メイプル「ここがインフィニット・デンドログラムかぁ」

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79 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/03/31(火) 20:16:47.33 ID:t6Cp7Ra/0
ネメシス「そういえばあやつのエンブリオ、確かにバルドルとか言っておったな……」


『ザイガス! ザーーーイガス!』


バガァァァァンッ ズガガガガガッ


ネメシス「というか攻撃前に『別の無敵要塞の名前』を叫んでおるのは何なのだ、浮気か!?」ガビーンッ

メイプル「大した理由はないと思う。スプラやってるときも熱中すると無言になるか、ジャーゴンしか口にしないから。サリー」

リリア「状況はわかっていただけましたね!? 動機はまったくよくわかりませんが、ノズ森林を消し飛ばそうとしていることは確かです!」

リリア「聖騎士になった以上、メイプルさんもある程度こちらを手伝ってください! 義務は確かにないんですけど!」

ネメシス「あー……その、なんだ。強制でないのなら今日は……」

メイプル「わかりました! やりましょう! このバケツで水を汲んで来ればいいんですね!?」アタフタ

ネメシス「待てお主コラァッ!」ウガァ

メイプル「確かにさっきの騒動で疲れてるのは確かだけど、それどころじゃないでしょ!」

ネメシス「い、いや。マスター。お主に義務は……」

メイプル「ふん! えいっ!」バシャアッ

ネメシス「全然話を聞かんなァ! 死にたいのか!? 火事で!」ガビーンッ



結局ノズ森林は全焼した
80 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/01(水) 18:08:37.18 ID:jB7jtdYg0
数時間後

メイプル「」チーン

ネメシス「凄まじい過労で今度こそ死にかけておる!」ガビーンッ

リリア「聖騎士なのに意外に体力がありませんね……」

ネメシス「貴様っ……よくもそんな無神経なことを……貴様っ……!」ブルブル

メイプル「仕方ないよ。タイミングが悪かったんだから」

ネメシス「それにどちらにせよ無駄な努力だったではないか! あの火勢では全焼しない方がおかしい! 消火活動も雀の涙以下だぞ!」

リリア「だからと言ってやらないわけにはいかなかったでしょう!」

メイプル「ま、まあまあ。二人とも、喧嘩はやめて……ぐふっ」グッタリ

ネメシス「ともかく、マスターと私は宿に帰らせてもらうからな! 今度こそ!」プンスカ

リリア「ご協力ありがとうございました!」ニコニコ

ネメシス「ふんっ! 行くぞマスター! 人一人分程度を運ぶ力程度、私にだってある! もう動かなくていいからな!」

メイプル「ありがと……」

サリー「ヒューッヒューッ! お熱いねーお二人さん!」

メイプル「サリー。からかわないで」

リリア「そうですよ。この微笑ましい光景は遠目で見るに留めておかないと……サリー?」

サリー「うん。私だよ」

ネメシス&リリア「……ふっ……」




ガチャリッ



サリー「ん? 何この錠?」

リリア「超級職、幻燈姫(プリンセスオブミラージ)サリー。ご同行を」

サリー「え」

ネメシス「……罪を償って綺麗な身体で戻ってこい。さもなくばもう、少なくともこの世界でマスターに一切触れさせんからな」イライラ

サリー「え。え。え」

リリア「連行します。抵抗はやめてくださいね」ズルズル

サリー「えーーー……」

ネメシス「……悪は滅んだ」

メイプル「私の友達だよ!?」ガビーンッ
81 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/01(水) 20:58:13.46 ID:jB7jtdYg0
宿屋の一室

メイプル「超級職って何?」

ネメシス「ジョブシステムの到達点だな。今マスターが就いているのが騎士系統の上級職聖騎士。その更に上だ」

ネメシス「しかし幻燈姫とは……悪夢と見紛うような光景ではあったが、明らかに滅ぼすことしか考えてない能力でよくもまあそんな職に……」

メイプル「サリーらしいなぁ」

ネメシス「そもそもあやつは何なのだ?」

メイプル「まあ、親友? ゲームそのものの親しみは私とは比べることもできないけど」

メイプル「確か前に家に遊びに行ったとき、ゲームの大会のトロフィーがあったような気がするなぁ。上級者ではあると思うよ」

ネメシス「認識がわやわやだぞ。親友では?」

メイプル「なんとなく仲が良ければ経歴がどうとか関係ないでしょ」

メイプル「ちょっと休むね。今回ばかりはさ……本当大ピンチだったし……」

メイプル「ぐー」スヤァ

ネメシス「ああ。ゆっくりと休め、マスター」

ネメシス「……」

ネメシス「私も風呂に入ろう……結局拭いてもらえなかったなぁ。うう、ゾンビ……」ブルッ




取調室

サリー「はあああああああ!? 賠償金が一億三千万リルゥ? ちょっと待ってよ! 桁が二つ三つ間違ってない!?」

リリア「間違っているものですか! ノズ森林は国営の伐採所です! 従って、あの場にある木材はすべて国のもの!」

リリア「騎士団を総動員させて消火活動させた迷惑料含めてきっちり一億三千万リル! 間違いありません!」

サリー「ぐぬぬぬぬ……このためにかなり根回ししたはずなのに……周辺のマスターを何人か雇ってさぁ!」

リリア「え。そうだったんですか? 確かに一般の死傷者の報告は不思議なほど出てませんね。避難誘導がされていたという点のみは……」

リリア「はい。調べればわかること、ですね。その人たちからも事情を聞きたいので、名前を教えてくれれば……」

サリー「いない」

リリア「? しかしたった今、雇ったと」







サリー「超級殺しごとふっ飛ばしたもん。全員三日間は帰ってこない」

リリア「あなたバカですか?」
82 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/01(水) 21:19:03.71 ID:jB7jtdYg0
リリア「情状酌量の余地一切なし。耳を揃えて払ってくれない限り、もっと別の刑を執行することになりますが」

リリア「金額相当の強制労働とか」

サリー「ええっ!? 勘弁してよ! 一億三千万なんて大金、一生かかっても払え……払え……」アタフタ

サリー「いや払えるけどさ」ドジャラドジャラ

リリア「はい。間違いなく一億三千万リルです」

サリー「強制労働なんて御免だねぇ。私は自由を愛するマスターだからさ」

リリア「……結局、その超級殺しをそこまでしてふっ飛ばした理由とは何だったのですか?」

サリー「友達……さっき煤をほっぺに付けて死にかけてたメイプルが殺されたから。敵討ち。かっこいいでしょ?」

リリア「その過程で仲間ごとふっ飛ばしたとあなた自白してましたよね……? 新たな悲劇を増産してるだけでは?」

サリー「私はいいの。ちゃんと契約書と事前説明は『サリーが後ろから急に撃ってきたとしても一切文句が言えない』って内容にしたから」

サリー「当然こっそりね。じゃないと人が集まらなくってさー」

リリア「……あのクマの着ぐるみ、一生脱げないですよ?」

サリー「今回は仕方ないよ。本当頭来ちゃったからさ。でも」

リリア「でも?」

サリー「ここまでしても取り逃がしちゃったけどねぇ」ハァ

リリア「……あなたが!? あれだけのことをして!?」ガビーンッ

サリー「あ。いけない。ねぇリリア。暇を見つけたらメイプルに言っておいてくれない?」

リリア「超級殺しがまだ生きていることを、ですか?」

サリー「それもだけど、それだけじゃなくて。もっと重要なことがあるんだ」

リリア「……?」
83 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/01(水) 21:31:31.79 ID:jB7jtdYg0
『元』ノズ森林

「ぜぇっ……ぜぇっ……し、死ぬかと思った! あの子、本当に容赦ないわね! 噂以上に酷いじゃない!」

「まさか仲間ごと爆撃する!? あー、あと少しSPが削れたら本当に死ぬところだったわ!」


カナデ「イズ」

イズ「ッ!」バッ

イズ「……ああ。カナデちゃんね。最後の最後で助かったわ。でももう少し早くインしてくれたら、もっと楽に逃走できたのに!」

カナデ「ごめんねー。どこかの誰かさんが『共犯関係』を隠すために、あの盾持ちの子ごと僕をふっ飛ばしてくれたせいで今までインできなかったんだ」

イズ「マスターの位置を割り出す役をやってる最中に、見張り台から落ちるのが悪いのよ」

カナデ「たまたま風が吹いたせいだよ。僕は悪くない」

イズ「……でも結局、サリーちゃんにはバレちゃったでしょうね。私の正体まではわかってなかったようだけど」

カナデ「仕方ないよ。イズまで死んだらいよいよ僕が殺された意味がなくなるもん」

イズ「仕事は……これ以上の続行は不可ね。いい条件だったのだけど。次はどうしましょうか」

カナデ「僕、やりたいことができたんだ。付き合ってよ」

イズ「やりたいこと?」

カナデ「あのね――」








サリー「超級殺しは二人いる」

サリー「……しかも、どっちも正体がわからない」

サリー「警告しとかないと、メイプルが危ないかも」
84 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/02(木) 19:20:44.58 ID:ThkADquP0
数時間後 元ノズ森林

カスミ「……やはりモンスターのポップがなくなっているな。これではレベル上げなどできん」

バビロン「やーははははは! 凄いねー! 本当に全焼しちゃってるねー!」キャピキャピ

カスミ「こら、バビ。不謹慎だぞ。あまりはしゃぐな」

バビロン「はーい!」

カスミ「しかし、やれやれ。PK騒動が落ち着いたら今度はここでレベル上げするつもりだったのだが、どうしたものか――!」ピクッ

カスミ「何奴ッ!」グサアッ



「んぎにゃああああああああああああ!?!?」ブシャアアアアッ



バビロン「んえ? どうしたの? 刀身が途中から無くなっちゃってるけど」

カスミ「どうやら何者かがこの中にいるようだ。不可視の異空間か……?」グリグリ

「ぎゃあああああああああああグリグリしないでえええええ!」ブシャアアアアッ

バビロン「あはははは! 空中から血飛沫が上がってるー! 面白ーい!」

カスミ「この声、どこかで……」グリグリ

「あああああああああああああ!!!!」ブシャアアアアアッ


ニュルンッ


チェシャ「いやいっそのこと入ってきなよ! 別に害を加える気はないんだからさぁ!」

カスミ「おお、チェシャだったのか。元気か?」

チェシャ「瀕死だよッ! キミのせいで!」ウガァ!
85 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/02(木) 19:45:43.78 ID:ThkADquP0
異空間内

カスミ「ほう。ここの環境の整備をしていたのか」

チェシャ「マスターたちの行動に直で干渉することはそうそうないんだけどねー」

チェシャ「長い時間をかければ元の環境に近いくらい回復するかなーって程度には手を入れるよ」

バビロン「んー。物足りないなー。マカロンは美味しいけど、チリソースが欲しー」

チェシャ「ハバネロソースなら用意できるけど」サッ

バビロン「ありがとー!」キラキラキラ

カスミ(お菓子と茶まであるとは……この作業場、かなり緩いな)

カスミ「しかし、まさかここまでするとはな。幻燈姫サリー、噂通りどころか噂以上だ。普段から姿を隠しているのも頷ける」

チェシャ「そういえば、キミも超級殺し討伐作戦の説明会には呼ばれてたんだよね。どうして蹴ったの?」

カスミ「そこまで知っているのならわかりそうなものだがな。それとも、わかってて訊いてるのか?」

カスミ「ありえないだろう、アレは。少し頭が回ればサリーが『私たちごと超級殺しを消し飛ばす気だった』ということくらいすぐわかる」

カスミ「あの作戦に志願したのは、私の知る限り『文字の読めない大馬鹿』か『文字が読めた上でそれでも超級殺しを始末したかった者』だけだ」

バビロン「かなりわかりやすい捨て駒作戦だったよねー。あれもあれで面白かったなー」モグモグ

カスミ「一度目にしておきたかったから説明会に出席だけはしたが、アレは身内にも敵を作るタイプだな。おそらくロクに友達もいまい」

チェシャ「いなくもないんだけどね……」ボソッ

カスミ「なにか言ったか?」

チェシャ「んにゃ、何も」

カスミ「さて。これからどうしたものか……決闘都市ギデオンに向かうくらいしかやることがないな」

チェシャ「……!」ピクッ

バビロン「場所を移すのー? あ、ならメイプルとネメシスも誘おうよ! きっと楽しいよ!」ニコニコ

チェシャ(……ギデオン、ねぇ)
86 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/02(木) 20:02:10.20 ID:ThkADquP0
十数分後

カスミ「そろそろお暇するか。ごちそうさまでした」

バビロン「ごちそうさまでしたー!」ペコリ

チェシャ「はいはい。お粗末様でしたー」

チェシャ「……ところで、本当にギデオンに行く気?」

カスミ「そのつもりだが、どうかしたか? 南のPKも確か撤退していたはずだろう? クロムとか言う超級のマスターに全滅させられていたはずだ」

チェシャ「うーん、あんまり詳しくは言えないんだけど」

チェシャ「鬼の心臓は腹の中」

カスミ「?」

チェシャ「このワードを覚えておいて損はないと思うよ。あと仲間を増やすのも賛成かな」

カスミ「……覚えておこう」

バビロン「ん! やっぱりメイプルとネメシスも誘う? 誘う?」

カスミ「忠告には従っておくとも」

バビロン「やったー! わーいわーい!」

カスミ「確かメイプルのいる宿屋は……」








チェシャ「……さて。どうなるかな。タイミングさえ合えば結構面白い面子が揃うと思うけど」
87 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/03(金) 22:35:18.23 ID:2s9lhVYg0
宿屋

メイプル「ふっかーつ!」ガバリッ

ネメシス「おお。休めたかマスター」

メイプル「パラメーター、全快!」シャキィィィィンッ

ネメシス「それはよかった。では、これからどうする?」

メイプル「どうするもこうするもまた墓標迷宮に」

ネメシス「それは断じて不可だ!」

メイプル「あのダンジョン、確か神造ダンジョンなんだよね。しかも規模も段違いに大きなヤツ」

メイプル「せっかくアルター王国に所属してるんだから、もっと頻繁にさ」

ネメシス「断じて! 不可だ!」ドン!

メイプル(無理だねコレ。サリーを誘っているときと同じ空気だもん)

ネメシス「私には絶対に行かないと言ったら行かないスゴ味があるッ!」ガタガタ

メイプル「わかった。わかったから。しばらくは誘わないから」

ネメシス「二度と誘うなと言っておろうが!?」

メイプル「でも、それじゃあこれからどうしようか。ノズ森林はあんな有様だし」

ネメシス「それなのだが……意外な来客が、意外な情報を持ってきたぞ。それを聞いてからでも遅くはあるまい」

メイプル「意外な来客?」



ガチャリンコ



カナデ「やあ。会うのはこっちの時間で三日ぶりかな」

メイプル「あ!」
88 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/04(土) 17:57:54.57 ID:fkiixXfA0
数十分後 宿屋 食堂スペース


カスミ「……」

カスミ(先を越されたか……? 既にメイプルが誰かと喋っているな)ジーッ





メイプル「え! PKが東西南北全部撤退!?」

ネメシス「北はサリーが消し飛ばしたとして……あとの東西南は?」

メイプル「え。カナデからまだ聞いてなかったの?」

ネメシス「マスターが起きる前に聞いたら二度手間であろう?」

メイプル「それはそうだね」

カナデ「西は炎帝ノ国という大多数クランが。東はユイとマイっていう二人組のマスター、別名破壊姉妹(シスターズオブデストロイ)が」

カナデ「南は『決闘都市に行くのに邪魔だから』って、クロムって名前の超級マスターがやったらしいよ」

ネメシス「ほぼ同時にか? それは随分と都合のいい」

カナデ「そうでもないさ。そもそもPKの待ち伏せ陣がここまで長引くこと自体が都合のいいことだよ」

メイプル「え。どういうこと?」

カナデ「PKのメリットはマスターの持っている金や装備をほぼ一方的に奪えること」

カナデ「しかも運営側もこれには手出ししない。無限の可能性がコンセプトのゲームだから」

カナデ「一見してPKをやることがアドバンテージに成り得るように見えるけど、実のところそうじゃない」

メイプル「……ああ! なるほどね!」

ネメシス「?」

メイプル「最終的に稼ぎが頭打ちになって別の場所に狩場を移される前のPKを逆に狩った人が一番得するんだ!」

ネメシス「外道の発想では?」ガーンッ
89 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/04(土) 18:11:04.90 ID:fkiixXfA0
カナデ「それもあるね。あとはPKは単純に心象が悪いから、逆に狩っても文句は言われにくい」

カナデ「ベストのタイミングで狙えば他のプレイヤーに感謝され、PKたちが集約した金品装備も一人占めできる」

ネメシス「もう一度言うぞ? ド外道の発想だ、それは」

カナデ「もっとも、単純なプレイスタイルとしてPKがやりたいだけでアイテムやマネーの接収が目的でないタイプのPKも一定数いるけどね」

カナデ「あとはPKを誰かに依頼されているタイプ。これはPK本人を狩ったところで意味がない」

メイプル「そっか。お金は依頼主が持っているわけだから……」

カナデ「そういう意味では……強さも相まって北の超級殺しが一番厄介だったよね」

カナデ「僕たち、金品の一切が無事だったろ?」

メイプル「あ!」

ネメシス「……そういえば、そうだ。奪われててもおかしくはなかったのに」

カナデ「ちなみにアルテアを囲うようにPK陣が敷かれていた理由は一切不明。東西南北それぞれ別々の勢力だったしね」

カナデ「こんな都合の悪いことが何の理由もなしに起こるはずがない。だとすると……」

ネメシス「何者かの陰謀であろうな? 最有力容疑者は、この前戦争を吹っかけてきたというドライフあたりか?」

メイプル(よく覚えてるなぁ……こういうときサリーがいればわかりやすく解説してくれるんだけど)

メイプル(戦術、戦略、どっちも大得意だったし。勉強できないくせに)







カスミ(興味深い話ではあるが……やはり話しかけづらいな。ここで割って入るのも)モジモジ

バビロン「ねーねー! 話は変わるんだけどさー! さっきチラッと話してた決闘都市ってどんな場所か知ってる?」

メイプル「わっ、バビ!」

ネメシス「おお、奇遇だのう!」

カスミ「嘘だろう……」ガガーンッ
90 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/04(土) 20:15:35.74 ID:fkiixXfA0
カナデ「あ、やっぱり『二人とも』メイプルの知り合いだったんだ」

カスミ「!?」ガビーンッ

ネメシス「二人? この場にはバビしか……!?」

メイプル「あっ! カスミもいる! 気付かなかった!」ガーンッ

カスミ(そうだ! それが普通だぞ、結構気を遣ってたのだから!)

カスミ(……カマかけか? バビがガードナーなのは少し注視すればわかるが、マスターが私だというのはわかりようがない)チラッ

カナデ「……」ジーッ

カスミ「……気付いてるな? いつからだ?」

カナデ「ちょっと前からなんとなく」ニコニコ

カスミ(……嘘を吐いていることだけはわかる。何か確信を持って私を看破していたのだ。バビが近づく前から)

カスミ(底が見えないな。だが見つかったのはある意味、好都合か)

カスミ「メイプルに用があったのだが、話の途中だったからな。タイミングを伺っていた」

メイプル「え? 私に?」

カスミ「せっかく南の街道が使えるようになったのだ。決闘都市ギデオンに向かおうと思っている」

カスミ「一緒に来ないかと誘いに来た」

メイプル「決闘都市……」

バビロン「さっき言った通りどんな場所かは全然知らないんだけどねー」

カナデ「簡単に言えば闘技場のある決闘のメッカだね。こっちはレベル51を越さないと挑戦できないけど」

カナデ「周辺にいる魔物は今のメイプルや僕なら問題にならないレベルかな」

メイプル「いいね、行こう行こう!」

カナデ「あ。僕も同行するけど、いいかな?」

カスミ「人数が多い分には大歓迎だ」

カスミ(少しイヤな予感もするしな)
91 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/05(日) 11:09:49.98 ID:zr72PBef0
冒険者ギルド

メイプル「依頼を受けてから行くの?」

カスミ「ああ。そこそこいいレベルの三人が揃ったのだ。そろそろ討伐しながら金を稼ぐ手段も模索しなければな」

カナデ「これがいいと思うよ。ギルド間の貨物輸送。交通手段自体は僕たちが自前で用意する必要があるけど」

ネメシス「マスター! 手配書があるぞ! 何千万単位の賞金首もいるぞ!」

メイプル「え!? 本当!? ねえねえ二人とも! 途中でこれ狩らない!? 大瘴鬼ガルドランダとか凄い金額だよ!」キラキラキラ

ネメシス「凄い金額だな!」キラキラキラ

バビロン「やろー!」

カスミ「やるわけないだろう」ヌボーンッ

カナデ「あはは。流石にUBM……ユニークボスモンスターを相手どるのは僕たちには無理だよ」

カナデ「見かけたとしても逃げの一手かな」

カナデ「……道中で商人のキャラバンがそのガルドランダに襲われている現場にでも出くわさない限りは……ね」ニヤリ

カスミ「何故そんな意味深なことを言う!? 本当に出そうではないか!」ガビーンッ

カナデ「願掛け。僕もちょっと見てみたいから」ニコニコ

カスミ「そんなスリルに付き合ってられないからな! 私は!」

バビロン「……とか言ってるけど、実際そんなところを目にしたら見捨てられないよね。カスミ?」

カスミ「……」

カナデ「……人がいいんだね?」

カスミ「バビがな! バビの人がいいのだ! 私ではない!」

バビロン「えー? カスミの思考をそのまま垂れ流しにしただけだよー」

カスミ「パフェとデスソースを与えるからちょっと黙っててくれ!」

バビロン「……」シーンッ

メイプル(……この分なら何とかやっていけそうかな。サリーもいればもっと楽しかったと思うけど)




ヒソヒソ ガヤガヤ


「おい聞いたか? 幻燈姫の賠償額、一億リルは軽く越すってよ」

「流石にその金額はそうそう用意できねぇだろ。用意できたとしても時間がかかりそうだ」

「一週間程度はアルテアを留守にするかもな……あれで約束の類には忠実だからバックれだけはしないだろう」




メイプル「……」

ネメシス「因果応報だ。あやつに期待するのはやめろ」

メイプル「うん……」ズーン
92 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/05(日) 11:30:44.20 ID:zr72PBef0
冒険者ギルドの外


メイプル「でもさ。交通手段は自前で用意しろって、どうする? 乗合馬車とかあるのかな」

カナデ「ロンドンやフランスのオムニバスみたいなのはあったはずだけど、当然そんなものを使えば結構値が張るね」

カスミ「安心しろ。当てはある。そこは任せておいてくれればいい」

カナデ「当て?」

カスミ「《喚起》。マリリン」



ズシイイイイインッ


マリリン「VAMOOOOOOOooooo!」

カナデ「……三重衝角亜竜(トライホーンデミドラゴン)だね。凄くビックリした」

メイプル「おおう、おっきい!」

カスミ「あと馬車ならぬ竜車もある。詰めれば八人くらいは余裕なはずだ」

ネメシス「……いい趣味だが、こんなのをどうやって手に入れたのだ? 今のマスターやカスミよりも強そうだぞ。デミドラ級だし」

カスミ「……ギルドのクエストの報酬だったのだ」

ネメシス「それは質問の答えになっていないな? 我々より明らかに強いこやつを、大した仕事もまだできないはずのカスミが何故手に入れたのだ」

メイプル「ネメシス。その指摘、カスミと似たり寄ったりのレベルの私にも刺さるから……言葉は選ぼうよ」

カスミ「……」

バビロン「それがさー。こんなことがあったんだよねー」

バビロン「ほわんほわんばびばびー」ホワンホワン

ネメシス「なんだその擬音は」
93 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/05(日) 11:47:02.05 ID:zr72PBef0
回想

カスミ「まったく……マスターの私に相談もせずに勝手にクエストの受注書を提出するとはな」

バビロン「えー? 最終的にはマスターのサインが必要だったんだから、提出した時点で『やっぱりやめます』って言えばよかっただけの話だよー?」

カスミ「無理だ。恥ずかしい。あのまま流れに任せて受注書を提出した方がいくらかマシだ」

カスミ「幸い、失敗してもデメリットの存在しないクエストだったしな。依頼主には悪いが真面目にやるだけやって失敗だと言って貰おう」

カスミ「それで義理は果たせる」

バビロン「まー大丈夫だと思うけどねー」

カスミ(……まったく。微妙なクエストを受注してくれたものだ)ペラッ



【モデル募集:巨匠グランツィアン・バレノー 難易度:六】



カスミ「大した自信だな。本当に」ハァ

カスミ(天狗の鼻を折られなければいいが。いや、確かにバビは可愛い。しかし芸術家肌の連中は良くも悪くも独特の感性をしている)

カスミ(そのままバビが受け入れられるかどうかは微妙だな。相手のことをよく知らないし)

バビロン「ん。カスミー。ここじゃない? 受注書に書かれた住所って」

カスミ「そうだな。ではここからは真面目にやるか。すみませーん! クエストを受注してきたのですけどー!」コンコンッ



ガチャリンコッ


バレノー「またか、あの下半身だけの能無しギルドどもめ! 今度はどんな不細工ブスを」ピクッ

バレノー「これだーーー!」ズギャアアアアアンッ

カスミ(速ァ!?)ガビーンッ

バビロン「何とかなると思ったんだよねー。やっぱり」

カスミ「……まあ、よかった。何だかんだバビが凹む姿など見たくなかったし」ガシッ

カスミ「ほえ?」キョトン

バレノー「これは着物だな! 遥か彼方の国、天地あたりで流行っている美しき装いは見間違えようが無い! 多少は改造しているようだが!」

カスミ「は? は?」

バレノー「頼む黒髪の美少女よ! 私の芸術のモデルになってくれ!」

カスミ「はぁーーーっ!?」ガビーンッ

バビロン「じゃ、頑張ってねー。バビはその辺で時間潰してるからー」ソソクサーッ

カスミ「バビーーーっ!?」ガガーーーンッ
94 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/05(日) 11:57:04.47 ID:zr72PBef0
現在

バビロン「報酬の払いが滅茶苦茶良かったんだよねー。流石は巨匠」

メイプル「ちょっと待って。そういう類のクエストもあるの!?」

バビロン「職業ごとに設定されているクエストでねー? 戦闘向けでない職業なら戦闘しないクエストもあるよー」

ネメシス「む? そういえばカスミの職業をまだ聞いておらんかったのう。結局どんなジョブにしたのだ?」

バビロン「奴隷商」

ネメシス「ふむふむ奴隷商」ウンウン

ネメシス「……え? 今なんて?」

バビロン「奴隷商!」バァァァァンッ

ネメシス「奴隷商!?」ガビーンッ

カスミ「私の本性はエロ……」ズーン

メイプル「カスミの精神が死んだ!」ガーンッ

カナデ「……僕の見てる限り、カスミを引っ張り回してたのはバビの方だったと思うけどね」

カスミ「そうだ! 私のせいじゃない! 適職診断カタログで奴隷商とかが出てきてしまったのはどう考えてもバビのせいだろう!?」

バビロン「……カスミは」

カスミ「ん?」

バビロン「カスミはバビがエンブリオじゃない方が良かった……?」ウルウル

カスミ「……ぐあっはぁ!?」グサァッ

バビロン「バビは……バビは存在自体がめーわく……? ぐすん」エグエグ

カスミ「訂正しよう。奴隷商万歳! ビバ、奴隷商! 私の本性はエロ!」イエェェェェェイ!

バビロン「……」ニヤリ

ネメシス「おいこやつ嘘泣きだったぞ」

メイプル「やめよう。仮に嘘泣きだったとしても本気泣きの可能性が一パーセントでもあるのなら、カスミはやっぱりこう言わないとダメだったよ」

ネメシス「エグい……」
95 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/05(日) 20:27:49.40 ID:zr72PBef0
カスミ「ともかくだ。交通手段はこの通り自前で用意できる。安心しろ!」

カナデ「従属キャパは?」

カスミ「……?」

カナデ「ああ、えっと。従属キャパシティって項目、あるでしょ? ステータスの補助画面に」

カスミ「……ああ、これか。なんだこれは?」プチプチ

メイプル(あ。私にもある。従属キャパシティ0/50……?)

カナデ「簡単に言えば、自分の配下を自分の戦力としてカウントできるかどうかがこのパラメーターで変化するんだ」

カナデ「従属キャパのことをたった今知ったのなら、いくら奴隷商と言えども亜竜クラスのモンスターをデメリットなしでは使役できないね」

カスミ「……確かに警告画面が出るな。その後パーティメンバーに入れるかどうかを訊かれたが」

カナデ「承認して。それでデメリットは完全に消えるから」

メイプル「え? じゃあデメリットじゃないよね?」

カナデ「デンドロのパーティ枠は基本六人だから、マスターが僕たち三人で、マリリンがプラスされると残り二枠しか残らないね」

カスミ「従属キャパに収まらない者を、更にパーティメンバーに登録しないとどうなる?」

カナデ「能力に制限、経験値の取得不可、主なデメリットはこの二つだね。大きいよ?」

バビロン「んー? バビのときは従属キャパがどうとか警告はなかったよね?」

カナデ「そりゃそうだよ。エンブリオは一律コストゼロだもん」

ネメシス「なるほど。パーティメンバーの枠に関して、私たちエンブリオは一切考慮する必要がないということか」

メイプル「そもそもネメシスは武器だから、バビとは考え方が根本から違うんじゃないかな」

カスミ「……よし。これでマリリンに関してのシステム上の懸念はなくなったな」ポチポチ

カナデ「次は旅支度だね。いい店を知ってるんだ。一緒に行かない?」

カスミ(……コイツ、役に立つのは事実だが仕切りっぱなしだな)

バビロン「気に入らない?」

カスミ(そこまでは言わないが……少し胡散臭いな)

カナデ「……」
96 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/06(月) 19:03:34.44 ID:h+X1CjCC0
イズの店

メイプル「あ! ここって!」

ネメシス「最初にサリーに案内されそうになったアレだのう。前に来たときは臨時休業中だったが」

カナデ「あれね。何でも初心者でも買えるリーズナブルな和風装備を考案してたら疲れて寝ちゃってたんだって」

ネメシス「着物?」

ネメシス「……」ジーッ

カスミ「……初日、ここで服を買った。あと刀も同じく」

メイプル「私たちが来たとき閉まってたのはそういうことかー……」

ネメシス「しかし、何故そんなことを知っておったのだ? カスミとは初対面であろ?」

カナデ「店主のイズとは知り合いなんだ。イズー! やってるー?」カランカランッ






バレノー「見ろイズ! このプロポーション! この着物の美しさ! どれを取っても完璧だ!」フンスフンス

イズ「そーねー。その着物、メイドイン私だけどねー」

バレノー「露出度は大してないのに滲み出るこの色気はまさに天性のものと言う他なく――」フンスフンス

イズ「ところでその絵、複写でもいいから私に買わせてくれない? いい宣伝になると思うわー」

バレノー「いいだろう! 何種類で何枚欲しい? いくらでもストックがあるぞ!」

カスミ「」

バビロン「わお。べた褒めだねカスミー」

カスミ「……」カァァァ

ネメシス「あ。泣きそう。顔真っ赤でカスミ泣きそうだぞ」

メイプル「やめようよッ! イジメ臭くていたたまれないよ!」ガーンッ
97 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/06(月) 23:13:44.21 ID:h+X1CjCC0
バレノーは帰った

イズ「あらあら。また来てくれたのねいらっしゃい。あとの二人は一見さんね」

カナデ「一見さんて。それ断られるタイプの言い方じゃん。初見さんとかでいいでしょ」

ネメシス「断られてたまるか」

メイプル(気さくな人だなぁ)

イズ「どうもー初めまして。生産職のイズよ。何が欲しいの? 今のレベルに合わせた装備一式なら十万ベルから見立てるわ」

メイプル「装備一式なら妥当な金額だけど、気軽には手を出せないかなぁ……」

カナデ「カスミのときとえらい違いじゃないか。あれバリバリ初期金額で譲ってあげたんでしょ?」

イズ「やーね。ちゃんとしたビジネスとして受けたわよ。一定期間あの装備を『自分の意思で脱がない』って契約書に名前を書いてもらったわ」

イズ「宣伝塔になってもらうことと引き換えの取引よ」

カナデ「……その結果として色々な辱めにあってるみたいだから、そう考えると高い買い物だったかも……」

イズ「妥当よ!」ドジャァァァン!

メイプル(言いきっちゃったよ!)ガビーンッ

ネメシス「いい性格しておるのう」

カナデ「ああ、そうだ。イズ。僕たちこれからギデオンに向かうことになったんだ」

カナデ「いくつかアイテムを買ってくよ」

イズ「……」

イズ「ギデオン、ねぇ。奇遇ね。私もそっちに用事があるのよ」

カナデ「え」

カナデ(……事前の打ち合わせと違うな?)

イズ(ギデオンとなると事情が変わってくるのよ)

イズ「パーティ枠は余ってるかしら?」

メイプル「あと二枠は余ってますけど」

イズ「私も同行していい?」

カナデ「!?」

カナデ(……何かと理由を付けて割引してくれれば良かったんだけど!)

カスミ「別に構わないが、そうなるとクエストの達成報酬の配分が少なくなるな」

メイプル「旅が簡単になると思えばそう悪い話でもないと思うけど……」

ネメシス「そう早くに大金が必要になるわけでもなかろう?」

カナデ(ま、前向きーーーッ!)ガビーンッ
98 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/08(水) 21:21:19.32 ID:QRrDevUc0
イズ「ああ、言っておくけど私、戦闘においては役立たずよ」

全員「!」

カナデ(……意地が悪いけど、ここで僕が『じゃあダメ』って言えばひとまずは別行動が……)

イズ「でも私を仲間に入れてくれれば、この場にある商品のクーポン券を一枚ずつあげちゃう。何でも一つ五割引よ」ペラッ

メイプル「ようこそイズさん!」キラキラキラ

カスミ「私たちはあなたを歓迎する」キラキラキラ

ネメシス「クーポンなのだー!」キラキラキラ

バビロン「うぇーーーーるかむっ!」キラキラキラ

カナデ(追い出せる口実を爆破されたッ!)ガガーーンッ

イズ「ふふ。いいでしょ。私も混ぜてよ」ヒソヒソ

カナデ「……ちょっと前まではそんな素振りなかったじゃないか」

イズ「ギデオンだと事情が違うのよ」

カナデ「……?」

イズ「友達に会いに行くわ」

カナデ(そうか。確か南のPKを片付けたクロムってイズの友達だったっけ)






ネメシス「なあなあマスター! このアイテムなんか面白そうだぞ!?」

メイプル「ん……? フリスク型のタブレット……? ATtoVTタブ(攻撃から防御へのタブレット)……」

メイプル「うん。いいね。コスパも良さそうだし買っちゃおうか」

ネメシス「五割引だと思うとわけもなく買い物が楽しくなるなぁ! マスター!」

カナデ(思い切りイズの商法に引っかかってる)

イズ「うふふふふふふふふ」ニヤニヤニヤ
99 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/09(木) 22:08:04.99 ID:fW0bVJf70
数分後 アルテア南門付近

メイプル「買いすぎた! 完全に金欠だよ!」スカンピーン

ネメシス「……まあ、商品の一番高いヤツだけ五割引だったのだから良しとしようではないか。長期的に見れば間違っていないはずだ」

カナデ(自己弁護が厳しい!)ガーンッ

バビロン「ねーカスミー。ちょっと量が少なくない?」

カスミ「構わないさ。イズは私たちのすぐ傍にいるんだぞ? 欲しい物があったら適宜その場で買えばいい」

メイプル「え」

ネメシス「んっ?」

カスミ「アイテムボックスくらい持っているだろう? 自分の商品を持ち歩かない商人がいるか?」

イズ「……道理で割引ハイにならないと思った……まあ、後から搾り取れるんならそれでもいっか……」

カナデ「……初心者のメイプルをカモったね?」

メイプル「」

イズ「ごめんなさーい! あまりにもダンサブルに私の手の平で踊ってくれるものだったから止め時がわからなくてー!」ウフフフフフフ

イズ「カナデだって私のことを止めなかったしね!」

ネメシス「」

バビロン「カスミー。どうして教えてあげなかったのー?」

カスミ「ネメシスがさっき言っていた『長期的に見れば間違ってない』という言葉もあながち見当外れというわけではないからな」

カスミ「買えるときに買っておけるならその方がいい」

バビロン「現実には商品も商人も私たちのすぐ傍にいるから、やっぱり急ぐ必要はなかったよねー?」

カスミ「まあこの場合はそうだな。今のイズの品ぞろえによるが」

イズ「ちょっとはレパートリーが減るわよ」

カスミ「だそうだ。やはりネメシスは間違ってなかったぞ! 良かったな!」ニコッ

ネメシス「いっそのこと私たちのことを笑え! 思い切り! そっちの方が楽だ!」ウオオオオオオ!
100 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/10(金) 19:42:51.94 ID:7leBO8pt0
道中

カスミ「……さて。道中はマリリンのお陰で楽だが」

メイプル「暇だねー」グデー

ネメシス「途中でちょいちょいモンスターは出てくるがのう」

カスミ「無意味にマリリンを加速させるか? 多少SPは食うが暇に耐え切れそうにない」

メイプル「竜車を絶叫マシンに変えるのは反対かな……」

バビロン「はいはーい! じゃあお互いに能力を教え合うのがいいと思いまーす!」

カスミ「仲間とは言えあまり手の内をひけらかすのはな」

バビロン「じゃあまたカスミの髪型をいじって遊ぶー?」

カスミ「……勘弁してくれ。わかった。戦闘のときにすり合わせもあるだろうし、言うとも」

ネメシス(また……?)

メイプル(またって言ってた……)

イズ(普段凄く緩いのね、カスミちゃん。ツインテとかにするのかしら)

カスミ「バビロンのパッシブスキル《ブラッドラスト》と《小淫魔の誘惑》のコンボで戦う。本領発揮に多少時間がかかるな」

イズ「誘惑(テンプテーション)の方は魅了の状態異常付加だとわかるけど、ブラッドラストはよくわからないわね。どんなスキル?」

カスミ「マスターが敵にダメージを与えれば与えるほどバビの《小淫魔の誘惑》の魅了確率と有効範囲が強化されていくスキルだな」

カスミ「最初は同性でも魅了できるようになり、最終的には無機物でも魅了できる。理屈の上では」

メイプル「へー。ネメシスと逆だね。ネメシスの《復讐するは我にあり》はダメージを盾で防げば防ぐほどダメージカウンターが……」




キャイキャイ




イズ「……カナデちゃん。もし私の番になったら絶対に庇ってね。言ったらバレちゃう」

カナデ「はいはい」

カナデ「……でもエンブリオの名前くらいは言わないと逆に怪しまれるかもよ」

イズ「ええーっ……あっ」

カナデ「?」

イズ「……ラッキー。そんなこともう考えなくて良くなったみたいよ!」ニヤニヤ

カナデ「……カスミ! 前方を確認!」

カスミ「何っ……!?」
101 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/10(金) 20:02:39.35 ID:7leBO8pt0
商人「ひいいいいい! なんだこの数はーーーッ!」

護衛「ダメだ! 数が多すぎる! おい、最低限進行方向へのゴブリンを片付けろ! 後は強行突破する!」

護衛2「今やってる! だがかなり厄介だぞ!」

ゴブリンウォリアー「ぐげげげげがっ!」


ギャースカギャースカ



カスミ「……何ということだ! 本当に商人のキャラバンが襲われている!」

メイプル「しかもちょっと相手の数も多いね。一撃死させられない程度には強そうだし」

イズ「この距離ならちょっと迂回すればやり過ごせるはずよ。どうするの?」

カスミ「決まっている! 見捨てられるものか!」ガチャガチャ

メイプル「うん。助けるのは賛成だけど、カスミ。何やってるの?」

カスミ「マリリンと竜車のジョイントを一度解除している」

メイプル「なんで?」

カスミ「……? わかりきったことを訊くんだな? よし、外れたぞマリリン」ガチャリンッ

マリリン「VAMOOOOOOOO!」






カスミ「轢き殺せ。遠慮はいらん」シレッ

メイプル「!?」

ネメシス「こやつもエグいのう!?」ガビーンッ

マリリン「VAMOOOOOOO!」ドガガガガガガッ


ドガシャアアアアアンッ
102 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/10(金) 20:16:30.01 ID:7leBO8pt0
メイプル「すごーーーい! あんなに強そうだったゴブリンウォリアーたちが紙みたいに吹っ飛んでくよ!」

ネメシス「だが流石に分が悪いな。やはり数が多すぎる。加速するだけの助走距離ももうない」

カスミ「当然、あとは私たちでやるぞッ!」バッ

バビロン「それが流儀ーーー!」バッ

メイプル「ネメシス!」

ネメシス『ああ! 存分に私を振るえ!』

メイプル「出撃ーーーッ!」バッ

イズ「……カナデちゃんも行っていいのよ?」

カナデ「いや。必要なさそう。多分このままだと二人で充分やれるよ」

カナデ「経験値を横からかっさらうのもアレだしね」

イズ「優しいわね」






カスミ「ふんっ!」ザァンッ

ゴブリンウォリアー「ごぼえっ」バキィィィィンッ

メイプル「……相変わらずの鋭い太刀筋だなぁ」

ネメシス『職業が奴隷商ということは、素の実力で刀を振るっているということだ。ある意味普通の剣士よりも恐ろしい』

メイプル「カスミー! こんなときに訊くのも何だけど、剣道とかやってたのー?」

カスミ「いや! 見よう見まねで覚えた! これでもやり込んでたからな!」

カスミ「SEKIROを!」ドーンッ

メイプル「ゲームだよそれッ!」ガビーンッ
103 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/11(土) 10:32:52.24 ID:LrwdMUIO0
ゴブリンウォリアー「ぐぎゃべっ」バキィィィンッ

カスミ「よし。ブラッドカウンターはそこそこ溜まったな。位置もいい。勝ったな」

バビロン「《ブラッドラスト》ステージ2! 《小淫魔の誘惑》!」ホワワンワンッ

ゴブリンウォリアーs「ぐがっ!?」ビクンッ

カスミ「ふむ。流石に何人かにはレジストされたか。まあ、関係はない」




ゴブリンウォリアー♂「ぐげぎゃーーーっ!(意訳:バビちゃん最高ーーー!)」

ゴブリンウォリアー♀「げげげげがーーーっ!(意訳:世界一可愛いよ!)」

ゴブリンウォリアー「げげげがっ!?」ガビーンッ


ボコスカボコスカッ



ネメシス『うおおおおおう!? 同士討ちを始めおった!』ガーンッ

メイプル「事前説明はされていたとは言え、かなり見た目がグロいなぁ」

カスミ「阿鼻叫喚。さて、使った分のブラッドカウンターを多少は元に戻さねばな。後は魅了されていないヤツを後ろから順番に」


ザァァァンッ バキィィィインッ


カスミ「辻斬りだ」チャキンッ

ネメシス『本当に敵でなくて良かったのう……』

バビロン「カスミー! ガンバ! ガンバ!」フレーフレー!

メイプル(血を貢げば貢ぐほど強くなる。捧げた分だけ見返りをくれる相棒が欲しいとか思ってたのかなぁ)

ネメシス『バビロンの名に恥じぬインモラルな能力だのう。カスミの恋愛観、絶対に重いぞ』

カスミ(なんか好き勝手言われている気がする!)ガーンッ
104 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/11(土) 20:45:04.62 ID:LrwdMUIO0
ザァァァンッ

カスミ「む。魅了がかかってないヤツは全員始末したか?」

カナデ「大丈夫だよー! こっちから見た限り、レジストしたときにもモンスターは僅かに身動ぎするんだ」

カナデ「身動ぎしたヤツらは全員カスミとメイプルが始末したから、後は魅了されたヤツだけ!」

カスミ「生殺与奪も思いのままか。生きてるだけでもう経験値同然だな。バビ」ポイッ

バビロン「いただきまーーーす!」キャッチ!

メイプル「え」

ネメシス『カスミの刀をバビが受け取って』

バビロン「はいはいそこに並んでー! よいしょーーー!」ザグウウウウッ

ゴブリンウォリアー「ぎゃあああああああああああ!?」

ネメシス『無抵抗のモンスターを一突きーーーッ!?』ガビーンッ

バビロン「おいしー! おいしー!」ザグザグザグザグ

ギャアアアアアア グエエエエエエエエ!

メイプル「なるほど。バビの経験値稼ぎのために刀を譲ったんだね。刀の腕が無くとも、無抵抗ならもう後はどうとでもなるから……」

メイプル「あれだね。ゼノブレイド2みたいな戦い方だね。私たちもやってみる? ネメシスもレベルアップしたいでしょ?」

ネメシス『それはいいが、あんな戦い方は御免だな! グロすぎる! いやグロが苦手なのではないが……』

ネメシス『できればこう……正義の味方みたいな戦い方をしたい!』

メイプル「あれも一応正義の味方だよ? 私たちの戦い方より数倍エグいのは否定できないけど」

ネメシス『過程にもこだわりたいのう』

バビロン「あー! おいしかった! ごちそうさまでした!」


ピロンッ


バビロン「あ! ねーねーカスミー! バビ第二段階になってるー!」

カスミ「おお、本当か! やったな! 大収穫だ!」ニコニコ

ネメシス『……唯一あの二人に見習えることがあるとしたら、あの仲の良さだな』

メイプル「私たちも負けてないよ」

ネメシス『……ふ、ふふふ』テレテレ
105 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/12(日) 21:48:55.41 ID:uxca9ViJ0
オリュンポスを一気にやった影響で物凄く精神がボロボロになった……
106 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/13(月) 22:03:59.53 ID:pJkdsjHQ0
ザワザワ ザワザワ

メイプル「ん? 視線を感じる」

ネメシス『まああそこまで陰惨な戦い方をしたらのう。私たちもあんまり上品には戦えないのだし』

護衛「あ、あの……」オズオズ

メイプル「はい?」

護衛「旅のマスターの方とお見受けします。ありがとうございました。あなたたちが来てくれなかったら、もしかすると……」

メイプル「ああ、いや! あはははは! 私たちよりもまずあっちの奴隷商さんに感謝してくれると」テレテレ

カスミ「職業で私を呼ぶなッ!」ウガァ!

バビロン「何はともあれ、これで一件落着かなぁ? 追加報酬とか貰えるかも!」ワクワク

カナデ「……?」

イズ「どうかしたの? カナデちゃん」

カナデ「いや、何か視界の端に……」キョロキョロ

ネメシス『ふう。ちゃっかりしていることだ』

ビュオンッ

ネメシス『な――』


ドガァァァァァァンッ


メイプル「はっ……!?」

ネメシス『なんだ今の……激突音!? 爆発音!? そしてこの土煙!』

カナデ「メイプル! 今すぐそこから離れて!」

メイプル「えっ!?」

カナデ「急襲だ! 上から来た! そいつはヤバい!」

メイプル「そいつ?」





ガルドランダ「……」ズズズズズ……

メイプル「――!」
107 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/14(火) 19:35:36.88 ID:dBfPC8wa0
ガァンッ

メイプル「がぁっ……!?」ブオンッ

カスミ「メイプル!?」

バビロン「いけなーい! クリーンヒットだよ!」

カナデ(いや違う! 直前で盾を攻撃に挟むのが間に合ってた! 致命傷にはなってない!)

カナデ(かなり派手にふっ飛ばされてるのは、裏を返せばエネルギーが破壊ではなくバウンドに使われているということだ!)

カナデ(でも!)

カスミ「ちっ! 支援を……!」

カナデ「ダメだカスミ! ガルドランダに近付いちゃいけない!」

カスミ「!」

カスミ(……そうか! コイツ! どこかで見たと思ったら!)



ネメシス『マスター! 手配書があるぞ! 何千万単位の賞金首もいるぞ!』

メイプル『え!? 本当!? ねえねえ二人とも! 途中でこれ狩らない!? 大瘴鬼ガルドランダとか凄い金額だよ!』キラキラキラ

ネメシス『凄い金額だな!』キラキラキラ




カスミ(賞金首のUBM! 大瘴鬼ガルドランダ!)

カスミ(確かアイツの攻撃は……!)バッ

バビロン「はいはいりょうかーい! カモンカスミー!」ガバッ

カナデ「そうだ! それがベスト! ガルドランダに近付いたらアウトだ! 何故ならアイツの攻撃は!」






ガルドランダ「GoAAAAAAAAAAAAAAA!!」ブシュウウウウウッ

護衛「うっ……なんだこの煙は……ぎゃっ」バタリッ

カナデ「猛毒の煙……つまり瘴気だから!」
108 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/14(火) 19:50:17.12 ID:dBfPC8wa0
カスミ(……クソッ! まずい! 思っていたよりも範囲が広い! 空気より重いのか地を這うように瘴気が進むのはいいが!)

バビロン「んしょ。んしょ」パタパタ

カスミ(こうやってバビに抱き着いてもらえば間違っても瘴気はこちらに届かない。飛行できるから。それはいい。だが!)

マリリン「……」フラフラ

バビロン「あ! マリリンが!」

カスミ「だけじゃない。商人のキャラバンが半分程度侵されてる。解毒薬があれば話は早いが……すぐ逃げるのは無理だ」

カスミ「マリリンは送還(リコール)すれば私のジュエルに戻るが……私たちのパーティ内での一番の問題は!」






メイプル「ごほっ……!? うぐっ!」フラフラ

ネメシス『酩酊、猛毒、衰弱の三連コンボ。デバフのカクテルだのう!』

メイプル「嘘でしょ。あれ、受けた感じではデミドラグワームより攻撃力が強かったのに!?」

ネメシス『モンスターとしての格が違う、か!』

カスミ「イズ! 解毒剤の類はいくらだ!?」

イズ「モノによるわねー。即座に治すとなると、滅茶苦茶高いのしかないわよ。しかも一本しか」

イズ「率直に言って快癒万能霊薬(エリクシル)しかないわー」

カスミ「奢りだ! クーポンと全財産をはたく! メイプルに投げつけろ!」

イズ「御大じーんっ!」キランッ

カスミ「カナデ! ガルドランダをどうにかする! 手を貸せ!」

カナデ「……具体的にはどうするの?」

カスミ「それは――」

メイプル「……ッ!」ビクッ

メイプル「……倒そう」

カスミ「え?」

メイプル「みんな! 私、ガルドランダを倒したい! 手を貸して!」
109 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/16(木) 18:19:40.07 ID:OwFJR5Xa0
カスミ「メイプル……!?」

カスミ(と、驚くフリをしてみたが合理的に考えるならそれしかもう道はない)

カスミ(仮に! 仮にここでメイプルではなくマリリンにエリクシルを投げつけたとしよう。それで逃げられるのはせいぜい私たちだけだ)

カスミ(つまり私たちが逃げるということは、目の前でガルドランダに襲われる商人のキャラバンを見捨てることと同義)

カスミ(それはあまりにも最低すぎる!)

カナデ(……まあ、無理だよね。彼女たちに商人たちを見捨てろって言うの。でも)

イズ「妙ね。なんか彼女、怒ってるように見えるのだけれど」

カナデ「何でだろ……って、ああ。なるほどね」

イズ「?」

カナデ「人数が減ってる」

イズ「……あ」




グチャアッ



カスミ「……さっきまでメイプルに感謝してた護衛……か……?」

バビロン「んんー……? わかんないよー。あそこまでぺしゃんこになったら」

カスミ「落下地点にいたのか。なんて運の悪い」

メイプル「……」イライラムカムカ

カスミ「……ド怒りだな。メイプルにしては。いいだろう」

カナデ「覚悟、決めようか!」

イズ「エリクシルはいつ使うー?」

メイプル「今!」

イズ「りょーかーい!」ブンッ

ガシャンッ

メイプル「……ふうっ! 準備、完了! 行くよネメシス!」

ネメシス『おうさ!』
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/17(金) 10:10:06.06 ID:grWieKkr0
大地の章?
111 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/17(金) 23:33:59.71 ID:rpIBU+Kz0
カスミ「さて。初手はどうするか……ダメ元でやってみるか?」

バビロン「一回程度ならブラッドカウンターの消費も少ないし、やっちゃおうか?」

カスミ「……許可する! やれ!」

バビロン「《小淫魔の誘惑》!」ホワン

ガルドランダ「……?」キョトン

バビロン「やっぱりさっぱり通らないね! わかってたー!」

カナデ「?」

カナデ(通らなかったのか? というよりも、今のは……)

ネメシス『バビのテンプテーションも効かないとなれば』

メイプル「残る攻略法はやっぱりたった一つだね!」

ネメシス『攻撃を上げて物理で殴るぞ! マスター!』

メイプル「ラジャー! 本邦初披露! 《レックレスダイバー》!」ギュオンッ

ドガァァァァァンッ

ガルドランダ「GuGaAAAAAAAAAAAAAAAA!?」

カスミ「効いてる!? 何だ今の超速度は!」

カナデ「今の、《レックレスダイバー》だね。防御を捨てて敵に向かって高速移動しつつ攻撃力をブチ上げるスキル」

カナデ「生で見るのは初めてだ。あれ取得する人いたんだなぁ」

イズ「かなり無理目な習得方法だから、ほとんど誰も取れないんだけどね。初心者じゃないと何か間違ってってこともないし」

カスミ「今のはいいぞ! かなりダメージを与えている! これなら!」

カナデ「いや、まだ足りない! そもそも防御を犠牲にする《レックレスダイバー》は連発すれば必ず撃墜される!」

カナデ「UBMだってバカじゃないんだ! 二回目からは細心の注意を払って攻撃しないと……」

メイプル「もう一回! 《レックレスダイバー》!」ギュオンッ

カスミ「話を聞いてないぞ!?」ガビーンッ
112 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/18(土) 16:43:50.84 ID:BrUlK1qw0
ガルドランダ「GuGoOOOOOOOo!」ブオンッ

ガァンッ

カナデ「メイプルッ……?」

カスミ「……?」

バビロン「……無事だよー? 真正面から食らったはずなのに」

カナデ「へ? い、いや。そんなはずは……だってあれ防御力を犠牲にするスキルのはずで……?」

カナデ「第一、さっきはふっ飛ばされていたのに、今は何で踏ん張れてるんだ!?」

ガルドランダ「……!?」ググッ

メイプル「……よし。予想通り! ATtoVTタブの効果は《レックレスダイバー》のスキルを上書きする!」ガリッ

イズ「……なるほど! 私の商品の力ね、あれ!」

バビロン「どういうことー? 何が起こってるのー?」

カナデ「《レックレスダイバー》の防御力を攻撃力に変換する能力を、更にイズのATtoVTタブの効果で上書きしたんだ!」

カナデ「集約した攻撃力を、更に防御力に転化させれば《レックレスダイバー》は高速移動と防御のスキルに転身する!」

カスミ「呆れたな……新しいスキルを覚えたてで、手に入れたばかりの商品で、よくそんなことができたものだ」

カスミ「効果処理の上書きが成されなかったらどうするつもりだったんだ?」

メイプル(あードキドキした。上手く行ってよかったねネメシス)

ネメシス『ぶっつけ本番で命を賭けたのか!?』ガビーンッ

メイプル「私たちにはピッタリのスキルとアイテム。それと《復讐するは我にあり》があれば、何とか勝機も見出せそう」

メイプル「勝つよ! みんな! あと二分三十秒くらいで!」

カスミ「ああ、わかった! 二分三十秒で……二分三十秒!?」ガーンッ

イズ「エリクシルの効果は三分しか持たないのよー。瘴気は晴れてないわけだから、このままだと再度毒に侵されるわね」

カスミ「それを早く言え!?」ガビーンッ

バビロン「カスミー。でもバビたちにできることあるー? ガルドランダを攻撃しようとしたら、カスミだって毒毒だよー?」

カスミ「……考えはある。おそらく大ダメージを与えられるはずだ。私たちも参戦するぞ!」


バサァッ


バビロン「やる気になってるのはいいんだけどさー」

カスミ「?」

バビロン「今の羽音はバビじゃないよ?」

カスミ「えっ?」

カスミ(……そういえばさっきのはバビの羽音より数倍デカかったような……!?)
113 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/18(土) 20:03:50.47 ID:BrUlK1qw0
ロックバード「KIIIIEEEEEEEEEEEEE!!!!」バサァッ

メイプル「え」

ネメシス『鳥っ……!?』


ガァンッ


メイプル「痛ぃぃったい!」

ネメシス『マスター、大丈夫か!?』

メイプル「タブの効果はまだ有効だから、なんとか……! ていうかアレ何!? 大きい鳥!?」

カナデ「……クリムゾン・ロックバード……騎獣、ガルドランダ……!」

カスミ「なるほど。今更ながら得心が行ったな。ヤツはこれから飛び降りたのだ!」

カスミ「どう大きく見積もっても、あそこまでの落下エネルギーを発生させるだけの跳躍力など無さそうだしな!」

メイプル「……!」

カナデ「いくら何でも、あと二分そこらでロックバードまで相手にしてられないよ」

ロックバード「KIEEEEEEEEEEE!」バサッバサッ

カスミ「……ふむ」

カスミ「仕方がない。ヤツは私が始末する」チャキンッ

バビロン「え? 本当?」

カナデ「いくら何でもカスミじゃ無理じゃない? ロックバードも強いよ?」

カスミ「いや。何とでもなるさ。奥の手も無くはないからな! 行けバビ!」

バビロン「りょーかーい!」パタパタパタパタ

メイプル「カスミ!」

カスミ「メイプル! 悪いがカナデと組んでガルドランダを始末してくれ! 手伝えなくてすまないが!」

カスミ「コイツは私の獲物だ!」

カナデ(……妙に張り切ってるな?)
114 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/19(日) 19:14:44.99 ID:zwxbbiiA0
メイプル「……カナデ! 遠距離からの攻撃は得意?」

カナデ「大得意だよ。魔法攻撃ならお手の物さ」

ネメシス『聞きそびれてしまったが、カナデは魔法使いとかそういう系統のマスターなのかのう』

メイプル「なら遠距離から挑発するようにやって! 常に私の陰に隠れられる位置で!」

カナデ「りょーかい!」ボンッ

ネメシス『本棚……?』

カナデ「アカシックレコード、起動! 《ファイアボール》!」ボォウッ!


ドカンッ


ガルドランダ「Gu!?」

ネメシス『おお! 強……くはないが弱くもないな! 行ける行ける!』

メイプル「あとは《レックレスダイバー》を併用しながらカナデへの攻撃をカットするように立ち回って、と……」

メイプル「ネメシス! ダメージカウンターが溜まりに溜まったらやるよ!」

ネメシス『ああ! 飛び切りのヴェンジェンスを浴びせかけてやろう!』

ガルドランダ「GuGoOOOOOOOOOO!!」ブオンッ


ガァンッ


メイプル「……利く、けど。状態異常さえ無ければ、レベルを上げた私たちの方が強いんだよ!」

カナデ「……」

カナデ(攻略の糸口は見えている。でもなんだ? 少し……簡単すぎる?)

カナデ(嫌な予感が消えない)
115 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/20(月) 18:15:25.14 ID:fWoN5UnQ0
ガァンッ ドガッ

メイプル「……ネメシス! まだ!?」

ネメシス『あと二撃程度だ! この調子ならギリギリ間に合う!』

ネメシス『上手いぞ、アイツ! 攻撃力こそ大して無いが、立ち回りが絶妙だ! 簡単にカットできる位置に回り込める!』

メイプル「……?」

メイプル(初心者の動きじゃなくない?)

ネメシス(私もちょっと疑問だけども。今は考えるのはよそう)

ガァンッ

メイプル「……あと一撃ッ! てか、腕重ッ!」

メイプル「《ファーストヒール》!」ポワンッ

ネメシス『いいぞ! この分なら余裕だ!』

ガルドランダ「GuMoOOOOOOOOO!!」ブウウンッ


ドガシャアアアッ


メイプル「ぎっ……!」

メイプル(今までで一番の一撃!)

メイプル「……ヒールしてなきゃ終わってた……!」

ネメシス『溜まったぞ!』

メイプル「目標! 頭! 盛大に!」ダンッ

カナデ(いい! 跳躍力は充分! タイミングもジャスト!)

ガルドランダ「!」





メイプル&ネメシス「《復讐するは我にあり》!」カッ
116 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/22(水) 19:03:23.96 ID:XA6gHOVm0
ドガァァァァァァンッ!

メイプル(……頭から胸にかけて吹っ飛んだ!)

ネメシス『ディ・モールト!』

メイプル(それあのゲームでは『グレート』とかと似たラインの意味で使われるけど用法間違ってないかなぁ!)

カナデ「……!」

カナデ「消滅、してない!」

ブンッ


メイプル「!」


ドガシャアアアアッ


メイプル「……ガード、成功……いやおかしいよね!? 何で首から上が吹っ飛んでて生きてるの!?」

ネメシス『あの位置なら心臓だって機能しているはずがない! 不可解な……!』







カスミ「……!? 様子が変だぞ! 頭は間違いなくふっ飛ばしたはずなのに、何故死んでない!?」

バビロン「カスミー! ロックバードの相手をしてるんだからよそ見しないでよー!」

バビロン「それに、死んでなくて当たり前でしょー?」

カスミ「は?」

バビロン「なんでお腹攻撃しなかったんだろうねー?」

カスミ「お腹? バビ、お前は何の話を――ああっ!?」
117 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/23(木) 16:40:11.17 ID:gILNYjOQ0
チェシャ『……ところで、本当にギデオンに行く気?』

カスミ『そのつもりだが、どうかしたか? 南のPKも確か撤退していたはずだろう? クロムとか言う超級のマスターに全滅させられていたはずだ』

チェシャ『うーん、あんまり詳しくは言えないんだけど』

チェシャ『鬼の心臓は腹の中』

カスミ『?』

チェシャ『このワードを覚えておいて損はないと思うよ。あと仲間を増やすのも賛成かな』




カスミ「ああーーーッ! あれそういう意味かーーーッ!」ガビーンッ

バビロン「あれ? 今思い出したの?」

カスミ「そうでなかったら別行動の前に言ってた!」

バビロン「あれ? 言ってなかったっけ?」

カスミ「ま、まずい! ここからでも声は届くか? 早くメイプルたちに知らせないと……」

バビロン「無理!」グイッ

カスミ「ぐえっ」ガクンッ

ロックバード「KIEEEEEEEEEEEEEEEE!」バサァッ

バビロン「今ここから逃げたら、ロックバードを乱戦に参加させることになっちゃうよー!」

カスミ「……近づくのすら危険か! クソッ!」

カスミ(だがどうする!? このヒントなしで心臓の位置を知ることはできるのか?)

カスミ「……自力で気付いてくれるのを期待するしか……!」
118 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/25(土) 08:03:21.51 ID:xPn7p68G0
メイプル「どうしよう。頭をふっ飛ばしても元気なら、極論全身を粉々にするしか……!」

ネメシス『やれと言われれば付き合うが、そればかりは無理だ!』

ビーッ

ネメシス『……時間切れだからな』

メイプル「……ごっほ!」

メイプル(デバフの三重奏が戻ってきた……!)フラッ

メイプル「何でもいいからいいニュースが聞きたいよ。心が折れそう」

カナデ「……うーん」

カナデ「ちょっと待っててね、メイプル」

メイプル「?」

カナデ「いいニュースは、これから作るよ」ブワッ

カナデ「《大炎上》」ゴオオオッ

ガルドランダ「……!?」ジュウウッ

メイプル「……全身を焼くタイプの魔法!?」

ネメシス『おお! そうか! これなら行けるやも……』

フッ

ガルドランダ「……?」キョトン

ネメシス『火が消えるの早ァ!? ちょっと過激な日焼けサロンではないか!』ガビーンッ

カナデ「大丈夫。完璧にビンゴだ」

ネメシス『はあ……?』

メイプル「……!」


ビキビキビキッ


メイプル「お腹周りの皮膚だけ凄い勢いで治ってく……!」

ネメシス『……これは!?』

カナデ「やっぱり。最初から変だとは思ったんだ。UBMにしては難易度が低すぎるから」
119 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/25(土) 08:15:35.77 ID:xPn7p68G0
カナデ「ヒントは見てるだけでも他に二つあった。一つはバビのテンプテーションを受けたとき」

カナデ「効かないって言っても種類はあるんだ。ゴブリン軍団との戦いを見ててそれはよくわかってる」

カナデ「つまり、無効(ノーエフェクト)と抵抗(レジスト)」

カナデ「さっきの反応はどう見ても無効の方だった」

メイプル「……え。つまりこのガルドランダって……」

カナデ「メスだ」

ネメシス『このゴツさでェ!?』ガビーンッ

カナデ「あともう一つ。これは今から考えると、の話なんだけどさ」

カナデ「……このUBM、ちょっとお腹が大きくない?」

メイプル「肥満じゃないの? 鬼ってこういうデザインだし」

カナデ「別に理由があるとしたら、何が思いつく?」

メイプル「……メスの鬼のお腹が大きいのなら……」

ネメシス『妊娠か!』ハッ

メイプル「え!? この鬼、妊婦さんだったの!?」ガーンッ

カナデ「その通り。大瘴鬼ガルドランダのデザインは『妊娠して気が立った獣』だったんだよ!」

カナデ「それならガルドランダが指名手配されるまでのUBMになった理由も説明が付く!」

ネメシス『栄養……モンスターの場合は経験値を欲していたのか! お腹の子のために!』

カナデ「頭をふっ飛ばしても平気なら、もう消去法だ。妊婦にとって自分の心臓の次に大事な器官なんて一つしかない」

メイプル「ネメシス!」

ネメシス『ああ! ここまで説明されればもうわかる! ヤツのコア部は腹だ!』
120 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/26(日) 21:10:10.98 ID:/wjjR8Vj0
メイプル「目標がわかったのなら難易度は駄々下がりだよね! 大丈夫! やれる!」

メイプル「ガルドランダが私とカナデのことを攻撃する限りは!」

ギョロリンッ

ネメシス『うおおお!? 変なところに目玉が生えてきた! 気持ち悪ッ!』ガーンッ

メイプル「流石に盲目状態の敵を一方的に……ってわけには行かなかったね」

メイプル「関係ないけどね! さあ来い!」シャキィィィィンッ

クルッ

メイプル「ん?」

ドスンドスンドスンドスンッ……

メイプル「……あれ? 逃げた?」

ネメシス『……違う! 違う違う違う! 最悪だ! あやつ!』

護衛「ひ、ひいいいい! こっちに来るなーーーッ! ぎゃぶっ」グチョオアッ

護衛2「ま、待て! 隊列を乱すな、落ち着いて対処をげびゃっ」グシャアアッ

メイプル「ッ!」

ネメシス『目標を変えただけだ。商人のキャラバンを襲い始めたぞ! 私たちをほっぽって!』

メイプル「えっ? いやっ? ええっ!? なんで!? 何で急に!?」ワタワタ

カナデ「まさかアイツ……いや、そうとしか考えられない! 間違いない!」

カナデ「今の一回で《復讐するは我にあり》の効果を見抜いたんだ! だからメイプルに攻撃するのをやめたんだ!」

カナデ「メイプルは放っておけば大した脅威じゃないから!」

メイプル「い、いや! でも私にはまだ《レックレスダイバー》が……!」

カナデ「それも離れて射程の外に出れば届かない! そもそも今のキミに、射程に入るだけの機動力もない!」

メイプル「……!」

カナデ(詰みか……? これは、もう、どうしようも……!)
121 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/28(火) 18:38:58.56 ID:dfZ/blDO0
メイプル「まだ負けてないよ!」

カナデ「!」

メイプル「機動力が足りないなら補えばいい! ほら! カナデ! カモンカモン!」

カナデ「え? 何を?」

メイプル「爆発の呪文とか、風の呪文とか何でもいいから!」

メイプル「私をアイツのところまでふっ飛ばして!」

カナデ「はあ!? ちょっと、それはいくら何でも……!」

メイプル「……」

カナデ(目がマジだ……!)

メイプル「……!」フンスフンス

カナデ「……もう! どうなっても知らないからね!」ボオウッ

カナデ「《エクスプロージョン》!」ドガァァァァァンッ



ヒュルルルルルルルッ……



メイプル「……いい角度!」

ネメシス『だが微妙にズレているぞ!』

メイプル「全然構わないよ! 射程にさえ入っちゃえば空中で《レックレスダイバー》を使うだけ!」

メイプル「敵の元へ慣性を無視して吹っ飛んでくスキルだから、これで平気!」

ネメシス『射程まで三……二……一!』

メイプル「《レックレスダイバー》!」ギュンッ

バガァァァァンッ!

ガルドランダ「!?!?」ガクーーンッ

メイプル「……追いついた!」
122 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/04/30(木) 08:29:27.56 ID:/fVCXHKl0
カナデ「……やれるか!? 《レックレスダイバー》だけでガルドランダを倒すのは、それはそれで難しいのに!」

カナデ「というか、僕がガルドランダなら彼女のことなんか相手せずに――」

ヒュルルルルルルルル

メイプル「あああああああああああっ!?」グシャアアアアンッ

カナデ「投げ返すよね。遠くに。大丈夫?」

メイプル「……あ、あと一歩で死ぬところだった……でもまだ死んでないから大丈夫!」エッヘン

カナデ「……へこたれないね。どうしてそこまで頑張れるの?」

メイプル「諦める理由がないから!」

メイプル「できないかも、とか無理かも、とか! そういうのは負けた後で考えればいいんだよ!」

メイプル「だって私たち、まだ負けてないから!」

ネメシス『マスター……』ピコーンッピコーンッ

メイプル「よし! もう一回! カナデ! 回復した後でもう一回吹き飛ばして――」

ネメシス『あの。マスター。さっきから気合入っているところ水を差すようで悪いが』ピコーンッピコーンッ

メイプル「ん?」

ネメシス『さっきから謎の通知が来ておるぞ』ピコーンッピコーンッ

メイプル「え? 通知? あ、本当だ。なんか音するね?」

カナデ「?」
123 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/05/02(土) 23:23:50.19 ID:8/aqy5lH0
メイプル「……んん? ところどころ文字化けしててよく見えないな……何コレ」

メイプル「蓄積経験値がどうのこうの……」

ネメシス『私にもまったく意味がわからんのう。なんかカウントされているが……あ、ゼロ秒になった』

メイプル「気付くの遅かったみたいだねー」

ネメシス『そうだな』カッ

ネメシス『えっ』ガシャンガシャンガシャーーーンッ

メイプル「うわぁ! ネメシスが変形した!」ガビーンッ

ネメシス『お……おお? おお! これは!』

メイプル「ネメシス! 一体どうしちゃったの!? 大剣からハルバードみたいになっちゃってるけど!」

ネメシス『マスター! マスター! なんとたった今、第二形態になったようだぞ!』

メイプル「今!?」ガビーンッ

ネメシス『新たなスキル《覚悟はそり立つ旗のように(れソリューションアズフラッグ)》を手に入れたぞ!』

メイプル「え!? 凄い! それどんなスキル!?」ワクワク

ネメシス『ターゲット固定だな』

メイプル「え」

ネメシス『端的に言うと誰を攻撃している途中だろうが、私たちに一度でも攻撃したどれか一匹はマスターの方を向くという行動をやめられない』




ガルドランダ「!?」グリンッ




メイプル「あ。本当だ。私たちの方を向いたね」

ネメシス『誰に何度攻撃されようと私たちの方を向くことしかできない。と、いうことは、私たち以外のすべての存在に背を向けることになる』

ネメシス『つまり』

メイプル「つまり?」

ネメシス『私たちがウザいから優先的にこっちを殺そうと迫ってくるであろうなぁ?』

ガルドランダ「……!」ドスンドスンドスンッ

メイプル「うわああああああああああああ!? 戻ってきたーーー!?」ガビーンッ
124 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/05/04(月) 19:50:40.87 ID:uMqbZmOm0
カナデ「……!」

カナデ(ひょっとして……勝算がないというのは僕の勘違いだったかもしれない)

カナデ(メイプルの根性論には正直つきあってられないけど、理屈の上でも僕たちにはまだできることがある!)





イズ(あら。カナデちゃんも気付いたみたいね。ガルドランダが一度攻撃を受けただけでヴェンジェンスの効果を見抜いたわけじゃないってことに)

イズ(あれはただ単に警戒していただけ。後回しにしていつでも殺せるけど、経験値を稼いで強くなってから止めを刺す方が確実だもの)

イズ(そう。メイプルちゃんは粘り強過ぎた。防御が固すぎる旨くない相手なら、後回しにするのは常道。誰でもそうする。私だってそうする)

イズ(にも関わらずカナデちゃんが『見抜かれた』と勘違いしたのは……これも簡単な理由なのだけども)

イズ(カナデちゃん。みんながあなたみたいに頭が良いわけじゃないのよ。一度だけで見抜けるなんてマネ、あなたにしかできないの)

イズ(バカの考えがさっぱりわからないし理解できないのがあなたの弱点)




カナデ「相手がヴェンジェンスの効果をまだ見抜いてないとしたら……まだ勝算はある!」

メイプル「最初から負けてないってば」

カナデ「……」

カナデ(やっぱり見てて飽きないかな。つきあってられないというのはもちろん本心だけど)

カナデ(現実に、僕たちにはまだ戦える余地がある。あった!)

カナデ「最終ラウンドだ。全力で援護する」

メイプル「オッケー!」

ネメシス『反撃開始だ!』
125 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/05/08(金) 20:11:44.30 ID:iPgeJDi60
メイプル「来る……来るよ来るよ来るよ来るよ!」

ネメシス『任せろ! 私がマスターへの攻撃を完璧に凌いで……あっ』

メイプル「あっ?」

ネメシス『そうだ。フォームシフトしたことで武器のステータスも変わってたんだった』

メイプル「つまり何?」

ネメシス『防御への補正値が若干下がるぞ、この形態だと』

メイプル「そ、それ早めに言っ――!」

ガルドランダ「!」ブオンッ

メイプル「でねぶべがっ!?」グシャアアアアアッ

カナデ「《ファーストヒール》!」ポワァッ

ネメシス『その代わり盾で防がなくてもダメージカウンターは溜まっていくがな。頑張れ』

メイプル「がっ……頑張る」ビクンビクンッ

カナデ(さて……メイプルへはステータス変化系の魔法や回復魔法のストックも全力で傾けないとな)

カナデ(どの程度やれるものか……!)

メイプル「っと!」タタッ

ガルドランダ「!?」グリンッ

メイプル「カナデの方を向いてもらうと困るから、こっち向いて!」

カナデ「メイプルー。あんまり気にしないでいいよ。僕の方が移動するからさー」

メイプル「わかっっっばっ!?」ゴシャアアアッ

ガルドランダ「……」

カナデ(さて。どのくらいやれば気付くか……いや流石に気付いたかな?)

カナデ(タゲ集中状態と言えど万能じゃない。要はメイプルの位置をガルドランダ自身が移動させればいいんだから)

カナデ(メイプルがあの大きな手にホールドされたらその時点で完全アウトだ。なんとかそうしないように攻撃も多少は混ぜて……っと)バシュッ

ドガァァンッ

ガルドランダ「……!」

カナデ(やっぱり掴みにかかった……危なー……)フウッ
126 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/05/12(火) 20:58:15.54 ID:EyXWiMUk0
カナデ(メイプルはタゲ集中状態な上に状態異常だからバキバキにボコられる)

カナデ(一瞬でも回復力がダメージに追い越されたらアウトだ)

カナデ(……不思議だな。要素を並べればできないとしか思えないのに)

メイプル「……あと少し!」

カナデ(どうしてキミは自分を疑ってないんだい?)

ネメシス『マスター! あと二撃ほど食らえば推定即死ダメージに届くぞ!』

メイプル「わかった! あと二撃、ィィィィィッ!?」メギイイイイイッ

ネメシス『すまない、計算をミスった! 今ので届いたぞ! 生きてるか!?』

メイプル「……右腕がひしゃげちゃった……」ブランッ

ネメシス『右半身の間違いだ! だが立て! 早く!』

メイプル「わかった!」シュタッ

ネメシス『よし、マスター止めを……!』ピタッ

メイプル「?」

ネメシス『……クララ……じゃなくてマスターが立ったー!』ハイジィィィィ

メイプル「思いつきをすぐ口に出す癖やめない!?」ガビーンッ

メイプル「ま、まあいいや! 行くよ! 《レックレス》」



ゴオオオオオッ


メイプル「だああああああああああああっ!?」ボオオオッ

カナデ「あ! 忘れてた! ガルドランダは瘴気の他に火炎も出すんだ!」

メイプル「そ、それ先に言ってよおおおおおお!」ブスブス

ネメシス『状態異常に火傷が追加だ! マスター!』
127 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/05/17(日) 14:54:49.74 ID:jqm2cEPl0
カナデ「……あと一歩、か。ここまで来たら意地でも勝ちたいよね」

カナデ「メイプル! タイミングを合わせて! レックレスダイバーで相手に近付けばそれでカタが付くようにするから!」

メイプル「わかった!」

カナデ(タイミングは一瞬! 賭けてやる! 僕の全部を!)

カナデ「五! 四! 三! 二! 一!」

メイプル「ゼロ! 《レックレスダイバー》!」

カナデ「《炎槍》!」ゴオオウッ

ガルドランダ「!」


ボオオオオウッ


メイプル(よし! タイミングはバッチリ! ガルドランダの炎をカナデの炎がいい具合に相殺してる! これで終わり――!)

ガルドランダ「……」メラッ

メイプル(あ、あれ? なんか変だな。撃った後はちょっとくらい硬直が入るはず……?)

カナデ「!」

カナデ(やば……撃ち分けされてる。さっきは一度に二発一気に撃つタイプの火炎放射だったけど)

カナデ(今は二発を時間差で撃つタイプの火炎放射……!)

カナデ(これはもう耐えきれない! 死――!)


ドシュンッ


爆弾生物「GuSyaaaaaaaaaaa!!!」ヒュンッ

ドカァァァァァンッ

ガルドランダ「!?」ヨロッ

メイプル「――!」

カナデ「!」

カナデ(今のはイズの……!)

メイプル「うおおおおおああああああああああああああっ!」ギュンッ






メイプル「《復讐するは我にあり》!」カッ
128 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/05/25(月) 17:57:12.35 ID:EvVE0JF50
ガルドランダ「――」

バキィィィンッ

メイプル「……終わった?」

ネメシス『終わった……ようだな。今度は罠もないらしい』

メイプル「……はーあ……!」バタンッ



ピコンッ


メイプル「ああ……なんか通知来た。MVP……?」

ネメシス『おお! 一番活躍したのは私たちらしいぞ! 良かったな! UBM装備が貰えるぞ!』

メイプル「その前に死にそう」ビクンッ ビクンッ

ネメシス『しまった! マスターのステータスは相も変わらず最悪なままだった!』ガビーンッ

シュンッ

ネメシス「カナデ! カナデーーー! マスターを助けろーーー!」

カナデ「流石に全部を直すだけの備えは……」

イズ「あるわよ」ダバダバダバッ

メイプル「ごぼごぼ……」

ネメシス「おお、イズ!」

イズ「私お手製の粗悪版状態異常回復薬。安い代わりに治るのが遅いけど、まあ治ることには治るわ。戦闘以外では重宝するのよ」ダバダバ

メイプル「ごぼぼぼぼぼ……」

ネメシス「……いやかけすぎだ! 溺死寸前だぞ!」ガーンッ

カナデ「……」
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