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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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527 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/29(火) 22:33:46.58 ID:zJ58i7cd0
◆◆◆

「紀霊殿。お忙しいところ、貴重なお時間を頂きまして――」

「能書きはいい。何用だ」

関羽の声を遮る。その非礼に逆上しそうになるのを抑えて関羽は本題を切り出す。

「董卓殿、並びに賈駆殿の助命をお願いに参りました」

ギリ、と異音が響く。

「何を、言った」

振り絞ったような低い声に、そこに込められた気迫に関羽は怯まない。

「圧政、暴政。それにより洛陽の民は苦しんだと、そう聞かされておりました。ですが
実態はそうではない。そうでしょう?ならば!」

彼女らを誅してどうするのか!

裂帛の気合いと共に関羽は訴える。

「董卓、賈駆は極刑。これはもう決まったことだ」

うっそりと呟く紀霊の声に関羽は逆上する。

「なぜです!
彼女らは巷で言う所の暴虐なぞとは無縁!そして彼女らは泰平の世に向けて必要ではないのですか!」

うう、と苦しげに紀霊が呻く。よし、ここが攻めどころとばかりに関羽は言い募る。

「だってそうでしょう!賈駆は貴方と特別親しく!そして貴方はその決断を覆す権限がある!」

それに。

「密かに生き延びさせたとして、誰がそれに気づきましょうか」

そう、黙っていれば分からない。たかだか数人なぞ、だ。本気で権力者が匿えば追跡も追及も不可能。だからこそ、無駄に遵法な紀霊の心に楔を打ち込むのが自分の役割。希代の軍師からそう、任じられたのだ。

沈黙。そして激発。静かな。
破綻。

「――天知る地知る。君知る我知る。
いったいそのような秘密、漏れないわけがあろうかよ。
そしてお前さんは飼い主に報告するだろう?
そこに機密という響きが欠片ほどもあるものかと問いたい。小一時間問い詰めたい。そして、だ」

ぎり、と噛みしめた口元からは一条の紅い筋が落ちる。

「部下を、先達を、未来を担う幹部候補生を無為に死なせた。
いや、無為とは言うまい。
 彼らの犠牲があったからこそ俺はここにいる。そして、だ。何条以って彼らに詫びればいいってんだ。ふざけるなよ。
 ふざけるなよ!武門を背負う俺がみっともなくも逃げ出してだ!生き恥晒しているんだ!
 ……ここで彼女らを許すなんてできない相談だ」

悲痛な声。それは関羽の胸を打つ。こんなにも彼は、彼らは。

「だから、無理な相談だ」

きっと劉備や北郷一刀ならば、言ったであろう。死んだ人よりは生きている人のことを考えようと。
きっと軍師たちは言を左右にして論点をずらしただろう。そんなことは重要ではない、と。所詮感傷であろうと。
だが、関羽は武人であった。劉備軍の中で誰よりも義を重んじる武人であった。だから反論できない。反論できないのである。むしろ共感すら覚えていた。
それでも、自分の任に忠実であろうと関羽は言葉を紡ぐ。

「それでも、なんとかなりませんか」

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