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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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644 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/02/11(木) 20:41:13.73 ID:aefmmWR50
「言いたいことがあれば言えばよろしかろう。回りくどいのは、貴殿に似合わん」

吐き捨てるその言葉になぜか紀霊は嬉しそうに笑う。

「そだよな。腹芸なんて俺には似合わんよなあ。
いあ、ほんと華琳が欲しがるのもなんとなく分かるわー」

ククク、と笑う紀霊になんと言ってやろうかと関羽は思いを馳せる。その関羽に紀霊は問う。

「劉備の、どこに惹かれた?」

単刀直入なその問い。関羽は苦笑する。言わずもがな、と。

「皆が笑って暮らせる世を創る。その理想です」

胸を張り、言う。

「この乱世、民を導くのは桃香様をおいて他にない。そう思いました」

ふうん。と紀霊はどこか濁った笑みを浮かべる。

「世は、乱れているのかい?」

「黄巾の乱。反董卓連合。乱れているでしょう」

そうかい、と紀霊は口を歪める。

「じゃあその二つが治まったらば、これ以降、どう乱れるって思う?」

その問いに関羽は考え込む。

「分かりません。ですが、きっと乱れる、のかと……?」

乱れるという前提。その根拠を関羽は知らないし思いつかない。
そのようないい加減なことを言っては主の見識まで疑われてしまう。

「いえ、失礼。
確かに現在乱れる要因は見当たりませんね」

尚も言い募ろうとする関羽に紀霊は言う。

「なあ、俺は思うんだ。人は、幸せだから笑うんじゃあない。
笑うから幸せなんだって」

唐突に放たれたその言葉。謎かけのようなその言葉。

「人はさ。飯だけで生きるわけじゃない。でもさ。為政者たるものはまず飯の確保をせんといかん。
言ってみれば為政者の役割は胃袋を満たすことだと思うのさ」

だから、さと苦笑する。

「脳髄まで満たすというのはさ、とっても傲慢だと思うんだよな」

「なんと!」

主を侮辱されたかと激昂する関羽。その激情は鎮火する。だって。
言葉の主はとても辛そうで。

「まあ、それは俺が凡人だからかもしれんね。胃袋と脳髄。ともに満たす。
俺にゃ無理だわ」

気弱に笑って席を立つ。その彼に関羽は問うた。

「なぜ、そのようなことを私に?」

「なんでだろうな。俺にも分かんねえさ。
きっと関羽が美人さんだから口が滑ったのだろうさ」

そう言って紀霊は立ち去る。ひらひら、と後ろ姿で手を振るその背中はどこか哀愁すら背負っていて。

それを無言で見送る。
そして、関羽の食事についても彼により清算されているのを知った時、なんともいえない表情を浮かべるのであった。
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