男「それは、宇宙の彼方」

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164 : ◆qhZgDsXIyvBi [sage saga]:2021/12/15(水) 23:29:21.88 ID:ECNFnKQ+0
女「……」

 彼女がこちらをジッと見つめていた。

「落ち着く」という俺の胸元、超至近距離で。

男「どした」

女「……」

 何も言わないが、ずっとこちらを見ている。

男「はぁ」

 校舎の屋上には涼しげな風が寄り添い、部活の喧騒が聞こえる。
165 : ◆qhZgDsXIyvBi [sage saga]:2021/12/15(水) 23:29:57.63 ID:ECNFnKQ+0
 あの日から一ヶ月以上が経った。

 どうやら、今日という日は世界が再作成(リセット)を繰り返していた時には迎えることができなかった日のようだった。

男「お前は何度も繰り返してたんだな」

女「……」

男「俺も後追いで繰り返し体験したわけだけど、

  ……ああ、そうか。覚えてはいないんだよな」

 彼の話によれば。

 あの時の彼女の記憶はほとんどないってことだ。

 おそらく断片的な、というか直前の記憶を髪留めに吹き込んだだけ。

 残りの8万回以上の記憶はないんだ。
166 : ◆qhZgDsXIyvBi [sage saga]:2021/12/15(水) 23:30:58.37 ID:ECNFnKQ+0
 普通、人間の記憶なんて朧げなものなのだが。

 脳内に直に転送された記憶は非常に鮮明だった。

 映画を観に行ったり、商店街に出かけたり。

 一緒に飯を食べたり、遊園地に行ったり。

 想像できないほどに色んな場所に出かけていた。

 その行動の最たる理由。

 俺は、多分きっと、

 いや、間違いなく、

 彼女のことが好きだからだろう。

 不思議な彼女の魅力に、どんどん惹かれていたんだと思う。

 どの記憶でも、俺は笑っていた。
167 : ◆qhZgDsXIyvBi [sage saga]:2021/12/15(水) 23:31:37.66 ID:ECNFnKQ+0
男「俺はすげえ覚えてるけど、お前は覚えてないんだもんな」

 軽くため息を吐いてみる。

女「……」

 彼女はボーっとしていて、俺の胸元から離れない。

 ほとんど人間と変わらない彼女は、以前よりも質量を持っているように感じる。

 もちろん、元々小柄なので多少の差ではあるが。
168 : ◆qhZgDsXIyvBi [saga]:2021/12/15(水) 23:32:19.59 ID:ECNFnKQ+0
女「これから」

男「ん」

女「一緒に経験する」

 彼女は俺から離れて、しっかりとこちらを向き直す。

女「今のあなたと」

男「……そうだな」

女「うん」

 俺も、そうすることにしよう。

 今の彼女と一緒に。

後日談「あれからとこれから」 END
169 : ◆qhZgDsXIyvBi [sage saga]:2021/12/15(水) 23:35:20.55 ID:ECNFnKQ+0
去年の4月にスレを立てて、急ぎ足で完結しました。

よくわからない部分ありましたら補足も致します。

ありがとうございました。またどこかで。
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