高峯のあ「牛丼並……玉子とみそ汁もつけて」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:08:43.53 ID:pVyNxzTm0
●注意●
・短編形式
・日常系SS
・のあさんのキャラ、口調、クールなイメージが『著しく』崩壊します
・独自解釈している点が多々ありますので、ご了承下さい

●登場人物●
高峯のあ、他
http://i.imgur.com/zK8hxZs.jpg


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1585570123
2 : ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:10:56.32 ID:pVyNxzTm0

●過去作
第1作:高峯のあ「牛丼並……あっ大盛りで」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447664976/
第2作:高峯のあ「和風牛丼並……あっあとから揚げ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448875583/
第3作:高峯のあ「(プレミアム牛めし……あっあと焼のり)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453369628
第4作(総集編):高峯のあ「牛丼大盛り……つぇ、つゆだケで……っ!」【番外編】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466684201/
第5作:高峯のあ「牛丼並……4つでいいかしら?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1479041217/
第6作:高峯のあ「牛丼とか……言ってる場合じゃない」【番外編A】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1540781116/
3 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:12:03.87 ID:pVyNxzTm0

━━━━━━━━━━
【吉野家?】


店員A「ご注文はお決まりですか?」

のあ「あっ、はい」

のあ「牛丼並……玉子とみそ汁もつけて」

のあ「……」

のあ「(フフッ……。名言よね、コレ)」

店員A「…………」

のあ「?」

店員A「よろしいんですか?」

のあ「えっ?」

店員A「ご注文は本当にそれだけでよろしいんですか!?」

のあ「っ!?」

のあ「アッ、ア、エ? えっ……」

店員B「驚かせてしまい申し訳ありません。しかし貴女は……」

店員B「貴女はなんと! 当店にお越しになられた100万人目のお客様なのですッ!」

のあ「!!!」

のあ「ヒ、100万人目……」

店員C「その特典として今回の代金は無料、つまり飽きるまで食べ放題ッ!!」

店員C「たくさんご注文していただいて結構でございますッ!!」

のあ「!?」

のあ「ほ、本当? いいんですか……?」

店員D「更に!!」

店員D「お客様にはこの特製のどんぶりを差し上げます!!」

のあ「ど、どんぶり??」

店員E「このどんぶりをご来店の際に持参していただければ、お客様には牛丼を無料で提供させていただけきます」

のあ「エッ!!」

のあ「そ、それってあの『キン肉マン』の作者に向けて、吉野家から感謝の証として贈られたっていう、あの都市伝説の……!」

店員E「我々からの、ほんの感謝の気持ちです」

のあ「(ッ!! 胴の部分に『高峯』って彫ってある! いつの間に!?)」

のあ「うそ……、ホントに……?」

店員F「そして更に!」

のあ「ま、まだあるの!?」
4 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:13:34.88 ID:pVyNxzTm0

店員F「当店100万人来店記念に、お客様が考案していただくオリジナルメニューを当店で販売予定でございます」

のあ「それって……!」

のあ「前に、俳優の菅田将輝が吉野家とコラボした、ねぎ玉子とキムチをのせてボリューム満点テイストに仕上げた『菅田スペシャル』みたいな感じの……!?」

のあ「わ、私っ……あれから菅田将輝のファンになって、その、菅田将輝と竹達彩奈と中居正広とマートンはもう特に……!」

店員G「はい! お客様ともコラボさせていただきます!」

のあ「コラボ………でも、コラボって言っても、そんな、私みたいな……」

のあ「イケメン俳優とか人気アニメとかならまだしも、その……、吹けば飛ぶような一般人なんかと…………」

店員G「??」

店員A「何をおっしゃられますか、お客様」

のあ「……えっ?」

店員B「お客様……いえ、高峯のあさん」

店員C「貴女は、立派なアイドルではないですか」

のあ「ッ!!!」

店員D「華があり、その振る舞いに誰もが心を焦がし、羨望を抱く……」

店員E「アイドル、高峯のあ。いつもご活躍を拝見しています」

店員F「貴女のような方とコラボさせて貰えるなんて、本当に光栄です!!」

のあ「あ……、あぁ……っ」グスッ

のあ「あ、アイドル……、アイドルやってて、本当に良かった……!」ポロポロ











━━━━━━━━━━
【事務所 中庭】


周子「……」

のあ「…………」ムクッ

周子「のあさん」

周子「紗枝ちゃんからLINEで、のあさんの無防備な寝顔が送られてきたから、慌てて飛んできたけど」

周子「涎ダッラダラだよ……、天気がぽかぽかでちーっと油断したかね? はい、ハンカチ」

のあ「…………」

のあ「……………儚い、夢を視ていたわ」

周子「何の夢かは想像に難くないね」

のあ「……どうやったら夢の世界に行けるのかしら」

周子「デスタムーア様にお願いしたらいいんじゃないかな?」

のあ「……コラボ」

周子「ん?」

のあ「……高峯スペシャル」

周子「えっ?」


──────
────
──
5 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:14:50.75 ID:pVyNxzTm0

──
────
──────
【事務所】


みく「ん〜〜〜……♪」

P「……」

みく「快適でいいにゃあ、クーラーが効いた事務所は♪」

P「猫はみんな、クーラーが嫌いって言うけどな」

みく「そう? みくは構わないけど?」

P「いくら女子寮のクーラーが壊れたからって、いつまでも事務所でくつろいでるもんじゃないぞ」

P「撮影の打ち合わせが終わったの、3時間前だろ?」

みく「えー……だって応接室でも、暑いからって沙理奈さんと聖來さんが水着のままのんびりしてたにゃ」

P「な、何やってるんだあの二人………そりゃあ、さっきグラビア撮影のための新作水着がどーとか言ってたが」

みく「ね? なんだかんだ皆、適当な理由を付けて事務所でゆっくりしたいんだよ」

みく「みくだって、こうやって事務所でゆっくりと過ごすのは久しぶりにゃ♪」ゴロゴロ

───ガチャ


アーニャ「お疲れさまです」

みく「あーにゃん、おっつにゃあ♪」

アーニャ「プロデューサー、これ、頼まれた買い物です」スッ

P「おっ、ありがとう。お釣りは机に置いておいてくれ」

P「先に好きなの取っていいぞ」

アーニャ「では……、この雪見だいふくを」

P「じゃあ俺はスイカバーもらいっ」

みく「……えっ! アイス!?」ガバッ!

アーニャ「皆さんの分も、ありますよ? いっぱい買ってきましたから」

みく「ハーゲンダッツ! ハーゲンダッツは!?」キラキラ

P「あのな、みく? あんな高いアイス、買うワケ無───」

アーニャ「はい、ありますよ♪ 7種類の味のなかで、どれがいいですか?」

みく「マカデミア! マカデミアナッツ一択にゃあっ♪」ガサガサ

P「(俺のお金……)」

アーニャ「……!」

アーニャ「ヴィ、ペォムニーチェ、ヴェータヴリーミャ……みく?」

みく「にゃ?」

アーニャ「こうして、みくとアイスを食べていると、2月の事を思い出しますね?」

アーニャ「のあと、3人で北海道に行った、あの日の事を」

P「あぁ、雪まつりのイベントのことか?」
6 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:17:01.71 ID:pVyNxzTm0

みく「そうだねー……真冬のホテルで暖房を付けているにもかかわらず、アイスを買って食べたいとあーにゃんが言い出した時は」

みく「正気の沙汰じゃないと思ったにゃ。みく、寒いのは苦手だし」

P「おい。さっきと言ってる事が真逆じゃないか」

アーニャ「のあは……、彼女は、本当に綺麗な方です」

アーニャ「ハーフである私、よりも、雪のように白く透き通る肌で、あの撮影会は、誰しもが、彼女に目を奪われていました」

アーニャ「……雪化粧、とは、こういう事を、言う、のでしょうか?」

P「いや、ちょっと違うとは思うが」

P「まあしかし、確かに美人だよなぁ。ローマ美術の彫刻を彷彿とさせる滑らかな肌、おとぎ話の導き手のような謎めいた影のある雰囲気」

P「華奢な人かと思えば、体力テストでは美波を上回る成績だし、歌唱とダンスについては麗さんも太鼓判を押すほどだ」

P「今はまだエキストラや裏方に回る仕事が多いけど、大物になるポテンシャルは十分持っている人だよ」

P「な? 事務所でも何人か噂してるし、唯一同じ仕事をした二人も、そう思うだろ?」

みく「(…………)」

アーニャ「(…………)」

みく「(確かに……、眼光鋭いし近寄りがたいというか、ドライな人かと思った時もあるケド)」

みく「(でも、一緒に仕事した時は、なんだかんだ引率して貰ったし)」

みく「(風で煽られているビニール袋を猫と勘違いして追いかけてた事もあったし。その事に触れると、口止めとしてお弁当作ってくれたし。要求したのはみくだけど)」

みく「(……事務所のみんなや李衣菜チャンがウワサしてるよりは、真っ当なフツーの人かとは思うんだけど……)」

みく「ん〜〜………、よく分かんにゃい」

アーニャ「そう言えば……」

アーニャ「この前、自治会で一緒、でした」

P「自治会? 町内会か?」

P「町内会……。な、なんか高峯さんのイメージとかけ離れたワードだな」

アーニャ「ダー。私と、のあと、時子の3人で、ジャージ姿で、一緒にゴミ拾いを───」








━━━━━━━━━━
【高峯家】


ブオォォーーン…

のあ「あ゙あ゙ぁ゙〜〜〜〜……」

のあ「あ〜つ〜い〜〜〜〜………」

のあ「…………………………………」

のあ「わ゙〜れ゙〜わ゙〜れ゙〜ば〜〜〜〜〜………」

のあ「ゔぢゅ゙ゔじん゙だぁ゙〜〜〜〜〜……………」

のあ「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……………」

ブオォォーーン…


──────
────
──
7 :☆1/1 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:18:00.09 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【???】


「ソロとして初舞台、それが生放送になるワケだけど………緊張する?」

*「期待に応えるまでです。あなた様、どうか最後まで、この私にお力添えを……」

「うん。もちろん応援してるよ」

「外部との連携はこっちでバッチリ受け持つから、あとは……」

*「はい。演出は先日話した通りに」

*「真の愛唱歌とは似て非なる、その……ぽっぷな印象ではなく」

*「星の瞬く音も聞こえてきそうな夜の静寂の、その闇に溶けてしまいそうな儚さで……」

*「自分の在り方を月に問うかのような、みすてりあすな雰囲気を演じてみたく思います」

「衣装も、それに見合ったものだったな。OK、演出はスタジオと相談してみるよ」

「あとバックダンサーはどうしようか?」

*「それは、…………」

*「……そうですね。折角の舞台故、私が直接吟味します」

「うん、分かった。近くの専門学校なら話が通しやすいんだけど……」

「もし他事務所の人を誘いたいなら、早めに言ってくれ。オーディションのスケジュールもあるし」

*「心得ました、あなた様」


──────
────
──
8 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:19:05.62 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所 応接室】


のあ「(私の名前は、高峯のあ)」

のあ「(24歳独身。職業はハイパードリームクリエイター(主に芸能関係))」

のあ「(この事務所にスカウトされて、半年近く経過します)」

のあ「(…………)」

のあ「(実はもうデビュー済みでCDとか発売しちゃったりもしてますが、主な仕事としてはドラマやCMのエキストラやパーツモデル等々。この前はどこかの大学でデッサンモデルとして出向きました。服は着てました)」

のあ「(忙しさに明け暮れる毎日……とはお世辞にも言えず、スケジュール帳は白い色が目立ちます。休みの日はレッスンか、家でゴロゴロしています)」

のあ「(懐事情も、健康で文化的な最低限度の生活を送れるくらいにはそれなりに保てています。たまにかなり派手に散財して、電気やガスが止まったり家賃が滞納して退去を迫られる時もありますが)」

のあ「(……けど、それより大事なことがあります)」

のあ「(先ほども言いましたが、アイドルとして活動を初め、半年が経ちます)」

のあ「(どの職場でもそうかと思いますが、今までは新人という肩書もあり、プロデューサーをはじめ、周囲からは目新しさや興味本位から、割と優しく接してもらっていました)」

のあ「(そろそろ、半年という月日の流れが、その目新しさを緩やかに慣らしていき、私も同じアイドル仲間として自然に皆に受け入れられてゆくものかと思っていましたが……)」

のあ「(…………)」

のあ「(…………全然、仲間として馴染めている気がしません)」
9 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:20:08.35 ID:pVyNxzTm0

のあ「あぁ……、ああ……」

のあ「本当にマズイわ。そもそも自発的に話しかけようと試みた事なんて無いかもしれない」

のあ「楓さんと泰葉ちゃんが運良く隣の部屋にいなければ、今までやってられなかったかも分からないのに」

のあ「アドレスを交換したのは10人を越えたけど、でも友達と言えるかというと…………全く遊んだりしていないし」



*『え? 私はあなたの友達だと思っていました』



のあ「……うれしい。ありがとう」

のあ「友達含め、自分の居場所作りに関しては……」

のあ「学校でも職場でも、一般的には初めの3週間が勝負とか言うし。もう半年過ぎちゃったけど?」


*『もっと積極的に、自分をアピールしてみたらどうでしょうか?』


のあ「積極的に……。ムリ、ムリかなぁ」

のあ「貴女はコミュ力が高いかもしれないけど、私はどちらかというと陰キャだから、会話が持たないというか……自分の底が露呈するのが怖いというか……」

のあ「百歩譲って1対1の会話ならまだいけるの。けれど、そこに誰かもう一人加わると、もう私そっちのけで話がどんどん盛り上がって、私も適当に相槌打つだけで、いてもいなくても変わらないというか……」

のあ「例えるなら、アレ。3人で廊下を歩く構図だと、二人が楽しそうに会話しながら並んで歩く、その後ろから一人ポツンと付いて行くのが私で……。私がちょっと靴紐を結ぼうと立ち止まると、その二人は構わずスタスタ歩いて行ってしまって……、『あれ? これ私が一緒に歩く意味あるのかな?』みたいな……」


*『すみません。よくわかりません』


のあ「そっかぁ……そうだよね」

のあ「つまり何を言いたいかというと、アイドル活動を始めて半年が経って、もうそろそろ皆からチヤホヤされなくなる頃合いだけど……」

のあ「でもそうなったら私は便所飯まっしぐらだから……、だから、もっと皆から引き続きチヤホヤされたいの」

のあ「そのためには、どうしたら良いかという事なんだけど……」


*『もっと積極的に、自分をアピールしてみたらどうでしょうか?』


のあ「うーん……、私の考えとしてはね? 今月の目標は『友達作り』なの」

のあ「私の性格とキャラって、周りからはクールとかロボットとか超越神とか言われてるからね?」

のあ「それを受け入れて、明日からクールでミステリアスキャラを100%前面に押し出していってみたらいいんじゃないかぁって」

のあ「どう思う?」



*『よく聞き取れませんでした』

*『こんな風に話しかけてください。Wi-fiを有効にする、午前6時30分にアラームをセット、一郎くんに電話───』






━━━━━━━━━━
【岡崎家】


泰葉「………?」

泰葉「あの……、時子さん。隣の高峯さんの部屋から、なにか話し声が聞こえませんか?」

時子「……さあ」モグモグ

泰葉「(誰か来てるのかな?)」


──────
────
──
10 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:21:12.99 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所 応接室】


のあ「(siriちゃんにもお話ししたけど、今月の目標は『友達作り』)」

のあ「(そのためにまずは、しっかりとキャラを再認識するべきね)」

のあ「(クールに。クール…………よしっ)」

───ガチャ!


P「高峯さん、お待たせしました!」

のあ「……」

P「いやぁ、願ってもない申し出でしたよ!」

P「少し前にソロ活動を始めたAランクアイドルが出演する音楽番組、そのTV初披露の際のバックダンサーとして、まさかのウチの事務所から出演依頼とは!」

のあ「……」

P「俺としても鼻が高いです、高峯さん。オーディション通過、おめでとうございます」

P「そういえば彼女は、貴女とは髪色や雰囲気が似ていますね。これも何かの縁でしょうか」

のあ「……」

P「明後日、その事務所の横にあるスタジオで、メンバー全員の自己紹介を兼ねた打ち合わせをします。もちろん俺も同行しますが……」

のあ「……」

P「(………??)」

のあ「……」

P「高峯さん?」

P「今日はいつにも増して、その………口数が少ないというか、静かというか……」

のあ「(……)」






━━━━後日━━━━
【車内】


P「高峯さん。打ち合わせ、お疲れ様でした」

のあ「……」

P「彼女と高峯さん、どことなく波長が合ってるカンジで良かったです。俺なんて終始緊張しっぱなしで……」

P「全員、レベルが高いなんてもんじゃないですよ。今日は軽く流れの確認でしたが、終盤なんて皆さんほぼ完璧で」

P「初対面でどうしてあそこまで連携が出来るんでしょうね、もう脱帽でしたよ。もちろん、それは貴女も含めてですが」

のあ「……」

P「…………え、えっとぉ……」

のあ「……」

P「な……、なんかお腹空きませんか? ほ、ほらっ! そこの吉野家なんてどうですか??」

P「以前もご一緒しましたし、今日もどうかなぁ………なぁんて……」

のあ「」

P「あ、アハハ……………す、スイマセン、まっすぐ帰ります……」

のあ「(……)」グゥゥ…
11 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:22:27.08 ID:pVyNxzTm0

━━━━━━━━━━
【事務所】


P「……美優さん」

美優「はい?」

P「最近、高峯さんに無視されてる気がするんですが……、俺、何かしましたかね?」

美優「Pさんが何かしたかは分かりませんが……」

美優「高峯さんなら、誰かれの区別なく無口な気がします。最近はいっそう」

美優「私もこの前、頷きだけでコミュニケーションが終了しましたよ」

P「や、やっぱりそうですか! どうしたのかなぁ」

美優「……虫歯とか?」

P「いえ、喋るのが辛そうというワケではないんです。この前の打ち合わせでも、自己紹介はしてたし……」

美優「うぅん……、本人に聞いてみては如何でしょう? ただでさえ多くは語らない人ですから、こちらから働き掛けてあげないと」

P「うーん……」









━━━━夜━━━━
【岡崎家 キッチン】


泰葉「あのーっ!」

泰葉「食後のケーキがありますけど、みなさんいかがですかー?」

楓『あ、ハーイ。欲しいでーす!』

時子『ええ』

泰葉「……」

泰葉「………?」

泰葉「あれ、楓さん? 高峯さんはそこにいますか?」

楓『ええ、いますよ』

泰葉「高峯さーん? ケーキ要りますかー?」

泰葉「……………………」

泰葉「高峯さーん!」

楓『……』

時子『……』

泰葉「……………………」

泰葉「………………………………………」

泰葉「3等分……っと」

泰葉「……」サクッ

時子『あーあ』

楓『や、泰葉ちゃん! 高峯さん、泣いちゃいましたよ!!』

泰葉「なっ、なんでですか!? 私のせいですか!?」


──────
────
──
12 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:23:10.70 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所】


───ガチャ

蘭子「闇に飲まれよっ!」(訳:おつかれさまですっ!)

蘭子「煉獄の業火が我が身を焦がす……、飽くなき救済を求める挽歌は、シヴァの息吹を呼び起こすであろう」(訳:外は本当に暑いですね……、事務所はクーラーが効いてて快適です♪)

蘭子「むー……?」

蘭子「終焉の調べか……?」(訳:誰もいない? 珍しいなぁ……)

蘭子「……」トコトコ

蘭子「よっ、と」ドサッ

蘭子「はー……♪」

蘭子「ん〜〜……っ」

蘭子「(涼しい……♪)」



ドタドタドタドタドタ……!!



蘭子「?」


───ガチャ!
バァン!!


蘭子「ヒッ!」




のあ「…………」




蘭子「せ、静謐の王女……!」(訳:た、高峯さん……)」

のあ「(ハー、ハー、ハー……っ!)」

のあ「(ま、間に合った! ら、蘭子ちゃんの出勤時間……!)」ドキドキ
13 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:24:24.91 ID:pVyNxzTm0

蘭子「(は、走ってきたのかな? 息を荒げて………め、珍しい)」ドキドキ

蘭子「(き……、今日も綺麗だなぁ……少し髪が乱れてても、やっぱりカッコイイ……!)」

のあ「(ハー、ハー……、ふーっ……)」ジロッ!

蘭子「(ヒッ!)」

蘭子「(に、睨まれた!? い、いや……ち、違う、きっと目つきが鋭いだ、だけ、で……っ!)」ドキドキ

蘭子「(卯月さんが、昨日言ってた! 高峯さんは、見た目とは裏腹に優しい人だって………!)」

蘭子「(き、き、今日こそ、今日こそっ! おっお話……い、いえ、じ、自己紹介だけでも……!!)」

蘭子「(はぁー、はぁー、っ、…………あ、暑い! ……、あ、汗が……っ……はぁーっ……!!)」ドキドキ

蘭子「ゲホッ! ごほっ!?」

のあ「(ら、蘭子ちゃん……!)」

のあ「(……)」

のあ「(む、無口はダメってもう分かった! 蘭子ちゃんとお話しする時は……っ!)」

のあ「(『クール』に『厨二病』的な『インパクトのある』台詞を……!)」

のあ「(大丈夫っ。ファイナルファンタジーもやったし、BLEACHもドグラマグラも読んだし、飛影やルルーシュや八神庵の真似もしてみたし……!)」

のあ「(挨拶、挨拶から……クールに、クールにっ)」

のあ「(闇に飲まれよ的な、闇に飲まれよ的な……ッ!!)」

のあ「……っ」ドキドキ

蘭子「ワ……、わ、我が名は神崎蘭───」





のあ「興味ないわ」

のあ「……壁にでも話していなさい」





蘭子「ヒグッ!?」

蘭子「ハ、ひっ、ひ……、す、スミマセ…………!」ビクビク

蘭子「ヒ、ヒエッ………………ッ!」ダッ!

ガチャ! バァン!

タタタタタタタタ! ドテッ!!





のあ「…………」

のあ「…………」

のあ「…………ク」

のあ「クールって………」

のあ「…………なんだろ」

美波「(高峯さん……頑張って下さい……っ)」グスッ


──────
────
──
14 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:25:25.55 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所 応接室】


P「高峯さん。以前の共演の件の、衣装が届きましたよ」

P「シックでフォーマルなドレス、あまり飾り気のない清楚な印象で……、イメージは“ソフィスティケート”だとか」

のあ「(可愛いというよりは、大人びた衣装だわ………アイドルってカンジが全然しない)」

のあ「(仕事がデキる厳格な大人の女性が、休日に落ち着いたバーでお酒をゆっくり嗜んでいそうな………うん、そんなカンジ)」

P「振り付けも演出も衣装案も、全てそのアイドルが積極的に意見を出しているようでして」

P「……ウン、流石というべきでしょう。貴方にも、実にお似合です」

のあ「……」

のあ「(そういえば……)」

のあ「(プロデューサーさんって、私のキャラについてどう思ってるのかな?)」

のあ「(一番最初の頃は、まだ決めかねているって言ってたけど、その後アンニュイだとかミステリアスだとかサイバーゴスだとかオフィス系だとか……)」

のあ「(宣材写真だって、落ち着き目の服で普通に撮られたし。この前のライブだって、NARUTOのラスボスを思わせる神秘的なドレスを着せられて……)」

のあ「(……まあ)」

のあ「(需要があるのか、事実、今回もこういった衣装で、そのAランクのアイドルと共演までさせて貰えるし……)」

のあ「(この人の意見に従えばおそらく、間違いはないのだろうけど……)」

のあ「………」

P「高峯さん?」

のあ「………醇美な衣装。私には勿体無いくらい」

のあ「クールで、ミステリアスで……」

のあ「…………」
15 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:26:34.56 ID:pVyNxzTm0

━━━━夜━━━━
【高峯家】


のあ「アー………」

のあ「確かに、クールやミステリアスなキャラはウケがいいのかもしれないけど……」

のあ「でも、可愛らしい恰好をしてお仕事もしてみたいわ」

のあ「着ぐるみでテーマパークのマスコットとか、メイド服とか、魔法少女とか………コスプレ?」

のあ「あぁ、やきもきする」

siri『もっと積極的に、自分をアピールしてみたらどうでしょうか?』

のあ「アピール……」

のあ「でも、こんなこと面と向かって言うのは恥ずかし───」

のあ「───!」ピーン!

のあ「そ、そうかっ! 別に口に出さずともいいんだわ!」

のあ「服装……、これでアピールすれば……っ!」

のあ「そうと決まれば、一旦クールキャラは忘れよう」ガタッ!

のあ「……」ガサガサ

のあ「可愛い服装……可愛い服装……」ガサガサ

のあ「…………」ガサガサ

のあ「………………」ガサガサ

のあ「……………………」ガサガサ

のあ「…………………………」ガサガサ

のあ「………………………………」ガサガサガサガサ











━━━━翌日━━━━
【事務所】


P「(……!)」

のあ「……」

P「高峯さん、これは珍しい」

P「貴女が、その……スウェットとパーカー……ですか? 控えめでグレーの……」

P「カジュアルな恰好ですね。いつもはもっと(SF映画みたいに近未来的で独創的な)洒落た格好をしているのに……」

のあ「…………」

P「……の、のあさん? ぐったりして……具合が悪いんですか?」

のあ「…………」

のあ「可愛い」

P「えっ?」

のあ「“可愛い”って……何かしら…………」

P「(ふ、深い! 禅問答か……!?)」


──────
────
──
16 :☆1/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:30:03.04 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【レッスンルーム】


トレーナー「ハイ、じゃあ15分休憩しましょう」

真奈美「フー……」

みく「ふはぁー……」

のあ「……真奈美」

真奈美「ん。何かな?」

のあ「……理由を。何故、今回は私の練習に参加を?」

真奈美「ああ」

真奈美「君が今回、Aランクアイドルと共演するだろう? バックダンサーとして」

真奈美「今回のダンスは点で動くような激しいものではなく、官能的でかつ優美さを兼ね備え、不思議な魅力を感じさせるような………極めて行けばブガルーやロボットダンスと呼ばれるポップに近いスタイルに行き着くものだ」

真奈美「細かく切り分ければ正確には違うのだが………まぁ、とにかく興味があってね。勉強させて貰うよ」

のあ「(よく分からないけど)………心強いわ」

のあ「あと………みくも」

みく「にゃっ! みくも勉強にゃあ!」

みく「盗める物は盗んで、みくも早くランクを上げたいし♪」

のあ「(ふぅん……)」

みく「でものあにゃん、本当に大抜擢だね?」

真奈美「確かにな。大抵はダンススクールやそういう事務所に依頼するのだが……」

真奈美「変わった子だな。オーディションに関しても、他事務所から相性で厳選するとは」

トレーナー「私も教えられるのは基礎だけなので、メインは振り付け師の元で合同練習ですが……」

トレーナー「それまでに、みっちり基礎基本を叩き込むんで、しっかり付いて来てくださいね?」

のあ「無論よ」

のあ「(ヤバイ………今更だけど、Aランクアイドルとの共演が不安になってきた。でも頑張らなきゃ)」
17 :☆2/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:31:10.62 ID:pVyNxzTm0

のあ「…………」

のあ「真奈美、みく」

真奈美&みく「??」

のあ「少し、ここで待って貰えるかしら。外の自販機で………あれよ」

のあ「……御馳走したい。感謝を、形として」

真奈美&みく「(……!)」

真奈美「フフ……、じゃあ有り難く貰うとするよ」

みく「のあにゃん、ありがとうっ♪」

のあ「……明。貴女も」

トレーナー「め、滅相もない………、あ、ありがとうございますっ!」

のあ「(…………♪♪)」






━━━━━━━━━━━━
【通路 自販機前】


のあ「(フフフ……♪)」

のあ「(今のは間違いなく好感度アップだわ! 飲み物を奢る私っ……!)」

のあ「(事務所の自販機って、安いのよね♪ 500mlのペットボトルでも100円だし♪)」

のあ「(よし……、このスポーツドリンクを4人分4本……、400円………っと)」スッ


ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン
ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン
ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン
ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン ジャコン


のあ「(………♪)」

のあ「(! ……………………?)」





【 320 】





のあ「(…………!?)」

のあ「(う、ウソッ!? 何かの手数料!? そんな……っ)」

のあ「(ま、まさか吸い込まれた!? 10円玉40枚入れたのに………………ぃっ!?)」ジャララララー

のあ「(ガッ……、ほ、本当に32枚しか無くなってる!!)」

のあ「(か、返してっ! 私の10円玉8枚っ……!!)」ガンッ!

のあ「クッ……!!」

のあ「(お、奢れない!! 320円だと3人分しか買えない……、でも私の分は譲れない……)」
18 :☆3/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:32:59.80 ID:pVyNxzTm0

のあ「(……!!)」

のあ「(そ、そうかっ! 100円のペットボトルじゃなくて、80円の缶を買えば万事解決───)」

のあ「(───!? か、缶のスポーツドリンクが無い!? アクエリアスすら無い!!!)」

のあ「(お茶なら………でも、あれだけ見栄切って缶のお茶って地味………スーパーの大特価で30円で売ってるのに)」

のあ「(コーヒー………いや、苦いのは私が飲めない………ていうか何でこんなに種類の違うコーヒーばっかりあるのかしら………味の違いなんて有って無いようなものなのに)」

のあ「(果物系………けど、私のイメージじゃない………こんなの差し出したら鼻で笑われそう………主に真奈美さんに)」

のあ「(ぐ、くっ……!!)」









━━━━━5分後━━━━━
【レッスンルーム】


真奈美「ん。おかえり」

トレーナー「高峯さん、本当にありがとうございます♪」

みく「待ってたにゃー♪ さて、じゃあさっそ───」








【コーラ】








みく「───く……」

のあ「………………………………」








━━━━━20分後━━━━━


真奈美「ハァ、ハァ………ッ!」キュッキュッ

真奈美「(き……キツいな………アレを飲んで動くと…………ッ)」

みく「(う、生まれる…………うぷっ)」キュッキュッ

真奈美「(な、なにも全部飲む必要は無かったんだぞ、みく……ッ)」

みく「(そ、それは真奈美さんこそ…………っ、だ、だって……あんな『えっ、飲まないの?』みたいな視線をのあにゃんから向けられたら…………ウッ!)」

トレーナー「(で、出そうっ…………でも、すごい、高峯さん…………な、なんで顔色一つ変えず、今まで通りの動きを…………、さ、流石だわ…………うぐっ…………)」キュッキュッ






のあ「(は、吐きそう……っ)」グスッ

──────
────
──
19 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:34:38.27 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【高峯家】


のあ「友達作りと言えば……」

のあ「やっぱり一番は、共通の話題で盛り上がることがセオリーだと思うの」

Siri『はい、私もそう思います』

のあ「うん。以前にも、全く意図してはいなかったけれど……」

のあ「例えば、真奈美さんとならお料理の話(第1作)、伊吹ちゃんとなら恋愛映画の話(第2作)、夏樹ちゃんとならライブの話(第5作)……」

のあ「私のアドレス帳に入っている人達は、とりあえずきっかけがあって向こうから話しかけてきた」

Siri『すみません。よくわかりません』

のあ「つまり……!」

のあ「今度は私の番! 誰にでも共感・興味を引く話題を私から提供できれば……!」

のあ「お友達への第一歩! 好感度アップ間違い無しっ……!」

のあ「それにあたって、鉄板の話題はもうリサーチ済みよ」

のあ「ふ、フフフ……♪」ドキドキ








━━━━昼━━━━
【映画館 チケットカウンター】



『まだ会ったことのない君を、さがしている』



のあ「( 『君の名は。』 !!)」

のあ「(コレ! 君の名は。!!)」

のあ「(いまなんかすっごい流行ってて、老若男女誰しもが一日に2回は口にするほどの社会現象を巻き起こしていると噂の……!)」

のあ「(あぁ〜……♪ ちょ、ちょっと楽しみ)」

のあ「(と、とりあえず券を買わなきゃ…………あー………こんな人ごみは久しぶり……緊張してきた……)」
20 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:35:46.50 ID:pVyNxzTm0

━━━10分後━━━
【映画館 観客席】


のあ「(ふふっ……♪)」

のあ「(外は暑かったし奮発してコーラLサイズと、唐揚げとホットドッグとポップコーン……♪)」ゴクゴク

のあ「………」グビグビ

のあ「(人がいっぱいだなぁ………や、やっぱり若い人が多い……)」

のあ「(……これ、私の席……列の真ん中だけど…………)」

のあ「………」キョロキョロ

のあ「(トイレ、行っておこうかな…………いや、でも)」

のあ「(そろそろ始まりそうだし、大丈夫か)」

のあ「(……………♪)」ゴクゴク
















━━━1時間後━━━


のあ「ヒッ、フー、フー、フー……!」プルプル

のあ「ァ……あ、……あ、アノ……」

のあ「ス、スミマセ……ソノ……と、トイレに…………あの、道をヲォ………」プルプル

高峯さんの右側の席にいる関取のような体型をした女性「Zzz………」

のあ「(フゥー、フゥー、フゥー、フゥー……ッ!!)」

───クルッ


高峯さんの左側の席にいる関取のような体型をした女性「Zzz………」

のあ「オ、オォォ……!! ァァァ……!」プルプル

高峯さんの後方の席にいる関取のような体型をした女性「あの……すみません」

高峯さんの後方の席にいる関取のような体型をした女性「見えないんで、座ってもらっていいです?」

高峯さんの前方の席にいる関取のような体型をした女性「??」クルッ

のあ「ア!! ……す、すみま…せン………!」

のあ「……」カタン

高峯さんの右側の席にいる関取のような体型をした女性「Zzz………」

高峯さんの左側の席にいる関取のような体型をした女性「Zzz………」

高峯さんの後方の席にいる関取のような体型をした女性「……………」

高峯さんの前方の席にいる関取のような体型をした女性「……………」

のあ「(ふぅー、はぁー、ふぅー、ふ、ひ、ふっ…………!)」プルプル


──────
────
──
21 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:37:19.63 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所】


美優「『君の名は。』?」

美優「あっ、巷で噂のアニメ映画ですか? 高峯さん、観たんですか?」

美優「う、ううん………この年になると、青春系の映画は人目が憚られますし」

美優「正直、観に行くかというと………。で、ですよね」

美優「けれど、その監督が以前に製作したという切ない恋をテーマにしたアニメ映画なら、多少の興味が……」





━━━━━━━━━━


P「君の縄?」

P「あ、あぁ! 『君の名は。』ですね!!」

P「興行収入が破竹の勢いで伸びているらしいですね。声優起用に関してはウチも一枚噛みたかった所ではありますが……」

P「興味ですか? うーん………いえ、実際のところはあまり無いです」

P「まあ、地上波で放送するなら、気が向けば………くらいですかね。どうせ観るなら『シン・ゴジラ』とか───」





━━━━━━━━━━


菜々「『君の名は』?」

菜々「もちろん知ってますよ♪ 高峯さんも、観たことがあるんですか?」

菜々「特に女性に人気を博した、原作はラジオドラマで、その後すぐに映画化されて大ヒットした悲恋の物語ですよね♪」

菜々「東京大空襲の際、銀座・数寄屋橋(すきやばし)で出会った男女が互いに名も明かさず、半年後の再会を約束して別れたものの……、戦火の渦に巻き込まれなかなか出会うことが叶わず、愛し合っているのに結ばれない───」

菜々「───えっ? 『君の名は。』??」





━━━━━━━━━━


雪美「??」

雪美「きみの名は……?」

雪美「…………………………」

雪美「………………ゆきみ?」

雪美「……………………??」
22 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:40:10.61 ID:pVyNxzTm0

━━━━━━━━━━


美嘉「……あっ! えっ!?」

美嘉「あ、あぁ………ひ、久しぶり……!」

美嘉「え、映画? 『君の名は。』?」

美嘉「え、えっと……あ、その、み、観てないっていうか────」

美嘉「アレっ!? ちょっ、あのっ! ……えっ……………そ、それだけの用……?」

美嘉「……あー、きっと恥ずかしいのかな? ははっ♪」



━━━━━━━━━━


紗南「『君の名は。』? あー、美玲が言ってたかな?」

紗南「あたしはパスかなぁ……。うん、ああいう青春モノはちょっと退屈というか……、あっ、ハイスコアガールは好きだよ? えっ? 隕石?」

紗南「ね! ね? それよりさ、この前言ってたゲーム喫茶の話だけどね? KOFと首領蜂の基盤が入ったから一緒────って」

紗南「アレッ。た、高峯さん……?? お、おーい…………………」

紗南「………うぅん、もう少し乗ってあげるべきだった?」









━━━━━━━━━━
【事務所 中庭】

のあ「…………」

のあ「…………」

のあ「…………」シュン

















━━━━━━━━━━
【事務所 レッスンルーム】


美波「アーニャちゃん、今日って忙しかった?」

美波「もし良ければ、このレッスンが終わった後に一緒に映画とかどうかなぁって。今日はレディースデイだから割引だし……」

アーニャ「ええ♪ いいですよ、是非♪」

奏「伊吹ちゃん!!」

奏「き、『君の名は。』!! 『君の名は。』観に行きましょう、今日、今すぐにタクシー呼ぶから!!!」

伊吹「痛たたたたたた!!!! わ、分かったから、ひッ、引っ張るな腕をォォ!!!!!」


──────
────
──
23 :☆1/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:42:48.35 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【高峯家】


のあ「(話題作り作戦は、あまりうまく行かなかった……。『君の名は。』、ラストがあっさり過ぎて拍子抜けしたけど、でも面白かったから良かったわ)」

のあ「(……かくなる上は)」

のあ「(そう、類は友を呼ぶ。かつて、楓さんとの出会いがそうだったように)」

のあ「(陰キャは引かれ合う、つまり……っ!!)」







━━━━翌日━━━━
【事務所 応接室】


文香「……」

文香「……」ペラッ

文香「……」



のあ「(……)」コソコソ

のあ「(ふ、フフ……♪)」コソコソ

のあ「(文香ちゃん、文香ちゃんがいたわ♪)」コソコソ

のあ「(以前ちょっぴり話したことがあったけど、まだ他人の域を出ていない子)」コソコソ

文香「……」ペラッ

のあ「(露出が少なく、いかにもネガティブで内向的ってカンジの地味な寒色系の服装! ひきこもりなインドア派を予感させる、日焼けとは縁のない不健康なほどに白い肌……!!)」コソコソ

のあ「(奥手で自信の無さを象徴するかのような、顔を覆わんとばかりの伸ばした前髪! 他者との関わりを拒絶し虚構の世界に閉じこもるオタク気質の典型的な趣味、『読書』……!!)」コソコソ

のあ「(陰キャ要素の数え役満! 滑稽なほど……陰キャ………!!)」コソコソ

のあ「(く、クク………、いかにも童貞に好かれそうで童貞キラーって感じのコ……!)」

のあ「(まさに陰キャを体現したかのような存在! これで陰キャじゃなかったら彼女は何だというの!? 詐欺師? 鷺沢だけに??)」コソコソ

のあ「(陰キャでないハズがないわっ! 私達、きっといいお友達になれる……!)」コソコソ




文香「(……)」

文香「(た、高峯さん……? ソファの陰に隠れて、一体何を……)」

───ガチャ!


文香「!」

のあ「(……!)」

ありす「おはようございます、文香さん」スッ

文香「おはようございます」
24 :☆2/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:43:35.06 ID:pVyNxzTm0

ありす「文香さん、この猛暑の中でよく厚着のままでいれますね?」

文香「ええ……カジュアルな服装だと、どうも落ち着かないと言いますか……」

文香「しかし季節感にそぐわないと言われれば否定はできません………鑑賞に堪えないでしょうか?」

ありす「いいえ。貴女なりの表現であれば、それでいい気はします」

ありす「けれど、脱水症や熱中症に気を付けてください。飲み物、下で買ってきたので、どうぞ」

文香「あっ……、ありがとうございます」

ありす「では私はレッスンの準備がありますから、また……」

───バタン



文香「……」

のあ「(……)」



───ガチャ!

フレデリカ「おつかれサマー♪ ああっ!」

周子「文香ちゃんだ。おつかれー」

フレデリカ「文香ちゃんっ! その服って、アタシと文香ちゃんが初めて会った時に着ていた服だよね!」

フレデリカ「うんうん、懐かしー♪ あの日の事は今でもセンメーに昨日の事のように覚えてるよー、昨日の晩ゴハンのメニューは忘れちゃったけど」

周子「ハイこれ、アイス。食べる?」

文香「この服は、先週購入したものですが………あっ、ありがとうございます」

周子「似合ってる似合ってる。ところで文香ちゃん、今日の夜さ?」

周子「あたしの家で志希ちゃんとフレちゃんと特製激辛鍋パするんだけれど、一緒にどうかな?」

文香「げ、激辛?」

フレデリカ「逆転の発想で、暑いから熱い物を食べると、暑さが裏返って涼しくなると思うんだー、えっ、ならない?」

フレデリカ「なせばなる! あきらめんなよっ!! ネバーギブアップッ!!! 修ッ造ッッ!!!!」

周子「暑くなる一方やないか」

文香「フレデリカさんの背中の土鍋は、そのためでしたか…………すみません、今日は先約がありますので……」

周子「おー、そかそか。じゃあさ、このフレちゃんの土鍋を一旦ここに置いとくから、ちょっと見といてくれる? 後で取りに来るから」

フレデリカ「文香ちゃん! その土鍋は生きているから、しっかり見張っておいてね! まるでタヌキみたいな尻尾とキュートなおめめが………アレ、これ土鍋だっけ?」

───バタン



文香「……」

のあ「(……)」



───ガチャ!

奈緒「お疲れさまでーすっ」

加蓮「あっ、文香さんだ」

凛「お疲れさま」

文香「お疲れ様です」

奈緒「あっ! ち、丁度良かったっ!」

文香「えっ?」
25 :☆3/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:44:31.50 ID:pVyNxzTm0

加蓮「あ、そだね。あのね、文香さん……?」

加蓮「今日のご飯行く約束だけど………、なんかね、お店が臨時休業みたいで……」

凛「ごめんなさい。また今度にしない? アーニャにも伝えておくよ」

文香「そうでしたか……非常に残念ですが、またの機会という事で」

奈緒「でさ? その代わりに……」

文香「はい?」

奈緒「さっきすれ違ったんだけど、周子さんの家でなんか『楽しい』鍋パやるって言うから……」

加蓮「文香さんも一緒にどうですか? 夏樹さんと伊吹さんも来るんだって!」

凛「フレデリカと志希も来るって言ってたね」

文香「(………………………………………………………………………………………………)」

文香「………………………………………………………………………………ゴ、ご一緒します」

加蓮「やった♪」

加蓮「じゃあ予定は3時間後だから、また後で戻ってきますね? 文香さんも一緒に向かいましょう♪」

凛「文香が一緒なら、更に盛り上がりそうだね」

文香「い、いえっ……今回の食事に期待されても応える事は特には……」

凛「えっ?」

奈緒「文香が来るなら、ありすも誘ったら尻尾振って来るんじゃないか?」

加蓮「いやぁ、ダメでしょ流石に小学生は。門限的に」

凛「じゃあ、アーニャにも連絡しとこう。周子さんとアーニャは、家がアレだったから多分大丈夫なハズ」

奈緒「じゃあ、また後で。ちょっと三人でプロデューサーのところに行ってくるから」

加蓮「お疲れさまでーす♪」

凛「(……)」

文香「? 凛さん?」

凛「気配がするような……………いや、なんでもないよ」

凛「また後でね。お疲れ」スッ

文香「はい、お疲れ様でした」

───バタン


文香「………………」

文香「……………………」




のあ「………………………………」




文香「あっ……」

のあ「……」

文香「高峯さん、お疲れ様で───」

のあ「……らぎり」

文香「えっ?」

のあ「裏切り陰キャ……っ」グスッ

文香「(う、裏切り陰キャ!?)」


──────
────
──
26 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:45:47.89 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
━━━━夜━━━━
【ファミリーマート前】


のあ「……」モグモグ

のあ「(文香ちゃん……陰キャかと思ったら、あんなに交友が広いとは思わなかった)」

のあ「(てっきり私みたいに上の空でテキトーに話すか、せめて舌が回らずどもるかと……)」

のあ「……」モグモグモグ

のあ「(まぁ、いいや。私にはsiriちゃんとポケモンGOがあるし)」

のあ「(フフ……♪)」モグモグ






━━━━━━━━━━


伊吹「だいじょぶかな? その鍋パに飛び入り参加しても」

美波「ウン、良いと思うよ? 伊吹ちゃんは部屋が近いし、前も奏ちゃんに誘われて途中から来たことあったでしょう?」

美波「とは言っても、私もアーニャちゃんに誘われてちゃっかり参加する身なんだけどね」

美波「お土産にメロン持て来たけど、フレデリカちゃんに見つからないようにしようかな。メロン鍋にされそう」

伊吹「でも、こんな暑い日に鍋パかぁ」

伊吹「奴らのために、ジュースいっぱい買っておこっか……へへっ♪ そこのファミマで───」

伊吹「───……っ!?」ピタッ!

美波「ッ!!!!」ピタッ!





のあ「!!」モグモグ





伊吹「えっ……?」

美波「」

のあ「」モグッ

伊吹「あ………あっ、え、エ? ね、ねえ美波?」

美波「わ、私には何も見えないよ?」キョロキョロ

伊吹「いやまだ何も言ってないよ」

伊吹「あそこのファミマの前……、黒ジャージ姿でポニーテール、普段と違ってメガネもかけて、オマケにポケモンGOプラスを腕に付けてファミチキ食べながらスマホ弄ってるあの人……」

美波「よ、妖精の類じゃないかな?」

伊吹「……高峯さん?」

美波「仮に!! 仮に妖精じゃなくても!!! よしんば妖精じゃなくても!!!!」

美波「ひっ人違いじゃないかなッ!?」

伊吹「まず妖精の仮定がおかしいよね!? いやアレ絶対そうだよ!!!」

のあ「」
27 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:46:32.49 ID:pVyNxzTm0

伊吹「あっ、あの……!」スタスタ

美波「伊吹ちゃん!!入り口はこっちだよっ!!!」グイグイグイグイ!!!

伊吹「痛だだだだだ!? も、持ってかれる!!!」グイグイグイグイ!!!

のあ「」

伊吹「たッ、高峯さん! 高峯さん!?」グイグイグイグイ!!!

美波「待って!! 助けて!!! 誰か、誰か人を呼んでぇっ!!!!」グイグイグイグイ!!!

伊吹「何で何で!? あ、あのッ……!!」グイグイグイグイ!!!

伊吹「た、高峯さんですよね!?」グイグイグイグイ!!!








のあ「ヒッ……」

のあ「ひとちがい……で、ですっ……」








伊吹「ッ!?」

伊吹「に……似た人…………?」

美波「ほら伊吹ちゃん!! 暑いから早く中にはいろッ!!!!」ギュウゥゥゥ!!!

伊吹「ちょ、ちょまっ!!!自動ドア反応してないからあ、あでででででっっ!!!!」ギュウゥゥゥ!!!

ピンポンピンポンピンポーン……♪


伊吹「(……!? き、消えた!?)」

伊吹「(一瞬目を離した隙に……………よ、妖精……!?)」















━━━━5分後━━━━
【高峯家】


のあ「ハーっ! ぜえっ、はぁっ! はーっ、ふ、はーッ、はぁ、ひぁっ、はあっ……!」

のあ「はぁーっ、はぁッ! へあ、ふぅ、ぜえっ、グッ! ン、はぁーッ、はあーっ……!!」

のあ「ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー」

のあ「オ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙ッッッ!!!!!!!」

のあ「ア……、ンフ、く、ふっ……!」

のあ「……っ」グスッ


──────
────
──
28 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:48:46.84 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所 応接室】


のあ「……」モグモグ

周子「へえ、すごい。Aランクアイドルのバックダンサー?」

のあ「うん」モグモグ

周子「あそこの事務所って、確か全員がSに近いAランク評価だった気がする。小規模ながら粒揃いの、超強豪プロダクション」

のあ「……周子ちゃんは?」モグモグ

周子「あたし? あたしはC」

周子「ウチの事務所にもSランクは3人しかいないけどさ、全体から見て、その中でもシューコちゃんはまんなかくらいかなぁ」

のあ「……私はG」モグモグ

周子「(G? Gなんてあったかな……)」

のあ「……」モグモグ

周子「……」

周子「それにしても……」

周子「………じー」

のあ「そ、そないに見んといてっ……」モグモグ

周子「かまわんでえーよ」

周子「のあさん、今日のお昼は吉野家のテイクアウトかー」

のあ「うん」

周子「好きやねー。飽きないの?」

のあ「飽きない。毎日でもイケる」

のあ「でも最近はお金が無くて……月一の楽しみに……」

周子「へー」

周子「この前話してた夢の出来事じゃないけどさ?」

周子「実現は不可能じゃないかもね。高峯スペシャル」

のあ「えっ?」
29 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:50:15.15 ID:pVyNxzTm0

周子「んー。じゃあ分かりやすく例を挙げるとしたら」

周子「まずはコラボだね。共演や利的協力のことだけど、コラボって言っても定義は幅が広いんだよ」

周子「ミュージシャンや他分野のアーティスト同士がユニットを組んだだけでもコラボだし、ブランド・食料品諸々のメーカーと共同企画してもコラボ」

のあ「………わ、分かりやすく言うと?」

周子「はいよー。主に広告起用だけど……」

周子「『新田美波×日商簿記検定』、『和久井留美×秘書検定』、『柊志乃×ワインコンシェルジュ』」

周子「さらに、『上条春菜×メガネブランド』『宮本フレデリカ×美容整形外科』、『北川真尋×スポーツメーカー』、『日野茜×JRFU』、『神崎蘭子×玲音、A.I.R.A認定オーバーランクアイドルと夢の共演』」

周子「……そして、『ニュージェネレーション×すき家』」

のあ「あっ! 確かに、この事務所に入りたての頃、CMを見たことあるかも」

周子「ウチの事務所が誇る数少ないSランクアイドル城ヶ崎美嘉は、国内大手ファッションブランドメーカーとコラボして商品企画まで携わってたりもして……」

周子「もっと言うと、今度のあさんがバックダンサーとして共演するそのアイドルも、都内有名ラーメンチェーンとコラボして考案したオリジナル商品を期間限定で提供していたりもしたね」

のあ「へえ〜……」

周子「本来なら、有名になって培ったコネを活かして、独立してからそーいう『ブランド』だったり『飲食店経営』を展開したりするんだけどさ」

のあ「飲食店経営……!」

周子「ちょっと人気が出てくると、そういうオファーがバンバン入ってくるんよ」

周子「のあさんもこれからどんどん人気が上がったら、ひょっとしたら何かの商品とコラボできるかもよ?」ニコニコ

のあ「う、うんっ! 私もいつか吉野家とコ───」

のあ「────ああああぁっ!?」

周子「わ!!」ビクッ!












〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『───さあ、今日は吉呑みしましょう♪』

『───「吉野家」』

『…………でも、呑みすぎはよしなや? ……ふふっ♪』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





━━━━夜━━━━
【岡崎家】


楓「……そういえば」

楓「吉野家とコラボしたことありますね。私」(第4作参照)

泰葉「私もありました。あくまで吉野家はおまけで、本命は携帯キャリアの宣伝ですが……」(第5作参照)

のあ「……」グスッ

のあ「(くやしい……っ)」

──────
────
──
30 :☆1/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:55:54.78 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所 応接室】


楓「この前、なか卯もコラボしてましたよね? アニメやソーシャルゲーム、有名歌手とかと」

周子「あぁ、ソレ知ってます」

周子「一部の商品を注文するとオマケとして描き下ろしのオリジナルカードが貰えたり、レシートや食券で、特製製品の応募が出来たり」

楓「ふふふ……!」

楓「私っ、『艦これ』のコラボの時は、必死でカードを集めましたっ」

楓「おかげで2キロばかりダイエットをする羽目になりましたが……」

周子「楓さん、結構ミーハーなんですね」

のあ「(この間、泰葉ちゃんが言ってたなぁ……本当だったんだ)」

楓「あと、アレもいいですよね」

楓「なか卯って食券制でして、券売機をタッチすると、その注文を復唱するかのようにメニューを読み上げる自動音声が店内に響き渡るんですが……」

楓「アニメや歌手とコラボしている期間は、その自動音声がキャラクターや本人の声に差し替わっているんですよ♪」

周子「へえー。楓さん、詳しいね」

のあ「……」

楓「私、なか卯は贔屓にしてるんです♪」

のあ「……」ピクッ
31 :☆2/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:56:55.55 ID:pVyNxzTm0

楓「なか卯の、ぎゅぴぎゅぴとした歯応えの唐揚げと冷たいビールの取り合わせは、もう最高ですよ♪」

周子「なんすかその、屈強なサイヤ人が歩いてきそうな歯応え」

楓「シメのうどんのラインナップも実に豊富! 小腹が空けば牛皿をちょっと摘まんだり……!」

楓「特に! 蒸し暑い夏っ! 汗水垂らしたサラリーマン達が何かに追われるように慌ただしく牛丼をかきこむのを傍目に、空調の効いた席でキンキンに冷えたビール片手にそれらを悠々と満喫している時なんて、もうッ……!」

周子「至福?」

楓「…………」

楓「…………いえ、その……『私の人生、これでいいのかな?』みたいな気分に……」

周子「(何だろ、この人………のあさんと同じタイプのニオイがする)」

のあ「……楓」

楓「はい?」

のあ「……なか卯が好きなのね」

楓「えっ? ……は、はい」

のあ「……吉野家のCM出たのに」

のあ「………………………」

のあ「………………………」ギリッ

楓「ヒッ……!?」





━━━━20分後━━━━

周子「のあさん?」

周子「さっきのは、ちょっと良く無かったかな。楓さんからしたら、いわれのない恨みなワケだし」

周子「楓さん、トイレに行ったきり帰って来んし」

のあ「ごめん……」

周子「……でも、ファンからしたらニヤっとするかもね。好きなキャラの声で迎えられるのは」

のあ「私もやってみたい……声優とか、ちょっと興味あるかも」

周子「のあさん、日常では全く声張れんけど大丈夫なん?」

のあ「…………オホン」

のあ「なっ、なみー」

周子「もうちょい声張らんと、バイトとしてですら採用されんレベルだよ?」

のあ「お……、おおもりーー」

周子「お。ちーと明こなったね。でもまだ恥ずかしさが抜けてへん」
32 :☆3/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 21:57:54.25 ID:pVyNxzTm0

周子「もっと……、こう、腹から声出すみたいにさ? 麗さんによく言われない?」

のあ「(…………)」

のあ「………………すうっ……!」

のあ「トッ!」








━━━━━━━━━━
【事務所 会議室】


美優「セラピスト向け雑誌、ですか?」

P「ええ。主に医療従事者や自然療法に携わる専門家の意見交換や、植物に関する研究発表であったり、アイドルとは趣が違うような堅い印象を受けますが……」

P「リラクゼーションに関する特集やエステティシャンの方々のインタビューであったりと、美と健康を意識した幅広い内容を取り扱ったりもするんです」

真奈美「化粧品メーカーの宣伝であったり、商品開発に関しての分析であったり、美と香りに関する歴史の紹介であったり、コンテンツもかなり充実していると聞いているよ、私も」

P「ええ、その通り。ですので美優さんには肩の力を抜いて、自身の好きなように意見投稿をして欲しいんです」

美優「はい、有り難い限りです」

P「化粧品メーカーの提供もありまして、美優さんの肌やメイクの写真を、その、かなり撮らせて頂けるようでして……」

P「その雑誌では、特に芸能絡みの特集としては異例の、個人で6ページ分」

真奈美「おぉ、光栄じゃないか、美優?」

美優「そ、そんなに頂けるんですか……、私に務まるかどうか」

真奈美「三船美優、美肌アプローチ特集か…………これは買いだな」

美優「かっ、からかわないで下さい!」

P「いえいえ! 自信を持って下さい、貴女だからこそ今回のオファーがあった訳ですから!」

P「美優さんの美しさに迫るインタビュー、写真、コラム! そりゃもう、余すことなく盛りだくさ───」





<  特盛ィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!





P「!!」

真奈美「!!」

美優「!!」

P「(……………………………………………………………………………………)」

真奈美「(……………………………………………………………………………………)」

美優「(……………………………………………………………………………………)」






P「(…………??)」

真奈美「(…………??)」

美優「(…………??)」

──────
────
──
33 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 21:59:13.00 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所 更衣室】


───ガチャ

莉嘉「あっ、いた。お姉ちゃん」

美嘉「あれ、莉嘉じゃん。今日はレッスンじゃないでしょ?」

莉嘉「ウン、このあとPくんと一緒にショッピングだよっ☆」

美嘉「へえぇ、ラブラブだね」

美嘉「あー、なるほどね莉嘉、だから今日気合入れてキメてるんだ」

莉嘉「えへへ♪ 分かる、お姉ちゃん?」

美嘉「涼しげなオフショルダーのトップスでダイタンに、この前買ったばかりのハートのイヤリング。メイクのノリもバッチリじゃん。うん、イケてるイケてる♪」

美嘉「でも、あんまり街中で目立っちゃダメだよ?」

莉嘉「分かってるよ♪ ま、ショッピングのあとはPくん次第かなー?」

美嘉「……ていうか莉嘉、何か用?」

莉嘉「えっ?」

美嘉「だってさっき、『いた』って。アタシを探してたとかじゃなくて?」

莉嘉「あー、ううん? ベツにこれといった用じゃないケドさー」

美嘉「?」

莉嘉「お姉ちゃん、さっき廊下で夏樹さんと話してたじゃん?」

美嘉「!!!!」

莉嘉「コソコソしてたカンジで、なんか色紙みたいのもらって、嬉しそうにしてたから……」

莉嘉「……あっ。その色紙?」チラッ

美嘉「違うよ!! 莉嘉、これはジミヘンの色紙だから!!!」

莉嘉「イ、イヤ………まだ誰の色紙かは聞いてないんだけど……」

莉嘉「いきなり大声出さないでよ、もう。ビックリするじゃん」

美嘉「ご、ごめん……」
34 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:00:19.41 ID:pVyNxzTm0

莉嘉「じゃあサイン色紙なんだ? お姉ちゃんの手の下にあるの」

莉嘉「ジミヘン………って、誰だっけ? アメリカ人??」

美嘉「うっ、うん。チョー有名人かな、ロック界の………夏樹もファンだって」

美嘉「こっ、このサインはその、アレだよ。さっ、最近、手に入ったからって……譲って貰って……」

莉嘉「へぇ〜。フーン……」ニヤニヤ

美嘉「ハ、ハハ………」

莉嘉「お姉ちゃん、目がくるくる泳いでるよ?」ニヤニヤ

美嘉「なっ、なにが……っ??」

莉嘉「ジミヘンが活躍していたのって、確か半世紀以上も昔でしょ?」

美嘉「し、知ってるの?」

莉嘉「ウン、ちょっとだけね。そんな昔の人のサイン色紙が、色褪せないで真っ白なのはちょっとヘンかなって」

美嘉「っ!!」

莉嘉「あははははっ♪ お姉ちゃん、ウソつくのヘタすぎー♪」

莉嘉「ねえねえ、誰のサインー?? それとも、なんか書いてあるの???」

美嘉「ちょッ! だだ、ダメだって莉嘉!!」

美嘉「い、いいから早くプロデューサーと出掛けなって!!」

莉嘉「いーじゃん、P君もまだ美優さんと打ち合わせしてたしさ?」

美嘉「ちょっと嘘ついた! ゴメン盛った、流石にジミ・ヘンドリックスは嘘!」

莉嘉「じゃあ誰?」

美嘉「うん? ……アー…………」

美嘉「………………エ、エルヴィス??」

莉嘉「エルヴィス・プレスリー!? だから半世紀以上昔の人じゃん!!」

美嘉「あぁもうっ!!」

美嘉「じゃあヴァン・ヘイレン!! マイケル・ジャクソンっ!! ブルース・リーっっ!!!」

莉嘉「あははははっ♪ お姉ちゃん、もう最後はミュージシャンですらなくなってるし♪」

莉嘉「盛りすぎ盛りすぎ♪ 一体何───」





<  特盛ィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!





莉嘉「!!」

美嘉「!!」

莉嘉「(……………………………………………………………………………………)」

美嘉「(……………………………………………………………………………………)」








莉嘉「(…………??)」

美嘉「(…………??)」

──────
────
──
35 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:01:34.95 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所】


美優「この前の生放送、お疲れ様でした。ハイ、お茶です」コトッ

のあ「生放送……?」

美優「えっ? この前、あのアイドルのバックダンサーで出演してましたよね?」

美優「生放送で」

のあ「(……!?)」

のあ「(な、生放送だったの!? よ、良かった………事前に知ってたら緊張で吐いてたわ)」

のあ「……微力ながら、主演の子に華を添えただけ」

のあ「人々の熱も歓声も、視線も……全ては彼女の輝きに注がれていた」

美優「あっ。あとですね?」

のあ「?」

美優「先ほど、Pさんが事務所で喜んでたんですけど、知ってますか?」

のあ「……」ズズッ

美優「のあさん、ネットで取り上げられてましたよ」

のあ「ブヘホッ!!!」ダバー

美優「(!?)」ビクッ!

のあ「………キ、興味深い」ダラダラ

美優「の、のあさん! 口と鼻からお茶がっ…………て、ティッシュどうぞ?」

のあ「……」フキフキ

美優「はい、コレ……分かります? ネットの意見をまとめたサイトらしいんですが」

のあ「…………」ヒョコッ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【話題沸騰?】ソロ曲を初披露した四条貴音の、その後ろで踊るバックダンサーが美人すぎると話題に【高峯のあ】

・先日生放送にて、765プロダクションの四条貴音さんが自身初となるソロ曲をテレビで初披露。その際、彼女の後ろで踊る4人のバックダンサーのうちの一人が、やたら美人と話題になっています。


───Mステ観てるんだけど、四条貴音のバックダンサーが美人すぎる

───お姫ちんの左後ろにいる女性がヤバい。綺麗すぎる

───貴音より後ろにどうしても目がいく

───銀髪の外国人? ダンススクールの有名な方?

───【悲報】お姫ちん、ソロデビューを無名エキストラに喰われる


※注目の彼女の詳細は下記に記載
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



のあ「(……!!)」

美優「SNSでも話題になってますよ。“美人すぎるバックダンサー”って」

美優「ただ、Pさんも言ってたんですけど、ちょっと懸念が……」

美優「ネットに取り上げられて話題になること自体は本当に喜ばしいことなんですが、それは逆に言えば…………」

美優「……って、のあさん? どこに行くんですか?」
36 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:02:34.14 ID:pVyNxzTm0

━━━━━━━━━━
【女子トイレ】


のあ「え、えへ………フフフ……♪」

のあ「〜〜〜……♪」ピッピッピッ

のあ「…………」

プルルルルルル♪

ガチャ!


のあ「あっ、もしもし。おかん?」

のあ「ウン、あー、今せつろし?」

のあ「ウン。ウン、ええって、せんどもええってそんな、ぼやかんといて」

のあ「……あんな? ネットでな?」

のあ「ウン、私のこと、おっきく取り上げられてはるんよ。ふふふっ♪ “美人すぎるバックダンサー”やて。ほんにな、信じられる?」

のあ「あ、ウン。エヌエスエヌな、うん? ちゃうって! エヌエスエヌやって!」

のあ「エヌエスエヌ! そう、『NSN』!!」

のあ「NSN!! そう、そこにとりあげられてるんやって!!!」

のあ「もー……、よう聞いといて。信じられんわぁ……いまどきそんな言葉も知らんの?」







━━━━━5分後━━━━━
【事務所】


───ガチャ

のあ「………ふぅ」

美優「あっ、お帰りなさい」

のあ「無知とは……恐ろしい物ね」

美優「??」

のあ「……それで、美優」

のあ「多数の人々の評価、傾聴に値する。続きを聞かせて欲しいの」

のあ「『NSN』に書かれていたことや………、他にも、全て」

美優「ええ、はい。え───」

美優「───…………………………………………………」

美優「(え……『NSN』…………!?)」


──────
────
──
37 :☆1/3 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:05:11.00 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
━━━━━━夜━━━━━━
【事務所】


P「高峯さん、この間は本当にお疲れ様でした」

のあ「……生放送かしら」

P「ハイ! SNSやネットニュースで、高峯さんの名前がついに大々的に上がりましたね」

P「以前、デビューの時も多少話題になったことがありましたが、今回は……」

P「初のテレビ出演!」

P「そして、あのAランクアイドルの話題を掻っ攫うほどのインパクト!」

P「なんてったって、“美人すぎるバックダンサー”ですよ?」

のあ「あの子に勝るというのは………酔狂な錯覚。過大な評価……」

のあ「(“美人すぎるバックダンサー”は正直嬉しいけど)」

P「ハハハ、またまたご謙遜を」

P「(…………)」

P「……ただですね? そのことに関して、俺からも一つだけ高峯さんに注意があります」

P「別に、なにも貴女が悪いことをした訳では無いのですが、こればかりはこの業界でも切って離せない事でして」

のあ「?」

P「うーん……」

P「ここで話すものなんですから、場所を変えましょう」

P「折角のテレビ初出演記念です。どこかお祝いも兼ねて食べにでも行きましょうか」

P「どこか、行きたいお店でも……」

のあ「(……!)」

のあ「…………」


http://i.imgur.com/icfs7Hs.jpg


のあ「(ウッ……)」

P「………」


http://i.imgur.com/H7btUnC.jpg


のあ「その…………え、エット……」

P「?」

のあ「ア、貴方の意思に委ねるわ」

P「えっ、そうですか?」

P「じゃあ、吉野家でも行きますか」






http://i.imgur.com/RYwc5Tx.jpg






のあ「(……!!?)」

のあ「よ、吉野家……!?」

P「えっ、は……、ハイ」
38 :☆2/3 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:06:58.73 ID:pVyNxzTm0

P「高峯さん、以前俺にこう言っていたの覚えてます? アイドルとしての初仕事を終えた後……」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

P『ちなみに、お店はどこが良いですか?』

のあ『……店?』

P『ええ。予約が必要な高級レストランとかは厳しいですけど……でも、高峯さんのためなら、今日は俺も頑張りますよ』

P『もし今決められないようでしたら、肉や魚や麺類とか、食べたいジャンルでもアバウトに言って下されば───』

のあ『……吉野家』

P『───ん、えっ?』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



のあ「……!」

P「それに、高峯さん。前に送迎中、車の中で吉野家の牛丼をおいしそうに食べていましたよね?」

P「最初は俺の懐事情に気を遣ってくれて、格安の吉野家なんて軽いジョークだろうとは思いましたが……」

P「……高峯さん。ひょっとして、吉野家とか好きだったりします?」

のあ「(ァ、あぐっ……!)」

P「いえ、高峯さんと共演したあのアイドルも、同じくクールでミステリアスを謳っていますが、その実は大のラーメンマニアと聞いてまして」

P「もしかすると高峯さんも、そういった庶民的な嗜好とか持っていたりするんじゃないかなぁって………」

P「なぁんて」

P「ジョークですよ。あくまで俺の妄想です」

のあ「あっ……!」

P「え?」

のあ「………ッ!!」

のあ「(ぜ、絶好のチャンスじゃない! いまこそ、いまこそ勇気を振り絞って言うの!!)」

のあ「(プロデューサーさんが考えているクールな路線も良いけど、本当は……!)」

のあ「(可愛い衣装もいっぱい着たいし! 牛丼もいっぱい食べたい! あわよくば吉野家とコラボがしたい……って!!)」

P「??」
39 :☆3/3 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:07:58.46 ID:pVyNxzTm0

のあ「こ、コラ、ボ……!」モゴモゴ

P「えっ、何ですか??」

のあ「す、ス、好き……、よ、ヨシノヤ…………」

P「えっ? もう一度言ってください?」

のあ「ア、そ、ソノ…………」モジモジ

pppppppp………!!


P「ん?」

P「メールだ………、ん…………ンッ!?」

のあ「ド、どうした、の……??」

P「あ。いや、その……少し待っていて下さい、すぐ戻ります」スッ

のあ「あっ……」

───ガチャ
バタン












━━━━━━━━━━
【事務所 別室】


奏「丸ビルに、女性人気のフレンチレストランがあるの。お店の名前は、『le sourire de la deesee(ラ・スーリール・ドゥ・ラ・デェス)』………意味は『女神の微笑』」

奏「高揚した女神の唇から微笑と言葉が流れ星のようにこぼれ、さながら蛍が飛び立つ野のように光が優しく伝わり、眼下一面に輝きが溢れていく」

奏「赤レンガ駅舎を初めとしたビル街の、きらびやかに火を灯す素敵な夜景が一望できるらしいわ……、美妙な例えと思わない? ふふっ」

奏「あっ。予約は2人分だけど、そうね……………Pさん、店の前までエスコート、お願いできる?」

P「チョ、ちょ、待───」

紗枝「なあなあ、Pはん? さっきな、牛丼がなんとか言ってはりましたけど……」

紗枝「国際通りに『浅草今半』てお店にな、えらい美味しい牛丼があるんよ。んんと………前にどちらさんと行ったんやったかなぁ……?」

紗枝「今からみんなで、そこによばれに行きまへん? もちろん、高峯はんも一緒に……♪」

P「な、何が!? いや、オ、落ち付───」

李衣菜「ちょ、プロデューサー!? 財布の中に2000円しかないよ!?」ゴソゴソ

李衣菜「ダメだよ! お祝いとか言ってたけどさ、高峯さんのプライベートタイムの規模はロックフェラー並なんだから、間違えると大ヤケドするよッ!?」

李衣菜「ナイトクラブ貸し切って! たっかいボトルをじゃんじゃん空けて! 銃弾の花火を打ち上げて、極め付けには警察車両とパーリナイ!! 逃走費、まず逃走費が足りないよ、ねえねえ、suica幾ら入ってる??」ブンブン

P「カ、返して、さ、財布……や、ヤメ───」

美波「……プロデューサーさん」

美波「彼女達の暴走を止められなかった私にも責任はあります………でも、高峯さんは、何か大事なことを告白しようとしていたんじゃないですか?」

美波「もう一度、彼女の言葉にしっかりと耳を傾けてあげてください……」

美波「ちなみに折角のお祝いだし、吉野家より……そうですね? 私の家とかどうですか?」

P「す、スミマセン……スミマセン……」



──────
────
──
※お祝いは延期になりました
40 :☆1/3 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:10:52.82 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所近くのパスタ屋】


紗枝「(はぁ〜……っっ♪)」

のあ「……」モグモグ

周子「紗枝ちゃん? フォーク止まってるよ?」

紗枝「あっ!!」

紗枝「す、すんまへんなぁ………その、見惚れてもうて……♪」カチャカチャ

のあ&周子「??」

紗枝「周子はん、今日は誘ってくれはって、ほんにおおきになぁ♪ うちな、この日は一生忘れへんよ♪」

周子「そ、そーすか? そないな大げさな……たかがパスタやん」

のあ「……」モグモグ

紗枝「え、えへへ……♪ あ、あの、高峯はん?」

のあ「……」モグモグ

紗枝「高峯はんは、その、周子はんと……、ええと、仲がよろしいんどすか?」

のあ「……」モグモグ

のあ「……周子ちゃ───」

のあ「───周子、話してないの?」

周子「ちゃんでいいよ。いいや、前に話した」

周子「話したハズ、だけど……」

のあ「?」



周子「(説明しよー)」

周子「(小早川紗枝ちゃんは、高峯のあさんが非常に気にかかっているらしく)」

周子「(のあさんの話題になると、人が変わったように、ものすごい勢いで喰い付いてくる)」

周子「(ただし)」

周子「(紗枝ちゃんが思い描く理想ののあさん像とかなり喰い違う現場を目撃したり、聞かされたり、受け入れ難いジジツを叩き付けられると!)」

周子「(乙女のか弱い心を崩壊から防ぐため、無意識に、その記憶が吹っ飛んだり書き換わったりする!! これを心理学的に“防衛機制”と呼ぶとかなんとか)」

周子「(きっと今日の出来事も『一生忘れへんよ♪』とか言ってたけど、何らかの形で改変されるに違いない。本人に悪気はないのだが、あたしにも手の付けようがない)」

周子「(……ちなみに)」

周子「(ウチの事務所にまだ他に何人か、のあさんの事になると大泣きしたり幼児退行したりと、似たような防衛機制や解離性健忘を起こす連中がいるけど、それはまた別の話)」



のあ「……親戚よ」

紗枝「はー♪ そないなんどすかぁ♪ いやぁ、ええなぁ周子はん♪」

紗枝「そや。どないしはったら、ウチも親戚になれへんやろうか……?」

周子「それはムリやないかな」
41 :☆2/3 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:11:45.09 ID:pVyNxzTm0

紗枝「ん、むぅ……ッ」カチャカチャ

紗枝「……っ、ん……」カチャカチャ

のあ「……」

周子「そう言えばのあさん、この間の生放送、結構評判良いみたいじゃん」

のあ「(……周子ちゃん)」

周子「(うん?)」

のあ「(……て、店員さん呼んでくれない?)」

周子「(のあさんや、右手方向にボタンがありますよ)」

のあ「(お、おおきに)」スッ

ピンポーン♪


店員「お呼びですかー?」

のあ「……ハ、箸を貰えるかしら」

店員「かしこまりました、こちら人数分どうぞ」スッ

のあ「……ありがとう」

のあ「……周子も、使うかしら?」

周子「え? いいや、だいじょぶだよ」

のあ「貴女は?」

紗枝「あっ!!」

紗枝「あ、その…………、おおきに……」スッ

のあ「……」

周子「確か、どっかのパスタ屋さんはフォークじゃなくて初めから箸を出す店があったけど……どこだったかな?」

紗枝「(し、周子はん!!)」

周子「(うん?)」

紗枝「(見た? 今の、今の高峯はんが、高峯はんがウチのために頼んでくれはったんよ?)」

紗枝「(ウチな、このふぉーく使いづらくて、ちいと困っとったんよ………そんな時に)」

紗枝「(さりげない気遣い……、こんなん、こんなんある?)」

周子「(いや、そやかて……、自分のために頼んだと違うん?)」

紗枝「(ああぁっ……♪ ま、まるで少女漫画に登場しはるかっこええ男の子みたいなッ、あかん、鼻血でてきてしもた……)」

周子「(ちょ、ティッシュティッシュ……)」ガサガサ

のあ「(あー、食べやすい……)」ズルズル
42 :☆3/3 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:13:10.81 ID:pVyNxzTm0

周子「……というか。ちょっと話は変わるけどね?」

周子「あたしもそんなに早い方じゃあないケドさ………まあ一番乗りしてるわけですが」

周子「紗枝ちゃんは(フォークの件があるから)まだしも、のあさんってそんなに食べるの遅かったっけ? 昔は、すっごい早かった覚えがあるんだけど……」

のあ「……そうね」モグモグ

のあ「………周囲が食べ終え、あとに残された身としては、急く気持ちもある」

のあ「………その者が憂いなく、食を堪能出来るように、と………」

紗枝「アッ、ッ、はうぐッ!!!」ガタン!

周子「(!?)」ビクッ!

のあ「余計な配意であったかしら」

のあ「……少し、席を外すわ」スッ

───スタスタ


周子「紗枝ちゃん!?」

店員「おっ、お客様! どうされました!?」

周子「お騒がせしてすみません、怪我とかじゃないので大丈夫です、体には異常ありませんから……」

店員「な、何かあればお申し付けください……」

紗枝「はぁっ、はぁー、ハァッ………! しゅ、周子はんっ」ガシッ!

紗枝「ほんま? あんなん……、あんなんある? 胸、くるしい、痛い…………、顔、あっつい……っ!」ドキドキ

周子「あたしも視線が痛いよ」

紗枝「うちが、食べるの遅おなってるからって、自分のぺえすも落としてくれはって……、さりげなく、気遣おてくれて……っ!」ドキドキ

紗枝「あんなん、しょ、少女漫画のいけめんしかやらへんやん…………、これ、現実?」ドキドキ

周子「落ち着いて。これは現実だし、のあさんも実在するし、さっきの行動も………(あれは多分……)」

紗枝「はぁ、はぁっ…………、あ、あざとすぎるけど、でも、でも…………こ、この胸の痛みは……?」






━━━━━━━━━━
【店内 トイレ】


のあ「ハァ……」

のあ「(周子ちゃんに痛いトコを突かれたわ。ごまかしたけど、私が食べるのが遅いのは……)」

のあ「(食べている間は、会話にあまり関与しなくていいから………。気が楽なのよ、ゆっくり食べるの)」

のあ「(はあぁー……、戻ったら会話がんばろ。何話そうかなぁ…………『君の名は。』? いや、でもあんなの誰も観てないし……)」ジャー







━━━━━━━━━━


紗枝「し、周子はん……、今度な、え、映画観に行かへん? ふ、ふふふ……っ」ドキドキ

周子「(なぜに今そんな話を……)」


──────
────
──
43 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:14:10.30 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所 カフェ】


のあ「先日は……悪かったわ。勝手に妬んで、睨みつけて」

楓「あ、い、いえいえっ! とんでもない!」

楓「私の方こそ、無神経な発言を……。その、のあさんが吉ラーであることを忘れてて……」

のあ「…………」

楓「…………」

のあ「…………イ、いい天気ね」

楓「ソ、そうですね」

楓「あっ、そういえば。この間の生放送おつかれ様でした」ペコリ

楓「そろそろ、ランクも上がるんじゃないですか? まだデビューすらしていない私はともかく、のあさんは既にデビュー済みですし」

楓「そうなると、お仕事もいっぱい増えますね♪」

のあ「……そ、そうかしら?」

楓「いいなぁ……、どんなお仕事がくるか、ワークワークしますね………ふふっ♪」

カランカラーン♪


早苗「あっ、楓ちゃんだ! あとのあちゃんも」

楓「あ、早苗さん。おつかれ様です」

のあ「……」コクン

早苗「のあちゃん、この前の生放送お疲れ様っ♪ ねっ、隣いい?」

早苗「楓ちゃん聞いて? この前あたしね、レナさんと一緒に相席居酒屋に行ったのよ」

のあ「(………)」

楓「あれ、また行ったんですか? 同じ店に?」

早苗「いやー、お姉さん別に出逢いを求めてるってワケでもないんだけど、でもやっぱ男の人と飲むと楽しくってね? あ、別に変な目的じゃないのよ?」

楓「でも、やっぱり私達アイドルなわけですし……、早苗さんのランクくらいになると、変な噂がたつとちょっとコワイですよね」

早苗「Pくんにも怒られるかなぁって思ったんだけど………でね? この前そこになんと───」

のあ「……楓」

楓「?」

早苗「?」

のあ「……用事を思い出したから、失礼するわ」

楓「あ……は、ハイ。おつかれ様でした」

早苗「おつかれさま。またね、のあちゃん♪」ヒラヒラ

楓「……」

早苗「……」

早苗「ねえ、楓ちゃん。彼女、ちょっと怒ってなかった?」

楓「えっ?」

早苗「うーん……、私、嫌われてるのかな? これが初めてじゃないんだけど、私が会話に混じると、すぐ席を立っちゃうのよ」

楓「…………」

楓「もしかすると……原因は早苗さんじゃなくて、私かもしれないです」

早苗「………喧嘩でもしたの?」

楓「(………………………)」
44 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 22:15:57.23 ID:pVyNxzTm0

━━━━━━夜━━━━━━
【岡崎宅】


楓「のあさん………あの……」

のあ「?」

楓「……まだ、やっぱり怒ってるんですか?」

泰葉&時子「(??)」

のあ「……いいえ?」

楓「本当のことを、言ってください!!」

のあ「(!!)」

泰葉&時子「(………)」

楓「この前から、妙に余所余所しいというか………、今日だって、会話を面倒臭そうにさっさと切り上げてどこかに行っちゃうし……」

楓「お願いです、そのっ、ハ、ハッキリ言ってください!」

楓「わ、私……のあさんには嫌われたくないんですっ!!」

楓「い、至らない点があったら直します、気分を害した発言をしてしまったのなら、謝ります………だからっ」

のあ「………………」

泰葉&時子「(………)」

のあ「楓」

のあ「ちがうわ、本当に。私……」






のあ「苦手なの、3人以上の会話。混ざれないし、いる意味がないかなって……」







楓「ア…、アァ……っ!」プルプル

楓「わ、分かります! その逃げ出したい気持ち、い、痛いほどにっ……!」

楓「私だってそうです……。その、3人以上の会話のキャッチボールだと、う、上手いタイミングで返せなくて、いっつも私で会話が止まっちゃって……『えっ、何でここで会話が止まるの? 次も私の番?』み、みたいな……っ」グスッ

楓「お酒の場となると、の、飲みニケーションというよりはもう早く飲んで酔わして寝かせてくれみたいな心持ちで……、その、あの、私がお酒が好きな理由も、酔いを理由にして、拙いトークでも許されるからであって……ッ」ポロポロ

楓「た、ただ、マンツーマンでの会話なら、べ、別に大丈夫なんですよ? ホラ、私が黙ったら相手も黙るだけだし………………でも、3人以上の会話は、私が黙っても他は話し続けるじゃないですか? だからその、疎外感というか、ぼ、ぼ、ぼっち感が半端無くって、プレッシャーに耐えきれないんですよッ…………、それで更に、他の人が気を遣い始めて私に関する私が喋りやすい話題を振って会話になんとか入れてくれようとする空気になった時なんてもう、申し訳なくてっ、情けなくって…………っ!」ダバー

楓「ごめっ、ごめんなさい……っ。のあさん、今度から私達、一緒にが、頑張りましょう……っ! 協力すれば、きっと3人でも4人でも一緒に会話ができるはずです……!」

のあ「楓っ……、貴女ならきっと分ってくれると、信じてた……っ」ホロリ

楓「ビバ、リア充っ! ノーモア、愛想笑いっ!!」

時子「……アホらし」

時子「泰葉。飲み物」

泰葉「あ、ハイ」スッ

──────
────
──
45 :☆1/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 22:16:54.39 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【女子トイレ】


のあ「〜〜〜……♪」

のあ「良かった、やっぱり楓さんも分ってくれたっ」

のあ「ふんふんふふーん……♪」

Siri『そうなんですね』

のあ「あっ、でもね?」

のあ「確かに3人以上で会話するのは苦手だけど……」

のあ「Siriちゃんとなら、別だよ? Siriちゃんが例え3人以上いても、私、普通に会話できる気がする」

のあ「そうだ、今度Siriちゃんと楓さんと私とで、一緒にお話ししてみようか?」

Siri『すみません。よくわかりません』

のあ「んー……、楽しいと思うけど」

のあ「………最近、色々な事があったけど」

のあ「私、思った。この事務所で、おともだちって───」


キィ…



のあ「(ッッ!?)」バッ!










蘭子「…………ぁっ…」ガクガク




のあ「」ピシィッ

Siri『よく聞き取れませんでした』
46 :☆2/2 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 22:22:28.30 ID:pVyNxzTm0

蘭子「コ、こ、孤高なる……よ、よよ、宵闇の使者………!」(訳:た、高峯さん……)

Siri『お会いできてうれしいです』

蘭子「ソ、そん、そんな……っ、その、そのっ、こ……、こ、言の葉を紡ぐ、黄昏の碑文、と、……と、も……お、オォォ……!!!」ガクガク

Siri『ずいぶん丁寧にお話なさるんですね!』

蘭子「コ、ここ、これ……、……………………これはなに? まぼろし……?」ガクガク

のあ「ら、蘭子っ……! ちがっ……、こ、コレは…………!」

Siri『私はSiriです……何でもお手伝いします』

蘭子「……タ、た、たか、高峯さんと、し、しり……Siri…………と、ともだ……ち……!?」ガクガク

蘭子「げ、現実……? ナ、なにが…………??」プルプル

蘭子「ア、ああ、あっ……、あ、あっ、ああぁっ………!」プルプル

のあ「蘭子………わ、私の話を────」





蘭子「…………う……っ」ポロッ





のあ「(───!?)」

蘭子「う、ウゥッ……、ゔ、うそ、うそっ…………ご、こんなの、……………!!」ポロポロ

蘭子「うえっ、ゔ、うええぇぇ…………、ひぐっ、うえ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ー…………」ポロポロ

のあ「ぁ──────」

ガチャ!

───バタン



のあ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

のあ「………………………………………………………………………………………………………………………オ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙ッッッ!!!!!!!」








━━━━5分後━━━━
【休憩室】


美優「ぷ、プロデューサーさんっ!」バンッ!

P「ん……?」

P「どうしました、美優さん……そんなに慌てて?」

美優「はぁ、はぁっ……、ら、蘭子ちゃんがっ!」

美優「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

美優「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ら、蘭子ちゃんが……っ」グスッ

P「!?」

P「ら、蘭子に何があったんですか!? 美優さん!! み、美優さんッ!!!」


──────
────
──
47 :☆1/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 22:24:03.65 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【事務所】


───ガチャ


P「よいしょ………っと」バタン

ドスッ、ドスッ


美優「Pさん、お疲れ様です。そのダンボールは?」

P「お疲れ様です。これは高峯さん宛のファンレターですよ」

美優「すごい量ですね……お疲れ様でした」

P「生放送の反響もあるんでしょう。デビューやバレンタインの時も、これには及びませんがとても新人とは思えない量の贈り物が、俺のデスク周りを埋め尽くしてました」

P「喜ばしい限りだ。本当に……」

美優「きっと、これからもっともっと人気が出ますよ」

P「所属当初から、オーラ出てましたからね。周囲を圧倒するような凄みというか、鋼鉄の板がガーンと迫ってくるような……」

美優「そ、そうですか?」

P「鮮やかな銀の髪に、眉目秀麗な容姿……クールビューティを体現したかのような出で立ちで」

P「悠然とした雰囲気と、感情を喪失したかのような無表情さからは、何事にも動じない冷静さ、はたまた悟りを開いているかのような達観した意思すら感じられる」

P「傍若無人………いえ、ストイックや孤高と言うべきか。仕事に向かい合う姿勢はいつも勤勉・真摯で、俺も彼女からは学ぶことが───」

美優「……ふふふっ♪」

P「───?」

美優「Pさん。真奈美さんをはじめ色々な人達に、高峯さんのことをそんな風に話してませんか?」

P「んん……、言われてみれば……」

P「(真奈美さん、留美さん、愛海や周子や泰葉………、伊吹や奏も高峯さんの噂をしていたというし、最近はみくとアナスタシアにも…………確かに初めてじゃないかも)」

美優「もっと身近に捉えていい人だと思いますよ? 神様や仏様や女王様じゃないんですし、高峯さんも一人の女性なんですから」

P「そ、そうですね。まあ、担当アイドルという意味で、入れ込んでしまうというか」

P「特別な感情という深い意味ではないですが、少し熱く語ってしまうのは否めませんが…………不思議なものですね」

P「彼女には、それだけ惹かれるものがあるんですよ」

美優「……………」

美優「……ちなみに、私も一人の女性ですからね? Pさん」ムスッ

P「は、はい。肝に銘じます……」
48 :☆2/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 22:24:51.50 ID:pVyNxzTm0

P「……さて」

美優「お仕事ですか?」

P「ええ、『検閲』です。こればっかりは俺の仕事だ」

美優「大変そうですね………なにか差し入れでも買ってきましょうか?」

P「助かります。じゃあ……」

P「何か軽めに、腹の足しになるような物でもお願いします。後でお金は払いますので」

美優「はい、かしこまりました。じゃあ、行ってきますね」

P「ええ、気を付けて」


───ガチャ

バタン


P「………さて、コーヒーでも淹れるか」

P「〜〜〜……♪」ガサガサ

P「……」カチッ

チョロッ


P「……………………………」

P「……げっ。お湯切れてる」

P「ハァ……仕方ない。沸かしてくるかな」

P「最後に使い切った人は補充しておいてくれよなぁ………そんなに皆コーヒー飲んでたか?」

P「いや、どうしようか………暑いし、アイスコーヒーの方が良いな。近いのはエレベーター前の自販機か」

P「…………いや、やっぱり給湯室行こ。金勿体無いし」スッ



───ガチャ

バタン








───ガチャ




のあ「……」スッ

のあ「(傘を忘れたわ……、誰もいないわね)」

のあ「……ふぅ」

のあ「(見つけた、さあ帰ろう。帰ってそうめん食べよう)」

のあ「…………」

のあ「…………あ」
49 :☆3/3 ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 22:28:05.53 ID:pVyNxzTm0

のあ「(プロデューサーさんの机にあるの………私の名前ラベルが貼ってある、コレって)」

のあ「(ダンボール一杯の便箋。コレ……、ふぁ、ファンレターだわ!)」

のあ「……」キョロキョロ

のあ「(事務所に入りたての頃も、雑誌の組み版を盗み見して驚いたことがあったっけ)」

のあ「(たしか、あの雑誌が初めてだったかな。私を女王とか表現してたの)」

のあ「(懐かしいなぁ……)」

のあ「…………」キョロキョロ

のあ「………………」

のあ「(上手く破って、元に戻しておけば大丈夫かな?)」

のあ「(1通だけ……♪)」

のあ「(〜〜……♪)」ガサガサ


────ピリッ
















『辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ
辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ
辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ
辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ』






のあ「ヒッ……!」





───ガチャ


美優「Pさん、小雨が降ってきて、傘を……」

美優「あっ、のあさん。お疲れ様で───」

美優「───!!!」

美優「の、のあさん……?」

美優「あ、あの、…………」



───ガチャ

バタン


美優「……あ、この傘」

美優「……」

美優「(……………………泣いてた?)」

──────
────
──
50 :☆@ ◆AL0FHjcNlc [saga]:2020/03/30(月) 22:29:01.10 ID:pVyNxzTm0
──
────
──────
【放送スタジオ 控室】


フレデリカ「やっぱり、この間のメロン鍋は失敗だったかなー?」

美嘉「名前からして失敗しか予想できないよね? ソレ」

奏「……美波のあんな表情、私はじめて見たわ」

美嘉「どんな?」

周子「なんかこう、ボディブローに耐えつつも慈愛を振りまこうとする女神みたいに生温かく微笑んでたよ」

美嘉「相当耐えてたね」

奏「叱るところはちゃんと叱らないと」

周子「美波ちゃんは根が褒めて伸ばすタイプだからねぇ」

美嘉「食べ物で遊ぶのよくないよ? アンタ達さ」

奏「いいえ、ちゃんと完食したけれど?」

フレデリカ「放送後、スタッフのふみふみちゃんが美味しくいただきました☆」

美嘉「ま……、マジ?」

奏「お好み焼きにして片付けたの」

周子「意外にイケるもんだ。文香ちゃんも頑張って食べてた」
51 :☆A ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:31:44.86 ID:pVyNxzTm0

フレデリカ「デスソースの刺激を中和しようと試みたところ、メロンの甘さにパンチが足りなかったのが敗因かなー?」

フレデリカ「次回はオレンジジュースをベースにした、甘々のフルーツ鍋なんていかが??」

周子「却下します」

美嘉「そーかな? アリじゃない?」

奏「カレーなら合いそうね」

周子「え、マジ?」

奏「水の代わりに野菜ジュースや牛乳を使って、カレーとか作ったことない?」

周子「うえー……想像できないよ」

フレデリカ「そういえば奏ちゃん。伊吹ちゃんからファミマの話を聞いたあと、美波ちゃんと一緒に買い出しに行って1時間戻ってこなかったけど、アレどうしたの??」

奏「………道に迷ったのよ」

美嘉「あはは! 見え見えのウソ付いちゃって、そんなガラじゃないでしょ、奏」

フレデリカ「伊吹ちゃん、なんて言ってたっけ? 確か、近くのファミマに高峯のあさんのソックリさんがいたとか?」

美嘉「フレちゃん、ちょっと詳しく聞かせて?」


ppppppp……!!!



周子「おや?」

周子「のあさんから電話だ」

奏&美嘉「なに?」

周子「プロレス団体のNOHAさんから電話」

奏「ぷ、プロレス団体?」

周子「こう見えても好きなんだ、あたし。チケットの事で、ちょっと出てくるね?」

美嘉「本番始まるよ。巻いてね」

周子「はーい」


───ガチャ
バタン





━━━━━━━━━━
【放送スタジオ 搬入口前】


周子「もしもし」

周子「どうしたんー? 何か用?」

周子「…………ん?」

周子「もしもーし。アレ?」

周子「………………………」





 『ぁグッ……、ゔ、し、周子ぢぁ、……、っ……』





周子「…………」

周子「の、のあさん? どーしたの?」

52 :☆B ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:33:33.09 ID:pVyNxzTm0

周子「泣いてる?」

 『ナ、泣いてな゙い゙ぃぃ……』

周子「酔ってる?」

 『ゔっ、……グズッ、……よ、酔って、酔って、な゙い゙……ッ……』

周子「(風の音がして、向こうの声が聞き取りにくい。のあさん、外歩いてる?)」

周子「何かあった?」

 『ン゙……フー、フー…………ヴウウウウゥ……!!』

 『ヤ、や、やや、…………フー、フゥゥッ……』

周子「?」

 『や゙……、やめ、“辞めろ”ッ!! ……………く、クグ……ッ!!』

周子「!!」

周子「……や、辞めろ?」

周子「誰かに言われた?」

 『……ッ、う、うう、うぁ゙、うっ、ゔ、ゔゔゔゔっ……!!』

周子「………」

 『テ、手紙で…………』

周子「……!!」

 『わ゙、わた、ヷ、私っ……!!』

 『最初は、嬉じかっだのに……、く、く、クールとか、ミステリアスとが言わ、言われて……!』

 『と、戸惑ったけど、み゙っ、皆が、そう、言うから、…………っ!!』

 『が、が、頑張ってたのに……!!』

 『こ、今回の、貴音ちゃんとの、き、共演も、く、クールなカンジで…………』

周子「……ウン。がんばってた」

 『それでも!! や、辞めろ……!!』

周子「……ウン」

 『………………』

 『………………う、ゔゔぅ゙ぅ゙……!!!』

周子「(………)」
53 :☆C ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:34:39.81 ID:pVyNxzTm0

周子「……のあさん」

周子「辞めたい?」

 『………………っ』

周子「事情は少しだけ分かった。本当に酷いコト、言われたね」

 『ウ、ううっ………』

周子「……うまく言えるか分からないけど」

周子「私はね?」

周子「のあさんのそのキャラ、けっこう好きだよ」

 『…………………』

周子「確かにのあさんがアイドル始めたって知った時は驚いたし、クールのキャラで売っているのも、ちょっと不安だったんだ。だって全然クールじゃないし」

 『…………………』

周子「でもね。あたし、今はのあさんと一緒にお仕事してみたいと思ってるよ」

周子「一緒に汗かいて、一緒にテレビ出て、一緒に笑って、一緒に色々なことやって……」

周子「そしたらそれはきっと、すごい楽しい」

 『…………………』

 『…………………』

周子「ゴメン、これから仕事だから……」

周子「終わったらすぐに電話する。のあさん、今外にいるの?」

 『………………うん』

周子「雨強くなってきたし、風邪引かないようにね? 傘持ってたと思うけど……」

 『…………………』

周子「じゃあ、あとでね? ゴメン」









━━━━━外━━━━━
【住宅街 軒下】


のあ「…………………」

のあ「………………ゔ、うぅっ……」

54 :☆D ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:35:47.71 ID:pVyNxzTm0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

凛『……芸能界とかって、よく段階や場数を踏めとか、序列や順序を弁えろとか言われるでしょ』

のあ『……そうね』

凛『実際、こういうLIVEバトルも、ランクやレベルがあまりに違いすぎると高い方は勝手に批判されたり、逆に低い方はややこしい変なウワサが流れたりする』

凛『だから、普通は『新人は控えて、先輩を立てる』ってのが自然の形。暗黙の了解になってる』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




のあ「…………………」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

美優『ネットに取り上げられて話題になること自体は本当に喜ばしいことなんですが、それは逆に言えば…………』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




のあ「…………………」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

P『そして、あのAランクアイドルの話題を掻っ攫うほどのインパクト!』

P『なんてったって、“美人すぎるバックダンサー”ですよ?』

のあ『あの子に勝るというのは………酔狂な錯覚。過大な評価……』

P『ハハハ、またまたご謙遜を』

P『……ただですね? そのことに関して、俺からも一つだけ高峯さんに注意があります』

P『別に、なにも貴女が悪いことをした訳では無いのですが、こればかりはこの業界でも切って離せない事でして』

のあ『?』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





のあ「…………う」

のあ「ゔゔゔっ……、ぐすっ……、ゔぅ゙……!!」


55 :☆E ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:36:36.56 ID:pVyNxzTm0

のあ「(凛ちゃんの言うとおりだった。出る杭は打たれるという事なんだろう)」

のあ「(美優さんとプロデューサーさんが何を伝えようとしてくれたかは分からないけれど、きっと同じような事かもしれない)」

のあ「(何が悪かったんだろう……、どうすれば良かったんだろう……)」

のあ「(何をしていいか分からない……、自分は一体何をやっているんだろう……)」

のあ「…………………」

のあ「寒い……………」

のあ「…………………傘、忘てた……」

のあ「…………………」

のあ「うっ」

のあ「ウウッ、ウッ……!」




 「あの、もし……?」




のあ「…………?」

のあ「(!?)」




 「やはり、貴女でしたか。今宵の雨の中で傘も差さず、如何されたのでしょう」




のあ「ア、あ………え、あ……!」




 「のあ。これも巡り合わせですか」

 「いずれは先日の共演の、お礼に赴こうと考えていた次第でありました」













貴音「不肖この四条貴音の舞台に、力添えをして頂いた、そのお礼を………と」



56 :☆F ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:37:43.65 ID:pVyNxzTm0

━━━━━━一方━━━━━━
【事務所】


P「っ……」

P「封が開けられた手紙が、一通。それがまさか…………」

ちひろ「……なんて不運なんでしょう」

美優「……」

P「俺の責任だ。検閲前のファンレターを本人に覗かれるなんて、迂闊だった……」

美優「“不幸の手紙”………ですか?」

ちひろ「はい。私達の業界ではそう言います」

ちひろ「何の意味も無い、誹謗中傷です。不埒なストーカー紛いの文章、一方的な非難の言葉、グッズをズタズタにした写真、挙句は自身の髪の毛を送ってくる輩もいます」

P「心底気持ちの悪い、クソみたいなイタズラですよ」

美優「……」

ちひろ「……」

P「……すみません。汚い言葉を」

美優「いいえ。私は平気ですから」

P「…………高峯さんは」

P「アンチが極端に少ない人でした。バレンタインの時のチョコやハガキも、イタズラなんて一件たりとも無かった」

P「それは彼女がまだ無名だから、注目度が少ないからという理由もありました」

P「しかし、今回は違います。全国ネットの放送で、陰ながら出演を果たし、ネットで話題になるほどの活躍を見せた」

P「それこそ、多数のファンを抱える、上位ランクの超有名アイドルの話題を掻っ攫うほどの」

美優「……ネットでも書かれていましたね」

美優「晴れ舞台なのに注目されない……、そのアイドルのファンからしたら、屈辱でしょう」

美優「その妬みの矛先が向くのは、やっぱり……」

P「……高峯さんは悪くはありません。もちろん、そのアイドルも」

P「この業界ではいつの時代でも、ファン同士の対立感情が否応なく付き纏う。それがアイドルに飛び火してしまうこともある」

P「ただそれは敵対心ではありません。自分が好きな人を、他の人達にも理解して欲しいという……」

P「紐解けば、単なる愛情表現なんです。それが一時、ほんの少しだけ歪になってしまっただけのこと」

美優「…………」
57 :☆G ◆AL0FHjcNlc [sage saga]:2020/03/30(月) 22:38:34.55 ID:pVyNxzTm0

P「…………」

美優「……涙をいっぱい目に溜めて、口を結んで必死に泣くのを堪えていた様子でした」

ちひろ「あの彼女が……、ちょっと意外ですね」

P「そうですね。普段は落ち着いていて、どんなことにも動じる素振りすら見せないのに」

美優「……Pさん」

美優「さっき、言いましたよね。彼女も一人の『か弱い』女性なんです」

P「…………」

美優「悲しくて、辛くて、とても耐えられないかもしれない」

美優「誰かに優しい言葉をかけて欲しい、自分を励まして欲しい。私が彼女の立場だったら……、きっとそう思います」

ちひろ「……そうですね」

ちひろ「Pさん。彼女に会いに行きましょう」

P「ええ、勿論。ただ……」

P「先ほどから電話が繋がらないんです。誰かと通話中のようで」

P「……まだ遠くには行っていないはず。俺、少し出てきます」

美優「私も行きます」

ちひろ「美優さん?」

美優「……私、彼女が所属した初めの時から少しお話をしたことがありまして」

美優「少しでも力になってあげたいんです」

P「分かりました。では行きましょう」

美優「きっと、一人で心細いはずです。どこかで寂しく泣いているかもしれない」

美優「……彼女が忘れて行ったこの傘、渡してあげないと」















━━━━その頃━━━━
【ラーメン屋】


貴音「この店の常連たる者にのみ許される秘密の注文、『四条すぺしゃる』なるらぁめんをお見せしましょう……!」

のあ「す、すごい……自分の名前……!」

貴音「以前期間限定でコラボした際に考案しためにゅー……、このお店では知る人ぞ知る隠れたぐらんどめにゅーとして採用され……」

貴音「私が来店した際は半額で提供すると、いつも仰って頂けるのです……!」

店主「今日はお友達も一緒だから二人ともタダでいいよ、貴音ちゃん!」

店主「トッピングもじゃんじゃん付けちゃって! いつもありがとね!」

のあ&貴音「!!!」

貴音「で、では…………、全のせをお願いします……!」

のあ「わ、私も……、は、半熟味玉、チャーシュー、し、白髪葱とバター、と、背油、メンマと味付けもやし、あ、あと……フライドガーリック……ッ、お、お願いします……っ!!」

貴音「ふふっ……♪」

のあ「フフフ……♪」
169.09 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)