高坂桐乃「黒猫とより戻したら?」高坂京介「は?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:34:22.59 ID:h16Rbuf2O
"出来る妹"を持つと苦労するなんてことは、今更わざわざ言うまでもないが、実際のところは少し意味合いが違ったりする。

そもそもどうして苦労するのかについて説明すると、兄貴であろうとするからだ。

生まれた順序ってのは選べるわけじゃないし、当然、あとから変えることも出来ない。
だからまあ、当事者としてはそういうものだと受け入れるしかないんだが、周りは違う。

お兄ちゃんなんだから、とか。
お兄ちゃんの癖に、とか。
あれがお兄さん?、とか。

とにかく、妹よりも出来て当然と思われる。

もちろん俺もそんな兄貴を目指したさ。
けど、幼馴染みの助言もあってやめた。
俺は兄貴である前に俺なんだと考え直した。

しかし、それは単なる逃げとも言える。
妹だって初めから出来ていたわけじゃなくて、それなりに苦労して出来るようになっていったにも関わらず、その努力を放棄した。

情けない兄貴だと思われても仕方がない。

もちろん、俺だって頼りにされたほうが嬉しいし、そうあるべきなんだろうとは思う。
けれど、無理してそうなる必要はないのかも知れないと、なんとなく悟る瞬間がある。

つまり、"苦労"ってのはそうした葛藤だ。

「バカじゃないの?」

少なくとも、考えなしってわけじゃない。
妹に比べれば随分と冴えない頭脳かも知れないが、それなりに考えて導き出した結論だ。

「ま、どうでもいいけど」

妹モノのエロゲーをやりながら、桐乃はそんな俺のどうでもいい話を聞き流した。

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:37:09.29 ID:h16Rbuf2O
「兄貴さ」
「ん?」

時刻は深夜。
一緒にベッドに寝転びながら、俺の部屋にPC持参で押しかけて来た桐乃は黙々と妹モノのエロゲーをプレイしていて、何故実の妹と添い寝しながらエロシーンを眺めなきゃならんのかと思いつつ、やたら良い匂いのする妹のシャンプーの香りをふがふが嗅いでいると。

「黒猫とより戻したら?」
「は?」

意表を突かれて間抜けな声が漏れた。
黒猫とは桐乃のオタク仲間である五更瑠璃の愛称であり、そして俺の元カノでもあった。

あまりの脈略の無さについ、問い返した。

「なんでお前がそんなこと言うの?」
「あまりにも憐れだから」
「ぐぬっ……!」

こ、こいつ。かわいくねえ。流石にキレる。

「あのな! 俺は別に黒猫のことを引きずってるわけじゃないんだよ! あれはあれでその、なんつーか良い思い出というかだな……」
「たまに寝言であいつの名前呼ぶ癖に」
「マジで!?」
「ぷっ……焦り過ぎてキモ」

よもや、そんな、まさかと青ざめると桐乃は今世紀最大の失笑を漏らし、罠だと気づく。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:38:42.19 ID:h16Rbuf2O
「お、お前、カマかけやがったな!?」
「それだけ引きずってるってことでしょ?」

怒りによって羞恥心を誤魔化しつつ、あわよくば話の流れを有耶無耶にしようという目論見は残念ながら、この妹には通じなかった。

「くそっ……わかったよ。白状すると、かなり引きずってる。ケッ。これで満足か?」
「なら、さっさとよりを戻しなさいよ」
「んな簡単に言うなよ……」

よりを戻すと言っても、方法がわからん。

「そもそもだな、俺と黒猫は喧嘩とか倦怠期とかそういうわかりやすい理由があって別れたわけじゃなくて……」
「だからこそ、たぶん……ううん。きっと、あいつもまだアンタのこと好きだと思う」
「へ、へえ……ああ、そう。ふーん……」
「キモ……デレデレすんな」
「し、してないし!?」

そりゃ誰だって嬉しいだろ。キモくないし。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:41:50.91 ID:h16Rbuf2O
「ま、どうでもいいけど」

憤慨する俺はつまらなそうに横目で見やってから桐乃は再びゲーム画面へと視線を戻す。
その端正に整った横顔を眺めながら尋ねた。

「お前はどうなの?」

聞いてからの後悔はあまりなかった。
今日のような桐乃とのひとときは確かに俺にとってかけがえのないもので、出来ればこの先ずっとこうして過ごしたいという気持ちもあるが、同時にそれは不可能だとも思う。

「………………………」

桐乃は無言だった。しかし、無視ではない。
ゲーム画面が進んでいないので考えている。
その聡明な頭脳が導き出す結論が気になる。

「ふぅ……」

ため息を吐いてパタンとノートPCを閉じる。
そのまま自分の部屋に戻るのかと思いきや、桐乃は瞑目したまま、小さく呟いた。

「"出来ない兄貴"を持つと苦労する」
「……悪かったな、出来ない兄貴で」

憎まれ口につい恨み言を返すと、首を振り。

「キスしたくてもアンタとは出来ない」
「桐乃、お前……」
「"出来ない"ってのは、そういう意味」

思わず目を見張ると妹は目を閉じたままこちらに顔を向けてきた。ごくりと生唾を飲む。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:45:08.61 ID:h16Rbuf2O
「京介は、どうしてあたしの兄貴なの?」
「どうしてもこうしてもないだろ」

触れるか触れないかの寸前で、囁き合う。

「そういうものなんだから、仕方がない」

そう仕方ない。途端に胸の高鳴りが鎮まる。
そもそも、さっきまで元カノを引きずっているとほざいてた俺にそんな資格はないのだ。
閉じたノートPCの背を見つめて、妹に諭す。

「だけどな、桐乃。俺は兄貴として、彼氏には出来ないような世話まで焼くつもりだ」
「……余計なお世話だっての」

たとえ、どれだけ憎まれ口を叩かれても。
"出来る妹"と比べて"出来ない兄貴"だろうとも、俺は桐乃よりも先に生まれた兄貴だから。

「可愛い妹のためならなんだって……いや、キス以外なら、なんでもやってやるさ」
「……バカ兄貴」

これは諦めではない。新たなる決意だった。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:46:25.77 ID:h16Rbuf2O
「じゃあ、お願いしよっかな」
「さっそくか。いいぜ。どんなお願いだ?」
「おしっこしてるとこ見せて」

ん? なんだ? おかしいな。幻聴だろうか。

「あの、桐乃さん……?」
「あ、ごめん。逆だった」
「へ? 逆というと……?」
「ほら、見てよこのシーン!」

カパッと勢いよくノートPCを開く桐乃。

「今まさに妹が放尿しようとしてるところで、私ったら思わず見惚れちゃってさぁ!」

こいつ、マジでゲームに集中してやがった。

「へ、変態……?」
「ち、違うし! 誰だって釘付けだし!!」

なるほど、たしかによく出来た"絵"である。

「あのな、桐乃。ゲームと現実は……」
「なんでもするって言った」

不味い。言値を取られている。いやまさか。

「もしかして、これか狙い、だったのか?」
「えー? なんのことー? 全然わかんなーい」

俺の妹がこんな変態なわけがない。嘘だろ。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:49:12.31 ID:h16Rbuf2O
「で? やるの? やらないの?」
「ぐぬぬ……!」

どうする。どうする、俺。葛藤の末の結論。

「ああ、わかった! もう好きにしろよ!」
「やった! じゃあ、お風呂場にGO!」

やれやれ。ま、兄貴だしな。仕方ないよな。
そう。別に俺は妹の放尿になんざ興味ない。
兄貴だから仕方なく、見届ける義務がある。
それだけだ。断じてワクワクなどしてない。

そんなこんなで期待に胸を膨らませながら浴室内に入ると、桐乃がひとこと。

「あ、言っておくけど見たら通報するから」
「はい?」
「絶対見るなって言ってんの」

なに言ってんだ、こいつ。意味がわからん。

「桐乃。一応確認しておくが、お前は俺に自分のおしっこを見て欲しいんだよな?」
「うん」
「なのに見たら通報ってどういうこと?」
「だから、いろいろあるでしょ。兄妹で見ちゃいけないものが……わかってよ、バカ」

ああ、なるほどな。そういうことらしい。

「じゃあ、具体的にはどうすればいい?」
「服を着たままとか?」
「母さんに怒られるぞ」

兄として忠告すると、"出来る妹"は閃いた。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:52:30.96 ID:h16Rbuf2O
「じゃあ、肩車とかどう!?」

肩車、だと? しかし、それには問題がある。

「お前な、天井を見てみろよ」
「あ、無理か……」

風呂場の天井は低くて肩車は不可能だった。

「だったら四つん這いになって」
「それしかないのか……」

やむなく上だけ脱ぎ、四つん這いになる俺。
これならば、風呂場の床しか見えず健全だ。
たとえこの場に警察が来ようとも問題ない。

「兄貴、今から乗るね」
「お、おう。遠慮すんな」

ペタペタとはだしの桐乃がやってきて、跨ると、両方の脇腹に柔らかな太ももが触れた。

「なんか、変な感じ」
「そ、そうだな……なんか、エロい」
「うっさいバカ兄貴。通報されたいわけ?」
「それだけはご勘弁を」

一応、こちらから予防線を張っておく。
桐乃が今現在、どのようなあられもない格好なのかは想像する事すら憚られるが、兄である俺の背に直接腰を下ろすことはなかった。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:53:45.98 ID:h16Rbuf2O
「出す……よ?」
「い、いちいち聞くなよ。緊張するだろ」
「だ、だって、あたしだって緊張してるし」

そこで気づく。桐乃も緊張しているのだと。

「なんだよ、いつもの威勢はどうした?」
「なんか、いざとなると兄貴に悪いなって」
「桐乃……」

あらやだ。何この子。その優しさが嬉しい。

「別に俺は全然嫌じゃないぜ?」
「へ、変態……?」
「周りから見ればたしかにそう映るかもな」

変態か。上等じゃねえか。それでも、俺は。

「でも俺はお前の兄ちゃんだから。だから妹の尿を浴びるくらいなんてことないんだよ」
「そんなのおかしいよ……」
「おかしくたっていい。俺は俺だからな」

俺は俺。桐乃の兄である前に、高坂京介だ。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:55:25.58 ID:h16Rbuf2O
「こんな状況でカッコつけんな、バカ兄貴」
「おかげで緊張がほぐれただろ?」
「ん……兄貴のせいで、もう止まんない」
「お?」

ちょろりんっ!

「フハッ!」

背中に滴る桐乃の雫。瞬間、俺は覚醒した。

ちょろろろろろろろろろろろろろろろんっ!

「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

浴室に響き渡る哄笑と立ち込める尿の香り。
トランス状態に陥った俺は愉悦を漏らしながら過去を旅して、幼い桐乃と、出会った。

『お兄ちゃんどうして遊んでくれないの?』

ああ、桐乃。悪かった。今、遊んでやるぞ。

『お兄ちゃん桐乃のこと嫌いになったの?』

それだけはありえない。俺はお前のことが。

「大好きだ!! 大好きだぞ、桐乃ぉ!!」
「ちょ、ちょっと兄貴、落ち着けっての!」
「ぐふぇっ!?」

現実世界で思いの丈をぶちまけた俺は、桐乃に頭をぶっ叩かれて、そのまま昏倒した。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/22(土) 21:58:30.97 ID:h16Rbuf2O
「う、うう……」
「あ、起きた」
「くぅ〜っ……頭痛てぇ」

気づくとそこは自室で、ベッドに寝ていた。
桐乃が傍らに居て時間が巻き戻った感覚だ。
もしかしたらうたた寝でもして全部夢かも。

「ね、兄貴」
「なんだ、どうかしたのか?」
「これ見て」

腫れあがったタンコブをさすりつつ、桐乃に促されるまま、ノートPCの画面を見やると。
兄に尿をひっかける妹の絵がそこにあった。

「兄妹でもおしっこだけなら平気だよね?」
「当たり前だろ」

それを禁じる法はないので俺たちは自由だ。

「良かった」
「ん? 良かったって、何が?」
「兄貴の……妹に生まれて」

しみじみそんなことを言われたら、照れる。

「さあーって、どうやってよりを戻すかな」

照れ隠しにそんなことを口にすると桐乃は。

「俺におしっこをかけてくれって頼めば?」

そんな憎まれ口を叩き、しかしなるほど、それは存外名案だと気づいて、持つべきものは"出来た妹"かも知れないと、そう思った。

後日。
桐乃の助言の通りにこちらの意向を黒猫に伝えたところしばらく音信不通となり、俺の妄言を聞きつけた幼馴染みにグーで殴られ説教され、誤解を解くまでに多大な時間を要したことなどはもはや、語るまでもないだろう。


【俺の妹がこんなに変態なわけがない】


FIN
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/22(土) 22:28:57.19 ID:emPWngB3o
乙です
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/22(土) 23:18:53.69 ID:svB1sEf70
全員のおしっこ書いて
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/23(日) 06:05:02.86 ID:m22Kv6pOo
んー切り替えが雑よどうしたの
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