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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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32 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/04(水) 21:58:07.10 ID:c1wVtIMX0
「総員、傾注!」

白を基調とした甲冑に身を包んだ雷薄が居並ぶ部下に喝を飛ばす。
いや、厳密に言えば彼ら彼女らは直属の部下ではない。袁紹、袁術。そして四家の長に仕える近侍たち。
いずれも素性の正しく、将来を嘱望される幹部候補生たちである。いずれは彼らが袁家を担っていく。そうなってもらわないといけない者たちだ。
そんな、まさに人財を雷薄は睥睨し、躊躇いなく使い潰すことを選択する。
多くは言わない。

「まことに済まんが、死守だ!」

明敏な彼らにはそれだけで十分。これから稼ぐ時間により仕える主たちの命を贖うのだ。贄となるに異存はない。

「いやー、参ったなー。でもまあ、ここが踏ん張りどころってね!」

へらへらと鉄鞭を手にした青年が口を開く。口先の英雄とも言われる彼は正直荒事には向いてはいないが、この際そうも言ってられない。

「はいはい、泣き言は後でたーっぷり聞いてあげるから黙ってようね。おじさんたちの頑張りが袁家の命運を握っているんだからさ」

鷹の目、と異名をとる少女が混ぜっ返す。

「はうー。かあいいかあいい美羽様のためだもの。頑張っちゃうかな、かな」

かつての如南攻防戦にて功績を挙げ、袁術の真名さえ許された彼女が笑う。
彼ら彼女らはけして使い潰していい人材ではない。雷薄は苦虫を噛み潰したような顔で内心詫びる。

……雷薄の生まれは貧農の三男坊だ。食うに困って軍に志願したクチだ。腕っぷしには自信があった。が、野盗になるのは嫌だった。彼自身が貧農出身だったから、だ。
それに、畑を耕すよりは兵隊になった方が女にちやほやされるだろう。そんな思いもあった。
恵まれた体格と膂力で頭角を現し、あの匈奴戦役でも生き残り、武勲も立てた。気が付けばまさかまさかの大出世である。

だから、自分に関しては命燃やす時は今と決意している。巻き込む若人らに詫びる言葉を雷薄は持ち合わせてはいない。
いや、それでも。
それでも死んでくれと言わなければならないのが指揮官というものなのだろう。
きっと目の前の彼らはそんな逡巡すら見抜いてなお自分の判断に付き従ってくれるのだろう。
では自分も、彼らに相応しい立ち振る舞いをせねばならない。

「では、多くは言わん。一秒でもいい。我らが主君を逃がすための捨て石として、死兵となってくれ」

言い捨てて、門扉に向かう。
既に此処は戦場。既に包囲されている。まさに、死地であった。
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