桐乃「アタシの兄貴がゲイなわけがない」

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117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:20:30.54 ID:34E8RAEK0
「アンタ!!なに黒いのと抱き合ってんのよ!!離れろ!!」

「桐乃とお兄さんをたぶらかす魔女め..!!わたしがこの手で成敗してくれます!!」



「お..落ち着けおまえら!!暴力は何も生み出さない!!話せばわかる!」

「私とアナタはきっと同胞になれる..さあ..来なさい..アナタの内に秘める邪悪を我が器に注ぎ込むがいい..!!」

「突然お前は何を言い出すんだ!?死にたいのか!?」


黒猫の奴..恐怖で頭がおかしくなったのか!?
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:21:00.02 ID:34E8RAEK0
桐乃とあやせが牙を剥き場の空気が極限まで張り詰めたその時..


「京介!!アンタ2階の窓から嘔吐するとか何を考えてんの!?」

お袋がドスドスという大きな足音を立てて階段を上ってきた


「ご近所さんに見られていたらどうしてくれるの!?お母さん恥ずかしくて表を歩けなくなるじゃ..あら?桐乃帰ってたのね..あら、お友達も一緒で..お、おほほ..いらっしゃい♪」


「お母さんただいまー!!今友達来てるからさ..何かお茶菓子を用意してくれない♪」

「桐乃のお母さんお邪魔してます♪」


にこやかな笑みを浮かべた桐乃とあやせが愛想よくあ袋にあいさつした


怖えええええーーーー!!!なんだコイツら!?二重人格か!?
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:21:26.02 ID:34E8RAEK0
俺と黒猫を追い詰めていた二人の鬼気迫る表情が一変し、普段通りの桐乃とあやせに一瞬で戻ったことに俺の背筋にゾクゾクッ..と悪寒が走った

女って..やっぱり怖え...

あ、だからって俺はホモには走らないからな?勘違いすんじゃねーぞ?


「お..おほほ..待っててね..今お茶とケーキを準備するから..!!」

娘の友達に汚い言葉を聞かせてしまったことをごまかすようにお袋は作り笑いを浮かべると、お茶菓子を準備すべく下の階へと降りて行った..

お袋..よくぞこのタイミングで来てくれた..初めてアンタに感謝した気がするよ..
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:21:54.50 ID:34E8RAEK0
ーーーーーーー
ーーーーーーー

「な...なーーんだ..これはアンタが書いたものじゃなかったんだ..そうならそうともっと早く言ってよね〜!!」

「も..もう..そそっかしいんですから..もっとはやく言ってくれれば私もあんなに怒らなかったのに...」


「何度も言ったよ!?大体なんで俺がホモ小説を書くんだよ!?」

「この本は私が書いたものじゃないわ..これはウチの部活の脳みそが腐りきっている女が創り出した呪いの書なのよ..」


桐乃とあやせはバツの悪さをごまかすように笑みを浮かべ、俺と黒猫の分のケーキやお茶の準備をしていた
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:22:28.50 ID:34E8RAEK0

「このケーキうめー!!おばちゃんもう一個食っていいか!?」

「どうぞどうぞ♪..好きなだけ食べてって頂戴..!!あ、私ちょっと急用を思い出したからでかけてくるわね〜」

そういうとお袋はそそくさと家を出て行ってしまった..年頃の娘たちに嘔吐という言葉を聞かせてしまったのがよっぽど気まずかったようだ..


騒動の発端になった本の裏表紙に赤城瀬奈という作者の名前が記されており、桐乃とあやせの誤解はあっけなく解けたのだった

俺たち一同は場所を下のリビングへと移し、和解の印としてテーブルを囲んで和やかにケーキを頬張っていた


「それにしても..なんでおまえらあんなに怒ってたんだよ?黒猫がちょっと卑猥な小説読んでいたからって過剰反応しすぎじゃねえのか?」

「ハ..ハァ!?あんなキモイ文章の朗読を聞かされたら怒るにきまってんじゃん!?」

桐乃は顔を真っ赤にしてそう叫んだ。コイツ..何か隠してやがんな?
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:22:54.28 ID:34E8RAEK0

「桐乃..お兄さんと黒猫さんに迷惑をかけてしまったんだから..隠すのはもうやめよう?ごめんなさいお兄さん..黒猫さん..実は私と加奈子は桐乃に相談を受けていたんです」

「相談?なんの..」

俺は何げなく紅茶が入ったティーカップをくいっと傾けて、中の紅茶をズズ..と啜った


「今日ずっとコイツ悩んでいたんだぜ?自分の兄貴がゲイなんじゃないかって..」


ブーーーーーッ!!!!


俺は口に含んでいた紅茶を盛大に吐き出した
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:23:21.78 ID:34E8RAEK0
「うわ!!汚ね!!ちょっとかかった!!」


「桐乃..今日ずっと元気なくて..数学のノートと..この..B..BL小説を間違えて学校に持ってきてしまうくらいに..お兄さんは桐乃を悩ませていたんですよ!?反省してください!!」


な、なに..!?コイツら今なんて言った!?

お..俺がホモ疑惑をかけられていて..しかもこのBLシナリオを桐乃..学校に持っていったの!?なんでどうしてWhy!?
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:23:51.49 ID:34E8RAEK0
「ま、待て..!!そもそもなんで桐乃がこのBLシナリオを持っているんだ!?そこからしてまずおかしーだろーが!!」

「アンタ..昨日の夜中..こんな素晴らしいシナリオが書けちゃう自分が怖いとか..キモイこと言ってたじゃん」

「お..おまえ..あの時の俺の独り言を..聞いていたのか?」

「べ..別に聞きたくて聞いてたわけじゃないし...壁が薄いから..聞こえちゃっただけだし..」

桐乃は頬を赤らめると、きまりが悪いのか俺から顔を背けた

「そ..それで..どんなシナリオ書いたのか添削してやろうと思って..アンタが寝静まった部屋に入ってこっそりこのノートを手に取ったら..こんなのが書かれてて..」


事情は理解した..あの時机の上に置いてあった3冊の本は部長のシナリオ、真壁君のシナリオ、そして瀬菜のシナリオだった。

桐乃はその中の瀬菜のシナリオを俺が描いたモノだと思い込んでしまったのだ。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:24:21.26 ID:34E8RAEK0

「で..でもよー..なんでそのままBLシナリオを部屋に持って帰ってしかも学校にまで持っていくんだよ..意味わかんねえよ..」

「あ..アンタがゲイかもしれないって思ったら..ショックで..うっかり部屋に持って帰っちゃって..数学のノートと間違えてカバンに入れちゃったの!!」

「どんなうっかりだ!!俺はゲイじゃねえ!!それに製作途中のシナリオを勝手に読もうとするんじゃねえ!!」

「わ..悪かったわよ!!そんなに怒んなくてもいいじゃん!!」

まったく..寝ている隙に部屋のモノを勝手に持ち出されるんじゃたまったものじゃねえな..

しかも..友達連中に俺のホモ疑惑を打ち明けるとは..もうお兄ちゃんのライフはとっくに0だぜ..


もうライフポイントが0になってこれ以上俺のライフが削れることはないと思っていたが..
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:44:45.64 ID:34E8RAEK0
「加奈子は桐乃の兄貴はゲイじゃないって最初からわかってたぜ..だってベッドの下のエロ本の中にゲイの本がなかったからな」

加奈子が俺の心にさらなるダイレクトアタックを仕掛けてきた


「んなーーーーーー!!!!お..おおおおおおまえら!!!!ベッドの下を覗いたのか!?」

恥ずかしさのあまり俺の顔は真っ赤になり、思わずイスから立ち上がった


「あ、やべ..これ言っちゃいけない奴だった?わりーわりー」

加奈子は右手てボリボリと頭を掻くとテヘペロ♡と言わんばかりにかわいく舌を突き出した

「おい!!なんで俺の部屋勝手に漁ってるんだよ!?じ..人権侵害だ!!」


「う..うっさい!!アンタがゲイじゃない証拠を見つけるために仕方ないことだったの!!つーかなに?アンタ..どうしてエロ本の中に、アタシとあやせと加奈子と黒猫の写真が混じってんの!?」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」


攻撃力4500は超えるであろう強烈な一撃が俺の心を殴りつけた

ピピピピピピピピ..!!という俺のライフポイントを勢いよく削っていく電子音が聞こえたような気がした。
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:45:33.40 ID:34E8RAEK0
「加奈子は桐乃の兄貴はゲイじゃないって最初からわかってたぜ..だってベッドの下のエロ本の中にゲイの本がなかったからな」

加奈子が俺の心にさらなるダイレクトアタックを仕掛けてきた


「んなーーーーーー!!!!お..おおおおおおまえら!!!!ベッドの下を覗いたのか!?」

恥ずかしさのあまり俺の顔は真っ赤になり、思わずイスから立ち上がった


「あ、やべ..これ言っちゃいけない奴だった?わりーわりー」

加奈子は右手てボリボリと頭を掻くとテヘペロ♡と言わんばかりにかわいく舌を突き出した

「おい!!なんで俺の部屋勝手に漁ってるんだよ!?じ..人権侵害だ!!」


「う..うっさい!!アンタがゲイじゃない証拠を見つけるために仕方ないことだったの!!つーかなに?アンタ..どうしてエロ本の中に、アタシとあやせと加奈子と黒猫の写真が混じってんの!?」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」


攻撃力4500は超えるであろう強烈な一撃が俺の心を殴りつけた

ピピピピピピピピ..!!という俺のライフポイントを勢いよく削っていく電子音が聞こえたような気がした。
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:48:02.99 ID:34E8RAEK0
「そ..そうだった!!変態変体変態!!私の写真集だけならともかく..実の妹である桐乃の写真をナニに使っていたんですか!?」

「ご..誤解だ!!お前たちは誤解をしているぞ!!」

「どう誤解だっていうのか..ちゃんと筋道を立てて聞かせてもらえるかしら?」

黒猫がジ..と蔑むような目で俺を見つめてきた

「アンタの抜きネタの中に加奈子がコスプレして踊ってんのもあんじゃん?アンタ...妹の友達がアニメキャラのコスプレしてんのに興奮すんのかよ..」

「違うんだって!!だから俺の話を聞いてくれ!!」


「ホモ疑惑は晴れたけどよ..実の妹やその友達に片っ端から欲情するとかマジきめぇ..これからアンタのことエロ大魔王って呼ぶからな」

「やめんか!!わかった!!俺がお前たちの写真やエロ本を何に使っていたのかちゃんと説明するから..!!変なあだ名で俺を呼ぶのはやめろ!!」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:48:40.00 ID:34E8RAEK0
「じゃあ説明してよ!!エロ以外の目的にアタシたちの写真を何に使っていたっていうわけ!?アタシだけでなく皆の写真まで..このシスコン!変態!!」

「だから誤解だっつってんだろ!!俺は自分のシナリオの資料にお前たちの写真を参考にさせてもらっていたの!!」



「シナリオの資料?それって..兄貴がキモイ声で傑作だって自賛してたやつのこと?」


「キモイは余計だ..ああ、そうだ..俺たちゲーム研究会は女の子をメインとしてシナリオを描くことが多い..」

「おまえやその周りの友達はモデルもやっているし女の子としてのレベルが高い..だからシナリオで女の子を描くときにお前たちを参考にさせてもらっていたのさ」


「レ..レベルが高い..//おほん..言いたいことはわかりましたが..わたしたちの許可を取らずに勝手にシナリオに使おうとしたのは問題です..」

「罰としてお兄さんが書いているシナリオをわたしたちに見せることを要求します!!」


あやせが顔を赤らめて俺にシナリオを見せろと要求してくる..
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:49:11.45 ID:34E8RAEK0
「いや、言いたいことはわかるが..あのシナリオはまだ未完成で今日一気に完成させるつもりだったんだよ..未完成の作品を人に見せるのはちょっと..」

「何いっちょ前に作者気取ってんのよ..これだけ人を騒がせて大事にしたんだから責任もってみせろ!!」

「お前が俺の部屋に勝手に入って部屋にあったモノを無断で持ち出すからだろーが!!」

「うっさい!!いいから見せろ!!」

恥ずかしさを隠すために桐乃は大声を張り上げる..


「ちっ..しゃーねーな..そんなに言うんじゃみせてやるか」

俺はやれやれとため息を吐くと、学生カバンの中から一冊のノートを取り出した

「ほらよ..これが俺のシナリオが書いてあるノートだ..読みたきゃ読め..」

無造作にテーブルの上にノートを放り投げると桐乃たちは興味津々といった感じで、ノートの周りに集まった
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:49:40.97 ID:34E8RAEK0

「どれどれ...タイトルは..きりりんの冒険?なにこれ..?あれ..?この主人公っぽいかわいい女の子..アタシにそっくり..」

「桐乃似の女の子の隣にいる黒髪の子はわたしそっくりです!!」

「なあなあ..このメルルみたいな服着てる女..加奈子にそっくりじゃね?」


登場するキャラクターたちのイラストを見て桐乃たちは戸惑いの声を上げる..



「ええ..登場するキャラクターたちは私がデザインしてアナタたちに似ているように書いたから..本人に似ているって言ってもらえてうれしいわ..」

黒猫は口元に手を添えて満足げにクスクスと笑みを浮かべた

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:50:11.38 ID:34E8RAEK0
「え〜となになに..?世界を支配し人々を苦しめる闇の魔王べルフェゴールを倒す旅に出た勇者きりりん、魔法使いあやか、遊び人かなかなを操作して冒険の旅を繰り広げよう!」

「なんかベタな設定だけど..王道RPGみたいな感じね...」

桐乃は渋い顔をするもペラペラとページをめくってゆく


「あ..でもなんだか面白そうですね..舞台となる森や洞窟とかもCGみたいにキレイだし..設定もよく練られていると思います..」

「これってアタシたちを参考に描いたんだろ?さっすが加奈子をモデルにしただけあってかわいいじゃねーか!!」

「ふ〜ん...アンタが作ったシナリオにしては面白いじゃん..あ、キャラごとの一枚絵もある..あにこれ!?ちょーかっこいいじゃん!!」


勇者きりりんがモンスターたちと果敢に戦闘を繰り広げる一枚絵に桐乃は感嘆の声を漏らした

コイツがこんなに褒めてくれるってなかなかないことだよな..
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:50:45.25 ID:34E8RAEK0
「あ..あやかが仲間の傷を魔法で癒している一枚絵があります..きりりんをしっかりサポートしていて..偉いですねあやかは..//」

膝小僧から出血しているきりりんを魔法で懸命に治療しているあやかの一枚絵を見てあやせは満足げな笑みを浮かべた。

ゲームの中とはいえ、桐乃似のキャラの役に立てているのがうれしいんだな。やっぱりあやせは優しい奴だな。


「ふ〜ん..桐乃の兄貴の割には冴えない奴だなと思ってたけど...けっこうやるじゃん..!」

加奈子も自分とそっくりなキャラクターが仲間のために奮闘する挿絵を見てまんざらでもなさそうな顔を浮かべた。


俺たちはシナリオブックの話に花を咲かせながら穏やかな時間が流れていった...
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:51:22.25 ID:34E8RAEK0
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ーーーーーーー

はずだった



「キモイ..マジキモイ!!信じらんない...最ッ低!!!」

「お兄さん...黒猫さん...これはどういうことか..説明してもらえますか?」

「死ねよ」



桐乃は怒りのあまり目に涙を貯めて俺たちを罵っている..

あやせは光彩をドス黒く染めて今にも俺たちをピー!してしまいそうな面持ちだ..

加奈子はゴミを見るような目で俺に死ねと命令してくる..



俺と黒猫は江戸時代の罪人のごとく床の上に正座をし、力なく頭を垂れている

桐乃たち3人は罪人を裁く奉行のような面持ちで俺たちを見下ろしていた
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:51:54.09 ID:34E8RAEK0
「さっきまで..みんな笑顔であんなに幸せな時間が流れていたのに..どうして..こんなことに...」

ポタ..ポタ..という音を立てて俺の目から零れ落ちた涙が床に滴り落ちてゆく..


「どうして?じゃないでしょ!?これは一体なんだって聞いてんの!!」

うっかり自分の気持ちを口走ってしまった俺のひざ元にバンッ!!という大きな音を立ててシナリオノートが叩きつけられた


シナリオノートには服をビリビリに破かれたきりりんががオークにリンカーンされているシーンが繊細に描かれており..

涙目のきりりんは「くっ...殺せ!」と言わんばかりの生意気さが残る表情でオークを睨みつけている
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:52:25.99 ID:34E8RAEK0

「なにって..戦闘に敗北したときのバッドエンドシーンの構想じゃん..」

「フッ..!我ながら力作に仕上がったと自負しているわ!!」


バン!!!


「ヒィッ!!」

「キャッ!!」


あやせがにこやかな笑顔のまま手に持った竹刀を思いきり床に叩きつけた

竹刀は警察官の親父が庭で素振りをするために部屋に置いてあったものだ


「お兄さん..黒猫さん..こんなふざけたモノを世に送り出そうとしていたんですか?あやかだけでなく..きりりんにまでこんな狼藉を働いて...ブチ殺しますよ!?」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:52:56.46 ID:34E8RAEK0
「すいません!すいません!すいません!お、俺は反対だったんです!!創作とはいえ、妹とその友達を参考にしたキャラにこんなことするなんて!!」

「ちょ..裏切るつもり!?アナタが敗北した後の展開とか考えたほうがいいのかな?なんて言ったから私が気を利かせて書いてあげたんでしょ!?」

「俺はモンスターに慰み者にされろなんて一言も言ってないぞ!?ただ、ちょっとエロいシーンがあった方がユーザー受けがいいんじゃないかって言っただけで..」


「どっちも同罪です..!!醜い罪の擦り付け合いなんてみたくありません!!黒猫さん..アナタに聞きたいことがあります!!」

「な..なにかしら..?」

黒猫は恐怖で目に涙を浮かべるも..どことなくゾクゾクとした様子であやせの尋問に対応した
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:53:33.34 ID:34E8RAEK0
「このシーン..あやかは一体何をされているんですか?しかもこのシーン..強制敗北で必ず流れるシーンなんですよね」


あやせはドス黒いスライムたちがあやかの身体を弄び..あやかが闇に汚れていく様子が鮮明に描かれているページを黒猫に突き付けた


「このシーンはシナリオの構成上必要不可欠なシーンなのよ..あやかはきりりん達を守って闇の魔王ベルフェゴールの手に落ちてしまうの」

「そしてあやかは敵に凌辱されて純潔を失ってしまうの..闇に堕ちたあやかはダークエンジェルとして覚醒し、闇の魔王ベルフェゴールの配下としてきりりん達の前に終盤の強敵として立ちふさがるのよ」



柱に縛り付けられたあやかにベルフェゴールがけしかけたモンスターたちが襲い掛かる..なぜかこのベルフェゴールという魔王..麻奈美に似ているような..いや、気のせいか..


あやかの口からスライムたちがドロリとした魔力を注ぎ込み、慈愛に満ちていたあやかの瞳が闇に染め上げられていくシーンを黒猫は得意げに語った


「あなたを今この場で凌辱してあげましょうか?」

「や..やめてくださいお願いします」

殺意に満ちたあやせの言葉を聞いた黒猫はキレイな土下座を作ると、闇に落ちたあやせに許しを請うた
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:54:07.60 ID:34E8RAEK0
「しかもなんだよこのシーン..敵になったあやかとの戦いで敗北するとパーティ全員があやかに凌辱されるんだべ?」


加奈子はあやか戦での敗北シーンをペラリとめくった

そこには..あやかが召喚した大量の触手がかなかな..そしてブリジットちゃんを参考にしたと思われるキャラにあんなことやこんなことをしている一枚絵が記載されていた

きりりんの凌辱はあやかが直々に行っており、恍惚な表情を浮かべたあやかがきりりんの身体を堪能していた


「あやかはきりりんたちを捕らえて自分の仲間にしてしまおうと考えているの..この凌辱シーンによって主人公たちは全員闇落ちしてしまい世界は破滅を迎えるというバッドエンドよ」

「ブリジットにまで目を付けていたのかよ..ほんときめえ..死ねよ」

「すいません..」

加奈子はゴミを見るような目で俺を見下ろした...やべえ..死にたくなってきた..
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:54:40.33 ID:34E8RAEK0
「ブリジットじゃなくて、ブリジッタよ..この子はあやかの代わりにパーティに入ったメンバーで、条件が揃えば他の隠しキャラと交代されることもできるのよ」

設定資料集には沙織バジーナを参考にしたと思われる大柄の女性キャラや、赤城瀬奈を参考に創ったと思われるセナチーという名前のキャラの設定が記載されていた


「わ..わたしが桐乃とあんなことやこんなことを...///じゃなくて..こんなものは認めません!!」

「わ..わかってるよ..!!そもそもここにあるシーンはすべて没ネタだ..!!さすがにこういうシーンを作品に載せるのはマズいと思っていたから使う気はなかったんだよ!!」

「な..なんだ..そうだったんですか...」

あやせはホッとしたような、なぜかガッカリしたような微妙な表情を浮かべた
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:55:11.38 ID:34E8RAEK0
「アンタ..アタシたちにこんなキモイ物見せて..どうなるかわかってんでしょうね?」

「ど..どうすれば気分を直してくれるのでしょうか?」

「ノート貸して..アタシがこの作品のキモイ部分を全部修正して名作にしてあげる..」


桐乃はそう言うとノートを拾い上げサラサラとペンを走らせていった

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:55:42.30 ID:34E8RAEK0
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「ひっぐ..ひっぐ...どうして..どうして皆私の芸術をわかってくれないんですか...!」

ゲー研の部室に瀬菜のすすり泣く声が響き渡る..

泣きじゃくる瀬菜をゲー研の部員たちは鋭い目で取り囲み、罪人を断罪するかのような厳しい面持ちを浮かべていた。


「どうもこうもねえだろ..?なんだよこの作品は!!なんでゲー研の部員たちとお前の兄貴がホモ電車してるんだ!?ボツだこんなの!!」

テーブルの上には件のゲイシナリオが置かれており、怒りのあまり眉間に血管を浮きだたせた部長の雷が瀬菜に落ちた

「ひっどーい!!これ書くのに何時間掛かったと思ってるんですかー!?ま、真壁先輩なら..この作品の良さをわかってくれますよね!?」

「ごめん..ちょっと僕には無理かな..」

「そ、そんなー!!」

「ごめん..ちょっとトイレ..」

瀬菜に対して思いを寄せている真壁君でさえこのシナリオはキツ過ぎたようで..

気分が悪いのか青い顔で部屋を出ていった
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:56:08.23 ID:34E8RAEK0
「そんなー真壁先輩まで...ん?トイレ...?ハハァ..そういうことですか..もう!真壁先輩ったら..恥ずかしがることないのに..//」

瀬菜は顔を赤く染めると、ホモシナリオを手に真壁君を追いかけた

「真壁せんぱーい!!忘れ物ですよーー!!トイレのお供に私の作品を使ってもいいですよーー!!」

「え!?い、いらないよ..僕はそんなもの..ウッ!!オロロロロロロロッ!!!」

「きゃあ!!真壁先輩が吐いた!!吐くほど興奮したんですね!!次回作も楽しみにしていてくださいね!!真壁先輩♡」

「ウエッ!!」

ひでえ会話が廊下から聞こえてきた...真壁君..安らかにな...
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:56:36.83 ID:34E8RAEK0

「せっかくあの女に浴びせる辛辣な言葉をたくさん考えてきたのに..私が出る幕もなく終わってしまったわね..」

「だから言ったろ?お前がワザワザ手を下すまでもなく、あのシナリオはボロクソに酷評されて没になるって..」


ガッカリしたように肩を落とした黒猫に俺は労いの言葉をかけた

昨日俺が味わった苦行は一体何だったんだ...
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:57:07.48 ID:34E8RAEK0

「真壁と赤城が出ていっちまったが..まあいい..次は高坂..おまえのシナリオを見せてくれ」

「はい!!これです..!!」

「ほお..どれどれ..おお!なかなかいいぞ!!正統派RPGとは..悪くねえな!!」

「本当ですか!?」

「ああ..シナリオの完成度も高いし..キャラクターデザインもよく描けている..!!次のゲームはこれで決まりだ!!」

「あ、ありがとうございます..!!部長!!」

「よかったじゃない先輩..おめでとう」

「ありがとう黒猫..おまえが手伝ってくれたおかげだと..本当にありがとう!!」

「べ、別に私は..」

黒猫は照れくさいのか頬を赤く染めると顔を背けてしまった

「おいおい..これからが大変なんだぞ?よし..真壁と赤城が戻り次第作業に取り掛かるぞ!!全員気を引き締めて各々の役割に打ち込めー!!」

オーーー!!と他の部員たちの雄たけびが上がり、こうして俺と黒猫の合作「きりりんの冒険」が正式に制作されることが決まったのだった。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:57:48.45 ID:34E8RAEK0
そして少しの時が流れ..


「先輩..「きりりんの冒険」なかなか評判がいいみたいよ?」

「おお..そうか..皆の力のおかげだよ..なかなかいい作品ができて俺もうれしいぜ!!」


「ネットに上がったコメントをいくつか読み上げていくわね..シナリオのテンポがよく、ゲームバランスも適正で面白かった」

「キャラのデザインがかわいく、小物などの細かいところも良く書き込まれていて、本当にダンジョンの中を冒険しているような気持ちになれた」

「闇落ちしたあやかちゃんとのバトルは燃えと萌えが合わさった名バトルだった。きりりんの友情パワーであやかちゃんが闇から救い出されて、仲間に戻ってきたときは涙が出た..」

「まさかベルフェゴールの正体が道具屋の看板娘だったなんて..何食わぬ顔できりりんたちに道具を売りつけて探りを入れていたとか怖すぎ..」

「回復薬を使ったら時々毒を受けることがあったからバグかと思っていたらそういうコトだったのか..」


黒猫はコメントをいくつか読み上げると満足げな笑みを浮かべる。コイツがこんな顔をするなんてよっぽどうれしかったんだな。
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:58:31.34 ID:34E8RAEK0
「ふふ..絶賛されているようでなによりだぜ..」

「でも..不満に思われている点もあるみたいね..敗北したあと凌辱エロシーンがあると思ったら、画面が暗転して宿屋から再スタートになるのはどういうことなんですか?という質問が来ているわよ?」

「そこは桐乃が修正したポイントだから..実を言うと俺も理由は聞いてないんだ..」


俺はゲームを起動させると敗北イベントのシーンが画面に映し出された


「や..やめろ!!バカッ!!」

「ち..近づかないで!!私たちになにをするつもりなんですか変態!!」

「きりりんとあやかには手を出すな!!やるならアタシからやれ!!」


戦闘に敗北したパーティがゴブリンやオークなどのモンスターたちに囲まれて怯えたように身を震わせている..

ゴブリンやオークは下卑た笑みを浮かべて、ジリ..ジリ..とヒロインたちににじり寄っていく..


「や..やだ..」

きりりんが絶望しギュッと目を瞑る..そして画面が暗転し...
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:59:01.70 ID:34E8RAEK0
「よお..気分はどうだ?」

次の瞬間パーティは宿屋のベッドの上で目を覚ましていた


「ハッ..あ、あたしたちは..それにここは..」

「ちゃ..着衣に乱れはないようですね..」

「誰だテメー!?アタシたちは敵にやられて気を失っていたハズだろ!?」


「敵?なんのことだ?夢でもみていたんじゃないのか?おまえたちはずっと俺の宿に泊まっていたんだぞ?」



「あ、あれ..そうだっけ?」

「そう言われれば..そんな気も..あれ?私たちって何をしていたんだっけ?」

「アタシたち..夢でもみていたのか..う〜んよく眠ったな..元気いっぱいになったし、みんな冒険に出かけようぜー!!」

「やれやれ...」

元気いっぱいになったきりりん一行は冒険の旅へと出ていった
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 19:59:43.10 ID:34E8RAEK0
「あの女はバッドエンドのエロシーンを全部カットして戦闘に敗北したら強制的に前の宿屋に戻されるみたいね..」

「セーブポイントからやり直しっていうのはRPGの鉄則だけど..ゲームオーバーの表記もなく前の宿屋に戻されるっていうのは斬新な仕様ね..」


「エロを求めていたユーザーからは受けが悪いけどな..まあ、でもそれ以上に肯定的なコメントが多いな。」




コメント欄にはきりりんたちが無事でよかったとか、かわいそうな女の子たちなんていなかったんだ..などの擁護コメントが記載されている。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:00:17.18 ID:34E8RAEK0
「まあ..俺個人としてはあやかたんの闇落ちシーンだけはあのままの方がよかったんだが..仕方ねえか..」

「変態」

「んな..!!お、おまえ..俺の心が読めるのか!?」

「考えていることがうっかり口に出ていたわよ..」

「ググ..!!」


あやかの闇落ちスライムシーンは桐乃監督の手によってエロなしの設定に差し替えられており、ベルフェゴールが直々にあやかに魔力を注ぎ込んで配下にしてしまうという設定になっていた


「まあ..でもなかなかいい作品に仕上がったと思うぜ!シナリオ原案の俺も大満足だ!!」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:00:57.09 ID:34E8RAEK0

「それにしても..あの子たちには資料として使うためだ!といってごまかしたけれど..桐乃やあやせの写真集をエロ本と一緒の場所に隠してあったことは..本当にそういう目的がなかったのかしら?」

「な..なんのことだ..アレを使ったことなど..ない..」

「本当かしら..私がメイド服を着ていた写真も混じっていたけれど..本当に使ったことがないの?」

「な...ない..!!」

俺は顔を赤くすると黒猫の視線から逃れるために顔を背けた...ちくしょー!!これじゃあバレバレじゃねーかー!!


「フフ..まあそういうことにしておいてあげる..1つ貸しよ..今度は..写真なんかじゃなくて..もっとリアルなモノを使ってみる?」

黒猫は顔を赤らめると、俺の手の上にそっと掌を置いた

「な...!!お、おまえ..それはどういう..!!」

「冗談よ..イヤらしい雄ね..」

「ぬぐぐ..!!」

黒猫にからかわれたことを悟った俺は悔し気に唇をかみしめた

ちくしょー!!年頃の男の子の純情を弄びやがってーー!!今夜は妄想の中でお前をめちゃくちゃにしてやる!!
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:01:33.58 ID:34E8RAEK0
「おい高坂!五更!!これから打ち合わせを始めるぜ!!今回の作品の反省点を踏まえて、次の作品のシナリオを作ろうぜ!」

「はい!!」

「ええッ!」

部長の呼びかけに俺と黒猫は元気な返事を返すと、俺たちは次の作品についての構想を話し合った
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:02:01.95 ID:34E8RAEK0

ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー

「ふふふ〜ん♪」

「桐乃..ご機嫌だね?」

「え?そ、そんなことないよ〜もうやだなぁ〜あやせったら〜♪」

「どうせあれだろ?桐乃の兄貴が作っていたシナリオがゲームになって、ネットで好評されてんのがうれしいんだろ?あのシナリオの総まとめは桐乃が関わってたしな」

「もう加奈子ったら〜♪違うって言ってんでしょ〜♪」


「機嫌が良すぎて全然隠せてないよ..ねえ、桐乃..どうして戦闘で敗北したらゲームオーバーにもならずに宿屋から再スタートになるの?」

「そうだな..アタシもそれはおかしく思った。凌辱エロシーンをカットしたなら普通はゲームオーバーになってタイトルに戻るのが自然じゃね?」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:02:32.69 ID:34E8RAEK0
「しょうがない..二人には特別に..アタシが考えた裏設定を教えてあげる..」


「う..裏設定?」

「なんだよそれ?」

「これは兄貴も黒いのも知らないアタシだけの秘密..特別にあやせと加奈子にだけ教えてあげるね?他の人には絶対しゃべっちゃだめだよ?」



「う...うん..」

「いいからさっさと教えろよ」

「実はね..?この宿屋の店主って、かわいい女の子を見つけるとコッソリその後をくっついていくストーカーなの」


「えええ!!?」

「な、なんだとぉ!?」

ウヒヒ..あやせと加奈子びっくりしてる..
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:03:06.67 ID:34E8RAEK0
「この店主は宿屋に泊まったきりりん一行のことを気に入ってその後をずっとつけてきたストーカーなの..きりりん達のことを隠れた所でずっとみていて、ハァハァと興奮している変態っていうわけ」

「でも女の子に手を出す度胸はないから、ただ隠れて見ているだけで絶対に手は出さない変態紳士っていうところかな」

「きりりんたちがモンスターにやられてしまったら、ヒドイことをされる前にさっそうと現れて、モンスターたちからきりりんたちを命がけで救出して近くの宿屋まで連れて行ってくれるっていうわけ..」


「ずいぶん親切な変態だな..」

加奈子は呆れたような表情を浮かべた
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:03:35.81 ID:34E8RAEK0
「で、でも..どうしてきりりんたちは誰もこの人のことを覚えていないの?命がけで助けに来てくれるんだったら..絶対にその人のことを覚えているはずでしょ?」



「ああ..それはコイツが実は作中最強の能力を持っていて、あらゆる魔法を使いこなすことができるエキスパートなの」

「コイツは恥ずかしがり屋だから..女の子に好意を持たれちゃったらどうすればいいのかわからなくて..」

「ヒロインたちを救出したら記憶を改ざんする魔法を使って、自分の宿屋に最初から泊まっていたことにしちゃうの」


「なんだそれ..そんな強さがあるんだったらもうお前が魔王倒しにいけよって話だな...」


「コイツは世界の平和とか全然興味なくて..自分の気に入った女の子が幸せだったらそれでいい変態だから..仕方ないの!」


「.....」

「.....」

あやせと加奈子は呆れたような顔を浮かべている..そんな二人の様子に気が付かないアタシはさらに解説を続けた
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:04:01.16 ID:34E8RAEK0

「アタシね..RPGとかやっているとずっと思ってたんだ..戦闘に負けて敗北するとゲームオーバーになって、セーブしたところからやり直しになるのが普通でしょ?」

「RPGの主人公たちは幾多のゲームオーバーの末にラスボスを倒して平和な世界を享受するけれど..それは魔王に勝つことができた世界戦の主人公たちだけのハッピーエンドなんだよね..」

「でもね..敗北した世界の主人公たちは、負けた後に敵にひどいことされて殺されちゃって終わりなんて..あんまりだと思わない?」

「アタシはゲームオーバーっていう言葉が大嫌いなの..負けた世界戦の主人公たちが悲惨な運命で終わりなんて許せない..」

「だからアタシは兄貴のゲームの設定を改ざんしてでも、ゲームオーバーという定義を無くしたかった..」

「ゲームオーバーという言葉に殺されてしまう主人公たちを誰かが必ず助けてくれる..そんな救いのある世界を創りたかったの」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:04:32.89 ID:34E8RAEK0
「桐乃...優しいんだね桐乃は..」

「ずいぶん小難しいこと考えているな..イチイチそんなメンドクサイこと考えてゲームしたことなんてねえよ..」


「きりりんの冒険というゲームはゲームオーバーという名のバッドエンドが存在しない、ハッピーエンドの1ルートしかない世界なの..」

「アタシはシナリオのクソな部分を修正して素晴らしい作品に昇華してあげただけだよ」


「そうだね..桐乃の考えは素晴らしいと思う..!お兄さんたちのゲームが名作に生まれ変わって私も自分のことみたいにうれしいよ!!」

「ま、考え方は人それぞれだからな..桐乃がイイならそれでいいんじゃねーの?」


フフ..あやせと加奈子もわかってくれたみたい..

他のプレイヤーの人たちもアタシの考えに共感してくれる人がたくさんいるといいな..
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:05:02.33 ID:34E8RAEK0
「ねえ..桐乃..最初に見た時から気になってたんだけど..この助けに来てくれる宿屋の店主のデザインって..」

「どことなく桐乃の兄貴に似てるし..絶対このキャラのモデルあの変態兄貴だろ?」

「うぇ!?そ、そんなわけないじゃん!?何言ってんの二人とも!?」

「自分の兄貴を救いの救世主に無理やり設定して、自分そっくりなキャラを助けに来させるとか..桐乃ってブラコンだったのな」


「ハァ!?な、なに言ってんの!?アタシはブラコンなんかじゃないってば!!ね!?あやせもそう思うでしょ!?」

「お兄さんは..いつも私たちのことを助けてくれるから..」

「いざというときはお兄さんが助けてくれるハズ..っていう桐乃のお兄さんに対する信頼と愛情の気持ちがヒシヒシと伝わってくるね..」


「そんな〜〜!!あやせまで誤解だってば〜!!」


「ヒヒ...ゲイな兄貴が大好きなんて..桐乃もとんだ変態だな〜!!」

「はぁ!?アタシの兄貴がゲイなわけがないし..それにアイツは..」


妹大好きなシスコン兄貴...なんだからね//


おしまい
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:05:32.50 ID:34E8RAEK0
「黒猫さん..こんなところに呼び出して..何の用ですか?」

「フ..よくぞ逃げずに来たわね..ほめてあげるわ..ダークエンジェル..」

「誰がダークエンジェルですか..!!おほん..あの..わたしモデルの仕事とかあって忙しいんで..用件があるのなら手短にお願いします。」


先日の騒動の件と桐乃とお兄さんを巡るライバルということもあって、黒猫さんに対してついツンケンした態度を取ってしまう..

わたしってまだまだ子供なんだなぁ...
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:06:03.09 ID:34E8RAEK0
「そうね..まずはこれを見てもらえるかしら?」

「なんです...ッ!?」


怪訝な表情を浮かべるわたしに黒猫さんは一枚のスケッチブックを差し出してきた..そのスケッチっブックに何が描かれていたのかというと...


『いい..いいわ..ダークエンジェル..あなたの殺戮衝動を..この私に叩き込みなさい..!!』

『ハァ..!ハァ..!!気持ちいい..!!他人を痛めつけるのって..こんなに気持ちのいいモノだったなんて..!!』


地面に寝転がる黒猫さんを私がグリグリとお腹を踏みつけている一枚絵が描かれていました。

黒猫さんはなぜか恍惚の表情を浮かべており、黒猫さんのお腹を踏んでいるわたしもまんざらではなさそうです...
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:06:45.79 ID:34E8RAEK0
パーン!!

「フグッ!!」

「な..なななななんてものを見せてくるんですか!?この変態!!ぶち殺しますよ!?」


激情に駆られた私は手に持ったスケッチブックで黒猫さんの顔を殴りつけていました。

ちょっと力を入れすぎたせいか、黒猫さんは地面にズテンという音を立てて転んでしまいます。


「くっくっく..口より先に手が動くのね..さすがよ..さすが我が魔眼に魅入られし逸材..!!」

「なにを言いたいのかさっぱりわかりませんが..あなたがとんでもない変態だということだけは伝わってきました。」


「新垣あやせさん..折り入ってお願いがあります..聞いていただけますか?」

黒猫さんは急に素の態度になると地面の上にきれいに正座し、私を濁り切った瞳で見上げてきました。

「な..なんですか?」

「アナタに一目あったときから惹かれていました..どうか...私を踏んでください!!」

「へ?」

黒猫さんが地面に頭を擦りつける見事な土下座を私に披露し、自分を踏んでくださいとお願いしてきたのです。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/28(火) 20:07:12.19 ID:34E8RAEK0
困惑と同時に..嗜虐心が私の心に湧き上がってくるのを感じ..

私の口から思いもがけない言葉が飛び出していました。


「いいですよ...私もアナタのことを壊したくなるほどイジメてあげたいと思っていたんです..これから私の部屋に行きましょう...たっぷりと..かわいがってあげますよ♪」

「....ッ!!」

光彩の濁ったわたしを黒猫さんはパァァッ!!という擬音が似合う笑みを浮かべて見返してきました..

この時から私と黒猫さんは心の奥底で惹かれ合う親友になり長いお付き合いが始まったというのはまた別のお話です


本当におしまい
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/29(水) 08:10:19.64 ID:sW8ATdCsO
懐かしいな俺妹
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/30(木) 00:10:13.90 ID:uMI5Fw0eo
最終巻前の懐かしい雰囲気だな
完成度たけーや超乙
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/30(木) 12:26:10.97 ID:ROJcvtT/O
いつウンコ漏らすんだろって思いながら読んでごめんなさい
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