【ゲゲゲの鬼太郎 6期】「恐怖の異星獣 スペースビースト」【ウルトラマンネクサス】

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148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:35:08.05 ID:d5HixjwK0
薫『ウ……ウ………!』





『ウアァ――――――!!』




薫は、頭を抱えて苦しんだかと思えば、叫び声を上げると
急に怪物化した両親と、彼らに捕まったまなの方へと走り出す。

ねこ娘は「まな!」と叫んで止めに行こうとしたが、傷のせいで体が言う事を聞かない。


まなも、迫る薫を目の当たりにして目を瞑った。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:37:36.18 ID:d5HixjwK0




ザンッ―――!!




次の瞬間、何かが切り裂かれる音がした。

しかし、まなは痛みを感じない。

それどころか、左右から『ギャア――!!!!』と、いう悲鳴と共に何かが倒れる音が聞こえる。

同時に、捕まって動けないという感覚からも解放される。

そこで、まながゆっくりと目を開けると
目の前には爪を振りきったポーズで立ち尽くす薫がおり、両側には彼の両親が倒れていた。

薫は相変わらず怪物化したままであったが
先程まで真っ白だった目には、強い意志を持った瞳が宿っていた。

それを見てまなは、すぐに彼が両親を倒し、自分を助けたのだと悟った。


まな「斎田君…!」


安堵の表情を浮かべるまなの顔を見て、薫も安心したような表情と共に頷くと
まなに姉の写真とガンバレクイナちゃんのキーホルダーを差し出す。

すぐに「持っていてくれ」と、言っているのだと理解してまなは静かに受け取った。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:40:35.68 ID:d5HixjwK0
ノスフェル『!?』


一方、ノスフェルもその事に気付いて、薫とまなの方を振り返ると
『グオォ―――!』と咆哮を上げ、そちらに向かっていく。

それを見た薫は、まなを守ろうと爪を振り回してノスフェルに立ち向かう。
その間に、まなは深手を負ったねこ娘に駆け寄った。


まな「ねこ姉さん!それに、鬼太郎も!」

「ごめんなさい、私のせいで、こんなになって……」

ねこ娘「アンタのせいじゃないわよ……」


ねこ娘の一言に続き、いつの間にかペラペラ状態から元に戻っている目玉おやじも
「そうじゃ。君が人質にされてしまったのは、わしらが奴の行動を読み違えたせいじゃ」
と言ってフォローを入れた。


鬼太郎「それにしても、父さん。あの子……」

目玉おやじ「今のまなちゃんの呼びかけで、正気に戻ったのじゃろう」


傷を癒す為に自分の元に戻った
ちゃんちゃんこを着なおした息子に対し、目玉おやじが説明するが
それに対しまなは、「私だけの力じゃないよ」と言った。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:52:00.46 ID:d5HixjwK0
まな「この写真。去年死んじゃった、斎田君のお姉さんなんだけど…」

「この人の写真が飛んで来た時、斎田君のポケットにこのキーホルダー(ガンバレクイナちゃん)が入ってる事を教えてくれたの」

ねこ娘「それでさっき、あんなことを……」

目玉おやじ「それは恐らく、この写真の人の霊が現れたのじゃろう」

「斎田君やみんなを助けたい君の強い気持ちが彼女の霊をこの世に呼び寄せ、手助けさてくれたんじゃ」

「さすがは拝み屋の血筋なだけあるわい」


目玉おやじがまなの血筋を称賛する中、薫はノスフェルと戦っていた。

薫はノスフェルを引っ掻こうとするが、それに対しノスフェルも爪で弾く。
ならばと薫は、飛び上がって背後に回り込むが
ノスフェルが振り返りついでと言わんばかりに
長い尻尾で薙ぎ払おうとしてきた為に、薫は後ろ飛びでかわす。

するとすかさず、ノスフェルは両目を怪しく光らせた。


薫『う…がぁ……!』


恐らく再び操ろうと、力を送っているのだろう。

薫は頭を押さえて苦しみだす。
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:53:19.64 ID:d5HixjwK0

薫(ダメ…だ……!)


(犬山さんを守る……!)


(彼女の友達も、助ける……!)


(こんなのに、負けるものか……!!)



だが、薫は強い意志でその力を振り払うと
『ウオォォォ―――!』と叫びながら、ノスフェルに向かっていく。

自分の力が通じないことに、ノスフェルは若干の動揺を見せたが……
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:54:42.48 ID:d5HixjwK0


薫『グア―――……!!』


薫が爪を振りかぶって目の前に来た瞬間
返り討ちと言わんばかりに、自身の爪を彼の腹に深々と突き刺した。


まな「…!」


その光景に、まなを含めたその場にいた全員が絶句する。

一方、薫は顔をしかめながらも、まな……

そして鬼太郎の方を見ると、刺された部分から来る激痛に耐えながら
お返しと言わんばかりに、ノスフェルの腹に爪を突き刺した。


ノスフェル『ウグ!?……グ!?ググ!??』


そして、ノスフェルに異変が起きた。

突然、ぎこちない動作で鬼太郎の方へ
顔を向けたかと思うと、これまたぎこちない動作で大きく口を開いたのだ。

一体どうしたのかと思い、鬼太郎が薫の方に目を向けると
薫が、先程のノスフェルのように、目を光らせていた。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:55:37.19 ID:d5HixjwK0
鬼太郎「操り返してる……?」

目玉おやじ「む?鬼太郎、アレを見ろ!」


何かに気付き指差す目玉おやじ。

彼が指し示したのは、大きく開かれたノスフェルの口の中の奥まったところ……

暗がりになっていて見えづらいそこを
気をつけて見てみれば、黒い臓器のような物体があるのが確認できた。

鬼太郎がそれを確認した直後、薫が鬼太郎の方に顔を向けると、その物体に目配せる。

この瞬間、彼が伝えようとしている事を、鬼太郎たちは理解した。


ねこ娘「アレが、アイツの弱点……!」

まな「鬼太郎!」

鬼太郎「あぁ…!」


鬼太郎は、傷で痛む体に鞭打ちながら、立ち上がる。

薫がノスフェルと戦ってくれたおかげで、痛みを我慢して立ち上がるくらいに回復する事ができたのだ。

だが、さすがにこの状態で指鉄砲までは撃てない。

そこで鬼太郎は、ちゃんちゃんこを丸めて槍にすると、体内電気をそれに宿らせた。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:56:41.68 ID:d5HixjwK0


鬼太郎「霊毛……」





「ちゃんちゃんこぉッ!!」




今持てる力を振り絞り、槍状のちゃんちゃんこを、ノスフェルの口内に向かって投げ付ける。

槍状に細くなったちゃんちゃんこは
大きく開いたノスフェルの口にすんなりと入り込み、奥にある再生器官を貫いた。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:57:34.84 ID:d5HixjwK0



ノスフェル『グギャアァァ―――!!!!』


157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:59:26.70 ID:d5HixjwK0
弱点を攻撃され、口にちゃんちゃんこが刺さったまま苦しみだすノスフェル。

その拍子に、薫に突き刺していた爪が抜け
薫がノスフェルに腹部に突き刺していた、爪も抜ける。

ノスフェルの爪から解放された薫が、その場にうずくまる中
ちゃんちゃんこに宿っていた体内電気が一気に放たれて、ノスフェルを口内から……体内から、感電させる。

いかなる生物も、内側から攻撃されれば、ただでは済まない……

スペースビーストのノスフェルも例外ではなく
体内からのちゃんちゃんこの放電に苦しみ、みるみるうちに全身が真っ黒に炭化していく。

そして、放電が終わり、ちゃんちゃんこが鬼太郎の手元に戻った後
炭化して動かなくなったノスフェルは、ちゃんちゃんこが刺さっていたところから
サーっと、まるで分子分解されていくかのように風化し、跡形もなくなっていった。

すると、うずくまっていた薫や倒された両親が、人間の姿に戻っていく。

その様子に、鬼太郎たちは確信した。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:01:02.90 ID:d5HixjwK0

鬼太郎「今度こそ……倒せましたね…………」

目玉おやじ「あぁ…これでもう二度と、ノスフェルは復活できんじゃろう」

ねこ娘「やっと、終わったのね……」

まな「…」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:03:49.13 ID:d5HixjwK0
ぬりかべがやって来たのは、ノスフェルが倒されて少ししてからであった。
彼は、遅れて申し訳ないと謝罪したのち、ガレキに埋もれた
子泣きじじいと砂かけばばあを助け出したのだが、なんと彼らは無傷だった。

実は吹き飛ばされて、ガレキが降ってきた瞬間
子泣きじじいは咄嗟に砂かけばばあに覆い被さり、彼女ごと石化してガレキを防いでいたのだ。
しかし、下手に解くと下敷きになってしまう状態にもなってしまった為に、身動きが取れなかったのだという。

そして、細切れにされた一反もめんも、かき集められて
庭にあった水やり用ホースで放水された事で、再生することができた。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:05:16.30 ID:d5HixjwK0
一反もめん「ふー……いきなり細切れにされるなんて思わんかったばい」

砂かけばばあ「いやはや、助かったぞ…」

「危うく、この爺に抱き着かれたまま、一生瓦礫の下で暮らす事になるかと思ったわい」

子泣きじじい「せっかく守ってやったのに、何じゃあその態度は!?」


相変わらずな砂かけばばあと子泣きじじいの様子に、ぬりかべはホッとする。

一方、ある程度回復した鬼太郎とねこ娘は、まなの横に並んでいた。
そして、まなはと言うと、うずくまったまま、元の姿に戻った薫の身体を抱き起した。

こうして間近で見てみると、腹につけられた傷がとても痛々しかった。


まな「斎田君!しっかりして、斎田君!」


まなは、抱き起した薫に呼び掛けると
薫は「う…ん……」と声を出しながらゆっくりと目を開けた。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:06:08.24 ID:d5HixjwK0
まな「斎田君!しっかりして、斎田君!」


まなは、抱き起した薫に呼び掛けると
薫は「う…ん……」と声を出しながらゆっくりと目を開けた。


薫「犬山…さん……?」

まな「斎田君!よかった……」


薫の意識が戻って安心するまな。

傍にいた鬼太郎親子とねこ娘も安心すると、ねこ娘は救急車を呼ぼうと提案するが……


薫「その必要は、ないよ……」

ねこ娘「え…?」

まな「どうして?!早く病院に行かないと……」

薫「ごめんね……実は、僕……」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:06:37.40 ID:d5HixjwK0





「もう死んでるんだ…………」




163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:08:49.99 ID:d5HixjwK0
まな「え…?」


衝撃的な一言に、まなは言葉を失った。

彼女だけではない、鬼太郎たちもだ。


まな「ちょ、ちょっと…何言ってるの?」

薫「そのままの意味だよ……」

「僕だけじゃない……お父さんとお母さんも、もう死んでるんだ………」

まな「……」

「ちょ、ちょっと、こんな時に変な冗談止めてよ」

砂かけばばあ「いや…その子の言っている事、本当かもしれんぞ」


そこへ、いつの間にか子泣きじじいとの漫才を終えた砂かけばばあが
その子泣きじじいとぬりかべと一反もめんを連れて、やって来た。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:10:36.38 ID:d5HixjwK0
まな「砂かけばばあさん」

砂かけばばあ「今、この子の両親の様子を確かめたんじゃが、もう既に息がなかった」

「状態を見るに、死んで丸一日は経っておった」

まな「じゃ…じゃあ……斎田君、本当に………?」

薫「…………」


愕然とした様子のまな。

そんな彼女の表情を見ながら、薫はこれまで自分の身に起きた事を語り出した。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:12:01.26 ID:d5HixjwK0
薫「僕は、昨日学校から帰った後、アイツに殺されたんだ……」

「お父さんとお母さんも、既に殺されていた……」

「そして、アイツは……僕達に自分の細胞を植え付けて、自分の操り人形にしたんだ………」

「そうさ……今の僕は、アイツに無理矢理動かされているだけの、ただの死体なんだよ………」

まな「で、でも……だったら、どうして今、こうやって話ができるの?」

薫「…………」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:12:44.88 ID:d5HixjwK0
薫「僕にも、分からないんだ………」

「この体に、僕の意思はないはずだったんだ……けど…………」

「お姉ちゃんの写真と、ガンバレクイナちゃんのキーホルダー………」

「そして、犬山さんの声を聞いた時……急に、これまでのことが頭の中に蘇って………」

「それで気付いたら……僕は、生き返っていたんだ…………」

まな「それで、私を助けてくれたの?」

薫「うん……

「うっ!!」


と言った瞬間、薫は苦しみだした。


まな「斎田君!」

薫「もう、駄目みたいだ……」

「アイツの細胞を逆利用していたおかげで、何とか動けてたけど……」

「アイツが死んだ今、もうじき僕は、元の死体に戻る……」

まな「そんな…嫌だよ!斎田君!」

薫「いいんだよ、犬山さん………」

「不思議な事に……一度死んでみると、静かに死んでいたいって気持ちが強くなるんだ……」

「同じように操られていた、お父さん達も…きっと同じ気持ちだと思う……」

まな「………」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:14:08.72 ID:d5HixjwK0

薫「それに……もう、未練はないよ…………」

「だって……最後に一度だけ、大好きな人を………」

「君を………助けることができたんだから………」

まな「大好きな人って…」

「斎田君!もしかして、私のこと……」

薫「………」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:16:12.74 ID:d5HixjwK0

薫「やっと……自分の気持ち、伝えられた………」


「たった三ヶ月の間だったけど……こんなにも温かい気持ちをくれて……」


「ありがとう………」


「そして…さようなら…………」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:17:52.07 ID:d5HixjwK0







「犬山…ま……な…………」





初めて、まなの名前をフルで呼ぶと
薫はゆっくりと目を閉じ、全身の糸が切れた人形のように力を失い、そして冷たくなっていった。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:19:14.64 ID:d5HixjwK0
まな「!」


「斎田君!斎田君!」












「斎田く―――ん!!!!」



171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:19:40.32 ID:d5HixjwK0



続けて、夕日が沈みゆく空に、まなの悲痛な叫びがこだましたのであった。


172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:25:17.34 ID:d5HixjwK0
それからすっかり夜が更けた頃の、高級料亭 古代岩の一室……

灯りが一切なく、不気味なほど綺麗な満月と周囲のビルの光しか入って来ない暗い室内で
主のぬらりひょんはガラケーから誰かからの報告を聞いていた。


ぬらりひょん「そうですか……鬼太郎君は無事、ノスフェルを殲滅出来ましたか」

「報告、ご苦労様です旧鼠さん……」

「……お礼ですか?」

「ご心配なさらずとも報酬は明日、朱の盆に高級チーズと共に持っていかせますので……」

「……えぇ。また何かありましたら、お互い助け合いましょう」

「では、これで……」


話し終えると、ぬらりひょんは電話を切り、ガラケーを折り畳むと懐にしまい込む。

それと同時に、大きくて赤い顔をした鬼のような妖怪が入ってくる。

彼こそ先程名前が出ていた『朱の盆』。

ぬらりひょんの忠実な秘書兼ボディガードのような存在だ。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:26:52.19 ID:d5HixjwK0
朱の盆「ぬらりひょん様。芳忠さんがお目見えです」

ぬらりひょん「いいタイミング来ましたねぇ……」

「今すぐ通しなさい」


ぬらりひょんの指示を受け、朱の盆は「はい」と言って一旦部屋を後にする。

そして、少しすると黒いスーツ姿の男性が入ってきた。

この男こそ『芳忠』という人物。

見たところ、人間のように見えるが……?
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:27:26.03 ID:d5HixjwK0
ぬらりひょん「お待ちしていましたよ。丁度、あなたとお会いして、話しをしたかったところだったんですよ……」

芳忠「それは私の方も同じだっ!!」


怒気に満ちた口調でドカドカとした足取りで、ぬらりひょんの前に歩み寄る芳忠。

すると、その頭部と両手が、ギチギチとグロテスクな音を鳴らしながら変形し
前者は頭頂部に噴出口のようなものが付いた一本の触覚を生やし
白っぽい溝と一つ目しかない、縦長で不気味な黒い顔に、後者は尖った爪が生えたゴツゴツした手と化した。

そう、彼は人間ではない。

かと言って、妖怪でもない。

彼は、別の宇宙からやって来た変身怪人 ゼットン星人の……
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:28:07.01 ID:d5HixjwK0


テロップ:ホーチュ

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:29:40.13 ID:d5HixjwK0
ぬらりひょん「おや…奇遇ですね。何かありましたか?」

ホーチュ「すっとぼけるな!お前、ノスフェルの捕獲に協力してくれると言ったよな?」

ぬらりひょん「えぇ、もちろんですよ」

ホーチュ「だが、全然報告がなかったではないか!」

「それどころか夕方、変な子供に倒されている現場を見た」

「それで調べてみれば、ゲゲゲの鬼太郎とか言う妖怪退治の専門家のような妖怪で、かなりの強者だというじゃないか」

「どうしてそんな奴の存在を黙っていた!?」

ぬらりひょん「ノスフェルは妖怪ではなく、スペースビースト…」

「鬼太郎君が退治するとは、思ってもみなかったんですよ」

「それに、奴は妖怪ではありませんからねぇ。いくらわたくしめでも、行動を読み切ることができなかったんですよ」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:33:00.28 ID:d5HixjwK0
ホーチュ「だが、ノスフェルの行動は、この辺で大きな噂になっていた」

「その気になれば、見付けることは出来ただろう!アンタ、同志の妖怪沢山いるんじゃないのか?!」

ぬらりひょん「だから、さっきも言ったじゃありませんか。妖怪でない故、行動を読み切れなかったと……」

「わたくしでも行動を読めないビーストの行動を、同志たちも読めるわけがないじゃありませんか」

ホーチュ「本当か?本当は、知ってて何もしていなかったんじゃないのか?」

ぬらりひょん「邪推が過ぎますねぇ……」

「大体そちらこそ、奴の情報に目を光らせていたのでしたら、鬼太郎君の存在を把握することぐらいできたのでは?」

ホーチュ「……くそっ!」


ぬらりひょんの言い分に、ホーチュは反論も抗議もできなくなった。

それを見て、二ィッと口角を吊り上げたのち、ぬらりひょんはある疑問をぶつけてみる。


ぬらりひょん「しかし、どうにも解せませんなぁ…」

「何故あんな、危険な生物にこだわるのです?」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:33:31.14 ID:d5HixjwK0
ホーチュ「そりゃあ、捕まえて手懐ければ、それだけで大きなアドバンテージになるからだ!」

「スペースビーストってのはな、ウルティノイドやレイオニクス…」

「スパークドールズといった特殊な力を持つ奴ら、特殊な物とかを使って制御できた事例が多数あるが…」

「そう言った力を使わずに、捕獲して飼い慣らした例は未だ確認されていない」

「つまり…奴をとっ捕まえ、特殊能力なしで制御可能な怪獣兵器に育成させることができれば…」

「たったそれだけで、注目の的!多額の金も舞い込んでくるって事よ!」

「しかもあのノスフェルは、上級ビーストと呼ばれる極めて価値の高い個体だ」

「見付けるのも、あそこまで弱らせるのにも相当苦労した」

「それなのに、あと一歩と言うところで取り逃して、挙句この世界にまで流れ着いて…」

「しかも、ウルトラマンでも人間でもない子供に殲滅されるなんて!」

「こんな踏んだり蹴ったりなこと、あってたまるか!!」

「あのノスフェルを飼い慣らす事ができたら、ヴィラン・ギルドに売り込もうと思ってたというのに……!」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:35:17.26 ID:d5HixjwK0
ぬらりひょん「…………」

「……あなたにとって、あのビーストの捕獲がどれだけ大事なことなのか、理解できました」

「ならば、こちらも精一杯のお詫びをしなければなりません」

「朱の盆!」


ぬらりひょんが部下の名前を呼ぶと、朱の盆が「はい〜」と言いながら部屋に入ってくると
一つのアタッシュケースを持って来て、その蓋を開けて中身を見せる。

それは大量の札束だった。
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:39:50.38 ID:d5HixjwK0
ホーチュ「これは?」

ぬらりひょん「見て分かりませんか?お詫びのお金ですよ」

「あなたがあのビーストを売り込んで得るはずだった金額には程遠いかもしれませんが、食べていくには十分でしょう」

「それを持って、早く元の宇宙に帰るが宜しいかと思いますよ」

ホーチュ「お詫びとか言って、厄介払いかよ……」

ぬらりひょん「お言葉ですが、一番最初に厄介者がこちらの世界に流れてくるような失態を犯したのは、そちらではありませんか」

「おかげで、わたくしどもにも不都合が生じる可能性があったんですよ?」

「そもそも全部終わったら、二度とこの世界には来ないという約束でしたよね?」


ホーチュ「…………」


悔しいが、この老人妖怪の言う通りだ。

今のホーチュは

「分かったよ!アンタの言う通り、もう二度とこの世界には来ないからな!」

との捨て台詞と共に金を受け取って出ていくしかなかった。

そして、彼が出ていって少しすると、料亭の上空に透明状態の黄色い円盤……

『ゼットン星人円盤』が現れて、上空彼方へと飛び去って行ったのだった。


それからホーチュがいなくなったのを見計らい、朱の盆はぬらりひょんに話しかける。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:46:48.83 ID:d5HixjwK0
朱の盆「帰りましたね」

ぬらりひょん「えぇ…帰りました」

朱の盆「でも、よかったんですか?あのビーストとやらを鬼太郎に殺らせちゃって…」

ぬらりひょん「それはどういう意味ですか?」

朱の盆「案外、利用価値あったんじゃないかな…と思いまして」

ぬらりひょん「朱の盆……馬鹿を言ってはいけませんよ」

「あの外来種は、高い知能を持ちながら…」

「それを、本能と欲を満たすことにしか使おうとしない、いわば『頭がいいだけのケダモノ』です」

「あんなものがのさばれば、我々にも危害が及ぶのは火を見るよりも明らか」

「あのようなケダモノに、私の計画の邪魔をされては困りますし、それを持ち込んでくる部外者も許してはなりません」

「だからこそ、鬼太郎君にノスフェルを殲滅させ、ホーチュさんには早々に『消えて』もらう事にしたんですよ」

「そう………」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:48:08.25 ID:d5HixjwK0
同じころ、ホーチュの乗るゼットン星人円盤は、地球からある程度離れた所にまで差し掛かっていた。

その時、ホーチュはケースに入った金のことがふと気になった。


ホーチュ「そう言やぁ、どれくらい入ってるんだコレ?札がビッシリ入っているように見えたが……」


そう言って、ケースを開けて中に入った金の金額を数えようと
札束を手に取ったのだが、彼はその金の見た目に違和感を覚えた。


ホーチュ「…ん?こ、これは!」


ケースの中に入っていたお札の表面には、よく見る一億円札の絵柄が印刷されていた。

しかし、問題は裏面。

そちらは真っ白で、何も描かれていなかったのだ。

そう、実はこれ、真っ白な紙の表面にだけ一億円の絵柄が印刷された、偽札だったのだ。

更に、ケースの奥から怪しげな赤い光が漏れているのが見える。

ホーチュは、偽札を乱暴にケースから出して、奥に隠された『それ』を露わにする。

それは、不気味な赤い水晶玉のような球体であり
ビカビカと明滅していたのだが、その明滅のスピードが徐々に速くなっている。

初めて見るものではあったが、ホーチュはそれが
ぬらりひょんが作った爆弾であることを直感で理解した。


ホーチュ「…!」


これを見てホーチュは絶句した。

そして、すぐに悟った。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:50:21.30 ID:d5HixjwK0




スペースビーストをこの世界に追い込んだ自分を、ぬらりひょんは生かして帰す気なんてなかったのだと……



そして、ホーチュがその事を悟ったのとほぼ同時に、ぬらりひょんは先程の言葉の続きを呟いた。













ぬらりひょん「この世から永遠に……」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:51:39.19 ID:d5HixjwK0

ぬらりひょんのこの一言の後、ゼットン星人円盤は爆弾の爆発により、ホーチュ諸共宇宙の藻屑となった。

その時の爆発は、日本各地の天文観測所でも確認されたことにより、後日メディアで報道されて騒ぎになる事となった。

報道を見てぬらりひょんは計画が成功したことを実感し、ほくそ笑んだのは言うまでもない……
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:53:15.55 ID:d5HixjwK0
数日後……

薫を始めとした斎田一家は、調布市内の墓地に葬られた。

鬼太郎ファミリーとまなは、彼らの墓を訪れる。

まなは花と共に、新しい遺影に入った斎田理子の写真を……

そして、自分と薫が友達になるきっかけになった
ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを手向け、鬼太郎達と一緒に墓前に手を合わせた。

拝み終えると、目玉おやじが話しかけてくる。


目玉おやじ「まなちゃん。何故あの時、斎田君が生き返ったのか、少し考えたのじゃが…」

「あれは、君を愛する気持ちが起こしたものだったのかもしれん」

まな「私を愛する気持ちが……?」

目玉おやじ「実は…今回の件と似たようなことが、2ヶ月前にあったんじゃ」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:53:53.90 ID:d5HixjwK0
そう言って目玉おやじは、今年の10月後半に起きた、魍魎の事件の時に起きたことを話した。

それは、写真家『久能 恭平』と、彼を狙う女の亡霊の事件……

その女の亡霊は『水葉』という久能の恋人で
あるきっかけで、久能に見殺しにされてしまい、死体と化した。
その彼女の死体に、50年前に鬼太郎が封じた魍魎が憑依して復活し
そのまま水葉の恋人の久能を、執拗に狙っていたという事件であった。

当初、魍魎にとり憑かれた水葉は
自身を見殺しにした久能に対する恨みや憎しみを抱いて動いていると思われていた。

だが、紆余曲折合って彼女の死体と分離させられた魍魎が
鬼太郎とねこ娘を追い詰め、久能を殺して新たな肉体にしようとしたその時
死体に戻ったはずの水葉がカメラのフラッシュを炊いて魍魎を怯ませて久能を助け、鬼太郎を勝利に導いたのだ。

実は、彼女は見殺しにされた後も、久能を愛していた。
水葉の死体にとり憑いた魍魎が、執拗に久能を狙ったのは
その愛が魍魎によって歪められていたせいだったというのが、事の真相だったのだ。
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:54:29.90 ID:d5HixjwK0
まな「その写真家の人、恋人を殺した事を告白して自首したのは、ニュースを見て知ってたけど…」

「そんな事があったんだ……」

目玉おやじ「そして、この話で重要なのは、水葉さんがカメラのフラッシュを押して、久能たちを助けたことじゃ」

「あの時彼女は、魍魎が抜け出て物言わぬ死体に戻っていたはずだったんじゃ」

「なのに、カメラのスイッチを押すことができた……実に不思議なことじゃ」

「じゃが、魍魎の言うように、彼女が死後も久能に対する『強い想い』を抱いておったことを考えれば…」

「久能を愛する気持ちが、死体だった水葉さんを一瞬だけ生き返らせ、カメラのフラッシュを押させたと解釈できる」

「今回もそれと同じ事が、斎田君の身にも起きたのかもしれん」

ねこ娘「愛の力が奇跡を起こした……って奴ね」

まな「そうだったんだ…」


まなは、納得しながら墓石の前まで歩み寄る。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:55:06.42 ID:d5HixjwK0
まな「斎田君。君が、私に恋していたなんて、ビックリしちゃった」

「だって私、恋愛に興味はあるけど、男の子からそういう目で見られたことって、今までなかったから……」


そう言って少しだけ間を置くと、まなはまた薫の墓に話しかけ始める。


まな「だから…今も君のこと、どう見たらいいのか、ちょっと分からないの……」

「告られたタイミングもタイミングだったし……」

「けど、気持ちはとても嬉しいよ。誰かに愛されることほど、幸せなことってないもの」

「だから……助けてくれて、ありがとう」

「向こうでも、家族のみんなと仲良くしてね?」

「…あ、それと、お姉さんに、あの時ヒントをくれたことを私が感謝してること、しっかり伝えてね?」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:55:59.29 ID:d5HixjwK0

まな「……………」

「それじゃあ、さようなら……」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:00:49.87 ID:d5HixjwK0





「斎田……薫君………」




191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:01:32.71 ID:d5HixjwK0
薫の墓に手を添えながら、彼の名前をフルで呼ぶまな。

優しく閉じられた目からは、一筋の涙が零れている。

その様子を鬼太郎ファミリーは、優しく見守っている。


そして……
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:06:03.96 ID:d5HixjwK0


この時、墓の上から薫がまなを優しく見下ろした後、両親とともに天に昇っていく姿が、見えたような気がした。

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:06:41.00 ID:d5HixjwK0

〜エンディング:あるわけないのその奥に〜
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:09:14.47 ID:d5HixjwK0
〜補足・裏設定など その1〜


斎田薫・・・本作オリジナルキャラクターその1。
まなに恋をした珍しい人間男子。
ノスフェルに殺されてビーストヒューマンにされて利用されてしまうも
彼女に対する愛と姉のヘルプもあり、ノスフェルの呪縛を断ち切り
植え付けられた細胞を逆利用して、まなたちを救った。
ノスフェルの再生器官の場所が分かったのは、その逆利用をした際に情報を取り出す事ができたからです。

基本は内気で、あまり誰とも話したがらない性格だが
フランクかつシニカルな面もある。
そして、動物好き。
これは死んだ姉に影響されている。

裏設定として、まなを好きになる以前は
石橋 綾に気があるのではないかと言う、謎の誤解が広まっていた時期があったというものがあります。


苗字は『ウルトラマンネクサス』の主人公「孤門一輝」の恋人「斎田リコ」の斎田から
下の名前は、同作に登場する、家族がノスフェルの被害に遭った少年「山邑薫」の「薫」から拝借。
どちらも、ノスフェルの事件と関係しているキャラクターという繋がりがあります。

両親の下の名前も、薫の父親「山邑博」の「博」と、母親「山邑涼子」の「涼子」から拝借。

まなちゃんに恋しているという設定も、リコが孤門の恋人だった設定から着想を得ました。

ただ、殺されても問題ないオリキャラだからといって適当にしたくないと思うあまり
設定を作り込み過ぎちゃった感は否めません……

なお、蒼馬が彼がまなを好きになる事をやたらと反対していたのは
彼も何だかんだでまなに気があるからという解釈で描いたからです。
しかし本人はバカなので全然自覚ありません。

また、彼がまなちゃんと一緒に買って、逆転のきっかけを作ってくれたものの
一つである「ガンバレクイナちゃん」の元ネタは言うまでもなく『ネクサス』のガンバレクイナくん。
あちらでは、主人公の孤門を正気に戻すのに活躍してくたように、こちらも薫君を正気に戻すのに活躍しました。
見た目は、ヤンバルクイナが『ウルトラ怪獣擬人化計画』か『けもフレ』っぽい見た目になったのを想像してくれたら幸いです。


斎田理子・・・本作オリジナルキャラクターその2。
薫の姉だが、一年前に修学旅行先で起きた事故で既に他界している。
ちなみに、恋人も一緒に死んでしまった模様……

しかし、ノスフェルに苦しめられる鬼太郎たちを助けたい
まなの心(と無意識に発動した、彼女の中のよりましの力)に反応して、魂が一時的に現世に戻ってきて
薫を正気に戻すヒントをまなにあげることで、鬼太郎たちの窮地を救った。

動物好きの優しい性格であり、絵を描くのが好き。
一方で、金にがめついという困った一面も持っている。
仏壇にねずみ男のような貯金箱と一万円が供えられていたり
回想で貯金箱に小銭を次々入れていたのは、そのため。


名前は『ウルトラマンネクサス』の「斎田リコ」と「山邑理子」の複合。
貯金箱のデザインは元ネタがあり、猫仙人の回などで登場したネズミの格好をした三期ねずみ男の姿を使っています。

彼女が事故に遭った眞也山と溝呂木トンネルは
『ウルトラマンネクサス』に登場した「溝呂木眞也」に由来。
トンネル事故に遭ったという経緯は、リコがトンネルの前で殺されたシチュエーションを意識しました。

また、元ネタの方の山邑理子は、薫の元ネタである山邑薫の妹。
なので彼女の設定は、元ネタと逆になる形となっています……

と思っていたのですが、斎田リコの方に弟さんがいましたね………
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:10:10.09 ID:d5HixjwK0
〜補足・裏設定など その2〜


ノスフェル・・・言わずと知れた、視聴者をトラウマのどん底に叩き落したフィンディッシュ(悪魔的な)タイプビーストであり、今回の敵。
ザ・ワンがかつて取り込んだネズミのような姿をしており、それ故にザ・ワンの要素を色濃く残した上級ビーストの一種ともされている。

鋭い爪を武器に使う他、殺害した人間に自身の細胞を植え付けることで
「ビーストヒューマン」と呼ばれる操り人形に変える能力を持ち、今作でも斎田一家に対して使用。
また、口内の再生器官を破壊されない限り、何度でも復活する。

このような設定を持つものの、意外にも原作では誰かに使役されていることが多いのだが
今作の個体は誰にも使役されていない、珍しい野生個体。
また、ビーストを自力で手懐けて怪獣兵器にすることに執着する
ゼットン星人ホーチュに追われており、この個体はその際のダメージで弱体化しています。
このような設定になったのは、鬼太郎でも倒せるようにする為のバランス調整です。
もしも、巨大化可能な万全状態だったら、さすがの鬼太郎でも勝ち目がないかもしれませんからね。

ネズミに擬態する能力は、原作にない本作オリジナル。
ノスフェルに対する新たな解釈を自分なりに入れてみた結果です。
取り込んだ動物に変身できる能力があるのも、それもそれで面白いと思いません?
舌の先を枝分かれさせて敵を包む攻撃も、オリジナルです。

そして、誰にも使役されていないので、ノスフェル自身も
恐ろしく邪悪かつ狡猾な危険な存在であることを追及して
描いてみたつもりなのですが、ちょっと自信がないです……
ちなみに、原作と違って半身しか食っていないパターンがあるのは
恐怖のエネルギーは美味しかったけど、肉の方は美味しくなかったからです。
この個体は、見かけによらず肉の味にもこだわってるグルメさんなんです。

なお、本作の敵としてこいつをチョイスしたのは、今年がネズミ年なのはもちろん
ビーストの設定が色々と尖った作風の『6期鬼太郎』と相性が良さそうだと思ったこと
ノスフェルは人間大サイズがある事から、鬼太郎と戦わせやすいと判断したからです。
後は、『6期鬼太郎』も『ネクサス』も脚本家の長谷川圭一さんが
関わっている作品という共通点もあるので、その辺も意識しています。

また、灰になって崩れ落ちる描写や
ノスフェルを倒した事を「殲滅」と表現したのは、少しでも『ネクサス』感を出そうと思ったからです。
後は、ビーストヒューマン・薫VSコイツとの戦闘は、メフィストVSメフィスト・ツヴァイ戦を少し意識しています。
なので当初は薫に無理矢理口を開けさせた「撃て!」てやらせる予定だったのですが
体格的に無理そうだったので、細胞を逆利用した薫に操り返される展開となりました。
また、薫がこいつの弱点が分かったのは、自身に植え付けられた細胞から情報を取り出した為です。

そしてこのノスフェルは、もう復活できません。
元の世界で受けた対ビースト抗体や、ホーチュに弱体化させられた影響と
鬼太郎の体内電気で全身の細胞が灰になってしまったので、完全に死滅しました。



ゼットン星人ホーチュ・・・『ウルトラシリーズ』に登場する変身怪人。
初登場は『ウルトラマン』の最終話で、本来は「宇宙恐竜 ゼットン」を操る侵略者。
『ウルトラマンマックス』に再登場して以降、様々な個体がシリーズに登場している。
なお同じくちょいちょい再登場している『ウルトラQ』初出の「誘拐怪人 ケムール人」とそっくりだが、一応種族的な深い繋がりはない模様。

このホーチュと言う個人名を持つ個体は、本作オリジナルキャラクターになります。

スペースビーストに強い関心を持っているという変わり者のゼットン星人であり
ある時、ビーストを自力で手懐けて怪獣兵器にすることで、富と名声を得ようと画策。
ノスフェルを発見して等身大サイズまで弱らせるも、後ちょっとのところで逃げられた上に
時空の歪みに逃げ込まれ、自身もそれを追って
6期鬼太郎の世界にやって来てしまった、今作の事件の諸悪の根源です。

鬼太郎達の世界に来た後は、たまたま正体を知って接触してきた
ぬらりひょんに、二度と6期鬼太郎の世界に来ないことを条件に持ち出された上で
ノスフェルの捕獲の協力を依頼していましたが、結果はご覧の通り。

一応、M78ワールド(光の国がある世界)にあるゼットン星出身。

彼が語っている、ビーストを操った者達の事例は、実際に原作で起きた出来事です。
本編では触れていませんが、他にも『ウルトラゼロファイト』の第一部で
バット星人グラシエに魂を握られて操られていたガルベロスと言う事例もあります。
当方としては、これまでのビーストは特殊な力で使われているだけで
本当の意味での共生の道は示されていないという解釈です。
(同じようにレイオニクスの力を持つ、レイなどと言った一部のレイオニクスの手持ち怪獣などは、特例という事で)

また、彼が怪獣兵器にしたビーストを売り出し先にしようとしていた
「ヴィラン・ギルド」と言うのは、『ウルトラマンタイガ』に登場する宇宙犯罪組織。
真っ先にこの組織に売ろうとしたのは、実はそこの元締めの同族のゾリンと少なからず縁があるという裏設定があるからです。


個人名および人間態の名前の由来は、ウルバト及びそれ関連のCMでゼットン星人の声を演じた声優の大塚「芳忠」さんから。
6期のぬらりひょんの中の人が、同じ大塚の苗字を持つ人なので、ゼットン星人と言うチョイスになりました。
(扱いは悲惨な事になってしまいましたけど……)
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:11:41.34 ID:d5HixjwK0
〜補足・裏設定など その3〜


ぬらりひょん・・・日本妖怪の総大将である老人妖怪。
実は最初から事件のすべてを知っていた爺様。

鬼太郎に話したビーストとノスフェルの情報も、全部ホーチュから聞かされたものであり、流れをざっとまとめると。


ここ最近、謎の怪物(ノスフェル)が人を殺しまわっている事に疑問を持つ。
      ↓
その矢先にホーチュと遭遇。怪物の正体とスペースビーストの事と、それがこの世界に現れた経緯を知る。
      ↓
ぬらりひょん(スペースビーストのノスフェルかぁ…絶対計画の邪魔になる奴やん)
      ↓
ぬらりひょん(けど、手ぇ出したら絶対こっちも被害受けるやろうなぁ……)
      ↓
ぬらりひょん(今後の計画に必要な同志(と言う名の手駒)も無駄にしとうないし)

ぬらりひょん(おまけに、そのビーストちゅうのみすみす逃がしたこのよそもんも、ちょっと信用出来んし……)
      ↓
ぬらりひょん(せや!コイツに協力する振りして、鬼太郎に情報流して代わりにノスフェル退治させちゃろ!)
      ↓
ぬらりひょん(そしたら、こっちはよそモン片付けるだけで楽に済む!)
      ↓
ぬらりひょん(万歳!)


といった具合。

これが鬼太郎にノスフェルやビーストの情報を流した真意となります。
つまり、今回鬼太郎たちはぬらりひょんの邪魔者退治を、知らずして押し付けられていたわけです。
で、まんまと一人勝ちした訳ですね。

その癖ノスフェルがネズミに擬態して
薫君を狙っていたのを知らせなかったのは、敵対者に全面的に親切にしたくなかったからです。
こんな状況でも、鬼太郎とは敵対関係である事を崩さない爺様だったという訳です。


なお、ノスフェルの様子を見張らせた同志妖怪が旧鼠だったのは
5期では彼の配下だったことと、今年がねずみ年であることを絡めた小ネタ。
報酬の高級チーズとお金は、宣言通り後日朱の盆に配達させた模様。


上のもの以外では、子泣きじじいの触れた相手と一緒に石化する能力は
本作オリジナルではなく、4期の陰摩羅鬼の回でねこ娘に対して使った能力が元ネタです。

また、薫が一時的に生き返った理由の考察のために目玉おやじが出した魍魎の話しは、6期本編第78話の出来事。
そういえば、この話しの脚本も長谷川さんでしたね。

そして、岡倉優美は第55話のゲストキャラですね。
この作品では未だにぬりかべに師事している事にしていますが
実際のところどうなったんでしょうかね……
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:15:42.43 ID:d5HixjwK0
書きたい事を書いていたら、補足と裏設定の部分が肥大化し過ぎてしまいましたが本作はこれで終了となります。

色々と粗が目立っている(ねずみ男や木綿やぬりかべの扱いが特に……)かと思いますが、それでも楽しめたというならば幸いです……

もし次に書くとしたら、4期か相棒を書くかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。

ここまでお付き合いありがとうございました……
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