高垣楓「あなたがいない」

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167 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:34:14.13 ID:itU6iUE10

「さて、高垣さん。こちらに来られた理由を、お伺いしてもいいですか」
「……そうですね。そのために来ましたので」

 私は逡巡する。事ここに至って、なにを話せばいいのだろう。そして。

「実は……今『うつ』を患ってまして」

 私は、嘘を吐いた。
 嘘と言うには少し違うと思うけれど、しかし正確ではないことを、私は言った。

「なるほど」

 カウンセラーさんは、メモを取りながら私の話を聞く。
 私がところどころ考え、言葉が出なくても、カウンセラーさんはずっと、私の言葉を待つ。時間だけが無碍に過ぎていく、そんな気がした。
 ひととおり話を終える、と言っても、自分がうつであることと、今クリニックで治療を受けていること、そのくらいか。

「ありがとうございます。お話は、そこまでですか?」
「え?」

 カウンセラーさんは私に言った。

「そうですねえ……なんと言うか、高垣さんがお話されたことは、今現在ご自身が置かれている状況ですよね」
「はい」
「なかなか、お気持ちを話すことは、難しいですか」

168 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:34:41.65 ID:itU6iUE10

 どきりとする。
 確かに、今の私の気持ちを話せるかと言えば、それは難しい。なぜなら彼女は私の知らない他人、なのだから。

「そう、ですね」
「そうでしょうね。実際、高垣さんのような方は、多いです」
「そうなんですか?」
「はい。うつを患っている方は、ご自身のことをなかなか打ち明けていただけません。致し方ないことだと思います。
いきなり見ず知らずの他人に打ち明けるなんて、普通の人でも難しいですしね」

 カウンセラーさんは一般的な話、と前置きをする。そしてこう言った。

「もし高垣さんがお話ししてもいい、と思われたら、話してください。それでいいんです」
「はあ……なんか、ごめんなさい」
「いえ。それが私の仕事ですから」

 予定されていた時間はとうに過ぎている。それでも彼女は私にこうして付き合ってくれていた。しかし。
 縁が、なかった。私はそう思った。
 確かにこうして話を聞いてもらえることで、心が軽くなる人もいるのだろう。しかし私は、その段階を超えてしまっている、そんな気がする。
 こうして話をしたところで、彼は戻ってこない。
 私には諦念がある。それをどうにかできないうちは、話をしても無駄に思える。

「今日は時間オーバーでお話を聞いていただいて、ありがとうございました」

 私は彼女にお礼を言う。彼女は、私をどう思ったのだろう。

「いえ。もしまたご縁があれば、お話、聞かせてください」

 カウンセラーさんは私に握手を求めた。手のぬくもりが、私を悲しくさせる。
 ご縁があれば。
 その縁はおそらく、繋がっていない。

169 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:36:22.62 ID:itU6iUE10

 私はようやく、仕事を再開する。
 歌番組の収録。録画ものでインタビューなし、という、今の私にはありがたいものだ。しかも瑞樹さんと共演。
 事務所スタッフの努力と配慮に感謝しながら、スタジオへ向かった。

「楓ちゃん、やっほー」

 瑞樹さんは先に部屋入りしていた。別の収録からまっすぐこちらへ、という段取りだったのだ。

「瑞樹さん、今日はよろしくお願いします」
「なーに言ってるの。この前一緒にお茶した仲じゃない」
「そうですね。お酒じゃなかったですけど」
「そうねえ、今度は夜、ご一緒しちゃいましょうね……ところで」

 瑞樹さんが尋ねる。

「カウンセリング、行ってみた?」
「ええ、先日」
「……どう? 少しは楽になった?」
「……どうなんでしょう」

 私は苦笑するしかなかった。その表情で理解したのか、瑞樹さんは「そっか」と言い。

「今の楓ちゃんには、合わなかったってことね。それでいいんじゃないかしら」

 私に笑みを向けた。

170 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:36:49.44 ID:itU6iUE10

「せっかくお勧めしていただいたのに、なにか申し訳なくて」
「いいのよ、私も気楽に言っただけだし。そうね。今度は体もリフレッシュするように、全身エステ、行きましょ?」
「そう、ですね。ぜひ」
「じゃあ、今日は楓ちゃんの復帰初仕事、頑張りましょう!」

 瑞樹さんは私を慮って、努めて明るく振舞ってくれた。

 収録本番。瑞樹さんとのデュオは久々で緊張する。でも、それが妙に嬉しかった。
 足はほぼ大丈夫になっているけれど、無理をしないということで、振り付けを最小限に抑えている。
 相変わらず綺麗で伸びやかな、瑞樹さんの歌声。聞き惚れてしまう。日頃ソロで歌うことが多い私には、こうして誰かと歌うことが貴重で、ありがたい。
 サビ。ふたりの息を合わせ……

「はーい! ストップでーす!」
「楓ちゃん、大丈夫?」

 収録スタッフの声と、瑞樹さんの声。私は、固まって動けない。

171 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:37:16.71 ID:itU6iUE10

 歌詞が、飛んだ。

172 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:37:44.50 ID:itU6iUE10

 瑞樹さんとのデュオで、歌い慣れていたはずの曲。歌詞が出てこない。頭が真っ白になったのだ。

「す、すいません……大丈夫、です」
「ごめんなさい! 五分、休憩ください!」

 私がアピールするものの、プロデューサーがそれを制した。

「了解でーす。じゃあ次の歌い手さんを先に収録しますんで、それでいいですか」
「はい、お願いします」

 収録スタッフとプロデューサーのやり取り。私は瑞樹さんに付き添われ、楽屋へ戻った。
 どき。どき。
 鼓動が鳴り響く。色を失った私に、瑞樹さんが声をかける。

「楓ちゃん。楓ちゃん! 大丈夫よ。大丈夫。ほら、お茶飲んで」

 手渡された紙コップを、両手で掴む。手がわずかに震えていた。
 こくこくとお茶を飲む。少しだけ気持ちが、戻ってきた。

173 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:38:34.46 ID:itU6iUE10

「……瑞樹、さん」
「大丈夫? 楓ちゃん」
「ごめんなさい……飛んでしまい、ました」
「いいのいいの、久しぶりだし。大丈夫だから」
「……私」
「え?」
「まだ……早かったんでしょうか……復帰」
「……それは違うわ。うん、違う」

 動揺する私に、瑞樹さんは語り掛ける。

「復帰に早いも遅いもないわ。たまたま今日は、調子が悪かっただけ。問題ないの」
「でも」
「歌詞が飛ぶなんて、よくあるじゃない。完璧じゃなくていいの。それより……」
「……」
「私との共演、楽しみましょ。ね。楽しんで?」

174 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:39:00.96 ID:itU6iUE10

 緊張が止まらない私に、瑞樹さんがウインクを投げる。その仕草が、私にすっと入り込んできた。
 ああ、いつもの瑞樹さんだ。
 ようやく、緊張の糸が解ける。涙がこぼれそうになるけれど、私はそれをこらえ、瑞樹さんに言った。

「ありがとうございます……大丈夫、戻ってきました」
「そう。なら次で、決めちゃいましょうね」
「……はい」

 収録が再開し、今度はオーケーをもらう。どうにか復帰初仕事を無事、終えることに成功した。

「お疲れさまでした。緊張しました?」

 帰りの車で、プロデューサーが尋ねた。

「緊張もしましたけど、それより……申し訳ない気持ちで、いっぱいですね」

 私は窓の外、流れる景色をぼんやり見ている。

「大丈夫です。ぼちぼち、行きましょう」

 プロデューサーは、私を慰めた。
 道のりはまだ、険しい。

175 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:39:28.39 ID:itU6iUE10

 私は、薬を飲む。

 オランザピンに変えて三か月。なかなか気持ちをコントロールするのが難しい。
 先日は部屋で大泣きをして、ちひろさんを困らせてしまった。
 なぜか分からないけれど、悲しい気持ちが渦巻いて泣くしかなかったのだ。そこに理由はない。ただ悲しい、それが横たわるだけ。

 そうかと思えばひどく冷静になって、アンドロイドになったかのように歌い、踊る。
 決して感情がこもっていないとか、冷たいとか、そういうことではなく。
 どこか他人のようなもうひとりの私が、歌っている私を客観的に眺めている、そんな感覚に囚われた。

 もちろん、普通に過ごせる私もいる。だがそう感じる私に、もうひとりの私が語り掛ける。
 普通って、なに?

「先生」
「なんでしょう」
「私、おかしいんでしょうか」

176 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:39:57.70 ID:itU6iUE10

 先生に、今のわたしを打ち明ける。
 ふたりの私がいること、感情の浮き沈みがまだ激しいこと、そのために心が、疲れてしまうこと。

「そうですね……高垣さんの今は、まだ過渡期なんだと思います」
「過渡期?」
「徐々に穏やかになっていく、その途中なのだと、思いますよ」
「そうでしょうか」

 私にはそう思えない。
 だってこんなにも激しくて、こんなにも誰かに迷惑をかけている。
 ちひろさんや瑞樹さんや、プロデューサーやスタッフ。社長さん。みんなに、迷惑を、かけている。

「私は、今の私が嫌い、です」
「私には、産みの苦しみのように見えますね」
「産みの、苦しみ……」
「はい」

 そうしてまた、私は同じ薬を処方される。閉塞感に、押しつぶされそう。

177 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:40:35.49 ID:itU6iUE10

「お帰りなさい」
「ただいま、帰りました」

 ちひろさんがマンションで、私の帰りを待ってくれていた。
 今日、彼女は振替の休みの日だというのに、私のために時間を作ってくれたのだ。

「せっかくのお休みなのに、ごめんなさい」
「いえいえ。こうして楓さんとの共同生活も、もう当たり前になってて、このほうが落ち着くんです」
「……ありがとう」

 そうだろうか。
 こんな手のかかる相手と一緒の生活なんて、苦しい以外の何物でもなかろうに。
 このところネガティブなことばかり、考えてしまう。

「さあ、夕食にしましょう。今日はお手伝い、お願いしますね?」
「……もちろん」

 そうしてまた、いつものようにふたりの食事。
 ちひろさんとこうしてふたりで過ごせることは、とてもありがたい。
 だが思う。彼女をこうして束縛してしまっている現状は、私たちふたりにとって不幸なことなのではないか、と。
 閉塞感。行き詰まり。
 そして、諦念。

 お風呂から上がって睡眠薬を取り出す。このルーティーンを行うようになって、どれくらい経ったろうか。
 薬のお世話になって一年以上経っているというのに、私は少しも良くならない。
 むしろ悪化しているように、思える。
 先生はよくなっていると言うけれど、それを実感することは、ない。
 私は、いつまで。

「……」

178 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:41:01.95 ID:itU6iUE10

 目の前にある、薬。白い粒をじっと見つめる。ふと悪魔が私に、ささやいた。

 これをたくさん飲んだら、目覚めないかしら。
 かつて私が、思いついたことだった。
 私は疲れてしまった。
 いろいろ努力していると思っているし、みんなのサポートも受けている。
 それなのに、私はみんなになんにも返せていない。報いることができない。

179 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:41:30.30 ID:itU6iUE10

 いらない……こんな私。

180 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:41:59.01 ID:itU6iUE10

 ざらざらと、溜まっていたニトラゼパムとエチゾラムを出す。これを全部、飲んだら。

「楓さん!」

 私の寝室にちひろさんが入ってきた。ちひろさんは私を抱きしめ、言った。

「馬鹿! ダメでしょう!」

 ……え? なにが?

「なにをしてるんですか! 楓さん!」

 なにって、えっと……なに?

 ……あ。

 視線の先には、折り重なる睡眠薬のシート。
 私、なにをしてるんだろう。

「よかった……よかった」

 ちひろさんは私を抱きしめたまま、ぼろぼろと泣き出した。

「あの……ちひろ、さん」
「ダメです」

 そう言ってちひろさんは私を離さない。涙はいつか泣き声となる。

「楓さん! ダメですよ! ダメです!」

 泣き叫ぶちひろさん。その叫びが私を、現実へと戻していく。
 体が震え、頭がぐらぐらする。

「……ごめん、なさい」

 私は口癖のように、彼女に謝った。

「許しません! 許しませんから……」

181 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:42:41.09 ID:itU6iUE10

 抱きしめたまま泣き続けるちひろさん。私は、深い後悔を覚えた。
 私は、ひどいことをした。
 こんなにもちひろさんや事務所のみんなが、私を支えてくれているというのに。
 私はなんて、おぞましいことを考えてしまったのだろう。それは決して、許されない、こと。

「……ごめん、なさい……ほんとに……ごめんなさい」

 わあわあと泣くちひろさんを、私も抱きしめる。
 なにを言われても私は、謝ることしかできない。それほどのことを、ちひろさんにしてしまった。
 ひとりきりだったら、私はどうしただろうか……
 ちひろさんはまた、私を助けてくれた。私は彼女を、これ以上苦しめてはいけない。それはつまり。

 私は、いなくなってはいけない。

 私の中に深く、それを刻み付けなければ。それが彼女への贖罪、ならば。
 それを思い続けることが、できるのだろうか。不安が消えない、ままで。

182 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:43:21.78 ID:itU6iUE10

 それから。
 私の薬の管理は、ちひろさんがすることになった。当然だ、前科があるのだから。

「はい、楓さん。薬です」
「ありがとうございます」

 朝晩と、彼女から薬を手渡される。それが私たちの新しいルーティーン。
 ちひろさんには手間をかけさせてしまうけれど、彼女は「このほうが私は安心ですから」と言ってくれる。
 なにより私には誰かがいてくれる、そう思えることが私には重要だった。

 少しだけ地に足が着いた気分。それが支えとなり、仕事を順調に回すことができる。
 仕事が回せると、気持ちが多少コントロールできるようになってくる。好循環だった。

 もちろん、波はやってくる。
 未だに泣き叫びたくなる気持ちになるし、ふたりの私がいる感覚もあまり変わらない。
 つらい気持ちに苛まれることも、まだまだ多い。でも。
 あの時よりは、まし。

183 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:43:49.22 ID:itU6iUE10

 ちひろさんと共同生活をするようになって八か月、少しだけルーティーンが軌道に乗ってきていた。

「ただいま戻りました」

 事務所に戻ってくる。スタッフが「お帰りなさい」と声をかけてくれる。
 いつも変わらないこと雰囲気が、私に安心を与えてくれる。そして。

「お帰りなさい。待ってました」

 ちひろさんが、声をかけてきた。

「あら。なにかありました?」
「ええ、ありました。実は」

 ちひろさんから打ち明けられた内容に、私は驚く。そして、体の力が抜けていくのを感じた。

「Pさんのお姉さんから、電話があって……楓さんに、お話があると」

 なぜ、今。ああ。
 気が付けば、彼が亡くなってから二年が経とうとしている。三回忌。
 時が過ぎるのは、早いのか、それとも。

 遅いのか。

―― ※ ――

184 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/24(木) 21:44:42.78 ID:itU6iUE10

※ 今日はここまで ※

次回で完結です。
ではまた次回 ノシ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/24(木) 23:33:14.59 ID:q5iPp6v6o
186 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:30:17.50 ID:17bnaLyc0

投下します

↓ ↓ ↓
187 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:31:14.58 ID:17bnaLyc0

「……」

 呼び鈴を押す手が、震える。

 東京から新幹線に乗り、駅からタクシーでしばらく。家に着く。
 Pさんのお姉さんは結婚されていて、旦那さんとお子さんと暮らしていると、電話口で伺った。
 なぜこの時、私に連絡をくれたのか。私がそれを問うことは、叶わなかった。
 それでも心を振り絞り、私はお邪魔する約束を取り付ける。そして。

 閑静な住宅街に、ひとり。
 ぴんぽーん。呼び鈴を押すと、中でぱたぱたという足音が聞こえる。
 がちゃり。中からかわいらしい男の子がひょっこり、顔を出した。

「あら、こんにちは」

 私が挨拶をすると急に恥ずかしくなったのか、ぱたぱたと走って、人の陰に隠れる。その人こそ。

「ようこそ、いらっしゃいました」
「……ありがとうございます」

 Pさんのお姉さん、だった。
 お入りくださいと案内され、リビングに通される。
 続きの和室の客間に、小さな祭壇。そこに鎮座していたのは、Pさんの遺影と、まだ納骨していないであろう骨壺。

188 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:31:48.84 ID:17bnaLyc0

「あ……」

 私は、言葉を失う。
 会いたかった人が、そこにいる。全身が震え、力が抜けそうになる。

「どうぞ、線香をあげてください」

 お姉さんに促され、一歩、また一歩、祭壇へ歩む。
 あの日、告別式で見たPさんの笑顔。変わらないそれを見て、心がとても締め付けられる。
 苦しくて。悲しくて。なぜ。どうして、と。
 わけも分からない感情に支配され、私はPさんの祭壇にしゃがみ込む。そして。

「……P、さん」

 私はうずくまり、声を殺し、涙を流し続けた。
 五分、十分、どのくらい時間が経ったか。私はどうにか、顔を上げる。
 すると、お姉さんは傍らで、一緒に涙を流していた。男の子は不思議そうな顔をして、お姉さんの顔を覗き込む。

「だいじょぶ?」

 彼は私に大丈夫、と、声をかけてくれた。

「ええ……ええ。大丈夫よ」

 私は答える。男の子はまたびゅーっと走って、母親の後ろへ隠れた。

189 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:32:22.48 ID:17bnaLyc0

 少しだけ落ち着いた私は、祭壇に線香をあげる。仄かな煙が、彼の顔を霞ませる。
 それがいっそう物悲しくて、私は再び涙を流す。ただ、悲しい。
 それでもどうにか涙を拭き、お姉さんへ一礼をする。彼女は「どうぞ」とリビングへ案内した。
 春とはいえまだ寒く、こたつのぬくもりが心地よい。男の子はお姉さんにべったりとくっついて、離れようとしない。

「この子、だいぶ人見知りで。ごめんなさい」
「いえ、とってもかわいらしくて。ねえ、いくつ?」

 私は男の子に尋ねる。彼は母親の後ろからひょこっと顔を出し、手で『三』を示した。

「そう、三歳なんだ。しっかりしてるのね」

 私がそう言うと、彼はまたひょいと顔を隠した。
 お姉さんはお部屋で遊んでらっしゃいと促すけれど、男の子は離れようとしない。そのまま彼女は、男の子を抱っこした。

「お忙しいところわざわざ来ていただいて」
「いえ却って、ご連絡いただきありがとうございます」

190 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:32:53.21 ID:17bnaLyc0

 私はお礼を返す。
 そう言えば、告別式の時はあまり時間がなかったのでうろ覚えだったのか、Pさんの面影があると思い込んでいたけれど。
 こうして改めてお会いすると、あまり似ていない。

「……弟と似ていないでしょう?」

 私はまじまじと見てしまったのか、彼女はそう言った。その言葉に私は、恥ずかしさを覚える。

「実は私、母親の連れ子でして。再婚相手との子が、弟なんです。ですから歳も離れてて」
「失礼ですけど……おいくつ」
「十二歳、離れてます」

 そう言う彼女の表情は、暗く落ち込んでいる。

「私がもっとしっかりしていれば、弟はこんなことにならずに、済んだのに……」

 彼女の言葉には、後悔の思いしか映し出されていない。そんな気がした。

「もし、よかったら」

 私は彼女に、言葉を促す。それはとても重い、話だった。

「私たちの、親は……」

191 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:33:21.28 ID:17bnaLyc0

 私たちの親は、いわゆる『毒親』だったんです。
 私の実の父と私の母が離婚して、ほどなく再婚しました。実はその時にはすでに、母のお腹には弟がいました。
 そう、母は浮気相手と再婚したんです。

 あの男は、ひどい男でした。母に暴力をふるう、借金もする。
 父親と呼ぶことも憚られる、私にとっては害虫でした。そんなところに弟が生まれて、弟はかわいそうでした。
 あの男、いや『虫』ですね、虫はいつだって家にいない。母がひとりで私と弟を育てる、そういう環境です。
 でも母は生活するために働かないとならない。いつしか母は、弟を私に任せ自分で育てることをやめました。

 虫は普段、母のところには戻らず、他の女のところを転々とするような奴だったと聞いています。
 時たま帰ってきては家のお金を持っていく。
 母も苦労していたと思いますけど、それを私は哀れだと思いません。だって、私や弟に暴力をふるい怪我をさせても、なにひとつ庇おうとしないんですから。

 そして私が中学の頃です。
 虫に襲われそうになりました。恐ろしくて、私は何度も母に「逃げよう!」って、訴えました。
 でも母は動こうとしない。学校の先生にも訴えて、そこから児童相談所へ連絡が行って。
 どうにか、私たちは虫から逃げることができました。そして所縁のない町で新しい生活を始めたんです。

 しばらくは穏やかな生活でした。母もこの時は、優しかったような気が、します。
 高校を卒業して私は東京で就職することになり、家を出ました。
 それが、間違いでした。
 就職して彼氏ができて、私自身が幸せだなと思っていた時、虫から電話があったんです。
 あいつを、どこへやった、と。
 虫から電話があって私は、あまりに恐ろしくてすぐ切りました。
 そして、住んでいたアパートから彼の部屋へ引っ越して、電話番号も変えて、一日おびえる日々でした。
 その後、虫から連絡が来ることはなく、私は彼と結婚して、今に至ります。

192 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:33:52.07 ID:17bnaLyc0

 お姉さんが一息ついて、お茶を飲む。男の子は彼女の膝の上で、アップルジュースを飲んでいる。
 お姉さんの境遇を思い、私の心は締め付けられる。

「弟の消息を知ったのは……」

193 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:34:21.47 ID:17bnaLyc0

 弟の消息を知ったのは、弟が楓さんの事務所に就職して、だいぶ経ってからのことでした。彼から私に、連絡があったんです。
 どういういきさつで私の消息を知ったのか、弟は話してくれませんでした。
 でも、彼が無事でいてくれて嬉しかった。そう思っていました。
 せっかくだからと、弟がここに遊びに来てくれて、その時弟の境遇を聞きました。

 私は、ひどい姉です。
 私が就職してしばらく、母親が逃げたそうです。今どこにいるのか、私には分かりません。
 事もあろうに弟は、虫に預けられたんです。
 そこでどういう仕打ちを受けたのか、弟は話してくれませんでしたけど、ひどいことをされていたのだと思います。

 弟が虫から逃げて東京に行き、楓さんの事務所にお世話になってようやく、弟は安心できるようになったと、思います。
 今、アイドルのプロデュースなんて、信じられないような仕事やってるよって、嬉しそうに言ってました。
 そこで、楓さんが担当だと、伺いました。私も信じられない気持ちで、すごいねって。弟が本当に幸せそうで、嬉しくなりました。

 ところが。
 次に弟のことを知ったのは、楓さんもご存じのとおり、弟が亡くなった時でした。
 楓さんの事務所の社長さんから、連絡がありました。そして、弟と対面して……

194 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:34:49.28 ID:17bnaLyc0

 お姉さんは言葉を失い、泣くばかり。男の子はそんな母親を心配して「げんきだして。だして」と、お姉さんに声をかける。
 ……なんと言えばいいのか、いや、なにも、言うことはできない。
 フィクションのような、テレビのような、そんな虚構と思いたくなる話。でも、現実の話。
 私は言葉を失った。

「うっ……うう……」

 声を殺して泣くお姉さんに、私は声をかけられない。なにを言ったところで空々しく、無意味に思えたから。
 お姉さんは落ち着くまで、私はその場にとどまるしか、できなかった。
 肩越しに見える、Pさんの遺影。その笑顔が、私をいっそうつらくさせる。
 Pさん。あなたは。
 どうして、いなくなったのですか?

195 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:35:30.44 ID:17bnaLyc0

「ところで」

 私はお姉さんに尋ねる。

「納骨は、されないんですか?」

 お姉さんは彼の遺影を眺めたまま、呟く。

「弟のお墓を作って納骨してしまったらもう、会えなくなる気がして……」

 私と、同じだ。そう思った。

 Pさんはもういない。それは紛れもない事実。
 しかし私は、事実を認めたくない。認めてしまったら、私の中のPさんがいなくなってしまう。そんな気がしたのだ。
 それが私の呪縛であることも、知っている。
 そうして心壊れても私は、Pさんを想い続けている。

「お姉さん」

 私も、彼の遺影を見ながら、呟いた。

「時々、Pさんに会いに来て、いいですか」

 お姉さんは、私の問いかけに答える。

「いつでも……会ってあげてください」

 お姉さんのお宅から辞去する時、手紙を渡される。

「これ、受け取ってください」
「これ、は?」
「弟が楓さんに宛てた、手紙です」

 本当ならすぐに渡せばよかったけれど、心の踏ん切りがつかなくて、と、お姉さんから謝罪を受ける。
 それは些細なことで、こうしてPさんの手紙が私の手元へ来たことが、とてもありがたかった。
 彼女にお礼を言い、男の子に「また来ても、いい?」と言葉をかける。彼はこくり、と頷いた。
 それだけで不思議と、ほっとする。私は「また伺います」と言い残し、東京へ帰る。

 帰りの新幹線。Pさんからの手紙を、開けた。

196 : ◆eBIiXi2191ZO :2020/09/25(金) 23:35:57.77 ID:17bnaLyc0

 楓さんへ

 これを楓さんが読まれるとき、僕はこの世にいないでしょう。
 ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
 僕は弱い人間です。個人的な揉め事で心を乱して、今こうして、自分を殺めようとしている。そんな馬鹿な男です。
 楓さんと出会えて、楓さんがトップアイドルとなって、僕は幸せでした。
 楓さんが、好きでした。大好きでした。
 一緒に歩めなくて、ごめんなさい。僕はもう、駄目なんです。
 楓さんがトップアイドルで居続けられることを、祈っています。
 さようなら。

197 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:36:45.05 ID:17bnaLyc0

 便せん一枚に、短い言葉。
 彼はなにを思って、これを書いたのだろう。私は。
 私は。

 それでも彼に、生きてて欲しかった。

 こんな言葉を残すくらいなら、私に話して欲しかった。ともに生きて欲しかった。どうして……
 どんなに思っても、どんなに考えても、答えなど分からない。彼はもう、いない。
 ひとり車内で、涙を流す。そして、思う。
 Pさんはずるい、です。私をこんなに泣き虫にさせて。責任を、とってください。
 ……それはもう、叶わない。
 悲しみを携えたまま、新幹線は東京へと向かい、私は日常へ戻るのだった。

198 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:37:23.52 ID:17bnaLyc0

 翌日。私は社長室へ向かう。

「社長さん」

 Pさんの手紙を手に、私は社長さんに問うた。

「Pさんのこと、知ってらっしゃったんですか?」

 手紙を社長さんに押しつけ、私は尋ねる。社長さんはため息を吐き、私をソファーに座らせた。

「……知ってました」

 私の心はざわつかない。社長さんの言葉を、待つ。

「彼はとても強かったです。私は彼の強さを見込んで、プロデューサーにスカウトしました」
「……」
「でも彼が亡くなる直前、彼の父親と名乗る人物から、私に連絡がありました。高垣楓のスキャンダルをバラして欲しくなかったら、金をよこせ、と」

 私は、その事実に驚く。虫はPさんが亡くなる直前まで、彼からすべてをむしり取ろうとしていた。
 私は、思う。虫は本当に、Pさんの父親なのか。血が繋がってるというのに、そんな仕打ちをどうしてできるというのか。
 闇は、私の想像を超えて、深かった。

「私は、自称父親に対峙しました。金など、払えない。そもそもスキャンダルなど、ありませんから、と」

 社長さんの表情は、お姉さんと同じように深い後悔に包まれていた。

199 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:37:50.09 ID:17bnaLyc0

「P君が亡くなったのは、その翌日だったのです……彼はその自称父親に、追い詰められていたのだろうと、思います」

 どれほどのプレッシャーを、Pさんは感じていたのだろう。
 それをおくびにも出さず、彼は私のプロデュースを続けていた。
 私たちは、Pさんを知らなかった。そして彼は、自らの命を絶った。

 無知は、罪。
 あまりにも劇画のようで、現実離れしている話。しかし、現実の話。
 私も社長さんも、その罪を抱えて、これから過ごしていかなくてはいけない。
 それでもなお、私は願わずにいられなかった。

 せめて、打ち明けて欲しかった。
 どうして、いなくなったのですか。

―― ※ ――

200 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:38:30.31 ID:17bnaLyc0

 季節は、移ろいゆく。
 Pさんがいなくなって、二年と半年。私はテレビの中で、歌っている。

「ありがとうございました」

 カメラの先にいるであろう、たくさんのファンの皆さんに、お礼を。私は深くお辞儀をする。

「高垣さん、お疲れさまでしたー」
「お疲れさまでした。お先します」

 収録が終わる。局スタッフに声をかけられ、私たちは事務所へと引き上げるのだった。

「どうでした、か?」

 帰りの車で、私はプロデューサーに声をかける。

「ええ、よい出来でした」

 プロデューサーの答えに、私は安堵する。
 事務所ではちひろさんが待っていた。

「お帰りなさい」
「はい。ただいま戻りました」

201 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:38:59.90 ID:17bnaLyc0

 いつもの挨拶。でも今は、少しだけ違っている。

「ところで楓さん」
「はい?」
「今日は楓さんのところ、お邪魔してもいいですか?」
「はい。喜んで」

 もうちひろさんとは一緒に、共同生活をしていない。
 彼女は実家へ戻り、私はひとり暮らしを再開した。それは私の様子がここに来て安定してると、判断されたから。

「あ、でも今日は先約が」
「あら、じゃあ今日はやめますね」
「いえ、瑞樹さんと久々に店呑み、なんです。よかったらちひろさんもいかがですか? 私の歯止め役として」
「歯止め役、ですか。うふふ。じゃあ私もご一緒させてもらいますね」

 クリニックの先生からは、飲酒は極力控えるようにと言われているけれど、ほんの猪口っと、いえ、猪口じゃなくてグラス一杯くらいは、見逃して欲しい。
 今は彼女たちとの語らいが、とてもよく効く薬なのだと、思っている。
 だから私は、また次のステージに、向かうことができる。

「楓さん、じゃあミーティングを始めますか」

 プロデューサーが、我がチーム高垣を招集する。

「はい、今行きます」
「久々のライブですから、しっかりと安全に、いろいろ段取り決めていかないと」
「そうですね、よろしくお願いします」

 次のステージ。それは久々のライブ。あの事故以来の企画、もうああいうことを起こしてはならないと、みんな緊張している。
 私も、気をつけないと。

202 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:39:28.16 ID:17bnaLyc0

「そう言えば、楓ちゃん」

 夜。いつものイタリアンバルで、瑞樹さんとちひろさんと一緒にお酒をたしなんでいた。

「なんです?」
「先週、行ったんでしょ? P君のところ」
「はい、行きました」
「どう? 少しは落ち着いた?」
「おかげさまで」
「そう……ならよかった」

 私と瑞樹さんの会話を、ちひろさんはにこにこと眺めている。
 私が安定しているもうひとつの要因、それは間違いなくPさんだった。
 薬が効いてだいぶ安定しているとは言え、いつまた暴発するか、分からない。そう思ってしまうことが私を不安にさせる。
 でも。

 あそこに行けば、Pさんに会える。
 そう思うことで、私は心の安寧を得ている。
 それは現実を受け入れず、未だ夢を見ていると、そう言われても仕方のないことだ。
 けれどどうしても私は、Pさんを忘れることなど、できない。折り合いをつけること、それができるのは彼に会うこと。私の中にひとつルールができた。

 私たち三人はゆっくりと語らい、気が付けば夜もだいぶ遅くなってしまう。
 ちひろさんは私のマンションに寄るつもりだったけれど、今日は遅いしもうお開き、ということになった。

203 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:39:55.32 ID:17bnaLyc0

「ただいま」

 誰もいない部屋。この暗さにももう、慣れた。
 この前までちひろさんと一緒に料理したり、ゆっくりと話し合ったり。あるいは。
 泣きはらして、慰められたり。
 私はキッチンへ向かい、コップに水を注ぐ。ポーチから薬を取り出し飲もうとして。

「あ。今日はちょっと深酒しちゃったし」

 副作用が強くなってしまうといけない。そのままポーチへ、薬を戻した。
 さっとシャワー程度で済ませ、私は寝る準備をする。かち、かち、と。目覚ましの音。
 うまく、眠れない。
 やはり薬のお世話になるべきかと頭をよぎったけれど、それはダメなことと、もう一度目を瞑る。だが睡魔はやって来ない。
 私はむくりと起き電気をつけ、化粧台の引き出しから彼の手紙を、取り出した。

204 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:40:30.20 ID:17bnaLyc0

 何度も何度も読み返す、手紙。
 読み返せば、悲しみが襲ってくる。自傷行為と言われても仕方ない。だけど。
 こうして傷を負うことで、彼を忘れずにいられるのなら。
 私は意味のない自傷を、繰り返す。心は未だ、歪んだまま。
 安定なんて、それは気持ちの波の大きい小さいの違いでしかなく、多少ましなアンバランスに過ぎない。

 私は、気持ちにけりもつけられず。
 死を選ぶことも、できず。
 いつまでも現状をたゆたうだけの、存在。

 アイドルである私。
 最近は妖艶さが増したなどと言われるけれど、私にはその価値が分からない。
 でもアイドルであるうちは、私は自分の存在を確かめることが、できている。

 そして、アイドルではない、私。
 なにもないただの高垣楓に、どれほどの価値があるというのか。
 存在を認められる私と、存在を黙殺する私と、二律背反が心の中にあり続けている。
 きっかけがあれば簡単に壊れてしまう私を、今この場にとどめているのは確かに、Pさんの存在なのだ。

205 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:40:58.51 ID:17bnaLyc0

 Pさん。私は。
 アイドルでいられていますか?
 私で、いられていますか?

 私はいつだって、Pさんを呼び続けている。求め続けている。でも。
 あなたが、いない。
 その事実を突きつけられるたび私は、心の中で慟哭する。泣いて、泣いて。泣き疲れて。
 そして今日も、眠るのです。

 Pさん、あなたが好きです。
 あなたに、会いたい。
 言葉が、想いが、漂いながら空へ溶け、見えなくなる。
 私はベッドの中でうずくまり、朝が来るのをただひたすらに待つ。そしてまた私は、アイドルへと戻るのだろう。

206 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:41:25.02 ID:17bnaLyc0

 朝が来る。
 私は。


207 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:41:52.24 ID:17bnaLyc0

「あなたがいない」


(了)

208 : ◆eBIiXi2191ZO [sage saga]:2020/09/25(金) 23:45:13.76 ID:17bnaLyc0

完結です。おつかれさまでした。

このお話はもともと個人誌用に書き下ろした作品で、ほぼ冊子がはけたので記念に投下したものです。
ハッピーエンド至上主義の私が、ハッピーじゃない話を書いてみよう、ということで、自分の持てる限りを尽くして書かせていただきました。

お読みくださりありがとうございます。
読んでくださった方の琴線に触れたら、この上ない慶びです。

ではまたいつか ノシ
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 02:17:30.11 ID:IEeppdbDO
……余計に問題が増えたのに先送りの打切りエンドなイメージ

例えるなら、沖縄決戦の映画で第32軍司令が自決する寸前で終わったみたいな……
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 02:29:33.68 ID:jIuZaEQX0
乙でした

まあいやらしい言い方だけど、楓さんにとっては「Pが死んだのは自分のせいじゃなかった」
という結論を与えられたおかげで救われた感じがあるのかもね
この後、復讐をする事が生きがいな人間に変貌する可能性もあるけど
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 09:24:43.30 ID:dcIST1SzO
おつ
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 09:53:53.00 ID:P0uCsOuho
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 13:23:28.57 ID:r63/Yeaa0
おつ
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 23:06:01.52 ID:3dIyquIRo
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/09/28(月) 15:58:28.54 ID:NtXNaaqi0
二人セゾン?
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/07(水) 13:34:58.56 ID:yuX/0Nfh0
花鳥風月
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