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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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462 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/03(木) 23:03:58.57 ID:ycpGCHS80
替え馬すら満足に用意できず、幾度取り逃がしたか。幾度民の悲鳴を聞き、悲嘆を聴き、怨恨を背負ったか。
騎射という匈奴の技術を公孫が身に付けたのも、そのためだ。戦利品の財貨や女を背負った匈奴ども。その重荷に、地平の彼方にあったその姿はやがては手の届きそうなところまで追いつめても、その、届きそうなところに用意されている替え馬。単純な機動力では敵わない。だから騎射という匈奴の技術を身に付けた。

だからこそ公孫家は、弱小軍閥としてはありえないほどの躍進を遂げたのだ。

そう、こと対騎馬戦においてはかの馬家軍相手でも譲るつもりはない。
今となっては白馬義従が武威により、公孫の牙門旗がある村落には匈奴は近づきもしないのだから。

「それにしてもなんかこう、落ち着かないなあ」

公孫賛は馬上でそう、誰に聞かせるわけでもなく呟く。
その声に韓浩は無感動に応える。

「いい加減、自分の立ち位置というのを認識するべきと思う。
 この戦場において、こと戦闘経験という意味では公孫賛殿はかの馬家軍の令嬢をもはるかに凌ぐ。これは世辞ではない。厳然たる事実。この中華で貴女より歴戦なぞ、そうはいない。しかも、匈奴相手に、だ」

あくまで淡々と韓浩は呟く。

「お、おう」

常になく真正面からのその思いに公孫賛は戸惑い、そして破顔する。

「そうか、そうだな。他でもない韓浩がそうまで言ってくれるならば、白馬義従は無敵さ。そうだろう?」

是、と迷いなく韓浩は頷く。

「なに、母流龍九商会の長弓兵も後詰に来ている。こちらの指示に従ってくれるそうだ。
 ……愛されているようでなにより」

「な!」

かあ、と頬を上気させて公孫賛は目を白黒させる。
からかっているのか、揶揄しているのかと思うも韓浩の鉄面皮はぴくりとも動かない。

どうやら、本心からの言葉だったようである。

……それはそれでなんだかなあ。

何とも言えない表情の公孫賛を韓浩は僅かに首を傾げて怪訝そうにする。

「――何か?」

「いーや、なんでもない!なんでもないったらない!」

まあ、会話が微妙に噛み合わないのはよくあることである。
それでも、確かな絆がそこにはある。これはきっと自分だけの思い込みではないはずだ。

単身で駆けまわっていた頃に比べて、なんと恵まれていることか。

それもこれも。

「結局、二郎のおかげなんだよなあ……」

くす、と薄く笑み、気を引き締める。
絶対に負けられない。彼の為にも。

無論、戦端が開かれるとは決まっていないのだけれども。
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