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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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479 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/14(月) 22:18:15.84 ID:MO/NhoCH0
「な、なんだってんだ……?」

端的に言って馬超は混乱していた。なんとなれば、洛陽を守護するが如く袁家軍は布陣しているのだ。そして士気も高い。見ただけで分かる。あれを抜くとなると苦労しそうだ。そんなことを思うほどに。

「お姉さま、本気でそれ言ってる?」

呆れたような馬岱の台詞に馬超は柳眉を逆立てる。

「当たり前だろう!あれじゃあ、喧嘩を売られているようなものじゃないか!」

はあ。と馬岱はこれ見よがしに、ため息を通常の三倍くらいに増量して吐き出す。

「ええとね、お姉さまが本気でそう言ってるのはさ。たんぽぽも分かったよ。分かりたくなかったけど。
 うん。これには流石にたんぽぽもびっくりだよー。ほんとにね。
 だってさ、昨日、張勲さんが来てたでしょ?」

じとり、となんとも言えない馬岱の視線にさしもの馬超もたじろぐ。

「そ、それはもちろん覚えてるぞ。酒肴をたっぷりと持ってきてくれたことも」

戦場暮らしには慣れているとはいえ、袁家秘蔵の火酒に、戦場食とは思えない料理の数々であったと馬超は頷く。

「そうだよねー。お姉さま、それで気持ちよく酔っぱらってたもんね。むしろ酔いつぶれてた気配すらあったもんね。
張勲さんの相手とかぜーんぶたんぽぽに押し付けて、さ」

「な、なんだよ」

「ほんと、覚えてないんだなあってさ。
昨日張勲さんが言ってたじゃない。諸侯軍の不埒な動きに対するために洛陽へは入らせないって。
 それで、お姉さまが漢朝、官軍と相対するのはいかがなものかって言ったから、馬家軍は静観することになったじゃない」

ちなみにここまでの馬岱の言説は虚実入り混じったものである。

「そ、そうだったか?」

焦り気味の馬超の態度に、上手く思考誘導ができたかと思うが気を緩めるわけにはいかない。

「そうだったよ!
 ほんとにもー。ひょっとしたらと思ったけど、そこまで前後不覚になったのはまずいんじゃないかなあ。
 気を緩めすぎだよ」

尚も言いつのろうとする馬岱が口を開く前に馬超は言葉をかぶせる。

「む、曹家軍が動いたか」

若干以上の後ろめたさを隠すように、必要以上に声高に曹家軍の動きを口にする。

「なんだ。五百もいないぞ。だが、率いるのは夏候惇。それに……兵に混じって夏侯淵もいるな」

流石の眼力だ、と馬岱は内心で従姉を賞賛する。何かを糊塗するかのような態度さえなければ実際大したものだと感銘を受ける者も多かったであろうに。
そして張勲の言説通り、場を動かすのは曹家軍だったかと状況を認識し、覚悟を決める。
なんとなれば、内々に張勲の口から馬家軍は仮想敵として想定されているというロクでもない情報がもたらされているのだ。
これを目の前の従姉が知ったならばどうなるか。いや、普通に暴発するだろうなあと馬岱は思う。

「もー、どうにでもなあれ」

馬岱の本音である。が、状況はそれを許さない。

「あれは、趙雲か」

単騎で曹家軍に対峙する白装束の武将。それは。その人物こそは。

「うん。一騎当千、だね」

ごくり、とさしもの馬岱も生唾を飲み込む。
単騎であの呂布と渡り合い、退かせたのだ。呂布の武勇は涼州にて轡を並べた自分たちが一番よく知っている。あの、呂布だ。呂布なのだ。あの人外と言っていい、いわば化け物と単騎で打ち合い、退かせたなぞ。
実際ありえない。だから、「一騎当千」と急速に異名が広がる趙雲に対して無関心ではいられない。いられないのである。
そして、趙雲に対する思いを清冽な声が引き裂く。

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