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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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157 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/20(木) 20:59:13.18 ID:mnjV/Xve0
◆◆◆

「ふう、今のところ兵站は順調、か」

張紘はあちらこちらからもたらされる報告書に目を通し、やれやれとばかりに伸びをする。

「そうだな、街道の整備も順調に進んでいる。時が味方であると確信できるほどに、だ。
これはかなり楽ができそうだな。
 そら、だから少しくらいは息抜きしてもいいだろうよ」

白湯(さゆ)ですまんがな、と。赤楽が詫びながら武骨な湯呑(ゆのみ)を差し出す。

「まあ、そうだな。あまり気を詰めてもいいことないや。
ありがたくいただくとするか」

ずびび、とすすって尚、視線は遠くある。
脳裏には物資の調達と配分の計画。それが浮かんでは消えていく。

「まあ、実際十万余の軍勢への手配なんぞできるものかと思っていたのだがな」

なんとかなるものだなと赤楽はくつくつと、笑う。つられて笑う張紘の笑みはどちらかと言えば苦笑寄りであろう。

「まあ、なあ。それもきっちりと物資の確保を沮授がしてくれてるからさ。
今まで何進に遠慮して、進めていなかった洛陽への街道整備も進むし、だぶついてた食糧もはける。
 今はそれほどでもないけど、諸侯からの引き合いも増えるだろうしな」

実際、ぼろ儲けもいいとこさ。
と張紘は肩をすくめる。

「せいぜい高く売りつけてやればいいさ。あちらだって戦後の利権が目当てで参軍しているんだ」

地力のある者は戦後を見据えて返済を選ぶだろうってさ、と張紘は苦笑する。
参軍した諸侯の財布事情まで見据えて、すり潰す。なんとも悪辣なことさ、と。

「ふむ、流石と言うべきか、気が早いと言うべきか。既に戦後を見据えているのだな、あの御仁は。
 まあ、尋常にやれば、だ。
どう考えても負ける要素もないことだしな。
黄巾の乱で蓄えられた諸侯の力を削ぎつつ、勝つ。か。
 二兎、追うのは大変だな」

まあな、と曖昧に笑って張紘は歩き出す。物資の集積場に向かう。現場で何をするわけでもないのだが、総責任者の彼が姿を見せるだけで現場は引き締まるのである。

薄い笑みを浮かべつつ赤楽は付き従う。油断なく周囲に視線を配りながら。
どこに刺客がいるか分からないのだ。自分が董卓軍ならば目の前の青年をまず狙う。それだけで兵站は破綻するのだ。袁紹や紀霊なんていう警備や護衛が厳重な人物よりよほどお手軽かつ重要人物なのだ。
餓えた軍の行く末なぞ哀れなものだ。それを赤楽は痛いほどに理解している。故に気を抜かない。

◆◆◆

「ふーむ、劉焉殿は不参加か。まあご息女が人質にとられてるから仕方ないかー。
 劉表殿は五百の弓兵のみ、か。やはり積極的には関わらないか。でもその分物資の提供を、ってとこかねえ」

一応皇族に連なる方だし、軍を率いる方にも挨拶しといた方がいいかと張紘は決断する。

「少数精鋭って奴かな。おいらでも聞いたことがある方だ」

率いる将の名を見て呟く。

「ほう、いったいどなたが率いてるのか聞いてもいいか?」

「構わねえよ、これからちょっくら挨拶に行くしな」

――黄忠というのが、その将の名であった。
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