、わかってくれないと困りますぅ」

のあ「私が、かしら」

雪菜「あなた、ではありません」

のあ「私ではない……か。ごちそうさま」

雪菜「おかわりはいりませんか?」

のあ「結構。飲み物はいただけるかしら」

雪菜「ミネラルウォーターをどうぞ。ここに置きますねぇ」

のあ「……」

雪菜「私もお昼にしましょう」

のあ「私でないのなら……」

雪菜「何か言いましたかぁ?」

のあ「真奈美ね」

雪菜「……」

のあ「正解みたいね、その反応は」

雪菜「うふふ、その通りですよぉ」

のあ「あなた、海外にいたのかしら」

雪菜「さぁ?答える必要はありません」

のあ「あなたに聞いても仕方がない」

雪菜「わかってくれましたかぁ?」

のあ「真奈美が気づかないと、いずれにせよ事態は進展しない」

雪菜「探偵さんに聞いてあげます、どうしてそう思ったんですかぁ?」

のあ「消去法。私を誘拐することで関係者を動かすなら誰か。会社や親族を脅迫していない以上、真奈美かまゆしかいない」

雪菜「カワイイまゆちゃんじゃないんですかぁ?」

のあ「まゆを怖がらせるには最適でしょうけど、それなら見つけて欲しいという要求は出さない」

雪菜「ええ、その通りですねぇ」

のあ「真奈美については、あなたの反応を見ればいい」

雪菜「……」
82 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:30:06.59 ID:wT2tO75h0
のあ「答えは真奈美が知ってる。本当なら私が聞けばいいだけ」

雪菜「へぇ……」

のあ「問題は、あなたが真奈美に何を覚え出させたいのか」

雪菜「あなたにはわからないことです」

のあ「そう、わからないこと。私にわからないなら、海外にいた時のこと」

雪菜「……」

のあ「木場真奈美は、予定を早めて海外から帰国しているわ。何故か」

雪菜「探偵さん、頭が回るんですねぇ。頼子さんがちょっと興味を持っていたのもわかります。でも」

のあ「あなたが原因かしら」

雪菜「真奈美さん、早く気づかないかなぁ」

のあ「希砂二島の時、あなたは初対面にも拘わらず真奈美さんと呼んでいた」

雪菜「あれ?そうでしたかぁ?」

のあ「しかし、真奈美はあなたに見覚えがない」

雪菜「うふふっ、だからですよ?」

のあ「だから……何かしら」

雪菜「私に気づいてもらわないと」

のあ「……」

雪菜「お話は終わりですかぁ?」

のあ「あなたはこれまでにも幾つかの事件に関わっている」

雪菜「ええ、そうですよ?」

のあ「役割は、死化粧かしら。希砂二島でも藤居朋の遺体に化粧をしていたわ」

雪菜「ええ、私は『化粧師』です」

のあ「西川保奈美に化粧をしたのは」

雪菜「私です」

のあ「当たるものね、確信はなかったけれど」

雪菜「当たり前ですよぉ。古澤頼子はあなたに情報を与えすぎています、何が目的か知りたくもないけど」

のあ「それはあなたも同じこと」

雪菜「そうですかぁ?」

のあ「前言を撤回するわ。逆ね、目的は真奈美が気づくことだから」

雪菜「ええ」
83 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:30:39.13 ID:wT2tO75h0
のあ「それほど……」

雪菜「何か?」

のあ「これは言わないわ。真奈美なら気づくわ」

雪菜「ふふん、知ってます」

のあ「だからこそ、私の身を危険にさらすのは得策ではない」

雪菜「あら、自己保身ですかぁ?」

のあ「アドバイスよ。危険が迫るなら、真奈美はあなたの思う通りには動かない。今の状況が保存されていることを伝えなさい」

雪菜「提案に乗りますねぇ。動画で送りましょう。セリフは、『私は無事』で。はい、1、2、3、スタート」

のあ「真奈美、私は無事よ」

雪菜「ありがとうございますぅ。お昼を食べるので失礼しますねぇ。逃げないでください」

のあ「逃げたらどうなるか、わかってるわ」

雪菜「物分かりが良くて助かりますぅ。それでは、後ほど」

のあ「……」
84 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:31:38.71 ID:wT2tO75h0
55

高峯探偵事務所

泉「……このコーヒー美味しい。他のが飲めなくなりそう」

雪乃「取り寄せた甲斐がありましたわ」

まゆ「飲みやすくて……リフレッシュできます」

都「はい。砂糖とミルクが引き立ちますね」

真奈美「それでいて負けていない」

泉「うん」

都「お腹も満たされました」

まゆ「考えも少し落ち着てきました……」

雪乃「だけれど、答えはまだですわ」

真奈美「この通り、無事を示す動画が送られてきたが……」

都「『真奈美、私は無事よ』というメッセージでした」

泉「送信元は偽装されてた。清路市内から送られたみたいだけど、どこかは不明」

まゆ「合成ではありませんし……」

雪乃「時計も映っていますわ」

真奈美「無事なのは本当のようだ」

泉「でも、それ以外の情報がない。ケータイのカメラで撮った一般的な物だし」

まゆ「どうしましょう……」

都「……」

真奈美「大石君、さっきの話だが」

泉「目的の話?」

真奈美「ああ」

泉「似たようなこと、言ってた」

都「古澤頼子が、ですか」

泉「そう。私がハッカーになる所を見届けるため、って」

まゆ「今回も誰かを観察している……?」

真奈美「そう仮定するとして」

雪乃「どなたをでしょうか?」

まゆ「東郷邸の事件は……アーニャちゃん」

都「西園寺邸の事件は、相葉夕美さんでしょうか」

真奈美「爆発事件は佐藤心かな」

まゆ「爆弾製造という……目的もあったと思います」

真奈美「松永涼は本人から聞いた」

都「希砂二島の件も、西島櫂を中心とした事件を観察していた……のでしょう。正気とは、思えません」

雪乃「ショッピングモールの件も、サンタクロースとトナカイではなく、犯人を」

泉「都心迷宮は私」

まゆ「……」

真奈美「椋鳥山荘も犯人を中心とした人間模様を見ていた」

雪乃「こう考えると……」
85 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:32:06.35 ID:wT2tO75h0
泉「犯人と、その関係者を観察してるみたい」

都「ええ。時には犯罪を助長して」

まゆ「そうなると……」

真奈美「のあを誘拐した人物を観察している、のか」

都「そうだと思います。古澤頼子はそちら側にいることもわかっています」

雪菜「ですが……」

泉「探偵さんを誘拐する意味がわからないね」

真奈美「そうだな……なんで、のあなんだ?」

まゆ「どうして……のあさんなんでしょう」

都「……」

雪乃「……」

まゆ「……」

真奈美「情報不足か。私はのあの助手だ。足で稼ごう」

まゆ「……はい」

泉「ごめん、ちょっと待って。気になることが……」

志希「ばたーん!にゃははは!のあにゃん、志希ちゃんが、遊びに来たよ〜」

泉「……誰?」

志希「音葉ちゃんに森に連れてかれるなんてノーセンキュー!欲しているのは辛気臭いか血生臭い事件!ケータイは切った、尾行されてない、自由!」

都「……えっと、どちら様でしょうか」

雪乃「一ノ瀬志希さんですわ。科捜研の」

都「警察に連絡しましたか?」

まゆ「いいえ……勝手に来ただけだと思います」

真奈美「志希君、確認していいか?」

志希「うん?見慣れない顔もいる。のあにゃんいなし。それに元気なさそう?どうしたの?」

真奈美「今、君は失踪しているようなものか?」

志希「そうだよ〜。誰も志希ちゃんの居場所は知らない。明日には出勤するから失踪解除!」

泉「渡しに舟?」

都「鴨が葱を背負って来る?」

雪乃「猫の手も借りたい、でしょうか」

真奈美「志希君、協力してくれないか」

志希「なんだかわからないけど、よーし、志希ちゃんに話してみよう!」

86 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:33:30.32 ID:wT2tO75h0
56

高峯探偵事務所

志希「にゃるほどね〜、のあにゃんを誘拐とはやり手だね〜」

まゆ「警察に連絡しないことが条件なので……」

都「ご内密に頼みます」

志希「うーん、心配いらないよ?この犯人は目的を果たすまで、そんなことしない」

都「すみません、どういうことでしょう」

志希「志希ちゃんの勘がそう言ってる」

泉「勘……」

志希「だから、目的だよ目的。目的がわからないと」

雪乃「考えてはいるのですが……」

志希「目的は人に依存する、人だ人人人。古澤頼子の関係者、出てない人は、いない?本当に?」

都「真奈美さん、この人、もしかして頭の周りが早すぎる人ですか?」

真奈美「もしかしなくても、そうだ。のあより早いかもしれない」

まゆ「早いんですけど……」

真奈美「探偵的な調査には向いていないな」

志希「そうだ!昨日の事件!」

泉「昨日の事件?」

志希「なるほど、留美にゃんを遠ざけた。変な事件なら留美にゃんを呼ばないのは損だし」

都「そこから、ですか」

志希「でも、誰が仕組んだかは分からない〜。留美にゃんは捜査を進めてないし、うん?うーん、おっと怪しい女!?」

真奈美「すまないが、私達にもわかるように説明してくれ」

志希「マナミン、いた。怪しい女がいるよ!」

まゆ「怪しい……人ですかぁ?」

志希「地下で会った時、話した。派手な化粧の女!」

真奈美「そんな話をしていたな」

まゆ「あれ……?」

都「どうしました?」

まゆ「真奈美さん、長野でそんなことがあったと、話してませんでしたかぁ?」

真奈美「ああ。濃い化粧のスーツの女。だが、何者かはわかっていない」

志希「あれ?いい感じだったのに?どっか間違えた?」

雪乃「私にはわかりませんわ……」

まゆ「同じです……」

泉「私も。考えが飛びすぎ」
87 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:34:01.94 ID:wT2tO75h0
都「真奈美さんは、何かわかりましたか?」

真奈美「……」

まゆ「真奈美さん?」

真奈美「大石君、先ほど送られてきた動画を見せてくれないか」

泉「うん。どうぞ」

志希「あっ、のあにゃんだ。睡眠、食事共に大丈夫そうだね〜。そこまで焦った様子もなし。人質として大事にされてる〜」

都「動画で気になる所がありますか?」

志希「うーん、本当に無事を伝えただけじゃない?」

真奈美「いいや、違う」

都「違うのですか?」

真奈美「佐久間君、聞いていいか」

まゆ「なんでしょう……?」

真奈美「無事を伝えるべき人物は、私か?」
88 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:34:52.63 ID:wT2tO75h0
57

高峯探偵事務所

志希「フーン、呼びかけが気になるんだ。探偵の助手だから」

まゆ「確かに……どうして、まゆに無事を伝えてくれないのでしょう」

雪乃「明らかに真奈美さんに言っていますわ」

志希「無事を伝えるのに呼びかけはいらないもんね〜」

泉「口調も呼びかけの方が少し強め。でも、撮影者が反応してない。手振れもない」

都「明確に真奈美さんを呼んでる。解決して欲しいからでしょうか」

志希「それだけ?違うでしょ〜」

まゆ「真奈美さんの呼びかけることを気にしていないということは……」

都「……知ってる」

志希「犯人の目的にあってるから、見逃したとか?」

雪乃「犯人の目的……」

志希「のあにゃんを誘拐しないと動いてくれなそうな人物」

都「それは……」

まゆ「まゆ、か……」

真奈美「私、か」

雪乃「最も親しい人ですもの」

真奈美「考えてもみなかった。私が標的なら、のあを狙う必要はないはずだろう」

泉「探偵さんである理由があったのかな」

志希「おー、鋭い鋭い!そうだよ、のあにゃんと関係があるなら」

都「探偵の助手であること、関係あるのでは」

まゆ「何かを……知ったとか」

志希「マナミン、思い出しなよ〜。人間は簡単に忘れないんだから、思い出せる!」

真奈美「すまない、のあや志希君ほど頭が回らないんだ」

都「ヒントがあると思い出すかもしれません」

雪乃「何かごさいますの?」

志希「そうだ、君!」

泉「私?」

志希「志希ちゃんが入ってきた時に何か言おうとしてた!話しちゃおう」

泉「そう言えば、忘れてた。1人ね、気になった人がいるんだ」

まゆ「どなた……ですか」
89 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:35:35.83 ID:wT2tO75h0
泉「旅行の写真、ほら古澤頼子も映ってたあれ」

都「希砂二島の写真ですか?」

泉「うん、見間違えだと思ったんだけど……会ったことがあるような気がして」

まゆ「用意しますねぇ……」

真奈美「……」

志希「志希ちゃん、思い出した。派手な化粧な女は、近くにいたかも、いるかも、とか言った!」

まゆ「どうぞ……皆さんが映ってます」

泉「古澤頼子ぐらいの背の人が多いよね」

雪乃「そうですわね」

志希「初めて見た。犯人は?」

都「この方です。西島櫂……仇討ちされてしまいましたが」

志希「背が高いんだ、170越えてるね、共犯で生き残ってるのは?」

都「この方です。沢田麻理菜さん」

まゆ「泉さんが気になっているのは……どなたですか」

泉「この人。私が見た時は髪の色も違ったし、化粧も違ったから別人だと思ったけど……」

都「え?」

まゆ「背丈も、髪の毛も目撃情報と合いますけど……」

雪乃「都さん、先ほどお電話したのでは……」

都「直感ははずれるタイプなのに、こんな時に限って……のあさんが無事のようで良かったです……」

泉「私の気のせい……かな」

志希「いいや、志希ちゃんアイは誤魔化せないよ〜。化粧で骨格までは誤魔化せない!見える印象は違っても、体は同じ。地下道で見たのはこの人、確信アリ」

真奈美「……」

志希「やっぱり、ホンモノは若かった。さすが、志希ちゃん、やるぅ。視力担当に鞍替えしようかな〜」

まゆ「でも……この人は」

都「ええ……同行者を失った、2人も失った被害者です。あの態度が嘘だとしたら……」

まゆ「信じられません……」

泉「信じられないくらい、嘘をつくのが上手な人なの?」

志希「のあにゃんが、警戒しないくらいに」

雪乃「……」

都「完全に蚊帳の外でした、まさか彼女を疑ったりできません」

志希「名前は?知ってるでしょ?」

都「井村雪菜、です。専門学校の生徒だと言っていました……いや、待ってください」

まゆ「何か……」

都「調査が終わった後にいなくなったんです、すぐに。どこかで休んでいると思っていたのですが……」

志希「どっかで、化粧の濃い女、見ちゃった?」

都「はい。船着き場に、いました。同じ人物とはとても……」

真奈美「……」

志希「マナミン、さっきから黙ってるけど、気づいてる?」

真奈美「だからか……海の向こうから、なんて答えたのは」

まゆ「真奈美さん……思い出しましたか」

真奈美「……確証が持てない」

都「私もです。裏を取りましょう」
90 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:36:48.70 ID:wT2tO75h0
泉「それがいいと思う」

雪乃「みくにゃんさんのファンの方に確認してみますわ」

都「私は専門学校に問い合わせます」

泉「私は……」

志希「君は志希ちゃんと一緒に画像解析しよう!写真を加工して、見覚えがあるかチェック!」

泉「わかった。そんなこともできるの?」

志希「むふふ、科捜研から無断で拝借したソフトがスタンドアロンで使えるのだ」

泉「……黙っておく」

志希「にゃはは、君はささっと大学卒業して、科捜研に来なよ、向いてる」

まゆ「後は……みくちゃんでしょうか」

真奈美「私から確認しようか」

志希「マナミンは思い出すのに専念しよう。何でもいいから」

真奈美「……わかった。佐久間君に、前川君の連絡先を教えるよ。任せた」

まゆ「わかりました」

都「はじめましょう」
91 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:37:44.94 ID:wT2tO75h0
58

清路市内某所

のあ「あら、戻ってきたわ」

雪菜「戻らないと思ったんですかぁ?」

のあ「私の役割は終わってるわ。真奈美なら、私が餓死する前に気づくでしょうし」

雪菜「……信頼してますねぇ」

のあ「あなたは、信頼してないのかしら」

雪菜「……」

のあ「……」

雪菜「そういうところ、キライです」

のあ「仕方がないわね」

雪菜「大人しくしていてください」

のあ「言われなくてもそうするわ」

雪菜「よいしょっ、あなたもお着替えしましょう」

のあ「ぬいぐるみ……どこかで見たような」

雪菜「……」

のあ「希砂二島でも、持ってたわ。口がチャックのぬいぐるみを」

雪菜「そうですよぉ、いつも一緒ですぅ」

のあ「服は手作りかしら」

雪菜「専門学校に通っていましたからぁ」

のあ「井村雪菜として」

雪菜「はぁい」

のあ「変ね」

雪菜「普通の方が少ないんですよぉ、この世界は」

のあ「別人になるのに、ぬいぐるみだけは同じ」

雪菜「出来ましたぁ。今日もカワイイですよぉ」

のあ「カワイイ……かしら」

雪菜「うふふっ」

のあ「……それを」

雪菜「何か言いましたかぁ?」

のあ「真奈美に送ったらどうかしら。希砂二島では気づいていないかもしれない」

雪菜「……」

のあ「前言撤回するわ。忘れてちょうだい」

雪菜「そうします。今度こそ、黙っていてください」

のあ「ええ。私にはもう出来ることもないわ、信じるだけよ」
92 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:39:04.11 ID:wT2tO75h0
59

高峯探偵事務所

志希「結論から言うと、クロ」

雪乃「のあさんと一緒にいた人物はこの方ですわ」

まゆ「みくちゃんもこの人を見たと言っていました……」

都「専門学校に井村雪菜という人物は在籍していませんでした」

泉「色々試してみたけど、それっぽいのになったよ。私が見たのは、この人」

志希「志希ちゃんもやってみたけど、志希ちゃんが見た時はこんな感じ。印象変わるでしょ?」

雪乃「本当ですわね。よく見ないとわかりませんわ」

まゆ「真奈美さんが長野でウワサを聞いた人は……」

志希「この、井村雪菜と名乗ってたのと同一人物」

泉「名前も井村と稲村だし……どっちが本当かわからないけど」

まゆ「どっちもニセモノ……とか」

真奈美「……」

志希「マナミンは何か思い出した?」

都「椿さんにお願いして、井村雪菜の写真を出来るだけ送ってもらいましたが」

真奈美「彼女に見覚えはなかったが……これには見覚えがある」

泉「ぬいぐるみ?ポケットから見えてる?」

都「本当ですね、気にも留めていませんでした」

雪乃「個性的で可愛らしいですわ」

まゆ「ぬいぐるみが……どうかしましたか」

真奈美「私は子供に配ったことがある、だが」

志希「井村雪菜に渡してない?」

都「井村雪菜には渡しているのではないでしょうか」

志希「どういうこと?」

都「真奈美さんは彼女に見覚えがありません。そうなると、頻繁に会う人物ではなかった。更に」

まゆ「更に……」

都「姿が変わっていた」
93 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:39:43.68 ID:wT2tO75h0
真奈美「そうだ。志希君、井村雪菜の実年齢はどれくらいだと思う」

志希「うーん、若いはず。専門学校に通う年齢にすら達してないかも」

真奈美「ここに来る前、海の向こうのことだ。ぬいぐるみの件は、更に前」

泉「数年前だと、私と同じくらいか」

雪乃「もっと幼いかもしれませんわね」

真奈美「もう一つ。私は彼女を日本人だと思ったことがない」

まゆ「どういうこと……でしょう」

真奈美「東洋系ではあったが、日本語は話していない」

志希「なるほど。マナミンの認識からは外れちゃうね〜」

都「のあさんならわかりませんが」

真奈美「そうだな……」

まゆ「でも……何故でしょう」

志希「何故は興味深いけど、もう少し後のお楽しみにしない?」

泉「ううん、手掛かりはあると思う。動機は重要だよ」

都「同感です。理由がなければ、事件を起こす必要もありません」

志希「そっか、探せと言ってるもんね〜。謎解きのヒントもないなら、答えは最初からある」

まゆ「真奈美さんが……関係するところ」

真奈美「海の向こうにいる友人、水木聖來という人物なんだが、連絡を取ってもいいか」

都「はい。解決の手掛かりになるなら」

志希「何を聞くの?ぬいぐるみの話?」

真奈美「いいや。素性のわからない女の話だ、海の向こうでも聞いていた」

まゆ「近づいて……来ました」

泉「確実に」

雪乃「はい」

志希「海外通話代はのあにゃんに請求しよう。エー・エス・エー・ピー」

真奈美「ああ。お願いがある」

都「なんでしょう?」

真奈美「清路市内の地名やビル名を当たりたい」

志希「リストを作れ、ってことだね」

都「わかりました」

まゆ「真奈美さんは……海の向こうの情報を」

真奈美「ああ。手間は取らせない」
94 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:41:26.94 ID:wT2tO75h0
60

幕間

海の向こう・水木聖來の自宅

水木聖來「こんな時間に誰だろ……わっ、真奈美さんだ!もしもし!」

水木聖來
真奈美とは海の向こうで出会って交流があった。諦められなかったダンスの夢を叶えている。

真奈美『聖來君か?久しぶりだな』

聖來「久しぶりに決まってる、帰国してから電話なんてなかったし」

真奈美『そうだったか。そっちはどうだい?』

聖來「お分かりの通り、こっちは深夜だよ」

真奈美『順調そうだな』

聖來「おかげさまで。そっちは?」

真奈美『仕事は問題ない』

聖來「そう言う時は別の問題がある。何かあった?」

真奈美『聖來君、口がチャックになっているぬいぐるみを覚えているか』

聖來「え?あのてるてる坊主みたいなやつ?」

真奈美『ああ』

聖來「うちにもまだあるよ。子供に渡したりしたよね、押し付けられちゃって」

真奈美『さっき、メールをした。写真の人物に見覚えはないか?』

聖來「待って……うん、受信した。日本で行った旅行の写真?」

真奈美『矢印の先にいる人物に見覚えはないか?』

聖來「うーん、ないよ?」

真奈美『そうか』

聖來「でも、最近見た人がいる」

真奈美『なに、本当か?』

聖來「写真で見たんだけどね、この黒髪でメガネしている人」

真奈美『古澤頼子、か。どこで写真を見たのかな』

聖來「この間ね、国際捜査官とかいう人が訪ねて来て見せてくれた。調べてるって」

真奈美『国際捜査官……?』
95 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:42:27.11 ID:wT2tO75h0
聖來「怪しかったけど日本語も堪能だったし、ダンスが好きだから一緒にショーも見に行っちゃった。話もそこそこ」

真奈美『帰国直前に私に起こったこと、か』

聖來「うん。上手く行きすぎてる話をしたよ」

真奈美『望んでいないのに、誰かが手をまわしている』

聖來「そう。役に立ったか、わからないけどね」

真奈美『国際捜査官の名前は』

聖來「ヘレンって言ってた。偽名だよね、フルネームは教えてくれなかった。もう日本に帰った、そんなこと言ってたよ」

真奈美『やはりか。海のむこうの話をしていたからな……』

聖來「真奈美さん、知り合い?」

真奈美『そういうことになるな。聖來君の周りで変わったことはないか?』

聖來「ううん。ヘレンが来たくらい」

真奈美『そうか。こんな時間に悪かった』

聖來「大丈夫。そっちの問題は解決しそう?」

真奈美『解決するよ。ありがとう、また会おう』

聖來「ええ」

真奈美『失礼するよ』

聖來「結局詳しくは教えてくれないの変わらないか。勝手に調べるくらいがいいのかもね、真奈美さんは」
96 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:43:16.98 ID:wT2tO75h0
61

高峯探偵事務所

泉「なんか……濃いのが増えたね」

まゆ「ええ……」

志希「増えた?どういうこと?」

都「まぁ、7人集まれば個性派集団になりがちですから」

雪乃「ヘレンさん、お茶ですわ」

ヘレン「グラシアス、雪乃。やはり日本の緑茶は素晴らしいわ」

ヘレン
国際捜査官。追っている事件は複数あるらしい。どうやら地球の裏側から帰って来たようだ。

真奈美「日本にいて助かった」

ヘレン「ディテクティブを訪ねる予定が早まっただけ。感謝は不要よ」

泉「聞いていい?警察に連絡しないのが条件だけど、大丈夫なの?」

ヘレン「ノープロブレム」

都「一応警察ではないそうです」

真奈美「それに、警察内の内通者対策はしている」

志希「連絡も経由したし、平気だと思うよ?」

ヘレン「イエス」

まゆ「のあさんのお話は……」

ヘレン「移動中に目を通したわ」

志希「マナミン、聞きたいことは?」

都「犯人について、でしょうか」

真奈美「聖來君を訪ねたのは知っている。海の向こうの件で、わかったことはあるのか」

ヘレン「ワトソンの本当に聞きたいことを問いなさい。そこからはじめましょう」

都「のあさんを助け出すことが先決です」

まゆ「それなら……」

真奈美「犯人は私に固執しているな?」

ヘレン「イエス。それはここにいる人物はわかっていること」

真奈美「自分の行動を気づかせようとしている。海の向こうのでのことを」

ヘレン「イエス。つまり?」

真奈美「のあが居る場所は、海の向こうで私が住んでいたか働いていたか、何らかに関係した場所なんだろう」

志希「志希にゃんも考えは同じく」

都「私もです。そもそもヒントが少なすぎます」

まゆ「固執しているなら……」

真奈美「可能性は十分だ。あくまでも、私に見つけさせたい」

ヘレン「ワトソン、ザッツライト!いいでしょう、イズミだったわね?」

泉「名乗った覚えないけど、私が大石泉」

ヘレン「クエスチョン、ことの始まりは何時から?」
97 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:44:16.72 ID:wT2tO75h0
泉「えっと、真奈美さんが海の向こうにいた頃?」

ヘレン「残念ながら不正解。始まりはワトソンとは関係ない」

雪乃「関係ない?」

ヘレン「ワトソンのいう『素性のわからない女』がいた。アーティストや関係者の間でウワサされていた」

都「話が飛んだ気がします」

まゆ「その人と犯人の関係は……なんでしょう」

ヘレン「焦らない。彼女は暗躍していたが、突然姿を消してしまった。なぜか、ディテクティブ都?わかるかしら?」

都「亡くなった、のですか」

ヘレン「生死は不明。その前に、とある人物が街を訪れている」

まゆ「古澤頼子……ですか」

ヘレン「訓練しているわね、ザッツライト。大学院生と自称していたわ」

都「何をしたか、気になりますね」

ヘレン「『キュレイター』は標的を見つけた。憧れとも何ともつかない感情を持つ少女に、『素性のわからない女』に成り代わらせた」

真奈美「……」

ヘレン「『素性のわからない女』の正体はわかって来たわ。職業はメイクアップアーティスト……であった時代もあった死化粧師。その技術も受け継いでいる」

志希「なんか報告書を読んだ気がする?」

まゆ「……保奈美ちゃんの、ことです」

志希「あっ、それかぁ」

ヘレン「少女は『素性のわからない女』から全てを奪い、成り代わった」

泉「古澤頼子によって」

ヘレン「正体を隠すために『化粧の濃い女』になった。同時に時間が彼女を味方した」

志希「成長期?化粧よりも強力だね」

ヘレン「イエス。そして、日本から来たボーカリスト、マナミ・キバに幸運が訪れる」

まゆ「……不自然に」

ヘレン「ある者はスキャンダル、ある者は身内の不幸、ある者は自身の不幸。チャンスは回ってきていた」

真奈美「だが、私はそれを良しとしなかった」

ヘレン「マナミ・キバは予定を早め本来の目的へ向かい、結果としてワトソンとなった」

都「本来の目的?」

まゆ「真奈美さんは元々日本で仕事をするつもりでしたから……」

真奈美「自身の評価は難しいが、腕は十二分に磨いたつもりだった」

泉「うーん……何か、おかしい気がする」

ヘレン「泉、犯人は間違えているわ。何をかしら?」

泉「真奈美さんの目的を知らない?」

ヘレン「賢いわ。本来の目的を彼女は知らない」

まゆ「目的を知らないのに……行動できていた」

ヘレン「『キュレイター』に吹き込まれていたから」

都「彼女も被害者なのですか」

ヘレン「今は知っているはずよ。それでも協力しているのは」

志希「マナミンに執着してるからでしょ。マナミンの目的が分かりかねてるから、行動は控えめだけど」

まゆ「分かりかねてるのではなく……分かりたくないから」

ヘレン「ザッツライト」

真奈美「なら……何故姿を現さない?」
98 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:45:13.64 ID:wT2tO75h0
雪乃「それは、出来ないと思いますわ」

ヘレン「雪乃、答えてみなさい」

雪乃「後ろめたいことをしてきたのですから、自分からは言えませんわ」

泉「奥ゆかしいというか、何というか……」

ヘレン「感情は恐怖に近い。自身を受け入れてくれないという可能性」

まゆ「今の状況では……」

都「叶うことはありませんね」

真奈美「だから、目的が変わる」

ヘレン「ディテクティブを上回り、自身を気づかせ、印象付ける」

志希「それは成功」

ヘレン「真意は他人にはわからない。ワトソン、あなたが確かめてきなさい」

真奈美「もとより、そのつもりだ」

都「しかし……悪事に手を染めて」

志希「他人に成り代わって、メイクまで習って」

泉「海の向こうから渡ってきて」

まゆ「この国の人に成りすまして……」

ヘレン「『キュレイター』と共に過ごし」

都「今回の事件を起こしました」

雪乃「偽装の事件まで起こしていますわ」

ヘレン「そして、難易度の高いターゲットの誘拐に成功した」

都「異常な執着ですね」

真奈美「私にそれほどの価値があるとは、思えない」

ヘレン「価値など人ぞれぞれ。ワトソン、これで充分ね?」

真奈美「ああ。犯人の目的の半分は叶えてしまったな」

都「真奈美さんに気付かせること」

志希「執着、っていう感情も含めて」

真奈美「地図を持ってきてくれ。私ならわかる場所だ」

まゆ「はい……」

志希「リストも作ったよー」

真奈美「ここまで来た、虱潰しにする必要もない」

都「どういうことでしょうか」

真奈美「シュモネという単語を使っている、または使っていたところはないか」
99 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:46:13.17 ID:wT2tO75h0
ヘレン「シュモネホールは成功したボーカリストの立つ舞台であり、さらなる高みへと昇るためのステージ」

都「犯人が選びそうですね」

志希「うん、あったよ」

まゆ「どこ……ですか」

志希「シュモネっていう美容室があるよ、卯美田駅から歩いて5分くらい」

雪乃「そちらに、のあさんがいらっしゃるのですか」

泉「ちょっと待って、そっちは新店舗みたい。前にあったのは……」

まゆ「雑居ビルと工場が多いところ……」

泉「テナントとして入ってた建物が、市街地の再整備計画で立ち退きになったみたい」

都「使えますね」

泉「建物はまだ壊されてない」

志希「無人の建物、秘密基地にはいいよねー」

泉「一応、間取りのデータもあった」

志希「内装は変えられてるかもねー」

真奈美「……よし」

ヘレン「ワトソン、どうするのかしら?」

真奈美「私が出向くよ」

雪乃「もっと安全な方法はありませんの?」

泉「そうは思うけど」

志希「マナミンの話以外は絶対聞かないよねー。マナミンの話も聞かなそう」

都「会いに行くことで、軟化すればいいのですが」

まゆ「……真奈美さん」

真奈美「佐久間君、どうやら私の問題のようだ。任せてくれないか」

まゆ「……はい。信じます」

真奈美「ありがとう」

雪乃「ご無事をお祈りしていますわ」

泉「やれることはやろうかな」

志希「にゃはは、面白くなってきたねー」

都「ちょっと面白いと思うほど、私は割り切れません……」

真奈美「のあと一緒に多少荒っぽいこともやってきた、問題ないよ」

泉「これ、信頼していいの?」

まゆ「私が来てからは……そんなことはなかったような……」
100 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:47:08.63 ID:wT2tO75h0
ヘレン「過去は思いも知れずに敵になるもの。しかし、克己は人に備わった能力よ。ワトソン、行ってきなさい」

真奈美「ああ、行ってくる」
101 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:48:00.34 ID:wT2tO75h0
62

清路市内・美容室シュモネが入居していた建物

のあ「……あ。あなた、聞きたいことがあるのだけれど」

雪菜「どうしましたかぁ?」

のあ「このフロア、手前に部屋があるのかしら」

雪菜「そうですよぉ、あなたには関係ないことですけれど」

のあ「控室かしらね、そうなると何かの店舗だった」

雪菜「探偵さんは余計なことを考えてますねぇ」

のあ「それが仕事だもの。銃の扱いは得意かしら」

雪菜「誰が、ですかぁ?」

のあ「あなたが」

雪菜「使えませんよぉ、危ないですからぁ」

のあ「何かの店舗だった、そこにあるのは裏口だと考えると、向こうが店舗側の入口ね。道路もこちら側の部屋にはない」

雪菜「さっきからお喋りですねぇ。どうしました?」

のあ「真奈美はピッキングが出来るのよ、教えたことはそつなくこなすわ。才能かしら」

雪菜「悪いことを仕込んだんですねぇ、あの人に」

のあ「真奈美の意欲があったからよ、いけないかしら」

雪菜「いけないんですよぉ」

のあ「私は何があったかは知らないわ。あなたが何者かもわからない」

雪菜「わかるはずがありません」

のあ「わかることはある」

雪菜「わかること?」

のあ「特に超人的な身体能力はないようね」

雪菜「ふふ、あった方が良かったですか?」

のあ「いいえ。それと、もう一つ」

雪菜「もう一つ?」

のあ「私が所有している車のエンジン音、知らないのね」

雪菜「え?」

のあ「真奈美、遅いわ」

雪菜「お喋りは時間稼ぎ、ですか」

真奈美「残念なことに、のあほど頭の回転は速くない。手をあげろ、『化粧師』」
102 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:49:29.35 ID:wT2tO75h0
63

清路市内・美容室シュモネが入居していた建物

のあ「銀の銃には実弾が入っているわ、大人しく従いなさい」

雪菜「あはは!どうして?」

のあ「あなたの負け……というわけでないわね」

雪菜「ええ!マナミ、やっと来てくれましたぁ!」

真奈美「そういうことだ。君の望み通り、ここに来た」

雪菜「ここは」

真奈美「かつてシュモネと呼ばれていた美容室、私が海の向こうにいた時に所縁ある場所と同じ名前だ」

のあ「ふむ……」

雪菜「はい、その通りです。覚えていますか?」

真奈美「覚えているよ。そう簡単には忘れない」

のあ「……」

真奈美「だが、言っておかないといけないことがある」

雪菜「なにですかぁ♪」

のあ「真奈美!」

真奈美「来たこと以外に君の望みに答える気はない!」

雪菜「え?」

のあ「それは私の銃。ならば、私のもとに来るはず」

パーン……。

のあ「銃を投げるのは危ないわ。おかげでカギは開いたけれど」

雪菜「そっちが目的……!」

のあ「不正解。真奈美から目を逸らしてはダメよ」

真奈美「そういうこと、だ!」

雪菜「うっ……どうして……」

真奈美「少し意識を失っていてくれ。のあから習った、傷つけたりはしないさ」

雪菜「……」

真奈美「……よし」

のあ「彼女の想像と違ったのかしら。少しくらい話が出来ると思ってたでしょうね」

真奈美「のあ、無事か」

のあ「この通り。早めに来てくれて助かったわ」

真奈美「それは良かった」

のあ「警察に連絡は」

真奈美「一ノ瀬君にお願いした。しばらくしたら、来るさ」

のあ「志希に?」

真奈美「安心してくれ、一ノ瀬君が勝手に来ただけだ。警察には連絡していない」

のあ「私にリスクを負わせたわけじゃない、と」

真奈美「当たり前だ」

103 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:50:12.09 ID:wT2tO75h0
のあ「真奈美は、彼女の目的はわかったのかしら」

真奈美「ああ」

のあ「それなのに会話にすら応じないのね」

真奈美「生憎、そこまでお人好しではないからな」

のあ「知ってるわ」

真奈美「のあ、慌てていないな」

のあ「彼女は『化粧師』、海外時代に関係、ここは真奈美に関係している、真奈美が探し出すことが目的、真の目的もなんとなく察しはつく、探し出せば真奈美は来る、真奈美一人なら隙は見せるはず」

真奈美「なんだ、お見通しか。まっ、それくらいじゃないとツーカーでは動けないか」

のあ「私がそちらにいれば、夜中には解決したわ。真奈美、もう少し訓練が必要ね」

真奈美「私はのあになる気はないよ」

のあ「ええ。さて、詳しいことは……彼女が起きたらわかるかしら」

真奈美「……さあな」
104 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:51:34.95 ID:wT2tO75h0
64

清路警察署・刑事一課和久井班室

留美「のあ!」

のあ「あら、お疲れ様」

留美「……あれ?」

のあ「どうしたの、珍しい顔をして」

留美「何も問題なさそうね……心配はいらなかったわ」

のあ「おかげさまで。体も心もすこぶる健康よ」

留美「良かった……早く気がつけば、こんな事には」

のあ「反省することはないわ。あなたを引き離す工作まであったのに」

留美「それも含めて、何とかしたかったわ。気づくのは難しかったでしょうけれど……」

のあ「留美、気持ちだけで充分よ」

留美「私は警察官で、あなたは友人だから、そうもいかないわ」

のあ「仕事熱心で正義感の塊は留美の美徳だけれど、自分に厳しすぎるわ」

留美「とにかく無事で良かったわ、ここからは任せてちょうだい」

のあ「ええ。どこまで話は聞いているかしら」

留美「大体は。のあもかしら」

のあ「ええ。ヘレンの調査内容も、希砂本島の件にも関わっていることも」

留美「高垣巡査部長には連絡済みよ。もう一度洗い直させるわ」

のあ「お願いするわ。でも、苦労するわよ」

留美「彼女、何も話していないのかしら」

のあ「そのようね……真奈美が取調室から戻ってきたわ」

真奈美「和久井警部補、災難だったな」

留美「のあがいつも通りで安心したわ。真奈美さんもお疲れ様」

真奈美「ありがとう」

留美「犯人の様子は」

真奈美「完全に黙秘だな……何か話す様子はない」

留美「共犯者くらいは聞き出したいけれど」

のあ「望みは薄いわね。古澤頼子の居場所もわからないし」

留美「彼女、何者なのかしら」

105 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:52:03.58 ID:wT2tO75h0
のあ「わからない。井村雪菜としか名乗ったことはないから、井村雪菜としか言えないわ」

留美「真奈美さんは、知ってるのかしら」

真奈美「わからない。彼女は『化粧師』だ」

のあ「化粧による仮面で誰にでもなる」

真奈美「だから、もはや誰でもない」

のあ「自分を失ってまで、何者になる必要なんてないと思うけれど」

留美「難儀ね」

のあ「真奈美なら話す可能性はあるわね」

真奈美「それはしない」

留美「既に捕まったのに、厳しいのね」

真奈美「道理は通すべきだ。真摯に聞けば、私は答えた」

のあ「井村雪菜として、聞けば良かっただけ」

真奈美「そうだ。希砂二島で聞き出せば良かったんだ」

留美「それでも、この事件を起こした理由は」

真奈美「想像しても仕方がない」

のあ「ええ」

留美「……ごめんなさい、勘違いしていたわ」

真奈美「何をかな」

留美「落ち着いているけれど、怒っているのね」

真奈美「……」

留美「それは私も同じだから、何も言えないけれど」

のあ「留美の言う通りね、真奈美?」

真奈美「……そういうことにしておいてくれ」

のあ「助手の怒りが再沸騰しないうちに帰るわ。留美、任せたわ」

留美「もちろん。ライブの話は後で落ち着いた頃に」

のあ「暇だから十二分に反芻したわ。最初から最後までブログに書けるほどに」

真奈美「余裕があるな……」

留美「余裕はあったのね、途中から」

のあ「ええ。私の助手は凄いのよ」

留美「知ってるわ」

亜季「警部補殿!到着したでありますか!」

留美「ご苦労様、大和巡査部長。取り調べは交代するわ」

のあ「私はここで失礼するわ。真奈美、帰りましょう」

真奈美「ああ。終わりだ」

留美「のあ、真奈美さん、またね」
106 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:53:28.52 ID:wT2tO75h0
65

車内

のあ「ねぇ、真奈美」

真奈美「どうした、のあ」

のあ「思った通り、矢面に立ってくれたわね」

真奈美「何の話だ?」

のあ「あなたは主役にはならないのかしら?」

真奈美「ハイキングの時に、そんな話をしていたな」

のあ「真奈美なら、どんな道も進めたでしょう」

真奈美「ああ。だから、選択の問題だ」

のあ「選択の問題、ね」

真奈美「そこから逃げているわけじゃない」

のあ「直接歌を届けることは、得難い喜びよ」

真奈美「それは、のあの意見か?」

のあ「私の意見ではないわ。服部瞳子がインタビューで言っていたこと」

真奈美「その感覚くらい、私は知っているよ」

のあ「そう」

真奈美「私の場所はここだよ。あれが望んでいた場所じゃない」

のあ「誰が正しいことを言っているかなんて、決まってないの」

真奈美「……」

のあ「悪の幹部が正しいことを言っているかもしれない」

真奈美「特撮映画でも見たのか」

のあ「私はあなたに間違った選択をさせていないかしら」

真奈美「……」

のあ「どうかしら」
107 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:54:50.84 ID:wT2tO75h0
真奈美「のあが負い目に感じているみたいだな、まるで」

のあ「そう思うの?」

真奈美「間違いなんて幾らでもある。後悔もするさ」

のあ「……」

真奈美「どんな選択も自分の意思だ」

のあ「……そう」

真奈美「私は私の意思でここにいる。木場真奈美でなくなったこともない。だから、間違えても何とかなるさ」

のあ「……」

真奈美「まぁ、言いたいことはだな」

のあ「何かしら」

真奈美「木場真奈美は、そんなに軟じゃない」

のあ「……」

真奈美「のあが心配してくれるのはありがたいよ。あまり心配されるタイプじゃないからな」

のあ「昔からなのね」

真奈美「手のかからない子供だったからな」

のあ「言っても聞かないでしょうに」

真奈美「その通り。わかってるじゃないか」

のあ「真奈美は好きにすればいいわ」

真奈美「そうするよ」

のあ「真奈美が真奈美であるなら、問題ないわ」

真奈美「ああ」

のあ「自分が自分以外の何者でなくなって、得られるものがあるのかしらね」

真奈美「『化粧師』のことか」

のあ「高峯のあでなくなることが怖い私には、わからない。父と母の子供がいなくなってしまうのは怖いわ」

真奈美「私も保障するよ」

のあ「ありがとう、真奈美」

真奈美「のあのために協力してくれた人も多い。高峯のあは、彼女達が生かしてくれる」

のあ「いいえ。私じゃなくて真奈美の人望よ」

真奈美「そうかな?」

のあ「私なら真奈美とまゆがいれば解決できたわ。すぐに」

真奈美「なんだ、いつも通りの自信過剰か」

のあ「ええ。真奈美もそれくらいでいいわ」

真奈美「のあの助手だが、それは遠慮しておくよ」

のあ「……そう」

真奈美「私は私だ。それでいいだろう?」
108 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:55:49.04 ID:wT2tO75h0
66

高峯探偵事務所

のあ「ただいま」

まゆ「のあさん、お帰りなさい……!」

のあ「あら、抱き付いてきて。寂しかったかしら」

まゆ「……はい。心配しましたよぉ」

のあ「私は1日じゃすまなかったわ」

まゆ「えっ……その……ごめんなさい」

のあ「私も無事に戻ってきたわ。これで、辛い思いはお相子ね」

まゆ「……うん」

真奈美「ただいま。そう佐久間君にイジワルするなよ?」

のあ「少しだけ茶目っ気を出してみただけよ。まゆ、この通り無事よ」

まゆ「お怪我とか……ありませんか」

のあ「ないわ。まゆのおかげよ、ありがとう」

まゆ「まゆは何も……皆のおかげです」

真奈美「その皆はどうした?」

のあ「誰もいないけれど」

まゆ「帰りました」

真奈美「帰った?」

まゆ「ヘレンさんは気になることがあるとか。雪乃さんはお仕事に戻りました」

のあ「志希は科捜研に戻ったわね。ふぅ……我が家のソファは最高ね」

真奈美「大石君は?」

まゆ「友達との約束があるとか。お礼は別にいらない、助けてもらった恩返しだから、だそうですよぉ」

のあ「そう、都は?」

まゆ「また来ます、って伝えてくださいと。ひとつ、謝ることがあると」

のあ「何かしら?」

まゆ「井村雪菜に軽率に電話をかけたのは失敗だった、そうですよぉ」

のあ「いいえ、失敗ではない。彼女について可能性を絞り込むことができた、後でお礼を言っておくわ」

真奈美「結局、いつも通りだな」

まゆ「そうですねぇ」

のあ「誰かいたら疲れるもの。気をつかってくれたんでしょう」

まゆ「そうでしょうか……?」

真奈美「雪乃君はともかく、他はどうかな」

まゆ「そういうことにしておきましょう。ね、のあさん?」
109 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:56:47.46 ID:wT2tO75h0
のあ「……」

まゆ「あら……」

真奈美「思ったよりお疲れだったな、お休みだ」

まゆ「真奈美さんもお疲れ様でした」

真奈美「私は大丈夫だよ」

まゆ「まぁまぁ、座っててください。ね?」

真奈美「押さなくてもいい。お言葉に甘えるよ」

まゆ「はぁい。お茶を準備しますねぇ」

真奈美「わかったよ、少し休むよ」

まゆ「はい。お夕飯の用意もしないと、何がいいですかぁ?」

真奈美「ふわぁ……」

まゆ「珍しいですねぇ、欠伸なんて」

真奈美「やはり、少し眠るよ」

まゆ「おやすみなさい、真奈美さん」

真奈美「……」

まゆ「仲良しですねぇ……だから」

のあ「……」

まゆ「無事に帰ってこれたんですねぇ、きっと」

エンディングテーマ

探し人
歌 前川みく
110 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 21:57:30.49 ID:wT2tO75h0
67

幕間



清路警察署・留置場

雪菜「……」

美波「こんばんは。お食事も済んで、お話する気になりました?」

雪菜「……」

美波「大丈夫ですよっ。私は知ってて、ならない方がいいと思ってます」

雪菜「おバカさんですねぇ……もう遅い……」

美波「えっ?」

雪菜「自殺じゃないですよ……ねぇ……」

美波「聞いてません……」

雪菜「誰だったのかな……私は……何に……」

美波「誰か!急病ですっ!」

雪菜「……」

美波「私も騙すなんて人が悪い……こっちですっ!」

幕間 了
111 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 22:00:10.06 ID:wT2tO75h0
68

エピローグ・ガール/ミーツ/ガール

良楠公園
らなんこうえん。大きな桜の木がシンボル。風花というお花屋さんが北口の前にある。

『渋谷凛さん、ご連絡です。化粧師が亡くなりました』

花も葉もない桜を見上げていた時に、頼子からメッセージが来た。

白々しい、直接じゃなくても自分で手をかけたくせに。

メッセージに私の名前を書いてきた理由も気になる、頑なに呼ばなかったのに。

何か考えはある。その考えの道には乗らない。

『化粧師』を少しは尊敬していた。名前に縛られないから。

縛られない何者かになれていたのに、それを手放そうとしていた。

頼子には返信しない。今の寝床に帰ろう。

公園を出ると、風花という名前のフラワーショップはまだ営業していた。

制服姿の女の子が、値札の桁を数えたり、うんうん悩みながら、花を見繕っていた。

時間が遅い。アルバイト……いや、習い事の帰りかな。きっと、良さげな家庭で育ってきたはず。

花屋の店員さんはいなくて、女の子は悩み続けている。嬉しそうに。

「あ……」

目と目が逢って、自分が立ち止まっていると気がついた。

「こんばんは!えっと、店員さんですか?」

そう見えたのだろうか。間違いではないけれど。

「贈り物を探してて……あっ、贈り物といっても自分用なんですけど」

「自分用?」

不思議な言い方に思わず、オウム返しをしてしまった。

「私にとって、すごく嬉しい記念日なんです」

本当に嬉しそうだったから、無下には出来なかった。

「それとか」

「これ、ですか?」

「アネモネ。花言葉は期待、希望。そんな感じでしょ」

店員じゃないから、ここまで。帰り道を数歩進んだところで、声がした。

「あの、ありがとうございました!」

なぜ、止まったんだろう。どうして、振り向いたのかな。

「私、がんばりますっ!」

「うん。がんばって」

なんで、答えたのかな。

私は女の子の反応を見ないで歩きだす。

星に背を向けて、私は暗闇に歩き始めた。

エピローグ 了


製作 tv〇sahi
112 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 22:01:20.48 ID:wT2tO75h0
次回

少女は星と出会う。

渋谷凛「高峯のあの事件簿・星とアネモネ」

113 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 22:02:50.19 ID:wT2tO75h0
オマケ

撮影中の一幕・変身の心得

CoP「井村さん」

雪菜「プロデューサーさん、どうしましたかぁ?」

CoP「撮影はいかがでしょうか」

雪菜「ばっちりですよぉ。まるで別人みたいと言われましたぁ」

CoP「変身の心得は知ってますか」

雪菜「心得ですかぁ?ぜひ教えてください」

CoP「自分を消すことです」

雪菜「うーん……それは違うと思いますよぉ」

CoP「はい、井村さんには違います」

雪菜「アイドルですからぁ」

CoP「まずは役が浮かび、必ず演じた役者がわかること。無になる役者は本職にお任せしましょう」

雪菜「はぁい。もっとカワイイ私で」

CoP「すみません。あまり可愛らしくない役で」

雪菜「いいえ……ヒミツが多い女は親近感があります」

CoP「そうですか……え、今なんと言いましたか?」

雪菜「うふふっ。それじゃあ、少しお水を飲んで戻りますねぇ」
114 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 22:03:54.69 ID:wT2tO75h0
P達の視聴後

PaP「それで、カワイイ櫂と172’sについてだが」

CoP「え?この流れでその話します?」

CuP「音葉ちゃんと真奈美さんはOKだったんですか?」

PaP「2人とも乗り気だったよ。あ、櫂ちゃんにはまだ秘密な?」

CoP「むしろ僕が聞いてないんですが……」

CuP「音葉ちゃんもくだけてきましたね、真奈美さんは流石ですが」

PaP「やっぱり楽しいよ、ステージはいいだろ?な?」

CoP「ええ、舞台の上は……良いものですよ」

PaP「さすが、元舞台役者。カワイイ172’sは任せた!とりあえず、ハコは準備しておいたからな!」

CoP「一切合切何も聞いてないんですが……」

CuP「誘導質問だ……」

CoP「まぁ、断りませんよ。やらせていただきます」

CuP「この流れで受ける人なんですから……」

おしまい
115 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 22:04:35.69 ID:wT2tO75h0
あとがき

井村雪菜は意外にも謎多き少女なのよね。
真奈美と雪菜の組み合わせはシナジーがある、はず。

さて、残り2話。クライマックスです。
みくにゃんも出るよ。

次回は、
渋谷凛「高峯のあの事件簿・星とアネモネ」
です。

それでは。
116 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2019/10/03(木) 22:05:31.91 ID:wT2tO75h0
シリーズリスト・公開前のものは全て仮題

高峯のあの事件簿

第1話・ユメの芸術
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1472563544/
第2話・毒花
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475582733/
第3話・爆弾魔の本心
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480507649/
第4話・コイン、ロッカー
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484475237/
第5話・夏と孤島と洋館と殺人事件と探偵と探偵
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503557618/
第6話・プレゼント/フォー/ユー
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1513078349/
第7話・都心迷宮
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521022496/
第8話・『佐久間まゆの殺人』
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1550664151/
第9話・高峯のあの失踪
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1570101339/
第10話・星とアネモネ
最終話・銀弾の射手(完)

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