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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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96 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/16(木) 21:12:21.06 ID:LgjHVKE/0
「ち、父上が死んだ……?
 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!そんな馬鹿なことがあるか!
 あんなに強い父上がやられるはずがないだろう!」

三か月前のその慟哭を厳顔は忘れることはないだろう。悲痛な、幼子(おさなご)のようなその声は何かしら胸をうつものがあった。
……厳顔がここ涼州にいるのには理由がある。
董卓が起こした変事の詳細について可能な範囲で情報を集め、辛くも洛陽を脱した彼女が向かったのは益州ではなく、涼州。
最も激発する可能性が高いのが涼州であったからだ。可能性としては袁家もあるが、馬家と違い未だ当主はじめとした首脳は行方不明。
なれば袁家は捜索に力を注ぐであろうという判断である。

一方馬家については馬騰の死亡が確認されている。
馬超はいささか直情径行にあり、暴発する可能性は大いにあった。その場合益州にも派兵の要請が来たであろう。
まあ、函谷関で防がれる分には問題ないが、馬超の武勇を考えれば洛陽まで迫る可能性もある。
そのまま押し切ることもありえるであろう。その場合、劉璋を人質とされている益州が兵を出すことはありえず、それを逆恨みされることもありえる。
故に馬超の暴発を抑えるために厳顔は涼州に赴いたのである。

無論、劉璋を置き去りにしたことに対する風当たりは厳しいものがあるであろう。
だが、同じく囚われるよりは主君に正確な情報を送り、その上で最善を尽くすことこそが肝要。
直接的な地位も権力も持たない劉璋が害される恐れはほぼないと言っていい。
名よりは実を。主たる劉焉が常々言うことである。
そして厳顔は益州と密に連絡を交わしながら涼州にある程度の影響を築くことに成功していたのである。

「とは言ってもねえ。多分お姉さまもうすぐ爆発するとたんぽぽ思うなー。
 まあ、これまで抑えていたのが不思議なくらいだしね」

肩をすくめながら馬岱は厳顔に言う。そろそろ限界だと。

「とは言え、函谷関は要害。更に韓遂の蠢動もある。いかにも動くのは不利であろう。
  何より、相手は主上を奉っておるぞ?
 武の名門馬家を逆賊とするのは本意ではなかろう?」

お主ならば分かっておるじゃろとばかりに厳顔は馬岱に目線を向ける。
馬岱は、たははと手を振り。笑って応える。

「いや、あのね。何て言うのかなあ。こんなに厳顔さんと私たちで認識に差があるとは思ってなかったなあ。
 確かに月さん……いえ、董卓は今上陛下を擁立してるよ。でも、それは大したことじゃない。
 厳顔さんも分かってるんでしょ?今上陛下が正統だとは言えないということ。
 ならばそれを糾すのが武家の名門たる馬家の義務なんだよね。董卓を配下にしていた馬家ならなおのことだよ。
 おじ様からよく言われてたんだよ。『命を惜しむな、名を惜しめ』ってね。
 あの時は分からなかったけど、今ならよく分かる。
 うん、覚悟完了、って奴かな」
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