【ゲゲゲの鬼太郎 6期】「恐怖の異星獣 スペースビースト」【ウルトラマンネクサス】

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97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:26:49.92 ID:d5HixjwK0
薫「うわあぁぁ―――………!!」







次の瞬間、斎田家から薫の悲鳴が響き渡り
和室にあった理子の遺影が、ボロボロになった床に転げ落ちたのだった。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:30:42.29 ID:d5HixjwK0
―次の日の朝―


蒼馬は、いつものように中学校の下駄箱にまでやって来た時であった。

彼は、見慣れた少年の姿を目撃する。

昨日ノスフェルに襲われたはずの、斎田薫だ。


蒼馬「よお、斎田!まなとの恋はどうなんだ?」

薫「………」

蒼馬「て…聞くまでもないか。どうせまだ、進んでないんだろ?」

薫「…………」

蒼馬「何度も言うけどよ、アイツの事は止めとけって」

「気に入らない事があると、すぐ手ぇ上げるし態度もデカイ!」

「そんでもって、超鈍い!」

「シャイなお前とは、相性最悪だって」


全面反対してみせる蒼馬であったが、何故か薫はジッとしたまま黙っている。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:31:52.48 ID:d5HixjwK0
蒼馬「お、おい……どうしたんだよ?」


あまりにも無反応すぎる薫の様子に、さすがの蒼馬も心配になって、彼の肩を掴んだ。

すると彼は無言でこちらを振り返るのだが
その顔は、不気味な程に青ざめており、瞳に光が宿っていなかった。


蒼馬「ひ…!?」


同級生の異様な表情に、蒼馬は怯えて後ずさった。

そんな彼を少しの間見た後、薫は無言でその場を立ち去った。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:34:05.85 ID:d5HixjwK0
―お昼休み―


昼食の弁当も食べ終えて、まなは雅、綾、姫香の三人と教室で楽しく談笑していた。


蒼馬「おい、まな!」

まな「ん?」


その時、教室の外から蒼馬がこっちに来るよう、手招きしている事に気付き
彼女は「ゴメン、ちょっと離れるね」と言って中断し、彼の元へと向かった。


まな「もう!何よ蒼馬」

蒼馬「なあ、まな。お前、斎田の奴と何かあったか?」

まな「え?何、急に?」

蒼馬「いいから答えろって」


唐突な友人の質問に、まなは怪訝に思いつつも素直に「特に何もなかったわよ」と答えた。


蒼馬「本当か?何か話したりとかは?」

まな「うーん。先々週の土曜日ぐらいに、図書館で会った時に話はしたけど……」

「その時は、いつもと変わりなかったわよ」

蒼馬「そうか……」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:35:06.23 ID:d5HixjwK0
まな「…ねぇ?斎田君がどうかしたの?」

蒼馬「いや、今朝アイツに話し掛けたんだけど、なんか様子がおかしかったんだよ」

「顔色も、悪かったし……」

まな「言われてみれば今日の斎田君、いつも以上に大人しくて静かね」

蒼馬「それに、ずっとアイツの様子観察してたんだけどよ…」

「授業はただ聞いてるだけだし、おまけに弁当も持ってきてないみたいなんだよ」

まな「確かに斎田君、お昼食べてる様子全然なかったね」

蒼馬「だから、お前となんかあったんじゃないかと思って……」

まな「え?なんで私なの?」

「確かに私、斎田君とは仲いいけど……」

蒼馬「え?あ……そ、それは……その……」

「あれだよ!あれ!」


薫がまなの事が好きだから、まなとの間に何かあったと考えたのだと
素直に言えず尚且つまながこのような疑問をぶつけてくる事まで
考えていなかった蒼馬は、上手く誤魔化せずに、適当にはぐらかそうとする。

そんな蒼馬の真意が分からず、まなは不思議そうに首を傾げることしか出来ない。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:37:39.60 ID:d5HixjwK0
????「何々?斎田君がどうかしたの?」


そこへ、異様に大人びた体付きをした少女が、二人の会話に割って入る。

昨日ぬりかべが言っていた、まなの同級生でテニス部所属の『岡倉 優美(おかくら ゆみ)』だ。


まな「優美。……蒼馬が、斎田君の様子がおかしいって言うの」

優美「おかしい?」

蒼馬「そうなんだよ。朝っぱらから顔色悪いし、何も喋らないしで気味が悪いんだ」

まな「それに、お昼も食べてないみたいなの」

優美「お昼も食べてない……」

「……そういえば」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:38:36.74 ID:d5HixjwK0
蒼馬「何か、他にあったのか?」

優美「多分、見間違いだと思うけど…」

「さっき、校庭の方で斎田君っぽい子見掛けてね」

「その……」


見てはいけないものを見てきたような表情を浮かべ、言葉に詰まる優美。

そんな彼女に対し、蒼馬は「どうしたんだよ?」
まなは「ねえ、何があったの?」と聞いた。

すると彼女は、答えにくそうにしながらこう言った。


優美「さっき校庭で、その斎田君っぽい子が……」








「校庭に落ちてた、太い木の枝かじっていたのよ」

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:40:17.27 ID:d5HixjwK0
蒼馬「木の枝を……」

まな「かじってた?!」

優美「そうなのよ」

「まあでも、本当に見間違いかもしれないけどね」

蒼馬とまな「「………」」


優美の話しに、二人はただ呆然とするしかなかった。


優美「…………」

「…そ、そうだ!まな、ぬりかべコーチ見なかった?」

まな「ぬりかべさん?ううん、見てないけど」

優美「おっかしいなぁ。先週から昨日まで、ずっと来てくれてたのに………」

「今日はお休みなのかしら?」


そんな疑問を口にする優美であったが、今の二人にとって
ぬりかべが学校に来ていない事など、どうでもいい話しであった……
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:42:22.25 ID:d5HixjwK0
―夕方―


学校を終えて、下校するまなと蒼馬は
昼間、優美から聞いた話の事を話し合う。


まな「ねぇ、蒼馬…昼間の優美の話し、どう思う?」

蒼馬「どうもこうも、信じられねぇよ」

まな「だよね……」

蒼馬「まぁ…仮に本当だとしたら、妖怪に取り憑かれてるとか」

まな「妖怪……確かに、その可能性あるわね!」

「じゃあ、今すぐ鬼太郎とねこ姉さんに……」

蒼馬「…い!?」


と、スマホを出そうとしたまなであったが
突然蒼馬が、彼女の後ろを見たかと思えば、何かに驚く。

まな「どうしたの、蒼馬?」

蒼馬「わ、悪いまな……俺、早く帰って宿題済ませなくちゃならないんだ」

「つー訳で、さいなら〜!!」


そう言いながら、蒼馬は逃げるように走り去ってしまった。


まな「はあ?宿題って…」

「早く帰っても、真面目にやらない癖に……」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:43:13.60 ID:d5HixjwK0







まな「……………ん?」







ふと、まなが後ろから気配を感じて振り返ると、そこには件の薫が、ジッと立ち尽くしていた。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:44:01.58 ID:d5HixjwK0
まな「わぁ!さ、斎田君いたの!」

薫「…………」

と、驚いたまなであったが、薫は無言で立ち尽くしている。

それどころか、表情一つも変わっていない。

よく見れば、その顔は蒼馬の言う通り真っ青で
無表情な顔と相まって、非常に不気味だった。


まな「さ、斎田君?」

「そ、そうだ。優美がね、昼間君が校庭に落ちてた枝を……そ、その………」

「か、かじってるところ見たって言うんだけど、違うよね?」

薫「…………」


とりあえず、昼間の優美の話の真偽を聞いてみたが
薫は相変わらず無表情で立っているだけ。

それどころか…………
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:46:26.38 ID:d5HixjwK0
まな「え…!ちょっ!?」


薫は突然、まなの手を取って無理矢理何処かへ引っ張り始めたのだ。


まな「ど、何処行くの?」


問い掛けるまなだったが、やはり返事は返ってこない。

そして少しして、まなは異様な力で手を掴まれている事に気付く。

薫の雰囲気も相まって、何か良くない気配を感じ取るまなであったが
先の通り異様な力で手を掴まれているせいで、ただ黙って引っ張られるしかなかった。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:47:40.58 ID:d5HixjwK0
それからまなは、そのまま薫の自宅に連れて来られた。

外観だけは、何の変哲もない一軒家だったが
中に入るとその印象は大きく変わった。

斎田宅の中は、木の部分が昨日以上に
不自然に削られておりボロボロの様相を曝しており
相変わらず電気もついていなくて真っ暗。

まなは、靴も脱がされる事を許されないまま、二階にある薫の自室にまで連れて来られる。

薫の部屋も、同様にボロボロであり
ベッドや、机の一部がかじられたかのように削られた跡がついていた。

この異様な自室に辿り着くと
薫はまなの手を離しまなに背を向けたまま、立ち止まってしまう。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:49:08.78 ID:d5HixjwK0
まな「ど、どうしたの?斎田君?」

「こ、ここ……君の家だよね?」

「な、何かボロボロだけど…………」

薫「…………」


家の様子について尋ねるが、薫は答えない。


まな「さ、斎田君?」

薫「…………」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:49:43.42 ID:d5HixjwK0
薫「……う………」


「ウグ…………!」


まな「!?」


それは、突然だった。

薫は、不気味な唸り声らしきものを発する。

そして………
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:50:29.54 ID:d5HixjwK0





薫「ウ…………」







『ガアアァァァァ――――!!!!!』





次の瞬間、肉や骨がメキメキと変形するような音と共に
薫の両手がノスフェルに似たような爪が生えた異形の腕に変貌
更に野太い雄叫びと共に振り返った彼の顔も
ノスフェルに似たような白目を剥いた顔に変化していた。


まな「きゃぁー!!」


怪人のようになった薫を前にして
まなは悲鳴を上げながら部屋を飛び出して、階段を一気に駆け降りる。

そして降りた先には、その先には薫の両親が立っていた。


まな「あ!斎田君の父さんに母さん!」

「た、大変なんです!斎田君が………」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:51:13.30 ID:d5HixjwK0



博「グオォ―――!!」


涼子「キシャァ―――!!」



息子に起きた異変を話そうとしたまなであったが
博の右腕と涼子の左腕が、薫と同様にグロテスクな音共に
ノスフェルに似た爪が生えた、異形の腕に変貌。

ピンク色に変色し、白目を剥いた異様な表情と共に咆哮を上げた。


まな「ひぃ…!」


怪人のようになった薫の両親を前に、後ずさるまな。
その時、二階から薫が『ガァー!』と、いう叫び声を上げながらおりてくる。
それを見たまなは、即座に裏口から外へ出ると、庭にあった物置の中に逃げ込んだ。


まな「は…早く、鬼太郎とねこ姉さんに知らせないと……!!」


急いでスマホを取り出すと、焦りで震える手で
何とかメッセージを打ち、ねこ娘のスマホに送信した。
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:52:38.90 ID:d5HixjwK0
―ゲゲゲハウス―


鬼太郎「みんな、今日も集まったな」

一反もめん「つっても、ぬりかべは完全ダウンしとって、すぐには来れんばい」

ねこ娘「本当にクタクタなのね……ん?」


ノスフェルの事で話し合おうと
ねずみ男とぬりかべ以外のファミリー全員が集まった、丁度その時であった。

スマホに、レインからのメッセージ音が聞こえてきたため
ねこ娘は手早くスマホの画面に目を向ける。

そこには、言うまでもなく、まなからのSOSのメッセージが入っていた。


ねこ娘「何ですって!?」

目玉おやじ「どうした?」

ねこ娘「それが…斎田って言う友達が、父親と母親と一緒に化け物になって襲ってきて…」

「それで、その子の家の物置に隠れてるって!」

目玉おやじ「なんじゃと!?」

鬼太郎「こっちはそれどころじゃ…!」






「……まさか!」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:53:44.15 ID:d5HixjwK0
砂かけばばあ「どうした鬼太郎!?」

鬼太郎「ねこ娘!その友達の家の場所は?」

ねこ娘「一応、地図も一緒に送られてるけど……」

鬼太郎「じゃあ、案内してくれ!」

「一反もめん、みんな行くぞ!」

一反もめん「え?あ、あ……コットン承知ですばい!」



急かすように言ってくる鬼太郎に
ファミリーは少々困惑したが、友人の危機である以上そのような事は気にしていられない。

全員、一反もめんの背中に乗り、人間界へと飛び出した。


鬼太郎「こっちで合ってるか?」


鬼太郎に聞かれ、ねこ娘はスマホに表示されている
地図を見ながら「うん。間違いない」と答えた。


鬼太郎「一反もめん、スピードを上げてくれ」

一反もめん「これでも精一杯出しとるばい」

「というか、なしてそんな急いどるとよ?」

鬼太郎「…………」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:54:09.91 ID:d5HixjwK0





「奴が……」




「ノスフェルが動き出した!」




117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:55:30.34 ID:d5HixjwK0
ねこ娘「え?」

子泣きじじい「なんじゃと?」


鬼太郎の答えに驚くファミリー達であったが

「ふむ。やはりお前も、同じ事を考えておったか」

と言いながら、目玉おやじが鬼太郎の髪の中から出てきた。


ねこ娘「同じ事って?」

目玉おやじ「わしらは、とんだ思い違いをしておったという事じゃ」

「わしらは最初、奴が獲物にしやすいまなちゃんを、すぐにまた狙うと考えておった。だから昨日まで、彼女を見張っていた」

「だが…恐らく奴は、わしらが自分の死を疑う事も想定しておったんじゃ」

「それで雲隠れしつつ、まなちゃんと親しい人間に狙いを付けたのじゃろう」

「彼女を確実に捕らえ、餌にする為に!」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:56:02.88 ID:d5HixjwK0
ねこ娘「それで、無関係な彼女の友達と家族にまで手を出したって言うの!?」

「許せない…!」

鬼太郎「だからこそ、急がなくちゃならないんだ。手遅れになる前に…!」

一反もめん「確かにそりゃ大変ばーい!」

子泣きじじい「しかし、これから戦うとして、どうやって倒すんじゃ?」

「一度倒したのに、復活するような相手なんじゃろう?」

鬼太郎「だから今度は、戦いながら奴の弱点を探すんだ」

子泣きじじい「弱点を探す?そんなものあるのか?」

鬼太郎「恐らく、弱点を突かないと倒せない相手なんだと思う」

「実際ぬらりひょんも、奴の弱点を探さなかったのかと言っていた。これは裏を返せば、奴には弱点があるという事だ」

「だから、それを探してもらうために、みんなにも一緒に来てもらったんだ」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:57:14.64 ID:d5HixjwK0
砂かけばばあ「しかしぬりかべは、まだダウンしておるみたいじゃぞ」

「一応、場所は伝えておいたが……」

鬼太郎「ぬりかべは、さすがに仕方がないよ。僕達だけで、何とかするしかない」


そうして、斎田家へ急ぐ鬼太郎ファミリー。

一方、まなはメッセージを送ってから
しばらくジッと息を潜めていたのだが、妙に静かである事が気に掛かる。

なので、そっと物置のドアを少しだけ開き、隙間から外の様子を覗き見た。

外には、怪物になった斎田一家が
うろついている様子が全く無く、広い庭だけが広がっていた。

家の外に出た事に、まだ気付いていないのだろうか?

そう考えるまなであったが、背後に置かれた道具の隙間から
ピンク色のネズミの姿をしたノスフェルが
目を光らせながら自分を見ている事に、気付いていない。


そして……
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:58:57.96 ID:d5HixjwK0





バリバリバリッ―――!




まな「え…?」


突如頭上から、何かが引き裂かれる音が響き
真っ暗な物置に、外の光が差し込んでくる。

まなが、その光が差し込む方を見上げると、
そこには両手の爪で屋根に穴を開け、こちらを見下ろす薫の姿があった。


薫『ガァ――!』


まな「きゃあー!」


まなは、驚いて物置から飛び出した。

だが、庭では薫の両親がいつの間にか待ち伏せしており、まなを捕まえてしまう。

そして、丁度そのタイミングで、一反もめんに乗った鬼太郎ファミリーがやって来た。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:59:38.99 ID:d5HixjwK0
ねこ娘「まな!」

鬼太郎「遅かったか!」


捕まっているまなの姿を確認する鬼太郎ファミリー。

そこへ、薫が立ちはだかるように、まな達の前に立つ。


まな「さ、斎田君…」

砂かけばばあ「なんじゃ、あの人達の姿は?!」

鬼太郎「あの顔と爪、ノスフェルそっくりだ」

目玉おやじ「奴に操られているのは、間違いないな」

「………む!?」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:00:49.47 ID:d5HixjwK0




『ぢう!』




その時、ピンク色のネズミの姿をしたノスフェルが、まな達の前に現れる。


まな「え?」

ねこ娘「アレは…」

鬼太郎「ピンク色のネズミ!」

『ぢう!』


現れたネズミの姿をしたノスフェルは
その場から大きく飛び上がり、そのまま本来のビーストとしての姿に戻る。
そしてそのまま、両手の爪を広げて鬼太郎ファミリーに迫った。


目玉おやじ「いかん!みんな、降りろ!」


攻撃してくる事に気付いた鬼太郎達は
一斉に一反もめんから飛び降り、庭に降り立った。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:01:58.59 ID:d5HixjwK0
一反もめん「え!?ちょっ…」



「おわああぁぁぁぁ!?」



だが、一反もめんはすぐに避けられるはずがなく
ノスフェルの爪の連撃により、細切れになってしまった。


まな「一反もめんさん!」


一反もめんの惨状にまなが叫ぶ中、ノスフェルはドスンと庭に着地。
『グオォォォ―――!』と雄叫びを上げて、鬼太郎ファミリーを睨んだ。


まな「ど…どうして!?」


死んだと思っていたノスフェルが目の前にいる事に、まなは驚きを隠せなかった。

そして、鬼太郎達もキッとした表情で、ノスフェルを見る。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:02:27.57 ID:d5HixjwK0
鬼太郎「ノスフェル…!」

目玉おやじ「やはり、生きておったか」

砂かけばばあ「こやつが、スペースビーストとやらか?なんと醜い!」

子泣きじじい「コイツは確かに、この世界の生き物ではないぞ!」


砂かけばばあと子泣きじじいは初めて見るスペースビーストの姿に、そのような感想を残す。

そうして、両者は睨み合う。

その睨み合いの中で、鬼太郎はノスフェルの身体を注意深く見回す。


鬼太郎(あれで生きていた以上、何処かに復活の秘密があるはずだ)

(けど見た感じ、鋭い爪以外に目立った点は見当たらない)


ノスフェル『グオ――!!』


鬼太郎が弱点探しをしている中
ノスフェルは声を上げながら、爪で引っかこうと走り寄ってくる。

鬼太郎ファミリーは、この攻撃をすぐさま回避。
避けられたノスフェルは、次に鬼太郎の方を向いた。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:03:11.50 ID:d5HixjwK0
鬼太郎「リモコン下駄!」


鬼太郎は、すぐにさま両足の下駄を飛ばして攻撃しようとしたが
ノスフェルは、両手であっさり払い飛ばしてしまう。

当たり損なった下駄は、鬼太郎の足に戻ると
すかさず鬼太郎は「髪の毛針!」と叫んで毛針で攻撃。
これをノスフェルは、両腕をクロスさせて防御する。

その隙に、子泣きじじいがノスフェルの体の上に登り
赤ん坊の泣き声を上げて石化。

石化してどんどん重くなっていく
子泣きじじいの重量に、さしものノスフェルも動きが鈍っていく。


ねこ娘「ニャアァ―――!!!」


そこへ、人差し指と中指の爪を伸ばし
二本を束ねたねこ娘が、ノスフェルの腹部を切り付ける。

束ねられた二本の爪は、鎌のような鋭さで
ノスフェルの腹に食い込んでその肉を切り裂き、大きな切り傷を刻み付けた。


砂かけばばあ「それ!痺れ砂じゃ!!」


追い打ちに、砂かけばばあが痺れ砂を傷口に投げ付ける。

麻痺効果がある薬を多分に含んだ砂を
かけられた事で傷口が沁み、ノスフェルは大いに苦しんだ。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:03:49.72 ID:d5HixjwK0
砂かけばばあ「む?」


だが、その直後に信じられない事が起きた。

ノスフェルの傷が、少しずつ塞がり始めたのである。


ねこ娘「傷が治っていってる…?」

目玉おやじ「やはりそうか!こやつ、再生能力を持っておる!」

鬼太郎「再生能力?」

ねこ娘「それじゃあ、鬼太郎に倒されたのに生きてたのって……」

目玉おやじ「この再生能力によるものじゃろう」

砂かけばばあ「もしそうなら、奴の身体の何処かに、再生能力を発動させる仕掛けがあるのではないか?」

鬼太郎「それが奴の弱点!」


復活のトリックを見破り、いよいよ弱点を探そうという話しになろうとした。


だが………
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:05:33.51 ID:d5HixjwK0




まな「きゃあ!」




まなの悲鳴が聞こえた為、ファミリーが悲鳴がした方を見ると
怪物化した薫が、彼女の首筋に爪を突きつけていた。

相手は相変わらず言葉を発する事はなかったが

『下手な事をすればまなの命はない!』

という意思表示である事を、一目見ただけで理解できた。


鬼太郎「まな!」

目玉おやじ「そうか!」

「まなちゃんを捕まえたのは餌の確保だけでなく、わしらに対する人質も兼ねておったのか!」

子泣きじじい「な、なんということじゃ!」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:06:36.44 ID:d5HixjwK0
ノスフェル『!』


まなが人質に取られた事実を知り、子泣きじじいは泣くのを止めて石化を解いてしまう。

その隙にと言わんばかりに、ノスフェルは舌を伸ばして子泣きじじいを締め上げた。


子泣きじじい「し、しまった……!」

砂かけばばあ「子泣き!…ぎゃあ!!」


続けてノスフェルは、舌の横なぎで子泣きじじいを砂かけばばあに力強く投げ付ける。
子泣きじじいを投げつけられた砂かけばばあは、彼もろとも斎田宅に激突。
壁を突き破って和室に放り込まれ、奥の方にある壁にも激突し、その衝撃で崩れた壁の残骸に埋もれてしまう。


鬼太郎「子泣きじじい!砂かけばばあ!」


鬼太郎とねこ娘が彼らの身を案じようとするが
その隙は与えないと言わんばかりに、ノスフェルが両手の爪を振り回しながら迫る。

まなを人質に取られ迂闊に攻撃出来ない鬼太郎とねこ娘は、避ける事しか出来ない。


鬼太郎「父さん、一体どうしたら…!」

目玉おやじ「どうにかして隙を見付けて、まなちゃんを助けるしかない」

「上手く奴らの気を逸らす事が出来ればいいのじゃが……」


目玉おやじに言われ、爪をかわしながら
まなの救出のタイミングを伺う鬼太郎とねこ娘。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:10:28.57 ID:d5HixjwK0
ねこ娘「きゃっ!?」


そして、ねこ娘が後ろ飛びで爪を回避しつつ、相手から距離を取ったその時であった。
ノスフェルは、擦るように地面を蹴って、彼女の顔に土を振り掛けたのだ。

急な搦め手にねこ娘は反応しきれず、土をもろに浴びて怯んでしまう。
その隙にノスフェルは鋭い爪で、彼女を切り裂こうとした。


鬼太郎「ねこ娘!」


それを見た鬼太郎は、ねこ娘を突き飛ばす。

そしてそのまま、ノスフェルの爪による一撃を胸に受けてしまった。


鬼太郎「あ…がっ……!」


胸に大きな傷を負ってしまった鬼太郎は
妖気と血が流れ出る胸を押さえながら、地面に膝をつく。

傷付いた鬼太郎の姿に、ノスフェルはニヤリと一瞬だけ笑みを見せると
追い打ちと言わんばかりに、今度はアッパーカットのような動作で、鬼太郎の腹に爪を突き刺した。


ねこ娘「鬼太郎!!」

まな「!!!!」


ねこ娘が叫び、まなが言葉を失う中
ノスフェルは腕を大きく振るって、鬼太郎を投げ飛ばす。

投げられた鬼太郎は、力なく地面に叩き付けられ
頭の上にいた目玉おやじはその際の衝撃で「うわぁ!」という悲鳴と共に地面に投げ出された。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:12:05.01 ID:d5HixjwK0
目玉おやじ「き、鬼太郎!大丈夫か!?」

鬼太郎「う…!うぐ………!」


息子に駆け寄る目玉おやじ。

当の鬼太郎は、胸と先程付けられた腹の傷から
大量の血と妖気が漏れだしており、彼の周りに赤い海が広がり出す。

幸い意識はあるものの、ダメージが大きいらしく
その場にうずくまったまま、すぐには起きられない様子だ。


ねこ娘「き、鬼太郎!…はっ!」

ノスフェル『グオォ――!!』


鬼太郎を心配したのも束の間。

ノスフェルはお前で最後だと言わんばかりに、ねこ娘を爪の餌食にしようと襲い掛かる。

ねこ娘は、持ち前の身のこなしで回避するが
相変わらずまなが人質に取られているせいで、反撃に転じる事は叶わない。


ねこ娘「くっ…!!」


だが、それも長く続くはずがなく、左腕に爪が当たって傷を負ってしまう。

切られた傷口から、鬼太郎同様に妖気と血が漏れ出し、ねこ娘は右手で傷口を押さえるのだが……
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:13:05.19 ID:d5HixjwK0
まな「! ねこ姉さん後ろッ!」

ねこ娘「え……ッ!?」







ザク―――ッ!





132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:14:50.55 ID:d5HixjwK0
まなの声を聞き、後ろを振り返ったねこ娘だったが
その次の瞬間、何かが突き刺さる音と共に腹部に衝撃が走った。

一瞬の事で何が起きたのか分からなかったねこ娘だったが、少しして何が起きたのか理解した。

自分の目の前には怪物と化した斎田薫がおり
その薫が、ノスフェルそっくりに変化した右手の爪を
ねこ娘の腹に深々と突き刺しており、刺された箇所からは血と妖気が流れ出ている。

そう、ねこ娘がノスフェルに気を取られている間に
まなを人質に取っていたはずの彼が、背後から近付いてきていたのだ。

恐らく、相手がねこ娘一人だけになった為
今度はあえてねこ娘を回避に集中させた末に、薫を不意打ちに回した……

という事なのだろう。


ねこ娘「あ…!く……!」


気付いた途端に、ねこ娘は痛みに苦しみだす。

その直後、薫はそのままねこ娘を押し倒すと
腹部に突き刺した爪を更に刺し込んで、更なるダメージを与えた。


ねこ娘「ぎゃあぁぁぁ――――!!」

まな「ねこ姉さん!」

鬼太郎「ねこ……むす、め……!」


ねこ娘の悲鳴を聞き、鬼太郎は立ち上がろうとするが
どうにも幽霊族の再生力でも、動けるまで回復するのに
まだ時間が掛かるほど傷が深いらしく、相変わらず動けないままだ。

霊毛ちゃんちゃんこが、回復を促進させる様子を見せているにも関わらずである。

まなも、怪物化した薫の両親に捕まったままで、何もできない。

そして最悪な事に、残るぬりかべはまだダウンしているのか、来てくれる気配が全くない。
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:17:08.29 ID:d5HixjwK0
目玉おやじ「鬼太郎!ねこ娘!」

「ノスフェルめ、まさかここまで頭が回るとは……!」


この絶望的な状況を覆すにはどうすればいい?

目玉おやじは必死に考えた。

指鉄砲を使おうにも、目玉だけのこの身では一発が限界だし
ノスフェルの弱点が判明していない今の段階で撃っても、一時しのぎにしかならない。

そうしている間に、薫は左手の爪をねこ娘に突き刺そうとしたが
ねこ娘は痛みを堪えながら、右手で受け止める。
そして、もう片方の左手で右手の爪を引き抜こうと抵抗するが
片手だけで尚且つ傷を負っている今の状態では、虫の抵抗も同然だ。

そんなねこ娘を薫に任せるかの如く
ノスフェルは、鬼太郎にとどめを刺そうと迫る。


目玉おやじ「ノスフェル!息子を倒したければ、まずわしを……」

「ぎゃあ!」


目玉おやじは、ノスフェルの前に立ち塞がったものの、案の定踏み潰されてぺしゃんこになってしまう。

まなが「親父さん!」と叫ぶ中、ノスフェルは鬼太郎の前まで来ると、爪を振り下ろしたのだが……
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:17:45.30 ID:d5HixjwK0
ノスフェル『!?』


その瞬間、霊毛ちゃんちゃんこが勝手に鬼太郎から離れると
大きくなってノスフェルの引っ掻きから鬼太郎を守ったのだ。


目玉おやじ「ちゃ……ちゃんちゃんこに宿る、幽霊族の先祖の霊が、鬼太郎を守りに出たか……」


ペラペラの姿で起き上がりながら、先祖の加護の発動を確信する目玉おやじ。

しかしそれでも、ノスフェルはちゃんちゃんこを破ろうと引っ掻きを続ける。

単純な切れ味の鋭さだけで、鬼太郎をダウンさせた爪だけあって
さすがのちゃんちゃんこも、少しずつだがボロボロになっていく。

おまけに、鬼太郎から離れた事で、鬼太郎の傷の再生も大幅に遅れだしている。


まな「どうしよう……どうしたらいいの………?」


自分が捕まってしまったばっかりに……

人質に取られ、何もできない自分に苛立ちを覚える。

このまま、何もできないまま、ただただ友人達がやられていく様を見るしかないのか?
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:19:28.84 ID:d5HixjwK0





ヒラリ―――





その時であった。

砂かけばばあと子泣きじじいが吹き飛んだ時に
遺影が壊れたのだろうか、斎田理子の写真が壁が壊れた家の中から飛んでくる。

その動きは、風に吹かれて飛んでいるように見えたが
今は写真が飛ぶほどの風は吹いていないはずだ。

そんな不思議な動きを見せる理子の写真は、まなの目の前に飛んでくる。


まな「アレは、斎田君のお姉さんの……」

「!?」


理子の写真を目にした次の瞬間、まなの頭の中にあるビジョンが浮かび上がってきた。

それは、薫が今も着ている制服の胸ポケットがアップになったかと思えば
その中のガンバレクイナちゃんのキーホルダーが、大写しになると言うものであった。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:20:30.95 ID:d5HixjwK0
まな「ねこ姉さん!薫君の胸のポケットを切って!」

ねこ娘「胸、ポケット…!」


ねこ娘は痛みを堪えながら、薫の制服の胸周りを見る。

確かに、左側にポケットがある。

それを確認すると、右手を掴んだ左手を離すと
薫を傷付けないよう、左手人差し指と中指の爪を短めに伸ばし、ポケットを軽く切り裂く。

すると、中からガンバレクイナちゃんのキーホルダーが、ねこ娘の上に落ちて来た。


ねこ娘「キーホルダー?」

薫『!?』


すると、薫に変化があった。

彼は、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーが
目に入った途端、ハッとした様子を見せいたのだ。

その反応は、まなの方でも確認できた。

そこで、まなは呼び掛けた。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:22:37.36 ID:d5HixjwK0
まな「斎田君。それが何か覚えてる?」

「あなたが大好きな、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーだよ」

「私が、あなたに買ってあげたものだよ」

薫『…………』 

まな「お願い、思い出して!」

「斎田君、あなたは動物が大好きで、それでいて優しい子なんだよ」

「だからねこ姉さんを、これ以上傷付けないで!そして、みんなを助けてあげて!」

「だからお願い!斎田君、元のあなたに戻ってッ!!」


まなの精一杯の声と共に、また理子の写真がヒラリと宙を舞うと
まるで、ねこ娘と薫の間に割って入るかのように、薫の目の前に飛んできた。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:23:15.72 ID:d5HixjwK0

薫『!!!!』


その瞬間、薫は驚きの表情と共に、頭の中にある記憶が呼び覚まされた。

それは、1年前……まだ存命中だった姉の理子と、ある会話を交わしていた記憶だ。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:24:56.05 ID:d5HixjwK0
薫「お姉ちゃん、彼氏いるんだって…?」

理子「あれ?薫ちゃん何で知ってんの?」

薫「彼氏さんが、僕に自慢してきた」

理子「もう、アイツったら、どうしてまだバラしちゃ駄目って言ったのに、あっさりバラしちゃうのかしらね〜」


口調とは裏腹に、笑みを浮かべながら理子は
ネズミの格好をした3期ねずみ男に酷似した貯金箱に、次々と小銭を入れ続けている。

そして、続けるように「そんなこと聞いてくるなんて、どうしたの?」と聞いた。


薫「いや……ちょっと羨ましくて………」

理子「ふぅん…薫ちゃんも、彼女欲しいとか考えてたんだ」

薫「…おかしい?」

理子「全然。むしろ、私も薫ちゃんにも恋人できて欲しいなって思ってる」

「私だけ恋人いるなんて、不公平じゃない?」

「…んで?気になる娘、いたりするの?」

薫「まだいないよ」

理子「じゃあその内、見付かるといいわね。薫ちゃんのタイプの娘」


そう言っている内に、理子は小銭を全部入れ終えて
「よし!今月の貯金完了っと」と言って、貯金箱を自分の机の上に置くと薫の方へ向き直る。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:26:41.39 ID:d5HixjwK0
理子「ねぇ…もしも、好きな娘できたら言ってね?お姉ちゃんも応援してあげるから」

薫「そんないいよ……」

理子「遠慮しないの!アンタ、人前だと自分の事あんまり表に出さないじゃない?」

「だから、ちょっと心配なのよね……」

薫「何それ?僕が頼りないって言いたいの?」

理子「うん」

薫「大丈夫だよ!僕、彼女できたら、絶対にその娘を幸せにするから!」

理子「お?まだ出来てもないのに、いきなり踏み込むね〜」

薫「あ……ごめん。気ぃ、早すぎだよね……」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:27:58.60 ID:d5HixjwK0
理子「ううん、そんな事ないよ」

「タイプの人がいつ現れるか分からない以上は、最初からそういう心意気持ってなきゃ…」

「せっかくできた好きな娘を悲しませちゃうし、何しろ守る事だってできはしないわ」

「私の彼氏もそういう人だから、安心して付き合っているのよ」

薫「そうだったんだ……」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:28:26.36 ID:d5HixjwK0


理子「だからね、薫。今言った事、絶対に忘れないでね」


「そして…………」

143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:29:12.44 ID:d5HixjwK0






「好きな娘できたら」



144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:29:58.80 ID:d5HixjwK0





「絶対にその娘を、守ってやってね」




145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:31:54.44 ID:d5HixjwK0
理子のこの言葉が蘇り、現代の薫はねこ娘に突き刺した爪を引き抜くと
姉の写真と、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを手に乗せ、ジッと見た。

ねこ娘がその隙に脱出する中、怪物化した薫の頭の中にまたある記憶が蘇る。

それは、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを買ってもらった時から始まった、まなと三ヶ月間。

恋焦がれるも、中々前に進めずもどかしい思いばかりを抱いていた三ヶ月間。

でも、それだけではない。

自分を評価してくれた、まっすぐで優しい娘……

探し求めていた、自分のタイプの人………


そして……









守るべき愛する人







146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:32:39.96 ID:d5HixjwK0


薫(ソウ…ダ……)

(ボ…ク……ガ……シナクチャ……イケナイコト………)

(ソレハ……コ…ンナ……)

(こン…な………)

147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:33:27.80 ID:d5HixjwK0





こんな事じゃない!



148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:35:08.05 ID:d5HixjwK0
薫『ウ……ウ………!』





『ウアァ――――――!!』




薫は、頭を抱えて苦しんだかと思えば、叫び声を上げると
急に怪物化した両親と、彼らに捕まったまなの方へと走り出す。

ねこ娘は「まな!」と叫んで止めに行こうとしたが、傷のせいで体が言う事を聞かない。


まなも、迫る薫を目の当たりにして目を瞑った。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:37:36.18 ID:d5HixjwK0




ザンッ―――!!




次の瞬間、何かが切り裂かれる音がした。

しかし、まなは痛みを感じない。

それどころか、左右から『ギャア――!!!!』と、いう悲鳴と共に何かが倒れる音が聞こえる。

同時に、捕まって動けないという感覚からも解放される。

そこで、まながゆっくりと目を開けると
目の前には爪を振りきったポーズで立ち尽くす薫がおり、両側には彼の両親が倒れていた。

薫は相変わらず怪物化したままであったが
先程まで真っ白だった目には、強い意志を持った瞳が宿っていた。

それを見てまなは、すぐに彼が両親を倒し、自分を助けたのだと悟った。


まな「斎田君…!」


安堵の表情を浮かべるまなの顔を見て、薫も安心したような表情と共に頷くと
まなに姉の写真とガンバレクイナちゃんのキーホルダーを差し出す。

すぐに「持っていてくれ」と、言っているのだと理解してまなは静かに受け取った。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:40:35.68 ID:d5HixjwK0
ノスフェル『!?』


一方、ノスフェルもその事に気付いて、薫とまなの方を振り返ると
『グオォ―――!』と咆哮を上げ、そちらに向かっていく。

それを見た薫は、まなを守ろうと爪を振り回してノスフェルに立ち向かう。
その間に、まなは深手を負ったねこ娘に駆け寄った。


まな「ねこ姉さん!それに、鬼太郎も!」

「ごめんなさい、私のせいで、こんなになって……」

ねこ娘「アンタのせいじゃないわよ……」


ねこ娘の一言に続き、いつの間にかペラペラ状態から元に戻っている目玉おやじも
「そうじゃ。君が人質にされてしまったのは、わしらが奴の行動を読み違えたせいじゃ」
と言ってフォローを入れた。


鬼太郎「それにしても、父さん。あの子……」

目玉おやじ「今のまなちゃんの呼びかけで、正気に戻ったのじゃろう」


傷を癒す為に自分の元に戻った
ちゃんちゃんこを着なおした息子に対し、目玉おやじが説明するが
それに対しまなは、「私だけの力じゃないよ」と言った。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:52:00.46 ID:d5HixjwK0
まな「この写真。去年死んじゃった、斎田君のお姉さんなんだけど…」

「この人の写真が飛んで来た時、斎田君のポケットにこのキーホルダー(ガンバレクイナちゃん)が入ってる事を教えてくれたの」

ねこ娘「それでさっき、あんなことを……」

目玉おやじ「それは恐らく、この写真の人の霊が現れたのじゃろう」

「斎田君やみんなを助けたい君の強い気持ちが彼女の霊をこの世に呼び寄せ、手助けさてくれたんじゃ」

「さすがは拝み屋の血筋なだけあるわい」


目玉おやじがまなの血筋を称賛する中、薫はノスフェルと戦っていた。

薫はノスフェルを引っ掻こうとするが、それに対しノスフェルも爪で弾く。
ならばと薫は、飛び上がって背後に回り込むが
ノスフェルが振り返りついでと言わんばかりに
長い尻尾で薙ぎ払おうとしてきた為に、薫は後ろ飛びでかわす。

するとすかさず、ノスフェルは両目を怪しく光らせた。


薫『う…がぁ……!』


恐らく再び操ろうと、力を送っているのだろう。

薫は頭を押さえて苦しみだす。
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:53:19.64 ID:d5HixjwK0

薫(ダメ…だ……!)


(犬山さんを守る……!)


(彼女の友達も、助ける……!)


(こんなのに、負けるものか……!!)



だが、薫は強い意志でその力を振り払うと
『ウオォォォ―――!』と叫びながら、ノスフェルに向かっていく。

自分の力が通じないことに、ノスフェルは若干の動揺を見せたが……
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:54:42.48 ID:d5HixjwK0


薫『グア―――……!!』


薫が爪を振りかぶって目の前に来た瞬間
返り討ちと言わんばかりに、自身の爪を彼の腹に深々と突き刺した。


まな「…!」


その光景に、まなを含めたその場にいた全員が絶句する。

一方、薫は顔をしかめながらも、まな……

そして鬼太郎の方を見ると、刺された部分から来る激痛に耐えながら
お返しと言わんばかりに、ノスフェルの腹に爪を突き刺した。


ノスフェル『ウグ!?……グ!?ググ!??』


そして、ノスフェルに異変が起きた。

突然、ぎこちない動作で鬼太郎の方へ
顔を向けたかと思うと、これまたぎこちない動作で大きく口を開いたのだ。

一体どうしたのかと思い、鬼太郎が薫の方に目を向けると
薫が、先程のノスフェルのように、目を光らせていた。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:55:37.19 ID:d5HixjwK0
鬼太郎「操り返してる……?」

目玉おやじ「む?鬼太郎、アレを見ろ!」


何かに気付き指差す目玉おやじ。

彼が指し示したのは、大きく開かれたノスフェルの口の中の奥まったところ……

暗がりになっていて見えづらいそこを
気をつけて見てみれば、黒い臓器のような物体があるのが確認できた。

鬼太郎がそれを確認した直後、薫が鬼太郎の方に顔を向けると、その物体に目配せる。

この瞬間、彼が伝えようとしている事を、鬼太郎たちは理解した。


ねこ娘「アレが、アイツの弱点……!」

まな「鬼太郎!」

鬼太郎「あぁ…!」


鬼太郎は、傷で痛む体に鞭打ちながら、立ち上がる。

薫がノスフェルと戦ってくれたおかげで、痛みを我慢して立ち上がるくらいに回復する事ができたのだ。

だが、さすがにこの状態で指鉄砲までは撃てない。

そこで鬼太郎は、ちゃんちゃんこを丸めて槍にすると、体内電気をそれに宿らせた。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:56:41.68 ID:d5HixjwK0


鬼太郎「霊毛……」





「ちゃんちゃんこぉッ!!」




今持てる力を振り絞り、槍状のちゃんちゃんこを、ノスフェルの口内に向かって投げ付ける。

槍状に細くなったちゃんちゃんこは
大きく開いたノスフェルの口にすんなりと入り込み、奥にある再生器官を貫いた。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:57:34.84 ID:d5HixjwK0



ノスフェル『グギャアァァ―――!!!!』


157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:59:26.70 ID:d5HixjwK0
弱点を攻撃され、口にちゃんちゃんこが刺さったまま苦しみだすノスフェル。

その拍子に、薫に突き刺していた爪が抜け
薫がノスフェルに腹部に突き刺していた、爪も抜ける。

ノスフェルの爪から解放された薫が、その場にうずくまる中
ちゃんちゃんこに宿っていた体内電気が一気に放たれて、ノスフェルを口内から……体内から、感電させる。

いかなる生物も、内側から攻撃されれば、ただでは済まない……

スペースビーストのノスフェルも例外ではなく
体内からのちゃんちゃんこの放電に苦しみ、みるみるうちに全身が真っ黒に炭化していく。

そして、放電が終わり、ちゃんちゃんこが鬼太郎の手元に戻った後
炭化して動かなくなったノスフェルは、ちゃんちゃんこが刺さっていたところから
サーっと、まるで分子分解されていくかのように風化し、跡形もなくなっていった。

すると、うずくまっていた薫や倒された両親が、人間の姿に戻っていく。

その様子に、鬼太郎たちは確信した。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:01:02.90 ID:d5HixjwK0

鬼太郎「今度こそ……倒せましたね…………」

目玉おやじ「あぁ…これでもう二度と、ノスフェルは復活できんじゃろう」

ねこ娘「やっと、終わったのね……」

まな「…」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:03:49.13 ID:d5HixjwK0
ぬりかべがやって来たのは、ノスフェルが倒されて少ししてからであった。
彼は、遅れて申し訳ないと謝罪したのち、ガレキに埋もれた
子泣きじじいと砂かけばばあを助け出したのだが、なんと彼らは無傷だった。

実は吹き飛ばされて、ガレキが降ってきた瞬間
子泣きじじいは咄嗟に砂かけばばあに覆い被さり、彼女ごと石化してガレキを防いでいたのだ。
しかし、下手に解くと下敷きになってしまう状態にもなってしまった為に、身動きが取れなかったのだという。

そして、細切れにされた一反もめんも、かき集められて
庭にあった水やり用ホースで放水された事で、再生することができた。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:05:16.30 ID:d5HixjwK0
一反もめん「ふー……いきなり細切れにされるなんて思わんかったばい」

砂かけばばあ「いやはや、助かったぞ…」

「危うく、この爺に抱き着かれたまま、一生瓦礫の下で暮らす事になるかと思ったわい」

子泣きじじい「せっかく守ってやったのに、何じゃあその態度は!?」


相変わらずな砂かけばばあと子泣きじじいの様子に、ぬりかべはホッとする。

一方、ある程度回復した鬼太郎とねこ娘は、まなの横に並んでいた。
そして、まなはと言うと、うずくまったまま、元の姿に戻った薫の身体を抱き起した。

こうして間近で見てみると、腹につけられた傷がとても痛々しかった。


まな「斎田君!しっかりして、斎田君!」


まなは、抱き起した薫に呼び掛けると
薫は「う…ん……」と声を出しながらゆっくりと目を開けた。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:06:08.24 ID:d5HixjwK0
まな「斎田君!しっかりして、斎田君!」


まなは、抱き起した薫に呼び掛けると
薫は「う…ん……」と声を出しながらゆっくりと目を開けた。


薫「犬山…さん……?」

まな「斎田君!よかった……」


薫の意識が戻って安心するまな。

傍にいた鬼太郎親子とねこ娘も安心すると、ねこ娘は救急車を呼ぼうと提案するが……


薫「その必要は、ないよ……」

ねこ娘「え…?」

まな「どうして?!早く病院に行かないと……」

薫「ごめんね……実は、僕……」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:06:37.40 ID:d5HixjwK0





「もう死んでるんだ…………」




163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:08:49.99 ID:d5HixjwK0
まな「え…?」


衝撃的な一言に、まなは言葉を失った。

彼女だけではない、鬼太郎たちもだ。


まな「ちょ、ちょっと…何言ってるの?」

薫「そのままの意味だよ……」

「僕だけじゃない……お父さんとお母さんも、もう死んでるんだ………」

まな「……」

「ちょ、ちょっと、こんな時に変な冗談止めてよ」

砂かけばばあ「いや…その子の言っている事、本当かもしれんぞ」


そこへ、いつの間にか子泣きじじいとの漫才を終えた砂かけばばあが
その子泣きじじいとぬりかべと一反もめんを連れて、やって来た。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:10:36.38 ID:d5HixjwK0
まな「砂かけばばあさん」

砂かけばばあ「今、この子の両親の様子を確かめたんじゃが、もう既に息がなかった」

「状態を見るに、死んで丸一日は経っておった」

まな「じゃ…じゃあ……斎田君、本当に………?」

薫「…………」


愕然とした様子のまな。

そんな彼女の表情を見ながら、薫はこれまで自分の身に起きた事を語り出した。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:12:01.26 ID:d5HixjwK0
薫「僕は、昨日学校から帰った後、アイツに殺されたんだ……」

「お父さんとお母さんも、既に殺されていた……」

「そして、アイツは……僕達に自分の細胞を植え付けて、自分の操り人形にしたんだ………」

「そうさ……今の僕は、アイツに無理矢理動かされているだけの、ただの死体なんだよ………」

まな「で、でも……だったら、どうして今、こうやって話ができるの?」

薫「…………」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:12:44.88 ID:d5HixjwK0
薫「僕にも、分からないんだ………」

「この体に、僕の意思はないはずだったんだ……けど…………」

「お姉ちゃんの写真と、ガンバレクイナちゃんのキーホルダー………」

「そして、犬山さんの声を聞いた時……急に、これまでのことが頭の中に蘇って………」

「それで気付いたら……僕は、生き返っていたんだ…………」

まな「それで、私を助けてくれたの?」

薫「うん……

「うっ!!」


と言った瞬間、薫は苦しみだした。


まな「斎田君!」

薫「もう、駄目みたいだ……」

「アイツの細胞を逆利用していたおかげで、何とか動けてたけど……」

「アイツが死んだ今、もうじき僕は、元の死体に戻る……」

まな「そんな…嫌だよ!斎田君!」

薫「いいんだよ、犬山さん………」

「不思議な事に……一度死んでみると、静かに死んでいたいって気持ちが強くなるんだ……」

「同じように操られていた、お父さん達も…きっと同じ気持ちだと思う……」

まな「………」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:14:08.72 ID:d5HixjwK0

薫「それに……もう、未練はないよ…………」

「だって……最後に一度だけ、大好きな人を………」

「君を………助けることができたんだから………」

まな「大好きな人って…」

「斎田君!もしかして、私のこと……」

薫「………」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:16:12.74 ID:d5HixjwK0

薫「やっと……自分の気持ち、伝えられた………」


「たった三ヶ月の間だったけど……こんなにも温かい気持ちをくれて……」


「ありがとう………」


「そして…さようなら…………」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:17:52.07 ID:d5HixjwK0







「犬山…ま……な…………」





初めて、まなの名前をフルで呼ぶと
薫はゆっくりと目を閉じ、全身の糸が切れた人形のように力を失い、そして冷たくなっていった。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:19:14.64 ID:d5HixjwK0
まな「!」


「斎田君!斎田君!」












「斎田く―――ん!!!!」



171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:19:40.32 ID:d5HixjwK0



続けて、夕日が沈みゆく空に、まなの悲痛な叫びがこだましたのであった。


172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:25:17.34 ID:d5HixjwK0
それからすっかり夜が更けた頃の、高級料亭 古代岩の一室……

灯りが一切なく、不気味なほど綺麗な満月と周囲のビルの光しか入って来ない暗い室内で
主のぬらりひょんはガラケーから誰かからの報告を聞いていた。


ぬらりひょん「そうですか……鬼太郎君は無事、ノスフェルを殲滅出来ましたか」

「報告、ご苦労様です旧鼠さん……」

「……お礼ですか?」

「ご心配なさらずとも報酬は明日、朱の盆に高級チーズと共に持っていかせますので……」

「……えぇ。また何かありましたら、お互い助け合いましょう」

「では、これで……」


話し終えると、ぬらりひょんは電話を切り、ガラケーを折り畳むと懐にしまい込む。

それと同時に、大きくて赤い顔をした鬼のような妖怪が入ってくる。

彼こそ先程名前が出ていた『朱の盆』。

ぬらりひょんの忠実な秘書兼ボディガードのような存在だ。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:26:52.19 ID:d5HixjwK0
朱の盆「ぬらりひょん様。芳忠さんがお目見えです」

ぬらりひょん「いいタイミング来ましたねぇ……」

「今すぐ通しなさい」


ぬらりひょんの指示を受け、朱の盆は「はい」と言って一旦部屋を後にする。

そして、少しすると黒いスーツ姿の男性が入ってきた。

この男こそ『芳忠』という人物。

見たところ、人間のように見えるが……?
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:27:26.03 ID:d5HixjwK0
ぬらりひょん「お待ちしていましたよ。丁度、あなたとお会いして、話しをしたかったところだったんですよ……」

芳忠「それは私の方も同じだっ!!」


怒気に満ちた口調でドカドカとした足取りで、ぬらりひょんの前に歩み寄る芳忠。

すると、その頭部と両手が、ギチギチとグロテスクな音を鳴らしながら変形し
前者は頭頂部に噴出口のようなものが付いた一本の触覚を生やし
白っぽい溝と一つ目しかない、縦長で不気味な黒い顔に、後者は尖った爪が生えたゴツゴツした手と化した。

そう、彼は人間ではない。

かと言って、妖怪でもない。

彼は、別の宇宙からやって来た変身怪人 ゼットン星人の……
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:28:07.01 ID:d5HixjwK0


テロップ:ホーチュ

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:29:40.13 ID:d5HixjwK0
ぬらりひょん「おや…奇遇ですね。何かありましたか?」

ホーチュ「すっとぼけるな!お前、ノスフェルの捕獲に協力してくれると言ったよな?」

ぬらりひょん「えぇ、もちろんですよ」

ホーチュ「だが、全然報告がなかったではないか!」

「それどころか夕方、変な子供に倒されている現場を見た」

「それで調べてみれば、ゲゲゲの鬼太郎とか言う妖怪退治の専門家のような妖怪で、かなりの強者だというじゃないか」

「どうしてそんな奴の存在を黙っていた!?」

ぬらりひょん「ノスフェルは妖怪ではなく、スペースビースト…」

「鬼太郎君が退治するとは、思ってもみなかったんですよ」

「それに、奴は妖怪ではありませんからねぇ。いくらわたくしめでも、行動を読み切ることができなかったんですよ」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:33:00.28 ID:d5HixjwK0
ホーチュ「だが、ノスフェルの行動は、この辺で大きな噂になっていた」

「その気になれば、見付けることは出来ただろう!アンタ、同志の妖怪沢山いるんじゃないのか?!」

ぬらりひょん「だから、さっきも言ったじゃありませんか。妖怪でない故、行動を読み切れなかったと……」

「わたくしでも行動を読めないビーストの行動を、同志たちも読めるわけがないじゃありませんか」

ホーチュ「本当か?本当は、知ってて何もしていなかったんじゃないのか?」

ぬらりひょん「邪推が過ぎますねぇ……」

「大体そちらこそ、奴の情報に目を光らせていたのでしたら、鬼太郎君の存在を把握することぐらいできたのでは?」

ホーチュ「……くそっ!」


ぬらりひょんの言い分に、ホーチュは反論も抗議もできなくなった。

それを見て、二ィッと口角を吊り上げたのち、ぬらりひょんはある疑問をぶつけてみる。


ぬらりひょん「しかし、どうにも解せませんなぁ…」

「何故あんな、危険な生物にこだわるのです?」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:33:31.14 ID:d5HixjwK0
ホーチュ「そりゃあ、捕まえて手懐ければ、それだけで大きなアドバンテージになるからだ!」

「スペースビーストってのはな、ウルティノイドやレイオニクス…」

「スパークドールズといった特殊な力を持つ奴ら、特殊な物とかを使って制御できた事例が多数あるが…」

「そう言った力を使わずに、捕獲して飼い慣らした例は未だ確認されていない」

「つまり…奴をとっ捕まえ、特殊能力なしで制御可能な怪獣兵器に育成させることができれば…」

「たったそれだけで、注目の的!多額の金も舞い込んでくるって事よ!」

「しかもあのノスフェルは、上級ビーストと呼ばれる極めて価値の高い個体だ」

「見付けるのも、あそこまで弱らせるのにも相当苦労した」

「それなのに、あと一歩と言うところで取り逃して、挙句この世界にまで流れ着いて…」

「しかも、ウルトラマンでも人間でもない子供に殲滅されるなんて!」

「こんな踏んだり蹴ったりなこと、あってたまるか!!」

「あのノスフェルを飼い慣らす事ができたら、ヴィラン・ギルドに売り込もうと思ってたというのに……!」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:35:17.26 ID:d5HixjwK0
ぬらりひょん「…………」

「……あなたにとって、あのビーストの捕獲がどれだけ大事なことなのか、理解できました」

「ならば、こちらも精一杯のお詫びをしなければなりません」

「朱の盆!」


ぬらりひょんが部下の名前を呼ぶと、朱の盆が「はい〜」と言いながら部屋に入ってくると
一つのアタッシュケースを持って来て、その蓋を開けて中身を見せる。

それは大量の札束だった。
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:39:50.38 ID:d5HixjwK0
ホーチュ「これは?」

ぬらりひょん「見て分かりませんか?お詫びのお金ですよ」

「あなたがあのビーストを売り込んで得るはずだった金額には程遠いかもしれませんが、食べていくには十分でしょう」

「それを持って、早く元の宇宙に帰るが宜しいかと思いますよ」

ホーチュ「お詫びとか言って、厄介払いかよ……」

ぬらりひょん「お言葉ですが、一番最初に厄介者がこちらの世界に流れてくるような失態を犯したのは、そちらではありませんか」

「おかげで、わたくしどもにも不都合が生じる可能性があったんですよ?」

「そもそも全部終わったら、二度とこの世界には来ないという約束でしたよね?」


ホーチュ「…………」


悔しいが、この老人妖怪の言う通りだ。

今のホーチュは

「分かったよ!アンタの言う通り、もう二度とこの世界には来ないからな!」

との捨て台詞と共に金を受け取って出ていくしかなかった。

そして、彼が出ていって少しすると、料亭の上空に透明状態の黄色い円盤……

『ゼットン星人円盤』が現れて、上空彼方へと飛び去って行ったのだった。


それからホーチュがいなくなったのを見計らい、朱の盆はぬらりひょんに話しかける。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:46:48.83 ID:d5HixjwK0
朱の盆「帰りましたね」

ぬらりひょん「えぇ…帰りました」

朱の盆「でも、よかったんですか?あのビーストとやらを鬼太郎に殺らせちゃって…」

ぬらりひょん「それはどういう意味ですか?」

朱の盆「案外、利用価値あったんじゃないかな…と思いまして」

ぬらりひょん「朱の盆……馬鹿を言ってはいけませんよ」

「あの外来種は、高い知能を持ちながら…」

「それを、本能と欲を満たすことにしか使おうとしない、いわば『頭がいいだけのケダモノ』です」

「あんなものがのさばれば、我々にも危害が及ぶのは火を見るよりも明らか」

「あのようなケダモノに、私の計画の邪魔をされては困りますし、それを持ち込んでくる部外者も許してはなりません」

「だからこそ、鬼太郎君にノスフェルを殲滅させ、ホーチュさんには早々に『消えて』もらう事にしたんですよ」

「そう………」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:48:08.25 ID:d5HixjwK0
同じころ、ホーチュの乗るゼットン星人円盤は、地球からある程度離れた所にまで差し掛かっていた。

その時、ホーチュはケースに入った金のことがふと気になった。


ホーチュ「そう言やぁ、どれくらい入ってるんだコレ?札がビッシリ入っているように見えたが……」


そう言って、ケースを開けて中に入った金の金額を数えようと
札束を手に取ったのだが、彼はその金の見た目に違和感を覚えた。


ホーチュ「…ん?こ、これは!」


ケースの中に入っていたお札の表面には、よく見る一億円札の絵柄が印刷されていた。

しかし、問題は裏面。

そちらは真っ白で、何も描かれていなかったのだ。

そう、実はこれ、真っ白な紙の表面にだけ一億円の絵柄が印刷された、偽札だったのだ。

更に、ケースの奥から怪しげな赤い光が漏れているのが見える。

ホーチュは、偽札を乱暴にケースから出して、奥に隠された『それ』を露わにする。

それは、不気味な赤い水晶玉のような球体であり
ビカビカと明滅していたのだが、その明滅のスピードが徐々に速くなっている。

初めて見るものではあったが、ホーチュはそれが
ぬらりひょんが作った爆弾であることを直感で理解した。


ホーチュ「…!」


これを見てホーチュは絶句した。

そして、すぐに悟った。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:50:21.30 ID:d5HixjwK0




スペースビーストをこの世界に追い込んだ自分を、ぬらりひょんは生かして帰す気なんてなかったのだと……



そして、ホーチュがその事を悟ったのとほぼ同時に、ぬらりひょんは先程の言葉の続きを呟いた。













ぬらりひょん「この世から永遠に……」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:51:39.19 ID:d5HixjwK0

ぬらりひょんのこの一言の後、ゼットン星人円盤は爆弾の爆発により、ホーチュ諸共宇宙の藻屑となった。

その時の爆発は、日本各地の天文観測所でも確認されたことにより、後日メディアで報道されて騒ぎになる事となった。

報道を見てぬらりひょんは計画が成功したことを実感し、ほくそ笑んだのは言うまでもない……
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:53:15.55 ID:d5HixjwK0
数日後……

薫を始めとした斎田一家は、調布市内の墓地に葬られた。

鬼太郎ファミリーとまなは、彼らの墓を訪れる。

まなは花と共に、新しい遺影に入った斎田理子の写真を……

そして、自分と薫が友達になるきっかけになった
ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを手向け、鬼太郎達と一緒に墓前に手を合わせた。

拝み終えると、目玉おやじが話しかけてくる。


目玉おやじ「まなちゃん。何故あの時、斎田君が生き返ったのか、少し考えたのじゃが…」

「あれは、君を愛する気持ちが起こしたものだったのかもしれん」

まな「私を愛する気持ちが……?」

目玉おやじ「実は…今回の件と似たようなことが、2ヶ月前にあったんじゃ」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:53:53.90 ID:d5HixjwK0
そう言って目玉おやじは、今年の10月後半に起きた、魍魎の事件の時に起きたことを話した。

それは、写真家『久能 恭平』と、彼を狙う女の亡霊の事件……

その女の亡霊は『水葉』という久能の恋人で
あるきっかけで、久能に見殺しにされてしまい、死体と化した。
その彼女の死体に、50年前に鬼太郎が封じた魍魎が憑依して復活し
そのまま水葉の恋人の久能を、執拗に狙っていたという事件であった。

当初、魍魎にとり憑かれた水葉は
自身を見殺しにした久能に対する恨みや憎しみを抱いて動いていると思われていた。

だが、紆余曲折合って彼女の死体と分離させられた魍魎が
鬼太郎とねこ娘を追い詰め、久能を殺して新たな肉体にしようとしたその時
死体に戻ったはずの水葉がカメラのフラッシュを炊いて魍魎を怯ませて久能を助け、鬼太郎を勝利に導いたのだ。

実は、彼女は見殺しにされた後も、久能を愛していた。
水葉の死体にとり憑いた魍魎が、執拗に久能を狙ったのは
その愛が魍魎によって歪められていたせいだったというのが、事の真相だったのだ。
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:54:29.90 ID:d5HixjwK0
まな「その写真家の人、恋人を殺した事を告白して自首したのは、ニュースを見て知ってたけど…」

「そんな事があったんだ……」

目玉おやじ「そして、この話で重要なのは、水葉さんがカメラのフラッシュを押して、久能たちを助けたことじゃ」

「あの時彼女は、魍魎が抜け出て物言わぬ死体に戻っていたはずだったんじゃ」

「なのに、カメラのスイッチを押すことができた……実に不思議なことじゃ」

「じゃが、魍魎の言うように、彼女が死後も久能に対する『強い想い』を抱いておったことを考えれば…」

「久能を愛する気持ちが、死体だった水葉さんを一瞬だけ生き返らせ、カメラのフラッシュを押させたと解釈できる」

「今回もそれと同じ事が、斎田君の身にも起きたのかもしれん」

ねこ娘「愛の力が奇跡を起こした……って奴ね」

まな「そうだったんだ…」


まなは、納得しながら墓石の前まで歩み寄る。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:55:06.42 ID:d5HixjwK0
まな「斎田君。君が、私に恋していたなんて、ビックリしちゃった」

「だって私、恋愛に興味はあるけど、男の子からそういう目で見られたことって、今までなかったから……」


そう言って少しだけ間を置くと、まなはまた薫の墓に話しかけ始める。


まな「だから…今も君のこと、どう見たらいいのか、ちょっと分からないの……」

「告られたタイミングもタイミングだったし……」

「けど、気持ちはとても嬉しいよ。誰かに愛されることほど、幸せなことってないもの」

「だから……助けてくれて、ありがとう」

「向こうでも、家族のみんなと仲良くしてね?」

「…あ、それと、お姉さんに、あの時ヒントをくれたことを私が感謝してること、しっかり伝えてね?」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 10:55:59.29 ID:d5HixjwK0

まな「……………」

「それじゃあ、さようなら……」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:00:49.87 ID:d5HixjwK0





「斎田……薫君………」




191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:01:32.71 ID:d5HixjwK0
薫の墓に手を添えながら、彼の名前をフルで呼ぶまな。

優しく閉じられた目からは、一筋の涙が零れている。

その様子を鬼太郎ファミリーは、優しく見守っている。


そして……
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:06:03.96 ID:d5HixjwK0


この時、墓の上から薫がまなを優しく見下ろした後、両親とともに天に昇っていく姿が、見えたような気がした。

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:06:41.00 ID:d5HixjwK0

〜エンディング:あるわけないのその奥に〜
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:09:14.47 ID:d5HixjwK0
〜補足・裏設定など その1〜


斎田薫・・・本作オリジナルキャラクターその1。
まなに恋をした珍しい人間男子。
ノスフェルに殺されてビーストヒューマンにされて利用されてしまうも
彼女に対する愛と姉のヘルプもあり、ノスフェルの呪縛を断ち切り
植え付けられた細胞を逆利用して、まなたちを救った。
ノスフェルの再生器官の場所が分かったのは、その逆利用をした際に情報を取り出す事ができたからです。

基本は内気で、あまり誰とも話したがらない性格だが
フランクかつシニカルな面もある。
そして、動物好き。
これは死んだ姉に影響されている。

裏設定として、まなを好きになる以前は
石橋 綾に気があるのではないかと言う、謎の誤解が広まっていた時期があったというものがあります。


苗字は『ウルトラマンネクサス』の主人公「孤門一輝」の恋人「斎田リコ」の斎田から
下の名前は、同作に登場する、家族がノスフェルの被害に遭った少年「山邑薫」の「薫」から拝借。
どちらも、ノスフェルの事件と関係しているキャラクターという繋がりがあります。

両親の下の名前も、薫の父親「山邑博」の「博」と、母親「山邑涼子」の「涼子」から拝借。

まなちゃんに恋しているという設定も、リコが孤門の恋人だった設定から着想を得ました。

ただ、殺されても問題ないオリキャラだからといって適当にしたくないと思うあまり
設定を作り込み過ぎちゃった感は否めません……

なお、蒼馬が彼がまなを好きになる事をやたらと反対していたのは
彼も何だかんだでまなに気があるからという解釈で描いたからです。
しかし本人はバカなので全然自覚ありません。

また、彼がまなちゃんと一緒に買って、逆転のきっかけを作ってくれたものの
一つである「ガンバレクイナちゃん」の元ネタは言うまでもなく『ネクサス』のガンバレクイナくん。
あちらでは、主人公の孤門を正気に戻すのに活躍してくたように、こちらも薫君を正気に戻すのに活躍しました。
見た目は、ヤンバルクイナが『ウルトラ怪獣擬人化計画』か『けもフレ』っぽい見た目になったのを想像してくれたら幸いです。


斎田理子・・・本作オリジナルキャラクターその2。
薫の姉だが、一年前に修学旅行先で起きた事故で既に他界している。
ちなみに、恋人も一緒に死んでしまった模様……

しかし、ノスフェルに苦しめられる鬼太郎たちを助けたい
まなの心(と無意識に発動した、彼女の中のよりましの力)に反応して、魂が一時的に現世に戻ってきて
薫を正気に戻すヒントをまなにあげることで、鬼太郎たちの窮地を救った。

動物好きの優しい性格であり、絵を描くのが好き。
一方で、金にがめついという困った一面も持っている。
仏壇にねずみ男のような貯金箱と一万円が供えられていたり
回想で貯金箱に小銭を次々入れていたのは、そのため。


名前は『ウルトラマンネクサス』の「斎田リコ」と「山邑理子」の複合。
貯金箱のデザインは元ネタがあり、猫仙人の回などで登場したネズミの格好をした三期ねずみ男の姿を使っています。

彼女が事故に遭った眞也山と溝呂木トンネルは
『ウルトラマンネクサス』に登場した「溝呂木眞也」に由来。
トンネル事故に遭ったという経緯は、リコがトンネルの前で殺されたシチュエーションを意識しました。

また、元ネタの方の山邑理子は、薫の元ネタである山邑薫の妹。
なので彼女の設定は、元ネタと逆になる形となっています……

と思っていたのですが、斎田リコの方に弟さんがいましたね………
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:10:10.09 ID:d5HixjwK0
〜補足・裏設定など その2〜


ノスフェル・・・言わずと知れた、視聴者をトラウマのどん底に叩き落したフィンディッシュ(悪魔的な)タイプビーストであり、今回の敵。
ザ・ワンがかつて取り込んだネズミのような姿をしており、それ故にザ・ワンの要素を色濃く残した上級ビーストの一種ともされている。

鋭い爪を武器に使う他、殺害した人間に自身の細胞を植え付けることで
「ビーストヒューマン」と呼ばれる操り人形に変える能力を持ち、今作でも斎田一家に対して使用。
また、口内の再生器官を破壊されない限り、何度でも復活する。

このような設定を持つものの、意外にも原作では誰かに使役されていることが多いのだが
今作の個体は誰にも使役されていない、珍しい野生個体。
また、ビーストを自力で手懐けて怪獣兵器にすることに執着する
ゼットン星人ホーチュに追われており、この個体はその際のダメージで弱体化しています。
このような設定になったのは、鬼太郎でも倒せるようにする為のバランス調整です。
もしも、巨大化可能な万全状態だったら、さすがの鬼太郎でも勝ち目がないかもしれませんからね。

ネズミに擬態する能力は、原作にない本作オリジナル。
ノスフェルに対する新たな解釈を自分なりに入れてみた結果です。
取り込んだ動物に変身できる能力があるのも、それもそれで面白いと思いません?
舌の先を枝分かれさせて敵を包む攻撃も、オリジナルです。

そして、誰にも使役されていないので、ノスフェル自身も
恐ろしく邪悪かつ狡猾な危険な存在であることを追及して
描いてみたつもりなのですが、ちょっと自信がないです……
ちなみに、原作と違って半身しか食っていないパターンがあるのは
恐怖のエネルギーは美味しかったけど、肉の方は美味しくなかったからです。
この個体は、見かけによらず肉の味にもこだわってるグルメさんなんです。

なお、本作の敵としてこいつをチョイスしたのは、今年がネズミ年なのはもちろん
ビーストの設定が色々と尖った作風の『6期鬼太郎』と相性が良さそうだと思ったこと
ノスフェルは人間大サイズがある事から、鬼太郎と戦わせやすいと判断したからです。
後は、『6期鬼太郎』も『ネクサス』も脚本家の長谷川圭一さんが
関わっている作品という共通点もあるので、その辺も意識しています。

また、灰になって崩れ落ちる描写や
ノスフェルを倒した事を「殲滅」と表現したのは、少しでも『ネクサス』感を出そうと思ったからです。
後は、ビーストヒューマン・薫VSコイツとの戦闘は、メフィストVSメフィスト・ツヴァイ戦を少し意識しています。
なので当初は薫に無理矢理口を開けさせた「撃て!」てやらせる予定だったのですが
体格的に無理そうだったので、細胞を逆利用した薫に操り返される展開となりました。
また、薫がこいつの弱点が分かったのは、自身に植え付けられた細胞から情報を取り出した為です。

そしてこのノスフェルは、もう復活できません。
元の世界で受けた対ビースト抗体や、ホーチュに弱体化させられた影響と
鬼太郎の体内電気で全身の細胞が灰になってしまったので、完全に死滅しました。



ゼットン星人ホーチュ・・・『ウルトラシリーズ』に登場する変身怪人。
初登場は『ウルトラマン』の最終話で、本来は「宇宙恐竜 ゼットン」を操る侵略者。
『ウルトラマンマックス』に再登場して以降、様々な個体がシリーズに登場している。
なお同じくちょいちょい再登場している『ウルトラQ』初出の「誘拐怪人 ケムール人」とそっくりだが、一応種族的な深い繋がりはない模様。

このホーチュと言う個人名を持つ個体は、本作オリジナルキャラクターになります。

スペースビーストに強い関心を持っているという変わり者のゼットン星人であり
ある時、ビーストを自力で手懐けて怪獣兵器にすることで、富と名声を得ようと画策。
ノスフェルを発見して等身大サイズまで弱らせるも、後ちょっとのところで逃げられた上に
時空の歪みに逃げ込まれ、自身もそれを追って
6期鬼太郎の世界にやって来てしまった、今作の事件の諸悪の根源です。

鬼太郎達の世界に来た後は、たまたま正体を知って接触してきた
ぬらりひょんに、二度と6期鬼太郎の世界に来ないことを条件に持ち出された上で
ノスフェルの捕獲の協力を依頼していましたが、結果はご覧の通り。

一応、M78ワールド(光の国がある世界)にあるゼットン星出身。

彼が語っている、ビーストを操った者達の事例は、実際に原作で起きた出来事です。
本編では触れていませんが、他にも『ウルトラゼロファイト』の第一部で
バット星人グラシエに魂を握られて操られていたガルベロスと言う事例もあります。
当方としては、これまでのビーストは特殊な力で使われているだけで
本当の意味での共生の道は示されていないという解釈です。
(同じようにレイオニクスの力を持つ、レイなどと言った一部のレイオニクスの手持ち怪獣などは、特例という事で)

また、彼が怪獣兵器にしたビーストを売り出し先にしようとしていた
「ヴィラン・ギルド」と言うのは、『ウルトラマンタイガ』に登場する宇宙犯罪組織。
真っ先にこの組織に売ろうとしたのは、実はそこの元締めの同族のゾリンと少なからず縁があるという裏設定があるからです。


個人名および人間態の名前の由来は、ウルバト及びそれ関連のCMでゼットン星人の声を演じた声優の大塚「芳忠」さんから。
6期のぬらりひょんの中の人が、同じ大塚の苗字を持つ人なので、ゼットン星人と言うチョイスになりました。
(扱いは悲惨な事になってしまいましたけど……)
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 11:11:41.34 ID:d5HixjwK0
〜補足・裏設定など その3〜


ぬらりひょん・・・日本妖怪の総大将である老人妖怪。
実は最初から事件のすべてを知っていた爺様。

鬼太郎に話したビーストとノスフェルの情報も、全部ホーチュから聞かされたものであり、流れをざっとまとめると。


ここ最近、謎の怪物(ノスフェル)が人を殺しまわっている事に疑問を持つ。
      ↓
その矢先にホーチュと遭遇。怪物の正体とスペースビーストの事と、それがこの世界に現れた経緯を知る。
      ↓
ぬらりひょん(スペースビーストのノスフェルかぁ…絶対計画の邪魔になる奴やん)
      ↓
ぬらりひょん(けど、手ぇ出したら絶対こっちも被害受けるやろうなぁ……)
      ↓
ぬらりひょん(今後の計画に必要な同志(と言う名の手駒)も無駄にしとうないし)

ぬらりひょん(おまけに、そのビーストちゅうのみすみす逃がしたこのよそもんも、ちょっと信用出来んし……)
      ↓
ぬらりひょん(せや!コイツに協力する振りして、鬼太郎に情報流して代わりにノスフェル退治させちゃろ!)
      ↓
ぬらりひょん(そしたら、こっちはよそモン片付けるだけで楽に済む!)
      ↓
ぬらりひょん(万歳!)


といった具合。

これが鬼太郎にノスフェルやビーストの情報を流した真意となります。
つまり、今回鬼太郎たちはぬらりひょんの邪魔者退治を、知らずして押し付けられていたわけです。
で、まんまと一人勝ちした訳ですね。

その癖ノスフェルがネズミに擬態して
薫君を狙っていたのを知らせなかったのは、敵対者に全面的に親切にしたくなかったからです。
こんな状況でも、鬼太郎とは敵対関係である事を崩さない爺様だったという訳です。


なお、ノスフェルの様子を見張らせた同志妖怪が旧鼠だったのは
5期では彼の配下だったことと、今年がねずみ年であることを絡めた小ネタ。
報酬の高級チーズとお金は、宣言通り後日朱の盆に配達させた模様。


上のもの以外では、子泣きじじいの触れた相手と一緒に石化する能力は
本作オリジナルではなく、4期の陰摩羅鬼の回でねこ娘に対して使った能力が元ネタです。

また、薫が一時的に生き返った理由の考察のために目玉おやじが出した魍魎の話しは、6期本編第78話の出来事。
そういえば、この話しの脚本も長谷川さんでしたね。

そして、岡倉優美は第55話のゲストキャラですね。
この作品では未だにぬりかべに師事している事にしていますが
実際のところどうなったんでしょうかね……
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