男「それは、宇宙の彼方」

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1 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 22:55:46.92 ID:DIXGqohk0
男「おい」

女「……」

男「いつまで教室にいるつもりだ」

女「……」

男「おい」

女「……」

男(……無視か)

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2 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:00:20.42 ID:DIXGqohk0
男「おーい」

女「……」

男「日本語通じてるか?」

女「……あ」

男「あ?」

女「なに?」

男「……はぁ」
3 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:02:40.89 ID:DIXGqohk0
 放課後の誰もいない教室で一人、ぽつんと自分の席に座っている。

 視線は真っ直ぐ前へ、何かを見ているわけでもなく。

 ただジッと前を見つめている。

男「なにって、お前がずっと一人で教室にいるから」

女「迷惑?」

男「迷惑……ってわけじゃないが」

 表情はボーっとしたまま、視線はこちらに傾いてくる。

 なんという、純粋かつ、無垢な瞳。
4 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:06:44.18 ID:DIXGqohk0
男「一人でボーっとしてたから、ちょっと心配になっただけだ」

女「……」

 何も答えず、静かに立ち上がり、そのまま席を立って教室を出ようとする。

 その時、スクールバッグを持っていないことに俺が気づいた。

男「お、おい、荷物は?」

女「大丈夫」

男「大丈夫じゃないだろ。堂々と置き勉か?」

女「置き勉?」

男「知らないのか?」
5 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:08:10.25 ID:DIXGqohk0
男「今、お前がしようとしていることだ」

 手渡すために、机に掛かっているスクールバッグを持ち上げる。

 異様に軽い。というか、何も入っていないな、この重さ。

男「これ、中入ってるか?」

女「入ってない」

男「ちょ、ちょっと待て」

 机の中を見る。何も入ってない。

男「お前、何も持ってきてないのか!?」
6 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:12:24.11 ID:DIXGqohk0
女「……」

 丁寧に頷く。とんだ不良少女だ。

男「お前、いつも授業中どうしてんだ!?」

女「……さあ?」

 首を傾げて、踵を返し、教室を後にした。

男「お、おい! 待て!」
7 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:17:30.30 ID:DIXGqohk0
 彼女は少しスキップ気味で歩く。その歩調は、異様に速い。

男「待てって言ってんだろ!」

 俺も勢いよく追いかける。廊下は走らない。

女「……」

男「! うおっ」

 急に止まる。俺は勢いを止めきれずに軽くぶつかった。

男「え……?」

 その感触は、やけに柔らかかった。
8 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:22:33.79 ID:DIXGqohk0
 もちろん、女性なのだから柔らかくて当然ではあるのだが。

 そういうレベルではない。質量がまるでないような。

 まるで人間ではないような。軽さと柔らかさに驚く。

男「……急に止まるな」

女「……」

 ぶつかった本人が後ろを見上げてきて、超至近距離で目が合う。

男「……ッ」

 吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳。

 まるでガラス玉。気泡は一切ないほど透明で、なんの混じりけもない。
9 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:28:38.01 ID:DIXGqohk0
女「……♪」

 笑った気がした。

 ボーっとしていた表情が、少しだけ明るくなる。

男「なんだよ」

女「落ち着く」

 この密着した状態で落ち着くな。

男「は、離れろ」

女「……」

 身体が離れると、表情がボーっとした状態に戻る。

 なんなんだこいつ。
10 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:36:11.97 ID:DIXGqohk0
女「……」

男「いや待て、行こうとするな」

女「なに?」

男「お前、いつも学校に何も持ってきてないのか?」

女「?」

 不思議そうに頷く。何も間違いはないとでも言いたげだ。

男「とにかく、スクールバッグは持って帰れ。俺は風紀委員だから看過できない」

女「風紀委員?」

 何も知らんのかこいつは。
11 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/12(日) 23:40:14.20 ID:DIXGqohk0

また明日。

毎日10レスずつ投稿できたらと思います〜。
12 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/14(火) 22:43:44.89 ID:qU2nL77R0
男「風紀委員は、学校生活の乱れやらを取り締まる委員だ。」

女「乱れ?」

男「そうだ。お前はそもそも勉学に励む気がないとみた」

 だからこそ、俺の立場上見過ごすわけにはいかない。

女「よくわからない」

男「あのなぁ……」

 頭を抱える、というのは正にこういうことを言うのだろう。
13 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2020/04/14(火) 22:44:54.50 ID:qU2nL77R0
男「……」

女「……」

男「お前、家こっちなのか?」

女「……」

 頷く。迷いはない。

 何故か一緒に歩いている。

 現在帰宅途中だ。

 だが、俺の家の方向ではない。
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