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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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708 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/15(木) 21:40:06.52 ID:JOGJy0o10
「そう言えばその陰険なのは、二郎の相手をしているのだったか」

その声に夏候惇は柳眉を軽く逆立てる。

「うむ。いやさ、久方ぶりに二郎と語り合いたかったのだがな」

「おや、姉者はそこまで二郎に執心だったかな?」

「茶化すなよ、秋蘭。
二郎はそう、私と違ってどちらもいけるクチだ。
だからあの陰険(ネコミミ)が相手しているのだろうよ」

つまり、手練手管を以って取り込むべきはあちらだと判断しているということか。
夏侯淵は納得する。納得したのだが。

「しかしあれは果たして取り込めるようなものかな」

これは夏侯淵の本音である。過去幾度も、だ。冗談交じりにとは言え主君たる曹操の誘惑をにべもなく断った紀霊。彼がなびくというのは夏侯淵にとっては想像しがたい。

「無理に決まっているだろう」

あっさりと否定する夏候惇。

「私を含めて桂花や秋蘭もそうだがな。
誰に粉をかけられても論外だろう?それと同じことだ」

だったら余計に、と夏侯淵は首をかしげる。

「なに、二郎は本質では単純な男さ。あれを味方につけるのに一番いいのはな。
褥(しとね)を共にし、子の数人も孕むことさ」

からからと笑う夏候惇に流石の夏侯淵が絶句する。

「姉者。それは飛躍しすぎではないか?それに孕むと言っても、だ」

沈着冷静を以って知られる夏侯淵である。彼女の慌てように夏候惇は呵呵大笑する。

「なに、私は二郎を気に入っているからな。
苦ではない。それに、名門たる夏候家の跡継ぎ、考えぬではなかろう?」

「そうは言うがな、姉者。
二郎は、だ。
あいつは、ただ肌を重ねた女にそこまで甘くなるとは思わん。
 賈駆だって、だ」

「無論そうさ。心底敵対するならばいくらでも命のやり取りをするだろうよな。
賈駆は、そこまでいってしまったからな。あれは、そう。哀れな女よ。
 忠誠、友情、それに恋慕を天秤にかけるなぞ、正気の沙汰ではない。
 まあ、それはそれ、これはこれだ。
仮に私が二郎の子を産んだとて、華琳様と遣り合うのに一片の迷いもないさ。
二郎もそうだろう。その後、きっと二郎は苦悶するだろうがな」

かんらかんらと笑う夏候惇に、夏侯淵は問う。

「これは純粋な好奇心なのだが、その場合、姉者はどうなのだ?」

その問いにふむ、と夏候惇は考え込み。

「そんなもの、その時になってみんと分からん!」

それでこそだ、と夏侯淵もつられて笑う。

「そうだな。姉者の言う通りだ。ああ、その通りだ」

くつくつ、と。
その笑いは久方ぶりに本心から、腹から生じた笑いである。

夏侯淵としても、対峙するにも共闘するにも楽しそうなのだ。
少なくとも、彼と対峙するならばあの趙子龍が出張ってくるだろう。自分たち夏侯姉妹を単独で相手をして、負けないまでも勝ち目が見えなかったのは呂布を除けば彼女のみ。

「いかんな、姉者の熱にあてられたようだ。二郎と遣り合うのが楽しそうだと思ってしまった」

「ふふ、いいことだ。或いは秋蘭と矛を交えることになるかもしれんしな」

「おお、こわいこわい。精々姉者の言う陰険軍師に懇願しておこう。そのようなことがないように、な」

笑い合う彼女ら。
その無垢さを見れば、話題の男も考えを改める一助としていたかもしれない。
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