【ゲゲゲの鬼太郎 6期】「恐怖の異星獣 スペースビースト」【ウルトラマンネクサス】

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4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/08(水) 15:12:02.89 ID:QsocQsYy0
のっけからミスしてしまいました……

>>3はないものとしてお願いします……
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:12:49.94 ID:QsocQsYy0

〜ゲゲゲの鬼太郎第6期 オープニング(2年目バージョン)〜
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:14:05.81 ID:QsocQsYy0
―12月某日:東京都 調布市―

冬休みも間近に迫りつつあるとある日の深夜。

懐中電灯を持った二人組の青年と一人の女性が、郊外にある廃ビルに足を踏み入れた。

廃墟マニアが、肝試し感覚でこの建物に侵入したのである。


女性「ねぇ…やっぱ怖いよ〜」

青年A「だったら、もう帰ってもいいんだぞ?」

女性「それもヤだ〜」

青年A「まったく…最初に『暇だから肝試ししましょ☆』って、言い出したのは何処のどいつだよ」

女性「だって、夜の廃ビルってこんなに怖いなんて知らなかったんだも〜ん……」

青年A「相変わらず面倒な奴……」

青年B「シッ!二人とも、静かにして」

青年A「何だよ!急に」

青年B「何か、音聞こえない?」

青年A「音ぉ?」


青年Bの言う通り、通路の奥からバリバリと言った感じの音が鳴っていた。

まるで、何者かが何かをかじっているような、そんな音が……
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:14:57.53 ID:QsocQsYy0
青年A「な、何だよこの音…?」

女性「ね〜、やっぱ帰ろうよ〜!」

青年B「でも、気になるじゃないか。行ってみよう」


得体の知れない何かがいるかもしれない以上、
女性の言う通り、本来なら引き返すべきだ。

しかし、若さゆえの好奇心か、音の正体を知りたいという欲求が勝り、
結局、青年二人は不安そうな女性を連れて、音のする奥へ奥へと足を進める。


そして、三人はついに音のする部屋へと足を踏み入れた。


青年A「お、おい…何だあれ!?」


辿り着いた部屋の中を見て、三人は驚愕した。

まず、懐中電灯で床を照らしてみると、そこには血らしき赤い跡。

その跡を辿って部屋の奥を照らすと
人間らしきものを貪り食っている、ネズミに似た怪物の姿が……
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:15:43.88 ID:QsocQsYy0
女性「キャアァ―――!!!!」


人を食う怪物の姿を見て、女性が悲鳴を上げる。


怪物『グオ――!』


言うまでもなく怪物は、その声に反応して三人の存在に気付き、彼らの方に顔を向ける。

さすがに危険だと察し、逃げようとした三人であったが時すでに遅し。

怪物は咆哮を上げながら、あっという間に三人の元に走り寄り、そして……
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:16:22.44 ID:QsocQsYy0

『ギャアァァァァ――――!!!!』


『嫌アァァァ――――!!!!!』
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:17:08.94 ID:QsocQsYy0

次の瞬間、廃ビルから二人の男と一人の女の悲鳴が響き渡ったのだった。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:18:16.80 ID:QsocQsYy0

―サブタイトル―

第八十四点五話

恐怖の異星獣 ―スペースビースト―
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:20:14.26 ID:QsocQsYy0
―翌日の夕方―


下校中の『犬山まな』は、友人の『桃山 雅』からある話を聞かされていた。

無論、昨晩の出来事の話しである。


雅「もう知ってるかもだけど、昨日の晩また人が殺されたらしいよ」

まな「またなの?」

「この間も、デュナミスト・バンドの孤門さんの恋人とその家族さんも、殺されたり行方不明になったばっかなのに……」

雅「しかも、事件現場の近くで大きな怪物が目撃されたから、そいつに食べられたんじゃないかとか言われてるみたいよ」

「実際、死体として見付かってる人は、みんな獣に食べられたみたいに下半身から上がないらしいし……」

まな「…………」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:21:23.24 ID:QsocQsYy0
まな(もしかして、妖怪の仕業かな?)


そう考えたまなは、雅と別れた後、足早にゲゲゲの森のゲゲゲハウスへと向かった。


まな「……………」

「いない」


だが、家には誰もおらずもぬけの殻であった。


まな(色々とニュースになってるの知って、調べに出掛けたのかな?)


だとしたら、わざわざ相談に来る必要もなかったか?

いずれにせよ、誰もいないのではここにいてもどうしようもない。

仕方なくまなは、家路につく事にした。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:22:25.13 ID:QsocQsYy0
まな「あーあ、無駄足だったなぁ」


そう呟きながら、いつもの道を歩くまな。

日が落ちるのが早い冬の時期と言う事もあり
ゲゲゲの森から出て、いつもの公園辺りに来た頃には
もう既に日が完全に落ち込んで暗くなっていた。

夜空になった空を見上げて、まなは何かが起きる前に家に帰ろうと思い始めた。


ねずみ男「あひぇ――!誰か助けてえぇぇぇ―――!!」


しかしその時であった。

公園の向こうから、人間と妖怪のハーフであり、
鬼太郎の悪友でもある『ねずみ男』が叫びながらこちらに走ってきたのだ。


まな「ねずみ男さん?」

ねずみ男「そこにいるのは、まなちゃんか?」

まな「どうしたの?そんなに慌てて」

ねずみ男「そうだった!」

「まなちゃん、こんなとこにいねぇで早く逃げろ!じゃねぇと、まなちゃんも『アイツ』に目ぇつけられ………」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:23:31.21 ID:QsocQsYy0

怪物『グオォォォ――――!!!!』
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:26:43.10 ID:QsocQsYy0
「『アイツ』に目ぇつけられるぞ!」と言おうとするねずみ男の言葉を遮るように、
彼の後ろから口から三本の鋭い前歯を生やし、両手に五本の鋭い爪が生えた指を持った、
皮を剥いだネズミのような姿をしたおよそ5メートルくらいのサイズの二足歩行型の怪物が、咆哮を上げながら姿を現した。


ねずみ男「うわあ、もう追い付いてきやがった!」

まな「キャア――!!!!」


ねずみ男が驚く一方、まなは唐突に現れた醜悪な姿の怪物に驚き、悲鳴を上げてその場で腰を抜かしてしまう。

すると怪物は、その悲鳴に反応してまなの方を向くと、
まるでターゲットを変えたかのように、彼女の方へゆっくりと足を進める。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:30:09.17 ID:QsocQsYy0
まな「ひぃ!」


こちらに迫ってくる怪物に怯えるまなだったが、
すぐにねこ娘を呼ぶべきだと判断してスマホを取り出す……のだが、恐怖と焦りで手が震えてスマホが上手く操作できない。

そうしている間に、怪物はまなのすぐ目の前にまで迫る。


ねずみ男「まなちゃん!」


さすがのねずみ男も、彼女を助けに行こうとした。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:31:44.63 ID:QsocQsYy0
怪物『!?』


しかしその時、風を切る音共に二つの下駄が
まなとノスフェルの間に割って入るかのように横切り、怪物は足を止める。
その隙を突くかのように、黄色と黒のちゃんちゃんこを
片腕に巻いた茶髪の少年が、その腕で横から怪物を殴り飛ばした。


『ゲゲゲの鬼太郎』の登場だ。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:33:28.93 ID:QsocQsYy0
まな「鬼太郎!」


親友の一人でもある妖怪の登場に、まなは一気に安心感を抱いた。

一方の鬼太郎も、戻ってきたリモコン下駄を両足に履き戻すと
「大丈夫か?まな」とまなに歩み寄った。


まな「私は平気。ちょっと危なかったけど……」

ねずみ男「鬼太郎〜!来てくれると信じてたぜ〜」

鬼太郎「ねずみ男」

ねこ娘「…てことは、やっぱりアンタが一枚かんでたって訳?」


そして同行していたらしい、鬼太郎の仲間にして幼馴染の『ねこ娘』が、
両腕を組みながら、怖い顔でねずみ男を睨んだ。


ねずみ男「ご、誤解だ!俺も被害者なんだよ!」

まな「ねこ姉さん」

「二人とも、やっぱり例の連続殺人事件の事調べてたんだね」

鬼太郎「あぁ。ねこ娘と一緒に、事件の犯人の手掛かりを捜していたんだ」

ねこ娘「そしたら、なんかこっちの方が騒がしかったから、すぐに駆け付けたのよ」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:36:27.69 ID:QsocQsYy0
怪物『グルルルル…!』


ねこ娘がこの場に来た経緯を説明する中、
怪物が唸り声を上げながら立ち上がり、鬼太郎とねこ娘を睨む。


ねずみ男「お、おい…アイツ怒ってるぞ!」

鬼太郎「父さん、あの怪物は?」

目玉おやじ「わしにも分からん。少なくともアレは妖怪ではないぞ」


鬼太郎の髪の中から現れた彼の父親である『目玉おやじ』はそう言った。

その言葉にまなは驚く。


まな「え!?アレ妖怪じゃないの?」

鬼太郎「そうみたいだ。今まで一度も、妖怪アンテナで妖気を拾う事ができなかった」

ねこ娘「かといって、人里に迷い込んだ野生動物でもなさそうよ」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:37:37.39 ID:QsocQsYy0
怪物『ギャオォォ―――!!!!』


咆哮を上げながら、怪物は鬼太郎とねこ娘に向かってきた。


鬼太郎「来るぞ!」

ねこ娘「ねずみ男、まなを頼むわよ」

「ただし、何かしたら八つ裂きだからね!」

ねずみ男「へいへい、分かりましたよっと」


ねずみ男にまなを預けると、鬼太郎とねこ娘のコンビも怪物に向かって走る。

すると怪物も、自分も臨戦態勢である事をアピールするかの如く、
ジャキンと両手の指を広げて、爪を強調して見せた。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:39:35.65 ID:QsocQsYy0
ねこ娘「ネズミの化け物の癖して、爪で勝負ってわけ?」

「受けて立つわよ!」


ねこ娘は化け猫顔になって、
両手の爪を伸ばすと、鬼太郎を追い抜いて真っ先に怪物を引っかきに掛かる。

当の怪物も爪で応戦。

猫妖怪とネズミのような怪物の鋭い爪対決が展開される。

やはりというか、怪物の方が爪の一撃はかなり重く、ねこ娘は若干押され気味であった。


ねこ娘「ネズミの割にはやるじゃない。けど……」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:40:32.09 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「髪の毛針!」


ねこ娘と怪物が戦っている隙に、鬼太郎は遠くから針と化した髪の毛を発射する。

だが、怪物はすかさず飛び上がって回避。

そのまま空中で体を丸めると、縦回転しながら鬼太郎目掛けて急降下し、
その勢いに任せて尻尾を叩きつけようとする。

鬼太郎もすぐさま反応して空中にジャンプしてかわしたが、
その代わりに尻尾を叩きつけられた地面が砕けてしまった。


目玉おやじ「気を付けろ。こやつ、結構な力があるようじゃぞ」

鬼太郎「そのようですね。…うわ!?」


目玉おやじに忠告されたその直後、
鬼太郎は何かに足を引っ張られて地面に叩き付けられ
その拍子に頭に乗った目玉おやじが落とされる。

見れば、怪物が口から黒い舌を伸ばし、鬼太郎の右足を捕らえていた。


鬼太郎「こんな事も出来るのか…!」


驚きつつ、ちゃんちゃんこに手を伸ばそうとする鬼太郎。
だが、鬼太郎に足に巻き付いた、怪物の舌の先が
なんと細かく分かれて、触手のように絡みつき、鬼太郎の左足以外の全身を覆ってしまう。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:41:15.51 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「く…!体内電気…!」


鬼太郎は、すぐさま体内電気で反撃。

しばし耐える怪物だったが、次第に耐えられなくなって鬼太郎を開放する。

そして、舌を出したまま、鬼太郎を睨みつけたが、
その隙にと言わんばかりに「ニャァ―――!!」という鳴き声と共に
走ってきたねこ娘の爪で、舌を切り落とされた。


怪物『グギャアァ――!』


舌を切断され、悲鳴を上げる怪物。

すかさず鬼太郎は、ちゃんちゃんこで包んだ腕を構えながら怪物に向かう。

それに気付いた怪物は、すぐに左手の爪を広げて引っ掻こうとしたが……
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:41:46.63 ID:QsocQsYy0

鬼太郎「霊毛……」


「ちゃんちゃんこぉッ!!」

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:42:50.14 ID:QsocQsYy0
鬼太郎のちゃんちゃんこパンチで爪を打ち砕かれ、逆に怯まされる。

そして、間髪入れんと言わんばかりに
鬼太郎は、即座にちゃんちゃんこを着直すと右手を銃のように構え
人差し指の先に妖気を集中させる。


鬼太郎「指鉄砲!」


そして鬼太郎は、指先に集中させた妖気を一気に解き放つ。
放たれた妖気は、光線のように一直線に飛ぶと、怪物の胸を貫いた。


怪物『ギャギイ―――!!!』


指鉄砲の直撃を胸に受けた怪物は、後ろに向かって吹っ飛んだのち、爆発して木っ端微塵になった。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:44:03.52 ID:QsocQsYy0
まな「やったー!」


怪物が倒されるのを見て喜ぶまな。

一緒にいたねずみ男も
「いや〜!さすがは俺様の大親友!絶対やってくれるって信じてたぜ〜!」
と言いながら、馴れ馴れしく鬼太郎に近寄ったが、ねこ娘にヒゲを引っ張られてしまう。


ねずみ男「イテテテテテ!な、何すんだよ!」

ねこ娘「すっとぼけるんじゃないわよ!」

「アンタ、あの怪物とどういう関係?」

ねずみ男「な、何だよ!ネズミみてぇな姿してたからって疑ってんのか?」

「さっきも言ったけど、俺も被害者なんだよぉ!」

鬼太郎「じゃあ、何であの怪物に追われていたんだ?」

ねずみ男「それがよ……」


ヒゲを解放してもらいつつ、ねずみ男は怪物に追われていた経緯を語り出した。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:47:05.50 ID:QsocQsYy0
彼は、いつもの如く三人の借金取りに追われていたのだが
丁度その真っ最中に、先程の怪物が何処からともなく出現。

真ん中の一人を爪で引っ掻いて負傷させ、恐怖に震える彼を頭から食べてしまったのだという。
無論、その光景を目にして恐怖で腰を抜かしたもう二人も、漏れなく捕食されたのだが、
最後の一人は味が気に食わなかったのかは知らないが、頭から胸まで食べて止めてしまったのだという。


ねずみ男「で、俺も腰を抜かしてたらアイツに目ぇ付けられて……」

「逃げてる内に、まなちゃんとばったり出くわしちゃったって訳」

「これで分かっただろ?俺は関係ないって」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:48:19.23 ID:QsocQsYy0
まな「借金取りが、頭から食べられたって……」

ねこ娘「確か、死体が残っている人達って、みんな下半身から上がない事が多かったわね」

目玉おやじ「今の話から察するに、これまでの連続殺人事件の犯人は、今鬼太郎が倒した怪物で決まりじゃな」

まな「じゃあ、これで事件は解決したんだね?」

ねこ娘「そうね」

鬼太郎「妖怪じゃないからどうなる事かと思ったけど、問題なく倒せてよかった」

目玉おやじ「……………」



事件は解決したものと認識し、安堵する一同。

しかし、目玉おやじは浮かない表情で、粉々になった怪物の残骸に目(目玉しかないが)を向けていた。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:49:07.38 ID:QsocQsYy0

―深夜―

鬼太郎達も帰り、誰もいなくなった公園で、異変が起きていた。

鬼太郎に粉砕された爪の破片や、怪物の細かな肉片が、
ドロドロのスライム状に変化して一ヶ所に集まり出したのだ。


そして、その様子を不気味な老人が静かに見つめていたのであった。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:51:19.98 ID:QsocQsYy0
―翌日―


この日は土曜日で学校も休みだった為、まなは何の当てもなく外を歩いていた。


まな「暇だから家を出てきたのはいいけど、雅達は用事があって出れないって言うし……」

「今日もゲゲゲの森に遊びに行こっかな?」

「………あ」


その時、まなは市の図書館が目に入った。


まな「そう言えば最近、あんまり本読んでなかったな」

「それに、案外昨日の怪物の事とか載ってる本があったりして……」

「よーし、行ってみよう!」


という事で、まなは図書館で昨夜の怪物の正体を調べる事にするのであった。

そして早速、動物の図鑑などを読み漁る。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:55:05.10 ID:QsocQsYy0
???「…あれ?犬山さん?」


そこへ中性的な出で立ちをした、まなと同い年くらいの黒髪の少年がやって来た。

彼の名は『斎田 薫(さいだ かおる)』

まなと同じクラスの男子生徒の一人だ。


まな「斎田君!君も、本読みに来てたの?」

薫「うん。犬山さんも?」

まな「まあね」

薫「横、座っていいかな?」

まな「いいよ」


彼女の了承を得て、横の椅子に腰かける薫。

座るや否や、持ってきていた本を開く。

見たところ、動物の本であるようだ。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:56:34.94 ID:QsocQsYy0
まな「また動物の本?斎田君って本当に動物好きだよね」

薫「動物は、奥が深いからね。調べれば調べる程、ついついのめり込んじゃうんだ」

まな「あ、それ分かる!去年も、ハナムグリみたいな虫が、花粉を運んでくれてるおかげで…」

「植物が種を残すのを手助けしてるんだって、友達に教えてもらったし」

薫「ハナムグリだけじゃないよ」

「ハチやアブみたいな怒らせると危険な虫も、花粉を遠くに運んでいるんだ」

「でも、最近田舎の環境とかが変わって、そういった虫や生き物が減ってる悲しい現状もあるんだ……」

「メダカやタガメ、ゲンゴロウみたいな水棲生物も、昔は沢山いたのに、今じゃ絶滅危惧種だし……」

「イノシシも、山に食べ物が少なくなって、人里に降りてくる事も多くなったし……」

「生き物って、少しでも生息地の環境が変わっちゃうと…」

「いなくなったり人前に現れて事件を起こしちゃうから、共存するにしても距離感が大事なんだよね」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:57:17.88 ID:QsocQsYy0
まな「距離感か…」

「やっぱり、妖怪と付き合うのもそう言うの大事なのかしら?」

薫「…そう言えば、妖怪の友達いるんだって?」

まな「あれ、知ってるの?」

薫「桃山さんとかが話してるの聞いちゃって……」

まな「雅かぁ〜…なるほど」

薫「…………」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:58:00.44 ID:QsocQsYy0
薫「ねぇ、犬山さんは、その……妖怪の友達の事、どう思ってる?」

まな「? 好きだけど」

薫「好きって…友達として?」

まな「ちょっと、変なこと聞かないでよ」

「さっき自分で、妖怪の友達って言ってたじゃん」

薫「あ…う、うん……そうだね。ごめん………」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:59:30.09 ID:QsocQsYy0
そう言って薫ははぐらかした。

何故彼は、こんな事を聞いたのか?

答えは簡単。

この斎田 薫と言う少年、目の前の犬山まなに恋をしているのだ。

きっかけは、三ヶ月ほど前の事である。

薫は、とあるグッズを買おうとしていたが、
目当てのグッズを前にして、どうにも踏ん切りがつかなかった。

そのグッズと言うのは『ガンバレクイナちゃん』というキャラクターのキーホルダーであった。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:00:04.58 ID:QsocQsYy0
ガンバレクイナちゃんと言うのは、動物を取り扱ったとあるウーチューバーが
絶滅危惧種の保護を応援する為に作った、マスコットキャラクターであり
ヤンバルクイナをチアガールの格好をした美少女に擬人化したものである。

何故ヤンバルクイナなのかと言うと、
このキャラクターを作ったウーチューバーが沖縄出身で、
ヤンバルクイナが大好きだかららしい。

薫はこのマスコットキャラが大好きで、キーホルダーの商品化も望んでいた。
そして、今目の前に望みの物があるわけなのだが
如何せん萌えキャラにしか見えないデザインであった為に、
いざ目の前にすると『欲しいが男性の自分が買っていいのか?』
というジレンマに陥ってしまい、中々購入に踏み切れなかった。

そんな彼の元に、彼女が……犬山まなが現れた。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:02:46.90 ID:QsocQsYy0
まな「あ!斎田君」

薫「犬山さん?どうしたの、こんな所で?買い物?」

まな「そうだよ。そういう斎田君も、お買い物?」

薫「え…?いや……」


答え辛い様子の薫であったが
まなは、彼の見ていた先に目を向けると、
先の、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーが目に入る。


まな「あ!コレ、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーじゃん!可愛いね!」

薫「う、うん……」

まな「斎田君、こう言うの好きだよね?」

薫「え…?」


突拍子もない問いに、薫は驚くもまなはお構いなしに
「だって斎田君、動物好きじゃん」と返した。


薫「そうだけど……」

まな「じゃあ、コレ買いに来たんだね?」

薫「え?あ、ま…まぁ、そんなところ……」

まな「丁度よかった〜。私も買おうと思って来たの。ね、一緒に買おう?」

薫「え?う、うん……」


どうやら、彼女も目的は同じだったようで、
薫は場の流れに流されるがまま、まなと一緒に
ようやくガンバレクイナちゃんのキーホルダーを購入した。

結果的に、彼女のおかげで目当ての品を買う事が出来たのである。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:03:56.66 ID:QsocQsYy0
薫(か、買っちゃった……)

(いや、むしろ喜ぶべき……だよね?)


薫が心の中で呟いている一方でまなは、
早速キーホルダーを出して、「可愛い〜」と言いながら眺めている。

それを見て彼は、まなが当たり前のように、
自分と一緒にガンバレクイナちゃんのキーホルダーを買おうと言い出した事に疑問を抱いた。


薫「…ねえ、犬山さん」

まな「ん?なに」

薫「どうして、僕なんかと一緒に、このキーホルダー買おうって言ったの?」

まな「え?」

薫「いや、だって…このガンバレクイナちゃん、どっちかと言うと女の子が好きそうなデザインのキャラじゃない」

「男の僕が買おうとするの、何か変だとか思ったりしなかったの?」


素直に疑問をぶつける薫。

その疑問に対するまなの答えは、彼にとって実に意外なものであった。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:05:39.27 ID:QsocQsYy0
まな「思わなかったけど」

薫「え…?」

まな「何かが好きなのに、男も女も関係ないじゃない」

「実際蒼馬だって、ああ見えて、このガンバルクイナちゃんに凄いデレデレなのよ?知ってる」

薫「アイツが?マジかそれ!」

まな「マジよマジ!弟の大翔だって同じなんだから」

薫「何それ……ちょっとおもろいんだけど!」

まな「でしょ?けど、言っちゃダメよ。一応クラスのみんなには、内緒って事にしてるから」

薫「一応?それって、知ってる人結構いる奴じゃん!」

まな「そうよ。少なくとも、私含める女子は全員知ってるよ」

薫「はは!やっぱりか……」

「ちょっと、アイツの見る目変わっちゃったなぁ」



まな「……」


「………へぇー」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:08:59.11 ID:QsocQsYy0
薫「…え?なに?」

まな「いやぁ〜『斎田君も、そういう喋り方できるんだな〜』って思ってね」

薫「あ……」


蒼馬の話題に乗っかっている内に、無意識に地が出ていた事に薫は初めて気づいた。


薫「ごめん……イメージ崩しちゃった?」

まな「ううん!全然そんな事ない。むしろ、安心しちゃった」

薫「安心した?」

まな「だって君ってさ、動物の話題が出るとき以外、大人し過ぎて他の男子と違うのかなって思ってたから」

薫「僕って、そんな風に思われてたんだ…」

「ごめんね、心配かけちゃって……」

まな「謝らなくてもいいよ。深刻に考えてたわけじゃないし」

「それに、他の男子と違うとか言っといてこんなこと言うの変かもしれないけど…」

「斎田君は他の男子と違って悪ふざけしないし、真面目に勉強やってるし」

「動物とか大好きで、すっごく優しいじゃない」

「私、君のそういうとこ、好きだったりするんだよ?」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:10:29.96 ID:QsocQsYy0
薫「え!?」


初めてだった。

同じクラスの女子生徒と、話しをした事はない訳ではない。

でも、それは他愛のない会話ばかりで
自分に対する話題も、評価も、出した事も出された事も一度もなかった。

自分の方も、あまり大して目立とうとしなかったから当然だ

しかし、他人に……それも同級生の女子から、
ここまで素直に評価されるとは思ってもみなかった。


そしてこの瞬間、薫は胸が高鳴ると同時に、心臓を矢で射られるような衝撃も感じた。

それが、彼女に……まなに、惚れてしまったと気付くのに、そう時間は掛からなかった。

だが後日、まなは誰でも分け隔てなく接する人物であり、
そのせいで自分に対する恋心には、凄まじく鈍感な人物であった事を思い知らされた。
おまけに、薫自身がシャイな事もあって、中々進展しない。

さすがに辛抱溜まらず、勇気を出して比較的仲のいい男子に相談してみたが……
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:11:07.58 ID:QsocQsYy0
『鈍ちんで態度がデカイ彼女は止めた方がいい』


と、皆口々にまなを恋するのに反対した。

特に必要以上に反対してきたのは蒼馬であり、
薫はどうしてそこまで反対するのかと尋ねても
彼は適当にはぐらかすばかりで、答えなかった。

そしてしまいには、『まなを恋する変人男子』と言われ、いじられまくる始末だ。

ちなみに、女子にはこっそりバラされるのを恐れ、誰にも話していない。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:18:41.11 ID:QsocQsYy0
そして、現在―――

薫は、男子たちにどう言われても、まなの事を諦めずに好意を向け続けていたのだ。

相変わらず、まなは自分に対する好意に気付かず、シャイな自分もまた一歩踏み出せず進展なしだが……

薫は、横で図鑑に目を通すまなの横顔を見る。


薫(…こんなに優しくて可愛い人を諦めるなんて、やっぱり出来ない)


反対する男子たちの姿を思い出しながら
ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを取り出し、それを眺めていた。

まなを恋するきっかけを作ったこのグッズを、彼は御守りの様に肌身離さず持っていたのだ。


まな「あれ?それ、この前いっしょに買った、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーじゃない」


ぼうっとキーホルダーを見つめている事に気付いたのだろう、まなが声を掛けてくる。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:20:14.35 ID:QsocQsYy0
薫「そ、そうだけど」

まな「大事に持ってたんだね?」

薫「うん。あれからずっとね……」

まな「よかった。大事にしてて……」


「とか言って、私はいつも家においてたりするんだけどね」
と、舌をペロッと出した表情と共に、罰の悪そうに付け加えた。

その際のまなの表情に、薫は改めて胸がときめいた。


薫(やっぱり、諦められないなぁ……)


改めて、自分はまなの魅力から逃れられなくなっている事を
実感する薫だが、当のまなはそんな事など全く気が付いていない。





そして、そんな二人を、窓の外から見詰める不気味な視線があった。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:24:09.36 ID:QsocQsYy0

老人「……………」


そして、同じ場所には昨晩の不気味な老人の姿もある。

老人は何かを確認すると、その場を歩き去ったのだが
不思議な事に日陰に差し掛かると溶け込むように、忽然と姿を消してしまうのだった。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:25:52.31 ID:QsocQsYy0
―ゲゲゲの森 ゲゲゲハウス前―

鬼太郎は、自宅に続く桟橋前にある妖怪ポストをチェックしていた。

肝心のポストの中は、空っぽであった。


鬼太郎「依頼の手紙はなしか……」

「今日はゆっくり休めそうですね、父さん」

目玉おやじ「…………」

鬼太郎「どうしました?」

目玉おやじ「ん?あ、いや……ちょっと考え事をな………」

鬼太郎「…………」


どうも浮かない様子の父親が気になった鬼太郎は
「とりあえず、お風呂にでも入りますか?」と聞くと、
目玉おやじは、「あぁ、ひとっ風呂浴びて、ゆっくり考えるとするわい」と返した。

こうして普段通りに家に戻った鬼太郎だったのだが……
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:27:21.25 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「!!!!」

目玉おやじ「どうした鬼太郎?」

「…………んな!?」


家に入った途端、息子の様子がおかしくなったので、
一旦髪の毛の中に引っ込んでいた目玉おやじは
再びひょっこり顔を出して、ひと部屋しかない自宅の中に目を向けると
そこには、明らかにこの家の者でもなければ、この森の住民でもない不気味な老人が
さも当然のように、ちゃぶ台の前で正座をして座っていたのだ。

その老人は、つい先程まなと薫がいる図書館の前で
何かを見ていた老人であり、鬼太郎親子がよく知る人物……否、妖怪であった。

それは…………
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:27:57.56 ID:QsocQsYy0


鬼太郎「ぬらりひょん…!」

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:30:02.77 ID:QsocQsYy0
妖怪の復権を狙う、日本妖怪の大物……
総大将とも呼べる男であり、気配を消して行動する天才。

妖怪でありながら、日本の政治家にも顔が利き、
彼らを利用しては数多くの妖怪を懐柔し、『同志』にしている策士だ。

その策士でもあり総大将でもある老人妖怪は、鬼太郎親子の方を振り返りながら
「これはこれは……またしてもお邪魔していますよ、鬼太郎君に目玉の親父さん」と
これまた、さも当然のように挨拶をした。


目玉おやじ「おまえ、また何の用じゃ!」

ぬらりひょん「おやおや……お客さんに向かって、随分と失礼な物言いですな」

目玉おやじ「人の家に勝手に上がり込んでおいて、失礼もへったくれもあるか!」

鬼太郎「父さんの言う通りだ。早く出て……」

ぬらりひょん「いいのですか?ここで私を追い出したら、昨日のネズミの怪物の正体が分からなくなりますよ?」

鬼太郎「!?」


昨晩の怪物の話題を振ってきたぬらりひょんに、鬼太郎は驚いた。

目玉おやじも同様だ。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:31:08.55 ID:QsocQsYy0
目玉おやじ「どうしてお前が、あの怪物の事を知っとるんじゃ!?」

鬼太郎「まさか、アレは貴様が……!」

ぬらりひょん「滅相もない。私の目的は、この間も申した通り妖怪の復権…」

「あんな『ケダモノ』を使っての殺戮ではありませんよ」


怪物との繋がりをきっぱり否定すると
正座をしていたぬらりひょんは、ゆっくり立ち上がって鬼太郎の方を向き直る。


ぬらりひょん「『いせいじゅう』」


鬼太郎「え…?」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:32:57.39 ID:QsocQsYy0
ぬらりひょん「異(い)なる星の獣と書いて『異星獣』。それがあの怪物の正体です」

「尤も『スペースビースト』と呼ぶのが一般的らしいですがね」

鬼太郎「異星獣…?スペース……ビースト………?」

目玉おやじ「異なる星と言う事は、あの怪物は宇宙から来たとでもいうのか!?」

ぬらりひょん「そんなところですよ。といっても、単に宇宙から来たのではありません」

「我々が住む、この世界……もといこの宇宙とは、別の次元の宇宙からやって来た存在なのです」


そう言ってぬらりひょんは、次のような事を語りだした。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:33:50.95 ID:QsocQsYy0
ぬらりひょん「話は、あのケダモノが元居た次元で始まりました」

「スペースビーストは、突如としてその次元に姿を現した。そして、その次元に住む知性ある者達…」

「即ち…人間をはじめとした、知的生命体に牙を向いたのです」

「自分達の餌である『恐怖』を食べる為に」

鬼太郎「恐怖を食べる?」

ぬらりひょん「人々が抱く感情エネルギー。その一種である『恐怖』……それが、ビーストのエネルギー源なのです」

「それ故ビーストは、醜い姿で人前に現れ、自身の姿と脅威を目の当たりし、恐怖した人々を感情エネルギーごと捕食する」

「今回現れた『ノスフェル』というビーストも、その為に人間どもを喰い殺して回っていたんですよ」

鬼太郎「ノスフェル。それが、昨日の怪物の名前か」

目玉おやじ「しかしそのスペースビーストのノスフェルとやらが、どうしてわしらの世界に?」


ぬらりひょん「…ざっくり言うと……」




「美味い餌が少なくなったからですかな?」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:35:09.53 ID:QsocQsYy0
目玉おやじ「餌が少なくなった?」

ぬらりひょん「以前ビーストが標的にしていた、とある星の人間どもが、ある巨大な戦士に感銘を受けて恐怖を越えた希望を抱き…」

「それらに対抗する勢力と組して、対ビースト抗体を開発したのです」

「結果、恐怖の感情エネルギーの質が落ち、抗体のせいで勢力も著しく衰えてしまった」

「だからいい餌を求め、他の星や宇宙に旅立つビーストも幾つか現れだしたのです」

「まるで、土地開発で餌が減少し、人里に降りてくるようになった動物の様に……」

「相変わらず人間という生き物は、余計なことばかりしてくれますなぁ」

鬼太郎「昨日のノスフェルは、その内の一匹だと言うのか?」

ぬらりひょん「まあそんなところです」

「この世界では、人々の憎悪と言った負の要素が蔓延する事が度々ありますよねえ」

「恐らく、それらに引っ張られて来てしまったのでしょう」

鬼太郎「…………」


これで、怪物の正体やこの世界に現れた経緯自体ははっきりとした。

だが、それでもまだ分からない事がある。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:36:07.96 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「どうして今更、そんな事を教える?」

「お前も、知ってるだろう?ノスフェルは、僕が倒した。もう奴は……」

ぬらりひょん「『現れない』。そんなに簡単に、断言してしまっていいのですか?」

「相手は、我々妖怪とも全く違う存在。あれしきの事でくたばる保証はありません」

「第一君は、奴の事を注意深く観察しましたか?『弱点』らしき部分を見付けたりしましたか?」

鬼太郎「そ、それは……」


返す言葉がなく、動揺する鬼太郎。

その反応を見て、ぬらりひょんはフッと笑みを浮かべた。


ぬらりひょん「話しは、ここまでです」

「後は『奴と会った事のある人』から、情報を引き出せばいいでしょう」

「では、これで……」


そう言い残して、ぬらりひょんは家を出ようと歩き出した。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:37:15.25 ID:QsocQsYy0
目玉おやじ「待て!お前さん、どうしてビーストとやらついて、そんなに詳しいんじゃ?」

「わしでも知らない情報を、一体何処から……」


そのさ中、目玉おやじはビーストの情報源を尋ねたが
ぬらりひょんは無視して、家を出ていった。


ねこ娘「鬼太郎、いる〜?みんなで遊びに来たんだけど……」


するとそれと入れ替わるように
ねこ娘が砂かけばばあ、子泣きじじい、一反もめんとぬりかべを連れてやって来た。


鬼太郎親子「「………」」

ねこ娘「あ、あれ?」

一反もめん「どしたとよ?二人して怖い顔して」


二人の並々ならぬ様子に、状況を呑み込めないファミリー一同。

それから、鬼太郎の家に上げてもらった
(と言ってもぬりかべは大きすぎて入れない為、窓からお邪魔だが)
四人は、先程のやり取りを彼らに話した。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:37:45.14 ID:QsocQsYy0
ねこ娘「まさか、ぬらりひょんがまた来ていたなんて……」

砂かけばばあ「しかも、昨日倒した怪物とやらの正体まで知っておるとは」

子泣きじじい「あまりにも詳しすぎて、逆に怪しいぞい!」

ぬりかべ「口から出まかせかもしれない」

目玉おやじ「確かに、何故あそこまで詳しいのかという疑問はある」

「だが、無意味な出まかせを言いに来たとも思えん」

「それに……悔しいが、わしもぬらりひょんの言う事には、一理あるんじゃ」

「あのノスフェルは、わしですら知らなかった怪物……」

「正体も分からんのに、完全に倒した事にしてしまっていいものかと、ずっと疑問だったんじゃ」

鬼太郎「だから、ずっと浮かない様子だったんですね」

一反もめん「だったら、もう一度そのノスフェルっちゅー奴倒した公園ば、行ってみた方がいいんじゃなかとね」

鬼太郎「言われないでもそうするつもりさ」


こうして、鬼太郎はねこ娘達を連れて昨日の公園に行ってみた。

すると………
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:38:42.31 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「これは……」

目玉おやじ「やはり、無くなっておる」


その公園には、昨日の夜まであったはずの、ノスフェルの残骸が跡形もなくなくなっていた。


子泣きじじい「人間の業者が、片付けてしまったんじゃないか?」

目玉おやじ「そうだといいが、ぬらりひょんがわざわざ教えに来るような相手じゃ。そうはいかないじゃろう」

砂かけばばあ「もしも奴が、やられた振りをしとったのだとしたら、一体何処へ行ったというんじゃ?」


ねずみ男「よう!オメェらどうした?そんな大勢で、こんなちっこい公園に集まってよぉ」


困惑しているファミリーの元に、ねずみ男がやって来た。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:39:23.52 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「ねずみ男」

ねこ娘「アンタこそ何やってんのよ!」

ねずみ男「別に何もしてねえよ。んまあ、強いて言うなら、金になるような話を探してたってことくらいだな」

砂かけばばあ「お前さんは、相変わらずじゃのう…」

子泣きじじい「こんな奴に付き合う時間なんかない。さっさと、ノスフェルとかいうのを探しに……」



鬼太郎「ねずみ男、丁度いいところに来てくれた。お前に聞きたい事がある」



無視してノスフェルを探そうと
子泣きじじいが言おうとするのを遮るかのように、鬼太郎がねずみ男に問いかける。

子泣きじじいをはじめとした一同は、少々驚いたが
問いかけられたねずみ男は気にせず「なんだ?」と返した。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:40:10.25 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「まながあの怪物に襲われたのは、お前があの怪物と遭遇して、ここまで逃げたからだったな?」

ねずみ男「何だよ…まなちゃんを危険に晒したの、まだ根に持ってんのかよ」

鬼太郎「そうじゃない。あの怪物に遭遇した時、何か変わった事はなかったか?」

ねずみ男「変わった事?う〜ん…そうねぇ…………」


顎に手を当てて、自分の記憶を探るねずみ男。

少しすると、「あ!そう言えば…」と声を上げる。


鬼太郎「やっぱり、何かあったんだな?」

ねずみ男「あぁ!」



「ネズミだよ!ネズミ!」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:41:14.71 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「ネズミ?」

ねこ娘「それってアンタでしょ」

ねずみ男「ちげーよ!あの借金取り皆殺しにしたバケモンが出てくる前に、ピンク色したネズミを見たんだよ」

ねこ娘「ピンクのネズミ?そんなの聞いた事ないわ」

鬼太郎「ピンク色のネズミ……」



鬼太郎は、昨日のノスフェルの姿を思い出した。

あのノスフェルというスペースビースト
皮をはいだネズミのような姿をしていて、それ故ピンク色の体色をしていた。

単なる偶然とは思えない。

ぬらりひょんの言うように、ビーストという存在は妖怪とも全く違う。

関連性は疑うべきだ。


少し悔しいが
「『奴と会った事のある人』から、情報を引き出せばいい」
というぬらりひょんの一言が役に立つとは、思わなかった。


しかし、ピンク色のネズミの話しは、これで終わりではなかった。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:41:57.59 ID:QsocQsYy0
ねずみ男「そう言や、さっきもそれっぽいネズミ見たな」

鬼太郎「それは本当か!?何処で見た?」

ねずみ男「向こうにある市の図書館だよ」

ねこ娘「あっちにある図書館ね?」

鬼太郎「行くぞ!」

「…ねずみ男も来い!」

ねずみ男「え?何で…って、うわあー!」


こうして鬼太郎ファミリーは、ねずみ男を無理矢理連れて市の図書館に向かった。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:53:28.18 ID:QsocQsYy0
一方、まなと薫は市の図書館を出て、街中を歩いていた。


まな「あーあ、結局なんにも分からなかったなぁ……」

薫「そう言えば犬山さん、何を調べてたの?動物の本、集中的に読んでたけど」

まな「最近騒ぎになってた、例の連続殺人事件の犯人の怪物の正体。昨日、鬼太郎が倒してくれたんだけど……」

薫「え?あの事件の犯人って、妖怪だったの?」

まな「ううん…違うらしいの。だから、ちょっとだけ気になってね」

薫「へぇ……」

まな「……とにかく、今日はここでお別れだね」

薫「あ、うん……そうだね」

まな「じゃ、また明後日学校でね!」

薫「うん…学校で、ね……」


薫は寂しそうにしながら答えた。

実はこのまま、デートに持ち込もうと考えていたのだが
彼女のペースに流されてしまい、誘いを持ち出す事ができなかったのだ。

そんな彼の本心など露知らず、まなは家路につき、薫はその背中を見送った。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:54:16.53 ID:QsocQsYy0
薫「……………はぁ」


どうして自分は、肝心な時に強気に自分のペースに引き込むことが出来ないんだろう?

溜め息を吐きながら、薫は心の中で嘆いた。


薫「……………」

「……行こうか」


トボトボと、その場を歩き去る薫。

謎の視線がその一部始終を見ていたと知らずに……
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:54:57.46 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「ここだな」

ねずみ男「たく、もお……何で俺まで連れてこられんだよ!」


まな達が去った後に、市の図書館に辿り着いた
鬼太郎ファミリーであったが到着して早々、ねずみ男が愚痴る。

そんな彼に対し鬼太郎は
「お前がいないと、どんな感じのネズミなのか分からないだろう」と返した。


ねずみ男「確かに、そのネズミ見たのは俺しかいないけどよぉ……」

鬼太郎「そのネズミは、どの辺りにいるんだ?」

ねずみ男「そこの木の上だけど……」

「あれ?いねぇなあ……さっきまでいたのに」


彼の言う通り、そのピンク色のネズミがいたとされる木の上には、何もいなかった。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:55:39.62 ID:QsocQsYy0
砂かけばばあ「お前さん、本当に見たのか?」

ねずみ男「本当だって!俺様の言う事が信用できないのか?」

砂かけばばあ「ああ!」

ねずみ男「……………」


予想以上に迷いなく答える砂かけばばあに、ねずみ男は絶句した。

一方、ねこ娘はピンク色のネズミがいたとされる
木の周りをじっくり観察すると、その木は丁度、図書館の窓の向かい側にあった事に気付く。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:56:29.90 ID:QsocQsYy0

ねこ娘(本当にそのピンクのネズミがいたのだとしたら、あの窓の中を覗いていた事になる……)

(となると、誰かを見ていた事になるわよね)

(一体、誰を……?)


ねこ娘は、昨日の出来事を思い返した。

昨日の戦いでノスフェルと会ったのは、自分と鬼太郎親子とここにいるねずみ男。

そして…………
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:57:29.78 ID:QsocQsYy0
ねこ娘「!」

鬼太郎「ねこ娘?」


何かに気付いたねこ娘は「みんな、ここで待ってて」と言って図書館に入っていく。

そして、少しするとすぐに戻ってきた。


ねずみ男「おいおいおい、一体どうしたんだよ?いきなり図書館に入ったりして」

ねこ娘「『彼女』が来てなかったか、聞いてきたの」


そう言ってねこ娘は、自分のスマホに保存していたまなの写真を一同に見せた。


鬼太郎「まな?」

ねこ娘「えぇ…」

「それで、聞いてみたら、やっぱり来てたって」

ねずみ男「でも、それがどうしたって………」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:58:26.56 ID:QsocQsYy0
目玉おやじ「なるほど!そういう事か!」

鬼太郎「父さん?」

目玉おやじ「もしもねずみ男が見た、ピンク色のネズミがノスフェルが化けた姿と仮定して…」

「それが、まなちゃんが来ていたこの図書館にいたのだとすれば、目的はひとつしかないのではないか?」

鬼太郎「…そうか!」

「ノスフェルからして見れば、まなは取り逃がした獲物!」

「小さくなって、彼女を食べる機会を窺っている……そうですね?父さん」

目玉おやじ「その通りじゃ!」

子泣きじじい「だ、だったらこうしちゃおられん!」

砂かけばばあ「あぁ!ねこ娘」

ねこ娘「そう言うと思って、今レインで何処にいるか聞いてみたわ。もうすぐ返事が来るはず……」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:59:03.17 ID:QsocQsYy0

まな「…あれ?ねこ姉さんからレイン来てる」


まなはスマホの画面に映る、ねこ娘のメッセージに目を通す。

それは、「まな、今どこにいるの?」とだけ書かれたシンプルなものであった。

唐突なメッセージの送信を不思議に思いつつも、まなは即座に返事を送った。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:00:07.93 ID:QsocQsYy0
ねこ娘「来たわ」

目玉おやじ「一体何処にいると?」

ねこ娘「今、家に帰ってるところで、もうじき着くって」

鬼太郎「とりあえず、無事みたいだな」

子泣きじじい「まずは一安心じゃ」

目玉おやじ「だが、油断はできん。今からみんなで、まなちゃん家で張り込みじゃ!」


ねずみ男「何か良く分かんねぇけど、頑張りな」


まなの周辺を見張る事で話が纏まる中
ねずみ男はそう言ってその場から離れようとしたが
鬼太郎は「待て、ねずみ男!」と言って引き止めた。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:00:49.64 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「お前も一緒に張り込むんだ」

ねずみ男「何でだよ!もう十分協力してやったじゃねぇか!」

鬼太郎「お前もあの怪物と接触しているし、ピンク色のネズミまで見ているんだ。お前も狙われない可能性はない」

「それに、お前ならそのネズミが普通のネズミかどうか、区別できるだろう。だから一緒に来るんだ」

目玉おやじ「鬼太郎の言う通りじゃ」

「どうせお前さんは碌な事しかせんのじゃ。今回は黙って、わしらの言う通りにしてもらうぞ?」

ねずみ男「チッ!こんな時に限って、調子のいい奴らだぜ…」


愚痴りながら、ねずみ男も渋々同行する事になったのであった。

こうして、犬山家を見張るようになったのだが、
この判断が大きな誤りであったとは、この時まだ誰も知らなかった……
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:03:00.40 ID:QsocQsYy0
薫「ただいま」


あれから数時間経った夕方……

薫は、予定通り昼食を済ませ、動物園の動物を見て回った末に帰宅した。

家に帰れば、父親の『斎田 博(さいだ ひろし)』と
母親の『斎田 涼子(さいだ りょうこ)』が待っていた。

犬山家同様、彼らも夫婦共働きしているが、
彼らの職場は、珍しい事に土日は決まって休みである。


博「お帰り薫」

涼子「薫ちゃん、もうご飯できてるわよ」

薫「分かったよ。でも、その前にお姉ちゃんに挨拶してくるね」


そう言って薫は、手洗いうがいを済ますと
高校生くらいの少女の遺影が置かれ、その前に一万円と
招き猫のポーズで胡坐をかいたネズミの格好をした3期ねずみ男に酷似した貯金箱が供えられた
仏壇のある和室に向かい、その仏壇の前に正座して、おりんを鳴らして手を合わせる。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:04:17.24 ID:QsocQsYy0

この遺影の少女の名は『斎田 理子(さいだ りこ)』。

斎田家の長女で、薫の姉だ。

薫同様、動物が大好きで動物の絵を描くのが趣味だったのだが
1年前の修学旅行の際、とある県にある
眞也山(しんやさん)山中の溝呂木トンネルの崩落事故に巻き込まれ
若くしてこの世を去ってしまった。

姉が大好きだった彼は、家に帰ると必ず仏壇にお参りするのが日課となっていた。

そして、今日の出来事を報告するのも……
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:04:46.44 ID:QsocQsYy0
薫「お姉ちゃん、今日犬山さんに会ったんだ」

「だから、ついでにデートに誘おうと思ったんだけど…」

「向こうから、先に帰るって言い出されて結局できなかった」

「お昼を食べた後、改めて動物園一緒に行こうって誘えたはずなのにね」

「ほんと駄目だよね僕……」

「彼女を好きになってもう三ヶ月なのに、振り向いてもらう努力すらしてないんだよ?」

「なんかこう……いざ目の前にすると、どうにも踏ん切り突かなくってねぇ…………」



黙々と仏壇の姉に話しかける薫。

だが、姉からの返事が返ってくるはずはない。


薫「…………」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:05:13.37 ID:QsocQsYy0
薫(死んだお姉ちゃんに話したところで、答えなんか出る訳ない)

(……ご飯、食べよ)


こうして、日課を済ませてリビングに向かう薫。

その姿を窓の外から見つめている、不気味な視線が合った。

その視線の正体は、ねずみ男が見たという……
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:07:15.57 ID:QsocQsYy0




ピンク色のネズミのものであった。




78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:08:12.97 ID:QsocQsYy0

アイキャッチ:フィンディッシュタイプビースト ノスフェル
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:09:41.62 ID:QsocQsYy0
今パートはここまでです。

当初は、前回投稿した4期の続きのようなものを投稿する予定でしたが
去年のクリスマスが近付いているさなかに、パッと思いついた後、年越し後に執筆を開始。
そして、色々とあった末に、6期本編が終わったこのタイミングになってしまいました。

何はともあれ、以下は補足や裏設定などとなります。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:15:01.18 ID:QsocQsYy0
デュナミスト・バンド・・・6期鬼太郎の世界に存在するバンド。
名前の元ネタは言うまでもなく『ウルトラマンネクサス』に登場する
ウルトラマンに選ばれた人間を指す単語、適応者(デュナミスト)。
メンバーの一人である孤門さんの元ネタも、言うまでもなく同作の主人公。
こちらの世界でも、ノスフェルによって恋人を奪われる運命から逃れられなかったようです。

裏設定として、メンバーは孤門さんを含め
真木さん、姫矢さん、千樹さん、そして紅一点の西条さんの五人という設定。
代表曲は「英雄」。
他のメンバーの名前の元ネタも、『ネクサス』でデュナミストになった人達。
代表曲はまんま同作のオープニングテーマ。


異星獣=スペースビースト・・・『ULTRAMAN』及び『ウルトラマンネクサス』に登場した敵怪獣の一群。
M80さそり座球状星団からやって来た、知的生命体の恐怖の感情をエネルギーにする謎の宇宙生命体で、その誕生の経緯は不明。
唯一分かっているのは、知的生命体にとって害悪であるということ。
来訪者の故郷を滅ぼしたり、ダークザギの手引きでザ・ワンとして
地球に飛来してウルトラマン・ザ・ネクストに倒されて、その破片が地球の生物やエレメントやらを取り込んで現在の姿になった。

ぬらりひょんの語る、ビーストの身に起きた出来事は『ネクサス』の最終回のその後であり
強化されたTLTの尽力により、孤門の住む世界ではビーストの出現は続いているものの
ウルトラマンネクサス(ノア)がいた時ほどの脅威ではなくなっており、満足に恐怖の感情の摂取効率が悪くなり
増殖力も悪くなった為、地球に在留していた個体のいくつかは宇宙へ旅立った。
その旅立った個体のいくつかが、ギャラクシークライシスやウルトラ・フレアの時空の歪みに巻き込まれて現れたのが
『大怪獣バトルシリーズ』や『ウルトラマンX』などに登場したビースト達だった……

というのが、当方の解釈です。

しかし、本作のノスフェルがこちらに来た理由は、ちょっと特殊だったりします。

なお、ぬらりひょんが孤門が住む世界の人間がビーストにした事を
ちょっと悪く言っていますが、妖怪の復権を狙う彼はあくまで人間を否定する立場いるので
どんなに孤門の世界の人々に大義名分があろうと、それを認める訳にはいかない。
それでいて、向こうの世界の事情を知らない鬼太郎に
少しでも人間達に対する悪印象を植え付けてやろうという事で、孤門達の世界の人々を悪く言ったわけです。

こんな時でも人間を悪者扱いする事を欠かさなかった……っと、解釈していただければ結構であります。

実際、TLTや孤門らが対処しなければ、人類にとって害悪でしかないのは明らかですからね。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:15:52.32 ID:QsocQsYy0
以上となります。

次回パートの投稿は未定なので、気長にお待ちください。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:06:33.77 ID:d5HixjwK0
時間ができたので、続きを開始します。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:07:12.40 ID:d5HixjwK0

CM開けアイキャッチ:ねずみ男
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:08:15.33 ID:d5HixjwK0
あれから、一週間と二日が経った月曜日。

鬼太郎ファミリーは、張り込みはもちろん
化けガラスに監視させたり、学校内での様子はぬりかべや花子さんに見張らせたり
ねずみ男にまなの周辺のネズミに聞いて回らせたりと
あの手この手で、ノスフェルらしきピンク色のネズミを見付けようとしたが
依然として姿を見せる気配はなかった。


そして、夕方のゲゲゲハウス……
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:09:54.00 ID:d5HixjwK0
鬼太郎「みんな、どうだった?」

ねこ娘「カラス達の方も全然だって」

ぬりかべ「オレも、花子達と見張ったけど、全然変わりなかった」

鬼太郎「…あれ?ねずみ男は?」

ねこ娘「金になりそうな話でも見付けたのか、いつの間にかいなくなっちゃったわ」

「まったく、まなも自分も危ないかもしれないっていうのに……」

鬼太郎「じゃあ、後でカラス達に探させておくよ」

目玉おやじ「…しかし、ノスフェルは何故、姿を現さんのじゃろうか?」

一反もめん「やっぱり、やられた振りしとったっちゅーのは、考え過ぎたったんじゃあなかとね」

鬼太郎「……………」


そう言われたところで、鬼太郎は納得しない。

一体、自分達は何か見落としているのか?

そう考えていると、ぬりかべが話しかけてくる。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:12:53.32 ID:d5HixjwK0
ぬりかべ「鬼太郎。オレ、明日の見張り休みたい……」

鬼太郎「どうしてだ?」

ぬりかべ「まなちゃんの見張りもそうだけど、先週からずっと、優美のコーチの仕事もやってたから、クタクタなんだ……」

鬼太郎「優美って確か、まなの学校でテニスやってた……」

ねこ娘「彼女との関係、まだ続いてたんだ」

鬼太郎「父さん、どうします?」

目玉おやじ「疲れたままの状態では、何かあった時心許ない」

「それに、まなちゃんの周りで何も起きないという事は、目の付け所を間違えた可能性も考えねばならん」

「もう一度これまでの奴の行動を整理して、考え直そう」

鬼太郎「分かりました、父さん」

ぬりかべ「よかった…休める……」


安堵しながら帰っていくぬりかべ。

それから鬼太郎ファミリーは、残ったメンバーでノスフェルの捜索方針を考え直す事に決めたのだった。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:14:11.96 ID:d5HixjwK0
―斎田家―

博も涼子も、今日は早めに仕事が終わったらしく自宅におり
涼子はいつものように、中学校から帰ってくる息子の為、夕飯の準備をしていた。


涼子「…………」

「…あら?」


その時だった。

彼女が、コンロの方へ向かおうとそちらを向いてみれば
そこにはピンク色のネズミが、涼子の方をジッと見ていた。

涼子「ね、ネズミ!?」

「で、でも、何か色がへ…………!?」


色が変だと思ったその時、ピンク色のネズミは目を怪しく光らせると、
みるみるうちに大きくなっていき、そして………
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:14:58.97 ID:d5HixjwK0

涼子「きゃあ――!!」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:16:47.88 ID:d5HixjwK0
博「涼子?どうし……!!」


リビングでくつろいでいた博は
妻の悲鳴を聞いて、キッチンの方を振り返ると、途端に体が固まってしまう。

何故なら、キッチンには、得体の知れない大きな影が立ち尽くしていたのだから。


『グルルルル……』


大きな影は、すぐさまリビングにいる博に視線を向ける。

その視線は、彼らの息子に向けられていたものと同じであった。


博「ひ…ひぃ!」


怯える博。

そんな彼に対し、不気味な視線は容赦なく迫っていき、そして……
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:17:36.14 ID:d5HixjwK0
一方、自宅でそんな事が起きているなど知らない薫は
普段通り、学校での授業を終えて、帰宅の路についた。


薫「あ……」


その時、目の前に同様に帰宅中のまなの姿を目撃する。

だが、一人だけではない。

蒼馬や雅といった、珍しいメンツが一緒だったのだ。


薫「……………」


薫は、声をかけようと思ったが、出来なかった。

友達と一緒にいるので、声を掛けづらいというのもあったが
何しろ、自分の恋路をやたらと全面反対している蒼馬がいた為
近付きたくても近付けなかったのだ。

なので彼は、悔しさを胸にその場を離れるしかなかった。


薫(駄目だな、僕……)

(アイツ(蒼馬)のこと怖がって、大好きな人に近寄れないなんて、馬鹿らしい……)

(でも、いざ目の前にすると、勇気が出ないんだよなぁ………)


心の中で呟きながら、薫は胸ポケットから
ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを取り出して
それをジッと見ながら、まなの事を思い出した。

そして、「はぁ…」と溜め息を吐いて
キーホルダーを胸ポケットに戻すと、足早に自宅に帰ったのだが…………
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:19:02.81 ID:d5HixjwK0
薫「ただいま……」


「…………………」


「…………………あれ?」


いつも通りに帰宅したのだが、すぐさま彼は異変に気付いた。

普段は返ってくるはずの両親の「お帰り」の声が聞こえてこず
家の中は、電気もついていなくて真っ暗。

そして何よりもおかしかったのは、床や壁といった木で出来た部分が
不自然に削り取られた跡がある事であった。

彼のいる側からは見えないが、それは和室や姉の仏壇も同様だ。

それはまるで、巨大なネズミがかじったかのような跡であった。


薫「お父さん?お母さん?」


靴を脱いで家に上がり、恐る恐る父と母を呼んでみる。

すると、リビングの方から、カリカリと何かが削れる音が鳴っている事に気付く。

なので、床や壁同様にボロボロになったドアをゆっくりと開けて、中を覗いてみると……
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:19:51.81 ID:d5HixjwK0
薫「!!!!」


次の瞬間、中の光景に薫は絶句した。

そこには、父と母がいたのだが、二人とも体の一部……
特に腕の色がおかしくなっており
ネズミのように、壁やテーブルの足をガリガリとかじるという異常行動を行っていたからだ。


薫(まさか、家がこんなにボロボロなのは……!)

(で……でも、何でお父さんとお母さんが?)









『ぢぅ……』
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:21:30.80 ID:d5HixjwK0
薫「え…?」


両親の異変に困惑していると
異様に低い鳴き声が後ろから聞こえ、薫は振り返る。

その先には、ピンク色のネズミが自分の方を見ていた。


薫「ね、ネズミ?でも、こんな色したネズミなんて……」


いるはずがない。


動物好きな彼は、すぐにそのネズミが異常なものである事を察するが
直後、そのネズミはみるみるうちに大きくなっていき……
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:21:57.31 ID:d5HixjwK0
『グオオォォ―――!!!』


その姿は、大きな怪物へと変化した。

それは、鬼太郎に倒されたはずの、あの怪物……
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:23:01.80 ID:d5HixjwK0

テロップ:ノスフェル
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:24:38.64 ID:d5HixjwK0
薫「わあ!!」


真の姿を現したピンク色のネズミを前に、薫は驚きながら後ずさった。

その次の瞬間、いつの間にか背後に現れた両親に、腕を掴まれて身動きを取れなくされてしまう。


薫「お、お父さん?お母さん?」

「な、何するんだよ!放してよ!!」


もがく薫であったが、異様な力で掴まれているせいで離れる事は叶わなかった。

そうしている間に、ノスフェルはジャキンと自身の爪を強調するかの如く
片手を大きく開きながら、ゆっくりと薫の目の前に迫る。

そして……
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:26:49.92 ID:d5HixjwK0
薫「うわあぁぁ―――………!!」







次の瞬間、斎田家から薫の悲鳴が響き渡り
和室にあった理子の遺影が、ボロボロになった床に転げ落ちたのだった。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:30:42.29 ID:d5HixjwK0
―次の日の朝―


蒼馬は、いつものように中学校の下駄箱にまでやって来た時であった。

彼は、見慣れた少年の姿を目撃する。

昨日ノスフェルに襲われたはずの、斎田薫だ。


蒼馬「よお、斎田!まなとの恋はどうなんだ?」

薫「………」

蒼馬「て…聞くまでもないか。どうせまだ、進んでないんだろ?」

薫「…………」

蒼馬「何度も言うけどよ、アイツの事は止めとけって」

「気に入らない事があると、すぐ手ぇ上げるし態度もデカイ!」

「そんでもって、超鈍い!」

「シャイなお前とは、相性最悪だって」


全面反対してみせる蒼馬であったが、何故か薫はジッとしたまま黙っている。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:31:52.48 ID:d5HixjwK0
蒼馬「お、おい……どうしたんだよ?」


あまりにも無反応すぎる薫の様子に、さすがの蒼馬も心配になって、彼の肩を掴んだ。

すると彼は無言でこちらを振り返るのだが
その顔は、不気味な程に青ざめており、瞳に光が宿っていなかった。


蒼馬「ひ…!?」


同級生の異様な表情に、蒼馬は怯えて後ずさった。

そんな彼を少しの間見た後、薫は無言でその場を立ち去った。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:34:05.85 ID:d5HixjwK0
―お昼休み―


昼食の弁当も食べ終えて、まなは雅、綾、姫香の三人と教室で楽しく談笑していた。


蒼馬「おい、まな!」

まな「ん?」


その時、教室の外から蒼馬がこっちに来るよう、手招きしている事に気付き
彼女は「ゴメン、ちょっと離れるね」と言って中断し、彼の元へと向かった。


まな「もう!何よ蒼馬」

蒼馬「なあ、まな。お前、斎田の奴と何かあったか?」

まな「え?何、急に?」

蒼馬「いいから答えろって」


唐突な友人の質問に、まなは怪訝に思いつつも素直に「特に何もなかったわよ」と答えた。


蒼馬「本当か?何か話したりとかは?」

まな「うーん。先々週の土曜日ぐらいに、図書館で会った時に話はしたけど……」

「その時は、いつもと変わりなかったわよ」

蒼馬「そうか……」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:35:06.23 ID:d5HixjwK0
まな「…ねぇ?斎田君がどうかしたの?」

蒼馬「いや、今朝アイツに話し掛けたんだけど、なんか様子がおかしかったんだよ」

「顔色も、悪かったし……」

まな「言われてみれば今日の斎田君、いつも以上に大人しくて静かね」

蒼馬「それに、ずっとアイツの様子観察してたんだけどよ…」

「授業はただ聞いてるだけだし、おまけに弁当も持ってきてないみたいなんだよ」

まな「確かに斎田君、お昼食べてる様子全然なかったね」

蒼馬「だから、お前となんかあったんじゃないかと思って……」

まな「え?なんで私なの?」

「確かに私、斎田君とは仲いいけど……」

蒼馬「え?あ……そ、それは……その……」

「あれだよ!あれ!」


薫がまなの事が好きだから、まなとの間に何かあったと考えたのだと
素直に言えず尚且つまながこのような疑問をぶつけてくる事まで
考えていなかった蒼馬は、上手く誤魔化せずに、適当にはぐらかそうとする。

そんな蒼馬の真意が分からず、まなは不思議そうに首を傾げることしか出来ない。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:37:39.60 ID:d5HixjwK0
????「何々?斎田君がどうかしたの?」


そこへ、異様に大人びた体付きをした少女が、二人の会話に割って入る。

昨日ぬりかべが言っていた、まなの同級生でテニス部所属の『岡倉 優美(おかくら ゆみ)』だ。


まな「優美。……蒼馬が、斎田君の様子がおかしいって言うの」

優美「おかしい?」

蒼馬「そうなんだよ。朝っぱらから顔色悪いし、何も喋らないしで気味が悪いんだ」

まな「それに、お昼も食べてないみたいなの」

優美「お昼も食べてない……」

「……そういえば」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:38:36.74 ID:d5HixjwK0
蒼馬「何か、他にあったのか?」

優美「多分、見間違いだと思うけど…」

「さっき、校庭の方で斎田君っぽい子見掛けてね」

「その……」


見てはいけないものを見てきたような表情を浮かべ、言葉に詰まる優美。

そんな彼女に対し、蒼馬は「どうしたんだよ?」
まなは「ねえ、何があったの?」と聞いた。

すると彼女は、答えにくそうにしながらこう言った。


優美「さっき校庭で、その斎田君っぽい子が……」








「校庭に落ちてた、太い木の枝かじっていたのよ」

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