メイプル「ここがインフィニット・デンドログラムかぁ」

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1 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/21(土) 19:28:57.00 ID:7PAluBHS0
今回は短めのはずだぜェェェェ! かァァァァァァ!

インフィニット・デンドログラム五巻までのネタバレにほんわか注意

防振り×インフィニット・デンドログラムです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1584786536
2 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/21(土) 19:36:29.21 ID:7PAluBHS0
2043年某月某日

楓「……買っちゃったよ」

楓(今の私の中にあるのは、ちょっとの後悔と少しの期待と、そして理沙との約束を守らないとなという使命感)

楓(目の前にあるのは、ヘルメット型のヘッドギア)

楓(無限の系統樹と銘打たれたVRゲーム、インフィニットデンドログラムへ入るための専用ゲーム機……らしい)

楓「まあ、先に行って待ってるらしいし。早く行ってあげないとな」カブリカブリ

楓(あとはスイッチを押して、と――)カチッ




チェシャ「はーい、ようこそいらっしゃいましたー!」

楓(……ん?)

楓「あ、あれ!? 私、なんでこんな場所に!?」キョロキョロ

楓「えっ、嘘! もうここゲームの中!? 凄い!」ワタワタ

チェシャ「こんなところでテンション上げられてもなー」
3 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/21(土) 19:42:00.04 ID:7PAluBHS0
楓「あ、初めまして」

楓(猫……?)

チェシャ「あ、急に落ち着いたね。うんうん、挨拶を返せる人好きだよ」

チェシャ「初めまして。ボクはチェシャ。管理AI十三号」

楓「……管理AI?」

楓(凄い普通に話せてるけど、今時のAIってこんなものなのかな?)

楓(あ、そうだ。確か理沙の言うことだと……ここでキャラメイクするんだったよね)

チェシャ「描画はどうする?」

楓(理沙のオススメは確か……)

楓「そのまま、で」

チェシャ「んじゃあ、キャラメイクと行こうか。最初に名前を決めて貰える?」

楓「ええっと、じゃあ……」




メイプル「メイプル。私の名前は、メイプルで」

メイプル(……まあ安直だけど、理沙も本名ちょっともじっただけとか言ってたし、いいよね)

チェシャ「じゃあ次にアバターの作成と……」テキパキ
4 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/21(土) 19:51:35.51 ID:7PAluBHS0
十五分後

チェシャ「とまあこんなもんかなー」

メイプル「おおー」

メイプル(……なんか限りなくリアルと似たような容姿な気がするけど、気にしない方向で行こう。うんうん。身バレしないしない)

チェシャ「じゃ、次はエンブリオを移植するよ!」

メイプル「えんぶりお?」

チェシャ「あれ。最近の子はここでテンション上げるんだけどな。事前情報とか見てないの? ま、いいか」



シュイイイイイイインッ バシュウウウウッ



メイプル「うえっ!? 何これ! 手の甲に……宝石? いや、ガラス!?」

チェシャ「エンブリオの説明を始めるよー。どう考えても事前情報を知らないみたいだしねー」

チェシャ「エンブリオはキミだけの武器とかパートナーとか、まあうん。そういうのだ!」ビシイッ

メイプル「説明が雑くない!?」ガビーンッ

チェシャ「今は第ゼロ形態。進化すると、キミのパーソナリティに合わせた形に進化するんだ」

チェシャ「大まかなカテゴリーは武器型のTYPE:アームズ、魔物型のTYPE:ガードナー、結界型のTYPE:テリトリー」

チェシャ「建物型のTYPE:キャッスル、乗り物型のTYPE:チャリオッツとかだね。進化するとここから更に分化するけど」

メイプル「へー」

メイプル「……ところでガードナーってどういう意味ですか?」

チェシャ「へ?」

メイプル「『ガードナー』なんて英単語、ないですよね? 何語なんですか?」キョトン

チェシャ「……」

メイプル「いや、他のカテゴリーが全部英単語だから、これだけ英単語じゃないってのもちょっと変だなぁ」

メイプル「一体どういう意図の……」






チェシャ「インフィニット・デンドログラムはキミを歓迎する!!!!!!!」


ズアアアッ


メイプル「えっ、待っ……落ちっ……ええええええええええええええっ……」ヒュウウウウッ

チェシャ「……キミみたいな勘のいい子、好きだよ」
5 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/21(土) 20:01:36.22 ID:7PAluBHS0
王都アルテア南門前

メイプル「う、うううん……」モゾモゾ

メイプル「ハッ!? ビックリした! 死ぬかと思った!」ガバリッ

メイプル「……どこ、ここ? ちゃんと待ち合わせ場所の近くなんだよね……?」キョロキョロ

メイプル(あ。城門。じゃあ一応、アルテアの近くではある……のかな)

メイプル「……待ち合わせ場所まで急がないと」スタスタ






王都アルテア内部

メイプル「うわあっ……何コレ、凄い! 本当にゲーム!? 凄いリアリティ!」キョロキョロ

メイプル(ちょっとした旅行気分だなぁ。いや、ちょっと心細いんだけど。いくら何でもリアルすぎでしょ)

メイプル(早く理沙と合流しないと)スタスタ

リリアーナ「あっ」バッ

メイプル「えっ」

メイプル(角から人影が……やば、避けられな――)



ドガシャアアアアアアアアアアッ



メイプル「べばぶぎゃべっ」ドシャァァァァ

メイプル「……!?!?」

メイプル(えっ。生身の人間と接触しただけだよね。私、生身の人間と衝突したんだよね。なのに何でこんな距離ふっ飛ばされてるの!?)ガビーンッ

メイプル「しかもダメージ凄ぼべばっ」ダバァァァ

メイプル(じょ、状態異常……骨折!? 内臓損傷!? 吐血!? え、嘘でしょ。ダメージが酷すぎない!? 死、死ぬ……)アタフタ

リリアーナ「《フォースヒール》!」

メイプル「……?」シュアアアアアッ

メイプル「あ。な、治った……?」
6 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/21(土) 20:14:16.09 ID:7PAluBHS0
リリアーナ「大丈夫でしたか?」

メイプル「あ、はい。なんとか。ありがとうございます、死ぬところでした……」

リリアーナ「すみません、先を急いでいたもので……無事で本当良かった」

メイプル「あー死ぬかと思った」フー

メイプル(人と正面衝突しただけで死にかけたり、魔法で元に戻ったり、変なところでゲームっぽいなぁ)

リリアーナ(お、落ち着いてるなぁ……今、明らかに死にかけてたのだけど……)

リリアーナ「あの……ぶつかっておいて、不躾なのですが」ゴソゴソ

リリアーナ「この子を見ませんでしたか?」

メイプル(写真?)

メイプル「……いえ。見てないですけど」

リリアーナ「……やはりもう、中に……」

メイプル「?」

メイプル「……何かよくわからないですけど、その子を探してるんですよね。見かけたら声をかけるくらいはしますよ」

リリアーナ「本当ですか!? ありがとうございます!」

リリアーナ「あ、これ私の連絡先です。何かあったら連絡を……改めてお詫びもしなきゃですので、何か無くても全然構いませんが」カキカキ

リリアーナ「その子を見かけたら『お姉ちゃんが探してるよ』と伝言を! それでは!」バタバターッ

メイプル「嵐みたいな人だったなぁ」

メイプル「……あれ。見たことない字だけど読める。ええと……」



紙『アルタ―王国近衛騎士団所属 副団長 リリアーナ・グランドリア』



メイプル「副団長?」

ピコンッ

メイプル「……あ。なんか出た。クエスト……?」

メイプル(えっ。じゃあ今の人、NPC!? 凄っ!?)ガビーンッ
7 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/21(土) 20:25:47.67 ID:7PAluBHS0
数分後

メイプル「ふうっ……やっと着いたかな。ええと、理沙っぽい人は……」キョロキョロ

謎のクマ「はーい順番ねー。楓の木印の風船はまだあるから大丈夫だよー、ほらほらー」

子供「わー! 僕にもちょうだーい!」

謎のクマ「はいはーい。押さないでねー。あと受け取った子供たちは出来る限り早めにはけてねー」

メイプル「クマの着ぐるみ……?」

メイプル(……ん? 楓の木印の風船……?)ジーッ

子供「やったぁ! ありがとクマさん!」



楓の木が書かれた風船の印字『Welcome my friend!!』



メイプル「……」

メイプル「理沙、何してんの!?」ガビーンッ

謎のクマ「ドキイイッ! ちょっと誰!? 往来で人のリアルネーム呼んだの!」ビクウウッ

謎のクマ「……あ! かえっ……じゃなくて、ええと……」

謎のクマ「まあいいや! ひとまず場所変えよう! 話はその後で! はい子供たちー、クマさんはもう行くからねー」



子供たち『えー?』



謎のクマ「いつかまた会おうね、バイバーイ!」ガシイッ

メイプル「うわ、ちょっとりっ……クマ! ちょっと!」
8 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/21(土) 20:29:12.92 ID:7PAluBHS0
ここで一旦中断!
このまま『NPCとエンブリオ含めた全員そのまま』で『プレイヤーだけが防振りの登場人物』の調子で続けていきます。
一巻分完結くらいまでは!

どうぶつの森やってきまーす
9 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 09:37:23.27 ID:5O4I07//0
その辺の飲食店

サリー「この世界では私のことをサリーって呼んでね。この世界での私の名前だから」

メイプル「……り、じゃなくてサリー。そのクマの着ぐるみ、何?」

サリー「あー。えーと、結構色々あってね。その内事情を話すよ」

メイプル「楓の木が書かれた風船をみんなに配ってたことに関しては?」

サリー「わかりやすかったでしょ? あの風船を目にしたメイプルが子供に『その風船、どこで貰ったの?』って訊けば万が一にも目的地を間違えることないし」

メイプル(風船を配った子を散らしてたのはそのためかー……)

サリー「で。何食べる? ここって味覚もリアルだからさー。何でも奢るよ?」ワクワク

メイプル「それはいいからさ。ちょっとこれを見てよ」ポンッ

サリー「お。早速操作に手慣れてるね……どれどれ」

サリー「難易度五のクエスト……発注者はリリアーナ……リリアか……」

メイプル「難易度五ってどのくらい難しいかな。発注されたからにはやりたいけど」

サリー「中級車でも単独じゃ難しいね。メイプルは今来たばっかだからジョブもないし、レベルゼロなら無理ゲーもいいところだよ」

メイプル「そっか。それじゃあ、これはもうちょっとレベルを上げてから……」

サリー「それも無理」

メイプル「え? 何で?」

サリー「このゲームのことは、ここまで来るまでに見てきたでしょ。どうだった? リアルすぎたでしょ」

メイプル「うん。凄くビックリした」

サリー「このゲームの厄介なところはそれなんだよ。リアルすぎるんだ」

サリー「……基本、時間を巻き戻す術がない」

メイプル「!」

サリー「気付いた? クエストは今も進行中なの。しかも難易度五ってことは危険度も段違いに高い」

サリー「急ごう。メイプル。何でもいいから手がかりとかない?」
10 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 09:51:23.37 ID:5O4I07//0
旧レーヴ果樹園 入口

メイプル「まさかリリアーナさんの連絡先の書かれた紙の裏側から場所を限定できるなんてね」

サリー「『レムのみをとってきます』かぁ……相変わらず無茶をするなぁ」

メイプル「なんか言った?」

サリー「んにゃ、何にも。さてと、装備を整えてっと」シュインッ

メイプル「あ。やっぱ着ぐるみ脱ぐ……んだ……」ジーッ

サリー「何?」

メイプル「……サリーもほぼリアルと容姿変わらないね?」

サリー「平気平気。多少はいじってるから身バレしないって」

サリー「んじゃ、メイプル。ダメコン……えっと、ダメージコントロール用のアイテムを片っ端から持たせておくから」

サリー「ひとまず生き残ること最優先ね。一人でも死なないユニットがいるってだけでクエストの難易度は段違いだから」

メイプル「了解」

サリー「んじゃあ、突入と行きますかー! バルドル、第二形態!」ガシャコーンッ

メイプル「うえっ!?」

メイプル(……銃と短剣が融合した非現実的な武器が出てきた!)

サリー「かっこいいっしょ。ガンソードだよ、ガンソード!」

メイプル(ここって基本ファンタジー世界じゃ……?)

サリー「突入ーーー!」ダッシュッ

メイプル「しかも早っ……待ってよーーー!」モタモタ
11 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 10:01:56.05 ID:5O4I07//0
果樹園 内部

リリアーナ「せいっ……はあっ!」ザシュウッ

虫型モンスター「」ワラワラウジャウジャ

リリアーナ「……」

リリアーナ(いくら何でも数が多すぎる! 危険性が高いことはわかってたけど、ここまでだったかしら!?)

ミリアーヌ「……おねえちゃん……」ガタガタ

リリアーナ「くっ」

リリアーナ(私は死なないだろうけど、守る戦いとなると圧倒的に手が足りな――!)




「メイプル、ここからは自力で走って!」ポイッ

「ぶぎゃっ!」

「リリア!」

リリアーナ「!」


ドカンッ ズバババババッ


虫型モンスター「GIGIGIGAAAAAA!?」

リリアーナ「あなたは……!」

サリー「通りすがりのプリキュアだ! よく覚えておけ!」シャキィィィン!

メイプル「さ、サリー……混ざってる。混ざってる上に投げ捨て方が雑で若干ダメージ入ってる……!」プルプル

リリアーナ「あなたまで! どうして!?」

サリー「そこで転がってる黒髪、私のマイベストフレンドなんだよね。この子からリリアがピンチって情報が伝わってきたんだよ」

リリアーナ「……!」

リリアーナ「ありがとうございます。私一人では、とてもミリアを守れないところでした……!」

メイプル「え。ええと、お礼を言う相手、間違ってません……? 私はただサリーを連れてきただけで……」ピクピク

リリアーナ「それでも、お礼を。迷惑をかけた私を助けようという発想をしてくれたこと自体が、とても嬉しいのです」

メイプル「……えへへ」テレテレ
12 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 10:14:31.85 ID:5O4I07//0
サリー「さてと、それじゃあミリアも一緒に、こんなグロテスク満載な果樹園からはさっさと脱出と行きましょうか」

メイプル「う、うん。そうだね」

メイプル(実質的に私も足手纏いだしなぁ。いくらこの二人が強くても、万が一のことがあるだろうし)

メイプル(……ていうか、こうやって合流した時点でクリアできるタイプのクエストだったりしないのかな?)

ピコンッ

メイプル「あ。二人がパーティに加入したね。えーとレベルは……私と同じゼロと、210!?」

メイプル(しょ、衝突だけで死にかけるわけだ……)

メイプル(……うーん。どんな攻撃を受けても死なないような防御力が欲しいなぁ。サリーから落とされるだけで悶絶する有様だし)



エンブリオ「……」キランッ



サリー「……メイプル。クエストクリアの通知、出てる?」

メイプル「へ? いや、出てない……と思うけど」

サリー「……これ、結構ガチでヤバいかもね」

メイプル「?」

サリー「突発的に発注されるタイプのクエストは『難易度』はわかっても『難易度が高い理由』まではわからないんだよ」

サリー「私はついさっきまで『時間制限が厳しいクエストだから難易度が高いのだろう』とぼんやり思ってたわけだけど」

サリー「レベル210のリリアが加入しても、クエストが達成されてない」

メイプル「それって、どういう……」

サリー「時間制限による難易度じゃない。つまるところこのクエストの難易度の理由は――!」

サリー「これからもっとありえない敵が出てくるからってこと!」




ドドドドズズズズズヌウウウッ




デミドラグワーム「GISHAAAAAAAAAAAAA!!!!」

メイプル「う、うわあああああ! でっかーーーい!」ガビーンッ
13 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 10:27:29.16 ID:5O4I07//0
リリアーナ「亜竜甲虫……!?」

サリー「……ああ、よかった。飛び切り私と相性の悪い敵が出てきたらどうしようかと思ったよ」

サリー「この程度なら、私に傷一つ負わせられない!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

メイプル「サリー!」

サリー「チマチマ叩き切ってあげてもいいけど? メイプルもいるしね! せっかくだ!」

サリー「バルドル第四形態、起――!」



デミドラ2「GIAAAAAAAAA!」ニョキッ

デミドラ3「KISYAAAAAAAAAAAA!」ニョキッ

デミドラ4「UZAINAAAAAAAAAAAAA!」ニョキニョキッ




サリー「……えっ」

サリー「えっ。まだいたの? え、嘘でしょ。ちょっと待って。私、まだ硬直中で動けな――ちょ、待っ」

デミドラs「」シュンッ

ドガシャアアアアアアアアアッ

サリー「クマアアアアアアアアアアアア……!?」ヒューッ

メイプル「サリーが死んだー! この人でなしー!」

リリアーナ「死んだんですか!?」ガビーンッ

メイプル「あ、すみません。死んでません、冗談です」

ミリアーヌ「ふええええええええん!」ダバーッ

メイプル「……ご、ごめんなさい……空気読めてませんでした……泣かせるつもりじゃ」アタフタ
14 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 10:32:41.74 ID:5O4I07//0
メイプル(……地面に空洞? ああ、そうか。このデミドラグワームってモンスター、地下に巣を作るタイプのモンスターなんだ)

メイプル(サリーはそこまで連れて行かれた、と)

メイプル(サリーのことだから、そこまで心配はしてないけど……)



デミドラ「GIAAAAAAAAAAA!」ニョキッ

デミドラ2「GOAAAAAAAAA!」ニョキッ



メイプル「ですよねー。まだいますよねー。あはは」

リリアーナ「……お願いがあります。ミリアを連れて、この場から一刻も早く逃げてくれませんか?」

メイプル「リリアーナさんは?」

リリアーナ「私一人であればどうにでも。まず間違いなく死にはしません! 早く!」

メイプル「……」

メイプル「ミリアーヌちゃん、一緒に行こっか!」ニコニコ

ミリアーヌ「う、うん」

メイプル「じゃあ、後は任せまーす! 無理はしないでくださいねー!」タッタッタッ

リリアーナ「……」

リリアーナ(あとは、これ以上のデミドラグワームがいないことを祈るしか……)

リリアーナ(どうか……どうかご無事で!)
15 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 10:40:44.09 ID:5O4I07//0
メイプル(このまま行ければ逃げ切れるかな。あれ以上のデミドラグワーム? がいたら多分終わりだろうけど)

メイプル(……まあ、出たらどうしようもないよね。私、レベルゼロだもん)

ミリアーヌ「……ぐすっ……おねえちゃん……!」

メイプル「あ。そだ。ミリアちゃんは、どうしてこんな場所まで来たのかな? 危ないよ?」

ミリアーヌ「きょ、今日はおねえちゃんの誕生日だったから、おねえちゃんの大好きなレムの実のケーキを作ってあげようと思って……」

ミリアーヌ「でもお店になくって、どうしようってなってたら、金髪のお兄ちゃんがお香をくれたの」

ミリアーヌ「このお香があれば虫が寄ってこなくなるから、安全にレムの実を取りに行けるよって」

メイプル「……へー」

メイプル(酷いことする人もいるんだなぁ)



ドグッ



メイプル(地面に振動……!)バッ

ミリアーヌ「きゃっ」

デミドラ「GIAAAAAAAAAA!」ドガァァァァァ!

メイプル「おおう、我ながらナイスドッジ! ……でも……!」

デミドラ「KATIKATIKATIKATI……!」フシュルルルルルルル

メイプル「……」

メイプル(これ完全に詰んでない? どうしよ)

ミリアーヌ「う、うう……ううえええええ……!」ガタガタ

メイプル「……ま、何もしないよりマシかな」
16 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 10:47:34.56 ID:5O4I07//0
メイプル「ミリアちゃん、これあげるね」

ミリアーヌ「……ブローチ?」

メイプル「後は一人で走って行って。お姉ちゃんは、あのデカいヤツと戦ってくるから」

ミリアーヌ「!」

メイプル「まー、多分勝てるんじゃない? 多分ね!」ニコニコ

メイプル(嘘。万が一にも勝機はない)

ミリアーヌ「お、お姉ちゃ……!」

メイプル「へーい! こっちだよムカデちゃーん! 投石へいへーい!」ポイポイッ

デミドラ「GIGIGIGI……!」クルッ

メイプル「よし誘導成功!」ガッツポ!

デミドラ「GIGAAAAAAAA」ブンッ

メイプル「べぼばっ!?」グシャアアアアッ!

メイプル(……やば。ダメコン一個、早速壊れた……! 完全致死ダメージ……! でもまあ、時間稼ぎくらいには……あれ?)

ミリアーヌ「……」オロオロ

メイプル「……早く行って! じゃないと後でお尻ペンペンしちゃうよ!」ウガァッ

ミリアーヌ「!」

ミリアーヌ「……!」タッタッタッ

メイプル「ふうー……これで安心、かな。ええとポーションポーション」ゴクゴク

デミドラ「GIGIGIGIGI!」ブオンッ

メイプル「ぼげべっっっ!?」グシャアアアアアアッ!
17 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 10:56:14.13 ID:5O4I07//0
メイプル「……!」ヨロヨロ

メイプル(時間、稼げる、かな……!? やっぱりレベルゼロじゃ限界があるよ! 一撃死だもん!)

メイプル(理沙ばりの反射神経でまた避ける……? 無理! あそこまでふざけたマネは私にはできない!)

メイプル(せめて防御力があれば……!)

デミドラ「GIGAAAAAAAAAAAA!」ブオンッ

メイプル「うわっち!」ヒュンッ

メイプル(……やった! 避けれた! 私の反射もそこまで捨てたもんじゃ)

ビュオンッ

メイプル「ぎょぶっ」バガァァァァァンッ

メイプル(……な、何が起こったの……?)

メイプル(……あ、そうか。尻尾か。尻尾に叩かれたんだ……)

メイプル「ぐ……!」ヨロヨロ

デミドラ「……」

メイプル「へ、へーい! まだ私元気百倍アンパンマンなんですけどー! そんなへなちょこパンチじゃ女の子一人殺せないよー!」

メイプル(ダメコンはミリアちゃんに分けちゃったからあと一つ。死亡分まで含めれば食らえて二回! ミリアちゃんが逃げきれれば、なんとか……!)

デミドラ「……」クルッ

メイプル「ん? あれ。どこを見てるの? そっちは……」






ミリアーヌ「はっ……はっ……はっ……」タッタッタッ

メイプル「……ッ!」ゾッ
18 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 11:01:43.77 ID:5O4I07//0
メイプル「ちょっと待ってよ! そっちはダメだって!」

デミドラ「……」ズルズル

メイプル「ぐっ、速っ……私の全力疾走より速い!」タッタッタッ

デミドラ「GUGIEEEEEEEEEEEEEE!」ブンッ

メイプル「や、やめ……やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

ミリアーヌ「……!」




ドガシャアアアアアアッ!




ミリアーヌ「かふっ」

メイプル「っ!」

メイプル(宙に投げ出され……まずっ……地面に落ちたら……!)ダッ

メイプル「間に合えーーーっ!」



ゴシャアアアアアアアッ!



メイプル「ご、あっ……!」

メイプル(な、ナイスキャッチ……でも……ミリアちゃんのダメージを受け止めるのに精いっぱいだったから)

メイプル「最後のダメコンが壊れた……!」

ミリアーヌ「……すう……すう……」

メイプル「……生きてる」

デミドラ「……GURUUUUUU……」フシュウウウ

メイプル「いや……このままじゃ死ぬ……よね」
19 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 11:13:27.28 ID:5O4I07//0
メイプル(ダメコンは全部壊れた。私はレベルゼロ。全力で走っても追いつかれる俊敏値)

メイプル(そして、一撃でも食らえば即死の防御力……リリアーナさんと接触するだけで死にかけるような紙装甲)

メイプル(終わりだな、これで。まあ、初心者にしては頑張ったよ。私)

ミリアーヌ「……ううん……」モゾモゾ

メイプル(……なんて)






メイプル(諦められるわけ、ないでしょ!)

メイプル(この世界はゲーム。私は死んでもまあ仕方ない。でもこの子はそうじゃないんだよ!)

メイプル(簡単に死なせていいはずがない!)

メイプル(万が一の勝機なんて贅沢は言わない。億が一でもいい! 可能性さえあれば、全力で掴みに行くのに!)

メイプル(本当に可能性はゼロなの? 何か、何か周囲に勝機は……!?)キョロキョロ

エンブリオ「……」

メイプル(……)




チェシャ『エンブリオはキミだけの武器とかパートナーとか、まあうん。そういうのだ!』ビシイッ

メイプル『説明が雑くない!?』ガビーンッ

チェシャ『今は第ゼロ形態。進化すると、キミのパーソナリティに合わせた形に進化するんだ』




メイプル「力が欲しい。今すぐに。この状況をどうにかできる可能性が欲しい」

メイプル「簡単に砕けるような私じゃない。誰にも侵せないような防御力がいい」

メイプル「聴こえてるんでしょ、エンブリオ! まだ私は諦めてないんだから、早く目覚めて一緒にこの子を守ってよ――!」

デミドラ「GUAAAAAAAAA!」ブオンッ
20 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 11:19:56.76 ID:5O4I07//0
「やれやれだ。随分と無茶苦茶を言うマスターだの」



ガイイインッ



デミドラ「GUGOEEEEEE!?」

メイプル「!?」

メイプル「え、何!? デミドラが跳ね返された!?」

「まあ、お前がそう願った力だからの」

メイプル「……」







ネメシス「おはよう」

メイプル「あ、おはようございます」

メイプル「……」

メイプル「誰?????????」
21 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 11:31:19.98 ID:5O4I07//0
ネメシス「説明は後だ。猶予はB'zのラブファントムのイントロ程度しかない」

メイプル「結構長くない?」

ネメシス「タイミングは任せる。ヤツが突進してきたタイミングで叫べ」

ネメシス「『復讐するは我にあり(ヴェンジェンス・イズ・マイン)』と」シュイイイインッ



ガシイイインッ



メイプル「うわっ」

メイプル(女の子が黒い盾になった!)

メイプル(もしかして……いや、後でいい! チャンスがあると言うのなら乗るだけ!)

デミドラ「GUGUGAAAAA……!」フシュルルルルルル

メイプル「タイミングを……計る」

メイプル「……お返し、行くよ!」

ネメシス『ああ! 大サービスだ! 倍にして返してやる!』

デミドラ「GUGYAAAAAAAAAAAA!」ビュンッ

メイプル「うにゃああああああああああ!!!!!」





メイプル&ネメシス「《復讐するは我にあり》!」カッッッッ
22 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 11:43:56.76 ID:5O4I07//0
デミドラ「……!?!?」バキッ

デミドラ「GIGYOEGYAGYAAAAAAAAAAA!?」バキバキバキバキバキッ



シュイイイインッ



メイプル「……あ。倒せた……のかな」

シュインッ

ネメシス「おお。おおー? 初めてしては上出来ではないかぁ。うんうん!」ニコニコ

メイプル「あ。また女の子になった」

メイプル「ええと、キミって、もしかして……」

ネメシス「……落ち着いたようだし、遅れたが自己紹介と行こうか」

ネメシス「私の名はネメシス。TYPE:メイデンwithアームズ。貴方の肉と魂から産まれたモノ」

メイプル「ネメシス……」








ネメシス「これからもよろしく頼むぞ。マスター」ニコッ
23 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/22(日) 11:45:20.01 ID:5O4I07//0
一旦中断!
24 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/23(月) 19:06:26.31 ID:Mf+0BekE0
数分後 果樹園外部

メイプル「……? エンブリオ……あなたが私のエンブリオ?」プニプニ

ネメシス「そうだぞ」

メイプル「サリーのはもっとこう、明らかに『武器だぞコラ死ねーーーッッッッッッ!』って外見だったけど」プニプニプニ

ネメシス「おそらくそれはTYPE:アームズのエンブリオであろうな。コラ死ね?」

メイプル「で。あなたは?」

ネメシス「TYPE:メイデンwithアームズだ!」フンス

メイプル「待って待って待っておかしいおかしい。チェシャの説明ではメイデンなんてカテゴリーは……」

ネメシス「レアなのだ。どのくらいレアなのかと言えば、幻のポケモン級だな! デオキシスくらい珍しいぞ!」

メイプル(じゃあ全然レアじゃないじゃん)

ネメシス「……一応言っておくが、マスターとエンブリオは思考で繋がっているからな。何を考えているかは一方的にこちらに筒抜けだぞ」

メイプル「え!? 何それ! 怖っ!」ガビーンッ

メイプル「ちょっとやめてよー! プライバシーの侵害だよ侵害!」プニプニプニ

ネメシス「ところで」





ネメシス「いかに気絶中であろうと他者のほっぺをぷにるのはどうかと思うぞ、マスター」

メイプル「触り心地よくて……」プニプニプニ

ミリアーヌ(寝心地悪い……)グー
25 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/23(月) 19:25:05.86 ID:Mf+0BekE0
メイプル(えーとネメシスの武器形態のステータスはっと……)

メイプル「……?」

メイプル(ひ、低い。産まれたばかりだから当然だけど)

メイプル(あれ? しかも、これやっぱりどう見ても盾だよね? 攻撃力なんかハナから期待できるはずがない)

メイプル「じゃあどうやってあのムカデを倒せたんだろう」

ネメシス「私の真骨頂は今のところ武器のステではなく、スキルの方なのだ」

メイプル「《復讐するは我にあり》だっけ。ゲームにしてはゴツいスキル名だよね」

ネメシス「他のゲームであれば多少はわかりやすく端折るだろうが、まあ私はエンブリオだからのう」

メイプル(某運命が聖杯戦争で恋愛な上にエクストラなゲームは『キャラのスキル名が長くてわかりにくい』って理由でちょっと削られたのに)

ネメシス「私で受けたダメージをダメージカウンターに蓄積し、それを与えた相手に返すスキルだ。さっき見た通りのな」

ネメシス「一度使えばダメージカウンターは全消費。小分けにはできぬから注意するのだぞ」

ネメシス「……あ。あとダメージを与えた張本人にしか使えぬ。モンスターAから受けたダメージはモンスターBに転嫁できぬぞ」

メイプル「制約が多い……」

ネメシス「その分、効果は劇的だ。もう説明するまでもないであろう?」

メイプル(これ、RPGっていうかカードゲームのデザインだなぁ。遊戯王とかに出てくるデメリットアタッカー)

メイプル(……そういえば私が『ガードナー』って英単語が存在しないって知ったのも、あのゲームがきっかけだったっけ)

メイプル「あとは受けた攻撃を丸ごとダメージカウンターに変換する《カウンターアブソープション》、と」

メイプル「これはさっきネメシスがムカデを弾いたヤツだね」

メイプル「見れば見るほど、あの時点での私に誂えたような武器だよ。タイミングが物凄くいいね」

ネメシス「……やっぱり事前情報をまったく仕入れていなかったか。エンブリオとは得てしてそういうものだ」

メイプル「そういうもの?」

ネメシス「一から説明するぞ? あのネコは端折りすぎたからな」
26 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/23(月) 19:33:52.22 ID:Mf+0BekE0
かくかくしかじか


メイプル「……同じエンブリオって二つ存在しないの!? すごっ! 面白いゲームだね、これ!」

ネメシス「ちなみに、何故第ゼロ形態などというまだるっこしい期間があるのかと言えば、お主の左手にひっついている間にお主を学習するためだ」

ネメシス「この私は、今までのマスターを観察した結果というわけだの」

メイプル「し、知らなかった……全然知らなかったよ……」

メイプル「……」

メイプル「産まれたばかりのくせにやたら詳しいよね?」

ネメシス「人型でも人ではないからのう。そういうこともある」

メイプル(全然納得できない答えだ)

ネメシス「正味、私も納得できん」

ネメシス「……しかし、ともあれだ。結局私を産み出したお陰で、お主は望む可能性を掴み取ることができた」

ネメシス「私に感謝し、更に感謝し、ついでに感謝し、そしてそのずっと後に自分を褒めるがよいぞ!」

メイプル「うん! 本当ありがとうね、助かった! ネメシスは凄いよ!」ニコニコ

ネメシス「……ふ、ふふふ」テレテレ

メイプル(えっ。感謝しろと言ったの本人なのに言葉が出ないくらい恥ずかしがってる)

ネメシス「うるさい」






リリアーナ「ミリア!」

メイプル「あ。帰ってきた」
27 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/23(月) 19:47:08.39 ID:Mf+0BekE0
ミリアーヌ「ん……お、おねえちゃ……ん?」パチリッ

ネメシス「おお。こちらも起きたの。そら、姉君だぞ。笑顔で迎えてやらんか」

ミリアーヌ「おねえちゃーーんっ!」バッ



ギュウッ



リリアーナ「もう、心配かけて……! でも無事でよかった。本当に……!」ギュウウウ

ミリアーヌ「ごめんなさい……ごめんなさい……!」

メイプル「……」

メイプル「やっぱ何回見てもリアルだよねぇ?」ハテ

ネメシス「何を首を傾げて、しみじみと」

メイプル「うーん。何でだろ。この世界に来てからずっと、なんか元いた世界との決定的な区別が付かなくってさ」

メイプル「今思ってもやっぱり不思議。なんであんなに必死だったんだろ。私」

ネメシス「……」

リリアーナ「ああ、あなたには何とお礼を言っていいか!」

ネメシス「うむ! 私と私のマスターに存分に感謝するがいいぞ!」フンス

リリアーナ「?」

メイプル「あ。私のエンブリオです。さっき孵化しまして」

リリアーナ「……やはり、サリーの友達だというあなたもエンブリオに選ばれたマスターなのですね」

リリアーナ「しかしメイデンとは……」ジーッ

メイプル(どうやら本当にレアらしいなぁ。物珍しそうな目線だ)



ザグザグザグザグザグッ



リリアーナ「ッ! 地面に振動……まさかここまで追って!?」



ドバァァァァァァッ



サリー「地下世界から生還、サリーちゃんだよーーーッ!」ザンッ

メイプル「あっ! サリー!」

サリー「私が来た!」

メイプル「サリー! その台詞はね! まだ何も終わってないときに言わないと寒々しいよ!」
28 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/23(月) 20:42:12.33 ID:Mf+0BekE0
サリー「え。終わった? 無事に? そっか、よかった!」ケラケラ

メイプル「もう! 今まで一体なにしてたの」

サリー「地下で繁殖してたデミドラグワームの駆除」

メイプル「繁殖? どれくらい?」

サリー「百近く」

メイプル「百近くゥ!? アレが!?」ガビーンッ

ネメシス「……す、凄まじいのぅ。マスターが一匹を這う這うの体で倒した糞ムカデが百近く……」

サリー「……?」ジーッ

サリー「ああ、エンブリオか。孵化したんだね、おめでとう!」

リリアーナ「それよりもサリー! デミドラグワームが繁殖していたとなると、このままにはしておけません! すぐに騎士団を編成して……」

サリー「もう遅いよ。全部私が狩っちゃったからさ」

サリー「流石に逃げたか逃げてないかまでは判別付かないけど……あそこまでやったらもうそうそう増えないと思うよ?」

リリアーナ「!?」ガーンッ

メイプル「流石廃ゲーマーだね! その情熱をちょっとは勉強に傾けてれば補修なんか受けずにすんだのに!」キラキラキラ

サリー「ふっふっふー! メイプルー」

サリー「……言っていいことと、悪いことがあると思わない?」ズーン

メイプル「……ごめん」アタフタ

ミリア「やっぱりサリーお姉ちゃんは凄い」キラキラキラ

メイプル「……?」

メイプル(『やっぱり』って?)

サリー「……はあ。疲れた。さっさと歓迎会の準備しないと。とんだハプニングだった」スタスタ

リリアーナ「あ! サリー!」

サリー「戦後処理は後回しにさせてよ。報酬や恩賞の類はそっちのメイプルに全部渡しといて」

ネメシス「……行ってしまったの」

メイプル「あれ。何だろう。ちょっと落ち込んでた……?」
29 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/23(月) 21:56:20.84 ID:Mf+0BekE0
サリー「……できればあの姉妹には関わりたくなかったんだけどなー。仕方ないっちゃ仕方ないか。命の危機だったし」

サリー「それにしてもメイプルがメイデン引き当てるとは。運がいいのか悪いのか……」ヤレヤレ






メイプル「あ。ちょっと離れたところで歩くのストップした」

ネメシス「待ち合わせ場所決める前から消えられないことに気付いたのであろうな。こちらをチラチラ気にしておるし」

リリアーナ「相変わらずしまらない……」クスッ

ミリア「あの、お姉ちゃん! これ!」サッ

メイプル「ん? ああ、これ……レムの実だよね。美味しそうだね、これでケーキ作る予定なんでしょ。上手く行くといいね」

ミリア「一個あげる!」

メイプル「……いいの?」

ミリア「サリーお姉ちゃんと一緒に食べて!」ニコニコ

ネメシス「美味い」シャクシャクシャクシャク

メイプル「かぶり付くの早ーーーッ!? しかも明らかに一人占めするペースで食べてる!」ガビーンッ

ミリア「……」ワニャ

メイプル(ミリアちゃんが凄い微妙な顔に!)ガーンッ

ネメシス「足りん!」ゲフーッ

メイプル「知らないよ!」ウガァ!

リリアーナ「……ふふっ。あなたもサリーと似ていますね。なんというか、締まらないところが」ニコニコ

メイプル(最高に嬉しくない)ズーン

リリアーナ「レムの実とは別に、この御恩は必ずお返しします。何かあったら気軽に私を尋ねてくださいね」

ネメシス「それより残りのレムの実を……」

メイプル「後でたらふく別の食べさせてあげるからもうやめてよ! 恥ずいよ!」カァァァ
30 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/23(月) 21:57:28.97 ID:Mf+0BekE0
今日はここまで!
31 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/24(火) 17:02:37.64 ID:RQ8kT47G0
十分後:その辺の宿付きの飲食店

メイプル「正直な話、サリーに言われるがままスタートしたからこのゲームのことをまったく知らない」ドーンッ

サリー「ああ。メイプルってそもそもゲーム自体そんなやらないもんね」

メイプル「このゲームって何を目的にやればいいの? 海賊王になればいいの?」

サリー「別に大海賊時代じゃないから……」

サリー「……ここに来るまでに管理AIから話を聞かなかった?」

メイプル「世間話してたら途中でなんか地雷踏んじゃったぽくって……」

サリー「どんなに沸点の低いAIでも普通そこまで怒ったりしないと思うけど、何言ったの」

サリー「ええと、まあいいや。インフィニット・デンドログラムの直訳、わかる?」

メイプル「無限の系統樹とかそういうのでしょ」

サリー「そっくりタイトルでこの話は終わりだよ。何でもいいの、何でも」

サリー「英雄になるのも魔王になるのも、王になるのも奴隷になるのも、善人になるのも悪人になるのも自由」

サリー「インフィニット・デンドログラムにいるのも、いないのもね」

メイプル「最後のはゲームのマーケティング的にどうなの……? 版上げや次回作、大型アップデートの場合でもアウトじゃない?」

サリー「実際に私がそう言われたんだもん」

メイプル「……ま、いいか。結構楽しんでるしね、私」

メイプル「目玉システムのエンブリオ……だっけ? それが私の場合、ネメシスだしね」

ネメシス「もが?」モグモグモグモグモグ

メイプル「実は既に気に入ってるんだ。えへへ」ニヘラ

ネメシス「……ごくん。ふっ。当然だな!」ニカッ

サリー「……エンブリオの性格診断……」ボソッ

メイプル「何?」

サリー(やばっ。口を滑らせちゃった)
32 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/24(火) 17:24:33.42 ID:RQ8kT47G0
サリー「いやさ。個人のパーソナリティからエンブリオの姿が変化するじゃん?」

サリー「だから、TYPE別にプレイヤーの性格がある程度逆算できる……らしいんだよね。私はそこまで信じてないけど」

メイプル「へぇ! 私の場合はどんなの?」

サリー「メイデンはレアすぎて覚えてないけど、TYPE:アームズの性格診断の結果は覚えてるよ」

サリー「脳筋」

メイプル「脳筋!?!?」ガビーンッ

サリー「勇気があるヤツ、猪突猛進、人情家。そんなところだったかな」

メイプル「聞いてみて損したかも。私、そんなんじゃないよー……」

ネメシス「そこまで外れているとは思わぬが……」

メイプル「あ! でもサリーは結構そうじゃない? まさにそんなプレイスタイルだよね!」

サリー「あれ。言ってなかったっけ? ああ、言ってなかったね……」

サリー「私のバルドルはTYPE:アームズじゃないよ。最初から」

メイプル「え。でもあれどう見ても武器型じゃ……」

サリー「たまーに『周囲に不利な状況を強いておいてテリトリーではなくチャリオッツ』みたいな詐欺カテゴリーもあるんだけどさ」

サリー「私もそういう類のヤツなんだよね」

メイプル「へぇー。じゃあ本当は何なの?」

サリー「今は秘密。その内イヤでもわかるよ。何ならリリアに訊けば?」

メイプル「そんな仲良くないし……」

ネメシス「ム? そもそもずっと気になっておったのだが、サリーはあの副団長とどのような知り合いなのだ?」

サリー「……あー……」

サリー「長くなるし物凄くつまらない話だけど、聞きたい?」

メイプル「私も気になってたし、隠すほどのことじゃないんでしょ?」

サリー「若干恥ずかしい話なんだけどね……」
33 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/24(火) 20:39:39.18 ID:RQ8kT47G0
サリー「デンドロ時間で半年前、アルタ―王国の隣国ドライフが戦争しかけてきたのさ」

サリー「ゲーム的には戦争イベント。結果だけを先に言っちゃうとアルタ―王国の惨敗」

メイプル「へぇ。ドライフってそんなに強いんだ」

サリー「いや。諸事情あって王国側のプレイヤーがほぼほぼ参加しなかっただけ。ゲーム的には人数不足による不戦敗に等しいよ」

メイプル「え。どういうこと?」

サリー「かなりリアルに作られてるって言ったでしょ。国の政策の差が思いっきり出たんだよ」

サリー「ドライフ皇国はマスターに対する報酬を物凄く明確に定め、まさに一般のソシャゲみたいに『参加しとくだけでも濡れ手に粟』みたいな状況だった」

サリー「対して、こっち側の王様と言えば物凄く古臭い考えをする人でね」

サリー「……国に対する忠誠心があるならばどうちゃらこうちゃら、みたいな今となってはさっぱり内容を思い出せない通告演説のみだったよ」

メイプル「報酬が無かったの!? ゲームイベントなのに!?」

サリー「ハッキリ言ってやるわけないよね?」

メイプル「……ん? ちょっと待って。さっき惨敗って言ってたよね?」

サリー「言った。まープレイヤーにとってイベントでも、この世界のNPC……ティアンたちにとってはリアルだからねぇ」

サリー「たくさん死んじゃった。王国所属の大賢者も、王様も」

サリー「……まあどっちも知り合いじゃないから実感はないけど、あと一人の重要人物が私にとっては大問題なんだよね」

メイプル「重要人物?」

サリー「リリアとミリアのパパ。近衛騎士団の団長だったんだよね。今の騎士団、団長不在のままなんだよ」

メイプル「!」

ネメシス「……随分と苦々しい顔をしながら語るが、そこまで後悔しているのであれば参加すれば良かったのではないか?」

サリー「個人的にはまあノーギャラでもやりたいところではあったんだよ? でも、さぁ」チラッ

メイプル「え。何でこっちを見るの?」

サリー「ほら。デンドロでの時間って、元の世界の三倍速で進むんだよ。つまりデンドロ時間の半年は、現実世界の二か月ってことで……」モジモジ

メイプル「二か月前……」



メイプル『流石廃ゲーマーだね! その情熱をちょっとは勉強に傾けてれば補修なんか受けずにすんだのに!』キラキラキラ



メイプル「あ! 進級の危機だったんだね!?」ガビーンッ

サリー「流石にダブるのはちょっとねー」ハァ
34 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/24(火) 21:06:26.44 ID:RQ8kT47G0
サリー「いやまさか補修を受ける羽目になるとまでは私も予想外だったからさー。開戦間際にはリリアに色々言っちゃったんだよ」

サリー「『ノーギャラでも関係ない! リリアは私の友達だもん! 絶対に参加するからね!』って大見得切っちゃってさー」ズーン

メイプル「そ、その結果が……不参加」

サリー「それ以前にリリアとは何かと仲良くしてもらってたからさー。その縁でミリアとも知り合ってさー」

サリー「まあ流石にドタキャンはしなかったよ。補修が決まった途端に『やっぱ不参加で。ごめんね!』とは言ったよ?」

サリー「リリアのパパの強さを半端に知ってたばかりに『まあこの人なら死にはしないだろう』って油断してたのも事実だよ」

サリー「ラングレイさんがまさか死ぬとは……思わなくって……」ズーン

メイプル「もういいよ! やめよう! せっかくのご飯が不味くなっちゃうから!」アタフタ

ネメシス「なるほどのう。責任か。そのせいで若干ぎくしゃくしていたのか」

メイプル「……ドライフってまた攻めてくるかな?」

メイプル「ん? そういえば、どうしてアルタ―王国はまだ滅びてないんだろう。惨敗だったんだよね? 王さまが死ぬほどの」

サリー「途中で隣国のカルディナがドライフを攻め始めたんだよ。それで攻撃が中止になって、アルタ―王国は首の皮一枚繋がった」

メイプル「サリー。次に戦争イベントがあったら私も参加するからさ。元気出そうよ」

サリー「だったらランキングに入らないとね。討伐ランキング、クランランキング、決闘ランキングのいずれかに入らないと参加できないから」

メイプル「報酬云々以前に条件がいかにも厳しそうなんだけど……」

メイプル(……逆に、サリーはこの条件を満たしているってことだよね)

メイプル(今のサリーってどのくらい強いんだろ……?)

サリー「んがーーー……!」
35 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/24(火) 21:17:27.13 ID:RQ8kT47G0
今日のところはここまで!
さぁ……ぶつ森でタランチュラ島ガチャの時間だ……!
36 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/25(水) 18:45:45.08 ID:12RPCHwQ0
サリー「ええい、辛気臭い話はここまで! 飲め飲め! 酒が足りてないぞーーーっと!」

メイプル「え。お酒飲めるの?」

サリー「んにゃ。年齢規制の問題で私たちは飲めないね。リアル二十歳になるまでは」

ネメシス「むむう。お子様なマスターのせいで私まで飲めぬのか……」

メイプル「……いやダメでしょ。仮に成長してもネメシスは。見た目年齢的に」

ネメシス「なんだとー!?」プンプン

メイプル「成長と言えば、エンブリオってどのくらい成長するの? 第一形態ってことは第二形態もあるんだよね?」

サリー「まともに考えれば第六形態まであるよ。まともじゃなければ第七形態まで行けるかな」

メイプル「何それ」

サリー「第七形態は超級とか呼ばれててね。ここまで行くのは運も絡むよ。第六まではまともな努力と時間次第で到達できると思うけど」

サリー「あと、TYPEも進化に応じて変わるね。メイデンはメイデンそのまま、複合のwithの部分が変わるはずだよ」

メイプル「見てきたみたいに言うね?」

サリー「見てきたもん。デンドロ歴長いからね」

サリー「おじさーーーん! ジュースおかわりー!」

メイプル「……ところでさ。ずっと訊こう訊こうとは思ってたんだけど」






メイプル「どうしてこの店、私たち以外に誰もいないの?」

席「」ガラーーンッ

サリー「貸し切りにしないと、私素顔出せないからさ……」フッ

ネメシス「……なんかちょくちょく闇が挟まるのう、サリーの顔」

メイプル「デンドロで何があったの……?」
37 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/25(水) 18:56:01.25 ID:12RPCHwQ0
デンドロ時間 翌日

メイプル「さぁ今日は何がしかのジョブに付くぞーーーッ!」イェェェェェイ!

ネメシス「おー!」

サリー「じゃあ、早めに職を決めちゃおうか」

メイプル「このゲームのジョブシステムってどうなってるの?」

サリー「複雑だから就いてから調べた方が頭に入りやすいよ」

メイプル「そっか」

サリー「んじゃ、早速アレを出そうか」

サリー「ちゃりらちゃっちゃらー。適職診断カタログーーー!」バァァァァァンッ!

逢魔降臨暦「」イワェェェェェ

メイプル「別物に見えるけど」

サリー「間違えた」ナイナイ

ネメシス(い、今のは何だったのだ……?)ヌボーンッ

サリー「はい今度こそ! 適職診断カタログーーー! これでメイプルの現状に合った職をすぐ探せるよ!」

メイプル「どれどれ……」



五分後



メイプル「あ。出たよ。聖騎士だって」

サリー「聖騎士……? それ上級職だけど。レベルゼロから一足跳びに就けるようなものじゃなかったはずだけどな?」
38 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/25(水) 19:40:25.31 ID:12RPCHwQ0
メイプル「具体的に条件は?」

サリー「亜竜……デミドラグ以上に強いモンスターを単独で全体HP50%以上削った上で倒すとか」

メイプル「デミドラグワームとか?」

サリー「あ。できてるね。でも次も問題だよ。教会に行って二十万リル寄付しなきゃだし……って」

サリー「そういえばメイプル、デミドラを倒したときのドロップアイテム、まだ開けてないんじゃない?」

メイプル「あ。これ開けていいヤツだったの? ええと、どれどれ」ポチポチ



パカッ



メイプル「全身鎧とよくわかんないのが出たけど」

サリー「メイプルじゃレベル制限に引っかかって装備できないな……でも換金すれば四十万リルにはなるよ。よくわかんないのは換金アイテムだね」

メイプル「一気に二つ目の条件もクリアしちゃったね」

サリー「ホントだ……三つ目が最後にして最難関だよ。騎士団関連の主要人物の推薦を受ける」

メイプル「主要人物って、どのくらい偉い人?」

サリー「さぁ? 詳細はわかんないけど、平じゃダメじゃない? 副団長くらいなら確実だけど……って」

ネメシス「……クリアできるのう?」

サリー「だねぇ?」

メイプル「え? え? どういうこと?」

サリー「リリアだよ」

メイプル「……ああ!」ピコーンッ
39 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/25(水) 19:48:26.54 ID:12RPCHwQ0
ダイジェスト:今、職に就くとき……!

リリア「さあ来いメイプルさんーーー! 実は私は頼まれれば推薦状を書くぞォォォォォ!」

メイプル「おねがいしまーーーす!」ダバダバダ

リリア「うおおおおおおおおお!」カキカキ



数十分後


教会「金を持ってきたようだな……!」

メイプル「食らえェェェェェェ!(二十万リル寄付)」

教会「グアアアアアアアアアアア!」チャリンチャリンチャリン 1up! ティロリロリンッ

メイプル「やった……ついに二つの条件を満たしたぞ。後はデミドラクラスモンスターを倒せば」ハァハァ

ネメシス「もうその必要はないぞマスターよ……」

メイプル「今までのドタバタで忘れていたが、実は私既に亜竜クラスモンスターを単独討伐してたぜ!」グッ

ネメシス「そういうことだ」

メイプル&ネメシス「行ィィィィくぞォォォォォ!」


メイプルとネメシスが世界を救うと信じて――!


ダイジェスト終了




メイプル「……と、いうわけでやっとレベル上げができるようになったね!」

ネメシス「後は装備だのう」

サリー「んじゃあオススメはこっちだよ。早く早く!」
40 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/25(水) 20:00:26.16 ID:12RPCHwQ0
イズの店『臨時休業中』

サリー「ありゃ。インしてないのかな。残念」

メイプル「サリー。この店は?」

サリー「んー? イズっていう生産職のマスターのお店。いないんじゃ仕方ない。別のところ行こう」

ネメシス「……?」クンクン

メイプル「ネメシス、どうかした? 早く行こうよ」

ネメシス「あ、ああ」

ネメシス(……なんかきな臭いのう。エンブリオの気配がするのだが……)

ネメシス「まあ、よいか」フン





数十分後


メイプル「完成、かなぁ?」

ネメシス「うんうん。よいのではないか? 性能的には申し分ないと思うぞ、初心者にしては」

サリー「あとはコレ。餞別に持っていきなよ」ポイッ

メイプル「うわっと……」キャッチ!

メイプル「剣?」

サリー「長くもなく短すぎもしない。そのくらいなら最適でしょ」

メイプル「ん? サリー。盾持ちのサブウェポンにおける剣の最適な長さって、どうやって計るの?」

サリー「そりゃあ、まあ。抑えつけた敵を短刀で攻撃して止めを刺すのが基本なわけだから」

サリー「人型モンスターの口に刃を突っ込んで、延髄か頸椎を切断できる程度の長さでしょ」

メイプル(エグい……)ガタガタ

ネメシス(怖い……)アワアワ
41 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/25(水) 20:12:46.41 ID:12RPCHwQ0
サリー「んじゃあ、後は一人で頑張って。しばらくはさ」

メイプル「え! 一緒に遊ばないの!?」ガーンッ

サリー「私だってそうしてあげたいけど……今のところレベルが離れ過ぎてるからさ。私たち」

サリー「パワーレベリングはエンブリオにとっていい影響ないしねー」

メイプル「んぐ……」

ネメシス「……私も弱いエンブリオに進化するのは御免だの」

メイプル「仕方ない。しばらくは地道にやろうか。ネメシスもいるんなら寂しくないしね」

サリー「その意気だよ!」

サリー「……と、そうだ。この前言ったランキングの話、覚えてる?」

メイプル「昨日の今日だから忘れるはずがないけど」

サリー「ランカー絡みのいざこざに巻き込まれたらすぐ私に連絡して」

サリー「……たまにとんでもないヤツがいるからさ」

メイプル「サリーが人目を避けてクマの着ぐるみを着るようになった原因とか?」

サリー「これは自業自得と言えなくもないかな……ま、警戒させすぎても面白くないだろうから、警告はここまでにしておくけどさ」

サリー「んじゃ、ばいばい。私はちょっと適当に、ギルドから仕事貰ってくるよ」

メイプル「うん! ばいばーい!」ヒラヒラ

ネメシス「……さてと。マスターよ。いよいよここから冒険が始まるのう」

メイプル「うん! 改めてよろしくね、ネメシス!」

ネメシス「無論だ! さあ、さっさと狩場に移動するぞ!」ワクワク

ネメシス「たくさん狩って、もりもりレベルアップするぞー! うわははははははは!」
42 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/25(水) 20:15:35.50 ID:12RPCHwQ0
今日のところはここまで!

……しずえさん、出ないな……今のところほぼ最速で攻略していると思うのだけど
43 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/26(木) 18:59:02.79 ID:EjRhO5BM0
アルテア東門周辺 イースター平原



ドカッ バキッ

メイプル「このっ……大人しく、してっ!」ガンッ

ゴブリン「ゴアアアアア!?」ジタバタ!

ネメシス『マスター! 私で抑えつけている間に口に刃を差し込め!』

メイプル「了解、このっ!」ガッ

ゴブリン「ごぎゃぶっ!?」グサァッ

メイプル「……あれ。死んでないな? こう?」グリイッ


ブシャアアアアッ


ゴブリン「お、おあっ……オアアアアアア!?」ジタバタジタバタ

メイプル「うわあ! 出血量凄いのに、まだ死んでないよー!」

ネメシス『もっと強くだ! 頸椎が切れてないぞ! 貫通すらしていない!』

メイプル「ああもう、面倒だ、なぁっ!」グリイイイイッ

バツンッ

ゴブリン「……ぶっ……」ガクンッ

バリィィィィンッ

メイプル「おお。ゲームっぽい。やっぱり倒したモンスターって死体が残らないんだね」

ネメシス『おめでとうマスター! この狩場での初キルだぞ!』

メイプル「わーい! やったー! わーいわーい!」キャッホー







メイプル「エグいよコレッッッ!」ガビーンッ

ネメシス『私もちょっとどうかと思ったところだ』
44 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/26(木) 19:11:12.24 ID:EjRhO5BM0
メイプル「いや盾で撲殺もエグさでは変わらないかもしれないけどさ!」

メイプル「この戦い方は安全だけどエグいよ! もっとこう……大剣でバッサリとか、魔法で消し飛ばすとか……」

メイプル「そういうファンタジーすぎてまったく実感がわかない攻撃方法が良かったよ! エグいもん! 下手したら現実でもできるよこの手口!」

ネメシス『とは言えだ。マスターよ。結局私たちは低レベルのド初心者』

ネメシス『そのようなスキルがあっさり使えるはずもない。回復魔法も初級のしか使えんのだろう?』

メイプル「そりゃまあ……」

メイプル「……はあー。仕方ない。慣れよう。私たちには今のところそれしかないんだもん。ないものねだりしても生産的じゃないもんね」

ネメシス『さて。どの程度で慣れるかのう。その前に疲弊して膝をつくのが早いと予想するが』

メイプル「イヤな予想するなぁ……」





二分後


メイプル「えいっ」グサァァァッ

ゴブリン「ぶべびゃっ」

バリイイイイインッ

メイプル「慣れたッ!」シャキィィィンッ

ネメシス『まだ二匹目なのにィ!?』ガビーンッ

メイプル「罪悪感を覚えるのは、無駄に苦しみを長引かせているからだと気付いたんだよ」

メイプル「躊躇なしで殺せば苦しみが長引かない! すぐ楽にできる! 痛くない! 怖くない!」グッ

ネメシス『……』

ネメシス(サイコキラーの発想では?)ヌボーンッ
45 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/26(木) 21:18:55.79 ID:EjRhO5BM0
三十分後 討伐数:16匹

メイプル「それにしても、色々な人がいるなぁ……確かに一つとして同じエンブリオはないみたい」

ネメシス『ム? マスター。いいか?』

メイプル「なに? 緊急の用事?」

ネメシス『火急と言えば火急だが……二時の方向だ。マスターがいる』

メイプル「そんなのこの辺りじゃ別に珍しくも……」チラッ




着物の少女「……ちょっと無茶をし過ぎたな。回復アイテムが尽きた」

小悪魔ルックの少女「うぇぇ……カスミー。ピンチだよー?」グッタリ




メイプル「……ピンチっぽいね。囲まれてるし」

ネメシス『五割くらいの確率で突破できそうではあるが。五割の確率で死ぬのでは大ピンチと言って差し支えあるまい?』

メイプル「でもヒーロー見参! みたいな調子で助けるのも場合によってはマナー違反だしなぁ」

メイプル「……そだ」

メイプル「《ファーストヒール》!」

着物の少女「ん?」ポワッ

小悪魔ルックの少女「おお? 傷が治った!」

メイプル「この程度なら迷惑でもないでしょ。ないよね?」ドキドキ

着物の少女「ハァッ!」ザシュッ



ズバズバズバッ



着物の少女「HPのマージンが増えたのなら、被ダメ覚悟の無茶な戦い方ができる」

着物の少女「……礼を言わせてもらおう。通りすがりの見知らぬ誰か」

小悪魔ルックの少女「ありがとー!」

ネメシス『……おや? あの小悪魔……』

メイプル「どうかした?」
46 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/26(木) 21:38:15.22 ID:EjRhO5BM0
ネメシス「よっと」パッ

メイプル(少女形態に戻った?)

ネメシス「ほうほう……ほうほうほう。同種かと疑ったが、ガードナーか。珍しいのう、ここまで人型に近いのは」ジロジロ

小悪魔ルックの少女「んー?」

メイプル「ね、ネメシス。急にジロジロ見るのは行儀が悪いよ」オロオロ

着物の少女「驚いたな。そんなTYPEのエンブリオもいるのか。武器と少女の二つの形態とは」

ネメシス「うむ! TYPE:メイデンwithアームズのネメシスだ! 覚えておくがいい!」フンス

バビロン「バビはTYPE:ガードナーのバビロン! こんにち殺法!」シュバッ

ネメシス「こんにち殺法返し!」シャキィィィィンッ

メイプル「数秒でもう仲良くなってる! かぐや様ネタで!」ガビーンッ

着物の少女「……まあ仲が悪いよりはいいことだ。面倒が少ない」

メイプル「……えっと、ネメシスのマスターのメイプルです。よろしく」

カスミ「カスミだ。デンドロについ昨日入ったばかりの初心者だが、こちらこそよろしく頼む」ニコ

メイプル「え! 偶然! 私も昨日入ったばっかりなんですよ!」キラキラ

バビロン「ねえねえカスミー! この人たちと一緒に遊ぼうよー! 多分楽しいよー?」

カスミ「……何故エンブリオのお前がマスターの私を主導する……?」ヤレヤレ

カスミ「それに、もう帰る予定だ。回復アイテムが尽きたとさっき言っただろう?」

バビロン「えー?」

メイプル「……凄い普通に喋ってますけど、ガードナーって確か『魔物型のエンブリオ』じゃなかったですっけ?」

カスミ「敬語はいらない」

バビロン「バビは淫魔だからねー! 人型じゃないと!」フンス

メイプル&ネメシス「……淫魔??」
47 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/26(木) 21:51:51.14 ID:EjRhO5BM0
バビロン「セクシーにエロいことする魔物! です!」フンス!

ネメシス「聞き間違えではなかったようだ」

カスミ「バビ……あんまり大っぴらにそういうことを言うのは……」

バビロン「えー? なんで? バビが淫魔なのは事実だよ?」

カスミ「それはそうだが、なんだ。お前が私のパーソナリティから産まれたという事実がだな……その、なんだ。恥ずかしいというか……」

バビロン「カスミはバビのことが恥ずかしいの?」ウルウルウル

カスミ「……」

ネメシス「閉口してしまったぞ」

メイプル「涙目でこんなこと訊かれたら誰でも固まるでしょ。私でも固まるよ」

カスミ「エロなのか……? 私のパーソナリティはエロなのか?」ワナワナ

バビロン「カスミの本性は獣! 嵐の如き、エロさの力!」ドカァァァァァンッ

カスミ「やめろ!!!!!!!」ウガァ!

ネメシス「流石に怒鳴ったな」

メイプル「目の前でエロ呼ばわりされたらね。私でも怒鳴るよ」

ネメシス「おっと。そうだ。そろそろ小腹が空いたと思っておったところなのだ」

ネメシス「私たちも街に帰るぞ。マスター」

メイプル「ん? んー……」

カスミ「?」

メイプル「カスミさんたちも一緒に行こう? せっかくだし」

カスミ「さんもいらない」

バビロン「さんせーーーい! スイーツの美味しい店行こうゴーゴー!」

カスミ「……まあこれも、オンゲの醍醐味の一つか」

メイプル「ふふふ」

メイプル(サリーがいなくて寂しいし、誰かと一緒にやりたいと思ってたところだったんだよね)ニコニコ

ネメシス(寂しがり屋だのう。我がマスターは)
48 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/26(木) 21:56:14.65 ID:EjRhO5BM0
今日のところはここまで!
49 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/27(金) 17:43:24.73 ID:oMbyt/af0
その辺の飲食店セカンド

メイプル「……え? ジョブに就いてないの?」

カスミ「就き方がさっぱりわからなかったからな。特に不自由も、さっきまではしていなかった」

ネメシス「それはおかしいのではないか? さっきはモンスターをズバズバ斬っておったろう? 剣士系統でもなければあんなことは……」

バビロン「カスミの剣術は自前なんだってー」ドバドバ

バビロン「んー! バニラパフェのチリソースかけ美味しー!」バクバク

メイプル(それはもうパフェじゃないよ。チリソースの海に浮かんだ残飯だよ)

メイプル「そっか。リアルでのスキルがこの世界だとある程度反映されるんだね。考えてみればそりゃそうだって感じだけど」

ネメシス「それにしたってレベルゼロであの剣捌きはすさまじいのう……」

カスミ「……面倒でなければ、ジョブの就き方を教えて貰ってもいいだろうか? 本当に素人なんだ」

メイプル「いいよ! はいこれ、適職診断カタログ。友達から借りてそのまま返し忘れちゃったヤツだけど」

カスミ「これを見ればいいのか?」

カスミ「……ふむ……」ペラッ

カスミ「……ん!?」ガビーンッ

バビロン「おおー! 変なの出たねー!」ケラケラ

メイプル「変なの?」

カスミ「私の本性はエロ……」ズーン

メイプル「何が当たったの!? 落ち込みようが凄いよ!」ガーンッ

カスミ「い、いや……大丈夫だ。ちゃんと申請さえすれば違法な職業ではない」

カスミ「一応……」ボソッ

メイプル(じゃあ何でこっちを見ないの?)




その後雑談をしてカスミとは別れた
50 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/27(金) 19:34:43.40 ID:oMbyt/af0
王都アルテアより北 ノズ森林

メイプル「あっちじゃ物足りなくなってきたから、ちょっとレベルの高い狩場でやろっか」

ネメシス『賛成だな。賛成だが……』



狼型魔物「ガルルルルルル!」



ネメシス『……人型ではなく獣型のモンスターがついに出てしまったか』

メイプル「抑え込み方と止めの刺し方のノウハウをまた一から考えないとね」

メイプル「四足獣なら……真上からの抑え込みかな?」ブンッブンッ

ネメシス『重さが足りてないから真横からがよいのではないか?』

メイプル「……やりながら考えようか! 撲殺するつもりでネメシスをぶん回すからよろしく!」

ネメシス『心得た!』



十分後


ドギャアアアアッ

狼型魔物「ぎゃわんっ」グシャッ

メイプル「よし! 一旦体制を崩してから盾で抑え込めば、後は簡単だね!」ブスウッ ブシャアアアアアッ

狼型魔物「カッ……カ、カ……!」ビクンビクンッ

メイプル「そのままじっとしててねー。すぐ楽になるから……んー。狼の頭蓋骨と首の骨ってどういう構造になってたっけなぁ」グリッ……グリッ……ブシュッ

グチャッ ズチッ…… ブツンッ

狼型魔物「うぶっ……」グッタリ


バリイイイイインッ


メイプル「うん! 経験則でどうにかなりそう! あと三匹狩れば!」ニコニコ

ネメシス(相変わらずグロい……)

メイプル「やったぁ! ネメシス、私レベル5になったよ!」キャッホイ!

ネメシス『おめでとう』
51 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/27(金) 21:16:24.36 ID:oMbyt/af0
三十分後

ゴリュッ……バツンッ

バリィィィィンッ

メイプル「慣れてきたー!」イエーイ

ネメシス(本当に慣れおった!)ガーンッ

ネメシス『マスターには解体の才能でもあったのかのう』

メイプル「そんなことないよ。経験すれば誰にでもできる程度のことしかやってな――」


バンッ

ドギュウウウウウウンッ



メイプル「かっ……!?」グラッ

メイプル(……だ、ダメージ? 嘘、私、攻撃された?)

メイプル(誰に!?)

ネメシス『マスター!』

メイプル「……ッ! 《カウンターアブソープション》!」ガキィィィィンッ

謎の生物「げぎゃぎゃぎっ!?」ドカァァァァンッ

メイプル「えっ……攻撃を防御しただけで死んだ? 何、今の。名称も見えなかったし!」

ネメシス『モンスターなら名前が表示されるはずだ。それがないと言うことは、今のはさっき会ったバビと同じだ!』

メイプル「エンブリオ!」


ギャァァァァ! ヒィィィィ!


メイプル「……!? えっ。何!? 悲鳴!? あちこちから聞こえるけど!」オロオロ

ネメシス『逃げろマスター! 無差別攻撃だ! おそらくこの場にいると巻き込まれる!』

メイプル「でもエンブリオはもう死んで……!」


バンッ


メイプル(またあの音……! 銃声? 違う、爆竹か何かみたいな……!)

ネメシス『構えろマスター!』

メイプル「《カウンターアブソープション》!」ガキィィィィンッ

謎の生物「ぎぎぎぎぎぎっ!?」ドカァァァァンッ

メイプル「また死んだ!?」

メイプル「……ああ、そうか! 群生型のガードナーなんだね!?」

ネメシス『TYPE:レギオンと言うカテゴリーだ! ガードナーが進化するとなる形態の一つ!』

ネメシス『いいから逃げろ! 相手が悪すぎる!』
52 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/27(金) 21:33:24.23 ID:oMbyt/af0
メイプル「ぐっ……! 思ったより街への入口が遠い! 結構奥まったところまで来ちゃったみたいだね!」タッタッタッ

メイプル「ていうかこのゲーム、プレイヤーキルありなタイプだったんだ! 知らなかった!」タッタッタッ

ネメシス『マスター。もう一つ確認しておくことがある』

メイプル「何!?」

ネメシス『カウンターアブソープションは十二時間に一回しかストックが回復しない』

メイプル「はい?」

ネメシス『やっぱり説明をよく読んでなかったなたわけ! アレは最大で二回しか使えないのだ!』

メイプル「嘘ォ!? ってことはもう攻撃を防げないじゃん!」

ネメシス『仮にも私は盾だから、一回くらいは素で受けきることはできなくもないと思うが……』

メイプル「ネメシス! エンブリオの破壊判定ってどうなってるの?」

ネメシス『案ずるな。ゲームが続く限りは壊れても時間をかけてオートで修繕できる』

メイプル(安心できる一言だけど……)

メイプル「……」

ネメシス『私たちは一心同体だ! 遠慮なんかしたら後で横っ面を引っ叩くぞ!』

メイプル「ごめん!」

メイプル(とか言っている間に、門が見えてきた。他のマスターの始末に手こずってるのかな)

メイプル「あともう少し……!」ピタッ

メイプル「……!」

ネメシス『どうしたマスター! 何故立ち止まる!?』



赤髪の少年「……いてててて……参ったなぁ、もう」



メイプル「……ネメシス。ごめん。寄り道する!」ダッ

ネメシス『んなっ……!』

ネメシス『……ちっ! 急げよ! マスター!』

メイプル「そこの子! どうしたの!?」
53 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/27(金) 21:44:24.88 ID:oMbyt/af0
赤髪の少年「ッ!?」ビクウッ

メイプル「あ、安心して! あの爆弾生物のエンブリオのマスターじゃないから! ほら!」

赤髪の少年「……」

メイプル「キミ、マスター?」

カナデ「うん。カナデって言うんだ。僕のことは気にしないで、早く逃げた方が……」

メイプル「見つけちゃったんだもん! 放っておけないよ!」

カナデ「……」

ネメシス(……むう? 変だぞ、こやつ。怪我の痕跡があのエンブリオの攻撃と関連があるとは思えない)

ネメシス(まるで高所から落ちたかのような……)

カナデ「……仕方ない、か。一蓮托生。援護してくれる?」

メイプル「もちろん! 行こう! あと少しだから!」



バンッ



メイプル「!」

メイプル「そう簡単に……やられないってば!」ガァンッ

謎の生物「げぎゃがっ!?」ドカァァァァァンッ

メイプル「ぐっ……!」

メイプル(やばい。カウンターアブソープションなしだと爆発の余波だけで結構ダメージが入る!)

メイプル(そうそう繰り返せない!)

メイプル「走って! 早く! 殿は私が担当するから――!」


バンッ


メイプル「また来た! あと一回くらいなら!」


バンッ


メイプル「――」

ネメシス『……!』

ネメシス(今更ながら、理解したぞ。この音の正体)

ネメシス(自爆だ! 小さい自爆を繰り返して、加速と方向転換を行っているのだ、この生物は!)

メイプル(や、ば。無防備な背中に回り込まれ――)



ドガァァァァァァンッ!
54 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/27(金) 21:50:20.43 ID:oMbyt/af0
【致死ダメージ】
【パーティ全滅】
【蘇生可能時間経過】
【デスペナルティ:ログイン制限24h】



楓「うわあああっ!」ガバリッ

楓「……!」ゼェ ゼェ

楓「……ログイン制限? デスペナルティ……?」

楓「あ。そういえば、そのことに関して理沙に訊くの忘れてたな……文字通りの意味ってことでいいのかな」

楓「……」







楓「……悔しいーーーッ!」
55 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/27(金) 21:53:22.58 ID:oMbyt/af0
今日のところはここまで!
56 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/28(土) 11:00:50.44 ID:QXh2GuTT0
数時間後

理沙『楓! デスペナに追い込まれたって本当!? 何があったの!?』

楓「私自身さっぱりわからないんだけど……変なエンブリオに襲われてさ。抵抗らしい抵抗もできなかったよ」

理沙『……どんなヤツだった?』

楓「それがさ。わからないんだよね。こっちでも色々調べたんだけど」

楓「超級殺しって知ってる?」

理沙『そりゃまあ知ってるけど……まさか』

楓「エンブリオの特徴と、やられた人たちの証言からほぼ確定みたい。私もその人にやられたんだ」

楓「……と言ってもさ。超級殺しってのが具体的に何なのかまではわからなかったんだけど。誰この人?」

理沙『マスター専門の殺し屋を標榜している正体不明のPKだよ。結構な有名人』

楓「正体不明なのに?」

理沙『まだ超級にまで進化してなかったころに、超級のマスターを沈めたことがあるから。その話題だけで充分に有名人なんだよ』

楓「へぇ。凄い人なんだね。それが何で私なんかを。あそこにいたのだって私と似たり寄ったりの初心者ばかりだったはずなのに」

理沙『理由はどうでもいいや』

楓「……理沙? 何か考えてる?」

理沙『んん? んー……まあね。準備があるからすぐってわけにはいかないけど……』

理沙『あの殺し屋クンには、飛び切り面白い物を見せてあげるよ』ニヤァ

楓「悪い顔……」

楓「そうだ。デスペナに送り込まれてからログインできないんだけど」

理沙『ああ。このゲームのデスペナはログインの制限なんだよね。二十四時間は無理だよ』

楓「うえー……それって向こうの時間で三日ってことだよね。勘弁してもらいたいなぁ……」

理沙『あ、あと詳しくは解明されてないんだけど、デスペナ食らいまくったマスターのエンブリオは進化しにくくなるとか言ってたよ』

理沙『……統計的に結構な高確率で』

楓「げんなりする事実その二……」グッタリ
57 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/28(土) 11:16:25.53 ID:QXh2GuTT0
理沙『……集まり悪いな……ちょっと時間かかりそう。これならいっそ向こう側で……』カタカタ

楓「理沙?」

理沙『ううん、何でもない! やることあるから落ちるね! バイバイ!』ブツンッ

楓「……敵討ち……するつもりだろうなぁ。まあ、止める気もないけどさ」

楓「……」

楓(ネメシスに何て言おうかなぁ。あれ、どう考えても私の判断ミスだし)

楓(あのまま逃げてれば確かに私は助かったかもしれない)

楓(……でも、それはできなかったよなぁ)

楓(あの子、どうなったんだろ。私がいなくなった後で一緒にやられちゃったかな)

楓(……)

楓「悔しい」




アルタ―王国

「おい! 向こうでもPKが出たってよ!」

「ふざけんな! 東西南北が封鎖されちまってるじゃねぇか!」

「西のヤツに至ってはティアンまで狩ってるらしいぞ! 滅茶苦茶だ!」

カスミ「……どうやら、マスターはアルテアから出られなくなったようだな」

バビロン「へー。タイミング悪いねー。東西南北全部のルートにPKが出るなんてさー」

カスミ(どう考えてもタイミングが悪いでは片付かないな)

カスミ(……誰かが私たちを閉じ込めようとしている? 何故?)
58 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/28(土) 16:06:48.02 ID:QXh2GuTT0
一日経過

メイプル「ふはーーーっ! 戻ってこれたーーー!」イエェェェイ!

ネメシス「……」ズーン

メイプル「うわあっ!? ネメシス!」ガビーンッ

ネメシス「驚くな。エンブリオがマスターの傍にいて何がおかしい?」

メイプル「あ、ははは! そうだよね! そりゃそうだよねぇ!」テレテレ

ネメシス「……」

メイプル「……」

メイプル(……気まずい。どうやって謝ろう)アセッ

ネメシス「謝る? 何を謝るというのだ?」

メイプル「!」ビクウッ

メイプル(思考を読めるのか……!? まずい……!)

ネメシス「何がまずい? 言ってみろ」ビキビキ

ネメシス「って、何をやらせるのだ。パワハラ鬼上司か私は」

メイプル「たまにやりたくなるよね。一方的にやられるかませキャラのロールプレイ」エヘ

ネメシス「それをやりたいと思うのは少年漫画のヘビーユーザーくらいだ」

ネメシス「もうよい! 私から言うぞ!」







ネメシス「すまなかった! マスター!」

メイプル「えっ」
59 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/28(土) 21:28:30.54 ID:QXh2GuTT0
ネメシス「私が……私がもっと強ければ……」ボロッ

メイプル「うえっ!? ちょっと、なんでネメシスが泣くの!?」ワタワタ

ネメシス「最後の瞬間、私には見えていたのだ。私たちが庇っていたあのカナデとかいうマスターも、爆弾生物に……!」

メイプル「!」

メイプル「……そっか。状況からして絶対そうだとは思ってたけど、やっぱり守れなかったか……そっか」ハァ

ネメシス「私はマスターの願いを知っている。第ゼロ形態の頃からずっと見ていた。誰かを守れる力が欲しいと願うお主をずっと見てきた」

ネメシス「だのに……!」ポロポロ

メイプル「……悔しいのは私も一緒だよ。あのときの私の判断は、私だけが生き残ることを目的とするなら間違いだった」

メイプル「でも、私はそれがイヤだったからカナデを助けようとした」

メイプル「……その上で、真上から叩き潰された。悔しくないはずはないよ」

メイプル「だからって別にネメシスが全部悪いとは思わないけどね」ケロリ

ネメシス「……!」グスンッ

メイプル「私たちより強い人がいるってことを知れただけで、今回は良しとしよう」

メイプル「悔しいのは二人とも一緒! 過ぎたことをくよくよしてても仕方ない!」

メイプル「……次があったら絶対に守るよ。そうでしょ?」

ネメシス「そうだ。だが負けたという事実は変えられない……」

メイプル「上書きするよ! 次は絶対に、後ろに被害を出さない! そういうふうに頑張るんだよ!」

メイプル「……私が頑張るんだから、ネメシスも頑張れる!」グッ

ネメシス「……」

メイプル「ねっ!」ニコニコ

ネメシス「……まったく。底抜けに明るいマスターだの!」ニコッ

メイプル「やろ。ネメシス。最強の盾を、二人で目指すの!」

メイプル「……次は全部守ってみせる!」

ネメシス「無論だ! マスター! この夕日に、私も誓おう!」
60 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/28(土) 21:38:44.93 ID:QXh2GuTT0
ネメシス「とは言ったものの、だ。ではどこで強くなればいいのだ? 少なくともノズ平原は危険であろう?」

メイプル「どこでも危険だよ。アルテアの東西南北全部にPKが張ってるんだってさ」

ネメシス「何? それでは初心者は経験値を上げられないではないか!」

メイプル「一応、対抗策は用意してきてるよ。ログインできない間、何もしてこなかったわけじゃないし」

メイプル(……サリーから聞き出すの、物凄く大変だったんだけどね)

ネメシス「ム? サリー?」

メイプル「ともかく、準備はしておかないとね」

メイプル「……おっと。そうだ。カナデとも顔を合わせておきたいな。守れなくってごめんって言っておかないと」

ネメシス「……」

メイプル「あ。カナデを放っておけないって決断したの私だし、ネメシスはどこかに隠れてていいよ!」

ネメシス「いや。私も同席する。見つけられればの話だがな」

メイプル「買い物の途中で見かけたら、程度の探り方でいいよ。ともかくしゅっぱーーーつ!」

ネメシス「うむ! デッパツだーーー!」パラリラパラリラ!

メイプル「!? なんでヤンキー風に言い直したの……!?」ガーンッ







カナデ「……」ジーッ

カナデ「メイプル……ね」
61 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/28(土) 21:40:08.34 ID:QXh2GuTT0
今日のところはここまで!
62 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/29(日) 10:56:14.08 ID:AkGf0bDw0
道具屋

メイプル「……」



身代わりの竜鱗『三十万リル』

救命のブローチ『五百万リル』



メイプル「買えないんだけど!」ガビーンッ

ネメシス「果樹園騒動のときサリーに渡されたダメージコントロールアイテムか?」

メイプル「うん。あったら私たちの能力とかなり噛み合うから絶対に欲しかったんだけど」

メイプル「高いよ! 仮に買えるだけの大金を用意できたとして、これに手を出すの憚られる程度に高いよ!」

メイプル「あっと言う間に全部ぶち壊しちゃったことに対してサリーに対して申し訳なさすぎるよーーーッ!」ウオオオオオ!

ネメシス「まあ、無い物ねだりしても無理なものは無理だ。仕方ない」

ネメシス「準備はこれで最後か?」

メイプル「うん。聖騎士なら顔パスで入れる場所らしいし、早く行っちゃおうか」

ネメシス「そういえば最後まで聞かなかったが、私たちが行く狩場とは?」

メイプル「墓標迷宮」

ネメシス「……ッ!?」ガーンッ

メイプル(本当、聞き出すの苦労したんだよなぁ。サリーってばホラー系のダンジョンやクエストがとにかく苦手だから)

メイプル(墓標と銘打ってるからには、やっぱりゾンビとかアンデッドとか出るんだろうなぁ)

メイプル(見た目はどうにかなるとしても、臭いのはイヤだなぁ)スタスタ

ネメシス「待っ……待って、マスター。待って……」ヨタヨタ

メイプル(そういえばもうすぐ夜だっけ。アンデッド系のモンスターが出るならやっぱり行動が活発になったりするのかな)

メイプル(……ま、いいか。ネメシスと強くなるって誓ったばっかりだし。弱音吐くのも、ね)

ネメシス(知ってか知らずか私の逃げ場をどんどん失くす思考しておる!?)ガビーンッ
63 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/29(日) 15:13:01.24 ID:AkGf0bDw0
墓標迷宮入口

見張り兵士「ではどうぞ聖騎士様。お気を付けて」

メイプル「はい! 行ってきます! それじゃあ、経験値稼ぎ頑張ろうか! ネメシス!」

ネメシス「……」ガタガタ

メイプル「……」

メイプル「もしかして、おばけ怖い?」

ネメシス「ひっ!? な、何の、ことだ……? 別に怖くなど……」

メイプル「あーーー! こんなところにゾンビがーーー!」ビシイッ

ネメシス「ぴぎゃああああああああ!?」ビクウッ

メイプル「……やっぱり怖いんだね」

ネメシス「……ハッ!? 嘘か!? な、なんて悪質な嘘を吐くのだマスター! 心臓が口からまろび出るところだぞ?」ゼェゼェ

ネメシス「そうなったらマスターはまさしく人殺しだぞ!? わかるか!?」ハァハァ

メイプル「うんうんわかるわかる。じゃ、早く盾になって」

ネメシス「ああ。このままの姿でいるよりかは盾になってもっとビッチリマスターと密着してた方がマシ――待てよ?」

ネメシス「マスター。中に入ったら当然戦闘をするな?」

メイプル「もちろん。そのつもりで来たんだから」

ネメシス「戦い方に変更は?」

メイプル「あるわけないよ」

ネメシス「……つ、つまり、ゾンビやらアンデッドやらが出てきたら私でその、そやつらを……」ガタガタ

メイプル「抑えつけて殺すことになるね?」

ネメシス「イヤじゃああああああああ!」ダッ

メイプル「よーし! 頑張って行こうー!」ガシッ

ネメシス「逃走の真似事すら許さぬか、この鬼マスターめ!」ジタバタ

メイプル「サリーとかなら大目に見るよ。ネメシスはダメ。私のエンブリオだから」

ネメシス「うわあああああああああああん!」
64 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/29(日) 15:50:06.45 ID:AkGf0bDw0
墓標迷宮内

ゾンビ「ヴぁー」ヨロヨロ

アンデッド「なー」ヨロヨロ

ネメシス『んぎゃああああああああ!? ひやあああああああああ!』ガタガタ

メイプル「わあ。高周波振動シールド」

ネメシス『しょうもないことを言っている場合かマスター! 無理! あれを押さえつけるのは無理ーーー!』

メイプル「落ち着いてネメシス。よく見て。アレがゾンビとかアンデッドに見える?」

ネメシス『へ? も、もしかして暗くてよくわからなかっただけで、ただの木箱とか木に引っかかった布とかそういう――』

メイプル「ふんっ」ブンッ

ゾンビ&アンデッド「ごげべばっ!?」グチョアッ

ネメシス『』

メイプル「あれ。盾と壁でサンドしただけで潰れちゃった。まあ死体だもんね、強度がある方がおかしいかな」

ネメシス『』ベチョオア

メイプル「で。どうだったネメシス。やっぱりゾンビとアンデッドだったけど」

ネメシス『まぁぁぁぁすたぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!? 身体に! 私の身体に変な肉片がべっとりとおおおお!?』

ゾンビ&アンデッド「あ、あー……」

メイプル「あ。ごめんネメシス。肉片が残ってるのは削り切ってなかったからだよ。止めを刺せば死体は残さず消えるはずだし」

メイプル「これで終わりッ!」ドガシャアアアッ

ゾンビ&アンデッド「びゅっ」ブシャアッ

ネメシス『』



バリイイイイインッ



メイプル「勝利ッ!」ガッツポ!

ネメシス『』

ネメシス『』
65 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/29(日) 17:07:20.94 ID:AkGf0bDw0
ネメシス「わ、私を武器として使うこと自体はもう仕方ないとして、心の準備ができないままにぶん回すことに関しては一生責めるからなああああ!」

ネメシス「次同じことしたら家出してやるからなああああああ!?」ガタガタ

メイプル「わかったよ……わかったから機嫌直して武器形態に戻ってよ」

ネメシス『ふんっ! 後で身体を念入りに洗えよ! 隅々までな!』ガタガタ

メイプル「わかってるって」

メイプル(サリーとおばけ屋敷でどったんばったんしたこと思い出すなぁ)

ウーンド・ゾンビ「うぇあー」ヨタヨタ

メイプル(まあ確かにリアル描写でゾンビとか腐った死体とかやられると結構キツいなってのはわかるけど)ブンッ

ネメシス『ひぎゃああああああああああ!』ドグシャアアアアッ

ウーンド・ゾンビ「あー! あー!」ジタバタ

ネメシス『あ、あひゅう、あ、暴れるな! 暴れるなーーー! マスター、早く止めを――』

メイプル「……」

メイプル(えー。これに剣を差すのイヤだなー。私の手が汚れそうで)

ネメシス「!?!?」ガビーンッ

メイプル(このままネメシスと壁でサンドして圧死してもらおうっと)ギュウウウウウ!

ウーンド・ゾンビ「あぎあああああああああああ!?」バタバタバタ

ネメシス『ほぎゃああああああああ!?』



バリイイイイインッ



ネメシス「今まで世話になったなマスタああああああああっ! 家出する! 野良エンブリオとして生きてやるうううう!」シャーッ

メイプル「ごめんって……」
66 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/29(日) 19:33:34.06 ID:AkGf0bDw0
一時間経過

ネメシス『……』ズーン

メイプル「そろそろサブウェポンの短剣だけでゾンビを単独撃破できる程度にはなった」

メイプル「なったけど、それやったら多分ネメシス成長しないよね」

ネメシス『ああ、そうだろうな。泣いたら段々落ち着いてきた』シクシク

メイプル「帰ったらちゃんと洗ってあげるから……」

ネメシス『約束だぞ……』

カチリッ

メイプル「ん?」

ネメシス『ム。どうかしたかマスター』

メイプル「いや、なんか足元で何かがカチッて……」


パカッ


メイプル「は?」

ネメシス『えっ?』



ヒューーーーーッ



メイプル「落下トラップーーー!?!?」ガビーンッ

ネメシス『もうイヤじゃああああああああああ!』ビエエエエエン!
67 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/29(日) 19:57:33.78 ID:AkGf0bDw0
ドスーンッ

メイプル「……着地、成功!」

ネメシス『この程度の高低差で我が身を傷つけることはできん!』フンス

ネメシス『……って、そうではない! 冗談ではないぞ! 予定外のトラップで行くはずがなかったダンジョンの奥地へ、などと!』

ネメシス『完全な死亡フラグではないか! 早く上階へ戻るぞ、マスター!』

メイプル「うん!」カチッ

ネメシス『ん?』


パカッ ヒューーーッ


メイプル「またあああああああ!?」

ネメシス『そんなバカなーーーッ!?』ガビーンッ



ドスーーーンッ


メイプル「まあ着地は成功するんだけどね!」シャキイイインッ

カチッ パカッ ヒューーーーッ

メイプル「三度目ーーーッ!?」

ネメシス『バカな……!?』

ネメシス(ダンジョンのトラップは基本的にランダム生成のはずだぞ。それがこうも、しかも同じものが連続するなどと)

ネメシス(こやつ、背中に疫病神でも飼っておるのか!?)



十分後


ドスーンッ


メイプル「……はあ……はあ……!」

メイプル「……」キョロキョロ

メイプル「やっと連鎖が終わった、かな」

ネメシス『だがまずいぞ、マスター』

メイプル「何が?」






ネメシス『数えていた限り、四十九階層まで落ちてしまった』
68 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/29(日) 19:58:33.92 ID:AkGf0bDw0
今日のところはここまで!
69 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/30(月) 18:15:05.82 ID:GaAwZGRS0
ヴァジラが最後のムックガチャで当たった……

今FGOで回せば天草くんも揃う気がするぜェェェェェ!
70 :いねェのかよッ!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/30(月) 18:27:59.70 ID:GaAwZGRS0
同時刻 四十九階層

クロム(ふうっ……随分と深くまで潜っちまったな。今日のところはここまでか。新記録だしな)

クロム(このまま何事もなく帰れれば、の話だが。まあいいペースだったし大丈夫だろう)スタスタ

クロム「ん?」






ネメシス「待てェェェェ! マスター待てーーーッ! それはまずい! そんな選択に私は命を懸けられない!」グイグイ

メイプル「止めないでネメシス! 大丈夫だから! 多分これで合ってるから!」ウオオオオ!

クロム(なんだ……? 嬢ちゃん二人? 片方はマスターだな。やたらステータスが低いが)

クロム(……いや本当に低いぞ。そもそもどうやってこんな場所まで落ちてきたんだ?)

ネメシス「お主、さっきの今でよくそんな仮説を振りかざせるな!?」

メイプル「だって四十九階層って普通に私たち即死するレベルの階層じゃない!」

メイプル「ここに不運で落ちてきたのなら、無事に脱出するならやっぱり運を使うしかないよ! 実力でどうにかできる!?」

ネメシス「それは……難しいが……」

メイプル「無理! というか仮に可能だったとして、そんな意地を張る理由がない!」バッサリ

ネメシス「自分自身の可能性の具現であるエンブリオに向かってなんて言い草だ! グレるぞ!?」ガビーンッ

メイプル「と、いうわけなので、私はこの見るからに『上へ飛び上がる絵』が描かれている踏み抜き型トラップを押すことにするよ!」

メイプル「大丈夫だよネメシス……私を信じて……?」キラキラキラキラ

ネメシス「ちょっといい台詞で懇願してもダメなモノはダメ――」

メイプル「いくらダメと言われてもやると言ったことはやるよ」カチリッ

ネメシス「うわあああああああああ!?」ガビーーーンッ




ビュオンッ



メイプル「ほらあ、やっぱり上昇のトラップだったでしょべばっ」ドガシャアアアアアアッ

ネメシス「マスターーーッ! マスターが天井を突き破ったーーー!?」ウワアアアアアア!?






クロム(……まあ上昇のトラップであるのは間違いなかったが……落とし穴のトラップみたく天井が開いたりしねぇんだよな。アレ)

クロム(死にはしないが、最大HPの半分が持ってかれる『引き千切りの罠』だ。二回目からは一回目に通ったヤツの穴を利用できるから楽なんだが)

クロム(……ちょっと上に先回りして様子を見てくるか)スタスタ
71 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/30(月) 20:25:36.48 ID:GaAwZGRS0
四十八階層

ネメシス「待てェェェェ! マスター待てーーーッ! 二度目はまずい! 今度こそ絶対死ぬぞーーーッ!」グイグイ

メイプル「止めないでネメシス! 大丈夫だから! 今度はネメシスの協力で多分大丈夫だから!」ウオオオオ!

クロム(デジャヴだーーーッ!?)ガビーンッ

クロム(ま、まさか! 飛んだ先で同じ罠をたまたま見つけたのか!? どんな確率だよ!?)

メイプル「大丈夫だってネメシス! むしろ敵に見つかってない今しかチャンスはないってば!」ブシュウウウッ

ネメシス「まずは止血しろーーーッ! 流血で右目が開いてないではないか!」アワワワワ

メイプル「ちょっとはポーションで回復したよ、既に。最大HPの半分持ってかれる罠だったみたいだし」

メイプル「でもそれなら、低レベルで低HPであることが逆に有利に働くよ。やっすいポーションで半分以上のHPが回復するからね!」

ネメシス「更に流血すること前提で話しておる!?」ガーンッ

メイプル「それじゃあ、行くよネメシス! 凱旋って言うんでしょ、こういうの!」カチリッ

ネメシス『ああ、またっ……くそう!』ヒュンッ

クロム(おお! メイデンだったのか、あの嬢ちゃん)


ビュオンッ


メイプル「ごはあーーーッ!?」グシャアアアアッ

ネメシス『ま、マスターーーッ!』ガビーンッ

クロム「……む、無茶するなぁ……でもこんなやり方そうは続かないぞ。一応様子を見に行くが……」スタスタ





四十七階層

ネメシス「もう本当に勘弁しろーーーッ! お主の盾である私の立場で考えろ!」

ネメシス「持ち主がどんどんボロボロになって本当に立つ瀬ないからな!? 私!」グイグイ

メイプル「大丈夫だってば! 計算上、このまま行けばファーストヒールとポーションの連続で絶対一階まで行けるからーーー!」グヌヌヌ

クロム(また罠を見つけてるーーーッ!?)ガビーンッ

クロム(……ま、まさかこの調子で本当に帰還するんじゃ……)ハワワワワ


カチリッ ビュオンッ グシャアアアアアッ
72 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/30(月) 20:34:44.31 ID:GaAwZGRS0
一階

メイプル「……ヒューッ……ヒューッ……ごぽっ……ヒューッ……!」

ネメシス「マスター……マスター……!」ユサユサ

クロム(マジで同じ方法で帰還しやがったーーー! 多少危ないところはあったけど! いや現状でも充分危ないんだけど!)

メイプル「がぶっ……ああ、ネメシス……わかってるよ。安全なところまで行こう……」ヨロヨロ

ネメシス「最早その辺のゾンビよりマスターの方が余程ゾンビだぞ!? 流石に二階から来てまでもあのトラップを踏む必要はなかったのではないか!」

ネメシス「二階と一階じゃモンスターの強さも似たり寄ったりなのだから!」

クロム(そうだよ! 二階まで来たら自力で階段探せよ!)

メイプル「ごめん、途中からどこが何階だとか数えてなかった……ここが一階だってことしかわかんない」

クロム(数えろよ!)ガビーンッ

メイプル「とにかく先に……」カチリッ

メイプル「え」

ネメシス「は?」

クロム「!」


ゾゾゾゾゾッ



ゾンビs「ぎしゃしゃしゃしゃしゃしゃ!!!!!」ゾロッ

ネメシス「……こ……ここに来て」

メイプル「モンスター大量発生系のトラップ……!」

ネメシス「……ぐっ!」

ネメシス『やらせぬ! マスターをやらせはせぬぞ!』パシュッ

メイプル「うん。頼りにしてるよ、ネメシス。あと少しだから、無理やりにでも突破しよう」

メイプル「二人で強くなるんだから! さっきそう誓ったばっかりなんだから!」

ネメシス『ああ! 強行突破だ! マスター! 私のことを使いつぶすつもりでやれ!』







クロム「……はあ。やれやれ」
73 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/30(月) 20:40:58.50 ID:GaAwZGRS0
ザァァァンッ


クロム「そういう台詞はよ。もうちょっと健康なときにやらないと悲壮だぜ?」

ゾンビs「……!?」バラッ


バキイイイイインッ


メイプル「え……」

ネメシス『ゾンビどもを一薙ぎでバラバラに……!?』

メイプル「あなたは……?」

クロム「通りすがりのマスターだよ。名前はクロム。アンタは?」

メイプル「……メイプル」

メイプル「うん。私の名前は、メイプルです」

クロム「ここまで来たら、もう一息だろ。頑張れ」

メイプル「……!」

メイプル「はい! 頑張ります!」ヨロヨロ

ネメシス『……』

クロム「盾の嬢ちゃんも頑張れよー!」

ネメシス『ちっ。バレていたか。どこから見ていたのだ……?』


※最初からです。
74 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/30(月) 21:06:18.14 ID:GaAwZGRS0
墓標迷宮 出入口

メイプル「……か……」

ネメシス「帰って……これたぁぁぁぁ」ヘナヘナ

メイプル「ああ、ごめん。本当に酷使させちゃったね、ネメシス。こんな予定じゃなかったんだけど」

ネメシス「まったくだ! 今日だけで一体何回死んだと思ったか……!」



ピコンッ


【探索条件【適正レベル大幅超過ダンジョンからの帰還】をクリアしたため、アクティブスキル《レックレスダイバー》を習得しました】


メイプル「ん?」

ネメシス「お」

メイプル「……レックレスダイバー?」

ネメシス「シェルブリットのアレか」

メイプル「それはReckless ●ire。大胆に魂に火を付けたりしないし」

メイプル「ええと、何々?」

メイプル「……自分の防御力の九十パーセントを攻撃力に変換した後、敵に向かって高速移動」

メイプル「ステータス変化の維持時間は一秒。射程と移動速度はスキルの習熟度に依存……?」

ネメシス「……割と使えるスキルではないか?」

メイプル「SPの消費は……もうちょっとレベルアップすれば問題視しなくていいレベルだね」

メイプル「やった! 新スキルゲット! 無駄足じゃなかった」ヒャッホウ!

ネメシス「……マスターが喜んでいるなら何よりだ。怖い思いをした甲斐があった」

メイプル「ネメシス……」

ネメシス「帰ったらちゃんと身体を隅々まで洗えよ……? 約束だからな……」ガタガタ

メイプル「あ、やっぱり?」
75 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/30(月) 21:13:02.62 ID:GaAwZGRS0
今日のところはここまで!
76 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/31(火) 19:42:57.77 ID:t6Cp7Ra/0
メイプル「面倒なことは早めに済ませるに限るよね。早く宿屋に戻ろうか」

ネメシス「面倒なことと言ったか? ん? 私のことを面倒なことと言ったか? 誰のせいだと? ん??」

メイプル「キレないでよ……言葉のあやじゃない……」

ネメシス「マスターは無茶をしすぎる! 今日は徹底的に私の意見を無視してくれたなぁ!? まだ根に持っておるぞ、ぶっとい根に!」プンスカ

メイプル「墓標迷宮から出た途端に元気になったなぁ。良かったぁ。結構心配だったからさ」ニコニコ

ネメシス「まぁぁぁすたぁぁぁぁぁ?????? どの口で言っておるのだこの口かぁぁぁぁ????」ギリギリ

メイプル「ごめんごめんごめん許して許して許して」


モワッ


メイプル「?」

メイプル(……なんか焦げ臭いな?)クンクン

ネメシス「あ? ……ああ、本当だな。確かに焦げ臭い」

ネメシス「というか、さっきより二度か一度程度気温が上がった気がしないか?」

メイプル「誰かキャンプファイアーでもしてるのかな?」

ネメシス「バカな。そんなことをしているアホがどこに……あっ」

メイプル「んっ?」






メイプル&ネメシス(……なんか空の一部が赤くない?)
77 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/31(火) 19:50:17.55 ID:t6Cp7Ra/0
ノズ森林に面するアルテア出入口

森「」ゴオオオオオオオ

メイプル「……」

ネメシス「……」





メイプル&ネメシス「火事だーーーッ!?」ガビーーンッ

リリア「あっ! そこにいるのはメイプルさんとネメシスさん!」

メイプル「え? リリアさん? どうしてここに?」

リリア「見ればわかるでしょう! 消火活動中です!」

騎士「副団長ォーーーッ! 水の供給が足りなくなるので立ち止まらんでください!」

騎士2「うわああああああ! 物凄い熱いーーー! 熱くて汗が滝のようだ!」

メイプル「ごめんなさい、アホな質問でした!」

ネメシス「しかしこれは一体どうしたことだ!? 何故ノズ森林が燃えておる!?」

ネメシス「いや、燃えているというか消し飛びそうとか、そんな表現が似合うぞ! どう見ても全焼しかかっておるし!」アタフタ



ドガァァァァァァァンッ ズドオオオオオオンッ



メイプル「うぎっ!?」ビクウッ

メイプル(ひ、酷い爆音! この前の超級殺しの爆弾生物とは比べ物に……!)

メイプル「まさか、これも超級殺しが!?」

リリア「四分の一正解です!」

メイプル「え。ほぼ不正解ですよね……?」

リリア「炎の! 炎の向こうをご覧ください!」

メイプル「向こう?」チラッ







巨大要塞「」ズズズズズズ

メイプル「なにあれぇ」
78 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/31(火) 20:00:38.92 ID:t6Cp7Ra/0
リリア「エンブリオです! 正確に言うなら超級のエンブリオの一つ【無敵要塞 バルドル】!」

メイプル「!?」ガビーンッ

ネメシス「む? どうしたマスター! 驚きのあまり心の声が聞こえなくなったぞ? マスター!?」

リリア「ええ、お気づきになられたようですね。話が早くて助かります! そうです! あの人のエンブリオです!」

ネメシス「あの人……?」

ネメシス「んっ? そういえばバルドルって、どこかで聞いたことがあるような……?」


『ザイガス! ザーーーイガス!』


ドガァァァァァァンッ バゴオオオオオオンッ


騎士1「ぐうおおおおおおおお!? ただの爆風だけでなんて威力だーーー!」

ネメシス「……ちょっと待て。砲撃の前に聞こえたあの声、聞き覚えがあるぞ」

メイプル「あー……そういえば明らかにやる気になってたなー。そっかー。面白い物ってこれかぁー。あははー」ボーゼン

ネメシス「……」









ネメシス「サリー?」

リリア「ビンゴです!」
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