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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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156 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/20(木) 20:57:51.00 ID:mnjV/Xve0
「華琳さん、歓迎いたしますわ」

おーっほっほ、と高笑いする袁紹。内心曹操は苦笑するのだ。
変わらないな、と。
そしてそれでこそ、とも思うのだ。それでこそ、一手打った甲斐があったというもの。
そう、自分の一手により彼女は無事洛陽を脱したのだが、それを微塵も気にした様子もない。
この図太さ、あるいは面の皮の厚さは見習うべきであろうか。いや、本人は全く素なのであるのであろうけれども。

それはともかく、真名を交わした親友――これで曹操は袁紹を親友と思っているのである――の出迎えに曹操は気を良くする。
無理もない。袁紹が自ら出迎えたのだ。これは破格の扱いである。
反董卓連合を主催する袁家、その当主自らの出迎えは大いに曹家軍の立場を強めるものなのだ。
宦官の手先、元締め。ややもすると、敵視されても仕方ないのだ。
それを一気に解消してくれたのだ。笑みもこぼれるというものである。

「ええ、麗羽。
わざわざの出迎え、ありがとうね」

あくまで公的な立ち位置ではなく、私的な関係を押し通して曹操は軽やかにほほ笑む。
なに、自分の笑みなぞ安いものだ。目の前の親友、と比べればその価値は天と地である。
だからこそ曹操は袁紹と親しげに笑い、哂うのだ。実にいい友達を持ったな、と。

久方ぶりの邂逅に話は弾む。袁紹とて愚物ではない。ましてや袁家を率いるのだ。話題の共通事項は多い。
或いはかつてよりも有益な関係だったかもしれない。そう思うが、それもどうでもいい話。
そう思う、そう思った。そしてそれがいかに甘い認識だったかと痛感するのだ。
目の前の現実に。

◆◆◆

「――麗羽、これは、なに?」

十数万の軍勢が集まるのだ。大天幕くらいは想像していた。だが、目の前にあるのはそんなものではない。
煉瓦と土塁で固められた防壁。それだけで瞠目してしまうものだが、それどころではない。

「なに、と言われても困りますけども……。
華琳さん、貴女の逗留先でもあるのですわ。不備については随時改善しますとも。
 一旦は納得してほしいものですわね。
 いえ、むしろご不満なところがあればおっしゃってくださいな」

曹操は暫し自失する。そして、苦笑。
そして、ここで自失した自分を恥じようとも思わない。
なぜならば、目の前にあるのは要塞、とは言えないまでも。
ちょっとした砦以上のものである。
今現在もその領域を増やすべく人夫が工事を進めるそれに、流石の曹操が絶句するのだ。

「まさか天幕なんかに、このわたくしが逗留するわけにはいかないでしょう?
 反董卓連合に与(くみ)する皆さんが集結するのにも時間がかかりますし。だったらきちんとした宿泊施設は必要ですもの。
 流石に兵卒の皆さん全てには行き渡らないですけれどもね」

曹操は内心頭を抱える。前提とする地力の桁が違う。母流龍九商会より糧食の提供を打診された時に感じたのもそれだ。
不用意に借りを作る愚を犯さず、自前で賄ってはいる。おそらくそういう諸侯がほとんどではあろうが、時が過ぎるほどに袁家から提供される糧食に依存せざるをえなくなるだろう。
じっくりと腰を据えてその名が轟く二つの関を攻略するのだろう。ああ、そうだ。董卓軍のみならず諸侯の軍勢、財政をも磨り潰すということか。

やってくれる。
やってくれた。

そしてこの絵図を描いたであろう男の姿を認め、曹操は極上の笑みを漏らす。
そう、やはりあの男は自分の前に跪くべきなのだ。もっと早くに、多少強引にでも本気でそう動くべきであった。
猫科の猛獣の笑みを浮かべ、曹操はにこやかに笑いかける。

「――あら二郎、息災そうでなによりだわ」

――反董卓連合、未だ集結には時が要される。それまでの時を曹操は無駄にするつもりなんてこれっぽっちもなかった。
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