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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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264 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/05/06(水) 21:19:39.64 ID:XwBUKciu0
◆◆◆

――袁家が率いる兵は弱卒であるというのが諸侯の共通認識である。
なんとなれば匈奴に南皮の城壁を侵され、それ以後まともな戦もしていない。
此度の出兵にしても、董家軍と矛を交えずに砦の整備を優先しているのだ。

そして決定的なのは黒山賊。そう、賊ごときを相手取って誅滅できないのだ。
諸侯の指揮官は裏面で嘲笑う。賊ごときになにを手間取るのかと。三公を排出したと嘯(うそぶ)く名門が聞いて呆れる。
その嘲笑を後押しするのは黄巾賊の弱兵っぷりであった。
だから、兵站を襲う賊の存在はもっけの幸い。降って湧いた幸運である。
元々兵站の守護に当たる諸侯は矜持が高く、実利に聡い。
だからこそ袁家の出した条件に飛びついたのだ。
曰く、兵站の警備は非常に重要であるからして、その食事の一切はその補給部隊から無償で拠出させる、と。
当座の食糧を母流龍九商会に借り換えることを拒んだ諸侯は奮ってこの任に当たった。
それも無理からぬこと。後方に於いて安穏と補給部隊に随行するだけでいいのだ。
それに携わらぬ前線の諸侯、或いはそれすら判断できぬ者に冷笑すら内心浴びせていたのだ。
そして、だからこそ。
「お、落ち着け!落ち着いて迎撃しろ!ええい!落ち着かんか!」
声を発する指揮官自体が狼狽しているのだ。
突如として降って湧いたこの災厄。黒山賊に対して護衛なぞ名目以上のなにほどでもない。
勢いに勝る黒山賊の一撃を辛うじて防ぎ切ったかと思えば、眼前には第二波が。

「多少は出来るようだが……。それが不幸さね!」

閃光が走り、どさり、と首が落ちる。
たちまちに潰走が始まる。

「野郎ども、かっぱぎな!」

ただ一撃で戦いの趨勢を決定づけた張燕は返り血を拭うこともせずに矢継ぎ早に指示を飛ばす。
降伏か死か。
死を選べばよし。降伏すれば身ぐるみ剥がすだけで済ます。それが黒山賊。それが黒旗の意味。
知らぬとは言わせない。

「全く、忙しいったら!」

ともすれば笑みが漏れそうになる戦果ではあるが、その物資や資金を輸送するように命じて、次の襲撃に軍を急がせる。
全く、人使いが荒いにもほどがあると張燕は内心毒づく。

「何だい、あれくらい突破できないのかい。歯がゆいねえ」

そしてその稼働戦力をぎりぎりまで酷使して反董卓連合の後方攪乱に努めるのである。
ただ、補給部隊の護衛に当たった諸侯がそれなりにまんべんなく襲われていたのに対し、不思議に義勇軍はその被害に襲われることはなかった。

◆◆◆

「むむ、我らよりも兵站を担当する兵卒の方が立派な装備をしているとは……」

「はは、愛紗。気にすることはないさ。襤褸(ぼろ)を纏っても心は錦!それに愛紗と鈴々がいるんだ。問題ないだろう」

「そうなのだ!鈴々がいるからお兄ちゃんはのんびりしていたらいいのだ!突撃!粉砕!勝利なのだ!」

まあ、いいかと関羽は思う。
実際凡百の賊が出ても自分と張飛の二名で当たるだけでカタはつく。
その認識ははてしなく正しい。例え数千の賊が襲いかかっても彼女ら二人で返り討ちにできよう。

それを知ってか知らずか張燕は薄く、笑う。

「まあね、わざわざ虎穴に入ることもないだろうよ。別にあたしらは虎児なんて欲しくもないしね」

もたらされたのは兵站の運行スケジュールだけではない。おせっかいと言っていいメッセージも付随してあったのである。
曰く。

「劉には手出し無用」

とだけ。
そこまで言われて何かするほど張燕は好奇心があるほうではない。
なに、猫が死ぬのであればいいが。

「全く、食えないねえ」

劉家。それが果たして洛陽におわすやんごとない筋なのか、劉備なのか。
触れるなというのは優遇しろと言うのか、それとも触れないことで疑念を撒き散らすのか。

「ま、知ったこっちゃないさね」

せしめた物資の質と量に満足げに張燕は笑い指示を飛ばす。
いや、これはあの時の謝礼の一環なのだろうと笑う。

そして身の振り方について、思案にふけるのだった。
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