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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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356 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/03(金) 22:05:26.00 ID:11bQfaHc0
◆◆◆

単騎で恐ろしい勢いで騎馬が迫ってくる。言うまでもなく恋だ。
まさにそれは飛ぶが如く。飛将軍というのは言い得て妙だな。明らかに先ほどまで軍を引きていた時と速度が違う。人馬一体とはこのことか。
まあ、これからそんな化け物と遣り合わんといかんのだけどもね。
だが、此方も恋対策はしている。

「見せて貰おうか、飛将軍の実力とやらを!」

いや、知ってるけどね。武力100だし。でもまあ、これくらいは言わんと恰好がつかん。

「陳蘭!」

最前列にて構えるは陳蘭率いる長弓隊。既に五千の兵が展開し。ざく、ざくと矢を地に突き立てて臨戦態勢。
通常ならばまだまだ射程距離外だが、虎の子の長弓部隊にとってはそうではない。

「なんと、まあ……」

流石の秋蘭が感嘆する。この距離で届くのか、と。へへ、すごいだろう。いや、彼女なら可能だろうが、それを一般兵がやることに意味があるのだ。集団でね。
そして五千の弓兵はただ一人恋を目がけて矢を射る。ひたすらに。
もはやそれは矢の雨。或いは奔流。点でなく面で制圧するのが長弓兵の戦い。大体の位置に只管(ひたすら)矢を射る。

「……」

それらの矢が、恋には届かない。ただひたすらに飛ぶように馬を走らせる。手にした奉天画戟。残像すら見えないそれが降り注ぐ矢の雨を全て弾き返しているのだ。
マジかよ。
いや、想定はしていたけど実際目にすると笑うしかない。
だから。

「秋蘭、頼んだ」

「任されようとも」

秋蘭は不敵に笑い、静かに弓を構える。

「唸れ、餓狼爪!」

一射で三矢。それを文字通り矢継ぎ早に三射。
山なりに襲いかかる長弓部隊と違い、限りなく水平に襲い掛かるそれに流石の恋が……ってマジか。
眉間に迫る矢を掴み、その矢でもって続く二の矢、三の矢を弾く。
降り注ぐ矢を奉天画戟で弾き返しながら、だ。

だが、そこまでである。フ、と笑う秋蘭。

「依頼は果たした。では私はこれで華琳様の処(ところ)に戻らせてもらおう」

いや、しかし呂布とは恐るべきものだな。或いは討ち取れるかとも思っていたのだがな――。
苦笑交じりに秋蘭は踵(きびす)を返す。
そしてその目的は果たされている。
確かに恋の身体には一矢たりとも届いていなかったが、見事にその乗馬の前足を打ち抜いていたのだ。
倒れ込む馬体から軽やかに身を躍らせて……。

「弓兵、下がれ!」

守備力なぞあってないような虎の子を下げる。ここで消耗させるわけにもいかん。そして。
ここからが本番だ。やっと恋をその身一つにすることが出来た。そして。マジか。いや、詠ちゃんに話を聞いたことはあったが半信半疑だったんだよなあ。

――まさか、本当に。
二本の足で走る方が速いとかどういうことだよ。

ぎゅん、と速度を上げ、土煙を背に恋が迫ってくる。なるほど。人中の呂布とはこういうことか。などと軽く現実逃避をしながらも前に出る。
猪々子と斗詩が付き従ってくれる。

「アニキ。やっぱアタイが前に出た方がいいんじゃね?」

猪々子の気遣いに首を振る。

「なに、たまには俺もいいとこ見せたいのさ」

どんどんと近づいてくる恋。その表情は相変わらず何を考えているか読めない。
まあ、それでも言葉が通じるだけありがたいとしよう。
だからまあ、まずは声をかける。

「恋!」

ん、とばかりに義理堅く速度を落とし、停止する。
さて、とばかりに俺は恋に声をかけるのであった。
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