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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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962 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/01/13(木) 22:26:34.17 ID:SZ/0yYA80
◆◆◆

「遠路はるばるご苦労さん。丁度俺もあんたに会いたいと思ってたところさ」

韓遂は目の前の男を改めて見る。
――今上帝は政務にまるで興味を示さず後宮に籠りっきりである。
自然、政治の全権は袁紹が握ることになる。そしてその袁紹が絶大な信頼を寄せているのが目の前の青年、紀霊である。彼が実質今の漢王朝を牛耳っていると言っていい。
無論それに対する反発も大きいのではあるが、表だって反抗する者はいない。
袁紹という後ろ盾、司徒という地位もそうなのだが。何より苛烈な宦官への粛清、弾圧――逃亡した宦官への捜査、取調べと言う名の拷問――の記憶はまだ新しい。
宮中を血に染めて全く揺るがぬその姿。一部で魔王呼ばわりされるだけのことはあるのである。

「涼州の一大事ゆえ。単身発った蒲公英の身も気になりますし、な……」

当然韓遂は馬岱の身の処し方については想定内。
いや、手の者を使い使嗾さえしたのだ。まあ、馬岱が容れられても容れられなくとも韓遂にとっては同じことではあったのだが。
紀霊が容れればよし、排除してもよし。
どちらにしても涼州の実効的支配権は韓遂の手に転がり込むのだ。後はどれだけ高値で売りつけるか、だ。

「……」

紀霊はばりばり、と頭をかき、はあ、とこれ見よがしにため息を吐き、懐から取り出した物を韓遂に投げつける。
すわ、暗器の類か、と身構えるも、緩やかな放物線を描くそれをぱし、と受け取る。

「これは……!」

流石の韓遂が言葉を喪う。

「おお、流石に見誤らんか。そうだ。見慣れている品だな。そう、涼州牧の印綬さ。
 それが欲しくて洛陽まで来たんだろう?くれてやるよ」

す、と表情を消して韓遂は問う。

「随分とあっさりしていますな?」

苦笑一つ。いや、それは笑みだったのだろうか。

「馬家はお家断絶まっしぐらさ。だったら涼州をまとめられるのは貴様しかいないだろうが。
 涼州は匈奴の盾となる重要な地域。荒らすわけにはいかん」

目を合わせることもなく、淡々とした言葉に激情が漏れる。

「……この私を駒扱いするか。舐めるなよ、小僧!」

裂帛の気合いに紀霊の横に控えていた護衛――典韋と楽進――が臨戦態勢をとる。その殺気は研ぎ澄まされ、物質化されたかのように韓遂を貫く。
が、幾多の修羅場をくぐった彼がそれごときで怯むはずもない。無手であっても、だ。

「生(なま)の殺気を剥き出しにするなど、お里が、知れる……。
主の都合を洞察できないとはな」

傲岸不遜に吐き捨てる。その言に護衛の二人がたじろぐ。
武勇はともかく政治的なやりとりは彼女らには埒外。自分たちの行動で主に迷惑をかけたのか、と。
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