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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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453 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/02(水) 22:33:59.24 ID:ozDCEB4r0
「やってくれたわね、二郎……」

日輪がその姿を現すかどうか、その未明のことである。
その報せを聞いた曹操はぎり、と歯を噛みしめて呟いた。まさか、という思い。湧き起こる激情。

――時はしばし遡る。

◆◆◆

「華琳様!一大事です!」

曹操がこの日目覚めたのは信頼する参謀の、常になく慌てた声であった。

「何だ、騒がしい」

このとき同衾していたのは夏候惇である。彼女が即座に起き上がり、曹操への道を防ぐように――一糸まとわぬ姿――で応じる。

「あんたはすっこんでなさい!一大事なのよ!」

尚も言い募ろうとする荀ケと夏候惇を、手早く薄布を纏った曹操が制する。

「いいわ、桂花。貴女が一大事だと言うのだもの。よっぽどのことなのでしょう?」

情事の残り香。その色香にどきりとしながら荀ケは言葉を続ける。

「はい!」

そしてもたらされた情報は驚くべきものであった。

「なんと、宦官誅滅とは二郎め。
思い切ったことをするな……」

ふむ、と考え込む夏候惇を糾弾する声が起こる。

「あんた馬鹿?
いい?宦官ってのはね。華琳様の宮中におけるこれから政治的な後援者、後ろ盾になるはずだったのよ!
それが誅滅されてしまったらどうなるか!」

なんとなれば、曹操の出自は宦官なのである。その宦官は当然子をなすことが出来ない。そうしてとった養子、さらにその子。それが曹操だ。
であるからして、これから漢朝の中枢に食い込むにあたっての足掛かりとしを想定するのは当然のこと。そして曹操陣営は宦官勢力を友好勢力と見なしていたし、宦官にしても魚心あれば水心。他の勢力に比べれば気心もしれていようものであるからして。

「フン、なにをいまさら。これまでその宦官とやらが我らにどれほどのことをしてくれたというのか。第一、そんなもの一切なくとも華琳さまは飛翔なさる!
 少なくとも私はそう確信しているぞ」

言い争う配下。文武の要のそのやりとり。それに曹操はくすり、と笑みをこぼす。
ともすれば激発しそうな自分。そして、そうならないのは間違いなく、この二人の股肱のお蔭なのだ。

「落ち着きなさいな、二人とも」

それまでの激しい口論なぞ、毛ほどもなかったように二人は曹操の言葉に集中する。聞き入る。

「桂花、まずはご苦労様。
そして春蘭。貴女の言は薫風が如く心地よいもの。いつも以上に私を楽しませてくれたわ」

有難き幸せとばかりに、二人は曹操の前に膝をつく。

「でもね、桂花。無論、報(しら)せはそれだけではないのでしょう?」

曹操の笑みが深まる。

「は。袁家の一連の動き。夏侯淵将軍に――」

言い終わらぬうちに青い疾風が吹き込む。

「報告いたします。
袁家全軍、および公孫家、孫家が洛陽の城壁外に布陣を始めております。どうやら払暁よりも早くから動き出していた模様。
なお、四半刻もすればその陣構えは完了するかと」
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