【ミリマス】木下ひなた「潜移暗化」

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312 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:39:54.78 ID:V6x1Fopt0


「まあ、幸いひなたは端だし、
 欠けてもギリギリなんとか……」



「出るよ!  うるさいんだよ、さっきから! 出るよ!」



嗚呼、もう抑えられない。
もう我慢できない。耐えられない。

自分の中で巨大な何かが決壊したのが分かる。
こんなもの八つ当たりにすぎない。

そんなことは分かってる。
でも、もう駄目なんだ。

313 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:40:40.08 ID:V6x1Fopt0


所恵美も、プロデューサーも目を丸くしている。
あたしは自分の顔が真っ赤になるのが分かる。

2人はキョトンとした顔で、
何怒ってるんだろうみたいな顔をする。
その顔が余計にあたしをイライラさせた。




「キャンセルなんてしない!

 あたしはステージに立つ!

 全部、全部やるから!! もう構わないで!」





「ひなた……!」

あたしは、所恵美の声も無視して、その場を去った。

314 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:41:26.59 ID:V6x1Fopt0


ぐるぐると定まらない感情が巡る。
……爺ちゃんがただ心配だ。

あんなことを言ってしまって、
そのあとのプロデューサーの対応が心配だ。

あたしはまた
「急にキレる、使いづらい危ないアイドル」
という新しいレッテルが貼られるのだろうか。

315 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:42:04.79 ID:V6x1Fopt0


久しぶりに話をした所恵美は
あたしのことをどう思うのだろうか。

変わってしまった……、と思うだろう。
それも悪い方に変わってしまったと。

母はどう思ったのだろうか。
愛娘から突き放される感覚はどうだったのだろうか。

316 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:42:33.84 ID:V6x1Fopt0


会場を忙しなく動くスタッフ達の目も気にしないで、
あたしは会場の廊下を早足で歩く。

色んな人があたしの様子を見て、振り返る。

また電話がかかってきた。
母親からだ。
あたしは電話には出ない。

317 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:43:21.50 ID:V6x1Fopt0


ここから……あたしはもう一度、
やり直すんだ。もう一度……。

こんなところで立ち止まる訳にはいかない。

ライブに出演して、しっかりやっている所を
もう一度お客さんやファンの方、スタッフの方、
関係各所にも見てもらって。

もう大丈夫なんだと思ってもらって、
もう一度テレビでも使ってもらうんだ。

318 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:44:49.15 ID:V6x1Fopt0


最初はラジオからでもいい。
でももう明日のライブで
あたしがちゃんと出来るというところ披露しないと、
次のチャンスはいつになるのか分からない。


こんなところで、こんな
爺ちゃんが死んでしまうかもしれないことで、
立ち止まる訳には……。

あたしは最低だ。


319 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:45:41.94 ID:V6x1Fopt0

分かっている。
でも、ここしか無いんだ。
次は無いんだ。

廊下の向こう側から
出演者のアイドル達が
群れをなしてこっちの方に
歩いてくるのが遠目にでも分かる。

あたしはそれを避けるため、
用のないトイレに逃げ込む。

みんなが過ぎ去るのを待つ。
何もしないのは誰かが入ってきた時に
怪しまれるので、綺麗な手を洗っていた。

320 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:46:45.59 ID:V6x1Fopt0

何度も石鹸をつけては流す。
泡立てて、爪の間も指の間も洗う。

まるで、誰かを殺した返り血を落とす、殺人犯のようだ。

今だったら、誰を殺してしまいたいだろうか。
あの子か、あの人か、それともあの子か。

いいや、違う。

あたしだ。

鏡に映るあたしと目が合う。


「……なんて顔してんだろう」


321 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:47:36.03 ID:V6x1Fopt0


もう一度ステージに立って……。

あたしは、もう一度……。

もう……。




「もう、いいか……」




ポキン。


あたしの中で、
何かが折れる音がハッキリと聞こえた。


「……は、ははは……。あははは……」



鏡に映るあたしは、
泣いていた。




322 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:48:21.43 ID:V6x1Fopt0


あたしが20歳の時に開催された、
田中琴葉が引退を宣言したライブ。


あたしは、ステージに立ち、
自分のやるべきことをやった。
ミスは無かった。……はず。

あのライブはどちらにしろ、
主役は田中琴葉なのだから、
目立ったところで、
結局会場のヴィジョンに映し出されるのは
田中琴葉だと決まっている。


だから、脇役に徹して会場を彩る背景の一つとなった。

323 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:49:14.29 ID:V6x1Fopt0


涙に惜しむファン、出演メンバー、
そして感謝の言葉を述べる主役。

あたしはそれを端で見ていた。

泣く振りをすれば良かったのかもしれない。
みんなが拍手をしている中で
あたしは棒立ちすることしか出来なかった。

それとも、このモヤモヤを爆発させて、
ライブを無茶苦茶にしてやれば良かったかもしれない。


生憎、その後に賠償問題にまで
発展する可能性があることを
考えることが出来たあたしは、行動に移せないでいた。
324 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:50:37.62 ID:V6x1Fopt0


ライブは無事に成功した。
そう言っていいと思う。

集合写真に写ったあたしは、
死んだような目で写真に写り込んでいた。

のちにSNSにあげられた写真を見て、
自分の小さな姿に、「別に写らなくても良かったなぁ」と思った。

325 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:51:08.11 ID:V6x1Fopt0

ライブ終わり、スマホを見ると、
電話の着信が48件。
ショートメッセージが9件。
留守番履歴が8件。

これらがいっきに現れて、
重苦しい気分のあたしを更にどん底に落とす。

スマホを開いているのも嫌になる。

326 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:51:55.84 ID:V6x1Fopt0


その後、家に帰る途中で、
またかかってきた電話に出る。


夏の夜空の下で、
あたしは、この世に存在する
ありとあらゆる罵詈雑言を受けた。





でも、笑えてきた。



可笑しくて仕方なかった。



夜道を、電話片手ににやにやしながら歩く。

327 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:52:42.65 ID:V6x1Fopt0



電話が終わる頃合いに、
自宅にたどり着いた。

真っ暗な自宅に帰ると、
我に返り、なんてバチ当たりなんだ、と泣いた。


「通夜には来い」と言われ、
その後日、仕方なく行ったが、
やっぱりそこでも色んなことを言われた。


説教の最中に、何度この場を逃げ出そうか。
この空気を壊してやろうか。

そういうことばかり考えながら、下を向いていた。

そして、やっぱりあたしは、
行動には移せないでいた。



328 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:53:20.08 ID:V6x1Fopt0



──半年後、木下ひなた20歳の冬。





「ひなた、これ、爺ちゃんのなんだけどね。ひなたにって」

「これ? ええ……婆ちゃん、
 これ爺ちゃんのカメラじゃない?」

「たくさんあって。
 でも誰も使い方、分かんないんだよね」

329 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:54:02.19 ID:V6x1Fopt0


爺ちゃんと婆ちゃんの家に来たのは、
夏のライブから半年後だった。

すっかり雪景色となった北海道の大地で、
お墓参りに行った帰りだった。


婆ちゃんは元気にあたしのことを迎え入れてくれた。

「またここにしばらく住んでもいいんだよ」

なんて婆ちゃんは言ったけれど、
あたしはそれを断った。

330 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:54:42.31 ID:V6x1Fopt0


婆ちゃんが部屋の奥から引っ張り出してきた、
爺ちゃんのカメラを弄っていくが、
何せ説明書も無いので、どうやって扱うのかが分からない。

スマホで型番を調べて、
説明書のPDFをダウンロードするけれど、
説明書があまりにもページ数が多くて
どこから見たらいいかすら、分からない。

まずは、ボタンが何なのか知ることから始めるか。
カメラの付属品がゴロゴロ出てくる。

331 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:55:22.26 ID:V6x1Fopt0


交換用のレンズ。三脚。シャッターの遠隔のボタン。
レンズフィルター。ケーブル各種。

婆ちゃんはあたしに言った。


「爺ちゃんね、そのカメラはひなたに
 受け継ごうと思ってたんだよ。そう言ってた」

「……」

あたしは何も言えなかった。

「そうなんだ」とも言えずにいた。
婆ちゃんは優しい口調で言った。

332 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:56:23.15 ID:V6x1Fopt0


「もらってあげてくれないかな?
 爺ちゃんね、ひなたは、東京に行って、アイドルになって、
 いろんなきれいなものを見るんだろうから、
 立派なカメラが必要だろう。って、そう言ってたよ。
 いつか俺が教えてやるんだって」

「……そっか。うん、婆ちゃんがいいなら、あたしが貰うよ」


婆ちゃんはそんなあたしを見て言った。


「あ、もしかして犬の写真とか撮るのかい?」

「え? ああ、ドッグカフェの?」

333 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:57:04.66 ID:V6x1Fopt0


犬の写真……というので
一瞬なんのことか分からなかったけれど、
親族に犬を飼っている人は誰もいない。

お隣の家には飼い犬がいることはいるけれど、
畑があるせいで何キロも先にある。

だからすぐに自分が働いていたドッグカフェのことだと分かった。
でも、あたしは淡々と婆ちゃんに同じ説明をした。
もう何度かした説明を。


「ううん。あそこはもう辞めちゃったんだ」

334 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:57:51.96 ID:V6x1Fopt0


婆ちゃんの家に行く前、
一週間くらい前だったが、
ふらっと立ち寄ったことがある。

あたしが辞めて、
たったの半年だったが、
あたしはその事実を言う。


「それに今はもう、あそこ閉店しちゃったし」

「そっか。お昼用意するからちょと待っててね」

「ううん、いいよ。ちょっと……コレ、練習したら帰るからさ」

335 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:58:25.79 ID:V6x1Fopt0


あたしはそれから
一旦、写真を実際に撮ってみることにした。

なんてことない、
テーブルに置いてた婆ちゃんの湯呑を撮影する。
バシッという派手はシャッター音。

カメラの液晶には撮影したものが
すぐに確認出来るように映し出されるが、
画面に出てきたのは白っちゃけた湯呑だった。

336 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:58:59.00 ID:V6x1Fopt0


あたしはそれを削除する。
色々いじって撮影する。
確認して削除。

5回くらい撮影を繰り返したところで、
結局オートモードを発見して撮影した。

うん、綺麗に湯呑が撮れた。
分からない内はこれでいいじゃないか。

綺麗に湯呑が撮れたからなんだって言うんだ。

337 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 22:59:42.54 ID:V6x1Fopt0


あたしは、さっき見つけた三脚を引っ張り出して、組み立てる。

カメラをセットして、レンズを覗いて、位置を確認する。
その場所に入るようにカメラの前に移動する。

タイマーにセットし忘れたのを思い出し、
カメラの方に戻ってきてセットし直す。

今度は、上手く作動したようで、
急ぎ足で、カメラの前に移動する。


338 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:00:11.11 ID:V6x1Fopt0


情けない、だらけたピースサインをちょっとしてみる。
バシッという派手なシャッター音が響く。

カメラの方に戻り出来栄えを見てみると、
そこに写っていたのは、
やっぱり情けない半目の20歳にもなる女だった。

339 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:01:01.85 ID:V6x1Fopt0


あたしは今度は、
三脚をそのまま持ち出して、外に出る。
外はどんよりとした分厚い雲が空を覆っている。


雪が積もった畑の前まで来て、三脚を立てる。

多少良くなった手際で、
もう一度タイマーをセットし、
駆け足でレンズの前へ走る。

ポーズを決めるも、なんか違和感を覚え、
結局さっきと同じダサいピースサインを一人でする。

シャッター音がかすかに聞こえ、カメラに戻っていく。

340 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:01:46.63 ID:V6x1Fopt0


真っ白な背景に、あたしが写っていた。

誰も居ない、一人ぼっちの集合写真のような、
画面の中途半端なところにあたしは立って居た。

あのライブ終わりに撮った集合写真も、
同じような顔をしていた。

今は確かに誰もいなくて楽しくもないから、
別にこんな顔をしていても仕方ないと思うけれど。

寒い中、もう一度カメラの設定方法をスマホで調べてみる。
あーでもないこーでもない、
と一人でやっている内に、
スマホの画面に水滴が落ちた。

341 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:02:19.78 ID:V6x1Fopt0


……。

一滴、また一滴。
これは涙ではない。
それに水でもない。

雪だ。

もたもたしているうちに
降ってきてしまったのか。


342 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:03:04.89 ID:V6x1Fopt0

もう一度タイマーをあわせる。

雪が舞い散る中、あたしはまた駆け足でカメラの前に行く。
段々と雪の結晶も大きくなっていくのが分かる。

手のひらを空に向けて見る。

手に、雪が落ちては消えていく。


「……はは」

343 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:03:46.45 ID:V6x1Fopt0


あの時、どう言い返せば、
あたしはショッピングモールでの
お仕事が出来ていたのだろうか。

あのプロデューサーが
名前を書き出していたその順番とバツ印と丸の意味、
あれはなんだったんだろうか。

あの時、何も問題なく
オーディション番組に出演するには
どうしたら良かったのだろう。


色んな後悔が、色んな感情がまた押し寄せてくる。


344 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:04:34.34 ID:V6x1Fopt0



「……ははは」



「……あはは」



「あはははははは……!」



遠くにぼんやり佇む、一眼レフカメラから、
バシッというシャッター音がかすかに聞こえた気がした。




345 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:05:48.45 ID:V6x1Fopt0



第7章 エピローグ たぶんみんなには……






「そして、ロコは25歳の時に、 万博に呼ばれ、
 そのパビリオンのデザインを任されるようになります」

「へえ〜!」

「それから、30歳の頃には巨匠と呼ばれ、
 あらゆる建造物のデザイン、アートを世の中に残していきます」

346 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:06:34.71 ID:V6x1Fopt0


「じゃあゆくゆくは太陽の塔みたいなのを作るわけだ」

「そうなんです! まさに全人類ロコナイズ計画です」

「いや〜。最も恐ろしい計画が出てきましたね〜」



「わははは!」




「なんでですか〜! 素晴らしい計画だと思いませんか!?」

「……。ほら、もうメンバーもシーンってなっちゃってるじゃん」

347 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:07:16.54 ID:V6x1Fopt0


都内のスタジオで収録が行われている。


スタジオの右側に765プロの新生アイドルグループ、
ミリオンスターズのメンバー達がひな壇に座っている。


その反対にはMCとしてお笑い芸人が座っている。
何年か前に漫才の王者を決める賞レースに出場し
大きく爪痕を残し、それからテレビには
連日引っ張りだこになった、中堅芸人である。


348 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:07:53.93 ID:V6x1Fopt0


この日の収録は3本撮り。
今はその3本目に入っている。

MCもメンバーも少し疲れが見えるどころか、
アドレナリンが出てきて、
どんどん調子の出てくるメンバーがたくさんいる。


そして、この日の収録は
自分の未来を語る「妄想将来トーク」という内容だった。

349 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:08:38.57 ID:V6x1Fopt0


事前にアンケートで記載した内容を、
番組スタッフが巨大なパネルにし、
指名されたメンバーが前に出て、説明をしていく。


所々隠された「めくり」をめくって、
MCがツッコミを入れたり、
その隠された内容を
メンバーが当てようとして、笑いが起きる。


350 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:09:21.63 ID:V6x1Fopt0


「さて、50歳でロコはあるものを作ります。
 なんだと思いますか!?」

「え〜、なんだろう。誰か分かる人いる?
 あ、横山分かる?」


ひな壇からピシッと腕を伸ばす横山奈緒が指名される。


「はい! ロコのことなんで、
 これは、島を作りますね」

「島!?」

351 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:10:05.17 ID:V6x1Fopt0


「もう建物とかアートとか飽き足らず、
 まるまる一個、島です」

「一個て……。すごいですねえ。
 さあ、じゃあこれはなんでしょう?」

「奈緒さん実に惜しいです!
 これはですね……よいしょ、じゃじゃん! ”人”です」

352 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:10:41.68 ID:V6x1Fopt0


スタジオ内にはメンバーたちの悲鳴があがる。
思わずMCも立ち上がり声を張る。


「禁忌に触れるなァ!
 これは、妊娠とかそういうことじゃないんだよね!?
 みちこのことだから」

「ロコです。あ、これはそうですね。
 ちょっと50歳では中々高齢出産になってしまうので、
 人造人間です」

353 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:11:46.17 ID:V6x1Fopt0


MCが勝手に呼び出して気に入っている仇名に
ロコは素早くも律儀に訂正する。

その辺りで「妄想将来トーク」、
ロコというアイドルのターンは終了した。

MCがまとめに入る。

「いや、最も恐ろしいことを計画している人が出ましたね〜」

「あんな怖いこと考えてる奴、そうそういないですけどね!」



354 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:12:34.03 ID:V6x1Fopt0


MCはひな壇に座るメンバーの顔をぐるりと一周見渡していく。
今のロコのターンの感想をメンバーに振っていく。

「志保沢はどうだったよ今の」

「ええ、……あの、良いと思います。ロコさんらしくて」

「ほんとかッ!? あんな怖いこと書いてんだぞ!?
 人間を造るとか……。ここにも怖いヤツがいたなぁ」

「ほら、北沢クンはああいうところあるから」

「とんでもないアイドルグループだぞコイツら……」



「わははは!」



スタジオ内にまた大きな笑い声があふれる。

355 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:13:17.47 ID:V6x1Fopt0


「さて、じゃあ次の方行ってみましょうか?」

「みんな本当に色々書いてましてね。
 次ねえ〜。どれもこれも捨てがたいんですけどね〜」


「……ふふ」


「どうした? ん? 木下、何かあったか?」

「木下クンのもねえ〜、面白かったんですけれどね」

356 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:14:37.00 ID:V6x1Fopt0


「いや、ふふ、ううん。
 なんでもないべさ……ふふふ。
 ごめんなさい。ふふ」


「どうしたんでしょうね。
 自分で書いた奴思い出して
 可笑しくなっちゃったんでしょうかねえ」

「怖いですね、木下クン。
 ツボにハマると抜け出せないのはあるけど、
 急にハマりましたからね」

357 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:15:58.75 ID:V6x1Fopt0

「ふふ……あははは……!

 いやごめんなさい。うふふ、自分で、はは、書いたのと
 違う新しい妄想将来を思いついちゃって……クク、あはは!」




「ははは、めちゃめちゃウケてんじゃん。
 大丈夫か〜? 一回収録止めるか〜?」

「どうしたんだい木下クン、
 そんなに自分で考えた妄想将来が
 面白くなっちゃったのかい?
 ちょっとどんなの思いついちゃったんだい、教えておくれよ。
 このままじゃ我々も怖いからさ」

358 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:17:36.32 ID:V6x1Fopt0


「あははっは、ははは!」

「あははは……いや、えへへ、あはは……。……はぁ」






「いや、たぶんみんなには……」






「…………」








「理解できないべさ……」







END


359 : ◆BAS9sRqc3g [sage saga]:2020/10/09(金) 23:21:02.50 ID:V6x1Fopt0

お疲れさまです。
以上になります。
お目汚し失礼いたしました。
360 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2020/10/09(金) 23:23:24.17 ID:Di23K9Im0
これは劇物ですなぁ
乙です

木下ひなた
http://i.imgur.com/JZ4KZm6.jpg
http://i.imgur.com/NhNDsL9.jpg
http://i.imgur.com/cSN5ZT8.jpg

>>6
横山奈緒
http://i.imgur.com/IGDOOcE.png
http://i.imgur.com/CyKDyS7.jpg

エミリー
http://i.imgur.com/8zwnx0c.png
http://i.imgur.com/dSKRUmL.jpg

>>201
田中琴葉
http://i.imgur.com/0M8XK2b.jpg
http://i.imgur.com/Z73g1L9.png

>>275
所恵美
http://i.imgur.com/NnGyCAQ.png
http://i.imgur.com/RshI5gT.png

>>345
ロコ
http://i.imgur.com/v3l2XO3.jpg
http://i.imgur.com/bFbtb4t.png


>>354
北沢志保
http://i.imgur.com/58MqlZw.jpg
http://i.imgur.com/vwib1IV.png

今の所おじいさん凄く元気そうだけど、そういう人が成人したぐらいに倒れてしまうのリアルさがあるね
最期会わないのは何年も響いてきそうだ....
http://i.imgur.com/lzoRVSs.png
http://i.imgur.com/UXlIPaT.jpg
http://i.imgur.com/s3lQ2W1.png
http://i.imgur.com/d2qMjMQ.png
http://i.imgur.com/OjgjGyk.png
http://i.imgur.com/zOdQuoH.png
http://i.imgur.com/LV2Kyln.png
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/10(土) 13:01:38.78 ID:9hupholbO
おつ
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